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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】読書灯
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/44 20170101AFI20230130BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20230130BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20230130BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20230130BHJP
   B60Q 3/60 20170101ALI20230130BHJP
   B60Q 3/50 20170101ALI20230130BHJP
   F21W 106/00 20180101ALN20230130BHJP
   F21W 107/20 20180101ALN20230130BHJP
   F21W 107/30 20180101ALN20230130BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230130BHJP
【FI】
B60Q3/44
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V29/503 100
F21V29/70
B60Q3/60
B60Q3/50
F21W106:00
F21W107:20
F21W107:30
F21Y115:10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018196402
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020062979
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100084261
【氏名又は名称】笹井 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隼
(72)【発明者】
【氏名】神永 曜命
(72)【発明者】
【氏名】小島 泰代
(72)【発明者】
【氏名】秋野 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】深山 瑛之
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130988(JP,A)
【文献】特開2008-037244(JP,A)
【文献】特開2016-066499(JP,A)
【文献】特開2015-072846(JP,A)
【文献】特開2012-074146(JP,A)
【文献】特開2011-154832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/44
F21V 19/00
F21V 29/503
F21V 29/70
B60Q 3/60
B60Q 3/50
F21W 106/00
F21W 107/20
F21W 107/30
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を含む灯体を備え、該灯体がブラケットを介して座席に取り付けられる読書灯において、
前記灯体は、前記光源の出射側とは反対側に突出して前記ブラケットにある受部に先端が係合する脚部を有し、
前記脚部は、軸状に形成され、その先端は前記軸状に形成された部位の外径を直径とする半球形であり、
前記灯体は、前記脚部の先端を支点として、前記光源の照射方向を調整可能に前記ブラケットに支持されたことを特徴とする読書灯。
【請求項2】
前記灯体は、前記光源を表側に配置するベースと、該ベースの表側前方で前記光源をその照射範囲を除いて取り囲むカバーとを組み合わせてなり、
前記脚部は、前記ベースの裏側で前記光源の光軸の延長線上に沿って突出したことを特徴とする請求項1に記載の読書灯。
【請求項3】
前記ベースは金属により一体に形成され、ヒートシンクを兼ねることを特徴とする請求項2に記載の読書灯。
【請求項4】
前記ベースは円盤状であり、表側の中心に前記光源が配置される一方、裏側の中心に前記脚部が設けられ、
前記カバーは半球形の椀状であり、外周の頂部に照射用の開口部が筒状に突出して設けられ、
前記ブラケットの正面側は、その内側に前記カバーの外周が摺動可能に当接するように形成され、前記開口部が移動可能に挿通するガイド口が設けられ、
前記ブラケットの背面側は、前記ベースの裏側を囲むように形成され、前記受部が設けられたことを特徴とする請求項2または3に記載の読書灯。
【請求項5】
前記ベースと前記カバーとは、前記ベースの外周縁に前記カバーの開口縁が合わさる状態に組み合わされ、何れか一方に設けられた係合部が他方に設けられた被係合部にスナップフィット係合することで互いに固定されることを特徴とする請求項2,3または4に記載の読書灯。
【請求項6】
前記光源は、基板上に実装された1つのLEDであり、
前記ベースの表側に、前記基板を位置決めするための位置決め手段が設けられたことを特徴とする請求項2,3,4または5に記載の読書灯。
【請求項7】
前記光源の前方に、該光源から入射した光を予め定めた方向ないし範囲に配光するレンズが、該レンズを保持するホルダーを介して配置され、
前記ホルダーは、前記位置決め手段により前記基板と共に位置決めされることを特徴とする請求項6に記載の読書灯。
【請求項8】
