(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】車両の床下構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
B62D25/20 H
(21)【出願番号】P 2019144625
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井川 貴至
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳信
(72)【発明者】
【氏名】馬場 佑斗
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015012528(DE,A1)
【文献】特開2008-221968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルの下面における車幅方向両側で車両前後方向に延びる左右の縦骨格部材と、前記フロアパネルの下面で車幅方向に延びる横骨格部材と、前記左右の縦骨格部材と前記横骨格部材の車幅方向における中央部とをそれぞれつなぐ左右のブレースとを備える車両の床下構造であって、
前記フロアパネルの下面には、前記横骨格部材の車幅方向における中央部の近傍に取付け台座が固定されており、
前記取付け台座は、前記フロアパネルの下面に固定される基端部と、前記フロアパネルの下面から下方に突出し、左右のブレースが連結される突出部とを備えており、
さらに、前記フロアパネルの下面には、前記取付け台座を支持して倒れ防止を図る床下骨格部材が車両前後方向に延びるように設けられており、
前記取付け台座の基端部が連結部材を介して前記横骨格部材に連結されて
おり、
前記取付け台座は、前記連結部材と前記床下骨格部材とによって車両前後方向から挟まれている車両の床下構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両の床下構造であって、
前記車両のフロアパネルには、前記横骨格部材に対して下方に突出する突出パネル部が設けられて
、その突出パネル部の下面に前記床下骨格部材が固定されており、
前記取付け台座の基端部は前記突出パネル部を覆って設けられ、前記取付け台座の突出部は前記突出パネル部の突出端部よりも下方に突出しており、
前記取付け台座の基端部と前記横骨格部材とをつないで前記連結部材が設けられており、
前記連結部材の下端位置が前記突出パネル部の突出端部よりも高い位置にある車両の床下構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両の床下構造であって、
前記取付け台座は、前板と左右の側板とを備える前側板部と、後板と左右の側板とを備える後側板部とを有しており、
前記前側板部の左右の側板と前記後側板部の左右の側板とが互いに連結されることで、前記取付け台座が形成されている車両の床下構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両の床下構造であって、
前記連結部材は、台形板状に形成されており、
前記連結部材における台形の上底に相当する部分の幅寸法が前記取付け台座の基端部の幅寸法にほぼ等しく設定されて、前記上底に相当する部分が前記取付け台座の基端部に連結されており、
前記連結部材における台形の下底に相当する部分が前記横骨格部材の車幅方向における中央部に連結されている車両の床下構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向両側で車両前後方向に延びる左右の縦骨格部材と、車幅方向に延びる横骨格部材と、前記左右の縦骨格部材と前記横骨格部材の車幅方向における中央部とをそれぞれつなぐ左右のブレースとを備える車両の床下構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の床下構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両の床下構造100は、
図10に示すように、車両のフロアパネル102の下面における車幅方向両側で車両前後方向に延びる左右のロッカーレール103を備えている。左右のロッカーレール103の車幅方向内側には、車両前後方向に延びる左右のフロアサイドメンバ104が設けられており、それらのフロアサイドメンバ104が同じく車両前後方向に延びるリヤサイドメンバ105に接続されている。また、左右のリヤサイドメンバ105間に車幅方向に延びるリヤクロスメンバ106が渡されている。そして、リヤクロスメンバ106の車幅方向における中央部と左右のロッカーレール103の後端部とが左右のブレース109によって連結されている。これらのブレース109により、車両ボディの後部における捻じれ剛性が向上する。
