(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/123 20060101AFI20230130BHJP
F16F 7/116 20060101ALI20230130BHJP
F16F 15/30 20060101ALI20230130BHJP
F16H 45/02 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
F16F15/123 A
F16F7/116
F16F15/30 Z
F16H45/02 Y
(21)【出願番号】P 2019027540
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 真彦
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212568(JP,A)
【文献】特開2017-082981(JP,A)
【文献】実開平01-036739(JP,U)
【文献】特開昭62-200032(JP,A)
【文献】特開昭61-286616(JP,A)
【文献】特開2015-081623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/123
F16F 7/116
F16F 15/30
F16H 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達経路の回転部材に装着され、振動を減衰するダイナミックダンパ装置であって、
前記回転部材に装着され、複数の収容部を有する第1回転体と、
前記第1回転体を挟んで軸方向に対向する第1及び第2プレートを有し、前記第1及び第2プレートは前記第1回転体と相対回転可能であって前記複数の収容部に対応して配置された複数の支持部を有する、第2回転体と、
前記第2回転体に設けられた慣性体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結するものであって、前記複数の収容部及び支持部に配置された複数の弾性部材を有し、第1捩り角度領域では第1捩り剛性を有するとともに前記第1捩り角度領域より大きい第2捩り角度領域では前記第1捩り剛性より低い第2捩り剛性を有するダンパ部と、
を備え
、
前記第1捩り角度領域は前記第2捩り角度領域よりも広い、
ダイナミックダンパ装置。
【請求項2】
動力伝達経路の回転部材に装着され、振動を減衰するダイナミックダンパ装置であって、
前記回転部材に装着され、複数の収容部を有する第1回転体と、
前記第1回転体を挟んで軸方向に対向する第1及び第2プレートを有し、前記第1及び第2プレートは前記第1回転体と相対回転可能であって前記複数の収容部に対応して配置された複数の支持部を有する、第2回転体と、
前記第2回転体に設けられた慣性体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結するものであって、前記複数の収容部及び支持部に配置された複数の弾性部材を有し、第1捩り角度領域では第1捩り剛性を有するとともに前記第1捩り角度領域より大きい第2捩り角度領域では前記第1捩り剛性より低い第2捩り剛性を有するダンパ部と、
を備え、
前記複数の弾性部材のうちの少なくとも1つの弾性部材は、前記第2捩り角度領域において作動が停止す
る、
ダイナミックダンパ装置。
【請求項3】
動力伝達経路の回転部材に装着され、振動を減衰するダイナミックダンパ装置であって、
前記回転部材に装着され、複数の収容部を有する第1回転体と、
前記第1回転体を挟んで軸方向に対向する第1及び第2プレートを有し、前記第1及び第2プレートは前記第1回転体と相対回転可能であって前記複数の収容部に対応して配置された複数の支持部を有する、第2回転体と、
前記第2回転体に設けられた慣性体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結するものであって、前記複数の収容部及び支持部に配置された複数の弾性部材を有し、第1捩り角度領域では第1捩り剛性を有するとともに前記第1捩り角度領域より大きい第2捩り角度領域では前記第1捩り剛性より低い第2捩り剛性を有するダンパ部と、
を備え、
前記第1回転体は、前記回転部材に連結されるボスと、前記ボスから径方向外方に延び複数の前記収容部を有するフランジと、を有し、
前記第1及び第2プレートは、前記フランジを挟んで軸方向に対向して配置されており、
