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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】多孔質耐火材、その使用及び製造
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20230130BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20230130BHJP
   B22D 41/02 20060101ALI20230130BHJP
   B22D 43/00 20060101ALI20230130BHJP
   C22B 9/02 20060101ALI20230130BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
C04B35/66
B22D11/10 310J
B22D41/02 A
B22D43/00 E
C22B9/02
F27D1/00 N
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019555917
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018026001
(87)【国際公開番号】W WO2018194831
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/486,155
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518162876
【氏名又は名称】ベスビウス ユーエスエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(72)【発明者】
【氏名】デュアン エル.デバスティアーニ
(72)【発明者】
【氏名】シエンシン チョウ
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-065365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0022567(US,A1)
【文献】特開平10-251739(JP,A)
【文献】特開2011-104629(JP,A)
【文献】特表2018-517562(JP,A)
【文献】特表平08-501500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0060277(US,A1)
【文献】特開昭62-168523(JP,A)
【文献】特開平11-057354(JP,A)
【文献】特開2005-047757(JP,A)
【文献】特表2005-529052(JP,A)
【文献】特開昭59-004409(JP,A)
【文献】特開2002-029853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84,38/00-38/10
B22D 11/10,41/02,43/02
C22B 9/02
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャベツの内部状に似た内部構造を有する多孔質球晶状物であって、最小粒子サイズ及び最大粒子サイズを有する耐火骨材部であって、前記最大粒子サイズと最小粒子サイズとの比が10/1以下である耐火骨材部と、
カルシウムアルミネートセメント、アルミニウムホスフェート、水和性アルミナ形態のアルミナ、コロイダルシリカ形態のシリカ及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる第一鉄対応型耐火バインダーを含むバインダー相と、を備え、
前記耐火骨材部が、0.1mm超の粒子径を有する材料を100重量%含み、
前記耐火骨材部及び前記バインダー相の合計重量に占める前記耐火骨材部の重量割合が85重量%以上98重量%以下であり、
気孔が開いている、
多孔質耐火材。
【請求項2】
前記最大粒子サイズと最小粒子サイズとの比が5/1以下である、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項3】
前記最大粒子サイズと最小粒子サイズとの比が2/1以下である、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項4】
前記耐火骨材部及び前記バインダー相の合計重量に占める前記耐火骨材部の重量割合が90重量%以上98重量%以下である、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項5】
前記耐火バインダーがカルシウムアルミネートセメントを含むとともに、前記バインダー相がさらに(a)反応性アルミナ及び(b)シリカを含む、
請求項4に記載の多孔質耐火材。
【請求項6】
前記耐火骨材部の100重量%が、少なくとも5.0mm径の粒子サイズを有する、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項7】
前記耐火骨材部が、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、酸化カルシウム、シリカ、スピネル、カルシウムアルミネート類、ムライト、オリビン、フォルステライト、ジルコン、カルシウムシリケート、AZS及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料を含む、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項8】
前記バインダー相が、反応性アルミナ、か焼アルミナ、板状アルミナ、溶融アルミナ、カーボン、ジルコニア、マグネシア、フュームドシリカ、ボーキサイト、酸化クロム及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料を含む、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項9】
