IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレイションの特許一覧

特許7218372エベロリムスを含む安定化した薬剤学的製剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】エベロリムスを含む安定化した薬剤学的製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20230130BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230130BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230130BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230130BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
A61K31/436
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/38
A61P37/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020538112
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2019000204
(87)【国際公開番号】W WO2019139313
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0004458
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518208484
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ハン キョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン スー
(72)【発明者】
【氏名】パク シン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム ジョン レ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515543(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038925(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104398483(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0138104(KR,A)
【文献】特開2018-111662(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01982702(EP,A1)
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2014年,Volume 473, Issues 1-2,p.187-193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
A61K 9/00 ~ 9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)活性成分としてエベロリムス、および、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを含む顆粒と、(ii)滑沢剤としてグリセリルベヘネートとを含む、薬剤学的製剤であって、
前記顆粒は、顆粒の総含有量に対して、2.7~5.0重量%のエベロリムス、及び、0.5~1.0重量%のブチルヒドロキシトルエンを含む、薬剤学的製剤
【請求項2】
前記顆粒は、結合剤としてヒプロメロースをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項3】
経口投与の形態に剤形化されることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項4】
前記経口投与の形態は、錠剤であることを特徴とする、請求項に記載の薬剤学的製剤。
【請求項5】
臓器移植拒絶反応の予防または治療のためのものである、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項6】
(i)活性成分としてエベロリムス、および、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを含む顆粒と、(ii)滑沢剤としてグリセリルベヘネートとを含む、薬剤学的製剤の製造方法であって、前記製造方法は、
エベロリムス、ブチルヒドロキシトルエン及び結合剤を溶解させて混合物を製造するステップと、
前記混合物から顆粒を製造するステップと、
前記顆粒に滑沢剤を入れて顆粒混合物を製造するステップと、
を含み、
前記顆粒は、顆粒の総含有量に対して、2.7~5.0重量%のエベロリムス、及び、0.5~1.0重量%のブチルヒドロキシトルエンを含む、薬剤学的製剤の製造方法。
【請求項7】
結合剤はヒプロメロースであることを特徴とする、請求項に記載の薬剤学的製剤の製造方法。
【請求項8】
