(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】光線力学治療装置及び光線力学治療装置用カートリッジ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20230130BHJP
【FI】
A61M1/36 185
(21)【出願番号】P 2021501438
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007378
(87)【国際公開番号】W WO2020174589
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】梶原 新平
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-158717(JP,A)
【文献】米国特許第05707594(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108434562(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61N 5/06-08
A61L 2/08-2/10
B01J 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き芯と、前記巻き芯の周囲を周回するよう配置されたチューブと、を含むカートリッジと、
前記カートリッジを収納する筐体と、
前記筐体内に配置され、前記チューブに対して光を照射する光源と、を含み、
前記巻き芯の周囲に配置された前記チューブの延伸方向に直交する断面は、第1の方向の第1の寸法と、該第1の寸法より小さい、該第1の方向に直交する第2の方向の第2の寸法を有するとともに、前記第2の方向は前記
光源に向く
方向である、
光線力学治療装置。
【請求項2】
前記巻き芯は、前記チューブの一部が第1の平面に沿って延伸するよう前記チューブを保持する、
請求項1に記載の光線力学治療装置。
【請求項3】
前記チューブは、前記第1の平面に沿って並行する、第1の部分及び第2の部分を有する、
請求項2に記載の光線力学治療装置。
【請求項4】
前記第1の部分と、前記第2の部分と、が隙間を空けて配置され、
前記チューブが、前記第1の平面の裏側に位置する第2の平面に沿って延伸する第3の部分を更に有し、
前記第1の平面に直交する方向から見て、前記第1の部分と前記第2の部分との間に、前記第3の部分の少なくとも一部が位置し、
前記巻き芯は、前記第3の部分より前記第1の平面側の部分が透光性部材からなる、
請求項3に記載の光線力学治療装置。
【請求項5】
前記透光性部材は、前記光源が照射する光の中心波長に対する透過率が50%以上である、
請求項4に記載の光線力学治療装置。
【請求項6】
前記筐体には冷却ファンが配置され、
前記第1の部分と前記第2の部分は、冷却ファンの設置方向に応じて、直線的に延伸する、
請求項3乃至5のいずれか一つに記載の光線力学治療装置。
【請求項7】
前記光源は、前記第1の平面と対向する平面上に配置された複数の発光素子を含む、
請求項2乃至6のいずれかに記載の光線力学治療装置。
【請求項8】
前記筐体の内側面と前記カートリッジの側面とは、隙間をあけて配置される、
請求項6及び7に記載の光線力学治療装置。
【請求項9】
前記巻き芯は、少なくとも前記チューブが配置された部分に鏡面を有する、
請求項1乃至8のいずれかに記載の光線力学治療装置。
【請求項10】
前記巻き芯との間で前記チューブを挟持するカバーを更に含み、
前記カバーにおける前記チューブと接触する部分が平坦面である、
請求項1乃至9のいずれかに記載の光線力学治療装置。
【請求項11】
前記巻き芯は筒状であり、
その一端から他端までを貫通する空洞部を有する、
請求項1乃至10のいずれかに記載の光線力学治療装置。
【請求項12】
巻き芯と、
前記巻き芯の周囲を周回するよう配置されたチューブと、を含み、
前記巻き芯の周囲に配置された前記チューブの延伸方向に直交する断面は、第1の方向の第1の寸法と、該第1の寸法より小さい、該第1の方向に直交する第2の方向の第2の寸法を有するとともに、前記第2の方向は前記
光源に向く
方向である、
光線力学治療装置用カートリッジ。
【請求項13】
前記巻き芯は、前記チューブの一部が第1の平面に沿って延伸するよう前記チューブを保持する、
請求項12に記載の光線力学治療装置用カートリッジ。
【請求項14】
前記チューブは、前記第1の平面に沿って並行する、第1の部分及び第2の部分を有する、
請求項13に記載の光線力学治療装置用カートリッジ。
【請求項15】
前記第1の部分と、前記第2の部分と、が隙間を空けて配置され、
前記チューブが、前記第1の平面の裏側に位置する第2の平面に沿って延伸する第3の部分を更に有し、
前記第1の平面に直交する方向から見て、前記第1の部分と前記第2の部分との間に、前記第3の部分の少なくとも一部が位置し、
前記巻き芯は、前記第3の部分より前記第1の平面側の部分が透光性部材からなる、
