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特許7218049導電性編地の電極接続構造及び導電性編地の電極接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】導電性編地の電極接続構造及び導電性編地の電極接続方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/14 20060101AFI20230130BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20230130BHJP
   A61B 5/27 20210101ALI20230130BHJP
   D04B 1/12 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
D04B1/14
A41D31/00 502D
A41D31/00 503P
A61B5/27
D04B1/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018128813
(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公開番号】P2020007660
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】山本 大策
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 耕右
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010234(WO,A1)
【文献】特表2011-525043(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1746334(KR,B1)
【文献】特開2018-030300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/14
A41D 31/00
A61B 5/27
D04B 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁糸で編成される地組織に編み込まれた金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸により導電性帯状部が形成された導電性編地と外部電極端子とを電気的に接続する導電性編地の電極接続構造であって、
前記導電性帯状部は前記絶縁糸に前記導電糸が添糸編みされた添糸編部で構成され、前記添糸編部のうち前記外部電極端子との接続領域で、熱硬化性樹脂に微小導電性粒子を分散させた異方性導電フィルムである樹脂製接着シートを介して前記外部電極端子と熱圧着された熱圧着部を備え、
前記接続領域で前記添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に前記導電糸を表出させた導電糸表出編成部が形成され、
前記熱圧着部は前記接続領域に形成された導電糸表出編成部のうち前記導電糸の表出側で前記樹脂製接着シートを介して前記外部電極端子と熱圧着されていることを特徴とする導電性編地の電極接続構造。
【請求項2】
前記導電糸表出編成部は、前記導電糸がフロート編みまたはジャカード編みの何れかで編成された浮き糸編成部で構成されていることを特徴とする請求項記載の導電性編地の電極接続構造。
【請求項3】
前記導電性帯状部の幅方向に沿って延在する基材に前記導電性帯状部の幅より小さな間隔で前記外部電極端子が複数本配列され、前記導電性帯状部に複数本の前記外部電極端子が熱圧着されていることを特徴とする請求項1または2記載の導電性編地の電極接続構造。
【請求項4】
前記絶縁糸が天然繊維糸、再生繊維糸または合成繊維糸と弾性糸との混用糸であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の導電性編地の電極接続構造。
【請求項5】
絶縁糸で編成される地組織に編み込まれた金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸により導電性帯状部が形成された導電性編地に外部電極端子を電気的に接続する導電性編地の電極接続方法であって、
前記絶縁糸に前記導電糸を添糸編みして前記導電性帯状部を形成する導電性編地編成ステップと、
