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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230130BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230130BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20230130BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20230130BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20230130BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/49
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/02
A61Q1/02
A61Q1/08
A61Q1/10
A61Q1/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017236768
(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2019104690
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-09-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 洋輔
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/024413(WO,A1)
【文献】特開2017-186323(JP,A)
【文献】特開昭63-139109(JP,A)
【文献】特開平10-306012(JP,A)
【文献】特表2005-514463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0377203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C)、
(A)エチルセルロース 0.2~3質量%
(B)総炭素数18~24の1価の液状アルコール 1.5~35質量%
(C)粉体 50~95質量%
を含有する固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)と(B)を、質量比(A):(B)が1:5~1:100の範囲で含有する請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
さらに、成分(D)として分子量が1100以下、かつ水酸基が1つ以上の液状のエステル油を含有する請求項1または2に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)と(D)を、質量比(B):(D)が1:15~20:1の範囲で含有する請求項3に記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
次の成分(A)~(C)、
(A)エチルセルロース 0.2~3質量%
(B)総炭素数18~24の1価の液状アルコール 1.5~35質量%
(C)粉体 50~95質量%
を含有する粉体基剤を、溶媒と混合してスラリー状とし、容器に充填した後に溶媒の一部又は全部を除去することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に化粧もち、耐衝撃性、発色の良さ、ケーキングのなさに優れた固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頬紅やアイシャドウなどの固形粉末化粧料は、粉体成分を主成分として油性成分を添加混合した化粧料基材を、皿等の容器に充填成型してなる化粧料であり、使用方法が簡便な上に携帯性にも優れるため、消費者に好まれている。しかし、固形粉末化粧料は、粉体成分が主成分であるため化粧もちが悪く、外部からの衝撃に弱いという問題があった。
そこで、化粧持ちを向上させる技術がこれまでにも開発されてきた。例えば、撥水撥油処理粉体と固形及び/又は半固形油剤を用いる技術(特許文献1参照)や、被膜形成剤を用いる技術(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-37213号公報
【文献】特開2001-72536公報
【文献】特開2014-101293号公報
【0004】
しかしながら、撥水撥油処理粉体と固形及び/又は半固形油剤を用いる技術では、化粧持ちは向上するものの、常温で粘調性のある油剤を使用するため、油剤が凝集しやすく、粉に均一に濡れないため、発色が満足できなかった。また小道具や指で何度も繰り返して使用されることにより、その表面が固く取れなくなる現象(ケーキング)を起こしやすい傾向があった。加えて皮膜形成剤を用いる技術では、化粧もちは向上するが、皮膜形成剤を製剤中に均一に分散させる必要があり、分散が不十分であると、ケーキングを起こしたり、発色が損なわれてしまい、満足のいくものが得られなかった。また耐衝撃性を向上させる技術としてはセルロース系水溶性高分子を用いる技術(特許文献3)があるが、油剤との分散性が悪く、分散不良を生じてしまうため、ケーキングを起こしやすい傾向ががあった。更に水溶性セルロースを用いているため、汗などに対して落ちやすく化粧もちに関して満足のいくものが得られなかった。