(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】タービン制御装置
(51)【国際特許分類】
F01D 19/00 20060101AFI20230130BHJP
F01D 17/08 20060101ALI20230130BHJP
F01D 17/10 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
F01D19/00 E
F01D17/08 A
F01D17/10 B
F01D17/10 C
(21)【出願番号】P 2019215741
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岸 尚史
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山根 雄介
(72)【発明者】
【氏名】筒井 一成
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-204905(JP,A)
【文献】特開2013-217200(JP,A)
【文献】特開2018-080672(JP,A)
【文献】特開2007-046577(JP,A)
【文献】特開昭61-016210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 19/00
F01D 17/10
F01D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主蒸気止め弁と蒸気加減弁とが設置された主蒸気管を介して過熱器から蒸気が流入する高圧タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気が低温再熱蒸気管を介して再熱器に流入した後に、インターセプト弁と再熱蒸気止め弁とが設置された高温再熱蒸気管を介して前記再熱器で加熱された蒸気が流入する中圧タービンと、
前記中圧タービンから排出された蒸気が流入し、復水器へ排出される低圧タービンと、
前記主蒸気管において前記過熱器と前記主蒸気止め弁との間に一端が連結されていると共に、前記低温再熱蒸気管に他端が連結されており、高圧タービンバイパス弁が設置されている高圧タービンバイパス管と、
前記高温再熱蒸気管において前記再熱器と前記インターセプト弁との間に一端が連結されていると共に、他端が前記復水器に連結されており、低圧タービンバイパス弁が設置されている低圧タービンバイパス管と、
を有する蒸気タービンシステムについて制御するタービン制御装置であって、
前記蒸気加減弁において流す蒸気の流量に基づいて、前記蒸気加減弁の設定開度を求める、蒸気流量・開度変換器と、
前記設定開度を補正するオフセット値を求める、オフセット値発生器と、
前記設定開度と前記オフセット値とを加算することによって、前記設定開度を補正した補正開度を求める加算器と、
前記補正開度と前記蒸気加減弁について実測された実開度との間の差分値を求め、前記差分値に応じて前記蒸気加減弁の開度を制御する減算器と
を有し、
前記オフセット値発生器は、前記高圧タービンの内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室の温度に基いて、前記オフセット値を求める、
タービン制御装置。
【請求項2】
主蒸気止め弁と蒸気加減弁とが設置された主蒸気管を介して過熱器から蒸気が流入する高圧タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気が低温再熱蒸気管を介して再熱器に流入した後に、インターセプト弁と再熱蒸気止め弁とが設置された高温再熱蒸気管を介して前記再熱器で加熱された蒸気が流入する中圧タービンと、
前記中圧タービンから排出された蒸気が流入し、復水器へ排出される低圧タービンと、
前記主蒸気管において前記過熱器と前記主蒸気止め弁との間に一端が連結されていると共に、前記低温再熱蒸気管に他端が連結されており、高圧タービンバイパス弁が設置されている高圧タービンバイパス管と、
前記高温再熱蒸気管において前記再熱器と前記インターセプト弁との間に一端が連結されていると共に、他端が前記復水器に連結されており、低圧タービンバイパス弁が設置されている低圧タービンバイパス管と、
を有する蒸気タービンシステムについて制御するタービン制御装置であって、
前記蒸気加減弁において流す蒸気の流量に基づいて、前記蒸気加減弁の設定開度を求める、蒸気流量・開度変換器と、
前記設定開度を補正するオフセット値を求める、オフセット値発生器と、
前記設定開度と前記オフセット値とを加算することによって、前記設定開度を補正した補正開度を求める加算器と、
前記補正開度と前記蒸気加減弁について実測された実開度との間の差分値を求め、前記差分値に応じて前記蒸気加減弁の開度を制御する減算器と
を有し、
前記オフセット値発生器は、前記高圧タービンにおいて蒸気が第一段のタービン段落へ供給される入口部分の圧力と、前記高圧タービンの内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室の圧力との差分値に基いて、前記オフセット値を求める、
タービン制御装置。
【請求項3】
主蒸気止め弁と蒸気加減弁とが設置された主蒸気管を介して過熱器から蒸気が流入する高圧タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気が低温再熱蒸気管を介して再熱器に流入した後に、インターセプト弁と再熱蒸気止め弁とが設置された高温再熱蒸気管を介して前記再熱器で加熱された蒸気が流入する中圧タービンと、
前記中圧タービンから排出された蒸気が流入し、復水器へ排出される低圧タービンと、
前記主蒸気管において前記過熱器と前記主蒸気止め弁との間に一端が連結されていると共に、前記低温再熱蒸気管に他端が連結されており、高圧タービンバイパス弁が設置されている高圧タービンバイパス管と、
前記高温再熱蒸気管において前記再熱器と前記インターセプト弁との間に一端が連結されていると共に、他端が前記復水器に連結されており、低圧タービンバイパス弁が設置されている低圧タービンバイパス管と、
を有する蒸気タービンシステムについて制御するタービン制御装置であって、
前記主蒸気止め弁において流す蒸気の流量に基づいて、前記主蒸気止め弁の設定開度を求める、蒸気流量・開度変換器と、
前記設定開度を補正するオフセット値を求める、オフセット値発生器と、
前記設定開度と前記オフセット値とを加算することによって、前記設定開度を補正した補正開度を求める加算器と、
前記補正開度と前記主蒸気止め弁について実測された実開度との間の差分値を求め、前記差分値に応じて前記主蒸気止め弁の開度を制御する減算器と
を有し、
前記オフセット値発生器は、低速ヒートソークの実行の際に、前記高圧タービンにおいて第一段タービン段落を構成する部分の内面メタル温度が上昇しない場合に、前記オフセット値が時間に応じて増加し、前記低速ヒートソークの実行の際に、前記高圧タービンにおいて第一段タービン段落を構成する部分の内面メタル温度が上昇した場合に、前記オフセット値が時間に応じて増加せずに保持するように、前記オフセット値を求める、
タービン制御装置。
【請求項4】
前記オフセット値発生器は、前記再熱蒸気止め弁について全開状態にする時に、前記オフセット値をゼロにする、
請求項3に記載のタービン制御装置。
【請求項5】
