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特許7218290アクティブに使用されるスペクトル内での干渉を緩和するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】アクティブに使用されるスペクトル内での干渉を緩和するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0452 20170101AFI20230130BHJP
   H04W 16/02 20090101ALI20230130BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20230130BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20230130BHJP
【FI】
H04B7/0452 100
H04W16/02
H04W16/14
H04W16/28
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019531862
(86)(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 US2017047963
(87)【国際公開番号】W WO2018039200
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-06-01
(31)【優先権主張番号】62/380,126
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/682,076
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519066751
【氏名又は名称】リアデン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】パールマン スティーブン ジー
(72)【発明者】
【氏名】フォレンツァ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ディ ディオ マリオ
(72)【発明者】
【氏名】サイビ ファディ
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/160497(WO,A1)
【文献】特開2003-051775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0452
H04W 16/02
H04W 16/14
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDDモードで動作し、かつ複数の無線受信機ステーションを含む、第1の無線ネットワークであって、前記複数の無線受信機ステーションは同じセルIDを共有し、同じ周波数帯域内の複数のユーザ装置(UE)への同時不干渉プリコードデータストリームを生成する、第1の無線ネットワークと、
FDDモードで動作し、かつ1つ又は複数のアンテナを含FDDアップリンク(「UL」)バンド又はFDDダウンリンク(「DL」)バンドのいずれかが前記第1の無線ネットワークのTDDバンドと同じ周波数である、第2の無線ネットワークと、
を備えるシステムであって、
前記第1の無線ネットワークが、前記1つのアンテナ又は前記複数のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの1つ又は複数の位置で、1つ又は複数のゼロ無線周波数(RF)エネルギー点を生成する、
システム。
【請求項2】
前記ゼロRFエネルギー点が、前記第1の無線ネットワークから前記第2の無線ネットワークへのバンド外放射(OOBE)又はブロッキングを緩和するために生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の無線ネットワークが、前記ゼロRFエネルギー点を生成するためにプリコーディングを使用するマルチユーザ多重アンテナシステム(MU-MAS)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
プリコーディングが、前記第1の無線ネットワークの前記複数の無線受信機ステーションと、前記第2の無線ネットワークの1つ又は前記複数のアンテナとの間のチャネル状態情報(CSI)に基づいて計算される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記CSIが、前記無線受信機ステーションと1つ又は前記複数のアンテナとの間の複数の無線リンク上で送信される前記第1の無線ネットワークのバンド内又は前記第1の無線ネットワークのバンド外トレーニング信号を使用して推定される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
TDDモードで動作し、かつ複数の無線受信機ステーションを含む、第1の無線ネットワークであって、前記複数の無線受信機ステーションは同じセルIDを共有し、同じ周波数帯域内の複数のユーザ装置(UE)への同時不干渉プリコードデータストリームを生成する、第1の無線ネットワークと、
FDDモードで動作し、かつ1つ又は複数のアンテナを含FDD ULバンド又はFDD DLバンドのいずれかが前記第1の無線ネットワークのTDDバンドと同じ周波数である、第2の無線ネットワークと、
を備えるシステムであって、
前記第1の無線ネットワークが、前記1つのアンテナ又は前記複数のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの1つ又は複数の位置で、1つ又は複数のゼロ無線周波数(RF)エネルギー点を生成し、
前記第2の無線ネットワークが、前記第1の無線ネットワークのTDD動作の知識を何も有していない、
システム。
【請求項7】
TDDモードで動作し、かつ複数の無線受信機ステーションを含む、第1の無線ネットワークであって、前記複数の無線受信機ステーションは同じセルIDを共有し、同じ周波数帯域内の複数のユーザ装置(UE)への同時不干渉プリコードデータストリームを生成する、第1の無線ネットワークと、
FDDモードで動作し、かつ1つ又は複数のアンテナを含FDD ULバンド又はFDD DLバンドのいずれかが前記第1の無線ネットワークのTDDバンドと同じ周波数である、第2の無線ネットワークと、
を備えるシステムであって、
前記第1の無線ネットワークが、前記1つのアンテナ又は前記複数のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの1つ又は複数の位置で、1つ又は複数のゼロ無線周波数(RF)エネルギー点を生成し、前記第2の無線ネットワークが、前記第1の無線ネットワークのTDD動作の知識を有している、
システム。
【請求項8】
TDDモードで動作し、かつ複数の無線受信機ステーションを含む、第1の無線ネットワークであって、前記複数の無線受信機ステーションは同じセルIDを共有し、同じ周波数帯域内の複数のユーザ装置(UE)への同時不干渉プリコードデータストリームを生成する、第1の無線ネットワークと、
FDDモードで動作し、かつ1つ又は複数のアンテナを含FDD ULバンド又はFDD DLバンドのいずれかが前記第1の無線ネットワークのTDDバンドと同じ周波数である、第2の無線ネットワークと、
前記第1の無線ネットワークが、前記1つのアンテナ又は複数のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの1つ又は複数の位置で、1つ又は複数のゼロ無線周波数(RF)エネルギー点を生成し、
前記第1の無線ネットワークが、地上無線サービスを提供し、前記第2の無線ネットワークが、航空機に無線サービスを提供する。
【請求項9】
TDDモードで動作し、かつ複数の無線受信機ステーションを含む、第1の無線ネットワークであって、前記複数の無線受信機ステーションは同じセルIDを共有し、同じ周波数帯域内の複数のユーザ装置(UE)への同時不干渉プリコードデータストリームを生成する、第1の無線ネットワークと、
FDDモードで動作し、かつ1つ又は複数のアンテナを含FDD ULバンド又はFDD DLバンドのいずれかが前記第1の無線ネットワークのTDDバンドと同じ周波数である、第2の無線ネットワークと、を含む、ネットワーク上で通信するための方法であって、
前記第1の無線ネットワークが、前記1つのアンテナ又は複数のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの1つ又は複数の位置で、1つ又は複数のゼロ無線周波数(RF)エネルギー点を生成する、方法。
【請求項10】
前記ゼロRFエネルギー点が、前記第1の無線ネットワークから前記第2の無線ネットワークへのバンド外放射(OOBE)又はブロッキングを緩和するために生成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の無線ネットワークが、前記ゼロRFエネルギー点を生成するためにプリコーディングを使用するマルチユーザ多重アンテナシステム(MU-MAS)である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
プリコーディングが、前記第1の無線ネットワークの前記複数の無線受信機ステーションと、前記第2の無線ネットワークの1つ又は前記複数のアンテナとの間のチャネル状態情報(CSI)に基づいて計算される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記CSIが、前記無線受信機ステーションと1つ又は前記複数のアンテナとの間の複数の無線リンク上で送信される前記第1の無線ネットワークのバンド内又は前記第1の無線ネットワークのバンド外トレーニング信号を使用して推定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
TDDモードで動作し、かつ複数の無線受信機ステーションを含む、第1の無線ネットワークであって、前記複数の無線受信機ステーションは同じセルIDを共有し、同じ周波数帯域内の複数のユーザ装置(UE)への同時不干渉プリコードデータストリームを生成する、第1の無線ネットワークと、
FDDモードで動作し、かつ1つ又は複数のアンテナを含FDD ULバンド又はFDD DLバンドのいずれかが前記第1の無線ネットワークのTDDバンドと同じ周波数である、第2の無線ネットワークと、を含む、ネットワーク上で通信するための方法であって、
前記第1の無線ネットワークが、前記1つのアンテナ又は前記複数のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの1つ又は複数の位置で、1つ又は複数のゼロ無線周波数(RF)エネルギー点を生成し、
前記第2の無線ネットワークが、前記第1の無線ネットワークのTDD動作の知識を何も有していない、方法。
【請求項15】
TDDモードで動作し、かつ複数の無線受信機ステーションを含む、第1の無線ネットワークであって、前記複数の無線受信機ステーションは同じセルIDを共有し、同じ周波数帯域内の複数のユーザ装置(UE)への同時不干渉プリコードデータストリームを生成する、第1の無線ネットワークと、
FDDモードで動作し、かつ1つ又は複数のアンテナを含FDD ULバンド又はFDD DLバンドのいずれかが前記第1の無線ネットワークのTDDバンドと同じ周波数である、第2の無線ネットワークと、を含む、ネットワーク上で通信するための方法であって、
前記第1の無線ネットワークが、前記1つのアンテナ又は前記複数のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの1つ又は複数の位置で、1つ又は複数のゼロ無線周波数(RF)エネルギー点を生成し、前記第2の無線ネットワークが、前記第1の無線ネットワークのTDDの動作の知識を有している、方法。
【請求項16】
TDDモードで動作し、かつ複数の無線受信機ステーションを含む、第1の無線ネットワークであって、前記複数の無線受信機ステーションは同じセルIDを共有し、同じ周波数帯域内の複数のユーザ装置(UE)への同時不干渉プリコードデータストリームを生成する、第1の無線ネットワークと、
FDDモードで動作し、かつ1つ又は複数のアンテナを含FDD ULバンド又はFDD DLバンドのいずれかが前記第1の無線ネットワークのTDDバンドと同じ周波数である、第2の無線ネットワークと、を含む、ネットワーク上で通信するための方法であって、
前記第1の無線ネットワークが、前記1つのアンテナ又は前記複数のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの1つ又は複数の位置で、1つ又は複数のゼロ無線周波数(RF)エネルギー点を生成し、
前記第1の無線ネットワークが、地上無線サービスを提供し、前記第2の無線ネットワークが、航空機に無線サービスを提供する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年8月26日に出願の米国仮出願第62/380,126号の利益を主張する。
【0002】
本出願はまた、その全体が本明細書に参照により組み込まれる2014年4月16日に出願の米国仮出願第61/980,479号、発明の名称「Systems and Methods for Concurrent Spectrum Usage Within Actively Used Spectrum」の利益及び優先権を主張する2015年3月27日に出願の米国出願第14/672,014号、発明の名称「Systems and Methods for Concurrent Spectrum Usage Within Actively Used Spectrum」の部分継続出願でもある。
【0003】
本出願は、以下の同時係属中の米国特許出願及び米国仮出願に関連し得る:
【0004】
米国出願第14/611,565号、発明の名称「Systems and Methods for Mapping Virtual Radio Instances into Physical Areas of Coherence in Distributed Antenna Wireless Systems」
【0005】
米国出願第14/086,700号、発明の名称「Systems and Methods for Exploiting Inter-cell Multiplexing Gain in Wireless Cellular Systems Via Distributed Input Distributed Output Technology」
【0006】
米国出願第13/844,355号、発明の名称「Systems and Methods for Radio Frequency Calibration Exploiting Channel Reciprocity in Distributed Input Distributed Output Wireless Communications」
【0007】
米国出願第13/797,984号、発明の名称「Systems and Methods for Exploiting Inter-cell Multiplexing Gain in Wireless Cellular Systems Via Distributed Input Distributed Output Technology」
【0008】