このような背景から、化粧持ちに優れながら、連続使用時にケーキングすることなく、外部からの衝撃に強い固形粉末化粧料が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は化粧もちに優れ、ケーキングを起こすことなく、耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記実状に鑑み、本発明者は固形粉末化粧料では高分子の被膜形成剤の、粉体への分散性が悪く、局所的に粉体が凝集することによりケーキングが起きやすくなると仮定し、総炭素数18~24の1価の液状アルコールが粉体の分散性に優れることに着目し、鋭意検討を行った。その結果、総炭素数18~24の1価の液状アルコールと、これに相溶性の高い被膜形成剤であるエチルセルロースを用いることで、ケーキングすることなく、固形粉末化粧料の耐衝撃性が向上することを発見した。また驚くべきことに、エチルセルロースを加えることで総炭素数18~24の1価の液状アルコールの粉体への分散性がさらに良くなり、固形粉末化粧料の発色と化粧もちが大幅に向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(C)
(A)エチルセルロース
(B)総炭素数18~24の1価の液状アルコール
(C)粉体
を含有する固形粉末化粧料である。
【0008】
さらに、前記成分(A)の含有量が0.2~3質量%である固形粉末化粧料を提供するものである。
【0009】
さらに、前記成分(B)の含有量が5~35質量%である固形粉末化粧料を提供するものである。
【0010】
さらに、前記成分(A)と(B)は、質量比(A):(B)が1:5~1:100の範囲で含有される固形粉末化粧料を提供するものである。
【0011】
さらに、成分(D)として分子量が1100以下、かつ水酸基が1つ以上の液状のエステル油を含有する固形粉末化粧料を提供するものである
【0012】
さらに、成分(B)と(D)は、質量比(B):(D)が1:15~20:1の範囲で含有される固形粉末化粧料を提供するものである。
【0013】
成分(A)、(B)及び任意に(C)、(D)およびその他の成分を含有する粉体基剤を揮発性溶媒と混合しスラリー状とし、容器に充填した後に揮発性溶媒の一部又は全部を除去して得られる固形粉末化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は固形粉末化粧料に関し、更に詳しくは、発色が良く、化粧もちに優れ、ケーキングを起こすことがない、耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における成分(A)エチルセルロースは、Β-グルコースが縮合重合したセルロースのグルコース単位のヒドロキシル基の一部又は全部をエチルエーテルに置換したものである。これらの市販品としては、平均置換度が2.46~2.58のAQUALON EC N-7、14、50、100(以上、ASHLAND SPECIALTY INGREDIENTS社製)等がある。
【0016】
成分(A)は化粧もちに優れながらも、耐衝撃性に優れたを効果を発揮することができる。成分(A)は重合度により性状が異なるが、本発明における成分(A)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)が、好ましくは50000~215000の範囲であり、さらに好ましくは80000~140000の範囲である。この範囲であると、耐衝撃性、ケーキングを起こしにくい点においてより好ましい。また、本発明において成分(A)は、グルコース単位のエチルエーテル置換度が2以上のものであると、化粧もちがよく好ましい。
【0017】
本発明における成分(A)の含有量は0.2~3質量%(以下、「%」と表す)が好ましく、更に好ましくは0.5~1%である。この範囲であると、化粧もちと耐衝撃性の効果に優れる。
【0018】
本発明における成分(B)は総炭素数18~24の1価のアルコールであり、25℃で液状のものである。成分(B)は、特に限定されずに用いることができ、具体的には、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等があげられ、市販品としては、イソステアリルアルコールEX、リソノール18SP、リソノール20SP、リソノール24SP(以上、高級アルコール工業社製)、NOFABLE AO-85S(日油社製)、リカコール90B(新日本理化社製)等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明において成分(B)は、成分(A)を溶解するものであると、発色の良さ、ケーキングを起こしにくい点において好ましく、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールであるがことが特に好ましく用いられる。
【0019】
本発明における成分(B)の含有量は、5~35%が好ましく、更に好ましくは15~25%である。この範囲であると、発色の良さ、ケーキングを起こしにくさがより好ましい。
【0020】
本発明の固形粉末化粧料における、成分(A)と(B)は、質量比(A):(B)=1:5~1:100の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1:10~1:30である。この範囲であると、ケーキングのなさの点においてより好ましい。
【0021】
