(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】埋め込み型心臓補助ポンプ用の外部駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
A61M 60/174 20210101AFI20230130BHJP
A61M 60/414 20210101ALI20230130BHJP
A61M 60/829 20210101ALI20230130BHJP
A61M 60/855 20210101ALI20230130BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20230130BHJP
A61M 60/90 20210101ALI20230130BHJP
【FI】
A61M60/174
A61M60/414
A61M60/829
A61M60/855
A61M60/237
A61M60/90
(21)【出願番号】P 2019555018
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2018058942
(87)【国際公開番号】W WO2018185331
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-30
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515170724
【氏名又は名称】エーツェーペー エントヴィッケルングゲゼルシャフト エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ イェルク
(72)【発明者】
【氏名】スパニエル ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ダシェブスキ マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジム-ポー
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第89/005668(WO,A2)
【文献】米国特許第04625712(US,A)
【文献】特開2005-193005(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174252(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型心臓補助ポンプ(4)用の外部駆動ユニット(7)であって、
前記心臓補助ポンプを駆動するためのモータ(35)を含み、前記モータ(35)は経皮駆動シャフト(3)を介して前記心臓補助ポンプ(4)に接続可能であり、
患者の皮膚に接触するように構成された接触面を備えるヒートスプレッダ(19)によって特徴付けられ、前記接触面は熱伝導方法で前記モータ(35)に接続され、又は接続可能であり、前記モータ(35)によって発生された熱を前記患者の組織に伝達する、外部駆動ユニット(7)。
【請求項2】
前記接触面の表面積が少なくとも25cm
2、好ましくは少なくとも50cm
2であることを特徴とする、請求項1に記載の
外部駆動ユニット(7)
【請求項3】
前記ヒートスプレッダ(19)は少なくとも領域において可撓性であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項4】
前記ヒートスプレッダ(19)は薄片又はパッチであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項5】
前記ヒートスプレッダ(19)は熱伝導層(31)を含み、前記熱伝導層(31)は金属、特に銅、アルミニウム、及び/又は熱分解カーボンを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項6】
前記ヒートスプレッダ(19)は生体適合性コーティング(32)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項7】
前記ヒートスプレッダ(19)は前記皮膚に前記ヒートスプレッダ(19)を取り付けるための接着面を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項8】
前記ヒートスプレッダ(19)は、開口部(20、20’)又は凹部を含み、皮膚からの汗の蒸発を可能にすることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項9】
前記開口部(20、20’)は細長いことを特徴とする、請求項8に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項10】
前記ヒートスプレッダ(19)は汗吸収材料(34)、特に織物を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項11】
前記モータ(35)はステータ(37)と前記
経皮駆動シャフト(3)に接続可能な回転可能に取り付けられたロータ(36)とを含み、流体ギャップ(43)は前記ロータ(36)と前記ステータ(37)との間に形成され、前記流体ギャップ(43)はパージ媒体を前記流体ギャップ(43)の中に注入するためのパージ開口部(42)と流体接続することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項12】
前記流体ギャップ(43)の幅は最大1mmであることを特徴とする、請求項11に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項13】
前記流体ギャップ(43)の幅は少なくとも0.1mmであることを特徴とする、請求項11又は12のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項14】
前記ヒートスプレッダ(19)はヒートパイプを含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の
