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特許7218606リニアソレノイドバルブ及び油圧制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】リニアソレノイドバルブ及び油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/07 20060101AFI20230131BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20230131BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20230131BHJP
   F16H 61/00 20060101ALN20230131BHJP
【FI】
F16K11/07 D
F16K31/06 305Z
F16K31/06 305K
F16K51/00 B
F16H61/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019029905
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020133802
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 建一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田代 宗大
(72)【発明者】
【氏名】矢田 翔麻
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003041(JP,A)
【文献】特開2019-011779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226204(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104415608(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
F16K 11/00-11/24
F16K 3/00- 3/36
F16K 51/00
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に形成された溝部の底部にポートが設けられたスリーブと、
軸方向に移動可能に設けられ、前記ポートの連通状態を切り換えるスプールと、
円弧状に湾曲された板状部材であって、前記溝部に対して前記ポートを覆う形で装着されたストレーナと、を備え、
前記ストレーナは、
前記ポートを覆うフィルタ部と、
前記フィルタ部よりも径方向外側に突出して形成された突出部と、
前記フィルタ部よりも径方向内側に突出した係合部と、を備え、
前記スリーブは、前記係合部が径方向内側に入り込んで前記ストレーナの周方向への移動を規制する凹部を備えている、
リニアソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記ストレーナは、一方側の端部が屈曲されて形成された第1屈曲端部と、他方側の端部が屈曲されて形成された第2屈曲端部と、を備えており、
前記第1屈曲端部の径方向内側部分及び前記第2屈曲端部の径方向内側部分が前記係合部であり、
前記第1屈曲端部の径方向外側部分及び前記第2屈曲端部の径方向外側部分が前記突出部である、
請求項記載のリニアソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記第1屈曲端部は、前記板状のストレーナの一方側の先端が前記第1屈曲端部の最外径部よりも径方向内側に位置するように屈曲され、
前記第2屈曲端部は、前記板状のストレーナの他方側の先端が前記第2屈曲端部の最外径部よりも径方向内側に位置するように屈曲されている、
請求項記載のリニアソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記第1及び第2屈曲端部は、それぞれ円弧状に湾曲して形成されている、
請求項又は記載のリニアソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記ストレーナが覆うポートは、出力ポートであり、
前記突出部は、前記出力ポートから油圧が出力されている状態において、前記スリーブが挿入されるバルブボディの穴部の内周面と当接し、前記バルブボディからの反力を受ける受圧部を構成している、
