(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】表面導電率測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 22/00 20060101AFI20230131BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G01N22/00 Y
G01N22/00 V
G01R27/02 R
(21)【出願番号】P 2019080121
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】福盛 大雅
(72)【発明者】
【氏名】赤星 知幸
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-227855(JP,A)
【文献】特開2017-011642(JP,A)
【文献】特開2000-046756(JP,A)
【文献】特開昭63-142273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-G01N 22/04
G01R 27/00-G01R 27/32
G01R 29/00-G01R 29/26
H01P 1/20-H01P 1/219
H01P 7/00-H01P 7/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の
第1導体の第1被測定面と測定対象の第2導体の第2被測定面とが平行になるように、前記第1導体
及び前記第2導体を
それぞれ固定する第1支持部材
及び第2支持部材と、
前記第1導体と前記第2導体
との間に位置し、かつ、
前記第1被測定面及び前記第2被測定面にそれぞれ上面及び底面が平行になるように前記第1
被測定面及び前記第2
被測定面の中心部に位置する誘電体円柱と、
前記誘電体円柱の側面の複数点に固定される複数の棒状部を有し、前記第1導体と
前記誘電体円柱の前記上面との間
、及び前記第2導体と
前記誘電体円柱の前記底面との間に
、それぞれ間隙がある状態で前記誘電体円柱
を固定する固定部材と、
前記第1導体と前記第2導体に挟まれ、
前記第1導体と前記第2導体との間の距離を高さとする円筒であって、当該円筒の中心に前記誘電体円柱が位置するように
前記誘電体円柱の周囲に設けられた
前記円筒と、
前記円筒
の側面に設けられた開口部に挿通され、励振線として機能する励振部材とを備えることを特徴とする表面導電率測定装置。
【請求項2】
前記固定部材は、前記円筒に
外縁が支持され
る円環部を有し、前記複数の棒状部は、それぞれ前記誘電体円柱の側面と前記円環部の内縁との間に延びる
ことを特徴とする、請求項1に記載の表面導電率測定装置。
【請求項3】
前記励振部材は、前記誘電体円柱を挟んで両側に設けられた第1励振部材及び第2励振部材であり、
前記固定部材は、前記第1励振部材の先端部と前記誘電体円柱の側面の第1点を接着する第1接着部材、及び、前記第2励振部材の先端部と前記誘電体円柱の側面の第2点を接着する第2接着部材
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の表面導電率測定装置。
【請求項4】
前記第1導体及び前記第2導体は、
前記第1被測定面及び前記第2被測定面に凹凸
ができている電解銅箔であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面導電率測定装置。
【請求項5】
前記励振部材に接続され、導電率を測定する測定部を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面導電率測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面導電率測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばミリ波やマイクロ波などの高周波領域における誘電体材料の誘電率や誘電正接などの測定については、様々な測定方法が考案されており、例えば、導波管法、空洞共振器法、誘電体共振器法などが存在する。
また、高周波領域における導体の導電率や抵抗などの測定についても、種々の方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-227850号公報
【文献】特開2003-227855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような誘電体材料の誘電率や誘電正接、導体の導電率や抵抗などの電気的特性を測定するのに、例えばJIS R 1627 マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法などを用いる場合がある。
