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▶ ムスタング サンプリング, エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】液体気化装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/44 20060101AFI20230130BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20230130BHJP
   F17C 9/02 20060101ALN20230130BHJP
【FI】
G01N1/44
G01N1/10 R
F17C9/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021515584
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019047841
(87)【国際公開番号】W WO2020068325
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】62/735,375
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/542,666
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515256545
【氏名又は名称】ムスタング サンプリング, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】MUSTANG SAMPLING, LLC
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 490, Ravenswood, West Virginia 26164 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン, ケネス オー.
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】パルチ, ウィリアム シー.
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0151427(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0263680(US,A1)
【文献】特開2017-161312(JP,A)
【文献】特開平08-061597(JP,A)
【文献】特表2005-511972(JP,A)
【文献】実開平02-048861(JP,U)
【文献】米国特許第03401565(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/22
G01N 30/88
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分炭化水素含有液体混合物を気化させるための気化器であって、
第1の端部を画定する第1のセグメントと第2の端部を画定する第2のセグメントとを有する概ね細長い管状本体と、
前記第1のセグメント内に一体的に形成された液体通路に接続された液体サンプルポートであって、第液体サンプルポートが液体流入を実現する、液体サンプルポートと、
前記気化器の中心軸に沿ってほぼ長手方向に配置され、実質的に前記管状本体の伸長方向に延びる液体チャネルであって、第1の端部と第2の端部とを有し、前記液体チャネルの前記第1の端部が、前記液体通路と交差し、前記液体サンプルポートからその長さに沿って液体が通る流路を提供する、液体チャネルと、
前記管状本体の前記第1のセグメント内に配置され、前記液体チャネルと交差するように構成された液体流れ制御要素と、
前記管状本体の外面から前記液体チャネルに向かって径方向深さだけ内側に延びるように形成され、熱放射の入射角を変化させ反射損失を改善する非平行な上下面を画定し、前記液体チャネルの前記長さに沿って前記液体流れ制御要素の下方に配置されたギャップと、
前記管状本体の前記第2のセグメントの内側にあり、前記ギャップの下方に配置され、前記管状本体の第2の端部から前記液体チャネルの第2の端部まで延びる気化器コアと、
前記気化器コアに挿入されるように寸法決めされ、前記管状本体に密封固定可能な加熱アセンブリであって、前記液体チャネルから導入された液体を気化させるフラッシュ蒸留発熱体を有する加熱アセンブリと、
前記管状本体の前記第2のセグメント内に形成され、前記管状本体の前記第2の端部から離隔し、前記気化器コアと交差する蒸気吐出口ポートと、を含む、
ことを特徴とする気化器。
【請求項2】
前記本体が円筒形であり、前記第1のセグメントが前記第2のセグメントの上方に配置された上部セグメントであることを特徴とし、さらに前記円筒形本体が、前記第1のセグメント内に一体的に形成された前記液体通路に接続され、液体吐出を可能にする第2の液体サンプルポートと、前記ギャップ内に配置された断熱材とを有することを特徴とする請求項1に記載の気化器。
【請求項3】
前記ギャップの前記非平行な表面が、平坦かつ平面状のテーパ状であり、前記液体サンプルポートと前記第2の液体サンプルポートとが、互いに対して直交して配置される、ことを特徴とする請求項2に記載の気化器。
【請求項4】
前記第2のセグメントから前記第1のセグメントへの熱伝達を最小限に抑えるために、前記断熱材に埋め込まれた環状の液体流体管と、前記ギャップの上方に位置する前記液体チャネルに接続された、または液体流入を実現する前記液体サンプルポートに近接して配置され前記液体サンプルポート接続された液体取り出し部とを有する能動的冷却回路をさらに含むことを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の気化器。
【請求項5】
前記液体サンプルポートが前記円筒形本体の軸に沿って配置されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の気化器。
【請求項6】
多成分炭化水素含有液体混合物を気化させるための気化器装置であって、
外面を有する本体と、
前記本体の前記外面を通って前記本体に液体サンプルを受け入れるように構成された1つ以上のポートと、
前記1つ以上のポートから前記液体サンプルを受け入れるように構成された前記本体の内部のチャネルと、
前記本体の前記外面に沿って形成され、前記チャネルを径方向に取り囲み、断熱材を受け入れて保持するように構成された凹んだ先細の断熱ギャップと、
前記本体内に固定され、前記チャネルを出る前記液体サンプルを気化させるように構成
された加熱アセンブリと、
前記気化した液体サンプルを、前記本体の前記外面を通って前記本体から送出するように構成された出口ポートと、を含む
ことを特徴とする気化器装置。
【請求項7】
前記加熱アセンブリが、発熱体と、前記発熱体を囲む金属ハウジングとを含むことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記発熱体が金属シース内に封入されていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記金属ハウジングが少なくとも部分的に金属メッシュによって囲まれていることを特徴とする請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記凹んだ先細の断熱ギャップに絶縁材料が充填されていることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記絶縁材料が、アルミナシリケート、ケイ酸カルシウム及び発泡セラミックスからなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記凹んだ先細の断熱ギャップが、前記チャネルに向かって内側に先細になっていることを特徴とする請求項6~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記チャネルと交差して、前記チャネルに入る前記液体サンプルの流れを制御するように構成された液体流れ制御要素をさらに含むことを特徴とする請求項6~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