(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】交互オリゴマーを介して光ファイバーをコーティングするための放射線硬化性組成物とそれから生成されたコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20230130BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G18/67 005
C08G18/67 010
(21)【出願番号】P 2020566819
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 US2018063595
(87)【国際公開番号】W WO2019231492
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-10-22
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521218700
【氏名又は名称】コベストロ (ネザーランズ) ビー.ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ステーマン, パウルス アントーニウス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ペペル, マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, ヨハン フランツ グラデュス アントーニウス
(72)【発明者】
【氏名】レン, カンタイ
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-524094(JP,A)
【文献】特開2003-277453(JP,A)
【文献】特開2004-217823(JP,A)
【文献】特開2012-056823(JP,A)
【文献】特開平01-178559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C08G 18/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の重合性基を含む反応性オリゴマーであって、
アクリレート基、ウレタン基、及び骨格を含み、骨格は、イソシアネート及びヒドロキシアルキルアクリレートと反応したポリオールから誘導され、ポリオールは、少なくとも一つのポリエステル又はポリテトラメチレンエーテルブロックを含み、
前記反応性オリゴマーを作成するために使用される反応物は、オリゴマーを合成するために使用される全ての反応物の重量に対して、1重量%未満のポリプロピレングリコールを含み、
反応性オリゴマーは、ポリスチレン標準に対して較正されたサイズ排除クロマトグラフィー法によって測定されて、6000g/モルから25000g/モルの数平均分子量を有する、
反応性オリゴマー;
反応性希釈モノマー;
光開始剤;及び
場合によっては、一又は複数種の添加剤
を含む、光ファイバーをコーティングするための放射線硬化性組成物であって、
放射線硬化性組成物が、液体ガラス転移温度(Tg,rheo)、摂氏25°(℃)での第一粘度(η
25)、55℃での第二粘度(η
55)、及び85℃での第三粘度(η
85)を有し;
放射線硬化性組成物のTg,rheoが、-74℃未満、又は-80℃未満、又は-85℃未満、又は-90℃未満、又は-100℃未満、又は-105℃未満、又は-120から-83.6℃、又は-113から-83℃、又は-106から-83℃であり、ここで、Tg,rheoが式(8)を、放射線硬化性組成物の実験粘度対温度データへ適合させることによって決定され、
ここで、η(T)はT(℃)での組成物の粘度(Pa・s)である、放射線硬化性組成物。
【請求項2】
少なくとも一種の重合性基と骨格を含む反応性オリゴマーであって、イソシアネート、ポリオール、及びアクリレートモノマーを含む反応物の生成物であるウレタンアクリレートオリゴマーを含
み、骨格は、イソシアネート及びヒドロキシアルキルアクリレートと反応したポリオールから誘導され、ポリオールは、少なくとも一つのポリエステル又はポリテトラメチレンエーテルブロックを含み、
前記反応性オリゴマーを作成するために使用される反応物は、オリゴマーを合成するために使用される全ての反応物の重量に対して、1重量%未満のポリプロピレングリコールを含み、
反応性オリゴマーは、ポリスチレン標準に対して較正されたサイズ排除クロマトグラフィー法によって測定されて、6000g/モルから25000g/モルの数平均分子量を有する、
反応性オリゴマー;
反応性希釈モノマー;
光開始剤;及び
場合によっては、一又は複数種の添加剤
を含む、光ファイバーをコーティングするための放射線硬化性組成物であって、
ポリオールが、17.2モル/kg未満、又は15モル/kg未満、又は12モル/kg未満、又は5モル/kgから15モル/kg、又は6モル/kgから15モル/kg、又は7モル/kgから12モル/kgの第三級炭素含有量を含み;
放射線硬化性組成物が、液体ガラス転移温度(Tg,rheo)、摂氏25°(℃)での第一粘度(η
25)、55℃での第二粘度(η
55)、及び85℃での第三粘度(η
85)を有し;
放射線硬化性組成物のTg,rheoが、-74℃未満、又は-80℃未満、又は-85℃未満、又は-90℃未満、又は-100℃未満、又は-105℃未満、又は-120から-83.6℃、又は-113から-83℃、又は-106から-83℃であり、ここで、Tg,rheoが式(8)を、放射線硬化性組成物の実験粘度対温度データへ適合させることによって決定され:
ここで、η(T)はT(℃)での組成物の粘度(Pa・s)である、放射線硬化性組成物。
【請求項3】
組成物が二官能性反応性オリゴマーを含み、二官能性がオリゴマー当たり平均1.5から2.5の反応性基を有すると定義される、請求項1又は2に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
反応性希釈モノマーが、2-エチルヘキシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、n-ビニルピロリドン、ジメチルアクリル-アミド、n-ビニルカプロラクタム、エトキシル化2-フェノキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、又はイソデシルアクリレート、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から3の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項5】
反応性オリゴマーがブロックコポリマーを含み、反応性オリゴマーがモノブロック構造、ジブロック構造、又はトリブロック構造を有し、
ここで、モノブロック構造は、未反応オリゴマー当たり0.9から1.5未満の平均数のポリエーテルブロックとして定義され、
ジブロック構造は、未反応オリゴマー当たり1.5から2.5未満の平均数のポリエーテルブロックとして定義され、
トリブロック構造は、未反応のオリゴマー当たり2.5から3.5未満の平均数のポリエーテルブロックとして定義される、請求項1から4の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項6】
オリゴマーがジブロック構造を有する、請求項5に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項7】
反応性オリゴマーが、ポリスチレン標準に対して較正されたサイズ排除クロマトグラフィー法によって測定されて
、7000から20000g/モル、又は7000から15000g/モル、又は7000から10000g/モルの数平均分子量を有する、請求項1から6の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項8】
反応性オリゴマーが、放射線硬化性組成物全体の重量に対して、少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は50から80重量%、存在する、請求項1から7の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項9】
放射線硬化性組成物が、第一粘度、第二粘度、及び第三粘度のそれぞれにおいて液体であり、第一粘度と第三粘度の比が18未満、又は13未満、又は12未満、又は11未満、又は5から20、又は7から18、又は7から15、又は7から13、又は7から12である、請求項1から8の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項10】
第一粘度と第二粘度の比が3から5.5、又は3.1から5、又は3.2から5、又は3.2から4.5である、請求項9に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項11】
第三粘度が0.10Pa・sより大きく、又は1Pa・s未満であり、又は0.01Pa・sから2Pa・sの間である、請求項1から10の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項12】
第二反応性希釈モノマーを含む、請求項1から11の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項13】
反応物が、ポリオール基とイソシアネート基のモル比で1:4から1:1、かつイソシアネート基とアクリレート基のモル比で1.5:1から5:1の量で存在する、請求項1から12の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項14】
反応性オリゴマーが、複数のポリオールを含む反応物の反応生成物であるコポリマーであり、使用される複数のポリオール全ての平均第三級炭素含有量が、重量分率で17.2モル/kg未満、又は15モル/kg未満、又は12モル/kg未満、又は5モル/kgから15モル/kg、又は6モル/kgから15モル/kg、又は7モル/kgから12モル/kgである、請求項1から13の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項15】
ポリオールが、ポリエステル、ポリテトラメチレンエーテル、又はポリオキシプロピレングリコールブロック、又はそれらの組み合わせからなるか、あるいはそれらから本質的になる、請求項1から
14の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項16】
イソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、2,4-異性体トルエンジイソシアネート、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネート、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から
15の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項17】
アクリレートモノマーが、2-ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、又はエトキシル化ノニル-フェノールアクリレートを含む、請求項1から
16の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項18】
反応性オリゴマーがポリプロピレングリコールを実質的に含まない、請求項1から
17の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項19】
組成物が、組成物の全重量に対して、
50重量%から82重量%の反応性オリゴマー;
10重量%から50重量%の反応性希釈モノマー;
1重量%から5重量%の光開始剤;
及び1重量%から5重量%の添加剤
を含む、請求項1から
18の何れか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光ファイバーをコーティングする方法、高速、低ヘリウム、及び/又は高温線引を使用して製造される光ファイバーでの使用に適した放射線硬化性コーティング、並びにそれから作製された光ファイバーに関する。
【0002】
[関連出願との相互参照]
この出願は、ここに完全に記載されているかのようにその全体が出典明示によりここに援用される、2018年6月1日出願の米国仮出願第62/679383号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバーは様々な用途で使用されており、他の媒体に比べて幾つかの利点を有している。例えば、データを、ワイヤよりも高いデータ速度で光ファイバーを介して送信できる。光ファイバーはまたワイヤよりも軽量で可撓性がある。従って、光ファイバー、特にガラス製の光ファイバーは、電気通信産業においてデータ伝送にしばしば使用される。しかし、保護しないままでは、光信号が伝送される細いガラスストランドが壊れやすいため、光ファイバーは現場での使用には適していない。物理的損傷を受けやすいことに加えて、未コーティング光ファイバーはまた水分との接触によって悪影響を受ける。その結果、保護と高レベルの性能を確保するために光ファイバーには表面コーティングが長い間施されてきている。
【0004】
例えば約2000℃の温度に局所的かつ対称的に加熱された特別に調製された円筒状プリフォームからガラス繊維を引き出すことはよく知られている。プリフォームを炉に送り込むなどしてプリフォームを加熱すると、溶融材料からガラス繊維が引き出される。ガラス繊維がプリフォームから引き出された後、好ましくは冷却直後に、表面コーティング組成物がガラス繊維に塗布される。コーティング組成物がついで硬化されて、コーティングされた光ファイバーが製造される。移動しているガラス繊維にコーティング組成物の二重層を塗布する一般的な方法は、当該技術分野で周知であり、Taylorの米国特許第447830号及びRennell等の米国特許第4851165号に開示されている。より新しいファイバーの設計概念は、米国特許第8837892号、米国特許出願公開第2014/0294355号、及び米国特許出願公開第2015/0071595号に見出すことができる。
【0005】
それらを保護するために、光ファイバーは、ファイバーが線引きによって製造された直後に、二層以上の重ねられた放射線硬化性コーティングでコーティングされることが多い。光ファイバーに直接接触するコーティングを「内側一次コーティング」と呼び、オーバーレイコーティングを「外側一次コーティング」と呼ぶ。幾つかの文献では、内側一次コーティングは単に「一次コーティング」とも呼ばれ、外側一次コーティングは「二次コーティング」と呼ばれる。内側一次コーティングは、典型的には二次コーティングよりも有意に低い弾性率を持つように配合される。
【0006】
比較的柔らかい内側一次コーティングは、コーティングされた光ファイバーの信号伝送の追加の減衰(すなわち、信号損失)が生じるので望ましくないマイクロベンドに対する耐性を提供する。マイクロベンドは、数マイクロメートルの局所的な軸方向変位と数ミリメートルの空間波長を含む光ファイバーの微視的な湾曲である。マイクロベンドは、熱応力及び/又は機械的な横力によって引き起こされうる。コーティングは、光ファイバーをマイクロベンドから保護する横力保護をもたらしうるが、コーティング厚が減少すると、もたらされる保護の量が減少する。コーティングとマイクロベンドにつながる横応力からの保護の関係は、例えば、D. Gloge, “Optical-fiber packaging and its influence on fiber straightness and loss”, Bell System Technical Journal, Vol. 54, 2, 245 (1975);W. B. Gardner, “Microbending Loss in Optical Fibers”, Bell System Technical Journal, Vol. 54, No. 2, p. 457 (1975);J. Baldauf, “Relationship of Mechanical Characteristics of Dual Coated Single Mode Optical Fibers and Microbending Loss”, IEICE Trans. Commun., Vol. E76-B, No. 4, 352 (1993); and K. Kobayashi, “Study of Microbending Loss in Thin Coated Fibers and Fiber Ribbons”, IWCS, 386 (1993)において検討されている。より硬い外側一次コーティング、すなわち二次コーティングは、コーティングされたファイバーがリボン状及び/又はケーブル状にされたときに遭遇するもののような取り扱い力に対する耐性を提供する。
