(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】JAKキナーゼ阻害剤としてのピリミジン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 451/04 20060101AFI20230130BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230130BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230130BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230130BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230130BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230130BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230130BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230130BHJP
C07D 403/12 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
C07D451/04 CSP
A61K31/506
A61K9/06
A61K9/107
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/14
A61P29/00
A61P37/06
A61P37/08
A61P43/00 111
C07D403/12
(21)【出願番号】P 2020523324
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 US2018057682
(87)【国際公開番号】W WO2019084383
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-08-19
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514190040
【氏名又は名称】セラヴァンス バイオファーマ アール&ディー アイピー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コザック, ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ブラント, ゲイリー イー.エル.
(72)【発明者】
【氏名】マッキネル, ロバート マレー
(72)【発明者】
【氏名】ダブロス, マータ
(72)【発明者】
【氏名】ゼレム, ジェリー
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/191524(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/189822(WO,A1)
【文献】特表2017-524022(JP,A)
【文献】国際公開第2015/094803(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/044434(WO,A1)
【文献】特表2008-525422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化26】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
式(I):
【化27】
の化合物。
【請求項3】
式(I):
【化28】
の化合物の結晶形態であって、該結晶形態は、11.4±0.2、16.2±0.2、16.6±0.2、17.7±0.2、および21.9±0.2の2θ値に回折ピークを含む粉末X線回折パターンにより特徴付けられる、結晶形態。
【請求項4】
前記粉末X線回折パターンは、8.9±0.2、9.5±0.2、および10.2±0.2の2θ値にさらなる回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項5】
前記粉末X線回折パターンは、14.4±0.2、19.0±0.2、19.2±0.2、19.8±0.2、20.1±0.2、20.4±0.2、20.6±0.2、20.8±0.2、21.3±0.2、25.9±0.2、30.1±0.2、30.5±0.2、30.9±0.2、32.6±0.2、および33.8±0.2から選択される2θ値に2つまたはそれより多くのさらなる回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる、請求項4に記載の結晶形態。
【請求項6】
前記結晶形態は、238.1℃±2℃にピークを有する吸熱の熱流の極大値を示す、1分間あたり10℃の加熱速度で記録される示差走査熱量測定トレースにより特徴付けられる、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項7】
請求項1または2のいずれか1項に記載の化合物、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物。
【請求項8】
請求項3~
6のいずれか1項に記載の結晶形態、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物。
【請求項9】
1つまたはそれより多くのさらなる治療剤をさらに含有する、請求項
7に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記薬学的組成物は、軟膏またはクリームである、請求項
7に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
化合物(I)、またはその薬学的に受容可能な塩は、0.1~10重量%で存在する、請求項
7に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
化合物(I)、またはその薬学的に受容可能な塩は、0.25~5重量%で存在する、請求項
7に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
化合物(I)、またはその薬学的に受容可能な塩は、0.05~0.5重量%で存在する、請求項
7に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
哺乳動物における炎症性または自己免疫性の皮膚疾患の処置において使用するための、請求項1または2に記載の化合物を含む組成物。
【請求項15】
哺乳動物における炎症性皮膚疾患の処置において使用するための、請求項1
4に記載の組成物。
【請求項16】
アトピー性皮膚炎の処置において使用するための、請求項1
5に記載の組成物。
【請求項17】
前記アトピー性皮膚炎は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎である、請求項1
6に記載の組成物。
【請求項18】
前記アトピー性皮膚炎は、軽症~中等症のアトピー性皮膚炎である、請求項1
6に記載の組成物。
【請求項19】
円形脱毛症の処置において使用するための、請求項1
4に記載の組成物。
【請求項20】
白斑、結節性痒疹、扁平苔癬、接触皮膚炎、対宿主性移植片病の皮膚症状、類天疱瘡、円板状狼瘡、硬化性苔癬、毛孔性扁平苔癬、乾癬、および禿髪性毛包炎からなる群より選択される炎症性または自己免疫性の皮膚疾患の処置において使用するための、請求項1
4に記載の組成物。
【請求項21】
哺乳動物における炎症性または自己免疫性の皮膚疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項22】
哺乳動物における炎症性皮膚疾患の処置のための医薬の製造における、請求項2
1に記載の使用。
【請求項23】
前記炎症性皮膚疾患はアトピー性皮膚炎である、請求項2
2に記載の使用。
【請求項24】
前記アトピー性皮膚炎は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎である、請求項2
3に記載の使用。
【請求項25】
前記アトピー性皮膚炎は、軽症~中等症のアトピー性皮膚炎である、請求項2
3に記載の使用。
【請求項26】
哺乳動物における自己免疫性皮膚疾患の処置のための医薬の製造における、請求項2
1に記載の使用。
【請求項27】
前記自己免疫性皮膚疾患は円形脱毛症である、請求項2
6に記載の使用。
【請求項28】
前記炎症性または自己免疫性の皮膚疾患は、白斑、結節性痒疹、扁平苔癬、接触皮膚炎、対宿主性移植片病の皮膚症状、類天疱瘡、円板状狼瘡、硬化性苔癬、毛孔性扁平苔癬、乾癬、および禿髪性毛包炎からなる群より選択される、請求項2
1に記載の使用。
【請求項29】
哺乳動物における炎症性または自己免疫性の皮膚疾患を処置するための、請求項1または2に記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項30】
前記薬学的組成物は、前記哺乳動物の皮膚に、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含有する薬学的組成物として投与されることを特徴とする、請求項
29に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記炎症性または自己免疫性の皮膚疾患は、炎症性皮膚疾患である、請求項
29に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記炎症性皮膚疾患はアトピー性皮膚炎である、請求項3
1に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記アトピー性皮膚炎は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎である、請求項3
2に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記アトピー性皮膚炎は、軽症~中等症のアトピー性皮膚炎である、請求項3
2に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記炎症性または自己免疫性の皮膚疾患は、自己免疫性皮膚疾患である、請求項
29に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記自己免疫性皮膚疾患は円形脱毛症である、請求項3
5に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記炎症性または自己免疫性の皮膚疾患は、白斑、結節性痒疹、扁平苔癬、接触皮膚炎、対宿主性移植片病の皮膚症状、類天疱瘡、円板状狼瘡、硬化性苔癬、毛孔性扁平苔癬、乾癬、および禿髪性毛包炎からなる群より選択される、請求項
29に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
式(I):
【化29】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を調製するためのプロセスであって、
(a)式(II):
【化30】
の化合物[式中、RはC
1~12アルキル基である]を還元剤と反応させる工程、および
(b)必要に応じて、薬学的に受容可能な塩を形成する工程
を包含して、式(I)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する、プロセス。
【請求項39】
前記還元剤は、LiAlH
4、NaBH
4、およびLiBH
4からなる群より選択される、請求項
38に記載のプロセス。
【請求項40】
Rはエチルである、請求項
38に記載のプロセス。
【請求項41】
前記式(II)の化合物は、式(III)
【化31】
の化合物[式中、Xはハロゲンである]を式1-9
【化32】
の化合物とカップリングさせることにより得られる、請求項
38に記載のプロセス。
【請求項42】
式(II):
【化33】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
式(II)において、RはC
1~12アルキル基である、化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項43】
Rはエチルである、請求項4
2に記載の化合物。
【請求項44】
式(III):
【化34】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
式(III)において、RはC
1~12アルキル基であり、そしてXはハロゲンである、化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項45】
Rはエチルであり、そしてXはクロロである、請求項4
4に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、JAKキナーゼ阻害剤として有用な、ピリミジン化合物に関する。本発明はまた、このような化合物を含有する薬学的組成物、このような化合物の結晶形態、このような化合物を使用して炎症性疾患および自己免疫性疾患を処置する方法、ならびにこのような化合物を調製するために有用なプロセスおよび中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準
JAK酵素のファミリーを阻害すると、多くの重要な炎症促進性サイトカインのシグナル伝達が阻害され得る。したがって、JAK阻害剤は、アトピー性皮膚炎および他の炎症性皮膚疾患、アレルギー性鼻炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および他の肺炎症性疾患、潰瘍性大腸炎および他の胃腸の炎症、ならびに眼の炎症性疾患の処置において有用である可能性がある。
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)は、一般的な慢性炎症性皮膚疾患であり、合衆国単独で、推定1400万人の人々に影響を与えている。ADは、先進国において、小児の10~20%、および成人の1~3%に影響を与えていると推定されており(Bao et al.,JAK-STAT,2013,2,e24137)、その流行は増大している。JAK-STAT経路に依存する炎症誘発サイトカイン、特に、IL-4、IL-5、IL-10、IL-12、IL-13、IFNγ、およびTSLPの上昇は、ADと関連付けられている(Bao et al.,Leung et al.,The Journal of Clinical Investigation,2004,113,651-657)。さらに、IL-31(JAK対合によりシグナル伝達する別のサイトカイン)のアップレギュレーションは、ADの慢性状態に関連するそう痒症において役割を有することが示されている(Sonkoly et al.,Journal of Allergy and Clinical Immunology,2006,117,411-417)。
【0004】
免疫系に対するJAK/STAT経路の調節作用に起因して、JAK阻害剤への全身曝露は、有害な全身性の免疫抑制作用を及ぼし得る。ゆえに、著しい全身作用を起こさずに作用部位において効果を生じる新しいJAK阻害剤を提供することが望ましい。特に、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患の処置の場合、局所的に投与することができ、かつ皮膚において治療的に妥当な曝露を達成でき、迅速に排除されて全身曝露を最小にする、新しいJAK阻害剤を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Bao et al.,JAK-STAT,2013,2,e24137
【文献】Bao et al.,Leung et al.,The Journal of Clinical Investigation,2004,113,651-657
【文献】Sonkoly et al.,Journal of Allergy and Clinical Immunology,2006,117,411-417
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
1つの局面において、本発明は、JAKキナーゼ阻害剤としての活性を有する化合物を提供する。
【0007】
従って、本発明は式(I):
【化1】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0008】
本発明はまた、化合物(I)の結晶形態を提供する。
【0009】
本発明はまた、化合物(I)および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。
【0010】
本発明はまた、哺乳動物における、皮膚の炎症性および自己免疫性の疾患、特にアトピー性皮膚炎および円形脱毛症を処置する方法を提供し、この方法は、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0011】
本発明はまた、化合物(I)の調製のために有用な、本明細書中に記載される合成プロセスおよび中間体を提供する。
【0012】
本発明はまた、炎症性の疾患または障害の処置において使用するための、本明細書中に開示される化合物(I)を提供する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
式(I):
【化26】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目2)
式(I):
【化27】
の化合物。
(項目3)
式(I):
【化28】
の化合物の結晶形態であって、該結晶形態は、11.4±0.2、16.2±0.2、16.6±0.2、17.7±0.2、および21.9±0.2の2θ値に回折ピークを含む粉末X線回折パターンにより特徴付けられる、結晶形態。
(項目4)
前記粉末X線回折パターンは、8.9±0.2、9.5±0.2、および10.2±0.2の2θ値にさらなる回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる、項目3に記載の結晶形態。
(項目5)
前記粉末X線回折パターンは、14.4±0.2、19.0±0.2、19.2±0.2、19.8±0.2、20.1±0.2、20.4±0.2、20.6±0.2、20.8±0.2、21.3±0.2、25.9±0.2、30.1±0.2、30.5±0.2、30.9±0.2、32.6±0.2、および33.8±0.2から選択される2θ値に2つまたはそれより多くのさらなる回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる、項目4に記載の結晶形態。
(項目6)
前記結晶形態は、ピーク位置が図5に示されるパターンのピーク位置に実質的に一致する粉末X線回折パターンにより特徴付けられる、項目3に記載の結晶形態。
(項目7)
前記結晶形態は、238.1℃±2℃にピークを有する吸熱の熱流の極大値を示す、1分間あたり10℃の加熱速度で記録される示差走査熱量測定トレースにより特徴付けられる、項目3に記載の結晶形態。
(項目8)
前記結晶形態は、図6に示される示差走査熱量測定トレースに実質的に一致する示差走査熱量測定トレースにより特徴付けられる、項目3に記載の結晶形態。
(項目9)
項目1または2のいずれか1項に記載の化合物、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物。
(項目10)
項目3~8のいずれか1項に記載の結晶形態、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物。
(項目11)
1つまたはそれより多くのさらなる治療剤をさらに含有する、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目12)
前記薬学的組成物は、軟膏またはクリームである、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目13)
化合物(I)、またはその薬学的に受容可能な塩は、0.1~10重量%で存在する、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目14)
化合物(I)、またはその薬学的に受容可能な塩は、0.25~5重量%で存在する、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目15)
化合物(I)、またはその薬学的に受容可能な塩は、0.05~0.5重量%で存在する、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目16)
哺乳動物における炎症性または自己免疫性の皮膚疾患の処置において使用するための、項目1または2に記載の化合物。
(項目17)
哺乳動物における炎症性皮膚疾患の処置において使用するための、項目16に記載の化合物。
(項目18)
アトピー性皮膚炎の処置において使用するための、項目17に記載の化合物。
(項目19)
前記アトピー性皮膚炎は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎である、項目18に記載の化合物。
(項目20)
前記アトピー性皮膚炎は、軽症~中等症のアトピー性皮膚炎である、項目18に記載の化合物。
(項目21)
円形脱毛症の処置において使用するための、項目16に記載の化合物。
(項目22)
白斑、結節性痒疹、扁平苔癬、接触皮膚炎、対宿主性移植片病の皮膚症状、類天疱瘡、円板状狼瘡、硬化性苔癬、毛孔性扁平苔癬、乾癬、および禿髪性毛包炎からなる群より選択される炎症性または自己免疫性の皮膚疾患の処置において使用するための、項目16に記載の化合物。
(項目23)
哺乳動物における炎症性または自己免疫性の皮膚疾患の処置のための医薬の製造における、項目1または2に記載の化合物の使用。
(項目24)
哺乳動物における炎症性皮膚疾患の処置のための医薬の製造における、項目23に記載の使用。
(項目25)
前記炎症性皮膚疾患はアトピー性皮膚炎である、項目24に記載の使用。
(項目26)
前記アトピー性皮膚炎は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎である、項目25に記載の使用。
(項目27)
前記アトピー性皮膚炎は、軽症~中等症のアトピー性皮膚炎である、項目25に記載の使用。
(項目28)
哺乳動物における自己免疫性皮膚疾患の処置のための医薬の製造における、項目23に記載の使用。
(項目29)
前記自己免疫性皮膚疾患は円形脱毛症である、項目28に記載の使用。
(項目30)
前記炎症性または自己免疫性の皮膚疾患は、白斑、結節性痒疹、扁平苔癬、接触皮膚炎、対宿主性移植片病の皮膚症状、類天疱瘡、円板状狼瘡、硬化性苔癬、毛孔性扁平苔癬、乾癬、および禿髪性毛包炎からなる群より選択される、項目23に記載の使用。
(項目31)
哺乳動物における炎症性または自己免疫性の皮膚疾患を処置する方法であって、該方法は、項目1または2に記載の化合物を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目32)
前記化合物は、前記哺乳動物の皮膚に、該化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物中で投与される、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記炎症性または自己免疫性の皮膚疾患は、炎症性皮膚疾患である、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記炎症性皮膚疾患はアトピー性皮膚炎である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記アトピー性皮膚炎は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記アトピー性皮膚炎は、軽症~中等症のアトピー性皮膚炎である、項目34に記載の方法。
(項目37)
前記炎症性または自己免疫性の皮膚疾患は、自己免疫性皮膚疾患である、項目31に記載の方法。
(項目38)
前記自己免疫性皮膚疾患は円形脱毛症である、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記炎症性または自己免疫性の皮膚疾患は、白斑、結節性痒疹、扁平苔癬、接触皮膚炎、対宿主性移植片病の皮膚症状、類天疱瘡、円板状狼瘡、硬化性苔癬、毛孔性扁平苔癬、乾癬、および禿髪性毛包炎からなる群より選択される、項目31に記載の方法。
(項目40)
式(I):
【化29】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を調製するためのプロセスであって、
(a)式(II):
【化30】
の化合物[式中、RはC
1~12
アルキル基である]を還元剤と反応させる工程、および
(b)必要に応じて、薬学的に受容可能な塩を形成する工程
を包含して、式(I)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する、プロセス。
(項目41)
前記還元剤は、LiAlH
4
、NaBH
4
、およびLiBH
4
からなる群より選択される、項目40に記載のプロセス。
(項目42)
Rはエチルである、項目40に記載のプロセス。
(項目43)
前記式(II)の化合物は、式(III)
【化31】
の化合物[式中、Xはハロゲンである]を式1-9
【化32】
の化合物とカップリングさせることにより得られる、項目40に記載のプロセス。
(項目44)
式(II):
【化33】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
式(II)において、RはC
1~12
アルキル基である、化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目45)
Rはエチルである、項目44に記載の化合物。
(項目46)
式(III):
【化34】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
式(III)において、RはC
1~12
アルキル基であり、そしてXはハロゲンである、化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目47)
Rはエチルであり、そしてXはクロロである、項目46に記載の化合物。
【0013】
本発明の様々な局面が、添付の図面を参照することにより例証される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、化合物(I)の結晶形態I(本明細書中以後形態I)の粉末x線回折(PXRD)パターンを示す。
【0015】
【
図2】
図2は、結晶形態Iの示差走査熱量測定(DSC)のサーモグラムを示す。
【0016】
【
図3】
図3は、結晶形態Iの熱重量分析(TGA)のプロットを示す。
【0017】
【
図4】
図4は、結晶形態Iの動的水分吸着(dynamic moisture sorption)の等温線を示す。
【0018】
【
図5】
図5は、化合物(I) の結晶形態II溶媒和物(本明細書中以後形態II)の粉末x線回折(PXRD)パターンを示す。
【0019】
【
図6】
図6は、結晶形態IIの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【0020】
【
図7】
図7は、結晶形態IIの熱重量分析(TGA)プロットを示す。
【0021】
【
図8】