記加熱アセンブリが、気化器コア内に固定され、前記気化器コアは、前記本体内に形成された開口であり、前記加熱アセンブリよりも径方向及び軸方向の長さが大きく、それにより、前記チャネルから、前記加熱アセンブリの外面と前記本体の内面との間の領域及び前記出口ポートまでの液体流路を形成することを特徴とする請求項6~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記凹んだ先細の断熱ギャップが、ポートからの液体の取り出しによって冷却される冷却回路を含むことを特徴とする請求項6~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記加熱アセンブリが、前記気化器装置の前記出口ポートと整列するように構成された温度センサを含み、前記温度センサが、前記出口ポートにおいて前記気化した液体サンプルの温度を示すことを特徴とする請求項6~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記温度センサがサーモウェル内部に固定され、前記加熱アセンブリの軸方向長さに平行であることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記温度センサが、前記加熱アセンブリからの突出部内に斜めに形成されたサーモウェル内に固定されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
多成分炭化水素含有液体混合物を気化させる方法であって、
気化装置の本体内の少なくとも1つのポートを介して液体サンプルを前記気化装置に受け入れるステップと、
受け入れた前記液体サンプルを前記気化装置内のチャネル内に選択的に導くステップと、
前記チャネル内に導かれた前記液体サンプルを、テーパ状の非平行な表面によって画定され前記チャネルを径方向に取り囲むように配置され凹んだ先細の断熱ギャップを通して、前記チャネルを通過させるステップであって、前記断熱ギャップは、熱反射損失を改善し、前記少なくとも1つのポートと気化器コアとの間に配置された断熱ギャップを確立して、前記気化器コアから前記少なくとも1つのポートへの熱移動を最小限に抑えるための構成である、ステップと、
前記チャネルを出る前記液体サンプルを、前記液体サンプルをフラッシュ蒸留させるための加熱アセンブリを有する前記気化器コアに選択的に導くステップと、
前記気化器コアに導かれた前記液体サンプルを前記フラッシュ蒸留により気化するステップと、
前記気化した液体サンプルを、前記気化装置から出口ポートを通して送出するステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
液体流れ制御要素を使用して前記チャネル内に導かれた前記液体サンプルの流れを制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、異種の炭化水素含有液体、特に液体天然ガス(NGL)及び低温液化天然ガス(LNG)などの天然ガス液を効率的に気化させるための装置及び方法に関する。本発明は、サンプルの構成成分又はエネルギー含有量を正確に決定するための均一なサンプル蒸気を提供するために供給源から抽出された液体サンプルの、予備気化を行わずに均一にフラッシュ蒸留するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
このPCT国際出願は、2018年9月24日に出願された米国出願第62/735,375号に対して優先権を主張する、2019年8月16日に出願された米国出願第16/542,666号に対して優先権を主張するものであり、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0003】
天然ガスは、いくつかの異なる炭化水素化合物の可燃性ガス状混合物であって、現在、多孔質岩石内の地下貯留層から水圧破砕によって抽出されることが多い。天然ガスの炭化水素成分は、貯留層の地理的位置によって変化し、単一の供給源から抽出されたガスの組成が変化する可能性がある場所で、局所的にも変化する。しかしながら、変化に関係なく、天然ガスの主成分は、無色、無臭、ガス状の飽和炭化水素であるメタンである。メタンは、通常、任意の天然ガスサンプルの80%~95%を占め、残りの成分は、異なる量のエタン、プロパン、ブタン、ペンタン、及びその他の炭化水素化合物で構成される。一部の抽出された天然ガスは、検出及び除去が必要な少量の不純物で汚染されている可能性がある。酸性ガスは、水銀(Hg)、硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、メルカプタン(RSH)など、及びBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)として知られる群からのものを含む芳香族化合物などの微量汚染物質を含み得る。
【0004】
天然ガスは、住宅、商業、産業用途で広く使用されている。天然ガスを使用する米国の家庭の半数以上で家庭暖房に使用されている主要なエネルギーである。発電及び輸送用燃料としても、天然ガスの使用が急速に増加している。
【0005】
天然ガスは、商業上、含有するエネルギーの量によって測定される。米国で普遍的な測定単位は、英国熱量単位(BTU)である。1BTUは、大気圧で1ポンドの水の温度を華氏1度分上昇させるのに必要な熱量に相当する。1立方フィートの天然ガスは、約1,027BTU(1083.54キロジュール(kJ))を有する。天然ガスは、通常、坑口、すなわちガスが土地から抽出される地点から購入者へ、数千立方フィート(Mcf)の標準的な体積測定値で販売される。しかしながら、消費者への請求書は、通常、熱容量又はサームで測定される。1サームは、100,000BTU(105,505.59kJ)に等しい熱の単位である。
【0006】
坑口から消費者への天然ガスの輸送には、天然ガス産業の3つの分離した、多くの場合独立した部門が、関与している。生産会社は、地下から天然ガスを探査・掘削・抽出し、配送会社はガス田と主要な消費地を結ぶパイプラインを運営し、配給会社は天然ガスを顧客に輸送する地域の公益事業体である。
【0007】
天然ガスは、米国だけでも100万マイルを超えて延びる地下パイプのネットワークを通じて、2億人近くの消費者に輸送されている。この天然ガスを生産して輸送するために、50州全てにガスサービスを提供する25万を超える天然ガス井戸、100を超える天然ガスパイプライン会社及び1,000を超える地域配給会社(LDC)がある。
【0008】
パイプライン会社は、生産者又は販売業者などの売り手から、電気公共事業、工場、LDCなどの買い手にガスを輸送する。LDCは、天然ガスの様々な売り手の中から選択でき、顧客は、LDCサプライヤを選択できる。消費者のLDCは、配給ネットワークの所有者/運営者として消費者にガスを輸送するが、LDCは、ガスの輸送料金のみを消費者に請求し、独立したサプライヤは、ガス料金を請求する。地下からの抽出時だけでなく、管理輸送の各段階でも、エネルギー含有量分析は購入者に重要な価値情報を提供する。
【0009】
ガスサンプルコンディショニングの分野の重要な部分は、ガスパイプライン又は供給源からプローブを介して抽出された液体サンプルの気化プロセスに関する。液体サンプルが抽出されると、通常、気化及び圧力調整のために、取り出しプローブから直径が比較的小さいステンレス鋼などの耐食性超合金の管を通ってサンプルコンディショナへ送られ、最終的には分析のためにクロマトグラフなどの分析装置に送られる。
【0010】
液体プローブの取り出し部と分析装置との間の距離は、多くの場合30フィート(9.144メートル)を超え、100フィート(30.48メートル)を超えることもある。典型的には、抽出された液体サンプルがプローブの近くで気化される場合、気化されたサンプルは、例えば2000psig(13789.51kPa)の高圧で、プローブから、蒸気相を維持しながら、一般的な分析装置/クロマトグラフにとって許容可能な圧力である10~30psig(68.9kPa~206.8kPa)のような比較的低圧ゾーンまで、大幅に減圧しながら、分析装置に物理的に移動する必要がある。このプロセスの間、凝縮形態の炭化水素露点降下のリスクを最小限に抑えるために、蒸気を蒸気相曲線付近の点まで冷却しないようにすることが重要である。