主蒸気止め弁と蒸気加減弁とが設置された主蒸気管を介して過熱器から蒸気が流入する高圧タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気が低温再熱蒸気管を介して再熱器に流入した後に、インターセプト弁と再熱蒸気止め弁とが設置された高温再熱蒸気管を介して前記再熱器で加熱された蒸気が流入する中圧タービンと、
前記中圧タービンから排出された蒸気が流入し、復水器へ排出される低圧タービンと、
前記主蒸気管において前記過熱器と前記主蒸気止め弁との間に一端が連結されていると共に、前記低温再熱蒸気管に他端が連結されており、高圧タービンバイパス弁が設置されている高圧タービンバイパス管と、
前記高温再熱蒸気管において前記再熱器と前記インターセプト弁との間に一端が連結されていると共に、他端が前記復水器に連結されており、低圧タービンバイパス弁が設置されている低圧タービンバイパス管と、
を有する蒸気タービンシステムについて制御するタービン制御装置であって、
前記主蒸気止め弁において流す蒸気の流量に基づいて、前記主蒸気止め弁の設定開度を求める、蒸気流量・開度変換器と、
前記設定開度を補正するオフセット値を求める、オフセット値発生器と、
前記設定開度と前記オフセット値とを加算することによって、前記設定開度を補正した補正開度を求める加算器と、
前記補正開度と前記主蒸気止め弁について実測された実開度との間の差分値を求め、前記差分値に応じて前記主蒸気止め弁の開度を制御する減算器と
を有し、
前記オフセット値発生器は、低速ヒートソークの実行の際に、前記高圧タービンの第一段タービン段落の入口部分の圧力が、前記低温再熱蒸気管の圧力以下である場合に、前記オフセット値が時間に応じて増加し、前記高圧タービンの第一段タービン段落の入口部分の圧力が、前記低温再熱蒸気管の圧力よりも高い場合に、前記オフセット値が時間に応じて増加せずに保持するように、前記オフセット値を求める、
タービン制御装置。
【請求項6】
主蒸気止め弁と蒸気加減弁とが設置された主蒸気管を介して過熱器から蒸気が流入する高圧タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気が低温再熱蒸気管を介して再熱器に流入した後に、インターセプト弁と再熱蒸気止め弁とが設置された高温再熱蒸気管を介して前記再熱器で加熱された蒸気が流入する中圧タービンと、
前記中圧タービンから排出された蒸気が流入し、復水器へ排出される低圧タービンと、
前記主蒸気管において前記過熱器と前記主蒸気止め弁との間に一端が連結されていると共に、前記低温再熱蒸気管に他端が連結されており、高圧タービンバイパス弁が設置されている高圧タービンバイパス管と、
前記高温再熱蒸気管において前記再熱器と前記インターセプト弁との間に一端が連結されていると共に、他端が前記復水器に連結されており、低圧タービンバイパス弁が設置されている低圧タービンバイパス管と、
を有する蒸気タービンシステムについて制御するタービン制御装置であって、
前記主蒸気止め弁において流す蒸気の流量に基づいて、前記主蒸気止め弁の設定開度を求める、蒸気流量・開度変換器と、
前記設定開度を補正するオフセット値を求める、オフセット値発生器と、
前記設定開度と前記オフセット値とを加算することによって、前記設定開度を補正した補正開度を求める加算器と、
前記補正開度と前記主蒸気止め弁について実測された実開度との間の差分値を求め、前記差分値に応じて前記主蒸気止め弁の開度を制御する減算器と
を有し、
前記オフセット値発生器は、前記主蒸気止め弁の内面メタル温度に基いて前記オフセット値を求める、
タービン制御装置。
【請求項7】
主蒸気止め弁と蒸気加減弁とが設置された主蒸気管を介して過熱器から蒸気が流入する高圧タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気が低温再熱蒸気管を介して再熱器に流入した後に、インターセプト弁と再熱蒸気止め弁とが設置された高温再熱蒸気管を介して前記再熱器で加熱された蒸気が流入する中圧タービンと、
前記中圧タービンから排出された蒸気が流入し、復水器へ排出される低圧タービンと、
前記主蒸気管において前記過熱器と前記主蒸気止め弁との間に一端が連結されていると共に、前記低温再熱蒸気管に他端が連結されており、高圧タービンバイパス弁が設置されている高圧タービンバイパス管と、
前記高温再熱蒸気管において前記再熱器と前記インターセプト弁との間に一端が連結されていると共に、他端が前記復水器に連結されており、低圧タービンバイパス弁が設置されている低圧タービンバイパス管と、
を有する蒸気タービンシステムについて制御するタービン制御装置であって、
前記蒸気加減弁において流す蒸気の流量に基づいて、前記蒸気加減弁の設定開度を求める、蒸気流量・開度変換器と、
前記設定開度を補正するオフセット値を求める、オフセット値発生器と、
前記設定開度と前記オフセット値とを加算することによって、前記設定開度を補正した補正開度を求める加算器と、
前記補正開度と前記蒸気加減弁について実測された実開度との間の差分値を求め、前記差分値に応じて前記蒸気加減弁の開度を制御する減算器と
を有し、
前記オフセット値発生器は、前記高圧タービンの内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室の温度が、予め定めた規定温度以上である場合には、前記オフセット値が時間に応じて増加し、前記高圧タービンの前記排気室の温度が、前記規定温度未満である場合には、前記オフセット値が時間に応じて増加せずに保持し、前記インターセプト弁について全開状態にするときには、前記オフセット値が時間に応じて減少するように、前記オフセット値を求める、
タービン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タービン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンバイパス系統を有する蒸気タービンシステムにおいては、タービン起動時に、過熱器で発生する蒸気が最適な条件に到達するまでの間、蒸気タービンを迂回して蒸気が過熱器から復水器へ流れるように、タービンバイパス系統が利用される。このとき、蒸気弁は、蒸気によって加熱されるため、熱膨張が生じ、弁棒と弁箱との間において伸び差が生ずる場合がある。その結果、たとえば、蒸気弁を全閉(開度0%)にするように開度指令を出力したときであっても、弁体と弁座との間にギャップが生じて、蒸気が蒸気弁を流れる場合があるので、蒸気タービンシステムを最適に起動することが困難な場合がある。そして、風損の発生によって、高圧タービンの排気室や低圧タービンの最終段チップ部が過熱され、羽根などの部材に損傷が発生する場合がある。
【0003】