耐火骨材の最小粒子のサイズと前記バインダー相における最大粒子のサイズとの比が、少なくとも10:1である、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項10】
耐火骨材の最小粒子のサイズと前記バインダー相における最大粒子のサイズとの比が、少なくとも2:1である、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項11】
前記バインダー相の100重量%が100ミクロン以下のサイズを有する粒子からなる、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項12】
開気孔率が20体積%以上60体積%以下である、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項13】
気孔が屈曲している、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【請求項14】
請求項1に係る第1の多孔質耐火材を含むとともに、最小骨材粒子サイズを有する、第1の層と、
請求項1に係る第2の多孔質耐火材を含むとともに、最大骨材粒子サイズを有する、第2の層と、を備え、
前記第1の層の前記最小骨材粒子サイズが、前記第2の層の前記最大骨材粒子サイズよりも大きい、
多孔質耐火材構造。
【請求項15】
内側及び外側を有する冶金容器であって、前記冶金容器の前記内側に、請求項1に係る多孔質耐火材を有するライニング構造が設けられている、
冶金容器。
【請求項16】
溶融金属の酸化を最小化するためのプロセスであって、
a)請求項1に係る多孔質耐火材を含むライニング構造を備える容器へと、溶融金属を移送すること、
b)前記容器外に前記溶融金属を移送すること、
を含むプロセス。
【請求項17】
前記耐火骨材部が、3.0mm以上6.0mm以下の粒子径を有する材料を100重量%含む、
請求項1に記載の多孔質耐火材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、冶金プロセス及びタンディッシュ等の容器に用いられる耐火材、その使用、並びに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属成形プロセスにおいては、一の冶金容器から、他の冶金容器や鋳型やその他の器具へと溶融金属が移送される。例えば、炉からタンディッシュへと溶融金属を移送するレードルによって、大容量のタンディッシュに溶融金属が定期的に供給される。これにより、タンディッシュから器具や鋳型への金属の連続鋳造が可能となる。冶金容器の底部に設けられたノズルシステムを介して重力によって冶金容器外へと溶融金属を流出させる。通常、冶金容器は、当該ノズルシステムを介した溶融金属の流れを制御(開閉)するためのゲートシステムを備えている。高温の溶融金属に耐えるべく、容器の壁には耐火物が並べられる。
【0003】
溶融金属、特に溶鋼は、酸化反応性が高く、それゆえ、あらゆる酸化源から保護されなければならない。酸素を除去するため、しばしば、少量のアルミニウムが添加されるが、実際には、溶融物から製造される最終部分において欠陥を生じさせるような、溶融物に含まれる酸化物介在物の生成を抑制するには十分でないものと考えられる。報告されたところによれば、鋳造される10kgの鋼には最大10憶もの非金属介在物が含まれる場合があり、そのほとんどが酸化物である。種々の濾過プロセスや浮選プロセスによって介在物を除去する試みがなされてきた。
【0004】
介在物は溶融金属の反応の結果である場合があり、当該介在物は内因性介在物として知られている。外因性介在物は溶融金属由来のものではなく、例えば、サンド、スラグ及びノズルのデブリがある。一般的に、外因性介在物は内因性介在物よりも顕著である。
【0005】
内因性介在物には、主に、鉄酸化物(FeO)、アルミニウム酸化物(Al)、その他、MnO、Cr、SiO、TiOといった、溶融物中に存在するか又は溶融物と接触する他の化合物の酸化物が含まれる。その他の介在物としては、硫化物や、わずかではあるが窒化物やリン化物が含まれる場合がある。溶融金属は極めて高温(低炭素鋼で1600℃程度)であるため、鉄原子と酸素との反応性が極めて高く不可避であることが明らかである。
【0006】
現在まで、鋼の鋳造において介在物の存在を低減するための主な対策は、介在物が形成された冶金容器中に当該介在物を保持することである。介在物が濃縮された溶融金属の一部を選択的に保持するために、耐火物からなる様々な器具が設計されてきた。これらの器具は、種々の物理的な構成によるものであってもよく、その目的のために開口、流路、チャネル又は孔が設けられるものであってもよい。
【0007】
冶金容器や冶金プロセスにおける特殊な目的のために、多くの多孔質セラミック材料が作り出されてきた。
【0008】
米国特許第1,027,004号明細書(1912年)には、SiC粉末を微粉砕してスラリー又はペーストを作製し、当該スラリー又はペーストを成形して非酸化雰囲気下で焼成することによって、SiC(カーボランダム)の多孔質セラミックスを製造することが記載されている。当該製造物はマイクロポアを有する多孔質セラミックであり、ダイアフラムの製造に用いられる。当該マイクロポアのほとんどが閉じており濾過効率は低い。
【0009】
米国特許第2,021,520号明細書(1935年)には、変形又は砕け易い塊を作製し、これを押圧又はラミングしたうえで1600℃超の温度で焼成することによって、アルミナセラミックスといった多孔質セラミックスを製造することが記載されている。これら多孔質セラミックスの用途としては、アルカリ溶液用のグーチ坩堝に適用される湿式フィルター、浄化プラントにおいて空気を流通可能とする多孔質板、界面燃焼のための板等が挙げられる。
【0010】