外部駆動ユニット(7)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の外部駆動ユニットであって、
前記モータ(35)は、
前記経皮駆動シャフト(3)を取り囲むカテーテル(2)が接続されたモータ筐体(17)を備え、
前記モータ筐体(17)がヒートスプレッダ(19)に接続されることを特徴とする外部駆動ユニット(7)。
【請求項16】
請求項1~1
5のいずれか1項に記載の前記
外部駆動ユニット(7)及び前記埋め込み型心臓補助ポンプ(4)を含む、心臓補助装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療技術の分野に関する。本出願は、埋め込み型心臓補助ポンプ用の外部駆動ユニット、及び駆動ユニットと埋め込み型心臓補助ポンプとを備える心臓補助装置に関する。更に本出願は、心臓補助装置の動作の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の心臓機能を支援するための心臓補助装置は、技術水準から知られている。このような装置は、埋め込み型血液ポンプを含んでもよく、それは最小侵襲性手段によって心臓の心室に挿入され得る。更に、外部(又は体外)モータは血液ポンプを駆動するために供給されてもよい。モータは、経皮カテーテルの内側に回転可能に取り付けられた経皮かつ可撓性駆動シャフトを介して血液ポンプに接続されてもよい。装置の埋め込み型構成要素は、患者の鼠径部の穿刺部位を介して挿入され得る。関連する装置は、例えば特許文献1に記載される。
【0003】
このような心臓補助装置の場合、外部モータによって放散される熱に関連して問題が生じることがある。用途によっては、モータは患者の体の近く、特に患者の脚部の近くに配置される場合があり、その間、血液ポンプは動作中である。モータによって発生された熱が効果的に除去されないと、モータは過熱し、モータの誤動作を引き起こす場合がある。加えて、モータの過熱は、モータの熱い筐体が患者の皮膚に接触したとき、特に患者が、例えば麻酔薬のために熱に気付くことができず、適切な反応ができない場合に、患者への健康リスクとなる。人間の皮膚による安全な熱吸収量は、超音波及び磁気共鳴画像プローブによって発生された熱のコンテキストで研究されている。例えば、非特許文献1では、安全な熱吸収レベルを決定する方法が説明される。
【0004】
心臓補助装置のモータが過熱するのを防ぐために、このようなモータの筐体に多数の冷却フィンを配設し、モータから熱を効果的に引き出して周囲空気に放散させることができる。しかし、空気に伝達可能な熱の量は、モータが密閉環境で動作される場合、例えば、患者が休んでいる羽毛布団の下、又は手術中の外科用ドレープの下などでは、十分でない場合がある。更に、冷却フィン付きの筐体の表面は洗浄が困難な場合がある。
【0005】
特許文献2は、ステータアセンブリとステータアセンブリの周りに配置された熱交換器とを含むモータアセンブリを備えたカテーテルポンプを開示する。熱交換器は、熱をステータアセンブリから半径方向外側に向けるように構成され、管腔を有する管状体を含んでもよい。患者から熱を逃がすために、流体が管腔を通過する。ステータアセンブリと外部モータ筐体との間のギャップは、ステータアセンブリからの熱が筐体の側面から伝達されるのを防ぐ自然な断熱材として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,489,190号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0213827号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】「Human Skin Temperature Response to Absorbed Thermal Power」(SPIE Proceedings-The International Society for Optical Engineering 3037:129-134、1997年3月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の技術水準を考慮して、本出願の目的は、埋め込み型心臓補助ポンプ用の改善された外部駆動ユニット及び改善された心臓補助装置を提供することである。更に、本出願は、心臓補助装置の改善された動作の方法に関する。特に、本出願の目的は、心臓補助装置の安全かつ効率的な動作を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、独立請求項1の機能を備えた外部駆動ユニットによって、かつ対応する方法によって達成される。必要に応じた更なる機能及び更なる発展は、従属請求項及び添付図面と併せた詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
埋め込み型心臓補助ポンプ用の提案された外部(体外)駆動ユニットは、心臓補助ポンプを駆動するモータを含み、モータは経皮駆動シャフトを介して心臓補助ポンプに接続可能、又は接続される。駆動ユニットは、患者の皮膚に接触し、及び/又は直接接触し、及び/又は平らに置かれるように構成された接触面を備えるヒートスプレッダを更に含む。接触面は、熱伝導方法でモータに接続され、又は接続可能であり、モータによって発生された熱を患者の組織に伝達する。
【0011】
請求された駆動ユニットは、特許文献2で議論されるように、心臓補助ポンプのモータからの効率的な熱除去が患者から離れて生じなければならないという技術水準の一般的な信念に反する解決策を提供する。代わりに、提案された駆動ユニットの効率的な熱除去は、患者の組織への熱伝達によって達成される。したがって、心臓補助ポンプの動作中、熱がモータからヒートスプレッダの接触面に伝達される。モータと接触面との間の熱接触の熱コンダクタンスは十分に大きくてもよく、モータによって発生された熱をヒートスプレッダを介して患者の組織に伝達できる。
