(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒装置
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20230130BHJP
B01J 29/46 20060101ALI20230130BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230130BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230130BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01J29/46 A
B01D53/94 222
B01J35/04 301L
F01N3/28 301Q
(21)【出願番号】P 2021122445
(22)【出願日】2021-07-27
(62)【分割の表示】P 2020056612の分割
【原出願日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】南條 翼
(72)【発明者】
【氏名】河野 祐也
(72)【発明者】
【氏名】荒川 琢斗
(72)【発明者】
【氏名】山下 嘉典
(72)【発明者】
【氏名】大石 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】高須 亮佑
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-166136(JP,A)
【文献】特開平07-016462(JP,A)
【文献】特表2017-514683(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002052(WO,A1)
【文献】特開2010-149097(JP,A)
【文献】特表2019-519354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86-96
B01J 29/42-46、70-76、35/04
F01N 3/08-28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレートフロー型の基材と、前記基材上のSCR触媒層とを含む、排ガス浄化触媒装置であって、
前記基材は、前記基材上に直接担持された触媒貴金属粒子を含み、
前記触媒貴金属粒子は、Ptを含み、
前記触媒貴金属粒子の平均粒径が、30nm以上120nm以下である、
排ガス浄化触媒装置。
【請求項2】
前記触媒貴金属粒子における、Pt以外の貴金属の含有割合が、前記触媒貴金属粒子の全質量に対して、10質量%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項3】
前記触媒貴金属粒子の平均粒径が、50nm超100nm以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項4】
前記SCR触媒層が、Cu又はFeでドープされたゼオライトを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項5】
前記SCR触媒層が、Cu-CHA型ゼオライト、Cu-BEA型ゼオライト、Fe-MFI型ゼオライト、及びFe-BEA型ゼオライトから選択される少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項6】
前記触媒貴金属粒子が、Pdを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項7】
前記排ガス浄化触媒装置
に含まれる全貴金属の質量のうち、前記基材上に直接担持された触媒貴金属粒子
の質量の占める割合が95質量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項8】
セリアを含むOSC層を更に有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項9】
前記セリアが、セリア-ジルコニア複合酸化物の形態で前記OSC層に含まれている、請求項8に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項10】
前記OSC層を、前記基材と前記SCR触媒層との間に有する、請求項8又は9に記載の排ガス浄化触媒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排ガス中のNOxを、大気に放出される前に、還元浄化する技術として、選択的接触還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)システムが知られている。SCRシステムは、還元剤、例えばアンモニアを用いて、排ガス中のNOxをN2に還元する技術である。
【0003】
このSCRシステムでは、NOxの還元浄化率を向上するため、還元剤が過剰に用いられることがあり、この場合には、NOxの還元に用いられなかった非反応の還元剤が、SCR触媒から排出される。還元剤としてアンモニアを用いた場合、SCR触媒からのアンモニアの排出は、「アンモニアスリップ」と呼ばれることがある。
【0004】
