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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】車両用サンバイザー
(51)【国際特許分類】
   B60J 3/02 20060101AFI20230130BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230130BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
B60J3/02 F
G02F1/13 505
G02F1/1347
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019549956
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035269
(87)【国際公開番号】W WO2019082572
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2017208196
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】野々内 悠人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/070500(WO,A1)
【文献】特開2002-202486(JP,A)
【文献】特開2007-076396(JP,A)
【文献】特開2003-048429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0239664(US,A1)
【文献】国際公開第2015/098312(WO,A1)
【文献】特開2002-154324(JP,A)
【文献】特表平11-508377(JP,A)
【文献】米国特許第08960761(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0284670(US,A1)
【文献】特開2016-157064(JP,A)
【文献】特開2001-58514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/02
G02F 1/13
G02F 1/1347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の天井部に取り付けられる本体を有する車両用サンバイザーであって、
第一面及び該第一面とは反対側の第二面を有する前記本体であって、第一液晶層を有して第一透視状態と遮光状態とに切り替え可能な第一層状部と、第二液晶層を有して前記第一面に入射した光を鏡面反射させる反射状態と第二透視状態とに切り替え可能な第二層状部と、を含む調光部を有し、前記第二層状部が前記第一層状部よりも前記第一面側に配置された前記本体と、
前記第一層状部を前記遮光状態に制御し前記第二層状部を前記第二透視状態に制御することにより前記第二層状部による光の鏡面反射を抑制して前記第二面から前記第一面への光を遮る第一状態を前記本体に実現させ、前記第二層状部を前記反射状態に制御することにより前記第一面に入射した光を前記第二層状部により鏡面反射させる第二状態を前記本体に実現させ、前記第一層状部を前記第一透視状態に制御し前記第二層状部を前記第二透視状態に制御することにより透視性の有る状態を含む第三状態を前記本体に実現させる制御部と、
操作部と、を備え、
前記調光部は、光透過率を調整可能な調光領域を複数有し、
前記制御部は、前記本体に前記第三状態を実現させている時、透視性を有する第一領域、及び、該第一領域よりも光透過率が低い第二領域を前記調光部に出現させ、
前記操作部は、前記第一領域と前記第二領域との境の位置を直接決める第一の操作、及び、前記第一領域から前記第二領域に向かって徐々に光透過率が下がるグラデーションパターンを前記調光部に出現させるか否かを選択する第二の操作を受け付け、
前記制御部は、前記第一の操作により決められた位置を境として前記第一領域と前記第二領域とを前記調光部に出現させ、前記第二の操作として前記グラデーションパターンを前記調光部に出現させる操作が受け付けられると前記グラデーションパターンを前記調光部に出現させる、車両用サンバイザー
【請求項2】
前記第一面において前記第二層状部に対応する領域は、第一分割領域及び第二分割領域を含み、
前記制御部は、前記第一分割領域において前記第二層状部の状態を制御することにより前記第一分割領域に前記第一状態と前記第二状態と前記第三状態とを選択的に実現させ、前記第一分割領域における制御とは別に前記第二分割領域において前記第二層状部の状態を制御することにより前記第二分割領域に前記第一状態と前記第二状態と前記第三状態とを選択的に実現させる、請求項1に記載の車両用サンバイザー
【請求項3】
前記車両用サンバイザーは、さらに、外部の光の強さを検出する光検出部を備え、
前記制御部は、
前記光検出部で検出される光の強さが第一の強さである場合、前記本体に、前記第一状態と前記第二状態と前記第三状態とを選択的に実現させ、
前記光検出部で検出される光の強さが前記第一の強さよりも弱い第二の強さである場合、前記本体に前記第一状態以外の状態を実現させる、請求項1に記載の車両用サンバイザー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー状態を実現可能な車両用サンバイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-205914号公報に開示された車両用サンバイザーは、ミラー蓋をサンバイザー本体の表面に沿ってスライドさせることにより、そのサンバイザー本体の表面に設けられたミラーを覆ったり、あるいは露出させたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-205914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記サンバイザー本体には、ミラー蓋をスライドさせるための構造が必要である。また、上記ミラー蓋はミラーを露出させる場合もサンバイザー本体の表面にあるため、その分、ミラーのサイズが限定される。そこで、ミラーを覆うスライド蓋が無くてもミラーの非使用状態を実現することができると好適である。
【0005】
本発明は、スライド蓋が無くてもミラーの使用状態と非使用状態とを実現可能であって利便性をさらに向上させることが可能な車両用サンバイザーを開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用サンバイザーは、車両の天井部に取り付けられる本体を有する車両用サンバイザーであって、
第一面及び該第一面とは反対側の第二面を有する前記本体であって、第一液晶層を有して第一透視状態と遮光状態とに切り替え可能な第一層状部と、第二液晶層を有して前記第一面に入射した光を鏡面反射させる反射状態と第二透視状態とに切り替え可能な第二層状部と、を含む調光部を有し、前記第二層状部が前記第一層状部よりも前記第一面側に配置された前記本体と、
前記第一層状部を前記遮光状態に制御し前記第二層状部を前記第二透視状態に制御することにより前記第二層状部による光の鏡面反射を抑制して前記第二面から前記第一面への光を遮る第一状態を前記本体に実現させ、前記第二層状部を前記反射状態に制御することにより前記第一面に入射した光を前記第二層状部により鏡面反射させる第二状態を前記本体に実現させ、前記第一層状部を前記第一透視状態に制御し前記第二層状部を前記第二透視状態に制御することにより透視性の有る状態を含む第三状態を前記本体に実現させる制御部と、
操作部と、を備え、
前記調光部は、光透過率を調整可能な調光領域を複数有し、
前記制御部は、前記本体に前記第三状態を実現させている時、透視性を有する第一領域、及び、該第一領域よりも光透過率が低い第二領域を前記調光部に出現させ、
前記操作部は、前記第一領域と前記第二領域との境の位置を直接決める第一の操作、及び、前記第一領域から前記第二領域に向かって徐々に光透過率が下がるグラデーションパターンを前記調光部に出現させるか否かを選択する第二の操作を受け付け、
前記制御部は、前記第一の操作により決められた位置を境として前記第一領域と前記第二領域とを前記調光部に出現させ、前記第二の操作として前記グラデーションパターンを前記調光部に出現させる操作が受け付けられると前記グラデーションパターンを前記調光部に出現させる、態様を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スライド蓋が無くてもミラーの使用状態と非使用状態とを実現させ、利便性をさらに向上させる車両用サンバイザーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、シェード装置を取り付けた自動車の車室の要部を模式的に例示する図。
図2図2は、シェード装置の例を模式的に示す正面図。
図3図3は、シェード装置を組み立てる前の各部の例を模式的に示す分解斜視図。
図4図4は、シェード装置の縦断面の例を模式的に示す縦断面図。
図5図5は、透明板の要部、及び、透明板の支持構造の例を模式的に示す図。
図6図6A,6Bは、バイザー本体の断面の例を模式的に示す図。
図7図7AはTN(Twisted Nematic)方式の液晶フィルムにおける機能の例を模式的に示す図、図7BはVA(Vertical Alignment)方式の液晶フィルムにおける機能の例を模式的に示す図。
図8図8Aは直線偏光反射方式の反射型偏光層の例を模式的に示す図、図8Bはコレステリック液晶を用いた反射型偏光層が光を透過させる例を模式的に示す図、図8Cはコレステリック液晶を用いた反射型偏光層が光を反射させる例を模式的に示す図。
図9図9は、調光部の構成例を模式的に分解して示す図。
図10図10は、シェード装置の電気回路の例を模式的に示すブロック図。
図11図11は、調光部の調光領域の例を模式的に示す図。
図12図12は、制御部で行われる切り替え制御処理の例を示すフローチャート。
図13図13は、遮光モード、ミラーモード、及び、透視モードにおける層状部の状態の例を模式的に示す図。
図14図14は、遮光モード、及び、ミラーモードにおける層状部の状態の例を模式的に示す図。
図15図15Aは透視性の有る状態の調光部の例を模式的に示す図、図15Bは第一面に入射した光を鏡面反射させる第二状態の調光部の例を模式的に示す図、図15Cは第一面に入射した光の鏡面反射を抑制して第二面から第一面への光を遮る第一状態の調光部の例を模式的に示す図。