前記導電性帯状部と前記外部電極端子との接続領域で、熱硬化性樹脂に微小導電性粒子を分散させた異方性導電フィルムである樹脂製接着シートを介して前記導電性帯状部と前記外部電極端子とを熱圧着する電極接続工程と、
を備え、
前記導電性編地編成ステップは、少なくとも前記接続領域で前記添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に前記導電糸を表出させた導電糸表出編成部を形成し、
前記電極接続工程は、前記接続領域に備えた導電糸表出編成部のうち前記導電糸の表出側に前記樹脂製接着シートを介して前記外部電極端子と熱圧着することを特徴とする導電性編地の電極接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁糸で編成される地組織に編み込まれた金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸により導電性帯状部が形成された導電性編地と外部電極端子とを電気的に接続する導電性編地の電極接続構造及び導電性編地の電極接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁糸で編成された地組織に編み込まれた金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸により導電性帯状部が形成された導電性編地が介護やウェアラブルデバイスなど複数の用途として注目されている。
【0003】
特許文献1には、着用時に体表面の所定位置に簡単に配置して、その着脱時の伸縮作用にもよく追随させながら低周波治療や生体電気信号の取得に用いることができる電極を具備させた弾性着衣が提案されている。
【0004】
弾性繊維を介して着圧の生成を自在とした弾性布地における少なくとも以上の領域に、その着用時に体表面と接触する裏面側への表出量を表面側への表出量より多くして編み込んだ導電繊維により面状導電層を形成し、該面状導電層の表面側の適位置に接続端子を設置して電極を形成し、該電極を低周波治療のための刺激電極や生体電気信号を取得するための記録電極として使用できるように構成されている。
【0005】
特許文献2には、ある素材の糸であって、湿度の影響を受けて電気特性が変化する糸を少なくとも1本含むメリヤス生地を備え、間隔を空けて配置された少なくとも2個の導電性電極を有する組込型の湿度センサを備えて、前記導電性電極の間には、前記メリヤス生地の編目の行または列が配置され、前記導電性の電極のそれぞれは、少なくとも1本の導電性の糸を含み、前記導電性の糸は、前記メリヤス生地に編み込まれ、外部からアクセス可能な電気接続手段に電気的に接続されるメリヤス織物が提案されている。
【0006】
特許文献3には、導電糸で複数のループを連ねて形成し、該ループ同士を相互に絡めることによって編み込んで一枚に形成された布地と、電極糸によって構成され、前記布地に間隔を空けて設けられた電極部と、を備え、前記導電糸が、繊維からなる芯線と、該芯線の表面を被覆する導電層又は導電性を有する箔とで構成されていることを特徴とする布ヒータが提案されている。
【0007】
特許文献4には、外部装置における接続端子との接続箇所において導体の劣化を抑制することができる導電性生地を提供することを目的として、導電性の被着体を重ねて固定される導電性生地であって、導電性繊維構造体により構成され、前記被着体と電気的に接続可能な導電部と、前記導電部が配設される領域の少なくとも一部分において含浸され、前記被着体を前記導電部に直接接触させた状態で接続固定する樹脂接着剤とを備える導電性生地が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-349021号公報
【文献】特開2011-106084号公報
【文献】特開2014-157824号公報
【文献】特開2017-66536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1から4には、導電糸が編地に編み込まれた導電部を備えた導電性編地として様々な態様が提案されている。しかし、導電性生地と外部装置との接続構造として、導電性接着剤を介して導電部と外部装置における接続端子とを接続する構造や、外部装置における接続端子をクリップ状に構成して導電性生地における導電部を挟んで接続する構造が採用されているに過ぎず、耐久性を備えた適切な電極接続構造という観点で一層の改良の余地があった。