本発明の固形粉末化粧料における、成分(C)粉体は、一般的に化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、任意の無機又は有機粉体を使用することができる。具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、酸化セリウム、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、黒色401号、褐色201号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色203号、青色205号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、黄色4号、黄色5号、黄色202号(1)、黄色202号(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、橙色205号、橙色402号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号(1)、赤色105号(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号(1)、赤色231号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタン、酸化チタン被覆ガラスフレーク、アルミニウムパウダー、ポリエチレンテレフタレート積層末等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーパウダー、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマーパウダー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、N-アシルリジン等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの粉体は表面処理されたものを用いることもできる。表面処理剤としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、フッ素化合物、シリコーン系化合物、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、金属石鹸、界面活性剤、水溶性高分子等の通常公知のものを使用できる。
【0022】
本発明は粉体を主成分とするものであり、成分(C)の含有量は50~95%であり、より好ましくは70~85%である。また、本発明では、成分(C)として板状粉体を含むことが好ましい。板状粉体は、アスペクト比が10~400、さらには40~300のものが好ましい。これらの板状粉体を含有すると、粉体全体の嵩が高くなり、ケーキングを起こしにくい。板状粉体は成分(C)中に30%以上、更には50%以上含まれると、ケーキングのなさの点において好ましい。
【0023】
なお本発明において、粉体のアスペクト比とは、(平均粒子径)/(平均厚み)から算出された値であり、本平均粒子径および平均厚みは、走査型電子顕微鏡(KEYENCE社製のリアルサーフェイスビュー顕微鏡VE-7800)を用いて平均粒子径と平均厚さの測定を30個の粒子について行い、アスペクト比を算出した。
【0024】
本発明は、固形粉末化粧料の発色を向上させることから、成分(C)の粉末に着色剤を含むものであると、より本発明の効果を得ることができる。着色剤としては、上記した有機色素、黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄等の酸化鉄、コンジョウ、群青、カーボンブラック等、またこれらを複合化した複合粉体が挙げられる。中でも凝集の起こりやすい酸化鉄を含む着色剤で、効果を発揮することができる。
【0025】
本発明の固形粉末化粧料では成分(D)分子量が1100以下、かつ水酸基を1以上有する25℃で液状のエステル油を含有することができる。成分(D)は、特に限定されずに用いることができ、本発明において成分(A)との相溶性が高いために均一性が向上し、化粧もちの良さとケーキングのなさの点で好ましい。具体的には、リンゴ酸ジイソステアリル(分子量 639)、オレイン酸PEG-6ソルビタン(分子量 429)、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル(分子量 413)、トリイソステアリン酸ポリグリセリルー2(分子量 966)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(分子量 699)、イソステアリン酸ポリグリセリル-2(分子量 433)、セスキオレイン酸ソルビタン(分子量 413)等が挙げられる。これらの中でも化粧もちの観点からリンゴ酸ジイソステアリルもしくは、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルを用いることが好ましい。
【0026】
本発明における成分(D)の含有量は、1~20%が好ましく、更に好ましくは5~15%である。この範囲であると、ケーキングのなさ、化粧もちの点でより好ましい。
【0027】
本発明の固形粉末化粧料における成分(B)と(D)は、質量比(B):(D)=1:15~20:1で含有すると好ましく、さらに好ましくは1:8~8:1である。この範囲であると化粧もちとケーキングのなさの点においてより好ましい。
【0028】
また、本発明における固形粉末化粧料では、本発明を損なわない範囲において、上記成分(A)~(D)の他に、通常化粧料に使用される任意成分として、油性成分、水性成分、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、糖類、防腐剤、香料等を含有することができる。
【0029】