スリップしたアンモニアは、ASC(Ammonia Slip Catalyst)によって酸化浄化されたうえで、大気に放出されることが望ましい。そこで、SCRシステムでは、ASCが、例えば、SCR層と積層されて、或いは、SCR層の後段に配置された状態で、併用されることが多い。
【0005】
この点、特許文献1には、白金(Pt)、第二の金属、耐火性金属酸化物、及びゼオライトを含む選択的アンモニア酸化用の二官能性触媒が開示されている。この特許文献1には、ASCの一般的な構成が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、シリカ/アルミナ比(SAR)30未満のモレキュラーシーブを含み、かつ、当該モレキュラーシーブはイオン交換銅(Cu)及びイオン交換白金(Pt)を含む、選択的アンモニア酸化のための二元金属触媒が記載されている。
【0007】
なお、特許文献3には、担体上に担持された貴金属触媒粒子の平均粒径を、COパルス法によって測定する方法が開示されている。特許文献3の技術では、担体がOSC(Oxygen Strage Capacity:酸素吸蔵放出能)を示す材料を含む場合であっても、COパルスは担体によって消費されず、実質的にすべてのCOが貴金属触媒粒子に吸着されることになる。そのため、特許文献3に開示された方法によると、貴金属触媒粒子の状態を正確に評価できると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2010-519039号公報
【文献】特表2012-507400号公報
【文献】特開2005-283129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ASCにおけるNH3の酸化浄化の副反応生成物として、N2Oが生成する。N2Oは、地球温暖化に影響する温室効果ガスであるため、その排出量は抑制されるべきである。
【0010】
ASCを備えるSCRシステムでは、生成したN2OをSCRによって浄化することは、困難である。そのため、ASCにおけるN2Oの生成量は、できる限り少ないことが望まれる。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、NH3の酸化浄化効率が十分に高く、かつ、N2Oの生成量が少ない、排ガス浄化触媒装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
【0013】
《態様1》基材と、前記基材上のSCR触媒層とを含む、排ガス浄化触媒装置であって、
前記基材は、前記基材上に直接担持された触媒貴金属粒子を含み、
前記触媒貴金属粒子は、Ptを含み、
前記触媒貴金属粒子の平均粒径が、30nm以上120nm以下である、
排ガス浄化触媒装置。
《態様2》前記触媒貴金属粒子における、Pt以外の貴金属の含有割合が、前記触媒貴金属粒子の全質量に対して、10質量%以下である、態様1に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様3》前記触媒貴金属粒子の平均粒径が、50nm超100nm以下である、態様1又は2に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様4》前記SCR触媒層が、Cu又はFeでドープされたゼオライトを含む、態様1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様5》前記SCR触媒層が、Cu-CHA型ゼオライト、Cu-BEA型ゼオライト、Fe-MFI型ゼオライト、及びFe-BEA型ゼオライトから選択される少なくとも1種を含む、態様1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様6》前記触媒貴金属粒子が、Pdを更に含む、態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様7》前記排ガス浄化触媒装置が、前記基材上に直接担持された触媒貴金属粒子以外の貴金属を実質的に含まない、態様1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様8》セリアを含むOSC層を更に有する、態様1~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様9》前記セリアが、セリア-ジルコニア複合酸化物の形態で前記OSC層に含まれている、態様8に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様10》前記OSC層を、前記基材と前記SCR触媒層との間に有する、態様8又は9に記載の排ガス浄化触媒装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、NH3の酸化浄化効率が十分に高く、かつ、N2Oの生成量が少ない、排ガス浄化触媒装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の排ガス浄化触媒装置の構成の一例を示す、概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の排ガス浄化触媒装置の構成の別の一例を示す、概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《排ガス浄化触媒装置》
本発明の排ガス浄化装置は、
