(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230130BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
A61B5/055 382
G01N24/08 510D
(21)【出願番号】P 2019522714
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(86)【国際出願番号】 SE2017051126
(87)【国際公開番号】W WO2018088955
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-06
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】522437360
【氏名又は名称】ランダム ウォーク イメージング アーベー
【氏名又は名称原語表記】RANDOM WALK IMAGING AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラシック、サモ
(72)【発明者】
【氏名】トップガールド、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ルンデル、ハンス・マグナス・ヘンリック
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/119569(WO,A1)
【文献】特表2017-507698(JP,A)
【文献】特表2015-518568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0130458(US,A1)
【文献】特表2015-518408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0115957(US,A1)
【文献】特表2009-524830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0238969(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0253410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 - 24/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法であって、
前記サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
前記測定は、
少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第1の拡散強調テンソル表現B
1を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第2の拡散強調テンソル表現B
2を有する第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と
を含み、
前記第1の拡
散強調テンソル表現B
1および前記第2の拡
散強調テンソル表現B
2は、同じ数の非ゼロ固有値を有し、前記第1の拡
散強調テンソル表現B
1の前記固有値は、前記第2の拡
散強調テンソル表現B
2の前記固有値と一致し、
前記第1および前記第2の拡散エンコーディングシーケンスは、一致する平均スペクトルコンテントを示し、かつ、異なる程度のスペクトル異方性を示すように構成される、方法。
【請求項2】
前記第1および前記第2の拡散エンコーディングシーケンスは、
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの第1の正規化ディフェージングベクトル表現F
~
1と一致する正規化ディフェージングベクトル表現F
~
3を有し、非ゼロ拡散エンコーディング強度を有する第3の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの集合から成る第1の試験サンプルに適用され、
前記第2の拡散エンコーディングシーケンスの第2の正規化ディフェージングベクトル表現F
~
2と一致する正規化ディフェージングベクトル表現F
~
4を有し、前記非ゼロ拡散エンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、前記第1の試験サンプルに適用され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致する、
ように構成され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスが、均一な配向分散を有する直径5μmの円筒状コンパートメントの集合から成る第2の試験サンプルに適用され、
前記第4の拡散エンコーディングシーケンスが、前記第2の試験サンプルに適用され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と異なる、
ように構成される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記第1の測定は、第1の信号減衰を取得することを含み、前記第2の測定は、第2の信号減衰を取得することを含む、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記測定は、
前記第1の測定と、参照測定フレームに対して異なる回転による前記サンプルに適用される前記第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む第1の測定セットと、
前記第2の測定と、前記参照測定フレームに対して異なる回転による前記サンプルに適用される前記第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む第2の測定セットと、
を含む、請求項1~3のいずれかの方法。
【請求項5】
前記第1の測定セットの各測定は、それぞれの信号減衰を取得することを含み、前記方法は、前記それぞれの信号減衰に基づいて第1の平均信号減衰を決定することを備え、
前記第2の測定セットの各測定は、それぞれの信号減衰を取得することを含み、前記方法は、前記それぞれの信号減衰に基づいて第2の平均信号減衰を決定することを備える、請求項4の方法。
【請求項6】
前記第1の測定は、第1の信号減衰を取得することを含み、前記第2の測定は、第2の信号減衰を取得することを含み、
前記方法は、前記第1および第2の信号減衰の差を示す出力を生成することをさらに備える、請求項1または2の方法。
【請求項7】
前記第1の拡
散強調テンソル表現は、3つの一致する非ゼロ固有値を有する、請求項1~6のいずれかの方法。
【請求項8】
前記第2の拡
散強調テンソル表現は、3つの一致する非ゼロ固有値を有する、請求項1~7のいずれかの方法。
【請求項9】
前記測定を実行することは、前記サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、前記測定の各々の結果生じるそれぞれの信号減衰を測定することを含む、請求項1~8のいずれかの方法。
【請求項10】
前記第1の測定において取得された信号減衰が前記第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することをさらに備える、請求項9の方法。
【請求項11】
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法であって、
前記サンプルに、拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
前記測定は、
異なる拡散エンコーディング強度および一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性を有する拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される第1の測定セットと、
異なる拡散エンコーディング強度および一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性を有する拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される第2の測定セットと、
を含み、
前記第1の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの前記スペクトル異方性の程度は、前記第2の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの前記スペクトル異方性の程度と異なる、方法。
【請求項12】
第1の信号減衰曲線を推定するために前記第1の測定セットを表す第1のデータセットに第1の関数をフィッティングすることと、
第2の信号減衰曲線を推定するために前記第2の測定セットを表す第2のデータセットに第2の関数をフィッティングすることと、
をさらに備える、請求項11の方法。
【請求項13】
前記第1の関数の少なくとも1つのパラメータおよび前記第2の関数の少なくとも1つのパラメータに基づいて出力を生成することをさらに備える、請求項12の方法。
【請求項14】
前記第1の測定セットおよび前記第2の測定セットの各々の前記拡散エンコーディングシーケンスはそれぞれのテンソル表現を有し、前記テンソル表現の非ゼロ固有値の数は等しい、請求項11~13のいずれか1項の方法。
【請求項15】
前記第1の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの各々の前記平均スペクトルコンテントは、前記第2の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの各々の前記平均スペクトルコンテントと一致する、請求項11~14のいずれか1項の方法。
【請求項16】
前記測定は、
前記第1の測定と、参照測定フレームに対して異なる回転による前記サンプルに適用される前記第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む第1の測定セットと、
前記第2の測定と、前記参照測定フレームに対して異なる回転による前記サンプルに適用される前記第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む第2の測定セットと、
を含み、
前記第1の測定セットの各測定は、それぞれの信号減衰を取得することを含み、前記方法は、前記それぞれの信号減衰に基づいて第1の平均信号減衰を決定することを備え、
前記第2の測定セットの各測定は、それぞれの信号減衰を取得することを含み、前記方法は、前記それぞれの信号減衰に基づいて第2の平均信号減衰を決定することを備え、
前記方法は、前記第1および第2の平均信号減衰の差を示す出力を生成することをさらに備える、請求項1または2の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明概念は、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴(MR)または磁気共鳴撮像(MRI)実験において、粒子の運動または拡散に関する情報は、運動または拡散エンコーディング磁場勾配を適用することによってエンコードされ得る。