【0010】
特許文献4には、その一例として、導電性の被着体と導電性生地とを樹脂接着剤を介して接合した導電性編地の電極接続構造が開示されている。
【0011】
しかし、絶縁糸で編成された地組織に編み込まれた金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸により導電性帯状部が形成された導電性編地と外部電極端子とを樹脂接着剤を介して接合する場合には、導電性帯状部を構成する導電糸に樹脂接着剤を十分に含浸させることが困難なために接着力が弱く、耐久性が確保できないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、導電性編地と外部電極端子とを十分な接着強度で電気的に接続する導電性編地の電極接続構造及び導電性編地の電極接続方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による導電性編地の電極接続構造の第一の特徴構成は、絶縁糸で編成される地組織に編み込まれた金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸により導電性帯状部が形成された導電性編地と外部電極端子とを電気的に接続する導電性編地の電極接続構造であって、前記導電性帯状部は前記絶縁糸に前記導電糸が添糸編みされた添糸編部で構成され、前記添糸編部のうち前記外部電極端子との接続領域で、熱硬化性樹脂に微小導電性粒子を分散させた異方性導電フィルムである樹脂製接着シートを介して前記外部電極端子と熱圧着された熱圧着部を備え、前記接続領域で前記添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に前記導電糸を表出させた導電糸表出編成部が形成され、前記熱圧着部は前記接続領域に形成された導電糸表出編成部のうち前記導電糸の表出側で前記樹脂製接着シートを介して前記外部電極端子と熱圧着されている点にある。
【0014】
絶縁糸に導電糸が添糸編みされた導電性帯状部と外部電極端子とが接続領域で、熱硬化性樹脂に微小導電性粒子を分散させた異方性導電フィルムである樹脂製接着シートを介して熱圧着される際に、接続領域で添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に前記導電糸を表出させた導電糸表出編成部が形成されていると、溶融した樹脂が導電糸の近傍で露出する地組織を構成する絶縁糸に浸潤するために大きなアンカー効果が生じ、導電糸と外部電極端子とが確実に電気的に接続された状態で地組織と外部電極端子とが十分な強度で接着されるようになる。
【0015】
なお、接続領域に形成された導電糸表出編成部のうち導電糸の反表出側では、ニットされた部位で溶融した樹脂が導電糸に妨げられて、絶縁糸で編成された地組織への樹脂の浸潤が阻害される。しかし、上述の構成のように導電糸の表出側で例えば導電糸がミスされ表出した領域では導電糸の隙間を通って絶縁糸により編成された地組織に樹脂が浸潤するため、十分なアンカー効果が働くようになる。
【0016】
同第の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記導電糸表出編成部は、前記導電糸がフロート編みまたはジャカード編みの何れかで編成された浮き糸編成部で構成されている点にある。
【0017】
導電糸表出編成部として、導電糸がフロート編みまたはジャカード編みの何れかで編成された浮き糸編成部を好適に採用できる。
【0018】
同第の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記導電性帯状部の幅方向に沿って延在する基材に前記導電性帯状部の幅より小さな間隔で前記外部電極端子が複数本配列され、前記導電性帯状部に複数本の前記外部電極端子が熱圧着されている点にある。
【0019】
外部電極端子が導電糸と電気的に接触した状態で地組織と電極とが樹脂によって接着されるとともに、地組織と電極間に露出する基材とが樹脂によって接着される。電極が金などで被覆されるような場合に、仮に被覆部である金が銅パターンから一部剥離するようなことがあっても、基材との間でも十分に接着されているので、剥離による電極と導電糸との導通不良を回避できる。
【0020】