前記顆粒は、湿式造粒法により製造されることを特徴とする、請求項に記載の薬剤学的製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エベロリムスを含む安定化した薬剤学的製剤に関する。具体的に、本発明は、活性成分としてエベロリムスを含み、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを含む顆粒を含む薬剤学的製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫抑制剤は、免疫システムの活性を低下させる薬剤学的化合物である。免疫抑制剤は、一般に自己免疫疾病の治療に用いられる。自己免疫疾病は、いくつかの形態の免疫システムの過敏反応を伴うと言われている疾患であり、例えば、クローン病、多発性硬化症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、アジソン病及びその他の多くの疾患があることが知られている。なお、免疫抑制剤は、臓器の移植後にドナー(臓器提供する側)とレシピエント(臓器移植される側)との間のヒト白血球抗原の単相型の違いによる臓器移植拒絶反応の予防及び治療にも用いられる。
【0003】
治療用途に開発される免疫抑制剤は、免疫抑制剤の化学構造及び作用機序によって分類される。免疫抑制性化合物には、ピメクロリムス(pimecrolimus)、シロリムス(sirolimus)、デフォロリムス(deforolimus)、テムシロリムス(temsirolimus)、及びゾタロリムス(zotarolimus)が含まれる。
【0004】
エベロリムス(everolimus)は、シロリムスの40-Oにヒドロキシエチル基を追加したシロリムスの誘導体であり、米国ではZortress(登録商標)、韓国及び欧州ではCertican(登録商標)という名で、臓器移植拒絶反応を防ぐ目的でノバルティスにより市販されている。また、この薬物は、免疫抑制剤の用途の他にも、mTOR経路を抑えて血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor;VEGF)の発現を抑えることにより抗癌活性を示して、最近、Afinitor(登録商標)という名で、スニチニブ(sunitinib)もしくはソラフェニブ(sorafenib)を用いたVEGF標的療法治療に失敗した進行性腎臓細胞癌の治療の目的で販売されている。この他にも、乳房癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌などに対する多くの臨床試験が行われている。
【0005】
エベロリムスは、下記のような一般式1のジヒドロキシ-12-{(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メトキシシクロヘキシル]プロパン-2-イル}-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.0(4,9)]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペントンとして定義される。
【0006】
【化1】
【0007】
前記エベロリムスの製造方法は、特許文献1に記載されている。特許文献1は、ラパマイシン物質及びそれから派生される誘導体を明示しており、エベロリムスの合成段階及び方法を開示している。
【0008】
前記特許文献1に開示されているエベロリムスの合成方法及びこれに対する歩留まり率に関するさらに詳しい事項は、特許文献2に記載されている。
【0009】
ヒトに経口投与するとき、エベロリムスのような固体相シロリムス誘導体は、水への溶解度が非常に低く、しかも、分子量が大きいため、胃腸管膜を透過しにくく、かつ、P-グリコプロテインのような放出ポンプ(efflux pump)の基質として働いて血流に有効な量で吸収され難い。したがって、エベロリムスのようなシロリムス誘導体は、予測できない溶解速度、不均一な生体利用率、及び不安定性などの欠点を有することが知られている。
【0010】
特許文献3には、酸化反応に敏感なシロリムス誘導体と抗酸化剤との混合物を製造することにより安定性を改善した製薬組成物が開示されている。同文献では、抗酸化剤とシロリムス誘導体との混合沈殿物を製造することにより安定性を改善することができる旨を記載しているが、実際の工程のためには、複雑な過程が先行されることを余儀なくされるという欠点がある。
【0011】
エベロリムスを活性成分として含む製剤は、主成分が酸化に敏感であるため、安定性に劣るという問題があるため、製剤の研究に際してこれを考慮することが望まれる。
【0012】
そこで、本発明者らは、エベロリムスを活性成分として含み、かつ、製剤学的に優れた特性を有する薬剤学的製剤を開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第5,665,772号明細書
【文献】国際公開2012/066502号
【文献】韓国登録特許第0695834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
エベロリムスを活性成分として含み、製剤学的に優れた特性を有する薬剤学的製剤を提供しようとする。具体的に、エベロリムスを活性成分として含む薬剤学的製剤において優れた抗酸化効果を示す抗酸化剤をスクリーニングする過程で、驚くべきことに、ブチルヒドロキシトルエンが優れた抗酸化効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
