(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】非透過ガスの高回収のための膜プロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20230130BHJP
【FI】
B01D53/22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021051755
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2021-04-13
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド イー.ヘンリー
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-331219(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02967359(FR,A1)
【文献】特開2014-159543(JP,A)
【文献】特開平02-135117(JP,A)
【文献】特開平9-103633(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1420767(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0055385(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0275777(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0131726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00 - 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の膜分離段階を使用して生の供給ガス流を分離するための方法であって、
加圧された供給ガス流を第1の非透過物流および第1の透過物流に分離することと、
前記第1の透過物流を圧縮して圧縮された第1の透過物流を形成することと、
前記圧縮された第1の透過物流を第2の非透過物流および第2の透過物流に分離することと、
前記第2の透過物流を圧縮せずに、前記第2の透過物流を第3の非透過物流および第3の透過物流に分離することと、
前記第3の非透過物流を生の供給ガス流と組み合わせて、組み合わせられた供給流を形成することと、
前記組み合わせられた供給流を圧縮して、圧縮された組み合わせられた供給流を形成することと、
前記第2の非透過物流を、前記圧縮された組み合わせられた供給流と組み合わせて、前記加圧された供給ガス流を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の非透過物流を生成物ガス流として引き出すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の透過物流を廃棄ガス流として引き出すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の非透過物流の圧力を制御することと、
前記第3の非透過物流の圧力を制御することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の非透過物流を第4の非透過物流および第4の透過物流に分離することと、
前記第3の非透過物流を前記生の供給ガス流と組み合わせる前に、前記第4の透過物流を前記第3の非透過物流と組み合わせて、前記組み合わせられた供給流を形成することと、
前記第4の非透過物流を生成物ガス流として引き出すことと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の透過物流および前記第3の透過物流のうちの少なくとも1つに負圧を加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
生の供給ガス流を分離するための多段階膜システムであって、
加圧された生の供給ガス流を受容するための第1の供給ポート、第1の非透過物流を排出するための第1の非透過物出口、および第1の透過物流を排出するための第1の透過物出口を有する第1の膜段階と、
前記第1の透過物流を受容するために前記第1の透過物出口に動作可能に接続された段階間圧縮機入口、および圧縮された第1の透過物流を排出するための段階間圧縮機出口を有する段階間圧縮機と、