米国出願第13/797,971号、発明の名称「Systems and Methods for Exploiting Inter-cell Multiplexing Gain in Wireless Cellular Systems Via Distributed Input Distributed Output Technology」
【0009】
米国出願第13/797,950号、発明の名称「Systems and Methods for Exploiting Inter-cell Multiplexing Gain in Wireless Cellular Systems Via Distributed Input Distributed Output Technology」
【0010】
米国出願第13/475,598号、発明の名称「Systems and Methods to enhance spatial diversity in distributed-input distributed-output wireless systems」
【0011】
米国出願第13/233,006号、発明の名称「System and Methods for planned evolution and obsolescence of multiuser spectrum」
【0012】
米国出願第13/232,996号、発明の名称「Systems and Methods to Exploit Areas of Coherence in Wireless Systems」
【0013】
米国出願第12/802,989号、発明の名称「System And Method For Managing Handoff Of A Client Between Different Distributed-Input-Distributed-Output(DIDO) Networks Based On Detected Velocity Of The Client」
【0014】
米国出願第12/802,988号、発明の名称「Interference Management,Handoff,Power Control And Link Adaptation In Distributed-Input Distributed-Output(DIDO)Communication Systems」
【0015】
米国出願第12/802,975号、発明の名称「System And Method For Link adaptation In DIDO Multicarrier Systems」
【0016】
米国出願第12/802,974号、発明の名称「System And Method For Managing Inter-Cluster Handoff Of Clients Which Traverse Multiple DIDO Clusters」
【0017】
米国出願第12/802,958号、発明の名称「System And Method For Power Control And Antenna Grouping In A Distributed-Input-Distributed-Output(DIDO) Network」
【0018】
2016年7月5日発行の米国特許第9,386,465号、発明の名称「System and Method for Distributed Antenna Wireless Communications」
【0019】
2016年6月14日発行の米国特許第9,369,888号、発明の名称「Systems and Methods To Coordinate Transmissions In Distributed Wireless Systems Via User Clustering」
【0020】
2016年4月12日発行の米国特許第9,312,929号、発明の名称「System and Methods to Compensate for Doppler Effects in Distributed-Input Distributed Output Systems」
【0021】
2015年3月24日発行の米国特許第8,989,155号、発明の名称「Systems and Methods for Wireless Backhaul in Distributed-Input Distributed-Output Wireless Systems」
【0022】
2015年3月3日発行の米国特許第8,971,380号、発明の名称「System And Method For Adjusting DIDO Interference Cancellation Based On Signal Strength Measurements」
【0023】
2014年2月18日発行の米国特許第8,654,815号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communications」
【0024】
2013年10月29日発行の米国特許第8,571,086号、発明の名称「System and Method for DIDO Precoding Interpolation in Multicarrier Systems」
【0025】
2013年9月24日発行の米国特許第8,542,763号、発明の名称「Systems and Methods To Coordinate Transmissions In Distributed Wireless Systems Via User Clustering」
【0026】
2013年4月23日発行の米国特許第8,428,162号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communications」
【0027】
2012年5月1日発行の米国特許第8,170,081号、発明の名称「System And Method For Adjusting DIDO Interference Cancellation Based On Signal Strength Measurements」
【0028】
2012年4月17日発行の米国特許第8,160,121号、発明の名称「System and Method For Distributed Input-Distributed Output Wireless Communications」
【0029】
2011年2月8日発行の米国特許第7,885,354号、発明の名称「System and Method For Enhancing Near Vertical Incidence Skywave(「NVIS」)Communication Using Space-Time Coding.」
【0030】
2010年5月4日発行の米国特許第7,711,030号、発明の名称「System and Method For Spatial-Multiplexed Tropospheric Scatter Communications」
【0031】
2009年12月22日発行の米国特許第7,636,381号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communication」
【0032】
2009年12月15日発行の米国特許第7,633,994号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communication」
【0033】
2009年10月6日発行の米国特許第7,599,420号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communication」
【0034】
2008年8月26日発行の米国特許第7,418,053号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communication」。
【背景技術】
【0035】
周波数分割二重(「FDD」)モード及び時間分割二重(「TDD」)モードの両方が、無線通信システムで一般的に使用されている。例えば、LTE規格は、FDD及びTDDモードの両方をサポートし、別の例としては、802.11バージョン(例えば、Wi-Fi)は、TDDモードの動作をサポートする。
【0036】
LTEの場合、種々の番号のバンドは、「進化型ユニバーサル地上無線アクセス(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access)」(E-UTRA)エアインタフェースと称されるものの範囲内で定義される。各E-UTRAバンドは、特定のバンド数を規定するだけではなく、そのバンドがFDD又はTDDであるか、及びどのバンド幅がバンド内でサポートされているかも定義する(例えば、E-UTRAバンドのリスト及びそれらの規格に関しては、http://en.wikipedia.org/wiki/LTE_frequency_bands#Frequency_bands_and_channel_bandwidthsを参照されたい)。例えば、バンド7は、アップリンク(「UL」)に対して2,500~2,570MHz、ダウンリンク(「DL」)に対して2,620~2,690の周波数範囲を使用するとして定義されるFDDバンドであり、UL及びDLバンドの各々内の5、10、15、20MHzの信号バンド幅をサポートする。
【0037】
多くの場合、E-UTRAバンドは、重なる。例えば、異なるバンドは、異なる市場又は領域に割り当てられた共通のスペクトルであり得る。例えば、バンド41は、UL及びDLの両方に対して2,496~2,690MHzの周波数範囲を使用するTDDバンドであり、これはFDDバンド7(例えば、図16a及び16bを参照)においてUL及びDL範囲の両方と重なる。現在、バンド41は、米国においてSprintによって使用されており、一方バンド7は、カナダの周辺国においてRogers Wirelessによって使用されている。このため、米国では、2,500~2,570MHzがTDDスペクトルであり、一方カナダでは、その同じ周波数範囲が、FDDスペクトルのULである。
【0038】
典型的には、モバイル装置は無線ネットワークに取り付けると、1つ以上の基地局からの伝送に関してバンド検索を通して走査し、典型的には取り付け手順の間に、基地局は、ネットワークによって使用されるバンド幅及び使用中のプロトコルの詳細等のネットワークの特徴を伝送する。例えば、LTE装置が米国において2,620~2,690MHzを走査する場合、スペクトルをバンド41と識別するeNodeBによって伝送されるLTE DLフレームを受信することがあり、LTE装置がバンド41及びTDDをサポートする場合、そのバンドにおいてTDDモードでeNodeBに接続することを試みることもある。同様に、LTE装置がカナダにおいて2,620~2,690MHzを走査する場合、スペクトルをバンド7と識別するeNodeBによって伝送されるLTE DLフレームを受信することがあり、LTE装置がバンド7及びFDDをサポートする場合、バンド7においてFDDモードでeNodeBに接続することを試みることもある。
【0039】
世界中に展開されるほとんどの早期LTEネットワークは、FDDモードを使用したが(例えば、Verizon,AT&T)、TDDモードが、米国(SprintがTDDを展開している)等の広範囲のFDD対象範囲を有する市場、及び中国(China MobileがTDDを展開している)等の広範囲のLTE対象範囲をまだ有していない市場の両方において、次第に使用されている。多くの場合、単一の運用者は、FDD及びTDDの両方を異なる周波数で展開し(例えば、Sprintは、米国において異なる周波数のFDD LTE及びTDD LTEの両方を運用する)、使用されるバンドに応じて両方のモードで動作することができるLTE装置を提案し得る。
【0040】
LTEバンドのE-UTRAリストは、決して最終リストではなく、むしろ、新たなスペクトルがモバイル運用者に割り当てられ、そのスペクトルを使用する装置が規定されるにつれて進化することに留意されたい。新たなバンドは、その周波数に重なる現在のバンドがないスペクトル、及び以前のバンド割り当ての周波数に重なるバンドのスペクトルの両方において規定される。例えば、703~803MHzにわたるTDDバンドであるバンド44は、バンド12、13、14、及び17等のより古い700MHzのFDDバンドが規定された数年後に、E-UTRAバンドとして追加された。
【0041】
図6で見ることができるように、モバイルデータの大部分は、音声データとして使用され(例えば、2007のQ1)、これは対称性が高い。しかし、2007年のiPhone(登録商標)の導入、及びAndroidの急速な採用、次いで2009年のiPad(登録商標)の導入に伴い、非音声モバイルデータは、2013年の中頃までに音声データの伸びを急速に追い越し、音声データはモバイルデータトラフィックのほんの一部となった。非音声データは、指数関数的に増大し続けると予測され、音声データは次第に小さくなっていく。
【0042】
図7で見ることができるように、非音声モバイルデータは、ストリーミングビデオ、オーディオ、及びウェブブラウジング(そのほとんどはストリーミングビデオを含む)等の媒体によって主に占められる。一部のストリーミング媒体は、ULデータ(例えば、ビデオ会議中)であるが、圧倒的多数はDLデータであり、DL対ULデータ使用の非対称性を高くする。例えば、2013年5月28日のFinancial Timesの記事、「Asymmetry and the impending(US)spectrum crisis」において、「...データトラフィックダウンリンク対アップリンクにおけるデータトラフィックの比率の業界推定値は、約8対1(8:1)から、それを大幅に超える比率の範囲である」と述べられている。記事は次いで、米国における大規模なFDD展開は、FDDモードが各DL及びULに同じ量のスペクトルを割り当てるため、そのような非対称性の取り扱いに非常に非効率的であると指摘する。別の例として、Qualcommは、ライブネットワークの2009年測定値に基づいて、米国の運用者のうちの1つにおいてDL/ULトラフィック非対称性が、9:1もの高さであると推定した(Qualcomm、「1000x:more spectrum especially for small cells」、Nov.2013、http://www.qualcomm.com/media/documents/files/1000x-more-spectrum-especially-for-small-cells.pdfを参照されたい)。このため、FDD DLスペクトルが大量に利用されているときであっても(潜在的に過負荷になる時点まで)、ULスペクトルの大部分は使用されていない場合がある。
【0043】
Financial Timesの記事は、TDDが、ULデータよりもはるかに多いタイムスロットをDLデータに割り当てるように構成することができるため、そのような非対称性にはるかに適していることを指摘する。例えば、20MHz(10+10MHzとして)がFDDに割り当てられる場合、DLデータのスループットが、(ULデータが割り当てられた10MHzよりもはるかに少量を必要とする場合であっても)最大でも10MHzのフルタイム使用に制限されるのに対して、20MHzがTDDに割り当てられる場合、DLデータのスループットは、時間の大部分において20MHzの全てを使用することができ、わずかな割合の時間で20MHzをULデータに割り当て、これは、今日のデータ使用の特徴にはるかに適合している。その記事は、残念なことに、ほとんどの既存の米国のモバイルスペクトルが既にFDDモードに投じられていることを認めているが、FCCが、新たなスペクトルを割り当てることでTDDの使用を促進するように勧めている。