基材と、基材上のSCR触媒層とを含む、排ガス浄化触媒装置であって、
基材は、該基材上に直接担持された触媒貴金属粒子を含み、
触媒貴金属粒子は、Ptを含み、
触媒貴金属粒子の平均粒径は、30nm以上120nm以下である。
【0017】
本発明の排ガス浄化装置では、基材上のSCR触媒層により、アンモニアを還元剤とする、NOxの選択接触還元による浄化が行われる。このとき、過剰に供給され、NOxの選択接触還元に用いられなかった余剰のアンモニアは、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子によって、酸化浄化される。
【0018】
本発明の排ガス浄化装置は、上記の基材、及びSCR触媒層の他に、セリアを含むOSC層(酸素貯蔵)を、更に有していてよい。
【0019】
OSC層は、酸素吸蔵放出能を示し、リーン雰囲気下では、酸素を吸蔵するが、リッチ雰囲気下では、酸素を放出する機能を有する。そのため、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子のNH3酸化浄化活性が高まり、特に低温領域におけるNH3の酸化浄化能が更に向上される。したがって、このOSC層は、触媒貴金属粒子に近い場所に配置されることが好ましく、例えば、基材と、SCR触媒層との間に存在していてよい。
【0020】
なお、従来知られているASCでは、NH3の酸化触媒として機能するPtが、大面積の無機酸化物担体粒子上に担持された状態で、基材上の触媒コート層中に存在している。この場合、Ptは、比較的小さな粒径の微小粒子として、担体粒子上に担持されている。
【0021】
しかしながら、本発明者らは、大面積の担体上に担持された、比較的小さい粒径のPt粒子を含む、触媒コート層を有する構成のASCによると、N2Oの生成量の抑制に限界があることを見出した。
【0022】
そこで本発明では、Ptを基材上に直接担持して、比較的大粒径の粒子とすることにより、NH3の酸化浄化効率に優れるとともに、N2Oの生成量が少ない、排ガス浄化触媒装置が得られたのである。
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の排ガス浄化触媒装置の典型的な構成について、説明する。
【0024】
図1及び2に、本発明の排ガス浄化触媒装置の構成の例を示した。
【0025】
図1の排ガス浄化触媒装置(101)は、基材(10)と、基材(10)上のSCR触媒層(20)とを含む。この排ガス浄化触媒装置(101)における基材(10)は、基材(10)上に直接担持された触媒貴金属粒子(11)を含む。
【0026】
図2の排ガス浄化触媒装置(102)では、基材(10)と、基材(10)上のSCR触媒層(20)とを含み、かつ、基材(10)が、基材(10)上に直接担持された触媒貴金属粒子(11)を含むことは、
図1の排ガス浄化触媒装置(101)と同様である。しかしながら、この排ガス浄化触媒装置(102)は、OSC層(30)を、基材(10)とSCR触媒層(20)との間に有する。
【0027】
図1の排ガス浄化触媒装置(101)、及び
図2の排ガス浄化触媒装置(102)において、触媒貴金属粒子(11)は、Ptを含む。この触媒貴金属粒子(11)の平均粒径は、30nm以上120nm以下である。
【0028】
図2の排ガス浄化触媒装置(102)におけるOSC層(30)は、セリアを含む。OSC層(30)中のセリアは、例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物の形態でOSC層(30)中に含まれていてよい。
【0029】
以下、本発明の排ガス浄化装置の各構成要素について、順に説明する。
【0030】
〈基材〉
本発明の排ガス浄化触媒装置における基材としては、排ガス浄化触媒装置の基材として一般に使用されているものを使用することができる。例えば、コージェライト、SiC、ステンレス鋼、無機酸化物粒子等の材料から構成されている、例えばストレートフロー型のモノリスハニカム基材であってよい。
【0031】
本発明の排ガス浄化触媒装置における基材は、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子を含む。「基材上に直接担持された」とは、触媒貴金属粒子が、基材を構成する無機酸化物以外の無機酸化物担体を介さずに、基材に付着していることを意味する。
【0032】
(触媒貴金属粒子)
触媒貴金属粒子は、Ptを含む。
【0033】
触媒貴金属粒子は、Pt以外の貴金属を含んでいてもよい。触媒貴金属粒子に含まれるPt以外の貴金属は、例えば、Pt以外の白金族元素であってよく、例えば、Ru、Rh、Pd、Os、及びIrから選択される1種以上であってよく、Rh及びPdから選択される1種以上であってよく、特に、Pdであってよい。
【0034】
PtとともにPt以外の貴金属を含む触媒貴金属粒子は、粒径の制御が容易である反面、Pt以外の貴金属の含有量が過度に大きい触媒貴金属粒子は、N2Oの生成量が多いとの問題が生ずる場合がある。これらの観点から、触媒貴金属粒子における、Pt以外の貴金属の含有割合は、前記触媒貴金属粒子の全質量に対して、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は0質量%であってよく、0質量%超、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、又は10質量%以上であってよい。