本発明における成分(B)および(D)以外の油性成分としては、化粧料に通常使用される油性成分であれば、特に限定されない。例えば、エチレンホモポリマー、(エチレン/プロピレン)コポリマー、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン、スクワレン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素油類、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、セチルアルコール等の固形の高級アルコール類、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコ-ル、ジカプリン酸プロピレングリコ-ル、ジカプリル酸プロピレングリコ-ル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、セバシン酸ジエチル、2-エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸エチル、ラノリン、等のエステル油類、メタクリル変性ポリシロキサン、アルキル変性メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン等のシリコーン油類、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば特に制限されず、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低級アルコール類、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられ、セルロース誘導体類、アルギン酸ソーダ、カラギーナン、クインスシードガム、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、ジェランガム、ポリビニルアルコール、カルボシキビニルポリマー、アルキル付加カルボシキビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸グリセリンエステル、ポリビニルピロリドン等の合成高分子類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0031】
界面活性剤としては、化粧料に一般に使用される界面活性剤であれば、いずれでも良く、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、非イオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸の無機及び有機塩、アルキルスルホン酸塩等、カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等、両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものが挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。
【0032】
保湿剤としては、例えば、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えば、α-トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えば、ビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0033】
本発明の固形粉末化粧料は、通常公知の方法で製造することができる。特に限定されず、例えば以下のような方法を挙げることができる。
(乾式成型法)成分(A)~(C)及びその他の任意成分を均一分散した化粧料基剤を、金皿や樹脂皿等の容器に充填し、圧縮成型する方法。
(湿式成型法)成分(A)~(C)及びその他の任意成分を均一分散した化粧料基剤を、水、エタノール、揮発性油や、非揮発性油等の溶媒と混合し、これを充填成型した後、溶媒を除去して成型する方法。
本発明の固形粉末化粧料では湿式成型法を用いて製造することで、本発明の効果を特に顕著に得ることができ、好ましい。
【0034】
湿式成型法に用いられる溶媒としては、非揮発性、揮発性のいずれも用いることができるが、常圧における沸点が260℃以下の揮発性溶媒が好ましく、具体的には、水性成分として水、もしくはエチルアルコール、イソプロピルアルコールのような低沸点アルコール、油性成分としてイソドデカン、イソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素油、低重合度のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の低沸点の鎖状もしくは環状シリコーン油、低沸点パーフルオロポリエーテル等の低沸点フッ素化合物等が挙げられ、これらは一種または二種以上を組み合わせて混合物として用いることができる。本発明においては、着色剤の制限を受けない点で、油性のものが好ましく用いられ、特にイソドデカン、軽質流動イソパラフィン等の揮発性有機溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒は、減圧吸引、加熱乾燥、加圧時に紙や不織布等の吸収体を用いた吸い取り除去、プレス型等に設けられた排出孔を通して除去する等の通常公知の方法を用いて除去することができる。本発明においては、溶媒の量が化粧料基剤100質量部に対し溶媒20~150質量部が好ましく、更には50~100質量部である。
【0035】
本発明の固形粉末化粧料は、特に限定されないが、ボディパウダー、ファンデーション、頬紅、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、等に用いることができ、特に発色のよさと化粧もちに優れることから、頬紅もしくはアイシャドウに用いることが好適である。その使用方法は、直接化粧料を塗布する他、指や、パフ、スポンジチップ、筆等の小道具を用いて塗布する等のいずれの方法でも使用することができる。