前記慣性体は前記第1プレートの外周部に固定されてい
る、
ダイナミックダンパ装置。
【請求項4】
前記第1捩り角度領域と前記第2捩り角度領域とは連続している、請求項
1から3のいずれかに記載のダイナミックダンパ装置。
【請求項5】
複数の収容部は、円周方向に並べて配置された第1収容部及び第2収容部を有し、
前記複数の支持部は、前記第1収容部に対して軸方向視で一部が重なるようにかつ円周方向第1側にオフセットして配置された第1支持部と、前記第2収容部に対して円周方向第2側にオフセットして配置された第2支持部と、を有する、
請求項1から4のいずれかに記載のダイナミックダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックダンパ装置、特に、動力伝達経路の回転部材に装着され、振動を減衰するダイナミックダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータ等の動力伝達装置においては、特許文献1に示されるように、ロックアップ時等において振動を減衰するためにダイナミックダンパ装置が設けられている。このダイナミックダンパ装置は、出力側の部材に連結されたベースプレートと、慣性体と、弾性ユニットと、を備えている。慣性体はベースプレートと相対回転が可能である。また、弾性ユニットはベースプレートと慣性体とを回転方向に弾性的に連結している。
【0003】
特許文献1のダイナミックダンパ装置は、常用回転数域の全域にわたって安定して高い減衰性能を得ることを目的としている。この目的を達成するために、ダイナミックダンパ装置は、1段目は低剛性で、2段目は高剛性の捩り特性を有している。この場合のダイナミックダンパ装置の等価剛性は、1段目の捩り剛性よりも高くなる(特許文献1の
図8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のダイナミックダンパ装置を備えたトルクコンバータでは、高回転数域に現れるトルク変動のピークを常用回転数域よりも高回転数側に移動させることができる。すなわち、常用回転数域のトルク変動を抑えることができる(特許文献1の
図9参照)。
【0006】
しかし、特許文献1のダイナミックダンパでは、等価剛性が高くなるために、低回転数域に現れるトルク変動のピークが長く続くという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、ダイナミックダンパ装置において、特に、低回転数域に現れるトルク変動の減衰性能を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るダイナミックダンパ装置は、動力伝達経路の回転部材に装着され、振動を減衰する。このダイナミックダンパ装置は、第1回転体と、第2回転体と、慣性体と、ダンパ部と、を備えている。第1回転体は、回転部材に装着され、複数の収容部を有する。第2回転体は、第1回転体を挟んで軸方向に対向する第1及び第2プレートを有している。第1及び第2プレートは、第1回転体と相対回転可能であって、複数の収容部に対応して配置された複数の支持部を有している。慣性体は第2回転体に設けられている。ダンパ部は、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結するものであって、複数の収容部及び支持部に配置された複数の弾性部材を有している。そして、ダンパ部は、第1捩り角度領域では第1捩り剛性を有するとともに、第1捩り角度領域より大きい第2捩り角度領域では第1捩り剛性より低い第2捩り剛性を有する。
【0009】
ここでは、回転部材から入力されたトルク変動は、慣性体及びダンパ部の作動によって減衰される。ダンパ部は、低回転数域の第1捩り角度領域では比較的高い第1捩り剛性を有し、高回転数域の第2捩り角度領域では比較的低い第2捩り剛性を有している。ここで、捩り特性上のトルク変動の振幅点と原点とを結ぶ傾きが等価剛性となるために、振幅点が低剛性の第2捩り剛性の場合、振幅が大きいほど等価剛性が低くなる。そして、等価剛性が低い場合は、共振周波数が低くなるので、振幅が大きいほど共振周波数は低くなる。したがって、ある周波数で共振していると振幅が大きくなるが、共振周波数が低くなって共振周波数がずれると、トルク変動の振幅は小さくなる。これにより、低回転数域に現れるトルク変動を効果的に抑えることができ、低回転数域での振動減衰性能が向上する。