上記のような課題を克服するために、たとえば、蒸気弁において弁棒と弁箱との間で生ずる伸び差を考慮して、開度指令信号を補正する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、上記課題を十分に克服することが困難な場合がある。たとえば、従来においては、蒸気弁のメタル温度などに関わらずに、暖機状態で実測したメタル温度から求めた不変のオフセット値で開度を補正しているので、暖機状態で実測した時のメタル温度と異なるメタル温度になった場合には、開度指令の開度と実際の開度との間に差が生ずる。その結果、蒸気加減弁とインターセプト弁を通る流量の指令値と実際の流量とのに大きな差が発生するので、高圧タービン排気室において過熱などが生ずる場合がある。このように、蒸気タービンシステムについて最適に起動することが困難な場合があり、蒸気タービンを安定に運転させることが容易でない場合がある。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、蒸気タービンをより安定に運転させることが可能な、タービン制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のタービン制御装置は、高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンと高圧タービンバイパス管と低圧タービンバイパス管とを有する蒸気タービンシステムについて制御する。高圧タービンは、主蒸気止め弁と蒸気加減弁とが設置された主蒸気管を介して過熱器から蒸気が流入する。中圧タービンは、高圧タービンから排出された蒸気が低温再熱蒸気管を介して再熱器に流入した後に、インターセプト弁と再熱蒸気止め弁とが設置された高温再熱蒸気管を介して再熱器で加熱された蒸気が流入する。低圧タービンは、中圧タービンから排出された蒸気が流入し、復水器へ排出される。高圧タービンバイパス管は、主蒸気管において過熱器と主蒸気止め弁との間に一端が連結されていると共に、低温再熱蒸気管に他端が連結されており、高圧タービンバイパス弁が設置されている。低圧タービンバイパス管は、高温再熱蒸気管において再熱器とインターセプト弁との間に一端が連結されていると共に、他端が復水器に連結されており、低圧タービンバイパス弁が設置されている。タービン制御装置は、蒸気流量・開度変換器とオフセット値発生器と加算器と減算器とを有する。蒸気流量・開度変換器は、蒸気加減弁において流す蒸気の流量に基づいて、蒸気加減弁の設定開度を求める。オフセット値発生器は、設定開度を補正するオフセット値を求める。加算器は、設定開度とオフセット値とを加算することによって、設定開度を補正した補正開度を求める。減算器は、補正開度と蒸気加減弁について実測された実開度との間の差分値を求め、差分値に応じて蒸気加減弁の開度を制御する。ここでは、オフセット値発生器は、高圧タービンの内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室の温度に基いて、オフセット値を求める。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態に係る蒸気タービンシステムを模式的に示す図である。
【
図1B】
図1Bは、第1実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100の要部を示すブロック図である。
【
図1C】
図1Cは、第1実施形態に係る蒸気タービンシステムの制御部100において、高圧タービン21の排気室の温度S401とオフセット値S311bとの関係を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、第2実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100の要部を示すブロック図である。
【
図2B】
図2Bは、第2実施形態に係る蒸気タービンシステムの制御部100において、圧力S402aから圧力S402bを差分した差分値(S402a-S402b)とオフセット値S311bとの関係を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、第3実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100の要部を示すブロック図である。
【
図3B】
図3Bは、第3実施形態に係る蒸気タービンシステムの制御部100において、論理積演算部321aが出力した出力信号S321aとオフセット値S311aとの関係を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、第4実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100の要部を示すブロック図である。
【
図4B】
図4Bは、第4実施形態に係る蒸気タービンシステムの制御部100において、論理積演算部321aが出力した出力信号S321aとオフセット値S311aとの関係を示す図である。
【
図5】
図5は、第5実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100の要部を示すブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、第6実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100の要部を示すブロック図である。
【
図6B】
図6Bは、第6実施形態に係る蒸気タービンシステムの制御部100において、主蒸気止め弁V10aの内面メタル温度S406とオフセット値S311aとの関係を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、第7実施形態に係る蒸気タービンシステムにおいて、制御部100の要部を示すブロック図である。
【
図7B】
図7Bは、第7実施形態に係る蒸気タービンシステムの制御部100において、入力信号S407aおよび入力信号S407bと、オフセット値S311bとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
<第1実施形態>
[A]蒸気タービンシステム1の構成
タービンバイパス系統を有する再熱式の蒸気タービンシステム1に関して、
図1Aを用いて説明する。本実施形態では、蒸気タービン20が、高圧タービン21、中圧タービン22、および、低圧タービン23を含み、ボイラ2が過熱器10と再熱器30とを含む場合について説明する。
【0011】
蒸気タービンシステム1において、過熱器10と高圧タービン21との間には、主蒸気管P10が設けられており、主蒸気管P10には、主蒸気止め弁V10aと蒸気加減弁V10bとが設置されている。高圧タービン21と再熱器30との間には、低温再熱蒸気管P21(第1再熱蒸気管)が設けられており、低温再熱蒸気管P21には、逆止弁V21が設けられている。再熱器30と中圧タービン22との間には、高温再熱蒸気管P30(第2再熱蒸気管)が設けられており、高温再熱蒸気管P30には、インターセプト弁V30aと再熱蒸気止め弁V30bとが設置されている。中圧タービン22と低圧タービン23との間には、クロスオーバー管P22が設けられている。
【0012】
蒸気タービンシステム1では、過熱器10で発生した蒸気が、主蒸気管P10を流れ、主蒸気止め弁V10aと蒸気加減弁V10bとを、順次、介して、高圧タービン21に流入する。そして、高圧タービン21から排出された蒸気が、低温再熱蒸気管P21を流れ、逆止弁V21を介して、再熱器30に流入する。そして、再熱器30で再熱された蒸気が、高温再熱蒸気管P30を流れ、インターセプト弁V30aと再熱蒸気止め弁V30bとを順次介して、中圧タービン22に流入する。そして、中圧タービン22から排出された蒸気が、クロスオーバー管P22を流れて、低圧タービン23に流入する。その後、低圧タービン23から排気された蒸気は、復水器60で凝縮(復水)される。図示を省略しているが、その復水器60で凝縮された水(復水)は、過熱器10に戻される。
