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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】自動車の車体パネル用補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20230130BHJP
【FI】
B62D25/08 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019084906
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020179795
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】100117503
【弁理士】
【氏名又は名称】間瀬 ▲けい▼一郎
(72)【発明者】
【氏名】田島 直次
(72)【発明者】
【氏名】元野 宏
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/162089(WO,A1)
【文献】実開昭56-031939(JP,U)
【文献】特開平07-329831(JP,A)
【文献】実開昭62-044764(JP,U)
【文献】特開2006-327275(JP,A)
【文献】実開平03-082657(JP,U)
【文献】特開2012-131372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60T 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車室の内外を区画する金属製車体パネルを補強する金属製補強パネルを備える自動車の車体パネル用補強構造において、
前記補強パネルは、前記車体パネルの少なくとも一部のパネル部に沿い前記車室の内側から積層されており、
当該補強パネルの外周縁部は、その周方向に沿い間隔をおいて定めた各被溶接部位にて、当該各被溶接部位に対する前記少なくとも一部のパネル部の各対応部位にスポット溶接により固着されており、
当該補強パネルは、前記外周縁部のうちの前記各被溶接部位を除く非溶接部位の少なくとも一部にて、前記少なくとも一部のパネル部とは反対方向へ横断面湾曲壁状に突出して前記車室内に開口するビード壁部として形成されており、
前記補強パネルの前記外周縁部は、当該外周縁部に対する前記少なくとも一部のパネル部の対応環状部位との間にて、前記ビード壁部の前記車室内へ開口する開口部をも含めて、音漏れ防止用遮音部材により気密的に封止されていることを特徴とする自動車の車体パネル用補強構造。
【請求項2】
自動車の車室の内外を区画する車体パネルを補強する金属製補強パネルを備える自動車の車体パネル用補強構造において、
前記車体パネルは、自動車のエンジンルームと前記車室とを区画するダッシュパネルであり、
当該ダッシュパネルは、貫通穴部を形成してなり、
前記補強パネルは、前記ダッシュパネルのうち前記貫通穴部を含むパネル部に沿い前記車室の内側から積層されており、
ブレーキ機構が、その機構本体にて、前記パネル部に前記エンジンルーム側から支持され、ブレーキ軸にて、前記補強パネルに形成してなる貫通穴部を介し前記車室内側から前記パネル部の前記貫通穴部を通り前記機構本体に同軸的に軸動可能に支持され、かつ、ブレーキペダルにて、前記車室内にて前記ブレーキ軸に連結されて、その踏み込みに応じて前記機構本体に制動機能を発揮させるようになっており、
当該補強パネルの外周縁部は、その周方向に沿い間隔をおいて定めた各被溶接部位にて、当該各被溶接部位に対する前記パネル部の各対応部位にスポット溶接により固着されており、
当該補強パネルは、前記外周縁部のうちの前記各被溶接部位を除く非溶接部位の少なくとも一部から前記パネル部の前記貫通穴部側部位にかけて、前記パネル部とは反対方向へ横断面湾曲壁状に突出して前記車室内に開口するように形成してなるビード壁部を有しており、
前記補強パネルの前記外周縁部は、当該外周縁部に対する前記パネル部の対応環状部位との間にて、前記ビード壁部の前記車室内に開口する開口部をも含めて、音漏れ防止用遮音部材により気密的に封止されていることを特徴とする自動車の車体パネル用補強構造。
【請求項3】
ダッシュサイレンサーが、前記補強パネルを介し前記ダッシュパネルに沿い積層されており、
前記ブレーキ機構が、そのブレーキ軸にて、前記車室内側から前記ダッシュサイレンサー及び前記補強パネルの前記貫通穴部を介し前記パネル部の前記貫通穴部を通り前記機構本体に同軸的に軸動可能に支持されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車の車体パネル用補強構造。
【請求項4】
前記補強パネルは、前記ビード壁部を一側ビード壁部として、他側ビード壁部を備えており、当該他側ビード壁部は、その前記補強パネルの前記貫通穴部から前記一側ビード壁部とは逆方向に長手状に延出されて前記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
当該他側ビード壁部は、その延出端部にて、前記非溶接部位の他の部位から前記車室内に開口するようになっており、
前記音漏れ防止用遮音部材は、前記補強パネルの前記外周縁部を、前記一側ビード壁部の前記開口部に加え、前記他側ビード壁部の前記車室内に開口する開口部をも含めて、当該外周縁部に対する前記パネル部の対応環状部位との間にて封止するようにしたことを特徴とする請求項2または3に記載の自動車の車体パネル用補強構造。
【請求項5】
前記補強パネルは、一側及び他側の半円状ビード壁部並びに一側及び他側の帯状ビード壁部を備えており、
前記一側半円状ビード壁部は、前記一側長手状ビード壁部から前記他側長手状ビード壁部にかけて前記補強パネルの前記貫通穴部の一側にて半円状に形成されるとともに前記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
前記他側半円状ビード壁部は、前記一側長手状ビード壁部から前記他側長手状ビード壁部にかけて前記補強パネルの前記貫通穴部の他側にて半円状に形成されるとともに、前記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
前記一側帯状ビード壁部は、前記一側半円状ビード壁部の中間部位から前記非溶接部位のうちのその他の部位にかけて延出されるとともに前記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
前記他側帯状ビード壁部は、前記他側半円状ビード壁部の中間部位から前記非溶接部位のうちのさらなる他の部位にかけて延出されるとともに前記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
前記一側及び他側の各帯状ビード壁部は、それぞれ、その各延出端部にて、前記非溶接部位の前記その他の部位及び前記さらなる他の部位から前記車室内に開口するようになっており、
前記音漏れ防止用遮音部材は、前記補強パネルの前記外周縁部を、前記一側長手状ビード壁部の前記開口部に加え、前記他側長手状ビード壁部の開口部、前記一側及び他側の帯状ビード壁部の前記車室内に開口する各開口部をも含めて、当該外周縁部に対する前記パネル部の対応環状部位との間にて封止するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の自動車の車体パネル用補強構造。
【請求項6】
前記補強パネルは、少なくとも1つの位置決め用貫通穴部その他の貫通穴部を形成してなり、