同第の特徴構成は、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、前記絶縁糸が天然繊維糸、再生繊維糸または合成繊維糸と弾性糸との混用糸である点にある。
【0021】
伸縮性を備えるため、衣服など凹凸のある部位であっても表面に密着するように装着できるようになる。
【0022】
本発明による導電性編地の電極接続方法の第一の特徴構成は、絶縁糸で編成された地組織に編み込まれる金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸により導電性帯状部が形成された導電性編地に外部電極端子を電気的に接続する導電性編地の電極接続方法であって、前記絶縁糸に前記導電糸を添糸編みして前記導電性帯状部を形成する導電性編地編成ステップと、前記導電性帯状部と前記外部電極端子との接続領域で、熱硬化性樹脂に微小導電性粒子を分散させた異方性導電フィルムである樹脂製接着シートを介して前記導電性帯状部と前記外部電極端子とを熱圧着する電極接続工程と、を備え、前記導電性編地編成ステップは、少なくとも前記接続領域で前記添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に前記導電糸を表出させた導電糸表出編成部を形成し、前記電極接続工程は、前記接続領域に備えた導電糸表出編成部のうち前記導電糸の表出側に前記樹脂製接着シートを介して前記外部電極端子と熱圧着する点にある。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した通り、本発明によれば、導電性編地と外部電極端子とを十分な接着強度で電気的に接続する導電性編地の電極接続構造及び導電性編地の電極接続方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は本発明による導電性編地の電極接続構造の上面視の説明図、(b)は当該電極接続構造の上面視の要部の写真である。
図2】導電性編地の接合(接着)方法の説明図である。
図3】(a)は添糸編みの要部の組織図(b)はフロート編みの要部の組織図である。
図4】(a)は絶縁性の地組織に添糸編みで縞状の導電性帯状部が編成された導電性編地の一方の面(表面)の写真、(b)は当該導電性編地の他方の面(裏面)の写真である。
図5】(a)は絶縁性の地組織にフロート編みで縞状の導電性帯状部が編成された導電性編地の一方の面(表面)の写真、(b)は当該導電性編地の他方の面(裏面)の写真である。
図6】(a)は導電性編地の編組織と電極接続側に配される樹脂製接着シートとの位置関係を示す説明図、(b)は別実施例の説明図、(c)は比較例の説明図、(d)は比較例の説明図である。
図7】(a)は図5(a)の面に外部電極端子を接合した電極接続構造の写真、(b)は図5(b)の面に外部電極端子を接合した電極接続構造の写真である。
図8】(a)は本発明による導電性編地の電極接続構造と比較例との接着強さの実験結果説明図、(b)はその特性図、(c)は実験方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明による導電性編地の電極接続構造及び導電性編地の電極接続方法を図面に基づいて説明する。
図1(a),(b)及び図2には、導電性編地の電極接続構造10が示されている。当該電極接続構造10は、導電性編地3と外部電極端子5とを電気的に接続する接続構造である。導電性編地3は、絶縁糸1aで編成される地組織1に編み込まれた金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸2aにより導電性帯状部2が形成されている。
【0026】
導電性帯状部2は絶縁糸に導電糸が添糸編みされた添糸編部で構成され、添糸編部のうち少なくとも外部電極端子5との接続領域CAで樹脂製接着シート8を介して外部電極端子5と熱圧着された熱圧着部4を備え、少なくとも接続領域CAで導電糸2aがフロート編みされた浮き糸編成部を備えている。
【0027】
図3(a)には、添糸編みの編組織が示されている。添糸編みはプレーティング編みともいい、絶縁糸1aと導電糸2aをそれぞれ別の給糸口から編み針に給糸する編成方法により実現される。各編成ループにおける絶縁糸1aと導電糸2aとの配置が安定しているため、全てのループに導電糸2aを隣接させることができる。そのため、編地の一方の面(表面)に導電糸2aが現れ、他方の面(裏面)に絶縁糸1aが現れる。
【0028】