【0035】
触媒貴金属粒子の平均粒径は、30nm以上120nm以下である。触媒貴金属粒子の平均粒径が30nm未満であると、N2Oの生成量が多くなることがある。一方、触媒貴金属粒子の平均粒径が120nmを超えると、NH3の酸化浄化能が損なわれる場合がある。触媒貴金属粒子の平均粒径は、N2Oの生成を抑制する観点から、例えば、35nm以上、40nm以上、45nm以上、50nm以上、50nm超、55nm以上、60nm以上、又は65nm以上であってよく、NH3の酸化浄化能を向上させる観点から、110nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、75nm以下、70nm以下、又は65nm以下であってよい。触媒貴金属粒子の平均粒径は、典型的には、例えば、50nm超100nm以下であってよい。
【0036】
本明細書において、触媒貴金属粒子の平均粒径は、一酸化炭素(CO)パルス法によって測定された値である。触媒貴金属粒子の平均粒径の測定は、特許文献3(特開2005-283129号公報)に記載された方法に準拠して行われる。
【0037】
具体的には、排ガス浄化触媒装置を、例えば0.5mm以下の細片に粉砕したものを測定試料とし、酸化処理及び還元処理を行った後に、二酸化炭素(CO2)による処理を行ったうえ、COパルス法による測定に供する。酸化処理及び還元処理は、適宜の高温、例えば400℃において行われてよい。CO2よる処理は、比較的低温、例えば50℃において行われてよい。COパルス法による測定は、比較的低温、例えば50℃において行われてよい。
【0038】
この方法では、COパルス法による測定に先立って、測定試料のCO2処理を行うことが重要である。排ガス浄化触媒装置が、OSC材を含む場合、このCO2処理により、該OSC材の吸着サイトはCO2によって塞がれる。そのため、CO2処理後にCOパルス法を行うと、試料に供給されるCOは、OSC材に吸着して消費されることなく、実質的に全量が貴金属触媒粒子に吸着すると考えられる。
【0039】
したがって、COパルス法によって、試料に供給されたCO量と、排出ガスに含まれるCO量との差分は、触媒貴金属粒子に吸着したCOの量であると見積もることができる。
【0040】
そして、触媒貴金属粒子の表面に露出している触媒貴金属原子1個につき、CO1個が吸着すると仮定して、触媒貴金属粒子の平均粒径を算出することができる。
【0041】
吸着CO量からの、触媒貴金属粒子の平均粒径の算出は、例えば、以下のように行われてよい。
【0042】
CO吸着量をV
Chem(cm
3)、触媒貴金属1原子当たりの金属断面積をρ
m(nm
2)、測定試料1g当たりの触媒貴金属粒子の質量をc(g)とすると、触媒貴金属粒子1g当たりの表面積Am(Metal)(m
2/g)は、下記数式(1)で表される。数式(1)中のSFは、「ストイキオメトリー・ファクター」と呼ばれ、触媒貴金属原子1個につき、何個のCOが吸着するかを示す数である。本明細書では、上記のとおり、SF=1と仮定する。
【数1】
【0043】
数式(1)で得られた触媒貴金属粒子1g当たりの表面積Am(Metal)(m
2/g)は、触媒貴金属粒子の平均半径r(cm)、触媒貴金属粒子1g当たりの触媒貴金属粒子数α(個)、及び触媒貴金属粒子の質量c(g)を用いて、下記数式(2)のように書き換えることができる。
【数2】
【0044】
一方、触媒貴金属粒子1g当たりの体積(cm
3)は、触媒貴金属粒子の平均半径r(cm)、触媒貴金属粒子1g当たりの触媒貴金属粒子数α(個)、触媒貴金属粒子の質量c(g)、及び触媒貴金属の密度ρ(g/cm
3)を用いて、下記数式(3)で表される。
【数3】
【0045】
数式(2)及び(3)から、触媒貴金属粒子の平均半径r(cm)は、下記数式(4)によって計算できる。
【数4】
【0046】
したがって、下記数式(5)によって、触媒貴金属粒子の平均粒径d(nm)が得らえる。
【数5】
【0047】
本発明の排ガス浄化触媒装置では、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子の担持量は、任意である。しかしながら、基材1L当たりの触媒貴金属粒子の質量として、十分に高いNH3酸化浄化能を確保する観点からは、例えば、0.01g/L以上、0.03g/L以上、0.05g/L以上、0.08g/L以上、又は0.10g/L以上であってよく、NH3酸化浄化能と触媒装置の製造コストとのバランスを適正とする観点からは、例えば、2.00g/L以下、1.50g/L以下、1.00g/L以下、0.80g/L以下、0.50g/L以下、0.30g/L以下、又は0.10g/L以下であってよい。
【0048】
本発明の排ガス浄化触媒装置は、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子以外の貴金属を、実質的に含まないことが好ましい。「排ガス浄化触媒装置が、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子以外の貴金属を、実質的に含まない」とは、排ガス浄化触媒装置に含まれる全貴金属質量のうち、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子以外の貴金属の質量の占める割合が、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、若しくは0.1質量%以下であるか、又は排ガス浄化触媒装置が、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子以外の貴金属を全く含まないことを意味する。