【0003】
運動または拡散エンコード化信号は、スピン担持粒子の拡散に関する制限/制約を表し得る、構成コンパートメントの組織微細構造、異方性、形状、およびサイズに関する情報を推測するために用いられ得る。これらは、非コヒーレント流または乱流の特性を調査するためにも用いられ得る。拡散テンソル撮像(DTI)によって得られる異方性度(FA)は、コンパートメントの巨視的配向分散によって混乱する。FAにおいて密接に関連し合う、制限を表し得る拡散テンソルの異方性から、配向分散の影響を分離するために、指向性拡散エンコーディング(1D)は、単一方向を超えて(2Dまたは3Dまで)展開するエンコーディングスキームと併用またはこれに代替される必要がある。これらのスキームは、複数の非ゼロ固有値を有する拡散エンコーディング/強調テンソル(1)によって説明することができ、様々な程度まで、混乱させる配向分散の影響を緩和または排除し、コンパートメント(拡散テンソル)異方性に特化した感度を提供することができる。
【0004】
コンパートメント(拡散テンソル)異方性に対する感度を最大化する、Lasic他によるアプローチ(2)は、微視的異方性度(μFA)を定量化するために指向性(1D)および等方性(3D)エンコーディングを併用する。等方性エンコーディングはたとえば、qベクトルのマジック角スピニング(qMAS)によって実現することができ(3)、一方、指向性エンコーディングに関する拡散強調は、拡散時間tdおよびb値に関してqMASの拡散強調と一致する。拡散エンコーディングの異方性をさらに制御することによって、扁円および扁長コンパートメント(拡散テンソル)形状が区別され得る。Eriksson他(4)は、拡散エンコーディングテンソルをサイズおよび形状に関してパラメータ化することによって、粉体平均信号に関する単純な式が得られ、コンパートメント(拡散テンソル)形状を定量化することが可能であることを示している。拡散エンコーディング形状を変化させることは、等方性拡散率の非ゼロ分散を有するシステムのために必要である(2)。3Dエンコーディングシーケンスの使用により、異方性および等方性拡散寄与の畳み込みを解くことが可能である(5)。
【0005】
不均質かつ異方性物質の特徴付けにおける上述した進歩にもかかわらず、サンプルの拡散特性および微視的構造に関する更なる情報の抽出が可能になることが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明概念の目的は、サンプルの拡散特性および微視的構造に関する更なる情報の抽出を可能にする方法を提供することである。追加または代替の目的は、下記により理解され得る。
【0007】
本発明概念の態様によると、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法が提供され、方法は、
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、上記測定は、
少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第1の拡散強調テンソル表現B1を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第2の拡散強調テンソル表現B2を有する第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と、
を含み、
第1のテンソル表現B1および第2のテンソル表現B2は、同じ数の非ゼロ固有値を有し、第1のテンソル表現B1の固有値は、第2のテンソル表現B2の固有値と一致し、
第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスは、一致する平均スペクトルコンテントを示し、かつ異なる程度のスペクトル異方性を示す、ように構成される。
【0008】
本発明概念は、以下の見識に基づくものである。拡散テンソルは、物理的細孔を大まかに表現し得るが、エンコーディング波形のスペクトル特性(同等に時間的特性)を変化させることによって、より正確な形態学的検出が実現され、時間依存非ガウシアン拡散を調査することができる。拡散エンコーディングシーケンス波形のスペクトル特性は、エンコーディング波形の各空間チャネルの平均スペクトルコンテントを含む。したがって拡散エンコーディングシーケンスの「平均スペクトルコンテント」は、概念的に、エンコーディング波形の「色」とみなされ得る。これは、知覚される色を生成する可視光の異なるスペクトル成分の平均または混合を暗示する。「色」に加えて、拡散エンコーディングシーケンス波形の時間的特性は、スペクトル異方性の程度を含む。「スペクトル異方性の程度」は、概念的に、エンコーディング波形の空間チャネルが分光的にどのように異なるかに依存する特性と考えられ得る。
【0009】
一致するスペクトルコンテントかつ異なる程度のスペクトル異方性を示す第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスによって、サンプルにおける測定の組み合わせは、異方性拡散構造からの制限拡散を感知するように構成される。よって、制限拡散を示す等方性拡散構造による、結果として生じる信号減衰への寄与は、最小化または少なくとも低減され得る。
【0010】
本明細書で用いられる「拡散」は、本明細書において、サンプル内の粒子の運動のランダムまたは確率過程を意味する。拡散は、熱エネルギー、化学エネルギー、および/または濃度差によって生じるランダム分子運動を含んでよい。拡散は、サンプル内でランダムに配向する微細構造内部の分子の分散流またはインコヒーレント流(すなわち、速度分散を有する流動)を含んでよい。本方法において用いられる拡散エンコーディング磁場勾配シーケンスに起因して、サンプル内のインコヒーレント流の影響もまた信号減衰を生じさせ得る。
【0011】
サンプルの拡散特性(すなわち、等方性拡散の程度、異方性拡散の程度および/または配向など)は一般に、サンプル内の拡散制限構造の幾何学的形状および配向に依存する。異なる拡散特性を有するサンプルの部分体積は、サンプルの異なるコンパートメントと称され得る。よってサンプルのボクセル(すなわち、測定の空間分解能によってもたらされる次元を有するサンプルの部分体積)からの拡散強調測定信号は、ボクセル内の異なるコンパートメント内部の拡散粒子からの信号寄与を含む。
【0012】
従来技術において、拡散強調磁気共鳴測定に基づくコンパートメント異方性の分析は、拡散過程がガウシアンまたはマルチガウシアンであるものと仮定する。この仮定は、拡散過程が非時間依存性(または同等に非周波数依存性)であるという仮定に等しい。しかし、発明者によって理解されるように、拡散粒子に関する物理的制限の存在は、周波数依存信号減衰によって明らかにされ得る。
【0013】
拡散過程は、周波数領域において、拡散スペクトラム、すなわち移動する粒子の速度の相関のスペクトラムによって表され得る。本発明の方法に係る測定プロトコルは、意図的に選択されたスペクトル特性、すなわち一致する平均スペクトルコンテントおよび異なる程度のスペクトル異方性を有する第1および第2のエンコーディングシーケンスを含む。その結果、第1および第2の測定による信号減衰の比較によって、拡散スペクトラム、すなわちサンプルの拡散特性の周波数依存性を調査することが可能である。本方法は、拡散スペクトラムを調査することを可能にし、従来の磁気共鳴測定用ハードウェアによって検出され得る周波数範囲内(一般に1ギガヘルツ未満)の拡散スペクトラムの異なるスペクトル成分に対する感度を提供する。
【0014】
組織サンプルにおいて、コンパートメントは、組織内の細胞によって形成され得る。したがって、組織サンプル内のボクセルは、細胞内部の拡散による(すなわち細胞内コンパートメントからの)信号寄与、および細胞外の拡散(すなわち細胞外コンパートメントからの)信号寄与を含んでよい。拡散スピン担持粒子は、細胞内外の水分子によって形成され得る。細胞膜は、細胞内および細胞外のコンパートメントを分離するコンパートメント壁部を形成し得る。
【0015】
以下により理解され得るように、上述した方法の態様において言及される拡散エンコーディングシーケンスは、有効勾配シーケンス、すなわち、磁場勾配シーケンスおよび無線周波数(RF)シーケンスの組み合わせに起因してサンプル内のスピン担持粒子が感じる有効磁場勾配を指してよい。したがって、特に記載されない限り、拡散エンコーディングシーケンスという用語は、(エコー信号減衰の)拡散エンコーディング/強調をもたらすために適用される磁場勾配シーケンスおよびRFシーケンスを含むエンコーディングシーケンスを指す。
【0016】
拡散エンコーディングは、サンプルに、エンコーディング磁場勾配波形およびRFパルスのシーケンスを受けさせることによって実現され得る。磁場勾配波形およびRFパルスの影響が結合された結果、サンプル(内のスピン担持粒子)は「有効勾配」を受ける。有効勾配の波形は、成分gi(t)を有する有効勾配波形g(t)と称されてよく、ここでi=1、2、3であり、たとえばデカルト座標系におけるx、y、z軸を表す。
【0017】
有効勾配は、成分F
iを有する時間依存または時間ディフェージングベクトルF(t)によって表されてよく、ここでi=1、2、3であり、F(t)は、
【数1】
によって求められ、式中、γは核ジャイロ磁気比である。
【0018】
ディフェージングスペクトル、すなわちディフェージングベクトルのスペクトルコンテントは、
【数2】
によって求められ、式中、ωは周波数を示し、τは拡散エンコーディング時間、すなわち有効勾配の持続期間を示す。
【0019】
ディフェージングスペクトラムF(ω)に基づいて、ディフェージングスペクトラムのモーメントは、テンソルM
(n)として表される、
【数3】
と定義されてよく、式中、M
ij
(n)はテンソル要素である。0番目のモーメントM
(0)によって拡散強調テンソルBが与えられる。ガウシアン拡散の場合、B
ij=M
ij
(0)のみを考える必要がある。
【0020】
したがって、拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの拡散強調テンソル表現Bは、
【数4】
によって求められる。
【0021】
ディフェージングベクトルF(t)は、ディフェージングベクトルの振幅qと正規化ディフェージングベクトル波形F
~(t)とのアダマール積
【数5】
として表されてもよい。
【0022】
したがってディフェージングスペクトラムは、また/あるいは、
【数6】
によって求められてもよく、式中、F
~(ω)は正規化ディフェージングスペクトラム、すなわち正規化ディフェージングベクトルのスペクトルコンテントとみなされ得る。デカルト座標系におけるx、y、z軸を表すi=1、2、3であるスペクトラムF
i(ω)およびF
~
i(ω)は、それぞれディフェージングベクトルまたは正規化ディフェージングベクトルのスペクトル表現の直交成分または正射影として言及され得る。
【0023】
式(6)における正規化スペクトラムF
~(ω)に関して、テンソルM
(n)の要素は、
【数7】
によって求められる。項m
ij
(0)は、一般化拡散時間に対応する。マトリックス形式で表すと、
【数7-1】
である。
【0024】