図4(a)には、添糸編み編成により濃淡の縞模様が形成された導電性編地3の一方の面(表面)の写真が示され、図4(b)には他方の面(裏面)の写真が示されている。絶縁糸1aで編成される地組織1(淡色の縞)に、導電糸2aが添糸編み編成された導電性帯状部2(濃色の縞)が形成されている。導電糸2aが表面に現れる一方の面(表面)に比べて絶縁糸1aが現れる他方の面(裏面)の導電性帯状部2の色が薄くなっている。
【0029】
図3(b)には、浮き糸編成部となるフロート編みの編組織が示されている。フロート編みは、コース方向に沿って全てのループで絶縁糸1aと導電糸2aがニットされる添糸編みの変形で、コース方向に沿って単一または複数のループでミスされるように編成される。この例では、コース方向に一つのループ単位でニットとミスが交互に配置されている。
【0030】
図5(a)には、フロート編み編成されることにより得られた濃淡の縞模様の導電性編地3の一方の面(表面)の写真が示され、図5(b)には他方の面(裏面)の写真が示されている。導電糸2aがコース方向に連続する複数のループでミスされ、一つのループでニットされる構成を基本パターンとして、当該基本パターンを繰り返して導電性編地3が構成されている。
【0031】
図5(a)では、絶縁糸1aで編成される地組織1(淡色の縞)に、導電糸2aがミスにより浮き糸として表れているため、図4(a)と対比して目の粗さが確認できる。図5(b)では、導電糸2aがミスにより浮き糸となる部位で全面的に絶縁糸1aが現れており、図4(b)と対比して絶縁糸1aを透かして薄く現れる導電糸2aのニット部分が斑点状であることが確認できる。
【0032】
この例では、導電性帯状部2の幅が8mm、隣接する導電性帯状部2の間の地組織1の幅が8mmの縞模様に形成され、地組織1を構成する絶縁糸1aとして、綿糸とポリウレタン弾性糸が混用された糸が用いられ、コース方向及びウェール方向に伸縮性が発現するように構成されている。具体的には、地組織1が綿糸とポリウレタン弾性糸で添糸編み編成され、さらに導電糸2aがフロート編み編成されて導電性帯状部2が構成されている。
【0033】
絶縁層を挟んで導電性帯状部2が直交するように2枚の導電性編地3を重畳配置することにより、位置検出可能な入力素子として機能させることができる。このような入力素子を衣類に適用することにより、衣類をタッチ操作して電子機器を遠隔制御する入力デバイスが実現できる。なお、これは一例であり、導電性帯状部2を流れる電流の抵抗損失を利用した発熱素子として機能させ、或いは、背景技術の欄で説明した湿度検出素子や、信号伝達用の配線として用いることも可能である。何れも衣類や敷布などに組み込むことができる。
【0034】
図2に示すように、外部電極端子5はフレキシブルプリント基板20に形成されている。フレキシブルプリント基板20は、ポリイミド樹脂製のベース基板21にエッチング処理によって銅箔パターン23が積層形成され、電極端子となる銅箔パターン23の端部を除いてポリイミド樹脂製の絶縁被覆部22で覆われている。絶縁被覆部22から露出した銅箔パターン23の端部が金メッキされて外部電極端子5となる。
【0035】
外部電極端子5と導電性帯状部2とを樹脂製接着シート8を挟んで対向配置し、被覆シート30を介してフレキシブルプリント基板20の背後から導電性編地3側に向けて加熱体9を所定圧力で所定時間押圧することによって、樹脂製接着シート8が溶融し、導電性編地3と外部電極端子5とが電気的に接続された状態で接着される。
【0036】
絶縁糸1aとして、ポリエステル繊維やナイロン繊維などの合成繊維糸、綿や絹や麻などの天然繊維糸、キュプラやレーヨンなどの再生繊維糸、それらと弾性糸との混用糸などを用いることができる。なお、絶縁糸1aとして「弾性糸との混用糸を用いる」とは、弾性糸と他の糸とを一体の糸として用いるばかりでなく、弾性糸と他の糸とを編み糸として別々に用いて編地にすることも含む概念である。
【0037】
弾性糸としてポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を単独で用いてもよいし、芯にポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を用い、カバーにナイロンやポリエステルを用いたカバリング糸などを採用することができる。なお、絶縁糸1aとして、モノフィラメント糸を採用してもよいが、複数の単繊維の集合体であるマルチフィラメント糸や紡績糸の採用がより好ましい。
【0038】