【0049】
〈SCR触媒層〉
本発明の排ガス浄化触媒装置は、直接担持された触媒貴金属粒子を含む基材上に、SCR触媒層を有する。このSCR触媒層は、Cu又はFeでドープされたゼオライトを含む。SCR触媒層は、例えば、Cu又はFeでドープされたゼオライト以外の無機酸化物、バインダー等の任意成分を更に含んでいてよい。
【0050】
(Cu又はFeでドープされたゼオライト)
SCR触媒層において、Cu又はFeでドープされたゼオライトは、NOxのNH3による選択還元触媒として機能する。
【0051】
SCR触媒層におけるゼオライトの結晶構造は任意である。本発明に適用可能なプロトンゼオライトの結晶構造を、それぞれの構造コード(カッコ内に記載)とともに示せば、例えば、A型(LTA)、フェリエライト(FER)、MCM-22(MWW)、ZSM-5(MFI)、モルデナイト(MOR)、L型(LTL)、X型又はY型(FAU)、ベータ型(BEA)、チャバサイト(CHA)等であってよく、CDO型、GON型等であってよい。
【0052】
本明細書では、Cu又はFeでドープされたゼオライトについて、母体ゼオライトの構造コードの前に「Cu-」又は「Fe-」を付して参照する。例えば、チャバサイト型の母体ゼオライトに、Cuがドープされたものを、「Cu-CHA型ゼオライト」と表記する。
【0053】
本発明におけるSCR触媒層は、Cu-CHA型ゼオライト、Cu-BEA型ゼオライト、Fe-MFI型ゼオライト、及びFe-BEA型ゼオライトから選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0054】
ゼオライトに対するCu又はFeのドープ量は、Cu又はFeでドープされたゼオライトの全質量を基準として、十分に高いNOx還元浄化活性を確保する観点から、Cu及びFeそれぞれ独立に、例えば、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、又は3.0質量%以上であってよい。
【0055】
ゼオライトに対するCu又はFeのドープ量の上限値については、NOx還元浄化活性を高める観点らの制限はないが、このドープ量を過度に増やしても、NOx還元浄化活性が無制限に上昇するわけではない。したがって、排ガス浄化触媒装置の適正な製造コストを維持する観点から、ゼオライトに対するCu又はFeのドープ量は、Cu又はFeでドープされたゼオライトの全質量を基準として、Cu及びFeそれぞれ独立に、例えば、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
【0056】
Cu又はFeでドープされたゼオライトの量は、基材1L当たりの当該ゼオライトの質量として、十分に高いNOx選択還元浄化能を確保する観点からは、例えば、30g/L以上、40g/L以上、50g/L以上、60g/L以上、70g/L以上、又は80g/L以上であってよく、例えば、触媒装置の圧力損失を低減する観点から、例えば、200g/L以下、150g/L以下、120g/L以下、110g/L以下、100g/L以下、又は90g/L以下であってよい。
【0057】
(Cu又はFeでドープされたゼオライト以外の無機酸化物)
SCR触媒層は、Cu又はFeでドープされたゼオライト以外の無機酸化物を更に含んでいてもよい。SCR触媒層に含まれる無機酸化物粒子は、例えばアルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、希土類元素等から選択される1種又は2種以上の元素の酸化物の粒子であってよい。無機酸化物粒子として、具体的には例えば、アルミナ粒子、セリア粒子、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子等が挙げられる。
【0058】
(バインダー)
SCR触媒層は、バインダーを更に含んでいてもよい。バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、シリカゾル、チタニアゾル等が挙げられる。
【0059】
〈OSC層〉
本発明の排ガス浄化触媒装置は、セリアを含むOSC層を更に有していてよい。
【0060】
(セリア)
OSC層は、セリアを含む。
【0061】
OSC層のセリア量は、十分に高いOSC能を確保する観点から、基材1L当たりのセリア量として、例えば、1g/L以上、3g/L以上、5g/L以上、又は7g/L以上であってよい。一方で、触媒装置の圧力損失を低減する観点から、基材1L当たりのセリア量は、例えば、50g/L以下、40g/L以下、30g/L以下、20g/L以下、15g/L以下、又は10g/L以下であってよい。
【0062】
OSC層のセリアは、セリア単独の形態であってもよいし、セリア-ジルコニア複合酸化物の形態でOSC層に含まれていてもよいし、これらの混合物であってもよい。OSC層に含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物中のセリア含量は、例えば、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0063】