【0011】
このような凝縮が発生すると、分析装置/クロマトグラフへの入口が液体で汚れる。このような液体の導入により、カラムブリードによって常にクロマトグラフィ充填材の完全性が損なわれ、クロマトグラフィ充填材が損傷を受け、良くてもゴーストピークからの誤った読み取り値が生成され、最悪の場合は分析装置が破壊されてしまう。その結果、クロマトグラフ分析装置に液体を導入すると、良くても誤った読み取り値に起因する経済的な損害が発生し、最悪の場合、汚染されたユニットを完全に交換するか、又は動作上許容可能な状態に復元するためにオフラインにすることにより、システムの動作効率の低下を引き起こす。
【0012】
したがって、フラッシュ蒸留から分析時までの全期間にわたって、気化した液体サンプルの完全性を相変化なしに維持することが重要である。
【0013】
特に炭化水素蒸気分析の場合、ガスサンプリングにおける炭化水素露点降下の問題が指摘されている。抽出されたパイプラインサンプルの露点降下又は相転移は、下流の分析装置/クロマトグラフ又は蒸気サンプル収集容器との連絡中に、気化後にサンプルガスが接触する圧力調整器、ガスライン、及びその他の構成要素の適切な気化後の加熱を維持することによって防止される。気化したサンプルの圧力及び温度を、その露点-相転移包絡線を超えて維持することで、サンプルがある範囲の蒸気凝縮線を有する成分の不均一な混合物を含むか、又はLNGなどのより予測可能な相包絡線を有する実質的に均一な組成物を含むかに関わらず、蒸気ガスサンプルが液体に戻ることを防止する。
【0014】
しかしながら、天然ガスサンプリングシステムは通常、例えば屋外周囲温度がガス露点温度を大幅に下回る可能性があり、危険な爆発しやすいガス蒸気が周囲大気に浸透することが多いなど、過酷な環境に配置される。したがって、使用する加熱機構は、ガスサンプルガスを大気にさらしたり放出したりすることなく、気化したサンプルガスが電気配線などにさらされることによる安全上の問題を回避しながら、周囲温度の低さを克服するのに十分な熱を発生させるために、厳しい基準に準拠する必要がある。
【0015】
米国石油協会(API)は、抽出されたサンプルの温度安定性を維持するために、触媒ヒータを使用して、パイプラインなどの供給源と分析装置との間で伝達されるガスサンプルの望ましくない温度変化を回避することを提案している。APIが石油規格マニュアルで言及しているタイプの触媒ヒータは、システムの選択された部分の全体でサンプルガス流を加熱する必要があり、加熱されたサンプルは、その後許容圧力で分析装置内に導入される。適切なシステム熱安定性を達成するための1つの好ましいシステムは、ヒートトレースを使用することにより、取り出し部から分析装置へサンプルを送る間に、気化したサンプル経路の全長にわたって実質的に均一な温度維持を保証する。このような性能は、ウェストバージニア州レーブンズウッドのムスタングサンプリングLLCから入手可能なP53サンプルコンディショニングシステム、及びその全体が参照により本明細書に組み込まれる特許文献1に開示・記載されている実施形態を使用して達成される。
【0016】
気化自体に関連する問題に目を向けると、液体天然ガス(NGL)、特に低温LNGなどの低炭素数の炭化水素液体を加熱によって気化させる気化装置は、液体サンプル入口ポートの近くで温度勾配が発生する可能性がある。このように温度が気化熱を超える場合、液体サンプルの予備気化が生じる可能性がある。抽出された液体サンプルが気化器入口に近接し、加熱気化チャンバに到達する前に、部分的又は完全に気化した場合、気化器から出る気化したサンプルの完全性は、製品成分(軽質、中質、及び重質)が異なる時間に分離して気化器に入るため、望ましくない分割によって損なわれる可能性がある。このような分割又は分離は、一般的にエネルギー含有量及び組成分析の誤りにつながる。さらに、予備気化したサンプルが、気化チャンバに送り込まれる間に再凝縮を引き起こすその後の冷却又は減圧にさらされる場合、さらに望ましくない組成成層/分割が生じる可能性がある。また、気化器入口で予備気化が発生した場合、液体のガスへの膨張によってもたらされる冷却効果により、入口ポートの上流で外部の氷結が発生し、それによってサンプルの均一性及び完全性をさらに損なう熱異常を増大させることがある。
【0017】
ガス田、配給システム、及び輸送中に展開可能な分析のために、抽出された天然ガスサンプルを気化させる現在受け入れられ一般的に使用されているシステム及び方法を改善する必要がある。特に天然ガスの配給、輸送、管理輸送において、液体の予備気化を防ぎ、不完全な気化によるシステムの損傷に起因するダウンタイムを回避する、実質的に効率的で、完全で、均一な液体サンプルの単一流路による気化を通じて、正確なサンプリングを保証する改善された気化器を提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許登録公報7162933号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、少なくとも本明細書で前述した問題を発生させず、LNG又はNGLをガス状の蒸気に変換するためのより効率的で信頼性が高い気化装置を提供できる装置、システム、及び方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、装置内の付着物の形成につながるホットスポットの数を減らしながら、より良好な熱分布を提供する装置を提供することである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、よりコンパクトで、より調整しやすく、機械的故障が生じにくく、同時に動作効率も実現する装置を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、異なる組成プロファイルを有する異なるタイプのLNG又はNGLサンプルを効率的に気化させるための装置及び方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、気化器自体及び/又は下流の分析装置に対する損傷を防止するために、気化器装置から出る蒸気サンプルの温度を監視して制御することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、管理輸送に使用されるBTU値のより正確な測定を実現するために使用することができる装置、システム、及び方法を提供することである。さらに、酸性ガスサンプルからの望ましくない放出を監視して削減するために、当該装置、システム、及び方法を使用して、水銀(Hg)、硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、メルカプタン(RSH)、及びBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン)などの芳香族化合物などの微量汚染物質を正確に測定することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の例示的で非限定的な実施形態は、従来技術の液体気化及び測定システムに関連する前述の及び他の欠点を解消することができる。また、本発明は、必ずしも上記欠点を解消する必要がなく、本発明の例示的な非限定的な実施形態は、上記課題のいずれも解消できない場合がある。
【0026】
上記及び他の目的を達成するために、本発明に係る実施形態は、多成分炭化水素含有液体混合物を気化させるための気化器を含み、該気化器は、第1の端部を画定する第1のセグメントと第2の端部を画定する第2のセグメントとを有する概ね細長い管状本体と、第1のセグメント内に一体的に形成された液体通路に接続された液体サンプルポートであって、第1液体ポートが液体流入を実現する液体サンプルポートと、気化器の中心軸に沿ってほぼ長手方向に配置され、実質的に管状本体の伸長方向に延びる液体チャネルであって、第1の端部と第2の端部とを有し、液体チャネルの第1の端部が液体通路と交差し、液体サンプルポートからその長さに沿って液体が通るための流路を提供する液体チャネルと、管状本体の第1のセグメント内に配置され、液体チャネルと交差するように構成された液体流れ制御要素と、管状本体の外面に形成され、当該外面から延びるギャップであって、液体チャネルに向かって内側に向けられ、液体チャネルの長さに沿って配置されたほぼ非平行な表面を画定するギャップと、管状本体の第2の端部の内側にあり、管状本体の第2の端部から液体チャネルの第2の端部まで延びる気化器コアと、気化器コアに挿入されるように寸法決めされ、管状本体に密封固定可能な加熱アセンブリであって、液体チャネルから導入された液体を気化させるフラッシュ蒸留発熱体を有する加熱アセンブリと、管状本体の第2のセグメント内に形成され、管状本体の第2の端部から離隔し、気化器コアと交差する蒸気吐出口ポートと、を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明は、本体が円筒形であり、第1のセグメントが第2のセグメントの上方に配置された上部セグメントであり、円筒形本体が、第1のセグメント内に一体的に形成された液体通路に接続され、液体吐出を実現する第2の液体サンプルポートと、ギャップ内に配置された断熱材とをさらに有する、ことを特徴とする前述の実施形態のさらなる実施形態を提供する。