1Dエンコーディングにおいて、ディフェージング波形は、3Dエンコーディングのディフェージングの大きさによって構成され得るので、1Dエンコーディングは、拡散時間に関して3Dエンコーディングと一致し、たとえば1Dディフェージング振幅は、3Dエンコーディングの二乗ディフェージング振幅成分の和、
【数7-2】
によって求められる。
【0025】
拡散スペクトラムD(ω)は、速度相関テンソル
【数7-3】
のスペクトルとして定義され得る。
【0026】
コンパートメントの主軸系において、D(ω)は対角線であり、マトリックスλ(ω)の対角線に沿った拡散スペクトラムλ
i(ω)によって求められる。要素λ
i(ω)は、拡散テンソル固有値とみなされ得る。よって見かけ上の拡散率は、
【数8】
によって求められる。上記から理解され得るように、(有効)拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスのスペクトルコンテント、または同等にディフェージングベクトル波形は、ディフェージングスペクトラムF(ω)またはその正規化部分F
~(ω)によって求められる。
【0027】
正規化パワースペクトラムの成分は、
【数9】
によって求められる。正規化パワースペクトラムのn番目のモーメントは、テンソルまたはマトリックス形式m
(n)で表されてよく、
【数10】
であり、式中、m
ij
(n)はm
(n)の要素を示す。μ
i
(n)によってm
(n)の固有値が示される。
【0028】
テンソルM
(n)のテンソル要素は、
【数11】
によって求められ得る。したがって、拡散強調テンソルBの要素は、
【数12】
によって求められ得る。(単一の多次元エンコーディングスキームに関する)平均エンコーディングスペクトルコンテントは、
【数13】
によって特徴付けることができ、式中、nは任意の正の実数であり、
【数13-1】
である。鍵括弧〈…〉によって、平均化演算が示される。任意のn>0に関する〈μ
(n)〉の差は、2つのエンコーディングスキームを比較するために用いられ得る。異なる拡散エンコーディングシーケンス(または同等に異なる正規化ディフェージングベクトル表現)のスペクトルの一致またはスペクトル同調は、一致する〈μ
(n)〉を有することを指してよい。逆に、異なるエンコーディングシーケンスは、それらのスペクトルコンテントが一致しない、すなわち〈μ
(n)〉が異なる場合、離調するものとみなされ得る。
【0029】
(単一の多次元エンコーディングスキームに関する)拡散エンコーディングのスペクトル異方性は、m
(n)の異なる固有値、すなわち値μ
i
(n)を比較することによって定量化され得る。テンソル異方性の任意の計測、たとえば異方性度が、テンソルm
(n)に適用され得る。スペクトル異方性(SA)を定量化するために、異方性度と同様に、以下の式
【数14】
が(拡散エンコーディングシーケンスの拡散エンコーディングテンソル表現が複数の非ゼロ固有値を有するという条件で)用いられてよく、式中、nは任意の正の実数、
【数14-1】
であり、スペクトル異方性に対する感度を制御するために調整され得る。ただし、SA
(n)は常に0~1の範囲内である。テンソル異方性の定量化に適用可能な、スペクトル異方性の他の定量的計測が用いられてもよいことに留意する。
【0030】
上記において、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスは、ある実施形態によると、任意のn>0、好適には少なくともn=2の場合、第1の拡散エンコーディングシーケンスに関して計算された〈μ(n)〉が第2の拡散エンコーディングシーケンスに関して計算された〈μ(n)〉と一致するという意味で、一致する平均スペクトルコンテントを示し得る。
【0031】
さらに上記観点から、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスは、ある実施形態によると、第1の拡散エンコーディングシーケンスに関して計算されたSA(n)が第2の拡散エンコーディングシーケンスに関して計算されたSA(n)と異なるという意味で、異なる程度のスペクトル異方性を示し得る。
【0032】
よって、第1の拡散エンコーディング勾配シーケンスに関して、
【数14-2】
であり、式中、μ
i
(n)は、要素
【数14-3】
を有するテンソルm
(n)の固有値を示し、
【数14-4】
はそれぞれ、第1の拡散エンコーディング勾配シーケンスの正規化ディフェージングスペクトラムF
~(ω)の正規化ディフェージングベクトルのi番目およびj番目の成分である。
【0033】
また、第2の拡散エンコーディング勾配シーケンスに関して、
【数14-5】
であり、式中、μ
i
(n)は、要素
【数14-6】
を有するテンソルm
(n)の固有値を示し、F
~
i(ω)およびF
~*
i(ω)はそれぞれ、第2の拡散エンコーディング勾配シーケンスの正規化ディフェージングスペクトラムF
~(ω)のi番目およびj番目の固有ベクトルである。
【0034】
一致するまたは異なる「スペクトルコンテント」の概念は、拡散エンコーディングシーケンス「A」を用いる「第1の試験サンプル」における測定「I」、および拡散エンコーディングシーケンス「B」を用いる第1の試験サンプルにおける他の測定「II」を考慮することによっても理解され得る。第1の試験サンプルは、直径5μmの中空球状コンパートメントの集合から成るサンプルである。
【0035】
シーケンス「A」およびシーケンス「B」は、シーケンス「A」および「B」のテンソル表現BA、BBが互いに等しく(すなわち、それらが同じ拡散エンコーディング強度をもたらし)、同一の固有値を有するようなものである。コンパートメントは球状であるため、主軸系および固有ベクトルは縮退する。よって、シーケンス「A」および「B」のテンソル表現BA、BBは、コンパートメントに対する任意の配向を有する3次元デカルト座標系(x,y,x)に関して与えられ得る。
【0036】
シーケンス「A」およびシーケンス「B」が試験サンプルに適用されると同じレベルの信号減衰をもたらす場合、シーケンスは、「分光的に一致」しており、すなわち一致する平均スペクトルコンテントを有する。
【0037】
一方、シーケンス「A」およびシーケンス「B」が試験サンプルに適用されると異なるレベルの信号減衰をもたらす場合、シーケンスは、「分光的に離調」しており、すなわち異なる平均スペクトルコンテントを有する。
【0038】
対応して、一致するまたは異なる「スペクトル異方性の程度」の概念は、上記で定義した拡散エンコーディングシーケンス「A」を用いる「第2の試験サンプル」における測定「III」、および上記で定義した拡散エンコーディングシーケンス「B」を用いる第2の試験サンプルにおける他の測定「IV」によって理解され得る。第2の試験サンプルは、均一な配向分散を有する直径5μmの中空円筒状コンパートメントの集合から成るサンプルである。「均一な配向分散」は、ここでは、円筒状コンパートメントの配向が単位球面にわたり均一に分布しているものとして理解すべきである。
【0039】
シーケンス「A」および「B」が分光的に一致していると仮定すると、シーケンス「A」およびシーケンス「B」が試験サンプルに適用されると同じレベルの信号減衰をもたらす場合、シーケンスは、同じ程度のスペクトル異方性を示す。一方、シーケンス「A」およびシーケンス「B」が試験サンプルに適用されると異なるレベルの信号減衰をもたらす場合、シーケンスは、異なる程度のスペクトル異方性を示す。
【0040】
上記観点から、ある実施形態によると、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスは、
第1の拡散エンコーディングシーケンスの第1の正規化ディフェージングベクトル表現F~
1と一致する正規化ディフェージングベクトル表現F~
3を有し、非ゼロ拡散エンコーディング強度を有する第3の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの集合から成る第1の試験サンプルに適用され、
第2の拡散エンコーディングシーケンスの第2の正規化ディフェージングベクトル表現F~
2と一致する正規化ディフェージングベクトル表現F~
4を有し、上記非ゼロ拡散エンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、上記第1の試験サンプルに適用され、
第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致するように構成され、かつ、
第3の拡散エンコーディングシーケンスが、均一な配向分散を有する直径5μmの円筒状コンパートメントの集合から成る第2の試験サンプルに適用され、
第4の拡散エンコーディングシーケンスが、上記第2の試験サンプルに適用され、
第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と異なるように構成される。
【0041】
「第3/第4の拡散エンコーディングシーケンスが…試験サンプルに適用されるように構成される」という表現は、特許請求の範囲に記載の方法において積極的に実行されることが必ず必要なステップのシーケンスとして解釈されてはならない。むしろこの表現は、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスの特性の機能的定義として理解されるべきである。よって、第3および第4の拡散エンコーディングシーケンスが試験サンプルに適用された場合/条件において、上述の信号減衰を伴う。この機能的定義は、当業者が、拡散エンコーディングシーケンスのセットが進歩性のある特性を有するかを決定するための明瞭かつ明確なテストケースとして理解され得る。実際、特性を試験するために現実の「試験サンプル」に実際の測定を実行することは必要ではない。むしろテストケースは、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスのそれぞれのRFシーケンスおよび磁場勾配シーケンスを測定することによって、および第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスのテンソル表現および正規化ディフェージングベクトル表現を計算する測定から評価されてよく、その後、(上述したエンコーティング強度および正規化ディフェージングベクトル表現を有する)第3および第4の拡散エンコーディングシーケンスが第1および第2の試験用物体に適用された場合、その結果生じる信号減衰を(数値計算またはモンテカルロシミュレーションによって)シミュレートする。
【0042】
上記および下記において、互いに一致する2つ以上の数量(たとえば、2つ以上の拡散エンコーディング強度、トレース、固有値、〈μ(n)〉またはSA(n))が述べられる。そのような文脈において、「一致する」は、数量が等しいこと、または少なくとも実質的に等しいものとして理解され得る。すなわち、数量は厳密に等しい必要はないが、コンパートメント異方性、スペクトルコンテント、およびスペクトル異方性の影響が測定から識別可能であるような量のみ異なるべきである。数量は、好適には10%未満、より好適には5%未満、さらに好適には1%未満異なるべきである。理解され得るように、同等性の実現可能な最大レベルは、実際には、とりわけ機器の性能に依存する。
【0043】