前記音漏れ防止用遮音部材を第1音漏れ防止用遮音部材として、前記少なくとも1つの位置決め用貫通穴部その他の貫通穴部は、少なくとも1つの第2音漏れ防止用遮音部材により封止されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の自動車の車体パネル用補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体パネルを補強するに適した自動車の車体パネル用補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車の車体パネル用補強構造としては、例えば、下記特許文献1に記載のダッシュパネル補強構造が提案されている。このダッシュパネル補強構造においては、ブレーキペダルを支えるブラケットであるペダルブラケットが、ペダルブラケット補強部材の取り付け部及びペダルブラケットハンガを介しダッシュパネルに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-131372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように構成してなるダッシュパネル補強構造においては、ペダルブラケット、ペダルブラケット補強部材やペダルブラケットハンガは、通常、当然のことながら、その剛性を高めるために、板厚方向に凹凸形状を有するようにビード加工されている。
【0005】
ここで、例えば、ペダルブラケットハンガは、ダッシュパネルに取り付けられている。従って、当該ペダルブラケットハンガが上述のごとくビード加工されていることから、当該ペダルブラケットハンガとダッシュパネルのうちの当該ペダルブラケットハンガに対する対応壁部位との間には、ペダルブラケットハンガのビード加工に起因する凹凸形状でもって空隙が形成されてしまう。
【0006】
このため、エンジンルーム内で作動するエンジンからのエンジン音が騒音としてダッシュパネルに入射すると、当該騒音は、ダッシュパネルの遮音性能のもと当該ダッシュパネルを透過して車室内に進む。このとき、ダッシュパネルのうちのペダルブラケットハンガに対する対応壁部位を透過する騒音は、当該対応壁部位とペダルブラケットハンガとの間の空隙を通りペダルブラケットハンガに沿い進みその外周部から車室内に進む。
【0007】
このことは、ペダルブラケットハンガは、ダッシュパネルを補強する枠割を果たしていても、エンジンからの騒音に対する防音機能を発揮し得ないことを意味する。
【0008】
以上述べたことから理解されるように、ペダルブラケットハンガは、ダッシュパネルの補強する役割を果たすために採用されているにすぎず、エンジンからの騒音をも防音する役割を果たすものでない。
【0009】
これに対しては、近年の車室内への騒音に対する防音対策に対するより一層強い要請からすれば、ダッシュパネルの補強構造であっても、防音対策にも活用することが望ましい。また、このようなことは、ダッシュパネルの補強構造に限ることなく、自動車の各種の車体パネルの補強構造であっても、望ましいことである。
【0010】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、自動車の車体を構成する車体パネルと当該車体パネルを補強する補強パネルとの間を音漏れ防止用遮音部材により封止するようにした自動車の車体パネル用補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る自動車の車体パネル用補強構造は、請求項1の記載によれば、自動車の車室の内外を区画する金属製車体パネルを補強する金属製補強パネルを備える。
【0012】
当該自動車の車体パネル用補強構造において、
補強パネルは、車体パネルの少なくとも一部のパネル部に沿い車室の内側から積層されており、
当該補強パネルの外周縁部は、その周方向に沿い間隔をおいて定めた各被溶接部位にて、当該各被溶接部位に対する上記少なくとも一部のパネル部の各対応部位にスポット溶接により固着されており、
当該補強パネルは、上記外周縁部のうちの上記各被溶接部位を除く非溶接部位の少なくとも一部にて、上記少なくとも一部のパネル部とは反対方向へ横断面湾曲壁状に突出して車室内に開口するビード壁部として形成されており、
補強パネルの上記外周縁部は、当該外周縁部に対する上記少なくとも一部のパネル部の対応環状部位との間にて、上記ビード壁部の車室内へ開口する開口部をも含めて、音漏れ防止用遮音部材により気密的に封止されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、補強パネルの外周縁部は、その周方向に沿い間隔をおいて定めた各被溶接部位にて、当該各被溶接部位に対する上記少なくとも一部のパネル部の各対応部位にスポット溶接により固着されている。また、補強パネルは、その外周縁部のうちの各被溶接部位を除く非溶接部位の少なくとも一部にて、車体パネルの少なくとも一部のパネル部とは反対方向へ横断面湾曲壁状に突出して車室内に開口するビード壁部として形成されている。
【0014】
また、補強パネルの外周縁部は、当該外周縁部に対する車体パネルの少なくとも一部のパネル部の対応環状部位との間にて、ビード壁部の車室内へ開口する開口部をも含めて、音漏れ防止用遮音部材により気密的に封止されている。
【0015】
ここで、騒音が、車体パネルの車室とは反対側(外側)にて発生すると、当該騒音は、車体パネルに入射する。このように入射する騒音のうち車体パネルの少なくとも一部のパネル部の外周側部位に入射する騒音は、当該少なくとも一部のパネル部の外周側部位により遮音される。また、騒音のうち少なくとも一部のパネル部に入射する騒音は、当該少なくとも一部のパネル部により遮音されつつ補強パネルに入射する。このように入射する騒音は、補強パネルにより遮音される。このように騒音が遮音されることで、車室内の防音がなされる。
【0016】
また、上述のように補強パネルに入射する騒音は、補強パネルのビード壁部の開口部に向けて進む。
【0017】
然るに、当該ビード壁部の開口部は、音漏れ防止用遮音部材により封止されていることから、ビード壁部の内側に沿いその開口部に進む騒音は、車室内に音漏れすることなく、音漏れ防止用遮音部材のうちビード壁部の開口部に対する対応部位により良好に遮音され得る。
【0018】
このように、補強パネルと車体パネルのパネル部との間からの騒音を音漏れ防止用遮音部材により遮音することで、車体パネルを介し車室内に進入する騒音の車室内への進入量をより一層良好に低減し得る。その結果、補強パネルは、ビード壁部による強度の増大のもと、車体パネルを良好に補強しつつ、上述のように音漏れ防止用遮音部材による音漏れ防止を行わない場合に比べて、車室の内部は、車体パネルを介し進入する騒音からより一層良好に防音され得る。
【0019】
また、本発明に係る自動車の車体パネル用補強構造は、請求項2の記載によれば、
自動車の車室の内外を区画する車体パネルを補強する金属製補強パネルを備える。
【0020】
当該自動車の車体パネル用補強構造において、
車体パネルは、自動車のエンジンルームと前記車室とを区画するダッシュパネルであり、
当該ダッシュパネルは、貫通穴部を形成してなり、
補強パネルは、ダッシュパネルのうち上記貫通穴部を含むパネル部に沿い車室の内側から積層されており、
ブレーキ機構が、その機構本体にて、上記パネル部にエンジンルーム側から支持され、ブレーキ軸にて、補強パネルに形成してなる貫通穴部を介し車室内側から上記パネル部の上記貫通穴部を通り上記機構本体に同軸的に軸動可能に支持され、かつ、ブレーキペダルにて、車室内にて上記ブレーキ軸に連結されて、その踏み込みに応じて上記機構本体に制動機能を発揮させるようになっており、
当該補強パネルの外周縁部は、その周方向に沿い間隔をおいて定めた各被溶接部位にて、当該各被溶接部位に対する上記パネル部の各対応部位にスポット溶接により固着されており、
当該補強パネルは、上記外周縁部のうちの上記各被溶接部位を除く非溶接部位の少なくとも一部から上記パネル部の上記貫通穴部側部位にかけて、上記パネル部とは反対方向へ横断面湾曲壁状に突出して車室内に開口するように形成してなるビード壁部を有しており、
補強パネルの上記外周縁部は、当該外周縁部に対する上記パネル部の対応環状部位との間にて、上記ビード壁部の車室内に開口する開口部をも含めて、音漏れ防止用遮音部材により気密的に封止されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、補強パネルの外周縁部は、その周方向に沿い間隔をおいて定めた各被溶接部位にて、当該各被溶接部位に対する上記パネル部の各対応部位にスポット溶接により固着されている。また、当該補強パネルは、その外周縁部のうちの各被溶接部位を除く非溶接部位の少なくとも一部からダッシュパネルのパネル部の貫通穴部側部位にかけて、ダッシュパネルのパネル部とは反対方向へ横断面湾曲壁状に突出して車室内に開口するように形成してなるビード壁部を有している。