前記基板、前記レンズおよび前記ホルダーは、前記ベースと前記カバーとが固定されることにより、前記灯体内で互いに係合して位置決めされた状態で保持されることを特徴とする請求項7に記載の読書灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源を含む灯体を備え、該灯体がブラケットを介して座席に取り付けられる読書灯に関し、特に、鉄道車両用の座席に装備されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の読書灯は、例えば、鉄道車両用の座席の背凭れに設けられ、スポット光を乗客の手元に照射するものが知られている。一般に読書灯は、光源であるLEDと、スポット光を配光するレンズが、それぞれ球形の灯体に収められ、灯体はハウジング内に回転可能に支持されて、スポット光の照射方向を調整できるように構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-129354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の読書灯では、灯体が全周方向に回転しやすいように球形に形成されているため、灯体のみならず、灯体を支持するハウジングの大きさも嵩張るものとなる。よって、読書灯の実質的な配置スペースが大きくなり、座席の背凭れ内の限られたスペースにおける取り付け性に問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような従来技術が有する問題点に着目してなされたものであり、全体的にコンパクトに構成することができ、限られたスペースにおける取り付け性を良くすることができる読書灯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]光源(41)を含む灯体(11)を備え、該灯体(11)がブラケット(60)を介して座席(1)に取り付けられる読書灯(10)において、
前記灯体(11)は、前記光源(41)の出射側とは反対側に突出して前記ブラケット(60)にある受部(65)に先端が係合する脚部(22)を有し、
前記脚部(22)は、軸状に形成され、その先端は前記軸状に形成された部位の外径を直径とする半球形であり、
前記灯体(11)は、前記脚部(22)の先端を支点として、前記光源(41)の照射方向を調整可能に前記ブラケット(60)に支持されたことを特徴とする読書灯(10)。
【0007】
[2]前記灯体(11)は、前記光源(41)を表側に配置するベース(20)と、該ベース(20)の表側前方で前記光源(41)をその照射範囲を除いて取り囲むカバー(30)とを組み合わせてなり、
前記脚部(22)は、前記ベース(20)の裏側で前記光源(41)の光軸の延長線上に沿って突出したことを特徴とする前記[1]に記載の読書灯(10)。
【0008】
[3]前記ベース(20)は金属により一体に形成され、ヒートシンクを兼ねることを特徴とする前記[2]に記載の読書灯(10)。
【0009】
[4]前記ベース(20)は円盤状であり、表側の中心に前記光源(41)が配置される一方、裏側の中心に前記脚部(22)が設けられ、
前記カバー(30)は半球形の椀状であり、外周の頂部に照射用の開口部(31)が筒状に突出して設けられ、
前記ブラケット(60)の正面側は、その内側に前記カバー(30)の外周が摺動可能に当接するように形成され、前記開口部(31)が移動可能に挿通するガイド口(63a)が設けられ、
前記ブラケット(60)の背面側は、前記ベース(20)の裏側を囲むように形成され、前記受部(65)が設けられたことを特徴とする前記[2]または[3]に記載の読書灯(10)。
【0010】
[5]前記ベース(20)と前記カバー(30)とは、前記ベース(20)の外周縁に前記カバー(30)の開口縁(33)が合わさる状態に組み合わされ、何れか一方に設けられた係合部(34)が他方に設けられた被係合部(26)にスナップフィット係合することで互いに固定されることを特徴とする前記[2],[3]または[4]に記載の読書灯(10)。
【0011】
[6]前記光源(41)は、基板(40)上に実装された1つのLEDであり、
前記ベース(20)の表側に、前記基板(40)を位置決めするための位置決め手段(27)が設けられたことを特徴とする前記[2],[3],[4]または[5]に記載の読書灯(10)。
【0012】
[7]前記光源(41)の前方に、該光源(41)から入射した光を予め定めた方向ないし範囲に配光するレンズ(50)が、該レンズ(50)を保持するホルダー(53)を介して配置され、
前記ホルダー(53)は、前記位置決め手段(27)により前記基板(40)と共に位置決めされることを特徴とする前記[6]に記載の読書灯(10)。
【0013】
[8]前記基板(40)、前記レンズ(50)および前記ホルダー(53)は、前記ベース(20)と前記カバー(30)とが固定されることにより、前記灯体(11)内で互いに係合して位置決めされた状態で保持されることを特徴とする前記[7]に記載の読書灯(10)。
【0014】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の読書灯(10)は、光源(41)を含む灯体(11)を備え、該灯体(11)は、ブラケット(60)を介して座席(1)に取り付ける。灯体(11)には、光源(41)の出射側とは反対側に脚部(22)が突出している。脚部(22)は、軸状に形成され、その先端は前記軸状に形成された部位の外径を直径とする半球形である。この脚部(22)の先端は、ブラケット(60)にある受部(65)に対して係合する。そして、灯体(11)は、脚部(22)の先端を支点として、光源(41)の照射方向を調整可能にブラケット(60)に支持される。
【0015】
これにより、灯体(11)は、その全体形状を従来技術のように球形とする必要はない。すなわち、光源(41)の出射側とは反対側に関しては、少なくともその基準面より局所的に脚部(22)だけを突出させれば足りる。よって、灯体(11)の形状を、極力コンパクトに構成することが可能となり、灯体(11)を支持するブラケット(60)も小型化することができる。
【0016】
前記[2]に記載の読書灯(10)では、灯体(11)は、光源(41)を表側に配置するベース(20)と、該ベース(20)の表側前方で光源(41)をその照射範囲を除いて取り囲むカバー(30)とを組み合わせてなる。ここで脚部(22)は、ベース(20)の裏側で光源(41)の光軸の延長線上に沿って突出している。
【0017】
これにより、灯体(11)のうち特にベース(20)の構成に関して、脚部(22)の他は特に構成に拘る必要もなく簡略化することができる。また、ベース(20)の傾き中心である脚部(22)の先端が、そのまま光源(41)の光軸の回転中心となるため、光源(41)の照射方向の調整が直感的に分かりやすくなる。
【0018】