図16図16Aは第一面に入射した光の鏡面反射を抑制して第二面から第一面への光を遮る第一状態の調光部の例を模式的に示す図、図16Bは第一面に入射した光を鏡面反射させる第二状態の調光部の例を模式的に示す図、図16Cは透視性の有る状態の調光部の例を模式的に示す図。
図17図17は、制御部で行われる境位置制御処理の例を示すフローチャート。
図18図18は、境位置を直接決める操作に応じた分割領域の変化の例を模式的に示す図。
図19図19は、境位置を直接決める操作に応じたグラデーション領域の変化の例を模式的に示す図。
図20図20は、シェード装置の電気回路の別の例を模式的に示すブロック図。
図21図21は、調光部の制御領域の例を模式的に示す図。
図22図22は、分割された制御領域の一部をカンバセーションミラーとして使用する例を模式的に示す図。
図23図23は、分割された制御領域の一部をバニティーミラーとして使用する例を模式的に示す図。
図24図24は、制御部で行われる追加制御処理の例を示すフローチャート。
図25図25は、バイザー本体の断面の別の例を模式的に示す図。
図26図26は、遮光モード、及び、ミラーモードにおける層状部の状態の例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~26に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
【0011】
[態様1]
本技術の一態様に係るシェード装置1は、第一面2a及び該第一面2aとは反対側の第二面2bを有する本体(例えばバイザー本体2)、及び、制御部50を備える。図6A,6B,25等に例示するように、前記本体(2)は、遮光状態を有する第一層状部110と、前記第一面2aに入射した光L5を鏡面反射させる反射状態を有する第二層状部120と、を含む。前記第一層状部110と前記第二層状部120の少なくとも一方は、液晶層(111,121)を含む。前記制御部50は、前記第一層状部110と前記第二層状部120のうち前記液晶層(111,121)を含む層状部の状態を制御することにより、前記本体(2)に、少なくとも、前記第二層状部120による光L5の鏡面反射を抑制して前記第二面2bから前記第一面2aへの光L4を遮る第一状態(例えば図15C参照)と、前記第一面2aに入射した光L5を前記第二層状部120により鏡面反射させる第二状態(例えば図15B参照)と、を選択的に実現させる。
【0012】
第二層状部120による光L5の鏡面反射を抑制して第二面2bから第一面2aへの光を遮る第一状態(図15C)が選択されると、シェード装置1により光を遮ることができる。また、第一面2aに入射した光L5を第二層状部120により鏡面反射させる第二状態(図15B)が選択されると、シェード装置1の第一面2a側をミラーとして利用することができる。ミラーを覆うスライド蓋は不要であるので、スライド蓋をスライドさせるための構造は不要であり、本体のほぼ全体をミラーにする等、ミラーサイズを大きくすることが可能である。このように、本態様は、スライド蓋が無くてもミラーの使用状態と非使用状態とを実現させるシェード装置を提供することができる。
【0013】
ここで、鏡面反射は、正反射とも呼ばれ、鏡面におけるように巨視的にみて反射の法則に従う光の反射を意味する。
尚、上記態様1の付言は、以下の態様も同様である。
【0014】
また、図2等に例示するように、本シェード装置1は、前記第一状態及び前記第二状態を含む複数の状態から前記本体(2)に実現させる状態を受け付ける操作部60をさらに備えてもよい。この場合、前記制御部50は、前記操作部60で受け付けられた状態を前記本体(2)に実現させてもよい。
さらに、前記制御部50は、第一の条件が成立すると前記本体(2)に前記第一状態を実現させ、前記第一の条件とは異なる第二の条件が成立すると前記本体(2)に前記第二状態を実現させてもよい。例えば、前記第一の条件は、光検出部70において眩光を検出した場合でもよい。前記第二の条件は、光検出部70において外部(例えば車外)の光の強さが夜間のように所定の強さ未満である場合でもよい。
【0015】
[態様2]
図6A,7A等に例示するように、前記第一層状部110は、第一液晶層111を有し、第一透視状態と前記遮光状態とに切り替え可能でもよい。図6A,8A等に例示するように、前記第二層状部120は、第二液晶層121を有し、前記第一層状部110よりも前記第一面2a側に配置されて前記反射状態と第二透視状態とに切り替え可能でもよい。図15C等に例示するように、前記制御部50は、前記第一層状部110を前記遮光状態に制御し前記第二層状部120を前記第二透視状態に制御することにより前記本体(2)に前記第一状態を実現させてもよい。図15B等に例示するように、当該制御部50は、前記第二層状部120を前記反射状態に制御することにより前記本体(2)に前記第二状態を実現させてもよい。図15A等に例示するように、当該制御部50は、前記第一層状部110を前記第一透視状態に制御し前記第二層状部120を前記第二透視状態に制御することにより前記本体(2)に透視性の有る状態を含む第三状態を実現させてもよい。
【0016】
前記第一状態(図15C)において、本体(2)の第一面2aに入射した光L5は、第二透視状態の第二層状部120を透過し、遮光状態の第一層状部110に吸収される。本体(2)の第二面2bに入射した光L4は、遮光状態の第一層状部110に吸収される。これにより、第二層状部120による光L5の鏡面反射が抑制されて第二面2bから第一面2aへの光L4が遮られる。
前記第二状態(図15B)において、本体(2)の第一面2aに入射した光L5は、反射状態の第二層状部120において鏡面反射する。これにより、本体(2)の第一面2aがミラーとして機能する。尚、第一層状部110は遮光状態であることが好ましいものの、第一層状部110が第一透視状態である場合は本体(2)がハーフミラーとして機能する。
前記第三状態(図15A)の透視性を有する状態において、本体(2)の第二面2bに入射した光L4は、第一透視状態の第一層状部110を透過して第二透視状態の第二層状部120を透過する。これにより、本体(2)を通して反対側を見ることができる。
以上より、本態様は、利便性をさらに向上させることが可能なシェード装置を提供することができる。
【0017】
ここで、第一層状部には、液晶フィルム、液晶パネル、等が含まれる。
透視状態は、背後を透かして見ることができる状態を意味する。
遮光状態は、透視状態よりも光透過率が小さい状態を意味し、光透過率0%が理想であるものの、光を若干透過させる状態でもよい。光透過率は、物体(例えば第一層状部)への入射光強度に対する物体(例えば第一層状部)の透過光強度の比とする。「透光」は「物質を光が透過して他面から出ること」であるものとし、「透光」に「透視性」は有っても無くてもよい。「透視性」は、背後を透かして見ることができる性質であるものとする。
第二層状部には、液晶フィルム、液晶パネル、等が含まれる。
第三状態は、透視性を有する状態が含まれていればよく、常に透視性を有する状態でもよいし、光透過率が透視性の無い状態まで変化し得る状態でもよい。
尚、上記付言は、以下の態様も同様である。
【0018】
また、図12等に例示するように、前記第一層状部110は、光透過率を調整可能でもよい。この場合、前記制御部50は、前記第一層状部110の光透過率を変更する制御を行ってもよい。本態様は、利便性をさらに向上させることが可能なシェード装置を提供することができる。
【0019】
[態様3]
図6Bに例示するように、前記第二層状部120は、前記第一層状部110よりも前記第二面2b側に配置されてもよい。前記制御部50は、前記第一層状部110を前記遮光状態に制御することにより前記本体(2)に前記第一状態を実現させ、前記第一層状部110を前記第一透視状態に制御することにより前記本体(2)に前記第二状態を実現させてもよい。
【0020】
前記第一状態において、本体(2)の第一面2aに入射した光L5は、遮光状態の第一層状部110に吸収される。これにより、第二層状部120による光の鏡面反射が抑制されて第二面2bから第一面2aへの光が遮られる。
前記第二状態において、本体(2)の第一面2aに入射した光L5は、第一透視状態の第一層状部110を透過して第二層状部120において鏡面反射し、第一透視状態の第一層状部110を透過する。これにより、本体(2)の第一面2aがミラーとして機能する。
以上より、本態様は、スライド蓋が無くてもミラーの使用状態と非使用状態とを実現させる好適なシェード装置を提供することができる。
【0021】
[態様4]
図8A,25等に例示するように、前記第二層状部120は、第二液晶層121を有し、前記第一層状部110よりも前記第一面2a側に配置されて前記反射状態と第二透視状態とに切り替え可能でもよい。前記制御部50は、前記第二層状部120を前記第二透視状態に制御することにより前記本体(2)に前記第一状態を実現させてもよい。当該制御部50は、前記第二層状部120を前記反射状態に制御することにより前記本体(2)に前記第二状態を実現させてもよい。
【0022】
前記第一状態において、本体(2)の第一面2aに入射した光L5は、第二透視状態の第二層状部120を透過し、遮光状態の第一層状部110に吸収される。本体(2)の第二面2bに入射した光L4は、遮光状態の第一層状部110に吸収される。これにより、第二層状部120による光L5の鏡面反射が抑制されて第二面2bから第一面2aへの光L4が遮られる。
前記第二状態において、本体(2)の第一面2aに入射した光L5は、反射状態の第二層状部120において鏡面反射する。これにより、本体(2)の第一面2aがミラーとして機能する。尚、第二層状部120の背後にある第一層状部110は、好ましい遮光状態である。
以上より、本態様は、スライド蓋が無くてもミラーの使用状態と非使用状態とを実現させる好適なシェード装置を提供することができる。
【0023】
[態様5]
図21等に例示するように、前記第一面2aにおいて前記第二層状部120に対応する領域は、第一分割領域(例えば図22の制御領域A12)及び第二分割領域(例えば図22の制御領域A13)を含んでもよい。前記制御部50は、前記第一分割領域(A12)において前記第一層状部110と前記第二層状部120のうち前記液晶層(111,121)を含む層状部の状態を制御することにより前記第一分割領域(A12)に少なくとも前記第一状態と前記第二状態とを選択的に実現させてもよい。当該制御部50は、前記第一分割領域(A12)における制御とは別に前記第二分割領域(A13)において前記第一層状部110と前記第二層状部120のうち前記液晶層(111,121)を含む層状部の状態を制御することにより前記第二分割領域(A13)に少なくとも前記第一状態と前記第二状態とを選択的に実現させてもよい。本態様は、第一分割領域(A12)の状態と第二分割領域(A13)の状態とが別々に切り替わるので、利便性をさらに向上させるシェード装置を提供することができる。
