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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】還流弁
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20230131BHJP
   F16K 15/06 20060101ALI20230131BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
F01M13/00 J
F16K15/06
F16K17/04 A
F16K17/04 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019053454
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153312
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】中西 智彦
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-262959(JP,A)
【文献】特開2012-246908(JP,A)
【文献】特開2012-251496(JP,A)
【文献】特開2016-166571(JP,A)
【文献】特開2018-28285(JP,A)
【文献】実公昭47-15089(JP,Y1)
【文献】独国特許出願公開第102009012872(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0060912(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F16K 15/06
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のブローバイガスを吸気側に還流するブローバイガス通路に配置される還流弁であって、
中心軸と平行な方向に貫通する貫通孔を備える筒部を有するハウジングと、
前記貫通孔を軸方向に移動可能な弁体と、
前記弁体を軸方向一方側に付勢する付勢部材と、
を有し、
前記筒部は、
前記貫通孔の軸方向一方側に開口し、前記ブローバイガス通路の上流側に接続する第1開口と、
前記貫通孔の軸方向他方側に開口し、前記ブローバイガス通路の下流側に接続する第2開口と、
前記貫通孔の軸方向一方側で前記弁体を支持する第1支持部と、
前記貫通孔の軸方向他方側で前記弁体を支持する第2支持部と、
前記第1支持部よりも軸方向他方側、且つ前記第2支持部よりも軸方向一方側に設けられた筒胴部と、
を有し、
前記弁体は、
前記第1支持部に支持される第1被支持部と、
前記第2支持部に支持される第2被支持部と、
前記第1被支持部よりも軸方向他方側、且つ前記第2被支持部よりも軸方向一方側に設けられた弁体胴部と、
を有し、
前記第1被支持部は、前記付勢部材に付勢されて前記弁体が軸方向一方側に移動することで前記第1開口を塞ぎ、
前記第1被支持部は、前記上流側に対する前記下流側の負圧により前記付勢部材の付勢力に抗って前記弁体が軸方向他方側に移動することで前記第1開口を開き、
前記弁体は、軸方向他方の端部から軸方向一方側に延びる第1穴を有し、
前記弁体胴部は、径方向外側から延びて前記第1穴に達する第2穴を有する、
還流弁。
【請求項2】
前記第2穴は、前記弁体胴部を径方向に貫通する、
請求項1に記載の還流弁。
【請求項3】
前記弁体胴部は、前記第2穴を周方向に複数有する、
請求項1又は2に記載の還流弁。
【請求項4】
前記第2穴が延びる向きは、軸方向と直交する向きである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の還流弁。
【請求項5】
前記第1穴が延びる向きは、軸方向と平行な向きである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の還流弁。
【請求項6】
前記第2穴の断面形状は円形状である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の還流弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還流弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関におけるブローバイガスの吸気側への還流を行う還流弁が知られている。この還流弁は、PCVバルブ(Positive Crankcase Ventilation)と呼ばれ、クランクケースと吸気側(例えばインテークマニホールド)とを繋ぐブローバイガス通路に配置される。PCVバルブは、吸気側(PCVバルブを通過したブローバイガスの、燃焼室への入り口側)の負圧によって開弁することで、クランクケースに発生するブローバイガスを吸気側に還流する。
