(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】真空凍結乾燥装置及び真空凍結乾燥方法
(51)【国際特許分類】
F26B 5/06 20060101AFI20230131BHJP
F26B 17/00 20060101ALI20230131BHJP
F26B 23/10 20060101ALI20230131BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
F26B5/06
F26B17/00 Z
F26B23/10 Z
F26B25/00 J
(21)【出願番号】P 2022524502
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2021018879
(87)【国際公開番号】W WO2021235459
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2020086652
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520114797
【氏名又は名称】株式会社エムアイアイ
(72)【発明者】
【氏名】盛本 修司
(72)【発明者】
【氏名】竹原 誠
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特許第6777350(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第110595193(CN,A)
【文献】特開昭55-112980(JP,A)
【文献】特開昭47-021743(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0086953(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第2101131(EP,A1)
【文献】特表2017-533397(JP,A)
【文献】特開昭60-191179(JP,A)
【文献】特開昭60-191177(JP,A)
【文献】特開昭62-033274(JP,A)
【文献】特開昭56-127168(JP,A)
【文献】中国実用新案第201974015(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液を凍結させる真空凍結装置と、前記凍結させた凍結物を昇華及び乾燥させる乾燥装置
とを有する真空凍結乾燥装置であって、
前記真空凍結装置及び前記乾燥装置の内部を減圧雰囲気にするために真空吸引を行う
排気経路を有し、
前記乾燥装置は、
入口部と出口部とを備え、筒形状を有する一つの筒状部と、
前記筒状部の周辺部の前記入口部から前記出口部に向かって形成される温度の制御が可
能な少なくとも3か所以上の複数の領域に設けられ、前記筒状部の外面の前記複数の領域
の温度をそれぞれ調温する調温手段と、
前記調温手段により前記複数の領域をそれぞれ独立して温度制御する温度制御部と、
前記筒状部を回転させるための回転部と、を備え、
前記筒状部は、前記筒状部の内壁に前記入口部から前記出口部に向かって連続的に設け
られる螺旋状の移送手段を有し、
前記真空凍結装置と、前記乾燥装置とを連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記真空凍結装置側の第1管部と、前記回転する筒状部を有する乾燥
装置側の第2管部と、前記第1管部と
前記第2管部間をシールするシール部と、を有し、
前記筒状部は、複数の筒部と、前記複数の筒部を繋ぐ繋ぎ部と、を有し、
前記調温手段は、前記各温度領域に設けられ、第1壁部と、第2壁部と、前記第1壁部
と前記第2壁部に囲まれた空間を前記領域として覆うカバーと、前記領域内にガスを供給
する手段と、を有し、
前記複数の筒部と前記繋ぎ部を有する前記筒状部の少なくとも一部を囲むよう前記
カバーで覆われており、
前記真空凍結装置及び前記乾燥装置内部の減圧雰囲気のもと、前記回転部が前記筒状部
を回転させることによって、前記移送手段は、前記真空凍結装置から入る前記凍結物を、
前記筒状部内の前記複数の領域に対応する箇所を前記移送手段によって順次移送しながら
前記凍結物を連続的に昇華及び乾燥させ
、
前記連結部は、前記真空凍結装置の収集部に一方端を臨ませ、他方端を前記筒状部内に
臨ませた移送管内に配置したスクリューの回転により、前記収集部から入る凍結物を
前記スクリューの軸線方向に移動させるように構成されている、真空凍結乾燥装置。
【請求項2】
前記スクリューの前記真空凍結装置側の基端部は軸受け部によって軸承され、該軸受け