前記圧縮された第1の透過物流を受容するために前記段階間圧縮機出口に動作可能に接続された第2の供給ポート、第2の透過物流を排出するための第2の透過物出口、および第2の非透過物流を排出するための第2の非透過物出口を有する第2の膜段階と、
圧縮せずに前記第2の透過物流を受容するために前記第2の透過物出口に動作可能に接続された第3の供給ポート、第3の透過物流を排出するための第3の透過物出口、および第3の非透過物流を排出するための第3の非透過物出口を有する第3の膜段階と、
生の供給ガス流を受容するための生の供給ガス入口、前記第3の
非透過物流を受容するために前記第3の
非透過物出口に動作可能に接続された第1のリサイクル入口、および前記生の供給ガス流と前記第3の透過物流との混合物からなる組み合わせられた供給流を排出するための第1の混合物出口を有する第1の混合接合部と、
前記組み合わせられた供給流を受容するために前記第1の混合物出口に動作可能に接続された供給圧縮機入口、および圧縮された組み合わせられた供給流を排出するための供給圧縮機出口を有する供給圧縮機と、
前記圧縮された組み合わせられた供給流を受容するために前記供給圧縮機出口に動作可能に接続された組み合わせられた供給入口、前記第2の非透過物流を受容するために前記第2の非透過物出口に動作可能に接続された第2のリサイクル入口、および前記第1の供給ポートに動作可能に接続されて、前記圧縮された組み合わせられた供給流と前記第2の非透過物流との混合物からなる前記加圧された生の供給ガス流を前記第1の膜段階に送り込むために第2の混合物出口を有する第2の混合接合部と、を備える、多段階膜システム。
【請求項8】
前記第1の
非透過物流を受容するために前記第1の非透過物出口に動作可能に接続された第4の供給ポート、第4の透過物流を排出するための第4の透過物出口ポート、および第4の非透過物流を排出するための第4の非透過物出口を有する第4の膜段階をさらに備え、
前記第4の透過物流は、前記第3の非透過物流が前記第1の混合接合部に受容される前に、前記第3の非透過物流と組み合わせられる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の透過物出口に負圧を加えるための第1の透過物真空ポンプをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第3の透過物出口に負圧を加えるための第3の透過物真空ポンプをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の膜段階、前記第2の膜段階、および前記第3の膜段階がそれぞれ、同じ透過性および選択性の膜を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の膜段階、前記第2の膜段階、および前記第3の膜段階のうちの1つが、他の2つの段階とは異なる透過性および選択性の膜を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の膜段階、前記第2の膜段階、および前記第3の膜段階の各々が、他の段階の各々とは異なる透過性および選択性の膜を有する、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バイオガスからのメタン回収のための多段階膜プロセスおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
AIChE Journal(vol42,1996,p2141)におけるAgrawalおよびXuによる「Gas Separation Membrane Cascades Utilizing Limited Numbers of Compressors」に記載されているような多段階カスケード設計が、当技術分野で20年以上知られている。しかしながら、これらの設計は、あらゆる透過物流が後続の膜段階に供給される前に圧縮されなければならないことを教示する。さらに、以前のカスケード設計では、透過物流を再圧縮しなかった場合、それを低圧掃引ガスとして後続の膜段階の透過物側に供給し、高圧供給ガスとしては供給しなかった。
【0003】
図5(US2019/0224617)に例示されるような、1つの先行技術の多段階膜システムでは、第1の膜段階は、供給流(加えてリサイクル流)を分離して、第1の透過物流と第1の非透過物流とを生成し、第2の膜段階は、第1の非透過物流を分離して、第2の非透過物流(バイオメタン生成物)と、供給流に戻ってリサイクルされる第2の透過物流とを生成し、圧縮機は、第1の透過物流を圧縮し、次いで、この第1の透過物流は、第3の膜段階において分離されて、システムを出る第3の透過物流と、加圧された供給流に戻ってリサイクルされる第3の非透過物流とが生成される。