【0003】
特許文献1は、PCVバルブ内の凍結をブローバイガスの熱で解消するPCVバルブの取付構造を開示している。特許文献1に記載のPCVバルブでは、円筒形のバルブケース内に円柱形のバルブ本体部を収容し、バルブケースの内周とバルブ本体部の外周との間の開口によりブローバイガスを還流させる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-28285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関においては、例えば自動車排出ガス規制に対応し積極的にブローバイガスの還流を促進することが望まれる。ところが、特許文献1に記載のPCVバルブのような従来のPCVバルブでは、吸気側の負圧が大きければそれに応じてブローバイガスを還流する流量が増加するが、吸気側の負圧が小さい状況ではブローバイガスを還流する流量が少ない。特許文献1において、吸気側の負圧が小さい状況でブローバイガスを還流する流量を増加させるためには、バルブケースの内周とバルブ本体部の外周との間の開口面積を大きくすることが考えられるが、この開口面積を大きくするためには流路の径を広げる必要があり、PCVバルブ全体が大型化してエンジンのレイアウトに制約が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、還流弁を大型化することなく、入り口側の負圧が小さい状況で積極的に多くのブローバイガスを還流できる還流弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の例示的な第1発明は、内燃機関のブローバイガスを吸気側に還流するブローバイガス通路に配置される還流弁であって、中心軸と平行な方向に貫通する貫通孔を備える筒部を有するハウジングと、前記貫通孔を軸方向に移動可能な弁体と、前記弁体を軸方向一方側に付勢する付勢部材と、を有し、前記筒部は、前記貫通孔の軸方向一方側に開口し、前記ブローバイガス通路の上流側に接続する第1開口と、前記貫通孔の軸方向他方側に開口し、前記ブローバイガス通路の下流側に接続する第2開口と、前記貫通孔の軸方向一方側で前記弁体を支持する第1支持部と、前記貫通孔の軸方向他方側で前記弁体を支持する第2支持部と、前記第1支持部よりも軸方向他方側、且つ前記第2支持部よりも軸方向一方側に設けられた筒胴部と、を有し、前記弁体は、前記第1支持部に支持される第1被支持部と、前記第2支持部に支持される第2被支持部と、前記第1被支持部よりも軸方向他方側、且つ前記第2被支持部よりも軸方向一方側に設けられた弁体胴部と、を有し、前記第1被支持部は、前記付勢部材に付勢されて前記弁体が軸方向一方側に移動することで前記第1開口を塞ぎ、前記第1被支持部は、前記上流側に対する前記下流側の負圧により前記付勢部材の付勢力に抗って前記弁体が軸方向他方側に移動することで前記第1開口を開き、前記弁体は、軸方向他方の端部から軸方向一方側に延びる第1穴を有し、前記弁体胴部は、径方向外側から延びて前記第1穴に達する第2穴を有する。
【発明の効果】
【0008】
本願の例示的な第1発明によれば、還流弁を大型化することなく、入り口側の負圧が小さい状況で積極的に多くのブローバイガスを還流できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る還流弁を適用した内燃機関の構成を示す概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るPCVバルブ116の側断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るPCVバルブ116の側断面図である。
図4図3のA-A’断面図である。
図5図3の弁体3を軸方向他方側から見た側面図である。
図6図5のB-B’断面図である。
図7】従来のPCVバルブの動作特性を示す図である。
図8】本実施形態のPCVバルブ116の動作特性を示す図である。
図9】第2実施形態において、図3の弁体3を軸方向他方側から見た側面図である。
図10図9のC-C’断面図である。