【0028】
本発明は、ギャップのほぼ非平行な表面が、平坦かつ平面状のテーパ状であり、液体サンプルポートと第2の液体サンプルポートとが、互いに対して直交して配置される、ことを特徴とする前述の実施形態のさらなる実施形態を提供する。
【0029】
本発明は、第2のセグメントから第1のセグメントへの熱伝達を最小限に抑えるために、断熱材内の液体流体管に近接する液体取り出し部によって確立される能動的冷却回路をさらに含む、ことを特徴とする前述の2つの実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0030】
本発明は、前記液体サンプルポートは前記円筒形本体の軸に沿って配置される、ことを特徴とする前述の実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0031】
本発明のさらなる目的は、多成分炭化水素含有液体混合物を気化させるための気化器装置により達成され、当該装置は、本体と、当該本体を通って液体サンプルを受け入れるように構成された1つ以上のポートと、当該1つ以上のポートから液体サンプルを受け入れるように構成されたチャネルと、本体の外側に形成され、チャネルを径方向に取り囲み、断熱材を受け入れて保持するように構成された凹テーパ状断熱ギャップと、本体内に固定され、チャネルを出る液体サンプルを気化させるように構成された加熱アセンブリと、気化した液体サンプルを送出するように構成された出口と、を含む、ことを特徴とする。
【0032】
本発明は、加熱アセンブリが、発熱体と、当該発熱体を囲む金属ハウジングとを含む、ことを特徴とする前述の実施形態のさらなる実施形態を提供する。
【0033】
本発明は、発熱体が金属シース内に封入されている、ことを特徴とする前述の実施形態のさらなる実施形態を提供する。
【0034】
本発明は、金属ハウジングが少なくとも部分的に金属メッシュによって囲まれている、ことを特徴とする前述の2つの実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0035】
本発明は、凹テーパ状断熱ギャップに絶縁材料が充填されている、ことを特徴とする前述の実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0036】
本発明は、絶縁材料が、アルミナシリケート、ケイ酸カルシウム及び発泡セラミックスからなる群から選択される、ことを特徴とする前述の実施形態のさらなる実施形態を提供する。
【0037】
本発明は、凹テーパ状断熱ギャップがチャネルに向かって内側に先細になっている、ことを特徴とする前述の実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0038】
本発明は、チャネルと交差して、チャネルに入る液体サンプルの流れを制御するように構成された液体流れ制御要素をさらに含む、ことを特徴とする前述の実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0039】
本発明は、加熱アセンブリは、気化器コア内に固定され、気化器コアは、本体内に形成された開口であり、加熱アセンブリよりも径方向及び軸方向の長さが大きく、それにより、チャネルから、加熱アセンブリの外面と本体の内面との間の領域及び出口までの液体流路を形成する、ことを特徴とする前述の実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0040】
本発明は、凹テーパ状断熱ギャップが、ポートからの液体の取り出しによって冷却される冷却回路を含む、ことを特徴とする前述の実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0041】
本発明は、加熱アセンブリが、気化器装置の出口ポートと整列するように構成された温度センサを含み、当該温度センサが、出口ポートにおいて気化した液体サンプルの温度を示す、ことを特徴とする前述の実施形態のうちいずれかのさらなる実施形態を提供する。
【0042】
本発明は、温度センサがサーモウェル内部に固定され、加熱アセンブリの軸方向長さに平行である、ことを特徴とする前述の実施形態のさらなる実施形態を提供する。
【0043】
本発明は、温度センサが、加熱アセンブリからの突出部内に斜めに形成されたサーモウェル内に固定されている、ことを特徴とする前述の実施形態の直前の実施形態のさらなる実施形態を提供する。
【0044】
本発明のさらなる目的は、多成分炭化水素含有液体混合物を気化させる方法によって達成され、当該方法は、気化装置の本体内の少なくとも1つのポートを介して液体サンプルを前記気化装置に受け入れるステップと、受け入れられた前記液体サンプルを前記気化装置内のチャネル内に選択的に導くステップと、ほぼテーパ状の非平行な表面によって画定される凹テーパ状断熱ギャップを通して前記チャネル内の前記液体サンプルを選択的に導いて熱反射損失を改善し、前記少なくとも1つのポートと気化器コアとの間に配置された断熱ギャップを確立して前記気化器コアから前記少なくとも1つのポートへの熱移動を最小限に抑えるステップと、前記チャネルを出る前記液体サンプルを、前記液体サンプルをフラッシュ蒸留させるための加熱アセンブリを有する前記気化器コアに選択的に導くステップと、前記気化した液体サンプルを、出口を通して前記気化装置から送出するステップと、を含む、ことを特徴とする。
【0045】
本発明は、液体流れ制御要素を使用して第1の管を通る液体の流れを制御するステップをさらに含む、ことを特徴とする前述の実施形態のさらなる実施形態を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明の態様は、添付の図面を参照してその例示的で非限定的な実施形態を詳細に説明することによって、より容易に明らかになるであろう。
【0047】
図1A図1Aは、本発明の一実施形態に係る気化器装置を示す斜視図である。
図1B図1Bは、本発明の一実施形態に係る気化器装置の上面図である。
図1C図1Cは、本発明の一実施形態に係る気化器装置の側面図である。
図1D図1Dは、本発明の一実施形態に係る、図1Eに示されるように透視して切断した気化器装置の2次元図である。
図1E図1Eは、本発明の一実施形態に係る気化器装置の斜視切取図である。
図1F図1Fは、本発明の一実施形態に係る気化器装置の斜視分解図である。
図1G図1Gは、本発明の一実施形態に係るワイヤメッシュの側面図である。
図2A図2Aは、本発明の一実施形態に係る、図1Cの二等分線に沿った能動的冷却要素を有する気化器装置の断面図である。
図2B図2Bは、本発明の一実施形態に係る図2Aの気化器装置の斜視切取図である。
図3A図3Aは、本発明の一実施形態に係る、代替の能動的冷却要素を有する気化器装置の断面図である。
図3B図3Bは、本発明の一実施形態に係る図3Aの気化器装置の斜視切取図である。
図4A図4Aは、本発明の一実施形態に係る、代替の計量弁を有する気化器装置の斜視切取図である。
図4B図4Bは、本発明の一実施形態に係る、角度の付いたサーモウェル及び関連する熱電対を有する図4Aの気化器装置の斜視切取図である。
図5A図5Aは、本発明の一実施形態に係る、直線状のサーモウェル及び関連する熱電対を有する気化器装置の斜視切取図である。