【0022】
ここで、補強パネルの外周縁部は、当該外周縁部に対するダッシュパネルのパネル部の対応環状部位との間にて、ビード壁部の車室内に開口する開口部をも含めて、音漏れ防止用遮音部材により気密的に封止されている。
【0023】
ここで、騒音が、エンジンルーム内にて発生すると、当該騒音は、ダッシュパネルに入射する。このように入射する騒音のうちダッシュパネルのパネル部の外周側部位に入射する騒音は、当該パネル部の外周側部位により遮音される。また、騒音のうちブレーキ機構の外周側からパネル部に入射する騒音は、当該パネル部により遮音されつつ補強パネルに入射する。このように入射する騒音は、補強パネルにより遮音される。
【0024】
また、騒音のうちブレーキ機構を介しパネル部の貫通穴部を通り補強パネル側に進入する騒音は、補強パネルのビード壁部の内側に沿いその開口する開口部に進む。
【0025】
然るに、当該ビード壁部の開口部は、音漏れ防止用遮音部材により封止されていることから、ビード壁部の内側に沿いその開口部に進む騒音は、車室内に音漏れすることなく、音漏れ防止用遮音部材のうちビード壁部の開口部に対する対応部位により良好に遮音され得る。
【0026】
このように、補強パネルとダッシュパネルのパネル部との間からの騒音を音漏れ防止用遮音部材により遮音することで、ダッシュパネルを介し車室内に進入する騒音の車室内への進入量をより一層良好に低減し得る。その結果、補強パネルは、ビード壁部による強度の増大のもと、ブレーキ機構のブレーキペダルの踏力に抗して、ダッシュパネルを良好に補強しつつ、上述のように音漏れ防止用遮音部材による音漏れ防止を行わない場合に比べて、車室の内部は、ダッシュパネルを介し進入する騒音からより一層良好に防音され得る。
【0027】
また、本発明に係る自動車の車体パネル用補強構造は、請求項3の記載によれば、請求項2に記載の自動車の車体パネル用補強構造において、
ダッシュサイレンサーが、補強パネルを介しダッシュパネルに沿い積層されており、
ブレーキ機構が、そのブレーキ軸にて、車室内側からダッシュサイレンサー及び補強パネルの上記貫通穴部を介し上記パネル部の上記貫通穴部を通り上記機構本体に同軸的に軸動可能に支持されていることを特徴とする。
【0028】
これによれば、ダッシュサイレンサーが、補強パネルを介しダッシュパネルに沿い積層されている。また、ブレーキ機構が、そのブレーキ軸にて、車室内側から前記ダッシュサイレンサー及び補強パネルの上記貫通穴部を介し上記パネル部の上記貫通穴部を通り上記機構本体に同軸的に軸動可能に支持されている。
【0029】
これによれば、騒音が、エンジンルーム内にて発生すると、当該騒音は、ダッシュパネルに入射する。このように入射する騒音のうちダッシュパネルのパネル部の外周側部位に入射する騒音は、当該パネル部の外周側部位により遮音される。また、騒音のうちブレーキ機構の外周側からパネル部に入射する騒音は、当該パネル部により遮音されつつ補強パネルに入射する。このように入射する騒音は、補強パネルにより遮音される。
【0030】
また、ダッシュパネル及び補強パネルを介し車室内に進入する騒音は、ダッシュサイレンサーにより吸音される。
【0031】
ここで、騒音のうちブレーキ機構を介しダッシュパネルのパネル部の貫通穴部を通り補強パネル側に進入する騒音は、補強パネルのビード壁部の内側に沿いその開口部に進む。
【0032】
然るに、当該ビード壁部の開口部は、音漏れ防止用遮音部材により封止されていることから、ビード壁部の内側に沿いその開口部に進む騒音は、車室内に音漏れすることなく、音漏れ防止用遮音部材のうちビード壁部の延出端部に対する対応部位により良好に遮音され得る。
【0033】
このように、補強パネルとダッシュパネルのパネル部との間からの騒音を音漏れ防止用遮音部材により遮音することによりダッシュパネルを介し車室内に進入する騒音の車室内への進入量をより一層良好に低減し得る。
【0034】
ここで、騒音がダッシュパネル及び補強パネルの2重壁構造を通り車室内に進入しても、当該騒音は、ダッシュサイレンサーにより吸音される。
【0035】
その結果、補強パネルは、ビード壁部による強度の増大のもと、ブレーキ機構のブレーキペダルの踏力に抗して、ダッシュパネルを良好に補強しつつ、上述のように音漏れ防止用遮音部材による音漏れ防止を行わない場合に比べて、車室の内部は、ダッシュサイレンサーによる吸音性能も加わって、ダッシュパネルを介し進入する騒音からより一層良好に防音され得る。
【0036】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項2または3に記載の自動車の車体パネル用補強構造において、
補強パネルは、上記ビード壁部を一側ビード壁部として、他側ビード壁部を備えており、当該他側ビード壁部は、その補強パネルの上記貫通穴部から上記一側ビード壁部とは逆方向に長手状に延出されて上記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
当該他側ビード壁部は、その延出端部にて、上記非溶接部位の他の部位から車室内に開口するようになっており、
音漏れ防止用遮音部材は、補強パネルの外周縁部を、上記一側ビード壁部の開口部に加え、上記他側ビード壁部の車室内に開口する開口部をも含めて、当該外周縁部に対する上記パネル部の対応環状部位との間にて封止するようにしたことを特徴とする。
【0037】
これによれば、音漏れ防止用遮音部材は、補強パネルの外周縁部を、一側ビード壁部の開口部に加え、他側ビード壁部の開口部をも含めて、当該外周縁部に対するパネル部の対応環状部位との間にて封止するので、補強パネルは、一側及び他側のビード壁部による強度の増大のもと、より一層ダッシュパネルの補強を改善しつつ、上述のように音漏れ防止用遮音部材による音漏れ防止を行わない場合に比べて、車室の内部は、ダッシュサイレンサーによる吸音性能も加わって、ダッシュパネルを介し進入する騒音からより一層良好に防音され得る。
【0038】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項4に記載の自動車の車体パネル用補強構造において、
補強パネルは、一側及び他側の半円状ビード壁部並びに一側及び他側の帯状ビード壁部を備えており、
上記一側半円状ビード壁部は、上記一側長手状ビード壁部から上記他側長手状ビード壁部にかけて補強パネルの上記貫通穴部の一側にて半円状に形成されるとともに上記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
上記他側半円状ビード壁部は、上記一側長手状ビード壁部から上記他側長手状ビード壁部にかけて補強パネルの上記貫通穴部の他側にて半円状に形成されるとともに、上記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
上記一側帯状ビード壁部は、上記一側半円状ビード壁部の中間部位から非溶接部位のうちのその他の部位にかけて延出されるとともに上記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
上記他側帯状ビード壁部は、上記他側半円状ビード壁部の中間部位から上記非溶接部位のうちのさらなる他の部位にかけて延出されるとともに上記パネル部とは反対側へ横断面湾曲壁状に突出するように形成されており、
上記一側及び他側の各帯状ビード壁部は、それぞれ、その各延出端部にて、上記非溶接部位の上記その他の部位及び上記さらなる他の部位から車室内に開口するようになっており、
音漏れ防止用遮音部材は、補強パネルの上記外周縁部を、上記一側長手状ビード壁部の上記開口部に加え、上記他側長手状ビード壁部の開口部、上記一側及び他側の帯状ビード壁部の車室内に開口する各開口部をも含めて、当該外周縁部に対する上記パネル部の対応環状部位との間にて封止するようにしたことを特徴とする。