請求項1乃至のいずれか1項記載のリニアソレノイドバルブ。
【請求項6】
穴部を備えたバルブボディと、
前記バルブボディの穴部に挿入されると共に、外周面に形成された溝部の底部に出力ポートが設けられたスリーブ、軸方向に移動可能に設けられ、前記出力ポートの連通状態を切り換えるスプール、円弧状に湾曲された板状部材であって、前記溝部に対して前記出力ポートを覆う形で装着されたストレーナ、を有するリニアソレノイドバルブと、を備え、
前記ストレーナは、
前記出力ポートを覆うフィルタ部と、
前記出力ポートから油圧が出力されている状態において、前記バルブボディの穴部の内周面と当接し、前記バルブボディからの反力を受ける突出部と、を備えている、
油圧制御装置。
【請求項7】
前記ストレーナは、前記フィルタ部よりも径方向内側に突出した係合部を備え、
前記スリーブは、前記係合部が径方向内側に入り込んで前記ストレーナの周方向への移動を規制する凹部を備え、
前記出力ポートから油圧が出力されていない状態における、前記スリーブの中心から前記突出部の外周面までの径方向における距離と前記スリーブの中心から前記バルブボディの穴部の内周面までの径方向における距離との差分が、前記凹部の径方向における深さよりも小さくなるように形成されている、
請求項記載の油圧制御装置。
【請求項8】
前記ストレーナは、前記出力ポートから油圧が出力されることによって前記突出部が前記バルブボディの穴部の内周面と当接する当接状態となり、前記出力ポートから油圧が出力されていない場合には、前記突出部が前記バルブボディの穴部の内周面と当接しない非当接状態となる、
請求項又は記載の油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、油圧を調圧するリニアソレノイドバルブ及びそれを備えた油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動変速機、ハイブリッド駆動装置等の車両用駆動装置にあっては、クラッチやブレーキ等の係合状態を油圧制御により行っており、油圧の大きさを電子制御するためのリニアソレノイドバルブを備えている。従来、このようなリニアソレノイドバルブにおいて、リニアソレノイドバルブ内に異物が侵入しないように、供給ポートを覆う形でストレーナが取り付けられたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
より詳しくは、上記特許文献1記載のリニアソレノイドバルブは、弁スリーブに凹部を形成し、この凹部に対してストレーナの網目部分の両側に形成された脚部の先端を嵌入させることによって弁スリーブに対してストレーナを装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-306783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リニアソレノイドバルブにおいては、例えばクラッチを解放する際にドレーンポートから油圧を抜く場合など、出力ポートから油圧がリニアソレノイドバルブ内に流入する場合があるため、出力ポートについてもストレーナで覆いたいという要望がある。この場合、上記特許文献1記載のストレーナの装着構成を採用すると、出力ポートから出力された油圧によってストレーナが弁スリーブから離れる方向にズレる虞がある。
【0006】
そこで、ストレーナの径方向外側へのズレを抑制することが可能なリニアソレノイドバルブ及び油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本リニアソレノイドバルブは、外周面に形成された溝部の底部にポートが設けられたスリーブと、軸方向に移動可能に設けられ、前記ポートの連通状態を切り換えるスプールと、円弧状に湾曲された板状部材であって、前記溝部に対して前記ポートを覆う形で装着されたストレーナと、を備え、前記ストレーナは、前記ポートを覆うフィルタ部と、前記フィルタ部よりも径方向外側に突出して形成された突出部と、前記フィルタ部よりも径方向内側に突出した係合部と、を備え、前記スリーブは、前記係合部が径方向内側に入り込んで前記ストレーナの周方向への移動を規制する凹部を備えている
【0008】
