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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】電圧変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H02M3/155 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019186579
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021064982
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 新太
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195659(JP,A)
【文献】特開2017-208968(JP,A)
【文献】特開2019-134533(JP,A)
【文献】特開2019-170073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイサイド側スイッチとローサイド側スイッチとインダクタとを備え、第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、
前記第1導電路の電圧値である第1電圧値を検出する第1電圧値検出部と、
前記第1導電路を流れる電流の値である第1電流値を検出する第1電流値検出部と、
前記第2導電路の電圧値である第2電圧値を検出する第2電圧値検出部と、
前記第2導電路を流れる電流の値である第2電流値を検出する第2電流値検出部と、
前記第1電圧値、前記第2電圧値、前記第1電流値、及び前記第2電流値に基づいて使用デューティを決定する決定部と、
前記決定部で決定した前記使用デューティに基づく第1制御信号を前記ハイサイド側スイッチに入力し、前記第1制御信号を反転した信号に基づく第2制御信号を前記ローサイド側スイッチに入力する駆動部と、
を備え、
前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する降圧動作と、前記ローサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記第1導電路に出力電圧を印加する昇圧動作とを少なくとも行い、
前記決定部は、
前記第1導電路の電圧値を前記第1導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第1デューティ及び前記第2導電路の電圧値を前記第2導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第2デューティのうちの前記第2デューティの値、及び、100%から前記第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路のうちのいずれか一方の導電路における前記第1導電路から前記第2導電路に向かう第1電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第1電流方向の電流値を制限するための第2の候補デューティを定め、
前記一方の導電路における前記第1電流方向とは反対の第2電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第2電流方向の電流値を制限するための第3の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第1電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第2の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて前記使用デューティを決定し、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第2電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第3の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて前記使用デューティを決定する電圧変換装置。
【請求項2】
前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチと前記ローサイド側スイッチと前記インダクタと第2ハイサイド側スイッチと第2ローサイド側スイッチとを備えたフルブリッジ回路を有し、
前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチのオンオフ動作に基づく前記降圧動作と前記ローサイド側スイッチのオンオフ動作に基づく前記昇圧動作とを少なくとも行う第1電圧変換状態と、前記第2ハイサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第2導電路に印加された電圧を降圧して前記第1導電路に出力電圧を印加する第2降圧動作と前記第2ローサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する第2昇圧動作とを少なくとも行う第2電圧変換状態と、に切り替わる構成をなし、
前記駆動部は、前記第1電圧変換状態のときには、前記第1制御信号を前記ハイサイド側スイッチに入力し前記第2制御信号を前記ローサイド側スイッチに入力し、前記第2電圧変換状態のときには、前記決定部で決定した前記使用デューティに基づく第4制御信号を前記第2ローサイド側スイッチに入力し、前記第4制御信号を反転した信号に基づく第3制御信号を前記第2ハイサイド側スイッチに入力する請求項1に記載の電圧変換装置。
【請求項3】
ハイサイド側スイッチとローサイド側スイッチとインダクタとを備え、第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、
前記第1導電路の電圧値である第1電圧値を検出する第1電圧値検出部と、
前記第1導電路を流れる電流の値である第1電流値を検出する第1電流値検出部と、
前記第2導電路の電圧値である第2電圧値を検出する第2電圧値検出部と、
前記第2導電路を流れる電流の値である第2電流値を検出する第2電流値検出部と、
前記第1電圧値、前記第2電圧値、前記第1電流値、及び前記第2電流値に基づいて使用デューティを決定する決定部と、
前記決定部で決定した前記使用デューティに基づくPWM制御信号を前記ローサイド側スイッチに入力し、前記PWM制御信号を反転した信号に基づく反転制御信号を前記ハイサイド側スイッチに入力する駆動部と、
を備え、
前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第2導電路に印加された電圧を降圧して前記第1導電路に出力電圧を印加する降圧動作と、前記ローサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する昇圧動作と、を少なくとも行い、
前記決定部は、
前記第1導電路の電圧値を前記第1導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第1デューティ及び前記第2導電路の電圧値を前記第2導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第2デューティのうちの前記第2デューティの値、及び、100%から前記第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路のうちのいずれか一方の導電路における第1電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第1電流方向の電流値を制限するための第2の候補デューティを定め、
前記一方の導電路における前記第1電流方向とは反対の第2電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第2電流方向の電流値を制限するための第3の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第1電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第2の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて前記使用デューティを決定し、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第2電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第3の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて前記使用デューティを決定する電圧変換装置。
【請求項4】
前記決定部は、第1の電流偏差及び第2の電流偏差のうちの小さい方の偏差に基づいて前記第2の候補デューティを定め、第3の電流偏差及び第4の電流偏差のうちの大きい方の偏差に基づいて前記第3の候補デューティを定め、
前記第1の電流偏差は、前記一方の導電路における前記第1電流方向の電流目標値から前記一方の導電路の電流値を減じた偏差であり、
前記第2の電流偏差は、前記第1導電路及び前記第2導電路のうちの前記一方の導電路とは異なる他方の導電路における前記第1電流方向の電流目標値から前記他方の導電路の電流値を減じた偏差であり、
前記第3の電流偏差は、前記一方の導電路における前記第2電流方向の電流目標値から前記一方の導電路の電流値を減じた偏差であり、
前記第4の電流偏差は、前記他方の導電路における前記第2電流方向の電流目標値から前記他方の導電路の電流値を減じた偏差である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電圧変換装置。
【請求項5】
前記決定部は、
前記一方の導電路における前記第1電流方向の電力目標値と前記一方の導電路の電力値とに少なくとも基づいて、前記第1電流方向の電力を制限するための第4の候補デューティを定め、