米国特許第2,463,979号明細書(1949年)には、40%から80%の未粉砕アルミナ(200メッシュ)と60%から20%の粉砕アルミナ(325メッシュ)とを混合して泥状のペーストを得て、当該ペーストを150℃で乾燥させたうえで、乾燥物を1300℃から1850℃の温度範囲で焼成することによって、20%から50%の気孔率を有するAl多孔質セラミックスを作製することが教示されている。
【0011】
米国特許第5,177,035号明細書(1993年)には、溶融液の濾過に用いられるAl系セラミックフィルターが開示されている。当該フィルターを構成する材料は、細孔形成材として65体積%~75体積%の+4~6メッシュのCaCl(又は尿素又は蝋)顆粒を含んでおり、当該細孔形成材を浸出又は溶出させることで約500ミクロンから約1300ミクロンの細孔が形成される。バインダーとしては樹脂が用いられる。
【0012】
米国特許第5,861,057号明細書(1999年)には、10体積%~35体積%の気孔率を有する、水管理用の排水性コンクリートが記載されている。当該コンクリートは、バインダーとして10重量%~35重量%の水硬セメントと、2mm~32mm(好ましくは5mm~8mm)の大きさを有する65重量%~85重量%の骨材と、水硬セメントの5重量%~40重量%のバインダー添加物と、からなる。
【0013】
英国特許第2,410,282号明細書(2005年)は、多孔質コンクリート層を含む水管理システムを対象とする。当該多孔質コンクリートは、セメントを15重量%~21重量%と、細砂を5重量%と、砂利、石灰石、グラナイト等の単一サイズ10mmの粗骨材を65重量%~75重量%と、を含む。当該コンクリート混合物は、多孔質コンクリートにおけるセメント重量の5%~15%の程度までマイクロシリカ添加物をも含む。当該多孔質コンクリートは、約15%の最小空隙量(気孔率)を有する。
【0014】
米国特許出願公開第2015/0145186号明細書(2015年)及び国際公開第2015/191426号(2015年)は、網状の高分子フォーム(通常、ポリウレタンフォーム)にスラリーを塗布して乾燥のうえ、フォームを燃やして多孔質構造とすることにより得られる発泡セラミックフィルターに関する。当該スラリーは、ムライト、MgO又はその他の耐火材料であってもよい。
【0015】
米国特許第6,508,852号明細書(2003年)には、プラッギング法により形成された多孔質ハニカム微粒子フィルターが示されている。当該フィルターはディーゼルエンジンや自動車エンジンに用いられる。細孔のチャネルは真っ直ぐであり、屈曲していない。
【0016】
米国特許第3,524,548号明細書(1970年)は、溶融アルミニウムの濾過用の剛性フィルターであって、バインダーとしてのフリットとともに溶融アルミナ又は板状アルミナの骨材を含む剛性フィルターを対象とする。当該骨材は平均粒子サイズが0.165mmから約2.8mmであり、細孔の平均孔径は0.25mmから0.92mmであり、且つ、気孔率が低い。そのため、当該フィルターは濾過効率が低い。15%~80%の酸化ホウ素のような低融点物質を含むフリット粉末が、骨材を結合するためにバインダー中に使用される。ガラス接着を可能とするため、フリットは所定の温度で焼成されなければならず、当該技術によって作製されるアイテムは、未焼結段階での接着強度が低いものと考えられる。当該特許においては、閉耐火骨材部(以下、耐火骨材部ともいう。)を用いることについて教示がない。
【0017】
米国特許第4,528,099号明細書(1985年)は、溶融材料の濾過に使用される、大きな細孔径と小さな細孔径とを有する2つのフィルターからなる構造を対象とする。グレーズ混合物とともに混合されるバインダーとしての低融点フリットとともに、コランダム中空球が骨材として用いられる。US4,528,099は、最大粒子サイズと最小粒子サイズとの比が10/1以下である閉耐火骨材部について教示がない。
【0018】
米国特許第5,998,322号明細書(1999年)は、低融点無機バインダーとしてBを5重量%から12重量%含む、溶融金属用のフィルター材を対象とする。閉耐火骨材部の使用については教示がない。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、所定の気孔率を有する耐火物に関し、冶金容器中の内因性介在物の生成を抑制するための種々の構造において、また、溶融金属のボリュームの外側で外因性介在物を分離・保持するための種々の構造において、所定の気孔率を有する耐火物を使用する方法に関する。本発明に係る材料は、冶金プロセスにおける熱的、物理的及び化学的環境に耐え得る骨材とバインダーとを含む耐火組成物である。本発明に係る材料は、カルシウムアルミネートセメントのようなセメント、又は、配合物にグリーン強度を付与するAlのようなバインダーを活用する。本発明に係る材料は、未焼結又は焼成前段階で用いることができる。本発明に係る材料においては、気孔が開いており、連続的で屈曲しており、溶融金属を流入可能及び保持可能に設計されている。
【0020】
本発明に係る材料は、濾過用であってもよいし、浸透可能なものであってもよいし、絶縁用であってもよいし、ガス拡散部材としての機能を有するものであってもよいし、高温ガスプロセスや溶融金属プロセスにおけるその他の機能のためのものであってもよい。
【0021】
ある構成上の特徴が、当該特徴の単独又は特定の組み合わせにおいて、溶融金属の封じ込め、溶融金属の指向性、溶融金属の処理及び溶融金属の保持に用いられ得るとともに設計された構造構成を有する、多孔質耐火材を生み出すことが分かった。当該特徴には以下のものが含まれる。
【0022】
1)閉耐火骨材部又は耐火粗粒部を、乾燥組成において、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は、95重量%以上とする。
【0023】