拡散エンコーディングシーケンスの「拡散エンコーディング強度」は、本明細書において理解されるように、拡散エンコーディングシーケンスに関する拡散エンコーディングテンソルのトレースによって求められるb値を指す。
【0044】
本方法によると、拡散強調磁気共鳴測定が実行される。測定は、少なくとも2つの(すなわち、「第1」および「第2」の)測定を含み、各測定は、サンプルに拡散エンコーディングシーケンスを受けさせることを含む。本明細書で用いられる場合、測定/エンコーディングシーケンスの「第1」および「第2」というラベルは、測定がその特定の順序で実行されることを暗示するものではなく、測定は任意の順序で実行されてよい。
【0045】
上記拡散強調磁気共鳴測定の各々は一般に、エンコーディングブロックおよび後続する検出ブロックを含んでよい。エンコーディングブロックにおいて、サンプルは、拡散エンコーディングシーケンスを受ける。検出ブロックにおいて、拡散エンコーディングに起因して減衰された信号が検出および取得され得る。検出された信号または測定信号は、減衰エコー信号であってよい。
【0046】
エンコーディングブロックはさらに、サンプル内の磁化を促すために適合された無線周波数(RF)パルスシーケンスを含んでよい。RFパルスシーケンスは、縦方向緩和のみ、横方向緩和のみ、または縦方向緩和および横方向緩和の両方に起因する減衰をエンコード化してよい。よって、検出ブロックにおいて検出された信号の減衰は、拡散エンコーディング磁気勾配パルスシーケンスおよびRFパルスシーケンスの両方に起因する減衰、すなわち、有効勾配シーケンスg(t)または対応するディフェージングベクトルF(t)に起因する減衰の結果である。
【0047】
好適には、上記複数の測定は、同一のタイミングを有するRFパルスシーケンスを用いて実行される。すなわち、核緩和に起因する同じレベルの信号減衰が、各測定においてエンコード化される。これによって、測定に影響を及ぼす変化するパラメータの数が低減され得るので、データ分析が単純化され得る。
【0048】
(減衰された)測定信号を取得するために、各拡散エンコーディングシーケンスは、当該技術において周知であるように、1または複数のイメージング磁気勾配および任意選択的に磁気勾配補正勾配によって補足され得る。イメージング磁気勾配シーケンスおよび補正磁気勾配シーケンスは、エンコーディングブロック中にサンプルに適用され得る。場合によっては、これらのシーケンスは、拡散エンコーディング磁気勾配パルスシーケンスと少なくとも部分的に重なってよい。ただしそのような場合、複合勾配パルスシーケンスの少なくとも一部は、上述したように説明または特徴付けされ得る拡散エンコーディングシーケンスを含む。
【0049】
ある実施形態によると、上記第1の測定は、上記第1の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる第1の信号減衰を取得することを含み、
上記第2の測定は、上記第2の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる第2の信号減衰を取得することを含む。
【0050】
ある実施形態によると、上記測定は、
上記第1の測定と、参照測定フレームに対して異なる回転によるサンプルに適用される上記第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む第1の測定セットと、
上記第2の測定と、参照測定フレームに対して異なる回転によるサンプルに適用される上記第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む第2の測定セットと、
を含む。
【0051】
これによって、(「粉体平均化」としても知られる)方向性平均化信号減衰を決定することが可能である。
【0052】
したがって、ある実施形態によると、
上記第1の測定セットの各測定は、上記拡散エンコーディングシーケンスの結果生じるそれぞれの信号減衰を取得することを含み、方法は、上記それぞれの信号減衰に基づいて第1の平均信号減衰を決定することを備え、
上記第2の測定セットの各測定は、上記拡散エンコーディングシーケンスの結果生じるそれぞれの信号減衰を取得することを含み、方法は、上記それぞれの信号減衰に基づいて第2の平均信号減衰を決定することを備える。
【0053】
ある実施形態によると、方法はさらに、第1および第2の信号減衰の差または第1および第2の平均信号減衰の差を示す出力を生成することを備える。よって出力は、時間依存異方性拡散、すなわち異方性領域内の時間依存拡散に起因する信号減衰を感知可能であってよい。
【0054】
ある実施形態によると、上記第1のテンソル表現は、3つの一致する非ゼロ固有値を有する。
【0055】
ある実施形態によると、上記第2のテンソル表現は、3つの一致する非ゼロ固有値を有する。
【0056】
ある実施形態によると、上記第1のテンソル表現は、厳密に2つの一致する非ゼロ固有値を有する。
【0057】
ある実施形態によると、上記第2のテンソル表現は、厳密に2つの一致する非ゼロ固有値を有する。
【0058】
ある実施形態によると、上記測定を実行することは、サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、上記測定の各々の結果生じるそれぞれの信号減衰を測定することを含む。
【0059】
ある実施形態によると、方法はさらに、第1の測定において取得された信号減衰が第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することを備える。
【0060】
本発明概念の第2の態様によると、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法が提供され、方法は、
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
上記測定は、
異なる拡散エンコーディング強度および一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性を有する拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される第1の測定セットと、
異なる拡散エンコーディング強度および一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性を有する拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される第2の測定セットと、
を含み、
第1のセットの拡散エンコーディングシーケンスのスペクトル異方性の程度は、第2のセットの拡散エンコーディングシーケンスのスペクトル異方性の程度と異なる。
【0061】
第1の態様に関連する利点および詳細な説明は、対応して第2の態様にも適用される。
【0062】
一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性の上述した数学的かつテストベースの定義は、対応して、第1および第2のセットのエンコーディングシーケンスの各々にも適用される。
【0063】
ある実施形態によると、方法はさらに、
第1の信号減衰曲線を推定するために上記第1の測定セットを表す第1のデータセットに第1の関数をフィッティングすることと、
第2の信号減衰曲線を推定するために上記第2の測定セットを表す第2のデータセットに第2の関数をフィッティングすることと、
を備える。
【0064】
第1および第2の測定セットの各々に対応するそれぞれの信号減衰曲線を推定することによって、拡散特性およびそれらの周波数依存性の更なる分析が可能である。同じフィッティング関数が、第1および第2のデータセットへのフィッティングに用いられ得る。
【0065】
ある実施形態によると、方法はさらに、第1の関数の少なくとも1つのパラメータ、第2の関数の少なくとも1つのパラメータ、および第3の関数の少なくとも1つのパラメータに基づいて出力を生成することを備える。
【0066】
ある実施形態によると、第1のセットおよび第2のセットの各々の拡散エンコーディングシーケンスはそれぞれのテンソル表現を有し、テンソル表現の非ゼロ固有値の数は等しい。
【0067】
ある実施形態によると、第1のセットの拡散エンコーディングシーケンスの各々の平均スペクトルコンテントは、第2のセットの拡散エンコーディングシーケンスの各々の平均スペクトルコンテントと一致する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
本発明概念の上記ならびに追加の目的、特徴、および利点は、添付図面を参照して、以下に示す本発明概念の好適な実施形態の例示的かつ非限定的な詳細な説明によってより良く理解される。図面において、特に記載されない限り、同様の要素に関して同様の参照番号が用いられる。
【0069】
【
図1】2つの拡散エンコーディングシーケンスに関するディフェージング波形およびパワースペクトラム、および対応する減衰曲線のシミュレーションを示す。
【
図2】
図2は、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法のフローチャートを示す。
【詳細な説明】
【0070】
本発明概念の理解を容易にするために、以下、いくつかの理論的概念の説明が提供される。
【0071】
理論
拡散エンコーディング時間τにおける任意の有効な勾配波形g(t)を考えると、信号は、アンサンブル平均
【数14-7】
によって求められ、式中、γは核ジャイロ磁気比であり、Δr(t)は変位である。複数のコンパートメントシステムが考慮される場合、アンサンブル平均は、異なる拡散特性、たとえば孔径、形状、および配向を有するコンパートメントであるサブアンサンブルにわたって行われる。低い拡散エンコーディング勾配の極限において、信号減衰は、ガウシアン位相近似(GPA)に対応して、二次キュムラント展開(6)によって近似され得る。
【0072】
拡散エンコーディング中の変位相関性が無視できる、見かけ上の拡散テンソルDを特徴とするガウシアン拡散過程を有する単一コンパートメントまたはサブアンサンブルの場合、信号減衰は、E=exp(-β)によって求められ、式中、
【数15】
であり、F(t)は、時間ディフェージングベクトル
【数16】
であり、式中、γは核ジャイロ磁気比であり、g(t)は拡散エンコーディング勾配シーケンスの波形である。
【0073】
拡散テンソルDは、コンパートメント異方性に関する情報を伝達する。ディフェージングベクトルF(t)は、振幅qと正規化波形F
~(t)とのアダマール積、
【数17】
として表すことができる。
【0074】
非ガウシアン拡散の場合、および信号キュムラント展開(2次キュムラント展開)のガウシアン近似の場合、減衰は、
【数18】
によって求められ、ここで
【数19】
であり、D(ω)は拡散スペクトラム、すなわち速度相関テンソル
【数19-1】
のスペクトラムである。周波数領域分析は、任意の勾配波形に容易に適用され得る。最も重要な点として、これによって、3D拡散エンコーディングにおける制限拡散効果の直感的な理解が可能であり、異なるエンコーディング波形の設計が容易になり得る。
【0075】
アインシュタインの縮約記法(すなわち、繰り返す指数を総和すること)によると、
【数20】
である。コンパートメント/制限の主軸系(PASC)において(7)、拡散スペクトラムは、
【数20-1】
によって求められ、式中、λ(ω)は対角行列であり、Rは回転行列である。またディフェージングスペクトラムは、