絶縁糸1aの繊度は10dtex~500dtexが好ましく、特に20dtex~400dtexが好ましい。
【0039】
導電糸2aとして、樹脂繊維や天然繊維、或いは金属線等を芯として、この芯に湿式や乾式のコーティング、メッキ、真空成膜、その他の適宜被着法を行って金属成分を被着させた金属被着線(メッキ線)を使用するのが好適である。芯にモノフィラメント糸を採用してもよいが、マルチフィラメントや紡績糸の採用がより好ましい。
【0040】
芯に被着させる金属成分には、例えばアルミ、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、錫、亜鉛、鉄、銀、金、白金、バナジウム、モリブデン、タングステン、コバルト等の純金属やそれらの合金、ステンレス、真鍮等を使用することができる。本実施形態ではナイロンやポリエステルで構成されるマルチフィラメントに銀メッキした糸が用いられている。
【0041】
導電糸2aの繊度は33dtex~400dtexが好ましく、特に70dtex~300dtexが好ましい。
【0042】
導電糸5として芯糸に金属成分を被着させた金属メッキ糸を用いる例を説明したが、例えば、日本新素材株式会社製のシルベルンZAG(登録商標)などのように、天然繊維や合成繊維に銀イオンを付着させた銀イオン糸を用いることも可能である。本明細書では、これらを総称して金属被膜糸と表記している。
【0043】
地組織として、例えば天竺編(平編)、リブ編(ゴム編、フライス編)、パール編、デンビー編(トリコット編)、アトラス編、コード編、あるいはそれらの変化組織などの編地で構成することができる。
【0044】
樹脂製接着シート8として、樹脂製接着シートが熱硬化性樹脂に微小金属粒子を分散させた異方性導電フィルムや、熱可塑性樹脂フィルムを好適に用いることができる。熱可塑性樹脂フィルムとして、例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂で構成されるフィルムを採用することができる。
【0045】
図1(a),(b)及び図2に戻って説明を続ける。本発明による導電性編地の電極接続構造10は、絶縁糸1aに導電糸2aが添糸編みされた導電性帯状部2と外部電極端子5とが接続領域CAで樹脂製接着シートを介して熱圧着される際に、接続領域CAで導電糸2aが地組織1に対してフロート編みされていると、溶融した樹脂がフロート編みされ導電糸2aの近傍で露出する地組織を構成する絶縁糸に浸潤するために大きなアンカー効果が生じ、導電糸2aと外部電極端子5とが電気的に接続された状態で地組織1と外部電極端子5とが十分な強度で接着されるようになる。
【0046】
熱圧着部は接続領域CAでフロート編みされた導電糸2aの浮き糸側の面で樹脂製接着シート8を介して外部電極端子5と熱圧着されていることが好ましいが、導電糸2aの浮き糸側の面とは反対側の面で熱圧着されていてもある程度の接着強度が得られる。なお、フロート編みのニットとミスのパターンについては特段の制限はないが、少なくとも一つのループのニットと複数ループのミスが繰り返されることが好ましい。
【0047】
図6(a)にはフロート編みされた導電糸2aの浮き糸側が現れる一方の面(便宜上、「表面」と表記する。)で樹脂製接着シート8を介して外部電極端子5と熱圧着される場合の導電性編地3の断面が示され、図6(b)にはフロート編みされた導電糸2aの浮き糸側の反対側である他方の面(便宜上、「裏面」と表記する。)で樹脂製接着シート8を介して外部電極端子5と熱圧着される場合の導電性編地3の断面が示されている。
【0048】
図6(b)に示すように、接続領域CAでフロート編みされた導電糸2aの反浮き糸側の面(裏面)では、ニットされた部位P1で溶融した樹脂の絶縁糸1aへの浸潤が導電糸2aによって妨げられる傾向にあるため、当該部位で地組織1への樹脂の浸潤が阻害され、十分なアンカー効果が発揮されないものの、ミスされた部位P2では溶融した樹脂が絶縁糸1aへ十分に浸潤するため、ある程度のアンカー効果が発揮される。この様な構成を採用した電極接続構造の例が図7(b)に示されている。
【0049】
なお、導電糸2aは金属糸または金属皮膜糸で構成されているため、芯が撚糸またはマルチフィラメント糸で構成されていても溶融した樹脂が容易に芯糸に浸潤することがなく、十分なアンカー効果が発揮されることはない。
【0050】