前記[3]に記載の読書灯(10)によれば、ベース(20)は金属により一体に形成され、ヒートシンクを兼ねている。これにより、光源(41)の放熱を効率良く行うことが可能となり、光源(41)の温度上昇を抑えることができる。
【0019】
前記[4]に記載の読書灯(10)によれば、ベース(20)は円盤状であり、その表側の中心に光源(41)が配置される一方、裏側の中心に脚部(22)が設けられている。このようにベース(20)は、基本的には光源(41)を配置できる簡単な形状でよく、嵩張らないように極力コンパクトに構成することができる。また、ベース(20)の表裏で光源(41)と脚部(22)が互いに中心で一致し、ここで脚部(22)は放熱フィンとしての役目も果たすため、よりいっそう放熱性を高めることができる。
【0020】
ベース(20)が簡単な円盤状であるのに対して、カバー(30)は、灯体(11)の内部空間を確保できる半球形の椀状であり、その外周の頂部に照射用の開口部(31)が筒状に突出している。かかるカバー(30)に対応して、ブラケット(60)の正面側を、その内側にカバー(30)の外周が摺動可能に当接するように形成することで、灯体(11)の正面側をなすカバー(30)を確実に保持することができる。
【0021】
ここでブラケット(60)の正面側には、その内側のカバー(30)の外周より突出する開口部(31)が移動可能に挿通するガイド口(63a)がある。そのため、ブラケット(60)の正面側が灯体(11)の動きを阻害することはなく、逆に、灯体(11)の動きを所望の範囲(ガイド口(63a))内に規制することができる。
【0022】
一方、ブラケット(60)の背面側は、ベース(20)の裏側を囲むように形成されており、当該部位に前記受部(65)が設けられている。このように、灯体(11)はブラケット(60)の正面側と背面側の間で、前記脚部(22)の先端を支点として変位可能に支持されている。
【0023】
前記[5]に記載の読書灯(10)によれば、ベース(20)とカバー(30)とは、ベース(20)の外周縁にカバー(30)の開口縁(33)が合わさる状態に組み合わされる。ここでベース(20)とカバー(30)は互いに組み合わさった状態で、何れか一方に設けられた係合部(34)が他方に設けられた被係合部(26)にスナップフィット係合することで固定される。よって、接着剤やネジ等の固着手段を用いる必要がなく、ベース(20)とカバー(30)のそれぞれの構造だけで容易に組み立てることができる。
【0024】
前記[6]に記載の読書灯(10)では、光源(41)は基板(40)上に実装された1つのLEDであり、ベース(20)の表側に、基板(40)を配置する際に位置決めするための位置決め手段(27)を設ける。これにより、灯体(11)内にて光源(41)を容易に配置することができる。なお、ベース(20)の表側に基板(40)を固着させる必要はない。
【0025】
前記[7]に記載の読書灯(10)では、光源(41)の前方に、光源(41)からの光が入射するレンズ(50)を、ホルダー(53)を介して配置する。ここでレンズ(50)は、ホルダー(53)によって保持することができ、レンズ(50)を通して、灯体(11)のカバー(30)にある開口部(31)から予め定めた方向ないし範囲に配光することができる。また、ホルダー(53)は、前記位置決め手段(27)によって、光源(41)の基板(40)と共に位置決めされる。よって、レンズ(50)およびホルダー(53)の取り付けを容易に行うことができる。
【0026】
前記[8]に記載の読書灯(10)によれば、基板(40)、レンズ(50)およびホルダー(53)は、ベース(20)とカバー(30)とが固定されることにより、灯体(11)内で互いに係合して位置決めされた状態で保持される。これにより、ベース(20)とカバー(30)とを組み合わせるだけで、その内部の構成部品もそれぞれの定位置で互いに係合し合う押圧力により固定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る読書灯によれば、全体的にコンパクトに構成することができ、限られたスペースにおける取り付け性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を分解して後方から示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を分解して前方から示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を前方から示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を後方から示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を示す正面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を示す背面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を示す右側面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を示す平面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体を示す底面図である。
図10図5のX-X線断面図である。
図11】本発明の実施の形態に係る読書灯のレンズを示す斜視図である。
図12】本発明の実施の形態に係る読書灯のレンズを示す正面図である。なお、便宜上レンズの出射面を上方に向けた状態を正面とする。
図13図12のXIII-XIII線断面図である。
図14】本発明の実施の形態に係る読書灯のレンズを示す右側面図である。
図15図14のXV-XV線断面図である。
図16】本発明の実施の形態に係る読書灯のレンズを示す平面図である。
図17】本発明の実施の形態に係る読書灯のレンズを示す底面図である。
図18】本発明の実施の形態に係る読書灯の灯体内におけるレンズの配光制御を示す断面図である。
図19】本発明の実施の形態に係る読書灯の別のレンズを示す斜視図である。
図20】本発明の実施の形態に係る読書灯の別のレンズを示す正面図である。なお、便宜上レンズの出射面を左側に向けた状態を正面とする。
図21】本発明の実施の形態に係る読書灯の別のレンズを示す左側面図である。