【0003】
左右のブレース109は、
図10、
図11に示すように、取付け座108を介してリヤクロスメンバ106の中央部に連結されている。即ち、リヤクロスメンバ106の中央部には、下方に一定寸法だけ張り出す張出平板部106tが車幅方向に延びるように設けられており、その張出平板部106tに取付け座108が固定されている。取付け座108は、左右対称な状態で傾斜した第1支柱108aと第2支柱108bとによりV字形に形成されている。そして、取付け座108の基端部側(上端側)で第1支柱108aと第2支柱108bとが車幅方向に離れている部分がリヤクロスメンバ106の張出平板部106tに固定されている。また、取付け座108の突出端の位置(下端位置)で第1支柱108aと第2支柱108bとが互いに連結されている部分に左右のブレース109が連結されている。これにより、取付け座108に対して左右のブレース109から荷重が加わった場合に、取付け座108が左右方向に倒れ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両の床下構造では、リヤクロスメンバ106の中央部に張出平板部106tを設け、その張出平板部106tにV字形の取付け座108を固定する構成である。このため、前記張出平板部106t、及び取付け座108を設けるため、車幅方向に大きなスペースが必要になる。即ち、車両の床下に張出平板部106t、及び取付け座108のために大きなスペースが必要になるため、車両の床下に設置されるマフラー等の床下部品との干渉を避けるのに手間が掛かる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ブレースが連結される取付け台座と車両の床下部品(例えば、マフラ等)との干渉を避け易くするとともに、取付け座の倒れ防止を図れるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両のフロアパネルの下面における車幅方向両側で車両前後方向に延びる左右の縦骨格部材と、前記フロアパネルの下面で車幅方向に延びる横骨格部材と、前記左右の縦骨格部材と前記横骨格部材の車幅方向における中央部とをそれぞれつなぐ左右のブレースとを備える車両の床下構造であって、前記フロアパネルの下面には、前記横骨格部材の車幅方向における中央部の近傍に取付け台座が固定されており、前記取付け台座は、前記フロアパネルの下面に固定される基端部と、前記フロアパネルの下面から下方に突出し、左右のブレースが連結される突出部とを備えており、さらに、前記フロアパネルの下面には、前記取付け台座を支持して倒れ防止を図る床下骨格部材が車両前後方向に延びるように設けられており、前記取付け台座の基端部が連結部材を介して前記横骨格部材に連結されており、前記取付け台座は、前記連結部材と前記床下骨格部材とによって車両前後方向から挟まれている。
【0008】
本発明によると、取付け台座は、フロアパネルの下面に固定される基端部と、前記フロアパネルの下面から下方に突出し、左右のブレースが連結される突出部とを備えている。そして、前記取付け台座の基端部が連結部材を介して横骨格部材に連結されている。即ち、取付け台座の突出部に左右のブレースが連結される構成のため、車両の床下部品(例えば、マフラ等)との干渉を避け易くなる。また、取付け台座の基端部が連結部材を介して横骨格部材に連結されているため、取付け台座が左右のブレースから荷重を受けた場合でも、前記取付け台座が倒れ難くなる。
【0009】
第2の発明によると、車両のフロアパネルには、横骨格部材に対して下方に突出する突出パネル部が設けられて、その突出パネル部の下面に前記床下骨格部材が固定されており、前記取付け台座の基端部は前記突出パネル部を覆って設けられ、前記取付け台座の突出部は前記突出パネル部の突出端部よりも下方に突出しており、前記取付け台座の基端部と前記横骨格部材とをつないで前記連結部材が設けられており、前記連結部材の下端位置が前記突出パネル部の突出端部よりも高い位置にある。
即ち、連結部材が突出パネル部から下方に突出しないため、連結部材が車両の床下部品と干渉することがない。
【0010】
第3の発明によると、取付け台座は、前板と左右の側板とを備える前側板部と、後板と左右の側板とを備える後側板部とを有しており、前記前側板部の左右の側板と前記後側板部の左右の側板とが互いに連結されることで、前記取付け台座が形成されている。ここで、取付け台座では、左右のブレースから加わる左右方向の荷重は、主に前側板部の前板と後側板部の後板とで受けられる。即ち、前側板部の前板と後側板部の後板とには大きな荷重が加わるのに対し、前側板部の左右の側板と後側板部の左右の側板とにはさほど大きな荷重が加わらない。そして、さほど大きな荷重が加わらない前側板部の左右の側板と後側板部の左右の側板とを連結して取付け台座を形成するため、前記取付け台座が損傷し難くなる。