【0013】
蒸気タービン20においては、高圧タービン21と中圧タービン22と低圧タービン23との間においてタービンロータが同軸に連結されており、これらの各部に作動流体として流入した蒸気が膨張して仕事を行うことによって、タービンロータが回転する。そして、そのタービンロータの回転によって、発電機70が駆動し、発電が行われる。
【0014】
上記の他に、蒸気タービンシステム1においては、高圧タービンバイパス管PB1と低圧タービンバイパス管PB2とが設置されている。
【0015】
高圧タービンバイパス管PB1は、主蒸気管P10において過熱器10と主蒸気止め弁V10aとの間に一端が連結されていると共に、低温再熱蒸気管P21において逆止弁V21と再熱器30との間に他端が連結されている。高圧タービンバイパス管PB1には、高圧タービンバイパス弁VB1が設置されている。
【0016】
これに対して、低圧タービンバイパス管PB2は、高温再熱蒸気管P30において再熱器30とインターセプト弁V30aとの間に一端が連結されていると共に、他端が復水器60に連結されている。低圧タービンバイパス管PB2には、低圧タービンバイパス弁VB2が設置されている。
【0017】
上記の蒸気タービンシステム1を起動させるタービン起動時においては、過熱器10で発生する蒸気が最適な条件に到達するまでの間、蒸気を過熱器10から蒸気タービン20を迂回して復水器60へ流すために、高圧タービンバイパス管PB1と低圧タービンバイパス管PB2とが利用される。具体的には、高圧タービンバイパス管PB1においては、過熱器10から蒸気が主蒸気管P10を介して流入し、高圧タービンバイパス弁VB1を通って、低温再熱蒸気管P21に流出する。 そして、低圧タービンバイパス管PB2においては、再熱器30から蒸気が高温再熱蒸気管P30を介して流入し、低圧タービンバイパス弁VB2を通って復水器60に流出する。このとき、高圧タービンバイパス弁VB1および低圧タービンバイパス弁VB2は、圧力見合いで制御される。
【0018】
このようにすることによって、タービン起動時間の短縮、および、タービンの起動制御の効率化を実現することができる。
【0019】
そして、過熱器10で発生する蒸気が最適条件になってタービンを起動させる段階になったときは、蒸気加減弁V10bを流れる蒸気の流量とインターセプト弁V30aを流れる蒸気の流量との比率を最適に保った状態で、蒸気タービンに流入させる蒸気流量を増加させる。これにより、所望の蒸気流量で蒸気タービンを増速させることができる。
【0020】
なお、タービン起動前においては、主蒸気止め弁V10a、蒸気加減弁V10b、インターセプト弁V30a、および、再熱蒸気止め弁V30bは、全て閉じられた全閉状態にされる。このとき、高圧タービンバイパス弁VB1および低圧タービンバイパス弁VB2は、圧力制御運転に対応した動作が行なわれる。そして、タービンリセットの際には、主蒸気止め弁V10aは、全て開けられた全開状態にされ、インターセプト弁V30aを開ける動作が開始される。起動開始のときには、蒸気加減弁V10bおよび再熱蒸気止め弁V30bの副弁を開ける動作が開始され、副弁を全て開けた状態で再熱蒸気止め弁V30bの主弁が全て開けられた状態にされ、その後、インターセプト弁V30aを開ける動作が開始される。そして、規定の負荷に到達したところで、インターセプト弁V30aが全て開けられた状態(全開)にされ、蒸気加減弁V10bを用いて負荷が制御される。負荷運転中においては、高圧タービンバイパス弁VB1および低圧タービンバイパス弁VB2は、全て閉じられた状態にされる。
【0021】
図1Aでは図示を省略しているが、蒸気タービンシステム1は、制御部(タービン制御装置)を備えており、その制御部によって各部の動作が制御される。制御部は、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって、各部の動作を制御する。
【0022】
[B]制御部100の構成
蒸気タービンシステム1を構成する制御部100(タービン制御装置)について、
図1Bを用いて説明する。
図1Bでは、蒸気加減弁V10bの動作について制御を行う部分について示している。
【0023】
図1Aでは図示を省略しているが、
図1Bに示すように、蒸気タービンシステム1(
図1A参照)には、開度検出器K10bが設けられている。開度検出器K10bは、蒸気加減弁V10bの開度を検出し、検出開度S10bのデータを出力する。
【0024】
制御部100は、
図1Bに示すように、蒸気加減弁V10bの開度を制御するために、回転数・蒸気流量変換器101bと蒸気流量・開度変換器102bとオフセット値発生器311bと加算器312bと減算器103bとを有する。制御部100を構成する各部について順次説明する。
【0025】
[B-1]回転数・蒸気流量変換器101b
回転数・蒸気流量変換器101bは、タービン回転数S20のデータが入力信号として入力される。タービン回転数S20は、蒸気タービン20を構成するタービンロータの回転数を回転数検出器(図示省略)が検出することによって得られる。そして、回転数・蒸気流量変換器101bは、その入力されたタービン回転数S20を蒸気流量S101bに変換し、蒸気流量S101bのデータを出力信号として出力する。
【0026】
ここでは、蒸気加減弁V10bにおける蒸気流量S101bのデータが回転数・蒸気流量変換器101bから出力される。
【0027】
[B-2]蒸気流量・開度変換器102b
蒸気流量・開度変換器102bは、回転数・蒸気流量変換器101bから蒸気流量S101bのデータが入力信号として入力される。そして、蒸気流量・開度変換器102bは、その入力された蒸気流量S101bを蒸気加減弁V10bの設定開度S102bに変換し、その設定開度S102bのデータを出力信号として出力する。つまり、蒸気流量・開度変換器102bは、蒸気加減弁V10bにおける蒸気流量S101bに基いて、蒸気加減弁V10bの設定開度を求める。
【0028】
ここでは、蒸気流量・開度変換器102bは、予め求められている、蒸気加減弁V10bの蒸気流量と蒸気加減弁V10bの開度との関係から、蒸気流量S101bに対応する設定開度S102bを求めて出力する。
【0029】
[B-3]オフセット値発生器311b
オフセット値発生器311bは、高圧タービン21の内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室(図示省略)の温度S401(高圧タービン排気室温度)のデータが入力信号として入力される。この温度S401は、高圧タービン21の排気室の温度を温度センサ(図示省略)で実際に測定することによって得られる。
【0030】
そして、オフセット値発生器311bは、その入力された温度S401に基づいて、蒸気加減弁V10bの設定開度を補正するオフセット値S311b(補正値)を求め、
その求めたオフセット値S311bを出力信号として加算器312bに出力する。
【0031】
高圧タービン21の排気室の温度S401とオフセット値S311bとの関係の一例に関して、
図1Cを用いて説明する。
【0032】