【0039】
これによれば、音漏れ防止用遮音部材は、補強パネルの外周縁部を、一側長手状ビード壁部の延出端部に加え、他側長手状ビード壁部の開口部、一側及び他側の帯状ビード壁部の各開口部をも含めて、当該外周縁部に対するダッシュパネルのパネル部の対応環状部位との間にて封止するので、補強パネルは、一側及び他側のビード壁部、一側及び他側の帯状ビード壁部による強度の増大のもと、より一層ダッシュパネルの補強を改善しつつ、請求項4に記載の発明の作用効果をより一層向上し得る。
【0040】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1~5のいずれか1つに記載の自動車の車体パネル用補強構造において、
補強パネルは、少なくとも1つの位置決め用貫通穴部その他の貫通穴部を形成しえてなり、
音漏れ防止用遮音部材を第1音漏れ防止用遮音部材として、上記少なくとも1つの位置決め用貫通穴部その他の貫通穴部は、少なくとも1つの第2音漏れ防止用遮音部材により封止されていることを特徴とする。
【0041】
このように、補強パネルの少なくとも1つの位置決め用貫通穴部その他の貫通穴部を、少なくとも1つの第2音漏れ防止用遮音部材により封止することで、少なくとも1つの位置決め用貫通穴部その他の貫通穴部から車室内側への騒音の音漏れをも阻止し得る。その結果、請求項1~5のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明が自動車のダッシュパネル及びブレーキ機構に適用される一実施形態を示す部分縦断面図である。
図2図1のダッシュパネルの正面図である。
図3図1の補強パネルをダッシュパネルと共に示す正面図である。
図4図3の補強パネルを示す正面図である。
図5図3の5-5線に沿う断面図である。
図6図3の補強構造を、補強パネルの外周縁部とこれに対するダッシュパネルの対応部位との間を音漏れ防止用遮音部材により封止した状態にて示す正面図である。
図7図6の補強構造、及び音漏れ防止用遮音部材を有しない比較例における騒音の音圧レベルと騒音の周波数との関係を、ダッシュサイレンサーを伴わない場合において示す各グラフである。
図8図7の両グラフの各音圧レベルの差分と騒音の周波数との関係との関係を示すグラフである。
図9図6の補強構造、及び音漏れ防止用遮音部材を有しない比較例における騒音の音圧レベルと騒音の周波数との関係を、ダッシュサイレンサーを伴う場合において示す各グラフである。
図10図9の両グラフの各音圧レベルの差分と騒音の周波数との関係との関係を示すグラフである。
図11図7の各グラフ及び図9の各グラフをまとめて示す各グラフである。
図12図8の各グラフ及び図10の各グラフをまとめて示す各グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明すると、図1は、本発明が、ブレーキ機構BR及びダッシュサイレンサーDSと共に自動車のダッシュパネル10に適用される例を示している。
【0044】
当該自動車において、ダッシュパネル10は、エンジンルーム20と車室30を区画するように、エンジンルーム20と車室30との境界に設けられているもので、当該ダッシュパネル10は、図1にて示すような縦断面形状を有するように、かつ、図2にて示すような表面形状を有するように、鉄板により形成されている。これにより、当該ダッシュパネル10は、エンジンルーム20内に配設してなるエンジン(図示しない)から生ずるエンジン音(以下、騒音ともいう)を部分的に遮音して補強パネル40及びダッシュサイレンサーDSに入射する。本実施形態において、当該ダッシュパネル10の厚さは、所定の厚さ範囲0.8(mm)~1.0(mm)以内の値、例えば、1.0(mm)となっている。なお、車室30は、当該自動車において、エンジンルーム20に後続して設けられている。
【0045】
ダッシュサイレンサーDSは、図1にて示すごとく、補強パネル40(後述する)を介しダッシュパネル10に沿い車室30側から組み付けられており、当該ダッシュサイレンサーDSは、図1にて示すような縦断面形状を有するように構成されている。これにより、当該ダッシュサイレンサーDSは、エンジンルーム20内のエンジンからダッシュパネル10或いは当該ダッシュパネル10及び補強パネル40を介し車室30の内部へ進入する騒音を吸音する。
【0046】
ブレーキ機構BRは、図1にて示すごとく、ダッシュサイレンサーDS及び補強パネル40を介してダッシュパネル10に組み付けられている。当該ブレーキ機構BRは、機構本体BR1及びオペレーティングロッドBR2を備えており、機構本体BR1は、ダッシュパネル10のうち機構本体BR1に対する対応パネル部位(以下、機構本体対応パネル部位ともいう)に、エンジンルーム20側から支持されている。ここで、当該機構本体対応パネル部位は、中央穴部11(図1または図2参照)を含む。
【0047】
また、オペレーティングロッドBR2は、機構本体BR1からダッシュパネル10の上記機構本体対応パネル部位の貫通穴部11、補強パネル40の中央穴部41及びダッシュサイレンサーDSの貫通穴部H(図1参照)を通り同軸的に車室30側へ延出している。
【0048】
また、当該ブレーキ機構BRは、ブレーキペダルBR3を備えており、当該ブレーキペダルBR3は、その基端部にて、オペレーティングロッドBR2の延出端部に傾動可能に支持されている。なお、ダッシュサイレンサーDSの貫通穴部H、補強パネル40の中央穴部41及びダッシュパネル10の貫通穴部11は、共に同軸的に位置するように、それぞれ、ダッシュサイレンサーDS、補強パネル40及びダッシュパネル10に形成されている。
【0049】
このように構成した当該ブレーキ機構BRにおいては、ブレーキペダルBR3は、その原位置(図1にて図示実線参照)から図1にて図示2点鎖線により示すごとくダッシュパネル10側へ踏み込み可能となっている。
【0050】
しかして、オペレーティングロッドBR2が、ブレーキペダルBR3の踏み込みにより軸動すると、機構本体BR1が、その作動により、当該自動車の車輪を制動する。また、ブレーキペダルBR3の踏み込みが解放されると、オペレーティングロッドBR2が原位置に向けて軸動して、機構本体BR1の制動作動を解除する。
【0051】
補強パネル40は、図1或いは図3にて示すごとく、ダッシュパネル10の上記機構本体対応パネル部位に、後述のごとく車室30側から後述のごとく溶接により固着されている。これにより、当該補強パネル40は、ダッシュパネル10を、その上記機構本体対応パネル部位から補強する役割を果たす。
【0052】
当該補強パネル40は、図3或いは図4にて示すごとく、環状壁部40a及び付加壁部40bを一体的に有するように、所定の板形状からなる鉄板部材をプレス成形することで形成されており、当該補強パネル40は、その各外周縁部位にて、これに対するダッシュパネル10の上記機構本体対応パネル部位の各対応部位に当接されている。本実施形態では、補強パネル40の上記各外周縁部位は、以下、各外周縁当接部位S(図5参照)ともいう。当該各外周縁当接部位Sは、補強パネル40の外周縁部に間隔をおいて形成されており、当該各外周縁当接部位Sは、その中間点(以下、スポット溶接スポットS1ともいう)にて、これに対するダッシュパネル10の上記機構本体対応パネル部位の各対応点にスポット溶接により固着されている。
【0053】
環状壁部40aは、ダッシュパネル10の上記機構本体対応パネル部位を介しブレーキ機構BRのブレーキ本体BR1に対向するように位置しており、当該環状壁部40aは、補強パネル40の強度増大を目的として、両帯状中央側ビード壁部42a、42b及び4つの円弧状外側ビード壁部43a~43dを備えている。
【0054】
両帯状中央側ビード壁部42a、42bのうち、帯状中央側ビード壁部42aは、環状壁部40aに沿い中央穴部41から環状壁部40aの図3いは図4にて図示上端部にかけて延出されており、当該帯状中央側ビード壁部42aは、補強パネル40の環状壁部40aの表面側へ図5にて例示するごとく横断面略逆U字壁状に突出するように環状壁部40aに形成されている。これにより、帯状中央側ビード壁部42aは、その内側にて、ダッシュパネル10のうち帯状中央側ビード壁部42aに対する対応パネル部との間にて直線状空気通路部G(図1参照)を形成してなり、当該直線状空気通路部Gは、その上端開口部G1(図5参照)にて、車室30の内部に連通する。