また、本発明者らは、活性成分としてエベロリムスを含み、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを含む顆粒を製造し、顆粒上において前記成分をそれぞれ特定の重量比で含むと、より安定性に優れた製剤を提供することができるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、活性成分としてエベロリムスを含み、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを含む顆粒を提供する。前記顆粒は、湿式造粒、乾式造粒などにより製造されてもよいが、湿式造粒により製造されることが好ましい。
【0017】
湿式造粒化による製剤の製造に際しては、湿式造粒化のために、当該技術分野において公知のいかなる方法であっても本発明の目的に応じて使用可能である。
【0018】
前記顆粒は、前記顆粒は、顆粒の総含有量に対して、好ましくは、エベロリムスを0.5~20重量%含んでいてもよく、さらに好ましくは、エベロリムスを1~10重量%含んでいてもよい。
【0019】
また、前記顆粒は、顆粒の総含有量に対して、好ましくは、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを0.05~10重量%含んでいてもよく、さらに好ましくは、0.1~5重量%含んでいてもよい。
【0020】
さらに、前記顆粒は、結合剤、崩壊剤、賦形剤などをさらに含んでいてもよい。前記顆粒は、好ましくは、結合剤としてヒプロメロースをさらに含んでいてもよい。
【0021】
さらにまた、本発明の薬剤学的製剤は、(i)エベロリムス、ブチルヒドロキシトルエン及び結合剤を溶解させて混合物を製造するステップと、(ii)前記混合物から顆粒を製造するステップと、(iii)前記顆粒に滑沢剤を入れて顆粒混合物を製造するステップと、により製造されてもよい。
【0022】
また、前記最終的な顆粒を打錠機で打錠して、活性成分としてエベロリムスを含み、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを含む安定した錠剤を提供することができる。
【0023】
本発明の薬剤学的製剤は、滑沢剤をさらに含んでいてもよい。前記滑沢剤は、グリセリルベヘネート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム及びコロイド性二酸化ケイ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよく、これらに制限されるものではない。本発明の滑沢剤は、最も好ましくは、グリセリルベヘネートであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、エベロリムスを活性成分として含む薬剤学的製剤に関するものであり、優れた安定性を有し、製造工程が簡便である他、量産可能であるというメリットを有する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、活性成分としてエベロリムスを含み、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを含む顆粒を含む薬剤学的製剤を提供する。
【0026】
具体的に、前記顆粒は、顆粒の総含有量に対して、エベロリムスを0.5~20重量%、かつ、ブチルヒドロキシトルエンを0.05~10重量%含むときに、より優れた安定性を有する。
【0027】
より具体的に、前記顆粒は、顆粒の総含有量に対して、エベロリムスを1~10重量%、かつ、ブチルヒドロキシトルエンを0.1~5重量%含むときに、最も優れた安定性を有する。
【0028】
前記顆粒は、乾式造粒法、湿式造粒法などをはじめとして、通常の顆粒の製造方法により製造されてもよく、好ましくは、湿式造粒法により製造されればよい。
【0029】
本発明の前記顆粒は、結合剤をさらに含んでいてもよい。本発明において、「結合剤」とは、形成された製剤の強度、特に、形成された錠剤の強度を増加させるために弾力性と粘着性とを与え得る物質を意味する。本発明の結合剤としては、通常的に用いられる結合剤を用いてもよく、好ましくは、ヒプロメロースであってもよい。
【0030】
本発明の薬剤学的製剤は、滑沢剤をさらに含んでいてもよい。本発明において、「滑沢剤」とは、製剤に向上した流動特性を与える物質である。前記滑沢剤として、グリセリルベヘネート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム及びコロイド性二酸化ケイ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されるものではない。好ましくは、滑沢剤としてグリセリルベヘネートを用いることができる。
【0031】
本発明の薬剤学的製剤は、希釈剤をさらに含んでいてもよい。本発明において、「希釈剤」とは、固体服用剤形の製造に際して好適な嵩(bulk)、流動物質及び圧縮特性を作るためのフィルタとして用いられた不活性物質を意味する。例えば、乳糖水和物、無水乳糖、白糖、トウモロコシ澱粉、またはリン酸一水素カルシウムであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の薬剤学的製剤は、崩壊剤をさらに含んでいてもよい。本発明において、「崩壊剤」とは、固形製剤の崩壊(disintegration)を加速化させて製剤において薬効を示す活性成分を短時間で放出するために用いられる物質を意味する。例えば、前記崩壊剤として、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、または低置換度のヒドロキシプロピルセルロースなどが使用可能であるが、これらに制限されるものではない。