【0012】
接触面は平らであっても、湾曲していてもよい。典型的な実施形態では、接触面は無段である。好ましい実施形態では、接触面は可撓性であり、組織への接触を最大にする。接触面は、モータから組織への熱伝達のために配設される。全接触面は、駆動ユニットの使用中に皮膚と接触してもよい。駆動ユニットは、患者の皮膚に接触するように設計された駆動ユニットのすべての領域の全体によって形成された底面を更に含んでもよい。接触面は通常、底面の一部分を形成する。しかしながら、いくつかの実施形態では、接触面は底面全体を形成する。
【0013】
本出願は更に、上記又は下記の駆動ユニットを含み、埋め込み型心臓補助ポンプを更に含む心臓補助装置に関する。心臓補助装置は、経皮駆動シャフトを更に含んでもよい。心臓補助ポンプは、駆動シャフトを介して駆動ユニットに接続されてもよく、例えば分離不能に接続されてもよい。別の実施形態では、駆動ユニットは、カップリングを介して、例えば磁気クラッチを介して駆動シャフトに接続されてもよい。
【0014】
加えて、本出願は、心臓補助装置の動作の方法に関する。この方法では、駆動ユニットは心臓補助ポンプを駆動し、ヒートスプレッダの接触面は、患者の皮膚に接触し、及び/又は直接接触し、及び/又は平らに置かれ、その結果、モータによって発生された熱は患者の組織に伝達される。ほとんどの実施形態では、ヒートスプレッダの接触面は、患者の皮膚に直接接触する。しかしながら、場合によっては、例えば患者の衣服の部分などの別の材料が皮膚と接触面との間に配置されてもよい。
【0015】
モータは、通常、筐体を含み、ヒートスプレッダは、モータの筐体に取り付けられ得る。典型的な実施形態では、モータの筐体は、駆動ユニットが組み立てられたときに少なくとも部分的に見える外部筐体である。ヒートスプレッダは、モータの筐体の外側に配置されてもよい。ヒートスプレッダは、モータから患者の組織への熱伝導を可能にするように構成される。ほとんどの実施形態では、ヒートスプレッダは、電気エネルギーの供給を必要としない受動構成要素である。更に、ヒートスプレッダは、ほとんどの実施形態において、可動部品及び/又は可動流体に依存しない。ヒートスプレッダは、モータの筐体に剛性又は移動可能に接続され得る。いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダは、筐体に取り外し可能に接続される。例えば、ヒートスプレッダを外した状態でカテーテル検査室において心臓補助ポンプを埋め込むことが便利な場合がある。モータ筐体は、この状況では心臓補助装置のハンドルとして機能してもよい。埋め込み手順の後、モータ筐体をヒートスプレッダに接続してもよく、その結果、モータによって発生された熱が患者の組織に効率的に伝達され得る。
【0016】
駆動ユニットは、駆動ユニットを患者の大腿部に取り付けるように構成された保持手段を含んでもよい。心臓補助装置が使用される場合、典型的な適用シナリオでは、少なくとも駆動ユニットの底面が患者の皮膚と接触するようになる。次いで、更に接触面は皮膚と接触するようになってもよい。その後、提案された駆動ユニットは、モータの動作中、モータから熱を効率的に除去することを可能にする。それにより、モータの過熱が発生するのを防ぐことができる。
【0017】
典型的な実施形態では、冷却フィンは不要である。したがって、提案された駆動ユニットは、比較的コンパクトに設計することができ、これにより、駆動ユニットの取り付けの容易さ及び駆動ユニットの装着の快適さが向上する。更に、モータから除去される熱の量は予測可能であり、大気の温度又は大気の流量に強く依存しない。したがって、駆動ユニットの熱管理は信頼性の高い方法で制御され得る。更に、冷却フィンが不要であるため、筐体は、部分的又は完全に連続的及び/又は無段の表面を有してもよい。したがって、駆動ユニットの洗浄は簡単であり得る。
【0018】
したがって、駆動ユニットは異なる適用シナリオで有益に使用され得る。
【0019】
第1の、カテーテル検査室での心臓補助装置の埋め込み中、ドレープの下の領域は非滅菌とみなされる可能性があるため、モータは滅菌ドレープの上に置かれてもよい。この状況では、モータの周りの空気の対流が可能になり、過熱のリスクが低減される。更に、患者がモータに意図せず接触する可能性は低く、ユーザ(医師)とモータの接触は、通常は手袋を用いて生じる。したがって、モータの許容温度は、以下で説明する第2の適用シナリオよりも高くなる。更に、駆動ユニットの汚染のリスクは、ユーザが汚染された、特に血液で汚れた手袋でモータに触れる可能性があるため、比較的高い。
【0020】
第2の、患者の搬送中又は集中治療室において、ポンプが患者の体内でその位置を保つことが特に重要である。この状況では、モータはその重量のため、穿刺部位に対して確実に固定される必要がある。この目的のために、モータは通常、毛布又は羽毛布団の下に置かれる。したがって、対流によるモータからの熱伝達は効率的ではなく、動作中のモータの過熱のリスクを考慮する必要がある。更に、このシナリオでは、患者がポンプに直接接触する可能性がある。したがって、モータから患者の組織への効率的な熱伝達は、提案された駆動ユニットによって確実にされる場合、非常に有益である。更に、長時間の使用後はモータの洗浄が必要になる可能性があるため、提案された駆動ユニットで得られる表面形状は、例えば、冷却フィンを含む当技術分野で既知のヒートシンクの設計と比較して有益である。
【0021】
ヒートスプレッダの接触面の表面積は、モータの筐体の表面の表面積より大きくてもよい。筐体の表面は、患者に面する筐体の表面であってもよい。ヒートスプレッダは、モータの筐体を越えて延びるようなサイズにし得る。いくつかの実施形態において、接触面の表面積は少なくとも25cm2、好ましくは少なくとも50cm2又は少なくとも100cm2である。通常、表面積は400cm2未満である。十分に大きい表面積は、モータから患者の組織への熱の効率的な伝達を可能にするのに必要である。更に、十分に大きい表面積は、組織の局所的な過熱及び組織への損傷の発生を防ぐため重要である。患者の組織に伝達される熱の量は、通常、接触面の表面積の最大80mW/cm2、好ましくは最大60mW/cm2又は最大40mW/cm2である。更に、表面積は、駆動ユニットの熱管理を設計する際の重要要素を構成し、モータを所望の温度で動作させることができる。ほとんどの実施形態では、駆動ユニットの動作中、接触面の表面積とモータによって放散される熱の比は、少なくとも13cm2/W、好ましくは25cm2/W、特に好ましくは50cm2/Wであり、組織の局所的な過熱を回避する。