【0024】
[態様6]
図20等に例示するように、本シェード装置1は、さらに、外部(例えば車外)の光L10の強さを検出する光検出部70(例えば日射センサー71)を備えてもよい。前記制御部50は、前記光検出部70で検出される光の強さが第一の強さである場合、前記本体(2)に、少なくとも前記第一状態と前記第二状態とを選択的に実現させてもよい。図24に例示するように、当該制御部50は、前記光検出部70で検出される光L10の強さが前記第一の強さよりも弱い第二の強さである場合、前記本体(2)に前記第一状態以外の状態を実現させてもよい。外部が暗い場合、第二面2bから第一面2aへの光L4を遮る必要性が少ないので、第一状態以外の状態が本体(2)に実現される方が好適である。従って、本態様は、利便性をさらに向上させるシェード装置を提供することができる。
ここで、光検出部には、照度センサー(日射センサーを含む。)、撮像素子、等が含まれる。
【0025】
尚、図4等に例示するように、前記本体(2)は、前記第一面2aに配置された第一透明板310を有してもよい。また、前記本体(2)は、前記第二面2bに配置された第二透明板320を有してもよい。当該本体(2)は、前記第一層状部110及び前記第二層状部120が挟まれた前記第一透明板310及び前記第二透明板320を支持する支持部材40を有してもよい。ここで、第一透明板310と第二透明板320を透明板30と総称する。
上述した態様1~5で示した制御部50は、支持部材40といった本体(2)に配置されてもよいし、ステアリング等、本体(2)とは別の場所に配置されてもよい。
操作部60は、支持部材40や透明板30といった本体(2)に配置されてもよいし、ステアリング等、本体(2)とは別の場所に配置されてもよい。
【0026】
(2)シェード装置の具体例:
図1は、シェード装置をサンバイザーとして使用する例を模式的に示している。図1には、自動車100の車室CA1の要部が示されている。ここで、符号D11は上下方向を示し、符号D12は車幅方向を示す。前後左右の位置関係は、図1に示すように自動車100から前を見る方向を基準とする。
尚、「直交」は、厳密な90°に限定されず、誤差により厳密な90°からずれることを含む。また、方向や位置等の同一は、厳密な一致に限定されず、誤差により厳密な一致からずれることを含む。さらに、各部の位置関係の説明は、例示に過ぎない。従って、左右方向を上下方向又は前後方向に変更したり、上下方向を左右方向や前後方向に変更したり、前後方向を左右方向や上下方向に変更したり、回転方向を逆方向に変更したり等することも、本技術に含まれる。
【0027】
図1に示す自動車100には、運転席から見て、前にはフロントウィンドウ101があり、左右にはサイドウィンドウ102があり、フロントウィンドウ101とサイドウィンドウ102との間にフロントピラー103がある。自動車100の天井部104におけるフロントウィンドウ101の近傍には、ルームミラー105、運転席側のシェード装置1A、及び、助手席側のシェード装置1Bが取り付けられている。ここで、シェード装置1A,1Bをシェード装置1と総称する。
【0028】
図2は、運転席側のシェード装置1Aをバイザー本体2(本体の例)の第一面2a側から見た様子を模式的に例示している。助手席側のシェード装置1Bは運転席側のシェード装置1Aと左右対称であるので、運転席側のシェード装置1Aをシェード装置1の代表として説明する。ここで、バイザー本体2の第一面2aは、バイザー本体2が使用位置PV2にある場合に乗員の方を向いている面とする。バイザー本体2の第二面2bは、バイザー本体2において第一面2aとは反対側にある面であり、バイザー本体2が使用位置PV2にある場合に前を向いている面である。また、符号D1は調光領域20を分ける所定方向を示し、符号D1aは所定方向D1の一方側であり、符号D1bは所定方向D1の他方側である。図2には使用状態において所定方向D1が上下方向D11である例が示されている。符号D2は所定方向D1と直交する幅方向であり、図2には使用状態において幅方向D2が車幅方向D12である例が示されている。図3は、シェード装置1を組み立てる前の各部を模式的に例示している。図4は、シェード装置1の縦断面を模式的に例示している。図4の右側には、透明板30の下縁部32b及びその近傍を拡大して示している。図4では、調光部10と接着層AD1,AD2と透明板30の断面を表すハッチングを省略している。符号D13は前後方向であり、図4では使用状態にあるバイザー本体2の断面を示している。
【0029】
図2に示すシェード装置1は、軸部材90を有するバイザー本体2、制御部50、操作部60、及び、光検出部70を有している。バイザー本体2は、調光部10、透明板30、及び、支持部材40を有している。軸部材90は、天井部104に取り付けられる基部91、及び、この基部91に対して短軸部92bを中心として回転動作可能に支持されるL字部材92を有している。バイザー本体2の支持部材40の上部43は、L字部材92に対してL字部材92の長軸部92aを中心として回転動作可能に支持されている。従って、図1に示すように、ユーザーは、長軸部92aを中心としてバイザー本体2を、例えば、天井部104に沿った非使用位置PV1にしたり、フロントウィンドウ101の一部が隠れる使用位置PV2にしたりすることができる。また、ユーザーは、短軸部92bを中心としてバイザー本体2を、サイドウィンドウ102の一部が隠れる側方位置PV3にしたり、使用位置PV2に戻したりすることができる。軸部材90には、自動車100のバッテリーからバイザー本体2の電気回路に電力を供給するためのケーブル95(図3参照)も配置されている。むろん、バイザー本体2に電池を設置すれば、ケーブルは無くてもよい。
【0030】
調光部10は、図6A,6B等に示すように、第一液晶層111を有し第一透視状態と遮光状態とに切り替え可能な第一層状部110と、乗員側の第一面2aに入射した光L5を鏡面反射させる反射状態を有する第二層状部120と、を含んでいる。調光部10の詳細は、後述する。層状の調光部10は、保護用の透明板30に保持されている。
【0031】
透明板30は、層状調光部10の一面側10aに配置された第一透明板310と、層状調光部10の他面側10bに配置された第二透明板320と、に分かれている。本具体例では、バイザー本体2が使用位置PV2にある場合に、運転手から調光部10の一面側10aが見えて他面側10bが見えないものとする。従って、シェード装置1の使用状態において、第一透明板310が車室CA1側にあり、第二透明板320がフロントウィンドウ101に対向することになる。以下、第一透明板と第二透明板をまとめて説明する際には、単に「透明板」と記載する。
透明板30には、熱可塑性樹脂といった合成樹脂等を用いることができ、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリル(PMMA)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、といった透明性を有する樹脂等を用いることができる。例えば、透明性を有する樹脂材料に対して射出成形といった公知の成形を行うことにより、所要形状の透明板30を形成することができる。
【0032】
図4等に示すように、調光部10の一面側10aは、接着層AD1を介して第一透明板310の内側面312に接着することができる。調光部10の他面側10bは、接着層AD2を介して第二透明板320の内側面322に接着することができる。図6A,6Bに示すように、調光部10に含まれる層状部110,120は、接着層AD3を介して互いに接着することができる。接着層AD1,AD2,AD3を形成するための接着剤は、光学接着剤(OCA;Optical Clear Adhesive)、光学樹脂(OCR;Optical Clear Resin)、等を用いることができ、OCAテープ等でもよい。
【0033】
透明板30の縁部32は、図4に示すように、丸みを有するR形状とされている。ここで、図2に示すように、透明板30の縁部32を、上側の上縁部32a、下側の下縁部32b、ルームミラー105側の第一側縁部32c、及び、フロントピラー103側(第一側縁部32cとは反対側の例)の第二側縁部32dに分ける。少なくとも下縁部32b及び第一側縁部32cは、図4に示すように、光を拡散透過させるためのしぼ34が形成されている。しぼ34は、微細な凹凸であり、例えば、射出成形型に微細な凹凸を形成したりブラスト加工を行ったりすることにより形成することができる。しぼ34により透明板30の縁部32を拡散透過面にすると、図4に示すように、透明板30の縁部32に入射した眩光L11は、屈折しても拡散透過する。従って、本具体例は、防眩性を向上させながら層状調光部10を使用することができるので、利便性が向上する。
【0034】
図5は、透明板30の要部を模式的に例示している。図5の上部には、第一透明板310の背後にある第二透明板320を抜き出して示している。図5の下部には、挿通部311,321及びその近傍における透明板30の支持構造の縦断面を示している。符号D3は、第二面2bから第一面2aに向かう方向を示す。図5に示す第一透明板310は、遊びがある状態でねじSC1を通す第一挿通部311を有している。この第一挿通部311は、第一透明板310の厚さ方向(方向D3)へ貫通した穴であり、ねじSC1の頭を残して遊びがある状態でねじSC1を通す。また、図5に示す第二透明板320は、遊びがある状態で支持部材40のボス423を通す第二挿通部321を有している。この第二挿通部321は、第二透明板320の厚さ方向(方向D3)へ貫通した穴であり、ねじSC1の螺合部422が形成されたボス423を通す。
【0035】
図2~5に示す支持部材40は、層状調光部10を保持する透明板30を支持する。本具体例の支持部材40は、調光部10が挟まれた第一透明板310及び第二透明板320を支持する。図3~5に示す支持部材40は、第一透明板310側の第一壁部411を有する第一ベゼル410と、第二透明板320側の第二壁部421を有する第二ベゼル420と、に分かれている。各ベゼル410,420は、例えば、樹脂材料に対して射出成形といった公知の成形を行うことにより所要形状に形成することができる。前記樹脂材料には、熱可塑性樹脂といった合成樹脂等を用いることができ、PP樹脂といったポリオレフィン樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、これらの樹脂に着色剤や充てん材等といった添加剤を添加した材料、等を用いることができる。本具体例では支持部材40が不透明の材料で形成されているものとするが、支持部材40は不透明(光透過率0%)であることに限定されない。