前記一方の導電路における前記第2電流方向の電力目標値と前記一方の導電路の電力値とに少なくとも基づいて、前記第2電流方向の電力を制限するための第5の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかの導電路を流れる電流の方向が前記第1電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ、前記第2の候補デューティ、及び前記第4の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて前記使用デューティを決定し、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかの導電路を流れる電流の方向が前記第2電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ、前記第3の候補デューティ、及び前記第5の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて前記使用デューティを決定する請求項1から請求項4いずれか一項に記載の電圧変換装置。
【請求項6】
前記決定部は、第1の電力偏差及び第2の電力偏差のうちの小さい方の偏差に基づいて前記第4の候補デューティを定め、第3の電力偏差及び第4の電力偏差のうちの大きい方の偏差に基づいて前記第5の候補デューティを定め、
前記第1の電力偏差は、前記一方の導電路における前記第1電流方向の電力目標値から前記一方の導電路の電力値を減じた偏差であり、
前記第2の電力偏差は、前記第1導電路及び前記第2導電路のうちの前記一方の導電路とは異なる他方の導電路の電力目標値から前記他方の導電路の電力値を減じた偏差であり、
前記第3の電力偏差は、前記一方の導電路における前記第2電流方向の電力目標値から前記一方の導電路の電力値を減じた偏差であり、
前記第4の電力偏差は、前記他方の導電路における前記第2電流方向の電力目標値から前記他方の導電路の電力値を減じた偏差である
請求項5に記載の電圧変換装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記大きい値又は前記小さい値のいずれに基づいて前記第1の候補デューティを定めるかを切り替える切替部を有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧側から入力した電圧を降圧して低圧側に出力しうるとともに、低圧側から入力した電圧を昇圧して高圧側に出力しうる電圧変換装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された昇降圧コンバータは、電圧変換部と、この電圧変換部を駆動制御するマイコンとを備えている。このマイコンは、12V側(低圧側)及び48V側(高圧側)の電圧値を検出し、検出した各電圧値に基づき、電圧変換部を降圧駆動しうるとともに昇圧駆動しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-77933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の昇降圧コンバータは、降圧用のPWM信号を電圧変換部に与えることで電圧変換部を降圧動作させることができ、昇圧用のPWM信号を電圧変換部に与えることで電圧変換部を昇圧動作させることができる。しかし、この昇降圧コンバータは、降圧動作及び昇圧動作のうち一方の動作を実行している状況下で他方の動作に切り替える場合、切り替えのための移行処理に時間がかかるという問題があった。移行処理は、動作態様を切り替えるか否かの判断処理や、上記一方の動作のためのPWM信号を一旦停止して他方の動作のためにPWM信号を生成し直すといった信号切替処理などが含まれ、ある程度時間がかかってしまっていた。
【0005】
本開示は、上述した課題の少なくとも一つを解決するために、降圧動作と昇圧動作との切り替えに要する時間を短縮する機能を実現しつつ、電流がいずれの向きに流れる場合でも過剰な電流を制限し得る電圧変換装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る電圧変換装置は、
ハイサイド側スイッチとローサイド側スイッチとインダクタとを備え、第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、
前記第1導電路の電圧値である第1電圧値を検出する第1電圧値検出部と、
前記第1導電路を流れる電流の値である第1電流値を検出する第1電流値検出部と、
前記第2導電路の電圧値である第2電圧値を検出する第2電圧値検出部と、
前記第2導電路を流れる電流の値である第2電流値を検出する第2電流値検出部と、
前記第1電圧値、前記第2電圧値、前記第1電流値、及び前記第2電流値に基づいて使用デューティを決定する決定部と、
前記決定部で決定した前記使用デューティに基づく第1制御信号を前記ハイサイド側スイッチに入力し、前記第1制御信号を反転した信号に基づく第2制御信号を前記ローサイド側スイッチに入力する駆動部と、
を備え、
前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する降圧動作と、前記ローサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記第1導電路に出力電圧を印加する昇圧動作とを少なくとも行い、
前記決定部は、
前記第1導電路の電圧値を前記第1導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第1デューティ及び前記第2導電路の電圧値を前記第2導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第2デューティのうちの前記第2デューティの値、及び、100%から前記第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路のうちのいずれか一方の導電路における前記第1導電路から前記第2導電路に向かう第1電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第1電流方向の電流値を制限するための第2の候補デューティを定め、
前記一方の導電路における前記第1電流方向とは反対の第2電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第2電流方向の電流値を制限するための第3の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第1電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第2の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて前記使用デューティを決定し、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第2電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第3の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて前記使用デューティを決定する。
【0007】
本開示の第2の態様に係る電圧変換装置は、
ハイサイド側スイッチとローサイド側スイッチとインダクタとを備え、第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、
前記第1導電路の電圧値である第1電圧値を検出する第1電圧値検出部と、
前記第1導電路を流れる電流の値である第1電流値を検出する第1電流値検出部と、
前記第2導電路の電圧値である第2電圧値を検出する第2電圧値検出部と、
前記第2導電路を流れる電流の値である第2電流値を検出する第2電流値検出部と、
前記第1電圧値、前記第2電圧値、前記第1電流値、及び前記第2電流値に基づいて使用デューティを決定する決定部と、
前記決定部で決定した前記使用デューティに基づくPWM制御信号を前記ローサイド側スイッチに入力し、前記PWM制御信号を反転した信号に基づく反転制御信号を前記ハイサイド側スイッチに入力する駆動部と、
を備え、
前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第2導電路に印加された電圧を降圧して前記第1導電路に出力電圧を印加する降圧動作と、前記ローサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する昇圧動作と、を少なくとも行い、
前記決定部は、
前記第1導電路の電圧値を前記第1導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第1デューティ及び前記第2導電路の電圧値を前記第2導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第2デューティのうちの前記第2デューティの値、及び、100%から前記第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路のうちのいずれか一方の導電路における第1電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第1電流方向の電流値を制限するための第2の候補デューティを定め、
前記一方の導電路における前記第1電流方向とは反対の第2電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第2電流方向の電流値を制限するための第3の候補デューティを定め、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第1電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第2の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて前記使用デューティを決定し、
前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第2電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第3の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて前記使用デューティを決定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電圧変換装置は、降圧動作と昇圧動作との切り替えに要する時間を短縮する機能を実現しつつ、電流がいずれの向きに流れる場合でも過剰な電流を制限し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態1の電圧変換装置を含む車載用の電源システムを概略的に例示する回路図である。
図2図2は、実施形態1の電圧変換装置における第1電圧値、第2電圧値、第1電流値、第2電流値、第1電力値、第2電力値、及び電流方向の関係を説明する説明図である。
図3図3は、実施形態1の電圧変換装置における制御部及び駆動部の具体的内容を概略的に示す説明図である。