図8は、結晶形態IIの動的水分吸着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
他の局面の中でも、本発明は、式(I)のJAKキナーゼ阻害剤、それらの薬学的に受容可能な塩およびそれらを調製するための中間体を提供する。
【0023】
化学構造は、本明細書中で、ChemDrawソフトウェア(PerkinElmer,Inc.,Cambridge,MA)に実装されているようなIUPACの慣例に従って命名される。例えば、化合物(I):
【化2】
は、(2-(((1R,3s,5S)-9-(エチルスルホニル)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)(メチル)アミノ)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)メタノールと名付けられる。
【0024】
(1R,3s,5S)との記載は、9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン基に対するピリミジニルアミノ基のエキソ配向を説明する。
【0025】
さらに、化合物(I)および本明細書中に開示される他の化合物のピラゾリル部分は、互変異性形態で存在する。特定の構造は、ある特定の形態として示されているかまたは命名されているが、本発明は、それらの互変異性体も含むことが理解される。
【0026】
本開示の化合物は、1つまたはそれより多くのキラル中心を含むので、そのような化合物(およびそれらの中間体)は、ラセミ混合物;純粋な立体異性体(すなわち、エナンチオマーまたはジアステレオマー);立体異性体富化混合物などとして存在し得る。キラル中心に明確な立体化学なしに本明細書中に示されているまたは命名されているキラル化合物は、別段示されない限り、未確定の立体中心において存在し得る任意のまたはすべての立体異性体バリエーションを含むことを意図されている。特定の立体異性体の描写または呼称は、別段示されない限り、少量の他の立体異性体も存在し得ることの理解とともに、示されている立体中心が、指定の立体化学を有することを意味しているが、但し、描写されたまたは命名された化合物の有用性は、別の立体異性体の存在によって排除されない。
【0027】
化合物(I)は、遊離形態で、または様々な塩の形態(例えば、モノプロトン化塩の形態、ジプロトン化塩の形態、トリプロトン化塩の形態またはそれらの混合物)で存在し得る。別段示されない限り、そのような形態のすべてが、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
原子が、同じ原子番号を有するが自然界で優勢である原子質量とは異なる原子質量を有する原子で置き換えられているかまたは富化されている、本開示の化合物(式(I)の化合物を含む)の同位体で標識されたバージョンも含む。式(I)の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、35S、および18Fが挙げられるが、これらに限定されない。トリチウムまたは炭素-14に富化した式(I)の化合物が特に興味深く、それらの化合物は、例えば、組織分布研究において使用され得る。また、特に代謝部位においてジュウテリウムに富化した式(I)の化合物も特に興味深く、それらの化合物は、より高い代謝的安定性を有すると予想される。さらに、陽電子放出同位体(例えば、11C、18F、15Oおよび13N)に富化した式(I)の化合物も特に興味深く、それらの化合物は、例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)研究において使用され得る。
定義
【0029】
様々な局面および実施形態を含む本発明を説明する際、以下の用語は、別段示されない限り、以下の意味を有する。
【0030】
用語「アルキル」は、直鎖もしくは分枝鎖またはそれらの組み合わせであり得る一価の飽和炭化水素基を意味する。別段定義されない限り、そのようなアルキル基は、代表的には、1~10個の炭素原子を含む。代表的なアルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(n-Pr)または(nPr)、イソプロピル(i-Pr)または(iPr)、n-ブチル(n-Bu)または(nBu)、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル(t-Bu)または(tBu)、n-ペンチル、n-ヘキシル、2,2-ジメチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-エチルブチル、2,2-ジメチルペンチル、2-プロピルペンチルなどが挙げられる。
【0031】
具体的な数の炭素原子が、特定の用語に対して意図されているとき、炭素原子の数は、その用語の前に示される。例えば、用語「C1~3アルキル」は、1~3個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、ここで、それらの炭素原子は、直鎖または分枝鎖の配置を含む化学的に許容され得る任意の配置で存在する。
【0032】
用語「アルコキシ」は、一価の基-O-アルキルを意味し、ここで、アルキルは、上記のように定義される。代表的なアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどが挙げられる。
【0033】
用語「シクロアルキル」は、単環式または多環式であり得る一価の飽和炭素環式基を意味する。別段定義されない限り、そのようなシクロアルキル基は、代表的には、3~10個の炭素原子を含む。代表的なシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル(cPr)、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチルなどが挙げられる。
【0034】
用語「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0035】
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」、「複素環式」または「複素環式環」は、合計3~10個の環原子を有する一価の飽和または部分不飽和の環式の非芳香族基を意味し、ここで、その環は、2~9個の炭素環原子、ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される1~4個の環ヘテロ原子を含む。複素環式基は、単環式または多環式(すなわち、縮合または架橋)であり得る。代表的な複素環式基の例としては、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリル、インドリン-3-イル、2-イミダゾリニル、テトラヒドロピラニル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-イル、キヌクリジニル、7-アザノルボルナニル、ノルトロパニルなどが挙げられ、ここで、結合点は、任意の利用可能な炭素または窒素環原子に存在する。状況によって複素環式基の結合点が明らかである場合、そのような基は、代わりに、無価種、すなわち、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール、テトラヒドロピランなどと称され得る。
【0036】
用語「治療有効量」は、処置を必要とする患者に投与されたとき、処置をもたらすのに十分な量を意味する。
【0037】
用語「処置」は、本明細書中で使用されるとき、哺乳動物(特にヒト)などの患者における疾患、障害または病状(例えば、胃腸炎症性疾患)の処置を意味し、それには、以下のうちの1つまたはそれより多くのものが含まれる:
【0038】
(a)疾患、障害または病状の発生を予防すること、すなわち、疾患もしくは病状の再発を予防すること、またはその疾患もしくは病状になりやすい患者の予防的処置;
(b)疾患、障害または病状を回復させること、すなわち、患者の疾患、障害もしくは病状を排除するかまたはそれらを後退させること(他の治療剤の効果を相殺することを含む);
(c)疾患、障害または病状を抑制すること、すなわち、患者の疾患、障害または病状の発症を遅延させるかまたは停止させること;または
(d)患者の疾患、障害または病状の症候を軽減すること。
【0039】
用語「薬学的に受容可能な塩」は、患者または哺乳動物(例えば、ヒト)への投与が許容され得る塩(例えば、所与の投与レジメンについて許容され得る哺乳動物の安全性を有する塩)を意味する。代表的な薬学的に受容可能な塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸(edisylic)、フマル酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルクロン酸(glucoronic)、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸およびキシナホ酸(xinafoic acid)などの塩が挙げられる。
【0040】
用語「その塩」は、酸の水素がカチオン(例えば、金属カチオンまたは有機カチオンなど)によって置き換えられたときに形成される化合物を意味する。例えば、カチオンは、プロトン化型の式(I)の化合物、すなわち、1つまたはそれより多くのアミノ基が酸によってプロトン化されている形態であり得る。代表的には、塩は、薬学的に受容可能な塩であるが、これは、患者への投与が意図されていない中間体化合物の塩には求められない。
【0041】
用語「アミノ保護基」は、アミノ窒素において望まれない反応を妨げるのに適した保護基を意味する。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル;アシル基、例えば、アルカノイル基(例えば、アセチルおよびトリ-フルオロアセチル);アルコキシカルボニル基(例えば、tertブトキシカルボニル(Boc));アリールメトキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc));アリールメチル基(例えば、ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)および1,1-ジ-(4’-メトキシフェニル)メチル);シリル基(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBSまたはTBDMS)、[2-(トリメチルシリル)-エトキシ]メチル(SEM));などが挙げられるが、これらに限定されない。数多くの保護基ならびにそれらの導入および除去は、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New Yorkに記載されている。
一般的な合成手順
【0042】
化合物(I)およびそれらの中間体は、商業的に入手可能なまたは日常的に調製される出発物質および試薬を使用して、以下の一般的な方法および手順に従って調製され得る。以下のスキームにおいて使用される置換基および変数(例えば、RおよびX)は、別段示されない限り、本明細書中の他の箇所に定義される意味と同じ意味を有する。さらに、酸性または塩基性の原子または官能基を有する化合物は、別段示されない限り、塩として使用され得るかまたは生成され得る(場合によっては、特定の反応において塩を使用するためには、その反応を行う前に、日常的な手順を使用して、その塩から非塩形態、例えば、遊離塩基に変換することが必要である)。
【0043】
本発明の特定の実施形態が、以下の手順に示され得るかまたは記載され得るが、当業者は、本発明の他の実施形態または局面も、そのような手順を用いて、または当業者に公知の他の方法、試薬および出発物質を用いて、調製され得ることを認識する。特に、化合物(I)は、反応体が異なる順序で混和されることにより最終生成物を生成する途中で異なる中間体が提供される種々のプロセス経路によって調製され得ることが認識される。
【0044】
化合物(I)を調製する一般方法が、スキーム1および2に図示されている。
【0045】
スキーム1
【化3】
出発物質2-1を、エステル(V)に、酸の存在下でのアルコールとの反応により転換し得、ここでRはアルキル基である。いくつかの実施形態において、RはC
1~12アルキル基である。いくつかの実施形態において、このアルコールはエタノールである。化合物(V)をジ-ハロ化合物(IV)に転換し得る。いくつかの実施形態において、(IV)はジ-クロロアナログである。いくつかの実施形態において、その試薬はPOCl
3である。化合物(IV)は、(III)に、塩基の存在下での2-4との反応により転換され得る。化合物(II)は、(III)を1-9と塩基の存在下で反応させることにより形成され得る。最後に、(II)は、(I)に、還元剤の存在下で還元され得る。いくつかの実施形態において、この還元剤は、水素化リチウム源または水素化ナトリウム源である。いくつかの実施形態において、この還元剤は、LiAlH
4、NaBH
4、またはLiBH
4である。いくつかの実施形態において、Rはエチルである。必要に応じて、(I)の薬学的に受容可能な塩が形成され得る。
【0046】
この一般方法に関して、いくつかの実施形態において、RはC1~12アルキルである。いくつかの実施形態において、RはC1~6アルキルである。いくつかの実施形態において、RはC1~3アルキルである。いくつかの実施形態において、Rはエチルである。いくつかの実施形態において、Xは、F、ClまたはBrである。いくつかの実施形態において、XはClである。いくつかの実施形態において、Rはエチルであり、そしてXはClである。
【0047】
スキーム2
【化4】
あるいは、化合物(III)は、化合物(VI)(ここでPGはアミノ保護基である)と塩基(例えば、DIPEA)の存在下で反応して、化合物(VII)を与え得る。化合物(VII)は、還元剤で、対応するアルコール(VIII)に還元され得る。いくつかの実施形態において、この還元剤は、水素化リチウム源または水素化ナトリウム源である。いくつかの実施形態において、この還元剤は、LiAlH
4、NaBH
4、またはLiBH
4である。化合物(VIII)は脱保護されて、化合物(IX)を与え得る。PGがBocである場合、この脱保護は、TFAまたはHClなどの強酸の存在下で行われ得る。最後に、化合物(IX)は、エタンスルホニルクロリドなどのエタンスルホニル源と反応し得る。
【0048】
この一般方法に関して、いくつかの実施形態において、PGはtert-ブトキシカルボニル(Boc)である。いくつかの実施形態において、RはC1~12アルキルである。いくつかの実施形態において、RはC1~6アルキルである。いくつかの実施形態において、RはC1~3アルキルである。いくつかの実施形態において、Rはエチルである。いくつかの実施形態において、Xは、F、ClまたはBrである。いくつかの実施形態において、XはClである。いくつかの実施形態において、Rはエチルであり、そしてXはClである。
【0049】
結晶形態I
別の局面において、本開示は、化合物(I)
【化5】
の結晶形態(形態I)を提供する。
【0050】
1つの局面において、この結晶形態は、11.19±0.20、11.73±0.20、18.80±0.20、および19.29±0.20の2θ値に回折ピークを含む粉末X線回折により特徴付けられる。別の局面において、この結晶形態は、6.75±0.20の2θ値にさらなる回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる。別の局面において、この結晶形態は、5.91±0.20、6.28±0.20、8.08±0.20、16.68±0.20、17.62±0.20、20.53±0.20、および22.16±0.20から選択される2θ値に2つまたはそれより多くのさらなる回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる。
【0051】
粉末X線回折の分野で周知であるように、PXRDパターンのピーク位置は、相対的ピーク高さよりも、比較的、実験の詳細(例えば、サンプル調製および装置のジオメトリの詳細)に感受性でない。したがって、1つの局面において、結晶形態Iは、ピーク位置が、
図1に示されるパターンのピーク位置と実質的に一致する粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0052】
別の局面では、結晶形態Iは、高温に曝露されたときの挙動によって特徴付けられる。
図2に示されているように、10℃/分の加熱速度で記録された示差走査熱量測定(DSC)トレースは、融解転移として特定される、吸熱熱流のピークを示し、これは250.9℃±2℃の温度で吸熱の熱流の極大値を示す。別の局面において、形態Iは、
図2に示されるものに実質的に一致する示差走査熱量測定トレースにより特徴付けられる。
【0053】
図3の熱重量分析(TGA)トレースは、N
2パージ下で、22℃~125℃で約0.70%の重量損失を示す。この化合物は、約250℃の開始温度で分解する。
【0054】
調製2に記載されるように、形態Iは、化合物(I)をエタノールに溶解させて加熱することにより調製され得る。次いで、得られた溶液が約25℃まで冷却される。形態Iは、濾過により単離され得る。
【0055】
別の局面において、本発明は、結晶形態Iを調製する方法を提供し、この方法は:(a)化合物(I)をエタノールなどの希釈剤に溶解させ、そして必要に応じて熱を加えて、反応混合物を形成する工程;(b)この溶液を、必要に応じて撹拌しながら、約25℃まで冷却する工程;および(c)結晶形態Iをこの反応混合物から、例えば濾過により単離する工程を包含する。
【0056】
結晶形態II
別の局面において、本発明は、化合物(I):
【化6】
の、遊離塩基の無水結晶形態である、結晶形態(形態II)を提供する。
【0057】
1つの局面において、この結晶形態は、11.4±0.2、16.2±0.2、16.6±0.2、17.7±0.2、および21.9±0.2の2θ値に回折ピークを含む粉末X線回折により特徴付けられる。
【0058】
別の局面において、この結晶形態は、8.9±0.2、9.5±0.2、および10.2±0.2の2θ値にさらなる回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる。
【0059】
別の局面において、この結晶形態は、14.4±0.2、19.0±0.2、19.2±0.2、19.8±0.2、20.1±0.2、20.4±0.2、20.6±0.2、20.8±0.2、21.3±0.2、25.9±0.2、30.1±0.2、30.5±0.2、30.9±0.2、32.6±0.2、および33.8±0.2から選択される2θ値に2つまたはそれより多くのさらなる回折ピークを有することによりさらに特徴付けられる。
【0060】
粉末X線回折の分野で周知であるように、PXRDパターンのピーク位置は、相対的ピーク高さよりも、比較的、実験の詳細(例えば、サンプル調製および装置のジオメトリの詳細)に感受性でない。したがって、1つの局面において、結晶形態IIは、ピーク位置が、
図5に示されるパターンのピーク位置と実質的に一致する粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0061】
別の局面では、結晶形態IIは、高温に曝露されたときの挙動によって特徴付けられる。
図6に示されているように、10℃/分の加熱速度で記録された示差走査熱量測定(DSC)トレースは、融解転移として特定される、吸熱熱流のピークを示し、これは238.1℃±2℃の温度で吸熱の熱流の極大値を示す。別の局面において、形態IIは、
図6に示されるものに実質的に一致する示差走査熱量測定トレースにより特徴付けられる。
【0062】
図7の熱重量分析(TGA)トレースは、222℃より後の分解に関連する重量損失を示す。
【0063】
形態IIについての代表的なDMSトレースを
図8に示す。5~90%RHでの総水分取り込みは、約0.02%であった。形態IIは非潮解性である。
【0064】
調製20に記載されるように、形態IIは、化合物2-6を、5℃に冷却したEtOHとTHFとの混合物中に懸濁させることにより調製され得る。この懸濁物に、LiBH4が添加され得る。この添加の後に、その温度を10℃まで上昇させ得、そしてこの反応混合物を2時間撹拌し得る。この反応を、水に溶解させた塩化アンモニウムの混合物でクエンチし得る。45℃まで加熱した後に、水をゆっくりと添加して、結晶を生成させ得る。得られたスラリーを45℃で数時間保持し得、次いで15℃で撹拌し得、そして濾過し得る。結晶形態の形態IIをEtOHおよび水ですすぎ得、そして乾燥させて、中間体等級の形態IIを得ることができる。
【0065】
この中間体等級物を、DMSOに加熱しながら溶解し得、その後、その内部温度を約86℃で維持しながらn-PrOHをゆっくりと添加し得る。この混合物を約92℃で約4時間撹拌する。次いで、得られた混合物を約20℃までゆっくりと冷却し、そして約20℃で数時間撹拌する。次いで、形態IIを濾過により単離し得る。結晶形態IIをnPrOHおよびエタノールで洗浄し得、その後、濾過し得る。
【0066】
別の局面において、本開示は、中間体等級の結晶形態IIを精製する方法を提供し、この方法は、(a)中間体等級の形態IIをDMSOなどの希釈剤に溶解させ、そしてこの混合物に熱を加える工程;(b)n-PrOHをゆっくりと添加する工程;(c)この混合物を約90℃で加熱する工程;(d)この溶液を約20℃まで冷却する工程;および(e)結晶形態IIをこの反応混合物から、例えば濾過により単離する工程を包含する。
薬学的組成物
【0067】
化合物(I)およびそれらの薬学的に受容可能な塩は、通常、薬学的組成物または製剤の形態で使用される。化合物(I)は、形態Iまたは形態IIなどの結晶形態で存在し得る。そのような薬学的組成物は、任意の許容され得る投与経路によって患者に投与されてよく、その投与経路としては、経口、局所(経皮を含む)、直腸、経鼻、吸入、および非経口的な投与形式が挙げられるがこれらに限定されない。
【0068】
したがって、上記組成物の局面の1つにおいて、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤および化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物に関する。別の組成物の局面において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤、および化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩の結晶形態(例えば、形態Iまたは形態II)を含有する薬学的組成物に関する。必要に応じて、そのような薬学的組成物は、所望であれば、他の治療剤および/または製剤化剤を含んでもよい。組成物およびその使用を論じる際、「本発明の化合物」は、本明細書中で「活性な作用物質」と称されることがある。
【0069】
本開示の薬学的組成物は、通常、治療有効量の化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を含む。しかしながら、薬学的組成物は、治療有効量より多い、すなわち、大量の組成物または治療有効量より少ない、すなわち、治療有効量を達成するための複数回投与のためにデザインされた個別の単位用量を含むことがあることを当業者は認識する。
【0070】
代表的には、そのような薬学的組成物は、約0.1~約95重量%の活性な作用物質を含み;約5~約70重量%の活性な作用物質が含まれる。
【0071】
任意の従来のキャリアまたは賦形剤を、本発明の薬学的組成物において使用してもよい。特定のキャリアもしくは賦形剤、またはキャリアもしくは賦形剤の組み合わせの選択は、特定の患者を処置するために用いられる投与様式、または病状もしくは疾患状態のタイプに依存する。この点において、特定の投与様式のために好適な薬学的組成物の調製法は、十分に薬学分野の当業者の技術の範囲内である。さらに、本発明の薬学的組成物において使用されるキャリアまたは賦形剤は、商業的に入手可能である。さらなる例証として、従来の製剤化の手法は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(2000);およびH.C.Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(1999)に記載されている。
【0072】
薬学的に受容可能なキャリアとして機能し得る材料の代表例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロース(例えば、微結晶性セルロース)およびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、カカオバターおよび坐剤蝋);油(例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および薬学的組成物において使用される他の無毒性の適合性物質。
【0073】
薬学的組成物は、代表的には、活性な作用物質を薬学的に受容可能なキャリアおよび1つまたはそれより多くの必要に応じた成分と十分かつ完全に混合または混和することによって調製される。次いで、得られた均一に混和された混合物は、従来の手順および器具を用いて、錠剤、カプセル剤、丸剤などに成形または充填され得る。
【0074】
本開示の薬学的組成物は、単位剤形に包装され得る。用語「単位剤形」とは、患者への投与に適した物理的に別々の単位のことを指し、すなわち、各単位は、単独でまたは1つもしくはそれを超えるさらなる単位と組み合わさって所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性な作用物質を含む。例えば、そのような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤など、または非経口投与に適した単位パッケージであり得る。
【0075】
1つの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、経口投与に適している。経口投与に好適な薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、舐剤、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤の形態であり得るか;または水性もしくは非水性液体における溶液または懸濁液として存在し得るか;または水中油型もしくは油中水型の液体エマルジョンとして存在し得るか;またはエリキシル剤もしくはシロップ剤などとして存在し得;それらの各々は、所定の量の本開示の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を活性成分として含んでいる。
【0076】
固形剤形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤など)での経口投与が意図されているとき、本開示の薬学的組成物は、通常、活性な作用物質またはその薬学的に受容可能な塩、および1つまたはそれより多くの薬学的に受容可能なキャリアを含む。必要に応じて、そのような固形剤形は、充填剤または増量剤(例えば、デンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、リン酸二カルシウム、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸);結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア);保湿剤(例えば、グリセロール);崩壊剤(例えば、クロスカルメロース(crosscarmellose)ナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケートおよび/または炭酸ナトリウム);溶解遅延剤(例えば、パラフィン);吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物);湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよび/またはモノステアリン酸グリセロール);吸収剤(例えば、カオリンおよび/またはベントナイト粘土);滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/またはそれらの混合物);着色剤;および緩衝剤を含み得る。