【数21】
としても求められる。表記を簡略化するために、積分演算子
【数21-1】
を
【数22】
と定義し、ここで、i,j,k∈1,2,3であり、上付き記号*は複素共役化を示す。ただし、
【数22-1】
である。アインシュタインの縮約記法を取り入れ、式(22)における定義を用いると、式(18)は、
【数23】
となる。減衰(23)は、見かけ上の拡散率
【数24】
、および、Bテンソル
【数25】
を
【数26】
として、表され得る。
【0076】
ガウシアン拡散、すなわち非時間/周波数依存性の場合、
【数26-1】
、かつ
【数27】
である。
【0077】
D
ij=R
kiR
kjλ
kを示すことによって、式(27)は、テンソルBおよびDの内積〈・,・〉
【数28】
と書き換えることができる。λ
i(ω)に関する異なるモデルが適用され得る。低周波数において、λ
k(ω)は、
【数29】
としてテイラー展開されてよく、式中、nは整数であり、λ
k
(n)(0)は、ゼロ周波数におけるλ
k(ω)のn番目の導関数である。制限拡散の場合、
【数30】
である。この場合、式(29)は、制限サイズに関して表される等しいパワーのωおよびλ
i
(n)(0)に関して書き表され得る(7)。
【0078】
式(29)を式(23)に挿入することにより、
【数31】
が導かれ、ここで、
【数32】
は、テンソルM
(n)として表されるディフェージングスペクトラムのモーメントであり、M
ij
(n)はテンソル要素である。ガウシアン拡散の場合、B
ij=M
ij
(0)のみを考慮する必要がある。
【0079】
正規化スペクトラムF
~(ω)に関して、テンソルM
(n)は、
【数33】
によって求められる。
【0080】
スペクトルコンテント
拡散エンコーディングシーケンスのスペクトルコンテントは、ディフェージングスペクトラムまたは正規化部分に関して特徴付けられ得る。正規化パワースペクトルの成分は、
【数34】
によって求められ、正規化パワースペクトラムのモーメントは、
【数35】
である。ただし、M
ij
(0)=0である場合、m
ij
(0)=0であり、M
ij
(0)>0である場合、m
ij
(0)=1である。μ
i
(n)によって、m
(n)の固有値が示される。
【0081】
(単一の多次元エンコーディングスキームに関する)平均エンコーディングスペクトルコンテントは、
【数36】
によって特徴付けられてよく、式中、nは任意の正の実数であり、
【数36-1】
である。鍵括弧〈…〉によって、平均化演算が示される。任意のn>0に関する〈μ
(n)〉の差は、2つのエンコーディングスキームを比較するために用いられ得る。式(36)における分母の値は、拡散エンコーディングテンソルBの非ゼロ固有値の総数を提供する。
【0082】
スペクトル異方性
(単一の多次元エンコーディングスキームに関する)拡散エンコーディングのスペクトル異方性は、m
(n)の異なる固有値、すなわち値μ
i
(n)を比較することによって定量化され得る。テンソル異方性の様々な計測、たとえば異方性度が、テンソルm
(n)に適用され得る。ただし、スペクトル異方性は、拡散エンコーディングテンソルの複数の非ゼロ固有値を有するエンコーディングスキームに関してのみ定義され得る。スペクトル異方性(SA)を定量化するために、異方性度と同様に、以下の式
【数37】
が用いられてよく、式中、nは任意の正の実数、
【数37-1】
であり、スペクトル異方性に対する感度を制御するために調整され得る。ただし、SA
(n)は常に0~1の範囲内である。
【0083】
一致するスペクトルコンテントまたは多次元拡散エンコーディングスキームおよび指向性エンコーディングスキームの「同調」は、数値的に行われ得る。以下の手順は、多次元エンコーディング勾配波形が、何らかの先行する最適化に基づいて得られている場合、有用である。1.入力波形の(たとえばx、y、z軸に沿った)回転の範囲に関して、積
【数37-2】
を計算する、ここでnの選択は、「同調」、すなわち一致するスペクトルパワーにおいて優先することが選択され得る周波数範囲に依存するものとし、いくつかのモーメントが計算され得る。2.上記ステップにおいて計算されたpの最大値、およびpの最大値を生じる回転Rを求める。3.回転Rを用いて入力波形を変換する。4.変換された波形の各々について、モーメントm
(n)を計算し、モーメントm
(n)が平均モーメントに最も近くなる波形を選択する(2つまたは3つの波形および対応するモーメントを考慮する)。5.ステップ4において選択された波形の形状を指向性エンコーディングのために用いる。
【0084】
粉体平均信号
式(31)における
【数37-3】
を定義すると、これは、テンソルM
(n)とD
(n)との内積
【数38】
として書き換えることもでき、ここで、
【数38-1】
である。2次(M
(n)のパワー)に至るまで、粉体(方向性)平均信号のキュムラント展開によって
【数39】
が導かれ、ここで、
【数40】
、および
【数41】
である。内積表記によって表すと、
【数42】
および
【数43】
であり、ここで、
【数44】
および
【数45】
である。
【0085】
減衰項(43)は、拡散尖度または見かけ上の拡散係数の分布の分散に関連する、信号減衰曲線の曲率を定量化するために用いられ得る。ただし、定義(44)および(45)は、指数iおよびjの順列の下で不変である。i=0および2の項(制限拡散に関する近似)のみを考えると、
【数46】
および
【数47】
である。
【0086】
ただし、参照文献(10)における式3および6を参照すると、
【数47-1】
は、ガウシアン項に対応する。もし、D
kl
(0)およびD
kl
(2)が相関しない場合、すなわち(長期の)屈曲の極限における拡散率が時間的変化(低周波数における傾斜)と無関係である場合、
【数47-2】
である。
【0087】
有効制限サイズとの関連性:制限拡散の場合
式(29)における制限拡散スペクトラムの第2の拡散係数は、
【数48】
によって求められ(7)、式中、C
iは幾何学的係数であり、γ
iは、主軸iに沿った制限のサイズである。有効制限テンソルを定義すると、
【数49】
である。
【0088】
【0089】
λ
k
(0)(0)が方向と無関係かつD
0に等しい場合、上の第1項は、
【数50-1】
によって求められる。κ
2は、以下の
【数51】
【数52】
および
【数53】
を考慮して評価され得る。
【0090】
D
kl
(0)およびD
kl
(2)が相関しない場合、
【数53-1】
および
【数54】
である。
【0091】
等方性拡散強調の場合
定義
【数54-1】
を考えると、
【数54-2】
である。
【0092】
【0093】
【数56】
式中、
【数56-1】
はテンソル積を示す。式(56)における第1項は、ゼロ周波数(長時間体制)における等方性拡散率の分散、すなわちテンソルトレースの分散に起因し、その他の項は、コンパートメントのサイズおよび異方性に起因する分散を表す。
【0094】
スペクトル異方性を有さない等方性拡散強調の場合
エンコーディングが分光的に等方性である場合、
【数56-2】
【数57】
および
【数58】
である。
【0095】
式(56)と式(58)とを比較すると、留意すべき点として、分光的に等方性のエンコーディングの場合、コンパートメント異方性に起因する追加の分散が排除され、コンパートメントサイズに起因する分散のみが残る。スペクトル異方性の変更は、異方性コンパートメントに関連する時間依存拡散効果を分離するために用いられ得る。
【0096】
軸対称性
単一コンパートメントの場合
ここで、簡略な表記F=F(ω)およびλ=λ(ω)を取り入れる。制限/コンパートメントの主軸系(PASC)における拡散スペクトラム
【数58-1】
および拡散スペクトラムを有する軸対称拡散エンコーディングの場合、
【数59】
であり、式(23)における減衰によって、
【数60】
が生じ、ここで、P
2(x)=(3x
2-1)/2は第2のルジャンドル多項式であり、
【数60-1】
は、拡散エンコーディングおよび拡散テンソルの主対称軸間の角度である。軸対称拡散エンコーディングは、ここでは厳密に、
【数60-2】
の対称性を指す。ガウシアン(非時間/周波数依存性)拡散の場合、ディフェージングスペクトラムのクロス積を含む式(60)における最後の項は、
【数60-3】
である場合、ゼロになる。プランシュレルの定理によると、上記条件は、
【数60-4】
に変換され、これは、ベクトルF(t)が直円錐面に常に平行であり、q軌跡が少なくとも三回対称を有する場合(3、4)、または単純に常に積
【数60-5】
である場合、満たされる。低いコンパートメント異方性に関して式(60)における最後の項はゼロになることは明らかである。q-MAS波形(2、11)を用いる数値計算は、たとえば円筒から成る大部分が異方性のコンパートメントに関して、この項が比較的小さいことを示す。
【0097】
クロス積の項がない場合、式(60)は、
【数61】
のように簡略化することができ、ここで、
【数62】
および
【数63】
である。ここで、表記
【数64】
および
【数65】
が用いられ、
【数65-1】
である。Λ
ijは、拡散エンコーディング波形iに起因するPASCにおける軸jに沿った見かけ上の拡散係数である。
【0098】
サンプルにおける全てのコンパートメントが同一である場合、粉体/方向性平均〈e
-β〉は、
【数66】
によって求められ、式中、
【数66-1】
である。単一コンパートメントの場合に平均拡散率(MD)に対応する等方性拡散率(D)は、
【数66-2】
によって求められる。ただし、2つの波形が同一のスペクトルコンテントを有する、すなわち
【数66-3】
であり、式中、
【数66-4】
である。したがって、Δbによって拡散エンコーディングの形状を変化させることにより、ゼロ周波数における拡散異方性D
(0)を定量化することが可能である(4)。
【0099】
コンパートメント異方性は、見かけ上の拡散係数の分散ももたらし、これは、式(63)におけるβ
-による時間依存拡散の影響も受ける。ここでV
Aと示される、コンパートメント異方性に起因する見かけ上の拡散分布の第2の中心モーメント(2、4)は、
【数67】
によって求められ、ここで、
【数68】
である。
【0100】
よって粉体平均信号は、
【数69】
によって求められる。
【0101】
【数69-1】
を有する等方性エンコーディングの場合、
【数69-2】
であり、
【数69-3】
である指向性エンコーディングの場合、
【数69-4】
である。等方性拡散率の分散がない、
【数69-5】
である純粋に等方性の拡散の場合、
【数69-6】
である。ただし、異方性制限/コンパートメントがある場合のみ、V
A>0である。最も重要な点として、拡散エンコーディングが分光的に等方性である場合のみ、異方性制限に関して
【数69-7】
であるが、分光的に異方性のエンコーディングの場合、
【数69-8】
である。したがって、変化するスペクトル異方性により、異方性コンパートメントにおける時間/周波数依存拡散効果を検出することが可能であり得る。一方、コンパートメント異方性に関するバイアスのない情報、すなわち時間/周波数依存拡散効果によって混乱しない情報は、異なる形状のB=M