図4図4は、図3で示される制御部におけるデューティ演算部の具体的内容を概念的に示す機能ブロック図である。
図5図5は、デューティ演算部における第1の候補デューティを決定する部分の一部機能を概念的に示す機能ブロック図である。
図6図6は、デューティ演算部における第2、第3の候補デューティを決定する部分の機能を概念的に示す機能ブロック図である。
図7図7は、デューティ演算部における第4、第5の候補デューティを決定する部分の機能を概念的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を列記して例示する。なお、以下で示す〔1〕~〔7〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わせてもよい。
【0011】
〔1〕ハイサイド側スイッチとローサイド側スイッチとインダクタとを備え、第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、前記第1導電路の電圧値である第1電圧値を検出する第1電圧値検出部と、前記第1導電路を流れる電流の値である第1電流値を検出する第1電流値検出部と、前記第2導電路の電圧値である第2電圧値を検出する第2電圧値検出部と、前記第2導電路を流れる電流の値である第2電流値を検出する第2電流値検出部と、前記第1電圧値、前記第2電圧値、前記第1電流値、及び前記第2電流値に基づいて使用デューティを決定する決定部と、前記決定部で決定した前記使用デューティに基づく第1制御信号を前記ハイサイド側スイッチに入力し、前記第1制御信号を反転した信号に基づく第2制御信号を前記ローサイド側スイッチに入力する駆動部と、を備え、前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する降圧動作と、前記ローサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記第1導電路に出力電圧を印加する昇圧動作とを少なくとも行い、前記決定部は、前記第1導電路の電圧値を前記第1導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第1デューティ及び前記第2導電路の電圧値を前記第2導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第2デューティのうちの前記第2デューティの値、及び、100%から前記第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティを定め、前記第1導電路及び前記第2導電路のうちのいずれか一方の導電路における前記第1導電路から前記第2導電路に向かう第1電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第1電流方向の電流値を制限するための第2の候補デューティを定め、前記一方の導電路における前記第1電流方向とは反対の第2電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第2電流方向の電流値を制限するための第3の候補デューティを定め、前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第1電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第2の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて前記使用デューティを決定し、前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第2電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第3の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて前記使用デューティを決定する。
【0012】
上記〔1〕に記載された電圧変換装置において、第1デューティは、第1導電路の電圧値を第1導電路の電圧目標値に近づけるデューティであり、第2デューティは、第2導電路の電圧値を第2導電路の電圧目標値に近づけるデューティである。そして、決定部は、第1デューティ及び第2デューティのうちの第2デューティの値、及び、100%から第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティを定める。第1デューティは昇圧動作用のデューティであり、第2デューティは降圧動作用のデューティである。つまり、上記電圧変換装置は、第1の候補デューティを使用デューティとする場合、降圧動作用のデューティ及び昇圧動作用のデューティをいずれも決定し得る環境を維持しながら、いずれか一方を常に選択して降圧動作又は昇圧動作を行うことができるようになる。そして、上記電圧変換装置は、降圧動作及び昇圧動作のいずれを優先させて第1の候補デューティを決定するかを、第1デューティと第2デューティとの関係に基づいて迅速に切り替えることができる。例えば、上記電圧変換装置は、降圧動作及び昇圧動作のうちいずれか一方を行っているときに、デューティのバランスが他方を優先させるべき状態に変化した場合、即座に他方を優先させるように第1の候補デューティを更新することができる。
【0013】
このように、上記〔1〕の電圧変換装置は、第1の候補デューティを使用デューティとして動作する場合に、第1デューティと第2デューティとのバランスに基づいて降圧動作と昇圧動作とをスムーズに切り替えうる。但し、上記電圧変換装置は、所定条件下においては、使用デューティを決定する上で第1の候補デューティよりも他の候補デューティを優先させるように制限をかけることができる。具体的には、上記電圧変換装置は、第1導電路から第2導電路に向かう方向を第1電流方向とし、第1電流方向とは反対の電流方向を第2電流方向とする。そして、上記電圧変換装置は、第1導電路及び第2導電路のうちのいずれか「一方の導電路」における第1電流方向の電流目標値と「一方の導電路」の電流値とに少なくとも基づいて、第1電流方向の電流値を制限するための第2の候補デューティを定める。そして、上記電圧変換装置は、第1導電路及び第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が第1電流方向である場合に、第1の候補デューティ及び第2の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて使用デューティを決定する。つまり、上記電圧変換装置は、第1電流方向に電流が流れている場合において第2の候補デューティが第1の候補デューティよりも小さい場合、相対的にデューティが小さい第2の候補デューティを優先する。よって、この場合、上記電圧変換装置は、少なくとも第1の候補デューティを使用デューティとして用いる場合よりも第1電流方向の電流を制限し得る。また、上記電圧変換装置は、上記「一方の導電路」における第2電流方向の電流目標値と「一方の導電路」の電流値とに少なくとも基づいて、第2電流方向の電流値を制限するための第3の候補デューティを定める。そして、上記電圧変換装置は、第1導電路及び第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が第2電流方向である場合に、第1の候補デューティ及び第3の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて使用デューティを決定する。つまり、上記電圧変換装置は、第2電流方向に電流が流れている場合において第3の候補デューティが第1の候補デューティよりも大きい場合、相対的にデューティが大きい第3の候補デューティを優先する。第2電流方向に電流が流れている場合に第1の候補デューティが優先されて使用デューティが下がると第2電流方向に電流が一層増加してしまうが、上記電圧変換装置は、このような電流の増加を抑え得る。即ち、上記電圧変換装置は、上述の場合に第3の候補デューティを優先して使用デューティを上げ、第2電流方向の電流値を第2電流方向の電流目標値に近づけるように制限をかけ得る。
【0014】
〔2〕前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチと前記ローサイド側スイッチと前記インダクタと第2ハイサイド側スイッチと第2ローサイド側スイッチとを備えたフルブリッジ回路を有し、前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチのオンオフ動作に基づく前記降圧動作と前記ローサイド側スイッチのオンオフ動作に基づく前記昇圧動作とを少なくとも行う第1電圧変換状態と、前記第2ハイサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第2導電路に印加された電圧を降圧して前記第1導電路に出力電圧を印加する第2降圧動作と前記第2ローサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する第2昇圧動作とを少なくとも行う第2電圧変換状態と、に切り替わる構成をなし、前記駆動部は、前記第1電圧変換状態のときには、前記第1制御信号を前記ハイサイド側スイッチに入力し前記第2制御信号を前記ローサイド側スイッチに入力し、前記第2電圧変換状態のときには、前記決定部で決定した前記使用デューティに基づく第4制御信号を前記第2ローサイド側スイッチに入力し、前記第4制御信号を反転した信号に基づく第3制御信号を前記第2ハイサイド側スイッチに入力する〔1〕に記載の電圧変換装置。
【0015】
上記〔2〕に記載の電圧変換装置は、フルブリッジ回路によって双方向の電圧変換を行い得る。更に、上記電圧変換装置は、第1電圧変換状態のときに限らず第2電圧変換状態のときでも第1の候補デューティを使用デューティとして動作する場合には第1デューティと第2デューティとのバランスに基づいて降圧動作と昇圧動作とをスムーズに切り替えうる。更に、上記電圧変換装置は、第2電圧変換状態のときでも、所定条件下においては、使用デューティを決定する上で第1の候補デューティよりも他の候補デューティを優先させるように制限をかけることができる。具体的には、上記電圧変換装置は、第2電圧変換状態のときでも、第1電流方向に電流が流れている場合において第2の候補デューティが第1の候補デューティよりも小さい場合、相対的にデューティが小さい第2の候補デューティを優先する。よって、この場合、上記電圧変換装置は、少なくとも第1の候補デューティを使用デューティとして用いる場合よりも第1電流方向の電流を制限し得る。また、上記電圧変換装置は、第2電圧変換状態のときでも、第2電流方向に電流が流れている場合において第3の候補デューティが第1の候補デューティよりも大きい場合、相対的にデューティが大きい第3の候補デューティを優先する。よって、上記電圧変換装置は、第3の候補デューティを優先して使用デューティを上げ、第2電流方向の電流値を第2電流方向の電流目標値に近づけるように制限をかけ得る。