図1Cに示すように、オフセット値発生器311bは、高圧タービン21の排気室の温度S401が高くなるに伴って、オフセット値S311bが大きくなるように、オフセット値S311bを求める。たとえば、高圧タービン21の排気室の温度S401が、450℃から480℃に上昇するに伴って、オフセット値S311bが0%から5%の開度に上昇する。そして、高圧タービン21の排気室の温度S401が、480℃から500℃に上昇するに伴って、オフセット値S311bが5%から10%の開度に上昇する。
【0033】
[B-4]加算器312b
加算器312bは、蒸気流量・開度変換器102bから設定開度S102bのデータが入力される他に、オフセット値発生器311bからオフセット値S311bのデータが入力される。そして、加算器312bは、その入力された設定開度S102bとオフセット値S311bとについて加算処理を行う。そして、加算器312bは、その加算処理で求めた加算値を、補正開度S312bとして減算器103bへ出力する(S102b+S311b=S312b)。
【0034】
[B-5]減算器103b
減算器103bは、加算器312bから補正開度S312bのデータが入力される。これと共に、減算器103bは、開度検出器K10bから蒸気加減弁V10bの検出開度S10b(実開度)のデータが入力される。そして、減算器103bは、補正開度S312bと検出開度S10bとの間の差分値S103bを求め、その差分値S103bのデータを蒸気加減弁V10bに出力する(S312b-S10b=S103b)。差分値S103bのデータは、蒸気加減弁V10bに開度指令として出力され、蒸気加減弁V10bの開度が調整される。
【0035】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態において、蒸気タービンシステム1は、高圧タービンバイパス管PB1および低圧タービンバイパス管PB2を備える再熱式の蒸気タービンシステムであり、制御部100は、蒸気タービンシステム1について制御する。上述したように、制御部100は、タービン回転数S20と蒸気加減弁V10bの検出開度S10bとの他に、高圧タービン21の排気室の温度S401に基づいて、蒸気加減弁V10bの開度を調整する。
【0036】
本実施形態では、蒸気加減弁V10bの伸び差を実測せずに、高圧タービン21の排気室の温度S401に応じて蒸気加減弁V10bの開度が大きくなるように補正している。その結果、本実施形態では、蒸気加減弁V10bを通過する蒸気の流量が過少になることを抑制可能であるので、高圧タービン21の排気室が過熱されることを防止可能である。
【0037】
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンシステムを安定に運転させることできる。
【0038】
<第2実施形態>
[A]制御部100の構成
本実施形態の制御部100について、
図2Aを用いて説明する。
図2Aでは、第1実施形態の場合(
図1B参照)と同様に、蒸気加減弁V10bの動作について制御を行う部分について示している。
【0039】
図2Aに示すように、本実施形態の制御部100は、第1実施形態の場合(
図1B参照)と同様に、回転数・蒸気流量変換器101bと蒸気流量・開度変換器102bとオフセット値発生器311bと加算器312bと減算器103bとを有する。しかしながら、本実施形態の制御部100においては、第1実施形態の場合と異なり、高圧タービン21の排気室の温度S401のデータが入力されずに、高圧タービン21において蒸気が第一段のタービン段落へ供給される入口部分の圧力S402a、および、高圧タービン21の内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室の圧力S402bに関するデータが入力される。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0040】
高圧タービン21において蒸気が第一段のタービン段落へ供給される入口部分の圧力S402a、および、高圧タービン21の内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室の圧力S402bは、オフセット値発生器311bに入力される。圧力S402aは、高圧タービン21において蒸気が第一段のタービン段落へ供給される入口部分(図示省略)の圧力を圧力センサ(図示省略)で実際に測定することによって得られる。圧力S402bは、高圧タービン21において複数のタービン段落で順次仕事を行った蒸気が排出される排気室(図示省略)の圧力を圧力センサ(図示省略)で実際に測定することによって得られる。
【0041】
そして、オフセット値発生器311bは、その入力された圧力S402aおよび圧力S402bに基づいて、蒸気加減弁V10bの開度を補正するオフセット値S311bを求める。ここでは、オフセット値発生器311bは、圧力S402aから圧力S402bを差分した差分値(S402a-S402b)に応じて、オフセット値S311bを求める。そして、オフセット値発生器311bは、その求めたオフセット値S311bのデータを出力信号として加算器312bに出力する。
【0042】
圧力S402aから圧力S402bを差分した差分値(S402a-S402b)とオフセット値S311bとの関係の一例に関して、
図2Bを用いて説明する。
【0043】
図2Bに示すように、オフセット値発生器311bは、たとえば、差分値(S402a-S402b)が、0MPaから0.5MPaの間においては、5%のオフセット値S311bを出力する。そして、差分値(S402a-S402b)が、0.5MPaから0.8MPaに増加するに伴って、オフセット値S311bが5%から0%の開度に減少する。差分値(S402a-S402b)が、0.8MPa以上である場合には、0%のオフセット値S311bを出力する。
【0044】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、高圧タービン21において蒸気が第一段のタービン段落へ供給される入口部分の圧力S402aから、高圧タービン21の内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室の圧力S402bを差分した差分値(S402a-S402b)に応じて蒸気加減弁V10bの開度を補正している。その結果、本実施形態では、高圧タービン21に流入する蒸気の流量を十分に確保することができる。
【0045】
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンシステムを安定に運転させることできる。
【0046】
<第3実施形態>
[A]制御部100の構成
本実施形態の制御部100について、
図3Aを用いて説明する。
【0047】
図3Aに示すように、本実施形態の制御部100のうちは、第1実施形態の場合(
図1B参照)と異なり、主蒸気止め弁V10aの動作について制御を行う部分について示している。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0048】
図3Aに示すように、蒸気タービンシステム1(
図1A参照)には、主蒸気止め弁V10aの開度を検出するために、開度検出器K10aが設けられている。開度検出器K10aは、主蒸気止め弁V10aの開度を検出し、検出開度S10aのデータを出力する。
【0049】
制御部100は、