【0077】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存剤ならびに酸化防止剤も、本開示の薬学的組成物に存在し得る。薬学的に受容可能な酸化防止剤の例としては、水溶性の酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);油溶性の酸化防止剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど);および金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)が挙げられる。錠剤、カプセル剤、丸剤などのためのコーティング剤としては、腸溶コーティングのために使用されるもの(例えば、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸、メタクリル酸エステル共重合体、セルロースアセテートトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなど)が挙げられる。
【0078】
本開示の薬学的組成物はまた、例えば、様々な比率でヒドロキシプロピルメチルセルロース;または他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/もしくはミクロスフェアを用いて、活性な作用物質の持続放出または制御放出を提供するように製剤化され得る。さらに、本開示の薬学的組成物は、必要に応じて不透明化剤を含んでもよく、消化管のある特定の部分において、必要に応じて遅延様式で、活性成分だけを放出するようにまたは活性成分を優先的に放出するように製剤化され得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質および蝋が挙げられる。活性な作用物質は、適切な場合、上に記載された賦形剤の1つまたはそれ超とともに、マイクロカプセル化された形態でも存在し得る。
【0079】
経口投与に好適な液体剤形としては、例証として、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。液体剤形は、代表的には、活性な作用物質および不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、オレイン酸、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含む。あるいは、ある特定の液体製剤は、例えば噴霧乾燥によって、粉末に変換され得、その粉末は、従来の手順によって固形剤形を調製するために使用される。
【0080】
懸濁剤は、活性成分またはその薬学的に受容可能な塩に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0081】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、非経口的に(例えば、静脈内、皮下、筋肉内または腹腔内注射によって)も投与され得る。非経口投与の場合、活性な作用物質またはその薬学的に受容可能な塩は、代表的には、非経口投与に好適なビヒクルと混合され、そのビヒクルの例としては、滅菌水溶液、食塩水、低分子量アルコール、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルなどが挙げられる。非経口製剤は、1つまたはそれより多くの酸化防止剤、可溶化剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤または分散剤も含み得る。これらの製剤は、滅菌された注射可能な媒質、滅菌剤の使用、濾過、照射または加熱によって、滅菌され得る。
【0082】
あるいは、本開示の薬学的組成物は、吸入による投与のために製剤化される。吸入による投与に好適な薬学的組成物は、代表的には、エアロゾルまたは粉末の形態であり得る。そのような組成物は、一般に、周知の送達デバイス(例えば、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、噴霧器または同様の送達デバイス)を用いて投与される。
【0083】
加圧容器を用いて吸入によって投与されるとき、本開示の薬学的組成物は、代表的には、活性成分またはその薬学的に受容可能な塩、および好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガス)を含み得る。さらに、薬学的組成物は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、および粉末吸入器での使用に適した粉末を含むカプセルまたはカートリッジ(例えばゼラチンでできたもの)の形態であり得る。好適な粉末基剤の例としては、ラクトースまたはデンプンが挙げられる。
【0084】
局所製剤
皮膚の状態を処置するために、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩は、好ましくは、皮膚への局所投与のために製剤化される。局所組成物は、流体または半固体のビヒクルを含み、これらとしては、ポリマー、増粘剤、緩衝剤、中和剤、キレート剤、防腐剤、界面活性剤または乳化剤、酸化防止剤、蝋または油、軟化薬、日焼け止め剤、および溶媒または混合溶媒系が挙げられ得るが、これらに限定されない。本発明において有用な局所組成物は、広範な種々の製品の型に作製され得る。これらとしては、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、ペースト、フォーム、ムース、およびクレンザーが挙げられるが、これらに限定されない。これらの製品の型は、数種類のキャリア系を含み得、これらとしては、粒子、ナノ粒子、およびリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。所望であれば、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど))が添加され得る。製剤化および投与のための技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Ed.(Easton,Pa.:Mack Publishing Co.,1995)に見出され得る。この製剤は、身体内の所望の標的部位への送達を最大にするように選択され得る。
【0085】
皮膚に塗布される予定の調製物であるローションは代表的に、微細に分割された固体、蝋状物質、または液体が分散している、液体または半液体の調製物である。ローションは代表的に、より良好な分散物を生成するための懸濁化剤、ならびに活性な作用物質を皮膚または毛に接触させて配置および保持するために有用な化合物(例えば、メチルセルロース、またはナトリウムカルボキシメチル-セルロースなど)を含有する。
【0086】
本開示による送達のために、活性な作用物質またはその薬学的に受容可能な塩を含有するクリームは、水中油型または油中水型のいずれかの、粘性の液体または半固体のエマルジョンである。クリーム基剤は、水洗可能であり、そして油相、乳化剤および水相を含む。この油相は一般に、ペトロラタムまたは脂肪アルコール(例えば、セチルアルコールもしくはステアリルアルコール)からなり、この水相は通常、必須ではないが、体積が油相より大きく、そして一般に、湿潤剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacyに説明されるように、一般に、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性または両性の界面活性剤である。クリーム製剤の構成要素としては、油性基剤(例えば、ペトロラタム(petrolatrum)、鉱油、植物油および動物油ならびにトリグリセリド);クリーム基剤(例えば、ラノリンアルコール、ステアリン酸およびセトステアリルアルコール);ゲル基剤(例えば、ポリビニルアルコール);溶媒(例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール);乳化剤(例えば、ポリソルベート、ステアレート(例えば、ステアリン酸グリセリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル(octylhydroxystearate)、ステアリン酸ポリオキシル、PEGステアリルエーテル、パルミチン酸イソプロピルおよびモノステアリン酸ソルビタン));安定剤(例えば、多糖および亜硫酸ナトリウム);軟化薬(すなわち、保湿剤(例えば、中鎖トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピルおよびジメチコーン));硬化剤(例えば、セチルアルコールおよびステアリルアルコール);抗菌剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、ソルビン酸、ジアゾリジニル尿素およびブチル化ヒドロキシアニソール);浸透促進剤(例えば、N-メチルピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレートなど);およびキレート剤(例えば、エデト酸二ナトリウム)が挙げられ得る。
【0087】
ゲル製剤もまた、本発明に関連して使用され得る。局所薬物製剤の分野の当業者により理解されるように、ゲルは半固体である。単相ゲルは、キャリア液体(これは代表的に水性であるが、溶媒または溶媒ブレンドであってもよい)の全体に実質的に均一に分布した有機巨大分子を含有する。
【0088】
半固体調製物である軟膏は、代表的に、ペトロラタムまたは他の石油誘導体をベースとする。当業者により理解されるように、使用されるべき具体的な軟膏基剤は、所定の製剤のために選択された活性な作用物質のために最適な送達を提供し、そして好ましくは、他の望ましい特性(例えば、軟化性など)もまた提供する、軟膏基剤である。他のキャリアまたはビヒクルと同様に、軟膏基剤は、不活性であり、安定であり、非刺激性であり、そして非感作性であるべきである。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Ed.(Easton,Pa.:Mack Publishing Co.,1995)の1399~1404頁で説明されるように、軟膏基剤は、4つのクラス、すなわち、油性基剤;乳化性基剤;エマルジョン基剤;および水溶性基剤に分けられ得る。油性軟膏基剤としては、例えば、植物油、動物から得られる脂肪、および石油から得られる半固体炭化水素が挙げられる。乳化性軟膏基剤(吸収性軟膏基剤としても公知)は、水をほとんどまたは全く含まず、そして例えば、硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリンおよび親水性ペトロラタムが挙げられる。エマルジョン軟膏基剤は、油中水型(W/O)エマルジョンまたは水中油型(O/W)エマルジョンのいずれかであり、そして例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンおよびステアリン酸が挙げられる。水溶性軟膏基剤は、種々の分子量のポリエチレングリコールから調製され得、ここでまた、さらなる情報に関して、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(前出)が参照されるべきであり得る。軟膏製剤において使用するために適切な油性物質としては、ペトロラタム(ペトロレアムゼリー)、蜜蝋、カカオバター、シアバターおよびセチルアルコールが挙げられる。軟膏は、所望であれば、浸入増強剤を必要に応じてさらに含有し得る。
【0089】
本発明の有用な製剤としてはまた、スプレーが挙げられる。スプレーは一般に、活性な作用物質を、水性および/またはアルコール性溶液中で提供し、これは、送達のために、皮膚または毛に噴霧され得る。このようなスプレーとしては、活性な作用物質の溶液の濃縮を、送達後に投与の部位で提供するように製剤化されたスプレーが挙げられる。例えば、スプレー溶液は、薬物または活性な作用物質が溶解し得るアルコールまたは他の同様の揮発性液体から主としてなり得る。皮膚または毛に送達されると、このキャリアが蒸発して、濃縮された活性な作用物質を投与部位に残す。
【0090】
局所薬学的組成物はまた、適切な固体またはゲル相のキャリアを含有し得る。このようなキャリアの例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
局所薬学的組成物はまた、適切な乳化剤(emulsifier)を含有し得る。乳化剤とは、水中油または油中水の混合および懸濁を増強または容易にする薬剤をいう。本明細書中で使用される乳化剤(emulsifying agent)は、単一の乳化剤からなり得るか、あるいは非イオン性、陰イオン性、陽イオン性もしくは両性の界面活性剤、または2つもしくはそれより多くのこのような界面活性剤のブレンドであり得、本明細書中で使用するために好ましいものは、非イオン性または陰イオン性の乳化剤である。このような表面活性物質は、”McCutcheon’s Detergent and Emulsifiers,”North American Edition,1980年McCutcheon Division,MC Publishing Company出版,175 Rock Road,Glen Rock,NJ.07452,USA.に記載されている。
【0092】
セテアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、乳化蝋、モノステアリン酸グリセリルなどの、高分子量アルコールが使用され得る。他の例は、エチレングリコールジステアレート、トリステアリン酸ソルビタン、プロピレングリコールモノステアレート、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標) 60)、ジエチレングリコールモノラウレート、モノパルミチン酸ソルビタン、スクロースジオレエート、スクロースステアレート(CRODESTA F-160)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ 30)、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(BRIJ 72)、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(BRIJ 721)、ポリオキシエチレンモノステアレート(Myrj 45)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(TWEEN(登録商標) 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN(登録商標) 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN(登録商標) 20)およびオレイン酸ナトリウムである。コレステロールおよびコレステロール誘導体もまた、外用エマルジョンにおいて使用され得る。
【0093】
適切な非イオン性乳化剤の例は、Paul L.Lindnerにより、”Emulsions and Emulsion”,編者Kenneth Lissant,Dekker,New York,N.Y.出版,1974に記載されている。使用され得る非イオン性乳化剤の例としては、BRIJ製品(例えば、BRIJ 2(ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル)、BRIJ S20(ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル)、BRIJ 72(4.9のHLBを有するポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル)、BRIJ 721(15.5のHLBを有するポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル)、Brij 30(9.7のHLBを有するポリオキシエチレンラウリルエーテル))、Polawax(8.0のHLBを有する乳化蝋)、Span(登録商標) 60(4.7のHLBを有するモノステアリン酸ソルビタン)、Crodesta F-160(14.5のHLBを有するスクロースステアレート”)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
局所薬学的組成物はまた、適切な軟化薬を含有し得る。軟化薬とは、乾燥の予防または軽減のため、および皮膚または毛の保護のために使用される物質である。有用な軟化薬としては、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、およびステアリルアルコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。広範な種々の適切な軟化薬が公知であり、そして本明細書中で使用され得る。例えば、Sagarin,Cosmetics,Science and Technology,2nd Edition,Vol.1,pp.32-43(1972)、およびDecknerらに対する米国特許第4,919,934号(1990年4月24日発行)(これらの両方は、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0095】
局所薬学的組成物はまた、適切な酸化防止剤(酸化を抑制することが既知である物質)を含有し得る。本発明に従って使用するのに適した酸化防止剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸パルミテート(ascorbic palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,4,5-トリヒドロキシブチロフェノン、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、エリソルビン酸、グアヤクガム、没食子酸プロピル、チオジプロピオン酸、チオジプロピオン酸ジラウリル、tert-ブチルヒドロキノンおよびトコフェロール(ビタミンEなど)などが挙げられるが、これらに限定されず、これらの化合物の薬学的に受容可能な塩およびエステルを含む。好ましくは、この酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、その薬学的に受容可能な塩またはエステル、あるいはこれらの混合物である。最も好ましくは、この酸化防止剤はブチル化ヒドロキシトルエンである。
【0096】
局所薬学的組成物はまた、適切な防腐剤を含有し得る。防腐剤とは、抗微生物剤として働くために、薬学的製剤に添加される化合物である。非経口製剤において有効かつ受容可能であることが当該分野において公知である防腐剤のうちでもとりわけ、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウム、クロロヘキシジン、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、o-クレゾール、p-クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、およびこれらの種々の混合物である。例えば、Wallhausser,K.-H.,Develop.Biol.Standard,24:9-28(1974)(S.Krager,Basel)を参照のこと。
【0097】
局所薬学的組成物はまた、脂質二重層を通過しない金属陽イオンと錯体を形成するための、適切なキレート剤を含有し得る。適切なキレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)および8-アミノ-2-[(2-アミノ-5-メチルフェノキシ)メチル]-6-メトキシキノリン-N,N,N’,N’-四酢酸,四カリウム塩(QUIN-2)が挙げられる。好ましくは、これらのキレート剤は、EDTAおよびクエン酸である。
【0098】
局所薬学的組成物はまた、製剤のpHを薬学的に受容可能な範囲内に調整するために使用される、適切な中和剤を含有し得る。中和剤の例としては、トロラミン、トロメタミン、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、および酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
局所薬学的組成物はまた、適切な粘度上昇剤を含有し得る。これらの成分は、ポリマー含有溶液の粘度を、この薬剤とこのポリマーとの相互作用により増大させることが可能な、拡散性化合物である。Carbopol Ultrez 10が、粘度上昇剤として使用され得る。
【0100】
局所投与に適したローションなどの液体形態は、適切な水性または非水性のビヒクルを、緩衝剤、懸濁化剤および分散剤、増粘剤、ならびに浸入増強剤などと一緒に含有し得る。クリームまたはペーストなどの固体形態は、例えば、以下の成分:基材としての水、油、アルコールまたはグリースなどのいずれかを、界面活性剤、ポリエチレングリコールなどのポリマー、増粘剤、および固体などと一緒に含有し得る。液体または固体の製剤は、リポソーム、ミクロソーム、およびミクロスポンジなどの、増強された送達技術を含み得る。さらに、化合物は、徐放系(例えば、治療剤を含む固体疎水性ポリマーの半透マトリックス)を使用して、送達され得る。種々の徐放材料が樹立されており、そして当業者に周知である。
【0101】
局所適用のために製剤化される場合、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、0.1~50重量%で存在し得る。いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、0.1~25重量%で存在する。いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、0.1~10重量%で存在する。いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、0.25~5重量%で存在する。いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、0.25~2重量%で存在する。いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、0.25~1重量%で存在する。いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、0.05~0.5重量%で存在する。
【0102】
いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、重量で約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3%、約3.25%、約3.5%、約3.75%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%または約10%で存在する。
【0103】
いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を含有する薬学的組成物は、1つまたはそれより多くのさらなる治療剤をさらに含有する。いくつかの実施形態において、この1つまたはそれより多くのさらなる治療剤は、自己免疫性皮膚疾患を処置するために有用である。いくつかの実施形態において、この1つまたはそれより多くのさらなる治療剤は、炎症性皮膚疾患を処置するために有用である。いくつかの実施形態において、この1つまたはそれより多くのさらなる治療剤は、アトピー性皮膚炎を処置するために有用である。いくつかの実施形態において、この1つまたはそれより多くのさらなる治療剤は、円形脱毛症を処置するために有用である。薬学的組成物中で化合物(I)と組み合わせられ得る特定のクラスの化合物または特定の化合物は、後の段落に例示されている。
【0104】
以下の非限定的な例は、本発明の代表的な薬学的組成物を例証する。
【0105】
錠剤経口固形剤形
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、例えば、錠剤1つあたり5mg、20mgまたは40mgの活性な作用物質という単位投与量が提供されるように、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドンおよびクロスカルメロースナトリウムと4:5:1:1の比で乾式混合され、錠剤に圧縮される。
【0106】
カプセル経口固形剤形
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、例えば、カプセル1つあたり5mg、20mgまたは40mgの活性な作用物質という単位投与量が提供されるように、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドンおよびクロスカルメロースナトリウムと4:5:1:1の比で湿式造粒によって混和され、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのカプセルに充填される。
【0107】
液体製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩(0.1%)、水(98.9%)およびアスコルビン酸(1.0%)を含む液体製剤が、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を水とアスコルビン酸との混合物に加えることによって形成される。
【0108】
腸溶コーティングされた経口剤形
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を、ポリビニルピロリドンを含む水溶液に溶解し、1:5w/wという活性な作用物質:ビーズの比で微結晶性+セルロース上または糖のビーズ上にスプレーコーティングし、次いで、アクリル共重合体、例えば、商品名Eudragit-L(登録商標)およびEudragit-S(登録商標)として入手可能なアクリル共重合体の組み合わせまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む腸溶コーティングのおよそ5%重量増加を適用する。腸溶コーティングされたビーズを、例えば、カプセル1つあたり30mgの活性な作用物質という単位投与量が提供されるように、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのカプセルの中に充填する。
【0109】
腸溶コーティングされた経口剤形
Eudragit-L(登録商標)とEudragit-S(登録商標)との組み合わせまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む腸溶コーティングを、上に記載された錠剤経口剤形またはカプセル経口剤形に適用する。
【0110】
局所投与用の軟膏製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、ペトロラタム、C8~C10トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸オクチルおよびN-メチルピロリドンと、ある比で混和される。