【0022】
ヒートスプレッダは、少なくとも領域において可撓性であってもよい。それにより、接触面は、皮膚の起伏のある表面に適合し得る。例えば、接触面は、駆動ユニットが患者の大腿部に取り付けられる場合、大腿部の形状に適合し得る。これにより、駆動ユニットの装着の快適さが改善され得て、ヒートスプレッダと患者の皮膚との間の熱接触が確保され得る。ヒートスプレッダは、ヒートスプレッダのすべての領域で可撓性であり得る。
【0023】
組織に伝達された熱は通常、治療目的には役立たない。モータから患者の組織への熱の効率的な伝達を可能にするために、熱交換器は、熱伝導率が比較的高い材料の少なくとも一部分を含んでもよい。この領域は、接触面上に完全に広がってもよい。この領域の熱伝導率は、少なくとも1W/(m・K)、好ましくは少なくとも10W/(m・K)、少なくとも50W/(m・K)、又は少なくとも100W/(m・K)であってもよい。好ましい実施形態では、ヒートスプレッダの熱伝導率は、ヒートスプレッダの接触面に平行な方向の方が接触面に垂直な方向よりも高く、熱エネルギーが表面全体に広く行き渡ることを確実にし、ホットスポットを回避する。
【0024】
モータから患者の組織への安全かつ効率的な熱伝達のためには、表面積にわたる熱の分散が最も重要であるため、駆動ユニットの重量と必要な材料の量は、ヒートスプレッダを平らな形状であるように設計することにより低減され得る。したがって、ヒートスプレッダは、2cm未満、特に1cm未満又は0.5cm未満の厚さを備えてもよい。例えば、ヒートスプレッダは薄片であってもよい。
【0025】
ヒートスプレッダは熱伝導層を含んでもよい。熱伝導層は、接触面の領域にわたる熱の迅速かつ効率的な伝達を可能にし得て、その結果、皮膚のホットスポットが回避される。ヒートスプレッダは、キャリア層を更に含んでもよい。キャリア層は、熱伝導層よりも低い熱伝導率を有し得る。キャリア層は、エラストマ及び/又はプラスチックを含んでもよい。このように、熱伝導層、特に比較的薄い及び/又は可撓性層は、熱の十分な伝達を可能にすることができ、一方、キャリア層はヒートスプレッダの十分な機械的安定性を提供し得る。熱伝導層は、金属、特に銅、アルミニウム、及び/又は熱分解カーボンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダは複数の熱伝導層を含んでもよい。
【0026】
加えて、ヒートスプレッダは生体適合性コーティングを含んでもよい。例えば、ヒートスプレッダの接触面は生体適合性コーティングを含んでもよい。コーティングは、ヒートスプレッダの底面の一部分を形成してもよく、又はヒートスプレッダの底面を完全に形成してもよい。コーティングは、熱伝導層を覆い、及び/又は包囲し得る。特に、ヒートスプレッダ又はその熱伝導層が、汗に可溶性であり得る有害物質を含む場合、コーティングが施されてもよい。その後、コーティングにより、有害物質が患者の皮膚に到達するのを防止し得る。例えば、生体適合性コーティングは、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、PEEK、又は生体適合性、例えば埋め込み可能な金属を含んでもよい。生体適合性コーティングは、2mm未満、好ましくは0.5mm未満又は0.1mm未満の厚さを有し得る。生体適合性コーティングは、生体適合性キャリアを構築するキャリア材料と同一であってもよい。
【0027】
更に、モータ及び/又はモータ筐体は細長くてもよい。モータは細長くされ得て、モータ及び/又はモータ筐体の伸長方向は、駆動ユニットが患者の大腿部に取り付けられたときの大腿部の軸方向と一致する。保持手段は、通常、モータの筐体に接続される。駆動ユニットの保持手段は、ストラップ及び/又は面ファスナ手段を含んでもよい。保持手段は、接着剤を更に含み得る。大腿部への駆動ユニットの接着取り付けにより、穿刺部位に対する駆動ユニットの特に確実な固定が可能になる。特に、駆動ユニットが患者の大腿部に取り付けられるとき、接着固定は効果的な保持手段を形成することができ、駆動ユニットが大腿部のテーパー部分を膝に向かって滑り落ちるのを防ぐ。例えば、穿刺部位にかかる機械的負荷は、示唆された保持手段により低減され得る。いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダは、ヒートスプレッダを皮膚に取り付けるための接着面を含む。例えば、ヒートスプレッダは接着パッチによって形成されてもよい。この実施形態によると、モータによって発生された熱は、パッチを介して患者の組織に伝達され得る。パッチの熱コンダクタンスは十分に大きくてもよく、熱が組織に効率的に伝達される。接着面は、接触面の一部分及び/又は接触面全体を形成してもよい。接着剤は、例えば接着性創傷閉鎖パッチから既知である生体適合性接着剤であってもよい。
【0028】
更に、駆動ユニットは固定の手段を含み、駆動ユニットが患者の皮膚上の異なる位置へ移動するのを防止し得る。例えば、固定の手段はゴム引き領域を含んでもよい。駆動ユニットの底面は、塊を更に含んでもよい。
【0029】
ヒートスプレッダは、開口部又は凹部、特に貫通穴又は溝を含み得て、皮膚からの汗の蒸発を可能にする。開口部又は凹部は、接触面に隣接して少なくとも部分的に配置されてもよい。典型的な実施形態では、ヒートスプレッダは、少なくとも3つ、少なくとも5つ、又は少なくとも8つの開口部又は凹部を含む。モータの動作中、患者の組織に伝わる熱により、患者の発汗が促進される場合がある。したがって、開口部又は凹部は、駆動ユニットの装着の快適さを著しく改善し得る。大気への蒸気の効率的な移動を達成するために、開口部又は凹部の最小又は均一な直径は通常、少なくとも1mm又は少なくとも5mmである。開口部又は凹部の最大又は均一な直径は、通常最大で20mm又は80mmである。