図3Aに示すように、主蒸気止め弁V10aの開度を制御するために、回転数・蒸気流量変換器101aと蒸気流量・開度変換器102aとオフセット値発生器311aと加算器312aと減算器103aとを有する他に、論理積演算部321aを含む。制御部100を構成する各部について順次説明する。
【0050】
[A-1]回転数・蒸気流量変換器101a
回転数・蒸気流量変換器101aは、第1実施形態の回転数・蒸気流量変換器101bと同様に構成されており、主蒸気止め弁V10aにおける蒸気流量S101aのデータを出力する。
【0051】
[A-2]蒸気流量・開度変換器102a
蒸気流量・開度変換器102aは、第1実施形態の蒸気流量・開度変換器102bと同様に構成されており、入力された蒸気流量S101aを主蒸気止め弁V10aの設定開度S102aに変換し、その設定開度S102aのデータを出力信号として出力する。
【0052】
[A-3]論理積演算部321a
論理積演算部321aは、低速ヒートソークに関する情報が入力信号S403aとして入力されると共に、高圧タービン21において第一段タービン段落を構成する部分の内面メタル温度に関する情報が入力信号S403bとして入力される。
【0053】
ここでは、たとえば、低速ヒートソークと高速ヒートソークと初負荷ヒートソークとが順次行われるタービン起動時において、高速ヒートソークよりも低いタービン回転数を、所定時間、保持する低速ヒートソークが実行されているときには、「True(真)」が入力信号S403aとして入力される。これに対して、低速ヒートソークが実行されていないときには、「False(偽)」が入力信号S403aとして入力される。
【0054】
高圧タービン21において第一段タービン段落を構成する部分の内面メタル温度が上昇していないときには(つまり、温度上昇率がゼロ以下)、「True(真)」が入力信号S403bとして入力され、上昇しているときには、「False(偽)」が入力信号S403bとして入力される。
【0055】
そして、論理積演算部321aは、入力信号S403aが「True(真)」であると共に、入力信号S403bが「True(真)」である場合には、「True(真)」を出力信号S321aとしてオフセット値発生器311aに出力する。これに対して、論理積演算部321aは、入力信号S403aが「True(真)」であると共に入力信号S403bが「True(真)」である場合以外には、「False(偽)」を出力信号S321aとしてオフセット値発生器311aに出力する。
【0056】
[A-4]オフセット値発生器311a
オフセット値発生器311aは、論理積演算部321aが出力した出力信号S321aが入力される。そして、オフセット値発生器311aは、論理積演算部321aが出力した出力信号S321aに基づいて、主蒸気止め弁V10aの開度を補正するオフセット値S311aを求める。そして、オフセット値発生器311aは、その求めたオフセット値S311aのデータを加算器312aに出力する。
【0057】
論理積演算部321aが出力した出力信号S321aとオフセット値S311aとの関係の一例に関して、
図3Bを用いて説明する。
【0058】
図3Bに示すように、オフセット値発生器311aは、論理積演算部321aから「True(真)」の出力信号S321aが入力された時点から時間が経過するに伴って、オフセット値S311aが大きくなる。そして、オフセット値発生器311aは、その後、論理積演算部321aから「False(偽)」の出力信号S321aが入力されたときには、その入力された時点から時間が経過してもオフセット値S311aを一定に維持する。
[A-5]加算器312a
加算器312aは、蒸気流量・開度変換器102aから設定開度S102aのデータが入力される他に、オフセット値発生器311aからオフセット値S311aのデータが入力される。そして、加算器312aは、その入力された設定開度S102aとオフセット値S311aとについて加算処理を行う。そして、加算器312aは、その加算処理で求めた加算値を、補正開度S312aとして減算器103aへ出力する(S102b+S311b=S312b)。
【0059】
[B-5]減算器103a
減算器103aは、加算器312aから補正開度S312aのデータが入力される。これと共に、減算器103aは、開度検出器K10aから主蒸気止め弁V10aの検出開度S10aのデータが入力される。そして、減算器103aは、補正開度S312aと検出開度S10aとの間の差分値S103aを求め、その差分値S103aのデータを主蒸気止め弁V10aに出力する(S312a-S10a=S103a)。差分値S103aのデータは、主蒸気止め弁V10aに開度指令として出力され、主蒸気止め弁V10aの開度が調整される。
【0060】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態においては、低速ヒートソークに関する入力信号S403aと、高圧タービン21において第一段タービン段落を構成する部分の内面メタル温度に関する入力信号S403bとに基づいて、主蒸気止め弁V10aの開度を補正している。ここでは、
図3Bから判るように、低速ヒートソークの実行の際に、高圧タービン21において第一段タービン段落を構成する部分の内面メタル温度が上昇しない場合に、オフセット値S311aが徐々に大きくなるので、主蒸気止め弁V10aが開き、高圧タービン21に蒸気が流入する。そして、高圧タービン21において第一段タービン段落を構成する部分の内面メタル温度が上昇した場合には、オフセット値S311aの増加を停止させる。その結果、本実施形態では、熱膨張によって、主蒸気止め弁V10aが全閉状態になったとき、オフセット値S311aの増加によって、ヒートソーク中に、高圧タービン21の温度を上昇させることでできるので、熱応力の上昇を緩和可能である。
【0061】
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンシステムを安定に運転させることできる。
【0062】
[C]変形例
上記の実施形態では、主蒸気止め弁V10aの開度を補正する場合に関して説明しているが、これに限らない。主蒸気止め弁V10aの開度と同様に、蒸気加減弁V10bの開度に関して補正するように構成してもよい。
【0063】
<第4実施形態>
[A]制御部100の構成
本実施形態の制御部100について、
図4Aを用いて説明する。
【0064】
図4Aに示すように、本実施形態では、第3実施形態の場合(
図3A参照)と同様に、主蒸気止め弁V10aの動作について制御を行う部分について示している。また、本実施形態の制御部100は、第3実施形態の場合と同様に、論理積演算部321aを有し、低速ヒートソークに関する入力信号S403aと、高圧タービン21において第一段タービン段落を構成する部分の内面メタル温度に関する入力信号S403bとが論理積演算部321aに入力される。しかしながら、本実施形態の制御部100においては、第3実施形態の場合と異なり、再熱蒸気止め弁V30bについて全開状態にする信号S404(全開バイアス・オン信号)がオフセット値発生器311aに入力される。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0065】