これに対して、図6(a)に示すように、接続領域CAでフロート編みされた導電糸2aの浮き糸側の面(表面)では、ニットされた部位P3が殆ど面上に露出しないため溶融した樹脂の絶縁糸1aへの浸潤が導電糸2aによって妨げられることがなく、ミスされた部位P4では溶融した樹脂が浮き糸となる導電糸2aの隙間を通過して絶縁糸1aへ十分に浸潤するため、より一層、十分なアンカー効果が発揮される。この様な構成を採用した電極接続構造の例が図7(a)に示されている。
【0051】
図6(c)には、絶縁糸1aと導電糸2aが添糸編み編成された導電性編地3の導電糸2aが現れる一方の面(表面)で樹脂製接着シート8を介して外部電極端子5と熱圧着される場合の導電性編地3の断面が示され、図6(d)には添糸編み編成された導電糸2aが隠れる他方の面(裏面)で樹脂製接着シート8を介して外部電極端子5と熱圧着される場合の導電性編地3の断面が示されている。
【0052】
図6(c)に示すように、導電糸2aが現れる表面では、接続領域CAで添糸編みされた導電糸2aによって絶縁糸1aへの樹脂の浸潤が妨げられるので、十分なアンカー効果が発揮されない。また、図6(d)に示すように、導電糸2aが隠れる裏面でも、絶縁糸1aに浸潤した樹脂が近傍の導電糸2aに妨げられて、厚み方向への樹脂の浸潤が妨げられるので、やはり十分なアンカー効果が発揮されない。
【0053】
従って、少なくとも接続領域CAで導電糸2aが地組織1に対してフロート編みされていることが重要となり、接続領域CA以外でも導電糸2aが地組織1に対してフロート編みされた導電性帯状部2が形成されていてもよい。
【0054】
図1(a)に示すように、導電性帯状部2の幅方向に沿って延在する基材21に導電性帯状部2の幅より小さな間隔で外部電極端子5が複数本(この例では5本)配列され、導電性帯状部2に複数本の外部電極端子5が熱圧着されていることが好ましい。
【0055】
外部電極端子5が導電糸2aと電気的に接触した状態で地組織1と電極5とが樹脂によって接着されるとともに、地組織1と電極5間に露出する基材21とが樹脂によって接着される。この例のように電極5が金などで被覆されるような場合に、仮に被覆部である金が銅パターンから一部剥離するようなことがあっても、基材21との間でも十分に接着されているので、剥離による電極5と導電糸2aとの導通不良を回避できる。
【0056】
また、複数本配列された外部電極端子5の両側に位置する外部電極端子5の外側同士の間隔は導電性帯状部2の幅より僅かに広いことが好ましい。精錬などの後処理が施された後の導電性編地3が伸縮し、導電性帯状部2の幅などが多少変動する様なことがあっても、接着時にその変動を吸収することが可能になる。
【0057】
なお、外部電極端子5が導電性帯状部2の幅と等しいか僅かに大きな幅で構成されていてもよい。
【0058】
また、隣接する導電性帯状部2の間に存在する地組織(図1(a)の符号CAで示す接合領域の間の地組織の領域)も樹脂製接着シート8を介してフレキシブルプリント基板20の基材21と接着されるように構成することが好ましく、導電性編地3とフレキシブルプリント基板20との間の接着強度を高めることができる。
【0059】
上述した実施形態では、導電性帯状部2の幅が8mm、隣接する導電性帯状部2の間の地組織1の幅が8mmの縞模様に形成された導電性編地3を説明したが、導電性帯状部2の幅及び導電性帯状部2の間の地組織1の幅は特に限定されることはなく、用途に応じて適宜設定すればよい。また、導電性帯状部2の本数も任意である。
【0060】
上述した実施形態では、地組織1を構成する絶縁糸1aとして、綿糸とポリウレタン弾性糸が添糸編み編成され、コース方向及びウェール方向に伸縮性が発現するように構成された導電性編地3を説明したが、低融点のポリウレタン弾性糸を用いて導電性編地3を編成し、後にヒートセットすれば、溶融したポリウレタン弾性糸の一部が編目に融着して解れ止め機能を備えた導電性編地3を実現できる。
【0061】
上述した実施形態では外部電極端子5がフレキシブルプリント基板20の基材21に形成された例を説明したが、導電性編地3に接続される外部電極端子5はフレキシブルプリント基板20に形成されたものに限ることはなく、剛性のあるプリント基板に形成された外部電極端子5であってもよい。
【0062】
上述した実施形態では、接続領域に、フロート編みで形成された浮き糸編成部を備え、添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に導電糸を表出させた例を説明したが、浮き糸編成部としてフロート編み以外にジャカード編みを採用することも可能である。