【0030】
いくつかの実施形態では、開口部は細長い。最大直径と最小直径の比は、少なくとも1.2又は少なくとも2である。このようにして、汗を(蒸気の形態で)体から大気に効率的に移動させることができ、一方でヒートスプレッダでの十分な機械的安定性と効率的な2次元熱伝導が確保される。例えば、開口部は細長くてもよく、その結果、開口部は、駆動ユニットが患者の大腿部に取り付けられたときに、大腿部の円周方向でより大きな直径を示し、かつ大腿部の軸方向でより小さな直径を示す。モータが軸方向に細長い場合、穴の伸長により熱を円周方向に効率的に伝達することができ、一方、蒸気は皮膚から効率的に除去される。
【0031】
いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダは、気化した汗が皮膚から大気に移動することを可能にする細孔を含む。ヒートスプレッダは、細孔を備えた膜を含んでもよい。細孔は、少なくとも0.02μm及び/又は最大0.3μmの直径を有してもよい。
【0032】
ヒートスプレッダは、汗吸収材料、特に織物又は綿を含み得る。汗吸収材料は、ヒートスプレッダの底面の一部分を形成してもよい。汗吸収材料は、患者の皮膚から汗を吸収し、したがって、駆動ユニットの装着の快適さを改善し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダはヒートパイプを含む。ヒートパイプは平らであり得る。例えば、ヒートパイプは熱拡散器であってもよい。通常、ヒートパイプの底面は患者の皮膚に接触する。別の実施形態では、ヒートパイプは、モータとヒートスプレッダの間に配置され、それらに接続されてもよい。ヒートパイプの上面は、モータと熱接触してもよい。ヒートパイプは、モータから組織又は接触面への効率的な熱伝達を可能にし得る。
【0034】
モータは、ステータとロータを含む。ロータは、通常、磁石、特に永久磁石を含む。ステータは、多数の巻線を含んでもよい。ステータは、通常、ロータを取り囲み、磁気ギャップがロータの磁石とステータの巻線との間に形成される。ロータは回転可能に取り付けられてもよい。モータは更に、駆動シャフトに取り付け可能であるか、又は取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、流体ギャップは、ロータとステータとの間に形成される。流体ギャップは、パージ開口部と流体接続され得て、パージ媒体を流体ギャップに注入する。パージ媒体は、溶液、例えばグルコース溶液又は生理食塩水であってもよい。典型的には、心臓補助装置は、駆動シャフトを取り囲むカテーテルを含む。パージ媒体は、流体ギャップの中、カテーテルの管腔の中、例えばカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入されてもよい。モータの流体ギャップは通常、カテーテルの管腔と、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間と流体接続する。したがって、モータはパージされたモータであってもよい。心臓補助装置及び/又は駆動ユニットは、流体コンベヤ、例えばポンプを含んでもよく、それはパージ媒体が流体ギャップ内の遠位方向へ流れるのを可能にする。
【0035】
パージされていないモータを使用するとき、モータをカテーテルと駆動シャフトとの間の空間から分離するためにシールが必要な場合があり、これは、空気が空間の中に入り、最終的に患者に入るのを回避する。パージされたモータの使用では、カテーテルと駆動シャフトとの間の空間からモータを分離する複雑なシールが不要になるという利点がある。したがって、モータはより簡単に製造でき、摩擦損失を低減でき、その結果、モータをより効率的に動作させ得る。しかし、パージ媒体の摩擦損失は、パージされていないモータと比較して、パージされたモータの効率の低下をもたらすことが予想される場合がある。驚くべきことに、下記の特徴のいずれか1つによって、及びこれらの特徴の組み合わせによって、モータの不利な低効率が回避され得る。
【0036】
流体ギャップの幅は、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.2mm、及び/又は最大1mm、好ましくは最大0.5又は最大0.3mmであってもよい。磁気ギャップの最小サイズは、流体ギャップのサイズによって制限されることを考慮する必要がある。典型的には、ロータ及び/又はステータは、流体ギャップを区切り得るスリーブ又はコーティングを含む。流体ギャップの境界面は、平滑及び/又は無段であってもよく、アンダーカット面を避けて、確実な通気プロセスを確保してもよい。これにより、ロータ磁石及び/又はステータ巻線は、パージ媒体の腐食作用から保護され得る。結果として、磁気ギャップは通常、流体ギャップよりも大きい。磁気損失は、流体(及び磁気)ギャップの幅の増加とともに増加すると予想されるが、驚くべきことに、流体ギャップの幅が比較的大きいと、モータの効率が全体的に向上することが見出された。この改善は、パージ媒体の摩擦損失の減少に関連する。
【0037】
上記で説明したように、提案された駆動ユニットにより、様々な適用シナリオでモータの熱管理を正確に制御することが可能である。特に、流体ギャップ内のパージ媒体の温度は正確に制御可能であり得る。典型的な実施形態では、流体ギャップ内のパージ媒体の温度は、定常動作状態で少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃である。更に、流体ギャップ内のパージ媒体の温度は、定常動作状態で最大100℃、好ましくは最大90℃である。それに従ってパージ媒体の温度を制御することにより、パージ媒体の粘度は下げられてもよく、同時にパージ媒体の温度は患者にとって安全に維持され得て、パージ媒体は沸騰するのを防止される。したがって、モータは、パージ媒体の温度を制御することにより、特に効率的な方法で動作させることができ、流体の摩擦損失は低下する。