請求項14に記載の光線力学治療装置用カートリッジ。
【請求項16】
前記透光性部材は、前記チューブに照射される光の中心波長に対する透過率が50%以上の部材である、
請求項15に記載の光線力学治療装置用カートリッジ。
【請求項17】
前記巻き芯は、少なくとも前記チューブが配置された部分に鏡面を有する、
請求項12乃至16のいずれかに記載の光線力学治療装置用カートリッジ。
【請求項18】
前記巻き芯との間で前記チューブを挟持するカバーを更に含み、
前記カバーにおける前記チューブと接触する部分が平坦面である、
請求項12乃至17のいずれかに記載の光線力学治療装置用カートリッジ。
【請求項19】
前記巻き芯は筒状であり、
その一端から他端までを貫通する空洞部を有する、
請求項12乃至18のいずれかに記載の光線力学治療装置用カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線力学治療装置及び光線力学治療装置用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1においては、複数のLEDとリード線とを収容した、直線状に延伸する光バーと、この光バーの周囲に巻回され、患者の循環系に連結されたチューブと、を含む光線力学治療装置が開示されている。チューブには患者の血液が流れ、血液にLEDから放出された光が照射される。血液中には光感受性物質が吸収されており、LEDからの光照射により、血液中の望ましくない成分を破壊し、又は影響を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の光線力学治療装置では、チューブにより形成される断面円形の流路を血液が流れ、該チューブの側方からLEDの光を照射する構成となっているが、この構成では血液に光を効率的に照射できないという問題がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、患者の血液に光を効率的に照射できる光線力学治療装置及び光線力学治療用カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る光線力学治療装置は、巻き芯と、前記巻き芯の周囲を周回するよう配置されたチューブと、を含むカートリッジと、前記カートリッジを収納する筐体と、前記筐体内に配置され、前記チューブに対して光を照射する光源と、を含み、前記巻き芯の周囲に配置された前記チューブの延伸方向に直交する断面は、第1の方向の第1の寸法と、該第1の寸法より小さい、該第1の方向に直交する第2の方向の第2の寸法を有するとともに、前記第2の方向は前記巻き芯の外方を向く。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態に係る光線力学治療の概要を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る光線力学治療装置を示す外観斜視図である。
【
図3】実施形態に係るカートリッジを示す外観斜視図である。
【
図4】実施形態に係るカートリッジの内部構造を示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係る光線力学治療装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図7】
図2のVI-VI線による部分断面図である。
【
図8】実施形態に係る光線力学治療装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る光線力学治療の概要を示す模式図である。
図1に示す例では、患者4が血液がん患者であり、腫瘍細胞5を有する例を示す。患者4に経口吸収性を有するアミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid: 5-ALA)を投与すると、細胞内ミトコンドリアにてヘムが生合成される過程において、アミノレブリン酸が、光感受性物質であるプロトポルフィリンIX(protoporphyrin IX: PpIX)に代謝される。プロトポルフィリンIXは、腫瘍細胞特異的にミトコンドリア内に蓄積する特性を有するため、患者4の腫瘍細胞5に蓄積される。
【0010】
患者4の循環器は、血液回路6、照射用血液回路7を介して、本実施形態の光線力学治療装置100に接続されている。患者4の血液には、プロトポルフィリンIXが蓄積された腫瘍細胞5が含まれており、当該血液が、血液回路6に接続された体外循環ポンプ8の働きにより、血液回路6、照射用血液回路7を介して本開示の光線力学治療装置100に流入する。光線力学治療装置100において、プロトポルフィリンIXが吸収しうる波長領域(例えば、410nm付近、500~650nm付近)の光が照射されると、血液に含まれるプロトポルフィリンIXが励起一重項状態となる。プロトポルフィリンIXは、励起一重項状態から励起三重項状態を経て基底状態に戻る。その際のエネルギーを吸収した酸素が一重項酸素となり、血液中の腫瘍細胞5を破壊し、又は影響を与えることができる。