【0007】
光ファイバー二次コーティング組成物は、一般に、硬化前に、多くの場合、液体エチレン性不飽和希釈剤及び光開始剤に溶解又は分散される一又は複数種のオリゴマーからなるエチレン性不飽和化合物の混合物を含む。コーティング組成物は、典型的には、液状で光ファイバーに塗布され、ついで化学線に曝露されて硬化する。
【0008】
一次コーティングは、光ファイバーのコアから誤った光信号を取り除くことを可能にするために、関連する光ファイバーのクラッドよりも高い屈折率を有することが好ましい。一次コーティングは、多くの場合、ポリプロピレングリコール(PPG)に由来する骨格を持つ、典型的にはウレタンアクリレートオリゴマーを多量に含む、エチレン性不飽和化合物の混合物の硬化生成物である。
【0009】
一次コーティングは、熱的及び加水分解的エージング中にガラス繊維への十分な接着を維持する必要があるが、(必要に応じて)スプライシング目的でガラス繊維から剥がすことができる。一次コーティングは、典型的には、20~50μmの範囲の厚さ(例えば、約25又は32.5μm)を有し、200μm繊維では15~25μmの範囲のより薄い厚さを有する。
【0010】
一次コーティングは、典型的には約40μm未満の厚さを有するが、他の厚さを使用することもできる。一次コーティングは、典型的にはガラス繊維に塗布され、続いて硬化される。酸化防止剤、接着促進剤、抑制剤、光増感剤、担体界面活性剤、粘着付与剤、触媒、安定剤、界面活性剤、及び蛍光増白剤を含む、一次コーティングの一又は複数の特性を増強する様々な添加剤もまた存在しうる。
【0011】
二次コーティングは外側コーティングである。二次コーティングは、例えば、重合時に分子が高度に架橋されるコーティング組成物の重合生成物である。二次コーティングは、典型的には、高いその場弾性率(例えば、25℃で約800MPaを超え、より好ましくは約1GPaから約3GPaの間)と高いTg(例えば、約50℃を超える)を有する。その場二次弾性率は、好ましくは約1000MPaよりも大きい。二次コーティングは、多くの場合、約40μm未満の厚さを有している。
【0012】
一次層と二次層を含む光ファイバーコーティングは、典型的には、ウェットオンウェット(WOW)とウェットオンドライ(WOD)の2つのプロセスの一つを使用して塗布される。WODプロセスでは、ファイバーは最初に一次コーティング塗布を通過し、これは紫外線(UV)放射への暴露によって硬化される。ついで、ファイバーは二次コーティング塗布を通過し、これは続いて同様の手段で硬化される。WOWプロセスでは、繊維は一次コーティング塗布と二次コーティング塗布の両方を通過し、その後、ファイバーは硬化工程に進む。ウェットオンウェットプロセスでは、一次コーティング及び二次コーティング塗布の間の硬化ランプが省略される。
【0013】
放射光エネルギーが、光ファイバーのための放射線硬化性コーティングの製造に使用される。特に、硬化プロセスでは、UVランプからの放射エネルギーを使用して光ファイバーコーティングを硬化させる。広帯域水銀スペクトルを持つUVランプが、そのような放射線硬化性コーティングの迅速かつ完全な硬化を確実にするその高強度及び広発光スペクトルのために、産業界で一般的に使用されている。UV-LED(発光ダイオード)ランプを利用した硬化システムがまた、その効率的な構造により、少ないエネルギー入力でファイバー製造プロセスが可能になるので、益々使用され始めている。
【0014】
光ファイバーの世界的な需要は、年々増加し続けている。この増大する需要に応え、またそのような競争の激しい産業において生産性の利点をもたらすためには、とりわけ、光ファイバーが形成され、コーティングされ、硬化される速度を増加させることが有益であろう。現在のコーティング及びプロセス技術により、殆どのファイバー製造業者は、線引きタワーを少なくとも1000m/分のライン速度で快適に操作でき、最大1500m/分、更には2500m/分以上の速度も可能である。
【0015】
しかしながら、ファイバーの線引き速度が増加するにつれて、幾つかの技術的課題がプロセスに発生し、それにより、適切にコーティングされた光ファイバーを製造することが困難になる。これらの技術的課題の中には、相対的な硬化曝露時間が短縮されるため、一次及び二次コーティング組成物を完全に硬化させるのに十分な線量の放射線を与えるUV光源の能力の低下が含まれる。更なる課題には、より高いライン速度を特徴とする振動が、正確なコーティング塗布の許容範囲を超える物理的な動きを引き起こす可能性があるため、コーティングされたファイバーの塗布における振れ又は同心度エラーの傾向の増加が含まれる。また更なる課題には、気泡の閉じ込め、コーティングの層間剥離、及びマイクロベンドによって引き起こされる減衰の増加が含まれる。
【0016】
これらの課題の多くは、新たに線引きされたガラス繊維とそれが接触する一次コーティング組成物との間の望ましくない温度差によって誘発され又は悪化する。より高い線引速度では、ファイバーは50℃を有意に超えうる温度で一次コーティングダイに入る。他の全てが等しい場合、ファイバー線引速度が増加するにつれて、以前に溶融したガラス繊維は、一次コーティング組成物が適用される周囲温度に平衡化する時間が少なくなる。冷却が不十分なガラス繊維は、塗布中に一次コーティングに付随する温度上昇を引き起こし、それが下流の硬化工程まで持続する可能性がある。十分な熱抵抗性を持たないコーティング組成物(特に一次コーティング組成物)は、この現象によって悪影響を受け、従って、それから製造されたコーティングされた光ファイバーの物理的特性(そして更には商業的実行可能性)の悪化につながる。
【0017】
この問題を軽減しようとする方法は産業界においてよく知られている。そのような方法は、窒素又はヘリウムなどの、周囲空気よりも高い熱伝達係数を持つ流体の適用を介して、新たに線引きされたガラス繊維が冷却されうる速度を増加させることを含む。ヘリウムは熱伝達係数が特に高いため、効果的であることが知られている。しかし、ガラス繊維の冷却に必要なヘリウムの量は、線引速度の増加と共に指数関数的に増加するため、有限の冷却管空間に定まった期間適用されうる量には物理的な制約がある。更に、ヘリウムのコスト高のため、ファイバー製造プロセス中の投入費用がかさばる。このようなコストのかかる変数に対する要件が指数関数的に増加すると、より高速なライン速度によって達成されるスループットの増加によって実現される生産性向上の価値が直ぐに相殺される。従って、更なる解決手段が必要である。
【0018】
プロセス最適化、より高い線引タワーの構築、より効率的なヘリウムの適用、及びファイバー線引きの強化を通じてこれらの問題を軽減する更なる試みが知られている。しかし、3000m/分以上などの更に高速で、又は必要とされる高価なヘリウムの量を削減(又は排除)して既存の速度で光ファイバーコーティングプロセスを真にかつより費用効果的に使用できるようにするためには、放射線硬化性コーティング組成物自体の性能を改善する必要がある。更に、オリゴマー骨格を形成するポリプロピレングリコールの使用に依存しないオリゴマーを用いながら、前記性能を改善することが望ましい。これは、PPGの製造に使用される原材料が不足している場合、又は滅菌されていないPPGに付随する酸化分解の既知の影響を回避し又は制限するためには望ましいであろう。加えて、他のポリオールは、高速コーティング用途に望ましい特性を備えたコーティングを生成できると考えられる。
【0019】
具体的には、より高い温度で優れた加工性を示す光ファイバーコーティング、特にPPGを含まない一次コーティングを提供するという満たされていない必要性が存在する。そのようなより高い温度は、主に、より速いライン加工速度、減少したヘリウム入力、又はその両方を介して導入されうる。更に、十分な熱抵抗性を備え、同時に産業界が期待するようになった既存のコーティング性能レベルをまた維持し又は超えることができる光ファイバーコーティングを提供するという満たされていない必要性が存在する。そのような改善された一次コーティングは、より高いライン速度又はより低いヘリウム入力で加工可能であることに加えて、高速硬化であり、十分なガラス接着性を示し、低弾性率を有することによって優れたマイクロベンド耐性に寄与する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ここに記載の実施態様に係る光ファイバーの断面を概略的に示す。
【0021】
【
図2】A-A線に沿って取られた断面図であり、
図1の光ファイバーの一実施態様の構成を示している。
【0022】
【
図3】ここで特定された手順に従ってTg,rheo値を確立するための本発明の実施態様(実施例2)のカーブフィッティングを示す。
【0023】
【
図4】本発明の2つの実施態様と比較例との相対的な熱感度を示しており、各組成物の定常状態粘度を25℃と85℃の間の温度の関数としてプロットしている。
【0024】
【
図5】本発明に係る様々な組成物、並びに様々な比較例に対して、25℃での各組成物の定常状態粘度、並びに25℃と55℃の間の各組成物の粘度比を示すプロットを示す。
【0025】
【
図6】本発明に係る様々な組成物、並びに様々な比較例に対して、85℃での各組成物の定常状態粘度、並びに25℃と85℃の間の各組成物の粘度比を示すプロットを示す。
【発明の概要】
【0026】
ここに記載されるのは、本発明の幾つかの実施態様である。第一の態様は、光ファイバー部を含むコーティングされた光ファイバーであり、光ファイバー部自体は、ガラスコアと、該ガラスコアと接触し、それを取り囲むクラッド層;及びコーティング部を更に含み、前記コーティング部は、前記クラッド層と接触し、それを取り囲む一次コーティング層と;前記一次コーティング層と接触し、それを取り囲む二次コーティング層を更に含む。この第一の態様の所定の実施態様によれば、一次コーティング層は、イソシアネート、ポリプロピレングリコールから実質的に誘導されていないか又はポリプロピレングリコールを実質的に含まないポリオール、及びアクリレートモノマーを含む反応物の生成物であるウレタンアクリレートオリゴマー;反応性希釈モノマー;及びフリーラジカル光開始剤を含む放射線硬化性組成物の硬化生成物であり;放射線硬化性組成物は、摂氏25°(℃)での第一粘度、55℃での第二粘度、及び85℃での第三粘度を有し、放射線硬化性組成物は、第一粘度、第二粘度、及び第三粘度のそれぞれで液体であり、第一粘度と第三粘度の比は、18未満、又は13未満、又は12未満、又は11未満、又は5から20、又は7から18、又は7から15、又は7から13、又は7から12である。
【0027】
第二の態様は、少なくとも一種の重合性基を含む反応性オリゴマーであって、ポリプロピレングリコールから実質的に誘導されていない反応性オリゴマー;反応性希釈モノマー;光開始剤;及び場合によっては、一又は複数種の添加剤を含む、光ファイバーをコーティングするための放射線硬化性組成物であり;放射線硬化性組成物は、液体ガラス転移温度(Tg,rheo)、25℃での第一粘度(η
25)、55℃での第二粘度(η
55)、及び85℃での第三粘度(η
85)を有し、放射線硬化性組成物のTg,rheoが、-74℃未満、又は-80℃未満、又は-85℃未満、又は-90℃未満、又は-100℃未満、又は-105℃未満、又は-120から-83.6℃、又は-113から-83℃、又は-106から-83℃であり、ここで、Tg,rheoが式(8)を、放射線硬化性組成物の実験粘度対温度データへ適合させることによって決定され:
ここで、η(T)はT(℃)での組成物の粘度(Pa・s)である。
【0028】
本発明の第二の態様の更なる実施態様は、第一粘度と第二粘度の間、又は第一粘度と第三粘度の間であるかどうかにかかわらず、組成物の様々な粘度比を規定する。第二の態様の更に別の実施態様は、様々な定常状態の(10/秒のせん断速度での)粘度値を規定する。更に別の実施態様は、本発明に係る組成物に取り込まれうる様々な化学成分、比率、量、及びタイプを記述する。
【0029】
本発明の第三の態様は、一次コーティングを含むコーティングされた光ファイバーであり、一次コーティングは、第二の態様の実施態様の何れかに係る放射線硬化性組成物の硬化生成物である。
【0030】
本発明の第四の態様は、線引タワーを通してガラス光ファイバーを線引きする工程;ガラス光ファイバーの表面に一次コーティング組成物を塗布する工程;及び場合によっては、前記一次コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な線量のUV光を与える工程;一次コーティング組成物に二次コーティング組成物を塗布する工程;一次コーティング組成物と二次コーティング組成物を、紫外線を放射することができる少なくとも一種の放射線源に曝露して、一次コーティング組成物及び二次コーティング組成物の硬化に影響を与え、光ファイバーの表面に硬化した一次コーティングを、かつ硬化した一次コーティングの表面に硬化した二次コーティングを形成する工程を含み;一次コーティング組成物が、少なくとも一種の重合性基を含む反応性オリゴマーであって、ポリプロピレングリコールから実質的に誘導されていない反応性オリゴマー;反応性希釈モノマー;光開始剤;及び場合によっては、一又は複数種の添加剤を含み;放射線硬化性組成物が、液体ガラス転移温度(Tg,rheo)、25℃での第一粘度(η
25)、55℃での第二粘度(η
55)、及び85℃での第三粘度(η
85)を有し;放射線硬化性組成物のTg,rheoが、-74℃未満、又は-80℃未満、又は-85℃未満、又は-90℃未満、又は-100℃未満、又は-105℃未満、又は-120から-83.6℃、又は-113から-83℃、又は-106から-83℃であり、ここで、Tg,rheoが式(8)を、放射線硬化性組成物の実験粘度対温度データへ適合させることによって決定され:
ここで、η(T)はT(℃)での組成物の粘度(Pa・s)である、コーティングされた光ファイバーを製造するための方法である。
【0031】
第四の態様の別の実施態様は、次の条件:1500m/分を超え、又は1700m/分を超え、又は2000m/分を超え、又は2500m/分を超え、又は3000m/分を超え、かつ5000m/分未満、又は4000m/分未満、又は3100m/分未満の線引速度;又はヘリウムの不適用下、又は20標準リットル/分(SLM)未満、又は10SLM未満、又は5SLM未満、又は1から20SLM、又は1から10SLM、又は1から5SLM、又は5から20SLM、又は5から10SLMの流量でのヘリウムの適用下のうちの、一又は複数による光ファイバーコーティング方法を記述する。
【0032】
本発明の第五の態様は、光ファイバーが、本発明の第一又は第三の態様に係る少なくとも一種の光ファイバーを含み、光ファイバーが、本発明の第二の態様に係る組成物の硬化生成物であり、及び/又は光ファイバーが本発明の第四の態様に従ってコーティングされた、光ファイバーケーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の第一の実施態様は、光ファイバー部とコーティング部を含み、前記光ファイバー部自体は、ガラスコアと、該ガラスコアと接触し、それを取り囲むクラッド層を含み、前記コーティング部は、前記クラッド層と接触し、それを取り囲む一次コーティング層と;前記一次コーティング層と接触し、それを取り囲む二次コーティング層を更に含む、コーティングされた光ファイバーである。この第一の態様によれば、一次コーティング層は、イソシアネート、ポリオール、及びアクリレートモノマーを含む反応物の生成物であるウレタンアクリレートオリゴマー;反応性希釈モノマー;及びフリーラジカル光開始剤を含む放射線硬化性組成物の硬化生成物であり;放射線硬化性組成物は、摂氏25°(℃)での第一粘度、55℃での第二粘度、及び85℃での第三粘度を有し、放射線硬化性組成物は、第一粘度、第二粘度、及び第三粘度のそれぞれで液体であり、第一粘度と第三粘度の比は18未満、又は13未満、又は12未満、又は11未満、又は5から20、又は7から18、又は7から15、又は7から13、又は7から12である。