【0004】
図6(EP2588217)に示すように、別の先行技術の多段階膜システムでは、3段階膜システムは、再圧縮なしで動作する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態では、大気圧におけるかまたはそれに近い、組み合わせられた生の供給ガスと、低圧リサイクル流(すなわち、第3の非透過物流)と、第1の膜段階を出る透過物流とのみが圧縮され、第2の膜段階を出て第3の膜段階に供給される前に、透過物流は圧縮されない。加えて、透過物流はいずれも掃引ガスとして使用されない。
【0006】
態様1。複数の膜分離段階を使用して生の供給ガス流を分離するための方法であって、加圧された供給ガス流を第1の非透過物流および第1の透過物流に分離することと、第1の透過物流を圧縮して圧縮された第1の透過物流を形成することと、圧縮された第1の透過物流を第2の非透過物流および第2の透過物流に分離することと、第2の透過物流を第3の非透過物流および第3の透過物流に分離することと、第3の非透過物流を生の供給ガス流と組み合わせて、組み合わせられた供給流を形成することと、組み合わせられた供給流を圧縮して、圧縮された組み合わせられた供給流を形成することと、第2の非透過物流を、圧縮された組み合わせられた供給流と組み合わせて、加圧された供給ガス流を形成することと、を含む方法。
【0007】
態様2。第1の非透過物流を生成物ガス流として引き出すことをさらに含む、態様1に記載の方法。
【0008】
態様3。第3の透過物流を廃棄ガス流として引き出すことをさらに含む、態様1または態様2に記載の方法。
【0009】
態様4。第1の非透過物流の圧力を制御することと、第3の非透過物流の圧力を制御することと、をさらに含む、態様1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0010】
態様5。第1の非透過物流を第4の非透過物流および第4の透過物流に分離することと、第3の非透過物流を生の供給ガス流と組み合わせる前に、第4の透過物流を第3の非透過物流と組み合わせて、組み合わせられた供給流を形成することと、第4の非透過物流を生成物ガス流として引き出すことと、をさらに含む、態様1~41のいずれか1項に記載の方法。
【0011】
態様6。第1の透過物流および第3の透過物流のうちの少なくとも1つに負圧を加えることをさらに含む、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0012】
態様7。生の供給ガス流を分離するための多段階膜システムであって、加圧された生の供給ガス流を受容するための第1の供給ポート、第1の非透過物流を排出するための第1の非透過物出口、および第1の透過物流を排出するための第1の透過物出口を有する第1の膜段階と、第1の透過物流を受容するために第1の透過物出口に動作可能に接続された段階間圧縮機入口、および圧縮された第1の透過物流を排出するための段階間圧縮機出口を有する段階間圧縮機と、圧縮された第1の透過物流を受容するために段階間圧縮機出口に動作可能に接続された第2の供給ポート、第2の透過物流を排出するための第2の透過物出口、および第2の非透過物流を排出するための第2の非透過物出口を有する第2の膜段階と、第2の透過物流を受容するために第2の透過物出口に動作可能に接続された第3の供給ポート、第3の透過物流を排出するための第3の透過物出口、および第3の非透過物流を排出するための第3の非透過物出口を有する第3の膜段階と、生の供給ガス流を受容するための生の供給ガス入口、第3の非透過物流を受容するために第3の非透過物出口に動作可能に接続された第1のリサイクル入口、および生の供給ガス流と第3の透過物流との混合物からなる組み合わせられた供給流を排出するための第1の混合物出口を有する第1の混合接合部と、組み合わせられた供給流を受容するために第1の混合物出口に動作可能に接続された供給圧縮機入口、および圧縮された組み合わせられた供給流を排出するための供給圧縮機出口を有する供給圧縮機と、圧縮された組み合わせられた供給流を受容するために供給圧縮機出口に動作可能に接続された組み合わせられた供給入口、第2の非透過物流を受容するために第2の非透過物出口に動作可能に接続された第2のリサイクル入口、および第1の供給ポートに動作可能に接続されて、圧縮された組み合わせられた供給流と第2の非透過物流との混合物からなる加圧された生の供給ガス流を第1の膜段階に送り込むために第2の混合物出口を有する第2の混合接合部と、を備える、多段階膜システム。
【0013】
