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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】車載装置および枠部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20230130BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230130BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230130BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20230130BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
B60R11/02 C
H04N5/64 521Z
G09F9/00 302
G09F9/00 362
H05K5/02 A
G01C21/26 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019097050
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020189600
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】安本 貴史
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202916(JP,A)
【文献】特開2006-160089(JP,A)
【文献】実開平07-004190(JP,U)
【文献】特開2000-222126(JP,A)
【文献】特開2002-087177(JP,A)
【文献】独国実用新案第202004012723(DE,U1)
【文献】特開2018-025509(JP,A)
【文献】特開2019-014350(JP,A)
【文献】特開2017-065355(JP,A)
【文献】特開2011-068284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
H04N 5/64
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の設置対象の表面と筐体の前面とが同一面となるように、前記設置対象に形成された嵌め込み部に前記筐体が嵌め込まれる車載装置であって、
前記筐体の前面内で中央部の領域の外側に形成された外枠領域に、前記設置対象を覆う車内カバーにおいて前記嵌め込み部の外縁に至る部分に形成された縫い目に連続するようにステッチ柄が描画され、
前記ステッチ柄は、透明材料が堆積した描画層および背景色の背景層が前記筐体の前面から奥へ向かって積層されると共に、前記描画層の内部に着色材料によって前記ステッチ柄の像が形成されることによって描画され、
前記描画層において、前記ステッチ柄の像と前記背景層との間に相当する部分には、前記透明材料のみが堆積したクリア層が形成される
ことを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記縫い目の状態に応じて、前記クリア層の奥行きの大きさを調整したことを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記縫い目の凹凸が大きいほど、前記クリア層の奥行きの大きさを大きくしたことを特徴とする請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記筐体の前面を覆う透明カバーの奥側の全域に前記描画層が形成され、前記描画層の奥側の前記外枠領域に前記背景層が形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記筐体の前面を覆う透明カバーの奥側の前記外枠領域に前記描画層が形成され、前記外枠領域に形成された前記描画層の奥側の全域に前記背景層が形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車載装置。
【請求項6】
車両内の設置対象の表面と本体の前面とが同一面となるように、前記設置対象に形成された嵌め込み部に前記本体が嵌め込まれる枠部材であって、
前記本体の前面に、前記設置対象を覆う車内カバーにおいて前記嵌め込み部の外縁に至る部分に形成された縫い目に連続するようにステッチ柄が描画され、
前記ステッチ柄は、透明材料が堆積した描画層および背景色の背景層が前記本体の前面から奥へ向かって積層されると共に、前記描画層の内部に着色材料によって前記ステッチ柄の像が形成されることによって描画され、
前記描画層において、前記ステッチ柄の像と前記背景層との間に相当する部分には、前記透明材料のみが堆積したクリア層が形成される
ことを特徴とする枠部材。
【請求項7】
前記縫い目の状態に応じて、前記クリア層の奥行きの大きさを調整したことを特徴とする請求項6に記載の枠部材。
【請求項8】