【実施例
【0036】
実施例1~18及び比較例1~7:頬紅
表1、2及び3に示す組成の頬紅を下記の製造方法により調製し、各試料を、(イ)化粧もち、(ロ)発色の良さ、(ハ)ケーキングのなさ、(ニ)耐衝撃性ついて下記評価方法にて評価し、その結果も併せて表中に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】

*1 ハイフィラーK-5(アスペクト比 5 松村産業社製)
*2 セリサイトFSE (アスペクト比15 三信鉱工社製)
*3 PDM-20L(アスペクト比75 トピー工業社製)
*4 TIMIRON STARLUSTER MP-115
(アスペクト比300 メルク社製)
*5 MR-7GC(綜研化学社製)
*6 リソノール24SP(高級アルコール工業社製)
*7 リソノール20SP(高級アルコール工業社製)
*8 NOVOL-LQ―JP(クローダジャパン社製)
*9 ハイノール 14SS(高級アルコール工業社製)
*10 コノール 2265(新日本理化社製)
*11 ハイマレートDIS(高級アルコール工業社製)
*12 コスモール41V(日清オイリオグループ社製)
*13 レオドール TW-O120V(花王社製)
*14 CETIOL SN-1(BASF社製)
*15 AQUALON EC-N14(ASHLAND社製)
*16 AQUALON EC-N7(ASHLAND社製)
*17 AQUALON EC-N100(ASHLAND社製)
*18 メトローズ SM-8000(信越化学工業社製)
*19 METOLOSE 65SH-4000(信越化学工業社製)
*20 SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
【0040】
A.成分(1)~(9)を均一に混合する。
B.成分(10)~(25)を120℃に加熱し、均一に混合する。
C.AにBを加え化粧料基材とし、化粧料基材100質量部に対し、イソドデカン約80質量部を添加して混合混錬し、混合物2.5gを金皿容器(2.5cm×2cm)×0.3cm)に充填する。
D.Cの表面に厚さ0.02mmのセルロース紙2枚を重ねた上から押し型を用い、2kgf/cm2にて圧縮成型しながらイソドデカン を4秒間吸引除去した後、70℃で8時間乾燥して頬紅(固形)を得た。
【0041】
(評価項目)
イ.化粧もち
ロ.発色のよさ
ハ. ケーキングのなさ
イ~ハの項目について、各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人が実施例1~18及び比較例1~7の頬紅を使用し、下記絶対評価基準にて7段階に評価し評点をつけ、各試料についてパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。イ.化粧もちに関しては、各試料を肌に塗布し、パネルに通常の生活を6時間してもらった後に涙や汗などで化粧膜がくずれていないか、ロ.発色の良さに関しては、各試料を肌に塗布した時に十分な発色が得られたかどうか、ハ.ケーキングのなさに関しては、各試料を指で往復60回なぞった後の試料表面状態が固化していないかどうかを評価した。
【0042】
絶対評価基準
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
【0043】
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点以上
〇 :3.5点以上~5点未満
△ :2点以上~3.5点未満
× :2点未満
【0044】
(評価項目)
ニ.耐衝撃性
実施例及び比較例の頬紅を30cmの高さからコンクリート床に自由落下を行い、頬紅が破損するまでの回数を数え、以下の判断基準に従って「耐衝撃性」を判定した。ここで破損とは、化粧料が粉々になってしまうと定義した。
(判定基準)
(判定):(破損までの落下回数)
◎ :5回で破損なし
○ :3~4回
× :1~2回
【0045】
表に示す結果から明らかな如く、実施例1~18の頬紅は、化粧もち、発色のよさ、ケーキングのなさ、耐衝撃性の全てにおいて良好なものであった。一方、成分(A)を配合しない比較例1は化粧もちと耐衝撃性の点で満足のいくものではなかった。また成分(A)の代わりにメチルセルロースを用いた比較例2及びヒドロキシプロピルセルロースを用いた比較例3では発色のよさとケーキングのなさの点で、トリメチルシロキシケイ酸を用いた比較例4ではケーキングのなさの点において満足のいくものではなかった。
一方、成分(B)を配合しない比較例5ではケーキングのなさの点において満足のいくものではなかった。成分(B)の代わりに総炭素数14のミリスチルアルコールを用いた比較例6では、発色のよさとケーキングのなさの点で満足のいくものではなく、また総炭素数22の固体であるベへニルアルコールを用いた比較例7ではケーキングのなさの点で満足のいくものではなかった。
【0046】
実施例19:アイシャドウ
(成分) (%)
1.タルク(アスペクト比 5)*1 残量
2.合成金雲母(アスペクト比 60)*21 10
3.マイカ(アスペクト比 60)*22 20
4.酸化チタン被覆マイカ(アスペクト比 300)*4 15
5.ホウケイ酸(Ca/Al)(アスペクト比 80)*23 10
6 窒化ホウ素(アスペクト比 10)*24 5
7.赤202号 1
8.黄色4号 1
9.メチルパラベン 0.2
10.カルナバロウ 0.5
11.リンゴ酸ジイソステアリル*11 8
12.ジメチルポリシロキサン*25 1
13.エチルセルロース*16 0.8
14.オクチルドデカノール*7 18
*21 ミクロマイカMK-200(片倉コープアグリ社製)
*22 MICA POWDER Y-2300(ヤマグチマイカ社製)