【0044】
TDDは、モバイルデータの増加する非対称性質を前提として、新たなスペクトル割り当てのより効率的な使用を確実に可能にするだろうが、残念なことに、既存のFDDネットワーク展開は、そのようなLTE FDDネットワークのユーザの圧倒的多数が、FDDモードのみをサポートする装置を有し、それらの装置は、ネットワークがTDDモードに切り替わった場合、接続不能になる可能性があるため、動作モードをTDDに変更することはできない。その結果として、LTEデータ使用がますます非対称になるにつれて、既存のLTE FDDネットワークはDLの混雑の増加が見られる一方で、ULスペクトルはますます利用がされなくなるであろう(Financial Timesの2013年5月28日の記事のDLチャネルが十分に利用される場合は、10MHzの1.25MHzに等しい1/8だけがULチャネルに使用されるだろうと示唆するより低い評価の8:1のDL:UL比で)。これは、特に、実用的なモバイルスペクトル(例えば、壁を透過し、約450~2600MHz等の見通し外(non-line-of-sight)で十分に伝播することができる周波数)の限られた物理的存在、及びモバイルデータの数関数的増加(ますます非対称になる)(例えば、Cisco 2/2013 VNIは、2018までにモバイルデータが年平均成長率(CAGR)61%で増加すると予測し、そのほとんどはストリーミングビデオ及び他の非対称性が高いデータである)を仮定すると、極めて無駄が多く、非効率的である。
【0045】
本発明のより良好な理解は、図面を併用して以下の詳細な説明から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】DIDO無線アクセスネットワーク(DRAN)の汎用フレームワークを例示する。
図2】OSIモデル及びLTE規格と一致した仮想無線インスタンス(VRI)のプロトコルスタックを例示する。
図3】DIDO無線ネットワークの対象範囲を拡大するための隣接するDRANを例示する。
図4】DRANと隣接する無線ネットワークとの間のハンドオフを例示する。
図5】DRANとLTEセルラーネットワークとの間のハンドオフを例示する。
図6】2007~2013年のモバイルスペクトルの音声及び非音声データ利用を示す先行技術である。
図7】2012年の用途タイプ別のモバイルデータトラフィックシェアを示す先行技術である。
図8】FDD LTE及びTDD LTEモードの動作の先行技術比較である。
図9】既存のFDDネットワークでULスペクトルを同時に使用する新たなTDDネットワークを例示する。
図10】TDD LTE二重構成の先行技術の表である。
図11】既存のFDDネットワークでDLスペクトルを同時に使用する新たなTDDネットワークを例示する。
図12】既存のFDDネットワークでUL及びDLスペクトルを同時に使用する2つの新たなTDDネットワークを例示する。
図13】既存のFDDネットワークでUL及びDLスペクトルを同時に使用する新たなFDDネットワークを例示する。
図14】基地局アンテナの位置でヌルpCellsを合成するDRANを例示する。
図15a】基地局アンテナ間の種々の伝搬シナリオを例示する。
図15b】基地局アンテナ間の種々の伝搬シナリオを例示する。
図15c】基地局アンテナ間の種々の伝搬シナリオを例示する。
図15d】基地局アンテナ間の種々の伝搬シナリオを例示する。
図16a】FDD及びTDD、又はTDDのみのいずれかとしての、異なる領域における、2500~2690MHzの割り当ての先行技術の図である。
図16b】FDD及びTDD、又はTDDのみのいずれかとしての、異なる領域における、2500~2690MHzの割り当ての先行技術の図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
上述の先行技術の制限の多くを克服するための1つの解決法は、現在のFDDスペクトル使用と対立しないようにTDDスペクトル使用が調整されるように、ユーザ装置を、現在使用されているUL又はDL FDDスペクトルと同じスペクトルにおいてTDDモードで同時に動作させることである。特にFDD ULチャネルにおいて、ますます多くの未使用のスペクトルが存在し、TDD装置は、既存のFDDネットワークのスループットに影響することなくそのスペクトルを使用することができる。伝播効率の高いUHFスペクトルのTDD使用も可能にし、それは、世界中の多くの領域でほぼ完全にFDDに割り当てられ、TDDを伝播効率がはるかに低いマイクロ波バンドに退ける。
【0048】
別の実施形態では、UL及びDLチャネルは入れ替えられ、他のネットワークのスペクトル使用と対立しないように各ネットワークのスペクトル使用が調整されるように、ユーザ装置を、現在使用されているUL又はDL FDDスペクトルと同じスペクトルにおいてFDDモードで同時に動作される。各ネットワークのULチャネルがDLチャネルと比べて次第に利用されないと仮定すると、各ネットワークのDLチャネルが、他のネットワークのULチャネルで未使用のスペクトルを利用することを可能にする。
【0049】
更に、いずれかの実施形態では、スペクトル効率は、以下の特許、特許出願、及び仮出願に記載される分散入力分散出力(「DIDO」)技術を使用する一方又は両方のネットワークを実装することによって、大きく上昇することができ、それらの全ては、本特許の譲受人に譲渡され、参照により組み込まれる。これらの特許、出願、及び仮出願は、「関連特許及び出願」として本明細書で総称される場合がある。
【0050】
米国出願第14/672,014号、発明の名称「Systems and Methods for Concurrent Spectrum Usage Within Actively Used Spectrum」。
【0051】
2014年4月16日に出願の米国仮出願第61/980,479号、発明の名称「Systems and Methods for Concurrent Spectrum Usage Within Actively Used Spectrum」。
【0052】
米国出願第14/611,565号、発明の名称「Systems and Methods for Mapping Virtual Radio Instances into Physical Areas of Coherence in Distributed Antenna Wireless Systems」
【0053】
米国出願第14/086,700号、発明の名称「Systems and Methods for Exploiting Inter-cell Multiplexing Gain in Wireless Cellular Systems Via Distributed Input Distributed Output Technology」
【0054】
米国出願第13/844,355号、発明の名称「Systems and Methods for Radio Frequency Calibration Exploiting Channel Reciprocity in Distributed Input Distributed Output Wireless Communications」
【0055】
米国出願第13/797,984号、発明の名称「Systems and Methods for Exploiting Inter-cell Multiplexing Gain in Wireless Cellular Systems Via Distributed Input Distributed Output Technology」
【0056】
米国出願第13/797,971号、発明の名称「Systems and Methods for Exploiting Inter-cell Multiplexing Gain in Wireless Cellular Systems Via Distributed Input Distributed Output Technology」
【0057】
米国出願第13/797,950号、発明の名称「Systems and Methods for Exploiting Inter-cell Multiplexing Gain in Wireless Cellular Systems Via Distributed Input Distributed Output Technology」
【0058】
米国出願第13/475,598号、発明の名称「Systems and Methods to enhance spatial diversity in distributed-input distributed-output wireless systems」
【0059】
米国出願第13/233,006号、発明の名称「System and Methods for planned evolution and obsolescence of multiuser spectrum」
【0060】
米国出願第13/232,996号、発明の名称「Systems and Methods to Exploit Areas of Coherence in Wireless Systems」
【0061】
米国出願第12/802,989号、発明の名称「System And Method For Managing Handoff Of A Client Between Different Distributed-Input-Distributed-Output(DIDO) Networks Based On Detected Velocity Of The Client」
【0062】
米国出願第12/802,988号、発明の名称「Interference Management,Handoff,Power Control And Link Adaptation In Distributed-Input Distributed-Output(DIDO)Communication Systems」
【0063】
米国出願第12/802,975号、発明の名称「System And Method For Link adaptation In DIDO Multicarrier Systems」
【0064】
米国出願第12/802,974号、発明の名称「System And Method For Managing Inter-Cluster Handoff Of Clients Which Traverse Multiple DIDO Clusters」
【0065】
米国出願第12/802,958号、発明の名称「System And Method For Power Control And Antenna Grouping In A Distributed-Input-Distributed-Output(DIDO) Network」
【0066】
2016年7月5日発行の米国特許第9,386,465号、発明の名称「System and Method for Distributed Antenna Wireless Communications」
【0067】
2016年6月14日発行の米国特許第9,369,888号、発明の名称「Systems and Methods To Coordinate Transmissions In Distributed Wireless Systems Via User Clustering」
【0068】
2016年4月12日発行の米国特許第9,312,929号、発明の名称「System and Methods to Compensate for Doppler Effects in Distributed-Input Distributed Output Systems」
【0069】
2015年3月24日発行の米国特許第8,989,155号、発明の名称「Systems and Methods for Wireless Backhaul in Distributed-Input Distributed-Output Wireless Systems」
【0070】
2015年3月3日発行の米国特許第8,971,380号、発明の名称「System And Method For Adjusting DIDO Interference Cancellation Based On Signal Strength Measurements」
【0071】
2014年2月18日発行の米国特許第8,654,815号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communications」
【0072】
2013年10月29日発行の米国特許第8,571,086号、発明の名称「System and Method for DIDO Precoding Interpolation in Multicarrier Systems」
【0073】
2013年9月24日発行の米国特許第8,542,763号、発明の名称「Systems and Methods To Coordinate Transmissions In Distributed Wireless Systems Via User Clustering」
【0074】
2013年4月23日発行の米国特許第8,428,162号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communications」
【0075】
2012年5月1日発行の米国特許第8,170,081号、発明の名称「System And Method For Adjusting DIDO Interference Cancellation Based On Signal Strength Measurements」
【0076】
2012年4月17日発行の米国特許第8,160,121号、発明の名称「System and Method For Distributed Input-Distributed Output Wireless Communications」
【0077】
2011年2月8日発行の米国特許第7,885,354号、発明の名称「System and Method for Enhancing Near Vertical Incidence Skywave(「NVIS」) Communication Using Space-Time Coding.」
【0078】
2010年5月4日発行の米国特許第7,711,030号、発明の名称「System and Method For Spatial-Multiplexed Tropospheric Scatter Communications」
【0079】
2009年12月22日発行の米国特許第7,636,381号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communication」
【0080】
2009年12月15日発行の米国特許第7,633,994号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communication」
【0081】
2009年10月6日発行の米国特許第7,599,420号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communication」
【0082】
