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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】空調装置および熱交換器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018064211
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019172129
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】大川 翔太
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-225122(JP,A)
【文献】特開2014-223898(JP,A)
【文献】特開2010-023746(JP,A)
【文献】実開昭62-197412(JP,U)
【文献】特開2008-068732(JP,A)
【文献】実開平03-025319(JP,U)
【文献】特開2004-276723(JP,A)
【文献】実開平03-060107(JP,U)
【文献】特開2005-001408(JP,A)
【文献】特開2004-098740(JP,A)
【文献】特開2012-202189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路を内部に有する空調ケース(30)と、
車室内に送風する空気を前記空気通路に流下させる送風機(31)と、
前記空調ケースの内部に設置されて、前記送風機によって流下する空気と内部流体とが熱交換する熱交換コア部を有する熱交換器(32)と、
前記空調ケースの内部と外部を連通する排出通路を形成するように前記空調ケースに設けられた排出ポート(5)と、
を備え、
前記排出ポートは、空気が通過する前記熱交換コア部における通過入口面(320)よりも空気流れの上流において、前記空調ケースの内部に少なくとも一部が開口している開口端部(50)を有し、
前記排出ポートの前記開口端部は、前記通過入口面に対して交差する前記熱交換器の側壁部に対向して重なており、
さらに前記排出ポートの前記開口端部は、前記熱交換器における前記側壁部と前記空調ケースとの間をシールしている側部パッキン(326)と、前記熱交換器の下側タンク(322)と前記空調ケースとの間をシールしている下部パッキン(324)との両方に隣接する側方空間(311)において、開口して設けられている空調装置。
【請求項2】
前記排出ポートは、前記開口端部が前記熱交換器よりも後方で後方に向けて開口するように、前記空調ケースにおいて上方に立設する後部側壁部(310d)に設けられている請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記排出ポートには、前記排出通路の出口端部(51)に蓋をする蓋部材(5a)が装着されている請求項1または請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
車両に搭載された空調ユニット(3)の空調ケース(30)の内部に設けられた熱交換器(32)を洗浄する熱交換器の洗浄方法であって、
主板部(71)を備える洗浄用ツール(7)を前記空調ケースの内部に差し入れて、送風機(31)の吹出口(310)に対して前記吹出口の両横に位置する壁部にわたって沿うように前記主板部を案内し、前記洗浄用ツールを、前記熱交換器の熱交換コア部において空気が通過する通過入口面(320)に対して空気流れの上流側に位置させること、
前記洗浄用ツールを前記熱交換器の上流側に設置した状態で、水供給装置(8)を前記空調ケースの内部に差し入れて、前記水供給装置によって前記通過入口面に対して空気流れの上流側から水を吹きつけること、
前記車両の後部が前部よりも低い位置になるように前記車両を傾かせること、
前記空調ケースの内部と外部を連通する排出通路を形成し、かつ前記熱交換器よりも後方において前記空調ケースに設けられた排出ポート(5)を通じて水や異物を外部に排出すること、
を備える熱交換器の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄用ツールは、上部が開口する容器部(72)を前記主板部の下部に一体に備える請求項に記載の熱交換器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、車室内を空調する空調装置および熱交換器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建設機械における運転室を空調する空調装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-295319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械等の車両は砂、小石、泥、埃等が飛散しやすい環境で使用されるため、空調装置は、外気とともに砂等の異物を空調ユニット内に取り込んでしまうことがある。このような異物が空調ユニット内に吸い込まれると、異物は空調ユニット内に設置された蒸発器を通過できずに蒸発器に付着したり、空調ユニットを形成する空調ケースの底部に溜まったりして空調装置の性能低下を引き起こすことがある。