【0036】
第一ベゼル410と第二ベゼル420は、調光部10が挟まれた透明板310,320を挟んだ状態で一体化されている。この一体化は、超音波溶着、熱溶着、接着剤の塗布、粘着テープの貼り付け、等により行うことができる。
【0037】
図5に示す第二ベゼル420の第二壁部421からは、第二面2bから第一面2aに向かう方向D3へボス423が突出している。このボス423は、第二透明板320の貫通穴である第二挿通部321を遊びがある状態で通り抜ける太さであり、第一透明板310の貫通穴である第一挿通部311を通り抜けることができない太さである。ボス423の先端423eには、第一挿通部311を通ったねじSC1と螺合する螺合部422が形成されている。遊びがある状態で第二挿通部321を通ったボス423の先端423eに螺合部422が形成されているので、第一挿通部311を通ったねじSC1がボス423の先端423eに螺入される。第二透明板320の縁部は、第二挿通部321を通ったボス423により保持される。
【0038】
図1,2に示す支持部材40は、層状調光部10を保持する透明板30における上縁部32aを覆う上部43、及び、透明板30におけるフロントピラー103側の第二側縁部32dを覆う側部44を有している。支持部材40は、透明板30における下縁部32b及び第一側縁部32cを露出させ、透明板30における上縁部32a及び第二側縁部32dを覆っている。上部43と側部44が一体化された支持部材40の形状は、略L字状である。本具体例では、側部44の内部に制御部50の例であるECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)51が収容され、側部44の第一ベゼル410側の表面に操作部60が配置され、上部43の第二ベゼル420側の表面に日射センサー71(光検出部70の例)が配置されているものとする。
【0039】
透明板30の下縁部32bが不透明の支持部材40から露出しているため、透明板30の下縁部32bの視認性が向上している。また、透明板30のルームミラー105側の第一側縁部32cが支持部材40から露出しているため、ルームミラー105の視認性が向上する。一方、透明板30の上縁部32aはバイザー本体2の使用時に眩光を遮る必要がある可能性が高いため、不透明の支持部材40で覆われてもよい。透明板30のルームミラー105とは反対側には元々視界が遮られるフロントピラー103があるため、透明板30の第二側縁部32dが不透明の支持部材40で覆われてもよい。支持部材40の上部43及び側部44が一体化されていることにより、層状調光部10を保持する透明板30を支持する支持部材40の強度が良好である。
本具体例は、ルームミラー105の視認性を向上させながら層状調光部10を使用することができるので、利便性が向上する。
【0040】
図6Aは、運転席側のシェード装置1Aにおけるバイザー本体2の断面を模式的に例示している。図6Bは、助手席側のシェード装置1Bにおけるバイザー本体2の断面を模式的に例示している。
両シェード装置1A,1Bの第一層状部110は、第二面2bから第一面2aに向かう順に、吸収型偏光層112、第一液晶層111、及び、吸収型偏光層113を含んでいる。第一層状部110は、第一透視状態と遮光状態とに切り替え可能である。本具体例の第一層状部110は液晶フィルムであるとするが、第一層状部110はガラスといった薄板を含む液晶パネル等でもよい。いずれの場合も、第一層状部110は、偏光層112,113や透明板30に保護される。
【0041】
第二層状部120は、シェード装置1Aとシェード装置1Bとで異なる。
図6Aに示すように、運転席側のシェード装置1Aの第二層状部120は、第一層状部110よりも第一面2a側に配置され、第二面2bから第一面2aに向かう順に、反射型偏光層122、第二液晶層121、及び、吸収型偏光層123を含んでいる。シェード装置1Aにおいて、第一透明板310と吸収型偏光層123との間に接着層AD1があり、第二透明板320と吸収型偏光層112との間に接着層AD2があり、吸収型偏光層113と反射型偏光層122との間に接着層AD3がある。
【0042】
図6Bに示すように、助手席側のシェード装置1Bの第二層状部120Aは、第一層状部110よりも第二面2b側に配置され、第一面2aに入射した光L5を鏡面反射させる材料である。ここで、第二層状部120Aの概念は、第二層状部120の概念に含まれる。第二層状部120Aには、ガラスといった透明板に金属を蒸着したミラー、SUS(ステンレス)といった金属のミラー、等を用いることができる。いずれの場合も、第二層状部120Aは、透明板30に保護される。シェード装置1Bにおいて、第一透明板310と吸収型偏光層113との間に接着層AD1があり、第二透明板320と第二層状部120Aとの間に接着層AD2があり、第二層状部120Aと吸収型偏光層112との間に接着層AD3がある。
尚、助手席側のシェード装置1Bのバイザー本体2を図6Aに示すような構造にしてもよいし、運転席側のシェード装置1Aのバイザー本体2を図6Bに示すような構造にしてもよい。いずれの場合も、本技術に含まれる。
【0043】
まず、図7A,7Bを参照して、第一層状部110の機能の例を説明する。
図7Aは、第一層状部110にTN(Twisted Nematic)方式の液晶フィルムを用いる場合の機能の例を模式的に示している。吸収型偏光層112,113の吸収軸方向D21は、互いに直交している。第一液晶層111に印加される電圧がオフ(OFF)である場合、液晶分子の90°の捩れにより、外部から吸収型偏光層112を通過した偏光L1が90°捩られて吸収型偏光層113を通過する。これにより、第一層状部110に第一透視状態が実現される。図示していないが、外部から吸収型偏光層113を通過した偏光は、90°捩られて吸収型偏光層112を通過する。第一液晶層111に印加される電圧がオン(ON)になると、液晶分子が垂直に立ち上がり、外部から吸収型偏光層112を通過した偏光L1は、捩られず、吸収型偏光層113に遮られる。これにより、第一層状部110に遮光状態が実現される。図示していないが、外部から吸収型偏光層113を通過した偏光は、捩られず、吸収型偏光層112に遮られる。尚、第一液晶層111に印加される電圧が所定範囲内で高くなるほど液晶分子の立ち上がりの度合いが大きくなるため、第一液晶層111に印加する電圧に応じて第一層状部110の光透過率を変えることができる。
【0044】
図7Bは、第一層状部110にVA(Vertical Alignment)方式の液晶フィルムを用いる場合の機能の例を模式的に示している。吸収型偏光層112,113の吸収軸方向D21は、互いに直交している。第一液晶層111に印加される電圧がオフ(OFF)である場合、液晶分子が垂直に向いており、外部から吸収型偏光層112を通過した偏光L1は、捩られず、吸収型偏光層113に遮られる。これにより、第一層状部110に遮光状態が実現される。図示していないが、外部から吸収型偏光層113を通過した偏光は、捩られず、吸収型偏光層112に遮られる。第一液晶層111に印加される電圧がオン(ON)になると、液晶分子が倒れ、外部から吸収型偏光層112を通過した偏光L1が90°捩られて吸収型偏光層113を通過する。これにより、第一層状部110に第一透視状態が実現される。図示していないが、外部から吸収型偏光層113を通過した偏光は、90°捩られて吸収型偏光層112を通過する。尚、第一液晶層111に印加される電圧が所定範囲内で高くなるほど液晶分子の倒れの度合いが大きくなるため、第一液晶層111に印加する電圧に応じて第一層状部110の光透過率を変えることができる。
さらに、第一層状部110の液晶の駆動方式は、IPS(In-Plane-Switching)方式等でもよい。むろん、液晶フィルムの代わりに液晶パネルを用いてもよい。
【0045】
電圧の印加に対する液晶層の応答が速いので、第一層状部110の状態を第一液晶層111に印加する電圧により切り替えることにより、素早く第一層状部110の状態を切り替えることができる。また、遮光状態の第一層状部110は光透過率が低く黒色に見えるので、太陽光等の眩光を効果的に遮ることができる。
【0046】
次に、図8A~8Cを参照して、第二層状部120の反射型偏光層122の機能の例を説明する。
図8Aは、反射型偏光層122が直線偏光反射方式である場合の機能の例を模式的に示している。直線偏光反射方式の反射型偏光層には、フィルム材料をベースとしたワイヤグリッド偏光子、多層薄膜構造の反射型偏光フィルム、等を用いることができる。例えば、ワイヤグリッド偏光子は、金属等で構成された導電体線が特定のピッチで格子状に配列されている。そのピッチが入射光の波長(例えば可視光の400~800nm)の例えば1/2以下であれば、ワイヤグリッド偏光子は、導電体線に対して平行に振動する電場ベクトル成分の光をほとんど反射し、導電体線に対して垂直な電場ベクトル成分の光をほとんど透過させる。尚、本願において、「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。図8Aに示す反射型偏光層122は、導電体線の向きが上下方向であり、水平に振動する偏光L2をほとんど透過させ、上下に振動する偏光L3をほとんど鏡面反射させる。ワイヤグリッド方式以外の直線偏光反射方式でも、或る方向に振動する偏光L2をほとんど透過させ、その方向と直交する方向に振動する偏光L3をほとんど鏡面反射させる。
【0047】
図8B,8Cは、反射型偏光層122がコレステリック液晶層131を含む多層構造である場合の機能の例を模式的に示している。図8B,8Cに示す反射型偏光層122は、第二面2bから第一面2aに向かう順に、位相差層132、コレステリック液晶層131、及び、位相差層133を含んでいる。コレステリック液晶層131は、図8Bに示すように第一の回転方向の円偏光をほとんど透過させ、図8Cに示すように第一の回転方向とは反対の第二の回転方向の円偏光を第一の回転方向の円偏光としてほとんど鏡面反射させる。位相差層132,133には、λ/4位相差フィルム等を用いることができる。図8Bに示す例では、水平に振動する偏光L2を位相差層132が左回り(第一の回転方向)の円偏光に変え、この円偏光をコレステリック液晶層131が透過させて位相差層133が水平振動の偏光に戻している。図8Cに示す例では、上下に振動する偏光L3を位相差層132が右回り(第二の回転方向)の円偏光に変え、この円偏光をコレステリック液晶層131が鏡面反射させて位相差層132が上下振動の偏光に戻している。