2008年8月26日発行の米国特許第7,418,053号、発明の名称「System and Method for Distributed Input Distributed Output Wireless Communication」。
【0083】
本発明は、アクティブに使用されるスペクトル内での同時スペクトル使用のためのシステム及び方法を開示する。実施形態のいくつかは、本特許の譲受人の譲受人によって以前に開示された分散入力分散出力及びMU-MAS技術を利用する。以下の第1章及び第2章の開示は、2014年2月7日出願の米国仮出願第61/937,273号、発明の名称「Systems and Methods for Mapping Virtual Radio Instances into Physical Areas to Coherence in Distributed Antenna Wireless Systems」の開示に対応し、本発明に関する。以下の第3章及び第4章の開示は、2014年4月16日出願の米国仮出願第61/980,479号、発明の名称「System and Methods for Concurrent Spectrum Usage Within Actively Used Spectrum」の開示に対応し、本発明にも関する。
1.VRIをコヒーレンスの領域にマッピングするためのシステム及び方法
【0084】
本発明の一実施形態は、仮想無線インスタンス(VRI)を通して、無線リンクにおいてネットワークとコヒーレンスの複数の領域との間で同じ周波数帯内の多重同時不干渉データストリームを送達するためのシステム及び方法を開示する。一実施形態では、本システムは、図1に示すように、マルチユーザ多重アンテナシステム(MU-MAS)である。図1の色分けされたユニットは、以降に記載されるように、データソース101、VRI 106、及びコヒーレンスの領域103の間の1対1のマッピングを示す。
1.1 システムアーキテクチャの概説
【0085】
図1では、データソース101は、文字、画像、音声、動画、又はこれらの組み合わせ等、ローカル若しくはリモートサーバ内のウェブコンテンツ又はファイルを搬送するデータファイル又はストリームである。1つ若しくは複数のデータファイル又はストリームは、無線リンク110においてネットワーク102と全てのコヒーレンスの領域103との間で送信又は受信される。一実施形態では、ネットワークは、インターネット又は任意の有線若しくは無線ローカルエリアネットワークである。
【0086】
コヒーレンスの領域は、同じ無線リンク上で同時に送信される他のVRIからの他のデータ出力の任意の干渉を受けずに、1つのVRIのデータ出力112のみがコヒーレンスのその領域内で受信される方法で、MU-MASの異なるアンテナからの波形がコヒーレントに合計する空間の体積である。本特許出願では、先行特許出願[米国出願第13/232,996号、発明の名称「Systems and Methods to Exploit Areas of Coherence in Wireless Systems」]に記載されるように、コヒーレンスの体積又はプライベートセル(例えば、「pCells(商標)」103)を説明するために「コヒーレンスの領域」という用語を使用する。一実施形態では、コヒーレンスの領域は、あらゆる加入者が1つ又は複数のデータソース101に関連付けられるように、ユーザ機器(UE)111又は無線ネットワークの加入者の場所に対応する。コヒーレンスの領域は、伝搬条件、並びにそれらを生成するために用いられるMU-MASプリコーディング技法のタイプに応じて、サイズ及び形状が異なり得る。本発明の一実施形態では、MU-MASプリコーダは、変化する伝播条件に適合するようにコヒーレンスの領域のサイズ及び形状を動的に調節しつつ、良好なリンク信頼性でコンテンツをユーザに送達する。
【0087】
データソース101は、まず、ネットワーク102を通してDIDO無線アクセスネットワーク(DRAN)104に送信される。次に、DRANは、データファイル又はストリームをUEによって受信することができるデータフォーマットに翻訳し、あらゆるUEが、他のUEに送信される他のデータファイル又はストリームからの干渉を受けずにその独自のデータファイル又はストリームを受信するように、そのデータファイル又はストリームを同時に複数のコヒーレンスの領域に送信する。DRANは、ネットワークとVRI106との間のインタフェースとしてのゲートウェイ105で構成される。VRIは、ゲートウェイによって転送されるパケットを、生データとしてか、又はMU-MASベースバンドユニットに供給されるパケット若しくはフレーム構造中で、データストリーム112に翻訳する。一実施形態では、VRIは、図2aに示されるように、アプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層、トランスポート層、ネットワーク層、データリンク層、及び物理層という断絶層(sever layer)で構成される開放型システム間相互接続(OSI)プロトコルスタックを含む。別の実施形態では、VRIは、OSI層のサブセットのみを含む。
【0088】
別の実施形態では、VRIは、異なる無線規格から定義される。限定ではなく、例として、第1のVRIは、GSM規格からのプロトコルスタック、3G規格からの第2のVRI、HSPA+規格からの第3のVRI、LTE規格からの第4のVRI、LTE-A規格からの第5のVRI、及びWi-Fi規格からの第6のVRIで構成される。例示的な実施形態では、VRIは、LTE規格によって定義される制御プレーン又はユーザプレーンプロトコルスタックを含む。ユーザプレーンプロトコルスタックは、図2bに示される。全UE 202は、PHY、MAC、RLC、及びPDCP層を通してその独自のVRI 204と、IP層を通してゲートウェイ203と、及びアプリケーション層を通してネットワーク205と通信する。制御プレーンプロトコルスタックに関しては、UEは、NAS(LTE規格スタックにおいて定義される)層を通してモビリィティ管理エンティティ(MME)とも直接通信する。
【0089】
仮想接続マネージャ(VCM)107は、UEのPHY層識別(例えば、セル特有の無線ネットワーク一時的識別子、RNTI)の割り付け、認証、並びにVRI及びUEの移動性に関与している。VRIの出力でのデータストリーム112は、仮想無線マネージャ(VRM)108に供給される。VRMは、スケジューラユニット(DL(ダウンリンク)及びUL(アップリンク)パケットを異なるUEに対してスケジューリングする)、ベースバンドユニット(例えば、FECエンコーダ/デコーダ、変調器/復調器、リソースグリッドビルダで構成される)、並びにMU-MASベースバンドプロセッサ(プリコーディング動作を実装するためのプリコーディングロジックで構成される)を含む。一実施形態では、データストリーム112は、MU-MASベースバンドプロセッサによって処理される図2bのPHY層の出力においてI/Qサンプルである。異なる実施形態では、データストリーム112は、MAC、RLC、又はPDCPパケットであり、これらはスケジューラユニットに送信され、スケジューラユニットがこれらをベースバンドユニットに転送する。ベースバンドユニットは、パケットを、MU-MASベースバンドプロセッサに供給されるI/Qに変換する。
【0090】
MU-MASベースバンドプロセッサは、M I/Qサンプルを、M VRIから、Nアクセスポイント(AP)109に送信されるNデータストリーム113に変換するVRMのコアである。一実施形態では、データストリーム113は、AP 109から無線リンク110で伝送されるN波形のI/Qサンプルである。この実施形態では、APは、ADC/DAC、RFチェーン、及びアンテナからなる。異なる実施形態では、データストリーム113は、APにおいて組み合わされて、無線リンク110で送信されるN波形を生成する、情報のビット及びMU-MASプリコーディング情報である。この実施形態では、全てのAPは、ADC/DACユニットの前に追加のベースバンド処理を行うためのCPU、DSP、又はSoCを備えている。
1.2 移動性及びハンドオフのサポート
【0091】
これまでに記載したシステム及び方法は、UEがAPの届く範囲にある限り動作する。UEがAP対象範囲領域から離れて移動すると、リンクが中断し得、DRAN 301はコヒーレンスの領域を創出することができない。対象範囲領域を拡大するために、システムは、新たなAPを加えることによって徐々に発展し得る。しかしながら、新たなAPをサポートするのに十分な処理能力がVRM中にない場合があるか、あるいは新たなAPを同じVRMに接続するのに実用上の設置問題がある場合がある。これらのシナリオにおいては、図3に示されるように、隣接するDRAN 302及び303を加えて、新たなAPをサポートする必要がある。
【0092】
一実施形態では、所与のUEは、第1のDRAN 301及び隣接するDRAN 302によって提供される対象範囲領域内に位置する。この実施形態では、隣接するDRAN 302は、第1のDRAN 301のMU-MAS処理と共同で、そのUEに対するMU-MASベースバンド処理のみを行う。そのUEのVRIが第1のDRAN 301内で既に実行しているため、VRIは、所与のUEに対する隣接するDRAN 302によって処理されない。第1のDRANと隣接するDRANとの間の連帯プリコーディングを可能にするために、ベースバンド情報が、第1のDRAN 301中のVRMと隣接するDRAN 302中のVRMとの間で、クラウド-VRM 304及びリンク305を通して交換される。リンク305は、MU-MASプリコーディングの性能の低下を回避するために十分な接続品質(例えば、十分に低い待ち時間及び十分なデータ速度)をサポートすることができる任意の有線(例えば、ファイバ、DSL、ケーブル)又は無線リンク(例えば、見通し線リンク)である。
【0093】
異なる実施形態では、所与のUEは、第1のDRAN 301の対象範囲領域から出て、隣接するDRAN 303の対象範囲領域に移動する。この実施形態では、そのUEに関連付けられたVRIは、第1のDRAN 301から隣接するDRAN 303に「テレポート」される。VRIがテレポートされる、又は「VRIテレポーテーション」とは、VRI状態情報が、DRAN 301からDRAN 303に伝達され、VRIが、DRAN 301内で実行を停止し、DRAN 303内で実行を開始することを意味する。理想的には、VRIテレポーテーションは、テレポートされたVRIによってサービス提供されるUEの観点から、VRIからのそのデータストリームのいかなる断絶も受けないように十分に迅速に行われる。一実施形態では、テレポートされた後、VRIが完全に実行する前に遅延がある場合、VRIテレポーテーションの開始前に、そのVRIによってサービス提供されるUEは、その接続を中断しないか、又はそうでなければ、VRIが隣接するDRAM 303において始動し、UEが再び実行中のVRIによってサービス提供を受けるまで、望ましくない状態に入る状態に置かれる。「VRIテレポーテーション」は、第1のDRAN 301中のVCMを隣接するDRAN 303中のVCMに接続するクラウド-VCM 306によって可能となる。VCM間の有線又は無線リンク307は、それらがデータを搬送するだけであり、MU-MASプリコーディングの性能に影響しないため、VRM間のリンク305と同じ制限的制約を有しない。本発明の同じ実施形態では、第1のDRAN 301と隣接するDRAN 303との間で追加のリンク305を用いて、MU-MASプリコーディングの性能の低下を回避するために十分な接続品質(例えば、十分に低い待ち時間及び十分なデータ速度)をサポートすることができるそれらのVRMを接続する。本発明の一実施形態では、第1のDRAN及び隣接するDRANのゲートウェイは、DRANにわたる全てのネットワークアドレス(又はIPアドレス)翻訳を管理するクラウド-ゲートウェイ308に接続される。
【0094】
本発明の一実施形態では、VRIテレポーテーションは、図4に示されるように、本出願に開示されるDRANネットワークと任意の隣接する無線ネットワーク401との間で生じる。限定ではなく、例として、無線ネットワーク401は、任意の従来のセルラー(例えば、GSM(登録商標)、3G、HSPA+、LTE、LTE-A)、又は無線ローカルエリアネットワーク(WLAN、例えば、Wi-Fi)である。VRIがDRANから隣接する無線ネットワーク401にテレポートされるとき、UEは、2つのネットワーク間でハンドオフされ、その無線接続が継続し得る。
【0095】
一実施形態では、隣接する無線ネットワーク401は、図5に示されるLTEネットワークである。この実施形態では、クラウド-VCM 502は、LTEモビリティ管理エンティティ(MME)501に接続される。LTEとDRANネットワークとの間の全てのUEハンドオフの識別、認証、及び移動性に関する情報の全ては、MME 501とクラウド-VCM 502の間で交換される。同じ実施形態では、MMEは、無線セルラーネットワークを通じてUE 504に接続する1つ又は複数のeNodeB 503に接続される。eNodeBは、サービス提供ゲートウェイ(S-GW)505及びパケットデータネットワークゲートウェイ(P-GW)506を通じてネットワーク507に接続される。
2.DL及びUL MU-MAS処理のためのシステム及び方法
【0096】
典型的なダウンリンク(DL)無線リンクは、セル全体のための情報を搬送するブロードキャスト物理チャネルと、所定のUEのための情報及びデータを持つ専用物理チャネルとからなる。例えば、LTE規格は、P-SS及びS-SS(UEでの同期化に使用される)、MIB、並びにPDCCHなどのブロードキャストチャネル、またPDSCHなどの所与のUEにデータを搬送するためのチャネルを定義する。本発明の一実施形態では、全てのLTEブロードキャストチャネル(例えば、P-SS、S-SS、MIC、PDCCH)は、あらゆるUEがそれ独自の専用の情報を受信するようにプリコーディングされる。異なる実施形態では、ブロードキャストチャネルの一部はプリコーディングされ、一部はされない。限定ではなく、例として、PDCCHは、ブロードキャスト情報、並びに、UEを、DL及びアップリンク(UL)チャネル上で使用されるようにリソースブロック(RB)に向けるために使用されるDCI 1A及びDCI 0などの1つのUE専用の情報を含む。一実施形態では、PDCCHのブロードキャスト部分はプリコードされず、一方で、DCI 1A及び0を含む部分は、あらゆるUEが、データを搬送するRBについてのそれ独自の専用情報を取得するような方法で、プレコーディングされる。
【0097】