図11】第3実施形態において、図3の弁体3を軸方向他方側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るPCVバルブについて説明する。また、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0011】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、図2に示す中心軸Jと平行な方向とする。X軸方向は、図2に示す断面図の断面が拡がる方向及びZ軸方向と直交する方向とする。Y軸方向は、Z軸方向及びX軸方向と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の何れにおいても、図中に示される矢印の向く側を+側、反対側を-側とする。
【0012】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「リア側」と記し、Z軸方向の負の側(-Z側)を「フロント側」と記す。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と記し、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と記し、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と記す。
【0013】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0014】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るPCVバルブを適用した内燃機関の構成を示す概略構成図である。内燃機関100は、ピストン103、及びピストン103を収容するシリンダの組を複数備える多気筒のエンジンである。シリンダは、クランクケース102の上方に設けられ、ピストン103を内包する。図1では、便宜上、シリンダ及びピストン103が1つずつのみ示される。ピストン103は、シリンダの気筒内で気筒の長手方向に移動する。この移動に伴って、ピストン103に連結されたコンロッド105がクランク軸106を回転させる。ピストン103の上方には、燃焼室104が配置される。燃焼室104には、燃料に点火するための点火プラグが設けられる。
【0015】
燃焼室104の吸気口には、吸気バルブ112が設けられる。燃焼室104の排気口には、排気バルブ113が設けられる。吸気バルブ112、排気バルブ113は何れも、可変バルブタイミング(VVT)機構によって開閉されるバルブである。
【0016】
燃焼室104の吸気口には、吸気通路110が連結する。吸気通路110内には、スロットルバルブ109が配置される。吸気通路110内に吸気される新気は、スロットルバルブ109、吸気バルブ12を順に経由して、燃焼室104内に吸気される。燃焼室104内に吸気される直前の気体は、吸気通路110内において、インジェクターから噴射される燃料と混合される。新気とともに燃焼室104内に入った燃料は、点火プラグによって点火される。この点火によって燃焼した燃料は、気化によって体積を増大させて、ピストン103を点火プラグから遠ざかる方向に移動させる。
【0017】
燃焼室104において燃料の燃焼によって生じたガスは、燃焼室104の排気口から、排気バルブ113、及び排気通路を介して、排気ガスとして外部に排出される。
【0018】
内燃機関100は、クランクケース102と、吸気通路110におけるスロットルバルブ109よりも下流側の領域とを繋ぐブローバイガス通路115を備える。ブローバイガス通路115には、PCVバルブ116が設けられる。PCVバルブ116は、吸気通路110内とクランクケース102内の圧力差により開閉し、クランクケース102内のブローバイガスを吸気通路110に還流する。
【0019】
<PCVバルブ116の構成>
以下、本発明の第1実施形態に係るPCVバルブ116について説明する。図2及び図3は、本発明の第1実施形態に係るPCVバルブ116の側断面図である。図2は、PCVバルブ116が閉じた状態を示す図である。図3は、PCVバルブ116が開いた状態を示す図である。PCVバルブ116は、中心軸Jと平行な方向に貫通する貫通孔21を備える筒部2aを有するハウジング2と、貫通孔21を軸方向に移動可能な弁体3と、弁体3を軸方向一方側(-Z側)に付勢する付勢部材4と、を有する。
【0020】
<ハウジング2>