態様8。第1の非透過物流を受容するために第1の非透過物出口に動作可能に接続された第4の供給ポート、第4の透過物流を排出するための第4の透過物出口ポート、および第4の非透過物流を排出するための第4の非透過物出口を有する第4の膜段階をさらに備え、第4の透過物流は、第3の非透過物流が第1の混合接合部に受容される前に、第3の非透過物流と組み合わせられる、態様7に記載のシステム。
【0014】
態様9。第1の透過物出口に負圧を加えるための第1の透過物真空ポンプをさらに備える、態様7または態様8に記載のシステム。
【0015】
態様10。第3の透過物出口に負圧を加えるための第3の透過物真空ポンプをさらに備える、態様7~9のいずれか1項に記載のシステム。
【0016】
態様11。第1の膜段階、第2の膜段階、および第3の膜段階がそれぞれ、同じ透過性および選択性の膜を有する、態様7~10のいずれか1項に記載のシステム。
【0017】
態様12。第1の膜段階、第2の膜段階、および第3の膜段階のうちの1つが、他の2つの段階とは異なる透過性および選択性の膜を有する、態様7~11のいずれか1つに記載のシステム。
【0018】
態様13。第1の膜段階、第2の膜段階、および第3の膜段階の各々が、他の段階の各々とは異なる透過性および選択性の膜を有する、態様7~12のいずれか1項に記載のシステム。
【0019】
本明細書に開示するシステムの様々な態様は、単独で、または互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】2つの圧縮機を使用する3段階膜システムおよびプロセスの実施形態のプロセスフロー図である。
【
図2】2つの圧縮機を使用する4段階膜システムおよびプロセスの別の実施形態のプロセスフロー図である。
【
図3】先行技術の3段階膜構成の圧縮機電力を本発明の3段階実施形態と比較するグラフである。
【
図4】先行技術の3段階膜構成の膜面積を本発明の3段階実施形態と比較するグラフである。
【
図5】2つの圧縮機を使用する先行技術の3段階膜システムおよびプロセスのプロセスフロー図である。
【
図6】再圧縮なしの先行技術の3段階膜システムおよびプロセスのプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、2つの圧縮機を含む3段階膜バイオガスアップグレードシステム10の実施形態を示す。バイオガスのアップグレードまたは分離のために使用すると、これは、少なくとも99.5%のメタン回収率を達成することができる。バイオガスは、典型的には、酸素(O2)および窒素(N2)などの他の微量成分を時には伴って、主成分として二酸化炭素(CO2)およびメタン(CH4)を含む。本システムにおいて使用される膜は、CH4よりもCO2に対して選択的であり、これは、CH4が比較的低い速度で膜を通過する低速透過ガスである一方で、CO2が比較的高い速度で膜を優先的に通過する高速透過ガスと見なされることを意味する。本明細書における略記として、高速透過ガスおよび低速透過ガスは、それぞれ、高速ガスおよび低速ガスと呼ばれることがある。膜を通るガス透過性は溶液拡散輸送機構によって制御され、透過速度は、ポリマー中の分子サイズ(拡散率)および分子溶解度の関数であり、原動力に比例する。ガス分離の原動力は、膜の高圧側と低圧側との分圧差である。ガス混合物の各ガス状成分のガス透過性は典型的には異なり、各ガス状成分の分圧は、ガス混合物中のその相対濃度ならびにガス混合物の総圧力に明らかに比例するであろう。
【0022】
膜は、MonsantoがそのPRISM(登録商標)膜を水素精製のために製品化した1980年代以来、ガス分離プロセスにおいて使用されてきた。その後、膜は、限定しないが、天然ガス甘味料、窒素生成、および脱水など、様々な用途における使用が見出されてきた。最近では、膜は、アミンスクラビングや水洗いなどの伝統的な技術の代わりに、バイオガスアップグレードの成長分野において使用されてきた。膜は、フットプリントの低減、可動部品がないこと、追加の処理を必要とする消耗品または副産物がないことなど、既存の分離技術よりも多くの利点を提供する。
【0023】
図1の実施形態では、高速ガスと低速ガス(例えば、CO2およびCH4を含有するバイオガス)との混合物を含有する生の供給ガス流30をシステム10に供給する。第1のリサイクルされた流れ48(以下に論じられるように、第3の非透過物流48とも呼ばれる)を生の供給ガス流30内に混合して、組み合わせられた供給流32を形成する。組み合わせられた供給流32は、供給圧縮機12内でより高い圧力に圧縮されて、圧縮された組み合わせられた供給流34をもたらす。第2のリサイクルされた流れ44(以下に論じられるように、第2の非透過物流44とも呼ばれる)を、圧縮された組み合わせられた供給流34内に混合して、加圧された供給ガス流36を形成する。