【0005】
この明細書における開示の目的は、熱交換器から脱落した異物を空調ユニットの外部に排出可能な空調装置および熱交換器の洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された空調装置の一つは、空気通路を内部に有する空調ケース(30)と、車室内に送風する空気を空気通路に流下させる送風機(31)と、空調ケースの内部に設置されて、送風機によって流下する空気と内部流体とが熱交換する熱交換コア部を有する熱交換器(32)と、空調ケースの内部と外部を連通する排出通路を形成するように空調ケースに設けられた排出ポート(5)と、を備え、排出ポートは、空気が通過する熱交換コア部における通過入口面(320)よりも空気流れの上流において、空調ケースの内部に少なくとも一部が開口している開口端部(50)を有し、
排出ポートの開口端部は、通過入口面に対して交差する熱交換器の側壁部に対向して重なており、
さらに排出ポートの開口端部は、熱交換器における側壁部と空調ケースとの間をシールしている側部パッキン(326)と、熱交換器の下側タンク(322)と空調ケースとの間をシールしている下部パッキン(324)との両方に隣接する側方空間(311)において、開口して設けられている。
【0008】
この空調装置によれば、熱交換コア部を通過できずに付着していた土砂、泥を含む異物が脱落した場合に、熱交換コア部の通過入口面よりも空気流れの上流において少なくとも一部が開口する開口端部を通じて空調ケースの外部に排出することができる。以上によれば、熱交換器から脱落した異物を空調ユニットの外部に排出可能な空調装置を提供できる。
【0010】
この熱交換器の洗浄方法によれば、熱交換器の通過入口面に対して空気流れの上流側から水を吹きつけることにより、熱交換コア部に付着した土砂、泥を含む異物を洗い流すことができる。さらに、車両の後部が前部よりも低くなるように車両が傾いているので、熱交換器よりも低い位置にある排出ポートに、水や異物を集めて流下させることができる。以上によれば、熱交換器から脱落した異物を空調ユニットの外部に排出可能な熱交換器の洗浄方法を提供できる。
【0011】
開示された熱交換器の洗浄方法の一つは、車両に搭載された空調ユニット(3)の空調ケース(30)の内部に設けられた熱交換器(32)を洗浄する熱交換器の洗浄方法であって、主板部(71)を備える洗浄用ツール(7)を空調ケースの内部に差し入れて、送風機(31)の吹出口(310)に対して吹出口の両横に位置する壁部にわたって沿うように主板部を案内し、洗浄用ツールを、熱交換器の熱交換コア部において空気が通過する通過入口面(320)に対して空気流れの上流側に位置させること、洗浄用ツールを熱交換器の上流側に設置した状態で、水供給装置(8)を空調ケースの内部に差し入れて、水供給装置によって通過入口面に対して空気流れの上流側から水を吹きつけること、車両の後部が前部よりも低い位置になるように車両を傾かせること、空調ケースの内部と外部を連通する排出通路を形成し、かつ熱交換器よりも後方において空調ケースに設けられた排出ポート(5)を通じて水や異物を外部に排出すること、を備える。
【0012】
この熱交換器の洗浄方法によれば、下部に容器部を備える洗浄用ツールを通過入口面に対して空気流れの上流側に位置させた状態で、通過入口面の上流側から水を吹きつけることにより、熱交換コア部に付着した土砂、泥を含む異物を洗い流すことができる。また、車両の後部が前部よりも低くなるように車両が傾いているので、熱交換器よりも低い位置にある排出ポートに、水や異物を集めて流下させることができる。さらに、洗い流した異物を洗浄用ツールの容器部で捕捉できるので、排出ポートから排出する異物の量を抑えることに寄与する。この熱交換器の洗浄方法によっても、熱交換器から脱落した異物を空調ユニットの外部に排出可能な熱交換器の洗浄方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の空調装置を搭載する油圧ショベルを示した図である。
図2】油圧ショベルにおける運転席を上からみた図である。
図3】運転席を取り外した状態の運転室を示した斜視図である。
図4図3に示す状態から幕板を外して、空調ユニットを後方に見た正面図である。
図5】運転室における床板に固定した状態の空調ユニットを示した斜視図である。
図6】空調ユニットを斜め後方から見た斜視図である。
図7】空調ユニットを上からみた平面図である。
図8図7におけるVIII-VIII線断面図である。
図9】ファンケーシングの吹出部を示した斜視図である。
図10】蒸発器を上流側からみた斜視図である。
図11】蒸発器を下方からみた底面図である。
図12】異物を排出可能な排出ポートと蒸発器との位置関係を示した部分断面図である。
図13】空調ユニットを車幅方向に見た側面図である。
図14図13におけるXIV-XIV線断面図である。
図15】空調ユニットを斜め上前方から見た斜視図である。
図16】異物を捕捉可能な洗浄用ツールを示した正面図である。
図17】洗浄用ツールの側面図である。
図18】熱交換器を洗浄する方法を説明するための説明図である。