部の近傍に第1の吸引口が設けられ、前記第1の吸引口を介して前記移送管内を常時真空
に維持するように構成してあり、前記移送管の前記乾燥装置側の先端部は軸受け部に構成
されて前記乾燥装置の筒状部の筒部の端部材を回転自在に支持し、その端部材と前記移送
管の先端部側の軸受け部との間に第2の吸引口を望ませて設け、前記第2の吸引口を介
して前記移送管内及び前記筒状部の内部を真空に維持するように構成されていることを
特徴とする、請求項1に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項3】
前記スクリューは、回転軸の周囲に位置された螺旋状のコイル構造物で、前記移送管の
内壁に近接状態で設けられおり、その回転によって、前記収集部から受けた凍結物を、前
記筒状部に送り込むように構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項4】
前記スクリューは、前記筒状部を回転させるための回転部とは別の回転駆動手段に
よって回転駆動される、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の真空凍乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空凍結乾燥装置及び真空凍結乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液滴を生成し、その液滴を凍結凝固させた凍結粒子を凍結乾燥する凍結乾燥装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、凍結乾燥装置において、凍結した原料を受け取る棚を傾斜させるようにしたものも提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、真空凍結乾燥装置において、噴霧時に得た運動エネルギーによって、凍結粒子を昇華乾燥させるものが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2013/050162号公報
【文献】国際公開WO2010/005021号公報
【文献】国際公開WO2019/235036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献では、短時間で真空凍結乾燥を連続的に行うことができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、短時間で真空凍結乾燥を連続的に行うことができる真空凍結乾燥装置及び真空凍結乾燥方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、(1)本発明は、液を凍結させる真空凍結装置と、前記凍結させた凍結物を昇華及び乾燥させる乾燥装置とを有する真空凍結乾燥装置であって、真空吸引を行う排気経路を有し、前記乾燥装置は、入口部と出口部とを備え、筒形状を有する筒状部と、前記筒状部の周辺部の前記入口部から前記出口部に向かって形成される温度の制御が可能な少なくとも3か所以上の複数の領域に設けられ、前記筒状部の外面の前記複数の領域の温度を調温する調温手段と、前記調温手段を独立して温度制御する温度制御部と、前記筒状部を回転させるための回転部と、を備え、前記筒状部は、前記筒状部の内壁近傍に前記入口部から前記出口部に向かって連続的に設けられる螺旋状の移送手段を有し、前記移送手段は、前記入口部から入る前記凍結物を、前記筒状部内の前記複数の領域に対応する箇所を前記移送手段によって順次移送しながら前記凍結物を連続的に昇華及び乾燥させる。
【0009】
(2)上記(1)の構成において、前記3か所以上の複数の領域は、前記入口部から出口部に向かってそれぞれマイナス温度領域と、前記マイナス温度からプラス40℃の範囲の温度領域と、プラス20℃以上の温度領域を少なくとも有する。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、該物質は、注射剤又は固形剤の医薬品であって、筒状部の周辺をクリーンエアーで覆っている。
【0011】
(4)上記(1)~(3)の構成において、前記回転部は、軸方向に1か所ないしは複数か所設けられた、回転駆動を伝達する回転駆動伝達部と、回転ローラー又は/及びベアリングによって構成され、前記回転駆動伝達部による回転を支持する回転支持部とを有する。
【0012】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの構成において、前記回転部は、回転速度が毎分1/30回転以上1回転以下である。
【0013】