【0055】
以下、本実施形態では、帯状中央側ビード壁部42aは、その内側に形成される上述の空気通路部Gをも含めた概念として把握する。これに伴い、帯状中央側ビード壁部42aの内側或いは帯状中央側ビード壁部42a内とは、空気通路部Gの内側或いは空気通路部G内をいう。
【0056】
ここで、当該帯状中央側ビード壁部42aは、その上端部(空気通路部Gの上端開口部G1に対応)にて、ダッシュサイレンサーDSを介して車室30の内部に連通しており、当該帯状中央側ビード壁部42aの下端部(空気通路部Gの下端開口部に対応)は、中央穴部41及びダッシュパネル10の貫通穴部11を通りエンジンルーム20の内部に連通する。以下、当該帯状中央側ビード壁部42aの上端部を符号G1により示すものとする。また、後述する各ビード壁部も、帯状中央側ビード壁部42aと同様に、その内部に形成される空気通路部をも含めた概念として把握するものとする。
【0057】
一方、帯状中央側ビード壁部42bは、図3にて示すごとく、中央穴部41を介し帯状中央側ビード壁部42aに対向するように環状壁部40aに形成されており、当該帯状中央側ビード壁部42bは、その内側に空気通路部を形成するとともに、補強パネル40の強度を増大するように、環状壁部40aの表面側へ横断面逆U字壁状に突出形成され、かつ、中央穴部41から図4にて図示下方へ延出されている。
【0058】
これにより、当該帯状中央側ビード壁部42bは、その上端部にて、中央穴部41内に開口するとともに、当該中央穴部41を介し帯状中央側ビード壁部42aの下端部内に連通し、かつ、ダッシュパネル10の貫通穴部11及びブレーキ本体BR1を介しエンジンルーム20内に連通する。
【0059】
また、4つの円弧状外側ビード壁部43a~43dは、図3図4及び図6のいずれかにて示すごとく、それぞれ、中央穴部41を中心としてその外周側にて円弧状(円周の4/1の円弧に対応する円弧状)となるように環状壁部40aに形成されている。換言すれば、当該4つの円弧状外側ビード壁部43a~43dは、図3図4及び図6のいずれかにて示すごとく、順次、環状壁部40aの中央穴部41を中心として右回りで90度間隔にて位置するように環状壁部40aに形成されている。
【0060】
ここで、4つの円弧状外側ビード壁部43a~43dのうち、円弧状外側ビード壁部43aは、環状壁部40aのうちの中央穴部41の上下方向中心線の図4にて図示右側及び中央穴部41の左右方向中心線の図4にて図示上側に位置する部位にて、中央穴部41を中心とする円弧形状となるように形成されている。また、当該円弧状外側ビード壁部43aは、その内側に円弧状空気通路部を形成するように、かつ、補強パネル40の強度の増大を図るように、環状壁部40aの表面側へ横断面略逆U字壁状に突出形成されている。なお、当該円弧状外側ビード壁部43aは、その円弧方向上端部にて、帯状ビード壁部42aの上端部内にその側方から連通する。
【0061】
円弧状外側ビード壁部43bは、環状壁部40aのうちの中央穴部41の上下方向中心線の図4にて図示右側及び中央穴部41の左右方向中心線の図4にて図示下側に位置する部位にて、中央穴部41を中心として円弧形状となるように形成されている。また、当該円弧状外側ビード壁部43bは、補強パネル40の強度の増大を図るとともに、その内側にて、ダッシュパネル10のうち円弧状外側ビード壁部43bに対する対応パネル部との間に円弧状空気通路部を形成するように、環状壁部40bの表面側へ横断面略逆U字壁状に突出形成されている。これに伴い、当該円弧状外側ビード壁部43bは、その下端部にて、帯状中央側ビード壁部42bの上端側部位を介し当該帯状中央側ビード壁部42bの上端側部位内にその側方から連通する。
【0062】
円弧状外側ビード壁部43cは、環状壁部40aのうちの中央穴部41の上下方向中心線の図4にて図示左側及び中央穴部41の左右方向中心線の図4にて図示下側に位置する部位にて、中央穴部41を中心とする円弧形状となるように形成されている。また、当該円弧状外側ビード壁部43cは、補強パネル40の強度の増大を図るとともに、その内側にてダッシュパネル20の円弧状外側ビード壁部43cとの間に空気通路部を形成するように、環状壁部40bの表面側へ横断面略逆U字壁状に突出形成されている。これに伴い、当該円弧状外側ビード壁部43cは、その下端部にて、帯状中央側ビード壁部42bの上端側部位を介し当該帯状中央側ビード壁部42bの上端側部位内にその側方から連通する。
【0063】
また、円弧状外側ビード壁部43dは、環状壁部40aのうちの中央穴部41の上下方向中心線の図4にて図示左側及び中央穴部41の左右方向中心線の図4にて図示上側に位置する部位にて、中央穴部41を中心とする円弧形状となるように形成されている。また、当該円弧状外側ビード壁部43dは、補強パネル40の強度の増大を図るとともに、その内側にて、ダッシュパネル20の円弧状外側ビード壁部43dに対する対応パネル部との間に円弧状空気通路部を形成するように、環状壁部40aの表面側へ横断面略逆U字状に突出形成されている。これに伴い、当該円弧状外側ビード壁部43dは、その上端部にて帯状中央側ビード壁部42aの上端部内にその側方から連通する。
【0064】
また、環状壁部40aは、図3或いは図4にて示すごとく、上述した両帯状中央側ビード壁部42a、42b及び4つの円弧状外側ビード壁部43a~43dとともに、補強パネル40の強度の増大を図るべく、複数の帯状半径方向ビード壁部44a~44fを備えている。
【0065】
当該複数の帯状半径方向ビード壁部44a~44fのうち、帯状半径方向ビード壁部44aは、円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向中間部位から環状壁部40aの右斜め上方側端部にかけて帯状に延出するように形成されており、当該帯状半径方向ビード壁部44aは、補強パネル40の強度の増大を図るとともに、その内側にて、ダッシュパネル20の帯状半径方向ビード壁部44aに対する対応パネル部位との間に空気通路部を形成するように、円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向中間部位から環状壁部40aの右斜め上方側端部に亘り表面側へ略逆U字壁状に突出形成されている。
【0066】
これに伴い、当該帯状半径方向ビード壁部44aは、円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向中間部位内に連通する。また、当該帯状半径方向ビード壁部44aは、その右斜め上端部(環状壁部40aの右斜め上方側端部に対応)から車室30内に連通する。このことは、当該帯状半径方向ビード壁部44aは、円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向中間部位から帯状中央側ビード壁部42aの内部を通り環状壁部40aの中央穴部41内に連通することを意味する。
【0067】
帯状半径方向ビード壁部44bは、円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向下端部から環状壁部40aのうち当該円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向下端部の近傍部位に亘り半径方向に帯状に形成されており、当該帯状半径方向ビード壁部44bは、補強パネル40の強度の増大を図るとともに、その内側にて、円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向下端部及び環状壁部40aのうち当該円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向下端部の近傍との間に空気通路部を形成するように、当該円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向下端部及び環状壁部40aのうち当該円弧状外側ビード壁部43aの円弧方向下端部の近傍からその表面側へ横断面略逆U字状に突出形成されている。