【0010】
(2)好ましくは、第1捩り角度領域と第2捩り角度領域とは連続している。
【0011】
(3)好ましくは、第1捩り角度領域は第2捩り角度領域よりも広い。
【0012】
(4)好ましくは、複数の弾性部材のうちの少なくとも1つの弾性部材は、第2捩り角度領域において作動が停止する。このため、第2捩り角度領域では第1捩り角度領域に比較して低剛性になる。
【0013】
(5)好ましくは、複数の収容部は、円周方向に並べて配置された第1収容部及び第2収容部を有している。また、複数の支持部は第1支持部と第2支持部とを有している。第1支持部は、第1収容部に対して軸方向視で一部が重なるようにかつ円周方向第1側にオフセットして配置されている。第2支持部は、第2収容部に対して円周方向第2側にオフセットして配置されている。
【0014】
ここでは、第1収容部及び第1支持部のオフセットの方向と、第2収容部及び第2支持部のオフセットの方向とが逆である。このため、これらに収容された弾性部材は、第1及び第2回転体が相対回転するにしたがって、一方は圧縮され、他方は伸長する。したがって、伸長する弾性部材が、例えば自由長になると、この弾性部材は圧縮状態から解放され、作動しなくなる。したがって、自由長になった弾性部材が圧縮されていたときと比較して低剛性になる。
【0015】
(6)好ましくは、第1回転体は、回転部材に連結されるボスと、ボスから径方向外方に延び複数の収容部を有するフランジと、を有している。好ましくは、第1及び第2プレートは、フランジを挟んで軸方向に対向して配置されている。そして、慣性体は第1プレートの外周部に固定されている。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明では、ダイナミックダンパ装置において、特に、低回転数域に現れるトルク変動の減衰性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態によるダイナミックダンパ装置の断面図。
【
図3】ハブフランジと支持プレートの位置関係を示す模式図。
【
図4】ハブフランジ、支持プレート、及びトーションスプリングの組み付け手順を示す図。
【
図5】ハブフランジと支持プレートの捩れ角度が0°(中立位置)の状態を示す図。
【
図6】ハブフランジと支持プレートの捩れ角度が1.5°の状態を示す図。
【
図7】ハブフランジと支持プレートの捩れ角度が2.0°の状態を示す図。
【
図8】ダイナミックダンパ装置の捩り特性を示す図。
【
図9】入力回転速度と回転速度変動との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態によるダイナミックダンパ装置1の断面図、
図2はその正面図である。なお、
図2の一部は、部材を省略して示している。
図1のO-O線がダイナミックダンパ装置1の回転中心である。
【0019】
[全体構成]
このダイナミックダンパ装置1は、動力伝達経路に設けられた回転軸2に装着される。ダイナミックダンパ装置1は、ハブフランジ10(第1回転体の一例)と、1対の支持プレート20(第2回転体の一例)と、イナーシャ部材30と、ダンパ部40と、を備えている。
【0020】
[ハブフランジ10]
ハブフランジ10は、ボス11と、フランジ12と、を有している。ボス11は、筒状に形成され、中心部にはスプライン孔11aが形成されている。このスプライン孔11aが回転軸2の外周面に形成されたスプライン歯に噛み合うことによって、ダイナミックダンパ装置1は回転軸2に連結される。フランジ12は、円板状に形成され、ボス11の外周面から径方向外方に延びている。フランジ12には、4つの第1~第4収容部12a~12dが円周方向に並べて形成されている。第1収容部12aと第3収容部12cとは、回転中心を挟んで対称的に形成されている。同様に、第2収容部12bと第4収容部12dとは回転中心を挟んで対称的に形成されている。また、隣接する収容部の円周方向間には、複数のストッパ用切欠12eが形成されている。
【0021】
各収容部12a~12dは、外周部が円弧状のほぼ矩形の孔である。
図3に示すように、各収容部12a~12dは、円周方向第1側の端部にR1収容面121を有し、円周方向第2側の端部にR2収容面122を有している。各収容部12a~12dの孔の幅(R1収容面121とR2収容面122との間の距離)はL1(例えば38.0mm)に設定されている。そして、各収容面121,122には、後述するトーションスプリングの端面が当接可能である。なお、