【0111】
局所投与用の軟膏製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、ペトロラタム、C8~C10トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ベンジルアルコールおよびN-メチルピロリドンと、ある比で混和される。
【0112】
局所投与用の軟膏製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、白色ワセリン、プロピレングリコール、モノ-およびジ-グリセリド、パラフィン、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびエデト酸カルシウム二ナトリウムと、ある比で混和される。
【0113】
局所投与用の軟膏製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、鉱油、パラフィン、炭酸プロピレン、白色ワセリンおよび白蝋と混和される。
【0114】
局所投与用のクリーム製剤
鉱油が、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、プロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピル、ポリソルベート60、セチルアルコール、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリオキシル40、ソルビン酸、メチルパラベンおよびプロピルパラベンと混和されて、油相が形成され、それが、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む組成物が提供されるように、剪断混合(shear blending)によって精製水と混和される。
【0115】
局所投与用のクリーム製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、ベンジルアルコール、セチルアルコール、無水クエン酸、モノグリセリドおよびジグリセリド、オレイルアルコール、プロピレングリコール、硫酸セトステアリルナトリウム、水酸化ナトリウム、ステアリルアルコール、トリグリセリドならびに水を含むクリーム製剤は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む。
【0116】
局所投与用のクリーム製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、セトステアリルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、プロピレングリコール、セトマクロゴール1000、ジメチコーン360、クエン酸、クエン酸ナトリウムおよび精製水を、保存剤としてイミド尿素、メチルパラベンおよびプロピルパラベンとともに含むクリーム製剤は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む。
【0117】
局所投与用のクリーム製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、ステアリン酸、セトステアリルアルコール、パルミチン酸イソプロピル、オクチルヒドロキシステアレート、BRIJ S2(PEG 2ステアリルエーテル)、BRIJ S20(PEG 20ステアリルエーテル)、N-メチルピロリジン、PEGおよび水を含むクリーム製剤は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む。
【0118】
局所投与用のクリーム製剤
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、ステアリン酸、セトステアリルアルコール、パルミチン酸イソプロピル、オクチルヒドロキシステアレート、BRIJ S2(PEG 2ステアリルエーテル)、BRIJ S20(PEG 20ステアリルエーテル)、N-メチルピロリジン、PEG400および水を含むクリーム製剤は、重量基準で0.05%~5%の活性な作用物質を含む。
【0119】
有用性
化合物(I)は、JAKファミリーの酵素、すなわち、JAK1、JAK2、JAK3、およびTYK2の強力な阻害剤であることが示されている。JAK酵素のファミリーの阻害は、多くの主要な炎症誘発サイトカインのシグナル伝達を阻害し得る。したがって、化合物(I)は、胃腸炎症性疾患、炎症性およびそう痒性の皮膚疾患、炎症性眼疾患、ならびに炎症性呼吸疾患などの炎症性疾患の処置において有用であると予測される。
【0120】
炎症性皮膚疾患
アトピー性皮膚炎は、JAK-STAT経路に依存する炎症誘発サイトカイン、特に、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、およびIFNγの上昇に関連付けられている。化合物(I)は、4つ全てのJAK酵素の強力な阻害を示すので、アトピー性皮膚炎および他の炎症性皮膚疾患に特徴的な炎症誘発サイトカインを強力に阻害すると予測される。化合物(I)はまた、アッセイ4において、TSLPにより誘導されるTARCの阻害について、7.8のpIC50値を示すことが、本明細書中で示された
【0121】
化合物(I)は、アッセイ2に記載される細胞アッセイにおいて、IL-13により誘導されるSTAT6のリン酸化の阻害について、8.5のpIC50値を示した。化合物(I)はまた、アッセイ13において、正常ヒト表皮ケラチノサイトにおけるIL-13により誘導されるSTAT6のリン酸化の阻害について、8.3のpIC50値を示した。さらに、アッセイ6の、化合物(I)のモデルのクリーム製剤および軟膏製剤は、ミニブタにおいて、検出可能な血漿曝露なしで、表皮および真皮の層での有意な化合物曝露を実証した。切除したばかりのヒト皮膚を使用するエキソビボ薬物動力学アッセイにおいて、化合物(I)は、CXCL10およびCCL2遺伝子発現を阻害することが示された。化合物(I)は、ヒト皮膚アッセイにおいて、良好な透過性を示すことが示された。化合物(I)はまた、アッセイ9において、インビボモデルでのIL-31により誘導されるpSTAT3の産生を80%阻害した。最後に、化合物(I)は、アッセイ10において、マウスでのTPAにより誘導される刺激性接触皮膚炎モデルで、用量依存性効果を示した。
【0122】
化合物(I)はまた、アッセイ11に記載される細胞アッセイにおける、IL-2により誘導されるSTAT5のリン酸化についての8.4のpIC50値、アッセイ12で、ヒトCD3+ T細胞におけるIL-12により誘導されるSTAT4のリン酸化についての7.2のpIC50値、アッセイ14で、正常ヒト表皮ケラチノサイトにおけるIL-22により誘導されるSTAT3のリン酸化についての8.4のpIC50値を示すことが示された。最後に、インターロイキン-22(IL-22)により抑制されるフィラグリン発現についての化合物(I)の回収が、1μM未満の濃度で観察された。IL-12、IL-22、およびIL-23は、乾癬に関与するサイトカインである(Baliwag et al.,Cytokine,2015,73(2),342-350 2015)。これらのサイトカインは、JAK2およびTyk2酵素を介してシグナル伝達する(Ishizaki et al.,J.Immunol.,2011,187,181-189)。これらのサイトカインを標的とする抗体治療は、乾癬において臨床的有用性を実証している(Schadler et al.,Disease-a-Month,2018,1-40)。これらのサイトカインを遮断し得る局所的JAK阻害剤は、これらの疾患において効力があると予測される。これらのサイトカインは、Tyk2およびJAK2を介してシグナル伝達するので、化合物(I)は、これらの疾患において活性を有すると予測される。
【0123】
JAK阻害剤の、有意な全身レベルの非存在下での持続した皮膚レベルは、全身に働く有害な影響なしに、皮膚での強力な局所的な抗炎症活性および抗そう痒活性をもたらすと予測される。このような化合物は、多数の皮膚の炎症状態またはそう痒状態において有益であると予測される。これらの状態としては、アトピー性皮膚炎、白斑、皮膚T細胞リンパ腫およびサブタイプ(セザリー症候群、菌状息肉腫、パジェット様細網症、肉芽腫性皮膚弛緩症(granulomatous slack skin)、リンパ腫様丘疹症、慢性苔癬状ひこう疹、急性痘瘡状苔癬状ひこう疹、CD30+皮膚T細胞リンパ腫、二次性皮膚CD30+大細胞型リンパ腫、非菌状息肉腫 CD30-皮膚大細胞型T細胞リンパ腫、多形性T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、皮下T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、分芽性NK細胞リンパ腫)、結節性痒疹、扁平苔癬、接触皮膚炎、異汗性湿疹、湿疹、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、うっ血性皮膚炎、原発性限局性皮膚アミロイドーシス、水疱性類天疱瘡、対宿主性移植片病の皮膚症状、類天疱瘡、円板状狼瘡(discoid lupus)、環状肉芽腫、限局性神経皮膚炎、そう痒症、外陰部/陰嚢/肛門周囲のそう痒症、硬化性苔癬、疱疹後神経痛の痒み、毛孔性扁平苔癬、乾癬、ならびに禿髪性毛包炎(foliculitis decalvans)が挙げられるが、これらに限定されない。特に、アトピー性皮膚炎(Bao et al.,JAK-STAT,2013,2,e24137)、円形脱毛症(Xing et al.,Nat Med.2014,20,1043-1049)(単在性円形脱毛症、多在性円形脱毛症、蛇行状脱毛症、全身性円形脱毛症、全頭型円形脱毛症、および髭円形脱毛症などのサブタイプが挙げられる)、白斑(Craiglow et al,JAMA Dermatol.2015,151,1110-1112)、皮膚T細胞リンパ腫(Netchiporouk et al.,Cell Cycle.2014;13,3331-3335)、結節性痒疹(Sonkoly et al.,J Allergy Clin Immunol.2006,117,411-417)、扁平苔癬(Welz-Kubiak et al.,J Immunol Res.2015,ID:854747)、原発性限局性皮膚アミロイドーシス(Tanaka et al.,Br J Dermatol.2009,161,1217-1224)、水疱性類天疱瘡(Feliciani et al.,Int J Immunopathol Pharmacol.1999,12,55-61)、ならびに対宿主性移植片病の皮膚症状(Okiyama et al.,J Invest Dermatol.2014,134,992-1000)は、JAKの活性化を介してシグナル伝達する特定のサイトカインの上昇により特徴付けられる。したがって、化合物(I)は、これらのサイトカインにより駆動される、関連する皮膚の炎症またはそう痒症を軽減することが可能であり得る。特に、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、アトピー性皮膚炎および他の炎症性皮膚疾患の処置のために有用であると予測される。
【0124】
表13に示されるように、化合物(I)は、ヒトミクロソームにおいて高いクリアランスを有することが示された。したがって、これは迅速に排出されるという利点を有し、これは、全身曝露を最小にし、そして有害な影響の危険性を低下させる。
【0125】
表13に示されるように、化合物(I)はまた、高い透過性を有し、これは、皮膚へのより良好な浸透に結び付けられるようであるので、皮膚の適応症のために有益である。
【0126】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)における炎症性または自己免疫性の皮膚疾患を処置する方法を提供し、この方法は、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を、この哺乳動物の皮膚に塗布する工程を包含する。
【0127】
いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)における炎症性または自己免疫性の皮膚疾患を処置する方法を提供し、この方法は、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩をこの哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0128】
いくつかの実施形態において、この炎症性皮膚疾患はアトピー性皮膚炎である。いくつかの実施形態において、このアトピー性皮膚炎は、軽症~中等症である。いくつかの実施形態において、このアトピー性皮膚炎は、中等症~重症である。
【0129】
いくつかの実施形態において、この自己免疫性皮膚疾患は円形脱毛症である。
【0130】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩はまた、炎症性皮膚疾患を処置するために有用な1つまたはそれより多くの化合物と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、この1つまたはそれより多くの化合物は、ステロイド、コルチコステロイド、抗生物質、ヒスタミンH1受容体アンタゴニスト、カルシニューリン阻害剤、IL-13アンタゴニスト、PDE 4阻害剤、Gタンパク質共役型受容体-44アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、5-HT 1a受容体アンタゴニスト、5-HT 2b受容体アンタゴニスト、α2アドレナリン受容体アゴニスト、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト、CCR3ケモカイン、アンタゴニスト、コラゲナーゼ阻害剤、細胞質ホスホリパーゼA2阻害剤、エオタキシンリガンド阻害剤、GATA 3転写因子阻害剤、ヒスタミンH4受容体アンタゴニスト、IL-10アンタゴニスト、IL-12アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、IL-2アンタゴニスト、IL-23アンタゴニスト、IL-4受容体モジュレーターIL-15アンタゴニスト、IL-6アンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、IL-9アンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト、免疫グロブリンEアンタゴニスト、免疫グロブリンEモジュレーター、インターフェロンγ受容体アンタゴニスト、インターフェロンγリガンド、インターロイキン33リガンド阻害剤、インターロイキン-31受容体アンタゴニスト、ロイコトリエンアンタゴニスト、肝臓X受容体アゴニスト、肝臓X受容体βアゴニスト、核性因子κB阻害剤、OX-40受容体アンタゴニスト、PGD2アンタゴニスト、ホスホリパーゼA2阻害剤、SH2ドメインイノシトールホスファターゼ1刺激因子、胸腺間質リンパタンパク質(thymic stromal lymphoprotein)リガンド阻害剤、TLRモジュレーター、TNFαリガンドモジュレーター、TLR9遺伝子刺激因子、細胞傷害性Tリンパ球タンパク質-4刺激因子、オピオイド受容体κアゴニスト、ガレクチン-3阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ-1阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ-2阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ-3阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ-6阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、グルココルチコイドアゴニスト、Sykチロシンキナーゼ阻害剤、TrkA受容体アンタゴニスト、インテグリンα-4/β-1アンタゴニスト、インターロイキン1様受容体アンタゴニスト、インターロイキン-1変換酵素阻害剤、インターロイキン-31受容体アンタゴニスト、KCNA電位開口型カリウムチャネル-3阻害剤、PDE4B遺伝子阻害剤、カリクレイン2阻害剤、スフィンゴシン-1-ホスフェート受容体-1アゴニスト、網膜色素上皮タンパク質刺激因子、T細胞表面糖タンパク質CD28阻害剤、TGFβアンタゴニストまたはバニロイドVR1(vanilloid VR1)アンタゴニストである。
【0131】
いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、ベタメタゾン、フシジン酸(fucidic acid)、GR-MD-02、デュピルマブ、ロシプトル酢酸塩、AS-101、シクロスポリン、IMD-0354、セクキヌマブ、アクチミューン(Actimmune)、レブリキズマブ(lebrikizumab)、CMP-001、メポリズマブ、ペグカントラチニブ(pegcantratinib)、テゼペルマブ(tezepelumab)、MM-36、クリサボロール(crisaborole)、ALX-101、ベルチリムマブ(bertilimumab)、FB-825、AX-1602、BNZ-1、アバタセプト、タクロリムス、ANB-020、JTE-052、ZPL-389、ウステキヌマブ、GBR-830、GSK-3772847、ASN-002、レメチノスタット(remetinostat)、アプレミラスト、チマピプラント(timapiprant)、MOR-106、アシバトレプ(asivatrep)、ネモリズマブ(nemolizumab)、フェビピプラント、ドキシサイクリン、MDPK-67b、デスロラタジン(desloratadine)、トラロキヌマブ、フェキソフェナジン、ピメクロリムス(pimecrolimus)、ベポタスチン、ナルフラフィン、VTP-38543、Q-301、リゲリズマブ(ligelizumab)、RVT-201、DMT-210、KPI-150、AKP-11、E-6005、AMG-0101、AVX-001、PG-102、ZPL-521、MEDI-9314、AM-1030、WOL-071007、MT-0814、吉草酸ベタメタゾン、SB-011、エピナスチン、タクロリムス、トラニラスト、またはビロメド(viromed)、あるいはこれらの任意の組み合わせと組み合わせて投与される。
【0132】
いくつかの実施形態において、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、ステロイド、抗生物質および保湿剤と組み合わせて投与される(Lakhani et al.,Pediatric Dermatology,2017,34,3,322-325)。いくつかの実施形態において、この1つまたはそれより多くの化合物は、グラム陽性抗生物質、例えば、ムピロシンまたはフシジン酸(fusidic acid)である。
【0133】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩はまた、炎症性皮膚疾患を処置するために、グラム陽性抗生物質、例えば、ムピロシンおよびフシジン酸と組み合わせて使用される。したがって、1つの局面において、本発明は、哺乳動物における炎症性皮膚疾患を処置する方法を提供し、この方法は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、およびグラム陽性抗生物質を、この哺乳動物の皮膚に塗布する工程を包含する。別の局面において、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、グラム陽性抗生物質、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。
【0134】
したがって、別の局面において、本発明は、皮膚の炎症性障害の処置において使用するための治療用組み合わせ物を提供し、この組み合わせ物は、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、および皮膚の炎症性障害を処置するために有用な1つまたはそれより多くの他の治療剤を含有する。第二の薬剤(単数または複数)は、含有される場合、治療有効量で、すなわち、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩と一緒に共投与される場合に治療上有益な効果を生じる任意の量で、存在する。
【0135】
したがって、化合物(I)またはその薬学的な塩、および皮膚の炎症性障害を処置するために有用な1つまたはそれより多くの他の治療剤を含有する薬学的組成物もまた提供される。
【0136】
さらに、方法の局面において、本発明は、皮膚の炎症性障害を処置する方法を提供し、この方法は、この哺乳動物に、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、および皮膚の炎症性障害を処置するために有用な1つまたはそれより多くの他の治療剤を提供する工程を包含する。
【0137】
胃腸炎症性疾患
JAKファミリーの酵素の阻害に起因して、化合物(I)は、種々の胃腸炎症性適応症に有用であると予想され、それらの適応症としては、潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎、汎大腸炎、潰瘍性直腸炎および左側大腸炎)、クローン病、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、ベーチェット病、セリアック病、免疫チェックポイント阻害剤によって誘発される大腸炎、回腸炎、好酸球性食道炎、移植片対宿主病関連大腸炎および感染性大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。潰瘍性大腸炎(Reimundら、J Clin Immunology,1996,16,144-150)、クローン病(Woywodtら、Eur J Gastroenterology Hepatology,1999,11,267-276)、コラーゲン蓄積大腸炎(Kumawatら、Mol Immunology,2013,55,355-364)、リンパ球性大腸炎(Kumawatら、2013)、好酸球性食道炎(Weinbrand-Goichbergら、Immunol Res,2013,56,249-260)、移植片対宿主病関連大腸炎(Coghillら、Blood,2001,117,3268-3276)、感染性大腸炎(Stallmachら、Int J Colorectal Dis,2004,19,308-315)、ベーチェット病(Zhouら、Autoimmun Rev,2012,11,699-704)、セリアック病(de Nittoら、World J Gastroenterol,2009,15,4609-4614)、免疫チェックポイント阻害剤によって誘発される大腸炎(例えば、CTLA-4阻害剤によって誘発される大腸炎;(Yanoら、J Translation Med,2014,12,191)、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤により誘導される大腸炎)、および回腸炎(Yamamotoら、Dig Liver Dis,2008,40,253-259)は、ある特定の炎症促進性サイトカインのレベルの上昇を特徴とする。多くの炎症促進性サイトカインが、JAKの活性化を介してシグナル伝達するので、本願に記載される化合物は、炎症を軽減することおよび症候の軽減を提供することができ得る。
【0138】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)における胃腸炎症性疾患を処置する方法を提供し、この方法は、この哺乳動物に、薬学的に受容可能なキャリアおよび化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を含有する薬学的組成物を提供する工程を包含する。
【0139】
いくつかの実施形態において、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)における胃腸炎症性疾患を処置する方法を提供し、この方法は、この哺乳動物に、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を提供する工程を包含する。
【0140】
本発明は、哺乳動物における潰瘍性大腸炎を処置する方法をさらに提供し、この方法は、この哺乳動物に、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、あるいは薬学的に受容可能なキャリアおよび本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含有する薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0141】
本発明の化合物は、潰瘍性大腸炎を処置するために使用されるとき、通常、1日1回または1日あたり複数回で経口的に投与され得るが、他の投与形態を使用してもよい。1回に投与される活性な作用物質の量または1日あたりに投与される総量は、通常、処置される症状、選択される投与経路、投与される実際の化合物およびその相対的な活性、個別の患者の年齢、体重および反応、患者の症候の重症度などを含む関連する状況に照らして、医師によって決定される。
【0142】
潰瘍性大腸炎および他の胃腸炎症性障害の処置に好適な用量は、平均的な70kgのヒトの場合、約5~約300mg/日および約20~約70mg/日という活性な作用物質を含む、約1~約400mg/日という活性な作用物質の範囲であると予想される。
【0143】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩はまた、胃腸炎症性障害の処置をもたらすために、同じ機序または異なる機序によって作用する1つまたはそれより多くの作用物質と併用して使用され得る。併用療法に有用な作用物質のクラスとしては、アミノサリチレート、ステロイド、全身免疫抑制剤、抗TNFα抗体、抗VLA-4抗体、抗インテグリンα4β7抗体、抗菌薬および止痢薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
化合物(I)と併用して使用され得るアミノサリチレートとしては、メサラミン、オルサラジン(osalazine)およびスルファサラジンが挙げられるが、これらに限定されない。ステロイドの例としては、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、ブデソニド(budesonide)、ベクロメタゾンおよびフルチカゾンが挙げられるが、これらに限定されない。炎症性障害の処置に有用な全身免疫抑制剤としては、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、6-メルカプトプリンおよびタクロリムスが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ(golimumab)およびセルトリズマブを含むがこれらに限定されない抗TNFα抗体も、併用療法において使用され得る。他の機序によって作用する有用な化合物としては、抗VLA-4抗体(例えば、ナタリズマブ)、抗インテグリンα4β7抗体(例えば、ベドリズマブ)、抗菌薬(例えば、リファキシミン)および止痢薬(例えば、ロペラミド)が挙げられる。(Mozaffariら、Expert Opin.Biol.Ther.2014,14,583-600;Danese,Gut,2012,61,918-932;Lamら、Immunotherapy,2014,6,963-971.)