(0)を有する拡散エンコーディング波形が分光的に同調する場合、すなわち十分な程度類似した平均スペクトルコンテントを有する場合、得られ得る。Bを生じるために用いられる異なる波形は、自己同調であってよく、すなわち低いスペクトル異方性を有してもよい。
【0102】
複数のコンパートメント
各々が見かけ上の等方性拡散率Dおよび形状異方性に起因する見かけ上の拡散分散(異方性分散)V
Aによって特徴付けられる、複数のコンパートメントからの粉体平均化信号を考える。「見かけ上の」とは、Bの異方性およびエンコーディング波形の時間またはスペクトル特性に依存する値を意味する。合計粉体平均信号は、
【数70】
によって求められ、式中、
【数71】
である。
【0103】
合計分散Vは、等方性分散VI=〈D2〉-〈D〉2と平均異方性分散〈VA〉との和によって求められる。ただし、VIは、等方性コンパートメントおよび異方性コンパートメントの両方からのサイズ分散効果を備える。分光的等方性でもある等方性エンコーディングテンソルBの場合、〈VA〉=0である。上述したように、等方性Bを有する分光的異方性エンコーディングの場合、〈VA〉>0であるように残差分散が予想される。
【0104】
異方性コンパートメントにおける時間/周波数依存拡散に特化した感度
スペクトル異方性がどのように異方性コンパートメントにおける時間/周波数依存拡散効果の検出に特化した感度を提供し得るかを説明するために、ο[b3]と示された式(70)における高次項が考慮される必要がある。議論のために、剰余οにおける高次キュムラントは低次キュムラントから独立したものではないということは、認めるに足るものである。
【0105】
全ての波形が同一の(互いに同調かつ自己同調し、すなわちスペクトル異方性のない)スペクトルコンテントを有する、指向性および等方性拡散エンコーディングによる信号減衰ΔlnEの差を考える。この場合、減衰差は、
【数72】
によって求められ、ここで、剰余における低次キュムラントへの依存性が留意される。すなわち、剰余は、〈D〉、V
1、および〈V
A〉に関する情報を密接に関連させる。次に、互いに同調され分光的等方性であり、かつ第1のエンコーディングペアと比べて異なるタイミングパラメータ(τ)を有する、すなわち異なる平均スペクトルコンテントを有する、指向性および等方性エンコーディングスキームの類似ペアを考える。ここで、第1および第2のエンコーディングペアに関する減衰差の差、
【数72-1】
を考えることができる。剰余項に起因して、差は、〈D〉およびV
1における時間依存性(時間依存拡散)によって変調される。したがって差は、異方性コンパートメントにおける時間/周波数依存効果を分離するものではない。この問題を回避し、異方性構造の時間依存性(時間依存拡散)を完全に分離するために、スペクトル異方性を変化させることが提案される。
【0106】
異なる程度のスペクトル異方性を有する2つの等方性エンコーディングスキーム、たとえば分光的異方性および等方性エンコーディングスキームを考える。これら2つのエンコーディングスキームに関する減衰差は、
【数73】
によって求められ、ここで
【数73-1】
は、スペクトル異方性に起因する残差分散を示すために用いられる。この場合、平均スペクトルコンテントは変更されず、異方性コンパートメントのみに影響を及ぼすと予想されるスペクトル異方性のみが変更されるので、
【数73-2】
のみが影響を受け、〈D〉またはV
1は影響を受けない。その結果、剰余項も、異方性コンパートメントにおける時間/周波数依存拡散効果によってのみ影響を受ける。
【0107】
例
図1は、2つの拡散エンコーディングシーケンスに関するディフェージング波形およびパワースペクトラム、および対応する減衰曲線のシミュレーションを示す。挿入
図A1は、2つの直交する方向である点線および破線に沿った(すなわち対応するBテンソルの固有ベクトルに沿った)第1の拡散エンコーディングシーケンスに関するスケーリングされたディフェージングベクトル波形を示す。挿入
図B1は、波形に関する対応するパワースペクトラムを示す。挿入
図A2は、2つの直交する方向である点線および破線に沿った(すなわち。対応するBテンソルの固有ベクトルに沿った)第2の拡散エンコーディングシーケンスに関するスケーリングされたディフェージングベクトル波形を示す。挿入
図B1は、波形に関する対応するパワースペクトラムを示す。
【0108】
第1の拡散エンコーディングシーケンスは、面内分光的等方性(SA=0)である。これは、挿入
図B1における重なり合うパワースペクトラムから分かる。第2の拡散エンコーディングシーケンスは、面内分光的異方性(SA=0.68)である。挿入
図B2において、パワースペクトラムは重なり合わない。ただし第1および第2の拡散シーケンスは、分光的に同調している。両方のスキームは、同一のBテンソルならびにm
(2)テンソルのトレースを生じる。
【0109】
挿入
図Cは、τ=95msにおける正規化信号減衰を示す。実線および破線はそれぞれ、分光的等方性波形(A1、B1)および分光的異方性波形(A2、B2)を用いた計算から得られる。マーカは、分光的等方性波形に関するモンテカルロシミュレーションの結果(丸印、A1、B1)および分光的異方性波形に関するモンテカルロシミュレーションの結果(バツ印、A2、B2)を示す。信号減衰差は、時間依存異方性拡散のみに関して観測され、時間依存等方性拡散に関して観測されない。
【0110】
計算における粉体平均化は、1000の均一に分布した回転に適用された。軸対称楕円細孔における制限拡散に関する拡散スペクトラムは、2つの軸に沿って1μm、1つの軸に沿って5μmの半径を有する球形構造に関してD(ω)を用いて近似された。固有の拡散率D0=10-9m2/sが用いられた。エンコーディング時間te=2τ+tmは、0.05~625msの範囲内で対数的に間隔をあけられた。混合時間は、tm=0.2teに調整された。加えて、モンテカルロシミュレーションは、5・105のウォーカおよび時間ステップを用いて同じ幾何学的形状および固有拡散率によって実行された。シミュレーションにおける粉体平均化は、b=0~18・109s/m2の範囲内で10の直線的に間隔をおいた拡散強調ステップを有する24回転に適用された。
【0111】
結果が示すように、一般の多次元拡散エンコーディング(MDE)実験における時間依存拡散の影響は、周波数領域において分析され得る。(ディフェージングモーメントテンソルと称され得る)mまたはMテンソルは、スペクトルコンテントに関してエンコーディング波形の追加の特徴付けを提供する。Bテンソルは、長期またはガウシアン拡散率に対する感度を提供するが、ディフェージングモーメントテンソルは、時間依存拡散に対する感度を提供する。Bテンソルの異方性を変化させることによって長期拡散異方性に特化したコントラストがもたらされるが、スペクトル異方性を変化させることによって、時間依存拡散異方性に特化したコントラストが生じる。平面拡散エンコーディングを用いるこの例において、スペクトル異方性は、平均スペクトルコンテントから独立して変化してよい。その結果生じる信号減衰差は、異方性領域における時間依存拡散を分離する、特異性の高い情報を伝達する。
【0112】
実施形態の説明
図2は、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法の一般的なフローチャートを示す。サンプルはたとえば、脳組織または任意の器官細胞の(懸濁液の)生体標本といった、水を含む生体サンプルであってよい。ただし方法は、汎用性を有し、たとえば岩石など他の種類のサンプルの分析にも用いられ得る。より一般的には、サンプルは、核磁気共鳴技術によって測定され得る特性を有する核スピン系を含む。
【0113】
方法の理解を容易にするために、以下において、単一ボクセル、すなわち(MRI法の場合)単一空間チャネルまたは(NMR法の場合)単一周波数チャネルからの減衰エコー信号が参照される。当該技術において周知であるように、この分解能は、エンコーディングシーケンス中にサンプルに更なる磁気勾配(たとえば、MRI法の場合、イメージング勾配)を適用することによって実現され得る。ボクセルに対応するサンプルの部分体積からエコー信号成分を識別/隔離するために、サンプルからの測定信号は、当該技術において周知であるように高速フーリエ変換を受けてよく、それによって、各エコー信号のスペクトル成分は、サンプルからサンプルの複数の空間または周波数領域に変換される。
【0114】
当該技術において周知であるように、NMRスペクトロメータまたはMRIデバイスの空間分解能は、とりわけ磁界強度、サンプルに適用される勾配パルスシーケンスの大きさ、およびスルーレートによって制限される。したがって、ボクセルに関するエコー信号は一般に、ボクセルに対応するサンプルの部分体積内の複数の微視的コンパートメントからの寄与を含む。
【0115】
方法は、最先端のNMRスペクトロメータまたはMRIデバイスを用いて実行され得る。当該技術において周知であるように、そのようなデバイスは、デバイスの動作、とりわけ磁気勾配パルスシーケンスの生成、信号の取得ならびに取得した信号(すなわち測定信号)を表すデータを形成するための取得した信号のサンプリングおよびデジタル化を制御するためのコントローラを含んでよい。コントローラは、MRIデバイスの1または複数のプロセッサに実装されてよく、緩和エンコーディングシーケンスおよび磁気勾配パルスシーケンスの生成は、コンピュータ可読媒体(たとえば非一時的コンピュータ可読記憶媒体)に格納されデバイスの1または複数のプロセッサによって実行され得るソフトウェア命令を用いて実装され得る。ソフトウェア命令はたとえば、デバイスの1または複数のプロセッサがアクセス権を有する、デバイスのメモリのプログラム/制御部に格納され得る。ただし、ソフトウェア命令を用いる代わりに、コントローラ方法は、たとえば数例を挙げると1または複数の集積回路、1または複数の特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など、デバイス/コンピュータの専用回路の形式で実装されてもよい。
【0116】
取得した信号を表すデータは、デバイスの、またはデバイスに接続され得るコンピュータなどのデータメモリに格納され得る。
【0117】
データ処理は、処理デバイスによって実行され得る。動作は、非一時的コンピュータ可読媒体において格納または具体化され処理デバイスによって実行され得るソフトウェア命令のセットに実装され得る。たとえばソフトウェア命令は、NMRスペクトロメータ/MRIデバイスのメモリのプログラム/制御部に格納され、スペクトロメータ/デバイスの1または複数のプロセッサユニットによって実行され得る。ただし、NMRスペクトロメータまたはMRIデバイスから独立したデバイス、たとえばコンピュータ上で計算を実行することも同様に可能である。デバイスおよびコンピュータはたとえば、LAN/WLANなどの通信ネットワークを介して、または他の何らかの直列または並列通信インタフェースを介して通信するように構成され得る。さらに留意すべき点として、ソフトウェア命令を用いる代わりに、データ処理は、たとえば数例を挙げると1または複数の集積回路、1または複数のASICまたはFPGAなど、デバイス/コンピュータの専用回路の形式で処理デバイスに実装されてもよい。
【0118】