図22図21のXXII-XXII線断面図である。
図23】本発明の実施の形態に係る読書灯の別のレンズを示す平面図である。
図24】本発明の実施の形態に係る読書灯の別のレンズを示す底面図である。
図25】本発明の実施の形態に係る読書灯の別のレンズを示す背面図である。
図26】本発明の実施の形態に係る読書灯のブラケットを示す斜視図である。
図27】本発明の実施の形態に係る読書灯のブラケットを示す正面図である。
図28】本発明の実施の形態に係る読書灯のブラケットを示す背面図である。
図29図27のXXIX-XXIX線断面図である。
図30】本発明の実施の形態に係る読書灯のブラケットを示す左側面図である。
図31】本発明の実施の形態に係る読書灯のブラケットを示す右側面図である。
図32】本発明の実施の形態に係る読書灯のブラケットを示す平面図である。
図33】本発明の実施の形態に係る読書灯のブラケットを示す底面図である。
図34】本発明の実施の形態に係る読書灯を設けた座席を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1図34は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る読書灯10は、光源を含む灯体11を備え、該灯体11がブラケット60を介して座席1に取り付けられる照明具である。以下、読書灯10を、鉄道車両用の座席1に設けた場合を例に説明する。
【0030】
<灯体11の構成>
図1図2に示すように、読書灯10の主要部をなす灯体11は、光源を表側に配置するベース20と、該ベース20の表側前方で光源をその照射範囲を除いて取り囲むカバー30とを組み合わせてなる。灯体11には、光源の出射側とは反対側に突出して後述のブラケット60にある受部65(図29参照)に先端が係合する脚部22が設けられている。灯体11は、脚部22の先端を支点として、光源の照射方向(光軸の角度)を調整可能にブラケット60に支持される。
【0031】
ベース20は、全体的には円盤状であり、例えば、アルミニウム合金等の金属からダイカスト等によって一体に形成されている。ベース20は、熱伝導性に優れた金属から形成することで、光源の熱を放熱するヒートシンクを兼ねている。ベース20は、詳しくは、円盤状の表側が取付面21をなし、その裏側が開口する底浅な皿状であり、取付面21の裏側の中心に前記脚部22が設けられている。
【0032】
脚部22は、軸状に形成され、その先端は半球形であり、取付面21に対して垂直に裏側へ突出している。脚部22の先端は、取付面21の裏側を囲む周壁23の端縁(ベース20の裏側の基準面)よりも、側面視において周壁23と同程度の高さ分だけ外側に飛び出ている。また、周壁23の端縁には、側方に延出するフランジ24が設けられている。
【0033】
ベース20の裏側には、脚部22を中心として四方に延出し周壁23の内側に連なるリブ25が放射状に設けられている。各リブ25は、脚部22や周壁23の補強のみならず、放熱フィンとしての機能を担っている。図1において、隣り合う2つのリブ25の間の一区画では、周壁23とフランジ24が切り欠かれており、例えば、電流回路や光源制御回路等の関連部品を配置する取付スペースとなっている。この取付スペースに対向するフランジ24の一端側には、側方に突出する位置決めピン24aが設けられている。
【0034】
また、ベース20には、後述のカバー30に対してスナップフィット係合するための被係合部26が設けられている。被係合部26は、フランジ24の外周縁に沿って、前記リブ25が連なる位置ごとに配されている。本実施の形態では、4つのリブ25に対応して、同じく4つの被係合部26が配されている。被係合部26は、詳しくは図10に示すように、フランジ24の外周縁に、後述するカバー30側の係合部34である係合爪の先端が合致する被係合溝として設けられている。
【0035】
次に、カバー30は、全体的には半球形の椀状であり、例えば、プラスチック等の合成樹脂から金型により一体に形成されている。カバー30は、弾性変形が可能な合成樹脂から形成することで、後述する係合部34を弾発的に変形させることができる。カバー30の外周の頂部には、光源の照射範囲に合致した照射用の開口部31が筒状に突出して設けられている。図10に示すように、開口部31の内周側には、先端に向かって一段縮径する段部32が形成されている。
【0036】
カバー30は、ベース20の表側に被さるように組み合わされる。すなわち、カバー30の最外周である開口縁33が、ベース20のフランジ24の外周縁に合わさる状態に組み合わされ、何れか一方に設けられた係合部34が、他方に設けられた被係合部26にスナップフィット係合することで互いに固定される。よって、カバー30の開口縁33の内径は、ベース20のフランジ24の外径に密に合わさる大きさに設計されている。
【0037】
カバー30には、ベース20に対してスナップフィット係合するための係合部34が設けられている。係合部34は、開口縁33に沿って、前記被係合部26に合致する位置に複数並ぶように配されている。本実施の形態では、4つの被係合部26に対応して、同じく4つの係合部34が配されている。係合部34は、詳しくは図10に示すように、開口縁33に沿って、前記被係合部26である被係合溝に嵌合する係合爪として設けられている。
【0038】
係合部34である係合爪は、図1に示すように、開口縁33より内周側に爪先が突出する形状となっている。ここで爪先の背側は、前記被係合部26である被係合溝に弾発的に乗り上げるようにテーパー形状となっている。また、係合部34の両側には一対のスリットが切り欠かれており、係合部34を含む外周の一部が外側に弾性変形できるようになっている。
【0039】
<光源の構成>
次に、灯体11内において、ベース20の表側に配置される光源について説明する。光源は、LED基板40上に実装された半導体発光素子である1つのLED41である。LED基板40は、ベース20の取付面21の内側に収まる大きさの四角形に形成されている。LED41は、例えば、表面実装型のLEDチップが適している。LEDチップは一般的であるので詳細な説明は省略するが、LED基板40に対して直交する光軸を中心に所定角度の照射範囲で光を出射するタイプのものである。なお、発光色は灯具の用途や種類に応じて任意に選択できるものであるが、読書灯の場合は白色が適している。