(6)上記(1)~(5)の構成において、前記移送手段は、前記筒状部の内壁に螺旋状の壁部を設けることにより形成されている。
【0014】
(7)上記(1)~(5)の構成において、前記移送手段は、前記筒状部の内壁に形成された溝部により構成され、前記溝部の深さが3mm以上50mm以下である。
【0015】
(8)上記(1)~(7)の構成において、前記筒状部は、接触式又は非接触式の温度検出部を備え、前記温度制御部は、前記温度検出部が前記筒状部の表面温度又は前記筒状部の内部の物質の検出温度に応じて前記調温手段の温度を制御する。
【0016】
(9)上記(1)~(8)の構成において、前記筒状部の外部に設けられ、前記筒状部内の物質の水分量を透明体のガラス又は樹脂の窓部を通して検出する水分検出部を備え、前記温度制御部は、前記水分検出部による前記筒状部内の物質の水分量に応じて前記調温手段の温度を制御する。
【0017】
(10)上記(1)~(9)の構成において、前記筒状部は、材質がステンレスである 。
【0018】
(11)本発明は、真空凍結乾燥方法であって、液を凍結させる真空凍結ステップと、前記凍結させた凍結物を昇華及び乾燥させる乾燥ステップと、排気経路を通じて真空吸引を行うステップとを含み、前記乾燥ステップは、入口部と出口部とを備え、筒形状を有する筒状部であって、前記筒状部の内壁近傍に前記入口部から前記出口部に向かって連続的に設けられる螺旋状の移送手段を有する筒状部を回転させるステップと、前記筒状部の周辺部の前記入口部から前記出口部に向かって形成される温度の制御が可能な少なくとも3か所以上の複数の領域の温度を調温するステップと、前記入口部から入る前記凍結物を、前記筒状部内の前記複数の領域に対応する箇所を前記移送手段によって順次移送しながら前記凍結物を連続的に昇華及び乾燥させるステップとを含む。
【0019】
(12)上記(1)~(10)の構成において、前記連結部は、前記真空凍結装置の収集部に一方端を臨ませ、他方端を前記筒状部内に臨ませた移送管内に配置したスクリューの回転により、前記収集部から入る凍結物を前記スクリューの軸線方向に移動させるように構成されている。
【0020】
(13)上記(14)の構成において、前記スクリューの前記真空凍結装置側の基端部は軸受け部によって軸承され、該軸受け部の近傍に第1の吸引口が設けられ、前記第1の吸引口を介して前記移送管内を常時真空に維持するように構成してあり、前記移送管の前記乾燥装置側の先端部は軸受け部に構成されて前記乾燥装置の筒状部の筒部の端部材を回転自在に支持し、その端部材と前記移送管の先端部側の軸受け部との間に第2の吸引口を望ませて設け、前記第2の吸引口を介して前記移送管内及び前記筒状部の内部を真空に維持するように構成されている。
【0021】
(14)上記(12)又は(13)の構成において、前記スクリューは、回転軸の周囲に位置された螺旋状のコイル構造物で、前記移送管の内壁に近接状態で設けられおり、その回転によって、前記収集部から受けた凍結物を、前記筒状部に送り込むように構成されている。
【0022】
(15)上記(12)~(14)の構成において、前記スクリューは、前記筒状部を回転させるための回転部とは別の回転駆動手段によって回転駆動される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、短時間で真空凍結乾燥を連続的に行うことができる真空凍結乾燥装置及び真空凍結乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る真空凍結乾燥装置の説明図である。
【
図2】
図1の真空凍結乾燥装置において、乾燥装置、連結部及び捕集部を断面図で示したものである。
【
図3】本発明の実施形態の真空凍結乾燥装置の乾燥装置の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態の真空凍結乾燥装置の乾燥装置の平面図である。
【
図5】(A)は乾燥装置の左側面図、(B)は乾燥装置の右側面図である。
【
図7】筒状部31を構成する複数の筒部31A~31Fのうち筒部31Bを示している。
【
図9】検出部が内部の物質の温度又は物質の水分量を検出する様子を示している。
【
図10】実施形態に係る真空凍結乾燥装置の連結部の断面図である。
【
図11】
図7の筒部31Bの半体31BXの他の例を示す図である。
【
図12】本発明の別の実施形態に係る真空凍結乾燥装置の連結部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態に係る真空凍結乾燥装置について説明する。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る真空凍結乾燥装置の説明図である。