図5B図5Bは、本発明の一実施形態に係る、直線状のサーモウェル及び関連する熱電対を有する気化器装置の斜視切取図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の例示的で非限定的な実施形態は、以下に詳細に説明される。明確な理解を提供するために特定の構成及び寸法が説明されるが、開示された寸法及び構成は例示のみを目的として提供されることを理解されたい。当業者は、特に明記しない限り、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の寸法及び構成を使用できることを理解するであろう。
【0049】
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「比較的」、「ほぼ」、「約」、及び「およそ」は、このように修飾された特性からの許容しうる変動を示すことを意図する相対的修飾語である。これらは、修飾する絶対値又は特性に限定されるものではなく、むしろ、このような物理的又は機能的特性に近づいたり近似したりするためのものである。
【0050】
詳細な説明において、「1つの実施形態」、「一実施形態」、又は「実施形態において」への言及は、言及される特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。さらに、「1つの実施形態」、「一実施形態」、又は「実施形態において」への別個の言及は、必ずしも同じ実施形態に言及しているものではないが、このような実施形態は、相互に排他的であると述べられない限り、当業者に容易に明らかである場合を除いて、相互に排他的ではない。したがって、本発明は、本明細書に記載の実施形態の任意の様々な組み合わせ及び/又は統合を含み得る。
【0051】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に別途示されない限り、複数形も同様に包含することを意図する。さらに、基本用語「含む」及び/又は「有する」は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を明示するが、少なくとも1つの他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことを理解されたい。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「含有する」、「含有している」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図することを理解されたい。例えば、一連の特徴を含むプロセス、方法、物品又は装置は、必ずしもそれらの特徴のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されないか又はこのようなプロセス、方法、物品又は装置に固有の他の特徴を含むことができる。
【0053】
本明細書で使用される場合、値の範囲への言及は、明示的に反対のことが述べられない限り、上記範囲の終点を含むその範囲内の全ての値を包含することを意図することも理解される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ガス」は、液体天然ガス及び液化天然ガスを含む任意のタイプのガス状の気化可能な炭化水素含有液体物質、それらのガス混合物、及び等価物を意味する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「接続」は、直接又は間接を問わず、物理的なもの、恒久的な固定、又は調整可能な取り付けを含む。したがって、特定されない限り、「接続」は、あらゆる作動的に機能する接続を包含することを意図する。
【0056】
以下の説明では、本発明を実施することができる特定の例示的な実施形態の代表として例示の目的で提供される添付の図面を参照する。以下の例示された実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に説明されている。他の実施形態を利用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく、現在知られる構造的及び/又は機能的等価物に基づく構造的変更を行うことができることを理解されたい。
【0057】
以下の詳細な説明を考慮すると、本明細書における本発明が、従来技術の問題を軽減しながら、効率を向上させた新規な液体気化装置及びその方法を提供することは、当業者には明らかになるはずである。
【0058】
図1A~1Fは、本発明の一実施形態に係る気化器又は気化器装置100の様々な図を示す。概要として、気化器装置100は、気化器装置100の内部に導入するための通路113にそれぞれ関連付けられた1つ以上の液体サンプル通路開口/ポート104をその上端に有する細長い管状本体102を含む。液体サンプルポート104は、軸方向に配置された液体サンプル導入ポート104Aと径方向に配置された1つ以上の液体サンプル導入ポート104R、又は単に径方向に配置された複数の液体サンプル導入ポート104Rとを含むことができる。特に指定されない限り、液体サンプルポート104という用語は、ポート104R及び104Aのいずれか1つに適用することができる。さらに、1つの実施形態において、気化器装置100は、1つの径方向に配置された液体サンプル導入ポート104Rのみを含むことができる。2つ以上の開口/ポート104が含まれる場合、NGL又はLNGなどの液化炭化水素の吐出は、開口/ポート104のうち1つを介して行うことができる。液体サンプルが通路113又は開口/ポート104Aを通り、開口/ポート104Rを通って流れると、液体サンプルの少なくとも一部は、本体102の下端からチャネル120の出口まで内部及び軸方向に延びる細長い段付き孔135内の空間により形成された気化器コア130に液体サンプルを送るために、軸方向及び内部に向けられた液体サンプルチャネル120に流れる。気化器コア130内を通過する液体サンプルが気化すると、気化したサンプルは、蒸気用環137を通過し、径方向に配向された蒸気出口通路140を通過して、蒸気吐出口ポート118を介して装置から出る。蒸気出口ポート118は、本体102の下端に近接して配置されている。
【0059】
図1D及び1Eにおいて、デュアルポートの実施形態をより詳細に示す。図示するように、液体サンプル連通ポート104R及び関連する液体サンプル通路113は、本体102に対して概ね共通の断面平面において径方向及び直径方向に整列して配置されてもよいし、アクセスを制限する限定された空間である特定の幾何学的形状によって決定付けられる場合には、直交して配置されてもよい。ポート104Rは、流体入口ラインを気化器装置100に嵌合継手(図示せず)で密封的に固定するために、ねじ切りすることができる。それに対応して、蒸気出口ポート118は、適切な継手(図示せず)を介してガス送出ラインを固定するために雌ねじを有してもよい。
【0060】
特定の設備の幾何学的形状は、本体102の上部を通って軸方向に配置された液体サンプル導入ポート104Aに適している可能性がある。図1Bに示されるように、未使用の場合、本体102の上部に配置された軸方向ポート104Aは、シールねじ/プラグ要素116によってシールすることができる。ポート104Aは、嵌合継手(図示せず)で流体入口ラインを気化器装置100に密封的に固定するためにねじ切りすることができる。本実施形態は、特定の幾何学的形状に関係なく、フラッシュ蒸留用の気化装置100の気化器コア130へ液体サンプルを導入するために、ポート104を介して軸方向及び内部に向けられたチャネル120に気化可能な液体を導入することを企図する。
【0061】
ポート104を介して気化器装置100に導入された液体サンプルは、軸方向チャネル120内に入って気化する。場合によっては、気化器コア130を通過しない液体サンプルを収容するために、吐出ポート104A/Rを含むことが望ましい。したがって、本実施形態では、せき止め又は背圧によって発生する流量異常などを最小化及び/又は回避するために、入口ポート液体104A/Rに対して配置された、吐出ポートとして機能するポート104A/Rを、未使用の液体サンプルが通過するようにする。したがって、第2のポート104の存在により、入口が径方向に配置されているか、軸方向に配置されているかに関係なく、1つの入口ポート104を通ってハウジング102に入った過剰な液体が、別のポート104を通って気化していない液体として出ることができる。
【0062】