【0024】
低速透過ガスと高速透過ガスとの混合物を含有する加圧された供給ガス流36は、低速ガスよりも高速ガスに対して選択的であるガス分離膜を有する第1の膜段階20に送り込まれる。制御バルブ16(または制限オリフィスなどの圧力を維持することができる他のデバイス)は、第1の膜段階20にわたって適切な圧力を維持するために使用される。バイオガスの場合、CO2は、CH4よりもはるかに速く透過する。主に高速ガスと微量の低速ガスを含むガスは、膜を透過し、第1の透過物流40として第1の膜段階20を出る一方で、膜を透過できない、主に低速ガスと微量の低速ガスを含むガスは、第1の非透過物流38として除去され、引き出される。本明細書の説明では、残留物および非透過物という用語を同義的に使用することがある。
【0025】
第1の非透過物流38は、高濃度の低速ガスおよび非常に低濃度の高速ガスを有する、低速ガスの最終生成物流として引き出すことができる。第1の透過物流40を、第1の段階の透過物圧縮機14(段階間圧縮機とも呼ばれる)内で再圧縮し、圧縮された第1の透過物流42、すなわち、若干の量の低速透過ガスとの高速透過ガスの加圧された混合物を生成し、この混合物を第2の膜段階22に供給する。
【0026】
第2の膜段階22では、主に高速ガスと微量の低速ガスを含むガスは、膜を透過し、第2の透過物流46として第2の膜段階22を出る一方で、膜を透過できない、主に低速ガス+微量の高速ガスを含むガスは、第2の非透過物流44として除去され、引き出される。第2の非透過物流44は、膜を透過できなかったため、加圧されたままであり、圧縮機14による再圧縮から恩恵を受ける。第2の非透過物流44は、供給圧縮機12の下流の圧縮された組み合わせられた供給流34内に戻ってリサイクルされる。
【0027】
第2の透過物流46は、いかなる再圧縮もせずに第3の膜段階24に供給される。第3の膜段階24では、主に高速ガスと微量の低速ガスを含むガスは、膜を透過し、第3の透過物流50として第3の膜段階24を出る一方で、主に低速ガス+微量の高速ガスを含むガスは、膜を透過できず、第3の非透過物流48として除去され、引き出される。第3の非透過物流48は、供給圧縮機12の上流の生の供給ガス流30内に戻ってリサイクルされる。制御バルブ18を使用して、第3の膜段階24にわたって適切な圧力を維持する。第3の透過物流50は、高速ガスに富む流れであり、バイオガスの場合、主にCO2であり、用途に応じてさらに通気または処理することができる。
【0028】
任意選択で、真空ポンプ(図示せず)は、第1の透過物流40および/または第3の透過物流50に接続されて、第1の段階または第3の段階の膜にわたる差圧をそれぞれ増加させることができ、それにより、膜段階の分離性能を改善する。
【0029】
任意選択で、高速ガスの透過性を増加させ、したがって必要とされる膜面積を減少させるために、プロセスヒーターを膜段階のいずれか1つの上流で使用することができる。しかし、この利点は、膜段階の分離性能を低下させる、低速ガスの透過性のより大きい増加によって相殺される。
【0030】
システム10において、各膜段階20、22、および24は、1つ以上の膜を含んでもよく、複数の膜は直列および/または並列に配置される。各膜は、平らなシートまたは中空繊維の形態であってもよく、膜のモジュールは、螺旋巻きの平らなシートまたは中空繊維の束のいずれかであってもよい。各膜段階20、22、および24は、同じ膜を使用する必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、3つの段階のすべてが同じ透過性および選択性の膜を使用する。他の実施形態では、各段階の膜透過性および選択性は、他の段階のものとは異なってもよい。さらに他の実施形態では、2つの段階は、同じ透過性および選択性の膜を使用してもよく、残りの段階は、異なる透過性および選択性の膜を使用してもよい。各膜は、当技術分野で知られている、もしくは所望の分離に適していると将来判断される多数のポリマーから選択された単一のポリマーで作製されてもよく、または各膜は、複数のポリマーから作製された複合膜であってもよい。膜を作製するために使用されるポリマーの例は、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリイミド(マトリミド5218もしくはP-84など)、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、コポリマー、ブロックコポリマー、またはポリマーブレンドを含むが、これらに限定されない。
【0031】
驚くべきことに、システム10における2つの圧縮機12および14の使用は、例えば、