【0034】
図1は、ここで検討されたファイバー10の側面図である。
図2は、ここに記載されたコーティングされたファイバーの結果の一例のファイバー10の断面図である。
【0035】
光ファイバー10は、コア11、クラッド12、外側環状クラッド領域に接触してそれを取り囲む一次コーティング13、及び二次コーティング14を含む。コア11の外径はD1であり、クラッド12の外径はD2である。一次コーティング13は、1.5MPa未満、又は1.2MPa未満、又は0.35MPa、0.3MPa、又は0.25MPaと低く、他の実施態様では、0.2MPa以下のその場(又はファイバー上)引張弾性率を有する典型的な一次コーティングである。その場弾性率を記述する方法は当該技術分野で周知であり、とりわけ、米国特許第7171103号及び米国特許第6961508号に記載されており、これらはそれぞれDSM IP Astests BVに譲受されている。硬化した一次コーティング13は、-35℃未満、又は-40℃未満、又は-45℃未満であり、他の実施態様では-50℃以下のその場ガラス転移温度を有する。低いその場弾性率を有する一次コーティングは、ファイバー内を伝搬するモード間のカップリングメカニズムであるマイクロベンディングを低減する。低いその場ガラス転移温度は、ファイバーが非常に寒い環境に敷設された場合でも、一次コーティングのその場弾性率が低いままであることを担保する。従って、マイクロベンディング性能は温度に対して安定しており、全ての状況で低モードカップリングが得られる。二次コーティング14は、一次コーティング13と接触し、それを取り囲んでいる。二次コーティング14は、800MPaを超え、又は1110MPaを超え、又は1300MPaを超え、又は1400MPaを超え、又は1500MPaを超えるその場引張弾性率を有する。高いその場弾性率を有する二次コーティングは、ファイバー内を伝搬するモード間のカップリングメカニズムであるマイクロベンディングを低減する。
【0036】
ここに示され、記載される実施態様では、コア11は、純シリカガラス(SiO2)又はドープされていない純シリカガラスに対してガラスコアの屈折率を増加させる一又は複数種のドーパントを含むシリカガラスを含む。コアの屈折率を増加させるための適切なドーパントには、限定されないが、GeO2、Al2O3、P2O5、TiO2、ZrO2、Nb2O5、Ta2O5、及び/又はそれらの組み合わせが含まれる。クラッド12は、純シリカガラス(SiO2)、クラッドが「アップドープ」されている場合など、屈折率を増加させる一又は複数種のドーパント(GeO2、Al2O3、P2O5、TiO2、ZrO2、Nb2O5、及び/又はTa2O5)を含むシリカガラス、又は内部クラッドが「ダウンドープ」されている場合など、コア11の最大相対屈折率[Δ1MAX]がクラッド12の最大相対屈折率[Δ4MAX]よりも大きい限り、フッ素のような屈折率を低下させるドーパントを含むシリカガラスを含みうる。一実施態様によれば、クラッド12は純シリカガラスである。
【0037】
本発明の実施態様では、任意の光ファイバータイプを使用することができる。しかし、好ましい実施態様では、コーティングされた光ファイバーは、1310nmの波長で8から10μmのモードフィールド径、又は1550nmの波長で9から13μmのモードフィールド径、及び/又は20から200μm2の有効面積を有する。そのようなファイバーは、より高いライン又は加工速度を利用するこれらファイバーのコーティングプロセスに対する予想される需要を考えると、シングルモード及び/又は大有効面積ファイバーでありうる。しかし、マルチモードファイバーなどの他のファイバータイプもまた使用できる。
【0038】
一次コーティング13は、光ファイバーのコアから逸脱した光信号を取り除くことを可能にするために、好ましくは、光ファイバー10のクラッド12よりも高い屈折率を有する。例えば、例示的な透過光ファイバー10は、コア及びクラッドについて、それぞれ、1.447及び1.436の、波長1550nmにおける屈折率値を有し得;従って、一次コーティング13の屈折率は、1550nmにおいて1.44よりも大きいことが望ましい。一次コーティング13は、熱的及び加水分解的エージング中にガラス繊維への十分な接着性を維持するが、(必要ならば)スプライシング目的でガラス繊維から剥がすことができる。一次コーティング13は、典型的には、20から50μmの範囲の厚さ(例えば、約25又は32.5μm)を有し、200μmファイバーについては15から25μmの範囲のより薄い厚さを有する。
【0039】
コーティング13は一次コーティングであり、通常はガラス繊維に直接塗布される。コーティング13は、好ましくは、低いその場弾性率及び低いその場Tgを有する軟質架橋ポリマー材料から形成される。
【0040】
一次コーティング13は、好ましくは、約40μm未満、より好ましくは約20から約40μmの間、最も好ましくは約20から約30μmの間の厚さを有する。以下にここでより詳細に説明するように、一次コーティング13は、典型的には、ガラス繊維に塗布され、その後硬化される。酸化防止剤、接着促進剤、PAG化合物、光増感剤、担体界面活性剤、粘着付与剤、触媒、安定剤、表面剤、及び上述のタイプの光学的光沢剤を含む、一次コーティングの一又は複数の特性を向上させる様々な添加剤もまた存在しうる。
【0041】
一実施態様では、適切な一次コーティング組成物は、限定されないが、約10から95重量パーセント、又は10から90重量パーセント、又は約25から約75重量パーセントの一又は複数種のウレタンアクリレートオリゴマー;約10から約65重量パーセント、より好ましくは約25から約65重量パーセントの一又は複数の単官能性エチレン性不飽和モノマー;約0から約10重量パーセントの一又は複数の多官能性エチレン性不飽和モノマー;約1から約5重量パーセントの一又は複数の光開始剤;約0.5から約1.5pphの一又は複数の酸化防止剤;場合によっては約0.5から約1.5pphの一又は複数の接着促進剤;場合によっては約0.1から約10pphのPAG化合物;及び約0.01から約0.5pphの一又は複数の安定剤を含みうる。
【0042】
コーティング14は外側コーティングであり、「二次コーティング」の伝統的な目的を果たす。外側コーティング材料14は、例えば、その分子が重合時に高度に架橋されるコーティング組成物の重合生成物である。ここに記載の実施態様では、コーティング14は、高いその場弾性率(例えば、25℃において約800MPaを超える)及び高いTg(例えば、約50℃を超える)を有する。その場二次弾性率は、好ましくは約1000MPaより大きく、より好ましくは約1100MPaより大きく、最も好ましくは約1200MPaより大きい。幾つかの好ましい実施態様によれば、その場二次弾性率は1200MPaより大きい。他の好ましい実施態様では、その場二次弾性率は、約1000MPaから約8000MPaの間、より好ましくは約1200MPaから約5000MPaの間、最も好ましくは約1500MPaから約3000MPaの間である。二次コーティングのその場Tgは、好ましくは約50℃から約120℃の間、より好ましくは約50℃から約100℃の間である。一実施態様では、二次コーティング14は、約40μm未満、より好ましくは約20から約40μmの間、最も好ましくは約20から約30μmの間の厚さを有する。
【0043】
外側(又は二次)コーティング材料において使用するための他の適切な材料、並びにこれらの材料の選択に関連する考慮事項は、当該技術分野において周知であり、例えば、Chapinの米国特許第4962992号及び第5104433号に記載されている。これらの代替として、高弾性率コーティングが、Botelho等の米国特許第6775451号、及びChou等の米国特許第6689463号に記載されているように、低オリゴマー含有量のコーティング系を使用してまた得られている。加えて、非反応性オリゴマー成分が、Schissel等の米国出願公開第20070100039号に記載されているように、高弾性率コーティングを達成するために使用されている。以下にここでより詳細に説明するように、外側コーティングは、典型的には、先にコーティングされたファイバーに(事前の硬化の有無にかかわらず)塗布され、その後硬化される。酸化防止剤、PAG化合物、光増感剤、触媒、潤滑剤、低分子量非架橋樹脂、安定剤、界面活性剤、表面剤、スリップ添加剤、ワックス、微粉化ポリテトラフルオロエチレンなどを含む、コーティングの一又は複数の特性を向上させる様々な添加剤もまた存在しうる。当該技術分野でよく知られているように、二次コーティングはまたインクを含みうる。
【0044】
二次又は外側コーティング14に適した組成物は、限定されないが、約0から70重量パーセントの一又は複数のウレタンアクリレートオリゴマー;約45から約95重量パーセントの一又は複数の多官能性エチレン性不飽和モノマー;約0から約10重量パーセントの一又は複数の単官能性エチレン性不飽和モノマー;約1から約5重量パーセントの一又は複数の光開始剤;約0から約5pphの一又は複数のスリップ添加剤;及び約0.5から約1.5pphの一又は複数の酸化防止剤を含む。
【0045】
上記のようなファイバーの一次及び二次コーティング、並びに広帯域UVランプを使用して硬化するためのインク及びマトリックス材料のための典型的な光ファイバーコーティングを如何に配合するかは当該技術分野において知られている。この技術と関連した化学及び試験方法の良い議論は、Elsevierから出版された版権Elsevier Inc.2007、A.Mendez及びT.F.Morseの教科書”Specialty Optical Fibers Handbook”の第4章のセクション4.6から終りまでに見出すことができる。
【0046】
第二の態様は、放射線硬化性組成物全体の全重量に対して、
少なくとも一種の重合性基を含む反応性オリゴマーであって、ポリプロピレングリコールから実質的に誘導されていない反応性オリゴマー;
反応性希釈モノマー;
光開始剤;及び
場合によっては、一又は複数種の添加剤
を含む、光ファイバーをコーティングするための放射線硬化性組成物であって、
放射線硬化性組成物が、液体ガラス転移温度(Tg,rheo)、摂氏25°(℃)での第一粘度(η
25)、55℃での第二粘度(η
55)、及び85℃での第三粘度(η
85)を有し、
放射線硬化性組成物のTg,rheoが、-74℃未満、又は-80℃未満、又は-85℃未満、又は-90℃未満、又は-100℃未満、又は-105℃未満、又は-120から-83.6℃、又は-113から-83℃、又は-106から-83℃であり、ここで、Tg,rheoが式(8)を、放射線硬化性組成物の実験粘度対温度データへ適合させることによって決定され:
ここで、η(T)はT(℃)での組成物の粘度(Pa・s)である、放射線硬化性組成物である。
【0047】
本発明の第二の態様に係る光ファイバーをコーティングするための放射線硬化性一次組成物は、少なくとも一種の反応性希釈モノマーと放射線硬化性オリゴマーを含む少なくとも二種のエチレン性不飽和重合性化合物、並びに一又は複数種の光開始剤、及び任意選択の添加剤パッケージを含む。以下に記載されるそのような成分は、第一の態様に係る光ファイバーで使用されるコーティング、第二の態様の組成物等々を含む、本発明の任意の態様に係る放射線硬化性組成物で使用することができる。
【0048】
[エチレン性不飽和重合性化合物]
エチレン性不飽和重合性化合物は、一又は一より多い反応性オレフィン二重結合を含みうる。それらは、低分子量(モノマー)又は高分子量(オリゴマー)化合物でありうる。
【0049】
[反応性希釈モノマー]
一つの二重結合を含む低分子量モノマーの典型的な例は、アルキル又はヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、例えば、メチル、エチル、ブチル、2-フェノキシエチル、2-エチルヘキシル、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メチル及びエチルメタクリレート、ラウリル-アクリレート、エトキシル化ノニル-フェノールアクリレート、及びジエチレン-グリコール-エチル-ヘキシルアシレート(DEGEHA)である。これらのモノマーの更なる例は、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、スチレン、アルキルスチレン、ハロスチレン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、塩化ビニル及び塩化ビニリデンである。一を超える二重結合を含むモノマーの例は、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、4,4’-ビス(2-アクリロイルオキシエトキシ)ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルスクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート又はトリス(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。
【0050】
一又は複数種の前述の反応性希釈モノマーは、任意の適切な量で本発明に係る組成物に用いることができ、単独に又はここに列挙される一又は複数のタイプとの組み合わせで選択することができる。好ましい実施態様では、反応性希釈モノマー成分は、組成物の全重量に対して、約5重量%から約90重量%、又は約10重量%から約90重量%、又は約10重量%から約80重量%、又は約10重量%から約60重量%の量で存在する。
【0051】
[オリゴマー]
一般に、光ファイバーコーティング材料は反応性オリゴマー成分を含む。オリゴマーは、中間の相対分子量の分子であり、その構造は、実際に又は概念的に、より低い相対分子量の分子に由来する複数の単位を含む。ここで使用される場合、「オリゴマー」は、テトラヒドロフラン中のポリスチレン標準で較正されたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定されて、600g/モルから20000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。
【0052】
このような成分は、典型的には、アクリレート基、ウレタン基及び骨格を含むウレタンアクリレートオリゴマーを含む。骨格は、イソシアネート、例えばジイソシアネート、ポリイソシアネート、及びヒドロキシアルキルアクリレートと反応したポリオールから誘導されている。適切なポリオールの例は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール、及び他のポリオールである。好ましいものは、ポリエステル、ポリテトラメチレンエーテル、及びポリオキシプロピレングリコールである。これらのポリオールは、個々に又は二種以上の組み合わせで使用されうる。
【0053】
好ましい実施態様では、好ましくはウレタンアクリレートオリゴマーである反応性オリゴマーは、実質的にポリプロピレングリコール(PPG)から誘導されていない。ここで使用される場合、反応性オリゴマーは、反応性オリゴマーの合成に使用される全てのポリオールの90重量%以下がポリプロピレングリコール(PPG)ではないならば、ポリプロピレングリコールから「実質的に誘導されていない」と考えられる。
【0054】
一実施態様では、ウレタンアクリレートオリゴマーは、ポリプロピレングリコール(PPG)から誘導された化合物を含まない。ここで使用される場合、ポリプロピレングリコールから誘導された化合物は、EOでエンドキャップされたPPGなどのエンドキャップされたPPGを含む。更に、ここで使用される場合、オリゴマーは、それを作製するために使用される反応物が、そのようなオリゴマーを合成するために使用される全ての反応物の重量に対して、1重量%未満の物質を含む場合、そのような物質を「実質的に含まない」と見なされる。好ましい実施態様では、オリゴマーは、ポリプロピレングリコールを実質的に含まない。
【0055】
ポリプロピレングリコールは現在産業において広く使用されているが、適切に安定化されていない場合、このポリオール骨格から形成されるオリゴマーは、酸化的分解の望ましくない影響を潜在的に受ける可能性がある。既知のコーティングに対する改善を実証し、同時にこの従来のポリオールの使用に依存しない、本発明の潜在的に有利なコーティングは利用できると考えられる。