ここで気化器装置100の内部に目を向けると、液体サンプルチャネル120は、本体102を通って選択された距離だけ軸方向に延びて、液体サンプルを通路113から気化器コア130に送るための導管を確立する。図示した実施形態は、液体サンプルの流れの体積を制御するための調整可能な弁107の形態で示される液体流れ制御要素を含む。調整可能な計量弁107は、本体102の側面にねじ込まれ、チャネル120の長さに沿って垂直に、ポート104の下に配置された、径方向に配向されたボンネット111に取り付けられている。弁107は、チャネル120と交差するシート119に挿入するように寸法決めされた先細プランジャ121を有する。チャネル120流路の計量弁107による閉塞の程度は、調整要素109を介して調整可能である。溝付きねじ頭の形を取り得る調整要素109は、取り付けボンネット111に対して回転し、計量弁ステム107のプランジャをチャネル120に対して径方向に移動させる。手動調整要素109の自動化された代替手段として、弁107の位置の調整を制御するために作動可能なモータ(図示せず)に、弁107を関連付けることが挙げられる。径方向に調整可能な計量弁107は、チャネル120にアクセスして液体流サンプルの体積を調整し、例えばサンプルコンディショニングパネル内の気化装置100にアクセスするときに、操作者が制御しやすくすることができる。調整可能な弁107、ボンネット111、及び先細プランジャ121の代わりに気化器装置100に組み込むことができる代替の調整可能な計量弁402について、図4及び5を参照してさらに説明する。
【0063】
本実施形態の注目すべき特徴は、外側の凹状の環状断熱ギャップ108であって、本体102内に一体的に形成され、液体サンプルポート104と気化器コア130との間に軸方向に配置されて、ギャップ108の上に本体102の第1のセグメントを形成し、ギャップの下に本体102の第2のセグメントを形成する、断熱ギャップ108に関する。その断熱能力を最大化するために、外側の環状ギャップ108は、一般的に、装置100の中心軸に向かって軸方向チャネル120に接近し、本体102に対して径方向深さだけ延びる非平行な表面として画定される。図1A~1Dに示した実施形態において、ギャップの上面及び下面は、平坦な平面構成で内側へ向かって先細になっている。ギャップを画定するそれぞれの上面及び下面はまた、弧状、半円形などの代替の幾何学的形状を有してもよく、これらの形状は、平行に配置された対向面と比較して、熱放射の入射角を変化させ反射損失を改善する、ほぼ非平行な表面を提供する。気化装置100の上端と気化器コア130との断熱性を強化するために、図示した実施形態において、選択的に取り外し可能な受動断熱材106が設置される。図示するように、受動断熱材106は、二股に分かれ、弾性Oリングなどの断熱材リテーナ105によってギャップ内に保持される。あるいは、断熱材106は、成形又は鋳造によってギャップ108内に恒久的に配置することができる。
【0064】
断熱ギャップ108の非平行な輪郭又は先細りは、以下の利点のうち1つ以上を提供する。1)特に気化器コア130内の液体サンプルの気化によって発生する増大した圧力に対する抵抗に関して、気化器本体の構造的完全性及び強度を増加させること、2)断熱材106の表面とテーパ状断熱ギャップ108の対向表面との間の接触面積を最大化し、断熱材リテーナ105から加えられた圧縮径方向フープ力により潜在的な分離を最小化すること、3)断熱ギャップ108内の断熱材106と本体102との間に、それらの界面での凝縮形成のリスクを低減すること、4)断熱材106を形成する材料が引張破壊を回避することを可能にすること、5)より大きな開口表面積を提供することにより反射による放射熱除去を改善すること。図2に関して以下に説明するように、断熱材106は、ループ状の未加熱液体バイパスに基づくサブシステムなどの能動的冷却要素を提供するための特徴を任意選択で組み込んでよい。
【0065】
受動断熱材106の物理的特性を考慮すると、発泡アルミナシリケート又はケイ酸カルシウムガラス/繊維、発泡セラミックスなどの、寸法的に安定し、比較的剛性を有し、熱伝導性が非常に低い材料で構成されることが好ましい。材料は、ギャップ108の構造に寸法的に対応する台形のトロイダル形状に形成/成形される。断熱材106は、チャネル120が本体102内で通過する軸方向セグメントに寸法的に対応する中央切り欠き/切り口をそれぞれ有する2つの対向可能な嵌合片に切断することができる。その結果、断熱材106は、テーパ状断熱ギャップ108により本体102の上部と下部との間に断熱を確立し、気化器コア130に到達する前の液体サンプルの望ましくない予備気化のリスクを最小限に抑える。気化器コア130から本体102の上部への熱移動の最小化及び/又は排除により、気化器コアの上方での予備気化が低減され、サンプルの均一性が向上し、サンプル分析の精度が向上する。さらに、このような予備気化に起因する、ポート104に近接する本体102の外部での氷形成の問題が低減される。
【0066】
ここで、気化器装置100が完全に組み立てられたときに気化器コア130に関連付けられた気化要素に目を向け、特に図1Fを参照すると、気化器コア130は、挿入カートリッジヒータ又は発熱体131と、熱を伝導するための真鍮、銅又は別の材料で作られた任意の金属シース132と、ステンレス鋼又は他の金属で作られた上部ヒータハウジング133と、を備え得る加熱アセンブリを含む。挿入カートリッジヒータ131は、給電ライン112によって給電され、両方とも本体102の基部から突出する熱電対110を介して制御される。あるいは、又はこれに加えて、本体102は、図4及び5に関してさらに説明されるように、気化器から出る気化したサンプルの温度を検出する追加の熱電対を有するサーモウェルを収容するために、出口ポート118の近くに孔及び/又は突起を有してよい。
【0067】
熱電対110は、気化器装置100の信号フィードバック及び制御を提供するために、アレンブラドリー850シリーズPLC又は等価のコントローラなどの比例-積分-微分(PID)コントローラ及び/又はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)(図示せず)に接続される。金属シース132は、ヒータ131からステンレス鋼製の上部ヒータハウジング133への熱の均一な分布を促進するために、カートリッジヒータ131に接合される。シースで覆われたカートリッジ131は、好ましくは圧縮によってぴったりと収容され、次に、ステンレス鋼製のハウジング133は、段付き孔135の中に挿入されるために、その内面に寸法的に適合する。ステンレス鋼製のヒータハウジング133の上端は、気化器コア130よりも直径が小さく、ギャップ128を残して軸方向位置に突出し、チャネル120からヒータハウジング133の外面と孔135の内面との間の領域へ液体サンプルが流れることができるようにする。非反応性のハウジング133の直径は、有孔の非反応性ステンレス鋼製ワイヤメッシュ129と、本体102とステンレス鋼製のハウジング133との間に蒸気用環137を確立するための段付きリングと、本体102に確実に密封して取り付けるための取り付け固定具136とを収容するように、上端から下端まで直径方向に段付きになっている。
【0068】
有孔の非反応性ステンレス鋼製ワイヤメッシュ129は、ヒータハウジング133の上段部の周りに配置され、ハウジング133の段部と孔135の内面との間の領域を満たすように寸法決めされている。フラッシュ蒸留は、液体サンプルがワイヤメッシュと接触すると、電気カートリッジヒータ131から熱分布シース132を介して非反応性のハウジング133へ、及び非反応性のハウジングを通って均一に熱エネルギーを効率的に伝達することによって実現される。ワイヤメッシュ129は、様々な利点を提供する。まず、ワイヤメッシュ129の利用により、均一な液体流れ及び気化、並びに液体サンプル組成を表す実質的に均一な蒸気を得るために、ハウジング133から外向きに熱を伝達する熱伝達表面積が最大となるか、又は非常に大きな熱伝達表面積が実現される傾向が現れる。
【0069】