【0038】
パージ流体の温度を正確に制御するために、流体ギャップと患者の皮膚との間の熱伝達を分析し、調整する必要がある。例えば、流体ギャップからヒートスプレッダへの熱伝達は、モータの筐体の材料によって影響を受ける場合がある。筐体は、PEEK又はABSなどのプラスチック材料が含有されるか、又はそれで作られてもよい。プラスチック材料は、所望の温度範囲でモータを動作可能にするのに特に適している。いくつかの実施形態では、モータの筐体は、駆動ユニットのハンドルとして使用され得るように成形される。
【0039】
以下の態様により、駆動ユニットは、上記又は下記のようなヒートスプレッダを含まなくてもよく、及び/又は駆動ユニットは、患者の皮膚と接触させなくてもよいヒートスプレッダを含む。モータからの熱除去の手段は、例えば、上記又は下記で説明するヒートスプレッダによって、モータの筐体に取り付けられた冷却フィンによって、又は熱伝導方法でモータに接続されたヒートパイプによって形成されてもよい。更なる実施形態は、態様を互いに組み合わせて、及び/又は上記又は下記の説明と組み合わせることで明らかになる。
【0040】
特に、本出願は、とりわけ、更に以下の態様に関する。
【0041】
1.外部駆動ユニットと埋め込み型心臓補助ポンプとを含む心臓補助装置の動作の方法であって、駆動ユニットは心臓補助ポンプを駆動するモータを含み、モータは心臓補助ポンプに経皮駆動シャフトを介して接続され、モータはステータと、駆動シャフトに接続可能な回転可能に取り付けられたロータとを備え、流体ギャップはロータとステータとの間に形成され、流体ギャップはパージ開口部と流体接続して、パージ媒体を流体ギャップに注入し、心臓補助装置は駆動シャフトを取り囲むカテーテルを含み、パージ媒体は流体ギャップの中、及びカテーテルと駆動シャフトの間の空間の中に注入される、方法。
【0042】
2.流体ギャップ内のパージ媒体の温度は定常動作状態で少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃である、態様1の方法。
【0043】
3.流体ギャップ内のパージ媒体の温度は定常動作状態において、最大で100℃、好ましくは最大で90℃である、態様1と2のいずれか1つの方法。
【0044】
4.パージ媒体はグルコース溶液又は生理食塩水である、態様1~3のいずれか1つの方法。
【0045】
5.心臓補助ポンプを駆動するモータを含む埋め込み型心臓補助ポンプ用の外部駆動ユニットであって、モータは経皮駆動シャフトを介して心臓補助ポンプに接続可能又は接続され、駆動ユニットは熱伝導方法でモータに接続されたヒートパイプを含む、外部駆動ユニット。
【0046】
6.駆動ユニットはモータ筐体を含み、ヒートパイプは熱伝導方法で筐体に接続される、態様5の駆動ユニット。
【0047】
7.態様5又は6のいずれか1つの駆動ユニットを含み、更にヒートシンクを備えたコンソール又はコントローラユニットを含む心臓補助システムであって、ヒートパイプの一部分は熱伝導方法でヒートシンクと接続されてモータから熱を除去する、心臓補助システム。
【図面の簡単な説明】
【0048】
例示的な実施形態は、以下の図面と併せて説明される。
【
図1】埋め込まれた心臓補助ポンプと体外駆動ユニットを備えた心臓補助装置を示す概略図である。
【
図5】ヒートスプレッダとモータ筐体を示す概略断面図である。
【
図7】モータ筐体とモータを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
心臓補助装置1の概略図を
図1に示す。心臓補助装置1はカテーテル2を含む。可撓性駆動シャフト3はカテーテル2の内側に誘導される。カテーテル2の遠位端部及び駆動シャフト3の遠位端部は、心臓補助ポンプ4のポンプ頭部と接続される。心臓補助ポンプ4は、筐体5及びプロペラ6を含む。プロペラ6は、駆動シャフト3の遠位端部に接続される。駆動シャフト3の近位端部は、モータを含む体外駆動ユニット7に接続される。駆動ユニット7は、プロペラの回転運動を駆動して患者の血液を動かすように構成される。
【0050】
心臓補助ポンプ4とカテーテル2及び駆動シャフト3は、患者の大腿動脈へ、患者の鼠径部に位置する穿刺部位8を介して挿入される。図示の配置は、心臓の左心室機能を支援するための心臓補助装置1の使用を示し、心臓補助ポンプ4は大動脈弁11の領域で患者の左心室10の内側に部分的に配置される。心臓補助装置1が動作すると、駆動シャフト3は駆動ユニット7のモータによって駆動され、心臓補助装置1は血液を左心室10から大動脈12の中へ、すなわち心臓補助装置1の遠位端部13から近位端部14に向かう方向に運ぶ。別の実施形態では、心臓補助装置1は、心臓補助装置1の近位端部14から遠位端部13に向かう方向に血液を運ぶように構成されてもよい。このような配置は、心臓の右心室機能を支援するのに特に適する。
【0051】
駆動ユニット7は、
図2に概略的に示されるように、患者の大腿部15に取り付けられ得る。
図2及び後続の図における繰り返しの特徴は、同じ参照番号を使用して示される。図示された実施形態では、駆動ユニット7は、ストラップ16、例えば弾性ストラップによって穿刺部位8に対して所定の位置に保持される。ほとんどの実施形態では、ストラップの長さは45~60cmである。しかし、以下で説明するように、別の固定の手段も可能である。モータは、例えば射出成形されたABS部品によって形成されたモータ筐体17の内側に配置される。モータ筐体17の表面は、ほとんどの実施形態において平滑で無段であるため、筐体17は洗浄が容易であり、心臓補助装置1のハンドルとして機能し得る。カテーテル2は、モータ筐体17の近位端部に液密方法で剛性接続される。更に、供給ライン18は図に概略的に示される。供給ライン18は、モータ筐体17の近位端部に接続され、モータ用の電力供給ライン及びパージ媒体用の流体供給ラインを含む。別の実施形態では、流体供給ラインと電力供給ラインとは各々、複数の別個の供給ラインのうちの1つの内側に誘導される。