2)閉耐火骨材部は粒子サイズの観点から閉じられた部分であり、当該閉耐火骨材部における最大粒子が当該閉耐火骨材部における最小粒子と比べて1.5倍以下のメッシュ値を有しているか、当該閉耐火骨材部における最大粒子が当該閉耐火骨材部における最小粒子と比べて2.0倍以下のメッシュ値を有しているか、当該閉耐火骨材部における最大粒子が当該閉耐火骨材部における最小粒子と比べて2.5倍以下のメッシュ値を有しているか、当該閉耐火骨材部における最大粒子が当該閉耐火骨材部における最小粒子と比べて3.0倍以下のメッシュ値を有しているか、当該閉耐火骨材部における最大粒子が当該閉耐火骨材部における最小粒子と比べて4.0倍以下のメッシュ値を有しているか、当該閉耐火骨材部における最大粒子が当該閉耐火骨材部における最小粒子と比べて5.0倍以下のメッシュ値を有しているか、当該閉耐火骨材部における最大粒子が当該閉耐火骨材部における最小粒子と比べて8.0倍以下のメッシュ値を有しているか、当該閉耐火骨材部における最大粒子が当該閉耐火骨材部における最小粒子と比べて10.0倍以下のメッシュ値を有している。
【0024】
3)閉耐火骨材部が、100ミクロン以上の径を有する粒子により構成される部分を少なくとも80重量%含むか、100ミクロン以上の径を有する粒子により構成される部分を少なくとも85重量%含むか、100ミクロン以上の径を有する粒子により構成される部分を少なくとも90重量%含むか、100ミクロン以上の径を有する粒子により構成される部分を少なくとも95重量%含むか、100ミクロン以上の径を有する粒子により構成される部分を100重量%含む。
【0025】
4)閉耐火骨材部における最小粒子が、組成物の残りの部分における最大粒子と比較して、メッシュサイズ又は粒子径について、2又は5又は10倍大きい。或いは、当該組成物は、粒度分布において、重複しないギャップ(unpopulated gap)を有していてもよく、当該ギャップを制限する最小粒子径又は最小メッシュサイズと、当該ギャップを制限する最大粒子径又は最大メッシュサイズとの間が2又は5又は10倍となるようなものであってもよく、ここで当該ギャップを制限する最小粒子径又は最小メッシュサイズが45ミクロン以下の値を有してもよい。溶媒を除いて、当該重複しないギャップの範囲内にある配合物は5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は、0.5重量%以下とする。
【0026】
5)閉耐火骨材部は、全体として、粒子径メッシュ値が12mm以下6mm以上、6mm以下3mm以上、3mm以下1mm以上、1mm以下0.5mm以上、20mm以下6mm以上、又は、20mm以下10mm以上である骨材又は粉体で構成される。
【0027】
6)閉耐火骨材部は、全体として高融点耐火物により構成されるか、高融点耐火物からなるか、実質的に高融点耐火物からなる。高融点耐火物は、アルミナ(板状アルミナ、溶融アルミナ及び褐色溶融アルミナを含む)、ボーキサイト、マグネシア、ジルコニア、酸化カルシウム、シリカ、スピネル、カルシウムアルミネート類、ムライト、オリビン、フォルステライト、ジルコン、カルシウムシリケート、アルミナジルコニアシリケート、及びこれらの組み合わせを含み、フリットを除外する。
【0028】
7)当該組成物は、閉耐火骨材部に加えて、第一鉄対応型(ferrous-capable)の耐火物バインダーを含むバインダー系を含有する。第一鉄対応型の耐火物バインダーとは、1400℃を超える温度にて使用され得る配合物を生み出し得るバインダーである。第一鉄対応型の耐火物バインダーの具体例としては、カルシウムアルミネートセメント、アルミニウムホスフェート、水和性アルミナ形態のアルミナ、コロイダルシリカ形態のシリカが挙げられる。
【0029】
8)当該組成物は、20体積%以上60体積%以下、20体積%以上50体積%以下、25体積%以上45体積%以下、20体積%以上40体積%以下、25体積%以上40体積%以下、30体積%以上60体積%以下、30体積%以上50体積%以下、又は、30体積%以上40体積%以下の開気孔率を有する。
【0030】
9)当該組成物は屈曲した気孔を有する。屈曲した気孔とは、孔が直線状でも円弧状でもなく、孔が複数曲がっている気孔をいう。
【0031】
10)(a)細粒、(b)バインダー類、及び/又は、(c)スラリーから作製されるバインダー相。
【0032】
11)互いに連なる二つの層を有する二層構造。当該二つの層は、閉耐火骨材部のメッシュ値又は粒度分布が異なる。或いは、連続的に連なる複数の層を有する多層構造。各々の層は、他の層に対して、閉耐火骨材部のメッシュ値又は粒度分布が異なる。
【0033】
また、本発明は、冶金容器用のライニング構造にも関し、当該ライニング構造は上記特徴1~11の少なくとも一つを備える多孔質耐火材を有する。また、本発明は、冶金容器における当該ライニング構造の使用にも関する。
【0034】
また、本発明は、内側及び外側を有する冶金容器であって、当該冶金容器の内側に、上記特徴1~11の少なくとも一つを備える多孔質耐火材を含むライニング構造を備える冶金容器にも関する。
【0035】
また、本発明は、溶融金属の酸化を最小限とするためのプロセスであって、(a)上記特徴1~11の少なくとも一つを備える多孔質耐火材を含むライニング構造を備える冶金容器へと溶融金属を移送すること、及び、(b)容器外に溶融金属を移送すること、を含むプロセスにも関する。
【0036】
本発明の特定の形態は、最小粒子サイズと最大粒子サイズとを有するとともに最大粒子サイズと最小粒子サイズとの比が10/1以下、5/1以下、又は、2/1以下である閉耐火骨材部と、耐火物バインダーを含むバインダー相と、を有し、前記閉耐火骨材部が、0.1mm超、0.2mm超、0.5mm超、1mm超、2mm超、又は、5mm超の粒子径を有する材料を100重量%含む、多孔質耐火材に関する。前記骨材部及び前記バインダー相の合計重量に占める前記骨材部の重量の割合は、70重量%以上98重量%以下であってもよいし、75重量%以上98重量%以下であってもよいし、80重量%以上98重量%以下であってもよいし、85重量%以上98重量%以下であってもよいし、90重量%以上98重量%以下であってもよい。耐火骨材の最小粒子のサイズとバインダー相における最大粒子のサイズとの比は、少なくとも2:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、又は、少なくとも20:1であってもよい。本発明の多孔質耐火材は、気孔率が20体積%以上60体積%以下であってもよいし、20体積%以上50体積%以下であってもよいし、25体積%以上45体積%以下であってもよいし、20体積%以上40体積%以下であってもよいし、25体積%以上40体積%以下であってもよいし、30体積%以上60体積%以下であってもよいし、30体積%以上50体積%以下であってもよいし、30体積%以上40体積%以下であってもよい。孔は屈曲していてもよい。