【0016】
〔3〕ハイサイド側スイッチとローサイド側スイッチとインダクタとを備え、第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、前記第1導電路の電圧値である第1電圧値を検出する第1電圧値検出部と、前記第1導電路を流れる電流の値である第1電流値を検出する第1電流値検出部と、前記第2導電路の電圧値である第2電圧値を検出する第2電圧値検出部と、前記第2導電路を流れる電流の値である第2電流値を検出する第2電流値検出部と、前記第1電圧値、前記第2電圧値、前記第1電流値、及び前記第2電流値に基づいて使用デューティを決定する決定部と、前記決定部で決定した前記使用デューティに基づくPWM制御信号を前記ローサイド側スイッチに入力し、前記PWM制御信号を反転した信号に基づく反転制御信号を前記ハイサイド側スイッチに入力する駆動部と、を備え、前記電圧変換部は、前記ハイサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第2導電路に印加された電圧を降圧して前記第1導電路に出力電圧を印加する降圧動作と、前記ローサイド側スイッチのオンオフ動作により前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する昇圧動作と、を少なくとも行い、前記決定部は、前記第1導電路の電圧値を前記第1導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第1デューティ及び前記第2導電路の電圧値を前記第2導電路の電圧目標値に近づけるデューティである第2デューティのうちの前記第2デューティの値、及び、100%から前記第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティを定め、前記第1導電路及び前記第2導電路のうちのいずれか一方の導電路における第1電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第1電流方向の電流値を制限するための第2の候補デューティを定め、前記一方の導電路における前記第1電流方向とは反対の第2電流方向の電流目標値と前記一方の導電路の電流値とに少なくとも基づいて、前記第2電流方向の電流値を制限するための第3の候補デューティを定め、前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第1電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第2の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて前記使用デューティを決定し、前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が前記第2電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ及び前記第3の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて前記使用デューティを決定する電圧変換装置。
【0017】
〔3〕の電圧変換装置は、上記〔1〕と同様の思想により、降圧動作と昇圧動作との切り替えに要する時間を短縮する機能を実現しつつ、電流がいずれの向きに流れる場合でも過剰な電流を制限し得る。
【0018】
〔4〕前記決定部は、第1の電流偏差及び第2の電流偏差のうちの小さい方の偏差に基づいて前記第2の候補デューティを定め、第3の電流偏差及び第4の電流偏差のうちの大きい方の偏差に基づいて前記第3の候補デューティを定め、前記第1の電流偏差は、前記一方の導電路における前記第1電流方向の電流目標値から前記一方の導電路の電流値を減じた偏差であり、前記第2の電流偏差は、前記第1導電路及び前記第2導電路のうちの前記一方の導電路とは異なる他方の導電路における前記第1電流方向の電流目標値から前記他方の導電路の電流値を減じた偏差であり、前記第3の電流偏差は、前記一方の導電路における前記第2電流方向の電流目標値から前記一方の導電路の電流値を減じた偏差であり、前記第4の電流偏差は、前記他方の導電路における前記第2電流方向の電流目標値から前記他方の導電路の電流値を減じた偏差である〔1〕から〔3〕のいずれか1つに記載の電圧変換装置。
【0019】
上記〔4〕に記載された電圧変換装置は、第1の電流偏差及び第2の電流偏差のうちの小さい方の偏差に基づいて第2の候補デューティを定める。よって、上記電圧変換装置は、両導電路のうちの第1電流方向の電流をより抑えるべき方の状況に基づいて、第1電流方向の電流をより制限し得る第2の候補デューティを定め得る。また、上記電圧変換装置は、第3の電流偏差及び第4の電流偏差のうちの大きい方の偏差に基づいて第3の候補デューティを定める。よって、上記電圧変換装置は、両導電路の状況に基づいて第2電流方向の電流をより制限し得る第3の候補デューティを定め得る。
【0020】
〔5〕前記決定部は、前記一方の導電路における前記第1電流方向の電力目標値と前記一方の導電路の電力値とに少なくとも基づいて、前記第1電流方向の電力を制限するための第4の候補デューティを定め、前記一方の導電路における前記第2電流方向の電力目標値と前記一方の導電路の電力値とに少なくとも基づいて、前記第2電流方向の電力を制限するための第5の候補デューティを定め、前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかの導電路を流れる電流の方向が前記第1電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ、前記第2の候補デューティ、及び前記第4の候補デューティを含んだ候補のうちの最小値に基づいて前記使用デューティを決定し、前記第1導電路及び前記第2導電路の少なくともいずれかの導電路を流れる電流の方向が前記第2電流方向である場合には、前記第1の候補デューティ、前記第3の候補デューティ、及び前記第5の候補デューティを含んだ候補のうちの最大値に基づいて前記使用デューティを決定する〔1〕から〔4〕のいずれか1つに記載の電圧変換装置。
【0021】
上記〔5〕に記載された電圧変換装置は、「一方の導電路」における第1電流方向の電力目標値と「一方の導電路」の電力値とに少なくとも基づいて、第1電流方向の電力値を制限するための第4の候補デューティを定める。そして、上記電圧変換装置は、第1電流方向に電流が流れている場合において第4の候補デューティが第1の候補デューティ及び第2の候補デューティよりも小さい場合、相対的にデューティが小さい第4の候補デューティを優先する。この場合、上記電圧変換装置は、少なくとも第1の候補デューティや第2の候補デューティを使用デューティとして用いる場合よりも第1電流方向の電力を制限し得る。また、上記電圧変換装置は、「一方の導電路」における第2電流方向の電力目標値と「一方の導電路」の電力値とに少なくとも基づいて、第2電流方向の電力を制限するための第5の候補デューティを定める。そして、上記電圧変換装置は、第2電流方向に電流が流れている場合において第5の候補デューティが第1の候補デューティや第3の候補デューティよりも大きい場合、相対的にデューティが大きい第5の候補デューティを優先する。第2電流方向に電流が流れている場合に第1の候補デューティや第3の候補デューティが優先されて使用デューティが下がると第2電流方向に電力が一層増加してしまうが、上記電圧変換装置は、このような電力の増加を抑え得る。即ち、上記電圧変換装置は、上述の場合に第5の候補デューティを優先して使用デューティを上げ、第2電流方向の電力値を第2電流方向の電力目標値に近づけるように制限をかけ得る。
【0022】
〔6〕前記決定部は、第1の電力偏差及び第2の電力偏差のうちの小さい方の偏差に基づいて前記第4の候補デューティを定め、第3の電力偏差及び第4の電力偏差のうちの大きい方の偏差に基づいて前記第5の候補デューティを定め、前記第1の電力偏差は、前記一方の導電路における前記第1電流方向の電力目標値から前記一方の導電路の電力値を減じた偏差であり、前記第2の電力偏差は、前記第1導電路及び前記第2導電路のうちの前記一方の導電路とは異なる他方の導電路の電力目標値から前記他方の導電路の電力値を減じた偏差であり、前記第3の電力偏差は、前記一方の導電路における前記第2電流方向の電力目標値から前記一方の導電路の電力値を減じた偏差であり、前記第4の電力偏差は、前記他方の導電路における前記第2電流方向の電力目標値から前記他方の導電路の電力値を減じた偏差である〔5〕に記載の電圧変換装置。
【0023】
上記〔6〕に記載された電圧変換装置は、第1の電力偏差及び第2の電力偏差のうちの小さい方の偏差に基づいて第4の候補デューティを定める。よって、上記電圧変換装置は、両導電路のうちの第1電流方向の電力をより抑えるべき方の状況に基づいて、第1電流方向の電力をより制限し得る第4の候補デューティを定め得る。また、上記電圧変換装置は、第3の電力偏差及び第4の電力偏差のうちの大きい方の偏差に基づいて第5の候補デューティを定める。よって、上記電圧変換装置は、両導電路の状況に基づいて第2電流方向の電力をより制限し得る第5の候補デューティを定め得る。
【0024】
〔7〕前記決定部は、前記大きい値又は前記小さい値のいずれに基づいて前記第1の候補デューティを定めるかを切り替える切替部を有する〔1〕から〔6〕のいずれか一つに記載の電圧変換装置。
【0025】
上記〔7〕に記載された電圧変換装置は、競合する場合に降圧動作と昇圧動作のいずれを優先させるかを選択可能とすることができる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
【0027】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1について説明する。
(電源システムの基本構成)
図1で示される電源システム1は、例えば車両等に搭載される車載用電源システムとして構成されている。電源システム1は、電源部81、電源部82、電圧変換装置10を備えた構成をなす。電源システム1は、電源部81又は電源部82を電力供給源として負荷91や負荷92に電力を供給し得るシステムとして構成されている。
【0028】
電源部81は、例えば電気二重層コンデンサ、リチウムイオン電池、鉛蓄電池等の車載用蓄電部として構成されている。電源部81は、高電位側の端子が配線71に電気的に接続され、低電位側の端子がグラウンドに電気的に接続されている。電源部81は、配線71に対して所定の出力電圧を印加する。なお、本明細書では、特に限定した説明がない限り「電圧」は、グラウンドとの電位差を意味する。