【0011】
光照射が行われた血液は、照射用血液回路7、血液回路6を介し、体外循環ポンプ8の働きにより、患者4の循環器に戻される。
【0012】
なお、上記例においては、光感受性物質の一例として、プロトポルフィリンIXを用いたが、本開示はそれに限定されない。また、上記例においては、患者4が血液がん患者であり、腫瘍細胞5を有する例を示したが、本開示の対象は腫瘍細胞5に限定されず、光感受性物質が蓄積される血液中の望ましくない成分であれば、本開示の対象となり得る。
【0013】
図2は、本実施形態の光線力学治療装置100を示す外観斜視図である。
図2に示すように、本実施形態の光線力学治療装置100は、カートリッジ10と、カートリッジ10を収納する筐体50と、を含む。光線力学治療装置100は、図示しない電源装置、制御装置、血液循環ポンプなども、この他に含む。筐体50は薄型箱状であり、LED光源を含む発光部をそれぞれ内面に備え、左右に配置されて互いに対向する左側板50L及び右側板50Rを備えている。筐体50の上部は上板52Uが、下部は底板52Bがそれぞれ覆っている。また、裏面は背板55が覆っている。背板55には複数のファン70が設けられており、上記発光部から発せられる熱を外部に強制排出するようになっている。また前面の開口51も、光漏れを防止するために図示しない蓋により閉塞される。この蓋には吸気口が設けられてよい。
【0014】
図3は、カートリッジ10の外観斜視図である。また、
図4は、カートリッジ10の内部構造を示す斜視図である。
図5は、カートリッジ10に設けられる巻き芯20を示す斜視図である。
図3に示すようにカートリッジ10はカバー40により全体が覆われており、全体として筐体50に収容可能なサイズの薄型箱状である。特に、カバー40は、左右に配置され、対向するように設けられる前後端が湾曲した概略平板状の左カバー40L及び右カバー40Rを備えている。カバー40の前端にはハンドルが設けられる。
図4は、カバー40を取り外してカートリッジ10を示している。カートリッジ10は、巻き芯20と、巻き芯20の周囲を周回するよう配置されたチューブ30と、を含む。巻き芯20は、
図5に示す外観を有しており、左右において互いに対向する平坦面を備えた構造体である左側板20L及び右側板20Rを有している。左側板20L及び右側板20Rの前端及び後端には、湾曲した壁部が形成されており、両壁は滑らかに並ぶように配置されており、水平方向の断面外形は、オーバル状、すなわち2つの対向する半円を平行な直線で接続した形状や、長方形の四隅を丸めた形状を有してる。チューブ30は巻き芯20の周りを所要回数(ここでは24回)だけ周回するのに十分な長さを有しており、
図4に示すように、途中で交差したり重なったりすることなく、巻き芯20の周りに巻かれている。特に、左側板20L及び右側板20Rのそれぞれの平坦面上に位置するチューブ30の複数部分(例えば示す第1部分31及び第2部分32)はそれぞれ直線的に伸び、且つ平行に配置されるようになっている。なお、平坦面上に位置するチューブ30の複数部分は、ここではそれぞれ水平方向に延伸するが、斜め方向に延伸してもよいのは勿論である。チューブ30の一端は血液循環ポンプに、他端は患者にそれぞれ取り付けられる。なお、筐体50の左側板50L及び右側板50Rの内面には、その上下端部にガイドレール53が設けられており、このガイドレール53に案内されて、カートリッジ10は筐体50に対して挿抜可能であり、患者ごとに使い捨てされる。
【0015】
図6は、本実施形態の光線力学治療装置100の内部構造を示す斜視図である。同図に示される光線力学治療装置100は、その内部構造を示すため、右側板50Rが取り外されている。同図及び
図4を参照して分かるように、カートリッジ10の右側板20Rに対向するようにして、筐体50の右側板50Rの内面には光源60が配置されており、この光源60がチューブ30に対して右方から光を照射する。カートリッジ10の左側板20Lに対向するようにして、筐体50の左側板50Lの内面にも光源60が配置されており、この光源60がチューブ30に対して左方からも光を照射する(
図7参照)。なお光源60は、一例として、LED素子などの多数の発光素子61を、基板上に例えばマトリクス状に配置することにより形成される。チューブ30には患者の血液が流れており、当該血液中には、光感受性物質が吸収されている。光源60からの光照射により、上述したとおり一重項酸素が発生し、血液中の望ましくない成分を破壊し、又は影響を与えることができる。
【0016】
図7は、