図3は、ハブフランジ10の全体と、支持プレート20の一部(円周方向の端面)のみと、を示したものである。また、
図3は
図1のハブフランジ10等を
図2とは逆側から視た図である。
【0022】
[支持プレート20]
1対の支持プレート20は円板状に形成されている。1対の支持プレート20は、フランジ12を挟んで軸方向に間隔をあけて配置され、複数のストップピン21によって互いに固定されている。これにより、1対の支持プレート20は、互いに軸方向に移動不能であり、また相対回転が不能である。各支持プレート20には、フランジ12の第1~第4収容部12a~12dに対応する位置に、第1~第4支持部20a~20dを有している。第1支持部20aと第3支持部20cとは、回転中心を挟んで対称的に形成されている。同様に、第2支持部20bと第4支持部20dとは回転中心を挟んで対称的に形成されている。
【0023】
各支持部20a~20dは、軸方向に貫通する孔と、この孔の内周縁及び外周縁に切り起こされた縁部と、を有している。
図3に示すように、各支持部20a~20dは、円周方向第1側の端部にR1支持面201を有し、円周方向第2側の端部にR2支持面202を有している。各支持部20a~20dにおける孔の幅(R1支持面201とR2支持面202との間の距離)はL2(例えば37.5mm)であり、この実施形態では幅L1>幅L2である。そして、各支持面201,202には、後述するトーションスプリングの端面が当接可能である。
【0024】
ストップピン21はフランジ12のストッパ用切欠12eを貫通している。ストップピン21とストッパ用切欠12eとの円周方向間には隙間が設けられている。したがって、ハブフランジ10と1対の支持プレート20とは、この隙間に相当する角度分(例えば、±2.0°)だけ相対回転が可能である。
【0025】
[イナーシャ部材30]
イナーシャ部材30は、4枚の円板状のプレート31~34を積層して構成されている。4枚のプレート31~34はこれらを軸方向に貫通する複数のリベット35によって固定されている。そして、一端側(
図1において左側)のプレート31の内周部が、ストップピン21によって1対の支持プレート20の一方に固定されている。これにより、イナーシャ部材30は1対の支持プレート20とともに回転する。
【0026】
[ダンパ部40]
ダンパ部40は、第1~第4トーションスプリング41~44を有している。各トーションスプリング41~44は、フランジ12の各収容部12a~12dに収容され、1対の支持プレート20の各支持部20a~20dによって径方向及び軸方向に支持されている。4つのトーションスプリング41~44はすべて同じ自由長Lf(例えば37.5mm)であり、この自由長Lfは各支持部20a~20dの幅L2(37.5mm)と同じである。
【0027】
[トーションスプリングの収容状態]
ここで、ハブフランジ10と1対の支持プレート20とが捩れていない状態(中立位置)での、各収容部12a~12dと各支持部20a~20dの配置及び各トーションスプリング41~44の収容状態について、以下に詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1収容部12a及び第1支持部20aを「第1窓セットw1」と記載し、第2収容部12b及び第2支持部20bを「第2窓セットw2」と記載し、第3収容部12c及び第3支持部20cを「第3窓セットw3」と記載し、第4収容部12d及び第4支持部20dを「第4窓セットw4」と記載する場合がある。
【0028】
各窓セットw1~w4には、それぞれ圧縮された状態で、トーションスプリング41~44が装着されている。そして、中立位置では、
図3に示すように、第1支持部20aは第1収容部12aに対して円周方向R1側にオフセットされている。また、第3支持部20cも同様に、第3収容部12cに対して円周方向R1側にオフセットされている。
【0029】
一方、第2支持部20bは第2収容部12bに対して円周方向R2側にオフセットされている。また、第4支持部20dも同様に、第4収容部12dに対して円周方向R2側にオフセットされている。
【0030】
そして、各収容部12a~12dと対応する各支持部20a~20dの軸方向において重なった部分の開口(軸方向に貫通する孔)に、トーションスプリング41~44が圧縮された状態で装着されている。
【0031】
具体的には、