【0037】
本発明は、特定の形態において、耐火骨材部の100重量%が、粒子径1mm超、粒子径2mm超、粒子径5mm超、又は、粒子径10mm超の粒子サイズを有していてもよい。閉耐火骨材部は、アルミナ(板状形態、溶融形態及び褐色溶融形態を含む)、ボーキサイト、マグネシア、ジルコニア、酸化カルシウム、シリカ、スピネル、カルシウムアルミネート類、ムライト、オリビン、フォルステライト、ジルコン、カルシウムシリケート、アルミナジルコニアシリケート又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0038】
本発明は、特定の形態において、バインダー相が、反応性アルミナ類、か焼アルミナ、板状アルミナ、溶融アルミナ、ムライト、カーボン、炭化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、アルミニウムシリケート類、コロイダル形態又はナノシリカ形態のシリカ、フュームドシリカ、スピネル、ボーキサイト、酸化クロム又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。バインダー相の100重量%が、500ミクロン以下、200ミクロン以下、100ミクロン以下、又は、50ミクロン以下の粒子径を有する粒子からなっていてもよい。
【0039】
本発明は、上述の通り、互いに連なった少なくとも二層を備える構造にも関する。ここで、第1層は当該第1層における最小骨材粒子サイズを有する骨材を含み、第2層は当該第2層における最大骨材粒子サイズを有する骨材を含み、第1層における最小粒子サイズが、第2層における最大粒子サイズよりも大きい。さらに、本発明は、上述したような第1の構成と、上述したような第2の構成とを含む構造からなる構造に関する。ここで、第1の構成は、円筒構造とされており、当該円筒構造は固体であってもよいし、円等軸に対して対称な中空状であってもよい。また、ここで、第2の構成は、第1の構成と連なっている。ある形態において、第2の構成は、第1の構成の径方向外部に配置され得る。
【0040】
また、本発明は、レードル、タンディッシュ及び坩堝といった高温冶金容器又は鋳造容器におけるライニング構造としての、上述した多孔質耐火材の使用にも関する。これら材料により構成される器具は、アルミニウム又は合金類の液体浄化用の深層フィルターとして使用してもよい。本発明に係る材料は、金属を浸透させたうえでブレーキパッドとしてもよい。本発明に係る材料は、気体又は液体拡散器具として用いてもよい。さらに、本発明は、内側及び外側を有する冶金容器であって、当該冶金容器の内側に上記多孔質耐火材を含むライニング構造を備える冶金容器に関する。さらに、本発明は、冶金容器にライニング構造を設けるプロセスであって、(a)耐火物裏地を冶金容器の内側の内壁に設けること、及び、(b)上述の多孔質耐火材を前記耐火物裏地の内側表面に貼り付けること、を含むプロセスに関する。
【0041】
また、本発明は、溶融金属の酸化を最小化するためのプロセスであって、(a)上記多孔質耐火材を含むライニング構造を備える冶金容器へと溶融金属を移送すること、及び、(b)容器外へと溶融金属を移送すること、を含むプロセスにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
添付の図面に本発明の種々の形態が示される。
【0043】
図1は、本発明に係る多孔質耐火材を備える構造についての断面概略図である。
【0044】
図2は、本発明に係る多孔質耐火材を備える構造についての断面概略図である。
【0045】
図3は、本発明に係る多孔質耐火材を備える構造についての断面図である。
【0046】
図4は、本発明に係る多孔質耐火材を備える構造についての断面図である。
【0047】
発明の詳細な説明
【0048】
所定の構成的特徴を備えること又は組み合わせることで、高温に耐え得るとともに、冶金プロセスの封じ込め時に生じる化学反応にも耐え得る多孔質耐火材が作製されることを知見した。当該耐火材は、耐火ライニングのような冶金用途において必要とされる構造的強度を示す。当該耐火材は、溶融材料を流入させるに十分な幅で、且つ、不純物を流入させつつ溶融材料を拘束するに十分な屈曲を有する、孔を含む。
【0049】
耐火性ライニングは、壁状又はパネル状の高温耐性を有する材料からなり、炉及び/又は容器において、熱、溶融金属及び/又はスラグを封じ込める。当該耐火性の材料は、アルミナ煉瓦、ボーキサイト煉瓦、粘土質煉瓦、MgO煉瓦、又は、黒鉛含有圧縮煉瓦若しくは圧縮体等の煉瓦;振動キャスタブル材料、セルフフローキャスタブル材料、プラスチック耐火物類及び吹付材料といったモノリシック耐火物類;及び乾燥振動混合物を含んでいてもよい。耐火性のライニングは、タンディッシュ類、レードル類、高炉トラフ類、電気アーク炉(EAF)底部材類、並びに、トラフ類、ランナー類及びチャネル類といった容器類又は保持器具類に用いられ得る。本発明に係る多孔質耐火材は、スラグ/不純物の引き付け、容器類の絶縁、溶融金属への酸素の侵入防止、及び、ライニングの浸食又は腐食の抑制のために用いられ得る。
【0050】