図19】作業アタッチメントを用いて、キャビンの前部を後部よりも高くした状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態の空調装置について、図1図19を参照して説明する。各図における上方、下方、前方、後方は、車両または空調ユニット3に対する、上方、下方、前方、後方を示し、車幅方向は車両の運転席における前後方向と直交する横方向を示している。空調装置は、自動車、建設機械車両、作業車両、バス車両、大型車両、農業用機械等の移動体に適用可能である。空調装置は、建機用車両、作業車両として、例えば、ラフテレーンクレーン、油圧ショベル、ホイルローダ、ブルドーザ、トラクタ、コンバイン、フォークリフト、クローラクレーン、トラッククレーン、モータグレーダ等の室内を空調可能な装置である。空調装置が適用可能な車両は、タイヤ等の車輪が回転することにより走行する車両に限定されない。空調装置が適用可能な車両は、例えば、キャタピラによって移動する車両でもよい。第1実施形態では、一つの例示として、空調装置を建設機械車両に含まれる油圧ショベル1に適用した場合について説明する。
【0015】
図1は油圧ショベル1を示している。油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体10と上部旋回体12を含む機体と、上部旋回体12の前部に取り付けられた作業アタッチメント11とを備えている。上部旋回体12は、下部走行体10の上に縦軸まわりに旋回自在に設置されている。上部旋回体12は、上部旋回体12の底部を構成する架台であるアッパーフレーム12aとキャビン12bとカバー部12cとカウンタウェイトとを備えている。カウンタウェイトは、油圧ショベル1の作業中に作業アタッチメント11に荷重がかかった場合に機体が浮きにくいように油圧ショベル1の重量バランスを調整する機能を有する。
【0016】
作業アタッチメント11は、ブーム11a、アーム11b、バケット11cを備えている。ブーム11aは、上部旋回体12に対して上下に起伏可能に装着されている。アーム11bは、ブーム11aの先端に前後方向に揺動可能に装着されている。アーム11bの先端には、バケット11cが揺動可能に装着されている。ブーム11a、アーム11b、バケット11cのそれぞれは、シリンダの伸縮動作によって揺動される。シリンダは、油圧ポンプによって発生する油圧を用いて伸縮される。
【0017】
キャビン12bは作業を行う乗員が乗り込む運転室を形成している。キャビン12bの内部には、運転者が座る運転席12b2、操作用機器、空調装置の空調ユニット3等が設置されている。図2に示すように、運転室には、床板12b1上に運転席12b2が設置されている。運転席12b2は、運転者が着座する座席12b2aと、座席12b2aの後部側に設けられた背もたれ部12b2bと、アームレストと、ヘッドレストとを備えている。乗員は、操作レバー装置12b3を含む操作入力部によって、車両の走行や作業等に関わる操作、ブーム11a等の伸縮、起伏に係る操作等を実施可能である。油圧ショベル1は、運転者による操作レバー装置12b3等の操作に応じてブーム11a、アーム11bを上下に揺動させつつバケット11cを揺動させることにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0018】
図3は運転席12b2を取り外した状態の運転室をキャビン12bの斜め上前方からみた図である。空調ユニット3における内気吸込口30aとフット吹出口30eを除く部分の前面は、幕板4によって目隠しされている。図4図3に示す状態から幕板4を取り外した状態の空調ユニット3をキャビン12bの前方からみた図である。図5に示すように、空調ユニット3は、運転席12b2の下に収容された状態で運転室の床板12b1の後部に固定されている。
【0019】
空調ユニット3は、空調ケース30に収容される各空調機能部品を有している。空調ケース30は、内部に空気通路を有し、この空気通路の所定の位置に各空調機能部品が設置されている。空調機能部品には、送風機、空気を冷却する冷却装置、空気を加熱する加熱装置、温風と冷風の風量割合を調整するドア、空調風を吹き出す吹出口を切り換える切換装置等が含まれる。
【0020】
空調装置は、キャビン12bの室内を、例えば自動空調運転によって空調可能な装置である。空調装置は、キャビン12b内に設置される空調ユニット3と、空調ユニット3に内蔵された蒸発器32を流通する冷媒が循環する冷媒回路をなす冷凍サイクルとを備えている。
【0021】
図6は斜め後方から見た空調ユニット3を示しており、図7は上からみた空調ユニット3を示している。図8は空調ユニット3の内部構成を示している。
【0022】
図6および図7に示すように、空調ケース30には、空気取入口である内気吸込口30aと外気吸込口30bとが設けられている。内気吸込口30aは、運転室の空気を空調ユニット3の前方から後方に向けて取り入れるように前方に開口して設けられている。外気吸込口30bは、キャビン12bの外部の空気である外気を空調ユニット3内に車幅方向に取り入れるように側方に開口して設けられている。外気吸込口30bには外気取入用ダクトが接続されている。外気吸込口30bは、外気取入用ダクトによってキャビン12bの外部に連通している。