【0029】
電源部82は、例えば、電気二重層コンデンサ、リチウムイオン電池、鉛蓄電池等の車載用蓄電部として構成されている。電源部82は、高電位側の端子が配線72に電気的に接続され、低電位側の端子がグラウンドに電気的に接続されており、配線72に対して所定の出力電圧を印加する。電源部82が配線72に印加する出力電圧は、電源部81が配線71に印加する出力電圧よりも大きくても小さくてもよい。以下の説明では、電源部81の出力電圧が電源部82の出力電圧よりも大きい構成が例示される。
【0030】
負荷92は、例えばスタータ、ワイパ、オーディオ、シフトバイワイヤシステム、電動パーキングブレーキ等の車載用の負荷である。負荷92は、配線72に電気的に接続されており、電源部82から供給される電力によって作動しうる。また、負荷92は、電圧変換装置10を介して電源部81から供給される電力を受け得る。負荷91は、例えばヒータ等の車載用の負荷である。負荷91は、配線71に電気的に接続されており、電源部81から供給される電力によって作動しうる。また、負荷91は、電圧変換部40を介して電源部82から供給される電力を受け得る。
【0031】
配線71は、導電路11の一端と同程度の電位となるように導電路11に電気的に接続されている。配線72は、導電路12の一端と同程度の電位となるように導電路12に電気的に接続されている。
【0032】
電圧変換装置10は、電圧変換部40、電圧値検出部21、電圧値検出部22、電流値検出部31、電流値検出部32、コンデンサ46、コンデンサ47、制御部52、駆動部54、などを備える。
【0033】
電圧変換部40は、導電路11と導電路12との間に設けられ、導電路11と導電路12との間で電圧変換を行う。電圧変換部40は、配線71及び配線72のいずれか一方を入力側とし他方を出力側として電圧変換を行う回路である。電圧変換部40は、スイッチ41、スイッチ42、スイッチ43、スイッチ44、インダクタ45を備え、フルブリッジ回路として構成されている。スイッチ41,42、43、44は、半導体スイッチによって構成されている。スイッチ41,42、43、44は、例えばNチャネル型のMOSFETとして構成されている。スイッチ41及びスイッチ42は、導電路11とグラウンドとの間に直列に接続されている。スイッチ43及びスイッチ44は、導電路12とグラウンドとの間に直列に接続されている。電圧変換部40は、スイッチ41とスイッチ42との間の接続点にインダクタ45の一端が電気的に接続され、スイッチ43とスイッチ44との間の接続点にインダクタ45の他端が電気的に接続され、いわゆるHブリッジ回路とされている。スイッチ41のドレインには、導電路11が電気的に接続され、導電路11の電圧がスイッチ41のドレインに印加される。スイッチ41のソースには、スイッチ42のドレインと、インダクタ45の一端とが電気的に接続されている。スイッチ41とインダクタ45との接続点には、スイッチ42のドレインが電気的に接続されている。スイッチ42のソースはグラウンドに電気的に接続され、グラウンドの電圧(例えば、0V)が印加される。スイッチ43のドレインには、導電路12が電気的に接続され、導電路12の電圧がドレインに印加される。スイッチ43のソースには、スイッチ44のドレインと、インダクタ45の他端とが電気的に接続されている。スイッチ43とインダクタ45との接続点には、スイッチ44のドレインが電気的に接続されている。スイッチ44のソースはグラウンドに電気的に接続され、グラウンドの電圧(例えば、0V)が印加される。
【0034】
電圧変換部40は、第1電圧変換状態と第2電圧変換状態とに切り替わる。第1電圧変換状態は、スイッチ41(ハイサイド側スイッチ)のオンオフ動作に基づく第1降圧動作とスイッチ42(ローサイド側スイッチ)のオンオフ動作に基づく第1昇圧動作とを少なくとも行う状態である。電圧変換部40は、導電路11に印加された電圧を降圧して導電路12に出力電圧を印加するように第1降圧動作を行う。電圧変換部40は、導電路12に印加された電圧を昇圧して導電路11に出力電圧を印加するように第1昇圧動作を行う。第2電圧変換状態は、スイッチ43(第2ハイサイド側スイッチ)のオンオフ動作による第2降圧動作とスイッチ44(第2ローサイド側スイッチ)のオンオフ動作による第2昇圧動作とを少なくとも行う状態である。電圧変換部40は、導電路12に印加された電圧を降圧して導電路11に出力電圧を印加するように第2降圧動作を行う。電圧変換部40は、導電路11に印加された電圧を昇圧して導電路12に出力電圧を印加するように第2昇圧動作を行う。
【0035】
コンデンサ46は、一端が導電路11に電気的に接続され、他端はグラウンドに電気的に接続されている。コンデンサ47は、一端が導電路12に電気的に接続され、他端はグラウンドに電気的に接続されている。
【0036】
電圧値検出部21及び電圧値検出部22は、いずれも公知の電圧検出回路として構成されている。電圧値検出部21は、導電路11の電圧値を検出する。電圧値検出部21は、検出した電圧値を示すアナログ電圧を制御部52に出力する。電圧値検出部22は、導電路12の電圧値を検出する。電圧値検出部22は、検出した電圧値を示すアナログ電圧を制御部52に出力する。
【0037】
電流値検出部31及び電流値検出部32は、いずれも公知の電流検出回路として構成されている。電流値検出部31は、導電路11を流れる電流の値を検出する。電流値検出部32は、導電路12を流れる電流の値を検出する。
【0038】
制御部52は、例えばMCU(Micro Controller Unit)として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などからなる演算処理部、ROM(Read only memory)、RAM(Random access memory)などからなる記憶部等を備えて構成されている。制御部52は、電圧値検出部21が検出した導電路11の電圧値と電圧値検出部22が検出した導電路12の電圧値とに基づいてPWM信号を生成し、駆動部54に出力するように動作する。
【0039】
駆動部54は、第1電圧変換状態のときには、第1制御信号をスイッチ41(ハイサイド側スイッチ)に入力し第2制御信号をスイッチ42(ローサイド側スイッチ)に入力する。駆動部54は、第2電圧変換状態のときには、第4制御信号をスイッチ44(第2ローサイド側スイッチ)に入力し第3制御信号をスイッチ43(第2ハイサイド側スイッチ)に入力する。第1制御信号は、第1電圧変換状態のときに決定部で決定した使用デューティに基づくPWM信号である。第2制御信号は、第1制御信号を反転した信号に基づくオンオフ信号である。第4制御信号は、第2電圧変換状態のときに決定部で決定した使用デューティに基づくPWM信号である。第3制御信号は、第4制御信号を反転した信号に基づくオンオフ信号である。
【0040】
(電圧変換装置の詳細構成)
実施形態1の電圧変換装置10では、導電路11は、第1導電路の一例に相当する。導電路12は、第2導電路の一例に相当する。スイッチ41は、ハイサイド側スイッチの一例に相当する。スイッチ42は、ローサイド側スイッチの一例に相当する。スイッチ43は、第2ハイサイド側スイッチの一例に相当する。スイッチ44は、第2ローサイド側スイッチの一例に相当する。電圧値検出部21は、第1電圧値検出部の一例に相当する。電圧値検出部22は、第2電圧値検出部の一例に相当する。電流値検出部31は、第1電流値検出部の一例に相当する。電流値検出部32は、第2電流値検出部の一例に相当する。制御部52は、決定部の一例に相当し、第1電圧値、第2電圧値、第1電流値、第2電流値、第1電力値、第2電力値、に基づいて使用デューティを決定する。
【0041】
図2は、電圧変換装置10における第1電圧値V1、第2電圧値V2、第1電流値I1、第2電流値I2、第1電力値P1、第2電力値P2、第1電流方向、第2電流方向の関係を説明する説明図である。
【0042】
実施形態1では、導電路11が第1導電路であるため、電圧値検出部21は第1導電路の電圧の値である第1電圧値V1を検出する。そして、導電路12が第2導電路であるため、電圧値検出部22は第2導電路の電圧の値である第2電圧値V2を検出する。電流値検出部31は、第1導電路を流れる電流の値である第1電流値I1を検出する。電流値検出部32は、第2導電路を流れる電流の値である第2電流値I2を検出する。第1電流値I1及び第2電流値I2はいずれも、第1導電路(導電路11)から第2導電路(導電路12)に向かう電流の方向が正の方向であり、第2導電路(導電路12)から第1導電路(導電路11)に向かう電流の方向が負の方向である。第1導電路(導電路11)から第2導電路(導電路12)に向かう電流の方向は、第1電流方向である。第2導電路(導電路12)から第1導電路(導電路11)に向かう電流の方向は、第2電流方向である。
【0043】
電力については、第1電流方向に電流が流れている場合の電力が正の電力であり、第2電流方向に電流が流れている場合の電力が負の電力である。第1導電路(導電路11)の電力値P1は、P1=V1×I1である。V1>0であるため、電力値P1は、第1導電路(導電路11)において第1電流方向に電流が流れている場合(I1が正の値である場合)には正の値となる。電力値P1は、第1導電路(導電路11)において第2電流方向に電流が流れている場合(I1が負の値である場合)には負の値となる。第2導電路(導電路12)の電力値P2は、P2=V2×I2である。V2>0であるため、電力値P2は、第2導電路(導電路12)において第1電流方向に電流が流れている場合(I2が正の値である場合)には正の値となる。電力値P2は、第2導電路(導電路12)において第2電流方向に電流が流れている場合(I2が負の値である場合)には負の値となる。
【0044】
図3は、制御部52と駆動部54とを示す図であり、更に、制御部52の各機能をブロックとして示す図である。
【0045】
AD変換部52Aは、各種アナログデータをデジタルデータに変換する機能を有する。AD変換部52Aは、電圧値検出部21,22及び電流値検出部31,32からの各検出値(アナログ値)をデジタル値に変換し得る。
【0046】
デューティ演算部52Bは、第1電圧値V1、第2電圧値V2、第1電流値I1、第2電流値I2、第1電力値P1、第2電力値P2、に基づいて使用デューティDuを決定する機能を有する部分である。デューティ演算部52Bによる使用デューティDuの生成方法は後述される。
【0047】
PWM信号生成部52Cは、デューティ演算部52Bによって決定された使用デューティDuをデューティとするPWM信号Spを生成し、駆動部54に向けて出力する機能を有する部分である。
【0048】