【0056】
本発明者は、今、非官能化ポリオール中の第三級炭素の数が制限されるようにポリオールが選択されると、高性能で酸化的分解に耐性があるコーティングが作製されうると仮定する。未反応PPG自体は、およそ17.2モル/kgの第三級炭素含有量を有していると推定されるが、他のポリオールはそれよりも少ないことが知られている。具体的には、pTGLは大雑把に11.6モル/kg、DBCは約10.3モル/kg、ポリエステルは大雑把に7.0モル/kg有する。従って、一実施態様では、反応性オリゴマーは、ポリオールを含む反応物の反応生成物であり、未反応ポリオールは、17.2モル/kg未満、又は15モル/kg未満、又は12モル/未満、又は5モル/kgから15モル/kg、又は6モル/kgから15モル/kg、又は7モル/kgから12モル/kgの第三級炭素含有量を含む。代替の実施態様では、反応性オリゴマーは、複数種のポリオールを含む反応物の反応生成物であるコポリマーであり、使用される全てのポリオールの重量分率による平均第三級炭素含有量は、17.2モル/kg未満、又は15モル/kg未満、又は12モル/kg未満、又は5モル/kgから15モル/kg、又は6モル/kgから15モル/kg、又は7モル/kgから12モル/kgである。
【0057】
使用されるポリオール中の構造単位の重合方法に特定の制限はない。ランダム重合、ブロック重合、又はグラフト重合のそれぞれが許容される。ここで使用される場合、ブロックコポリマーは、多くの構成単位を含むオリゴマー又はポリマーの一部を意味し、少なくとも一つの構成単位が、隣接する部分に存在しない特徴を含む。ここで使用される場合、モノ、ジ、及びトリブロックコポリマーは、オリゴマー中に存在する特定のブロックの平均量を指す。一実施態様では、特定のブロックは、ここの他の場所に記載されているように、ポリエーテルポリオールなどの一又は複数種のポリオールから誘導されるポリエステル又はポリエーテルブロックを指す。一実施態様では、モノ、ジ、及び/又はトリブロックコポリマーが言及するブロックは、ここの他の場所に記載されている一又は複数のポリオールから誘導されるポリエステル又はポリエーテルブロックである。一実施態様では、モノブロックコポリマーは、平均約1単位、又は約0.9から1.5未満の単位の、ポリエステル又はポリエーテルブロックなどの特定のブロックのみを有するコポリマーとして記述することができる。一実施態様では、ジブロックコポリマーは、平均約2、又は少なくとも1.5から2.5未満の単位の、ポリエステル又はポリエーテルブロックなどの特定のブロックを有するコポリマーとして記述することができる。一実施態様では、トリブロックコポリマーは、平均約3、又は少なくとも2.5から3.5未満の単位の、ポリエステル又はポリエーテルブロックなどの特定のブロックを有するコポリマーとして記述することができる。所与のオリゴマー中のポリエーテル単位の数は、単一のオリゴマーの合成に利用されるポリエステル又はポリエーテルポリオール分子の数によって決定されうる。
【0058】
ポリエーテルポリオールを含む既知のポリオールの例として挙げられるのは、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、及び二種以上のイオン重合性環状化合物の開環共重合によって得られるポリエーテルジオールである。ここで、イオン重合性環状化合物の例として挙げられるのは、環状エーテル、例えばエチレンオキシド、イソブテンオキシド、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、及びグリシジルベンゾエートである。二種以上のイオン重合性環状化合物の組み合わせの特定の例には、二元コポリマーを製造するための組み合わせ、例えばテトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフラン、及びテトラヒドロフランとエチレンオキシド;及び三元コポリマーを製造するための組み合わせ、例えばテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及びエチレンオキシドの組み合わせ、テトラヒドロフラン、ブテン-1-オキシド、及びエチレンオキシドの組み合わせ等々が含まれる。これらのイオン重合性環状化合物の開環コポリマーは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーの何れかでありうる。
【0059】
これらのポリエーテルポリオールには、例えば、PTMG1000、PTMG2000(三菱化学株式会社製)、PEG#1000(日本油脂株式会社製)、PTG650(SN)、PTG1000(SN)、PTG2000(SN)、PTG3000、PTGL1000、PTGL2000(保土谷化学株式会社製)、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG2000、PEG4000、PEG6000(第一工業製薬株式会社製)及びPluronics(BASF製)などの商標で市販されている製品が含まれる。
【0060】
好ましい実施態様では、オリゴマーは、ポリエステルジオールなどのポリエステルポリオールから誘導された骨格を含む。多価アルコールと多塩基酸を反応させて得られるポリエステルジオールが、ポリエステルポリオールの例として挙げられる。多価アルコールの例として、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等々を挙げることができる。多塩基酸の例として、フタル酸、二量体酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸等々を挙げることができる。
【0061】
これらのポリエステルポリオール化合物は、MPD/IPA500、MPD/IPA1000、MPD/IPA2000、MPD/TPA500、MPD/TPA1000、MPD/TPA2000、Kurapol A-1010、A-2010、PNA-2000、PNOA-1010、及びPNOA-2010(クラレ株式会社製)などの商標で市販されている。
【0062】
ポリカーボネートポリオールの例として、ポリテトラヒドロフランのポリカーボネート、ポリ(ヘキサンジオールカーボネート)、ポリ(ノナンジオールカーボネート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタメチレンカーボネート)等々を挙げることができる。
【0063】
これらのポリカーボネートポリオールの市販品として、DN-980、DN-981(日本ポリウレタン工業株式会社製)、Priplast 3196、3190、2033(Unichema製)、PNOC-2000、PNOC-1000(クラレ株式会社製)、PLACCEL CD220、CD210、CD208、CD205(ダイセル化学工業株式会社製)、PC-THF-CD(BASF製)等々を挙げることができる。
【0064】
e-カプロラクトンとジオール化合物を反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが、0℃以上の融点を有するポリカプロラクトンポリオールの例として挙げられる。ここで、ジオール化合物の例として挙げられるのは、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2-ポリブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール等々である。
【0065】
これらのポリカプロラクトンポリオールの市販品には、PLACCEL240、230、230ST、220、220ST、220NP1、212、210、220N、210N、L230AL、L220AL、L220PL、L220PM、L212AL(全てダイセル化学工業社製)、Rauccarb 107(Enichem製)等々が含まれる。
【0066】
他のポリオールの例として、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールFエーテル等々を挙げることができる。一実施態様では、ポリテトラメチレングリコールを含むポリオール、及びブチレンオキシドとエチレンオキシドのコポリマーグリコールが使用される。
【0067】
これらのポリオールのヒドロキシル数に由来する数平均分子量は、通常、約50から約15000、好ましくは約1000から約8000である。ここで使用される場合、特に明記しない限り、分子量は、ポリスチレン標準で較正されたSECによって決定される、グラム/モル(g/モル)で特定される数平均分子量を指す。
【0068】
オリゴマーに使用されるポリイソシアネートの例として挙げられるのは、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナト-エチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンイソシアネート等々である。これらのポリイソシアネート化合物は、個別に、又は二種以上の組み合わせで使用することができる。好ましいポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、及び2,6-トリレンジイソシアネートである。
【0069】
オリゴマーにおいて使用されるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの例には、(メタ)アクリル酸及びエポキシから誘導される(メタ)アクリレート、及びアルキレンオキシドを含む(メタ)アクリレート、より具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-オキシフェニル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシエチルカプロラクトネアクリレートが含まれる。アクリレート官能基は、メタクリレートよりも好ましい。
【0070】
ウレタン(メタ)アクリレートの調製に使用されるポリオール、ポリイソシアネート、及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの比率は、ポリイソシアネートに含まれる約1.1から約3当量のイソシアネート基とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートに含まれる約0.1から約1.5当量のヒドロキシル基が、グリコールに含まれる1当量のヒドロキシル基に対して使用されるように決定される。
【0071】
これら三成分の反応においては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジ-n-ブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、及びトリエチレンジアミン-2-メチルトリエチレンアミンなどのウレタン化触媒が、通常、反応物の全量の約0.01から約1重量%の量で使用される。反応は、約10から約90℃、好ましくは約30から約80℃の温度で行われる。
【0072】
本発明の組成物において使用されるウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン中のポリスチレン標準で較正されたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による測定で、好ましくは約600から約20000、より好ましくは約2200から約10000の範囲である。ウレタン(メタ)アクリレートのMnが約100未満の場合、樹脂組成物は固化する傾向がある;一方、Mnが約20000を超えると、組成物の粘度が高くなり、組成物の取り扱いが困難になる。内側一次コーティングに特に好ましいのは、約2200から約5500の間のMnを有するオリゴマーである。
【0073】
使用されうる他のオリゴマーには、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシロキサンポリマー、(メタ)アクリル酸と、グリシジルメタクリレートと他の重合性モノマーのコポリマーを反応させることによって得られる反応性ポリマー等々が含まれる。特に好ましいのは、ビスフェノールAベースのアクリレートオリゴマー、例えばアルコキシル化ビスフェノール-A-ジアクリレート及びジグリシジル-ビスフェノール-A-ジアクリレートである。
【0074】
上記の成分以外に、他の硬化性オリゴマー又はポリマーを、液体硬化性樹脂組成物の特性が悪影響を受けない範囲で、本発明の液体硬化性樹脂組成物に添加してもよい。
【0075】
好ましいオリゴマーは、ポリエーテルベースのアクリレートオリゴマー、ポリカーボネートアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アルキドアクリレートオリゴマー及びアクリル化アクリルオリゴマーである。より好ましいのは、そのウレタン含有オリゴマーである。また好ましいのは、上記のポリオールの混合物を使用するポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマー及びウレタンアクリレートオリゴマーであり、特に好ましいのは脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマーである。「脂肪族」という用語は、完全に脂肪族のポリイソシアネートが使用されることを指す。
【0076】
しかしながら、ウレタン不含有のアクリレートオリゴマー、例えばウレタン不含有のアクリル化アクリルオリゴマー、ウレタン不含有のポリエステルアクリレートオリゴマー、及びウレタン不含有のアルキドアクリレートオリゴマーをまた使用してもよい。そのような高分子量(オリゴマー)多価不飽和化合物の例は、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化ポリエーテル、及びアクリル化ポリエステルである。不飽和オリゴマーの更なる例は、通常、マレイン酸、フタル酸及び一又は複数種のジオールから調製され、約500を超える分子量を有する不飽和ポリエステル樹脂である。このタイプの不飽和オリゴマーは、プレポリマーとしても知られている。不飽和化合物の典型的な例は、エチレン性不飽和カルボン酸とポリオール又はポリエポキシドのエステル、及び不飽和ポリエステル、ポリアミド及びそれらのコポリマーを含む、鎖又は側鎖にエチレン性不飽和基を含むポリマー、ポリブタジエン及びブタジエンコポリマー、ポリイソプレン及びイソプレンコポリマー、側鎖に(メタ)アクリル基を含むポリマー及びコポリマー、並びに一又は複数のそのようなポリマーの混合物である。不飽和カルボン酸の例示的な例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸、不飽和脂肪酸、例えばリノレン酸又はオレイン酸である。適切なポリオールは、芳香族、脂肪族及び脂環式ポリオールである。芳香族ポリオールは、典型的には、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、並びにノボラック及びクレゾールである。ポリエポキシドには、引用されたポリオール、例えば芳香族ポリオール及びエピクロロヒドリンに基づくものが含まれる。
【0077】