【0011】
第4の発明によると、連結部材は、台形板状に形成されており、前記連結部材における台形の上底に相当する部分の幅寸法が前記取付け台座の基端部の幅寸法にほぼ等しく設定されて、前記上底に相当する部分が前記取付け台座の基端部に連結されており、前記連結部材における台形の下底に相当する部分が前記横骨格部材の車幅方向における中央部に連結されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ブレースが連結される取付け台座の車幅方向における寸法を極力小さくすることで車両の床下部品(例えば、マフラ等)との干渉を避け易くなる。また、取付け座の倒れ防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両の床下構造を斜め下前方から見た全体斜視図である。
【
図2】車両の床下構造におけるブレースと取付け台座との連結部等を表す拡大斜視図(
図1のII矢視拡大斜視図)である。
【
図3】車両の床下構造で使用されるシェアプレート、取付け台座、及び床下クロス等を斜め下前方から見た斜視図である。
【
図4】車両の床下構造を表す縦断面図(クロスメンバ、フロアパネル、シェアプレート、取付け台座、及び床下クロスの関係を表す縦断面図)である。
【
図5】シェアプレート、取付け台座、及び床下クロスの関係を表す分解斜視図である。
【
図6】取付け台座と床下クロスとの連結構造を斜め下後方から見た斜視図である。
【
図7】取付け台座のバルクと床下クロスとの連結構造を表す側面図である。
【
図8】取付け台座のバルクとリヤフロアパネルとの関係を表す側面図である。
【
図9】車両の床下構造におけるブレースと取付け台座との連結部等を表す平面図である。
【
図10】従来の車両の床下構造を表す全体斜視図である。
【
図11】従来の車両の床下構造におけるブレースと取付け座との連結部を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、
図1から
図9に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両の床下構造の説明を行う。本実施形態に係る車両の床下構造は、フロアパネルの下面に設けられた左右のロッカーレールの後端部とリヤクロスメンバの中央部とを左右のブレースで連結する構成の車両における後部床下構造である。ここで、図中における前後左右及び上下は、車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<車両10の後部床下の概要について>
車両10の後部床下には、
図1に示すように、フロアパネル11の下面の左右両側に車両前後方向に延びるフロアサイドメンバ12が設けられている。フロアサイドメンバ12は、後輪(図示省略)が収納されるリヤホイールハウス13の後部位置で同じく車両前後方向に延びるリヤサイドメンバ14に接続されている。また、フロアパネル11の下面の左右端部には、フロントホイールハウス(図示省略)とリヤホイールハウス13間で車両前後方向に延びるロッカーレール16がフロアサイドメンバ12の車幅方向外側に設けられている。ここで、ロッカーレール16上には、フロントピラー、センターピラー、及びリヤピラー等、車両10のルーフパネル(図示省略)を支持する支柱(図示省略)が立設されている。
【0016】
左右のフロアサイドメンバ12間には、
図1に示すように、ロッカーレール16の後端部の位置で、車幅方向(左右方向)に延びるフロアクロスメンバ17が設けられている。そして、フロアクロスメンバ17の延長線上の位置に左右のフロアサイドメンバ12と左右のロッカーレール16とをそれぞれつなぐアウトリガー17rが設けられている。また、フロアクロスメンバ17の後側には、左右のフロアサイドメンバ12をつなぐ後部クロスメンバ18が車幅方向に延びるように設けられている。さらに、左側のフロアサイドメンバ12とリヤサイドメンバ14との接続部位と、右側のフロアサイドメンバ12とリヤサイドメンバ14との接続部位間には、車幅方向に延びるリヤフロア前クロスメンバ19が設けられている。
【0017】
リヤフロア前クロスメンバ19と左右のリヤサイドメンバ14とにより囲まれた範囲には、
図1に示すように、リヤフロアパネル110が設けられている。リヤフロアパネル110は、