図2は、
図1の真 空凍結乾燥装置において、乾燥装置、連結部及び捕集部を断面図で示したものである。
図1に示すように、真空凍結乾燥装置1は、真空凍結装置2と、乾燥装置3と、連結部4と、捕集部5とを有する。
真空凍結乾燥装置1が取り扱う物質は、注射剤又は固形剤の医薬品である。
【0027】
真空凍結装置2は、例えば、原料を含む原料液を真空容器内に噴射ノズル21から噴霧し、噴霧された原料液が凍結して凍結物を生成する。また、真空凍結装置は、原料液をノズルから真空容器内に滴下するものでも良く、滴下された液滴が凍結して凍結物を生成することができる。噴霧又は滴下された原料液は落下する途中において水分が蒸発して蒸発潜熱が奪われることにより自己凍結し、微小の凍結粒子である凍結物となる。凍結物は、開口が小さくなっているテーパー形状を有する収集部22に向けて落下し、収集部22によって集められる。
【0028】
連結部4は、真空凍結装置2と乾燥装置3とを連結するものであり、真空凍結装置2で生成した凍結物を乾燥装置3に搬送するためのものである。
乾燥装置3は、凍結させた凍結物を連続的に昇華及び乾燥させるものである。捕集部5は、乾燥装置3で昇華乾燥することにより形成された乾燥物が筒状部31の出口部31cから放出されるため、これを捕集する。
【0029】
真空凍結乾燥装置1には、真空吸引を行う排気経路が設けられており、排気経路は、本実施形態では連結部4に設けられている。排気経路は、真空凍結装置2、乾燥装置3及び連結部4のいずれに設けられていてもよい。排気経路を設けることによって、内部は減圧雰囲気に維持され、液体が存在しにくく、固体または気体が存在する環境になっている。
筒状部31と捕集部5は、周辺がクリーンエアー6によって覆われている。筒状部3の分解可能な接続部分の周辺外部表面部をすべてクリーンエアー6で覆い、リークに対してクリーンエアーが入る構造を有する。
【0030】
図3は、本発明の実施形態の真空凍結乾燥装置の乾燥装置の正面図である。
図4は、本発明の実施形態の真空凍結乾燥装置の乾燥装置の平面図である。
図5(A)は乾燥装置の左側面図、(B)は乾燥装置の右側面図である。
図6は、
図1のA-A断面図である。
【0031】
図1~
図6に示すように、乾燥装置3は、筒状部31と、調温手段30a~30jと、 回転部7と、温度制御部8とを備える。
筒状部31は、水平方向に直線状に延びる筒形状を有しており、開口を有し、凍結物が入る入口部31bと、昇華及び乾燥した乾燥物の出口となる出口部31cとを備えている
(
図2参照)。
【0032】
筒状部31内には、筒状部31の内壁近傍に入口部31bから出口部31cに向かって 連続的に設けられる螺旋状の移送手段31aが設けられている。連結部4から搬送されて
きた凍結物は、筒状部31の入口部31bから入り、螺旋状の移送手段31aによって出口部31cまで移送され、その間で、凍結物は連続的に昇華及び乾燥が行われる。
【0033】
調温手段30a~30jは、筒状部31の外側の周辺部に設けられており、筒状部31の外面の複数の領域40a~40jの温度を調温する。
【0034】
複数領域40a~40jは、筒状部31の入口部31bから出口部31cに向かって設けられており、それぞれが独立して温度の制御が可能である。調温手段30a~30jは、複数の領域40a~40j内を調温することで、複数の領域40a~40jに対応する筒状部31内の箇所の温度を調整する。
ここで、調温手段30a~30jは、10個設けられており、調温手段30a~30jによって形成される複数の領域も、10個設けられている。複数の領域40a~40jは、少なくとも3か所以上の領域を有することが好ましい。なお、複数の調温手段をまとめて調温手段ということもあり、各調温手段をそれぞれ調温手段ということもある。
【0035】
回転部7は、旋回軸を中心に、筒状部31を回転させるものである。回転部7によって筒状部31が回転すると、筒状部31の入口部31bから入ってくる凍結物が螺旋状の移送手段31aを通って、筒状部31内を出口部31cに向かって順次、移送される。その間で、凍結物は連続的に昇華及び乾燥が行われる。回転部7は、筒状部31だけを回転させるように構成されており、筒状部31の外側の調温手段30a~30jは回転しないように構成されている。調温手段30a~30jは、回転しないように固定されている。
温度制御部8は、情報を入出力する機能を有し、筒状部31の外面に形成された複数の領域40a~40jの温度を調温する調温手段30a~30jを独立して温度制御する。
【0036】
次に調温手段30a~30jについて説明する。
図1及び