【0023】
外気吸込口30bは、内気吸込口30aよりも後方において車幅方向に開口している。送風機31の吸込部は、内気吸込口30aと外気吸込口30bよりも後方に位置している。外気吸込口30bから車幅方向に延びる通路と内気吸込口30aから後方に延びる通路とは、送風機31の吸込部よりも上流に位置する。
【0024】
内気吸込口30aと外気吸込口30bは、合流部に設けられた内外気切替えドアによって、空気取入れモードに対応してその開放、閉鎖が切替え自在に行われる。空調ユニット3は、合流部において、内気吸込口30aに連通する内気側通路が開放されて外気吸込口30bに連通する外気側通路が閉鎖された場合は内気導入モードを実施する。空調ユニット3は、内気側通路の一部が閉鎖されて外気側通路が開放された場合は外気導入モードを実施する。
【0025】
送風機31は、回転軸方向、または吸込み方向を車両の前後方向に向け、吹き出し方向を前後方向に直交する車幅方向に向けるように設置されている。送風機31のファンケーシング31aは、前方に開口する吸込部と車幅方向に開口する吹出部とを有し、ファンの周囲にスクロールの通風路を形成している。
【0026】
図7図8に示すように、空調ケース30には、室内に吹き出される空調された空気が通過する、フット吹出口30e、前方側のフェイス吹出口30c、後方側のフェイス吹出口30dが少なくとも設けられている。前方側のフェイス吹出口30cは、送風用ダクトを介して運転室における所定の部位に連通している。送風用ダクトは、キャビン12bの前面窓に向けて空調空気を吹き出すことにより、例えばデフロフスタとして前面窓の曇り等を除去する機能を有するものでもよい。
【0027】
図8に示すように、後方側のフェイス吹出口30dは、吹出しモードに対応して切換ドア35によって開閉される。前方側のフェイス吹出口30cとフット吹出口30eは、吹出しモードに対応して切換ドア36によって開閉される。
【0028】
ファンケーシング31aの吹出部は、空調ケース30内の空気通路につながっている。この空気通路は、蒸発器32が横断するように設置されている冷風通路を有している。冷風通路は、ヒータコア33に流入する空気が通る温風通路に分岐する。冷風通路および温風通路の下流側は、冷風通路と温風通路とをそれぞれ流れてきた空気が混合される空気混合部につながっている。送風機31よりも下流側における空気通路には、上流側から下流側に進む順に、蒸発器32、エアミックスドア34、ヒータコア33が設置されている。フット吹出口30e、前方側のフェイス吹出口30c、後方側のフェイス吹出口30dは、それぞれ空気混合部に連通している。
【0029】
図9に示すように、ファンケーシング31aは、吹出口310bが形成された吹出ユニット310を備えている。吹出ユニット310は、空調ケース30において蒸発器32を収容する部位と連結する構成を備えている。吹出ユニット310は、矩形状の板状部材であり、空調ケース30と連結する部位に矩形状の枠部を有している。この枠部は、吹出口310bの周囲を取り囲む部分であり、ファンケーシング31aにおける最下流部位である。
【0030】
枠部における下部には、下方受け部60が設けられている。下方受け部60は、空調ケース30において連結される部位とともに、蒸発器32の下側タンク322を支持し下側タンク322の下方に下方空間を形成する。図12に示すように、下方受け部60は、空調ケース30側の部位と連結されて前述の下方空間を形成することにより、蒸発器32の下方に重力により流下した水等を貯えることができる。下方受け部60の中央部には、すなわち、枠部の下端中央部には半円筒状部が設けられている。この半円筒状部は空調ケース30側の部位と結合して筒状部を形成することにより、前述の下方空間に流下したドレン水を排水可能な水抜き部6として機能する。下方受け部60が形成する下方空間と水抜き部6とは蒸発器32の直下に位置している。また、水抜き部6は、一つのケース部材に筒状部として設けられている構成でもよい。
【0031】
吹出ユニット310は、吹出口310bの上方に上下方向および前後方向に延びる平面をなす上壁部310aを有している。吹出ユニット310は、上壁部310aの下端から、吹出口310bの両横、すなわち吹出口310bの前方側および後方側のそれぞれに傾斜状壁部310cを有している。傾斜状壁部310cは、その上部が下部よりも空気流れの上流側に位置するような傾斜状面を形成している。この構成により、傾斜状壁部310cにおける上部は、下部よりも蒸発器32の通過入口面320から離間している。したがって、通過入口面320と傾斜状壁部310cとの離間距離は、上部に向かうほど大きくなっており、上部の方が下部よりも通過入口面320との間に空間が大きい。また、吹出口310bも傾斜状壁部310cと同様に、その上部が下部よりも空気流れの上流側に位置するような傾斜状開口部を形成している。この構成により、吹出口310bにおける上部は、下部よりも蒸発器32の通過入口面320から離間している。
【0032】