本発明の実施に有用な骨材は、高温において強度を保持する耐火材料である。耐火物は、538度C(1000度F)を超える環境に曝される構造に対して、又はシステム要素として、適用可能とする化学的及び物理的性質を有する非金属材料とすることが考えられる。耐火物骨材は、石灰石、スラグ又は花崗岩のような砕石からなっていてもよい、コンクリートの構造用途に用いられる骨材とは差別化される。NaO及びKO並びに骨材の炭酸分解物のような材料の存在に起因して、温度上昇に伴ってこれら材料のコンクリート強度や弾性率が低下し、温度が約300℃を超えると、より急速に強度が低下する。500℃の閾値を過ぎると、通常、コンクリートの圧縮強度が50%から60%まで低下し、コンクリートが完全に破損しているものと考えられる。コンクリート材料を乾燥させることで、400度Cまでにおいて、上記現象の程度が顕著に低減し、或いは、上記現象が排除さえされる。この温度を超えると、骨材(拡大する)とセメントペースト(縮小する)との間の熱変形に係るミスマッチが大きくなって、クラックが発生する。大きなクラックが続くと、材料の機械的特性が変わる。耐火骨材は、融点が800度C未満でケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウムを含み得るセラミックフリットとも差別化される。
【0051】
本発明の実施に有用な粗骨材としては、アルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、酸化カルシウム(CaO)、シリカ(SiO)、又は、スピネル(Al+MgO)、カルシウムアルミネート類(CaO+Al)、ムライト(Al+SiO)、オリビン及びフォルステライト(MgO+SiO)、ジルコン(ZrO+SiO)、カルシウムシリケート(CaO+SiO)並びにAZS(Al+ZrO+SiO)のような複合耐火材料、が含まれる。
【0052】
本発明の実施に有用な粗骨材は、ブロック状、長方形状、繊維状、棒状、角状、球状、又は、球晶状であってもよい。セラミック球晶状物は、アルミナ、MgO、シリカ、又は、ムライトやスピネルといった複合材料のような耐火性鉱物から形成されてもよい。球晶状物は、例えば、1mmから25mmの範囲の径を有するものが市販されている。球晶状物は、均一な大きさであってもよいし、大きさに幅があってもよい。球晶状物は密であっても軽量であってもよい。転動造粒により形成された球晶状物は多孔質であり、キャベツの内部に似た葉状の内部構造を有する。これら葉状球晶状物は、不純物やスラグを保持可能であり、一定の断熱効果を付与する構造を有する。
【0053】
多孔質耐火材の強度は、セメント結合、化学結合又はセラミックの焼結を介して、バインダー成分によって付与される。当該3種類のバインダーに対応するものとして、耐火セメント系スラリー、化学溶液、及び、有機高分子が挙げられる。当該3種類のバインダーによるプロセス後のバインダー相は、耐火バインダー、沈殿溶液、及び、有機高分子である。
【0054】
セメント系バインダーは、微細な耐火物粒子(100ミクロン(100マイクロメーター、0.1mm)未満の径、88ミクロン(88マイクロメーター、0.088mm)未満の径、50ミクロン(50マイクロメーター、0.05mm)未満の径、又は、25ミクロン(25マイクロメーター、0.025mm)未満の径を有する。耐火物バインダー、耐火物微粒子、及び、減水剤等の何らかの添加物を含む。)からなっていてもよい。微細な乾燥材料が水と混合されて、耐火骨材とともに塗布及び結着するためのスラリー(懸濁液)となる。セメントは、第一鉄対応型(ferrous-capable)で1400度C超の温度に用いられ得る高温耐火バインダーであってもよい。耐火バインダーは、カルシウムアルミネートセメント、アルミニウムホスフェート、水和性アルミナ形態のアルミナ、コロイダルシリカ形態のシリカ又はこれら材料の組み合わせであってもよい。
【0055】
化学溶液バインダーは、モノアルミニウムホスフェート(液状のものとして、又は、混合粉を水と混合して得られる溶液として)のようなホスフェート、コロイダルシリカ形態のシリカ、水和性アルミナ形態のアルミナ(分散液として、又は、混合粉を水と混合して得られる溶液として)、又は、シリコーン接着剤を含んでいてもよい。
【0056】
有機高分子バインダーは、高分子接着剤又は樹脂を含んでいてもよい。
【0057】
マトリックス中に用いられるバインダーは、カルシウムアルミネートセメント、カルシウム-マグネシウム-アルミネートセメント、アルファボンドセメント、ポルトランドセメント、モノアルミニウムホスフェート(MALP)、粘土類、反応性アルミナ、水和性アルミナ、コロイダルシリカ又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。ある実施形態において、本発明に係るマトリックス材料は、セメントを含んでいなくてもよい。
【0058】
マトリックス中に用いられるその他の原料は、反応性アルミナ類、か焼アルミナ、板状アルミナ、溶融アルミナ、ムライト、カーボン(グラファイト又はカーボンブラック)、炭化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、アルミニウムシリケート類(例えば、カイヤナイト、アンダルサイト、シリマナイト)、フュームドシリカ、ボーキサイト、酸化クロム又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。配合物の一部分であって、0.01から10ミクロン、又は0.01から50ミクロン、又は0.01から100ミクロンの範囲にある径を有する、微粒子(fines)ともいわれる部分には、反応性アルミナ類又はフュームドシリカ類が含まれていてもよい。
【0059】
マトリックスは、分散剤、可塑剤、消泡若しくは発泡剤、又は、脱気成分を含んでいてもよい。これら添加剤は、本技術分野において周知である。
【0060】
図1は、本発明に係る多孔質耐火材を含む構造10の断面概略図である。個々の粒子として示されているように、耐火骨材部14の粒子がバインダー相16によって互いに結合されている。直線状又は円弧状ではない屈曲した経路18によって、開孔が設けられる。
【0061】