動作選択部52Dは、電圧変換部40を第1電圧変換状態とするか第2電圧変換状態とするかを外部ECUなどの外部装置からの指示に応じて選択する機能を有する部分である。第1電圧変換状態への切り替えを指示する第1指示が外部装置から制御部52に対して与えられた場合、動作選択部52Dは、第1電圧変換状態であることを示す信号又は情報をデューティ演算部52B及び駆動部54に与える。第2電圧変換状態への切り替えを指示する第2指示が外部装置から制御部52に対して与えられた場合、動作選択部52Dは、第2電圧変換状態であることを示す信号又は情報をデューティ演算部52B及び駆動部54に与える。
【0049】
図4のように、デューティ演算部52Bは、候補デューティ決定部110,120,130,140,150を備える。更に、デューティ演算部52Bは、最小値選択部162と最大値選択部164と選択部166と切替部160とを備える。
【0050】
候補デューティ決定部110は、第1の候補デューティD1を決定する機能を有する部分であり、デューティ決定部111とデューティ決定部112と最小値選択部113と最大値選択部114と選択部116とを備える。
【0051】
図5のように、デューティ決定部111は、第1生成部181と第2生成部182と選択部184とを備える。第1生成部181は、偏差算出部181Aと演算部181Bとを備える。第2生成部182は、偏差算出部182Aと演算部182Bとを備える。
【0052】
偏差算出部181Aは、第1電圧変換状態用の第1導電路(導電路11)の電圧目標値Vref11から第1導電路(導電路11)の第1電圧値V1を減じた値を正負反転した値ΔV11を算出する。ΔV11は、ΔV11=V1-Vref11の式で表すことができる。演算部181Bは、偏差ΔV11に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によってデューティD11を算出する。デューティD11は、反転した偏差に基づきフィードバック演算によって得られるデューティである。デューティD11は、第1電圧値V1に基づいて第1導電路(導電路11)の電圧値を上記電圧目標値Vref11に近づけるデューティ(第1デューティ)を100%から減じた値に相当する。
【0053】
同様に、偏差算出部182Aは、第2電圧変換状態用の第1導電路(導電路11)の電圧目標値Vref12から第1導電路(導電路11)の第1電圧値V1を減じた値を反転した値ΔV12を算出する。ΔV12は、ΔV12=V1-Vref12の式で表すことができる。演算部182Bは、偏差ΔV12に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によってデューティD13を算出する。デューティD13は、反転した偏差に基づきフィードバック演算によって得られるデューティである。デューティD13は、第1電圧値V1に基づいて第1導電路(導電路11)の電圧値を上記電圧目標値Vref12に近づけるデューティ(第1デューティ)を100%から減じた値に相当する。
【0054】
選択部184は、現在の状態が第1電圧変換状態である場合には、第1生成部181で生成されたデューティD11を比較対象となる一方のデューティDaとするように選択する。また、選択部184は、現在の状態が第2電圧変換状態である場合には、第2生成部182で生成されたデューティD13を比較対象となる一方のデューティDaとするように選択する。
【0055】
図5のように、デューティ決定部112は、第1生成部191と第2生成部192と選択部194とを備える。第1生成部191は、偏差算出部191Aと演算部191Bとを備える。第2生成部192は、偏差算出部192Aと演算部192Bとを備える。
【0056】
偏差算出部191Aは、第1電圧変換状態用の第2導電路の電圧目標値Vref21から第2導電路(導電路12)の第2電圧値V2を減じた値ΔV21を算出する。ΔV21は、ΔV21=Vref21-V2の式で表すことができる。演算部191Bは、偏差ΔV21に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第2導電路(導電路12)の電圧値を上記電圧目標値Vref21に近づけるようにデューティD12を算出する。
【0057】
同様に、偏差算出部192Aは、第2電圧変換状態用の第2導電路の電圧目標値Vref22から第2導電路(導電路12)の第2電圧値V2を減じた値ΔV22を算出する。ΔV22は、ΔV22=Vref22-V2の式で表すことができる。演算部192Bは、偏差ΔV22に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第2導電路(導電路12)の電圧値を上記電圧目標値Vref22に近づけるようにデューティD14を算出する。
【0058】
選択部194は、現在の状態が第1電圧変換状態である場合には、第1生成部191で生成されたデューティD12を比較対象となる他方のデューティDbとするように選択する。また、選択部194は、現在の状態が第2電圧変換状態である場合には、第2生成部192で生成されたデューティD14を比較対象となる他方のデューティDbとするように選択する。
【0059】
図4で示される最小値選択部113は、デューティ決定部111で決定したデューティDa及びデューティ決定部112で決定したデューティDbのうちの最小値(小さい値)を選択する。最大値選択部114は、デューティ決定部111で決定したデューティDa及びデューティ決定部112で決定したデューティDbのうちの最大値(大きい値)を選択する。
【0060】
選択部116は、最小値選択部113で選択された最小値及び最大値選択部114で選択された最大値のうち切替部160で指示された方を選択する。選択部116が最大値(大きい値)と最小値(小さい値)のいずれを選択するかは切替部160からの指示によって決定される。例えば、切替部160は、最大値(大きい値)の選択を指示する場合には第1信号を出力し、最小値(小さい値)の選択を指示する場合には第2信号を出力するようになっている。この場合、切替部160から第1信号が出力されている場合には、選択部116は、最大値選択部114で選択された値(大きい値)を選択する。また、切替部160から第2信号が出力されている場合には、選択部116は、最小値選択部113で選択された値(小さい値)を選択する。なお、切替部160による指示方法は上記の例に限定されず、例えば、最大値(大きい値)の選択を指示する場合にフラグ情報を記憶し、最小値(小さい値)の選択を指示する場合にフラグ情報を記憶しないような指示方法であってもよい。なお、切替部160による設定は、外部からの操作や情報入力によって更新されるようになっている。
【0061】
この例では、第1電圧変換状態では、第1導電路(導電路11)の電圧値を第1電圧変換状態での第1導電路の電圧目標値Vref11に近づけるデューティが第1デューティである。仮に、Vref11とV1の偏差(Vref11-V1)に基づいて演算部181Bが演算を行った場合のデューティが第1デューティに相当する。一方、D11は、Vref11とV1の偏差(Vref11-V1)を反転した値に基づいて演算部181Bが演算を行って得られたデューティであり、D11は、100%から第1デューティを減じた値に相当する。第1電圧変換状態のときには、D11がDaとなり、第2デューティに相当するD12がDbとなる。よって、制御部52は、第2デューティの値、及び、100%から第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティD1を定める。なお、ここでは100%から第1デューティを減じた値(D11)を算出する一例を示したが、他の方法で「100%から第1デューティを減じた値」を算出してもよい。例えば、偏差(Vref11-V1)に基づいて第1デューティを算出し、これを100%から減算して求めてもよい。
【0062】
この例では、第2電圧変換状態では、第1導電路(導電路11)の電圧値を第2電圧変換状態での第1導電路の電圧目標値Vref12に近づけるデューティが第1デューティである。仮に、Vref12とV1の偏差(Vref12-V1)に基づいて演算部182Bが演算を行った場合のデューティが第1デューティに相当する。一方、D13は、Vref12とV1の偏差(Vref12-V1)を反転した値に基づいて演算部182Bが演算を行って得られたデューティであり、D13は、100%から第1デューティを減じた値に相当する。第2電圧変換状態のときには、D13がDaとなり、第2デューティに相当するD14がDbとなる。よって、制御部52は、第2デューティの値、及び、100%から第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティD1を定める。なお、ここでは100%から第1デューティを減じた値(D13)を算出する一例を示したが、他の方法で「100%から第1デューティを減じた値」を求めてもよい。例えば、偏差(Vref12-V1)に基づいて第1デューティを算出し、これを100%から減算して求めてもよい。
【0063】
図6のように、候補デューティ決定部120は、第1生成部121と第2生成部122と選択部124とを備える。第1生成部121は、偏差算出部121Aと演算部121Bとを備える。第2生成部122は、偏差算出部122Aと演算部122Bとを備える。
【0064】
偏差算出部121Aは、第1導電路(導電路11)の第1電流方向の電流目標値Iref11から第1導電路(導電路11)の第1電流値I1を減じた値ΔI11を算出する。ΔI11は、ΔI11=Iref11-I1の式で表すことができる。演算部121Bは、偏差ΔI11に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第1導電路(導電路11)の電流値を上記電流目標値Iref11に近づけるようにデューティD21を算出する。同様に、偏差算出部122Aは、第2導電路(導電路12)の第1電流方向の電流目標値Iref21から第2導電路(導電路12)の第2電流値I2を減じた値ΔI21を算出する。ΔI21は、ΔI21=Iref21-I2の式で表すことができる。演算部122Bは、偏差ΔI21に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第2導電路(導電路12)の電流値を上記電流目標値Iref21に近づけるようにデューティD22を算出する。選択部124は、第1生成部121で生成されたデューティD21と第2生成部122で生成されたデューティD22のうちの小さい方を第2の候補デューティD2として選択する。
【0065】