より具体的には、メッシュ129は、ハウジング102を通過する、出口118での均一な流れの形成を助けるディフューザとして機能する。この均一な流れにより、ホットスポット及び気化器コア130内の付着物の形成を低減しながら、液体の加熱及び最終的な気化を強化する。さらに、メッシュ129が熱伝達路として機能し、それにより、熱がヒータハウジング133からハウジング133と孔135の内面との間の流体流路に運ばれることを可能にする。メッシュ129はまた、メッシュ129中及び周囲を通過する流体への熱伝達を促進する混合を促進する。したがって、ハウジング133から熱特性が増強されたメッシュ129を使用することで、ハウジング133と孔135の内面との間のキャビティ内の加熱された液体の表面積を効果的に増加させる。さらに、メッシュ129を通ってその周りにある流体の移動は、気化器コア130からの液体の流出を妨げ、それにより、移動する液体の十分な加熱を確保する。これらの有利な特徴は、気化器コア130を通過する液体の気化を強化することにより、下流の分析装置に損傷を与える可能性のある気化しない液体の送出を低減又は排除する。
【0070】
メッシュ129又は高多孔質材料の使用により、カスケード入口液体サンプルへの熱伝達のための表面積を最大化し、LNGの場合、600倍の体積膨張をもたらし、また、蒸気用環137を通って蒸気出口通路140及び蒸気サンプル吐出ポート118に出るための蒸気通過通路を確立する。メッシュ129は、管状要素として予め形成される場合、ハウジング133の上端の外面とギャップ128の下の孔135の内面との間の全ての空間を満たすのに十分な厚さを有するように寸法決めされるべきであり、これによりメッシュ129は、ハウジング133及び孔135の内面の両方との接触を維持する。1つの実施形態において、メッシュ129は、段付き孔135への挿入時に径方向圧縮を可能にするために、ハウジング133の周りに圧着されて螺旋状に巻き付けてよい。段付き孔135に挿入されると、メッシュ129は、巻き出すことができ、それによって、ハウジング133の外面と孔135の内面との間の領域を満たすことができる。
【0071】
1つの実施形態において、メッシュ129は、図1Gに示されるように均一に曲げることができる。この例において、メッシュ129には一連の交互の湾曲部134が設けられ、メッシュがハウジング133の周りに巻かれたときに湾曲部134が後続の巻き付けで互いに入れ子にならないように形成されている。湾曲部134が入れ子になると、メッシュ129の膨張を妨げるとともに、メッシュ129の設置及び調整の容易さを低下させるため、望ましくない。メッシュ129のいずれかのエッジに非平行な直線状湾曲部(巻き解かれた場合)を提供し、メッシュの長さ全体にわたって交互方向に湾曲部を繰り返すことによって、メッシュ129は、これに付随して、入れ子になることを回避し、実質的に均一に膨張して、ハウジング133の外面と孔135の内面との間の領域を満たす。
【0072】
ハウジング102はまた、気化器コア130を本体102内に密封するために第1の軸方向に配置されたOリングシール138を含み、Oリングシールは、収集環137、及びステンレス鋼製のハウジング133の外面上の嵌合ねじとねじ込み可能に協働するために段付き孔135の基部に形成された雌ねじ141の近く、並びにそれらの間に配置される。気化したガスの漏れを防止するための完全なシールをさらに確保するために、本体102の環状面は、取り付け固定具136のステンレス鋼製のヒータ本体の対向する嵌合面を圧縮するためのOリング139を含んでよい。図示された気化器装置100の単一流路バージョンでは、液体サンプルは、ポート104を介して気化器装置100に導入され(その一部は、計量弁ステム107によって指示された速度でチャネル120に入り)、ギャップ108によって画定された熱分離ゾーンを通過し、気化器コア130に入ってフラッシュ蒸留し、気化の圧力下で収集環137内を通過してポート118を通って気化器から出る。
【0073】
したがって、上部を気化器装置100のフラッシュ蒸留コア130から断熱することにより、気化器装置の上部に導入された液体サンプルの予備気化が回避される。
【0074】
気化器ハウジング102は、ステンレス鋼又はアルミニウムなど耐食性超合金の単一ユニットから製造することができる。気化器コア130は、旋盤上の穿孔棒を使用してハウジング102の底部から段階的に穿孔され、環137及びワイヤメッシュ129のためにハウジング102内の空間を径方向に提供することができる。気化器コア130の軸方向長さは、ハウジング133が気化器コア130内に取り付けられるときにハウジング133の上部とチャネル120の出口との間にギャップ128が形成されるように、ハウジング133の軸方向長さよりもわずかに大きい長さに穿孔される。チャネル120は、既に穿孔された気化器コア130を通過するドリルビットで穿孔され、ハウジング102の上部から軸方向に穿孔される軸方向ポート104Aまで延びることができる。径方向ポート104Rを軸方向ポート104A及びチャネル120に接続するために、径方向ポート104Rは、ハウジング102の側面から径方向に穿孔することができ、通路113は、既に穿孔された径方向ポート104Rを使用して、より小さなビットで穿孔することができる。調整可能な弁107を提供するために、ハウジング102の軸方向長さに沿ってポート104と断熱ギャップ108との間に別の孔が形成される。次に、この孔を使用して、チャネル120の断面を横切って直交して形成された段付き孔を機械加工することにより、チャネル120内の流れを制御するための弁107のシートを提供することができる。
【0075】
図2A/2B及び図3A/3Bには、気化器装置200と300の能動的冷却の実施形態がそれぞれ示されている。図2A/2B及び3A/3Bに示される実施形態は、図1に示される実施形態と類似しているが、気化器の上部への熱伝達及び液体サンプルの予備気化を行わないように保証するため、能動的冷却付属品をさらに有する。図2A及び2Bは、断熱材106内に形成されたループ204への液体の流れを可能にするために、断熱ギャップ108の上方に位置するチャネル120からの統合された流れチャネル取り出し部202を示す。したがって、この実施形態において、チャネル120に導入された液体の一部は、チャネル202を通ってループ204に流れ、断熱材106に能動的冷却コンポーネントを提供する。ループ204を通過する液体のための出口(図示せず)は、液体吐出ポート104に接続されてもよいし、入口ポート104R又は通路113において液体供給流に再循環されてもよい。
【0076】
図3A及び3Bでは、能動的冷却ループ取り出し部302(点線で表す)が入口ポート104Rに接続され、断熱材106に埋め込まれてそれを囲む管304に液体サンプルを供給する。管304の出口(図示せず)は、気化器装置300からの別の液体吐出ポート104Rに接続され、それを通る冷却液体の連続的な流れを提供することができる。この場合、取り出しは、断熱材108内に形成された環に巻き付けられて埋め込まれた入口ポート104Rに近接する流れチャネル取り出し部によって提供される。未加熱液体は、入口ポート104Rの入口で取り出されて、液体流体管を有する管状ループとして示される能動的冷却回路を通過し、吐出速度ループなどに接続された排出口/出口(図示せず)に到達する。このようにして、冷却液体の新鮮な供給を利用して冷却を増強し、本体102の上部の加熱を防止することができる。したがって、液体サンプルが気化器コア130に入る前の予備気化のリスクが最小限に抑えられる。
【0077】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る、代替のテーパ状の計量弁ステム402を有する気化器装置400の斜視切取図である。テーパ状の計量弁ステム402は、通路113と断熱ギャップ108との間で軸方向に本体102に径方向に穿孔されたキャビティ403内に設置される。テーパ状の計量弁ステム402は、密封してキャビティ403内の圧力制御を提供する複数のOリング404、408などをその上に含むことができる。キャビティ403は、テーパ状の計量弁402が回転してキャビティ403内で所定の距離だけ径方向に横切ることを可能にするねじ部407を含むことができる。テーパ状の計量弁ステム402は、テーパ状の計量弁ステム402の周囲部分に対して直径が小さくなるように、円周方向に先細にされた実質的に中央の溝406をさらに含み、それによって液体が計量弁ステム402の周りを流れ、スロート又はチャネル120を通って流れることを可能にしている。チャネル120流路のテーパ状の計量弁ステム402による閉塞の程度は、調整要素401を介して調整可能である。溝付きねじ頭の形態をとりうる調整要素401は、ねじ407に対して回転して、計量弁ステム402の溝406をチャネル120に対して径方向に平行移動させる。したがって、液体の流れが制御される量は、チャネル120に対するテーパ状の溝406の位置によって決定される。手動調整要素401の自動化された代替手段は、弁ステム402の位置の調整を制御するために作動可能なモータ(図示せず)に関連付けられる計量弁ステム402を含む。キャップ又はプラグ410は、調整可能な要素401の反対側の計量弁402の端部に設置されてキャビティ403を囲み、計量弁ステム402の圧力による排出を防止し、キャビティ403内の計量弁402の移動を制限する。キャップ又はプラグ410は、気化器装置の外部にあってもよいし、本体102と面一になるようにキャビティ403内に含めてもよい。