本油圧制御装置は、穴部を備えたバルブボディと、前記バルブボディの穴部に挿入されると共に、外周面に形成された溝部の底部に出力ポートが設けられたスリーブ、軸方向に移動可能に設けられ、前記出力ポートの連通状態を切り換えるスプール、円弧状に湾曲された板状部材であって、前記溝部に対して前記出力ポートを覆う形で装着されたストレーナ、を有するリニアソレノイドバルブと、を備え、前記ストレーナは、前記出力ポートを覆うフィルタ部と、前記出力ポートから油圧が出力されている状態において、前記バルブボディの穴部の内周面と当接し、前記バルブボディからの反力を受ける突出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本リニアソレノイドによると、ストレーナが径方向外側に向かってズレようとしても、突出部がバルブボディの穴部の内周面と当接して、このズレを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る自動変速機の概略構成を示すブロック図。
図2】本実施の形態に係るリニアソレノイドバルブを示す部分断面図。
図3図2に記載のリニアソレノイドバルブの組み立て図。
図4図2に記載のリニアソレノイドバルブからストレーナを外した状態を示す斜視図。
図5】(A)リニアソレノイドバルブの出力ポート位置における断面図、(B)リニアソレノイドバルブの出力ポート位置における断面図であって、ストレーナが装着されていない状態を示す図、(C)ストレーナの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<自動変速機の概略>
以下、本実施の形態を図1乃至図5に沿って説明する。まず、車両用駆動装置の一例である自動変速機1の概略構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、例えばFFタイプ(フロントエンジン、フロントドライブ)の車両に用いて好適な自動変速機1は、変速機構5と、エンジン(駆動源)2と変速機構5との間に介在されるトルクコンバータ(流体伝動装置)4と、それらを油圧制御するための油圧制御装置6とを備えて構成されている。また、油圧制御装置6は、リニアソレノイドバルブSLを含むソレノイドバルブがバルブボディ7に備えられており、変速機構5のクラッチやブレーキ、トルクコンバータ4のロックアップクラッチなどに供給する油圧(係合圧)を電子制御により調圧する。
【0012】
更に、自動変速機1には、制御部(ECU)100が備えられており、制御部100には、CPU101、RAM102、ROM103等が備えられている。制御部100は、ROM103等に格納されたプログラムを読み込んで、RAM102に一時的にデータを格納しながらCPU101によって各種の演算を行い、油圧制御装置6のリニアソレノイドバルブSLを含む各ソレノイドバルブに電気的な指令を出力する。
【0013】
<リニアソレノイドバルブの構成>
ついで、ソレノイドバルブの一例としてのリニアソレノイドバルブSLの構成について図2を用いて説明する。図2に示すように、リニアソレノイドバルブSLは、自動変速機1に搭載された摩擦係合要素の油圧サーボやロックアップクラッチ等に作動油圧を直接供給するダイレクトリニアソレノイドバルブであり、非通電時には、非出力状態となるノーマルクローズ型のリニアソレノイドバルブである。本実施の形態においては、リニアソレノイドバルブSLが摩擦係合要素の油圧サーボに直接的に出力油圧を供給する、いわゆるダイレクトリニアソレノイドバルブである場合を一例として説明する。
【0014】
リニアソレノイドバルブSLは、ソレノイド駆動部11とターミナル12とを有し、ターミナル12に接続された電力供給線から供給される電力と制御部100に接続される信号線から入力される油圧指令値の信号に応じて不図示のプランジャを駆動するソレノイド部10と、スリーブ21のバルブ孔21aに摺動自在に収納されたスプール22の移動によって各ポートの開口量を調節可能なバルブ部20とを備えて構成されている。
【0015】
なお、ソレノイド部10は、不図示のプランジャと、それを磁気的に駆動するコイルとを有しており、制御部100からの指令に応じてコイルに電流を流すことでプランジャを駆動し、スプール22をスプリング27の付勢力に抗して押圧駆動することで、スプール22の位置を軸方向であるX1-X2方向に移動制御する。
【0016】
バルブ部20は、大まかに、スリーブ21と、スプール22と、スプリング(付勢部材)27と、エンドキャップ28とを有しており、スリーブ21の端部がソレノイド部10にカシメ等により固着されている。つまり、ソレノイド部10とバルブ部20とが一体に固着されてリニアソレノイドバルブSLを構成している。
【0017】