吹出ユニット310の枠部は、後方側において上方に立設する後部側壁部310dを備えている。後部側壁部310dの下部には、排出ポート5が設けられている。排出ポート5は、空調ユニット3の内部または空調ケース30の内部と外部を連通する排出通路を形成する。排出ポート5は前後方向に突出する筒状部であり、後部側壁部310dに一体に設けられている。この構成により、後部側壁部310dには、前後方向に貫通する貫通穴が設けられている。
【0033】
この貫通穴は、通過入口面320よりも空気流れの上流において、空調ユニット3の内部または空調ケース30の内部に少なくとも一部が開口している開口端部50に相当する。開口端部50は、排出ポート5の排出通路における上流端部である。排出ポート5は、排出ポート5の排出通路における出口端部51を備えている。図6に示すように、出口端部51には、蓋部材5aが外部から蓋をするように装着されている。蓋部材5aは、排出ポート5に対して着脱可能である。蓋部材5aが装着された状態では排出通路は空調ケース30の外部から遮断されており、蓋部材5aが外された状態では排出通路と空調ケース30の外部は連通している。空調装置の運転時には蓋部材5aは排出ポート5に装着されている。蒸発器32を洗浄する際には、蓋部材5aは排出ポート5に外れた状態であり、排出通路を通じて異物等を外部に排出することができる。
【0034】
この実施形態では、排出ポート5は吹出ユニット310に設けられているが、空調ケース30に設けられている構成でもよい。また、空調ユニット3は、ファンケーシング31aを空調ケース30の一部とする構成でもよい。
【0035】
蒸発器32は、送風機31から吹き出された空気の全部が熱交換コア部を通過するように設置されている。熱交換コア部は、内部を冷媒等の内部流体が流通するチューブと、チューブに隣接するフィンとを備えている。熱交換コア部には、空気通路を流通する空気が通過する。蒸発器32は、空調ユニット3において、熱交換コア部を通過する空気とチューブを流れる内部流体とが熱交換コア部において熱交換する熱交換器の一つである。熱交換コア部には、通過する空気の入口部をなす通過入口面320が形成されている。
【0036】
蒸発器32は、自動空調運転時、マニュアル冷房運転時等において内部を流れる冷媒の吸熱作用によって、冷風通路に流入する手前の送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。ヒータコア33は、蒸発器32よりもさらに送風空気の下流側に設けられ、例えば、自動空調運転時、マニュアル暖房運転時等において、内部を流れるエンジンの冷却水が熱を放出することにより周囲の空気を加熱する。ヒータコア33は、蒸発器32と同様に、熱交換コア部を通過する空気とチューブを流れる内部流体とが熱交換コア部において熱交換する熱交換器の一つである。
【0037】
蒸発器32よりも下流側であってヒータコア33よりも上流側には、蒸発器32を通過した空気をヒータコア33を通る空気とヒータコア33を通過しない空気とに分けたり、切り替えたりするエアミックスドア34が設けられている。エアミックスドア34は、その開閉角度が調整されることによって、これらの空気の風量比率を調整できるフルエアミックス温調用のドアである。
【0038】
図10図11に示すように、蒸発器32には、上側タンク321の全体を覆う上部パッキン323が設けられている。上部パッキン323は、蒸発器32が空調ユニット3内に設置された状態において、空調ケース30に装着されている上部蓋327と上側タンク321との間をシールしている。蒸発器32には、下側タンク322における上流側、前部および後部を覆う下部パッキン324が設けられている。下部パッキン324は、蒸発器32が空調ユニット3内に設置された状態において、空調ケース30と下側タンク322との間をシールしている。
【0039】
蒸発器32には、蒸発器32において通過入口面320に対して交差する前方側の側壁部と空調ケース30との間をシールしている側部パッキン325が設けられている。側部パッキン325は、前方側の側壁部における中央部を上下方向全体にわたって覆うように設けられている。蒸発器32には、蒸発器32において通過入口面320に対して交差する後方側の側壁部と空調ケース30との間をシールしている側部パッキン326が設けられている。側部パッキン326は、後方側の側壁部における中央部を上下方向全体にわたって覆うように設けられている。上部パッキン323、下部パッキン324、側部パッキン325、側部パッキン326は、弾性変形可能な材質、例えば、ウレタン、エラストマその他の樹脂によって形成することができる。
【0040】
図12図14を参照して、排出ポート5に関わる構成について説明する。図12に示すように、開口端部50における上流側端部50bは、通過入口面320よりも上流側に位置している。したがって、開口端部50は、通過入口面320よりも上流において、空調ケース30の内部に少なくとも一部が開口している。
【0041】
図12に示すように、開口端部50の下端50aは、通過入口面320の下端に対して同等の高さに位置している。開口端部50の下端50aは、通過入口面320の下端よりも下方に位置している構成でもよい。また、開口端部50の下端50aは、蒸発器32の下側タンク322と空調ケース30との間をシールしている下部パッキン324の上面324aに対して同等の高さに位置している。開口端部50の下端50aは、下部パッキン324の上面324aよりも下方に位置している構成でもよい。