本発明の別の実施形態では、プリコーディングは、LTEシステムにおけるPDSCH等のデータチャネルの全部又は一部のみに適用される。プリコーディングを全データチャネルに適用することによって、本出願で開示されるMU-MASの一実施形態は、全バンド幅を全UEに割り当て、複数のUEの複数のデータストリームは、空間処理を介して分離される。しかしながら、典型的なシナリオでは、UEの全てではないがほとんどは、全バンド幅を必要としない(例えば、20MHzのスペクトルにおけるTDD構成番号2に対するピークデータ速度、UE当たり約70Mbps)。次いで、本出願のMU-MASの一実施形態は、OFDMAシステムと同様にDL RBを多重ブロックに細分化され、各ブロックをUEのサブセットを割り付ける。同じブロック内のUEの全ては、MU-MASプリコーディングを通して分離される。別の実施形態では、MU-MASは、異なるDLサブフレームを異なるUEのサブセットに割り当てることにより、TDMAシステムと同様にDLを分割する。更に別の実施形態では、MU-MASは、UEのサブセットにわたるOFDMAシステムと同様な多重ブロック中でのDL RBを細分化と、TDMAシステムと同様に異なるDLサブフレームの異なるUEのサブセットへの割り当てとの両方を行い、このため、OFDMA及びTDMAの両方を利用して、スループットを分割する。例えば、20MHzのTDD構成番号2に10個のAPがある場合には、70Mbps×10=700Mbpsの総DL容量がある。10個のUEがある場合には、各UEは、同時に70Mbpsを受信し得る。200個のUEがある場合、総スループットは等しく分割されることになり、その後、OFDMA、TDMA、又はこれらの組み合わせを使用して、200個のUEが10個のUEの20個のグループに分割され、それにより、各UEが700Mbps/200=3.5Mbpsを受信する。別の例としては、10個のUEが20Mbpsを必要として、他のUEが残りのスループットを均等に共有する場合には、20Mbps×10=200Mbpsの700Mbpsが10個のUEに使用され、結果、700Mbps-200Mbps=500Mbpsが、残りの200-10=190UEの間で分割される。したがって、残りの90個のUEの各々は、500Mbps/190=2.63Mbpsを受信するだろう。このため、APよりもはるかに多いUEがMU-MASシステムにおいてサポートされ得、全てのAPの総スループットが、多くのUEの間で分割され得る。
【0098】
ULチャネルでは、LTE規格は、TDMA又はSC-FDMAなどの従来の多重アクセス技法を定義する。本発明の一実施形態では、ULグラントを異なるUEに割り付け、TDMA及びSC-FDMA多重アクセス技法を可能にする方法で、DLにわたってMU-MASプリコーディングが可能になる。したがって、総ULスループットは、存在するAPよりもはるかに多いUEの間で分割され得る。
【0099】
上記のように、存在するAPよりも多くのUEが存在し、総スループットがUEの間で分割されるとき、一実施形態では、MU-MASシステムは、各UEに対して1つのVRIをサポートし、VRMは、VRIが、総スループットを細分化するために使用される選択されたOFDMA、TDMA、又はSC-FDMAシステム(複数可)と調和することにおいてRB及びリソースグラントを制御するように、VRIを制御する。別の実施形態では、1つ又は2つ以上の個々のVRIは、OFDMA、TDMA、又はSC-FDMA技法によって、複数のUEをサポートし、これらのUEの間のスループットのスケジューリングを管理し得る。
【0100】
別の実施形態では、スループットのスケジューリングは、システムの方針及び性能目標に応じて、多くの先行技術のうちのいずれかを使用して、ユーザ要求の負荷バランシングに基づく。別の実施形態では、スケジューリングは、特定のUE(例えば、ある特定のスループットレベルを保証するサービスの特定の階級に対して支払いをするもの)、又は特定のタイプのデータ(例えば、テレビサービス用の映像)に対するサービス品質(Quality of Service)(QoS)要件に基づく。
【0101】
異なる実施形態では、UL受信アンテナ選択を適用して、リンク品質を向上させる。この方法では、ULチャネル品質は、UEによって送信されたシグナリング情報(例えば、SRS、DMRS)に基づいてVRMで推定され、VRMは、ULに対する異なるUEのための最良の受信アンテナを決定する。その後、VRMは、1つの受信アンテナをあらゆるUEに割り付けて、そのリンク品質を向上させる。異なる実施形態では、受信アンテナ選択を用いて、SC-FDMAスキームが原因の周波数帯間の交差干渉を低減する。この方法の1つの大きな利点は、UEが、その場所に最も近いAPのみに、ULをわたって伝送することである。このシナリオでは、UEは、最も近いAPに達するためにその伝送電力を大幅に低減し得ることにより、電池寿命を向上させる。同じ実施形態では、異なる電力スケール係数が、ULデータチャネル及びULシグナリングチャネルに利用される。1つの例示的な実施形態では、ULシグナリングチャネル(例えば、SRS)の電力を、データチャネルと比較して増加させて、ULデータ伝送に必要とされる電力を依然として制限しながら、多くのAPからのUL CSI推定及びMU-MASプリコーディング(TDDシステムにおけるUL/DLチャネル相互性を活用する)を可能にする。同じ実施形態では、ULシグナリングチャネル及びULデータチャネルの電力レベルは、異なるUEを出入りする相対電力を均一化する伝送電力制御方法に基づいてDLシグナリングを通してVRMによって調節される。
【0102】
異なる実施形態では、最大比合成(MRC)をUL受信機において適用して、あらゆるUEから複数のAPへの信号品質を向上させる。異なる実施形態では、ゼロ-フォーシング(ZF)、又は最小平均二乗誤差(MMSE)、又は逐次干渉除去(SIC)、又は他の非線形技法、又はDLプリコーディング用のものと同じプリコーディング技法をULに適用して、受信されているデータストリームを、異なるUEのコヒーレンスの領域と差別化する。同じ実施形態では、受信空間処理を、ULデータチャネル(例えば、PUSCH)若しくはUL制御チャネル(例えば、PUCCH)、又はこれらの両方に適用する。
3.アクティブに使用されるスペクトル内での同時スペクトル使用のためのシステム及び方法
【0103】
背景技術の章で詳述され、図6及び図7に示されるように、モバイルデータ使用は、大部分が対称の音声データで占められる状態から、非対称性が高い非音声データ、特にビデオストリーミング等の媒体に劇的に変化した。世界中のほとんどのモバイルLTE展開は、その物理層構造が図8の上半分に例示されるFDD LTEであり、固定された対称のアップリンク(「UL」)及びダウンリンク(「DL」)チャネルを有し、結果として、DLチャネルが、ULデータと比較して急激に増加するDLデータで次第に混雑するにつれて、ULデータチャネルは次第に利用されなくなっている。
【0104】
LTE規格は、その物理層構造が図8の下半分に例示されるTDD LTE(「TD-LTE」とも称される)もサポートし、モバイル運用者は、UL及びDLチャネルが、対称(この例示に示される)又は非対称(例えば、より多くのサブフレームが、DL若しくはULチャネルのいずれかに割り当てられている)であるかを選択することができ、結果として、DLチャネルが、ULデータに対するDLデータの急激な増加とともに次第に混雑するにつれて、モバイル運用者は、ULよりもDLに多くのサブフレームを割り当てることを選択することができる。例えば、1つの構成では、TD-LTEは、8:1のDL:UL比率をサポートして、DLに対してULに対するよりも8倍のサブフレームを割り当てる。
【0105】
TD-LTEが1つのチャネルにおいて双方向性であるという事実以外、TD-LTE及びFDD LTEの構造及び詳細は、ほぼ同一である。両方のモードにおいて、全フレームは、10msの持続時間を有し、各1msの10個のサブフレームからなる。変調及びコーディングスキームは、ほぼ同一であり、プロトコルスタックの上層は、効果的に同じである。両方の場合において、ユーザ機器(「UE」)装置(例えば、携帯電話、タブレット)の時間及び周波数基準は、eNodeB(LTE基地局プロトコルスタック)によって、(FDD LTEではDLチャネルを介して、TD-LTEではDLサブフレームの間に)全ての装置に提供される。
【0106】
特に、FDD及びTDD LTEの両方の場合において、ネットワークは、DL伝送を通して受信される、eNodeBによってそのように行うグラントが与えられるときに、UEがULデータのみを伝送し得るように構成されてもよい。したがって、eNodeBは、いつDLデータを伝送するかを制御するだけではなく、いつUEがULデータを伝送し得るかも制御する。
【0107】
また、特にLTE FDD UEの場合、その受信機は、そのDLチャネルのみに同調され、そのULチャネルに同調される受信機を有しない。したがって、FDD UEは、そのULチャネル内で別の装置によって伝送されるあらゆるものが「聞こえない(deaf)」。
【0108】
また、全てのLTE UEの場合において、FDD又はTDDにかかわらず、それらの受信機の範囲までも、全てのUEに対して(又は所与のUEに対して)意図されたある特定の制御信号以外の特定のチャネルに同調され、これは、それらの時間基準及びネットワークへの接続を維持するか、又はそれらに、どの時間及び周波数でデータを受信し、それらに対して意図されないDLデータを無視するかの指示を与える。又は換言すると、LTE UEに対する唯一の関連DLデータは、いずれかの制御情報のデータか、又はUEに向けられているデータである。他の時間の間に、チャネルが、DLから別のUEで利用されるか、全く利用されないか、又はLTE規格外の目的のために利用されるかにかかわらず、UEは、制御情報又はそのUEに向けられるDLデータではないいずれのDL伝送も「聞こえない」。このため、LTE受信機は、FDD又はTDDにかかわらず、全てのUEに対して、若しくは所与のUEに対して意図される制御データのみを受信するか、又は所与のUEに対するデータを受信する。DLチャネルにおける他の伝送は、無視される。
【0109】
図9は、どのようにFDD及びTDDネットワークが、アクティブに利用するFDDスペクトルを同時に利用することができるかを例示する。「FDD LTE 910」と標識された長方形の一番上の2本の線は、アップリンク(「UL」)及びダウンリンク(「DL」)チャネルの両方において、10個の1msのサブフレーム間隔で構成される1つのLTEフレーム間隔(10ms)を例示する。この例示は、ULデータよりもはるかに多くのDLデータが存在する、ますますより典型的となる非対称データ伝送のタイプ(例えば、ダウンリンクストリーミングビデオ)を示す。斜線で塗り潰された実線の輪郭の長方形(例えば、長方形912及び長方形911)は、データが伝送されているサブフレームを示し、空白の点の輪郭の長方形(例えば、長方形914)は、データが伝送されていない(すなわち、そのサブフレーム間隔の間にチャネルに伝送がない)「待機中の(idle)」サブフレームを示す。長方形911は、それらの全てがデータで満たされている10個のDLサブフレームのうちの2個である。長方形912は、データを有する1個のULサブフレームを示す。また、長方形914は、データ伝送を有しない9個の待機中のULサブフレームのうちの3個である。
【0110】
「TDD LTE 920」と標識された図9の長方形の中央の2本の線は、2個の「特殊」サブフレーム間隔を含む10個の1msのサブフレーム間隔で構成される1つのLTEフレーム間隔(10ms)を例示するが、FDD LTE 910の線とは異なり、TDD LTE 920の線の長方形の両方の線は、互いに同じスペクトルを共有するだけではなく、FDDアップリンクと同じスペクトルも共有する。この例示は、データを伝送する4個のDLサブフレーム及び3個のULサブフレームが存在する非対称データ伝送を示す。破線で塗り潰された実線の輪郭の長方形(例えば、長方形921、長方形922、及び長方形923)は、データが伝送されているサブフレームを示し、空白の点の輪郭の長方形(すなわち、長方形924)は、データが伝送されていない(すなわち、そのサブフレーム間隔の間にチャネルに伝送がない)待機中のサブフレームを示す。長方形921は、それらの全てがデータで満たされている4個のDLサブフレームのうちの1個である。長方形922は、それらの全てがデータを有する3個のULサブフレームのうちの1個を示す。長方形924は、空の1個の待機中のULサブフレームである。
【0111】
「FDD+TDD LTE 930」と標識された図9の長方形の第3の2本の線は、2個の「特殊」サブフレーム間隔を含む10個の1msのサブフレーム間隔で構成される1つのLTEフレーム間隔(10ms)例示し、FDD LTE 910システムとTDD LTE 920システムとの同時動作を示し、TDD LTE 920システムは、FDD LTE 910アップリンクと同じスペクトルを共有する。2つのシステムは、(a)FDD LTE 910システムがULデータ伝送を有するサブフレーム間隔912の間に、TDD LTE 920システムは、UL又はDLのどちらでもない待機中の間隔924を有するため、並びに(b)TDD LTE 920システムがUL又はDL方向のいずれかで伝送を有するサブフレーム間隔の間に(例えば、921、923、及び922)、FDD LTE 910システムは、ULデータ伝送のない待機中のUL間隔(例えば、待機中のULサブフレーム914)を有するため、互いに干渉しない。このため、それらの間で干渉せずに同じスペクトルを使用して、2つのシステムは共存する。
【0112】
同じスペクトルを同時に使用するためのFDD LTE 910及びTDD LTE 920ネットワークに関して、それらの動作は、2つのスペクトル共有ネットワークを同時に動作するように設定された1つのeNodeBによって、又は既存のTDD LTE 920ネットワークを動作するeNodeB、並びに上記第1章及び第2章並びに関連特許及び出願で開示される分散入力分散出力分散アンテナMU-MAS C-RANシステム等の、LTEタイミング及びフレーム構造と適合する第2のeNodeB若しくは別のシステムであり得る第2のネットワーク制御装置の調整のいずれかによって、調整されなければならない。これらの場合のいずれにおいても、FDD LTE 910及びTDD LTE 920システムのフレームの両方は、タイミングに関してだけではなく、サブフレームリソース割り当てに関しても同期されなければならない。例えば、図9の場合では、FDD LTE 910システムを制御するシステムは、どのサブフレームがULに使用されるために利用可能であるTDD ULサブフレームであるかを認識する必要があり(例えば、UEでの時間及び周波数同期に関してサブフレーム番号0及び番号5で送信されるTDD DL制御信号と対立しない)、そのFDD ULサブフレーム912のためのそれらのサブフレームのうちの1つを使用する。同じシステムがTDD LTE 920システムも制御している場合、そのサブフレーム912の間にTDD装置からULをスケジューリングしないようにする必要もあり、TDD LTE 920システムを制御しない場合は、どんなシステムが、そのサブフレーム912の間にTDD装置からULをスケジューリングしないようにTDD LTE 920システムを制御するとしても通知しなければならない。当然のことながら、FDD LTE 910システムが、フレーム時間の間に1つを超えるULサブフレームを必要とする場合もあり、その場合、その制御装置は、そのULサブフレームに対する3個のTDD LTE 920サブフレーム922のうちのいずれか又は全てを使用して、上述のように適切に制御又は通知するだろう。いくつかの10msのフレームにおいて、ULサブフレームのうちの全てが、ネットワークのうちの1つに割り当てられ、他のネットワークがULサブフレームを得られない場合があることに留意されたい。LTE装置は、全てのフレーム時間でULデータを伝送することができるとは予想されず(例えば、LTEネットワークが混雑しているとき、LTE装置は、たとえULサブフレームの一部であっても、それが許可される前に多くのフレーム時間を待つ場合がある)、そのため、本発明の一実施形態は、所与のフレーム内の利用可能なTDD LTE 920 ULサブフレームのうちの全てが1つのネットワークによって利用される(すなわち、他のネットワークのULサブフレームを「欠乏させる(starving)」)場合に、機能する。しかしながら、多過ぎる連続フレームのために1つのネットワークを欠乏させること、又は全体で少な過ぎるULフレームを可能にすることは、不十分なネットワーク性能(例えば、低いULスループット、又は高い往復待ち時間)をもたらし、ある時点で、LTE装置がULデータを伝送しようとするネットワークに取り付けられている場合、ネットワークが使用不可能であると判断し、切断することがある。したがって、FDD LTE 910とTDD LTE 920ネットワークとの間でULサブフレームリソースのバランスを保つ適切なスケジューリング優先度及びパラダイムを確立することは、最良の全体ネットワーク性能並びにユーザ(及び/又はUE)エクスペリエンスをもたらし得る。