上述したように、OSC層は、酸素吸蔵放出能を示し、基材上に直接担持された触媒貴金属粒子のNH3酸化浄化活性を向上させる機能を有する。したがって、このOSC層は、触媒貴金属粒子に近い場所に配置されることが好ましく、例えば、基材と、SCR触媒層との間に存在していてよい。
【0064】
(任意成分)
OSC層は、セリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物以外の任意成分を含んでいてよい。OSC層の任意成分は、例えば、セリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物以外の無機酸化物、バインダー等であってよい。
【0065】
OSC層に含まれる、セリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物以外の無機酸化物粒子は、例えばアルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、希土類元素(ただし、セリウムを除く)等から選択される1種又は2種以上の元素の酸化物の粒子であってよい。無機酸化物粒子として、具体的には例えば、アルミナ粒子、ジルコニア粒子等が挙げられる。
【0066】
OSC層に含まれるバインダーとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、シリカゾル、チタニアゾル等が挙げられる。
【0067】
《排ガス浄化触媒装置の製造方法》
本発明の排ガス浄化触媒装置は、上記の構成を有する限り、任意の方法で製造されてよい。
【0068】
しかしながら、本発明の排ガス浄化触媒装置は、例えば、以下:
基材上に、触媒貴金属粒子を直接担持すること(触媒貴金属粒子担持工程)、及び
触媒貴金属粒子が直接担持された基材上に、SCR触媒層を形成すること(SCR触媒層形成工程)
を含む、本発明の排ガス浄化触媒装置の製造方法によって製造されてよい。
【0069】
本発明の排ガス浄化触媒装置の製造方法は、例えば、触媒貴金属粒子担持工程の後、SCR触媒層形成工程の前に、
OSC層を形成すること(OSC層形成工程)
を更に含んでいてもよい。
【0070】
(触媒貴金属粒子担持工程)
本工程では、基材上に、触媒貴金属粒子を直接担持する。
【0071】
基材は、所望の排ガス浄化触媒装置における基材に応じて、適宜に選択されてよい。例えば、コージェライト製のストレートフロー型モノリスハニカム基材であってよい。
【0072】
この基材上に、触媒貴金属前駆体を含む塗工液をコートし、焼成することによって、基材上に触媒貴金属粒子が、直接担持される。コート後、焼成前に、必要に応じて、コート層の乾燥を行ってもよい。
【0073】
塗工液中の触媒貴金属前駆体としては、所望の触媒貴金属の、例えば、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、錯化合物等であってよい。錯化合物は、例えば、テトラアンミン錯イオンを含む錯化合物等であってよい。
【0074】
塗工液の溶媒は、水、若しくは水性有機溶媒、又はこれらの混合物であってよく、典型的には水である。
【0075】
塗工液のコート、並びにコート後の乾燥及び焼成は、それぞれ、公知の方法に準じて行われてよい。
【0076】
(SCR触媒層形成工程)
本工程では、触媒貴金属粒子が直接担持された基材上に、SCR触媒層を形成する。
【0077】
本工程は、例えば、触媒貴金属粒子が直接担持された基材上に、Cu又はFeでドープされたゼオライト、及び必要に応じてこれ以外の任意成分を含むスラリーをコートし、焼成することによって、行われてよい。コート後、焼成前に、必要に応じて、コート層の乾燥を行ってもよい。
【0078】
スラリーの分散媒は、水、若しくは水性有機溶媒、又はこれらの混合物であってよく、典型的には水である。
【0079】
スラリーのコート、並びにコート後の乾燥及び焼成は、それぞれ、公知の方法に準じて行われてよい。
【0080】
(OSC層形成工程)
本工程は、OSC層を形成する工程である。こOSC層形成工程は、例えば、触媒貴金属粒子担持工程の後、SCR触媒層形成工程の前に、行われてよい。
【0081】
本工程は、含有される成分を、所望のOSC層に応じて適宜に変更する他は、SCR触媒層形成工程と同様に行われてよい。
【実施例】
【0082】
《触媒コート層形成用スラリーの調製》
(1)Pt含有溶液の調製
(1-1)Pt含有溶液A1
テトラアンミン白金(II)ジクロリド水溶液(金属Pt換算0.2g)に、純水400g、及び有機多糖類を加えて3時間撹拌混合してして、Pt含有溶液A1を得た。
【0083】
(1-2)Pt-Pd含有溶液A2
Pt含有溶液A1に、テトラアンミンパラジウム(II)ジクロリド水溶液(金属Pd換算0.02g)を更に加えて溶解させ、Pt-Pd含有溶液A2を得た。
【0084】
(1-3)Pt-Pd含有溶液A3
Pt含有溶液A1に、テトラアンミンパラジウム(II)ジクロリド水溶液(金属Pd換算0.01g)を更に加えて溶解させ、Pt-Pd含有溶液A3を得た。
【0085】
(2)ゼオライト含有スラリーの調製
(2-1)ゼオライト含有スラリーB1
Cu-CHA型ゼオライト(Cuドープ量5質量%、SAR8)85g、及びシリコーンバインダーゾル15gを、純水200g中に分散させて、ゼオライト含有スラリーB1を得た。
【0086】