スリーブ21は、バルブボディ7の穴部7a(図5(A)参照)に挿入されるように構成されていると共に、その内部には、スプール22を軸方向に移動可能に収納するバルブ孔21aが形成されている。また、スリーブ21の外周面31には、複数の溝部33,34,36が形成されており、これら溝部33,34,36の底面には、入力ポート23及び出力ポート24を含む複数のポート23,24,26がそれぞれ設けられている。より詳しくは、本実施の形態においては、これら複数のポート23,24,26として、ソレノイド部10の側から順にドレーンポート26、出力ポート24、入力ポート23が並んでいる。なお、入力ポート23は、不図示のオイルポンプ及びレギュレータバルブに連通しており、出力ポート24は不図示の摩擦係合要素の油圧サーボに連通している。また、ドレーンポート26は、スリーブ21が上記穴部7aに挿入された状態においても、バルブボディ7の外部に開放されている。また、スリーブ21のソレノイド部10とは反対側の端部には、エンドキャップ28が螺合されており、このエンドキャップ28とバルブ孔21aに収納されたスプール22との間にスプリング27が縮設されている。
【0018】
一方、スプール22は、ソレノイド部10の側から順に、外径d1に形成された第1ランド部22raと、同じく外径d1に形成された第2及び第3ランド部22rb,22rcと、外径d1よりも小径な外径d2に形成された第4ランド部22rdと、を有しており、それら第1ランド部22raと第2ランド部22rbとの間がシャフト部22saで連結され、第2ランド部22rbと第3ランド部22rcとの間がシャフト部22sbで、第3ランド部22rcと第4ランド部22rdの間がシャフト部22scで連結されるように構成されている。これら第3ランド部22rcと第4ランド部22rdとの外径の違いにより受圧面積差が設定されており、フィードバック油室25に入力された油圧は、スプール22を軸方向のX2方向に押圧するように構成されている。
【0019】
上述したようにリニアソレノイドバルブSLは構成されているため、例えばエンジン2が始動されて不図示のオイルポンプが回転駆動されて油圧が発生すると、油圧制御装置6のレギュレータバルブ(不図示)によって元圧としてのライン圧PLが調圧され、入力ポート23にライン圧PLが入力される。そして、制御部100の指令により、ソレノイド部10が非通電となって電流OFF状態である場合、即ちリニアソレノイドバルブSLの出力ポートに連通する不図示の油圧サーボにより係合制御される摩擦係合要素を解放する状態である場合には、スプール22は、スプリング27の付勢力によってソレノイド部10に向かって押圧されて突き当たった状態にされ、スプール22の第2ランド部22rbにより入力ポート23が遮断されて、出力ポート24にライン圧PLが供給されることはなく、出力ポート24から油圧は出力されない。
【0020】
制御部100の指令により、上記摩擦係合要素の係合判断がなされ、ソレノイド部10が通電されていくと、スプール22がスプリング27の付勢力に抗してソレノイド部10のプランジャ(不図示)に押圧される。すると、スプール22の第2ランド部22rbの端部が入力ポート23の端部となるまで移動され、入力ポート23が遮断される状態と連通される状態の出力境界位置となり、さらに第2ランド部22rbが移動すると、入力ポート23と出力ポート24とが連通し、これら入力ポート23と出力ポート24との開口量が大きくなるほど出力ポート24から出力される出力油圧Poutが大きくなるように出力され、図示を省略した摩擦係合要素の油圧サーボに供給される。出力ポート24から出力された出力油圧Poutは、フィードバック油圧Pfbとしてフィードバック油室25にも入力され、つまりスプール22の位置はフィードバック制御される状態となる。このようにリニアソレノイドバルブSLは、スプール22をソレノイド部10によって移動させ、上述した複数のポート23,24,26の間の連通状態を切り換えている。
【0021】
<ストレーナの構成>
ついで、上述したリニアソレノイドバルブSLのスリーブ21内に異物が侵入するのを防止するストレーナ40,50の構成について、詳しく説明をする。図3に示すように、ストレーナ40,50は、入力ポート23及び出力ポート24が底部に形成されたスリーブ21の溝部33,34に対して装着されるように構成されており、これら溝部33,34の底部には、それぞれ、入力ポート23及び出力ポート24と周方向において異なる位置にて凹部60,70が形成されている(図4も併せて参照)。
【0022】