このように、決定部の一例に相当する制御部52は、ΔI11(第1の電流偏差)及びΔI21(第2の電流偏差)のうちの小さい方の偏差に基づいて第2の候補デューティD2を定める。第1の電流偏差ΔI11は、導電路11(一方の導電路)における第1電流方向の電流目標値Iref11から導電路11(一方の導電路)の電流値I1を減じた偏差である。第2の電流偏差ΔI21は、導電路12(他方の導電路)における第1電流方向の電流目標値Iref21から導電路12(他方の導電路)の電流値I2を減じた偏差である。
【0066】
図6のように、候補デューティ決定部130は、第1生成部131と第2生成部132と選択部134とを備える。第1生成部131は、偏差算出部131Aと演算部131Bとを備える。第2生成部132は、偏差算出部132Aと演算部132Bとを備える。
【0067】
偏差算出部131Aは、第1導電路(導電路11)の第2電流方向の電流目標値Iref12から第1導電路(導電路11)の第1電流値I1を減じた値ΔI12を算出する。ΔI12は、ΔI12=Iref12-I1の式で表すことができる。演算部121Bは、偏差ΔI12に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第1導電路(導電路11)の電流値を上記電流目標値Iref12に近づけるようにデューティD31を算出する。同様に、偏差算出部132Aは、第2導電路(導電路12)の第2電流方向の電流目標値Iref22から第2導電路(導電路12)の第2電流値I2を減じた値ΔI22を算出する。ΔI22は、ΔI22=Iref22-I2の式で表すことができる。演算部132Bは、偏差ΔI22に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第2導電路(導電路12)の電流値を上記電流目標値Iref22に近づけるようにデューティD32を算出する。選択部134は、第1生成部131で生成されたデューティD31と第2生成部132で生成されたデューティD32のうちの大きい方を第3の候補デューティD3として選択する。
【0068】
このように決定部の一例に相当する制御部52は、ΔI12(第3の電流偏差)及びΔI22(第4の電流偏差)のうちの大きい方の偏差に基づいて第3の候補デューティD3を定る。第3の電流偏差ΔI12は、導電路11(一方の導電路)における第2電流方向の電流目標値Iref12から導電路11(一方の導電路)の電流値I1を減じた偏差である。第4の電流偏差ΔI22は、導電路12(他方の導電路)における第2電流方向の電流目標値Iref22から導電路12(他方の導電路)の電流値I2を減じた偏差である。
【0069】
図7のように、候補デューティ決定部140は、第1生成部141と第2生成部142と選択部144とを備える。第1生成部141は、偏差算出部141Aと演算部141Bとを備える。第2生成部142は、偏差算出部142Aと演算部142Bとを備える。
【0070】
偏差算出部141Aは、第1導電路(導電路11)の第1電流方向の電力目標値Pref11から第1導電路(導電路11)の第1電力値P1を減じた値ΔP11を算出する。ΔP11は、ΔP11=Pref11-P1の式で表すことができる。演算部121Bは、偏差ΔP11に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第1導電路(導電路11)の電力値を上記電力目標値Pref11に近づけるようにデューティD41を算出する。同様に、偏差算出部142Aは、第2導電路(導電路12)の第1電流方向の電力目標値Pref21から第2導電路(導電路12)の第2電力値P2を減じた値ΔP21を算出する。ΔP21は、ΔP21=Pref21-P2の式で表すことができる。演算部142Bは、偏差ΔP21に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第2導電路(導電路12)の電力値を上記電力目標値Pref21に近づけるようにデューティD42を算出する。選択部144は、第1生成部141で生成されたデューティD41と第2生成部122で生成されたデューティD42のうちの小さい方を第4の候補デューティD4として選択する。
【0071】
決定部の一例に相当する制御部52は、第1の電力偏差ΔP11及び第2の電力偏差ΔP21のうちの小さい方の偏差に基づいて第4の候補デューティD4を定める。第1の電力偏差ΔP11は、導電路11(一方の導電路)における第1電流方向の電力目標値Pref11から導電路11(一方の導電路)の電力値P1を減じた偏差である。第2の電力偏差ΔP21は、導電路12(他方の導電路)における第1電流方向の電力目標値Pref21から導電路12(他方の導電路)の電力値P2を減じた偏差であり、
【0072】
図7のように、候補デューティ決定部150は、第1生成部151と第2生成部152と選択部154とを備える。第1生成部151は、偏差算出部151Aと演算部151Bとを備える。第2生成部152は、偏差算出部152Aと演算部152Bとを備える。
【0073】
偏差算出部151Aは、第1導電路(導電路11)の第2電流方向の電力目標値Pref12から第1導電路(導電路11)の第1電力値P1を減じた値ΔP12を算出する。ΔP12は、ΔP12=Pref12-P1の式で表すことができる。演算部151Bは、偏差ΔP12に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第1導電路(導電路11)の電力値を上記電力目標値Pref12に近づけるようにデューティD51を算出する。同様に、偏差算出部152Aは、第2導電路(導電路12)の第2電流方向の電力目標値Pref22から第2導電路(導電路12)の第2電力値P2を減じた値ΔP22を算出する。ΔP22は、ΔP22=Pref22-P2の式で表すことができる。演算部152Bは、偏差ΔP22に基づき、公知のフィードバック演算方式(例えばPI演算方式など)によって第2導電路(導電路12)の電力値を上記電力目標値Pref22に近づけるようにデューティD52を算出する。選択部154は、第1生成部151で生成されたデューティD51と第2生成部152で生成されたデューティD52のうちの大きい方を第5の候補デューティD5として選択する。
【0074】
決定部の一例に相当する制御部52は、第3の電力偏差ΔP12及び第4の電力偏差ΔP22のうちの大きい方の偏差に基づいて第5の候補デューティD5を定める。第3の電力偏差ΔP12は、導電路11(一方の導電路)における第2電流方向の電力目標値Pref12から導電路11(一方の導電路)の電力値P1を減じた偏差である。第4の電力偏差ΔP22は、導電路12(他方の導電路)における第2電流方向の電力目標値Pref22から導電路12(他方の導電路)の電力値P2を減じた偏差である。
【0075】
上記の電圧目標値Vref11,Vref12,Vref21,Vref22は、外部ECUなどの外部装置から制御部52に与えられる。同様に、上記の電流目標値Iref11,Iref12,Iref21,Iref22は、外部ECUなどの外部装置から制御部52に与えられる。同様に、上記の電力目標値Pref11,Pref12,Pref21,Pref22は、外部ECUなどの外部装置から制御部52に与えられる。いずれの目標値も、制御部52に設けられた記憶部に保持される。
【0076】
図4に示される最小値選択部162は、第1の候補デューティD1、第2の候補デューティD2、第4の候補デューティD4のうちから最小値を選択する。
【0077】
最大値選択部164は、第1の候補デューティD1、第3の候補デューティD3、第5の候補デューティD5のうちから最大値を選択する。
【0078】
図4で示される選択部166は、最小値選択部162で選択された最小値Dmと最大値選択部164で選択された最大値Dnのうちからいずれかを使用デューティDuとして選択する。選択部166は、導電路11を流れる電流の方向が第1電流方向である場合には、第1の候補デューティD1、第2の候補デューティD2、及び第4の候補デューティD4のうちの最小値Dmを使用デューティDuを決定する。また、選択部166は、導電路11を流れる電流の方向が第2電流方向である場合には、第1の候補デューティD1、第3の候補デューティD3、及び第5の候補デューティD5のうちの最大値Dnを使用デューティDuを決定する。図3で示されるPWM信号生成部52Cは、デューティを使用デューティDuとするPWM信号Spを生成し、このPWM信号Spを駆動部54に出力する。なお、制御部52が使用デューティDuの決定する周期は予め定められた短時間であり、実現可能な短い時間間隔であればよい。
【0079】
図3のように、駆動部54は、FET駆動回路60,62と、PWM反転回路64と、を備える。FET駆動回路60は、入力されるPWM信号Sp(制御部52が出力するPWM信号であり、デューティが使用デューティDuとされたPWM信号)のデューティと同程度のデューティのPWM信号を出力する。PWM反転回路64は、制御部52が出力するPWM信号Spを反転させる機能を有する。PWM反転回路64は、制御部52とFET駆動回路60との接続点とFET駆動回路62との間に配されている。PWM反転回路64は入力されるPWM信号Sp(制御部52が出力するPWM信号)がハイレベル信号の期間にローレベル信号を出力し、入力されるPWM信号Spがローレベル信号の期間にハイレベル信号を出力する。FET駆動回路62は、入力されるPWM信号(PWM反転回路64が出力するPWM信号)のデューティと同程度のデューティのPWM信号を出力する。但し、FET駆動回路62は、FET駆動回路62が出力するPWM信号の各オン時間がFET駆動回路60が出力するPWM信号のオン時間と重ならないようにデッドタイムを設定しつつPWM信号を出力する。
【0080】
駆動部54は、第1電圧変換状態のときには、FET駆動回路60からの信号の出力先をスイッチ41とし、FET駆動回路62からの信号の出力先をスイッチ42とする。第1電圧変換状態のとき、FET駆動回路60は、入力されるPWM信号Sp(制御部52が出力するPWM信号)がハイレベル信号の期間にスイッチ41のゲートにオン信号を与える。そして、FET駆動回路60は、PWM信号Spがローレベル信号の期間にスイッチ41のゲートにオフ信号を与える。FET駆動回路60がスイッチ41のゲートに与えるオン信号は、スイッチ41をオン動作させ得る電圧に設定される。第1電圧変換状態のときには、FET駆動回路62は、制御部52が出力するPWM信号Spがハイレベル信号の期間にスイッチ42のゲートにオフ信号を与える。そして、FET駆動回路62は、PWM信号Spがローレベル信号の期間にデッドタイムを設定しつつスイッチ42のゲートにオン信号を与える。
【0081】