前記縫い目の凹凸が大きいほど、前記クリア層の奥行きの大きさを大きくしたことを特徴とする請求項7に記載の枠部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置および枠部材に関し、特に、ダッシュボード等の車両内の設置対象に嵌め込まれる車載装置および枠部材に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内のダッシュボード等の設置対象に形成された嵌め込み部に、その設置対象の表面と筐体の前面とが同一面となるように嵌め込まれて使用される車載装置が広く普及している。車載装置の一例は、映像を表示する表示部を有する車載用ディスプレイである。このような態様で車載装置が車両内に設置されることにより、例えば車載装置がダッシュボードの上面で専用の支持部材に支持される場合と比較して、車両と車載装置とに一体感が生まれ、車室に高級感が演出される。
【0003】
また、近年、ダッシュボード等が車内カバー(例えば、革製のカバー)により覆われている車両が多く存在する。これは、多くの場合、車室に高級感を演出するためになされるものであり、被覆対象の全域がその形状に沿って車内カバーに覆われるように適宜、縫い合わせられる。
【0004】
なお、車載装置の前面において中央部の領域の外側に外枠領域が形成されている場合があり、この外枠領域には固定的な図柄を描画することができる。そして、外枠領域に図柄を描画する場合、特許文献1や特許文献2に記載された技術を利用可能である。特許文献1では、前面側から奥へ向かって、透明基板層10、着色されたインクにより図柄が表現された図象表現層20、光反射性インクにより印刷された遮光性下地層40および不透明な着色インク等からなる裏打ち層50が積層されることによって図柄が描画される。また、特許文献2では、前面側から奥へ向かって、内部に着色模様4が形成された透明樹脂層3、光反射性を有する光反射層2、基材シート1が積層されることによって図柄が描画される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-225135号公報
【文献】特開平2-2200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車載装置が設置される対象となるダッシュボード等の設置対象が車内カバーで覆われ、適所に縫い目が形成されている場合、車載装置が嵌め込み部に嵌め込まれたときに、嵌め込み部においてその縫い目が断絶する場合があり、そのことが見た目の違和感となって、せっかく車載装置を面一となるように嵌め込み、更に設置対象をカバーで覆って高級感を演出しているのに、高級感が損なわれてしまうことがあった。以上のことは、枠部材とこの枠部材の内側に嵌め込まれるメイン装置とからなる装置が、嵌め込み部に嵌め込まれる場合についても同様である。なお、枠部材にメイン装置が取り付けられることによって構成される装置が存在し、このような装置については、枠部材を独立して嵌め込み部に嵌め込むことが可能である。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、車両内の設置対象の嵌め込み部に嵌め込まれる車載装置および枠部材について、車室の高級感が損なわれないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、車載装置について、筐体の前面内で中央部の領域の外側に形成された外枠領域に、設置対象を覆う車内カバーにおいて嵌め込み部の外縁に至る部分に形成された縫い目に連続するようにステッチ柄を描画するようにしている。そして、透明材料が堆積した描画層および背景色の背景層を筐体の前面から奥へ向かって積層すると共に、描画層の内部に着色材料によってステッチ柄の像を形成することによってステッチ柄を描画し、また、描画層において、ステッチ柄の像と背景層との間に相当する部分に、透明材料のみが堆積したクリア層を形成するようにしている。
【0009】
また、本発明では、枠部材について、本体の前面に、設置対象を覆う車内カバーにおいて嵌め込み部の外縁に至る部分に形成された縫い目に連続するようにステッチ柄を描画するようにしている。そして、透明材料が堆積した描画層および背景色の背景層を本体の前面から奥へ向かって積層すると共に、描画層の内部に着色材料によってステッチ柄の像を形成することによってステッチ柄を描画し、描画層において、ステッチ柄の像と背景層との間に相当する部分に、透明材料のみが堆積したクリア層を形成するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、車載装置の前面の外枠領域に、嵌め込み部の外縁に至る縫い目に連続するようにステッチ柄が描画されるため、嵌め込み部において縫い目が断絶しているとの見た目の印象が緩和され、その点で高級感が損なわれることを抑制できる。更に、ステッチ柄の像は、透明材料が堆積した描画層において、背景から前面側に向かってクリア層分の距離をおいた位置に形成される。このため、ステッチ柄が、背景から浮かび上がった立体的な図柄として表現され、平面的な印刷物との印象ではなく、立体的な造形物との印象を見る者に対して与え、物理的な凹凸を持つ縫い目と違和感なく連続し、その点でも車室の高級感が損なわれることを抑制できる。以上のことは枠部材についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車室の一例を示す図である。