【0063】
また、浮き糸編成部によって添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に導電糸を表出させた例を説明したが、浮き糸編成部以外にタック編みを採用することにより、添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に導電糸を表出させることも可能であり、浮き糸編成部を含めた概念として導電糸表出編成部が形成されていればよい。
【0064】
以上説明したように、本発明による導電性編地の電極接続方法は、絶縁糸1aで編成された地組織1に編み込まれる金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸2aにより導電性帯状部2が形成された導電性編地3に外部電極端子5を電気的に接続する導電性編地の電極接続方法であって、絶縁糸1aに導電糸2aを添糸編みして導電性帯状部3を形成する導電性編地編成ステップと、導電性帯状部2と外部電極端子5との接続領域CAで樹脂製接着シート8を介して導電性帯状部3と外部電極端子5とを熱圧着する電極接続工程と、を備え、導電性編地編成ステップは、少なくとも接続領域CAで添糸編部の地組織の表出面の少なくとも一部に導電糸2aを表出させた導電糸表出編成部を形成するように構成されている。導電糸表出編成部を構成する編成法としてタック編みを採用することができる。また、フロート編みまたはジャカード編みを採用した浮き糸編成部により導電糸表出編成部を構成することも可能である。
【0065】
そして、電極接続工程は、接続領域CAに備えた導電糸表出編成部のうち導電糸2aの浮き糸側に樹脂製接着シート8を介して外部電極端子5と熱圧着するように構成されていることが好ましい。
【実施例
【0066】
以下に実験例を説明する。
綿糸とポリウレタン弾性糸を添糸編み編成される地組織1に、コース方向に導電糸2aを1ループニット、3ループミスの繰返しでフロート編みして、ヒートセットにより解れ止め処理し、ウェール方向に幅8mmの導電性帯状部2を形成したサンプルA,Bを製作するとともに、綿糸とポリウレタン弾性糸を添糸編み編成した地組織1に、同時に導電糸2aを添糸編み編成して、ヒートセットにより解れ止め処理し、ウェール方向に幅8mmの導電性帯状部2を形成した比較サンプルC,Dを製作した。
【0067】
サンプルAは導電糸2aである浮き糸が現れる表面に異方性導電フィルムを介してフレキシブル基板20に形成された外部電極端子5と接合し、サンプルBは導電糸2aである浮き糸が隠れる裏面に異方性導電フィルム8を介してフレキシブル基板20に形成された外部電極端子5と接合した。
【0068】
サンプルCは導電糸2aが現れる表面に異方性導電フィルムを介してフレキシブル基板20に形成された外部電極端子5と接合し、サンプルDは導電糸2aが隠れる裏面に異方性導電フィルム8を介してフレキシブル基板20に形成された外部電極端子5と接合した。
【0069】
図8(c)に示すように、それぞれ接合領域CAを挟んで、編地幅が9mmとなる矩形に裁断するとともに、編地の伸長特性を阻害するように編地に樹脂をコーティングした。引張試験機(IMADA社製の縦型電動計測スタンドMX-500NとデジタルフォースゲージZTS-100N)に上下掴み間隔2cmでセットして引張速度100mm/minで引っ張り試験を行ない、引張せん断接着強さを計測した。
【0070】
図8(a),(b)に示すように、比較サンプルC,Dに比較してサンプルA、Bの引張せん断接着強さが優れていること、さらにサンプルBよりサンプルAの引張せん断接着強さが優れていることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
絶縁糸で編成される地組織に編み込まれた金属糸または金属皮膜糸で構成される導電糸により導電性帯状部が形成された導電性編地に外部電極端子を電気的に強固に接続可能な導電性編地の電極接続構造を実現できる任意の用途に用いることができる導電性編地を提供できるようになる。
【符号の説明】
【0072】
1:地組織
1a:絶縁糸
2:導電性帯状部
2a:導電糸
3:導電性編地
4:熱圧着部
5:外部接続端子
8:樹脂製接着シート
10:電極接続構造
20:フレキシブルプリント基板
21:基材
CA:接続領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8