更に適切なポリオールは、ポリマー鎖又は側基にヒドロキシル基を含むポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルアルコールとそのコポリマー、あるいはヒドロキシアルキルポリメタクリレート又はそれらのコポリマーである。他の適切なポリオールは、ヒドロキシル末端基を有するオリゴエステルである。脂肪族及び脂環式ポリオールの実例は、エチレングリコール、1,2-又は1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-又は1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールを含む、例えば2から12個の炭素原子を含むアルキレンジオール、例えば200から1500の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(-ヒドロキシエチル)アミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びソルビトールである。ポリオールは、一つ又は異なる不飽和カルボン酸で部分的又は完全にエステル化することができ、その場合、部分エステルの遊離ヒドロキシル基を修飾、例えばエーテル化するか、又は他のカルボン酸でエステル化することができる。エステルの実例は、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ジペンタエリスリトールトリシタコネート、ジペンタエリスリトールトリシタコネート、 ジペンタエリスリトールペンタイタコネート、ジペンタエリスリトールヘキサイタコネート、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジイタコネート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトール修飾トリアクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びメタクリレート、グリセロールジ及びトリアクリレート、1,4-シクロヘキサンジアクリレート、200から1500の分子量を有するポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、又はそれらの混合物である。多官能性モノマー及びオリゴマーは、例えばジョージア州SmyrnaのUCBケミカルズ、及びペンシルベニア州ExtonのSartomerから入手可能である。
【0078】
エチレン性不飽和重合性オリゴマーである反応性オリゴマーは、好ましくは、ウレタンアクリレートオリゴマーを含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。好ましい実施態様では、反応性オリゴマーは二官能性であるが、反応性オリゴマーは少なくとも一つの重合性基を有する;すなわち、1分子当たり平均で1.5から2.5の反応性基を有する。
【0079】
上述のエチレン性不飽和オリゴマーの一又は複数は、任意の適切な量で本発明に係る組成物中に用いることができ、単独で又はここに列挙される一又は複数のタイプとの組み合わせで選択されうる。一実施態様では、エチレン性不飽和オリゴマー成分は、組成物の全重量に対して、約5重量%から約90重量%、又は約10重量%から約90重量%、又は約10重量%から約80重量%の量で存在する。しかしながら、好ましい実施態様では、例えば、組成物の全重量に対して、少なくとも50重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は45から85重量%、又は55から80重量%、又は60から85重量%、又は60から80重量%など、高温耐性のための所与の構成について組成物の粘度を最大にするように多量のエチレン性不飽和オリゴマーが用いられるべきである。
【0080】
[フリーラジカル光開始剤成分]
好ましい実施態様では、本発明の光ファイバーをコーティングするための液体放射線硬化性樹脂は、フリーラジカル光開始剤成分を含む。光開始剤は、光の作用又は光の作用と増感色素の電子励起との間の相乗効果によって化学的に変化して、ラジカル、酸、及び塩基のうちの少なくとも一つを生成する化合物である。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、フリーラジカル光開始剤は、アシルホスフィンオキシド光開始剤である。アシルホスフィンオキシド光開始剤は、例えば、米国特許第4324744号、第4737593号、第5942290号、第5534559号、第6020529号、第6486228号、及び第6486226号に開示されている。
【0082】
アシルホスフィンオキシド光開始剤は、ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)又はモノアシルホスフィンオキシド(MAPO)である。
【0083】
ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤は、式Iのものである:
上式中、R
50は、非置換であるか、1から4のハロゲン又はC
1-C
8アルキルで置換されている、C
1-C
12アルキル、シクロヘキシル又はフェニルであり;
R
51及びR
52は、それぞれ独立して他のC
1-C
8アルキル又はC
1-C
8アルコキシであり;
R
53は水素又はC
1-C
8アルキルであり;及び
R
54は水素又はメチルである。
【0084】
例えば、R50は、非置換であるか、1から4のC1-C4アルキル、Cl又はBrで置換されている、C2-C10アルキル、シクロヘキシル又はフェニルである。別の実施態様は、R50が、非置換であるか、又は2-、3-、4-又は2,5-位置がC1-C4アルキルで置換されているC3-C8アルキル、シクロヘキシル、又はフェニルである場合である。例えば、R50は、C4-C12アルキル又はシクロヘキシルであり、R51及びR52は、それぞれ他方から独立してC1-C8アルキル又はC1-C8アルコキシであり、R53は水素又はC1-C8アルキルである。例えば、R51及びR52はC1-C4アルキル又はC1-C4アルコキシであり、R53は水素又はC1-C4アルキルである。別の実施態様は、R51及びR52がメチル又はメトキシであり、R53が水素又はメチルである場合である。例えば、R51、R52、及びR53はメチルである。別の実施態様は、R51、R52、及びR53がメチルであり、R54が水素である場合である。別の実施態様は、R50がC3-C8アルキルである場合である。例えば、R51及びR52はメトキシ、R53及びR54は水素、R50はイソオクチルである。例えば、R50はイソブチルである。例えば、R50はフェニルである。本発明のビスアシルホスフィンオキシド光開始剤は、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(CAS#162881-26-7)であるか、又はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2,4-ビス-ペンチルオキシフェニル)ホスフィンオキシドである。
【0085】
モノアシルホスフィンオキシド光開始剤は、式IIのものである:
上式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して、非置換であるか、又はハロゲン、C
1-C
8アルキル及び/又はC
1-C
8アルコキシで1から4回置換されている、C
1-C
12アルキル、ベンジル、フェニルであり、又はシクロヘキシル又は基-COR
3であり、あるいは
R
1は-OR
4であり;
R
3は、非置換であるか、又はC
1-C
8アルキル、C
1-C
8アルコキシ、C
1-C
8アルキルチオ及び/又はハロゲンによって1から4回置換されているフェニルであり;かつ
R
4はC
1-C
8アルキル、フェニル又はベンジルである。例えば、R
1は-OR
4である。例えば、R
2は、非置換であるか、又はハロゲン、C
1-C
8アルキル及び/又はC
1-C
8アルコキシによって1から4回置換されているフェニルである。例えば、R
3は、非置換であるか、又はC
1-C
8アルキルによって1から4回置換されているフェニルである。例えば、本発明のモノアシルホスフィンオキシドは、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(CAS#84434-11-7)又は2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(CAS#12790-72-6)である。
【0086】
本発明に係る組成物は、更なる光開始剤、例えば、式IIIのα-ヒドロキシケトン光開始剤をまた使用しうる:
上式中
R
11及びR
12は、互いに独立して、水素、C
1-C
6アルキル、フェニル、C
1-C
6アルコキシ、OSiR
16(R
17)
2又は-O(CH
2CH
2O)
q-C
1-C
6アルキルであり、あるいは
R
11及びR
12は、それらが結合している炭素原子と共に、シクロヘキシル環を形成し;
qは1から20までの数であり;
R
13は、OH、C
1-C
16アルコキシ又は-O(CH
2CH
2O)
q-C
1-C
6アルキルであり;
R
14は、水素、C
1-C
18アルキル、C
1-C
12ヒドロキシアルキル、C
1-C
18アルコキシ、-OCH
2CH
2-OR
15、-CH=CH
2、-C(CH
3)=CH
2であり、又は
であり、
nは2から10までの数字であり;
R
15は水素、-COCH=CH
2又は-COC(CH
3)=CH
2であり;
R
16及びR
17は、互いに独立して、C
1-C
8アルキル又はフェニルであり;かつ
G
3及びG
4は、互いに独立して、ポリマー構造の末端基、好ましくは水素又はメチルである。
【0087】
対象となるα-ヒドロキシケトン光開始剤は、R
11及びR
12が互いに独立して水素、C
1-C
6アルキル又はフェニルであり、又はR
11及びR
12が、それらが結合している炭素原子と共にシクロヘキシル環を形成し、R
13はOHであり、R
14は水素、C
1-C
12アルキル、C
1-C
12アルコキシ、-OCH
2CH
2OR
15、-C(CH
3)=CH
2であり、又は
又は
であるものである。
【0088】
例えば、α-ヒドロキシケトン光開始剤として適切なのは、R
11及びR
12が互いに独立してメチル又はエチルであるか、あるいはR
11及びR
12が、それらが結合している炭素原子と共にシクロヘキシル環を形成し、R
13が水素であり、R
14が水素、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ又は-OCH
2CH
2OHであるものである。興味深いものは、R
14が
である化合物である。
【0089】
例えば、適切なα-ヒドロキシケトン光開始剤は、
α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)プロパノン、
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-ドデシルフェニル)プロパノン、
2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン及び
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン
である。
【0090】
本発明のα-ヒドロキシケトン光開始剤は、例えば、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又は2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンである。直鎖又は分枝鎖アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、イソオクチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル又はドデシルである。同様に、アルコキシ又はアルキルチオは、同じ直鎖又は分岐鎖のものである。
【0091】
本発明に係る光開始剤は、単独で、又は一又は複数を組み合わせてブレンドとして用いることができる。適切な光開始剤ブレンド(PIブレンド)は、例えば米国特許第6020528号及び米国特許出願第60/498848号に開示されている。本PI(光開始剤)ブレンドは、例えば、約1:11、1:10、1:9、1:8又は1:7の重量比のビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(CAS#162881-26-7)と2,4,6,-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(CAS#84434-11-7)の混合物である。
【0092】
別の特に適切なPIブレンドは、例えば約3:1:15又は3:1:16又は4:1:15又は4:1:16の重量比のビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6,-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(CAS#7473-98-5)の混合物である。別の適切なPIブレンドは、例えば約1:3、1:4又は1:5の重量比のビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンの混合物である。本アシルホスフィンオキシドPI又はPIブレンドは、放射線硬化性組成物中に、組成物の重量に基づいて、約0.2から約10重量%が存在する。例えば、PI又はPIブレンドは、放射線硬化性組成物の重量に基づいて、約0.5から約8重量%、約1から約7重量%、又は約2、3、4、5又は6重量%が存在する。
【0093】
本発明に係る他の適切な光開始剤は、例えば、他のモノ又はビスアシルホスフィンオキシド、例えばジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド又はビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド;α-ヒドロキシケトン、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又は2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン;α-アミノケトン、例えば2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン又は2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[3,4-ジメトキシフェニル]-1-ブタノン;ベンゾフェノン類、例えばベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、2-メトキシカルボニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(クロロメチル)-ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、メチル2-ベンゾイルベンゾエート、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(4-メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチル-4’-フェニル-ベンゾフェノン又は3-メチル-4’-フェニル-ベンゾフェノン;ケタール化合物、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-エタノン;及び単量体又は二量体フェニルグリオキシル酸エステル、例えばメチルフェニルグリオキシル酸エステル、5,5’-オキソ-ジ(エチレンオキシジカルボニルフェニル)又は1,2-(ベンゾイルカルボキシ)エタンである。
【0094】
アシルホスフィンオキシド光開始剤の有無にかかわらず、本発明に従って使用される他の適切な光開始剤は、例えば、米国特許第6596445号に開示されているようなオキシムエステルである。適切なオキシムエステル光開始剤は、例えば
である。
【0095】
アシルホスフィンオキシド光開始剤の有無にかかわらず、本発明に係る別のクラスの適切な光開始剤は、例えば、米国特許第6048660号に開示されているような、例えばフェニルグリオキサレートである。例えば、式:
のフェニルグリオキサレートであり、上式中、YはC
1-C
12アルキレン、シクロヘキスリエン、シクロヘキシレン、O、S、又はNR
30によって一又は複数回中断されたC
2-C
40アルキレンであり、R
30は水素、C
1-C
12アルキル又はフェニルであり、好ましくはYはCH
2CH
2-O-CH
2CH
2である。
【0096】
前述のフリーラジカル光開始剤の一又は複数は、任意の適切な量で本発明に係る組成物に使用することができ、単独で又はここに列挙される一又は複数のタイプとの組み合わせで選択することができる。好ましい実施態様では、フリーラジカル光開始剤成分は、組成物の全重量に対して、約0.1重量%から約10重量%、より好ましくは約0.1重量%から約5重量%、より好ましくは約1重量%から約5重量%の量で存在する。
【0097】
[添加剤]