【0113】
独立型FDD LTEシステムでは利用可能ではない、ULサブフレームリソースのバランスを保つ(及びネットワーク運用者の優先度を満たす)ために利用可能な1つのツールは、図10に示されるTDD LTE二重構成である。図9は、TDD LTE 920システムのTDD LTE二重構成1を例示し、10msのフレームに10個のサブフレームの間に、4個のULサブフレーム、4個のDLサブフレーム、及び2個の特殊サブフレームが存在する。図10で見ることができるように、モバイル運用者の必要性及びデータトラフィックパターンに応じて、並びにULサブフレームリソースとFDD LTE910ネットワークの必要性とのバランスを保つために、使用することができるいくつかのTDD LTE二重構成が存在する。TDD LTE二重構成はまた、データトラフィックパターンの変更に伴って経時的に変更されてもよい。TDD LTE二重構成のうちのいずれも、本発明の実施形態とともに使用することができる。例えば、構成1では、図9に示されるように、1個のULサブフレームがFDDネットワークに割り当てられ、3個のULサブフレームがTDDネットワークに割り当てられている。FDDネットワークがより多くのULスループットを急に必要とした場合、2個のULサブフレームをFDDに割り当て、2個を、すぐ次のフレーム時間のTDDのために残すことができる。そのように、FDDとTDDネットワークとの間でULサブフレームの割り当てを切り替えることは、極めて動的であり得る。
【0114】
所望に応じて、FDD LTE 910とTDD LTE9 20ネットワークとの間のULリソース割り当ては、サブフレーム基準よりも更に一層きめ細かくてもよいことに留意されたい。単一のサブフレーム内のいくつかのリソースブロックをFDD装置に、その他をTDD装置に割り当てることも可能である。例えば、LTE規格は、ULチャネルにSC-FDMA多重アクセス技法を用いる。したがって、FDD及びTDD装置からのULチャネルは、SC-FDMAスキームを介して同じサブフレーム内の異なるリソースブロックに割り付けられ得る。
【0115】
最終的に、TDD LTE 920 DL又は特殊サブフレームであるだろう間にFDD LTE 910 ULをスケジューリングすることが可能である。1つの検討事項は、それらの接続を維持し、タイミングを維持するためにTDD LTE UEによって使用されるTDD DL制御信号(例えば、サブフレーム番号0及び番号5で送信されるP-SS及びS-SSブロードキャストシグナリング)が、十分な規則性でTDD LTE UEによって受信されなければならず、さもなければUEが切断し得るということである。
【0116】
図11は、共有チャネルがFDD ULチャネルではなく、FDD DLチャネルであることを除いて、図9及び上述のものと同じ概念を示す。図9と同じサブフレームの塗り潰し及び輪郭指定が図11で使用され、見ることができるように、FDDトラフィック状況は、FDD LTE 1110 ULチャネルのサブフレームの全てが反転されてデータに使用されており、FDD LTE 1110 DLサブフレームのうちの1個のみがデータに使用され、他のDLサブフレームのうちの全てが「待機中」であり、データを伝送していない。同様に、TDD LTE 1120 ULサブフレームのうちの全てがデータに使用される一方で、TDD LTE 1120 DLサブフレームのうちの1つを除く全てがデータに使用され、この場合、TDD LTE 1120 LTEチャネルは、FDD LTE 1110 DLチャネルと同じ周波数である。組み合わせたFDD LTE 1110及びTDD LTE 1120ネットワークの結果が、FDD+TDD LTE 1120チャネルに示される。図9の例と同様に、2つのネットワークは、単一の制御装置によって、又は複数の制御装置の調整によって、両方のネットワークが、ユーザ及びユーザ装置に適切な性能を伴って、ネットワーク運用者によって所望されるとおりに確実に動作するように、それらの間のスケジューリングを伴って、制御することができる。
【0117】
FDD LTE 1110ネットワークに取り付けられたFDD装置は、制御及びタイミング情報に関して、並びにデータに関して、DL伝送に依存しており、それらは、接続を保つために、十分に規則的に適切な制御信号を受信しなければならないことに留意されたい。本発明の一実施形態では、FDD装置は、DLサブフレーム(例えば、サブフレーム番号0及び番号5)上でTDD LTE 1120ネットワークによって送信されるブロードキャストシグナリングを使用して、時間及び周波数同期を得る。異なる実施形態では、ブロードキャストシグナリングを搬送するサブフレーム番号0及び番号5は、FDD LTE 1110ネットワークに割り付けられ、全てのFDD装置で時間及び周波数同期を得るために使用される。
【0118】
上述のように、典型的にFDD DLチャネルは、FDD ULチャネルよりもはるかに混雑するが、モバイル運用者がDLチャネルの共有を望むのには理由がある場合がある。例えば、いくつかのULチャネルは、スペクトルの規制当局によって、UL使用のみに制限されている(例えば、隣接するバンドに干渉する出力に関する懸念が存在し得る)。また、いったんモバイル運用者が、そのFDDスペクトルに適合するTDD装置の提供を開始すると、モバイル運用者は、これらの装置がFDD装置よりも効率的にスペクトルを使用することを発見する可能性が高く、したがって、FDD装置の販売を中止し得る。古いFDD装置が徐々に置き換えられ、TDDの装置の割合が増加するにつれて、運用者は、次第により多くのそのスペクトルをTDD装置に割り当てるが、依然として、市場の残りのFDD装置との互換性を維持することを望む場合がある。
【0119】
この目的に向けて、動作中のFDD装置が少なくなるにつれて、運用者は、TDD動作用にUL及びDLバンドの両方を使用することを決定し得る。これは図12に例示され、FDD LTE 1210は、ULに対して1個及びDLに対して1個のみ、使用中のサブフレームを有し、残りは待機中である。各々それぞれがFDD LTE 1210 UL及びDLチャネルを使用する2つのTDD LTEネットワーク1220及び1230が存在し、FDD+TDD LTE 1240に示されるように2つのチャネルを共有する3つのネットワークをもたらす。前述のものと同じ柔軟性及び制約が適用され、3つのネットワーク全ての単一の制御装置又は複数の制御装置が存在し得る。2つのTDDネットワークは、独立して、又はキャリアアグリゲーション技法を使用して動作することができる。
【0120】
運用者は、TDDを完全に控え、代わりに、既存のFDDネットワークと同じスペクトルであるが、アップリンク及びダウンリンクチャネルが交換された第2のFDDネットワークを追加することを選択し得る。これは図13に例示され、FDD LTE 1310ネットワークは、DLチャネルに有利になるように極めて非対称に利用され、そのため1個のサブフレームのみがULに使用され、第2のFDD LTE 1320ネットワークも、DLチャネルに有利になるように極めて非対称に利用されるが、図13では、FDD LTE 1320のチャネル割り当ては、FDD LTE 1310のチャネル順序又は前の図面に示されるチャネル順序とは対照的に、上述のFDDダウンリンクチャネルはFDDアップリンクチャネルと交換されることが分かる。両方のFDD LTE 1310及び1320の場合、DLチャネルは、1個のDLサブフレームを待機中のまま残し、これは他のネットワークによって使用される1個のULフレームと一致する。FDD+TDD LTE 1230に示されるようにネットワークが組み合わされるとき、サブフレーム1231及び1232を除く両方のチャネルのサブフレームの全てがDLである。このため、サブフレームのうちの90%がDLに費やされ、これは、UL及びDLに対する対称のスペクトル割り当てよりもそれらがより進化したため、モバイルトラフィックパターンにより良好に一致する。
【0121】
また、この構造は、ネットワークを管理する制御装置(又は複数の制御装置)が、サブフレーム毎に各ネットワークに割り当てられるUL及びDLサブフレームの数を動的に変更することを可能にし、FDD装置が両方のネットワークを使用しているという事実にもかかわらず、極めて動的なUL/DLトラフィック適応を図る。
【0122】
前述の組み合わせたFDD/TDDネットワークと同様に、同じ制約がFDDモードに適用され、LTE装置は、接続を保ち、良好に動作するために十分な制御及びタイミング情報を受信しなければならず、それらは十分に規則的かつ適切な数のULフレームを必要とする。
【0123】
2つのFDDネットワークは、独立して、又はキャリアアグリゲーションを通じて動作することができる。
【0124】
別の実施形態では、既存のアクティブネットワーク(例えば、図9、11、12、及び13における、FDD LTE 910、FDD LTE 1110、FDD LTE 1210、又はFDD LTE 1310)でDLチャネルによって伝送される制御情報は、同じチャネル(例えば、図9、11、12、及び13における、TDD LTE 920、TDD LTE 1120、TDD LTE 1220、及びTDD LTE 1230又はFDD LTE 1320)を使用する新たなネットワーク(又は複数のネットワーク)を使用して、どのサブフレーム及び/又はリソースブロック、並びに、及び/又は他の間隔が待機中であるかを判断する。このように、新たなネットワーク(複数可)は、既存のアクティブネットワークに干渉することなく、いつ伝送することができるのか(DL又はULにかかわらず)を判断することができる。この実施形態は、それが単に、既存のアクティブネットワークからのDL伝送内にあるものを受信する新たなネットワーク(複数可)の制御装置の問題であるため、既存のアクティブネットワークのいずれの修正も伴わずに、又は既存のアクティブネットワークの制御装置へのいずれの特殊な接続にも依存せずに、既存のアクティブネットワークのスペクトルを同時に使用することを可能にすることができる。別の実施形態では、既存のアクティブネットワークへの唯一の修正は、新たなネットワーク(複数可)が、UEとの接続を維持するための必須の制御及びタイミング情報を確実に伝送できるようにすることである。例えば、既存のアクティブネットワークは、必須のタイミング及び同期情報が伝送されている時間の間に伝送しないように構成され得るが、さもなければ、修正されずに動作する。
【0125】
同じスペクトルでネットワークを同時にサポートする上述の実施形態は、LTE規格を使用したが、例えば、同様の技法が、他の無線プロトコルで同様に利用されてもよい。
4.アクティブに使用されるスペクトルと同時の分散アンテナMU-MASの利用
【0126】
第1章及び第2章、並びに関連特許及び出願に開示されるように、分散アンテナMU-MAS技法([DIDO]と総称される)は、無線ネットワークの容量を劇的に増加し、装置当たりの信頼性及びスループットを向上させ、更に装置の費用を低減することを可能にする。
【0127】
概して、DIDOは、UL及びDLが同じチャネルであるため、FDDネットワークよりもTDDにおいて効率的に動作し、結果として、ULチャネルにおいて受信される伝送の訓練を使用し、チャネル相互関係を生かすことによってDLチャネルに関するチャネル状態情報を導出することができる。また、上述のように、TDDモードは、モバイルデータの非対称性に本質的により良好に適合し、より効率的なスペクトル利用を可能にする。
【0128】
世界の現在のLTE展開のほとんどがFDDであると仮定すると、第3章で開示される技法を利用することによって、FDDにアクティブに使用されるスペクトルにTDDネットワークを展開することができ、DIDOは、その新たなTDDネットワークとともに使用することができ、それにより、スペクトルの容量を劇的に増加させる。これは、UHF周波数がマイクロ波周波数よりもはるかに良好に伝播することにおいて特に重要であるが、ほとんどのUHFモバイル周波数は、FDDネットワークによって既に使用されている。DIDOベースのTDDネットワークを、UHFスペクトルにおいて既存のFDDネットワークと組み合わせることによって、並外れて効率的なTDDネットワークを展開することができる。例えば、バンド44は、703~803MHzのTDDバンドであり、米国の700MHzのFDDバンドの多くと重なり合う。バンド44装置は、700MHzのFDD装置と同じスペクトルで同時に使用することができ、主要なスペクトルでのDIDO TDDを可能にする。
【0129】
DIDOは、上述のスペクトル合成技法に重大な新たな制約を追加しない。図1に示されるDRAN 104は、対象範囲領域の既存のeNodeBを置き換えるか、又は図4に示されるように、上述の技法を共有するサブフレーム(若しくはリソースブロック)毎に、既存のeNodeB 401に調整されるだろう。
【0130】
特に、DIDOシステムが全システムを制御しており、FDDネットワークにeNodeBを提供している場合、DIDOは、分散DIDO APが、単一のセルラー基地局よりもUEに近い可能性が高いことから、FDD装置からのSRS UL等のトレーニング信号を使用して、同時に及び同じ周波数帯内で、複数の既存のFDD装置からのULの空間処理を介してデコードし、このため、既存のFDD ULチャネルのスペクトル効率を劇的に増加し、かつ必要とされるUL電力も低下させる(及び/又は、より良好な信号品質を受信する)ことができ、また、最大比合成(MRC)、又はDIDOに関して前に記載されるような他の技法等の信号合成技法を利用することもできる。
【0131】
このため、DIDOは、DIDOの利益を、既に展開された既存のFDD装置のULに適用しつつ、既存のeNodeBを置き換え、同時にDIDO TDD装置で既存のスペクトルを使用することができる。
5.アクティブに使用されるスペクトル内での干渉の緩和
【0132】
以前に述べたように、FDDバンドとして割り当てられたバンドのUL又はDL周波数のいずれかでTDDネットワークが展開される場合は、隣接バンドと干渉する出力電力に関する懸念が存在し得る。これは、バンド外放射(OOBE)干渉及び/又は受信機「ブロッキング」又は受信機「感度抑圧」によって生じ得る。OOBEは割り当てられたバンドの外側の電力放射を指す。OOBEは、典型的には、伝送バンドに直接隣接した周波数において電力が最大になり、典型的には、周波数が伝送バンドに対して遠ざかるにつれて小さくなる。「受信機ブロッキング」又は「受信機感度抑圧」は、典型的には近傍のバンド内での強力なバンド外信号の存在により、受信機のフロントエンド増幅器が所望のバンド内信号に対しての感度を失うことを指す。
【0133】