図3に示すように、第1及び第3窓セットw1,w3においては、第1及び第3トーションスプリング41,43の円周方向R1側の端面はR1収容面121に当接し、円周方向R2側の端面はR2支持面202に当接している。
【0032】
一方、第2及び第4窓セットw2,w4においては、第2及び第4トーションスプリング42,44の円周方向R1側の端面はR1支持面201に当接し、円周方向R2側の端面はR2収容面122に当接している。
【0033】
[組み付け手順]
ハブフランジ10及び1対の支持プレート20に各トーションスプリング41~44を組み付ける手順について、
図4を参照して説明する。なお、
図4は第1収容部12a及び第1支持部20aと、第2収容部12b及び第2支持部20bと、の関係を模式的に示したものである。
図4では、第1及び第2窓セットw1,w2に第1及び第2トーションスプリング41,42を組み付ける場合を示しているが、同時に第3及び第4窓セットw3,w4にも同様にして第3及び第4トーションスプリング43,44を組み付ける。
【0034】
まず、
図4(a)(b)に示すように、ハブフランジ10の第1収容部12aと一方の支持プレート20の第1及び第3支持部20aとを位置合わせして(同図b)、第1窓セットw1に第1トーションスプリング41を組み付ける(同図c)。
【0035】
次に、同図(d)に示すように、支持プレート20に対してハブフランジ10を円周方向(同図右側)に所定角度捩じる。この状態では、第2収容部12bと第2支持部20bとの位置がほぼ一致する。この状態で、第2窓セットw2に第2トーションスプリング42を組み付ける(同図e)。
【0036】
次に、支持プレート20に対してハブフランジ10を前記とは逆の円周方向(同図左側)に捩って戻し(同図f)、この状態で、他方の支持プレート20を組み付けて(同図g)、1対の支持プレート20同士をストップピン21により固定する。これにより、各窓セットw1~w4には、それぞれトーションスプリング41~44が圧縮された状態で装着される。
【0037】
このとき、第1及び第3窓セットw1,w3に装着された第1及び第3トーションスプリング41,43により、支持プレート20に対してハブフランジ10はR1側に回転力を受ける。一方、第2及び第4窓セットw2,w4に装着された第2及び第4トーションスプリング42,44により、支持プレート20に対してハブフランジ10は、逆にR2側に回転力を受ける。そして、これらの回転力が釣り合った状態で、ハブフランジ10及び支持プレート20の位置関係が維持される。このため、ハブフランジ10の芯ずれを防止でき、回転軸2の振動を抑えることができる。
【0038】
[動作]
ダイナミックダンパ装置1に振動が伝達されていない状態、すなわち、ハブフランジ10と支持プレート20とが相対回転していない状態(中立位置)では、
図5に示すように、第1窓セットw1では、第1トーションスプリング41は、R1収容面121とR2支持面202との間に圧縮して配置されている。同様に、第3窓セットw3では、第3トーションスプリング43は、R1収容面121とR2支持面202との間に圧縮して配置されている。なお、
図5に示す状態では、R1収容面121とR2支持面202との間の間隔はG0であり、この間隔G0は、第1支持部20aの幅L2(=トーションスプリング40の自由長Lf)よりも短い。
【0039】
一方、第2窓セットw2では、第2トーションスプリング42は、R1支持面201とR2収容面122との間に圧縮して配置されている。同様に、第4窓セットw4では、第4トーションスプリング44は、R1支持面201とR2収容面122との間に圧縮して配置されている。なお、
図5に示す状態では、R1支持面201とR2収容面122との間の間隔はG0である。
【0040】
振動が伝達されて、支持プレート20に対してハブフランジ10が中立位置から円周方向R2側に、例えば1.5°捩れた状態を
図6に示している。ここでは、第1及び第3窓セットw1,w3では、R1収容面121とR2支持面202との間の間隔G1は間隔G0よりも狭くなる。一方、第2及び第4窓セットw2,w4では、R1支持面201とR2収容面122との間の間隔G2は間隔G0よりも広くなる。したがって、第1及び第3窓セットw1,w3の第1及び第3トーションスプリング41,43は圧縮されるが、第2及び第4窓セットw2,w4の第2及び第4トーションスプリング42,44は伸長する。
【0041】
この