【0068】
これに伴い、帯状半径方向ビード壁部44bは、円形状ビード壁部43a、帯状半径方向ビード壁部44a、帯状中央側ビード壁部42aを通り環状壁部40aの中央穴部41内に連通する。また、当該帯状半径方向ビード壁部44bは、円形状ビード壁部43aのうち帯状半径方向ビード壁部44aの図4にて図示下側部位及び帯状半径方向ビード壁部44aを通り車室30内に連通する。
【0069】
帯状半径方向ビード壁部44cは、図4にて示すごとく、帯状半径方向ビード壁部44bに隣接するもので、当該帯状半径方向ビード壁部44cは、円弧状外側ビード壁部43bの円弧方向上端部及び環状壁部40aのうち当該円弧状外側ビード壁部43bの近傍部位に亘り半径方向に帯状に形成されている。
【0070】
また、当該帯状半径方向ビード壁部44cは、補強パネル40の強度の増大を図るとともに、その内側にて円弧状外側ビード壁部43bの円弧方向上端部及び環状壁部40aのうち当該円弧状外側ビード壁部43bの近傍部位との間に空気通路部を形成するように、当該円弧状外側ビード壁部43bの円弧方向上端部及び環状壁部40aのうち当該円弧状外側ビード壁部43bの近傍部位からその表面側へ横断面略逆U字状に突出形成されている。これに伴い、帯状半径方向ビード壁部44cは、円弧状外側ビート部43b及び帯状中央側ビート部42bの上端部を通り環状壁部40aの中央穴部41内に連通する。
【0071】
帯状半径方向ビード壁部44dは、円弧状外側ビード壁部43cの円弧方向中間部位から環状壁部40aの右斜め下方側端部にかけて帯状に延出するように形成されている。当該帯状半径方向ビード壁部44dは、円弧状外側ビード壁部43cの円弧方向中間部位から環状壁部40aの右斜め下方側端部に亘り表面側へ略逆U字壁状に突出形成されて、補強パネル40の強度の増大を図るようになっている。また、空気通路部が、当該帯状半径方向ビード壁部44dと当該帯状半径方向ビード壁部44dに対するダッシュパネル20の対応パネル部位との間に形成されている。
【0072】
これに伴い、帯状半径方向ビード壁部44dは、円弧状外側ビード壁部43cの円弧方向中間部位内に連通する。また、当該帯状半径方向ビード壁部44dは、その右斜め下端部(環状壁部40aの右斜め下方側端部に対応)から車室30内に連通する。このことは、当該帯状半径方向ビード壁部44dは、円弧状外側ビード壁部43cの円弧方向中間部位から帯状中央側ビード壁部42bの内部を通り環状壁部40aの中央穴部41内に連通することを意味する。
【0073】
帯状半径方向ビード壁部44eは、円弧状外側ビード壁部43cの円弧方向上端部、及び環状壁部40aのうちの当該円弧状外側ビード壁部43cの円弧方向上端部近傍外周部位に亘り半径方向に帯状に形成されている。
【0074】
また、当該帯状半径方向ビード壁部44eは、円弧状外側ビード壁部43cの円弧方向上端部及び環状壁部40aのうちの当該円弧状外側ビード壁部43cの円弧方向上端部の近傍外周部位からその表面側へ横断面略逆U字壁状に突出形成されて、補強パネル40の強度の増大を図るようになっている。また、空気通路部が帯状半径方向ビード壁部44eと、当該帯状半径方向ビード壁部44eに対するダッシュパネル20の対応パネル部位との間に形成されている。
【0075】
これに伴い、帯状半径方向ビード壁部44eは、その左端部にて、車室30内に連通するとともに、その右端部にて、円弧状外側ビート部43c及び帯状中央側ビート部42bの上端部を通り環状壁部40aの中央穴部41内に連通する。
【0076】
帯状半径方向ビード壁部44fは、帯状半径方向ビード壁部44eに隣接して位置するもので、当該帯状半径方向ビード壁部44fは、円弧状外側ビード壁部43dの円弧方向下端部から環状壁部40aのうち当該円弧状外側ビード壁部43dの円弧方向下端部の近傍外周部位に亘り半径方向に帯状に形成されている。
【0077】
また、当該帯状半径方向ビード壁部44fは、円弧状外側ビード壁部43dの円弧方向下端部及び環状壁部40aのうち当該円弧状外側ビード壁部43dの円弧方向下端部の近傍外周部位からその表面側へ横断面略逆U字壁状に突出形成されて、補強パネル40の強度の増大を図るようになっている。また、空気通路部が、帯状半径方向ビード壁部44fと当該帯状半径方向ビード壁部44fに対するダッシュパネル10の対応パネル部との間に形成されている。これに伴い、帯状半径方向ビード壁部44fは、円弧状ビード壁部43d及び帯状中央側ビード壁部42aの上端部を通り車室30内に連通する。
【0078】
また、環状壁部40aは、図3或いは図4にて示すごとく、4つの位置決め用貫通穴部45aを備えており、これら位置決め用貫通穴部45aは、環状壁部40aの中央穴部41と4つの円弧状外側ビード壁部43a~43dとの間の環状パネル部位45に図3にて示す位置にて形成されている。本実施形態では、補強パネル40は、環状パネル部位45にて、ダッシュパネル10のうち当該環状パネル部位45に対する対応パネル部に当接している。
【0079】
付加壁部40bは、図3或いは図4にて示すごとく、環状壁部40aと共にダッシュパネル20の補強を図るべく、環状壁部40aからその図4にて図示右側及び下側へ延出するように形成されている。ここで、当該付加壁部40bの外周部は、これに対するダッシュパネル20の対応部位との間にて、周方向に沿い間隔をおいて、スポット溶接により固着されている。なお、当該付加壁部40bには、環状壁部40aの中央側ビード壁部42bが中央穴部41から下方へ延出して形成されて、補強パネル40の強度の増大を図る。
【0080】
また、付加壁部40bは、幅広状ビード壁部46を設けてなり、当該幅広状ビード壁部46は、付加壁部40bのうちの中央側ビード壁部42bの延出端部周辺の部位にて、その表面側へ横断面略逆U字壁状に突出形成されて、補強パネル40の強度の増大を図るようになっている。また、空気通路部は、幅広状ビード壁部46と当該幅広状ビード壁部46に対するダッシュパネル10の対応パネル部との間に形成されている。ここで、当該幅広状ビード壁部46は、環状壁部40aの中央側ビード壁部42bの延出端部を下端部46aから車室30内に連通させている。なお、幅広状ビード壁部46の突出高さは、中央側ビード壁部42bの突出高さよりも低い。
【0081】
上述のように構成してなる補強パネル40は、上述した両帯状中央側ビード壁部42a、42b、4つの円弧状外側ビード壁部43a~43d、複数の帯状半径方向ビード壁部44a~44f及び幅広状ビード壁部46による強度増大との相まって、ダッシュパネル10を良好に補強し得る。
【0082】
次に、補強パネル40の外周縁部とこれに対するダッシュパネル10の対応パネル部位との間や補強パネル40の各貫通穴部45aからの音漏れ防止構成について、図6を参照して説明する。
【0083】
音漏れ防止用遮音部材50が、補強パネル40の外周縁部に沿い一様にかつ気密的に貼着されている。本実施形態では、音漏れ防止用遮音部材50として、ブチルテープが採用されている。詳細には、当該音漏れ防止用遮音部材50は、その幅方向一側縁部にて、ダッシュパネル10のうち補強パネル40の外周縁部の近傍部位に貼着されており、当該音漏れ防止用遮音部材50の幅方向他側端部は、補強パネル40の外周縁部の外面部位に一様に貼着されている。これにより、当該音漏れ防止用遮音部材50は、補強パネル40の外周縁部とこれに対するダッシュパネル10の対応環状部位との間を、音漏れを防止するように一様に気密的に封止する役割を果たす。
【0084】
また、各音漏れ防止部材60が、環状壁部40aの環状パネル部位45の各貫通穴部45aをその表面側から封止するように一様にかつ気密的に貼着されている。これにより、各音漏れ防止部材60は、環状壁部40aの各位置決め用貫通穴部45aからの音漏れを防止する役割を果たす。なお、当該各音漏れ防止部材60としては、上述したブチルテープが採用されている。
【0085】