上記ストレーナ40,50は、円弧状に湾曲された金属製の板状部材であり、メッシュ状に形成されたフィルタ部41,51と、ストレーナ40,50の両端部によって形成された係合部42,52と、を備えている。これらストレーナ40,50は、図3に示す非装着状態において、その内径が溝部33,34の底部におけるスリーブ21の外径と同じもしくは若干小さくなるように形成されており、その両端部の間の開口部に対してスリーブ21が径方向内側に向かって押し付けられることによって、上記溝部33,34に対して装着される。このため、ストレーナ40,50は、溝部33,34に装着された状態において拡径した状態となり、その弾性(復元力)によって溝部33,34の底部に対して密着する様になっている。
【0023】
更に、ストレーナ40,50は、溝部33,34に対して装着された状態において、上述した係合部42,52がスリーブ21の凹部60,70に対して径方向内側に入り込むようになっている。このため、ストレーナ40,50に対して周方向に力が掛かったとしても、ストレーナ40,50の周方向への移動が規制され、入力ポート23及び出力ポート24に対するフィルタ部41,51の相対位置関係は、上記フィルタ部41,51が入力ポート23及び出力ポート24を覆う形で保持されようになっている。
【0024】
続いて、上述したストレーナの詳細構成について、図5に基づいて説明をする。なお、入力ポート23及び出力ポート24を覆うストレーナ40,50は、その基本的な構成は同じであるため、以下の説明においては、出力ポート24を覆うストレーナ50についてのみ説明をし、入力ポート23を覆うストレーナ40については、その説明を省略する。
【0025】
出力ポート24は、油圧を出力するだけでは無く、例えば、摩擦係合要素を解放する際には、ドレーンポート26と連通し、当該摩擦係合要素の油圧サーボの油圧をドレーンポート26から排出するために油圧が油圧サーボから入力されて来る。この際に異物がスリーブ21内に侵入しないようにストレーナ50は、フィルタ部51が出力ポート24を覆う形で溝部34に対して装着されている。
【0026】
図5(C)に示すように、ストレーナ50は、周方向一方側の端部が屈曲第1屈曲端部510を形成し、同様に、周方向他方側の端部が屈曲して第2屈曲端部520を形成している。そして、これら第1及び第2屈曲端部510,520の間において上述したフィルタ部51が形成されている。より詳しくは、本実施の形態において、第1屈曲端部510は、ストレーナ50の一方側の先端513が第1屈曲端部510の最外径部514よりも径方向内側に位置するように円弧状に湾曲して形成されており、第2屈曲端部520は、ストレーナの他方側の先端523が第2屈曲端部520の最外径部524よりも径方向内側に位置するように円弧状に湾曲して形成されている。
【0027】
これら第1及び第2屈曲端部510,520は、湾曲しているため、径方向内側部分511,521がフィルタ部51よりも径方向内側に突出した円弧形状(R形状)となっており、これら径方向内側部分511,521がそれぞれ、ストレーナ50の凹部70を形成する第1凹部71及び第2凹部72に入り込むようになっている。即ち、これら第1及び第2屈曲端部510,520の径方向内側部分511,521によって、凹部70に嵌まるストレーナ50の爪部としての係合部52が形成されている。
【0028】
ところ、上記第1及び第2屈曲端部510,520の径方向内側部分511,521は、スリーブ21の第1及び第2凹部71,72に径方向外側から内側に向かって入り込んでいるだけであるため、例えば、出力ポート24から油圧が出力されてストレーナ50に径方向外側に向かう力が働くと、上述した第1及び第2屈曲端部510,520の径方向内側部分511,521が第1凹部71及び第2凹部72から抜けようとする方向へとズレようとする。
【0029】
このため、本実施の形態においては、上記ストレーナ50の径方向外側へのズレを抑制するために、第1及び第2屈曲端部510,520の径方向外側部分512,522によってフィルタ部51よりも径方向外側に突出して形成された突出部53を形成している。具体的には、図5(A)に示すように、これら第1及び第2屈曲端部510,520の径方向外側部分512,522は、スリーブ21の中心Oからストレーナ50の外周面までの径方向距離が、例えば、フィルタ部51のような他の部分よりも大きくなるように径方向に突出して構成されている(L2>L1、L3>L1)。なお、本実施の形態では、ストレーナ50は、中心Oから径方向外側部分512までの径方向距離L2と、中心Oから径方向外側部分522までの径方向距離L3とが同じとなるように設計されているが(L2=L3)、中心Oからフィルタ部51までの距離L1よりも大きくなるようになっていれば、異なっていても良い。
【0030】