(2-2)ゼオライト含有スラリーB2
Cu-CHA型ゼオライトに代えて、Cu-BEA型ゼオライト(Cuドープ量5.9質量%、SAR25)85gを使用した他は、ゼオライト含有スラリーB1の調製と同様に操作して、ゼオライト含有スラリーB2を得た。
【0087】
(2-3)ゼオライト含有スラリーB3
Cu-CHA型ゼオライトに代えて、Fe-MFI型ゼオライト(Feドープ量2.0質量%、SAR30)85gを使用した他は、ゼオライト含有スラリーB1の調製と同様に操作して、ゼオライト含有スラリーB3を得た。
【0088】
(2-4)ゼオライト含有スラリーB4
Cu-CHA型ゼオライトに代えて、Fe-BEA型ゼオライト(Feドープ量5.0質量%、SAR25)85gを使用した他は、ゼオライト含有スラリーB1の調製と同様に操作して、ゼオライト含有スラリーB4を得た。
【0089】
(3)CZ含有スラリー
セリア-ジルコニア複合酸化物(セリア含量56.5質量%)(CZ)15gを水に分散させて、CZ含有スラリーを得た。
【0090】
(4)Pt/Al2O3含有スラリー
テトラアンミン白金(II)ジクロリド水溶液(金属Pt換算0.1g)を、純水45g中に溶解して、水溶液とした。この水溶液に、アルミナ15gを添加して1時間撹拌した。次いで、120°にて5時間加熱して、水を蒸発させた後、500℃にて1時間焼成して、Pt/Al2O3粉末を得た。得られたPt/Al2O3粉末を、純水中に分散させ得ることにより、Pt/Al2O3含有スラリーを調製した。
【0091】
《実施例1》
(1)排ガス浄化触媒装置の製造
ストレートフロー型のコージェライト製ハニカム基材(容量約1L)に、ハニカム基材の全長にわたって、Pt含有溶液A1をコートし、500℃にて1時間焼成して、ハニカム基材上に、Ptから成る触媒貴金属粒子を直接担持した。
【0092】
次いで、触媒貴金属粒子が直接担持されたハニカム基材上に、該ハニカム基材の全長にわたって、ゼオライト含有スラリーB1をコートし、500℃にて1時間焼成して、SCR触媒層を形成することにより、実施例1の排ガス浄化触媒装置を製造した。
【0093】
(2)排ガス浄化触媒装置の評価
(2-1)触媒貴金属粒子の平均粒径の測定
触媒貴金属粒子(Pt粒子又はPt-Pd粒子)の平均粒径は、一酸化炭素(CO)パルス吸着法により測定した。
上記で得られた排ガス浄化触媒装置を、0.5mm以下の細片に粉砕して得られた測定試料につき、以下の条件による前処理を行った後、COパルス吸着法によってガス化学吸着測定を行ってCOの吸着量を調べ、Pt1分子にCOが1個吸着すると仮定して算出したPtの吸着表面積と、排ガス浄化触媒装置におけるPtの担持量とから、Ptの平均粒径を算出した。
【0094】
試料の前処理条件は、以下のとおりである。
第1ステップ:40℃/分の昇温速度で、室温から400℃まで昇温させつつ、10体積%の酸素(O2)を含むHeガスを流通
第2ステップ:400℃に到達後、同温度を維持して、15分間、10体積%の酸素(O2)を含むHeガスを流通
第3ステップ:400℃を維持して、15分間、ヘリウム(He)を流通
第4ステップ:400℃を維持して、15分間、10体積%の水素(H2)を含むHeガスを流通
第5ステップ:400℃を維持して、15分間、Heを流通
第6ステップ:35℃/分の降温速度で、400℃から50℃まで降温させつつ、Heを流通
第7ステップ:50℃を維持して、10分間、10体積%の二酸化炭素(CO2)を含むHeガスを流通
第8ステップ:50℃を維持して、10分間、Heを流通
【0095】
COパルス吸着法におけるプルーブガスは、1体積%のCOを含むHeガスとした。また、CO吸着量は、TCD検出器による熱伝導度測定から算出した。
【0096】
(2-2)排ガス浄化能の評価
得られた排ガス浄化触媒装置に、水分濃度10体積%の空気を流通させながら、630℃にて50時間加熱することにより、水熱耐久処理を行った。
【0097】
水熱耐久処理後の排ガス浄化触媒装置に、濃度既知のNH3及びNOxを含むモデルガスを導入して流通させ、排出ガス中のNH3及びNOx濃度を測定し、以下の数式によって算出される、NH3酸化率及びN2O選択率を、それぞれ求めた。
NH3酸化率(%)={(導入ガス中のNH3濃度-排出ガス中のNH3濃度)/導入ガス中のNH3濃度}×100
N2O選択率(%)={排出ガス中のN2O濃度×2/(導入ガス中のNH3濃度-排出ガス中のNH3濃度)}×100
【0098】
モデルガスの導入条件は、以下のとおりに設定した:
モデルガス導入温度:250℃
モデルガスの組成:NO:0ppm、NH3:500ppm、O2:10%、H2O:5%、及びN2バランス
モデルガス導入時の空間速度:60,000hr-1
【0099】
実施例1の排ガス浄化触媒装置について、上記の条件で測定された、NH3酸化率及びN2O選択率を表1に示す。
【0100】
《実施例2》
Pt含有溶液A1に代えて、Pt-Pd含有溶液A2を用い、ハニカム基材上に直接担持する触媒貴金属粒子をPt-Pd合金粒子(Pd 9.1質量%)とした他は、実施例1と同様に操作して、実施例2の排ガス浄化触媒装置を製造し、評価した。評価結果は、表1に示す。
【0101】
《実施例3》
実施例2と同様にして製造した排ガス浄化触媒装置を、630℃にて50時間更に焼成することにより、実施例3の排ガス浄化触媒装置を製造した。
【0102】