以上のように、コレステリック液晶層131を含む反射型偏光層122は、或る方向に振動する偏光L2をほとんど透過させ、その方向と直交する方向に振動する偏光L3をほとんど鏡面反射させる。
【0048】
第二層状部120の第二液晶層121の駆動方式には、TN方式、VA方式、IPS方式、等を採用することができる。例えば、図9に示すように、第二層状部120の吸収型偏光層123の吸収軸方向D21が水平方向であり、第二液晶層121がTN方式であるとする。外部から吸収型偏光層123を通過した偏光は、上下に振動する偏光である。第二液晶層121に印加される電圧がオフ(OFF)である場合、液晶分子の90°の捩れにより、上下に振動する偏光が90°捩られ、水平に振動する偏光が反射型偏光層122を通過する。これにより、第二層状部120に第二透視状態が実現される。また、外部から反射型偏光層122を通過した水平振動の偏光は、液晶分子の90°の捩れにより90°捩られ、上下振動の偏光が吸収型偏光層123を通過する。第二液晶層121に印加される電圧がオン(ON)になると、液晶分子が垂直に立ち上がり、外部から吸収型偏光層123を通過した上下振動の偏光は、捩られず、反射型偏光層122により鏡面反射する。この鏡面反射した上下振動の偏光は、第二液晶層121と吸収型偏光層123を通過する。これにより、第二層状部120に反射状態が実現される。
尚、第二層状部120は液晶を用いたミラーであるため、斜めに入射した光の反射率が低くなって眩しさが低減される。また、第二液晶層121に印加される電圧が所定範囲内で高くなるほど液晶分子の立ち上がりの度合いが大きくなるため、第二液晶層121に印加する電圧に応じて第二層状部120の光の反射率を変えることができる。
【0049】
反射型偏光層122、第二液晶層121、及び、吸収型偏光層123を含む第二層状部120は、液晶フィルムであるとするが、液晶パネルでもよい。いずれの場合も、第二層状部120は、偏光層122,123や透明板30に保護される。
電圧の印加に対する液晶層の応答が速いので、第二層状部120の状態を第二液晶層121に印加する電圧により切り替えることにより、素早く第二層状部120の状態を切り替えることができる。
層状部110,120は、エレクトロデポジション方式等と比べても応答が速いので、車両用バイザー装置に対する使用に好適である。
【0050】
図9は、反射型偏光層122を含む第二層状部120を用いる場合の調光部10の構成例を模式的に分解して示している。図9に示す調光部10は、第二面2bから第一面2aに向かう順に、吸収型偏光層112、第一液晶層111、吸収型偏光層113、反射型偏光層122、第二液晶層121、及び、吸収型偏光層123を含んでいる。吸収型偏光層112,123の吸収軸方向D21は、水平方向である。吸収型偏光層123の吸収軸方向D21は、上下方向である。反射型偏光層122の反射軸方向D22は、上下方向である。
【0051】
(3)モード切り替え処理の具体例:
図10は、調光部10、ECU51(制御部50の例)、操作部60、及び、日射センサー71(光検出部70の例)を含むシェード装置1の電気回路を模式的に例示している。ECU51には、調光部10、操作部60、及び、日射センサー71が接続されている。
【0052】
ECU51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリー、I/O(入出力)回路、タイマー(Timer)、等を有する。半導体メモリーには、例えば、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)が含まれる。シェード装置の制御プログラムが半導体メモリーに記録される場合、この半導体メモリーはシェード装置の制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体となる。ECU51のCPUは、RAMをワークエリアとして使用し半導体メモリー(例えばROM)に記録されている制御プログラムを必要に応じて読み出して実行することにより、コンピューターを制御部50として機能させる。
本具体例のECU51は支持部材40の側部44に配置されているが、ECU51は、支持部材40の上部43に配置されてもよいし、自動車100の本体側に配置されてもよい。バイザー本体2の電気回路とバイザー本体外のECUとを接続する信号線を例えば軸部材90に配置すると、ECUをバイザー本体外に配置することができる。
【0053】
操作部60は、複数のモード切り替えスイッチ61、及び、長尺状スイッチ62(長尺状操作部の例)を有している。本具体例のスイッチ61,62は表面に接触する操作を受け付ける静電容量スイッチ(capacitive switch)であるものとするが、スイッチ61,62は、静電容量形近接スイッチ、機械接点式のキースイッチ、等でもよい。表面に接触する操作を受け付ける静電容量スイッチは、タッチスイッチ、タッチセンサー、等とも呼ばれる。複数のモード切り替えスイッチ61は、所定方向D1へ並べられており、表面61aに接触する操作を受け付ける。長尺状スイッチ62は、所定方向D1に沿って配置され、表面62aに接触する操作を受け付ける。
本具体例の操作部60は支持部材40の側部44における第一ベゼル410の表面に配置されているが、操作部60は、支持部材40の上部43の表面に配置されてもよいし、ステアリングなど自動車100の本体側に配置されてもよい。バイザー本体2の電気回路とバイザー本体外の操作部とを接続する信号線を例えば軸部材90に配置すると、操作部をバイザー本体外に配置することができる。また、透明なタッチパネルを透明板30の表面の一部又は全部に貼り付けると、このタッチパネルを操作部60にすることができる。
【0054】
日射センサー71は、入射する光の強度を内蔵のフォトダイオードに流れる電流として検出する。日射センサー71は、検出電流を電圧に変換して出力してもよい。外部の光L10の強さについて昼間の光の強さに含まれる第一の強さと夜間の光の強さに含まれる第二の強さとの間に閾値を設定しておけば、日射センサー71からの出力に基づいて外部の光L10の強さを判定することができる。尚、光検出部70は、日射センサーに限定されず、撮像素子等でもよい。
本具体例の日射センサー71は支持部材40の上部43における第二ベゼル420の表面に配置されているが、支持部材40の側部44の表面に配置されてもよいし、ルームミラー105の裏側など自動車100の本体側に配置されてもよい。バイザー本体2の電気回路とバイザー本体外の日射センサーとを接続する信号線を例えば軸部材90に配置すると、日射センサーをバイザー本体外に配置することができる。
【0055】
図11は、ECU51に接続された第一層状部110の調光領域20を模式的に例示している。図11に示す調光領域20は、バイザー本体2が使用位置PV2にある時の上下方向D11(所定方向D1の例)へ並べられた細長い調光領域A1~A8を含んでいる。以下、バイザー本体2が使用位置PV2にある場合を基準として上下関係を説明する。長尺状の調光領域A1~A8は、長手方向を幅方向D2へ向けて配置され、個別に光透過率を調整可能である。便宜上、下(一方側D1a)から上(他方側D1b)の順に調光領域A1,A2,…,A8と名付ける。尚、調光部10の調光領域の数は、7以下でもよいし、9以上でもよい。また、幅方向D2において調光領域が分割されてもよい。
【0056】
図12に例示するように、ECU51は操作部60への操作に応じて調光部10を制御する。図12は、ECU51で行われる切り替え制御処理を例示している。この処理は、バイザー本体2への通電が開始された時に開始してもよいし、バイザー本体2が使用位置PV2となったことを検出した時に開始してもよい。例えば、バイザー本体2が使用位置PV2となったことを検出するセンサーをシェード装置1に設けると、バイザー本体2が使用位置PV2となったことを検出したことをトリガーとして切り替え制御処理を開始することができる。また、バイザー本体2が非使用位置PV1から使用位置PV2に変わると日射センサー71への入射光が強くなると想定されるので、入射光の強度上昇が該強度上昇の閾値を超えたことを検出したことをトリガーとしても切り替え制御処理を開始することができる。
尚、バイザー本体2が非使用位置PV1となったことを検出した時にはバイザー本体2への通電を停止して調光部10を遮光状態(例えば光透過率0%)にしてもよい。また、バイザー本体2が側方位置PV3となったことを検出した時にもバイザー本体2への通電を停止して調光部10を遮光状態にしてもよい。さらに、バイザー本体2の背面側(第二ベゼル420)に調光部10を遮光状態にするための背面操作部を用意すれば、バイザー本体2が非使用位置PV1又は側方位置PV3にある時に背面操作部を操作することにより調光部10を遮光状態にすることができる。
【0057】
切り替え制御処理が開始されると、ECU51は、操作部60への操作を受け付ける(ステップS102。以下、「ステップ」の記載を省略。)。その後、ECU51は、操作部60への操作に応じた処理を行い(S104)、処理をS102に戻す。S104の操作別処理は、例えば、処理テーブルTA1に従って行うことができる。むろん、処理テーブルTA1の内容は、一例に過ぎない。図12に示す処理テーブルTA1は、運転席側のシェード装置1Aの調光部10を制御するための情報を有している。助手席側のシェード装置1Bの調光部10を制御する場合、処理テーブルTA1には、「遮光モード」と「ミラーモード」の情報があればよく、「透視モード」の情報は不要である。
【0058】
例えば、モード切り替えスイッチ61において「遮光モード」の接触操作を受け付けると、ECU51は、調光部10の状態を制御することにより、第二層状部120による光の鏡面反射を抑制して第二面2bから第一面2aへの光を遮る第一状態をバイザー本体2に実現させる。
モード切り替えスイッチ61において「ミラーモード」の接触操作を受け付けると、ECU51は、調光部10の状態を制御することにより、第一面2aに入射した光を第二層状部120により鏡面反射させる第二状態をバイザー本体2に実現させる。
モード切り替えスイッチ61において「透視モード」の接触操作を受け付けると、ECU51は、調光部10の状態を制御することにより、バイザー本体2に透視性の有る状態を含む第三状態を実現させる。この第三状態は、透視性を有する状態が含まれ、光透過率が透視性の無い状態まで変化し得る状態である。
【0059】