このため、出力ポート24から油圧が出力されてストレーナ50が径方向外側に向かって移動した場合、上記径方向外側部分512,522がバルブボディ7の穴部7aの内周面7sと最初に当接し、ストレーナ50の径方向外側へのズレが規制される。即ち、本実施の形態では、上述した径方向外側部分512,522をバルブボディ7からの反力を受ける受圧部とすることによって、ストレーナ50の径方向外側へのズレを規制しており、これにより、係合部52としての径方向内側部分511,521が、凹部70を形成する第1凹部71及び第2凹部72から外れてしまうことを防止している。
【0031】
特に、本実施の形態では、図5(B)に示すように、出力ポート24から油圧が出力されていない状態における、スリーブ21の中心Oから突出部53の外周面までの径方向における距離(L2/L3)とスリーブ21の中心Oからバルブボディ7の穴部7aの内周面7sまでの径方向における距離R1との差分(ストレーナ50に許容される径方向外側への移動量)が、凹部70の径方向における深さ(R2/R3)よりも小さくなるように形成されている。このため、出力ポート24からの油圧を受けてストレーナ50が最大限、径方向外側へとズレたとしても、上記径方向内側部分511,521が第1凹部71及び第2凹部72から外れることが無いようになっている。なお、スリーブ21の外周面31とバルブボディ7の穴部7aの内周面7sとの間には、油圧が漏れないように殆ど公差が無い。このため、上述した寸法関係は、スリーブ21の中心Oからバルブボディ7の穴部7aの内周面7sまでの径方向における距離を、スリーブ21の中心Oからスリーブ21の外周面31までの径方向における距離に置き換えても同様に成立する。
【0032】
また、このように構成されていることによって、ストレーナ50は径方向外側部分512,522をバルブボディ7の内周面7sに常時当接させる必要が無く、出力ポート24から油圧が出力されることに起因して上記径方向外側部分512,522がバルブボディ7の内周面7sと当接する当接状態となり、出力ポート24から油圧が出力されていない場合には、溝部34内に収まって上記内周面7sと当接しない非当接状態となる構成を取ることができる。
【0033】
このように当接状態と非当接状態が切り換わるように構成すると、バルブボディ7の内周面7sの摩耗を低減することができる。また、上述したように、本実施の形態では、ストレーナ50の先端513,523が径方向に直交する方向もしくは径方向内側に向くように屈曲していることに加えて、径方向外側部分512,522が円弧形状(R形状)となっており、径方向外側部分512,522が点接触ではなく、面接触するようになっている。そして、これらの相乗効果によってバルブボディ7の内周面7sへの攻撃性が効果的に低減されている。
【0034】
<本実施の形態のまとめ>
本実施の形態のリニアソレノイドバルブ(SL)は、
外周面(31)に形成された溝部(例えば、34)の底部にポート(例えば、24)が設けられたスリーブ(21)と、
軸方向に移動可能に設けられ、前記ポート(24)の連通状態を切り換えるスプール(22)と、
円弧状に湾曲された板状部材であって、前記溝部(34)に対して前記ポート(24)を覆う形で装着されたストレーナ(例えば、50)と、を備え、
前記ストレーナ(50)は、
前記ポートを覆うフィルタ部(51)と、
前記フィルタ部(51)よりも径方向外側に突出して形成された突出部(53)と、を備えている。
【0035】
これにより、ストレーナ50が径方向外側に向かってズレようとしても、突出部53がバルブボディ7の穴部7aの内周面7sと当接して、このズレを抑制することができる。
【0036】
また、前記ストレーナ(50)は、前記フィルタ部(51)よりも径方向内側に突出した係合部(52)を備え、
前記スリーブ(21)は、前記係合部(52)が径方向内側に入り込んで前記ストレーナ(50)の周方向への移動を規制する凹部(70)を備えている。
【0037】
このような構成において、上記突出部53は、ストレーナ50の径方向外側のズレを抑制することができるため、係合部52がスリーブ21の凹部70から外れてしまうことを防止することができる。このため、ストレーナ50の周方向への移動が確実に規制され、ストレーナ50のフィルタ部51によってスリーブ21のポート24を確実に覆うことができる。
【0038】
更に、前記ストレーナ(50)は、一方側の端部が屈曲されて形成された第1屈曲端部(510)と、他方側の端部が屈曲されて形成された第2屈曲端部(520)と、を備えており、
前記第1屈曲端部(510)の径方向内側部分(511)及び前記第2屈曲端部(520)の径方向内側部分(521)が前記係合部(52)であり、