図2のVII-VII線における部分断面図である。同図には、チューブ30の延伸方向に直交する断面が示される。チューブ30の延伸方向に直交するチューブ30の断面は、巻き芯20の側面に平行な第1の方向の第1の寸法L1と、第1の方向に直交する第2の方向の第2の寸法L2と、を有する。第2の方向は、すなわち巻き芯20の外方向、すなわち対向配置された光源60の方向である。第1の寸法L1は、第1の方向の最大長さを意味し、第2の寸法L2は、第2の方向の最大長さを意味する。ここで第2の寸法L2は第1の寸法L1よりも小さい。チューブ30の断面外形が単体で(それ自体で)このような寸法を有するように、チューブ30として断面がオーバルリング状のチューブを用いてもよい。このオーバル形状としては楕円、2つの対向する半円を平行な直線で接続した形状、長方形の四隅を丸めた形状を採用してよい。また、断面が長方形リング状の角チューブを用いてもよい。或いは、チューブ30として丸チューブを用いるとともに、カバー40により、その表面を外方から押さえつけるようにすることで、カートリッジ20に装着された状態において、チューブ30の断面外形が上述した寸法を有するようにしてもよい。なお、チューブ自体が上記寸法の断面外形を有する場合にはカバー40は必須でない。
【0017】
このようにすることで、光源60が設けられた面(発光面)に対するチューブ30の投影面積を増やすことができ、チューブ30を流れる血液に光源60から光を効率的に照射できる。
【0018】
なお、
図7に示すようにカバー40の内面におけるチューブ30と接触する部分は、平坦に形成されているので、チューブ30における光源60側の形状を平坦に維持できる。また、チューブ30は平面部20A及び平面部20Bに配置されているので、チューブ30における光源60とは反対側の形状も平坦に維持できる。
【0019】
ここで巻き芯20の構造をさらに詳細に説明する。
図5に示すように、巻き芯20は左右2つの構造体である左側板20L及び右側板20Rを嵌め合わせて形成されており、全体として上下方向に貫通する空洞部23(
図7参照)を有する柱状をなす。巻き芯20の左側板20Rにはチューブ30の周回数に対応した数の平面部20Aが形成され、同様に巻き芯20の右側板20Lには同数の平面部20Bが形成されている。すべての平面部20Aは第1平坦面上に設けられており、同様にすべての平面部20Bは第2平坦面上に設けられている。第1平坦面及び第2平坦面は互いに平行であり、第1平坦面をその垂線方向に移動させた場所に第2平坦面が位置するよう、左側板20L及び右側板20Rが形成されている。平面部20Aは、それぞれ間隔をおいて第1平坦面に沿って直線的に伸び、且つ平行に配置されている。平面部Bも、それぞれ間隔をおいて第2平坦面に沿って直線的に伸び、且つ平行に配置されている。平面部20Aの間にはガイド壁22が立設されており、平面部20Bの間にもガイド壁22が立設されている。平面部20Aの前端と平面部20Bの前端とは曲面部20Cにより接続されており、平面部20Aの後端と平面部20Bの後端とは曲面部20Dにより接続されている。
【0020】
チューブ30の各部分(例えば第1部分31及び第2部分32)は、各平面部20A及びその上下に立設されたガイド壁22,22により区画される空間にはめ込まれ、また各平面部20B及びその上下に立設されたガイド壁22により区画される空間にはめ込まれ、全体として巻き芯20の周囲を周回するよう設けられる。上述のように、巻き芯20はカバー40により覆われ、チューブ30は平面部20Aや平面部20B、その上下に立設されたガイド壁22,22及びカバー40により囲まれた空間に配置される。ここで、チューブ30の側面はカバー40の内面に少なくとも部分的に接してよい。また、チューブ30の側面は平面部20Aや平面部20Bに少なくとも部分的に接してもよい。なお、平面部20A及び平面部20Bは、ここではそれぞれ水平方向に延伸するが、斜め方向に延伸してもよいのは勿論である。
【0021】
図7に示すように、各平面部20Aと右側板50Rの距離、各平面部20Bと左側板50Lの距離は等しい。これによりチューブ30の各部分において照射される光量を同等にすることができる。また、チューブ30と光源60とが近づきすぎてり、血液が温度上昇することがないようにできる。
【0022】
ここで、光線力学治療装置100の冷却構造について説明する。
図6に示すように、筐体50における背板55には冷却ファン70が配置されている。そして、
図7に示すように、開口51側から見て、左側板50Lの内面とカートリッジ10の左側面との間、右側板50Rとカートリッジ10との間には、それぞれ隙間がある。この隙間により、筐体50の内側面とカートリッジ10との間の空気が流れやすくなる。
【0023】
さらに、
図4及び
図5に示すように、カートリッジ30のうち、巻き芯20の平面部20A上に位置する各部分(例えば第1部分31と第2部分32)は、互いに並行するよう直線的に延伸している。ここで、それら直線部分におけるチューブ30の延伸方向は、冷却ファン70の設置方向(ファンの軸方向)である直線Xの方向に対応しており、好ましくは、両方向は一致している。こうすることにより、開口51から冷却ファン70に向かう空気、冷却ファン70から開口51に向かう空気がさらに円滑に流れる。
【0024】
冷却ファン70による空気の流れを円滑にすることで、カートリッジ30の温度上昇を抑制することができる。また、光源60の発光素子61としてLED素子を用いる場合などには、その温度変化により出射光の中心波長が変化する場合があるが、そのような中心波長の変化を抑制できる。