図6に示す状態では、第2及び第4窓セットw2,w4における間隔G2は、第2及び第4トーションスプリング42,44の自由長Lfと同じになる。すなわち、この
図6に示す状態では、第2及び第4窓セットw2,w4の第2及び第4トーションスプリング42,44は、自由長になり、これ以降の捩り角度領域では、さらに圧縮されない限り、作動しない。すなわち、捩り特性に寄与しない。
【0042】
そして、
図7に示すように、支持プレート20に対してハブフランジ10がさらにR2側に捩れ、例えば捩り角度が2.0°になると、ストッパ用切欠12eとストップピン21とが当接する。このため、ハブフランジ10と支持プレート20との相対回転が禁止される。この状態では、第2及び第4窓セットw2,w4においては、第2及び第4収容部12b,12dと第2及び第4支持部20b,20dのオフセットが「0」になる。
【0043】
この捩り角度1.5°~2.0°の領域では、第1及び第3窓セットw1,w3の間隔はさらに狭くなるので、第1及び第3窓セットw1,w3の第1及び第3トーションスプリング41,43はさらに圧縮される。一方、第2及び第4窓セットw2,w4の間隔はさらに広くなる。しかし、第2及び第4窓セットw2,w4の第2及び第4トーションスプリング42,44はすでに自由長になっており、作動しない。
【0044】
以上のように、捩り角度0~1.5°では、第1~第4トーションスプリング41~44はすべて圧縮状態で作動する。しかし、捩り角度1.5°~2.0°では、第2及び第4トーションスプリング42,44は自由長になるので、これらのトーションスプリング42,44は作動しない。このため、捩り角度1.5°~2.0°の捩れ領域では、それまでの剛性に比較して1/2になる。以上の作動は、ハブフランジ10が逆側に捩れた場合も同様である。
【0045】
以上の作動によって、このダイナミックダンパ装置1は、
図8に示すような捩り特性を有することになる。すなわち、捩り角度が0~1.5°の範囲では高剛性2Kであり、1.5°以上では低剛性Kの特性を有する。この場合の等価剛性は、図の破線で示すように、低くなる。
【0046】
図9は動力伝達装置の入力回転速度と回転速度変動との関係を示したものである。図において、破線がダイナミックダンパ装置を設けていない場合の特性であり、一点鎖線が従来の1段目が低剛性、2段目が高剛性のダイナミックダンパ装置の特性である。そして、実線が本実施形態のダイナミックダンパ装置を搭載した場合の特性である。この図から明らかなように、本実施形態のダイナミックダンパ装置では、低回転数域における回転速度変動(すなわち、振動)を効果的に抑えることができる。
【0047】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0048】
(a)前記実施形態では、各収容部12a~12dの幅L1と各支持部20a~20dの幅L2とを、幅L1>幅L2としたが、逆に、幅L1<幅L2であってもよい。
【0049】
(b)前記実施形態では、トーションスプリングの自由長Lfを各支持部20a~20dの幅L2と同じにしたが、トーションスプリングの自由長Lfを、各支持部20a~20dの幅L2よりも短くしてもよい。
【0050】
(c)前記実施形態では、ハブフランジ10と支持プレート20の相対角度が所定角度以上で第2及び第4トーションスプリング42,44が自由長になるように各部の寸法を設定した。しかし、ハブフランジ10と支持プレート20の相対角度が所定角度以上で、第2及び第4トーションスプリング42,44が第2及び第4支持部20b,20dのみによって圧縮された状態にしてもよい。
【0051】
(d)前記実施形態では、支持プレートにイナーシャ部材を固定したが、支持プレートとイナーシャ部材とを一体化してもよい。
【0052】
(e)収容部、支持部、及びトーションスプリングの個数は一例であって、前記実施形態に限定されない。また、収容部と支持部のオフセットの量についても同様に前記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 ダイナミックダンパ装置
2 回転軸
10 ハブフランジ(第1回転体)
11 ボス
12 フランジ
12a~12d 収容部
121,122 収容面
20 支持プレート(第1及び第2プレート、第2回転体)
20a~20d 支持部
201,202 支持面
30 イナーシャ部材(慣性体)
40 トーションスプリング(ダンパ部)