図6の先行技術の構成にあるような、追加の圧縮なしの主供給ガス圧縮機を有するより伝統的な3段階構成よりも著しく低い圧縮コストで低速ガスの高回収率を推進する。加えて、システム10の構成は、しばしば膜面積要件を低くすることにつながり、それによってシステムの資本コストを低減する。
【0032】
図2は、少なくとも99.5%のメタン回収率を得るために2つの圧縮機を含む多段階膜バイオガスアップグレードシステム100の別の実施形態を示す。システム10に関して上述した要素に加えて、システム100は、第1の膜段階20によって除去された第1の非透過物流38をさらに処理するために第4の膜段階26を追加する。
【0033】
第1の非透過物流38は第4の膜段階26に供給される。第4の膜段階26では、主に高速ガスと微量の低速ガスを含むガスは、膜を透過し、第4の透過物流54として第4の膜段階26を出る一方で、主に低速ガスとごく少量の高速ガスを含むガスは、膜を透過できず、第4の非透過物流52として除去され、引き出される。第4の透過物流54は、第3の非透過物流48と組み合わせられて、組み合わせられたリサイクル流58が形成され、このリサイクル流58は、供給圧縮機の上流の生の供給ガス流30に戻ってリサイクルされる。制御バルブ56を使用して、第4の膜段階26にわたって適切な圧力を維持する。第4の非透過物流52は、低速ガスに富む流れであり、バイオガスの場合、主にCH4であり、最終精製生成物としてシステム100を出る。
【0034】
システム10とシステム100の両方において、任意の所与の供給ガス組成物、流量要件、ならびに純度および/または回収率などの生成物要件について、各段階の膜面積は、動作圧力、温度、および膜の種類(すなわち、膜透過性および選択性)を含むが、これらに限定されない変数から計算される。これらのパラメータは、3段階または4段階の間の膜面積の最適分布、各それぞれのリサイクル流の流量および組成、ならびに圧縮機電力に対するリサイクル流の直接的影響を見つけるために、Aspen Plusなどの計算シミュレーションプログラムに入力される。
【0035】
本明細書に記載のシステム10および100は、以下を含むが、これらに限定されない、いくつかのガス対のうちのいずれか1つを供給流30内で分離するために使用できる:CO2/CH4、H2/CO、H2/CO2、CO2/N2、O2/N2、He/CH4、H2/CH4、およびH2/N2。
【0036】
図3および
図4のグラフ、ならびに以下の表は、現在開示されているシステム10の性能を、
図5(システムA)および
図6(システムB)に示される2つの先行技術システムと比較する。以下の条件を使用してシミュレーションを行った:60モル%CH4、40モル%CO2を含有する1000NMH(1時間当たりのノルマル立方メートル)のバイオガスの生の供給流、第1および第2段階膜の14barg動作圧力、20℃の膜動作温度、98モル%CH4を含有する生成物ガス、膜CO2/CH4選択性30。グラフが示すように、よりわずかなCH4回収(すなわち、ベント流内のより高いCH4含有量)で、3段階カスケードおよび2つの圧縮機を有する本システム10は、システムAおよびシステムBと同様に性能を発揮する。しかしながら、CH4回収が増加し、ベント流内のCH4が減少するにつれて、本システム10は、システムA(単一圧縮機)またはシステムB(2つの圧縮機)のいずれかよりも著しく少ない圧縮機電力を必要とする。本システムはまた、システムAの単一圧縮機設計よりもわずかに少ない膜面積を必要とする。
【表1】
条件:60%CH4、40%CO2の1000NMHの生のバイオガス、14barg、20C、生成物ガス98%CH4、総CH4回収率99.97%、膜CO2/CH4選択性30。
【0037】
3つの膜および単一圧縮機を有する
図6の構成を使用してプロセスシミュレーションを行って、60モル%のCH4および40モル%のCO2を含有し、1000NMHで流れる供給流30を使用して、98モル%のCH4を含有し、99.98%の全体CH4回収率の生成物流を生成した。約99.5%を超える、非常に高いCH4回収率を達成するためには、500%を超えるリサイクル率が必要であり、リサイクル率は、リサイクル流体積(7および8とラベル付けされた流れの組み合わせ)と、供給流体積(1とラベル付けされた流れ)との比率として定義される。この大きいリサイクル率は、非常に大きい圧縮機を必要とし、動作するために過度に高い圧縮機電力を必要とする。
【0038】
比較のために、カスケードになった3つの膜段階20、22、および24、供給圧縮機12、および第1の段階の透過物圧縮機14を有するシステム10の構成を使用してシミュレーションを実行した。シミュレーションでは、膜モジュールは、CO2/CH4選択性が30である中空繊維膜を含有した。