【0078】
図4Bは、本発明の一実施形態に係る、テーパ状の計量弁402を有する気化器装置400の斜視切取図である。ここで、テーパ状の計量弁402は、図4Aに関して説明されたものと同じであるため、同様の符号を繰り返す。ただし、図1D~1Fに示される気化器装置100の調整可能な計量弁107の実装形態は、テーパ状の計量弁402構造の代わりに気化器装置400に組み込むことができることに留意されたい。
【0079】
また、図4Bには、出口ポート118に近接し、図4Aに示すようにヒータハウジング133から突出する機械加工されたボス412などの突起内に形成されたサーモウェル417内に設置された追加の熱電対416が含まれることが示される。サーモウェル417は、角度が付けられることにより、サーモウェル417の上部及びその内部の熱電対416は、高速流動領域で出口ポート118に近接して配置され、気化器装置400を出るガスサンプルの温度に関して感度が向上し、且つ測定値がより正確になる。機械加工されたボス412が存在することにより、流量を実質的な方法で制限することなく温度感度を高める。
【0080】
熱電対110と同様に、熱電対416は、気化器装置400の信号フィードバック及び制御を提供するために、リード414を介してアレンブラドリー850シリーズPLC又は等価コントローラなどの比例-積分-微分(PID)コントローラ及び/又はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)(図示せず)に接続することができる。これにより、気化器装置400を出るガスサンプルの温度を連続的に監視して制御するための制御ループを作成することができる。したがって、気化器装置400に接続された機器に基づいて、温度を制御し、気化器装置400から出るガスが、下流の機器に損傷を与えないことを保証することができる。出口ポート118の近くに熱電対416を含めることで、液体が気化器装置400を通って流れていない非流動状態の結果として生じる可能性がある望ましくない高温を監視することができるという利点も提供する。したがって、そのような遠隔装置は、非流動状態に起因する高いヒータ温度を検出することができず、それにより、発熱体を破壊し気化器装置400を動作不能にする可能性がある焼損の危険性があるため、内部に配置された熱電対416は、出口に取り付けられた感知装置による出口ガス温度の遠隔感知を改善する。ハウジング内に熱電対416を設置することで、多くの場合防爆設計コードを満たす必要がある制御システムへの配線をさらに簡素化しながら、気化器装置400の組み立て中の故障モードを少なくする。
【0081】
図5A及び5Bは、本発明の一実施形態に係る、計量弁402を有する気化器装置500の斜視切取図である。ここで、テーパ状の計量弁402は、図4Aに関して説明されたものと同じであるため、同様の符号を繰り返す。ただし、図1D~1Fに示される気化器装置100の調整可能な計量弁107は、テーパ状の計量弁402構造の代わりに気化器装置500に組み込むことができることに留意されたい。
【0082】
また、図5A及び5Bには、出口ポート118に近接し、ヒータハウジング133内に形成された直線状のサーモウェル517内に設置された追加の熱電対516が含まれることが示されている。サーモウェル517は、ハウジング133と平行に、及び出口ポート118に近接して延びるように軸方向に穿孔される。サーモウェル517内に設置された熱電対516は、高速流動領域で出口ポート418に近接して配置され、気化器装置500から出るガスサンプルの温度に関して感度及び読み取り値が向上している。
【0083】
熱電対110と同様に、熱電対516は、気化器装置500の信号フィードバック及び制御を提供するために、リード514を介してアレンブラドリー850シリーズPLC又は等価コントローラなどの比例-積分-微分(PID)コントローラ及び/又はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)(図示せず)に接続することができる。これにより、気化器装置500から出るガスサンプルの温度を連続的に監視して制御するための制御ループを作成することができる。したがって、気化器装置500に接続された機器に基づいて、温度を制御し、気化器装置500から出るガスが、下流の機器に損傷を与えないことを保証することができる。出口ポート118の近くに熱電対516を含めることで、液体が気化器装置500を通って流れていない非流動状態の結果として生じる可能性がある望ましくない高温を監視することができるという利点も提供する。したがって、そのような遠隔装置は、非流動状態に起因する高いヒータ温度を検出することができず、発熱体を破壊し気化器装置500を動作不能にする可能性がある焼損の危険性があるため、内部に配置された熱電対516は、出口に取り付けられた感知装置による出口ガス温度の遠隔感知を改善する。ハウジング内に熱電対516を設置することで、多くの場合防爆設計コードを満たす必要がある制御システムへの配線をさらに簡素化しながら、気化器装置500の組み立て中の故障モードを少なくする。
【0084】
上記能動的冷却サブシステムの代わりに、他の周知の冷却付属品を利用してもよいことを理解されたい。上記システムの認識された利点は、冷却のために少量の液体取り出しサンプルを迂回させ、迂回した量をパイプラインに再注入するか、又は周知の収集/再循環システムのいずれかに通過させるという単純な手段に依存することである。
【0085】
上記追加又は代替の詳細のいずれかを組み込んだ装置又は方法は、以下の特許請求の範囲及びその等価物に基づいて決定される本発明の範囲内に含まれることが、当業者にとって理解されるべきである。本発明の他の態様、目的及び利点は、図面及び開示を与えられた当業者には明らかであるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、特に天然ガスの配給、輸送、管理輸送において、液体の予備気化を防ぎ、不完全な気化によるシステムの損傷に起因するダウンタイムを回避することによって、実質的に効率的で、完全で、均一な液体サンプルの単一流路による気化を通じて、正確なサンプリングを実現するのに有用である。本発明はまた、蒸気サンプル内の微量汚染物質を測定することにより、酸性ガスサンプルからのこれらの汚染物質の望ましくない放出を低減できるようにするために有用である。
【符号の説明】
【0087】
100、200、300、400、500 気化器装置
102 管状本体
104A、104R 液体サンプル導入ポート
105 断熱材リテーナ
106 断熱材
107、402 計量弁
108 断熱ギャップ
109、401 調整要素
110、416、516 熱電対
111 ボンネット
112 給電ライン
113 通路
116 プラグ要素
118 蒸気出口ポート
119 シート
120 チャネル
121 先細プランジャ
128 ギャップ
129 ワイヤメッシュ
130 気化器コア
131 発熱体
132 金属シース
133 ハウジング
135 孔
136 取り付け固定具
137 蒸気用環
138 Oリングシール
139 Oリング
140 蒸気出口通路
141 雌ねじ
202 流れチャネル取り出し部
204 ループ
302 能動的冷却ループ取り出し部
304 管
403 キャビティ
404、408 Oリング
406 溝
407 ねじ部
410 キャップ又はプラグ
412 機械加工されたボス
414、514 リード
417、517 サーモウェル
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B