しかしながら、これを、測定対象の導体の表面導電率を測定する表面導電率測定装置として用いる場合に、表面に凹凸を有する導体の表面導電率を測定すると、凹凸が潰れて、測定精度が低下してしまうことがわかった。
【0005】
本発明は、測定対象の導体の表面の凹凸が潰れるのを防ぎ、表面導電率の測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、表面導電率測定装置は、測定対象の第1導体の第1被測定面と測定対象の第2導体の第2被測定面とが平行になるように、第1導体及び第2導体をそれぞれ固定する第1支持部材及び第2支持部材と、第1導体と第2導体との間に位置し、かつ、第1被測定面及び第2被測定面にそれぞれ上面及び底面が平行になるように第1被測定面及び第2被測定面の中心部に位置する誘電体円柱と、誘電体円柱の側面の複数点に固定される複数の棒状部を有し、第1導体と誘電体円柱の上面との間、及び第2導体と誘電体円柱の底面との間に、それぞれ間隙がある状態で誘電体円柱を固定する固定部材と、第1導体と第2導体に挟まれ、第1導体と第2導体との間の距離を高さとする円筒であって、当該円筒の中心に誘電体円柱が位置するように誘電体円柱の周囲に設けられた円筒と、円筒の側面に設けられた開口部に挿通され、励振線として機能する励振部材とを備える。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面として、測定対象の導体の表面の凹凸が潰れるのを防ぎ、表面導電率の測定精度を向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の構成を示す断面図である。
【
図2】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の前提となる測定装置の構成例を示す模式図である。
【
図3】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の前提となる測定装置の構成例を示す模式図である。
【
図4】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の前提となる測定装置の構成例を示す断面図である。
【
図5】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の前提となる測定装置の構成例を示す断面図である。
【
図6】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の前提となる測定装置の構成例を示す断面図である。
【
図7】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の前提となる測定装置の構成例を示す断面図である。
【
図8】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の前提となる測定装置によって得られる共振波形を示す図である。
【
図9】従来の表面導電率測定装置の構成を示す断面図である。
【
図10】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の具体的な構成例を示す断面図及び平面図である。
【
図11】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の具体的な構成例に含まれる支持部材(固定部材)の構成を示す平面図である。
【
図12】従来の表面導電率測定装置における銅箔の表面状態を示す平面図である。
【
図13】本実施形態の表面導電率測定装置における銅箔の表面状態を示す平面図である。
【
図14】本実施形態及び従来の表面導電率測定装置によって測定された比導電率と測定回数の関係を示す図である。
【
図15】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の具体的な構成例の変形例を示す断面図である。
【
図16】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の具体的な構成例の変形例を示す断面図である。
【
図17】空隙とQ値(Qu)の関係を示す図である。
【
図18】空隙とQ値(Qu)の関係を求めるのに用いた構成を示す図である。
【
図19】表面比導電率のシミュレーションに用いた、本実施形態の誘電体円柱支持構造を示す図である。
【
図20】表面比導電率のシミュレーションに用いた、比較例の誘電体円柱支持構造を示す図である。
【
図21】本実施形態及び比較例の誘電体円柱支持構造における表面比導電率のシミュレーション結果を示す図である。
【
図22】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の変形例の構成を示す断面図である。
【
図23】本実施形態にかかる表面導電率測定装置の変形例の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる表面導電率測定装置について、