【0039】
60%CH4および40%CO2を含有する1000NMHの生のバイオガス流30の供給がシステムに提供される。流れ30は、101.64NMHの流量を有し、かつ96.5%のCO2を含有する第3の非透過物流48と組み合わせられて、組み合わせられたフィード流32が形成される。組み合わせられた流れ32は14bargに圧縮される。結果として生じる圧縮された組み合わせられた供給流34を、842.8NMHで81.1%のCO2を含有する第2の非透過物流44と組み合わせて、約14bargおよび20℃において39.3%CH4および60.7%CO2を含有する1944.4NMHの加圧された供給ガス流36を作成する。圧縮された組み合わせられた供給流36を第1の膜段階20に供給して、第1の非透過物流38および第1の透過物流40を生成する。
【0040】
第1の膜段階20は、システム10内の全膜面積の78.5%を含有する。第1の非透過物流38圧力の圧力は、制御バルブ16によって調節され、制御バルブ16は、第1の膜段階20に対して14bargの供給圧力を達成するように設定される。第1の非透過物流38は、611.9NMHのモル流量を有し、98%のCH4を含有し、生成物ガスとして引き出された。第1の透過物流40は、1332.5NMHのモル流量を有し、第1の透過物圧縮機14に入った。
【0041】
圧縮された第1の透過物流42を第2の膜段階22に供給して、第2の非透過物流48および第2の透過物流46を生成する。第2の膜段階22は、全システム膜面積の6.8%を含有する。
【0042】
第2の透過物流46は、全システム膜面積の14.7%を含有する第3の膜段階24に供給される。第3の段階の非透過物流48上の制御バルブ18は、その流れ上の圧力、ならびに第3の段階の供給流46の圧力を調節する。制御バルブ18は、差圧が第2の膜段階22にわたって維持されるように圧力が十分に低いが、第3の段階の膜24にわたって差圧を維持するのに十分に高いように設定される。最適圧力は、最適化ルーチンを使用してコスト関数を最小限に抑えることによって決定することができ、これにより、その流れを、供給圧縮機12を離れる供給ガス流34と組み合わせることが可能になる。上記のように、第3の段階の非透過物流48の体積は101.6NMHであり、リサイクルされると、この体積は、供給圧縮機12によって圧縮されるガスの体積のわずか10%の増加を表す。第3の段階の透過物流50は、387.9NMHで引き出され、わずか0.05モル%のCH4を含有する。全体的にこのシステムは、推定0.286kW/NMHの生のバイオガスのみを使用しながら、99.97%のCH4回収率を達成する。
【0043】
本明細書に記載されるシステム10および100は、
図6の単一圧縮機3段階システムよりも予期しない改善を表す。
図6のシステムを改造して、より多いリサイクル流を受け入れ、より高い選択性を持つ膜を使用し、および/またはより高い選択性を達成するためにより低い温度で動作することによって、99.5%を超える回収率にすることができたとしても、それらの各々は、本明細書に記載のシステムと比較して欠点を有する。具体的には、リサイクル流が多いほど、より多くの圧縮機電力を必要とし、プロセスの経済性を低下させる。より高い選択性を有する膜は現在入手可能でない。そして、選択性を低下させるためにより低い温度で動作させることは、冷凍エネルギーコストを増加させ、膜面積を増加させる。
【0044】
本明細書に記載されるシステム10および100はまた、
図5の2圧縮機3段階システムよりも予期しない改善を表す。
図5のシステムを改造して、98%を超えるCH4回収率にすることができても、その高い回収率を達成するために、透過物(第2の)段階の供給流量対透過物流量比(「段階削減」として知られる)の比率が低減され、それにより、透過物段階膜面積が低減される。CH4の回収率が約99%を超えると、透過物段階膜面積が非常に小さくなり、設計および/または動作が実行不可能になる。また、透過物段階非透過物流対供給段階透過物リサイクル流の比率が増加し、それにより、段階間圧縮機電力消費量が増加する。
【0045】
本発明の範囲は、本発明のいくつかの態様の例示として意図されている例において開示される特定の態様または実施形態によって限定されるものではなく、機能的に同等であるいかなる実施形態も本発明の範囲内にある。本明細書に示され、説明されたものに加えて、本発明の様々な修正が、当業者には明らかになり、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。