【0052】
駆動ユニット7は、ヒートスプレッダ19を更に含む。ヒートスプレッダ19は、モータ筐体17に剛性接続され、動作中にモータによって発生された熱がヒートスプレッダ19に伝達される。ヒートスプレッダ19は、薄く、4mm以下の厚さである。例えば、ヒートスプレッダ19は、以下で説明するパッチによって、又は平らな2次元ヒートパイプによって形成されてもよい。ヒートスプレッダ19の底面は、接触面で患者の皮膚に対して平らに置かれ、皮膚に直接接触し、その結果、熱はヒートスプレッダ19から患者の組織に伝達され得る。モータの動作中、筐体17の外面の温度は、ヒートスプレッダ19を大腿部15に固定する前に43℃を超える場合がある。しかし、ヒートスプレッダ19の熱伝導率は、熱が十分な領域に均等に分散されて大腿部15に伝達されることを確実にし、その結果、筐体17の表面の温度は、組織を損傷する臨界温度を定義する42℃の温度下に急速に低下する。
【0053】
ヒートスプレッダ19は、100W/(m・K)を超える熱伝導率を有する領域を含んで、熱を横方向に広げ、その結果、熱は接触面全体に効率的に伝達される。接触面の表面積は、いくつかの実施形態では、200cm2程度に大きくてもよい。ヒートスプレッダ19は、開口部(貫通穴)を更に含み、そのうちの2つは参照番号20と20’を用いて示される。開口部20、20’は、気化した汗を大気に移すことを可能にし、したがって、装着の快適さを向上させる。
【0054】
駆動ユニット7の斜視図を
図3に示す。図示の実施形態では、ヒートスプレッダ19は、モータの筐体17を受け入れる凹部22を有する。ストラップ16は、ループ面23を備える面ファスナ機構を含み、ストラップの端部分に配置され、図には示されていない対応するフック面に係合する。心臓補助装置1が使用中の場合、モータ筐体17は凹部22に受け入れられ、ストラップ16は大腿部の周りに円周方向に巻き付けられ、その結果、モータ筐体17はストラップ16の一部分によって覆われ、駆動ユニット7は所定の位置に保持される。
【0055】
ヒートスプレッダ19の開口部20、20’は、
図4に概略的に示されるように細長くてもよい。この場合、開口部20、20’は、大腿部15に対して円周方向24により大きな直径を示し、ヒートスプレッダ19のこの方向24への効率的な熱移動を可能にする。 モータ筐体17は、大腿部15の軸方向25に対応する垂直方向25に細長くなる。
【0056】
ヒートスプレッダ19は、大腿部15の形状に適合するように湾曲及び/又は可撓性であってもよい。例えば、ヒートスプレッダ19は、薄片又はパッチを含み得る。
図5は、第1パッチ26及び第2パッチ27によって形成されたヒートスプレッダ19とモータ筐体17の例示的な断面を示す。パッチ26、27は、各々屈曲可能であり、各々が大腿部15に面する接着底面28、29を含む。パッチ26、27は、示された実施形態においてモータ筐体17を包囲し、モータから熱を効率的に引き出す。図示の実施形態では、ヒートスプレッダ19の接着面は保持手段を形成し、穿刺部位8に対して駆動ユニット7を所定の位置に保持する。したがって、上記のストラップ16などの別の保持手段は、必要でない場合もあるが、いくつかの実施形態では依然として供給され得る。
【0057】
ヒートスプレッダ19の例示的な断面を
図6に示す。ヒートスプレッダ19は多層構造であってもよい。ヒートスプレッダ19は、ヒートスプレッダ19の上層を形成するキャリア層30を含む。キャリア層30は、エラストマ及び/又はプラスチック材料によって形成されてもよい。接触面の領域を横切る、すなわち図の水平方向における効率的な熱伝達のために、ヒートスプレッダ19は更に、薄い熱伝導層31を含み、それは熱伝導率の高い材料、例えば、銅、アルミニウム又は熱分解カーボンの薄層で形成され得る。熱伝導層31は、不活性及び生体適合性コーティング32によって両側で囲まれ、生体適合性コーティング32はパリレン、ポリウレタン、シリコーン、PEEK、又は生体適合性のある、例えば埋め込み可能な金属で作られる。生体適合性コーティング32は、ヒートスプレッダ19の開口部20の内壁の熱伝導層31を更に覆う。ヒートスプレッダの無段底面は、例えば接着剤を含有する接着層33によって形成され、ヒートスプレッダ19を患者の皮膚に貼り付ける。
【0058】
更に、ヒートスプレッダ19の、又は駆動ユニット7の汗吸収部分34を
図6に概略的に示す。汗吸収部分は、例えば、織物及び/又は綿で作られてもよい。加えて、ヒートスプレッダ19又は駆動ユニット7は、ゴム塊49、49’を備えたゴム引き領域48を含み、ヒートスプレッダ19が穿刺部位8に対してスライドするのを防止する。汗吸収部分34及びゴム引き領域48は、ヒートスプレッダ19の底面全体に均等に分布されてもよい。
【0059】
モータ35の概略図を
図7に示す。モータ35はモータ筐体17の内側に配置され、永久磁石を備えるロータ36と巻線38を備えるステータ37を含む。ロータ36は、第1軸受39と第2軸受40を用いて回転可能に取り付けられ、ステータ37の巻線を流れる電流により回転され得る。ロータ36は駆動シャフト3と剛性接続され、プロペラ6を駆動する。
【0060】
カテーテル2は、モータ筐体17に剛性接続され、空間41がカテーテル2と駆動シャフト3との間に形成される。この空間41は、ロータ36とステータ37との間に形成される流体ギャップ43と、パージ開口部42と、供給ライン18と流体接続にある。半径方向における流体ギャップ43の幅は、0.2~0.3mmの間であり得る。心臓補助装置1が動作すると、パージ媒体、例えばグルコース溶液が供給ライン18を介して供給され、流体ギャップ43を通り、カテーテル2と駆動シャフト3との間の空間41を通って(そして最終的には 心臓補助装置1の近位端部で患者内に)流れる。
【0061】