図2に示すように、調温手段30a~30jは、筒状部31の周囲の外側の空間をそれぞれ独立して温調することができ、筒状部31の内部の各空間をそれぞれ調温することができる。
調温手段30aは、領域40aの空間を調温し、領域40aに対応する筒状部31の内部の空間を調温する。また、調温手段30bは、領域40bの空間を調温し、領域40bに対応する筒状部31の内部の空間を調温する。調温手段30cは、領域40cの空間を調温し、領域40cに対応する筒状部31の内部の空間を調温する。同様にして、調温手段30d~30jは、領域40d~40jの空間を調温し、領域40d~40jに対応する筒状部31の内部の空間を調温する。
筒状部31の入口部31bから入ってきた凍結物は、筒状部31内のそれぞれ調温手段 30a~30jによって温度調整された空間を進んで行くことにより、連続的に昇華及び
乾燥が行われる。
【0037】
次に、
図3~
図6を用いて、各調温手段30a~3jの一例について具体的に説明する。調温手段30bを例に取って説明するが、他の調温手段も同様の構成である。調温手段30bは、それぞれ、筒状部31の入口部31b側の壁部32と、出口部31c側の壁部33と、筒状部31を囲むように、壁部32、33に囲まれた空間を覆うカバー34と、壁部32、33にそれぞれガスを供給するダクト35a、35bとを有する。壁部32 、33は、ともに円形の形状を有する。カバー34は、内部が目視できるように透明の樹脂などの部材で形成されており、壁部32と壁部33とで囲まれた空間を覆うものである。壁部32と壁部33には、ダクト35a、35bが繋がっており、ダクト35a、35bからガスを供給することができる。供給されたガスによって領域40a~40j内が目的の温度に調温される。
【0038】
ダクト35a、35bには、不図示の送風手段が接続されており、温度管理されたガスが供給される。壁部32と壁部33とカバー34で覆われた領域40a~40j内に、ダクト35a、35bからガスが供給されることにより、複数の領域40a~40j内の温度が独立して制御される。ガスとしては、例えば空気を供給することができるが、空気には限定されない。
なお、調温手段30a~30jとして、ガスを利用する場合を例にとって説明したが、 これに限定されることなく、電気ヒータ、冷媒等を用いることもできる。
【0039】
壁部32、33の内側は、筒状部31の外形に合せて円形の開口を有している。壁部32、33の内側の開口は、筒状部31の外周に近接していることが好ましい。
【0040】
次に、複数領域40a~40jの温度について説明する。
複数の領域40a~40jには、筒状部31の入口部31bから出口部31cに向かって、少なくとも、3つ以上の領域を有し、この3つ以上の領域には、下記(1)~(3)の温度領域を含む。温度領域の定義は、プロセスが安定操業状態となった時の管である筒状部31自身の温度を、筒状部31の外面と接触・非接触で測定しての温度とする。
(1)マイナス温度領域と、(2)マイナス温度からプラス40℃の範囲の温度領域と、(3)プラス20℃以上の温度領域を少なくとも有する。
(1)のマイナス温度領域は、例えば-40℃、-30℃、-20℃等のようにマイナスの温度領域のことをいう。
(2)の(1)のマイナス温度からプラス40℃の範囲の温度領域は、(1)のマイナス温度領域のあるマイナス温度~+40℃の範囲の温度領域のことをいい、例えば(1)のマイナス温度領域のある温度が、-40℃の場合は、この-40℃から+40℃になるため、(2)の温度領域は、-40℃から0℃の温度領域となる。また、(1)のマイナス温度領域のある温度が、-20℃の場合は、この-20℃から+40℃の範囲となるため、(2)の温度領域は、-20℃から20℃の温度領域となる。
(3)のプラス20℃以上の温度領域は、(2)の上限の温度が0℃の場合、0℃+20
℃以上の温度領域のことをいう。
【0041】
筒状部31の入口部31bから出口部31cに向かって、複数の領域40a~40jが 、上記(1)~(3)の少なくとも3つの領域を含み、凍結物又は乾燥物が、この(1)~(3)の温度領域を含む複数の領域40a~40jに対応する筒状部31内の箇所を移送手段31aによって順次移送しながら、凍結物又は乾燥物は、昇華及び乾燥が連続的に行われる。
【0042】
次に、筒状部31について説明する。
筒状部31は、材質がステンレスであることが好ましい。筒状部31は、長さが例えば100mm~2000mm程度の範囲であることが好ましく、より好ましくは150mm~1000mmの範囲であり、さらに好ましくは200mm~500mmの範囲である。
【0043】