図1~
図23を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる表面導電率測定装置は、高周波領域における導体(導体材料)の表面の導電率を測定する表面導電率測定装置である。
ここでは、表面導電率測定装置は、例えば約1GHz以上、特に、例えば約1GHz~約20GHz程度の高周波領域における導体の表面比導電率を測定する表面比導電率測定装置である。
【0010】
なお、表面導電率測定装置を、表面比導電率測定装置、又は、高周波表面導電率測定装置ともいう。
例えば、表面比導電率測定装置は、例えばJIS R 1627 マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法における試験装置に、後述の円筒及び固定部材を設けて、誘電体円柱を側面の複数点で固定することによって構成することができる。
【0011】
ここで、例えばJIS R 1627 マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法における装置(試験装置;測定装置)は、誘電体共振器法(誘電体円柱共振器法)を用いた装置であって、以下のように構成される。
つまり、この装置は、
図2に示すように、2つの円板状の導体板(導体円板)及び誘電体円柱(誘電体円柱試料)を、導体円板、誘電体円柱、導体円板の順に重ねた3層構造の共振器(誘電体共振器)を備える。
【0012】
なお、
図2では、上下の導体円板と誘電体円柱が接触している状態が示されているが、本実施形態では、後述するように、円筒7及び固定部材6を設けることで、上下の導体円板との間に間隙がある状態で誘電体円柱5がその側面の複数点で固定されることになる。
また、
図2では、誘電体円柱試料とされているが、本実施形態では、後述するように、測定試料は上下の導体円板(後述の第1導体1及び第2導体3に相当)である。
【0013】
また、この3層構造の共振器を構成する上下の導体円板の間に、一端(先端)に結合ループを有し、他端がコネクタになっている2本一対の結合励振ケーブル(励振線;励振部材)の先端側部分が挿入される。
なお、結合ループを、ループアンテナ、微小ループアンテナ、ループ状の極小アンテナともいう。
【0014】
また、これらの2本の結合励振ケーブルは、支持台(後述の第2支持部材4に相当)に支持され、ケーブル固定ネジで固定される。
また、下側の導体円板(後述の第2導体3に相当)は、支持台上に載せられて支持される。また、上側の導体円板(後述の第1導体1に相当)は、支持板(後述の第1支持部材2に相当)によって支持される。
【0015】
そして、2本の結合励振ケーブルのコネクタは、それぞれ、同軸ケーブル10、11によって、例えばネットワークアナライザなどの測定器(共振測定器;測定部)12に接続される(例えば
図3参照)。なお、全透過レベルを測定する際には、基準レベル測定ケーブルが接続される。
なお、測定中に動かないようにする必要がある場合など、必要に応じて、例えば
図4、
図5に示すように、支持板の上側にばね(ここでは板ばね)を設け、あるいは、例えば
図6、
図7に示すように、支持板の上側に押さえ部材を設けて、支持板及びこれに支持された上側の導体円板が下方へ向けて押さえつけられるようにしても良い。
【0016】
同様に、必要に応じて、上下の導体円板(例えば銅箔など)を固定するために、例えば
図6に示すように、支持板や支持台によってこれらの周囲を挟んでも良いし、例えば
図7に示すように、支持板や支持台にこれらを吸着、接着などで固定しても良い。
このような装置を用いることで、
図8に示すような共振波形及び共振ピーク波長が得られる。
【0017】
このQ値又は先鋭度とも呼ばれる共振ピークの鋭さは、測定系の構造のほか、誘電体円柱での電磁界エネルギの損失、導体円板での電磁界エネルギの損失などで決定されるため、別の測定結果と合わせて計算することで、誘電体円柱の損失と導体円板の損失を切り分けて計算することができる。
これにより、該当周波数(特定周波数)における導体表面の導電率、即ち、導体の表面比導電率を求めることができる。つまり、上述のような装置の共振器の高周波共振波形から導体の表面比導電率を計算することができる。
【0018】
このように、上述のような装置では、上下の導体円板が測定試料(測定対象;測定導体)となり、その表面が被測定面(被測定導体面)となり、導体の表面比導電率(電気的特性;電気的物性値)を測定することができる。
ところで、例えば、電子機器に用いられる配線板は、絶縁材料と導体材料から形成され、これらの各種絶縁材料と導体材料の特性を求めたいという要求がある。
【0019】
例えば約1GHz以上、特に、例えば約1GHzから約20GHz程度の周波数での誘電体材料の誘電率や誘電正接の測定については、様々な測定方法が考案されており、例えば導波管法、空洞共振器法、誘電体共振器法などが存在する。