図4等の縦断面図に示すように、リヤフロア前クロスメンバ19等により支持されているフロアパネル11に対して一定寸法だけ下方に突出するように形成されている。これにより、車室内では、リヤフロアパネル110の上面により形成される床面がフロアパネル11の上面により形成される床面に対して一定寸法だけ低くなることで、床面に窪み部が形成される。そして、リヤフロアパネル110の上面により形成される床面の窪み部に、例えば、スペアタイヤ等が収納されている。
【0018】
ここで、リヤフロアパネル110の縁部(
図4では前部)は、
図4に示すように、外側(下面側)が凸となる湾曲面状に形成されており、リヤフロアパネル110の中央側(縁部以外)はほぼ平坦に形成されている。即ち、リヤフロアパネル110の中央側における平坦部分の下面がリヤフロアパネル110の突出端部となる。
【0019】
リヤフロアパネル110の下面の前部における車幅方向中央部には、
図1~
図4に示すように、箱状の取付け台座30が設けられている。取付け台座30は、
図4に示すように、その取付け台座30の前部がシェアプレート41(
図3等参照)によってリヤフロア前クロスメンバ19と連結されている。シェアプレート41は台形板状に形成されており、リヤフロアパネル110の突出端部よりも高い位置に設置されている。また、取付け台座30の後部は、リヤフロアパネル110の下面に固定されて車両前後方向に延びる床下クロス45によって後側から支持されている。取付け台座30は、リヤフロアパネル110の突出端部より下方に突出しており、
図1、
図2に示すように、取付け台座30の下端部(突出端部)と左右のロッカーレール16の後端部間が左右のブレース20によって連結されている。ここで、左右のロッカーレール16の後端部と取付け台座30の下端部(突出端部)とは、左右のブレース20によって直線的に連結されている。このように、左右のブレース20を設けることにより、車両ボディの後部における捻じれ剛性が向上する。
なお、前記リヤフロアパネル110の下面に固定されて車両前後方向に延びる床下クロス45が本発明の床下骨格部材に相当する。
【0020】
<取付け台座30について>
取付け台座30は、左右のブレース20の一端側を支える台座であり、上記したように、リヤフロアパネル110の突出端部よりも下方に突出する箱状に形成されている。取付け台座30は、
図5の分解斜視図に示すように、フロントパネル310とリインフォース320とバルク330とが互いに連結されることにより構成されている。取付け台座30のフロントパネル310は、前板312と、前板312の左右端で約90°後方に折り曲げられた左右の側板314と、前板312の下端部で水平な位置まで上方に折り曲げられた下面板315とから構成されている。
【0021】
フロントパネル310の前板312は、
図2、
図3に示すように、上下方向に長い長方形状に形成されており、基端部側(上端側)が先端側(下端側)よりも若干幅広となるように形成されている。即ち、フロントパネル310の車幅方向(左右方向)における幅寸法は、上端側と下端側とでほぼ等しい値に設定されている。また、フロントパネル310における左右の側板314の上端には、
図4~
図6に示すように、リヤフロアパネル110の下面の前部に連結されるフランジ部314eが、リヤフロアパネル110の湾曲形状に合わせて形成されている。即ち、フロントパネル310のフランジ部314eよりも下側の部分がリヤフロアパネル110の下面から下方に突出するようになる。また、フロントパネル310の下面板315には、
図5、
図6に示すように、左右のブレース20の一端側が連結される連結プレート22をボルト止めするためのボルト孔315bが形成されている。
【0022】
取付け台座30のリインフォース320は、
図5に示すように、下面板325と、下面板325の左右で約90°上方に折曲られた左右の側板324とから略U字形に形成されている。そして、リインフォース320の下面板325と左右の側板324との前部が、
図6等に示すように、フロントパネル310の下面板315と左右の側板314とにそれぞれ内側から重ねられるように構成されている。リインフォース320の下面板325には、フロントパネル310の下面板315のボルト孔315bと重なる位置にボルト孔325bが形成されている。また、リインフォース320の左右の側板324の上端には、
図4、
図5に示すように、リヤフロアパネル110の下面の前部に連結されるフランジ部324eが、リヤフロアパネル110の湾曲形状に合わせて形成されている。
【0023】
取付け台座30のバルク330は、
図5、