筒状部31は、複数の筒部31A~31Fを繋ぎ部31G~31Kで接続することにより一つの筒形状を形成している。筒状部31は、繋ぎ目を設けることなく、一つの筒形状で形成するようにしてもよい。筒部31B、31C、31D、31Eは、同一形状の筒部からなる。筒部31Aは、少し短い長さの筒部である。筒部31Fは、先端に行くほど断面形状が小さくなるよう形成されている。繋ぎ部31G~31Kは、隣り合う筒部が外れないように繋ぎ止める。
【0044】
筒状部31は、上述したように、筒状部31の内壁近傍に入口部31bから出口部31cに向かって連続的に設けられる螺旋状の移送手段31aが設けられている。この移送手段31aは、筒状部31の内周に壁部又は溝を設けることで、螺旋形状を形成することができる。また、螺旋形状の形成は、筒状部31の内周にスクリューを埋入する方法も含む
。
移送手段31aは、入口部31bから入ってくる凍結物を、複数の領域40a~40jの内側に位置する筒状部31内を順次移送しながら、凍結物を連続的に昇華及び乾燥させて、昇華乾燥された乾燥物を出口部31cに導く。
【0045】
次に回転部の構成について説明する。
図3~
図6に示すように、回転部7は、モーター71、プーリー72、73、ベルト74、回転軸75、76及び、回転ローラー77、78を備えている。
モーター71は、回転駆動源となる。プーリー72、73、ベルト74及び回転軸75 、76が回転駆動を伝達する回転駆動伝達部として機能する。回転ローラー77、78が、回転駆動伝達部による回転を支持する回転支持部である。なお、回転支持部は、回転ローラー77、78にベアリングを加えて構成することができ、回転ローラー77に代えて
ベアリングによって構成することもできる。
【0046】
プーリー72及び73には、ベルト74が掛けられている。ベルト74を介してモーター71の回転力が伝達される。回転ローラー77は、筒状部31の両側の下方に配設されている。筒状部31は、両側に配設されている回転ローラー77上に載置されている。
プーリー73は、回転軸75の一方端付近に取り付けられている。プーリー73の内側に、固定台に取り付けられた回転ローラー78が設けられており、回転軸75の他端にも
同様に固定台に取り付けられた回転ローラー78が設けられている。回転ローラー78、78の間には、8個の回転ローラー77が回転軸75に取り付けられている。
【0047】
回転軸76は、一方端には固定台に取り付けられた回転ローラー78と、他方端にも固 定台に取り付けられた回転ローラー78とを有する。回転ローラー78、78の間には、8個の回転ローラー77が回転軸76に取り付けられている。回転軸75に取り付けられた回転ローラー77は駆動ローラーであり、回転軸76に取り付けられた回転ローラー77は従動ローラーである。
【0048】
モーター71が回転すると、プーリー72を通じてベルト74が回転し、プーリー73の回転によって、回転軸75が回転し、回転軸75に固定された回転ローラー77が回転することで、筒状部31が回転し、回転軸76に取り付けられている従動ローラーとして回転ローラー77が回転する。
次に、筒状部31の回転速度について説明する。筒状部31は、回転部7によって、回転速度が毎分1/30回転以上1回転以下の範囲 で回転することが好ましい。
【0049】
次に、温度検出部及び水分検出部について説明する。
図3及び
図4に示すように、筒状部31は、ガラス窓(窓部)36が周方向に所定の間隔で連続して設けられており、このガラス窓36は、筒状部31の長手方向に複数個所(本実施形態では8か所)に設けられている。このガラス窓36は、外部から内部の物質の状態を検知及び検出することができるようにするために設けられている。ガラス窓36は、樹脂で形成することもできる。
【0050】
筒状部31のガラス窓36が周方向設けられている下部には、検出部37が設けられている。検出部37は、少なくとも3種類を含み、筒状部31の内部の物質の温度を検出する温度検出部と、筒状部31の外表面(壁表面)の温度を検出する温度検出部と、筒状部31の内部の物質の水分量を検出する水分検出部とを含む。
【0051】
検出部37が、筒状部31の内部の物質の温度を検出する温度検出部として機能する場合、接触式又は非接触式で構成することができる。温度検出部として機能する検出部37が、接触式の場合は、筒状部31の表面温度を検出する。また、温度検出部として機能する検出部37が、非接触式の場合は、筒状部31のガラス窓36を通じて筒状部31の内部の物質の温度を検出する。
温度制御部8は、検出部37が筒状部31の表面温度又はガラス窓36を通じて検出した筒状部31の内部の物質の検出温度に応じて、調温手段30a~30jの温度を独立して制御することができる。
【0052】