また、例えば、導体の電気的特性(例えば表面比導電率)の測定に関しては、誘電体共振器法において、誘電率や誘電正接を高精度に決定することができれば、例えばJIS R 1627 マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法などを用いることで、導出可能である。
【0020】
しかしながら、例えばJIS R 1627 マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法などを、測定対象の導体の表面導電率を測定する表面導電率測定装置として用いる場合に、表面に凹凸を有する導体の表面導電率を測定すると、凹凸が潰れて、測定精度が低下してしまうことがわかった。
例えば、金属箔(例えば銅箔)の表面比導電率を上述のような方法によって測定しようとすると、
図9に示すように、測定中に金属箔の表面の凹凸が潰れて平坦になってしまうため、その特性が変化し、本来の表面比導電率の値が得られないという問題が発生する場合があることがわかった。
【0021】
そこで、本実施形態では、測定対象の導体の表面の凹凸が潰れるのを防ぎ、表面導電率の測定精度を向上させるべく、以下のような構成を採用している。
つまり、本実施形態の表面導電率測定装置は、
図1に示すように、測定対象の第1導体1を支持する第1支持部材2と、測定対象の第2導体3を支持し、第1支持部材2に平行な第2支持部材4と、誘電体円柱5と、固定部材6と、円筒7と、励振部材8とを備える。
【0022】
なお、第1導体1及び第2導体3は、測定時に備え付けられる。
この場合、第1支持部材2に支持された第1導体1と第2支持部材4に支持された第2導体3は、平行になり、これらの間に間隙がある状態で挟まれる誘電体円柱5の上面及び下面(底面)とも平行になる。
誘電体円柱5は、第1導体1と第2導体3の間に位置し、かつ、第1導体1及び第2導体3の中心部に位置する。
【0023】
固定部材6は、第1導体1との間及び第2導体3との間に間隙がある状態で誘電体円柱5を側面の複数点(多点)で固定する(例えば
図10、
図11参照)。
円筒7は、第1導体1と第2導体3に挟まれ(即ち、第1支持部材2と第2支持部材4に挟まれ)、中心に誘電体円柱5が位置するように設けられている。
この円筒7は、誘電体円柱5の上面と第1導体1との間及び誘電体円柱5の底面と第2導体3との間に間隙(空隙)を設けるために用いられるものであり、その高さは誘電体円柱5の高さよりも高くなっている。
【0024】
つまり、第1支持部材2に支持された第1導体1と第2支持部材4に支持された第2導体3との間の距離が円筒7の高さによって決められ、円筒7によって、第1支持部材2に支持された第1導体1と第2支持部材4に支持された第2導体3の高さ方向の位置決めが行なわれることになる。
励振部材8は、円筒7に設けられた開口部に挿通され、励振線として機能する。
【0025】
本実施形態では、固定部材6は、円筒7に支持され、誘電体円柱5を側面の複数点(多点)で支持する複数(ここでは4つ)の支持部を有する第3支持部材9である(例えば
図10、
図11参照)。
ここでは、第3支持部材9は、絶縁体からなり、例えば樹脂製の支持体からなる。
また、本実施形態では、第1導体1及び第2導体3は、表面に凹凸を有する箔(金属箔)である。ここでは、第1導体1及び第2導体3は、銅箔である。具体的には、密着のために表面を粗くして片面に凹凸ができている電解銅箔である。
【0026】
ここで、
図10、
図11を参照しながら、本実施形態の誘電体円柱5の支持構造の具体的な構成例について説明する。
被測定物である第1導体1及び第2導体3は、例えば銅、アルミ、真鍮などの箔(ここでは銅箔)であり、大きさは例えば約10cm×10cmである。
上下の箔は、図示していないが、第1支持部材2としての支持板や第2支持部材4としての支持台の平面へ接着や吸着によって支持する。なお、支持板や支持台を支持体ともいう。
【0027】
誘電体円柱5は、通常、高さ約3mm~約30mm、直径約5~約30mm、比誘電率は約10~約100のものを用いる。ここでは、例えば、高さ約4.7mm、直径約10mm、比誘電率約38のものを用いる。
誘電体円柱5の材質としては、セラミックの焼結体、あるいは、酸化金属の結晶体(例えばAl2O3結晶:サファイア)などを用いる。
【0028】
測定周波数は1~20GHzであり、例えば7GHzでの表面比導電率の測定結果が得られる。
円筒7は、誘電体円柱5よりも高さが約10~約300μm程度高くする。例えば、高さ約4.7mmの誘電体円柱5に対しては、円筒7の高さは約4.75mmとする。また、円筒7の直径は、例えば約50mmとする。また、円筒7の材質は、例えばCuやAlを用いる。
【0029】
誘電体円柱5を支持する第3支持部材9(固定部材6)は、例えばCuのような導体、PET樹脂、メタクリル酸メチルのような絶縁体からなる。また、この第3支持部材9は、例えば、長さ約10mm、断面寸法約1mm×約1mmの棒状の支持部9Aを例えば4本備え、これらの棒状の支持部9Aを空中で支持する円環状の支持部9Bを備える。