【0040】
LED41は、灯体11内にてベース20の表側の定位置に保持する必要がある。そこで、ベース20の取付面21には、LED基板40を配置する際に位置決めするための位置決め手段が設けられている。すなわち、図2に示すように、取付面21には3つの突起27が設けられている。一方、LED基板40の周囲には、前記各突起27が合致して嵌る孔部42が設けられている。なお、ベース20には、LED基板40に対して外部の電源から給電するための配線を通す挿通孔28(図2参照)も設けられている。
【0041】
ベース20の取付面21とLED基板40との間には、リング状のパッキン43が介装され、パッキン43を介して互いに密着している。パッキン43は、例えば、非導電性シリコンゴム等の弾性材から一体的に形成される。パッキン43は、緩衝材としてLED基板40上の回路を保護したり、ベース20とLED基板40の密着性を高めて放熱性能を上げるための部材である。
【0042】
また、LED41の前方には、レンズ50が配置されている。レンズ50は、LED41から入射した光を予め定めた方向ないし範囲に配光するレンズ本体51を備えている。本実施の形態では、レンズ本体51だけでレンズ50を構成しているが、レンズ50は、その構成の一部としてレンズ本体51を備えるものでも良い。レンズ本体51は、ホルダー53を介してLED41の前方に配置されている。以下、レンズ50について詳述する。
【0043】
<レンズ50の構成>
図11図18に示すように、レンズ50そのものであるレンズ本体51は、図示した中実の椀状であり、例えば、アクリルやポリカーボネート等の透明材質により一体に形成されている。レンズ本体51は、底頂部に凹設され、その内側に対向して配置されるLED41からの光が入射する入射面510と、外周内側で入射面510より到達した光が全反射する反射面520と、入射面510と対向する上端で入射面510および反射面520より到達した光が外部に出射する出射面530とを備えている。
【0044】
図18に示すように、レンズ本体51において、椀状の底頂部にある入射面510は、LED41の光軸Lを中心とする底面をなす第1入射面511と、該第1入射面511を囲む側面をなす第2入射面512とからなる。第1入射面511は、LED41の光軸Lを中心とする同心円状でLED41側に凸となるアール断面状に形成されている。第1入射面511は、LED41からの光を、レンズ本体51内にて直進あるいは屈曲させて反射面520よりも内側を通過させ、出射面530のうち中心寄りの内側領域531に向かわせる。
【0045】
第2入射面512は、LED41の出射側を取り囲むように配置され、底頂部の凹部開口が前記第1入射面511の外周より若干広くなるテーパー断面状に形成されている。第2入射面512は、LED41からの光を、反射面520に向けて屈折させるが、かかる光を、次述する反射面520のうち出射面530に続く上端側(上側部分522)を除いた底頂部寄りの所定範囲521に限り配光するように形成されている。このような配光制御は、第2入射面512におけるテーパー角度によって予め設定されるものである。
【0046】
反射面520は、レンズ本体51の外周内側が、前記第2入射面512から入射した光を、出射面530のうち外側寄りの外側領域532に向けて全反射させる臨界反射面となったものである。ただし、前述したように第2入射面512から入射した光は、反射面520の全域に到達することはなく、反射面520のうち底頂部寄りの所定範囲521に対して限定的に到達する。ここで所定範囲521とは、具体的には例えば、レンズ本体51の全高のうち底頂部から2/3位までの高さ位置に相当する反射面520が該当する。
【0047】
反射面520は、一連の傾斜曲面をなしているが、所定範囲521の湾曲形状や傾斜角度の具体的な設計によって、全反射させた光を所望の方向や配光特性で出射面530より照射することができる。本実施の形態では、図18に示すように、反射面520の所定範囲521は、反射光をLED41の光軸Lとほぼ平行な方向に集光させる傾斜曲面に形成されている。なお、図13図15図18において、反射面520の所定範囲521とその上側部分522は、左右の一方だけに符号を付したが、全周に亘る部位であり、符号を付していない左右の反対側も該当する。
【0048】
出射面530は、LED41の光軸Lを中心とする同心円状で僅かに膨らむ湾曲断面状に形成されているが、このような形状に限らず平坦面としても良い。出射面530は、配光制御において中心寄りの内側領域531と、その周囲の外側領域532とに区画されているが、かかる区画は視認可能に分けられたものではない。内側領域531は、第1入射面511より入射した光を外部に直接出射する領域である。外側領域532は、第2入射面512より入射した光であって、反射面520の所定範囲521で全反射された光を外部に出射する領域である。
【0049】
図2図10に示すように、レンズ50は、ホルダー53を介してLED41の前方に配置される。ホルダー53は、レンズ50を保持する部材であり、全体的には円筒形で後端開口にフランジ54を備えており、例えば、プラスチック等の合成樹脂から金型により一体に形成されている。ホルダー53も、前述した位置決め手段によって、LED基板40と共に位置決めされる。すなわち、図1に示すように、ホルダー53のフランジ54には、ベース20にある各突起27が合致して嵌る孔部55が設けられている。
【0050】
レンズ本体51の外周外側には、ホルダー53の前端開口の縁(取付部位)に位置決めする段部(被取付部)52が設けられている。レンズ本体51の外周内側の反射面520のうち、この段部52よりも底頂部側に位置する下側部分が前記所定範囲521となる。なお、厳密に言えば反射面520であっても、段部52が連なる部分では全反射を維持することはできない。
【0051】
レンズ本体51の外周のうち段部52を含む上側部分522は、カバー30の開口部31の内周前方に嵌合して、段部52の上面が開口部31の内周にある段部32に係合する。また、レンズ本体51は、段部52の下面がホルダー53の前端開口の縁に係合する。このような状態でレンズ本体51は、ホルダー53と開口部31との間に保持される。なお、レンズ本体51は、段部52とその上側に位置する外周以外の箇所では、ホルダー53やカバー30とは接触していない。