【0042】
図12図14に示すように、開口端部50における下流側端部50cは、蒸発器32において通過入口面320に対して交差する側壁部と空調ケース30との間をシールしている側部パッキン326よりも上流側に位置している。つまり、開口端部50は、側部パッキン326よりも上流側に位置している。
【0043】
図12図13に示すように、排出ポート5は、開口端部50が後方に向けて開口するように空調ケース30において上方に立設する後部側壁部310dに設けられている。図14に示すように、排出ポート5は、空調ケース30において後部に設けられている。図12図14に示すように、排出ポート5は、蒸発器32よりも後方において空調ケース30に設けられている。
【0044】
図14に示すように、排出ポート5の開口端部50は、側部パッキン326と、下部パッキン324との両方に隣接する側方空間311において開口している。側方空間311は、下部パッキン324の上方であって、側部パッキン326における上流側の面よりも上流に位置する空間に相当する。排出ポート5の開口端部50は、側方空間311の下部に開口端部50の上流側端部50bが位置するように設けられている。排出ポート5の開口端部50は、側方空間311の下部において、少なくとも開口端部50における上流側の半分が開口するように設けられていることが好ましい。これらの各構成により、下部パッキン324の上面324aに堆積する異物を開口端部50へスムーズに案内することができる。さらに側部パッキン326の上流側に溜まる異物を開口端部50へスムーズに案内することができる。
【0045】
また、排出通路の大きさは、空気通路における風流れを大きく乱して水飛び等の不具合が発生しないように、内径30mm以下であることが好ましい。さらに市場調査により、目詰まりを起こした蒸発器の洗浄を実施したところ、蒸発器から剥がれ落ちる異物の大きさが最大15mm程度であることを確認した。このような知見によれば、目詰まりした異物の排出性を高めるために、排出通路の大きさは、内径18mm程度であることが好ましい。
【0046】
例えば、油圧ショベル1等の建設機械、各種の作業車両等においては、とりわけ土砂の掘削作業時に周囲で土埃り等が発生するため、このときの土砂等はダストとなって運転室に侵入することがある。運転室に侵入したダストは、内気吸込口30aを通じて空調ケース30内に侵入する。また、キャビン12bの周囲の土砂等は、外気吸込口30bを通じて空調ケース30内に侵入する。このため、空調ケース30に内蔵される熱交換器のうち、最も上流に位置する蒸発器32の熱交換コア部に異物が付着して目詰まりを起こし易くなる。熱交換コア部が目詰まりを起こした状態は、空調装置の空調性能の低下を引き起こすため、異物を熱交換コア部から取り除いて、外部に排出する必要がある。
【0047】
そこで、この実施形態の空調装置においては、以下に図15図19を参照して説明する熱交換器の洗浄方法を実施する。図15は、洗浄用ツール7を空調ユニット3内における蒸発器32の上流側に差し込んだ状態を示している。図16は、熱交換器の洗浄方法に使用する洗浄用ツール7を正面からみた状態を示している。図17は洗浄用ツールを側面からみた状態を示している。図18は、蒸発器32の上流側に洗浄用ツール7を設置した状態で水供給装置8によって熱交換コア部に水を吹きつけた状態を示している。図19は、蒸発器32を洗浄するとき、または排出ポート5から異物を排出するときに車両を傾かせた状態を示している。
【0048】
図16図17に示すように、洗浄用ツール7は平板状の部材である。洗浄用ツール7は、上下方向および前後方向に延びる平面を形成する主板部71と、主板部71における上端の一部から上方に延びる上部の把持部70と、主板部71の下端全体において、上方に開口した椀状の容器部72とを一体に備えている。容器部72は、主板部71の下端から下流側に延びる底部を有する。容器部72は、底部の下流端に全体から上方に延びる下流側壁部720と、下流側壁部720の前方端と主板部71の下端とを連絡する側壁部721と、下流側壁部720の後方端と主板部71の下端とを連絡する側壁部721とを一体に備えている。この構成により、容器部72は、上部が開口した収容部を構成する。容器部72は、主板部71に沿うように下降してきた異物等を保持することができる。
【0049】
蒸発器32に付着した土砂等の異物を洗浄する一つの手順について説明する。まず、空調ケース30から上部蓋327を取り外す。次に図15に示すように、洗浄用ツール7を空調ケース30の内部に差し入れる。洗浄用ツール7は、吹出ユニット310における上壁部310aや傾斜状壁部310cに沿うように差し入れることにより、これらの壁部に案内される。この案内効果により、洗浄用ツール7を蒸発器32の上流側にスムーズに設置することができる。さらに、容器部72を蒸発器32の通過入口面320の下端近傍に接近させて、かつ主板部71と通過入口面320との距離を確保することができる。この作用効果により、洗浄用ツール7によって異物を捕捉することを実施できる。
【0050】