図6に示すように、後板332と、後板332の左右端で約90°前方に折り曲げられた左右の側板334と、後板332の下端部で水平な位置まで上方に折り曲げられた下面板335とから構成されている。バルク330の幅寸法は、フロントパネル310の幅寸法とほぼ等しい値に設定されている。バルク330の左右の側板334の前部は、
図6に示すように、床下クロス45の左右の縦壁部45a,45b(後記する)を介してリインフォース320の左右の側板324にそれぞれ内側から重ねられるように構成されている。
【0024】
また、バルク330の左右の側板334の上端には、
図7、
図8に示すように、リヤフロアパネル110の下面の前部に連結されるフランジ部334eが、リヤフロアパネル110の湾曲形状に合わせて形成されている。さらに、バルク330のフランジ部334eがリヤフロアパネル110に連結された状態で、バルク330の後板332の上端はリヤフロアパネル110の下面に当接するようになる。また、バルク330の下面板335の前部は、リインフォース320の下面板325に内側から重ねられる構成であり、その前部にはリインフォース320の下面板325のボルト孔325bに対応する位置にボルト孔335bが形成されている。
【0025】
<床下クロス45について>
床下クロス45は、
図5、
図6に示すように、取付け台座30を後方から支えることで、その取付け台座30の倒れ防止を図る骨格部材である。床下クロス45は、底板45zと左右の側壁45sとにより断面略U字形の溝状に形成されており、左右の側壁45sの高さ寸法が取付け台座30のバルク330の高さ寸法のほぼ1/2に設定されている。また、左右の側壁45sの上端位置には、水平方向外側に一定幅で折り曲げ成形されたフランジ部45eが設けられている。床下クロス45のフランジ部45eは、リヤフロアパネル110の下面に連結される部分であり、リヤフロアパネル110の形状に合わせて形成されている。また、床下クロス45の前部には、左右の側壁45sから前方に突出するように左右の縦壁部45a,45bが設けられている。
【0026】
そして、床下クロス45の左右の縦壁部45a,45bが、
図5、
図6に示すように、取付け台座30のバルク330を幅方向両側から挟んだ状態でリインフォース320の左右の側板324、及びフロントパネル310の左右の側板314の内側に挿入できるように構成されている。また、床下クロス45の前部には、底板45zに対して下方に約90°折り曲げられた状態で縦フランジ部45fが形成されている。床下クロス45の縦フランジ部45fは、左右の縦壁部45a,45bが、
図6に示すように、取付け台座30のバルク330を幅方向両側から挟んだ状態で、バルク330の後板332に当接可能なように構成されている。
【0027】
<シェアプレート41について>
シェアプレート41は、
図2、
図3等に示すように、取付け台座30の前部とリヤフロア前クロスメンバ19とを連結させるとともに、取付け台座30を前方から支えることで、その取付け台座30の倒れ防止を図る部材である。シェアプレート41は、台形板状に形成されている。シェアプレート41の高さ寸法(台形の上底と下底間の距離)は、
図4に示すように、取付け台座30の上端位置(前板312の上端)と、リヤフロアパネル110の下面に連結される取付け台座30のフランジ部314e,324e,334eの下端位置間の距離とほぼ等しい値に設定されている。このため、シェアプレート41が取付け台座30の前部とリヤフロア前クロスメンバ19とを連結させた状態で(
図4参照)、シェアプレート41はリヤフロアパネル110の突出端部よりも下方に突出することはない。
【0028】
シェアプレート41における台形の上底に相当する部分41uの幅寸法は、
図3等に示すように、取付け台座30のフロントパネル310の幅寸法より若干大きな値に設定されている。また、シェアプレート41における台形の下底に相当する部分41dの幅寸法は、フロントパネル310の幅寸法の約3倍に設定されている。また、シェアプレート41の左側と右側には、取付け台座30の幅方向外側位置に開口部41hが形成されている。
【0029】
<シェアプレート41、取付け台座30、及び床下クロス45等の取付けについて>
取付け台座30等を組立てる場合には、先ず、
図5~
図7に示すように、取付け台座30のバルク330に対して床下クロス45がセットされる。即ち、床下クロス45の左右の縦壁部45a,45bがバルク330の左右の側板334に外側から被せられ、床下クロス45のフランジ部45eがバルク330のフランジ部334eに被せられる。さらに、床下クロス45の縦フランジ部45fがバルク330の後板332に当接するようになる。そして、床下クロス45の縦フランジ部45fとバルク330の後板332とが、