図2図1の車室において、車載用ディスプレイが設けられた部位を正面から見た図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】第1態様および第2態様のそれぞれについての図2のB-B断面図である。
図5】嵌め込み部、枠部材およびメイン装置の一例を示す図である。
図6】枠部材が嵌め込み部に嵌め込まれた様子を正面から見た図である。
図7】描画層における絵柄層とクリア層との関係の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る車載用ディスプレイ1(特許請求の範囲の「車載装置」に相当)が設けられた車室2の一例を示す図である。本実施形態に係る車載用ディスプレイ1は、車両内のダッシュボード3(特許請求の範囲の「設置対象」に相当)に以下の態様で設置される。すなわち、ダッシュボード3の中央部には、車載用ディスプレイ1の形状に対応した溝を有する嵌め込み部4が形成されている。車載用ディスプレイ1は、ダッシュボード3の表面と筐体5の前面5aとが同一面となるように、その筐体5が嵌め込み部4に嵌め込まれることによってダッシュボード3に設置される。ダッシュボード3において、少なくとも嵌め込み部4を囲む領域には革製の車内カバー6が被覆されており、車内カバー6には、適所に縫い目7が形成されている。
【0013】
図2は、図1の車室2において、車載用ディスプレイ1が設けられた部位を正面から見た図である。図2を用いた説明では、図中で矢印により示すように、便宜的に図中で左に向かう向きを「左」とし、図中で右に向かう向きを「右」とする。図2に示すように、車内カバー6に形成された縫い目7の一部は、嵌め込み部4の外縁に至っている。詳述すると、図2において、嵌め込み部4の左側に形成されている縫い目7Lは、左右方向に延在し、その右側の端部が、嵌め込み部4の外縁の左辺と位置PLで交わっている。また、嵌め込み部4の右側の縫い目7Rは、左右方向に延在し、その左側の端部が、嵌め込み部4の外縁の右辺と位置PRで交わっている。
【0014】
図2に示すように、車載用ディスプレイ1の筐体5の前面5aには、映像が表示される最大の領域である映像表示領域8(特許請求の範囲の「筐体の前面内の中央部の領域」に相当)が形成されている。更に、前面5aにおいて映像表示領域8の外側には、映像表示領域8を取り囲む枠状の外枠領域9が形成されている。この外枠領域9に図柄を描画しても車載用ディスプレイ1により表示される映像に影響を与えないため、この外枠領域9には固定的な図柄を描画することができる。
【0015】
図2に示すように、外枠領域9において上側の枠には、ステッチ柄11が描画されている。このステッチ柄11は、縫い目7Lおよび縫い目7Rの双方に連続するように描画されている。より詳細には、ステッチ柄11は、その一端が縫い目7Lの端部の位置PLに連続し、その他端が縫い目7Rの端部の位置PRに連続し、縫い目7Lの端部と縫い目7Rの端部とを結ぶように、外枠領域9の上側の枠内を左右方向に延在して描画されている。
【0016】
このような態様でステッチ柄11が描画されているため、以下の効果を奏する。すなわち、仮にステッチ柄11が描画されていない場合、嵌め込み部4において縫い目7が断絶した状態となり、そのことが見た目の違和感となって、車載用ディスプレイ1とダッシュボード3との一体感が阻害され、車室2の高級感が損なわれる可能性がある。一方で、上記態様でステッチ柄11が描画されることにより、縫い目7Lと縫い目7Rとが車載用ディスプレイ1によって断絶されることなく、一連の縫い目7として連続しているような印象となり、車載用ディスプレイ1とダッシュボード3との一体感が演出され、車室2の高級感が損なわれることが抑制される。
【0017】
ステッチ柄11は以下の態様で描画されている。図3は、ステッチ柄11が描画された態様を説明するため、図2のA-Aの位置を、筐体5の前面5aから所定量だけ奥へ向かって切断した断面図である。図3では、複数の層(詳細は後述)を明示しているが、説明の便宜を考慮して、各層の奥行きの大きさの比を実際の比と異ならせている。ただし、以下において適宜、各層の具体的な大きさを例示する。
【0018】
図3において、符号12は、透明カバーである。透明カバー12は、ガラス板や透明の合成樹脂板等の、透明な板状の部材である。透明カバー12は、映像表示領域8および外枠領域9の双方を含む領域に延在している。透明カバー12の前面側にタッチセンサーを設ける構成でもよい。透明カバー12の奥行きの大きさは、数mm(例えば、1mm~2mm)程度である。図3に示すように、透明カバー12の奥側には描画層13が層として形成され、この描画層13の奥側には背景層14が層として形成され、この背景層14の奥側には押さえ層15が層として形成されている。
【0019】
背景層14は、外枠領域9の背景となる層であり、背景色(例えば、黒色や灰色)の物質により構成される。背景層14は、外枠領域9の全域に延在する一方、映像表示領域8には延在しない。背景層14は例えば、背景色のインクが堆積することによって構成され、また例えば合成樹脂シート等のシートによって構成される。背景層14の奥行きの大きさは、数十μm(例えば、20μm)程度である。