【0145】
ゆえに、別の局面では、本発明は、胃腸炎症性障害の処置において使用するための治療的組み合わせを提供し、その組み合わせは、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、および胃腸炎症性障害の処置に有用な1つまたはそれより多くの他の治療剤を含む。例えば、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、ならびにアミノサリチレート、ステロイド、全身免疫抑制剤、抗TNFα抗体、抗VLA-4抗体、抗インテグリンα4β7抗体、抗菌薬および止痢薬から選択される1つまたはそれより多くの作用物質を含む組み合わせを提供する。第二の作用物質(単数または複数)は、含められるとき、治療有効量で、すなわち、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩と共投与されたときに治療的に有益な効果をもたらす任意の量で存在する。
【0146】
ゆえに、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、および胃腸炎症性障害の処置に有用な1つまたはそれより多くの他の治療剤を含む薬学的組成物も提供される。
【0147】
さらに、方法の局面において、本発明は、胃腸炎症性障害を処置する方法であって、その方法が、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、および胃腸炎症性障害の処置に有用な1つまたはそれより多くの他の治療剤を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0148】
呼吸器疾患
JAK-STAT経路を通じてシグナル伝達するサイトカイン、特に、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-11、IL-13、IL-23、IL-31、IL-27、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、インターフェロン-γ(IFNγ)、および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、喘息性炎症および他の炎症性呼吸器疾患に関与している。上記のように、化合物(I)は、JAKの強力な阻害剤であることが示されており、細胞アッセイにおいてIL-13炎症促進性サイトカインの強力な阻害が実証されている。
【0149】
喘息の前臨床モデルにおいて、JAK阻害剤の抗炎症活性が確実に実証されている(Malaviya et al.,Int Immunopharmacol,2010,10,829,-836;Matsunaga et al.,Biochem and Biophys Res Commun,2011,404,261-267;Kudlacz et al.,Eur J Pharmacol,2008,582,154-161)。したがって、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、喘息などの炎症性呼吸器障害の処置に有用であり得る。肺の炎症および線維症は、喘息に加えて他の呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症が含まれる)、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、気腫、および閉塞性細気管支炎など)に特徴的である。したがって、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症が含まれる)、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、気腫、閉塞性細気管支炎、慢性移植肺機能不全(CLAD)、肺移植拒絶、およびサルコイドーシスの処置に有用であり得る。
【0150】
したがって、1つの局面において、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)の呼吸器疾患を処置する方法であって、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0151】
1つの局面において、呼吸器疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症が含まれる)、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、気腫、閉塞性細気管支炎、アレルギー性鼻炎、またはサルコイドーシスである。別の局面において、呼吸器疾患は、喘息または慢性閉塞性肺疾患である。
【0152】
1つのさらなる局面において、呼吸器疾患は、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫、気管支拡張、または浸潤性肺疾患である。さらに別の局面において、呼吸器疾患は、薬剤誘起性肺臓炎、真菌誘起性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増加症候群、レフラー症候群、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎、または免疫チェックポイント阻害剤誘起性肺臓炎である。
【0153】
本発明は、さらに、呼吸器疾患を処置する方法であって、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0154】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩はまた、呼吸器疾患に有用な1または複数の化合物と併用して使用され得る。
眼疾患
【0155】
多数の眼疾患が、JAK-STAT経路に依存する炎症促進性サイトカインの上昇に関連している。
【0156】
したがって、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、いくつかの眼疾患(ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、眼乾燥症、加齢性黄斑変性、およびアトピー性角結膜炎が挙げられるが、これらに限定されない)の処置に有用であり得る。
【0157】
特に、ブドウ膜炎(Horai and Caspi,J Interferon Cytokine Res,2011,31,733-744)、糖尿病性網膜症(Abcouwer,J Clin Cell Immunol,2013,Suppl 1,1-12)、糖尿病性黄斑浮腫(Sohn et al.,American Journal of Opthamology,2011,152,686-694)、眼乾燥症(Stevenson et al,Arch Ophthalmol,2012,130,90-100)、網膜静脈閉塞 (Shchuko et al,Indian Journal of Ophthalmology,2015,63(12),905-911)、および加齢性黄斑変性(Knickelbein et al,Int Ophthalmol Clin,2015,55(3),63-78)は、JAK-STAT経路を介してシグナル伝達する一定の炎症促進性サイトカインの上昇を特徴とする。したがって、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、関連する眼炎症を軽減し、疾患の進行を逆行させるか、症状を緩和することができ得る。
【0158】
したがって、1つの局面において、本発明は、哺乳動物の眼疾患を処置する方法であって、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、あるいは化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩および薬学的キャリアを含む薬学的組成物を、哺乳動物の眼に投与する工程を含む、方法を提供する。1つの局面において、眼疾患は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、眼乾燥症、加齢性黄斑変性、またはアトピー性角結膜炎である。1つの局面において、本方法は、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩を硝子体内注射によって投与する工程を含む。
【0159】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩はまた、眼疾患に有用な1または複数の化合物と併用して使用され得る。
他の疾患
【0160】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩はまた、他の炎症性疾患、自己免疫疾患、または癌などの他の疾患を処置するのに有用であり得る。
【0161】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩はまた、口腔、口の粘膜および再発性アフタ性口内炎を処置するのに有用であり得る。
【0162】
化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩は、関節炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、移植片拒絶、眼球乾燥、乾癬性関節炎、糖尿病、インスリン依存性糖尿病、運動ニューロン疾患、骨髄異形成症候群、疼痛、筋肉減少、悪液質、敗血症性ショック、全身性エリテマトーデス、白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、強直性脊椎炎、骨髄線維症、B細胞リンパ腫、肝細胞癌、ホジキン病、乳癌、多発性骨髄腫、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、卵巣明細胞癌、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、真性赤血球増加症、シェーグレン症候群、軟部組織肉腫、肉腫、脾腫、T細胞リンパ腫、および重症型サラセミアのうちの1または複数の処置に有用であり得る。
【0163】
その開示は、哺乳動物においてこれらの疾患を処置する方法を提供し、この方法は、化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩、あるいは化合物(I)またはその薬学的に受容可能な塩および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を、この哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0164】
以前の段落において、それらの作用物質は、併用療法において使用されるとき、上に開示されたような単一の薬学的組成物として製剤化されてもよいし、それらの作用物質は、同時にまたは別々の時点において同じまたは異なる投与経路によって投与される別個の組成物として提供されてもよい。それらの作用物質は、別々に投与されるとき、所望の治療効果が提供されるように十分に近い時点において投与される。そのような組成物は、別々に包装されてもよいし、キットとして一緒に包装されてもよい。キットの中の2つまたはそれを超える治療剤は、同じ投与経路によって投与されてもよいし、異なる投与経路によって投与されてもよい。
【実施例】
【0165】
以下の合成および生物学の実施例は、本発明を例証するために提供されるのであって、決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。下記の実施例では、以下の省略形は、別段示されない限り、以下の意味を有する。下記に定義されない省略形は、それらの一般に認められている意味を有する。
ACN=アセトニトリル
Bn=ベンジル
Boc=tert-ブトキシカルボニル
d=日数
DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EtOAc=酢酸エチル
EtOH=エチルアルコール
h=時間
HATU=N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
IPA=イソプロピルアルコール
MeOH=メタノール
min=分
NMP=N-メチルピロリドン
RT=室温
TEA=トリエチルアミン
THF=テトラヒドロフラン
TFA=トリフルオロ酢酸
【0166】
試薬および溶媒は、商業的供給業者(Aldrich、Fluka、Sigmaなど)から購入し、さらに精製せずに使用した。反応混合物の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(anal.HPLC)および/または質量分析法によってモニターした。反応混合物は、各反応において具体的に記載されるようにワークアップした;通常、それらは、抽出および他の精製方法(例えば、温度依存性および溶媒依存性の結晶化および沈殿)によって精製した。さらに、反応混合物は、代表的にはC18またはBDSカラムパッキングおよび従来の溶離剤を用いる、カラムクロマトグラフィーまたは分取HPLCによって通例のように精製した。代表的な分取HPLC条件は、下記に記載される。
【0167】
反応生成物の特徴付けは、質量分析法および1H-NMR分光法によって通例のように行った。NMR分析のために、サンプルを重水素化溶媒(例えば、CD3OD、CDCl3またはd6-DMSO)に溶解し、標準的な観測条件下でVarian Gemini 2000装置(400MHz)を用いて1H-NMRスペクトルを取得した。化合物の質量分析同定は、自動精製システムに連結された、Applied Biosystems(Foster City,CA)のモデルAPI 150 EX装置またはWaters(Milford,MA)の3100装置を用いるエレクトロスプレーイオン化法(ESMS)によって行った。
【0168】
別段示されない限り、以下の条件を分取HPLC精製のために使用した。
カラム:C18、5μm 21.2×150mmまたはC18、5μm 21×250mmまたはC14 5μm 21×150mm
カラム温度:室温
流速:20.0mL/分
移動相:A=水+0.05%TFA
B=ACN+0.05%TFA、
注入体積:(100~1500μL)
検出器の波長:214nm
【0169】
粗化合物を約50mg/mLで1:1水:酢酸に溶解した。4分間の分析スケールの試験ランを、2.1×50mm C18カラムを用いて行った後、15または20分間の分取スケールのランを、分析スケールの試験ランの%B保持に基づくグラジエントを伴う100μLの注入を用いて行った。正確なグラジエントは、サンプル依存的であった。近くを流れる(close running)不純物を含むサンプルは、最善の分離のために21×250mm C18カラムおよび/または21×150mm C14カラムを用いて調べた。所望の生成物を含む画分を質量分析によって特定した。
分析用HPLC条件
方法A
カラム:LUNA C18(2)、150×4.60mm、3μm
カラム温度:37℃
流速:1.0mL/分
注入体積:5μL
サンプル調製:1:1ACN:水に溶解
移動相:A=水:ACN:TFA(98:2:0.05)
B=水:ACN:TFA(2:98:0.05)
検出器の波長:250nm
グラジエント:全32分(時間(分)/%B):0/2、10/20、24/90、29/90、30/2、32/2
方法B
カラム:LUNA C18(2)、150×4.60mm、3μm
カラム温度:37℃
流速:1.0mL/分
注入体積:10μL
サンプル調製:1:1ACN:水に溶解
移動相:A=水:ACN:TFA(98:2:0.05)
B=水:ACN:TFA(10:90:0.05)
検出器の波長:254nm
グラジエント:全35分(時間(分)/%B):0/2、20/25、23/90、26/90、27/2、35/2
方法C
カラム: Poroshell 120 SB-Aq、150mm×4.6mm、2.7ミクロンパート#683975-914
カラム温度:35℃
流速:1.0mL/分
注入体積:5μL
サンプル調製: 50:MPB:50MPAに溶解
移動相:A=アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸(1:99:0.20)
B=アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸(90:10:0.20)
グラジエント:
【表A】
【0170】
調製1: ((1R,3s,5S)-9-(エチルスルホニル)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)(メチル)カルバミン酸tert-ブチル
【化7】
工程1: 5つの反応を並行して実施した。化合物1-1(2.00kg、13.7mol、1.00当量)のジオキサン(5.00L)および水(20.0L)中の溶液に、グルタルアルデヒド(2.06kg、20.5mol、1.5当量)およびフェニルメタンアミン(1.54kg、14.4mol、1.05当量)を10℃で滴下により添加した。添加後、この反応混合物を20℃で16時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=5:1、生成物のR
f=0.40)およびLCMSは、この反応が完了したことを示した。この反応混合物のpH値を濃HCl(12N)で20℃で2に調整した。添加後、この反応混合物を60℃まで加熱し、1時間撹拌した。10℃まで冷却した後に、酢酸エチル(10.0L)をこの混合物に添加した。次いで、この混合物のpH値を、水酸化ナトリウムの水溶液(12N)を10℃で添加することにより10に調整した。この混合物を10分間撹拌した。その有機層を分離した。その水層を酢酸エチル(3.00L)で抽出した。合わせた有機層をブライン(4.00L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして濾過した。5つの並行した反応の有機層を合わせて濃縮した。その残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル:酢酸エチル=30:1~2:1)により精製して、化合物1-2(10.0kg、51.5%の収率、97%の純度)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
15H
19NO 230.15 found 230.0。
1H NMR: 400 MHz DMSO-d
6 δ 7.24-7.41 (m, 5H), 3.88 (s, 2H), 3.20-3.21 (m, 2H), 2.73-2.79 (m, 2H), 2.07 (d, J = 16.4 Hz, 2H), 1.75-1.84 (m, 2H), 1.45-1.50 (m, 3H), 1.24-1.36 (m, 1H)。
【0171】
工程2: 3つの反応を並行して実施した。化合物1-2(3.00kg、13.1mol、1.0当量)の酢酸エチル(24.0L)および水(9.00L)中の溶液に、CH3COOK(2.05kg、20.9mol、1.6当量)およびNH2OH-HCl(1.82kg、26.2mol、2.0当量)を20℃で添加した。この懸濁物を45℃まで加熱し、そして16時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=2:1、生成物のRf=0.30)およびLCMSは、この反応が完了したことを示した。この懸濁物のpH値を飽和重炭酸ナトリウム溶液で8に調整し、次いで水(15.0L)および酢酸エチル(10.0L)で希釈した。その有機層を分離した。その水層を酢酸エチル(10.0L×3)で抽出した。この3つの反応物の有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。その粗生成物をn-ヘプタン(12.0L)で希釈し、そして12時間撹拌した。その固体を濾過により集めて、化合物1-3(8.00kg、83.4%の収率)を得た。(m/z): [M+H]+ calcd for C15H20N2O 245.16 found 245.1。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6 10.16 (s, 1H), 7.22-7.38 (m, 5H), 3.83 (s, 2H), 2.97(br s, 2H), 2.87 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 2.60-2.62 (m, 1H), 2.20-2.25 (m, 1H), 2.09-2.13 (m, 1H), 1.72-1.85 (m, 3H), 1.39-1.49 (m, 3H)。
【0172】
工程4: 45の反応を並行して実施した。化合物1-3(160g、655mmol、1.0当量)のn-PrOH(3.20L)中の溶液に、110℃でNa(181g、7.86mol、12当量)を3時間かけて少しずつ添加した。この混合物を110℃で2時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=2:1、SM Rf=0.40)は、この反応が完了したことを示した。この混合物を70℃まで冷却し、氷水(4.00L)に注いだ。その水層を酢酸エチル(1.00L×2)で抽出した。これらの45の反応物の合わせた有機層をブライン(20.0L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。この残渣をn-ヘキサン(12.0L)で希釈し、12時間撹拌した。その懸濁物を濾過して濾液を得た。この濾液を濃縮して、化合物1-4(6.00kg、88.4%の収率)を黄色油状物として得た。1H NMR 400 MHz DMSO-d6: δ 7.18-7.35 (m, 5H), 3.76 (s, 2H), 3.26-3.35 (m, 1H), 2.76 (s, 2H), 1.86-1.90 (m, 2H), 1.67-1.73 (m, 2H), 1.54-1.59 (m, 5H), 1.41-1.45 (m, 3H)。
【0173】
工程5: 2つの反応を並行して実施した。化合物1-4(2.10kg、9.12mol、1.1当量)のジオキサン(12.6L)および水(1.26L)中の溶液に、Et3N(1.01kg、10.0mol、1.1当量)および(Boc)2O(2.19kg、10.0mol、1.1当量)を、その温度を20℃未満にしながら0℃で滴下により添加した。この混合物を40℃まで加熱し、そして10時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=2:1、生成物のRf=0.40)は、この反応が完了したことを示した。この混合物を10℃まで冷却し、濾過してフィルターケーキを得た。その濾液を濃縮した。そのフィルターケーキをn-ヘキサン(3.00L)で洗浄して、化合物1-5(4.00kg、66.4%の収率)を白色固体として得た。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6: δ 7.28-7.33 (m, 4H), 7.19-7.22 (m, 1H), 6.64 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.10-4.17 (m, 1H), 3.77 (s, 2H), 2.77 (s, 2H), 1.88-1.90 (m, 2H), 1.72-1.75 (m, 3H), 1.57-1.61 (m, 3H), 1.43-1.48 (m, 2H), 1.38 (s, 9H)。
【0174】
工程6: 4つの反応を並行して実施した。化合物1-5(1.50kg、4.54mol、1.0当量)のDMF(13.5L)中の懸濁物に、NaH(272g、6.81mol、60%の純度、1.5当量)を0℃でN2下で滴下により添加した。この懸濁物を自然に25℃まで昇温させ、そして30分間撹拌した。これを0℃まで冷却した後に、MeI(773g、5.45mol、1.2当量)をこの懸濁物に滴下により添加した。この反応混合物を自然に25℃まで昇温させ、そして12時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=5:1、生成物のRf=0.50)およびLCMSは、この反応が完了したことを示した。この混合物を氷水(30.0L)に注ぎ、酢酸エチル(9.00L、3.00L)で抽出した。これらの4つの反応の合わせた有機層を氷水(20.0L)、ブライン(10.0L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、化合物1-6(6.00kg、粗製)を黄色油状物として得た。この粗生成物を次の工程に使用した。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6 δ 7.21-7.37 (m, 5H), 4.87 (br s, 1H), 3.80 (s, 2H), 2.86 (s, 2H), 2.68 (s, 3H), 1.64-1.99 (m, 6H), 1.40-1.49 (m, 13H). (m/z): [M+H]+ calcd for C21H32N2O2 344.25 found 345.2。
【0175】
工程7: 39の反応を並行して実施した。化合物1-6(150g、435mmol、1.0当量)のIPA(500mL)およびTHF(500mL)中の溶液に、Pd(OH)2/C(70g、40%の純度)を添加した。この懸濁物を減圧下で脱気してH2でパージすることを数回行った。この混合物をH2(50psi)下で25℃で16時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=5:1、SM Rf=0.50)およびLCMSは、この反応が完了したことを示した。これらの39の反応物を合わせた。この混合物を濾過して濾液を得た。そのフィルターケーキをIPA/THF(1:1、25.0L)で洗浄した。合わせた濾液を濃縮して、化合物1-7(3.85kg、粗製)を明黄色油状物として得た。この粗生成物を次の工程に直接使用した。(m/z): [M+H]+ calcd for C14H26N2O2 255.20 found 255.1。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6 δ 4.88 (br s, 1H), 3.08 (s, 2H), 2.60 (s, 3H), 1.73-1.76 (m, 5H), 1.51-1.61 (m, 5H), 1.39 (s, 9H)。
【0176】