以上のように構成した本実施形態において、当該自動車のエンジンがその作動によりエンジン音を騒音として発生すると、当該騒音は、ダッシュパネル10にそのほぼ全体に亘り入射する。
【0086】
このようにダッシュパネル10にそのほぼ全体に亘り入射する騒音のうち、ダッシュパネル10の補強パネル40に対する対応パネル部位(以下、補強パネル対応パネル部位ともいう)を除くパネル部位(以下、補強パネル非対応パネル部位ともいう)に入射する騒音は、当該補強パネル非対応パネル部位により遮音されつつダッシュサイレンサーDSに入射する。このようにダッシュパネル10の上記補強パネル非対応パネル部位からダッシュサイレンサーDSに入射する騒音は、当該ダッシュサイレンサーDSにより吸音される。
【0087】
また、ダッシュパネル10の上記補強パネル対応パネル部位に向かう騒音のうち、ブレーキ本体BR1の外周側を通り上記補強パネル対応パネル部位に向かう騒音は、当該補強パネル対応パネル部位により遮音されつつ当該補強パネル対応パネル部位を通り補強パネル40に入射する。
【0088】
また、ダッシュパネル10の上記補強パネル対応パネル部位に向かう騒音のうち、ブレーキ本体BR1を介しダッシュパネル10の上記補強パネル対応パネル部位に向かう騒音は、当該補強パネル対応パネル部位により遮音されつつ当該補強パネル対応パネル部位を通り補強パネル40に入射する。
【0089】
ここで、ダッシュパネル10の上記補強パネル対応パネル部位には貫通穴部11が形成されている。このため、上述のように補強パネル対応パネル部位に向かう騒音は、その少なくとも一部にて、当該補強パネル対応パネル部位よりも通り易い貫通穴部11に回り込んで当該貫通穴部11を通り補強パネル40に入射する。
【0090】
以上のようにしてブレーキ本体BR1の外周側を通る騒音及び当該ブレーキ本体BR1を介しダッシュパネル10の上記補強パネル対応パネル部位及びその貫通穴部11から補強パネル40に入射する騒音は、当該補強パネル40によりその全体でもって遮音されつつダッシュサイレンサーDSに入射して当該ダッシュサイレンサーDSにより吸音される。
【0091】
ここで、補強パネル40は、その外周縁部にて、当該外周縁部に対するダッシュパネル10の対応環状パネル部位との間において、音漏れ防止用遮音部材50により気密的に一様に封止されている。従って、上述したブレーキ本体BR1を介しダッシュパネル10の上記補強パネル対応パネル部位及びその貫通穴部11から補強パネル40に入射する騒音のうち、当該補強パネル対応パネル部位の貫通穴部11を通り帯状中央側ビード壁部42aに入射する騒音は、帯状中央側ビード壁部42aの空気通路部Gに沿いその開口端部G1(帯状中央側ビード壁部42aの上端部G1ともいう)に進む。
【0092】
このように帯状中央側ビード壁部42aの上端部G1に進む騒音は、音漏れ防止用遮音部材50のうち帯状中央側ビード壁部42aの上端部G1に対する対応封止部に入射すると、当該騒音は、上記対応封止部により遮音される。このことは、音漏れ防止用遮音部材50は、帯状中央側ビード壁部42aの上端部G1から車室30内への騒音としての音漏れを良好に防止し得ることを意味する。
【0093】
また、このように音漏れ防止用遮音部材50のうち帯状中央側ビード壁部42aの上端部G1に対する対応封止部により遮音される騒音は、帯状中央側ビード壁部42aの上端部G1から両円弧状外側ビード壁部43a、43d内に分かれて進む。
【0094】
このように両円弧状外側ビード壁部43a、43d内に分かれて進む騒音のうち、円弧状外側ビード壁部43a内に進む騒音は、帯状半径方向ビード壁部44aの内側を通りその延出端部に向けて進む、すると、このように進む騒音は、音漏れ防止用遮音部材50のうち帯状半径方向ビード壁部44aの延出端部に対する対応封止部により遮音される。このことは、音漏れ防止用遮音部材50は、帯状半径方向ビード壁部44aの延出端部から車室30内への騒音としての音漏れを良好に防止し得ることを意味する。
【0095】
一方、円弧状外側ビード壁部43d内に進む騒音は、帯状半径方向ビード壁部44fの内側を通りその延出端部に向けて進む、すると、このように進む騒音は、音漏れ防止用遮音部材50のうち帯状半径方向ビード壁部44fの延出端部に対する対応封止部により遮音される。このことは、音漏れ防止用遮音部材50は、帯状半径方向ビード壁部44fの延出端部から車室30内への騒音としての音漏れを良好に防止し得ることを意味する。
【0096】
また、上述したブレーキ本体BR1を介しダッシュパネル10の上記補強パネル対応パネル部位から補強パネル40に入射する騒音のうち当該補強パネル対応パネル部位の貫通穴部11を通り帯状中央側ビード壁部42bに入射する騒音は、帯状中央側ビード壁部42bに沿いその開口端部(帯状中央側ビード壁部42bの下端部)に向けて進む。
【0097】
このように帯状中央側ビード壁部42bの下端部に向けて進む騒音は、帯状中央側ビード壁部42bの下端部から幅広状ビード壁部46の内側を通りその延出端部に進む。すると、当該幅広状ビード壁部46の延出端部に進む騒音は、音漏れ防止用遮音部材50のうち幅広状ビード壁部46の延出端部に対する対応封止部により遮音される。このことは、音漏れ防止用遮音部材50は、幅広状ビード壁部46の延出端部から車室30内への騒音としての音漏れを良好に防止し得ることを意味する。
【0098】
また、上述のように帯状中央側ビード壁部42bの下端部に向けて進む騒音は、その途中において、両円弧状外側ビード壁部43b、43cの各内側にも分かれて進む。
【0099】
このように両円弧状外側ビード壁部43b、43cの各内側に分かれて進む騒音のうち、円弧状外側ビード壁部43bの内側に進む騒音は、両帯状半径方向ビード壁部44c、44bの各内側及び円弧状外側ビード壁部43aの内側を通り帯状半径方向ビード壁部44aの内側に進む。すると、このように進む騒音は、帯状半径方向ビード壁部44aの延出端部から音漏れ防止用遮音部材50のうち帯状半径方向ビード壁部44aの延出端部に対する対応封止部により遮音される。このことは、音漏れ防止用遮音部材50は、帯状半径方向ビード壁部44aの延出端部から車室30内への騒音としての音漏れを良好に防止し得ることを意味する。
【0100】
一方、円弧状外側ビード壁部43c内に進む騒音は、帯状半径方向ビード壁部44dの内側を通り円弧状外側ビード壁部43aから帯状半径方向ビード壁部44eの内側を通りその延出端部に向けて進む。すると、このように進む騒音は、音漏れ防止用遮音部材50のうち帯状半径方向ビード壁部44eの延出端部に対する対応封止部により遮音される。このことは、音漏れ防止用遮音部材50は、帯状半径方向ビード壁部44eの延出端部から車室30内への騒音としての音漏れを良好に防止し得ることを意味する。
【0101】
ここで、帯状中央側ビード壁部42bの長手方向中間部位から円弧状外側ビード壁部43cの内側に進む騒音は、その途中において、帯状半径方向ビード壁部44dの内側を通りその延出端部に向けて進む、すると、このように進む騒音は、音漏れ防止用遮音部材50のうち帯状半径方向ビード壁部44dの延出端部に対する対応封止部により遮音される。このことは、音漏れ防止用遮音部材50は、帯状半径方向ビード壁部44aの延出端部から車室30内への騒音としての音漏れを良好に防止し得ることを意味する。
【0102】
また、上述のように補強パネル40に入射する騒音のうち各位置決め用貫通穴部45aに入射する騒音は、各音漏れ防止部材60により遮音される。このことは、車室30の内部へ進みダッシュサイレンサーDSに入射する騒音は、各位置決め用貫通穴部45aに入射する騒音の分も減少することを意味する。
以上説明したように、ダッシュパネル10の貫通穴部11から補強パネル40に向けて進む騒音のうち、両帯状中央側ビード壁部42a、42bの各内部に進む騒音は、上述のごとく、帯状中央側ビード壁部42aの上端部、帯状半径方向ビード壁部44a、44d、44c、44f及び幅広状ビード壁部46の各延出端部にて、音漏れ防止用遮音部材50によりその遮音性能のもとに、車室30内への音漏れを良好に防止され得る。また、ダッシュパネル10の貫通穴部11から補強パネル40に向けて進む騒音のうち、各位置決め用貫通穴部11に入射する騒音は、各音漏れ防止用遮音部材60によりその遮音性能のもとに、車室30内への音漏れを良好に防止され得る。このことは、ダッシュサイレンサーDSへの騒音は、上述のように音漏れ防止される騒音分だけ減少することを意味する。