さらに、通過入口面320と洗浄用ツール7との間における上部に、水供給装置8を位置させる。水供給装置8は、水を吹き出すノズル部とノズル部に水を送るホース等の導水部とを備えている。この状態で、水供給装置8によって通過入口面320に対して空気流れの上流側から水を吹きつける。通過入口面320に吹きつけられた水によって、熱交換部コア部から異物が脱落して下方に流下し容器部72に溜まるようになる。通過入口面320に吹きつけられた水は下降して下側タンク322を伝い、下方受け部60で受け止められ、水抜き部6を通じて外部に排水される。
【0051】
容器部72で捕捉された異物は、洗浄用ツール7を空調ケース30の外部に取り出すことにより、空調ケース30の内部に堆積しないように排出することができる。さらに車両の後部が前部よりも低い位置になるように車両を傾かせる。特に空調装置が油圧ショベル1に搭載されている場合には、図19に示すように、作業アタッチメント11を使用して、後部が低くなるように車両を傾かせることが可能である。また、このように車両を傾かせることが可能である車両によれば、図19に示す状態と同様のことを実施できる。この車両の傾斜状態によって、下部パッキン324の上面324aや蒸発器32の下部に流下した異物は、後方に流下するようになるので、開口端部50から排出通路に流出し、排出ポート5を通じて外部に排出するようになる。なお、この状態では、蓋部材5aは、排出ポート5から取り外されている。
【0052】
蒸発器32に付着した土砂等の異物を洗浄するもう一つの手順について説明する。この洗浄方法は、洗浄用ツール7を使用しない方法である。したがって、洗浄用ツール7を空調ケース30の内部に差し入れていない状態において、水供給装置8によって通過入口面320に対して空気流れの上流側から水を吹きつける。通過入口面320に吹きつけられた水は水抜き部6を通じて外部に排水される。熱交換部コア部から脱落した異物は、前述のように、下部パッキン324の上面324aや蒸発器32の下部から、開口端部50に向けて流下し開口端部50から排出ポート5を通じて外部に排出される。
【0053】
次に、第1実施形態の空調装置がもたらす作用、効果について説明する。空調装置は、空気通路を内部に有する空調ケース30と、空気を空気通路に流下させる送風機31と、空調ケース30の内部に設置されて送風機31によって流下する空気と内部流体とが熱交換する熱交換コア部を有する蒸発器32と、を備える。空調装置は、さらに空調ケース30の内部と外部を連通する排出通路を形成するように空調ケースに設けられた排出ポート5を備える。排出ポート5は、空気が通過する熱交換コア部における通過入口面320よりも空気流れの上流において、空調ケース30の内部に少なくとも一部が開口している開口端部50を有する。
【0054】
この構成によれば、熱交換コア部の通過入口面320に付着していた土砂等の異物が脱落した場合に、通過入口面320よりも上流側に溜まるようになる。このように脱落した異物は、通過入口面320よりも空気流れの上流において少なくとも一部が開口する開口端部50を通じて空調ケース30の外部に排出することが可能である。この空調装置によれば、蒸発器32などの熱交換器から脱落した異物を空調ユニット3の外部に排出可能な構成を提供できる。
【0055】
排出ポート5は、開口端部50の下端50aが通過入口面320の下端に対して同等の高さまたは下方に位置するように設けられていることが好ましい。この構成によれば、熱交換コア部から脱落した異物は通過入口面320の下端近傍に集まりやすい。開口端部50の下端50aは通過入口面320の下端に対して同等の高さまたは下方に位置するので、通過入口面320の下端近傍に集まった異物の多くを排出通路に導くことができ、異物排出性に優れた空調装置を提供できる。
【0056】
排出ポート5は、開口端部50の下端50aが熱交換器の下側タンク322と空調ケース30との間をシールしている下部パッキン324の上面324aに対して同等の高さまたは下方に位置するように設けられていることが好ましい。この構成によれば、熱交換コア部から脱落した異物は下部パッキン324の上面324aに堆積するように集まりやすい。開口端部50の下端50aは下部パッキン324の上面324aに対して同等の高さまたは下方に位置するので、上面324aに集まった異物の多くを排出通路に導くことができ、異物排出性に優れた空調装置を提供できる。
【0057】
排出ポート5は、空調ケース30における後部に設けられていることが好ましい。この構成によれば、後部が前部よりも下方に位置するように空調ユニット3を傾けた場合に、熱交換器から脱落した異物を排出ポート5に集めることができるので、異物排出性に優れた空調装置を提供できる。
【0058】
排出ポート5は、開口端部50が後方に向けて開口するように空調ケース30において上方に立設する後部側壁部310dに設けられていることが好ましい。この構成によれば、後部側壁部310dの上部を下部よりも後方に位置するように空調ケース30を傾けた場合に、熱交換器から脱落した異物を排出ポート5に集めることができるので、異物排出性に優れた空調装置を提供できる。
【0059】
排出ポート5は、熱交換器よりも後方において空調ケース30に設けられていることが好ましい。この構成によれば、後部が前部よりも下方に位置するように空調ユニット3を傾けた場合に、熱交換器から脱落した異物を熱交換器の後方に移動させて排出ポート5に集めることができるので、異物を排出しやすい空調装置を提供できる。