また、検出部37が、筒状部31の内部の物質の水分量を検出する水分検出部として機能する場合、透明体のガラス窓36を通して筒状部31内の物質の水分量を検出することができる。温度制御部8は、検出部37による筒状部内の物質の水分量に応じて、調温手段30a~30jの温度を独立して制御することができる。
【0053】
図9は、検出部が内部の物質の温度又は物質の水分量を検出する様子を示している。
図9に示すように、検出部37が、筒状部31の内部の物質の温度を検出する温度検出部と、筒状部31の内部の物質の水分量を検出する水分検出部として機能する場合、筒状部31の透明体のガラス窓36を通じて、筒状部31内部の物質Xの温度と、筒状部31内部の物質の水分を検出することができる。
【0054】
検出部37は、筒状部31の周方向に所定の間隔で設けられた各ガラス窓36を通じて、それぞれのガラス窓36を通じて、筒状部31内部の物質Xの温度と、筒状部31内部の物質の水分量を検出することができる。また、ガラス窓36と検出部37は、筒状部31の長手方向の複数の位置に設けられているため、各筒状部31内のそれぞれの位置で正確に物質の温度と水分量を検出することができる。
【0055】
次に、移送手段31aについて説明する。
図7は、筒状部31を構成するする複数の筒部31A~31Fのうち筒部31Bを示している。
図7(a)は
図3に示す筒部31Bの斜視図、(b)は筒部31Bの正面図、(c)は筒部31Bの側面図、(d)は筒部31Bの断面図、(e)は(d)のB部を拡大して示した図である。
図8は、筒部31Bの半体31BXを示す図である。
なお、
図7及び
図8では、
図3の筒部31Bにおいて、螺旋状の移送手段31aを中心にするため、ガラス窓36については省略して示している。
図7及び
図8に示すように、筒状部31を構成する筒部31Bは、筒状に構成されており、開口端の両側に半径方向に突出する縁部31dが形成されている。隣り合う筒部31A ~31Fの縁部31d同士を固定することによって一つの筒状部31が構成される。隣り合う筒部31A~31Fの縁部31d同士は、ヘルールの接続、クランプやボルト締めにより固定する。
【0056】
筒部31Bには、螺旋状の移送手段31aの一部が一方の端部から他方の端部まで連続的に形成されている。
図7(e)に示すように、筒部31BXの内壁に1周目の壁部31a1、2周目の壁部31a2ように、移送手段31aの一部として連続的に壁部が形成されることにより、筒部31BX内に移送手段31aの一部を形成することができる。
壁部31a1と壁部31a2の高さは、移送手段31aの高さとなり、例えば3mm以上50mm以下の範囲で構成することが好ましい。 壁部31a1と壁部31a2のピッチは、螺旋状の移送手段31aのピッチとなり、例えば5mm以上20mm以下の範囲で構成することが好ましい。
図8では、筒部31Bの半体31BXを示しており、筒部31Bは、この半体31BXを二つ結合すると、一つの筒部31Bを構成できる。筒部31Bの半体31BXは、二つを結合したときに、筒部31B内に螺旋状の移送手段31aの一部を形成することができる。
【0057】
図10は、実施形態に係る真空凍結乾燥装置の連結部の断面図である。
図10に示すように、連結部4は、真空凍結装置2の収集部22と、乾燥装置3の入口31b側の端部との間に設けられており、真空凍結装置2で生成した凍結物を乾燥装置3に搬送するためのものである。端部301付近には、連結部4によって搬送される凍結物を受け取る受取口302を有する。
連結部4は、内側管部41と、外側管部42と、内側管部41内に設けられたスクリュー43と、乾燥装置3の端部301から連結部4の内側管部41と外側管部42に延びる中間管部44を有する。外側管部42と中間管部44との間には、乾燥装置3側から、ベアリング45と、エアーシール46とを備えている。
【0058】
エアーシール46は、回転軸に接触させずに流路からエアーを供給して回転軸をシールするものである。
【0059】
図11は、
図7の筒部31Bの半体31BXの他の例を示す図である。
図7及び
図8に示した例では、筒部31の内壁に壁部を形成して移送手段31aを形成するようにしたが、
図11に示すように、筒部31の内壁に溝部131a1、131a2、…を形成することによって移送手段131aを形成するようにしてもよい。
筒部31Bは、半体131BXを二つ結合すると、一つの筒部31Bを構成できる。筒部31Bの半体131BXは、二つを結合したときに、螺旋状の移送手段131aを構成する溝部は、連続するようにそれぞれ形成される。溝部131a1と溝部31a2の深さは、移送手段131aの深さとなり、例えば3mm以上50mm以下の範囲で構成することが好ましい。溝部131a1と溝部131a2のピッチは、移送手段131aのピッチとなり、例えば5mm以上20mm以下の範囲で構成することが好ましい。