ハウジング2の筒部2aは、貫通孔21の軸方向一方側に開口し、ブローバイガス通路115の上流側(クランクケース102側)に接続する第1開口71を有する。ハウジング2の筒部2aは、貫通孔21の軸方向他方側(+Z側)に開口し、ブローバイガス通路の下流側(吸気通路110側)に接続する第2開口25を有する。ハウジング2の筒部2aは、貫通孔21の軸方向一方側で弁体3を支持する第1支持部23を有する。第1支持部23は、その内周面で弁体3を支持する。ハウジング2の筒部2aは、貫通孔21の軸方向他方側で弁体3を支持する第2支持部22を有する。第2支持部22は、その内周面で弁体3を支持する。ハウジング2の筒部2aは、第1支持部23よりも軸方向他方側、且つ第2支持部22よりも軸方向一方側に設けられた筒胴部24を有する。第2支持部22の内周は筒胴部24の内周よりも小径である。第2支持部22は、筒胴部24との境で径方向内側に延びて軸方向一方側に向く第2段差面22aを有する。ハウジング2の筒部2aは、軸方向一方側に端部27を有する。端部27の内周面29は筒胴部24の内周面26よりも大径である。筒胴部24は、端部27との境で径方向内側に延びて軸方向一方側に向く段差面28を有する。
【0021】
<弁座部材7>
ハウジング2は、弁座部材7を有する。弁座部材7は円環形状の部材である。弁座部材7の内周は、フランジ部材6の外周よりも小径である。弁座部材7の内周は、第1開口71を形成する。弁座部材7の外周は、筒胴部24の内周面26よりも大径である。弁座部材7は、端部27の径方向内側に収容される。端部27に収容された弁座部材7は、その軸方向他方側に向く面が段差面28に接する。端部27は、弁座部材7を収容した状態で、その軸方向一方側の先端が径方向内側に屈曲する。端部27に収容された弁座部材7は、その軸方向一方側に向く面が、径方向内側に屈曲した端部27の軸方向一方側の先端に接する。径方向内側に屈曲した端部27の軸方向一方側の先端の内周は、開口27aを形成する。径方向内側に屈曲した端部27の軸方向一方側の先端の内周は、弁座部材7の内周よりも大径である。径方向内側に屈曲した端部27の軸方向一方側の先端の内周は、弁座部材7の外周よりも小径である。
【0022】
<弁体3>
弁体3は、円柱部材3aと、フランジ部材6と、を有する。本実施形態では、円柱部材3aは、フランジ部材6と別部材である。別部材であることで、複雑な加工を必要とせずに各部材を作製することができ、製造工程を簡易化することができる。円柱部材3aは、フランジ部材6と同一の部材であってもよい。フランジ部材6は、第1支持部23に支持される第1被支持部である。円柱部材3aは、フランジ部材6よりも軸方向他方側に設けられた弁体胴部31を有する。円柱部材3aは、弁体胴部31よりも軸方向他方側に設けられた第2被支持部32を有する。
【0023】
フランジ部材6は、弁体胴部31の軸方向一方側の端部に圧入されて固定される。フランジ部材6の軸方向から見た形状については、図4を参照して後述する。フランジ部材6は、弁体胴部31との境で径方向外側に延びて軸方向他方側に向く第1段差面61aを有する。
【0024】
<付勢部材4>
本実施形態では、付勢部材4はコイルばねである。付勢部材4は、例えば板ばねのようなコイルバネ以外の部材であってもよい。付勢部材4の軸方向一方側の端部は、第1段差面61aに接する。付勢部材4の軸方向他方側の端部は第2段差面22aに接する。付勢部材4は、筒胴部24の内周と弁体胴部31の外周との間に収容される。フランジ部材6は、付勢部材4の付勢力を第1段差面61aで受けて軸方向一方側に移動することで第1開口71を塞ぐ(図2参照)。これにより、弁である弁体3が、弁座である弁座部材7の第1開口71を塞ぎ、PCVバルブ116は閉弁する。フランジ部材6は、第1開口71側に対する第2開口25側の負圧により付勢部材4の付勢力に抗って軸方向他方側に移動する(図3参照)。これにより、弁である弁体3が、弁座である弁座部材7の第1開口71を開き、PCVバルブ116は開弁する。
【0025】
<円柱部材3a>
円柱部材3aは、軸方向他方の端部から軸方向一方側に延びる第1穴35を有する。円柱部材3aは、径方向外側(円柱部材3aの外周面)から延びて前記第1穴35に達する第2穴34を有する。本実施形態において、円柱部材3aは、中心軸Jと同軸である。本実施形態において、第1穴35は、中心軸Jと同軸である。第1穴35が延びる向きは、軸方向と平行な向きである。第1穴35が軸方向と平行であるので、他の場合と比べて円柱部材3aの加工をしやすくすることができる。第1穴35の軸方向一方側の端部である底部35aは、径方向内側に行くにつれて第1穴35の深さが深くなる円錐形状である。第2穴34の断面形状は円形状である。第2穴34の断面形状が円形状であるので、他の場合と比べて円柱部材3aの加工をしやすくすることができる。また、円柱部材3aの外周面における第2穴34の形状が円形状であることで、弁体3が軸方向に移動したときに、第2段差面22aの径方向内側の端部と、円柱部材3aの外周面における第2穴34とが干渉しにくくすることができ、弁体3が軸方向にスムーズに移動することができる。第2穴34が延びる向きは、径方向である。第2穴34が延びる向きは、軸方向と直交する向きである。第2穴34が軸方向と直交するので、他の場合と比べて円柱部材3aの加工をしやすくすることができる。第2被支持部32は、その外周において、径方向外側の端部が第2支持部22と接触する第2接触部33と、径方向外側の端部が第2支持部22から離間する第2離間部としての第2穴34と、を有する。