図2は、本発明に係る多孔質耐火材を含む多層構造30の断面概略図である。第1の層32は、個々の粒子として示されているように、バインダー相36によって互いに結合された耐火骨材部34の粒子を含む多孔質耐火材を備える。第2の層42は、第1の層32に連なっており、バインダー相46によって互いに結合された耐火骨材部44の粒子を含む多孔質耐火材を備える。直線状又は円弧状ではない屈曲した経路18によって、開孔が設けられる。
【0062】
多層構造30の各々の層は、二つの主要面を有する。当該主要面は一組の面であって、互いに反対側に配置され、当該層のすべての面のうち最大面積を有する面である。図2において、第1の層32は主要面52及び54を有する。第2の層42は主要面56及び58を有する。第1の層32の主要面54は、第2の層42の主要面56に連なっている。
【0063】
図3は、本発明に係る多孔質耐火材を含む構造10の断面図である。耐火骨材部14の粒子が、バインダー相16によって互いに結合されている。直線状又は円弧状ではない屈曲した経路18によって、開孔が設けられる。
【0064】
図4は、本発明に係る多孔質耐火材を含む多層構造30の断面図である。第1の層32は、バインダー相36によって互いに結合された耐火骨材部34の粒子を含む多孔質耐火材を備える。第2の層42は、第1の層32に連なっており、バインダー相46によって互いに結合された耐火骨材部44の粒子を含む多孔質耐火材を備える。直線状又は円弧状ではない屈曲した経路18によって、開孔が設けられる。
【実施例
【0065】
実施例1
【0066】
本発明に係る組成物は骨材及びバインダーから作製されてもよい。
【0067】
本発明において使用され得るバインダーは、粒子懸濁液若しくはスラリー、溶液、又は、樹脂系若しくは高分子系の接着剤のような液体バインダー、を含んでいてもよい。
【0068】
セメント系バインダーにおいては、100ミクロン以下の径又はメッシュサイズを有する耐火微粒子であって、反応性アルミナ、フュームドシリカ、MgO又はカルシウムアルミネートセメントのような材料からなる耐火微粒子が使用されてもよい。分散剤のような添加剤を添加して流動性を向上させてもよい。サスペンションミキサーにおいて固体成分を水と混合することで、良好な流動性を有する均質なスラリーを得てもよい。ある配合においては、スラリー製造から1時間以内に、当該スラリーと骨材とを組み合わせることが推奨される。
【0069】
溶液バインダーは、適切な化合物と水との混合物により作製されてもよい。溶液バインダーを作製するために水と組み合わされる化合物は、リン酸水素アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、超微粒子状又はナノアルミナ状の水和性アルミナを含んでいてもよく、或いは、コロイダルシリカやコロイダルアルミナといった市販の溶液を用いてもよい。
【0070】
樹脂、高分子接着剤、シリコーン接着剤又はポリウレタン接着剤といった液体バインダーが使用して、本発明に係る組成物を形成してもよい。
【0071】
本発明に係る耐火組成物を形成するため、骨材部分及びバインダー部分が所望の重量比となるように秤量されてもよい。バインダーは骨材にゆっくりと添加され、バインダーと骨材とはセメントミキサーのようなミキサーにて混合される。バインダーのすべてが骨材へと添加された後においても、所定の時間、例えば5分間、混合を継続して、骨材全体がバインダーにて均一にコーティングされるようにしてもよい。
【0072】
その後、バインダーと骨材との混合物を用いて耐火材を形成してもよい。骨材とバインダーとの混合物を鋳型内に配置してもよく、締固めや振動によって表面を滑らかにし、安定化させてもよい。同様にして、鋳型に次の層を加えてもよい。その後、プラスチックフィルムで鋳型を覆い、混合物を硬化又は固化し得る。固化完了後、材料片が鋳型から取り出され、フィルムが除去される。形成された材料片を、例えば15~30度Cの範囲の温度にて硬化し得る。その後、材料片を、例えば110度Cの温度にて、例えば24時間、オーブンにて乾燥してもよい。最終的に得られる材料片は、そのまま使用してもよいし、材料片の寸法に応じて、例えば1400~1600度Cの温度にて、例えば3時間、加熱してもよい。
【0073】
本発明は、また、冶金容器における上述の耐火組成物を含むライニング構造の使用、並びに、内側及び外側を有する冶金容器であって容器内側に上述のライニング構造を有する冶金容器にも関する。
【0074】
本発明は、また、移送時における溶融金属の酸化を最小化するためのプロセスであって、(a)上述のライニング構造を有する容器に溶融金属を移送すること、及び(b)当該容器外に当該溶融金属を移送することを含むプロセスにも関する。
本発明は、また、冶金容器のライニングを形成するためのプロセスであって、(a)最小粒子サイズと最大粒子サイズとを有するとともに最大粒子サイズと最小粒子サイズとの比が10/1以下である耐火骨材部と、カルシウムアルミネートセメント、アルミナホスフェート、水和性アルミナ、コロイダルシリカ及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる耐火バインダーを含むバインダー相とを混合して、キャスタブル耐火混合物を形成すること、ここで前記閉耐火骨材部は0.1mm超の粒子径を有する材料を100重量%含む、並びに、(b)冶金容器の内側に接触させてキャスタブル耐火混合物を鋳造し、ライニングを形成すること、を含むプロセスにも関する。本発明の実施形態において、キャスタブル耐火混合物は、鋳型と冶金容器内側との間に画定される大きさにて鋳造される。
【0075】
以下の詳細な説明及び実施例から、本発明に係る他の特性及び利点が明らかとなるであろう。
【0076】
実施例II
【0077】
本発明の配合においては、様々な骨材・バインダー比が採用され得る。
【0078】