【0025】
なお、巻き芯20は上述のように上下方向に貫通する空洞部23を有している。この空洞部23によっても、カートリッジ10の廃熱を促進させることができる。
【0026】
なお、巻き芯20における平面部20Aや平面部20Bの少なくとも一部を鏡面にしてもよい。こうすれば、チューブ30を透過した光源60からの光が鏡面によって反射され、再度チューブ30に入射することになり、さらに効率的に光を血液に照射できる。
【0027】
図8は、光線力学治療装置100の変形例を示す断面図である。この変形例では左側板20Lの平面部20Bの間に追加平面部25が配置されている。この追加平面部25は平面部20Bと同一平面上に配置されてよい。同様に、右側板20Rの平面部20Aの間にも追加平面部25が配置されている。右側板20Rの追加平面部25も平面部20Aと同一平面上に配置されてよい。これら追加平面部25にはチューブ30が配置されない。
【0028】
この場合、平面部20Bの垂線方向、すなわち同図に示す第2の方向から見て、平面部20Bと、右側板20Rの追加平面部25と、が少なくとも部分的に重畳するようにしてよい。同様に、第2の方向から見て、平面部20Aと、左側板20Lの追加平面部25と、が少なくとも部分的に重畳するようにしてよい。この場合、左側板20L及び右側板20Rのそれぞれは透光性部材により形成される。或いは追加平面部25、平面部20A及び平面部20Bだけを透光性部材により形成してもよい。透光性部材としては、例えば、光源60が照射する光の中心波長に対する透過率が50%以上の部材を用いることが望ましい。或いは、光源60からの光をさらに効率よく裏面側に到達させるため、追加平面部25、平面部20A又は平面部20Bの少なくとも一部に開口を形成するようにしてよい。以上のようにすれば、並行するチューブ30の部分間を通って、光源60からの光が裏面側のチューブ30に照射されるようになる。
【0029】
以上説明した光線力学治療装置100によれば、患者の血液に光を効率的に照射することができる。なお、ここで開示した具体的構成は一例であり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、開示された実施形態を適宜変形してもよく、本開示による発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【0030】
なお、光源60の背面にペルチェ素子などの温度制御素子を配置するとともに、光源60の近傍に温度計を配置し、光源60の温度を一定にするよう温度制御素子の動作を制御してよい。すなわち、光源60の温度が基準値より高ければ温度制御素子により光源60を冷却したり、光源60の温度が基準値より低ければ温度制御素子により光源60を加熱したりして、光源60の温度を一定に保つようにしてよい。光源60に含まれるLED素子などの発光素子61はその温度により波長が変化する性質があるので、温度を一定に保つことにより、血液に照射する光の波長を一定に保つことができる。
【0031】
(付記)
本開示は、以下の内容も含む。
【0032】
(1)巻き芯と、前記巻き芯の周囲を周回するよう配置されたチューブと、を含むカートリッジと、
前記カートリッジを収納する筐体と、
前記筐体内に配置され、前記チューブに対して光を照射する光源と、を含み、
前記巻き芯は、前記チューブの一部が第1の平面に沿って延伸するよう前記チューブを保持し、
前記光源は、前記第1の平面と対向する平面上に配置された複数の発光素子を含む、
光線力学治療装置。
【0033】
(2)巻き芯と、
前記巻き芯の周囲を周回するよう配置されたチューブと、を含み、
前記巻き芯は、前記チューブの一部が第1の平面に沿って延伸するよう前記チューブを保持する、
光線力学治療装置用カートリッジ。
【0034】
上記(1)、(2)のような構成とすることにより、光源60から第1の平面部20Aに配置されたチューブ30までの光路長を容易に一定にすることができ、チューブ30を流れる血液に照射される光の光量を一定にすることが可能となる。その結果として、光感受性物質による光吸収量を一定に保つことができるため、血液中の望ましくない成分を破壊し、又は影響を与える効果を一定以上に担保することができる。
【0035】
また、チューブ30と複数の発光素子61との距離を一定に保つことにより、チューブ30と複数の発光素子61とが近づきすぎるのを抑制することができる。その結果として、チューブ30を流れる血液の温度が局所的に上昇することを抑制することができる。これらの効果は、チューブ30の寸法L1及び寸法L2の関係によらず得ることができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
4 患者、5 腫瘍細胞、6 血液回路、7 照射用血液回路、8 体外循環ポンプ、10 カートリッジ、20 巻き芯、22 ガイド部、23 空洞部、30 チューブ、40 カバー、50 筐体、60 光源、70 冷却ファン、100 光線力学治療装置、L1 第1の寸法、L2 第2の寸法。