規制当局(例えば、FCC)が複数のモバイル運用者又はスペクトルの他のユーザによる使用のために隣接するバンド内にスペクトルを割り当てる場合は、典型的には、モバイル装置(例えば、携帯電話)及び基地局を、規制規則制定時に所与の技術が利用可能な実際の仕様に対して製造することができるようにOOBE及び電力レベルを制限するために規則が整備される。更に、隣接するスペクトルのユーザ及びこれらの装置が製造されるときに従う規則の現状に考察が与えられる。例えば、新たなスペクトルの割り当ては、OOBE及び強力なバンド外伝送により敏感なより古い技術が展開された従来のスペクトル割り当ての際に作られた技術よりもOOBEにより良く耐えて強力なバンド外伝送をより良く排除するであろう技術の利用可能性を考慮することができる。従来世代の基地局及びモバイル装置を置き換えることはしばしば実現困難なので、新たな展開は、従来の展開のOOBE及び強力なバンド外伝送の制限を遵守する必要がある。
【0134】
FDDバンド内でのTDD展開の場合には、遵守されなければならない追加の制約がある。FDDペアでは、UL又はDLバンドの各々が、それぞれ、ULのみの伝送又はDLのみの伝送の予測で割り当てられた。TDDがUL及びDLの両方で代替的に伝送するので、TDD展開がULのみ又はDLのみのバンドとして予め割り当てられたFDDバンド内で動作している場合には、このTDD展開は予期されなかった伝送方向に動作している。このため、TDD伝送が隣接するスペクトル内で予め定義されたFDD使用と確実に干渉しないようにするには、予め定義されたFDD使用の方向と反対方向でのTDD伝送が既存の使用の放射要件を満たさなければならない。例えば、TDDがFDD ULバンド内に展開される場合には、ULは予め定義された使用の方向であるので、TDD伝送のUL部分は問題にならないはずである。しかし、TDD伝送のDL部分は予め定義されたUL使用の方向と反対方向であるので、典型的には、TDD DL伝送は、UL伝送に定義されたOOBE及び強力なバンド外伝送要件を満たさなければならない。
【0135】
ULバンド内にTDDを展開する場合、TDD伝送のUL部分は、典型的には、モバイル装置(例えば、携帯電話)からの伝送となるであろう。隣接したバンド内のFDD電話及び隣接したバンド内の基地局は、隣接したバンド内の携帯電話からのUL伝送に耐えるように設計されているであろう。例えば、図16aは、AからGまでのサブバンドに分割されたFDDバンド7のULバンドを示す。斜線のサブバンドE内で動作するFDD携帯電話及び基地局は、FDDサブバンドA~D、F及びG内のUL伝送に耐えるように設計される。このため、TDD装置が隣接するサブバンドD(FDDバンド7のサブバンドDと同じ周波数の図16b内の斜線のTDDバンド41のサブバンドD)内で動作されている場合には、FDDバンド7の携帯電話及び基地局装置は、バンド41のサブバンドD内のTDD伝送のUL部分と何の問題も有しないであろう。
【0136】
しかし、TDDバンド41のサブバンドD内のDL伝送は、FDDバンド7の割り当て又はそのバンド内で動作するように設計された携帯電話及び基地局において予期されたシナリオではない。各装置を順番に考察しよう。
【0137】
携帯電話のバンド7の受信機は、隣接するULバンド内を伝送している他の携帯電話からの伝送を排除するように設計されているため、FDDバンド7のサブバンドE内の形態電話の場合では、この携帯電話は、隣接するTDDバンド41のサブバンドD内の基地局DL伝送によって悪影響を受け難い。通常の使用で、(例えばスタジアムで互いに隣り合って座った2人が、両方とも呼び出しをしている場合には)携帯電話が互いに数インチ以内で動作して、互いの電話の受信機に非常に高い伝送電力の事故をもたらす場合がある。技術(例えば、キャビティフィルタ)が、そのような強力な近傍のバンド伝送を排除して、隣接するバンドを使用している携帯電話に物理的に近接している携帯電話が、隣接する携帯電話のDL受信に悪影響を与えずにUL信号を伝送することができるようにする。
【0138】
しかし、FDDバンド7のサブバンドE内で動作している基地局の場合は異なる。基地局の受信機は、FDDバンド7のサブバンドE内のモバイル装置からULを受信し、隣接するFDDバンド7のサブバンドA~D、F及びG内のモバイル装置からのULを排除するように設計されていた。この受信機は、また、図16aに示すバンド38のTDDサブバンドH及びバンド7のFDD DLサブバンドA’~H’内のDL伝送を排除するようにも設計されている。このため、FDDバンド7の基地局に設計されなかった唯一のシナリオが、サブバンドA~D、F及びG内の他の基地局からのDL伝送を排除することである。我々はこの場合を考察していく。
【0139】
図15a、15b、15c及び15dは、サブバンドD内で伝送しているTDDバンド41の構造物1501(例えば、ビル、塔、等)上の基地局(BTS)1510とULサブバンドE内で受信しDLサブバンドE’内で伝送しているFDDバンド7の構造物1502上の基地局(BTS)1530との間の4つの伝送シナリオを考察する。シナリオでは:
a.15a:伝送がビル1505によって完全に遮られており、ビル1505の周りにマルチパス経路がないので、TDD BTS 1510とFDD BTE 1530との間にはパスがない。そして、その結果、TDD DL信号はFDD BTS 1530に届かないであろう。
b.15b:TDD BTS 1510とFDD BTS 1530との間に見通し線(LOS)パスのみが存在する。LOSパスは、FDD BTS 1530に到達する非常に強力なTDD DL信号をもたらすであろう。
c.15c:TDD BTS 1510とFDD BTS 1530との間に見通し線外(NLOS)パスが存在するが、LOSパスは存在しない。NLOSパスは、FDD BTS 1530に到達する信号がLOS信号の電力に近づくように正確に角度が付けられた高効率の反射体(例えば、金属の大きな壁)を介したものであることは可能である一方で、LOSパスの効率に近づくNLOSパスが存在することは現実世界のシナリオでは統計的に困難である。対照的に、現実世界のシナリオでは、様々な角度で反射及び散乱する物体、並びに信号をより多く又はより少なく吸収及び屈折させる物体によってNLOSパス影響を受ける可能性がある。更に、定義によって、NLOSパスは、LOSパスより長く、より高いパスロスをもたらす。これらの因子の全てが、LOSパスに比較してNLOSパスに重大なパスロスをもたらす。このため、図15bに例示されるように、現実世界のシナリオでは、FDD BTS 1530に受信されるTDD DL NLOS信号電力は、FDD BTS 1530に受信されるTDD DL LOS信号電力よりもはるかに少ない可能性がある。
d.15d:TDD BTS 1510とFDD BTS 1530との間のLOSパス及びNLOSパスの両方が存在する。このシナリオは、効果的にシナリオ15b及び15cの合計であり、TDD BTS 1510からのLOSパス経由の非常に強力な信号並びにTDD BTS 1510からのNLOSパス経由の統計的にずっと弱い信号の合計を受信するFDD BTS 1530がもたらされる。
【0140】
前節の4つのシナリオを考慮すると、FDD BTS 1530に受信される信号はないので、シナリオ15aは明らかに何の問題も全く提示しない。NLOSシナリオ15cは、FDD BTS 1530に到達するいくらかのTDD DL BTS 1510信号をもたらすが、しかし、統計的に、それは、LOS信号よりずっと弱い信号である。更に、NLOSパスが高効率の反射体である困難だが可能性のあるこのシナリオでは、この信号は、しばしば、サイトプランニング、例えば、NLOSパスが効率的に反射されないようにTDD DL BTS 1510のアンテナの位置を変えるか又は向きを変えることによって緩和することができる。シナリオ15b(LOS)及び15d(LOS+NLOS)は、隣接するバンド内にもたらされる高電力信号のLOS成分であってFDD BTS 1530が耐えるように設計されていなかった成分のせいで、問題のあるシナリオである。
【0141】
シナリオ15c及び15dのNLOS成分は、隣接するULバンド内のFDD BTS 1530に受信されるより低い電力信号を確実にもたらすことができる一方、FDD BTS 1530は、例えば、キャビティフィルタを用いて、より低い電力信号であって、大部分が全体のULバンドからのNLOS信号をモバイル装置から排除するように設計されている。このため、シナリオ15b及び15dのLOS成分を緩和することができ、シナリオ15c及び15dからの低電力の(例えば、困難な高効率の反射を回避して)NLOS信号成分のみが残る場合には、この信号はそれが耐えるように設計された電力レベルでULバンド内の伝送を受信するだけのFDD BTS 1530をもたらし、このため、FDD BTS 1530の動作を妨げることなく、ULバンド内でTDD BTS 1510からのDL伝送を可能にするであろう。以前に述べたように、FDD ULバンド内の他の伝送方向は隣接するバンドの動作を妨げない、このため、TDD DL BTS 1510のFDD BTS 1530へのLOS伝送成分を緩和することができる場合には、FDD ULバンドを、TDD双方向動作に使用することができる。
【0142】
関連する特許及び出願に以前に開示されたように、DIDOシステムなどのマルチユーザ多重アンテナシステム(MU-MAS)、pCell(商標)の商標で市場に出されている技術又は他の多重アンテナシステムは、ユーザアンテナの位置でコヒーレント信号を合成するためか又はその位置でヌル(即ち、ゼロ)RFエネルギーを合成するために、ユーザアンテナの位置からチャネル状態情報(CSI)を利用することができる。典型的には、このようなCSIは、ユーザ装置がCSI情報で応答している状態で基地局からユーザ装置に伝送されるか、又は、基地局が相互性を活用してCSIをユーザアンテンアの位置として決定している状態でユーザ装置から基地局に伝送されている、バンド内(IB)トレーニング信号から決定される。
【0143】
一実施形態では、図14に描かれ、上記の1~4章で説明されたように動作するMU-MASシステムは、各UE位置111でCSIを推定して、各UE位置111で同じ周波数バンド内に、それぞれのVRI 106(VRI1、VRI2、...VRIM)の各々で独立したpCell 103(pCell1、pCell2、...pCellM)を合成する。上記の1~4章で説明されたように各UE位置111でのCSIを推定するのに加えて、この実施形態では、MU-MASシステムも、構造物1431~1433上に示す各アンテナ1403でCSIを推定し、各位置111でpCell 103を合成する際、このシステムは、全てのpCellが同じ周波数バンド内にある状態で、各アンテナ1403の位置でpCell 1411(pCell 1..7、8..14、及び(b-6)..b、(まとめて、pCell 1..b))の合成もする。しかし、各々がそのそれぞれのVRIからの合成波形を含むpCell 103とは異なり、各pCell 1411は、RFエネルギーがゼロのヌルである。
【0144】
一実施形態では、前節で説明されたヌルpCell 1411が、平坦な(直流電流(DC1..b))信号をVRM 108に入力するVRI 1466のインスタンスを作成することによって合成される。別の実施形態では、それらは、アンテナ位置でヌル信号(ゼロRFエネルギー)寄与を合成するための関連する特許及び出願に以前開示された技法を使用して、VRM内でヌル位置として計算される。
【0145】
バンド内(「IB」)トレーニング信号を使用して各アンテナ1403の位置でCSIを推定する場合は、1章~4章及び関連する特許及び出願で説明された技法を使用して高精度なCSI推定値が得られる。例えば、pCell伝送バンドが2530~2540MHzである場合には、図16bのバンドDが、2530~2540の同じ周波数範囲のトレーニング信号が使用されるなら、精度の高いCSI推定値が得られる。しかし、バンド外(「OOB」)信号(例えば、2660~2670MHzでの)が、IB信号(例えば、2530~2540MHzでの、図16aのバンドE’)の代わりにアンテナの位置でCSIを推定するのに使用される場合は、このようなOOB CSI推定値は、チャネルがIB周波数とOOB周波数との間で「周波数平坦」である場合にのみ、合理的に正確である。周波数平坦とは、チャネルが、IB及びOOBの周波数の各々における信号が同じ大きさのフェーディングを経験するように、IB及びOOBの周波数の両方において平坦なフェーディングを有することを意味する。IB及びOOBの周波数が選択的なフェーディングを有する、例えば、IB及びOOBの周波数の成分が相関のないフェーディングを経験する場合には、OOB信号から得られたCSI推定値を使用することはIB信号にとってあまり正確ではない場合がある。このため、図16aのバンドE’が図bのバンドDと比較して周波数平坦である場合には、バンドE’内のトレーニング信号は、バンドDに対する高度に正確なCSIを得るために使用することができる。しかし、バンドE’がバンドDと比較して優位な選択的フェーディングを有する場合には、バンドE’からのトレーニング信号は、バンドDに対する正確なCSIをもたらさない。
【0146】
NLOS成分(例えば、図15bに例示するような)が存在しない空きスペース内の純粋なLOS信号は、周波数平坦なチャネル内にある。このため、信号に対する唯一の成分がLOSである場合には、OOB信号は、ユーザアンテナの位置でIB信号に対するCSIを正確に推定するために使用することができる。しかしながら、多くの現実世界の展開では、純粋なLOS信号は存在せず、むしろ、全く信号が存在しない(例えば、図15a)か、NLOS信号のみが存在する(例えば、図15c)か、又は、LOS信号とNLOS信号が組み合わされた信号(例えば、15d)が存在する。
【0147】
OOB信号がTDD BTSアンテナ1510の視点からFDD BTS 1530のCSIを推定するために使用される場合には、図15a、15b、15c及び15dのシナリオの各々に対する結果は、以下のようになる:
a.15a:信号無し、それ故、CSIは生じない。
b.15b:LOSのみが存在し、一貫して正確なCSIをもたらす。
c.15c:NLOSのみが存在し、NLOSのみのチャネルからの選択的なフェーディングのせいである可能性が高い一貫して正確ではないCSIをもたらす。
d.15d:LOS+NLOS、生じるCSIはNLOS成分が一貫して正確ではなく、LOS成分が一貫して正確であるCSI成分の組み合わせとなる。
【0148】
純粋なLOSチャネルから導かれたCSIをCLと称し、純粋なNLOSチャネルから導出されたCSIをCNと称し、純粋なLOSと純粋なNLOSの組み合わせのチャネルから導出されたCSIをCLNと称する。LOS及びNLOSの組み合わせのCSIは、CLN=CL+CNと定式化することができる。
【0149】
アクセスポイント109(AP1..N)と図14のアンテナ1403との間が純粋なLOSチャネルの場合は、唯一のCSI成分は、各アンテナ1403に対するCLである。純粋なLOSチャネルは周波数平坦なので、CSIを導出するためにOOB信号が使用される場合、各アンテナ1403に対するCSIは依然として正確なままである。このため、CSIを導出するためにOOB信号を使用する場合は、各AP 109からのLOS信号は、各アンテナ1403の位置で高い精度で無効になり、わずかな又は各アンテナ1403で検出できないAP 109の伝送からの信号をもたらす。
【0150】