工程8: 4つの反応を並行して実施した。化合物1-7(750g、2.95mol、1.0当量)の2-メチルテトラヒドロフラン(3.00L)中の溶液に、ピリジン(466g、5.90mol、2.0当量)およびエタンスルホニルクロリド(398g、3.10mol、1.05当量)を0℃でN2下で滴下により添加した。この混合物を25℃まで温め、そして3時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=2:1、生成物のRf=0.50)は、この反応が完了したことを示した。これらの4つの反応物を合わせた。この混合物を氷水(10.0L)でクエンチした。その有機層を分離し、0.5NのHCl(3.00L×2)で洗浄した。合わせた水層を酢酸エチル(3.00L)で抽出し、その有機層を0.5NのHCl(500mL)で再度洗浄した。合わせた有機層をブライン(5.00L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、化合物1-8(2.20kg、粗製)を黄色油状物として得た。この粗性生物を次の工程で使用した。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6 δ 4.94 (br s, 1H), 3.98 (s, 2H), 3.10 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.58 (s, 3H), 1.83-1.91 (m, 5H), 1.56-1.71 (m, 5H), 1.40 (s, 9H), 1.19 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0177】
工程9: 4つの反応を並行して実施した。化合物1-8(550g、1.59mol、1.0当量)のEtOAc(2.75L)中の溶液に、HCl/EtOAc(4M、3.0当量)を25℃で滴下により添加した。この混合物を25℃で12時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=2:1、SM Rf=0.50)は、この反応が完了したことを示した。これらの4つの反応物を合わせた。この混合物を濾過してフィルターケーキを得、化合物1-9(1.25kg、粗製、HCl)を黄色固体として得た。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6 δ 9.04 (s, 1H), 4.02 (s, 2H), 3.88-3.94 (m, 1H), 3.09 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.09-2.14 (m, 2H), 1.61-1.84 (m, 8H), 1.19 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0178】
調製2: (2-(((1R,3s,5S)-9-(エチルスルホニル)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)(メチル)アミノ)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)メタノール(I)
【化8】
工程1: 飽和HCl(1.40kg、38.4mol)を含む、化合物2-1(1.00kg、5.74mol、1.0当量)のエタノール(15.0L)中の溶液を90℃で60時間撹拌した。HPLCは、1つの主要なピークが検出されることを示した。この反応混合物を濾過した。そのフィルターケーキを集めて、化合物2-2(1.00kg、81.8%の収率、98.8%の純度)を白色固体として得た。
1H NMR: 400 MHz DMSO-d
6 δ 11.82 (br s, 1H), 10.82 (br s, 1H), 4.31 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.27 (t, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0179】
工程2: 5つの反応を並行して実施した。化合物2-2(560g、2.77mol、1.0当量)のPOCl3(1.68L)中の溶液に、N,N-ジエチルアニリン(289g、1.94mol、0.7当量)を添加した。この混合物を140℃で12時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=10:1、生成物のRf=0.50)は、化合物2-2が完全に消費されたことを示した。これらの5つの反応物を合わせた。この反応混合物を減圧下で濃縮して、残渣を得た。この残渣を酢酸エチル(25.0L)で希釈した。この溶液を砕いた氷(25.0L)に注いだ。その水相を酢酸エチル(25.0L)で抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸ナトリウム溶液(10.0L×2)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮して、残渣を得た。この残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル:酢酸エチル=1:0~50:1)により精製して、化合物2-3(2.00kg)を褐色液体として得た。1H NMR: 400 MHz CDCl3 δ 4.51 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.44 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0180】
工程3: 4つの反応を並行して実施した。化合物2-3(480g、2.01mol、1.0当量)、化合物2-4(224g、2.31mol、1.15当量)、DIPEA(519g、4.02mol、2.0当量)のエタノール(2.60L)中の混合物を、脱気してN2でパージすることを3回行い、次いでこの混合物をN2雰囲気下で25℃で4時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)は、化合物2-3が完全に消費されたことを示した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=1:1、生成物のRf=0.40)は、1個の新たなスポットが形成されたことを示した。これらの4つの反応物を合わせた。この反応混合物を濾過し、そしてそのフィルターケーキを集めた。その濾液を減圧下で濃縮して、残渣を得た。この残渣を水(38.0L)で磨砕し、そして濾過した。そのフィルターケーキ(300g)をエタノール(600mL)で磨砕し、そして濾過した。これらの2つのフィルターケーキを合わせて、化合物2-5(1.50kg、62.2%の収率)を黄色固体として得た。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6 δ 12.31 (s, 1H), 10.76 (s, 1H), 6.38 (s, 1H), 4.35 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.27 (s, 3H), 1.30 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0181】
工程4: 4つの反応を並行して実施した。化合物2-5(254g、848mmol、1.0当量)、化合物1-9(300g、1.06mol、HCl、1.25当量)およびDIPEA(548g、4.24mol、5.0当量)のDMSO(600mL)中の溶液を130℃で16時間撹拌した。TLC(酢酸エチル:石油エーテル=2:1、Rf=0.30)およびLCMSは、約9%の出発物質が残っていることを示した。この混合物を25℃まで冷却した。これらの4つの反応物を合わせ、氷水(12.0L)に注いだ。黄色の沈殿物が形成された。その固体を濾過により集めて、化合物2-6(1.50kg、約76%の純度)を黄色固体として得た。(m/z): [M+H]+ calcd for C22H32FN7O4S 510.22 found 510.2。
【0182】
化合物2-6(440g、656mmol、約76%の純度)のエタノール(1.10L)中の懸濁物を、その固体が溶解するまで95℃まで加熱した。この溶液を25℃まで冷却し、そして12時間撹拌した。HPLCは、約96.9%の純度を示した。これらの3つの反応物を合わせた。この懸濁物を濾過してフィルターケーキを得、化合物2-6(約570g、96.9%の純度)を明黄色固体として得た。この生成物を次の工程に直接使用した。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6 δ 12.12 (s, 1H), 9.73 (s, 1H), 6.35 (s, 1H), 5.59 (br s, 1H), 4.32 (m, 2H), 4.02 (s , 2H), 3.13 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.83 (s, 3H), 2.20 (s, 3H), 1.94 (s, 3H), 1.64-1.73 (m, 5H), 1.76-1.87 (m, 5H), 1.29 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.21 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0183】
工程5: 5つの反応を並行して実施した。化合物2-6(130g、255mmol、1.0当量)のテトラヒドロフラン(3.25L)およびエタノール(3.25L)中の溶液に、NaBH4(77.2g、2.04mol、8.0当量)およびCaCl2(113g、1.02mol、4.0当量)を0℃で滴下により添加した。この混合物を10℃まで温め、そして2時間撹拌した。TLC(酢酸エチル:石油エーテル=3:1、生成物のRf=0.20)は、この反応が完了したことを示した。これらの5つの反応物を合わせた。この混合物を飽和炭酸ナトリウム溶液(6.00L)によりクエンチし、酢酸エチル(15.0L)で希釈し、そして0.5時間撹拌した。その懸濁物を濾過して濾液を得た。その有機層を分離し、そして水層を酢酸エチル(5.00L×2)で抽出した。合わせた有機層をブライン(5.00L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、(I)(500g、粗製)を明黄色固体として得た。
【0184】
精製: 5つの反応を並行して実施した。I(100g、210mmol)のエタノール(3.00L)中の懸濁物を、その固体が溶解するまで95℃まで加熱した。この溶液を25℃まで冷却し、そして12時間撹拌すると、多量の沈殿物が形成された。HPLCは、100%の純度を示した。これらの5つの反応物を合わせた。その固体を濾過により集めて、合計330gの化合物I(99.3%の純度)を明黄色固体として得た(結晶形態I)。(m/z): [M+H]+ calcd for C20H30FN7O3S 468.21 found 468.3。1H NMR: 400 MHz DMSO-d6 δ 12.02 (s, 1H), 9.29 (s, 1H), 6.34 (s, 1H), 5.61 (br s, 1H), 5.02 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 4.33 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 4.02 (s, 2H), 3.12 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.84 (s, 3H), 2.19 (s, 3H), 1.82-2.01 (m, 3H), 1.63-1.74 (m, 5H), 1.21 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0185】
調製3: 5-フルオロ-2,6-ジヒドロキシピリミジン-4-カルボン酸エチル
【化9】
5-フルオロ-2,6-ジヒドロキシピリミジン-4-カルボン酸(20.4g、120mmol)のDMF(200mL)中の溶液をDBU(18.7g、123mmol)で処理し、そして25℃で0.5時間撹拌した。次いで、EtI(19.2g、123mmol)を添加し、そして得られた溶液を60℃まで3時間加熱した。H
2O(1000mL)をこの混合物に添加し、そして生じた沈殿物を濾過により集め、H
2O(200mL)で洗浄し、そして乾燥させて、5-フルオロ-2,6-ジヒドロキシピリミジン-4-カルボン酸エチル(19g、80%の収率)を得た。
【0186】
調製4: 2,6-ジクロロ-5-フルオロピリミジン-4-カルボン酸エチル
【化10】
5-フルオロ-2,6-ジヒドロキシピリミジン-4-カルボン酸エチル(5g、24.8mmol)、PhNEt
2(2.58g、17.3mmol)、POCl
3(130g、855.9mmol)の混合物を100℃まで4時間加熱した。次いで、この反応混合物を室温まで冷却し、そして氷水(500mL)に注ぎ、その水層をEtOAc(1000mL)で抽出し、そしてその有機層をsat.NaHCO
3(200mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。その残渣をカラムクロマトグラフィー(80gのカラム;ヘキサン中0~50%のEtOAc)により精製して、2,6-ジクロロ-5-フルオロピリミジン-4-カルボン酸エチルを黄色油状物として得た(3.8g、65%)。
【0187】
調製5: 2-クロロ-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸エチル
【化11】
2,6-ジクロロ-5-フルオロピリミジン-4-カルボン酸エチル(3.8g、16mmol)、5-メチル-1H-ピラゾール-3-アミン(1.86g、19mmol)、およびDIPEA(4g、32mmol)のEtOH(100mL)中の混合物を室温で2時間撹拌した。この反応混合物を減圧下で濃縮した。次いで、水(500mL)を添加し、そしてこの反応混合物を濾過し、そしてそのフィルターケーキを100mLのH
2Oで洗浄し、そして減圧中で乾燥させて、2-クロロ-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸エチル(3.8g 80%の収率)を得た。
【0188】
調製6: (1R,3s,5S)-3-((4-(エトキシカルボニル)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル
【化12】
2-クロロ-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸エチル(1.7g、5.684mmol)、(1R,3s,5S)-3-(メチルアミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル(2.17g、8.527mmol)、およびDIPEA(1.47g、11.368mmol)のDMSO(50mL)中の混合物を110℃まで18時間加熱した。この反応混合物を水(200mL)に注ぎ、そしてこの反応混合物を濾過し、そしてそのフィルターケーキを200mLのH
2Oで洗浄し、そして減圧中で乾燥させて、粗製の(1R,3s,5S)-3-((4-(エトキシカルボニル)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル(3.5g、粗製)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
25H
37FN
7O
4 518.29 found 518.2。
【0189】
調製7: (1R,3s,5S)-3-((5-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル
【化13】
(1R,3s,5S)-3-((4-(エトキシカルボニル)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル(3.5g、7mmol)、NaBH
4(2.1g、56mmol)、およびCaCl
2(3.1g、28mmol)の、EtOH(50mL)とTHF(50mL)との混合物中の混合物を25℃で一晩撹拌した。この反応混合物をNa
2CO
3(aq)(80mL)およびH
2O(80mL)でクエンチし、その水層をEtOAc(100mL×3)で抽出し、そして合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。その残渣をprep-HPLCにより精製して、(1R,3s,5S)-3-((5-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル(1.4g、44%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
23H
35FN
7O
3 476.28 found 476.3。
【0190】
調製8: (2-(((1R,3s,5S)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)(メチル)アミノ)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)メタノール
【化14】
(1R,3s,5S)-3-((5-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル(1.4g、2.95mmol)のHCl/ジオキサン(50mL)中の溶液を25℃で4時間撹拌した。この反応混合物を濾過し、そしてそのフィルターケーキを100mLのEtOAcで洗浄し、そして減圧中で乾燥させて、(2-(((1R,3s,5S)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)(メチル)アミノ)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)メタノール(1.4g、100%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
18H
27FN
7O 376.23 found 376.2。
【0191】
調製9: (2-(((1R,3s,5S)-9-(エチルスルホニル)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)(メチル)アミノ)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)メタノール
【化15】
(2-((1R,3s,5S)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル(メチル)アミノ)-5-フルオロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)メタノール(95mg、0.253mmol)をピリジン(4.0ml)に溶解させ、そしてエタンスルホニルクロリド(0.024ml、0.253mmol)で処理した。この反応混合物を2時間撹拌し、その後、減圧中で濃縮した。この粗製残渣を、3mLの、酢酸/水の1:1の混合物に溶解させ、濾過して沈殿物を除去し、そして水(0.05%のTFAを含む)中2~50%のACNの勾配を使用する分取HPLC(Agilent Dynamax 250×21.4mm 10μm、15mL/分、2~50%のACN+0.05%のTFA/ACN)により精製した。純粋な画分を合わせ、そして凍結乾燥させて、表題化合物TFAの塩(12.92mg、8.8%の収率、99.9%の純度)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
20H
31FN
7O
3S 468.22 found 468。
【0192】
調製10: 2-クロロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル
【化16】
5-メチル-1H-ピラゾール-3-アミン(5.6g、58mmol)、2,6-ジクロロピリミジン-4-カルボン酸メチル(12.0g、58mmol)、およびDIPEA(15.0g、116mmol)のDMSO(120ml)中の混合物を25℃で12時間撹拌した。H
2O(500mL)を添加し、そして沈殿した固体を濾過により集めて、表題中間体(15g、97%)を黄色固体として得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
10H
11ClN
5O
2 268.05 found 268.1。
【0193】
調製11: (1R,3s,5S)-3-((4-(メトキシカルボニル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル
【化17】
2-クロロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル(12.0g、45mmol)、(1R,3s,5S)-3-(メチルアミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル(13.7g、54mmol)、およびDIPEA(12.0g、90mmol)のNMP(120ml)中の混合物を120℃で16時間撹拌した。この反応物をH
2O(2000mL)に注ぎ、沈殿した固体を濾過により集めて、表題中間体(15g、68%)を白色固体として得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
24H
36N
7O
4 486.28 found 486.3。
【0194】
調製12: (1R,3s,5S)-3-((4-カルバモイル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル
【化18】
(1R,3s,5S)-3-((4-(メトキシカルボニル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル(3バッチの2g、4.12mmol)に、NH
3/MeOH(3アリコートの60ml)を100mlの密封管内で添加し、この反応混合物を25℃で12時間撹拌した。この反応混合物を減圧中で濃縮して、表題中間体(3.7g、64%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
23H
35N
8O
3 471.28 found 471.3。
【0195】
調製13: 2-(((1R,3s,5S)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)(メチル)アミノ)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボキサミド
【化19】
(1R,3s,5S)-3-((4-カルバモイル-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸tert-ブチル(3.7g、7.9mmol)のジオキサン(185mL)中の混合物に、HCl/ジオキサン(37mL)を添加した。この反応物を25℃で3時間撹拌した。TLCは、出発物質が残っていないことを示した。その溶媒を除去し、そしてその粗生成物を酢酸エチル/MeOH(100:1)で洗浄して、表題中間体をHCl塩として得た(4.0g、95%)。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
18H
27N
8O 371.23 found 371.1。
【0196】
調製14: 2-(((1R,3s,5S)-9-(エチルスルホニル)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)(メチル)アミノ)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボキサミド(C-1)
【化20】
2-((1R,3s,5S)-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル(メチル)アミノ)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボキサミド(40mg、0.108mmol)およびDIPEA(0.057ml、0.324mmol)をDMF(1.50ml)に溶解させ、そして0℃まで冷却した。エタンスルホニルクロリドを添加し、そしてこの反応混合物を室温まで昇温させ、そして72時間撹拌した。この反応混合物を減圧中で濃縮し、そして粗生成物を分取逆相HPLC(Agilent Dynamax 250×21.4mm 10μm、15mL/分、2~70%のACN+0.1%のTFA/ACN)により精製して、表題化合物TFAの塩(4.5mg、9.01%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
20H
31N
8O
3S 463.22 found 463.2。
【0197】
調製15: 2-クロロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル
【化21】
5-メチル-1H-ピラゾール-3-アミン(5.6g、58mmol)、2,6-ジクロロピリミジン-4-カルボン酸メチル(12.0g、58mmol)、およびDIPEA(15.0g、116mmol)のDMSO(120ml)中の混合物を25℃で12時間撹拌した。H
2O(500mL)を添加し、そして沈殿した固体を濾過により集めて、表題化合物(15g、97%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
10H
11ClN
5O
2 268.05 found 268.1。
【0198】
調製16: (1R,3s,5S)-3-((4-(メトキシカルボニル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸tert-ブチル
【化22】
2-クロロ-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル(8.3g、31.0mmol)、(1R,3s,5S)-3-(メチルアミノ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸tert-ブチル(8.2g、34.1mmol)、およびDIPEA(10.8mL、62.0mmol)のDMSO(85ml)中の混合物を120℃で16時間撹拌した。この混合物を2Lの水に注ぎ、激しく撹拌し、次いで濾過して、表題化合物(11.1g、76%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