ここで、図13,14,15A~15C、16A~16C等を参照して、各モードにおける調光部10の制御を説明する。図13は、運転席側のシェード装置1Aにおける層状部110,120の状態を模式的に例示している。図14は、助手席側のシェード装置1Bにおける層状部110,120の状態を模式的に例示している。図15A~15Cは、運転席側のシェード装置1Aにおいて液晶層111,121がTN方式である場合の調光部10の機能を模式的に例示している。図16A~16Cは、運転席側のシェード装置1Aにおいて第一液晶層111がVA方式であって第二液晶層121がTN方式である場合の調光部10の機能を模式的に例示している。尚、図15A~15C,16A~16Cには、接着層AD3の図示を省略している。
【0060】
運転席側のシェード装置1Aが「遮光モード」に設定された場合、ECU51は、第一層状部110を遮光状態に制御し第二層状部120を第二透視状態に制御することによりバイザー本体2に「黒」の状態(第二面2bから第一面2aへの光を遮る第一状態)を実現させる。この状態は、図15C,16Aに対応している。
図15Cにおいて、ECU51は、TN方式の第一液晶層111をオンに制御し、TN方式の第二液晶層121をオフに制御している。この場合、第一面2aから入射した光のうち上下に振動する偏光L5は、吸収型偏光層123を通過し、第二液晶層121の液晶分子の90°の捩れにより水平振動の偏光となり、反射型偏光層122を通過する(第二透視状態)。この水平振動の偏光は、吸収型偏光層113、及び、オン状態の第一液晶層111を通過し、吸収型偏光層112に吸収される。一方、第二面2bから入射した光のうち上下に振動する偏光L4は、吸収型偏光層112、及び、オン状態の第一液晶層111を通過し、吸収型偏光層113に吸収される(遮光状態)。
【0061】
図16Aにおいて、ECU51は、VA方式の第一液晶層111をオフに制御し、TN方式の第二液晶層121をオフに制御している。この場合、第一面2aから入射した光のうち上下に振動する偏光L5は、吸収型偏光層123を通過し、第二液晶層121の液晶分子の90°の捩れにより水平振動の偏光となり、反射型偏光層122を通過する(第二透視状態)。この水平振動の偏光は、吸収型偏光層113、及び、オフ状態の第一液晶層111を通過し、吸収型偏光層112に吸収される。一方、第二面2bから入射した光のうち上下に振動する偏光L4は、吸収型偏光層112、及び、オフ状態の第一液晶層111を通過し、吸収型偏光層113に吸収される(遮光状態)。
【0062】
助手席側のシェード装置1Bが「遮光モード」に設定された場合、ECU51は、図14に示すように第一層状部110を遮光状態に制御することによりバイザー本体2に「黒」の状態(第二面2bから第一面2aへの光を遮る第一状態)を実現させる。第一液晶層111が図7Aで示したTN方式である場合、ECU51は、第一液晶層111をオンに制御すればよい。第一液晶層111が図7Bで示したVA方式である場合、ECU51は、第一液晶層111をオフに制御すればよい。
【0063】
運転席側のシェード装置1Aが「ミラーモード」に設定された場合、ECU51は、第一層状部110を遮光状態に制御し第二層状部120を反射状態に制御することによりバイザー本体2に「ミラー」の状態(第一面2aに入射した光を鏡面反射させる第二状態)を実現させる。この状態は、図15B,16Bに対応している。
図15Bにおいて、ECU51は、TN方式の液晶層111,121をオンに制御している。この場合、第一面2aから入射した光のうち上下に振動する偏光L5は、吸収型偏光層123、及び、オン状態の第二液晶層121を通過し、反射型偏光層122により鏡面反射する(反射状態)。この鏡面反射した上下振動の偏光は、オン状態の第二液晶層121、及び、吸収型偏光層123を通過し、第一面2aから出る。一方、第二面2bから入射した光のうち上下に振動する偏光L4は、吸収型偏光層112、及び、オン状態の第一液晶層111を通過し、吸収型偏光層113に吸収される(遮光状態)。
【0064】
図16Bにおいて、ECU51は、VA方式の第一液晶層111をオフに制御し、TN方式の第二液晶層121をオンに制御している。この場合、第一面2aから入射した光のうち上下に振動する偏光L5は、吸収型偏光層123、及び、オン状態の第二液晶層121を通過し、反射型偏光層122により鏡面反射する(反射状態)。この鏡面反射した上下振動の偏光は、オン状態の第二液晶層121、及び、吸収型偏光層123を通過し、第一面2aから出る。一方、第二面2bから入射した光のうち上下に振動する偏光L4は、吸収型偏光層112、及び、オフ状態の第一液晶層111を通過し、吸収型偏光層113に吸収される(遮光状態)。
【0065】
助手席側のシェード装置1Bが「ミラーモード」に設定された場合、ECU51は、図14に示すように第一層状部110を第一透視状態に制御することによりバイザー本体2に「ミラー」の状態(第一面2aに入射した光を鏡面反射させる第二状態)を実現させる。第一液晶層111が図7Aで示したTN方式である場合、ECU51は、第一液晶層111をオフに制御すればよい。第一液晶層111が図7Bで示したVA方式である場合、ECU51は、第一液晶層111をオンに制御すればよい。
【0066】
運転席側のシェード装置1Aが「透視モード」に設定された場合、ECU51は、第一層状部110を第一透視状態に制御し第二層状部120を第二透視状態に制御することによりバイザー本体2に「透視」の状態(透視性の有る状態)を実現させる。この状態は、図15A,16Cに対応している。
図15Aにおいて、ECU51は、TN方式の液晶層111,121をオフに制御している。この場合、第一面2aから入射した光のうち上下に振動する偏光L5は、吸収型偏光層123を通過し、第二液晶層121の液晶分子の90°の捩れにより水平振動の偏光となり、反射型偏光層122を通過する(第二透視状態)。この水平振動の偏光は、吸収型偏光層113を通過し、第一液晶層111の液晶分子の90°の捩れにより上限振動の偏光となり、吸収型偏光層112を通過し(第一透視状態)、第二面2bから出る。一方、第二面2bから入射した光のうち上下に振動する偏光L4は、吸収型偏光層112を通過し、第一液晶層111の液晶分子の90°の捩れにより水平振動の偏光となり、吸収型偏光層113を通過する(第一透視状態)。この水平振動の偏光は、反射型偏光層122を通過し、第二液晶層121の液晶分子の90°の捩れにより上限振動の偏光となり、吸収型偏光層123を通過し(第二透視状態)、第一面2aから出る。
【0067】
図16Cにおいて、ECU51は、VA方式の第一液晶層111をオンに制御し、TN方式の第二液晶層121をオフに制御している。この場合、第一面2aから入射した光のうち上下に振動する偏光L5は、吸収型偏光層123を通過し、第二液晶層121の液晶分子の90°の捩れにより水平振動の偏光となり、反射型偏光層122を通過する(第二透視状態)。この水平振動の偏光は、吸収型偏光層113を通過し、第一液晶層111の液晶分子の90°の捩れにより上限振動の偏光となり、吸収型偏光層112を通過し(第一透視状態)、第二面2bから出る。一方、第二面2bから入射した光のうち上下に振動する偏光L4は、吸収型偏光層112を通過し、第一液晶層111の液晶分子の90°の捩れにより水平振動の偏光となり、吸収型偏光層113を通過する(第一透視状態)。この水平振動の偏光は、反射型偏光層122を通過し、第二液晶層121の液晶分子の90°の捩れにより上限振動の偏光となり、吸収型偏光層123を通過し(第二透視状態)、第一面2aから出る。
【0068】
図15A,16Cで示したように透視性の有る状態は、「透視モード」において常に実現されてもよいが、図12に示すように光透過率が透視性の無い状態まで変化し得る状態でもよい。以下、「透視モード」の詳細を説明する。
【0069】
モード切り替えスイッチ61において「遮光エリア分割」の接触操作を受け付けると、ECU51は、調光部10において、境23から下(一方側D1a)に透視性を有する第一の光透過率T1の第一領域21を出現させ、境23から上(他方側D1b)に第一領域21よりも光透過率が低い第二の光透過率T2の第二領域22を出現させる。すなわち、所定方向D1の一方側D1aに第一領域21が配置され、所定方向D1の他方側D1bに第二領域22が配置される。
モード切り替えスイッチ61において「遮光グラデーション」の接触操作を受け付けると、ECU51は、下から上に向かって徐々に光透過率が下がるグラデーションパターンを調光部10に出現させる。ここで、最も高く設定された光透過率を第一の光透過率T1とし、最も低く設定された光透過率を第二の光透過率T2とすると、境23の光透過率を(T1+T2)/2と定義することができる。従って、調光部10には、境23から下に透視性を有する第一領域21が配置され、境23から上に第一領域21よりも光透過率が低い第二領域22が配置される。
【0070】
モード切り替えスイッチ61において「光透過率自動調整」の接触操作を受け付けると、ECU51は、眩光L11が検出されたか否かに応じて調光領域20の光透過率を調整し、「境位置調整モード」へ移行させる。光透過率を調整する対象の調光領域20は、全部(調光領域A1~A8)の場合もあれば、一部の場合もある。
モード切り替えスイッチ61において「光透過率手動調整」の接触操作を受け付けると、ECU51は、「光透過率調整モード」へ移行させる。
【0071】
「境位置調整モード」において長尺状スイッチ62が接触操作を受け付けると、ECU51は、前記接触操作の位置に応じて決まる境23となるように第一領域21及び第二領域22を調光部10に出現させる。長尺状スイッチ62への操作位置は、境23の位置に合わせられている。従って、長尺状スイッチ62は、第一領域21と第二領域22との境23の位置を直接決める操作を受け付ける。領域21,22は、「遮光エリア分割」操作時の分割領域の場合もあれば、「遮光グラデーション」操作時のグラデーション領域の場合もある。尚、境23の位置を直接決める操作とは、境23に対応する位置への操作を意味し、グラデーション領域の場合のように光透過率を変える操作により間接的に境23が決まる操作を除く。
「光透過率調整モード」において長尺状スイッチ62が表面62aに接触した状態におけるスライド操作を受け付けると、ECU51は、前記スライド操作に応じて調光領域20の光透過率を制御する。光透過率を調整する対象の調光領域20は、全部(調光領域A1~A8)の場合もあれば、一部の場合もある。
【0072】
尚、第一の光透過率T1は、透視性を有する光透過率であればよく、1~100%の範囲で設定することができる。液晶フィルムを用いる場合、最大の光透過率が30~65%程度となることがある。第二の光透過率T2は、第一の光透過率T1よりも低ければよく、例えば、0~5%程度(より好ましくは0~1%程度、さらに好ましくは0%)とすることができる。第二の光透過率T2を0%にすると、第二領域22に好ましい遮光領域が実現される。