【0020】
押さえ層15は、透明カバー12を支持する枠状の部材からなる層である。押さえ層15は、外枠領域9に延在する一方、映像表示領域8には延在しない。透明カバー12は、押さえ層15に対応する枠状の部材に対して所定の手段で固定され、この枠状の部材に支持される。
【0021】
描画層13は基本的には、透明材料(例えば、透明なインク)が堆積されることによって構成される。一方、図3に示すように、外枠領域9においてステッチ柄11が描画される範囲では、描画層13内で、透明カバー12の奥側に絵柄層16が形成され、この絵柄層16の奥側にクリア層17が形成される。絵柄層16は、透明材料の内部に、ステッチ柄11の色で着色された着色材料(例えば、着色されたインク)によりステッチ柄11の像であるステッチ柄像11aが形成された層である。クリア層17は、透明材料のみが堆積した層である。このように、描画層13において、ステッチ柄像11aと背景層14との間に相当する部分には、透明材料のみが堆積したクリア層17が形成されている。描画層13の奥行きの大きさは、数十μm(例えば、20μm)程度である。
【0022】
以上のように、本実施形態では、ステッチ柄11は、透明材料が堆積した描画層13および背景色の背景層14が筐体5の前面5aから奥へ向かって積層されると共に、描画層13の内部に着色材料によってステッチ柄像11aが形成されることによって描画される。そして、描画層13において、ステッチ柄像11aと背景層14との間に相当する部分には、透明材料のみが堆積したクリア層17が形成される。このようにしてステッチ柄11が描画されるため、以下の効果を奏する。
【0023】
すなわち、ステッチ柄像11aが、透明材料が堆積した描画層13において、背景から前面5a側に向かってクリア層17分の距離をおいた位置に形成されることになる。このため、ステッチ柄11は、背景から浮かび上がった立体的な図柄として表現され、平面的な印刷物との印象ではなく、立体的な造形物との印象を見る者に対して与える。これにより、物理的な凹凸を持つ縫い目7と違和感なく連続し、その点でも車室の高級感が損なわれることを抑制できる。
【0024】
本実施形態では、縫い目7の状態に応じて、クリア層17の奥行きの大きさが調整される。特に本実施形態では、縫い目7の凹凸が大きいほど、クリア層17の奥行きの大きさが大きくされる。縫い目7の凹凸とは、縫い目7の縫い糸部分の膨らみや、車内カバー6が縫い糸によって抑えつけられることによって発生する凹み等に起因して発生する、車内カバー6の縫い目7部分の物理的な凹凸のことである。通常、縫い目7を形成する縫い糸が太いほど縫い目7の凹凸が大きくなり、また、縫い目7において縫い糸が強く縫い付けられているほど縫い目7の凹凸は大きくなる。
【0025】
縫い目7の凹凸が大きいほど、クリア層17の奥行きの大きさが大きくされることにより以下の効果を奏する。すなわち、クリア層17の奥行きの大きさが大きいほど、ステッチ柄像11aと背景との間の距離が離間し、ステッチ柄11について立体感が増して表現されることになる。これを踏まえ、上記構成によれば、縫い目7の物理的な凹凸が大きく、縫い目7の立体感が大きいほど、ステッチ柄11の立体感が大きくなり、縫い目7とステッチ柄11とがより違和感なく連続し、より効果的に車室の高級感が損なわれることを抑制できる。
【0026】
本実施形態では、描画層13および背景層14は以下の第1態様と第2態様との何れかの態様で形成される。図4(A)は、第1態様で描画層13および背景層14が形成されている場合の図2のB-B断面図(ただし、透明カバー12、描画層13および背景層14の部分のみの断面図)である。図4(A)に示すように、第1態様では、描画層13は、筐体5の前面5aを覆う透明カバー12の奥側の全域に形成される。そして、背景層14は、描画層13の奥側の外枠領域9に形成される。この第1態様によれば、透明カバー12の奥側において、描画層13および背景層14に起因して生じる映像表示領域8と外枠領域9との段差L(押さえ層15の部位を除く段差)の大きさを、第2態様の場合と比較して小さくすることができる。
【0027】
図4(B)は、第2態様で描画層13および背景層14が形成されている場合の図2のB-B断面図(ただし、透明カバー12、描画層13および背景層14の部分のみの断面図)である。図4(B)に示すように、第2態様では、描画層13は、筐体5の前面5aを覆う透明カバー12の奥側の外枠領域9に形成される。そして、背景層14は、描画層13の奥側の全域(つまり外枠領域9)に形成される。この第2態様によれば、段差Lの大きさは、第1態様の場合と比較して大きくなるものの、使用する透明材料の量を少なくすることができる。
【0028】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。上述した第1実施形態では、嵌め込み部4に嵌め込まれると共に、ステッチ柄11が描画される対象は車載用ディスプレイ1であった。一方で、本実施形態では、嵌め込み部4に嵌め込まれ、ステッチ柄11が描画される対象は枠部材20である。ここで、車両に搭載される装置では、枠状の枠部材20の枠内にメイン装置22が嵌め込まれて構成されるものがある。そして、このような装置が嵌め込み部4に嵌め込まれて使用される場合がある。図5は、嵌め込み部4、枠部材20およびメイン装置22の単純化した一例を模式的に示す図である。図5では、嵌め込み部4から枠部材20が取り外されており、かつ、枠部材20からメイン装置22が取り外された状態である。なお、図5では、枠部材20にステッチ柄は描画されていない。