図6に示すように、例えば、スポット溶接SPにより連結される。
【0030】
次に、床下クロス45の左右の縦壁部45a,45bとバルク330とが、
図4、
図5に示すように、取付け台座30のリインフォース320の内側にセットされる。即ち、バルク330の左右の側板334が床下クロス45の左右の縦壁部45a,45bを介してリインフォース320の左右の側板324に対して内側から重ねられる。また、バルク330の下面板335のボルト孔335bとリインフォース320の下面板325のボルト孔335bとが位置合わせされた状態で、バルク330の下面板335が、
図7に示すように、リインフォース320の下面板325に対して内側(上側)から重ねられる。さらに、バルク330等の上端のフランジ部334e等が、
図4等に示すように、リインフォース320の上端のフランジ部324eに対して上側から重ねられる。そして、バルク330の左右の側板334と床下クロス45の左右の縦壁部45a,45bとリインフォース320の左右の側板324とが、
図6、及び
図9の平面図に示すように、例えば、スポット溶接SPにより連結される。
【0031】
次に、リインフォース320、及び床下クロス45の左右の縦壁部45a,45bが、
図4~
図6に示すように、取付け台座30のフロントパネル310の内側にセットされる。即ち、リインフォース320の左右の側板324の前部がフロントパネル310の左右の側板314に対して内側から重ねられる。また、リインフォース320の下面板325のボルト孔325bとフロントパネル310の下面板315のボルト孔315bとが位置合わせされた状態で、リインフォース320の下面板325が、
図7に示すように、フロントパネル310の下面板315に対して内側(上側)から重ねられる。
【0032】
さらに、リインフォース320の上端のフランジ部324eが、
図4等に示すように、フロントパネル310のフランジ部314eに上側から重ねられる。そして、床下クロス45の左右の縦壁部45a,45bとリインフォース320の左右の側板324とフロントパネル310の左右の側板314とが、
図6、及び
図9に示すように、例えば、スポット溶接SPにより連結される。即ち、フロントパネル310の左右の側板314とバルク330の左右の側板334とは、リインフォース320の左右の側板324と床下クロス45の左右の縦壁部45a,45bとを介して連結される。これにより、取付け台座30等の組立が完了する。
【0033】
次に、シェアプレート41が、
図3に示すように、取付け台座30のフロントパネル310における前板312に連結される。即ち、シェアプレート41の台形の上底に相当する部分41u(下端部)と、シェアプレート41においてフロントパネル310の前板312の左右端縁に重なる部分とが、例えば、スポット溶接SPによりその前板312に連結される。次に、シェアプレート41と取付け台座30とがリヤフロアパネル110の下面の前部中央にセットされ、床下クロス45がリヤフロアパネル110の下面中央にセットされる。
【0034】
この状態で、シェアプレート41の台形の下底に相当する部分41d(上端部)が、
図3、
図4に示すように、リヤフロア前クロスメンバ19の後端フランジ部19fに、例えば、スポット溶接SPにより連結される。また、取付け台座30のフロントパネル310、リインフォース320、及びバルク330のフランジ部314e,324e,334eがリヤフロアパネル110に、例えば、スポット溶接SPにより連結される。さらに、床下クロス45のフランジ部45eがリヤフロアパネル110に、例えば、スポット溶接SPにより連結される。
【0035】
次に、取付け台座30の下面板315に、
図2に示すように、連結プレート22がボルト止めされる。そして、連結プレート22に対して左右のブレース20の一端側がそれぞれボルト等により連結される。ここで、車両のボディに対して捻じれ荷重が加わると、取付け台座30には、
図9の白矢印に示すように、一方のブレース20から押圧荷重が加わり、他方のブレース20から引っ張り荷重が加わるようになる。これにより、取付け台座30は平行四辺形状に変形する。しかし、取付け台座30は、荷重を最も受けるフロントパネル310の前板312とバルク330の後板332とが一枚板で形成されて連結部位が存在せず、さほど大きな荷重が加わらないフロントパネル310の側板314とバルク330の側板334とがスポット溶接SPにより連結される。このため、取付け台座30の前記捻じれ荷重に対する強度が大きくなり、破損し難くなる。
【0036】