【0073】
次に、図12,17~19を参照して、「境位置調整モード」における境位置制御処理の例を説明する。図17は、ECU51で行われる境位置制御処理を例示している。この処理は、長尺状スイッチ62が接触操作を受け付けたことをトリガーとして行われる。図18は、境23の位置を直接決める操作に応じた分割領域(21,22)の変化を模式的に例示している。図19は、境23の位置を直接決める操作に応じたグラデーション領域(21,22)の変化を模式的に例示している。
図17に示す境位置制御処理が開始されると、ECU51は、遮光エリアを分割領域にするかグラデーション領域にするかに応じて処理を分岐させる(S202)。モード切り替えスイッチ61が「遮光エリア分割」の接触操作を受け付けていた場合には処理がS204に進められ、モード切り替えスイッチ61が「遮光グラデーション」の接触操作を受け付けていた場合には処理がS210に進められる。
【0074】
「遮光エリア分割」の操作時、ECU51は、長尺状スイッチ62への接触操作に応じた境23を有する分割領域(21,22)となるように各調光領域A1~A8の光透過率を設定する(S204)。
【0075】
例えば、図18の状態ST11に示すように、境23が調光領域A1,A2の間であり、透視性を有する第一の光透過率T1の第一領域21が調光領域A1だけであり、比較的低い第二の光透過率T2の第二領域22が調光領域A2~A8であったとする。長尺状スイッチ62の表面62aに対して、境23に対応する第一の操作点P1から上方(他方側D1bの方)へ第二の操作点P2までユーザーが指F1を接触させてスライド操作したとする。この場合、ECU51は、接触操作の最後の位置である第二の操作点P2に対応する調光領域A7,A8の間を境23の位置と決定し、この位置を境として、調光領域A1~A7を第一の光透過率T1に制御し、調光領域A8を第二の光透過率T2に制御する。これにより、長尺状スイッチ62への操作により決められた位置を境23として、調光領域A1~A7に透視性を有する第一領域21が出現し、調光領域A8に比較的低い第二の光透過率T2の第二領域22が出現する(状態ST12)。
【0076】
また、状態ST12であった場合に、長尺状スイッチ62の表面62aに対して、境23に対応する第二の操作点P2から下方(一方側D1aの方)へ第一の操作点P1までユーザーが指F1を接触させてスライド操作したとする。この場合、ECU51は、接触操作の最後の位置である第一の操作点P1に対応する調光領域A2,A3の間に境23を移すことにし、調光領域A1~A2を第一の光透過率T1に制御し、調光領域A3~A8を第二の光透過率T2に制御する。これにより、調光領域A1~A2に透視性を有する第一領域21が出現し、調光領域A3~A8に比較的低い第二の光透過率T2の第二領域22が出現する(状態ST13)。
【0077】
分割領域(21,22)の設定後、ECU51は、透視性を有する第一領域21の光透過率を自動的に調整する状態であるか否かに応じて処理を分岐させる(S206)。モード切り替えスイッチ61が「光透過率自動調整」の接触操作を受け付けていた場合、ECU51は、次の操作が行われるまで、防眩制御処理を行う(S208)。モード切り替えスイッチ61が「光透過率手動調整」の接触操作を受け付けていた場合、ECU51は、境位置制御処理を終了させる。境位置制御処理は長尺状スイッチ62が接触操作を受け付けたことをトリガーとして行われるため、S204において長尺状スイッチ62への接触操作に応じた境23を有する分割領域(21,22)となるように各調光領域A1~A8の光透過率を設定する処理が繰り返されることになる。
【0078】
また、「遮光グラデーション」の操作時、ECU51は、長尺状スイッチ62への接触操作に応じた境23を有するグラデーション領域(21,22)となるように各調光領域A1~A8の光透過率を設定する(S210)。
【0079】
例えば、図19の状態ST21に示すように、境23が調光領域A3,A4の間であり、透視性を有する第一領域21が調光領域A1~A3であり、比較的低い光透過率の第二領域22が調光領域A4~A8であったとする。また、調光領域A1が最大の光透過率T1であり、調光領域A6~A8が最小の光透過率T2であり、調光領域A2,A3,A4,A5がそれぞれ光透過率T3,T4,T5,T6であるとする。ただし、
T2<T6<T5<(T1+T2)/2<T4<T3<T1
である。長尺状スイッチ62の表面62aに対して、境23に対応する第一の操作点P1から上方(他方側D1bの方)へ第二の操作点P2までユーザーが指F1を接触させてスライド操作したとする。この場合、ECU51は、接触操作の最後の位置である第二の操作点P2に対応する調光領域A5,A6の間を境23の位置と決定し、調光領域A1~A3を最大の光透過率T1に制御し、調光領域A4,A5,A6,A7をそれぞれ光透過率T3,T4,T5,T6に制御し、調光領域A8を最小の光透過率T2に制御する。これにより、長尺状スイッチ62への操作により決められた位置を境23として、調光領域A1~A5に透視性を有する第一領域21が出現し、調光領域A6~A8に比較的低い第二の光透過率T2の第二領域22が出現する(状態ST22)。
尚、「遮光エリア分割」と「遮光グラデーション」のいずれのモードでも、ユーザーが長尺状スイッチ62の表面62aに対して調光領域A8の上に対応する位置を接触操作すると、調光領域A1~A8の全てを透視性の第一領域21にすることができる。
【0080】
また、状態ST22であった場合に、長尺状スイッチ62の表面62aに対して、境23に対応する第二の操作点P2から下方(一方側D1aの方)へ第一の操作点P1までユーザーが指F1を接触させてスライド操作したとする。この場合、ECU51は、接触操作の最後の位置である第一の操作点P1に対応する調光領域A1,A2の間に境23を移すことにし、調光領域A1,A2,A3をそれぞれ光透過率T4,T5,T6に制御し、調光領域A4~A8を最小の光透過率T2に制御する。これにより、調光領域A1に透視性を有する第一領域21が出現し、調光領域A2~A8に比較的低い第二の光透過率T2の第二領域22が出現する(状態ST23)。
尚、「遮光エリア分割」と「遮光グラデーション」のいずれのモードでも、ユーザーが長尺状スイッチ62の表面62aに対して調光領域A1の下に対応する位置を接触操作すると、調光領域A1~A8の全てを比較的低い光透過率の第二領域22にすることができる。
【0081】
グラデーション領域(21,22)の設定後、ECU51は、透視性を有する第一領域21の光透過率を自動的に調整する状態であるか否かに応じて処理を分岐させる(S212)。モード切り替えスイッチ61が「光透過率自動調整」の接触操作を受け付けていた場合、ECU51は、次の操作が行われるまで、防眩制御処理を行う(S214)。モード切り替えスイッチ61が「光透過率手動調整」の接触操作を受け付けていた場合、ECU51は、境位置制御処理を終了させる。境位置制御処理は長尺状スイッチ62が接触操作を受け付けたことをトリガーとして行われるため、S210において長尺状スイッチ62への接触操作に応じた境23を有するグラデーション領域(21,22)となるように各調光領域A1~A8の光透過率を設定する処理が繰り返されることになる。
【0082】
以上説明したように、ユーザーは、調光部10に分割領域を出現させるかグラデーション領域を出現させるかをモード切り替えスイッチ61の操作により選択することができる。また、シェード装置1を使用している状態で視界を拡げたい場合には、比較的高い光透過率の第一領域21を拡げるように境23の位置を直接決める操作をすれば第一領域21が拡がる。さらに、防眩用の範囲を拡げたい場合には、比較的低い光透過率の第二領域22を拡げるように境23の位置を直接決める操作をすれば第二領域22が拡がる。従って、本シェード装置1は、便利である。
【0083】
上記S208,214の防眩制御処理は、及び、「光透過率自動調整」の接触操作時に行われる光透過率手動制御処理は、調光部10の透視エリアを対象として行われる。透視エリアは、調光領域A1~A8の全てでもよいし、比較的高い光透過率の第一領域21でもよい。
防眩制御処理が開始されると、ECU51は、日射センサー71が眩光L11を検出したか否かを判断し、眩光検出時に透視エリアの光透過率を0~5%程度に下げてもよい。例えば、眩光L11の閾値を設定しておけば、日射センサー71の出力の値が閾値以上である場合にECU51は眩光L11を検出したと判断して透視エリアの光透過率を0~5%程度に下げることができる。また、日射センサー71の出力の値が閾値未満である場合にECU51は眩光L11を検出しなかったと判断して透視エリアの光透過率を維持することができる。
【0084】
光透過率手動制御処理が開始されると、ECU51は、長尺状スイッチ62が受け付けたスライド操作について、操作開始位置から操作終了位置までの距離(ΔLとする。)を計算し、透視エリアの光透過率を距離ΔLに応じて変えてもよい。
また、防眩制御処理や光透過率手動制御処理の対象は、境23よりも上の第二領域22でもよい。
【0085】
以上説明したように、第二層状部120による光L5の鏡面反射を抑制して第二面2bから第一面2aへの光を遮る第一状態(図15C,16A参照)が選択されると、バイザー本体2により光を遮ることができる。また、第一面2aに入射した光L5を第二層状部120により鏡面反射させる第二状態(図15B,16B参照)が選択されると、バイザー本体2の第一面2a側をミラーとして利用することができる。ミラーを覆うスライド蓋は不要であるので、スライド蓋をスライドさせるための構造は不要であり、バイザー本体2の意匠を向上させることができるうえ、バイザー本体2のほぼ全体をミラーにする等、ミラーサイズを大きくすることが可能である。このように、本具体例は、スライド蓋が無くてもミラーの使用状態と非使用状態とを実現させることができる。
さらに、層状部110,120を透視状態にすることができるので、バイザー本体2を通して反対側を見ることができる。従って、本具体例のシェード装置は、便利である。
【0086】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、上述した接着層AD1,AD2,AD3の一部又は全部が無い場合も、本技術に含まれる。また、透明板310,320の一方又は両方が無い場合も、本技術に含まれる。
上述した透視モードでは本体の光透過率が変化したが、透視モードにおいて本体が常に透視性を有する状態となる場合も、本技術に含まれる。
【0087】