*23 マイクログラスメタシャイン MT1080RR(日本板硝子社製)
*24 SHP-3(水島合金鉄社製)
*25 KF-96-20CS (信越化学工業社製)
(製造方法)
A.成分(1)~(9)を均一に混合する。
B.成分(10)~(14)を120℃に加熱し均一に混合する。
C.AにBを加え化粧料基材とし、化粧料基材100質量部に対し、イソドデカン約100質量部を添加して混合混錬し、金皿容器に充填し、圧縮しながらイソドデカンを除去し、その後、70℃で8時間の乾燥し、アイシャドウを得た。

実施例19のアイシャドウは、化粧もち、発色のよさ、ケーキングのなさ、耐衝撃性の全てにおいて良好なものであった。
【0047】
実施例20:ボディパウダー
(成分) (%)
1.トリエトキシカプリリルシラン2%処理タルク
(アスペクト比 65)*26 残量
2.トリエトキシカプリリルシラン2%処理合成金雲母
(アスペクト比 58)*27 15
3.球状ナイロン*28 20
4.球状ポリエチレン*29 10
5.黄酸化鉄 0.1
6.酸化亜鉛 3
7.コンジョウ 0.1
8.トリエチルヘキサノイン*30 2
9.ミネラルオイル*31 1
10.セスキオレイン酸ソルビタン*32 1
11.エチルセルロース*17 0.5
12.トリメチルシロキシケイ酸*20 0.5
13.オクチルドデカノール*7 5
*26 JA-46R(浅田製粉社製)2%トリエトキシカプリルシラン処理
*27 PDM-10L(トピー工業)2%トリエトキシカプリリルシラン処理
*28 オルガソール2002(アトフィナジャパン社製)
*29 ミペロンPM-200(三井化学社製)
*30 T.I.O(日清オイリオ社製)
*31 KLEAROL WHITIE MINERAL OIL
(SONNEBORN社製)
*32 コスモール82V (日清オイリオ社製)
(製造方法)
A.成分(1)~(7)を均一に混合する。
B.成分(8)~(13)を120℃に加熱し均一に混合する。
C.AにBを加え混合し、パルペライザーを用いて粉砕し、金皿容器に充填し、圧縮成型してボディパウダーを得た。

実施例20のボディパウダーは、化粧もち、発色のよさ、ケーキングのなさ、耐衝撃性のすべてにおいて優れたものであった。
【0048】
実施例21:パウダーファンデーション
(成分) (%)
1.2%ジメチコン処理タルク(アスペクト比 65)*33 残量
2.2%ジメチコン処理合成金雲母(アスペクト比 58)*34 20
3.メタクリル酸メチルクロスポリマー*35 10
4.酸化チタン 10
5.酸化亜鉛 8
6.黄酸化鉄 0.2
7.赤酸化鉄 0.2
8.黒酸化鉄 0.1
9.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル*36 8
10.トリエチルヘキサノイン*30 4
11.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン*37 3
12.エチルセルロース*17 1.5
13.デシルテトラデカノール*6 15
*33 JA-46R(浅田製粉社製)2%ジメチコン処理
*34 PDM-10L(トピー工業社製)2%ジメチコン処理
*35 MR―7GC(綜研化学社製)
*36 UNINUL MC80(BASF社製)
*37 KF-56(信越化学工業社製)
(製造方法)
A.成分(1)~(8)を均一に混合する。
B.成分(9)~(13)を均一に混合する。
C.AにBを加え化粧料基材とし、化粧料基材100質量部に対し、軽質流動イソパラフィンを約80質量部添加して混合混錬し、金皿容器に充填し、圧縮しながらイソドデカンを除去し、その後、70℃で8時間の乾燥し、パウダーファンデーションを得た。

実施例21のパウダーファンデーションは、化粧もち、発色のよさ、ケーキングのなさ、耐衝撃性のすべてにおいて優れたものであった。
【0049】
実施例22:アイブロウ
(成分) (%)
1.2%ジメチコン処理タルク(アスペクト比 65)*33 残量
2.3%パーフルオロオクチルトリエトキシシラン処理セリサイト
(アスペクト比15)*38 20
3.メタクリル酸メチルクロスポリマー*20 10
4.酸化亜鉛 2
5.黒酸化鉄 20
6.黄酸化鉄 1
7.赤酸化鉄 1
8.ヒアルロン酸末 0.01
9.ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール*39 1
10.スクワラン*40 1
11.合成ワックス*41 1
12.エチルセルロース*18 1
13.パーフルオロメチルイソプロピルエーテル*42 2
14 オクチルドデカノール*7 2
15.リンゴ酸ジイソステアリル*11 8
*38 セリサイトFSE(三信鉱工社製)3%パーフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
*39 コスモール525 (日清オイリオ社製)
*40 精製オリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)
*41 CIREBELLE 108 (CIREBELLE社製)
*42 フォンブリン HC/04
(SOLVAY SPECIALTY CHEMICALS社製)
(製造方法)
A.成分(1)~(8)を均一に混合する。
B.成分(9)~(15)を120℃に加熱し、均一に混合する。
C.AにBを加え化粧料基材とし、化粧料基材100質量部に対し、軽質流動イソパラフィンを約50質量部添加して混合混錬し、金皿容器に充填し、圧縮しながらイソドデカンを除去し、その後、70℃で8時間の乾燥し、アイブロウを得た。

実施例22のアイブロウは、化粧もち、発色のよさ、ケーキングのなさ、耐衝撃性のすべてにおいて優れたものであった。