また、取付け台座30の前板312とリヤフロア前クロスメンバ19とを連結するシェアプレート41の車幅方向における幅寸法が取付け台座30の車幅方向における幅寸法よりも大きく設定されている。このため、取付け台座30が左右のブレース20から捻じれ荷重を受けても、シェアプレート41の働きにより取付け台座30が倒れ難くなる。さらに、シェアプレート41は、リヤフロアパネル110の突出端部よりも下方に突出しないため、シェアプレート41がマフラー等の床下部品の設置の妨げにならない。また、リヤフロアパネル110の突出端部よりも下方に突出する取付け台座30の先端部分(下端部分)は箱形に形成されて車幅方向における幅寸法が高さ方向に変化しないため、マフラー等の床下部品と干渉し難くなる。
【0037】
<本実施形態で使用した用語と本発明における用語との対応>
左右のロッカーレール16が本発明の左右の縦骨格部材に相当し、リヤフロア前クロスメンバ19が本発明の横骨格部材に相当する。また、シェアプレート41が本発明の連結部材に相当する。さらに、取付け台座30においてシェアプレート41が連結される範囲が本発明の取付け台座の基端部に相当し、前記取付け台座30においてシェアプレート41に対して下方に突出する部分が本発明の取付け台座の突出部に相当する。また、リヤフロアパネル110が本発明の突出パネル部に相当し、取付け台座30のフロントパネル310とバルク330とが本発明の取付け台座の前側板部と後側板部とに相当する。
【0038】
<本実施形態に係る車両の床下構造の長所について>
本実施形態に係る車両の床下構造によると、取付け台座30は、リヤフロアパネル110(突出パネル部)の下面に固定される基端部と、左右のブレース20の一端が連結される突出部との車幅方向における幅寸法がほぼ等しく設定されている。即ち、取付け台座30は、従来のように基端部側が幅広となるV字形ではなく、箱形に形成されている。このため、車両の床下部品(例えば、マフラ等)との干渉を避け易くなる。また、取付け台座30の基端部がその取付け台座30よりも車幅方向の寸法が大きなシェアプレート41(連結部材)を介してリヤフロア前クロスメンバ19(横骨格部材)に連結されているため、取付け台座30が左右のブレース20から荷重を受けた場合でも、取付け台座30が倒れ難くなる。また、シェアプレート41がリヤフロアパネル110から下方に突出しないため、シェアプレート41が車両の床下部品と干渉することがない。
【0039】
また、取付け台座30の後面には、リヤフロアパネル110の下面に固定されて車両前後方向に延びる床下クロス45(後部骨格部材)が連結されているため、取付け台座30が左右のブレース20から荷重を受けた場合にさらに倒れ難くなる。また、取付け台座30では、左右のブレース20から加わる左右方向の荷重は、主にフロントパネル310(前側板部)の前板312とバルク330(後側板部)の後板332とで受けられる。このため、フロントパネル310の前板312とバルク330の後板332とには大きな荷重が加わるのに対し、フロントパネル310の左右の側板314とバルク330の左右の側板334とにはさほど大きな荷重が加わらない。そして、さほど大きな荷重が加わらないフロントパネル310の左右の側板314とバルク330の左右の側板334とをスポット溶接SP等で連結する構成のため、取付け台座30が損傷し難くなる。
【0040】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、取付け台座30をフロントパネル310とリインフォース320とバルク330とから構成し、フロントパネル310の左右の側板314とバルク330の左右の側板334とをリインフォース320の左右の側板324を介して連結する例を示した。しかし、フロントパネル310の左右の側板314とバルク330の左右の側板334とを直接的に連結する構成でも可能である。また、本実施形態では、取付け台座30の基端部とリヤフロア前クロスメンバ19とをシェアプレート41により連結する例を示した。しかし、リヤフロアパネル110から下方に突出しないサイズで車幅方向に長い骨格部材等で取付け台座30の基端部とリヤフロア前クロスメンバ19とを連結する構成でも可能である。
【符号の説明】
【0041】
10・・・・車両
11・・・・フロアパネル
110・・・リヤフロアパネル(突出パネル部)
16・・・・ロッカーレール(縦骨格部材)
19・・・・リヤフロア前クロスメンバ(横骨格部材)
20・・・・ブレース
30・・・・取付け台座
310・・・フロントパネル(前側板部)
312・・・前板
314・・・側板
330・・・バルク(後側板部)
332・・・後板
334・・・側板
41・・・・シェアプレート(連結部材)
45・・・・床下クロス
45a・・・縦壁部
45b・・・縦壁部