【0026】
<フランジ部材6>
図4は、図3のA-A’断面図である。フランジ部材6は、径方向外側の端部が第1支持部23と接触する第1接触部61と、径方向外側の端部が第1支持部23から離間する第1離間部62と、を周方向に交互に配置した形状の板状部材である。本実施形態では、フランジ部材6は、第1接触部61及び第1離間部62を周方向に3つずつ配置している。第1接触部61の径方向外側の端部は、弁体胴部31の径方向外側の端部よりも径方向外側に位置する。フランジ部材6は、軸方向に貫通する貫通孔6aを有する。弁体胴部31が貫通孔6aに圧入されることで、フランジ部材6が円柱部材3aに固定される。本実施形態によれば、第1接触部61と第1離間部62との間に形成された流路の大きさが、弁体3の軸方向位置によらず一定であることにより、還流するブローバイガスの流量を確保することができる。本実施形態によれば、第1支持部23において、弁体3を3点(3つの第1接触部61と第1支持部23との接点)で支持することで、安定して支持するとともに、還流するブローバイガスの流量を確保することができる。
【0027】
図5は、図3の弁体3を軸方向他方側から見た側面図である。図6は、図5のB-B’断面図である。第2穴34は、第2被支持部32の外周面から第1穴35に向けて径方向に延びる。第2穴34は、第1穴35に対して開口する。第1穴35の穴径及び第2穴34の穴径は、ブローバイガスを流す流量に応じて定めればよい。第1穴35の穴径は、第2穴34の穴径よりも大きい。第1穴35の穴径は、第2穴34の穴径と同じでもよい。第1穴35の穴径は、第2穴34の穴径よりも小さくてもよい。
【0028】
<PCVバルブ116の動作>
第1開口71側に対する第2開口25側の負圧により弁体3を軸方向他方側に移動させる力が、付勢部材4の付勢力よりも弱い場合には、フランジ部材6が弁座部材7に接触して第1開口71を塞ぎ、PCVバルブ116は閉弁する。第1開口71側に対する第2開口25側の負圧により弁体3を軸方向他方側に移動させる力が、付勢部材4の付勢力よりも強い場合には、フランジ部材6が弁座部材7から離れて第1開口71を開き、PCVバルブ116は開弁する。このとき、第1開口71、第1支持部23と第1離間部62との間、筒胴部24と弁体胴部31との間、第2穴34、第1穴35、及び第2開口25によってブローバイガスの流路が形成される。
【0029】
本実施形態によれば、第2穴34及び第1穴35によって流路を形成するので、還流弁を大型化することなく、入り口側の負圧が小さい状況で積極的に多くのブローバイガスを還流できる還流弁を提供することができる。
【0030】
図7は、従来のPCVバルブの動作特性を示す図である。図8は、本実施形態のPCVバルブ116の動作特性を示す図である。図7及び図8において、横軸は吸気側(PCVバルブを通過したブローバイガスの、燃焼室への入り口側)の負圧(出力側負圧)であり、縦軸はPCVバルブを介して流れるブローバイガスの流量である。図7に示す従来のPCVバルブでは、例えば、吸気側の負圧が小さい領域の場合は、ブローバイガスの流量が十分に確保できていない。これに対して、本実施形態のPCVバルブ116では、図8に示すように、例えば、吸気側の負圧が小さい領域の場合であっても、ブローバイガスの流量が十分に確保できている。したがって、本実施形態のPCVバルブ116によれば、例えば、内燃機関100の低回転域においてもブローバイガスの還流が促進される。
【0031】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態において、内燃機関の構成は第1実施形態と同じであるので、内燃機関を含む全体構成の説明は省略する。
【0032】
<PCVバルブ116>
以下、本発明の第2実施形態に係るPCVバルブ116について説明する。本実施形態において、第1実施形態と相違する点は、円柱部材3aの外周面から延びて第1穴35に達する穴についてであり、他の点は第1実施形態と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0033】