得られた排ガス浄化触媒装置につき、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果は、表1に示す。
【0103】
《実施例4》
Pt含有溶液A1に代えて、Pt-Pd含有溶液A3を用い、ハニカム基材上に直接担持する触媒貴金属粒子をPt-Pd合金粒子(Pd 16.7質量%)とした他は、実施例1と同様に操作して、実施例4の排ガス浄化触媒装置を製造し、評価した。評価結果は、表1に示す。
【0104】
《実施例5~7》
ゼオライト含有スラリーB1に代えて、ゼオライト含有スラリーB2(実施例5)、B3(実施例6)、及びB4(実施例7)を、それぞれ用いた他は、実施例1と同様に操作して、実施例5~7の排ガス浄化触媒装置を製造し、評価した。評価結果は、表1に示す。
【0105】
《実施例8》
(1)排ガス浄化触媒装置の製造
実施例1で使用したのと同じタイプのコージェライト製ハニカム基材(容量約1L)に、ハニカム基材の全長にわたって、Pt含有溶液A1をコートし、500℃にて1時間焼成して、ハニカム基材上に、Ptから成る触媒貴金属粒子を直接担持した。次いで、触媒貴金属粒子が直接担持されたハニカム基材上に、該ハニカム基材の全長にわたって、CZ含有スラリーをコートし、乾燥させて、OSC層を形成した。更に、このOSC層上に、ハニカム基材の全長にわたって、ゼオライト含有スラリーB1をコートし、500℃にて1時間焼成して、SCR触媒層を形成することにより、実施例8の排ガス浄化触媒装置を製造した。
【0106】
(2)排ガス浄化触媒装置の評価
得られた排ガス浄化触媒装置につき、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果は、表1に示す。
【0107】
《実施例9》
Pt含有溶液A1に代えて、Pt-Pd含有溶液A2を用い、ハニカム基材上に直接担持する触媒貴金属粒子をPt-Pd合金粒子(Pd 9.1質量%)とした他は、実施例8と同様に操作して、実施例9の排ガス浄化触媒装置を製造し、評価した。評価結果は、表1に示す。
【0108】
《比較例1》
(1)排ガス浄化触媒装置の製造
実施例1で使用したのと同じタイプのコージェライト製ハニカム基材(容量約1L)に、排ガス流れの下流端から基材長さの80%の範囲で、Pt/Al2O3含有スラリーをコートし、500℃にて1時間焼成して、ハニカム基材上に、Pt/Al2O3を含む、NH3酸化触媒層を形成した。
【0109】
次いで、NH3酸化触媒層が形成されたハニカム基材上に、排ガス流れの上流端から基材全長にわたって、ゼオライト含有スラリーB1をコートし、500℃にて1時間焼成して、SCR触媒層を形成することにより、比較例1の排ガス浄化触媒装置を製造した。
【0110】
(2)排ガス浄化触媒装置の評価
得られた排ガス浄化触媒装置につき、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果は、表1に示す。
【0111】
《比較例2》
比較例1と同様にして製造した排ガス浄化触媒装置を、630℃にて50時間更に焼成することにより、比較例2の排ガス浄化触媒装置を製造した。
【0112】
得られた排ガス浄化触媒装置につき、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果は、表1に示す。
【0113】
《比較例3》
実施例1と同様にして製造した排ガス浄化触媒装置を、630℃にて50時間更に焼成することにより、比較例3の排ガス浄化触媒装置を製造した。
【0114】
得られた排ガス浄化触媒装置につき、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果は、表1に示す。
【0115】
【0116】
表1を参照すると、以下のことが理解される。
【0117】
触媒貴金属粒子の平均粒径が大きい、比較例3の排ガス浄化触媒装置では、NH3酸化率が、15%と低かった。一方、触媒貴金属粒子の平均粒径が小さい、比較例1及び2の排ガス浄化触媒装置では、N2O選択率が86%(比較例1)又は60%(比較例2)と高かった。
【0118】
これらに対して、触媒貴金属粒子の平均粒径が30nm以上120nm以下である、本発明の実施例1~9の排ガス浄化触媒装置では、NH3酸化率が83%以上と高く、かつ、N2O選択率が58%以下と低い値を示し、NH3酸化浄化能、及びN2Oスリップ特性の双方に優れていた。これらの実施例のうち、触媒貴金属粒子に含まれるPd量が0.15g/L以下である、実施例1~3及び5~9では、N2O選択率が44%以下と、極めて低い値を示した。
【0119】
また、本発明の排ガス浄化触媒装置では、SCR触媒層に含まれるゼオライトの種類を、Cu-CHA型(実施例1~4、8、及び9)、Cu-BEA型(実施例5)、Fe-MFI型(実施例6)、及びFe-BEA(実施例7)に変更した場合でも、NH3酸化浄化能、及びN2Oスリップ特性の双方に優れることが確認された。
【0120】
更に、実施例8及び9の排ガス浄化触媒装置の評価結果に見られるように、基材と、SCR触媒層との間に、OSC層を配置した場合、NH3酸化浄化能、及びN2Oスリップ特性が損なわれることはなく、特に、NH3酸化浄化能は、極めて高い性能を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0121】
10 基材
11 触媒貴金属粒子
20 SCR触媒層
30 OSC層
101、102 排ガス浄化触媒装置