【0033】
本発明の薬剤学的製剤は、経口投与の形態に剤形化されてもよく、前記経口投与の剤形は錠剤であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0034】
本発明の薬剤学的製剤は、臓器移植拒絶反応の予防または治療に用いられてもよい。
【0035】
本発明は、エベロリムス、ブチルヒドロキシトルエン及び結合剤を溶解させて混合物を製造するステップと、前記混合物から顆粒を製造するステップと、前記顆粒に滑沢剤を入れて顆粒混合物を製造するステップと、を含む、活性成分としてエベロリムスを含み、抗酸化剤としてブチルヒドロキシトルエンを含む薬剤学的製剤の製造方法を提供する。
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明する。しかし、これらの実施例は、単に本発明についての理解の一助となるために例示の目的でのみ提供されたものにすぎず、本発明の範囲が下記の実施例により制限されることはない。
【0037】
エベロリムスを含む錠剤の製造方法
有機溶媒にヒプロメロース、ブチルヒドロキシトルエン及びエベロリムスを入れ、結合液を製造した。乳糖水和物、クロスポビドン及びヒプロメロースの混合物に結合液を入れて煉り合わせた後に乾燥を行い、整粒機で整粒した。整粒物を乳糖水和物、無水乳糖及びクロスポビドンと混合した後、グリセリルベヘネートを入れ、最終混合を行ってエベロリムス顆粒混合物を製造した。最終混合物をもって打錠機で打錠して錠剤を製造した。製造された錠剤には、エベロリムス1.0mgが含まれている。
【0038】
[実施例1~5]
下記の表1の含有量に応じて、内部の総重量に基づくエベロリムス及びブチルヒドロキシトルエンの重量%をそれぞれ異ならせて、前記製造方法に従って実施例1~5の錠剤を製造した。
【0039】
【表1】
【0040】
[試験例1]
実施例1~5の類縁物質試験
下記の類縁物質試験の条件下で、実施例1~5の錠剤に対する類縁物質実験を行うことで安定性を評価し、各製剤を過酷条件(温度60℃)で4週間保存し、液体クロマトグラフィ法で類縁物質の量を評価した。
【0041】
<試験方法>
1)検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:276nm)
2)カラム:Zorbax SB-C18 4.6×250mm、5μm
3)注入量:50μL
4)流量:2.0mL/min
5)カラム温度:55℃近くの一定温度
6)サンプル温度:4℃近くの一定温度
7)分析時間:60分
8)移動相:
移動相A-水、アセトニトリル、メタノールの混液(30:20:50)
移動相B-アセトニトリル
【0042】
実施例1~5の類縁物質試験結果を下記の表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
上記の表2に示すように、実施例2及び3の場合、類縁物質の総量が1%以下と少ないことから、安定性が高いことを確認することができた。実施例1、4及び5の場合、実施例2及び3の場合よりも2~3倍以上多いことを確認した。
【0045】
[試験例2]
滑沢剤の種類による安定性試験
滑沢剤とは、製剤に向上した流動特性を与える物質であって、この実験では、グリセリルベヘネート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム及びコロイド性二酸化ケイ素を滑沢剤として、滑沢剤の種類による製剤の安定性を評価した。
【0046】
下記の表3に示す組成に従い、実施例1~5の方法と同様にして実施例6~8を製造した。
【0047】
【表3】
【0048】
実施例3、及び実施例6~8の製剤を過酷条件(温度60℃)で4週間保存し、下記の試験方法を用いて、液体クロマトグラフィ法で類縁物質の量を評価した。
【0049】
<試験方法>
1)検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:276nm)
2)カラム:Zorbax SB-C18 4.6×250mm、5μm
3)注入量:50μL
4)流量:2.0mL/min
5)カラム温度:55℃近くの一定温度
6)サンプル温度:4℃近くの一定温度
7)分析時間:60分
8)移動相:
移動相A-水、アセトニトリル、メタノールの混液(30:20:50)
移動相B-アセトニトリル
【0050】
滑沢剤の種類による実施例3、及び実施例6~8の類縁物質試験結果を下記の表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
上記表4に示すように、実施例3が最も優れた安定性を示すことを確認することができた。実施例7及び8は、実施例3と比べて2倍以上多い類縁物質を生成し、実施例6は、実施例3と比べて7倍以上多い類縁物質を生成した。
【0053】
結果的に、内部(顆粒)におけるエベロリムス及び抗酸化剤の重量比、及び滑沢剤の種類がエベロリムスを含む製剤の安定性に重要な影響を及ぼすことを確認した。