本発明に係る特定の形態においては、12mmから6mmの間の閉じた粒子サイズ範囲を有する、板状アルミナT64粒子(Almatis社製)を用いた。スラリーバインダーは、水及び分散剤のような添加剤とともに、反応性アルミナ、シリカフューム、及び、カルシウムアルミネートセメントを含んでいた。骨材とスラリーとの重量比が70/30以下の場合については、スラリーバインダーが過剰となり、細孔(個々の骨材粒子の間の隙間)が塞がれ、また、試料の底にスラリー溜まりが形成される場合があった。重量比が85/15以上の場合、すべての細孔が開孔となる。ただし、重量比が95/5以上となると、骨材同士を結合させるには結合強度が不足する。重量比が90/10の場合、開孔、且つ、適切な結合強度となった。
【表1】
【0079】
実施例III
【0080】
耐火物の配合における骨材粒子サイズ範囲の比較
【0081】
上記と同様の骨材組成(板状アルミナT64)を有するとともに、様々な閉じられた粒度分布範囲を有する配合について検討した。採用された最も大きな骨材粒子範囲は20mmから6mmであり、最も小さな骨材粒子範囲は1.0mmから0.5mmであった。粒子が100ミクロンよりも大きい場合に、閉じられた骨材粒度分布範囲に関し、満足する材料片が含まれ得ることが観察された。閉じられた粒度分布範囲における最大骨材粒子と最小骨材粒子との比は10以下1以上であってもよい。閉じられた粒度分布範囲における最大粒子と最小粒子とのサイズ差が小さいほど、試料の隙間や細孔が多くなる。比が5から1の間の場合、比が3から1の間の場合、比が2.5から1.5の間の場合、比が2である場合、満足する耐火物が作製されることが分かった。TAB-7aは、隣接する粒度分布を有する2つの耐火骨材組成物から1つの耐火骨材組成物が形成され、全体としての粒度分布範囲において最大粒子サイズと最小粒子サイズとの比が4:1となる配合例である。
【表2】
【0082】
実施例IV
【0083】
耐火物の配合における骨材の化学組成の比較
【0084】
骨材とスラリーバインダーとの比を上述と同様とする一方、異なる骨材化学組成を有する配合について検討した。骨材は、スピネルAR90又はAR78、死焼マグネサイト、溶融マグネサイト、カルシウムヘキサアルミネート(CA6、Almatis社製Bonite)、白色溶融アルミナ、褐色溶融アルミナ、又はボーキサイトを含むものとした。これらのいずれであっても、開孔を有する試料を形成できることがわかった。
【表3】
【0085】
実施例V
【0086】
耐火物配合における骨材形状の検討
【0087】
骨材は、球状又は角粒状の形状を採り得る。骨材とスラリーバインダーとの比を適切とするとともに、骨材が均一なスラリーバインダーコーティングを有する場合、得られる耐火物の細孔は開孔となるものと考えられる。
【表4】
【0088】
実施例VI
【0089】
セメント系バインダースラリー
【0090】
バインダースラリーは、耐火バインダーによって液圧接合されていてもよい。当該バインダースラリーは、カルシウムアルミネートセメントSecar-71(Kerneos Aluminate Technologies製)、反応性アルミナA-3000FL(Almatis Ltd USA製)、シリカフューム955U(ELKEM AS Materials製)、及び/又は、例えば、添加剤Budit 8H(BASSTECH製)のような、粉砕ポリリン酸ナトリウムガラスを含み得る。表5に、90%の板状アルミナT64(サイズ12mm-6mm)とともに、骨材同士の結合に用いられ得る、異なるバインダーの組み合わせを示す。
【表5】
【0091】
実施例VII
【0092】
溶液又は高分子バインダー
【0093】
バインダースラリーは、化学溶液/液体、又は、高分子樹脂の形態であってもよい。表6に、96%の板状アルミナT64(サイズ12mm-6mm)とともに、骨材同士の結合に用いられ得る、異なる化学的液状バインダー又は高分子樹脂を示す。
【表6】
【0094】
実施例VIII
【0095】
完全な配合例
【0096】
表7に配合例の一例を示す。上から3つの配合例(TAB32~TAB34)は、同様の骨材及びバインダーを用いる一方で、骨材/バインダー比を変えた例である。TAB35~TAB39の5つの配合例は、同じスラリーバインダーを用いる一方で、骨材を変えた例である。TAB40~TAB42の3つの配合例は、同じ骨材を用いる一方で、スラリーバインダーを変えた例である。
【表7】
【0097】
表7におけるパーセンテージは、配合例の固形分の合計重量についての重量パーセンテージである。
【0098】
本発明に係る配合物は、プレキャストパネルの形態にて冶金容器の内側に設置されてもよく、セメント又は機械的保持によって平面に固定されてもよい。冶金容器内に鋳型を配置して、冶金容器の内壁と鋳型の外壁との間の隙間によって配合物が占めるべき空間が画定されるようにして、本発明に係る配合物を現場で設置してもよい。配合物は、当該空間内に配置されたうえで、安定化される。配合物は硬化又は固化され得る。その後、硬化工程及び乾燥工程を行ってもよい。
【0099】
本発明に係る材料から形成された器具は、制御された多孔質構造を有し、高温耐性を示す。それゆえ様々な用途が考えられる。当該材料は、プレキャストパネル(プレハブ)とされてもよいし、鋳型に直接鋳造して所定の形状に成形されてもよい。これら材料から形成された器具は、例えば、高温金属液体から介在物を取り除くため、又は、溶液や気体から不純物を取り除くための濾過器具として用いられてもよい。当該材料は、溶融金属の濾過用の耐火物器具にて使用するためのダム、堰、又はバッフルを形成するために用いられてもよい。当該材料は、レードル、タンディッシュ及び坩堝といった高温冶金容器又は鋳造容器用のライニングを形成するために用いられてもよい。これら材料から形成される器具は、アルミニウム又は合金類の液体精製用の深層フィルターとして用いられてもよい。本発明に係る材料は、金属を浸透させたうえでブレーキパッドとしてもよい。本発明に係る材料は、気体又は液体の拡散器具として用いられてもよい。
【0100】
本発明においては多くの変更及び変形が可能である。したがって、本発明は、特許請求の範囲内において、具体的に記載されている以外の方法で実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4