【0060】
排出ポート5の開口端部50は、通過入口面320に対して交差する熱交換器の側壁部と空調ケース30との間をシールする側部パッキン326と、下側タンク322と空調ケース30との間をシールする下部パッキン324との両方に隣接する側方空間311において開口することが好ましい。この構成によれば、熱交換コア部から脱落した異物は下部パッキン324の上面324aの上方と側部パッキン326の下部側面の近傍とに集まりやすい。排出ポート5の開口端部50は、側方空間311に開口しているので、集まった異物をスムーズに排出通路に導くことができ、熱交換器の下部に異物が堆積することを抑えることに寄与する。
【0061】
排出ポート5には、排出通路の出口端部51に蓋をする蓋部材5aが装着されている。この構成によれば、空調運転時に排出通路を通じて空調空気が空調ケース30の外部に漏れること防止できる。熱交換器を洗浄している時や異物を排出する作業時には、蓋部材5aを取り外すことにより、排出通路を通じて異物を外部に排出することができる。
【0062】
熱交換器の洗浄方法の一つは、車両に搭載された空調ユニット3の空調ケース30の内部に設けられた熱交換器を洗浄する熱交換器の洗浄方法である。この洗浄方法は、水供給装置8を空調ケース30の内部に差し入れて、水供給装置8によって、熱交換器において空気が通過する通過入口面320に対して空気流れの上流側から水を吹きつけることを備える。この洗浄方法は車両の後部が前部よりも低い位置になるように車両を傾かせることを備える。この洗浄方法はさらに空調ケース30の内部と外部を連通する排出通路を形成し、かつ熱交換器よりも後方において空調ケース30に設けられた排出ポート5を通じて水や異物を外部に排出することを備える。
【0063】
この熱交換器の洗浄方法によれば、熱交換器の通過入口面320に対して空気流れの上流側から水を吹きつけることにより、熱交換コア部に付着した土砂、泥を含む異物を洗い流すことができる。さらに、車両の後部が前部よりも低くなるように車両が傾いているので、洗い流した異物を、熱交換器よりも低い位置になっている排出ポート5に集まるように流下させることができる。以上の方法によれば、熱交換器から脱落した異物を空調ユニット3の外部に排出することができる。
【0064】
また熱交換器の洗浄方法の一つは、車両に搭載された空調ユニット3の空調ケース30の内部に設けられた熱交換器を洗浄する熱交換器の洗浄方法である。この洗浄方法は、上部が開口する容器部72を下部に備える洗浄用ツール7を空調ケース30の内部に差し入れて、洗浄用ツール7を、熱交換器の通過入口面320に対して空気流れの上流側に位置させることを備える。この洗浄方法は水供給装置8を空調ケース30の内部に差し入れて、水供給装置8によって通過入口面320に対して空気流れの上流側から水を吹きつけることを備える。この洗浄方法はさらに車両の後部が前部よりも低い位置になるように車両を傾かせることを備える。この洗浄方法はさらに、空調ケース30の内部と外部を連通する排出通路を形成し、かつ熱交換器よりも後方において空調ケース30に設けられた排出ポート5を通じて水や異物を外部に排出することを備える。
【0065】
この洗浄方法によれば、下部に容器部72を備える洗浄用ツール7を通過入口面320に対して空気流れの上流側に位置させた状態で、通過入口面320の上流側から水を吹きつけることにより、熱交換コア部に付着した異物を洗い流すことができる。また、後部が前部よりも低くなるように車両が傾いているので、熱交換器よりも低い位置となっている排出ポート5に、洗い流した異物を集めて流下させることができる。さらに、洗い流した異物を洗浄用ツール7の容器部72で捕捉できるので、排出ポート5から排出する異物の量を抑えることができる。この方法によっても、熱交換器から脱落した異物を空調ユニット3の外部に排出することができる。
【0066】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0067】
前述の実施形態において、空調装置は、内気吸込口30aと外気吸込口30bのそれぞれを通過する空気中のダストを捕捉するフィルタを設けるようにしてもよい。このようなフィルタを備える空調装置であっても、細かい砂や埃が空調ケース30内に侵入して蒸発器32の熱交換コア部に堆積することにより、空調装置の性能低下を引き起こすことがある。
【0068】
明細書に開示の目的を達成可能な空調装置は、蒸発器32に付着した異物を排出するものに限定しない。排出ポート5に隣接する熱交換器は、蒸発器32に限定するものではなく、空気を加熱する熱交換器でもよい。空調ユニット3が複数の熱交換器を内蔵する場合、排出ポート5に隣接する熱交換器は、空調ケース30内において空気流れの最も上流に位置する熱交換器であることが好ましい。
【符号の説明】
【0069】
5…排出ポート、 7…洗浄用ツール
8…水供給装置、 30…空調ケース
31…送風機、 32…蒸発器(熱交換器)
50…開口端部、 72…容器部、 320…通過入口面
図1
図2
図3
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