<円柱部材3a>
図9は、第2実施形態において、図3の弁体3を軸方向他方側から見た側面図である。図10は、図9のC-C’断面図である。本実施形態では、第2穴34a及び第2穴34bを有する。第2穴34a及び第2穴34bのそれぞれは、円柱部材3aの外周面から第1穴35に向けて径方向に延びる。第2穴34a及び第2穴34bのそれぞれは、第1穴35に対して開口する。第2穴34aは、第2穴34bと同軸である。したがって、第2穴34a及び第2穴34bは、円柱部材3aを径方向に貫通する。本実施形態によれば、第2穴34a及び34bが円柱部材3aを貫通するので、円柱部材3aの外周面から延びて第1穴35に達する穴を円柱部材3aの途中で止める場合と比べて製造工程を簡易化することができる。なお、本実施形態において、第2穴34a及び第2穴34bは、弁体胴部31を径方向に貫通する。第2穴34a及び第2穴34bは、第2被支持部32を径方向に貫通するものであってもよい。第1穴35の穴径、第2穴34aの穴径及び第2穴34bの穴径は、ブローバイガスを流す流量に応じて定めればよい。第2穴34aの穴径は、第2穴34bの穴径と等しい。第2穴34aの穴径は、第2穴34bの穴径と異なってもよい。第2穴34aは、第2穴34bと同軸でなくともよい。
【0034】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態において、内燃機関の構成は第1実施形態と同じであるので、内燃機関を含む全体構成の説明は省略する。
【0035】
<PCVバルブ116>
以下、本発明の第3実施形態に係るPCVバルブ116について説明する。本実施形態において、第1実施形態と相違する点は、円柱部材3aの外周面から延びて第1穴35に達する穴についてであり、他の点は第1実施形態と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0036】
<円柱部材3a>
図11は、第3実施形態において、図3の弁体3を軸方向他方側から見た側面図である。本実施形態では、第2穴34a、第2穴34b、第2穴34c及び第2穴34dを有する。円柱部材3aは、周方向に複数の第2穴34a、第2穴34b、第2穴34c及び第2穴34dを有する。弁体胴部31が、周方向に複数の第2穴34a、第2穴34b、第2穴34c及び第2穴34dを有するものであってもよい。第2被支持部32が、周方向に複数の第2穴34a、第2穴34b、第2穴34c及び第2穴34dを有するものであってもよい。本実施形態によれば、周方向に複数の第2穴34a、第2穴34b、第2穴34c及び第2穴34dを有するので、単数の場合と比べて開口面積を確保することができ、還流するブローバイガスの流量を確保することができる。
【0037】
第2穴34a、第2穴34b、第2穴34c及び第2穴34dのそれぞれは、円柱部材3aの外周面から第1穴35に向けて径方向に延びる。第2穴34a、第2穴34b、第2穴34c及び第2穴34dのそれぞれは、第1穴35に対して開口する。第2穴34aは、第2穴34bと同軸である。したがって、第2穴34a及び第2穴34bは、円柱部材3aを径方向に貫通する。第2穴34cは、第2穴34dと同軸である。したがって、第2穴34c及び第2穴34dは、円柱部材3aを径方向に貫通する。第2穴34a及び第2穴34bが延びる向きは、第2穴34c及び第2穴34dが延びる向きと直交する。第2穴34a及び第2穴34bが延びる向きは、第2穴34c及び第2穴34dが延びる向きと直交しなくてもよい。第1穴35の穴径、第2穴34aの穴径、第2穴34bの穴径、第2穴34cの穴径及び第2穴34dの穴径は、ブローバイガスを流す流量に応じて定めればよい。第2穴34aの穴径、第2穴34bの穴径、第2穴34cの穴径及び第2穴34dの穴径はそれぞれ等しい。第2穴34aの穴径、第2穴34bの穴径、第2穴34cの穴径及び第2穴34dの穴径はそれぞれ異なってもよい。第2穴34aは、第2穴34bと同軸でなくともよい。第2穴34cは、第2穴34dと同軸でなくともよい。
【0038】
上述した実施形態のPCVバルブの用途は、特に限定されない。上述した実施形態のPCVバルブは、例えば、車両に搭載される。また、上述した各実施形態の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
100 内燃機関
116 PCVバルブ(還流弁)
2 ハウジング
3 弁体
4 付勢部材
6 フランジ部材
7 弁座部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11