【0029】
図6は、本実施形態に係る枠部材20が嵌め込み部4に嵌め込まれた様子を正面から見た図である。図6に示すように、本実施形態では、縫い目7に連続するステッチ柄11Aが枠部材20に描画される。ステッチ柄11Aが枠部材20に描画されるときの態様は、第1実施形態と同様である。簡単に説明すると、枠部材20の本体21の前面21aに、車内カバー6において嵌め込み部4の外縁に至る部分に形成された縫い目7に連続するようにステッチ柄11Aが描画される。ステッチ柄11Aは、透明材料が堆積した描画層13および背景色の背景層14が本体21の前面21aから奥へ向かって積層されると共に、描画層13の内部に着色材料によってステッチ柄11Aの像が形成されることによって描画される。そして、描画層13において、ステッチ柄11Aの像と背景層14との間に相当する部分には、透明材料のみが堆積したクリア層17が形成される。また、本実施形態では、第1実施形態と同様、縫い目7の凹凸が大きいほど、クリア層17の奥行きの大きさが大きくされる。
【0030】
本実施形態についても、第1実施形態と同様の理由により、枠部材20に描画されたステッチ柄11Aの機能により、室内の高級感が損なわれることを防止できる。
【0031】
以上、本発明の実施形態を2つ説明したが、上述した各実施形態は何れも、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0032】
例えば、第1実施形態では、描画層13内で、透明カバー12の奥側に絵柄層16が形成され、この絵柄層16の奥側にクリア層17が形成されていた。つまり、描画層13は、絵柄層16と、この絵柄層16の奥側に形成されたクリア層17の2つの層により構成されていた。この点に関し、図7に示すように、描画層13内で、透明カバー12の奥側に、透明材料のみが堆積してなる前面側層23が形成され、この前面側層23の奥側に絵柄層16が形成され、この絵柄層16の奥側にクリア層17が形成される構成でもよい。このような構成であっても、背景からクリア層17を挟んで離間した位置にステッチ柄11の像が形成されることになり、第1実施形態と同様の効果を奏する。以上のことは第2実施形態についても同様である。
【0033】
また、第1実施形態では、縫い目7の状態に応じて、クリア層17の奥行きの大きさを調整する点に関し、縫い目7の凹凸が大きいほど、クリア層17の奥行きの大きさを大きくした。しかしながら、縫い目7の状態に応じてクリア層17の奥行きの大きさを調整する手法は、第1実施形態で例示した手法に限られない。一例として、縫い糸の色とクリア層17の奥行きの大きさとに所定の関係(例えば、縫い糸の色が白系の色の場合は、縫い糸の色が黒系の色の場合よりもクリア層17の奥行きを大きくした方が縫い目7とステッチ柄11とに一体感がでる等)がある場合には、縫い糸の色によってクリア層17の奥行きの大きさを調整する構成でもよい。また、縫い目7には様々な種類(並縫いの縫い目や、ぐし縫いの縫い目等)があり、縫い目7の種類とクリア層17の奥行きの大きさとに所定の関係(例えば、縫い目7が種類Aの場合は、縫い目7が種類Bの場合よりもクリア層17の奥行きを大きくした方が縫い目7とステッチ柄11とに一体感がでる等)がある場合には、縫い目7の種類によってクリア層17の奥行きの大きさを調整する構成でもよい。以上のことは第2実施形態についても同様である。
【0034】
また、第1実施形態では、ダッシュボード3に嵌め込み部4が形成されていたが、車内において嵌め込み部4が形成される設置対象はダッシュボード3に限られない。例えば、メーターパネルであってもよい。以上のことは第2実施形態についても同様である。
【0035】
また、第1実施形態では、車載用ディスプレイ1にステッチ柄11が描画されていた。しかしながら、ステッチ柄11が描画される対象となる車載装置は、車載用ディスプレイ1に限られない。例えば、オーディオ装置や、放送受信装置であってもよい。
【0036】
また、第1実施形態では、ステッチ柄11を正面から見たときの様子の一例を示したが、ステッチ柄11を正面から見たときの具体的な態様は、縫い目7の形状や、縫い目7と嵌め込み部4との交点の位置等に応じて適宜設計されるべきものであり、第1実施形態で例示した態様に限定されるものではない。以上のことは第2実施形態についても同様である。
【符号の説明】
【0037】
1 車載用ディスプレイ(車載装置)
3 ダッシュボード(設置対象)
4 嵌め込み部
5 筐体
5a 前面(筐体の前面)
6 車内カバー
7、7L、7R 縫い目
8 映像表示領域(筐体の前面の中央部の領域)
9 外枠領域
11、11A ステッチ柄
11a ステッチ柄像(ステッチ柄の像)
12 透明カバー
13 描画層
14 背景層
17 クリア層
20 枠部材
21 本体
21a 前面(本体の前面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7