【0103】
従って、ダッシュサイレンサーDSにより吸音された後車室30の内部に出射する騒音も減少し得る。このことは、ダッシュパネル10から車室30の内部に進む騒音は、両音漏れ防止用遮音部材50、60の遮音性能及びダッシュサイレンサーDSの吸音性能の双方でもって、より一層良好に車室30の内部から防音され得ることを意味する。
【0104】
なお、補強パネル40は、両帯状中央側ビード壁部42a、42b、4つの円弧状外側ビード壁部43a~43d及び複数の帯状半径方向ビード壁部44a~44fによる各強度増大作用と相俟って、ダッシュパネル10を補強し得るので、ブレーキ機構BRにおけるブレーキペダルBR3の繰り返しの踏込がなされても、ダッシュパネル10は、補強パネル40による補強作用のもとに、正常な形状に長く維持され得る。
【0105】
ちなみに、上述のように構成してなるダッシュパネル10の補強構造(以下、実施例1という)について、音漏れ防止用遮音部材50、60による音漏れ防止効果を調べるために、当該自動車の助手席に着座した乗員の耳の位置における騒音の音圧レベル特性を騒音の周波数との関係において音圧測定装置(図示しない)により測定してみた。この測定の結果によれば、グラフ1が、図7にて示すごとく、実施例1の音圧レベル特性として得られた。なお、実施例1は、ダッシュサイレンサーDSを伴わない補強構造である。
【0106】
また、比較対象として、当該自動車のダッシュパネル10の補強構造において、音漏れ防止用遮音部材50、60を採用しない補強構造(以下、比較例1という)を準備し、当該比較例1についても、助手席に着座した乗員の耳の位置における騒音の音圧レベル特性を騒音の周波数との関係において上記音圧測定装置により測定してみた。この測定の結果によれば、グラフ2が、図7にて示すごとく、比較例1の音圧特性として得られた。なお、比較例1は、ダッシュサイレンサーDSを伴わない補強構造である。
【0107】
両音圧特性を対比してみると、グラフ1における騒音の音圧レベルは、騒音の周波数の高周波数領域1250(Hz)~6300(Hz)において、グラフ2における騒音の音圧レベルよりも低いことが分かった。
【0108】
また、グラフ1の音圧特性のグラフ2の音圧特性との差分を求めてみたところ、グラフ3が、図8にて示すごとく、当該差分として得られた。これによれば、騒音の高周波数領域1250(Hz)~6300(Hz)における音圧レベルの平均値は、3.6(dB)であった。このことは、ダッシュサイレンサーDSを伴わない実施例1は、音漏れ防止用遮音部材及びダッシュサイレンサーDSを伴わない比較例1に比べて、騒音の音圧レベルにおいて、上記高周波数領域では、平均値で3.6(dB)の低下を確保し得ることを意味する。
【0109】
これによれば、ダッシュサイレンサーDSを採用しなくても、音漏れ防止用遮音部材50、60を採用する補強構造は、車室30内の防音効果を良好に改善し得ることが分かる。
【0110】
次に、実施例1及び比較例1が、共に、ダッシュサイレンサーDSを伴う場合について、上述と同様に当該自動車の助手席に着座した乗員の耳の位置における騒音の音圧レベル特性を騒音の周波数との関係において上記音圧測定装置により測定してみた。
【0111】
この測定結果によれば、グラフ4が、図9にて示すごとく、ダッシュサイレンサーDSを伴う実施例1の音圧特性として得られるとともに、グラフ5が、図9にて示すごとく、ダッシュサイレンサーDSを伴うが音漏れ防止用遮音部材を有しない比較例1の音圧特性として得られた。
【0112】
両音圧特性を対比してみると、グラフ4における騒音の音圧レベルは、騒音の周波数の高周波数領域1250(Hz)~6300(Hz)において、グラフ5における騒音の音圧レベルよりも低いことが分かった。
【0113】
また、グラフ4の音圧特性のグラフ5の音圧特性との差分を求めてみたところ、グラフ6が、図10にて示すごとく、当該差分として得られた。これによれば、騒音の高周波数領域1250(Hz)~6300(Hz)における音圧レベルの平均値は、2.1(dB)であった。このことは、ダッシュサイレンサーDSを伴う実施例1は、ダッシュサイレンサーDSを伴う比較例1に比べて、上記高周波数領域では、騒音の音圧レベルにおいて、平均値で2.1(dB)の低下を確保し得ることを意味する。
【0114】
これによれば、ダッシュサイレンサーDSは、音漏れ防止用遮音部材50、60を採用する補強構造の音漏れ封止効果と相俟って、車室30内への騒音をより一層良好に吸音することができ、その結果、車室30内の防音効果がより一層改善され得ることが分かる。
【0115】
また、上述のようにダッシュサイレンサーDSを伴わない実施例1及びダッシュサイレンサーDSを伴わず音漏れ防止用遮音部材を有さない比較例1の場合について、音圧特性をまとめた結果の各グラフが、図11にて示すごとく、各グラフ7a、7b、8a及び8bとして示されている。ここで、グラフ7aがグラフ4に相当し、グラフ7bがグラフ5に相当する。また、グラフ8aがグラフ1に相当し、グラフ8bがグラフ2に相当する。
【0116】
また、グラフ7aの音圧特性とグラフ7bの音圧特性との音圧レベルの差分及びグラフ8aの音圧特性とグラフ8bの音圧特性との音圧レベルの差分をまとめた結果の各グラフが、図12にて示すごとく、両グラフ9、10として示されている。ここで、グラフ9は、グラフ7aの音圧特性とグラフ7bの音圧特性との音圧レベルの差分を示すもので、当該音圧レベルの差分は、グラフ3(図8参照)の音圧レベルの差分に相当する。また、グラフ10は、グラフ8aの音圧特性とグラフ8bの音圧特性との音圧レベルの差分を示すもので、当該音圧レベルの差分は、グラフ6(図10参照)の音圧レベルの差分に相当する。
【0117】
これによれば、上述したダッシュサイレンサーDSを伴う実施例1と比較例1との間の音圧レベルの差分が、騒音の高周波数領域において、上述したダッシュサイレンサーDSを伴わない実施例1と比較例1との間の音圧レベルの差分よりも良い一層小さい値の範囲において、良好に確保され得ることが分かる。
【0118】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような変形例が挙げられる。
【0119】
(1)本発明の実施にあたり、補強パネル40がビード壁部を有する構成は、上記実施形態にて述べた構成に限ることなく、必要に応じて適宜変更してもよい。
【0120】
ここで、上記実施形態にて述べた各円弧状ビード壁部43a~43dのうち、例えば、両円弧状ビード壁部43a、43bでもって、一側の半円状ビード壁部を構成し、残りの両円弧状ビード壁部43c、43dでもって、他側の半円状ビード壁部を構成するようにしてもよい。
【0121】
(2)本発明の実施にあたり、補強パネル40の各位置決め用貫通穴部は、上記実施形態にて述べた位置に限ることなく、必要に応じて変更してもよい。
【0122】
(3)本発明の実施にあたり、音漏れ防止用遮音部材は、上記実施形態にて述べたブチルテープに限ることなく、例えば、水性エマルジョン系の塗布型制振塗料であってもよい。
【0123】
(4)本発明の実施にあたり、ダッシュパネルや補強パネルは、鉄板に限ることなく、金属パネルであればよい。
【0124】
(5)本発明の実施にあたり、上記実施形態にて述べた補強構造は、ダッシュパネル10に限ることなく、当該自動車の床を構成するパネルその他の各種の車体パネルに適用してもよい。
【符号の説明】
【0125】
BR…ブレーキ機構、DS…ダッシュサイレンサー、10…ダッシュパネル、
11…貫通穴部、42a、42b…長手状ビード壁部、
43a~43d…円弧状ビード壁部、44a~44f…帯状ビード壁部、
45a…位置決め用貫通穴部、50、60…音漏れ防止用遮音部材。
図1
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