アクセスポイント109とアンテナ1403との間が純粋なNLOSチャネルの場合は、唯一のCSI成分は、各アンテナ1403に対するCNである。CSIを導出するためにOOB信号が使用される場合、各アンテナ1403に対するCSIは、チャネルがどのように周波数平坦であるかに応じて多かれ少なかれ正確である。このため、CSIを導出するためにOOB信号を使用する場合は、各AP 109からのNLOS信号は、チャネル周波数の選択性の程度に応じて、完全に無効になる(完全に周波数平坦なチャネルの場合)か、部分的に無効になるか、又は全く無効にならない。NLOS信号が無効にならない程度に、各アンテナ1403は、AP 109からのNLOS信号のいくとかのランダムな総和を受信する。このため、AP 109からアンテナ1403へのNLOS信号強度にいくらか低下があり得るが、NLOS信号強度は、NLOS信号の無効化を試みるためにCSIが適用されなかったなら受信されたであろうNLOS信号強度より高くならない。
【0151】
アクセスポイント109とアンテナ1403との間がLOS及びNLOSの組み合わせのチャネルの場合、CSIは、各アンテナ1403に対してLOS及びNLOS成分の組み合わせCLN=CL+CNである。OOB信号がCSIを導出するために使用される場合、各アンテナ1403に対するCSIのCL成分は高度に正確になり、CN成分に対するCSIはチャネルがどのように周波数平坦であるかに応じて、多かれ少なかれ正確である。CSIのCL成分は、アクセスポイント109とアンテナ1403との間の信号のLOS成分の無効化に影響を及ぼす一方、CSIのCN成分は、アクセスポイント109とアンテナ1403との間の信号のNLOS成分の無効化に影響を及ぼす。このため、CSIを導出するためにOOBを使用する場合は、各AP 109からのLOS信号は、一貫して完全に無効になる一方、各AP 109からのNLOS信号は、チャネル周波数の選択性の程度に応じて、多かれ少なかれ無効になる。したがって、合計では、AP 109からの伝送のLOS成分は完全に無効になり、AP 109からの伝送のNLOS成分の強度は、NLOS信号の無効化を試みるためにCSIを適用しなかったならアンテナ1403によって受信されたであろうNLOS信号強度より高くならない。
【0152】
以前に述べたように、図15a、15b、15c及び15dに示すシナリオでは、問題になるシナリオは、TDD BTS 1510のLOS成分がFDD BTS 1530に受信される場合のものである。TDD BTS 1510のNLOS成分がFDD BTS 1530に受信される場合は、一般的に問題ではない。前節で説明したMU-MASの実施形態を考察しよう:TDD BTS 1510が図14からのAP 109のうちの1つであり、FDD BTS 1530がアンテナ1403のうちの1つである場合、アンテナ1403に対するCSIを決定するためにレーニング信号が使用される場合には、TDD BTS 1530からの伝送は、FDD BTS 1530で完全に無効になる。アンテナ1403に対するCSIを決定するために使用されるトレーニング信号がOOB信号である場合、TDD BTS 1530からのLOS伝送が、FDD BTS 1530で完全に無効になり、TDD BTS 1530からFDD BTS 1530へのNLOS伝送は、NLOS信号の無効化を試みるためにCSIが適用されなかった場合より悪くならない。このため、アンテナ1530からのOOBトレーニング信号は、アンテナ1510からの伝送のいずれのLOS成分も完全に無効にするが、アンテナ1510からの伝送のいずれのNLOS成分も確実に無効にしないか又は強くしない。
【0153】
アンテナ1510から伝送された信号のLOS成分は問題であり、無効化されており、アンテナ1510のNLOS成分は問題ではなく、いかなる悪影響も受けないので、発明者らは、少なくともFDDBTSからのOOB信号が利用可能であれば、FDD ULスペクトル内で図14に示すものなどのMU-MASシステムで、TDD BTS 1530が、隣接するバンドのFDD BTSの受信機性能を大きく妨げることなく動作することができる、実施形態を有している。
【0154】
多くのFDDシステムの場合、このようなOOB信号は実に利用可能である。例えば、図16aにおいて、サブバンドE内でULを受信しているFDD BTS 1530は、同時に、サブバンドE’内でDLを伝送している。データトラフィックはDLサブバンド内で変化し得る一方、制御信号(例えばLTE標準における)は、典型的には、繰り返し伝送される。したがって、少なくとも、これらのDL制御信号は、FDD BTS 1530のCSIを決定し、関連する特許及び出願で以前に開示された相互性技法を使用し、かつ、サブバンドE’内のFDD BTS 1530(図14のアンテナ1403に対応する)からのDL伝送のチャネル相互性から導出されるCSIを適用して、TDD BTS 1510(図14のAP 109に対応する)から位置111のUEへのTDD DL伝送と同時に、サブバンドD内のFDD BTS 1530(図14のアンテナ1403に対応する)でヌルを生成するために使用されるOOBトレーニング信号として使用することができる。TDD BTS 1510(図14のAP 109に対応する)からのサブバンドDのTDD DL伝送のLOS成分は、FDD BTS 1530(図14のアンテナ1403に対応する)で完全に無効にされる一方で、サブバンドDのTDD DL伝送のNLOS成分は、LOS成分の無効化がなされなかった場合にそうであったであろうものよりも悪くならない。
【0155】
TDD DL伝送のバンド幅内にFDD BTS 1530の位置のその場所でTDD DL伝送のヌルを生成することに加えて、FDD BTSの位置でTDD DL伝送からの高電力のOOBEを無効にすることも望ましい。LOS成分からのOOBEが周波数平坦なチャネル内にあるので、バンド内LOS成分の無効化は、LOS成分からのOOBEも無効にする。しかしながら、NLOS成分のOOBEは、NLOS成分が周波数選択的なチャネルにある程度に、無効にならないが、LOS成分を無効にする試みがなかったならNLOSが有したであろうOOBEよりも悪くならない。LOS及びNLOS伝送の各々のOOBEの電力は、バンド内のLOS及びNLOS伝送の電力にそれぞれ比例する。このため、LOS伝送のOOBEを無効にすること及びNLOS伝送のOOBEをさもなくばそうであったOOBEより悪化させないことは、最大の電力及びほとんどの問題のあるOOBE成分に対処し、LOSがより問題の少ないNLOS成分を悪化させない。
【0156】
FDD基地局は、典型的には、ダイバーシティ、ビーム形成、MIMO又は他の理由のための複数のアンテナを有する。このシナリオは、図14に描写されており、各構造物1431~1433上に複数のアンテナ1411が存在する。それ故、図15a、15b、15c及び15dに描写される単一のFDD BTSアンテナ1530よりむしろ、典型的には、複数のFDD BTSアンテナ1411が存在するであろう。次いで、上記で説明し、図14に描写されたMU-MASシステムは、このようなアンテナが伝送している程度に、各アンテナに対するCSIを導出し、そのアンテナへのAP 109伝送のLOS成分を無効にするために使用するであろうアンテナ1411の各々からの伝送を受信するであろう。別の実施形態では、ヌルは、BTSアンテナ1411のいくつかに対して生成されるのみであろう。例えば、アンテナ1411のいくつかは、UL受信に使用されなくてもよく、それらのアンテナに対してヌルを生成する必要はないであろう。
【0157】
上記の実施形態の大規模な展開では、多くのTDD BTSアンテナ及び隣接するサブバンドのFDD BTSアンテナは、広い対象範囲領域(例えば、市、地域、国及び大陸)全体にわたって分布されるであろう。明らかに、全てのアンテナが互いの範囲にあるわけではなく、したがって、所与のFDD BTSアンテナに干渉するのに十分な電力レベルのTDD BTS DL伝送のみを無効にする必要があるであろう。一実施形態では、VRM 108は、TDD BTS DL AP 109からFDD BTSアンテナ1403からの伝送を受信し、かつ、TDD BTS AP 109から入る電力レベルを、各TDD BTS AP 109からの各FDD BTSアンテナ1403上で、評価する。チャネル相互性を含む様々な手段を使用して、この評価を行うことができる。VRM 108は、OOBE又は所与の閾値より上の受信機ブロッキング/受信機感度抑圧の電力を受信しているであろうFDD BTSアンテナ1403でのみヌルを合成する。閾値は、限定はされないが、干渉する閾値又はスペクトル法令によって設置された閾値を含む任意のレベルに設定することができる。
【0158】
ヌルpCell 1411は、信号を伝送するpCell 103に、それらが、計算リソース及びAP 109リソースを必要とする点で類似している。このため、対象範囲全体にわたってヌルpCellを生成するために必要なAP 109リソースの数を最少にすることは有利である。別の実施形態では、関連する特許及び出願で以前に開示したようなクラスタリング技法を利用して、ユーザ装置に必要なpCell 103及び対象領域全体にわたってアンテナ1403を無効にするのに必要なpCell 1411を合成するのに必要なAP 109の数を減少させることができる。
【0159】
上述の実施形態は、隣接するスペクトル内のTDD動作の知識を何も有しないFDD DLアンテナでヌルを生成することに対処する。別の実施形態では、FDD DLアンテナが隣接するスペクトル内のTDD動作の知識を有しており、TDDシステムと協働する。一実施形態では、FDD DLアンテナ1403は、図14のMU-MASシステムがFDD DLアンテナ1403に対する正確なCSIを決定するためのIBレファレンスを有することができるようにするトレーニング信号(例えば、LTE SRS信号)を、規則的にTDDバンド内に伝送する。正確なCSIで、VRM 108は、LOS及びNLOSの成分両方に対するヌルを合成することができ、このため、NLOS信号すらも無効になるので、非常に高い電力のTDD DL伝送が隣接するスペクトル内で使用できるようになる。別の実施形態では、FDD DL伝送は、UE(SRSなど)又はTDD DL BTSのどちらかからのトレーニング信号でインターリーブされたタイミング及び/又は周波数である。別の実施形態では、FDD DLアンテナ1403は、VRM 108がOOBE CSIを決定し、かつ、LOS OOBE並びにNLOSの両方に対するヌルを生成するために使用することができる、IBトレーニング信号を自身のULスペクトル内に伝送もする。
【0160】
別の実施形態では、アンテナ1403は、隣接するTDDスペクトルで使用されるTDDアンテナである。隣接するTDDシステムがUL及びDL内で同期する場合は、全てのBSTが同時に伝送又は受信モードになるので、OOBE及び受信機ブロッキング/受信機感度抑圧からの干渉は最小化される。時々、例えば、隣接するネットワークが異なるDL及びULの比率を必要とする場合、又は、それらのネットワークが異なる待ち時間要件を有する場合、例えば、1つのネットワークが、往復待ち時間を減少させるためにより頻繁なDL又はULインターバルを必要とする場合、隣接するTDDシステムDL及びULの時間を同期させないで動作させる必要がある。これらのシナリオでは、隣接するバンドが、同時に、UL及びDLとともに使用される。上述したのと同じ技法は、DLインターバルの間に他のシステムのBSTアンテナでヌルを合成するために一方又は両方のシステムに対して使用することができる。上述の技法によって、バンド内及びOOBE伝送の一方又は両方が無効にされ得、LOS成分並びにNLOS成分のどちらかを無効にする。
【0161】
一実施形態では、図14のMU-MASシステムに対する同じスペクトルが、地上無線サービスを提供するために使用され、一方、それは、同時に、航空機用のDLバンド(即ち、空に向いた伝送を有する)として使用される。MU-MASシステムは、地上での使用が意図されているにもかかわらず、航空機が、AP 109のアンテナパターンの範囲に入る程度に、AP 109から航空機までのパスは、LOS又は大部分LOSであり、航空機へのDLに干渉する潜在的可能性がある。VRMは、航空機からUL(即ち、地面に向けられた伝送)を受信することによって、以前に説明した技術を使用して、航空機アンテナに対するCSIを導出し、かつ、これによって、航空機アンテナの位置でヌルを合成することができる。航空機へのパスはLOSであるので、CSIは、たとえ、航空機のUL信号がOOBの場合でも、極めて正確であることができる。このため、このようにして、スペクトルは、航空機のDLと同時に使用することができる。航空機は頻繁には飛行せず、スペクトルが、航空機に独占的に予約されていた場合、スペクトルは、ほとんどの時間稼働しないであろうことから、これは、非常に効率的なスペクトルの使用である。
【0162】
別の実施形態では、航空機のアンテナは、地上のUEと一緒に、1つ又は複数のUEとして扱われ、航空機が図14に示すMU-MASシステムの範囲内を飛行する場合は、それは、他の任意のUEと同じUL及びDLの容量を使用する。複数のアンテナが、容量を増大させるために航空機に使用され得る。アンテナは、航空機上又は航空機内で互いに離間して配置することができ、容量を増大させるために極性を持たせることができる。航空機内の個人も、同じMU-MASに接続された彼ら自身の装置(例えば、携帯電話)を同じスペクトル内で使用することができる。MU-MASは、航空機アンテナ用及びユーザのUE用の独立したpCellを生成するであろう。
【0163】
本発明の実施形態は、上で説明した様々な工程を含み得る。本工程は、汎用又は特殊目的のプロセッサに本工程を実行させるために使用され得る、機械実行可能な命令において具現化することができる。代替的に、これらの工程は、工程を実行するためのハードワイヤードロジックを含む特定のハードウェア構成要素によって、又はプログラミングされたコンピュータ構成要素及びカスタムハードウェア構成要素の任意の組み合わせによって、実行することができる。
【0164】
本明細書に記載される場合に、命令は、ある特定の動作を行うように構成されるか、又は所定の機能若しくはソフトウェア命令が非一時的コンピュータ可読媒体中に具現化されたメモリ内に記憶されている、特定用途向け集積回路(ASIC)などの、ハードウェアの特定の構成を指し得る。故に、図面で示す技法は、1つ又は2つ以上の電子装置上で記憶及び実行されるコード及びデータを使用して実装され得る。そのような電子装置は、非一時的コンピュータ機械可読記憶媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスク、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ装置、相変化メモリ)、並びに一時的なコンピュータ機械可読通信媒体(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号などの電気的、光学的、音響的又は他の形態の伝搬信号)などのコンピュータ機械可読記憶媒体を使用して、コード及びデータを記憶及び(内部で及び/又はネットワークを介して他の電子装置と)通信する。
【0165】
この詳細な説明全体を通じて、説明を目的として、本発明の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細を記載した。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細の一部がなくても実施され得ることは、当業者にとって明らかであろう。ある特定の例では、既知の構造及び機能は、本発明の主題を不明瞭にすることを回避するために、詳述しなかった。したがって、本発明の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲の観点から判断されるべきである。
図1
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