ところで、上述のように、本実施形態では、円筒7は、誘電体円柱5に周囲に設けられており、誘電体円柱5の高さよりも高くなっている。
【0030】
このため、円筒7が、第1支持部材2に支持された第1導体1と第2支持部材4に支持された第2導体3との間に挟まれて、第1導体1と第2導体3との間の距離が決められることになる。
そして、固定部材6としての第3支持部材9によって、誘電体円柱5の上面と第1導体1との間及び誘電体円柱5の底面と第2導体3との間に間隙がある状態で、誘電体円柱5が側面の複数点で支持されて固定されることになる。
【0031】
このように、第1導体1及び第2導体3と誘電体円柱5が直接接触しないように(即ち、第1導体1及び第2導体3と誘電体円柱5とを非接触とし)、誘電体円柱5の周囲に(即ち、導体1、3の周辺部に)円筒7を設け、誘電体円柱5と第1導体1及び第2導体3との間に間隙がある状態で誘電体円柱5を側面の複数点で支持して固定するようにしている。
【0032】
これにより、表面比導電率測定における導体1、3(ここでは金属箔)の凹凸形状変化の問題を解消し、測定精度を向上させることができる。
つまり、従来のように第1導体1及び第2導体3(ここでは金属箔)と誘電体円柱5が直接接触していると(例えば
図9参照)、例えば
図12に示すように、測定中に、測定に大きな影響を及ぼす中心付近(ここでは金属箔の中心付近)で表面の凹凸の潰れが生じ、平らになって、傷が入ったような状態になっていた。
【0033】
そして、
図14中、三角マークで示しているように、測定回数が多くなるにつれて測定される比導電率σrの値が変化してしまい、本来の値が得られなくなるという問題が生じていた。
これに対し、上述の実施形態では、
図1、
図10、
図11に示すように、第1導体1及び第2導体3と誘電体円柱5が直接接触しないように、誘電体円柱5の周囲に円筒7を設け、誘電体円柱5と第1導体1及び第2導体3との間に間隙がある状態で誘電体円柱5を側面の複数点で支持して固定するようにしている。この場合、第1導体1及び第2導体3と円筒7が直接接触することになる。
【0034】
これにより、
図13に示すように、測定中に、表面の凹凸に潰れが生じ、平らになって、傷が入ったような状態になる部分を、測定結果への影響の小さな周辺領域(ここでは金属箔の周辺領域)へ移動させることができる。
この結果、表面の凹凸の潰れによる特性変化の影響が微小になり、
図14中、四角マークで示しているように、測定回数が多くなっても測定される比導電率σrの値が変化しないようにすることができ、測定精度を向上させることができる。
【0035】
なお、本実施形態のように、円筒7及び固定部材6を設ける場合、ばねや押さえ部材(例えば
図4~
図7参照)を設けなくても良いが、固定の都合で必要であれば、ばねや押さえ部材(例えば
図4~
図7参照)を設けても良い。
また、同様に、必要に応じて、第1導体1及び第2導体3(ここでは銅箔)を固定するために、例えば
図15に示すように、第1支持部材2としての支持板や第2支持部材4としての支持台によってこれらの周囲を挟んでも良いし、例えば
図16に示すように、第1支持部材2としての支持板や第1支持部材4としての支持台にこれらを吸着、接着などで固定しても良い。
【0036】
ところで、上述のようにして、円筒7によって、誘電体円柱5の上面と第1導体1との間及び誘電体円柱5の底面と第2導体3との間に設けた空隙(間隙)は、誘電体円柱5の高さの約1/10以下であることが好ましい。
ここで、
図17は、直径約10mm、高さ約4.7mm、誘電率約38の誘電体円柱を用いた
図18に示すような構成で、空隙とQ値の関係を求めた結果を示している。
【0037】
図17に示すように、空隙を、誘電体円柱5の高さの約10分の1とした場合に、Q値(Qu)の誤差も約10%程度となっており、空隙が大きければ大きいほど、本来のQ値とのかい離が大きくなることが分かる。
このため、空隙の大きさは、誘電体円柱5の高さの約10分の1程度までとすることが望ましい。
【0038】
したがって、本実施形態にかかる表面導電率測定装置によれば、測定対象の導体(ここでは第1導体1及び第2導体3)の表面の凹凸が潰れるのを防ぎ、表面導電率の測定精度を向上させることができる。
ここで、
図21は、
図19に示すような本実施形態の誘電体円柱支持構造、即ち、第3支持部材9(固定部材6)によって誘電体円柱5を側面の複数点で支持する構造、
図20に示すような比較例の誘電体円柱支持構造、即ち、円環状の支持部材Xによって誘電体円柱5の側面を円環状に全周にわたって支持する構造について、表面比導電率を測定した場合にどのようになるかをシミュレーションした結果を示している。
【0039】
なお、ここでは、いずれの場合も、支持部材(支持体)は、樹脂製とし、その厚さは約1mmとしている。なお、誘電体円柱5は、セラミック製とし、直径約1cmとしている。また、