図2を参照すると、方法は、サンプルに複数の拡散強調磁気共鳴測定を実行すること(ステップ702-1~702n)を備える。NMR/MRIデバイスは、拡散エンコーディングシーケンスを生成し、その結果生じる信号減衰を取得してよい。各測定は、エンコーディングブロック、および後続の検出ブロックを含んでよい。エンコーディングブロックは、RFシーケンスおよび拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスを含んでよい。当該技術において周知であるように、エコー信号を取得するために、各拡散エンコーディング磁気勾配パルスシーケンスは、1または複数のイメージング磁気勾配および任意選択的に磁気勾配補正勾配によって補足され得る。
【0119】
信号検出のブロックに先行して緩和および拡散エンコーディングのブロックを備えるパルスシーケンスの例が
図3aに示され、特定の実装が
図3bに示される。したがって、
図3aは、緩和速度および拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの値に従ってエコー信号を変調するエンコーディングブロック、およびエコー信号が(たとえばスペクトラムまたは画像として)読み出される検出ブロックを示す。
図3bは、90°および180°のRFパルス(細い縦線および太い縦線)を有するパルスシーケンス、3つの直交する方向(実線、破線、および点線)における変調勾配、および検出信号(太線)を示す。信号は、縦方向の復元、横方向の緩和、および拡散によって変調される。
【0120】
ゼロに等しい複合横方向磁化mxyを有する初期状態から開始し、第1の90°RFパルスは、縦方向磁化mzを横断面にフリップする。持続期間τ1を有する時間遅延の間、縦方向磁化は、縦方向緩和速度R1で熱平衡値m0に向かって復元する。第2の90°パルスは、復元磁化を横断面にフリップし、ここで、検出されるまでの期間τ2の間、横方向緩和速度R1でゼロに向かって衰退する。期間τ2中、時間依存磁場勾配が適用される。
【0121】
一般に、スピンエコーエンコーディングおよび励起エコーエンコーディングの両方が用いられ得る。いずれの場合も、RF信号シーケンスは、縦方向緩和のみ、横方向緩和のみ、または縦方向緩和および横方向緩和の両方に起因する減衰をエンコードしてよい。シーケンスの一例は、単一90°パルスおよび単一180°パルスを含んでよい。180°パルスに関する勾配パルスシーケンスのタイミングは変化してよい。たとえば、勾配パルスシーケンスは、180°パルスに先行または後続して実行され得る。そのようないくつかのシーケンスは、取得/検出まで反復され得る。励起エコーシーケンスの例は、第1の90°パルス、第2の90°パルス、および第3の90°パルスを含んでよい。勾配パルスシーケンスは、第1および第2の90°パルスの間に、および/または第3の90°パルスに続いて(すなわち、検出ブロックより前に)実行され得る。ただし、これらのシーケンス例は典型例として提供されたものにすぎず、他のシーケンスも可能である。好適には、同じRF信号シーケンスが、複数の測定の全て、すなわち第1、第2、および第3のセットの全ての測定において用いられる。
【0122】
方法は、少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第1の拡散強調テンソル表現B1を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いて第1の測定702-1を実行することを備えてよい。方法は、少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第2の拡散強調テンソル表現B2を有する第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いて第2の測定702-2を実行することを備えてよい。第1のテンソル表現B1および第2のテンソル表現B2は、同じ数の非ゼロ固有値を有してよい。また、第1のテンソル表現B1の固有値は、第2のテンソル表現B2の固有値と一致してよい(たとえば、10%未満異なり、あるいは等しく、たとえば1%未満異なるなど少なくとも実質的に等しい)。また、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスは、上で定義されたように、一致する平均スペクトルコンテントを示し、異なる程度のスペクトル異方性を示すように構成され得る。
【0123】
2つのそのような拡散エンコーディングシーケンスの例が
図1に示される。
図1において、シーケンスは、平面エンコーディングシーケンスであり、すなわち、厳密に2つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する。ただし、3D拡散エンコーディングシーケンス、すなわち厳密に3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する拡散エンコーディングシーケンスを生成することも可能である。拡散エンコーディングシーケンスは、上述した数値的アプローチを用いて設計され得る。追加または代替として、拡散エンコーディングシーケンスは、上述したテストケースを利用して設計され得る。テストケースが拡散エンコーディングシーケンスの初期設計に合わない場合、拡散エンコーディングシーケンスのうち1または複数の1または複数のパラメータが変更され得る反復アプローチが適用され得る。その後新たな試験が、修正された拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行され得る。反復は、テストケースが合うまで行われてよい。試験を目的として、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスのb値は、1*10
9~4*10
9s/m
2の範囲内の任意の単一の値であってよい。上述したようなテストケースは、直径5μmの球状コンパートメントおよび円筒状コンパートメントを参照するが、たとえば5~15μmの範囲内のいずれかなど他の直径を用いることも可能である。この範囲内のコンパートメント径は、2つの拡散エンコーディングシーケンスがスペクトルの一致および異なる程度のスペクトル異方性という要件を満たすかを試験することも可能にする。
【0124】
各測定の検出ブロックは、エンコーディングブロックに後続してエコー信号を検出することを含んでよい。複数の測定の結果生じる信号は、データとして取得および記録され得る。エコー信号は、データを形成するためにサンプリングおよびデジタル化され得る。データは、更なるデータ処理のために格納され得る。データは例えば、デバイスの、またはデバイスに接続され得るコンピュータなどのデータメモリに格納され得る。
【0125】
測定は粉体平均化されてよく、第1および第2の測定の各々は、異なる測定方向、好適には複数の方向の数だけ反復され得る。第1の平均信号減衰は、各測定方向に関して、第1の拡散エンコーディングシーケンスの適用の結果生じる信号減衰の平均として計算され得る。対応して、第2の平均信号減衰は、各測定方向に関して、第2の拡散エンコーディングシーケンスの適用の結果生じる信号減衰の平均として計算され得る。
【0126】
方法のステップ704において、処理デバイスは、磁気共鳴測定702-1および702-2の結果生じる、測定された第1および第2の(任意選択的に平均化された)信号減衰に基づいて出力を生成してよい。出力は例えば、第1および第2の信号減衰の差、または第1および第2の信号減衰の比に基づいてよい。処理デバイスは、サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々に関して測定された信号減衰に基づいて対応する出力を生成してよい。処理デバイスは、第1の測定において取得された信号減衰が第2の測定において取得された信号減衰と閾値より大きく異なるボクセルの指標を含む出力をデジタル画像の形式で生成してよい。たとえば、第1の測定が第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルは、輝度の増加、色の逸脱、境界ボックス、および/または他の何らかのグラフィック要素を用いて強調され得る。
【0127】
上記において、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスをそれぞれ用いる第1および第2の測定が参照されたが、方法は、たとえば第3の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第3の測定など、更なる測定を含んでよいことに留意すべきである。第3の拡散エンコーディングシーケンスは、少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第2の拡散強調テンソル表現B3を有してよい。テンソル表現B3は、テンソル表現B1およびB2と同じ数の非ゼロ固有値を有してよい。また、第3のテンソル表現B3の固有値は、テンソル表現B1およびB2の固有値と一致してよい。さらに、第3の拡散エンコーディングシーケンスは、第1の拡散エンコーディングシーケンスの平均スペクトルコンテントおよび第2の拡散エンコーディングシーケンスの平均スペクトルコンテントと一致する平均スペクトルコンテントを示し、第1の拡散エンコーディングシーケンスのスペクトル異方性の程度および第2の拡散エンコーディングシーケンスのスペクトル異方性の程度と異なる程度のスペクトル異方性を示すように構成され得る。
【0128】
図2を参照すると、方法のステップ702-1は、異なる拡散エンコーディング強度(b値)および一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性を有する拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される第1の測定セットを実行することを含んでもよい。対応して、ステップ702-2は、異なる拡散エンコーディング強度および一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性を有する拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される第2の測定セットを実行することを含んでよい。第1および第2のセットの各々の拡散エンコーディングシーケンスは、それぞれのテンソル表現を有してよく、第1および第2のセットのそれぞれの拡散エンコーディングシーケンスに関するテンソル表現の非ゼロ固有値の数は等しい。
【0129】
検出ブロックは、信号減衰の第1のセットを取得すること、および取得した信号減衰の第1のセットを表す第1のデータセットを記録することを含んでよい。対応して検出ブロックは、信号減衰の第2のセットを取得すること、および取得した信号減衰の第2のセットを表す第2のデータセットを記録することを含んでよい。任意選択的に、各セットの各測定は、上述したような対応する方法で粉体平均化され得る。
【0130】
方法のステップ704において、処理デバイスは結果的に、第1の信号減衰曲線E(b)を推定するために、(任意選択的に平均化された)信号減衰の第1のセットを表す第1のデータセットに関数をフィッティングしてよい。処理デバイスはさらに、第2の信号減衰曲線E(b)を推定するために、(任意選択的に平均化された)信号減衰の第2のセットを表す第2のデータセットに関数をフィッティングしてよい。任意のフィッティング関数が、拡散スペクトラムD(ω)の成分または固有モードλi(ω)またはλk