オフセット値発生器311aは、本実施形態では、論理積演算部321aが出力した出力信号S321aが入力される他に、再熱蒸気止め弁V30bについて全開状態にする信号S404が入力されるように構成されている。そして、オフセット値発生器311aは、論理積演算部321aが出力した出力信号S321aの他に、再熱蒸気止め弁V30bについて全開状態にする信号S404に基づいて、主蒸気止め弁V10aの開度を補正するオフセット値S311aを求める。そして、オフセット値発生器311aは、その求めたオフセット値S311aのデータを加算器312aに出力する。
【0066】
論理積演算部321aが出力した出力信号S321aおよび再熱蒸気止め弁V30bについて全開状態にする信号S404と、オフセット値S311aとの関係の一例に関して、
図4Bを用いて説明する。
【0067】
図4Bに示すように、オフセット値発生器311aは、第3実施形態の場合と同様に、論理積演算部321aから「True(真)」の出力信号S321aが入力された時点から時間が経過するに伴って、オフセット値S311aが大きくなる。そして、オフセット値発生器311aは、その後、論理積演算部321aから「False(偽)」の出力信号S321aが入力されたときには、その入力された時点から時間が経過してもオフセット値S311aを一定に維持する。
【0068】
このとき、再熱蒸気止め弁V30bについて全開状態にする信号S404をオフセット値発生器311aが受信したときには、
図4Bに示すように、オフセット値発生器311aは、オフセット値S311aをゼロにする。
【0069】
[B]まとめ
再熱蒸気止め弁V30bについて全開状態にするときには、再熱蒸気止め弁V30bにおける蒸気流量が大きく変化し、回転数上昇レートから逸脱する可能性がある。しかし、本実施形態では、再熱蒸気止め弁V30bについて全開状態にする時点でオフセット値S311aがゼロになるので、回転数上昇レートから逸脱することを防止または緩和することができる。
【0070】
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンシステムを安定に運転させることできる。
【0071】
[C]変形例
上記の実施形態では、主蒸気止め弁V10aの開度を補正する場合に関して説明しているが、これに限らない。主蒸気止め弁V10aの開度と同様に、蒸気加減弁V10bの開度に関しても同様に補正するように構成してもよい。
【0072】
<第5実施形態>
[A]制御部100の構成
本実施形態の制御部100について、
図5を用いて説明する。
【0073】
図5に示すように、本実施形態の制御部100は、第3実施形態の場合(
図3A参照)と同様に、回転数・蒸気流量変換器101aと蒸気流量・開度変換器102aとオフセット値発生器311aと加算器312aと減算器103aとの他に、論理積演算部321aを有する。論理積演算部321aには、低速ヒートソークに関する入力信号S403aが入力される。しかし、本実施形態の論理積演算部321aには、第3実施形態の場合と異なり、高圧タービン21の第一段タービン段落の入口部分の圧力と、低温再熱蒸気管P21の圧力とに関する入力信号S405が入力される。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0074】
[A-1]論理積演算部321a
論理積演算部321aは、上記のように、低速ヒートソークに関する入力信号S403aの他に、高圧タービン21の第一段タービン段落の入口部分の圧力と、低温再熱蒸気管P21の圧力とに関する入力信号S405が入力される。
【0075】
ここでは、高圧タービン21の第一段タービン段落の入口部分の圧力が、低温再熱蒸気管P21の圧力以下である場合に、「True(真)」が入力信号S405として入力される。そして、高圧タービン21の第一段タービン段落の入口部分の圧力が、低温再熱蒸気管P21の圧力よりも高い場合に、「False(偽)」が入力信号S405として入力される。
【0076】
そして、論理積演算部321aは、入力信号S403aが「True(真)」であると共に、入力信号S405が「True(真)」である場合には、「True(真)」を出力信号S321aとしてオフセット値発生器311aに出力する。これに対して、論理積演算部321aは、入力信号S403aが「True(真)」であると共に入力信号S405が「True(真)」である場合以外には、「False(偽)」を出力信号S321aとしてオフセット値発生器311aに出力する。
【0077】
[A-2]オフセット値発生器311a
オフセット値発生器311aは、第3実施形態の場合と同様に、論理積演算部321aが出力した出力信号S321aに基づいて、主蒸気止め弁V10aの開度を補正するオフセット値S311aを求め、加算器312aに出力する。
【0078】
つまり、オフセット値発生器311aは、論理積演算部321aから「True(真)」の出力信号S321aが入力された時点から時間が経過するに伴って、オフセット値S311aが大きくなる。そして、オフセット値発生器311aは、その後、論理積演算部321aから「False(偽)」の出力信号S321aが入力されたときには、その入力された時点から時間が経過してもオフセット値S311aを一定に維持する(
図3B参照)。
【0079】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態において、制御部100は、低速ヒートソークに関する入力信号S403aの他に、高圧タービン21の第一段タービン段落の入口部分の圧力と、低温再熱蒸気管P21の圧力とに関する入力信号S405に基づいて、主蒸気止め弁V10aの開度を補正している。ここでは、低速ヒートソークの実行の際に、高圧タービン21の第一段タービン段落の入口部分の圧力が、低温再熱蒸気管P21の圧力以下である場合(高圧タービン21に蒸気が流れていない場合)に、オフセット値S311aが時間に応じて大きくなるので、主蒸気止め弁V10aが開き、高圧タービン21に蒸気が流入する。そして、高圧タービン21の第一段タービン段落の入口部分の圧力が、低温再熱蒸気管P21の圧力よりも高い場合には、オフセット値S311aの増加を停止させる。その結果、本実施形態では、熱膨張によって、主蒸気止め弁V10aが全閉状態になったとき、オフセット値S311aの増加によって、ヒートソーク中に、高圧タービン21の温度を上昇させることでできるので、熱応力の上昇を緩和可能である。
【0080】
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンシステムを安定に運転させることできる。
【0081】
[C]変形例
上記の実施形態では、主蒸気止め弁V10aの開度を補正する場合に関して説明しているが、これに限らない。主蒸気止め弁V10aの開度と同様に、蒸気加減弁V10bの開度に関しても補正するように構成してもよい。
【0082】
<第6実施形態>
[A]制御部100の構成
本実施形態の制御部100について、
図6Aを用いて説明する。
【0083】
本実施形態の制御部100は、第3実施形態の場合(
図3A参照)と異なり、論理積演算部321aがない。また、本実施形態のオフセット値発生器311aには、開度検出器K10aが主蒸気止め弁V10aの開度を検出して出力した検出開度S10aが入力される。これと共に、主蒸気止め弁V10aにおいて計測された内面メタル温度S406が入力される。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0084】