添加剤は、典型的には、改善された保存期間、改善されたコーティングの酸化的及び加水分解的安定性などのような所定の望ましい特性を達成するために光ファイバーコーティングにまた添加される。多くの異なるタイプの望ましい添加剤があり、ここで検討される本発明は、これらによって限定されることは意図されないが、それらは望ましい効果を有するので、想定される実施態様に含められる。
【0098】
これらの例は、未成熟重合を防止することを意図した熱阻害剤であり、例は、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、p-メトキシフェノール、ベータ-ナフトール、又は2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾールなどの立体障害フェノールである。暗所での保存期間は、例えば、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅又はオクタン酸銅などの銅化合物、リン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル又は亜リン酸トリベンジル、テトラメチルアンモニウムクロリド又はトリメチルベンジルアンモニウムクロリドなどの第四級アンモニウム化合物を使用することによって延長することができる。
【0099】
重合中に大気中の酸素を遮断するために、パラフィン又は同様のワックス様物質を添加することができる;これらは、ポリマーへの溶解度が低いため、重合開始時に表面に移動し、空気の侵入を防ぐ透明な表面層を形成する。同様に、酸素バリア層を適用することも可能である。
【0100】
添加できる光安定剤は、UV吸収剤、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル-ベンゾフェノン、オキサルアミド又はヒドロキシフェニル-s-トリアジンタイプの周知の市販のUV吸収剤である。立体障害のある比較的非塩基性のアミン光安定剤(HALS)の使用の有無にかかわらず、個々のそのような化合物又はそれらの混合物を使用することが可能である。立体障害のあるアミンは、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンに基づいている。UV吸収剤と立体障害アミンは、例えば次の通りである:
【0101】
2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、例えば、米国特許第3004896号;第3055896号;第3072585号;第3074910号;第3189615号;第3218332号;第3230194号;第4127586号;第4226763号;第4275004号;第4278589号;第4315848号;第4347180号;第4383863号;第4675352号;第4681905号、第4853471号;第5268450号;第5278314号;第5280124号;第5319091号;第5410071号;第5436349号;第5516914号;第5554760号;第5563242号;第5574166号;第5607987号、第5977219号及び第6166218号に開示されている既知の市販のヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール及びベンゾトリアゾール、例えば2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-sec-ブチル-5-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ビス-α-クミル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-(2-(ω-ヒドロキシ-オクタ-(エチレンオキシ)カルボニル-エチル)-,フェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-ドデシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-(2-オクチルオキシカルボニル)エチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ドデシル化2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-(2-(2-エチルヘキシルオキシ)-カルボニルエチル)-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-(2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル)-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-(2-イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス(4-t-オクチル-(6-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)、2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-オクチル-5-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-フルオロ-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-(2-イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、メチル3-(5-トリフルオロメチル-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、5-ブチルスルホニル-2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジt-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-ブチルスルホニル-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール及び5-フェニルスルホニル-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール。
【0102】
2-ヒドロキシベンゾフェノン、例えば、4-ヒドロキシ、4-メトキシ、4-オクチルオキシ、4-デシルオキシ、4-ドデシルオキシ、4-ベンジルオキシ、4,2’,4’-トリヒドロキシ及び2’-ヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ誘導体。
【0103】
置換及び非置換安息香酸のエステル、例えば、サリチル酸4-tert-ブチルフェニル、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチルフェニル、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4-tert-ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-メチル-4,6-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート。
【0104】
[その他の添加剤]
光重合を加速するために、例えば、欧州特許出願公開第438123号及び英国特許出願公開第2180358号に記載されているように、チオール、チオエーテル、ジスルフィド及びホスフィンなどの促進剤、共開始剤及び自動酸化剤を添加することが可能である。
【0105】
光重合は、スペクトル感度をシフト又は拡大する光増感剤の添加によっても加速することができる。これらは、特に芳香族カルボニル化合物、例えばベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体及び3-アシルクマリン誘導体、並びに3-(アロイルメチレン)チアゾリン、並びにエオシン、ローダミン及びエリスロシン染料である。あるいは、非芳香族カルボニル化合物を使用してもよい。非芳香族カルボニルの例は、ジメトキシアントラセンである。
【0106】
硬化手順は、特に、(例えば、二酸化チタンで)着色された組成物によって、また、熱的条件下でフリーラジカルを形成する成分、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、トリアゼン、ジアゾスルフィド、ペンタアザジエンなどのアゾ化合物、又は例えば、ヒドロペルオキシド又はペルオキシカーボネート、例えば米国特許第4753817号に記載されているようなt-ブチルヒドロペルオキシドのようなペルオキシ化合物を添加することによって、支援されうる。この目的に更に適しているのは、ベンゾピナコール化合物である。
【0107】
新規組成物はまた、光還元性染料、例えば、キサンテン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、チアジン、ピロニン、ポルフィリン又はアクリジン染料、及び/又は放射線によって切断されうるトリハロメチル化合物を含みうる。同様の組成物は、例えば、米国特許第5229253号に記載されている。
【0108】
意図された用途に応じて、他の従来の添加剤を使用してもよい。例としては、蛍光増白剤、フィラー、顔料、染料、湿潤剤又はレベリング補剤がある。例えば、米国特許第5013768号に記載されているように、厚い着色されたコーティングには、ガラスマイクロビーズ又は粉末ガラス繊維を含めることもできる。
【0109】
上述の添加剤の一又は複数は、任意の適切な量で本発明に係る組成物に用いることができ、単独であるいはここに列挙される一又は複数のタイプの組み合わせで選択することができる。好ましい実施態様では、添加剤成分は、組成物の全重量に対して、約0.01重量%から約5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約2重量%の量で存在する。別の実施態様によれば、上述の添加剤の一又は複数は、約1重量%から約5重量%の量で含められる。
【0110】
[改善された熱抵抗率のための一次コーティング組成物の構成]
本発明者は、ここに記載のタイプの従来の放射線硬化性一次コーティング組成物、特にオリゴマー成分が、典型的には非ニュートンレオロジー挙動によって特徴付けられることを今発見した。つまり、それらはシアシニングであり、又は高せん断速度でせん断粘度の低下を示す。更に、そのような材料は温度に大きく依存する;つまり、組成物の粘度はその温度に大きく影響される。本発明者は、これらの特性の組み合わせが、高線引速度又は低ヘリウム光ファイバーコーティングプロセスにおいて経験されるもののような、高温、高せん断速度条件に特に敏感な材料をもたらすことを知見した。
【0111】
この特定の感度は、一次コーティングへの熱衝撃又は応力のレベルの増加によって指数関数的に悪影響を受けるコーティングをもたらし、これは、高速で移動する比較的高温の新しく線引きされたガラス繊維が比較的低温の静的放射線硬化性一次コーティング組成物と接触する状況によって例示される。具体的には、せん断粘度の温度依存性を考えると、高温のガラス光ファイバーに適用されると、いわゆる粘性加熱効果により、ファイバーの近くに低粘度の流体の薄層が形成される。この現象は、バターへの熱いナイフの迅速な挿入に概念的に類似している可能性があり、対応するアプリケーターダイ内の樹脂の抗力容量の大幅な減少、並びにコーティング厚の大幅な減少をもたらす。
【0112】
更に、発明者は、従来の光ファイバーコーティングアプリケーターダイの設計が、閉ループ渦中にダイ体積のかなりの部分を残すことを発見した。これは、適用前のダイにおける一次コーティング組成物の平均量の長い滞留時間につながる。このようなダイの設計は、樹脂の局所温度が、粘性加熱によってなされる仕事によって上昇する一方で、渦内の材料がリフレッシュされず、流体の熱伝導による冷却と粘性消散による加熱の間のバランスがとれるまで温度が上昇するという現象を引き起こすため、前述の問題を悪化させる。
【0113】
前述の現象は、許容できないほど薄い一次コーティング、振れ/同心性の問題を伴う一次コーティング、気泡又は欠陥を伴う一次コーティング、又はガラスに不適切に付着するものの問題を引き起こし、層間剥離の問題を生じる。
【0114】
前述の機構の理解を考慮して、本発明者は、温度の関数としてのその粘度感度を低下させることにより、高速線引又は低ヘリウム光ファイバーコーティングプロセスで使用される一次コーティング組成物の適合性を改善することができることを今認識している。つまり、そのような材料は、その相対粘度が温度の関数としてプロットされた場合、平坦化又は減少した勾配を示すべきである。
【0115】
発明者は、組成物の粘度比を調整することにより、適切な「曲線の平坦化」を達成できることを発見した。ここで使用される場合、粘度比は、2つの異なる温度における同じ組成物の定常状態のせん断粘度(10s-1のせん断速度で)の尺度であり、第一温度は第二温度よりも低い。特に断りのない限り、ここで使用される場合、「粘度」は、全ての修飾語句と共に(「第一粘度」、「第二粘度」、又は「第三粘度」など)、10s-1のせん断速度での定常状態のせん断粘度を意味すると想定されるものとし、全ての単位は、特に明記されていない限り、パスカル秒で表されるものとする。一実施態様では、粘度比は、25℃での組成物の粘度を55℃における同じ組成物の粘度で割ったものである。別の実施態様では、粘度比は、25℃での組成物の粘度を85℃における同じ組成物の粘度で割ったものである。高い線引速度又は低いヘリウム利用率での光ファイバーコーティングプロセスの温度条件は変わるが、55℃が選択され、これは、既存の一次コーティング組成物が失敗することが観察されている動作温度であるためである。85℃は更により効果的なマーカーであると考えられ、これは、(1)この高い値により、僅かなパフォーマンスのコーティングと高パフォーマンスのコーティングがより細かく区別され、(2)これが、より高いスループット及び/又はヘリウム消費量の削減に必要とされるこれまで以上に厳しい光ファイバー加工条件の間にコーティングが予測できる上昇温度を反映するためである。従って、選択された値未満の粘度比を有する組成物は、十分に熱抵抗性であり得、高い線引速度/低ヘリウムコーティングプロセスに適している。
【0116】
温度感度を決定する際に上限として85℃が選択される実施態様では、組成物は、18未満、又は13未満、又は12未満、又は11未満、又は5から20、又は7から18、又は7から15、又は7から13、又は7から12の、25℃での粘度と85℃での粘度の比を有する。上記の値と比率は正確である場合もあれば、記載されている各値の概算(つまり、±5%、又は各値の「約」)を参照している場合もある。
【0117】
温度感度を決定する際に上限として55℃が選択される実施態様では、組成物は、3から5.5、又は3.1から5、又は3.2から5、又は3.2から4.5の、25℃での粘度と55℃での粘度の比を有する。上記の値及び比率は正確である場合もあれば、記載されている各値の概算(つまり、±5%、又は各値の「約」)を参照している場合もある。
【0118】
これまでの全ての既存の光ファイバー一次コーティングで観察されたように、粘度比が高すぎる場合、組成物は、温度変化に対する望ましくない顕著な感度によって特徴付けられ、その結果、高温/高速加工下でのガラス塗布及び/又は硬化性能が低下する。従って、組成は、光ファイバーコーティングとしての実行可能性を維持しながら、粘度比が可能な限り低くなるように、ここに記載の方法に従って調整されるべきである。
【0119】
必要な粘度比を有することに加えて、一次コーティング組成物はまた55℃などのより高い動作温度で十分に高い粘度を有するべきである。つまり、一次コーティングは、温度/粘度の関係に関して十分に低い勾配を示すだけでなく、適切に高い「y切片」もまた示す必要がある。十分に低い粘度比を有する(すなわち、比較的温度に影響されない、又は温度/粘度に依存しない)一次コーティング組成物は、それが実行可能な使用には低すぎる初期粘度を有する場合、光ファイバーのコーティングでの使用にはなお適していないかもしれない。従って、所定の実施態様によれば、本発明者は、本発明に係る耐熱性一次コーティング組成物に対する追加の制約は、そのような組成物が、少なくとも0.01パスカル秒(Pa・s)、又は0.10Pa・sより大きく、又は20Pa・s未満、又は1Pa・s未満、又は約0.01Pa・sから約20Pa・sの間、又は約0.01Pa・sから約1Pa・sの間、又は約0.03Pa・sから約1Pa・s、又は約0.03Pa・sから約0.8Pa・s、又は約0.03Pa・sから約0.5Pa・s、又は約0.03Pa・sから約0.4Pa・s、又は約0.05Pa・sから約1Pa・s、又は約0.05Pa・sから約0.5Pa・s、又は約0.1Pa・sから約1Pa・s、又は約0.1Pa・sから約0.8Pa・sの繊維塗布温度での粘度を有するべきであるということであることを発見した。一実施態様では、塗布温度は55℃である。別の実施態様では、塗布温度は85℃である。