前記第1屈曲端部(510)の径方向外側部分(512)及び前記第2屈曲端部(520)の径方向外側部分(522)が前記突出部(53)である。
【0039】
このように、板状のストレーナ50の端部に第1及び第2屈曲端部510,520を形成することにより、係合部52及び突出部53を一体的にかつ、簡単な構成で形成することができる。また、これら端部の間でフィルタ部51を広く形成することができると共に、メッシュ構造のフィルタ部を避けて係合部52及び突出部53を形成することができるため、強度的にも優れた構成とすることができる。
【0040】
更に、前記第1屈曲端部(510)は、前記板状のストレーナ(50)の一方側の先端(513)が前記第1屈曲端部(510)の最外径部(514)よりも径方向内側に位置するように屈曲され、
前記第2屈曲端部(520)は、前記板状のストレーナ(50)の他方側の先端(523)が前記第2屈曲端部(520)の最外径部(524)よりも径方向内側に位置するように屈曲されている。
【0041】
このように、第1及び第2屈曲端部510,520の最外径部514,524よりもストレーナ50の先端513,523が径方向内側に位置しているため、先端513,523がバルブボディ7の内周面7sと当接することを避けることができ、バルブボディ7の内周面7sへの攻撃性を低減することができる。
【0042】
また、前記第1及び第2屈曲端部(510,520)は、それぞれ円弧状に湾曲して形成されている。
【0043】
これにより、バルブボディ7の内周面7sへの攻撃性を低減することができると共に、ストレーナ50をスリーブ21へと装着する際も、ストレーナ50は、第1及び第2屈曲端部510,520の円弧部分が円滑にスリーブ21の表面上を摺動するため、リニアソレノイドバルブSLの組み立て性を向上させることができる。なお、本実施の形態では、第1及び第2屈曲端部510,520の曲率は、これら端部間の間の開口部へスリーブ21を押し当てた際の第1及び第2屈曲端部510,520とスリーブ21との接線が、径方向外側に向かう程、周方向外側に位置する形で傾斜するような曲率となっている。
【0044】
また、前記ストレーナ(50)が覆うポートは、出力ポート(24)であり、
前記突出部(53)は、前記出力ポート(24)から油圧が出力されている状態において、前記スリーブ(21)が挿入されるバルブボディ(7)の穴部(7a)の内周面(7s)と当接し、前記バルブボディ(7)からの反力を受ける受圧部を構成している。
【0045】
更に、本実施の形態に係る油圧制御装置(6)は、穴部(7a)を備えたバルブボディ(7)と、
前記バルブボディ(7)の穴部(7a)に挿入されると共に、外周面(31)に形成された溝部(34)の底部に出力ポート(24)が設けられたスリーブ(21)、軸方向に移動可能に設けられ、前記出力ポート(24)の連通状態を切り換えるスプール(22)、円弧状に湾曲された板状部材であって、前記溝部(34)に対して前記出力ポート(24)を覆う形で装着されたストレーナ(50)、を有するリニアソレノイドバルブ(SL)と、を備え、
前記ストレーナ(50)は、
前記出力ポート(24)を覆うフィルタ部(51)と、
前記出力ポート(24)から油圧が出力されている状態において、前記バルブボディ(7)の穴部(7a)の内周面(7s)と当接し、前記バルブボディ(7)からの反力を受ける突出部(53)と、を備えている。
【0046】
このように、突出部53がバルブボディ7の内周面7sと当接してバルブボディ7から反力を受けるようにすることによって、ストレーナ50が径方向外側向かってズレることを抑制することができる。
【0047】
また、前記ストレーナ(50)は、前記フィルタ部(51)よりも径方向内側に突出した係合部(52)を備え、
前記スリーブ(21)は、前記係合部(52)が径方向内側に入り込んで前記ストレーナ(50)の周方向への移動を規制する凹部(70)を備え、
前記出力ポート(24)から油圧が出力されていない状態における、前記スリーブ(21)の中心から前記突出部(53)の外周面までの径方向における距離(L2/L3)と前記スリーブ(21)の中心(O)から前記バルブボディ(7)の穴部(7a)の内周面(7s)までの径方向における距離(R1)との差分が、前記凹部(70)の径方向における深さ(R2/R3)よりも小さくなるように形成されている。
【0048】
このような寸法関係にあるため、ストレーナ50が径方向外側に移動したとしても、スリーブ21の凹部70からストレーナ50の係合部52が外れてしまうことを確実に防止することができる。