23H
34N
7O
4 472.27 found 472.3。
【0199】
調製17: (1R,3s,5S)-3-((4-(ヒドロキシメチル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸tert-ブチル
【化23】
NaBH
4(8g、212mmol)のMeOH(100mL)中の混合物に、THF(100mL)中の(1R,3s,5S)-3-((4-(メトキシカルボニル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸tert-ブチル(10g、21.2mmol)を0℃で添加した。次いで、この反応混合物を1時間加熱還流させた。この反応を水(500mL)でクエンチし、そしてこの混合物を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×100mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、そして減圧中で濃縮した。その粗製残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=4:1)により精製して、表題化合物(7g、68%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
22H
34N
7O
3 444.27 found 444.3。
【0200】
調製18: (2-(((1R,3s,5S)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)(メチル)アミノ)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)メタノール
【化24】
(1R,3s,5S)-3-((4-(ヒドロキシメチル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸tert-ブチル(6.5g、14.7mmol)のHCl/ジオキサン(100mL)中の混合物を室温で1時間撹拌した。この混合物を減圧中で濃縮して、表題中間体のHCl塩(4.8g、100%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
17H
26N
7O 344.22 found 344.1。
【0201】
調製19: 3-((1R,3s,5S)-3-((4-(ヒドロキシメチル)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)(メチル)アミノ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)プロパンニトリル(C-2)
【化25】
(2-(((1R,3s,5S)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)(メチル)アミノ)-6-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)メタノール(50mg、0.146mmol)およびDIPEA(0.076ml、0.437mmol)をMeOH(1.50ml)に溶解させた。アクリロニトリル(0.014ml、0.218mmol)を添加し、そしてこの反応混合物を室温で90分間撹拌した。次いで、この反応混合物を減圧中で濃縮し、そしてその粗製残渣を分取逆相HPLC(Agilent Dynamax 250×21.4mm 10μm、15mL/分、2~60%のACN+0.1%のTFA/ACN)により精製して、表題化合物TFAの塩(14mg、19%)を得た。(m/z): [M+H]
+ calcd for C
20H
29N
8O 397.25 found 397.1。
【0202】
実施例1: 結晶形態Iの粉末X線回折
図1の粉末X線回折パターンは、45kVの出力電圧および40mAの電流でCu-Kα線(λ=1.54051Å)を使用するBruker D8-Advance X線回折計を用いて得た。この装置を、サンプルにおいて強度が最大となるように入射スリット、発散スリットおよび散乱スリットを設定したBragg-Brentanoジオメトリで作動した。計測のために、少量の粉末(5~25mg)をサンプルホルダー上に静かに押し込んで、滑らかな表面を形成させ、X線曝露に供した。サンプルを、2°から35°(単位:2θ)まで0.02°の刻み幅および1工程あたり0.30°秒の走査速度での2θ-2θモードで走査した。データ取得を、Bruker DiffracSuite計測ソフトウェアによって制御し、Jadeソフトウェア(バージョン7.5.1)によって解析した。上記装置は、コランダム標準を用いて±0.02°2シータ角以内に較正した。結晶形態Iについて観測されたPXRDの2θピーク位置およびd間隔を表1に示す。
【表1】
【0203】
実施例2: 形態Iの分析
示差走査熱量測定(DSC)を、Thermal Analystコントローラを備えたTA Instruments Model Q-100モジュールを用いて行った。データを収集し、TA Instruments Thermal Analysisソフトウェアを用いて解析した。各結晶形態のサンプルを、ふた付きのアルミニウムパンに正確に秤量した。5℃での5分間の等温平衡期間の後、サンプルを10℃/分の線形加熱勾配で0℃から300℃に加熱した。本発明の結晶形態Iの代表的なDSCサーモグラムを
図2に示す。このサーモグラムは、約248.5℃の開始、および約250.9℃のピークを有する融解吸熱を示す。約40℃および約190℃で観察される、小さい融解前吸熱熱事象が存在した。
【0204】
熱重量分析(TGA)の計測は、高分解能を備えるTA Instruments Model Q-50モジュールを用いて行った。データを、TA Instruments Thermal Analystコントローラを用いて収集し、TA Instruments Universal Analysisソフトウェアを用いて解析した。秤量したサンプルを白金パン上に置き、周囲温度から300℃まで10℃の加熱速度で走査した。使用中、天秤および炉チャンバーに窒素流をパージした。本発明の結晶形態Iの代表的なTGAトレースを
図3に示す。このTGAプロフィールは、22℃~125℃でN
2パージ下での約0.70%の重量損失、および約250℃の開始温度の分解を示す。
【0205】
動的水分吸着(DMS)の計測を、VTI大気微量天秤SGA-100システム(VTI Corp.,Hialeah,FL 33016)を使用して行った。秤量したサンプルを使用し、分析の開始時の湿度は、可能な限り最低の値(0%RHに近い値)であった。このDMS分析は、120分間にわたる最初の乾燥工程(0%RH)の後、5%RH~90%RHの湿度範囲にわたる5%RH/工程という走査速度での吸着および脱着の2サイクルからなった。このDMSの実行を、25℃で等温で実施した。形態Iについての代表的なDMSトレースを
図4に示す。5~90%RHでの総水分取り込みは、1.96%であった。
【0206】
形態Iのカールフィッシャー分析は、これが1.6%w/wの水を含むことを示した。
【0207】
調製20: 形態IIの調製
28gの化合物2-6を、70mLのEtOHと154mLのTHFとの混合物に懸濁させ、次いで5℃まで冷却した。この懸濁物に、82mLのLiBH4(THF中2.0M)を1時間かけて添加した。この添加の後に、その温度は10℃まで上昇し、そして2時間撹拌し、この時点の後に、出発物質は、HPLC分析により検出されなかった。次いで、この反応を、77mLの水に溶解させた16.8gの塩化アンモニウムの混合物でクエンチした。45℃まで加熱した後に、467mLの水を3時間かけて入れた。一旦、370mLのこの水を添加すると、結晶の形成が観察された。この水の添加が完了したら、このスラリーを45℃で5時間保持し、次いで15℃まで3時間かけて加熱した。このスラリーを15℃で7.5時間保持した後に、その生成物を濾過し、そして140mLのEtOHですすいで流し、その後、140mLの水を使用して2回すすいで流した。この固体を45℃で、窒素を供給しながら一晩減圧下で乾燥させて、22.6gの形態II(87%の収率、98.6%の純度)を得た。
【0208】
63mLのDMSO中の、先の工程から得られた21gの中間体等級の化合物(I)の形態IIを90℃まで加熱した。この混合物の温度を86℃より高く維持しながら、420mLのn-PrOHを40分間かけて添加した。最後の3回目のnPrOH添加中に、非常に微細な屈折性の結晶が観察された。この混合物を92℃で4時間撹拌した。この混合物を8時間かけて20℃まで冷却し、そして20℃で一晩撹拌した。その生成物を濾過し、そして52.5mLのnPrOH、次いで52.5mLのエタノールで2回、洗浄した。その固体を、窒素を供給しながら55℃で減圧下で乾燥させて、19.24gの形態II(92%の収率、99.6%の純度)を得た。
【0209】
実施例3: 結晶形態IIの粉末X線回折
図5の粉末X線回折パターンを、形態Iについてと同じ条件下で得た。観測されたPXRDの2θピーク位置およびd間隔を下記の表に示す。
【表1A】
【0210】
実施例4: 形態IIの分析
形態IIを、形態Iと類似の条件下で試験した。
【0211】
本発明の結晶形態IIの代表的なDSCサーモグラムを
図6に示す。このサーモグラムは、融解転移として特定される、吸熱の熱流のピークを示し、これは、238.1℃±2℃の温度で吸熱の熱流の極大値を示す。
【0212】
本発明の結晶形態IIの代表的なTGAトレースを
図7に示す。このTGAプロフィールは、222℃より後の分解に関連する重量損失を示す。
【0213】
このDMS分析は、120分間にわたる最初の乾燥工程(0%RH)の後、5%RH~90%RHの湿度範囲にわたる5%RH/工程という走査速度での吸着および脱着の2サイクルからなった。このDMSの実行を、25℃で等温で実施した。形態IIについての代表的なDMSトレースを
図8に示す。5~90%RHでの総水分取り込みは、約0.02%であった。
【0214】
実施例5:形態IIの単結晶X線回折
データを、Rigaku Oxford Diffraction Supernova Dual Sourceで、Cuをゼロとして、Oxford Cryosystems Cobra冷却デバイスを備えるAtlas CCD回折形で収集した。これらのデータを、Cu Kα放射線を使用して収集した。構造を、Bruker AXS SHELXTLスイート結晶学ソフトウェアを使用して解析および精密化した。全ての詳細がCIFに見出され得る。他に記載されない限り、炭素に結合している水素原子を幾何学的に配置し、そしてライディング等方性変位パラメータ(riding isotropic displacement parameter)を用いる精密化を可能にした。ヘテロ原子に結合している水素原子を異なるフーリエマップ上に配置し、そして等方性置換パラメータを用いて自由に精密化することを可能にした。
【表1B】
【0215】
生物学的アッセイ
アッセイ1: 生化学的JAKおよびTyk2キナーゼアッセイ
4つのLanthaScreen JAK生化学的アッセイのパネル(JAK1、2、3およびTyk2)を、通常のキナーゼ反応緩衝液(50mM HEPES,pH7.5、0.01%Brij-35、10mM MgCl2および1mM EGTA)に含めた。組換えGSTタグ化JAK酵素およびGFPタグ化STAT1ペプチド基質をLife Technologiesから入手した。
【0216】
段階または不連続希釈した化合物を、それらの4つのJAK酵素の各々および基質とともに、白色384ウェルマイクロプレート(Corning)において周囲温度で1時間プレインキュベートした。続いて、ATPを加えて、1%DMSOを含む10μLの総体積でキナーゼ反応を開始した。JAK1、2、3およびTyk2についての最終的な酵素濃度は、それぞれ4.2nM、0.1nM、1nMおよび0.25nMであり;使用された対応するKm ATP濃度は、25μM、3μM、1.6μMおよび10μMであり;基質濃度は、4つすべてのアッセイについて200nMである。キナーゼ反応を周囲温度で1時間進めた後、TR-FRET希釈緩衝液(Life Technologies)中のEDTA(最終濃度10mM)およびTb-抗pSTAT1(pTyr701)抗体(Life Technologies,最終濃度2nM)の10μL調製物を加えた。そのプレートを周囲温度で1時間インキュベートした後、EnVisionリーダー(Perkin Elmer)において読み出した。発光シグナル比(Emission ratio signals)(520nm/495nm)を記録し、それを用いて、DMSOに基づくパーセント阻害値およびバックグラウンドコントロールを算出した。
【0217】
用量反応分析のために、パーセント阻害のデータを化合物の濃度に対してプロットし、Prismソフトウェア(GraphPad Software)を用いて、4パラメータのロバストな適合モデルからIC
50値を決定した。結果は、pIC
50(IC
50の対数に負号をつけたもの)として表され、続いてCheng-Prusoff式を用いてpKi(解離定数Kiの対数に負号をつけたもの)に変換した。
【表2】
【0218】
アッセイ2: 細胞JAK効力アッセイ:BEAS-2B細胞におけるIL-13により誘導されるSTAT6のリン酸化の阻害
JAK阻害についての細胞効力アッセイを、インターロイキン-13(IL-13,R&D Systems)によって誘導されたSTAT6のリン酸化をBEAS-2Bヒト肺上皮細胞(ATCC)において計測することによって、行った。抗STAT6抗体(Cell Signaling Technologies)をAlphaScreenアクセプタービーズ(Perkin Elmer)に結合体化し、抗pSTAT6(pTyr641)抗体(Cell Signaling Technologies)を、EZ-Link Sulfo-NHS-Biotin(Thermo Scientific)を用いてビオチン化した。
【0219】
BEAS-2B細胞を、37℃の5%CO2加湿恒温器内にて、10%FBS(Hyclone)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Life Technologies)および2mM GlutaMAX(Life Technologies)が補充された50%DMEM/50%F-12培地(Life Technologies)中で生育した。アッセイの1日目に、細胞を、25μLの培地が入った、ポリ-D-リジンでコーティングされた白色384ウェルプレート(Corning)に7,500細胞/ウェルの密度で播種し、恒温器内で一晩接着させた。アッセイの2日目に、培地を除去し、試験化合物の用量反応物を含む12μLのアッセイ緩衝液(ハンクス平衡塩類溶液/HBSS、25mM HEPESおよび1mg/mlウシ血清アルブミン/BSA)と交換した。化合物をDMSOで段階希釈し、次いで、最終DMSO濃度が0.1%になるようにさらに培地で1000倍希釈した。細胞を37℃で1時間、試験化合物とインキュベートした後、刺激のために、予め加温した12μlのIL-13(アッセイ緩衝液中80ng/mL)を加えた。37℃で30分間インキュベートした後、アッセイ緩衝液(化合物およびIL-13を含む)を除去し、10μLの細胞溶解緩衝液(25mM HEPES、0.1%SDS、1%NP-40、5mM MgCl2、1.3mM EDTA、1mM EGTA、ならびにRoche Diagnostics製のComplete Ultraミニプロテアーゼ阻害剤およびPhosSTOPによる補充)。プレートを周囲温度で30分間振盪した後、検出試薬を加えた。まず、ビオチン-抗pSTAT6および抗STAT6結合体化アクセプタービーズの混合物を加え、周囲温度で2時間インキュベートした後、ストレプトアビジン結合体化ドナービーズ(Perkin Elmer)を加えた。最低2時間のインキュベーションの後、アッセイプレートをEnVisionプレートリーダーにおいて読み出した。AlphaScreenルミネセンスシグナルを記録し、それを用いて、DMSOに基づくパーセント阻害値およびバックグラウンドコントロールを算出した。
【0220】
用量反応分析のために、パーセント阻害データを化合物の濃度に対してプロットし、Prismソフトウェアを用いて、4パラメータのロバストな適合モデルからIC50値を決定した。結果は、IC50値の対数に負号をつけたものであるpIC50として表され得る。化合物(I)は、このアッセイにおいて、8.5のpIC50値を示した。
【0221】
アッセイ3: 細胞傷害性アッセイ
CellTiter-Glo発光細胞生存能/細胞傷害性アッセイを、通常の生育条件下のBEAS-2Bヒト肺上皮細胞(ATCC)において行った。
【0222】
細胞を、37℃の5%CO2加湿恒温器内にて、10%FBS(Hyclone)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Life Technologies)および2mM GlutaMAX(Life Technologies)が補充された50%DMEM/50%F-12培地(Life Technologies)中で生育した。アッセイの1日目に、細胞を、25μLの培地が入った、白色384ウェル組織培養プレート(Corning)に500細胞/ウェルの密度で播種し、恒温器内で一晩接着させた。アッセイの2日目に、試験化合物の用量反応物を含む5μLの培地を加え、37℃で48時間インキュベートした。その後、30μLのCellTiter-Glo検出液(Promega)を加え、オービタルシェーカー上で5分間混合し、さらに10分間インキュベートした後、EnVisionリーダーにおいて読み出した。ルミネセンスシグナルを記録し、パーセントDMSOコントロール値を算出した。
【0223】
用量反応分析のために、パーセントDMSOコントロールデータを化合物の濃度に対してプロットして、各データポイントをつなぐ線によって用量反応曲線を作成した。各曲線が15%阻害閾値を横断する濃度をCC15と定義する。結果は、CC15値の対数に負号をつけたものであるpCC15として表した。
【0224】
このアッセイにおいてより低いpCC15値を示す試験化合物は、細胞傷害性を引き起こす可能性がより低いと予想される。化合物(I)についてのpCC15は5.36であった。
【0225】
アッセイ4: ヒトPBMCにおけるインビトロTSLP誘導性TARCアッセイ
TSLPのその受容体への結合は、JAK1およびJAK2を活性化させて種々の転写因子(STAT3およびSTAT5が挙げられる)をリン酸化する、コンホメーション変化を誘導する。皮膚に常在する免疫細胞において、これは、細胞増殖、抗アポトーシス樹状細胞移動、ならびにTh2サイトカインおよびケモカインの産生をもたらす、細胞内事象のカスケードを誘発する。アトピー性皮膚炎の急性段階において、皮膚はTh2リンパ球に侵入される。初代末梢血単核細胞(PBMC)において、TSLPは、骨髄樹状細胞を活性化させてT細胞を誘引および刺激することにより、炎症誘発効果を有する。このプロセスは、胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC/CCL17)により媒介される。TARCは、アトピー性皮膚炎の有望な臨床バイオマーカーであることが示されており、高い血清中レベルは、皮膚の炎症の加速した発病を示す。
【0226】
このアッセイにおいて、TSLP刺激がPBMCからのTARC放出を誘導すること、およびこの応答は、化合物(I)での処置により、用量依存性の様式で減衰することが示された。3人のドナー由来のPBMC(事前に全血から単離され、そしてアリコートとして-80℃で凍結された)を解凍し、プレートし、そして37℃で1時間静置した。細胞を、33.3μM~0.95nMの範囲の化合物(I)の3.7X希釈系列で1時間、前処理した。次いで、細胞を、10ng/mLのTSLPで刺激したか、または基礎コントロールとしての等体積のプレーン培地を与えたかのいずれかを行った。48時間後、細胞上清を集め、そしてTARCを、Human CCL17/TARC Quantikine ELISA Kitを使用して測定した。
【0227】
用量反応分析のために、パーセント阻害データを化合物の濃度に対してプロットし、GraphPad Prismソフトウェアを用いて、4パラメータのロバストな適合モデルからIC50値を決定した。結果は、IC50値の対数に負号をつけたものであるpIC50として表され得る。化合物(I)は、このアッセイにおいて、7.8のpIC50値を示した。
【0228】
アッセイ5: ラット薬物動態学アッセイ
この研究の目的は、雄性Sprague Dawleyラットへの1回の経口(PO、n=3)または静脈内(IV、n=2)投与後の血漿中の化合物(I)の薬物動態学を評価することであった。
【0229】
3匹の雄性Sprague Dawleyラットに、単回IV用量の化合物(I)(5%のDMSO+20mMのクエン酸緩衝液(pH4)中1.0mg/kg)を頸静脈カテーテルを介して、または単回PO用量の5mg/kgを経口栄養(1%のHPMC(0.1%のTween(登録商標)80を含む)中5.0mg/kg)を介して、投与した。用量投与の0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、および24時間後に、血液サンプルを頸静脈カテーテルを通してEDTA管内に引き出し、そして氷上で冷却して維持し、その後、遠心分離した(12,000rpm、4分間、4℃)。血漿のアリコートをクラスターチューブに移し、そしてバイオ分析前に、凍結状態(-80℃)で貯蔵した。
【0230】
血漿サンプルをボルテックスし、その後、50μLのアリコートのサンプルを、96ウェルプレートに移し、そして内部標準を含有する200μLのアセトニトリルで抽出した。抽出後、サンプルを3700RPM(2809×g)で10分間遠心分離した。その上清を、新しい96ウェルプレートに移し、次いで水中0.2%のギ酸で希釈した(3倍希釈)。全てのサンプルについて、10μLをWaters Xbridge(C18 30×2.1mm)カラムに0.80mL/分の流速で注入した。移動相Aは、水中0.2%のギ酸からなり、そして移動相Bは、アセトニトリル中0.2%のギ酸からなった。化合物(I)の血漿レベルを、LC-MS-MS分析により決定した。標準PKパラメータを、Phoenix WinNonlin,(Certara Inc.)を使用して決定した。
【表3】
NDは、決定していない。
【0231】
アッセイ6: Hanfordミニブタ皮膚における皮膚薬物動態学
この研究の目的は、インタクトなHanfordミニブタ皮膚への24時間の曝露後の、化合物(I)の上皮、真皮および血漿薬物動態学を決定することであった。化合物(I)を、表4にそれぞれ製剤Aおよび製剤Bとして記載される、クリームまたは軟膏中に0.5%(w/w)で製剤化した。
【表4】
【0232】
投与の24時間前に、10~15kgのHanfordミニブタの背から毛を剃って、少なくとも700cm
2(体表面の約10%)の領域を露出させた。時刻ゼロにおいて、化合物(I)をこれらのミニブタの背に25μL/cm
2の用量で塗布した。その皮膚を粘着性カバーで覆って、ケージまたは寝床への化合物の損失を防止した。24時間の曝露後、その背中を石鹸水で穏やかに洗浄して、吸収されていない薬物を除去し、そして軽く叩いて乾かした。この洗浄のすぐ後に、これらのミニブタから血液を静脈穿刺により採取した。次いで、外皮(角質層)を、粘着テープを剥がすことにより除去した。表皮を露出させたら、0.5cmのパンチ生検を採取した。表皮および真皮を手早く分離し、秤量し、そして急速冷凍した。類似のサンプルを、ミニブタへの投与後94時間目および168時間目(7日目)に採取した。表皮および真皮のサンプルを1:10(w/v)の水で、Covaris超音波ホモジナイザーを使用して均質化した。サンプルを3体積のアセトニトリルで抽出し、そしてLC-MSにより標準曲線に対して定量した。薬物動態パラメータ(表5)により証明されるように、有意な化合物曝露が表皮層および真皮層において示されたが、血漿曝露は、定量限界(0.001μg/ml)未満であり、全身循環への化合物の非常に制限された吸収を示した。
【表5】
【0233】
アッセイ7: 切除されたばかりのヒト皮膚を使用するエキソビボJAK薬物動力学(PD)アッセイ
エキソビボJAK薬物動力学(PD)アッセイを、単離されたヒト皮膚組織を使用して実施した。このPDアッセイは、新鮮なヒト皮膚(750μmの厚さの真皮節)を使用し、これを約0.5cm
2の表面積の静的Franzセル内に載置した。これらのFranzセルの受容チャンバに温(37℃)角化培地を満たし、そして37℃のインキュベーターに入れた。その皮膚に、10μL(約18μL/cm
2)の化合物(I)またはビヒクルを局所投与し、そして一晩(約24時間)静置した。翌日、試験化合物もビヒクルも再塗布せずに、その培地を、TNFα、IFNγおよびIL-12からなるTh1スキュー刺激カクテルで置き換えた。この皮膚をさらに16時間静置し、次いで採取し、そしてRNA抽出およびバイオマーカー(CXCL10、CCL2)のqPCRのために処理した。GAPDHを内部標準として使用した。化合物(I)を0.5%強度の軟膏製剤に製剤化した。この軟膏ビヒクルの組成を表6に列挙する。合計3人の皮膚ドナー(四連で試験/サンプル/処置)を使用した。処置の効果を、ビヒクル群と比較した刺激の増加または減少の百分率として計算した。
【表6】
【0234】
エキソビボヒト皮膚PDアッセイ結果
データを7に要約する。CXCL10遺伝子発現(これは、インターフェロン-γ-誘導タンパク質10(IP-10)をコードする)は、化合物(I)によって、TH1/ビヒクルコントロール群と比較して90.1%阻害された。CCL2遺伝子(これは、単球化学誘引物質1(MCP-1)をコードする)に関して、化合物(I)は、その応答を61.3%阻害した。さらに、両方の製剤を用いて、高濃度の化合物が、皮膚の上皮層と真皮層との両方で検出された。
【表7】
データを平均±標準偏差として表す。n=12(3人のドナー、4サンプル/ドナー)。
【0235】
アッセイ8: ヒト皮膚透過性アッセイ
この実験の目的は、局所投与後に試験化合物がヒト皮膚を通る経皮吸収を評価することであった。このモデルは、皮膚が実際の使用条件に一致する温度および湿度に維持されることを可能にする、特別に設計された拡散チャンバ(静的またはフロースルー)内に設置された切除されたヒト皮膚を使用する。製剤を皮膚の表面に塗布した。そして薬物の透過を、この薬物が皮膚サンプルのすぐ下を流れる受容体溶液内に出現する割合を監視することによって、測定する。このインビトロシステムは、局所塗布に関与する潜在的な変数(例えば、投与体積、湿度、温度、薬物安定性、および皮膚の厚さ)の多くを注意深く制御することを可能にする。
【0236】