図20,21に例示するように、第一面2aにおいて前記第二層状部120に対応する制御領域25を分割してもよい。図20は、分割された制御領域A11~A18を有するシェード装置1の電気回路を模式的に例示している。図21は、ECU51に接続された第二層状部120を模式的に例示している。図21に示す制御領域25は、バイザー本体2が使用位置PV2にある時の幅方向D2へ並べられた制御領域A11~A18を含んでいる。各制御領域A11~A18は、個別に光透過率を調整可能である。便宜上、左(一方側)から右(他方側)の順に制御領域A11,A12,…,A18と名付ける。尚、第一分割領域と第二分割領域は、制御領域A11~A18の中から任意に選ばれる。例えば、制御領域A12を第一分割領域に当てはめ、制御領域A13を第二分割領域に当てはまることが可能である。
むろん、制御領域25を分割する数は、7以下でもよいし、9以上でもよい。また、上下方向D11において制御領域25が分割されてもよい。
【0088】
図20に示す操作部60は、向きと長さが異なるだけで長尺状スイッチ62に類似する長尺状スイッチ63(長尺状操作部の例)を有している。長尺状スイッチ62は、幅方向D2に沿って配置され、表面63aに接触する操作を受け付ける。
【0089】
図22は、分割された制御領域A11~A18の一部をカンバセーションミラーとして使用する例を模式的に示している。カンバセーションミラーは、例えば、後席の様子を確認するために用いられる。図23は、分割された制御領域A11~A18の一部をバニティーミラーとして使用する例を模式的に示している。バニティーミラーは、例えば、シェード装置の使用者の顔を見るために用いられる。ここで、モード切り替えスイッチ61において「カンバセーションミラーモード」と「バニティーミラーモード」の接触操作が可能であるとする。
【0090】
モード切り替えスイッチ61において「カンバセーションミラーモード」の接触操作を受け付けると、ECU51は、図22に例示するように、ルームミラー105側の制御領域A11を含むミラー領域26をミラーモード(第二状態)に制御する。例えば、図22の状態ST31に示すように、ミラー領域26と非ミラー領域27との境28が制御領域A12,A13の間であったとする。長尺状スイッチ63の表面63aに対して、境28に対応する操作点P11から右方(他方側の方)へ操作点P12までユーザーが指F1を接触させてスライド操作したとする。この場合、ECU51は、接触操作の最後の位置である操作点P12に対応する制御領域A14,A15の間を境28の位置と決定し、この位置を境として、制御領域A11~A14を第二状態に制御し、制御領域A15~A18を第一状態又は第三状態に制御する(状態ST32)。むろん、第二状態は、第一面2aに入射した光L5を第二層状部120により鏡面反射させる状態であり、第二面2bに入射した光L4が遮られる状態が好ましい。このようにして、バイザー本体2にカンバセーションミラーが実現される。
【0091】
モード切り替えスイッチ61において「バニティーミラーモード」の接触操作を受け付けると、ECU51は、図23に例示するように、フロントピラー103側の制御領域A18を含むミラー領域26をミラーモード(第二状態)に制御する。例えば、図23の状態ST33に示すように、ミラー領域26と非ミラー領域27との境28が制御領域A16,A17の間であったとする。長尺状スイッチ63の表面63aに対して、境28に対応する操作点P13から左方(一方側の方)へ操作点P14までユーザーが指F1を接触させてスライド操作したとする。この場合、ECU51は、接触操作の最後の位置である操作点P14に対応する制御領域A14,A15の間を境28の位置と決定し、この位置を境として、制御領域A15~A18を第二状態に制御し、制御領域A11~A14を遮光モード(第一状態)又は透視モード(第三状態)に制御する(状態ST34)。むろん、第二状態は、第一面2aに入射した光L5を第二層状部120により鏡面反射させる状態であり、第二面2bに入射した光L4が遮られる状態が好ましい。このようにして、バイザー本体2にバニティーミラーが実現される。
【0092】
図20~23に示すシェード装置1は、各制御領域A11~A18において調光部10の状態を制御することにより少なくとも第一状態と第二状態とを選択的に実現させる。これにより、各制御領域A11~A18の状態が別々に切り替わる。従って、図20~23に示すシェード装置1は、便利である。
【0093】
また、図24に例示するように、夜間と判断される場合は遮光モード(第一状態)以外のモードに切り替えてもよい。夜間は眩光を防ぐ必要性が少ないためである。夜間の光の強さの閾値を設定しておけば、日射センサー71からの出力に基づいて車外の明るさが夜間の明るさであるか否かを判断することができる。ここで、閾値よりも強い光の強さは第一の強さの例であり、閾値よりも弱い光の強さは第二の強さの例である。
【0094】
図24に示す追加制御処理は、図12に示す切り替え制御処理と並列して繰り返し行われる。この処理が開始されると、ECU51は、日射センサー71からの出力に基づいて車外の明るさが夜間の明るさであるか否かを判断する(S302)。車外の光の強さが第一の強さである場合、すなわち、車外の明るさが夜間の明るさでない場合、ECU51は、バイザー本体2に、少なくとも遮光モード(第一状態)と反射モード(第二状態)とを選択的に実現させ、追加制御処理を終了させる。車外の光の強さが第二の強さである場合、すなわち、車外の明るさが夜間の明るさである場合、ECU51は、切り替え制御処理の設定が遮光モードであるか否かを判断する(S304)。切り替え制御処理の設定が遮光モードでない場合、ECU51は、追加制御処理を終了させる。切り替え制御処理の設定が遮光モードである場合、ECU51は、切り替え制御処理の設定をミラーモード(第二状態)に切り替え(S306)、追加制御処理を終了させる。従って、車外の光の強さが第二の強さである場合、バイザー本体2に遮光モード(第一状態)は実現されない。
【0095】
以上より、眩光を防ぐ必要性が少ない夜間に遮光モード(第一状態)とならずミラーモード(第二状態)となるので、本シェード装置は便利である。
尚、S306の処理において、切り替え制御処理の設定を透視モードにしてもよい。
【0096】
さらに、図25に例示するように、第二透明板320の代わりに光吸収板330を第一層状部110(調光部10の一部)としてバイザー本体2に配置してもよい。図25は、助手席側のシェード装置1Bにおけるバイザー本体2の断面の別の例を模式的に示している。このシェード装置1Bの光吸収板330は、第二層状部120よりも第二面2b側に配置され、第一面2aに入射した光L5、及び、第二面2bに入射した光L4を吸収する材料であり、光の反射を抑制して光を遮る材料である。ここで、光吸収板330の概念は、第一層状部110の概念に含まれる。光吸収板330には、カーボンブラックといった着色材で着色した樹脂材料等が含まれる。前記着色材は、黒色の着色材が好ましいものの、光の反射を抑制して光を遮る限り白色等の着色材でもよい。前記樹脂材料は、ポリカーボネート(PC)樹脂といった第一透明板310と同じ樹脂材料が好ましいものの、透明性を有する樹脂に限定されず、不透明な樹脂でもよい。
【0097】
第二層状部120は、第一層状部110よりも第一面2a側に配置され、第二面2bから第一面2aに向かう順に、反射型偏光層122、第二液晶層121、及び、吸収型偏光層123を含んでいる。図25に示すバイザー本体2において、第一透明板310と吸収型偏光層113との間に接着層AD1があり、第一層状部110としての光吸収板330と反射型偏光層122との間に接着層AD3がある。第二層状部120は、第一面2aに配置された第一透明板310と第二面2bに配置された光吸収板330とに挟まれて保持される。図示していないが、支持部材40は、第二層状部120が挟まれた第一透明板310及び光吸収板330を支持する。
むろん、運転席側のシェード装置1Aのバイザー本体2を図25に示すような構造にしてもよい。この場合も、本技術に含まれる。
【0098】
次に、図25,26を参照して、各モードにおける調光部10の制御を説明する。図26は、シェード装置1Bにおける層状部110,120の状態を模式的に例示している。
シェード装置1Bが「遮光モード」に設定された場合、ECU51は、図26に示すように第二層状部120を第二透視状態に制御することによりバイザー本体2に「黒」の状態(第二層状部120による光L5の鏡面反射を抑制して第二面2bから第一面2aへの光L4を遮る第一状態)を実現させる。第二液晶層121がTN方式である場合、ECU51は、第二液晶層121をオフに制御すればよい。
シェード装置1Bが「ミラーモード」に設定された場合、ECU51は、図26に示すように第二層状部120を反射状態に制御することによりバイザー本体2に「ミラー」の状態(第一面2aに入射した光L5を鏡面反射させる第二状態)を実現させる。第二液晶層121がTN方式である場合、ECU51は、第二液晶層121をオンに制御すればよい。尚、運転席側のシェード装置1Aが図6Aで示したような液晶層111,121を含む層状部110,120を有する場合、図25に示す助手席側のシェード装置1Bにおける反射像の見え方(例えば若干の色味)が運転席側のシェード装置1Aにおける反射像の見え方とほぼ同じになる。
【0099】
図25,26に示す例でも、第二層状部120による光L5の鏡面反射を抑制して第二面2bから第一面2aへの光を遮る第一状態が選択されると、バイザー本体2により光を遮ることができる。また、第一面2aに入射した光L5を第二層状部120により鏡面反射させる第二状態が選択されると、バイザー本体2の第一面2a側をミラーとして利用することができる。従って、スライド蓋が無くてもミラーの使用状態と非使用状態とが実現される。
また、図6Aに示す運転席側のシェード装置1Aと図25に示す助手席側のシェード装置1Bとで反射像の見え方とがほぼ同じになるので、車室CA1にシェード装置1を使用する場合の車室CA1の見た目が向上する。
さらに、遮光状態を有する第一層状部のために液晶フィルムや液晶パネルをバイザー本体に配置する必要が無いので、図25,26に示す例は、シェード装置を軽量化することができ、シェード装置をコストダウンすることができる。
【0100】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、スライド蓋が無くてもミラーの使用状態と非使用状態とを実現可能なシェード装置等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
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