【0049】
更に、前記ストレーナ(50)は、前記出力ポート(24)から油圧が出力されることによって前記突出部(53)が前記バルブボディ(7)の穴部(7a)の内周面(7s)と当接する当接状態となり、前記出力ポート(24)から油圧が出力されていない場合には、前記突出部(53)が前記バルブボディ(7)の穴部(7a)の内周面(7s)と当接しない非当接状態となる。
【0050】
このように、出力ポート24から油圧が出力されていない場合には、突出部53がバルブボディ7の穴部7aの内周面7sと当接しないように構成したことによって、この内周面7sの摩耗を低減することができる。
【0051】
<他の実施の形態の可能性>
なお、以上説明した本実施の形態においては、リニアソレノイドバルブSLが非通電の状態で入力ポートと出力ポートとが遮断されるノーマルクローズ型のものを説明したが、これに限らず、非通電の状態で入力ポートと出力ポートとが連通されるノーマルオープン型のものであっても構わない。
【0052】
また、本実施の形態においては、エンジン2によって駆動されるオイルポンプによりライン圧が発生するものを説明したが、これに限らず、例えばハイブリッド車両やアイドルストップ車両にあって、電動オイルポンプによって油圧を発生させて入力ポートに油圧を供給するものであっても構わない。
【0053】
また、本実施の形態においては、リニアソレノイドバルブSLの入力ポート23にライン圧PLが供給されるものを説明したが、これに限らず、どのような油圧を元圧として入力するものであっても良い。例えば、ライン圧をマニュアルバルブに入力し、マニュアルバルブの選択位置に基づきレンジ圧として入力ポートに入力するものでも良いし、セカンダリレギュレータバルブを備えているものでセカンダリ圧を入力するようなものであっても良い。
【0054】
また、本実施の形態においては、車両用駆動装置の一例として自動変速機であるものを説明したが、これに限らず、ハイブリッド車両に搭載されるハイブリッド駆動装置であっても良いし、電気自動車に搭載される回転電機の動力を変速するような変速装置であっても良く、つまりどのような車両用駆動装置であっても構わない。また、自動変速機としては、多段式の変速機構を有するものであっても、無段変速式の変速機構を有するものであっても、それらを複合した変速機構を有するものであっても構わない。
【0055】
更に、本実施の形態に係るストレーナは、出力ポート24及び入力ポート23以外にも、油圧が入力されるようなポートであれば、どのようなポートに装着されても良い。また、上述した実施の形態では、ストレーナが出力ポート24及び入力ポート23の両方のポートに対して取り付けられていたがこれに限らない。例えば、出力ポート24のみストレーナが取り付けられても良く、入力ポート23にのみストレーナが取り付けられても良い。加えて、少なくともストレーナが取り付けられるポートが溝部33~36に形成されていれば良く、ストレーナが取り付けられないポートに関しては、必ずしも溝部に形成される必要はない。
【0056】
更に、突出部53は、必ずしもストレーナ50の端部に形成される必要はなく、ストレーナ50の周方向のどの位置に形成されても良い。加えて、本実施の形態のストレーナ50は、第1屈曲端部510と,第2屈曲端部520とが装着状態において離間するように構成されているが、装着状態においてこれら第1及び第2屈曲端部510,520が当接するように構成されても良い。なお、この場合、必ずしもストレーナ50の係合部52及びスリーブ21の凹部70は形成しなくても良い。
【0057】
また、第1及び第2屈曲端部510,520は、外巻きに湾曲して形成されているが、内巻きに湾曲して形成されても良い。即ち、第1及び第2屈曲端部510,520は、本実施の形態では、径方向内側部分、径方向外側部分、先端の順で形成されているが、径方向外側部分、径方向内側部分、先端の順で形成されても良い。加えて、第1及び第2屈曲端部510,520は、必ずしも円弧状に形成されていなくても良く、例えば、コの字状のように屈曲されて形成されても良い。
【符号の説明】
【0058】
6:油圧制御装置、21:スリーブ、22:スプール、24:出力ポート、31:外周面、33~36:溝部、40,50:ストレーナ、51:フィルタ部、52:係合部、53:突出部、70:凹部、510:第1屈曲端部、520:第2屈曲端部、511,521:径方向内側部分、512,522:径方向外側部分、514,524:最外径部、513,523:先端、SL:リニアソレノイドバルブ、O:スリーブの中心
図1
図2
図3
図4
図5