【0120】
塗布温度が55℃である好ましい実施態様では、組成物の粘度は、0.03から6Pa・sの間、又は0.05から5Pa・sの間、又は0.1から3Pa・sの間である。塗布温度が摂氏85度である好ましい実施態様では、組成物の粘度は、0.01から2Pa・sの間、又は0.03から1.5Pa・sの間、又は0.05から1Pa・sの間である。一方、塗布温度が摂氏25度である好ましい実施態様では、組成物の粘度は、0.1から20Pa・sの間、又は0.5から15Pa・sの間、又は1から10Pa・sの間である。
【0121】
室温での組成物の粘度はまたそれが特定の塗布温度で適切な流動抵抗を有するかどうかについての適切な指標でありうる。室温において低すぎる粘度を有する組成物は、塗布温度では不十分な粘度である可能性が高い。従って、一実施態様では、一次コーティング組成物の粘度は、25℃において測定した場合、4Pa・sを超え、又は5Pa・sを超え、又は5Pa・sから100Pa・s、又は5Pa・sから50Pa・s、又は5Pa・sから20Pa・s、又は5Pa・sから12Pa・s、又は5Pa・sから10Pa・s、又は8Pa・sから50Pa・s、又は8Pa・sから20Pa・s、又は8Pa・sから12Pa・sである。
【0122】
本発明の一次コーティング組成物の曲線平坦化効果もまた様々な他のコーティング特性に関連していることがここで発見されている。発明者は、組成物の誘電率、その屈折率、その液体ガラス転移温度のような特性と、そのような組成物の相対熱感度(又は非感度)の間に相関関係が存在することを発見した。驚くべきことに、発明者は、コーティング組成物の液体ガラス転移温度とその粘度比との間に強い相関関係が存在すること;つまり、選択された組成物の液体ガラス転移温度が低いほど、温度の影響を受けにくくなる(加熱時の粘度の変化に抵抗するその相対的な能力に反映される)ことを発見した。
【0123】
発明者は、高線引速度/低ヘリウム光ファイバコーティングプロセスでの使用に対する一次コーティング組成物の適合性の程度が、ウイリアムズ・ランデル・フェリー(又はWLF)の式によって測定される、その予想時間-温度重ね合わせ性能と相関することを見出した。アモルファス高分子材料のガラス転移に関連する緩和時間(タウ)の温度依存性は、いわゆるウィリアムズ・ランデル・フェリー(WLF)の関係
1に従う。
ここで、τ(T)は温度Tにおける高分子材料のガラス転移の緩和時間であり、τ(T
ref)は基準温度T
refにおける高分子材料のガラス転移の緩和時間、C
1とC
2は定数である。C
1とC
2の値は、選択された基準温度に依存する。C
1=17.44及びC
2=51.6の「普遍的な」値は、基準温度がガラス転移温度(T
g)に等しくなるように選択された場合、広範囲の高分子材料に使用できることが文献に記載されおり、ここで、T
gはMcCrum, Read及びWilliams, Anelastic and Dielectric Effects in Polymeric Solids, John Wiley & Sons, New York, 1967に記載されている方法において動的走査熱量測定によって決定される。しかし、本発明者の知見では、未硬化の光ファイバーコーティング樹脂配合物の粘度は
で適切に記述することができる。
【0124】
ここで、η(T)は温度Tにおける液体の粘度(ここで使用される場合、Tは特に記載がない限り摂氏で表される)、η(Tg)はDSCで決定されたガラス転移温度Tgにおける粘度、定数C1は15の固定値を持ち、C2は、35と45の間の限られた値の範囲で変化するフィッティングパラメータである。従って、液体樹脂粘度のWLF式は、ガラス転移の緩和時間と同じ温度依存性に従い、C1は同様の値で、C2は僅かに低い値である。発明者はまた、この式でC2に37.5の固定値を選択すると、液体樹脂のガラス転移(Tg,rheo)が樹脂粘度対温度から決定することができることを見出したが、これはDSCからのデータが利用できない場合に特に有用である。DSCからの実際のTgデータを使用するときに見出されたC2値の範囲が限られていることを考えると、これは、レオロジーから決定されたガラス転移温度が、DSCからの値と最大±5℃以内で一致することを意味し、これは、ここでは許容可能な精度と考えられる。
【0125】
従って、レオロジーからTgを計算する場合、次のように基準化された式が適用されうる:
本発明に係る未硬化の液体光ファイバーコーティング樹脂配合物は、比率η(25℃)/η(55℃)及び/又はη(25℃)/η(85℃)から測定して、従来の樹脂配合物と比較して、樹脂粘度のより低い温度感度を有する。そのためには、基準温度としてTg,rheoから25℃の基準温度に式(3)を変換するのが有用である。
異なる基準温度へのWLF式の変換は、
と
を等しくすることによってなすことができる。
【0126】
Tg-rheoを基準温度として用いる普遍的なWLF式(3)と25℃を基準温度として用いる同等の式(4)は、式(5)及び(6)を含めることにより、Tg,rheoを基準温度25℃における相対粘度曲線に適合させるための単一の自由パラメータ式に組み合わせることができる:
又は
【0127】
前述のことは驚くべきことであり、以前は適切な配合アプローチと考えられていたものとは反対の方向に配合することによって、より速いライン速度及び/又はより低いヘリウム含有量でより加工可能である組成物を提供する問題を解決するように発明者を方向付けた。コーティングが高温でより高い粘度を有することを担保する従来のアプローチは、その樹脂の粘度を増加させることであった。そのようなアプローチは、とりわけ、オリゴマーなどの高分子量成分の相対量を増加させることによって、あるいはより高い粘度を有する反応性希釈モノマーを選択することによって、達成することができる。しかし、そのようなアプローチは、典型的には、コーティングの液体ガラス転移温度(Tg,rheo)の上昇をもたらすであろう。式(3)による粘度対温度の普遍的なWLF記述を考慮に入れると、本発明者は、そのようなアプローチが組成物の温度感度を予想外に増加させ、室温において最初はより高い粘度を有するが、より高い熱負荷の下での用途には適さない低粘度樹脂に、より容易に分解することを見出した。従って、本発明者は、現在、全体的に粘度感度の低下をもたらし、高温での加工性の向上を担保するために(最もよく知られている既存の解決策に対して)室温における粘度の低下又は維持と液体コーティングガラス転移温度の低下の効果を有する方向に樹脂を配合するという直感に反したアプローチを定めた。
【0128】
これらの現象の理由の発見に加えて、本発明者は、当業者がここに規定された(かつ非限定的な実施例において更に例証された)所定のガイドラインに従うとき、高線引速度/低ヘリウム加工環境に関連する固有の不利益を軽減するために、過度の実験を行わずに、所定のパラメータ(25℃での粘度及び粘度比を含む)内に放射線硬化性一次コーティング組成物を直ぐに調整し又は構成することができる解決策を考案した。従って、発明者は、驚くべきことに、樹脂の所定の特性が調整されれば、熱抵抗率が増加した(よって、高速ライン速度又は低ヘリウム塗布で動作する光ファイバーコーティングプロセスでの使用に適合した)一次コーティング組成物を構成することが可能であることを発見した。この基準を満たすための配合には、(1)液体ガラス転移温度が低い反応性希釈モノマーを選択すること;及び/又は(2)液体ガラス転移温度が低いオリゴマーを選択することを含む、幾つかのアプローチを利用できる。未硬化モノマーのガラス転移温度は、通常、製造業者によっては特定されておらず、直ぐには決定されないが、前述のように、モノマーの粘度が、適切なタイプを選択するための最初のガイドラインとして役立つ。つまり、低粘度のモノマーは通常、低いガラス転移温度をまた有する。
【0129】
オリゴマーの場合、本発明者は、低いガラス転移温度を有するビルディングブロック(ポリオール、イソシアネート及びアクリレートエンドキャップ)を選択することによって、低いオリゴマーTg,rheoを得ることができることを見出した。ジオールは典型的にはガラス転移温度が最も低いため、一実施態様では、(特に、十分に高い初期粘度値を同時に担保することが望ましい場合)4000g/モル以上の数平均分子量を持つPPG不含有ジオールを選択し、これらを適切なモル比の(ジ)イソシアネートと組み合わせて、ポリエーテル-ウレタン-アクリレートオリゴマーを含むモノ-、ジ-、又はそれ以上の数のポリオールブロックを標的とすることが好ましい。
【0130】
一方、粘度を制御するために、反応性希釈モノマーの量又は性質を適切に変更することが可能である。この成分は、組成物の弾性に有意な影響を与えるとは予想されないため、ひとたび十分な温度感度又は粘度比が達成されれば、ここで規定され請求項に記載されたような適切な開始粘度を可能にするように調整されうる。
【0131】
第一に、低い液体ガラス転移温度を有する幾つかの好ましいモノマーの有意な希釈効果のために、多量のオリゴマー成分を導入することがしばしば望ましいか又は必要である。多量のオリゴマーはまたそこから硬化される一次コーティングに好ましい機械的特性を誘導するのに役立つので、本発明の幾つかの実施態様において、高含有量のオリゴマーが存在することを担保する複数の理由が存在する。従って、好ましい実施態様では、放射線硬化性組成物は、少なくとも50重量%の反応性オリゴマー成分、又は少なくとも55重量%の反応性オリゴマー成分、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は45から85重量%、又は55から80重量%、又は60から85重量%、又は60から80重量%を含む。
【0132】
前述の構成ガイドラインは、単独で、又は2つ以上の組み合わせで利用でき、いずれにしても、網羅的なリストを表すものではない。追加の既知の配合ガイドラインを含む他のものは、当業者によって評価され、一次コーティング組成物が関連する塗布及びプロセスの特定の要件を考慮して、緊急に使用されうる。
【0133】
本発明の第三の態様は、一次コーティングを含むコーティングされた光ファイバーであり、一次コーティングは、第二の態様の実施態様の何れかに係る放射線硬化性組成物の硬化生成物である。
【0134】
本発明の第四の態様は、線引タワーを通してガラス光ファイバーを線引きする工程;ガラス光ファイバーの表面に一次コーティング組成物を塗布する工程;及び場合によっては、前記一次コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な線量のUV光を与える工程;一次コーティング組成物に二次コーティング組成物を塗布する工程;一次コーティング組成物と二次コーティング組成物を、紫外線を放射することができる少なくとも一種の放射線源に曝露して、一次コーティング組成物及び二次コーティング組成物の硬化に影響を与え、光ファイバーの表面に硬化した一次コーティングを、かつ硬化した一次コーティングの表面に硬化した二次コーティングを形成する工程を含み、一次コーティング組成物が、少なくとも一種の重合性基を含む反応性オリゴマーであって、ポリプロピレングリコールから実質的に誘導されていない反応性オリゴマー;反応性希釈モノマー;光開始剤;及び場合によっては、一又は複数種の添加剤を含有し;放射線硬化性組成物が、液体ガラス転移温度(Tg,rheo)、25℃での第一粘度(η
25)、55℃での第二粘度(η
55)、及び85℃での第三粘度(η
85)を有し;放射線硬化性組成物のTg,rheoが、-74℃未満、又は-80℃未満、又は-85℃未満、又は-90℃未満、又は-100℃未満、又は-105℃未満、又は-120から-83.6℃、又は-113から-83℃、又は-106から-83℃であり、ここで、Tg,rheoが式(8)を、放射線硬化性組成物の実験粘度対温度データへ適合させることによって決定され:
ここで、η(T)はT(℃)での組成物の粘度(Pa・s)である、コーティングされた光ファイバーを製造するための方法である。
【0135】
第四の態様の別の実施態様は、次の条件:1500m/分を超え、又は1700m/分を超え、又は2000m/分を超え、又は2500m/分を超え、又は3000m/分を超え、かつ5000m/分未満、又は4000m/分未満、又は3100m/分未満の線引速度;又はヘリウムの不適用下、又は20標準リットル/分(SLM)未満、又は10SLM未満、又は5SLM未満、又は1から20SLM、又は1から10SLM、又は1から5SLM、又は5から20SLM、又は5から10SLMの流量でのヘリウムの適用下のうちの、一又は複数による光ファイバーコーティング方法を記述する。
【0136】
本発明の第五の態様は、光ファイバーが、本発明の第一又は第三の態様に係る少なくとも一種の光ファイバーを含み、光ファイバーが、本発明の第二の態様に係る組成物の硬化生成物であり、及び/又は光ファイバーが本発明の第四の態様に従ってコーティングされた、光ファイバーケーブルである。
【0137】
本発明の改良された組成物は、ここに上で特定された成分の選択を介して配合され得、本発明が適用される当業者によって、ここでの配合ガイドラインに従うことによって、並びに以下の実施例に例証される実施態様で取られる一般的アプローチから外挿することによって更に容易に調整され得る。次のそのような実施例は、本発明を更に例証するが、もちろん、何であれその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0138】
これらの実施例は、本発明の実施態様を例証する。表1A、1B、及び1Cは、本実施例において使用された組成物の様々な成分を記述している。表2は、本実施例において使用されたオリゴマーを合成するために使用された、表1A、1B、及び1Cに記載の試薬の相対量を記述している。
【0139】
[オリゴマー1-2の合成]
最初に、関連するポリオール(オリゴマー1ではPolycerin DCB-4000、オリゴマー2ではPTGL-4000)を、上の表2において特定された量を確保するように測定した後、乾燥空気ブランケット下で、清浄で乾燥したフラスコに加え、続いて特定量の阻害剤(BHT食品等級)を加えた。次に、特定量のイソシアネート成分Desmodur Wを加えた後、特定量のアクリル酸を加えた。これらの試薬を混合し、約10分間撹拌し、温度を監視して上昇が観察されないことを確認した。次に、特定量の関連する触媒DBTDLを同じフラスコに加え、更に約15分間混合した。次に、得られた混合物を、加熱マントル内で60℃において2時間反応させた。
【0140】
2時間の反応後、電位差滴定装置によってイソシアネート(NCO)含有量を測定し、上の表2に特定された量から各オリゴマーについて誘導できる理論的イソシアネート含有量の値の10%以内であることを確認した。適切なイソシアネート含有量を確認したところで、表2において特定されているように、適切な量のアクリレートエンドキャッパー(SR495)を各オリゴマーと希釈剤SR504に加え、その後、得られた混合物を70℃において更に2時間反応させた。ここで再び、電位差滴定によってイソシアネート含有量をチェックした;イソシアネート含有量が理論値の10%を超えた場合、混合物を15分の追加の増分で(再び70℃において)反応チャンバーに戻し、再度チェックし、イソシアナート含有量が所望の範囲内に入るまでこの工程を繰り返した。最後に、得られた合成オリゴマーをゆっくりと冷却し、ここの他の場所に記載されている実験において使用するために排出した。
【0141】
[オリゴマー3の合成]