図19に示すような本実施形態の誘電体円柱支持構造では、複数(ここでは4つ)の支持部は、約1mm角としている。
図21に示すように、
図19に示すような本実施形態の誘電体円柱支持構造では、真値に近い値が出ているのに対し、
図20に示すような比較例の誘電体円柱支持構造では、大きな誤差が生じてしまっており、まともな測定ができていないことがわかる。
【0040】
例えば、
図20に示すような比較例の誘電体円柱支持構造では、大きな誤差が生じてしまうのに対し、
図19に示すような本実施形態の誘電体円柱支持構造では、誤差を約1%以内に小さく抑えることができていることがわかる。
このように、上述の本実施形態の誘電体円柱支持構造を採用することで、電磁界分布に影響を与え、測定に大きな影響を及ぼす誘電体円柱付近で、表面に凹凸のある導体の表面形状に影響をほとんど与えずに、表面比導電率(σr)の測定精度を向上させることができることがわかる。
【0041】
なお、上述の実施形態では、固定部材6を、円筒7に支持され、誘電体円柱5を側面の複数点で支持する複数の支持部9Aを有する第3支持部材9とした誘電体円柱支持構造を採用しているが、これに限られるものではない。
例えば
図22、
図23に示すように、励振部材(励振線)8として、誘電体円柱5を挟んで両側に設けられた第1励振部材8X及び第2励振部材8Yを備え、固定部材6として、第1励振部材8Xの先端部と誘電体円柱5の側面の第1点を接着する第1接着部材13X、及び、第2励振部材8Yの先端部と誘電体円柱5の側面の第2点を接着する第2接着部材13Yとしても良い。
【0042】
このように、第1励振部材8X及び第2励振部材8Yとしての励振線の先端部と誘電体円柱5の側面を第1接着部材13X及び第2接着部材13Yとしての接着剤(固定部材6)によって接着して支持することで、第1導体1及び第2導体3(例えば銅箔;測定試料)との間に間隙がある状態で誘電体円柱5を側面の複数点(ここでは2点)で固定するようにしても良い。
【0043】
なお、この場合、励振線8X、8Y及び接着剤13X、13Yが、誘電体円柱5を側面の複数点で支持する支持部材として機能することになる。
ここで、接着剤13X、13Yは、絶縁材料からなるものであることが好ましい。接着剤13X、13Yの材料としては、例えばα-シアノアクリレート、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル系接着剤などを用いることができる。
【0044】
また、この変形例の構成と上述の実施形態の構成を組み合わせて用いることも可能である。
なお、本発明は、上述した実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
以下、上述の実施形態及び変形例に関し、更に、付記を開示する。
【0045】
(付記1)
測定対象の第1導体を支持する第1支持部材と、
測定対象の第2導体を支持し、前記第1支持部材に平行な第2支持部材と、
前記第1導体と前記第2導体の間に位置し、かつ、前記第1導体及び前記第2導体の中心部に位置する誘電体円柱と、
前記第1導体との間及び前記第2導体との間に間隙がある状態で前記誘電体円柱を側面の複数点で固定する固定部材と、
前記第1導体と前記第2導体に挟まれ、中心に前記誘電体円柱が位置するように設けられた円筒と、
前記円筒に設けられた開口部に挿通され、励振線として機能する励振部材とを備えることを特徴とする表面導電率測定装置。
【0046】
(付記2)
前記固定部材は、前記円筒に支持され、前記誘電体円柱を側面の複数点で支持する複数の支持部を有する第3支持部材であることを特徴とする、付記1に記載の表面導電率測定装置。
(付記3)
前記励振部材は、前記誘電体円柱を挟んで両側に設けられた第1励振部材及び第2励振部材であり、
前記固定部材は、前記第1励振部材の先端部と前記誘電体円柱の側面の第1点を接着する第1接着部材、及び、前記第2励振部材の先端部と前記誘電体円柱の側面の第2点を接着する第2接着部材であることを特徴とする、付記1又は2に記載の表面導電率測定装置。
【0047】
(付記4)
前記第1導体及び前記第2導体は、表面に凹凸を有する箔であることを特徴とする、付記1~3のいずれか1項に記載の表面導電率測定装置。
(付記5)
前記第1導体及び前記第2導体は、銅箔であることを特徴とする、付記1~4のいずれか1項に記載の表面導電率測定装置。
【0048】
(付記6)
前記励振部材に接続され、導電率を測定する測定部を備えることを特徴とする、付記1~5のいずれか1項に記載の表面導電率測定装置。
【符号の説明】
【0049】
1 第1導体
2 第1支持部材
3 第2導体
4 第2支持部材
5 誘電体円柱
6 固定部材
7 円筒
8 励振部材
8X 第1励振部材
8Y 第2励振部材
9 第3支持部材
9A 棒状の支持部
9B 円環状の支持部
10、11 同軸ケーブル
12 測定器(共振測定器;測定部)
13X 第1接着部材
13Y 第2接着部材