【0052】
また、レンズ50において、ベース20に対して組み付ける向きが予め定められている場合、レンズ50およびホルダー53には、互いに組み付ける向きを規制する手段52a,56を設けると良い。すなわち、図1に示すように、レンズ50の段部52における1箇所には切欠52aが設けられている。一方、ホルダー53の開口端には、前記切欠52aが対応すべき向きとなる1箇所に、該切欠52aに合致する突起56が設けられている。
【0053】
切欠52aに突起56が合致しない向きでは、突起56がレンズ50の段部52に干渉することにより、レンズ50をホルダー53に組み合わせることができない。本実施の形態に係るレンズ50では、レンズ本体51の全周に亘って段部52を除き同一形状であり、特に向きは定められていないが、次述するレンズ50Aに関しては、レンズ50Aの向きを容易に定めることが可能となり、間違った向きでの組み付けを未然に防止することができる。
【0054】
<別のレンズ50Aの構成>
図19図25は、前記レンズ50と基本的な形状や大きさは共通するが、前記反射面520とは異なる反射面520Aを備えた変形例に係るレンズ50Aを示している。なお、前記レンズ50と同種の部位については同一符号を付して、重複した説明は省略する。本変形例に係るレンズ50Aも、同じホルダー53を介してLED41の前方に配置され、灯体11内に保持されるものである。
【0055】
レンズ50Aのレンズ本体51Aは、その外周のうち底頂部から少なくとも前記所定範囲521の途中にかけて、軸心と直交する横断面形状が多角形をなす複数の側面523を備えている。そして、各側面523の内側である反射面520Aによって全反射された光は、前記出射面530から前記多角形を外郭とする照射範囲に出射されるように構成されている。
【0056】
詳しく言えば、レンズ本体51Aの外周は、その底頂部(頂点)から4方向に等角に傾斜する4つの側面523を有するように形成されている。このような各側面523の内側となる反射面520Aによれば、前記入射面510の第2入射面512から到達した光を、四角形(正方形)に集光することが可能となり、前記出射面530からの配光を四角形(正方形)とすることができる。
【0057】
なお、本変形例では、レンズ50Aの構成として、その外周のうち底頂部から4方向に等角に傾斜する4つの側面523を有する構成としたが、レンズ50の具体的な構成は、本変形例に係るレンズ50Aに限らず、他に例えば、レンズ本体51の横断面形状を、三角形や五角形以上に設定しても良い。
【0058】
<ブラケット60の全体構成>
前述した読書灯10の主要部をなす灯体11は、ブラケット60を介して座席1に取り付けられる。ここで座席1は、例えば図34に示すように、2人分の座部2と背凭れ3が左右に並設された鉄道車両用の2人掛けであり、各背凭れ3の上端側の両側部のうち、それぞれ座席外側に位置する方の側部に読書灯10は設けられている。読書灯10は、その開口部31とその周囲を背凭れ3の表皮の外側に表出させた状態で、背凭れ3の内部のフレームに取り付けられている。
【0059】
図26図33に示すように、ブラケット60は、灯体11を変位可能に保持するものであり、灯体11を内側に収めるハウジング部61と、背凭れ3内部のフレームに固定する取付部66,67とを有している。ハウジング部61は、灯体11の照射面である開口部31を除き灯体11全体に囲む略円筒形であり、例えば、金属材によって形成されている。
【0060】
ハウジング部61は、略円筒形の外周壁62と、外周壁62の正面側開口を覆う正面壁63と、外周壁62の後面側開口を囲む背面壁64からなる。外周壁62の内径は、前記灯体11が変位可能な状態に収まる大きさに設定されている。正面壁63は、その内側にカバー30の外周が摺動可能に当接するように形成され、開口部31が移動可能に挿通するガイド口63aが設けられている。
【0061】
ガイド口63aは上下方向に延びており、ガイド口63aの上下端の内径および横幅は、開口部31の外径より若干大きく形成されている。また、ガイド口63aの周縁は、金属ではなく合成樹脂製の別パーツとして構成しても良い。さらに、ガイド口63aの周縁の内側には、カバー30の外周に弾発的に当接させる押さえ用のモケット等を設けても良い。なお、灯体11をハウジング部61内に収めるときは、正面壁63を後から取り付ければ良い。
【0062】
背面壁64は、灯体11のベース20の裏側を囲むものであるが、全体が円板形ではなく、中央部分より放射状に複数の支持板が延びる形状となっている。この背面壁64の中央部分に、ベース20の裏側にある脚部22の先端が係合する受部65が設けられている。図29に示すように、受部65は、丸孔を穿設した箇所に樹脂製のグロメットを嵌め込んで形成されている。ただし、受部65の構成はこれに限るものではなく、脚部22の先端が係合して支点になり得るものであれば、他の構造でもかまわない。
【0063】
ハウジング部61に収められた灯体11は、受部65に係合している脚部22の先端を支点として、LED41の照射方向を調整することができる。ここで灯体11は、脚部22の先端を回転中心として、開口部31の向きを上下左右斜め方向と様々な方向に変位できるが、本実施の形態では、開口部31は上下に延びるガイド口63a内を案内される。よって、灯体11の変位は、脚部22の先端を回転中心とした上下方向への揺動に規制され、LED41の照射方向を上下に調整可能となっている。
【0064】
以上のようにハウジング部61の内部では、正面壁63の内側に対して、灯体11のカバー30の外周が摺動可能に当接しており、また、外周壁62によって灯体11全体の外周は囲まれ、さらに、背面壁64の受部65に、灯体11のベース20より突出した脚部22の先端が係合している。このように灯体11は、ブラケット60の正面壁63と背面壁64の間で、脚部22の先端を支点として変位可能に支持され、支持状態における摩擦力によって姿勢が保持される。
【0065】
また、灯体11の開口部31が、ブラケット60のガイド口63a内を案内されるのとは別に、ベース20にある位置決めピン24aも、後述する取付部66等にある長孔66a(図26参照)に案内されている。ただし、位置決めピン24aの長孔66aによる案内は必ずしも必要ではなく、主に灯体11の上下位置を容易に認識するための役割を果たしている。