この実験は、最適なシンク条件のために最小の空隙体積を有する注意深く設計された流路を利用するフロースルー拡散セルシステム(MedFlux-HTTM)を使用し、そして採取された皮膚の局所クリアランスを提供して、より正確かつ詳細な流れプロフィールを、自動収集および最適化された流体工学により生成することが示された。このシステムは、インビトロ実験中に投与面積を特に最小にするように開発されたので、エキソビボヒト皮膚の制限された表面積内での、さらなる投与再現を可能にする。
【0237】
およそ32℃の皮膚表面温度を維持するために、拡散セルをセル温熱支持具に入れ、そして循環水浴を使用して加熱した。これらのセルをマルチチャネル蠕動ポンプに接続し、そして皮膚のすぐ下の受容流体の連続流のために、およそ10μL/分(600μL/時間)の流速で維持した。24時間の連続サンプリングの後に、サンプルを試験化合物レベルについて、LC-MS/MSによりアッセイした。試験化合物を、試験軟膏製剤の塗布後20時間から28時間まで、受容流体内で検出した(n=5)。使用した軟膏は、アッセイ7に開示されている。受容流体は、0.1%のBrijを含有するPBSであった。
【表8】
表8に示されるように、化合物(I)は十分な透過性を示した。
【0238】
アッセイ9: マウスにおけるインビボIL-31-pSTAT3 JAKターゲットエンゲージメントアッセイ
マウスにおける、リン酸化シグナル伝達兼転写活性化因子3(pSTAT3)の、IL-31により誘導される産生のインビボモデルを使用して、マウス皮膚への局所ターゲットエンゲージメントを評価した。
【0239】
JAK/STAT(ヤヌスキナーゼ/シグナル伝達兼転写活性化因子)シグナル伝達経路は、免疫細胞間の連絡における主要なエレメントであり、そして主として、サイトカイン受容体により活性化される。サイトカインIL-31の結合は、JAK1/JAK2チロシンキナーゼの活性化およびリン酸化をもたらし、これは次に、STAT3のリン酸化(pSTAT3)をもたらす。次いで、活性化STATは、核内に転座し、そしてサイトカイン感受性遺伝子の転写を直接調節する。これらの研究において、Balb/cマウスに、化合物(I)の軟膏製剤を投与した。軟膏ビヒクル(表9)またはこの軟膏ビヒクル中に製剤化された化合物(I)を、毛を剃った皮膚(25μl/cm
2)に局所塗布し、その30分後、IL-31(1μg/ml)の皮内注射(50μl/1×1cm2部位)を、耳の間の後部の皮膚の1x1cm
2の毛を剃った領域に行った。IL-31の1時間後、皮膚生検を集めた。これらの組織サンプルを急激に冷凍し、そしてpSTAT3について、ELISAおよび化合物濃度により分析した。化合物(I)は、pSTAT3産生を80%阻害し、そして化合物(I)の皮膚組織濃度は62μMであった。
【表9】
【0240】
アッセイ10: マウスにおけるインビボTPA誘導性急性皮膚炎モデル
このアッセイの目的は、化合物(I)の抗炎症効果を、アトピー性皮膚炎などの皮膚の炎症状態について研究されている急性皮膚炎のモデル(Dong et al.,J Pharmacol Exp Ther,2013,344,436-446)において評価することである。
【0241】
マウスにおけるホルボールエステルTPAの局所真皮塗布は、初期段階(2~24時間)の浮腫および好中球流入ならびに後期段階(24~48時間)の上皮細胞増殖により特徴付けられる、炎症応答を引き起こす(Griffiths et al.,Agents and Actions,1988,25,344-351)。このモデルにおいて、雌性Balb/cマウスに、20μl/耳の、ビヒクルまたはTPA(2.5μg)のいずれかを局所投与した。溶液製剤については、ビヒクル(1:7のDMSO:アセトン)または試験化合物を、TPA投与の30分前および15分後に局所塗布した。軟膏製剤については、ビヒクルまたは化合物(I)(0.5%強度)を、TPAの30分前に塗布した。軟膏ビヒクルの組成を表10に列挙する。炎症の程度を、TPA塗布の6時間後の耳の厚さの変化として評価した。
【0242】
その結果を表11および12に要約する。溶液として投与される場合、化合物(I)(3~1000μg/耳)は、TPAにより誘導される耳の厚さの増大を、用量依存様式で阻害した。試験した最も高い用量は、TPA応答を54.8%阻害した。0.5%の強度の軟膏として製剤化した場合、化合物(I)は、TPA応答を34.9%阻害した。
【表10】
【0243】
【0244】
【0245】
アッセイ11: Tall-1 T細胞におけるIL-2刺激pSTAT5の阻害
Tall-1ヒトT細胞株(DSMZ)におけるインターロイキン-2(IL-2)刺激STAT5リン酸化の阻害に対する試験化合物の効力を、AlphaLisaを使用して測定した。IL-2はJAK1/3を介してシグナル伝達するので、このアッセイによりJAK1/3細胞効力の尺度を提供する。
【0246】
リン酸化STAT5を、AlphaLISA SureFire Ultra pSTAT5(Tyr694/699)キット(PerkinElmer)によって測定した。
【0247】
Tall-1細胞株由来のヒトT細胞を、37℃、5%CO2加湿恒温器において、15%熱失活ウシ胎児血清(FBS,Life Technologies)、2mM Glutamax(Life Technologies)、25mM HEPES(Life Technologies)、および1×Pen/Strep(Life Technologies)が補充されたRPMI(Life Technologies)中で培養した。化合物をDMSOで段階希釈し、空のウェルに音響学的に分注した。アッセイ培地(10%FBS(ATCC)が補充された無フェノールレッドDMEM(Life Technologies))を分注し(4μL/ウェル)、プレートを900rpmで10分間振盪した。細胞を、アッセイ培地(4μL/ウェル)中に45,000細胞/ウェルで播種し、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした後、予め加温したアッセイ培地(4μL)中にIL-2(R&D Systems;最終濃度300ng/mL)を30分間加えた。サイトカイン刺激の後、細胞を、1×PhosStopおよびComplete tablet(Roche)を含む6ulの3×AlphaLisa溶解緩衝液(PerkinElmer)で溶解した。ライセートを、室温(RT)にて900rpmで10分間振盪した。リン酸化STAT5を、pSTAT5 AlphaLisaキット(PerkinElmer)によって計測した。新たに調製したアクセプタービーズ混合物を、緑色フィルタリングした100lux未満の光の下でライセート(5μL)上に分注した。プレートを900rpmで2分間振盪し、短時間遠沈し、RTの暗所で2時間インキュベートした。ドナービーズを、緑色フィルタリングした100lux未満の光の下で分注した(5μL)。プレートを900rpmで2分間振盪し、短時間遠沈し、RTの暗所で一晩インキュベートした。ルミネセンスを、EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)を用いて緑色フィルタリングした100lux未満の光の下で689nmでの励起および570nmでの発光を使用して測定した。
【0248】
試験化合物のIL-2に応答する阻害性効力を測定するために、ヒトT細胞株におけるpSTAT5に結合したビーズの平均発光強度を計測した。化合物濃度に対するシグナル強度の阻害曲線の解析から、IC50値を決定した。データは、pIC50(負の常用対数IC50)値(平均値±標準偏差)として表される。化合物(I)は、このアッセイにおいて8.4のpIC50値を示した。
【0249】
アッセイ12: ヒトCD3+ T細胞におけるIL-12により誘導されるSTAT4のリン酸化の阻害
JAK阻害についてのこの細胞効力アッセイを、インターロイキン-12(IL-12,R&D Systems)によって誘導されたSTAT4のリン酸化をヒトCD3+ T細胞において計測することによって、行った。CD3抗体(Becton Dickinson(BD)Biosciences)をR-Phycoerythrin(R-PE)に結合体化した。pSTAT4抗体(pTyr641、BD Biosciences)をAlexa Fluor 647と結合体化させた。
【0250】
ヒト末梢血単球細胞を、37℃で、5%CO2加湿インキュベーター内で、10%のFBS(Life Technologies)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies)、2mMのGlutaMAX(Life Technologies)、プレート結合抗CD3(5μg/mL、UCHT1、BD Biosciences)および可溶性抗CD28(1μg/mL、CD28.2、BD Biosciences)を補充したRPMI培地(Life Technologies)中で、3日間培養した。次いで、細胞を、10%のFBS(Life Technologies)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies)、2mMのGlutaMAX(Life Technologies)および10ng/mLのインターロイキン-2(IL-2, R&D Systems)を補充したRPMI培地(Life Technologies)に、さらに3日間懸濁させた。アッセイの当日に、細胞をアッセイ緩衝液(0.1%のウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies)および2mMのGlutaMAX(Life Technologies)を補充したRPMI)で洗浄し、そして1mLのアッセイ緩衝液あたり1.25×106で再懸濁させた。細胞を1ウェルあたり100μLあたり250,000個の細胞で、ポリプロピレンの96ディープウェル丸底プレート(Corning)に播種し、そして1時間培養した。その培地を除去し、そして試験化合物の用量応答を含む50μLのアッセイ緩衝液で置き換えた。化合物を、DMSO中10mMのストック溶液として調製した。系列希釈を行って、最終アッセイ試験濃度の1000倍で、100%のDMSO中で11濃度の試験化合物を作製した。これらをアッセイ培地中で25倍、次いで20倍に希釈して、0.2%のDMSO中で、最終アッセイ試験濃度の2Xのストックを作製した。細胞を試験化合物と一緒に37℃で1時間インキュベートし、その後、IL-12(20ng/mL、R&D Systems)を含有する50μLの予熱したアッセイ緩衝液を添加した。IL-12の最終濃度は、10ng/mLである。37℃で30分間インキュベートした後に、細胞を100μLの予熱したcytofix緩衝液(BD Biosciences)で固定し、そして37℃で10分間インキュベートした。次いで、細胞を322×gで5分間遠心分離し、その上清を廃棄し、そして細胞を500μLの染色緩衝液(リン酸緩衝化食塩水(PBS)中1%のBSA)で洗浄した。次いで、細胞322×gで5分間遠心分離し、その上清を廃棄し、そして細胞を氷上で500μLの予冷したPerm III緩衝液(BD Biosciences)と一緒に30分間インキュベートして、細胞を透過性にした。次に、細胞を322×gで5分間遠心分離し、その上清を廃棄し、1mLの染色緩衝液で洗浄し、もう1回遠心分離し、そして最終細胞ペレットを、抗CD3 R-PE(1:10希釈物)および抗STAT4 AlexaFluor 647(1:50希釈物を含む)100μLの染色緩衝液に再度懸濁させて、細胞表面および細胞内マーカーを染色した。細胞を室温で暗所で45分間インキュベートした。抗体染色後、細胞を322×gで5分間遠心分離し、その上清を廃棄し、そして細胞を500μLの染色緩衝液で洗浄した。細胞をもう1回洗浄し、その後、そのウェルの内容物を、ディープウェルアッセイプレートから、フローサイトメトリー分析のために、ポリプロピレンU底96ウェルプレートに、200μLの染色緩衝液中で移した。用量反応分析のために、平均蛍光強度値を化合物の濃度に対してプロットし、Prismソフトウェアを用いて、4パラメータのロバストな適合モデルからIC50値を決定した。化合物(I)は、このアッセイにおいて、7.2のpIC50値を示した。
【0251】
アッセイ13: 正常ヒト表皮ケラチノサイトにおけるIL-13により刺激されるpSTAT6の阻害
インターロイキン-13(IL-13)により刺激されるSTAT6のリン酸化の阻害についての試験化合物の効力を、正常ヒト表皮ケラチノサイト(ATCC)において、AlphaLisaを使用して測定した。リン酸化STAT6を、AlphaLISA SureFire Ultra pSTAT6(Tyr641)キット(PerkinElmer)により測定した。
【0252】
初代表皮ケラチノサイトを、37℃の5%CO2加湿インキュベーター内で、ケラチノサイト成長キット(ATCC)および1X Pen/Strep(Life Technologies)を補充した真皮細胞基礎培地(ATCC)内で培養した。細胞を、20,000細胞/ウェルで、白色ポリ-D-リジンコーティングした384ウェルプレート(Corning)内に、50μlで播種し、そして37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。アッセイの2日目に、その培地を除去し、そして試験化合物の用量応答を含む15μLの培地で置き換えた。化合物をDMSOに系列希釈し、次いで培地中でさらに1000倍希釈して、最終DMSO濃度を0.1%にした。細胞を試験化合物と一緒に37℃で1時間インキュベートし、その後、IL-13(R&D Systems;最終濃度50ng/mL)を、予熱したアッセイ培地(5μL)に30分間添加した。
【0253】
サイトカイン刺激の後、細胞を、1x PhosStopおよびComplete tablets(Roche)を含有する5ulの5×AlphaLisa溶解緩衝液(PerkinElmer)で溶解した。ライセートを、室温(RT)にて900rpmで10分間振盪した。リン酸化STAT6を、pSTAT6 AlphaLisaキット(PerkinElmer)によって計測した。新たに調製したアクセプタービーズ混合物を、緑色フィルタリングした100lux未満の光の下でライセート(10uL)上に分注した。プレートを900rpmで2分間振盪し、短時間遠沈し、RTの暗所で2時間インキュベートした。ドナービーズを、緑色フィルタリングした100lux未満の光の下で分注した(10μL)。プレートを900rpmで2分間振盪し、短時間遠沈し、RTの暗所で一晩インキュベートした。ルミネセンスを、EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)を用いて緑色フィルタリングした100lux未満の光の下で689nmでの励起および570nmでの発光を使用して測定した。
【0254】
発光信号を記録し、そしてDMSOおよびコントロールに基づく阻害値の百分率を計算するために利用した。用量反応分析のために、パーセント阻害データを化合物の濃度に対してプロットし、Prismソフトウェアを用いて、4パラメータのロバストな適合モデルからIC50値を決定した。pIC50の化合物(I)は、このアッセイにおいて8.3であった。
【0255】
アッセイ14: 正常ヒト表皮ケラチノサイトにおけるIL-22により刺激されるpSTAT3の阻害
インターロイキン-22(IL-22)により刺激されるSTAT3のリン酸化の阻害についての試験化合物の効力を、正常ヒト表皮ケラチノサイト(ATCC)において、AlphaLisaを使用して測定した。リン酸化STAT3を、AlphaLISA SureFire Ultra pSTAT3(Tyr705)キット(PerkinElmer)により測定した。
【0256】
初代表皮ケラチノサイトを、37℃の5%CO2加湿インキュベーター内で、ケラチノサイト成長キット(ATCC)および1X Pen/Strep(Life Technologies)を補充した真皮細胞基礎培地(ATCC)内で培養した。細胞を、20,000細胞/ウェルで、白色ポリ-D-リジンコーティングした384ウェルプレート(Corning)内に、50μlで播種し、そして37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。アッセイの2日目に、その培地を除去し、そして試験化合物の用量応答を含む15μLの培地で置き換えた。化合物をDMSOに系列希釈し、次いで培地中でさらに1000倍希釈して、最終DMSO濃度を0.1%にした。細胞を試験化合物と一緒に37℃で1時間インキュベートし、その後、IL-22(R&D Systems;最終濃度50ng/mL)を、予熱したアッセイ培地(5μL)に30分間添加した。
【0257】
サイトカイン刺激の後、細胞を、1x PhosStopおよびComplete tablets(Roche)を含有する5ulの5×AlphaLisa溶解緩衝液(PerkinElmer)で溶解した。ライセートを、室温(RT)にて900rpmで10分間振盪した。リン酸化STAT3を、pSTAT3 AlphaLisaキット(PerkinElmer)によって計測した。新たに調製したアクセプタービーズ混合物を、緑色フィルタリングした100lux未満の光の下でライセート(10uL)上に分注した。プレートを900rpmで2分間振盪し、短時間遠沈し、RTの暗所で2時間インキュベートした。ドナービーズを、緑色フィルタリングした100lux未満の光の下で分注した(10μL)。プレートを900rpmで2分間振盪し、短時間遠沈し、RTの暗所で一晩インキュベートした。ルミネセンスを、EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)を用いて緑色フィルタリングした100lux未満の光の下で689nmでの励起および570nmでの発光を使用して測定した。
【0258】
発光信号を記録し、そしてDMSOおよびコントロールに基づく阻害値の百分率を計算するために利用した。用量反応分析のために、パーセント阻害データを化合物の濃度に対してプロットし、Prismソフトウェアを用いて、4パラメータのロバストな適合モデルからIC50値を決定した。pIC50の化合物(I)は、このアッセイにおいて8.4であった。
【0259】
アッセイ15: 正常ヒト表皮ケラチノサイトにおける、IL-22により抑制されたフィラグリンの回収
IL-22は、フィラグリンなどの末端分化遺伝子の発現を阻害することが公知である。インターロイキン-22(IL-22)により抑制されるフィラグリン発現についての試験化合物の回収レベルを、正常ヒト表皮ケラチノサイト(ATCC)において、リアルタイムPCRを使用して測定した。
【0260】
初代表皮ケラチノサイトを、37℃の5%CO2加湿インキュベーター内で、ケラチノサイト成長キット(ATCC)および1X Pen/Strep(Life Technologies)を補充した真皮細胞基礎培地(ATCC)内で培養した。細胞を、5,000細胞/ウェルで、BioCoat 96ウェルプレート(Corning)内に、100μlで播種し、そして37℃、5%CO2で、100%コンフルエンスになるまで3~4日間インキュベートした。次いで、その培地を除去し、そして試験化合物の用量応答を含む150μLの培地で置き換えた。化合物をDMSOに系列希釈し、次いで培地中でさらに1000倍希釈して、最終DMSO濃度を0.1%にした。アッセイの1日目に、細胞を試験化合物と一緒に37℃で1時間インキュベートし、その後、IL-22(R&D Systems;最終濃度50ng/mL)を、予熱した培地(50μL)に4日間添加した。試験化合物およびIL-22を含む培地を3日目に1回交換した、5日目に、細胞を1X PBS(Gibco)で洗浄し、そして0.5μlのDnaseI(TaqMan(登録商標)Gene Expression Cells-to-CtTM Kit(Life Technologies)から)を含有する50μlの溶解緩衝液ですすいだ。室温(RT)で5分間インキュベートした後に、このキットからの5μlの停止溶液を添加し、次いで室温で2分間インキュベートした。このキットからの11.25μlの溶解物、12.5μlの2X RT緩衝液および1.25μlの20X RT酵素ミックスを混合した。逆転写反応を、この混合物を37℃で60分間、次いで95℃で5分間インキュベートすることに行い、cDNAを生成した。PCRカクテルを組み立てるために、各反応物は、10μlの2X TaqMan(登録商標)Gene Expression Mater Mix、1μlの2X TaqMan(登録商標)Filaggrin Gene Expression Assay(Life Technologies)、1μlの2X TaqMan(登録商標)UBC Gene Expression Assay (Life Technologies)、4μlのヌクレアーゼ非含有水および4μlのcDNAを含有した。PCR反応を、StepOnePlusTM (Life Technologies)で、50℃で2分間、95℃で10分間、その後、95℃で15秒間および60℃で1分間の40サイクルのサイクリング条件で行った。各サイクル後に蛍光信号を捕捉した。比較CT法を使用して、ベースラインコントロールとしてIL-22および試験化合物を含まない細胞で、遺伝子発現を定量した。
【0261】
インターロイキン-22(IL-22)により抑制されるフィラグリン発現についての化合物(I)の回収は、1μM未満の濃度で観察された。
【0262】
アッセイ16: Caco-2透過アッセイ
Caco-2透過アッセイを、皮膚透過性の指標として使用した。このアッセイは、(ヒト小腸単層の密着結合を模倣するようにデザインされた)細胞単層を溶液中の試験化合物が透過する速度を測定する。
【0263】
CacoReady 24ウェルトランズウェルプレートを、ADMEcell(Alameda,CA)から入手した。化合物を、10mM DMSO保存溶液から5μMの濃度で2連(n=2)にて評価した。試験した化合物の受動的透過性を、頂端-基底外側(A-B)方向のP-gp輸送タンパク質を阻害するためにベラパミル(25μM)と共にCaco-2細胞単層を使用して評価した。37℃、5%CO2恒温器内で実験を行った。Caco-2培養培地は、標準的な濾過DMEM、FCS10%、L-グルタミン1%、およびPenStrep1%からなった。基底膜アッセイプレートを、750μLの輸送緩衝液をA-Bウェルに加えることによって調製した。CacoReady(商標)プレートを、頂端ウェルからCaco-2培地を除去して新鮮な輸送培地と置換する(200μLにて全部で3回洗浄)ことによって調製した。次いで、ブランク培地(200μL)を、A-Bウェルのために希釈化合物と置換した。インキュベーションを開始するために、基底プレートを恒温器から取り出し、その上に頂端部を加えた。時間ゼロ(t0)のために、頂端区分および基底区分からサンプル(40μL)を回収した。120分後(t120)に頂端区分および基底区分からサンプルを再度回収した。全サンプルを希釈し、LC-MS/MSによる生物分析のために調製した。cm/秒で示す透過係数(Kp、A-B方向の平均+ベラパミルの見かけ上の透過)を、dQ(flux)/(dt×領域×濃度)として計算した。
【0264】
このアッセイにおいて、約5×10-6cm/秒未満のKp値を有する化合物を、低い透過性を有するとみなす。約20×10-6cm/秒より高いKp値を有する化合物を、高い透過性を有するとみなす。
【0265】
アッセイ17: ヒト肝ミクロソームアッセイ
このアッセイの目的は、インビトロヒト肝臓サブフラクションにおける試験化合物の代謝安定性を評価することであった。Bioreclamation-IVT(Baltimore,MD)から得たヒト肝ミクロソームを氷上で解凍し、そして0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)で希釈して、0.1mg/mLの最終インキュベーションタンパク質濃度を得た。試験化合物(10mM)をNADPH補因子に希釈して、0.1μMの試験化合物および1mMのNADPHの最終インキュベーション濃度を得た。インキュベーションを37℃の温度で実施し、そして試験アリコートを、0分、5分、8分、15分、30分および45分の時点で採取した。各アリコートを、3%のギ酸および1μMの内部標準を含む水中でクラッシュした。得られたサンプルを、分析のためにLC-MS/MSシステムに注入した。
【0266】
各インキュベーションについて、t0のそれぞれのアリコート中の分析物のピーク面積を100%に設定し、そしてその後の時点のアリコートからのピーク面積を、t0に対して残っている親化合物の百分率に変換した。残っている親化合物の百分率を自然対数スケールに変換し、そして分を単位とする時間に対してプロットした。線形回帰分析を、親の消失プロフィールの最初の下り勾配について行い、そしてベストフィット直線の式を決定した。得られた直線の傾きをmg/mLタンパク質でのタンパク質濃度に対して、または細胞数/mLに対して標準化し、そしてCLintを、肝ミクロソームについて下記のように計算した:
CLint(μL・min-1・mg-1)=(傾き×1000)/[タンパク質、mg/mL]
【0267】
0~8μl/分/mgのCLint値は、低いクリアランス(すなわち、ヒトにおける30%未満の肝臓血流)を表す。9~49μl/分/mgのCLint値は、中程度のクリアランス(すなわち、ヒトにおける30~70%の肝臓血流)を表し、そして50μl/分/mgより高いCLint値は、高い肝臓クリアランス(すなわち、ヒトにおける70%より高い肝臓血流)を表す。
【0268】
化合物(I)および比較化合物の特徴付け
【表13】
比較化合物C-1およびC-2は、出願人により、2017年の4月、6月および8月になされた提出物において、会議で開示された。
【0269】
化合物(I)は、C-1およびC-2よりかなり高い透過性(Cacoverap値)およびヒト肝ミクロソームクリアランス(HLM Clint値)により特徴付けられる。より高いクリアランスは、迅速な全身クリアランスを促進し、そして全身曝露(これは副作用に関連し得る)を防止するために有益である。より高い透過性は、皮膚におけるより良好な浸透を提供するようであるので、皮膚の適応症のために有益である。
【0270】
本発明について、その具体的な局面または実施形態を参照して記述してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更が為され得るまたは同等物で代用され得ることが、当業者には理解されるであろう。加えて、適用される特許法および規制によって許可される程度まで、本明細書において引用されているすべての刊行物、特許および特許出願は、各文書が参照により本明細書に個々に組み込まれたのと同程度まで、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。