先ず、表1Cに列挙されている試薬を使用して「ポリエステル樹脂」を作製した。ポリエステル樹脂の合成では、温度計、撹拌機、及び合成中に生成された水を除去するための蒸留装置を備えた2Lの反応容器に、591.3gの二量体脂肪ジオール(1.04モル)及び436.8gの二量体脂肪酸(0.78モル)を満たした。次に、温度を220℃に上昇させながら、撹拌を行い、反応混合物に軽い窒素流を流した。更なる水が放出されなくなるまで、温度を220℃に維持した。次に、0.3gのチタン酸テトライソプロピルを加え、2.0mgKOH/g未満の酸価が達成されるまで減圧下で反応を行った。酸価は、ISO2114に従って滴定測定で測定したが、1グラムの試験物質を中和するのに必要とされる水酸化カリウム(KOH)の質量(ミリグラム)として与えられ、存在するカルボン酸基の濃度の尺度として使用される。得られたポリエステルの特性は、AV=0.1mgKOH/g、OHV=33.9mgKOH/g、Mn=3323Da、Mw=8000Daであった。OHT、又はヒドロキシル値は、ISO4629に従って滴定測定で測定したが、1グラムの試験物質を中和するために必要とされる水酸化カリウム(KOH)のミリグラムでの質量であり、存在するヒドロキシル基の濃度の尺度として使用される。
【0142】
次に、ポリエステル樹脂を、上の表2において特定された量でオリゴマー3の合成において非PPG由来ポリオールとして使用した。このようなポリエステル樹脂を窒素ブランケット下で、清浄で乾燥したフラスコに加え、続いて特定量の阻害剤(BHT食品等級)を加えた。次に、特定量のIPDIを加えた後、特定量のアクリル酸をついで加えた。これらの試薬を混合し、約15分間撹拌した。次に、特定量の関連する触媒DBTDLを同じフラスコに加え、等温で1時間混合した。次に、得られた混合物を油浴中で60℃において2時間反応させた。
【0143】
この後、電位差滴定装置によってイソシアネート(NCO)含有量を測定し、上の表2に特定された量から各オリゴマーについて誘導できる理論的イソシアネート含有量の値の10%以内であることを確認した。適切なイソシアネート含有量を確認したところで、適切な量のヒドロキシエチルアクリレートをオリゴマーに加えた。窒素ブランケットを乾燥空気ブランケットと交換した後、得られた混合物を85℃で1時間反応させた。ここで再び、電位差滴定によってイソシアネート含有量をチェックした;NCO含有量が0.05未満の場合、反応は終了したと考えた。NCO含有量が0.05を超える場合は、適切な量の追加のHEAを加え、1時間後に再度チェックした。最後に、得られた合成オリゴマー3をゆっくりと冷却し、ここの他の場所に記載されている実験において使用するために排出した。
【0144】
[オリゴマー4の合成]
最後に、比較のためにPPG含有オリゴマーを合成した。このオリゴマーを作製するために、関連するポリオール(Arcol Polyol PPG2000)を、測定して、上の表2において特定された量を確認した後、最初に乾燥空気ブランケット下で、清浄で乾燥したフラスコに加え、続いて特定量の阻害剤(BHT食品等級)を加えた。次に、特定量のイソシアネート成分(Mondur TDS 等級II)を加えた後、特定量のアクリル酸と2-エチルヘキサノールをついで加えた。これらの試薬を混合し、約15分間撹拌した。次に、特定量のDBTDL触媒を同じフラスコに加え、更に約15分間混合した。次に、得られた混合物を、加熱マントル内で60℃において1時間反応させた。
【0145】
1時間の反応後、イソシアネート(NCO)含有量の量を電位差滴定装置によって測定し、上の表2において特定された量から各オリゴマーについて誘導可能な理論的イソシアネート含有量の値の10%以内であることを確認した。適切なイソシアネート含有量を確認したところで、適切な量のヒドロキシエチルアクリレートを各オリゴマーに加え、その後、得られた混合物を85℃において1時間反応させた。ここで再び、電位差滴定によってイソシアネート含有量をチェックした;イソシアネート含有量が理論値の10%を超えた場合、混合物を15分の追加の増分で(再び85℃において)反応チャンバーに戻し、再度チェックし、イソシアナート含有量が所望の範囲内に入るまでこの工程を繰り返した。
【0146】
実施例1-6
次に、オリゴマー、モノマー及び光開始剤の混合物を、不透明のポリプロピレンカップに10-20gスケールで秤量した。混合は、いわゆるスピードミキサー(ブランドHauschildタイプDAC150FVZ)において、室温で5分間、3000-3500rpmで実施した。混合中の温度は最大10℃上昇した。(固体)光開始剤が視覚的に完全に溶解しなかった場合、混合手順を繰り返した。サンプルは同じカップに保管した。
【0147】
これらのサンプルは、25℃、55℃、及び85℃における各組成物の定常状態粘度を決定するために、以下に記載される方法に従って試験した。これらの値は、表3においてそれぞれη25、η55、及びη85として報告している。各組成物の温度感度もまた、25℃から55℃、及びまた25℃から85℃の定常状態粘度の比率に関して、報告した。これらの値はまた表3において、それぞれη25/η55及びη25/η85として報告している。最後に、各サンプルの液体ガラス転移温度もまたここに記載の計算方法を使用して決定された。
【0148】
[25、55及び85℃における定常状態粘度の測定]
一般的な説明:樹脂の定常状態せん断粘度の測定の一般的説明は、ISO3219「プラスチック-液状又は乳液もしくは分散状態のポリマー/樹脂-せん断速度が一定の回転粘度計を用いた粘度の測定」に見出すことができる。本発明に係る未硬化光ファイバーコーティング配合物の定常状態せん断粘度の分析では、回転粘度計には、少なくとも20℃と90℃の間の温度における10s-1の変形速度での粘度の決定に対して感度が十分である測定ジオメトリーを備えるべきである。実験手順の過程で、典型的な実験精度の+/-5%を超えて測定結果に影響を及ぼすレベルまで、調査中のサンプルの成分が蒸発しないように注意する必要がある。限定するものではないが、そのような測定を実施するための次の好ましい設定をここで以下に記載する。
【0149】
装置:これらの実験には、Anton PaarタイプのPhysica MCR501装置を使用した。この粘度計には、同心シリンダー及びダブルギャップ測定システムで使用するためのPeltierクーラー/ヒーターからなるC-PTD200温度コントローラー装置が備わっていた。いわゆるダブルギャップDG26.7システムを測定ジオメトリーとして使用した。
【0150】
サンプルの準備とロード:使い捨てプラスチックピペット(7ml)を使用して、室温においてダブルギャップジオメトリーのサンプルシリンダーに液体をロードし、ジオメトリーを約45度の角度で保持した。これは、ダブルギャップジオメトリーに大きな気泡が含まれるのを防ぐために使用した。
【0151】
次に、約6mlの調査対象の液体をダブルギャップジオメトリーにロードし、測定セルを完全に充填し、サンプルジオメトリーの表面積値の正確さを確認した。この量の材料は、液体中のダブルギャップジオメトリーのボブの完全な出現を保証するために必要であった(つまり、ジオメトリーはこのサンプル量でわずかに過負荷になった)。
【0152】
雰囲気と調査中のサンプルのシールド:測定は空気中で実施した。調査中のサンプルからの成分の蒸発を最小限に抑えるために、液体の上面は、ダブルギャップジオメトリーのボブに取り付けられた溶媒トラップシステムのトップキャップでジオメトリーの内側で覆った。
【0153】
測定:次に、次の連続したシーケンスで構成される測定プロトコルに従った:
1. サンプルとジオメトリーの温度平衡を可能にするために、せん断やデータ収集を行わずに、温度を15分間20℃に設定した。
2. 5℃の温度間隔と10s-1のせん断速度を使用して、20から90℃のステップ温度定常せん断試験シーケンスを実施する。せん断なしに次の温度平衡に10分間加熱した後、せん断速度10s-1を使用して定常せん断測定を開始し、その後、6秒のデータポイント当たりの測定期間を使用して15個のデータポイントを取得した。次に、これらのデータポイントの平均を、特定の測定温度における粘度の値として採用した。このシーケンスは、90℃の測定温度まで繰り返した。最後に、これらの結果からのデータポイントを、25、55、及び85℃での粘度に対して抽出した。
ステップ温度測定シーケンスから得られた粘度データの整合性チェックのために、次の(任意選択的)測定シーケンスをまた追加した。このようなステップは、例えば測定中の蒸発による液体粘度の変化を無視できることをチェックするために特に組み込んだ:
3. ステップ温度シーケンスが完了したところで、サンプルとジオメトリーの温度平衡を可能にするために、せん断やデータ収集を行わずに、温度を10分間85℃に設定した。
4. 次に、せん断速度10s-1を使用した定常せん断測定を開始し、その後、6秒のデータポイント当たりの測定期間を使用して15個のデータポイントを取得した。取得したデータポイントの平均を取り、ついで10%の精度で以前に実施したステップ温度定常せん断測定によって決定された85℃での粘度とそれらが一致することを確認した。
5. 次に、サンプルとジオメトリーの温度平衡を可能にするために、せん断やデータ収集を行わずに、温度を15分間55℃に設定した。
6. この後、せん断速度10s-1を使用して追加の定常せん断測定を開始し、各6秒のデータポイント当たりの測定期間を使用して15個のデータポイントを取得した。次に、取得したデータポイントの平均を確立し、この値が、10%の精度で以前に実施されたステップ温度定常せん断測定で決定された55℃での粘度と一致することを確認した。
7. 加えて、サンプルとジオメトリーの温度平衡を可能にするために、せん断やデータ収集を行わずに、温度を15分間25℃に設定した。
8. 最後に、せん断速度10s-1を使用して追加の定常せん断測定を開始し、その後、各6秒のデータポイント当たりの測定期間を使用して15個のデータポイントを取得した。次に、これらの取得したデータポイントの平均を取って、取得してチェックし、10%の精度で以前に実施されたステップ温度定常せん断測定によって決定された25℃での粘度とそれらが一致することを確認した。
【0154】
上記の手順を各実施例に適用し、25℃での粘度値をη25として、55℃での粘度値をη55として、85℃での粘度値をη85として報告した。結果を以下の表3に示す。
【0155】
[液体樹脂粘度の温度感度(Tg,rheo)]
「Tg,rheo」という見出しの下で報告された値は、表3に報告された実際のレオロジーデータ(上で説明した取得方法)にウイリアムズ・ランデル・フェリー式の式(1)から(8)の一又は複数を適用した結果であるカーブフィッティング計算値である。好ましくは、簡略化された式(8)を使用できる:
ここで、η(T)は温度Tでの組成物の粘度であり、η
25は第一粘度である。
【0156】
上で使用される場合、η(T)は20℃と90℃の間で測定された粘度データ全体を意味し、25℃での粘度(η25)が基準値として使用される。次に、非線形回帰フィットを適用して、実験データへの計算されたWLFフィットの最良の全体的フィットをもたらした最適なTg,rheoの値を決定した。これは、Solverアドインを使用してマイクロソフトエクセル(登録商標)シートに実装した。実施例と比較例のそれぞれの結果を以下の表3に示す。
【0157】
図3は、前述の手順と式に従ってTg,rheo値を確立するためのカーブフィッティング(実施例2を示す)を示している。円で表されたデータポイントは実験的に得られた値を示しているが、フィッティング式は破線で表している。
【0158】
[結果の考察]
表3のデータから分かるように、本発明の様々な態様に係る組成物は、粘度比(η25/η55及びη25/η85)によって、あるいは材料の液体Tg(Tg,rheo)によって決定して、望ましい熱感度値を示す。全ての実施例が、光ファイバーの市販の一次コーティング組成物に一般的な光開始剤又は商業的に知られている添加剤を有しているわけではないが、ここにおけるそれらの性能は、光開始剤と添加剤が温度感度に大きな影響を与えるとは予想されないため、塗布されたコーティング上に増加した熱応力量が配される光ファイバーコーティング用途で使用するための少なくとも前駆体組成物としてのそれらの適合性を示している。そのような増加した熱応力は、例えば、商業的な標準値に対して増加したライン速度によって、又はコーティングプロセス中に組成物に適用される冷却(ヘリウム流又は他の方法による)流体の量の低減又は排除によって誘発されうる。
【0159】
特に、実施例1~6は、それぞれがPPG含有オリゴマーを利用した比較実施例1~3よりも優れた温度抵抗率を示した(表3の記録されたTg,rheo値によって証明される)。これは、所定の「非伝統的な」オリゴマーを使用して、高速及び/又は低ヘリウム光ファイバーコーティング用途向けの優れたコーティングを開発できることを示している。同様に、実施例1~6のそれぞれは、表3に報告されたTg,rheo値によって証明されるように、温度抵抗性に関して、発明者が知っている最善の市販の一次コーティング組成物に匹敵する(実施例3)又はそれよりも優れた(実施例1~2及び4~6)性能を示した。
【0160】
結果を、
図4から6に更にグラフで示す。
図4には、各組成物の粘度が25℃と85℃の間の温度の関数としてプロットされる場合、本発明の態様に係る少なくとも二種の組成物(実施例2及び5)の性能上の利点が、一種の比較コーティング組成物(比較例5)と比較して示されている。実施例2及び5は、85℃の高い(潜在的に動作する)温度でのそれらの比較的高い測定粘度値によって証明されるように、コーティング時に増加した熱応力を誘発する光ファイバーコーティングプロセスで使用するための優れた候補と考えることができる。
【0161】
図5と
図6には、x軸に、各組成物の定常状態せん断粘度(
図5では25℃、
図6では85℃)が示され、y軸には、各組成物の粘度比(
図5では25℃/55℃、
図6では25℃/85℃)が示されている。本発明の様々な態様に係る、より高性能で温度感度の低い組成物及び/又は実質的にPPG由来ではない組成物は、円形のデータポイントで表され、性能の低い及び/又は実質的にPPG由来の組成物は、「X」の形のデータポイントで表される。見られるように、粘度比及び初期粘度について様々な範囲にわたる多くの発明例が示されている。
【0162】
特に指定のない限り、重量%という用語は、特定の成分の、それが導入されている液体放射線硬化性組成物全体に対する質量による量を意味する。
【0163】
本発明を説明する文脈での(特に次の特許請求の範囲の文脈での)「a」及び「an」及び「the」という用語及び同様の指示対象の使用は、ここに別段の記載が示されているか又は文脈に明らかに矛盾していない限り、単数形と複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。ここでの値の範囲の記載は、ここに別段の記載がない限り、範囲内にある各個別の値を個別に言及する簡略化された方法となることを単に意図しており、各個別の値は、それがここに個別に記載されているかのように明細書に組み込まれる。ここに記載される全ての方法は、ここに別段の指示がない限り、又は文脈に明らかに矛盾していない限り、任意の適切な順序で実施することができる。ここに提供されるありとあらゆる例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の請求項記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書の如何なる文言も、請求項に記載していない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0164】
本発明の好ましい実施態様は、本発明を実施するために発明者に知られている最良の形態を含めて、ここに記載されている。それらの好ましい実施態様の変形態様は、前述の説明を読むと、当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形態様を適切に用いることを期待し、本発明者は、ここに具体的に記載されている以外の形で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるように、ここに添付された特許請求の範囲に記載された主題の全ての変形態様及び均等物を含む。更に、その全ての可能な変形態様における上記の要素の任意の組み合わせは、ここ別段の指示がない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
本発明を詳細にかつその特定の実施態様を参照して説明したが、請求項記載の発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それらに様々な変化及び変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。