【0066】
ブラケット60の取付部66,67は、背凭れ3内部のフレームに固定するためのものであり、ハウジング部61とは別体として構成され後付けされている。取付部66,67は、背凭れ3内部で取り付けるフレームの位置や形状に応じて、様々な大きさや形状に金属材で加工されたものである。取付部66,67の数も、2つに限定されることはない。なお、取付部66,67ではないが、附帯的な構造として、ハウジング部61の正面壁63側には庇部68が設けられている。この庇部68は、読書灯10を配置する背凭れ3表面の形状に応じて取付箇所に生じる隙間を隠すための部位である。
【0067】
<読書灯10の特徴的な作用>
次に、本実施の形態に係る読書灯10における特徴的な作用について説明する。
図29に示すように、灯体11のベース20の裏側には脚部22が突出しており、この脚部22の先端は、ハウジング部61にある受部65に係合している。灯体11は、脚部22の先端を支点として、ハウジング部61内で揺動可能であり、LED41の照射方向を調整することができる。このような灯体11によれば、その全体形状を従来技術のような球形とする必要はない。
【0068】
図10に示すように、灯体11のベース20に関しては、基本的には表側にLED41を配置できる円盤状の簡単な形状で良く、その裏側の基準面より局所的に脚部22だけを突出させれば足りる。よって、灯体11を嵩張らないコンパクトな形状にすることが可能となり、灯体11を支持するブラケット60も小型化することができる。なお、ベース20の表側に組み合わされたカバー30によって、灯体11の内部空間は確保される。
【0069】
図29に示すように、ブラケット60の正面壁63は、その内側にカバー30の外周が摺動可能に当接するように形成されており、灯体11の正面側をなすカバー30を確実に保持することができる。カバー30の外周の頂部には、照射用の開口部31が筒状に突出しており、開口部31は、正面壁63にある上下方向にガイド口63aに移動可能に挿通している。
【0070】
よって、灯体11の揺動は、脚部22の先端を回転中心とした上下方向に規制され、LED41の照射方向は上下方向にのみ調整することができる。灯体11の開口部31は、正面壁63のガイド口63aより外部に突出しており、この開口部31が、そのまま灯体11を手で動かすための操作部となる。ここでベース20の傾き中心となる脚部22の先端が、そのままLED41の光軸の回転中心となるため、LED41の照射方向の調整が直感的に分かりやすい。
【0071】
また、ベース20は金属により一体に形成され、ヒートシンクを兼ねている。これにより、発光により加熱するLED41とLED基板40の放熱を効率良く行うことが可能となり、LED41とLED基板40の温度上昇を抑えることができる。ベース20の表側の中心に配されたLED41と、ベース20の裏側で特に放熱フィンの役目を果たす脚部22とは、ベース20の表裏で互いに位置が一致しており、しかも、脚部22の周囲には複数のリブ25が放射状に連なっているため、よりいっそう放熱性を高めることができる。
【0072】
<読書灯10の組み立て>
次に、本実施の形態に係る読書灯10の組み立てについて説明する。
読書灯10の主要部をなす灯体11を組み立てるには、図1図2に示すように、ベース20の取付面21に、先ずはLED基板40を配置する。取付面21には、位置決め手段としての突起27がある。この突起27に対して、LED基板40の孔部42が嵌るように合わせれば、LED基板40上のLED41を容易に位置決めすることができる。このとき、ベース20の取付面21とLED基板40との間には、パッキン43を介装させる。
【0073】
続いて、ベース20の取付面21上で、レンズ50を保持したホルダー53を、LED基板40の上から重ね合わせるように配置する。ホルダー53にも、各突起27が嵌る孔部55があるため、ホルダー53およびレンズ50も容易に位置決めすることができる。このとき、ホルダー53をLED基板40上に接着したり、レンズ50をホルダー53に接着しておく必要はない。
【0074】
最後に、カバー30を、レンズ50のホルダー53の上からベース20に被せるように組み合わせる。ここでカバー30の開口縁33を、ベース20のフランジ24の外周縁に合致させるが、カバー30にある係合部34がベース20にある被係合部26にスナップフィット係合することで互いに固定される。よって、灯体11の組み立てに際しては、接着剤やネジ等の固着手段を用いる必要がなく、ベース20とカバー30のそれぞれの構造だけで容易に組み合わせることができる。
【0075】
スナップフィット係合については、詳しくは図10に示すように、カバー30の係合部34である係合爪は、その爪先がベース20のフランジ24の外周縁に乗り上がるように弾性変形しつつ拡開する。そして、係合部34の爪先が、被係合部26である被係合溝に至ると、係合爪は元の状態に復帰しつつ被係合溝に嵌入することで、スナップフィット係合する。
【0076】
このように、単にベース20上にカバー30を被せるように合わせる動作だけで、係合部34を工具等で別途変形させる等の余計な作業を行うことなく、前記動作に伴って自然とスナップフィット係合も完了する。しかも、ホルダー53内のレンズ50は、その外周の段部52より上側の部分が、カバー30の開口部31の内周に嵌合し、段部52の上面が開口部31の内周の段部32に係合する。このような状態でレンズ本体51は、ホルダー53と開口部31との間に保持される。
【0077】
組み合わされた灯体11内では、レンズ50およびホルダー53だけでなく、LED基板40やパッキン43も互いに係合して位置決めされた状態で保持される。これにより、ベース20とカバー30を組み合わせるだけで、その内部の構成部品もそれぞれの定位置で互いに係合し合う押圧力により固定することができる。また、レンズ50の出射面530は、開口部31に合致してこれを塞ぐものであり、開口部31を覆う透明な保護カバー等を別途用意する必要はない。
【0078】
<読書灯10の使用>
以上のように組み立てられた灯体11は、前述したようにブラケット60のハウジング部61に収納されることで読書灯10が完成する。このように、灯体11はブラケット60と共に、読書灯10の一ユニットとして扱われる。そして、読書灯10は、ブラケット60の取付部66,67を介して、座席1の背凭れ3内のフレームに固定されることにより、着座者の使用に供されることになる。