【0060】
筒状部31の内周面には、回転軸を中心とする移送手段131aとして螺旋状の溝部を形成することで、筒状部31内を螺旋送りする作用が付与され、凍結物又は乾燥物を連続的に移送することができる。
【0061】
本実施形態によれば、短時間で真空凍結乾燥を連続的に行うことができる真空凍結乾燥装置及び真空凍結乾燥方法を提供することができる。
【0062】
本実施形態の真空凍結乾燥方法は、液を凍結させる真空凍結ステップと、凍結させた凍結物を昇華及び乾燥させる乾燥ステップと、排気経路を通じて真空吸引を行うステップと 、を含み、乾燥ステップは、入口部31bと出口部31cとを備え、筒形状を有する筒状部31であって、筒状部31の内壁近傍に入口部31dから出口部31cに向かって連続的に設けられる螺旋状の移送手段31aを有する筒状部31を回転させステップと、筒状部31の周辺部の入口部31bから出口部31cに向かって形成される温度の制御が可能な少なくとも3か所以上の複数の領域40a~40jの温度を調温するステップと、入口部31bから入る凍結物を、筒状部31内の複数の領域30a~30jに対応する箇所を移送手段31aによって順次移送しながら凍結物を連続的に昇華及び乾燥させるステップとを含む。
【0063】
次に、上記連結部4の別構造について、
図12に基づいて説明する。
図12は本発明の別の実施形態に係る真空凍結乾燥装置の連結部4Bの断面図である。
先ず、液を凍結させる真空凍結装置2と前記凍結させた凍結物を昇華及び乾燥させる乾燥装置3とからなり、前記真空凍結装置2から前記凍結物を、連結部4Bを介して前記乾燥装置3に移動させるように構成した真空凍結乾燥装置において、連結部4Bが、前記真空凍結装置2の収集部22に臨ませた移送管55内に設けたスクリュー58によって、前記凍結物がその軸線方向に移動されるように構成されている。尤も、スクリュー43の移送は、必ずしも水平方向でなくてもよく、前記筒状部31への凍結物の移送が行われればよい。
【0064】
前記スクリュー58の基端部(左方端部)は、軸受け部56(ここではベアリング)によって軸承され、該軸受け部の近傍に第1の吸引口53が設けられ、前記移送管55内を常時真空(高い真空度であればよい)に維持するように構成してある。この第1の吸引口53は、真空ポンプに接続されるが、図示、説明は省略する。
前記移送管55の先端部は、軸受け部51に構成され、前記乾燥装置の筒状部31の筒部31Aの端部材52を回転自在に支持するように構成され、且つ、前記端部材52と前記軸受け部51との間に第2の吸引口54を望ませて設け、前記移送管55内及び前記筒状部31の内部を真空に維持するように構成されている。この吸引口54が真空ポンプに接続されるが、ここでは図示、説明を省略する。
【0065】
前記スクリュー58は、回転軸57の周囲に位置された螺旋状のコイル構造物で、前記移送管55の内壁に近接状態で設けられおり、その回転によって、前記収集部22から受けた凍結物を、前記筒状部31に送り込むように構成されている。このコイル構造物は、螺旋形状であればよく、断片体が実質的なコイルを形成するものであってもよく、要は、連続した送り機能を発現できる構造体であればよい。上述の近接状態の設置とは、コイル構造物と移送管55との間に凍結物が挟まれて損傷されることがないようにするためのクリアランスを持たせるものである。
【0066】
回転軸57の筒状部31とは反対側の端部に駆動用のモーター60と、モーター60の回転力を回転軸57に伝えるカップリング59が配置してある。このように、筒状部31を回転駆動するためのモーター71とは、別にスクリュー58の回転駆動するモーター60を設けることにより、乾燥装置3への凍結物の搬送用を任意に変更することができ、例えば、モーター60の回転速度を上げて搬送量を増加せることができる。また、前記連結部4(
図10参照)では、スクリュー43の乾燥装置3側に端部を筒状部31の筒部31Aに機械的に結合させる必要があるため、連結部4と筒状部31との境界部分の構造が複雑となるが、別形態の連結部4Bでは、スクリュー58の先端が筒状部31内に進入し、凍結物の搬送の搬入が効率よく行われる利点がある。
【0067】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0068】
1 真空凍結乾燥装置
2 真空凍結装置
3 乾燥装置
4 連結部
4B 連結部
6 クリーンエアー
7 回転部
8 温度制御部
30a~30j 調温手段
31 筒状部
31a 螺旋状の移送手段
36 ガラス窓(窓部)
37 検出部(温度検出部、水分検出部)
40a~40j 領域
46 エアーシール