オフセット値発生器311aは、上記したように、主蒸気止め弁V10aの検出開度S10aと主蒸気止め弁V10aの内面メタル温度S406とが入力される。そして、詳細については後述するが、本実施形態では、オフセット値発生器311aは、たとえば、タービン起動前に得た主蒸気止め弁V10aの検出開度S10aと内面メタル温度S406とを用いて、オフセット値S311aの関数を求める。そして、オフセット値発生器311aは、タービン起動後においては、その求めた関数を用いて、主蒸気止め弁V10aの内面メタル温度S406に対応するオフセット値S311aを求め、加算器312aに出力する。
【0085】
主蒸気止め弁V10aの内面メタル温度S406とオフセット値S311aとの関係の一例に関して、
図6Bを用いて説明する。
【0086】
図6Bに示すように、オフセット値発生器311aは、たとえば、タービン起動前に、主蒸気止め弁V10aの検出開度S10a_1および主蒸気止め弁V10aの内面メタル温度S406_1が入力され、その入力されたデータを用いて、オフセット値S311aの関数Fを求める。関数Fは、たとえば、横軸が主蒸気止め弁V10aの内面メタル温度S406であって、縦軸がオフセット値S311aである座標系において、内面メタル温度が20℃で開度が0%である点(完全冷機時の点)と、タービン起動直前に計測された検出開度S10a_1と内面メタル温度S406_1とに関する点とを結ぶ一次関数として求められる。関数Fを求める際に用いる検出開度S10a_1および内面メタル温度S406_1は、今回の運転を行うためにタービン起動の直前に得たデータであってもよく、前回の運転を停止後に得たデータなどであってもよい。
【0087】
そして、オフセット値発生器311aにおいては、上記のように求めた関数Fを用いて、タービン起動後に計測された内面メタル温度S406_2に対応するオフセット値S311_2を求めることができる。
【0088】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の制御部100では、主蒸気止め弁V10aの内面メタル温度S406に応じたオフセット値S311_2で主蒸気止め弁V10aの開度を補正する。
【0089】
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンシステムを安定に運転させることできる。この他に、本実施形態では、暖機状態において、主蒸気止め弁V10aの伸び量を実測することが不要になる。
【0090】
[C]変形例
上記の実施形態では、主蒸気止め弁V10aの開度を補正する場合に関して説明しているが、これに限らない。主蒸気止め弁V10aの開度と同様に、蒸気加減弁V10bの開度に関しても補正するように構成してもよい。
【0091】
<第7実施形態>
[A]制御部100の構成
本実施形態の制御部100について、
図7Aを用いて説明する。
図7Aでは、第2実施形態の場合(
図2A参照)と同様に、蒸気加減弁V10bの動作について制御を行う部分について示している。
【0092】
図7Aに示すように、本実施形態の制御部100は、第2実施形態の場合(
図2A参照)と同様に、回転数・蒸気流量変換器101bと蒸気流量・開度変換器102bとオフセット値発生器311bと加算器312bと減算器103bとを有する。しかしながら、本実施形態のオフセット値発生器311bにおいては、第2実施形態の場合と異なり、高圧タービン21において蒸気が第一段のタービン段落へ供給される入口部分の圧力S402a、および、高圧タービン21の内部において最終段のタービン段落から蒸気が排気される排気室の圧力S402bに関するデータの入力がない。本実施形態のオフセット値発生器311bでは、高圧タービン21の排気室(図示省略)の温度と規定温度との関係に関する入力信号S407aと、インターセプト弁V30aについて全開状態にする入力信号S407b(全開バイアス・オン信号)とが入力される。この点および関連する点を除き、本実施形態は、第2実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項に関しては、適宜、説明を省略する。
【0093】
本実施形態では、オフセット値発生器311bは、高圧タービン21の排気室(図示省略)の温度と規定温度との関係に関する入力信号S407aと、インターセプト弁V30aについて全開状態にする入力信号S407b(全開バイアス・オン信号)に基づいて、蒸気加減弁V10bの開度を補正するオフセット値S311bを求める。
【0094】
入力信号S407aおよび入力信号S407bと、オフセット値S311bとの関係の一例に関して、
図7Bを用いて説明する。
【0095】
図7Bに示すように、オフセット値発生器311bは、高圧タービン21の排気室の温度が、規定温度(たとえば、450℃)以上である場合には、「True(真)」が入力信号S407aとして入力され、規定温度未満であるときには、「False(偽)」が入力信号S407aとして入力される。
【0096】
図7Bに示すように、オフセット値発生器311bは、「True(真)」の入力信号S407aが入力された時点から時間が経過するに伴って、オフセット値S311bが大きくなる。そして、オフセット値発生器311bは、その後、「False(偽)」の出力信号S407bが入力されたときには、その入力された時点から時間が経過してもオフセット値S311bを一定に維持する。
【0097】
このとき、インターセプト弁V30aについて全開状態にする入力信号S407bをオフセット値発生器311bが受信したときには、
図7Bに示すように、オフセット値発生器311bは、入力信号S407bが入力された時点から時間が経過するに伴って、オフセット値S311bが小さくなる。
【0098】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態においては、高圧タービン21の排気室の温度に応じて蒸気加減弁V10bの開度を補正している。このため、蒸気加減弁V10bを通過する蒸気の流量が過少であることに起因して、高圧タービン21の排気室が過熱することを未然に防止可能である。
【0099】
したがって、本実施形態においては、蒸気タービンシステムを安定に運転させることできる。この他に、本実施形態では、暖機状態において、蒸気加減弁V10bの伸び量を実測することが不要になる。
【0100】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1:蒸気タービンシステム、2:ボイラ、10:過熱器、20:蒸気タービン、21:高圧タービン、22:中圧タービン、23:低圧タービン、30:再熱器、60:復水器、70:発電機、100:制御部、101a:回転数・蒸気流量変換器、101b:回転数・蒸気流量変換器、102a:蒸気流量・開度変換器、102b:蒸気流量・開度変換器、103a:減算器、103b:減算器、311a:オフセット値発生器、311b:オフセット値発生器、312a:加算器、312b:加算器、321a:論理積演算部、K10a:開度検出器、K10b:開度検出器、P10:主蒸気管、P21:低温再熱蒸気管、P22:クロスオーバー管、P30:高温再熱蒸気管、PB1:高圧タービンバイパス管、PB2:低圧タービンバイパス管、V10a:主蒸気止め弁、V10b:蒸気加減弁、V21:逆止弁、V30a:インターセプト弁、V30b:再熱蒸気止め弁、VB1:高圧タービンバイパス弁、VB2:低圧タービンバイパス弁。