【0079】
読書灯10を使用する場合、光源であるLED41を図示省略したスイッチによって点灯させる。そして、LED41の照射方向を調整するには、ハウジング部61の外部に突出している開口部31に指を掛けて、灯体11を静止状態に保持している前述の摩擦力に勝る操作力で押せば良い。このとき、灯体11は、ベース20の脚部22の先端を回転中心として上下方向へ揺動するため、所望の照射方向に揺動した時点で、開口部31から手を離すことにより、当該位置に停止させることができる。
【0080】
<レンズ50,50Aの配光制御>
次に、読書灯10の構成部品のうち、特に特徴的なレンズ50の光学特性についても説明する。図18に示すように、本レンズ50によれば、レンズ本体51によって、LED41から入射した光を予め定めた方向ないし範囲に配光する。LED41からの光は、レンズ本体51の底頂部に凹設された入射面510から効率良くレンズ本体51内部に取り込まれる。ここでLED41からの光は、入射面510に対する角度に応じて直進あるいは屈曲して、レンズ本体51内部を通過する。
【0081】
詳しく言えば、入射面510は、凹部の底面をなす第1入射面511と、凹部の側面をなす第2入射面512とからなり、それぞれ配光特性が異なる。これにより、LED41からの光を効率良く利用することができる。第1入射面511より入射した光は、レンズ本体51内で反射面520よりも内側を通るように直進あるいは屈曲して、出射面530の内側領域531から外部に出射する。
【0082】
また、第2入射面512より入射した光は、レンズ本体51内で反射面520のうち底頂部寄りの所定範囲521に向かって直進あるいは屈曲する。そして、反射面520の所定範囲521によって全反射された光は、LED41の光軸Lとほぼ平行な方向に集光されて、出射面530の外側領域532から外部に出射する。
【0083】
このように第2入射面512は、LED41からの光を反射面520に向けて屈折させるが、反射面520の全域ではなく底頂部寄りの所定範囲521に限って配光する。かかる配光制御によれば、乗客が開口部31を塞ぐ出射面530を斜めから見たとしても、意図的に正面から深く奥まで覗き込まない限りは、反射面520の最奥側にある所定範囲521まで目に入ることはない。よって、レンズ本体51の全反射面520のうち、通常の視界に入るのは光を反射させない上側部分522だけとなり、不快な眩しさを抑えることができる。
【0084】
ところで、読書灯10による光の照射範囲は、着座者の読む雑誌や座席テーブルの形に合わせた四角形で足りるが、従来一般の読書灯においては、四角形を網羅する円形の配光がなされていた。このような円形の配光である場合、円形に内接する四角形の各辺外側にて弦と弧の間の弓形部分での配光が余分なものとなる。
【0085】
このような余分な配光は、特に鉄道車両用の座席1に適用される読書灯10においては、座席1の横の通路や前方座席の乗客に向かってしまう等の問題があった。そこで、余分な光を遮る方法ではなく、前述したように、レンズ50A自体の工夫により、照射範囲を元から四角形に配光することにより、LED41からの光を無駄にすることなく効率良く利用することができる。
【0086】
詳しく言えば、レンズ本体51Aの外周は、その底頂部(頂点)から4方向に等角に傾斜する4つの側面523を有している。このような各側面523の内側である反射面520Aによれば、前記入射面510の第2入射面512から到達した光を、四角形(正方形)に集光することが可能となり、前記出射面530から四角形(正方形)の配光を実現することができる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、読書灯10を設ける座席1は鉄道車両用に限定されることはなく、航空機や船舶等の他の乗物用に座席であっても良い。また、座席1に直接設けることなく、座席1に対応するように付近の天井や側壁等に設けても良い。
【0088】
また、読書灯10を構成する灯体11やブラケット60等の具体的な形状は、図示したものに限定されることはない。また、灯体11に含まれるLED41とその基板40に関しても、他にも様々に形状のものを採用することができる。また、光源の照射方向の調整は、上下方向に限られることなく必要に応じて左右方向にしたり、あるいは360度の全周方向に調整できるように構成しても良い。
【0089】
また、灯体11においては、カバー30に係合部34を設け、ベース20に被係合部26を設けたが、逆の態様として、カバー30に被係合部26を設け、ベース20に係合部34を設けるように構成してもかまわない。ここで、係合部34は爪状のものに限られることはなく、また、被係合部26も前記爪が嵌入する溝状のものに限られることはない。
【0090】
さらに、読書灯10の構成部品のうち、特に特徴的なレンズ50,50Aに関しては、その全体形状のほか、入射面510、反射面520,520Aとその所定範囲521、それに出射面530の具体的な形状や構成は、図示したものに限定されることはなく、適宜変更が可能である。また、レンズ50,50Aは、読書灯10に限らず他の様々な照明装置の光学部品として利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、鉄道車両、航空機、自動車、船舶等の乗物用の座席の読書灯として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…座席
2…座部
3…背凭れ
10…読書灯
11…灯体
20…ベース
21…取付面
22…脚部
26…被係合部
30…カバー
31…開口部
32…段部
33…開口縁
34…係合部
40…LED基板
41…LED
50,50A…レンズ
51,51A…レンズ本体
510…入射面
511…第1入射面
512…第2入射面
520,520A…反射面
521…所定範囲
522…上側部分
523…側面
530…出射面
531…内側領域
532…外側領域
52…段部
53…ホルダー
60…ブラケット
61…ハウジング部
62…外周壁
63…正面壁
64…背面壁
65…受部
66,67…取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34