(n)(0)、すなわちゼロ周波数におけるλk(ω)のn番目の導関数(式40)または有効制限テンソルρ4(式52~56)に関するパラメータを含む。処理デバイスはその結果、第1のフィッティングおよび第2のフィッティングの少なくとも1つのパラメータに基づいて出力を生成してよい。上記と同様、処理デバイスは、サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々に関して測定された信号減衰に基づいて対応する出力を生成してよい。
【0131】
上記において、本発明概念は主に、限られた数の例を参照して説明された。しかし、当業者によって容易に理解されるように、開示した例ではない他の例が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明概念の範囲内で同等に可能である。
【0132】
参照文献リスト
上記開示において、丸括弧または鍵括弧内の1または複数の数字は、以下の参照文献リストにおける、対応した番号の参照文献を参照するものである。
【0133】
1. Westin C-F, Szczepankiewicz F, Pasternak O, 他: Measurement Tensors in Diffusion MRI: Generalizing the Concept of Diffusion Encoding. Med Image Comput Comput Assist Interv 2014; 17:209-216.
2. Lasic S, Szczepankiewicz F, Eriksson S, Nilsson M, Topgaard D: Microanisotropy imaging: quantification of microscopic diffusion anisotropy and orientational order parameter by diffusion MRI with magic-angle spinning of the q-vector. Front Phys 2014; 2:1-14.
3. Eriksson S, Lasic S, Topgaard D: Isotropic diffusion weighting in PGSE NMR by magic-angle spinning of the q-vector. J Magn Reson 2013; 226:13-8.
4. Eriksson S, Lasic S, Nilsson M, Westin C-F, Topgaard D: NMR diffusion-encoding with axial symmetry and variable anisotropy: Distinguishing between prolate and oblate microscopic diffusion tensors with unknown orientation distribution. J Chem Phys 2015; 142:104201.
5. Szczepankiewicz F, Lasic S, van Westen D,他: Quantification of microscopic diffusion anisotropy disentangles effects of orientation dispersion from microstructure: applications in healthy volunteers and in brain tumors. Neuroimage 2015; 104:241-52.
6. Stepisnik J: Validity limits of Gaussian approximation in cumulant expansion for diffusion attenuation of spin echo. Phys B 1999; 270:110-117.
7. Stepisnik J: Time-dependent self-diffusion by NMR spin-echo. Phys B 1993; 183:343-350.
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法であって、
前記サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
前記測定は、
少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第1の拡散強調テンソル表現B
1
を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
少なくとも2つの非ゼロ固有値を有する第2の拡散強調テンソル表現B
2
を有する第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と
を含み、
前記第1の拡張強調テンソル表現B
1
および前記第2の拡張強調テンソル表現B
2
は、同じ数の非ゼロ固有値を有し、前記第1の拡張強調テンソル表現B
1
の前記固有値は、前記第2の拡張強調テンソル表現B
2
の前記固有値と一致し、
前記第1および前記第2の拡散エンコーディングシーケンスは、一致する平均スペクトルコンテントを示し、かつ、異なる程度のスペクトル異方性を示すように構成される、方法。
[2]
前記第1および前記第2の拡散エンコーディングシーケンスは、
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの第1の正規化ディフェージングベクトル表現F
~
1
と一致する正規化ディフェージングベクトル表現F
~
3
を有し、非ゼロ拡散エンコーディング強度を有する第3の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの集合から成る第1の試験サンプルに適用され、
前記第2の拡散エンコーディングシーケンスの第2の正規化ディフェージングベクトル表現F
~
2
と一致する正規化ディフェージングベクトル表現F
~
4
を有し、前記非ゼロ拡散エンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、前記第1の試験サンプルに適用され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致する、
ように構成され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスが、均一な配向分散を有する直径5μmの円筒状コンパートメントの集合から成る第2の試験サンプルに適用され、
前記第4の拡散エンコーディングシーケンスが、前記第2の試験サンプルに適用され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と異なる、
ように構成される、[1]の方法。
[3]
前記第1の測定は、第1の信号減衰を取得することを含み、前記第2の測定は、第2の信号減衰を取得することを含む、[1]または[2]の方法。
[4]
前記測定は、
前記第1の測定と、参照測定フレームに対して異なる回転による前記サンプルに適用される前記第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む第1の測定セットと、
前記第2の測定と、前記参照測定フレームに対して異なる回転による前記サンプルに適用される前記第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む第2の測定セットと、
を含む、[1]~[3]のいずれかの方法。
[5]
前記第1の測定セットの各測定は、それぞれの信号減衰を取得することを含み、前記方法は、前記それぞれの信号減衰に基づいて第1の平均信号減衰を決定することを備え、
前記第2の測定セットの各測定は、それぞれの信号減衰を取得することを含み、前記方法は、前記それぞれの信号減衰に基づいて第2の平均信号減衰を決定することを備える、[4]の方法。
[6]
前記第1および第2の信号減衰の差または前記第1および第2の平均信号減衰の差を示す出力を生成することをさらに備える、[1]または[2]の方法。
[7]
前記第1の拡張強調テンソル表現は、3つの一致する非ゼロ固有値を有する、[1]~[6]のいずれかの方法。
[8]
前記第2の拡張強調テンソル表現は、3つの一致する非ゼロ固有値を有する、[1]~[7]のいずれかの方法。
[9]
前記測定を実行することは、前記サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、前記測定の各々の結果生じるそれぞれの信号減衰を測定することを含む、[1]~[8]のいずれかの方法。
[10]
前記第1の測定において取得された信号減衰が前記第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することをさらに備える、[9]の方法。
[11]
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法であって、
前記サンプルに、拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
前記測定は、
異なる拡散エンコーディング強度および一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性を有する拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される第1の測定セットと、
異なる拡散エンコーディング強度および一致する平均スペクトルコンテントおよび一致する程度のスペクトル異方性を有する拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される第2の測定セットと、
を含み、
前記第1の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの前記スペクトル異方性の程度は、前記第2の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの前記スペクトル異方性の程度と異なる、方法。
[12]
第1の信号減衰曲線を推定するために前記第1の測定セットを表す第1のデータセットに第1の関数をフィッティングすることと、
第2の信号減衰曲線を推定するために前記第2の測定セットを表す第2のデータセットに第2の関数をフィッティングすることと、
をさらに備える、[11]の方法。
[13]
前記第1の関数の少なくとも1つのパラメータおよび前記第2の関数の少なくとも1つのパラメータに基づいて出力を生成することをさらに備える、[12]の方法。
[14]
前記第1の測定セットおよび前記第2の測定セットの各々の前記拡散エンコーディングシーケンスはそれぞれのテンソル表現を有し、前記テンソル表現の非ゼロ固有値の数は等しい、[11]~[13]のいずれか1項の方法。
[15]
前記第1の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの各々の前記平均スペクトルコンテントは、前記第2の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの各々の前記平均スペクトルコンテントと一致する、[11]~[14]のいずれか1項の方法。