モータ35の動作中、例えば2Wの電力散逸により、モータが加熱される場合がある。熱は、参照番号44付きの矢印によって概略的に示されるように、モータ35から除去され、流体ギャップ43の内側のグルコース溶液の温度を定常動作状態において75℃で一定に保持する。熱を除去するために、熱は、例えば上述のようにヒートスプレッダ19を用いて患者の組織45に伝達されてもよく、例えば筐体17の冷却ファンを用いて大気46に伝達されてもよく、又はコンソールもしくはコントローラユニットのヒートシンク47に、例えば、筐体17に接続された細長いヒートパイプを介して伝達されてもよい。これらの熱除去機構の任意の組み合わせが可能である。
【0062】
更に、インダクタ50は、モータ35がフルブロック転流で駆動されない場合、渦電流損失を低減するために供給され得る。これらのインダクタ50は、更にモータ筐体17の内側に配置し得るが、好ましい実施形態では、インダクタ50は、モータ35のコントローラユニットに接続されるモータケーブル18の端部に(又はコントローラユニット自体に)配置され、モータ35及び患者の脚部への更なる重量と熱源を回避する。
【0063】
特に、本出願は、とりわけ、更に以下の態様にも関する。
【0064】
1.埋め込み型心臓補助ポンプ(4)用の外部駆動ユニット(7)であって、
心臓補助ポンプを駆動するためのモータ(35)を含み、モータ(35)は経皮駆動シャフト(3)を介して心臓補助ポンプに接続可能であり、
患者の皮膚に接触するように構成された接触面を備えるヒートスプレッダ(19)によって特徴付けられ、接触面は熱伝導方法でモータ(35)に接続され、又は接続可能であり、モータ(35)によって発生された熱を患者の組織に伝達する、外部駆動ユニット。
【0065】
2.接触面の表面積が少なくとも25cm2、好ましくは少なくとも50cm2であることを特徴とする、態様1の駆動ユニット(7)。
【0066】
3.ヒートスプレッダ(19)は少なくとも領域において可撓性であることを特徴とする、態様1又は2のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0067】
4.ヒートスプレッダ(19)は薄片又はパッチであることを特徴とする、態様1~3のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0068】
5.ヒートスプレッダ(19)は熱伝導層(31)を含み、熱伝導層(31)は金属、特に銅、アルミニウム、及び/又は熱分解カーボンを含むことを特徴とする、態様1~4のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0069】
6.ヒートスプレッダ(19)は生体適合性コーティング(32)を含むことを特徴とする、態様1~5のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0070】
7.ヒートスプレッダ(19)は皮膚にヒートスプレッダ(19)を取り付けるための接着面を含むことを特徴とする、態様1~6のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0071】
8.ヒートスプレッダ(19)は、開口部(20、20’)又は凹部を含み、皮膚からの汗の蒸発を可能にすることを特徴とする、態様1~7のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0072】
9.開口部(20、20’)は細長いことを特徴とする、態様8の駆動ユニット(7)。
【0073】
10.ヒートスプレッダ(19)は汗吸収材料(34)、特に織物を含むことを特徴とする、態様1~9のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0074】
11.モータ(35)はステータ(37)と駆動シャフト(3)に接続可能な回転可能に取り付けられたロータ(36)とを含み、流体ギャップ(43)はロータ(36)とステータ(37)との間に形成され、流体ギャップ(43)はパージ媒体を流体ギャップ(43)の中に注入するためのパージ開口部(42)と流体接続することを特徴とする、態様1~10のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0075】
12.流体ギャップ(43)の幅は最大1mmであることを特徴とする、態様11の駆動ユニット(7)。
【0076】
13.流体ギャップ(43)の幅は少なくとも0.1mmであることを特徴とする、態様11又は12のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0077】
14.ヒートスプレッダ(19)はヒートパイプを含むことを特徴とする、態様1~13のいずれか1つの駆動ユニット(7)。
【0078】
15.態様1~14のいずれか1つの駆動ユニット(7)及び埋め込み型心臓補助ポンプ(4)を含む、心臓補助装置(1)。
【0079】
16.態様15の心臓補助装置の動作の方法であって、心臓補助ポンプ(4)は駆動シャフト(3)を介して駆動ユニット(7)に接続され、駆動ユニット(7)は心臓補助ポンプ(4)を駆動し、ヒートスプレッダ(19)の接触面は患者の皮膚に接触し、モータ(35)によって発生された熱が患者の組織に伝達される、方法。
【0080】
17.患者の組織に伝達される熱の量は接触面の表面積の最大80mW/cm2である、態様16の方法。
【0081】
18.駆動ユニット(7)は態様11による駆動ユニット(7)であり、心臓補助装置(1)は駆動シャフト(3)を取り囲むカテーテル(2)を含み、パージ媒体は流体ギャップ(43)の中、及びカテーテル(2)の管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフト(3)との間の空間(41)の中に注入される、態様16又は17のいずれか1つの方法。
【0082】
19.流体ギャップ(43)内のパージ媒体の温度は定常動作状態で少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃である、態様18の方法。
【0083】
20.流体ギャップ(43)内のパージ媒体の温度は定常動作状態において、最大で100℃、好ましくは最大で90℃である、態様18又は19のいずれか1つの方法。