駆動部54は、第2電圧変換状態のときには、FET駆動回路60からの信号の出力先をスイッチ44とし、FET駆動回路62からの信号の出力先をスイッチ43とする。第2電圧変換状態のとき、FET駆動回路60は、入力されるPWM信号Sp(制御部52が出力するPWM信号)がハイレベル信号の期間にスイッチ44のゲートにオン信号を与える。そして、FET駆動回路60は、PWM信号Spがローレベル信号の期間にスイッチ44のゲートにオフ信号を与える。FET駆動回路60がスイッチ44のゲートに与えるオン信号は、スイッチ44をオン動作させ得る電圧に設定される。第2電圧変換状態のときには、FET駆動回路62は、制御部52が出力するPWM信号Spがハイレベル信号の期間にスイッチ43のゲートにオフ信号を与える。そして、FET駆動回路62は、PWM信号Spがローレベル信号の期間にデッドタイムを設定しつつスイッチ43のゲートにオン信号を与える。
【0082】
次に、電圧変換装置10の動作が説明される。制御部52は、外部装置からの指示に応じて電圧変換部40を第1電圧変換状態に制御する場合、スイッチ43をオン状態とし、スイッチ44をオフ状態とする。この場合のスイッチ43,44の切り替えは、制御部52の指示によって駆動部54によって行われ得るが、制御部52が直接切り替えてもよい。そして、制御部52は、電圧変換部40に第1降圧動作と第1昇圧動作とを行わせる。第1降圧動作は、スイッチ41のオンオフ動作により導電路11に印加された電圧を降圧して導電路12に出力電圧を印加する動作である。第1昇圧動作は、スイッチ42のオンオフ動作により導電路12に印加された電圧を昇圧して導電路11に出力電圧を印加する動作である。
【0083】
制御部52は、第1電圧変換状態とするために第1降圧動作及び第1昇圧動作を行わせる場合には、デューティ決定部111によって決定するデューティDaを第1生成部181で生成されるデューティD11とする。また、制御部52は、第1電圧変換状態とする場合には、デューティ決定部112によって決定するデューティDbを第1生成部191で生成されるデューティD12とする。そして、制御部52は、切替部160が「大きい値」を選択する設定である場合には、第1の候補デューティD1としてデューティDa及びデューティDbのうちの大きい方を選択する。一方、制御部52は、切替部160が「小さい値」を選択する設定である場合には、第1の候補デューティD1としてデューティDa及びデューティDbのうちの小さい方を選択する。
【0084】
そして、選択部166は、導電路11を流れる方向が第1電流方向である場合には、第1の候補デューティD1、第2の候補デューティD2、及び第4の候補デューティD4を含んだ候補のうちの最小値Dmを使用デューティDuとして決定する。一方、選択部166は、導電路11を流れる電流の方向が第2電流方向である場合には、第1の候補デューティD1、第3の候補デューティD3、及び第5の候補デューティD5を含んだ候補のうちの最大値Dnを使用デューティDuとして決定する。いずれにしても、PWM信号生成部52Cは、デューティが使用デューティDuとされるPWM信号Spを生成し、PWM信号Spを駆動部54に向けて出力する。
【0085】
駆動部54は、第1電圧変換状態のときにはPWM信号生成部52Cから出力されるPWM信号Spとデューティが同一であって且つオン信号のレベルが所定レベルであるPWM信号(第1制御信号)をスイッチ41(ハイサイド側スイッチ)に入力する。そして、駆動部54は、第1電圧変換状態のときにはPWM信号Spを反転した信号に応じたオンオフ信号(第2制御信号)をスイッチ42(ローサイド側スイッチ)に入力する。このように第1制御信号及び第2制御信号が出力されることにより、電圧変換部40は第1降圧動作及び第1昇圧動作を行う。
【0086】
制御部52は、外部装置からの指示に応じて電圧変換部40を第2電圧変換状態に制御する場合、スイッチ41をオン状態とし、スイッチ42をオフ状態とする。この場合のスイッチ41,42の切り替えは、制御部52の指示によって駆動部54によって行われ得るが、制御部52が直接切り替えてもよい。そして、制御部52は、電圧変換部40に第2降圧動作と第2昇圧動作とを行わせる。第2降圧動作は、スイッチ43のオンオフ動作により導電路12に印加された電圧を降圧して導電路11に出力電圧を印加する動作である。第2昇圧動作は、スイッチ44のオンオフ動作により導電路11に印加された電圧を昇圧して導電路12に出力電圧を印加する動作である。
【0087】
制御部52は、第2電圧変換状態とするために第2降圧動作及び第2昇圧動作を行わせる場合には、デューティ決定部111によって決定するデューティDaを第2生成部182で生成されるデューティD13とする。また、制御部52は、第2電圧変換状態とする場合には、デューティ決定部112によって決定するデューティDbを第2生成部192で生成されるデューティD14とする。そして、制御部52は、切替部160が「大きい値」を選択する設定である場合には、第1の候補デューティD1としてデューティDa及びデューティDbのうちの大きい方を選択する。一方、制御部52は、切替部160が「小さい値」を選択する設定である場合には、第1の候補デューティD1としてデューティDa及びデューティDbのうちの小さい方を選択する。
【0088】
そして、選択部166は、導電路11を流れる方向が第1電流方向である場合には、第1の候補デューティD1、第2の候補デューティD2、及び第4の候補デューティD4を含んだ候補のうちの最小値Dmを使用デューティDuとして決定する。一方、選択部166は、導電路11を流れる電流の方向が第2電流方向である場合には、第1の候補デューティD1、第3の候補デューティD3、及び第5の候補デューティD5を含んだ候補のうちの最大値Dnを使用デューティDuとして決定する。いずれにしても、PWM信号生成部52Cは、デューティが使用デューティDuとされるPWM信号Spを生成し、PWM信号Spを駆動部54に向けて出力する。
【0089】
駆動部54は、第2電圧変換状態のときには、PWM信号Spとデューティが同一であって且つオン信号のレベルが所定レベルであるPWM信号(第4制御信号、PWM制御信号)をスイッチ44(ローサイド側スイッチ、第2ローサイド側スイッチ)に入力する。そして、駆動部54は、第2電圧変換状態のときにはPWM信号Spを反転した信号に応じたオンオフ信号(第3制御信号、反転制御信号)をスイッチ43(ハイサイド側スイッチ、第2ハイサイド側スイッチ)に入力する。このように第3制御信号(反転制御信号)及び第4制御信号(PWM制御信号)が出力されることにより、電圧変換部40は第2降圧動作及び第2昇圧動作を行う。
【0090】
本開示の電圧変換装置10は、例えば以下のような効果を奏する。電圧変換装置10において、第1デューティは、第1導電路の電圧値を第1導電路の電圧目標値に近づけるデューティであり、第2デューティは、第2導電路の電圧値を第2導電路の電圧目標値に近づけるデューティである。そして、決定部に相当する制御部52は、第1デューティ及び第2デューティのうちの第2デューティの値、及び、100%から第1デューティを減じた値、のうちの大きい値又は小さい値に基づいて第1の候補デューティD1を定める。第1デューティは昇圧動作用のデューティであり、第2デューティは降圧動作用のデューティである。つまり、電圧変換装置10は、第1の候補デューティD1を使用デューティDuとする場合、降圧動作用のデューティ及び昇圧動作用のデューティをいずれも決定し得る環境を維持しつつ、いずれか一方を常に選択して降圧動作又は昇圧動作を行うことができる。そして、上記電圧変換装置10は、降圧動作及び昇圧動作のいずれを優先させて第1の候補デューティD1を決定するかを、第1デューティと第2デューティとの関係に基づいて迅速に切り替えることができる。例えば、上記電圧変換装置10は、降圧動作及び昇圧動作のうちいずれか一方を行っているときに、デューティのバランスが他方を優先させるべき状態に変化した場合、即座に他方を優先させるように第1の候補デューティD1を更新することができる。
【0091】
電圧変換装置10は、第1の候補デューティD1を使用デューティDuとして動作する場合に、第1デューティと第2デューティとのバランスに基づいて降圧動作と昇圧動作とをスムーズに切り替えうる。但し、上記電圧変換装置10は、所定条件下においては、使用デューティDuを決定する上で第1の候補デューティD1よりも他の候補デューティを優先させるように制限をかけることができる。具体的には、上記電圧変換装置10は、第1導電路から第2導電路に向かう方向を第1電流方向とし、第1電流方向とは反対の電流方向を第2電流方向とする。そして、上記電圧変換装置10は、第1導電路及び第2導電路のうちのいずれか「一方の導電路」における第1電流方向の電流目標値と「一方の導電路」の電流値とに少なくとも基づいて、第1電流方向の電流値を制限するための第2の候補デューティD2を定める。そして、上記電圧変換装置10は、第1導電路及び第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が第1電流方向である場合に、第1の候補デューティD1及び第2の候補デューティD2を含んだ候補のうちの最小値に基づいて使用デューティを決定する。つまり、上記電圧変換装置10は、第1電流方向に電流が流れている場合において第2の候補デューティD2が第1の候補デューティD1よりも小さい場合、相対的にデューティが小さい第2の候補デューティD2を優先する。よって、この場合、上記電圧変換装置10は、少なくとも第1の候補デューティD1を使用デューティとして用いる場合よりも第1電流方向の電流を制限し得る。また、上記電圧変換装置10は、上記「一方の導電路」における第2電流方向の電流目標値と「一方の導電路」の電流値とに少なくとも基づいて、第2電流方向の電流値を制限するための第3の候補デューティD3を定める。そして、上記電圧変換装置10は、第1導電路及び第2導電路の少なくともいずれかを流れる電流の方向が第2電流方向である場合に、第1の候補デューティD1及び第3の候補デューティD3を含んだ候補のうちの最大値に基づいて使用デューティを決定する。つまり、上記電圧変換装置10は、第2電流方向に電流が流れている場合において第3の候補デューティD3が第1の候補デューティD1よりも大きい場合、相対的にデューティが大きい第3の候補デューティD3を優先する。第2電流方向に電流が流れている場合に第1の候補デューティD1が優先されて使用デューティが下がると第2電流方向に電流が一層増加してしまうが、上記電圧変換装置10は、このような電流の増加を抑え得る。即ち、上記電圧変換装置10は、上述の場合に第3の候補デューティD3を優先して使用デューティを上げ、第2電流方向の電流値を第2電流方向の電流目標値に近づけるように制限をかけ得る。
【0092】
電圧変換装置10は、フルブリッジ回路によって双方向の電圧変換を行い得る。そして、電圧変換装置10は、第2電圧変換状態のときでも、第1の候補デューティD1を使用デューティとして動作する場合に、第1デューティと第2デューティとのバランスに基づいて降圧動作と昇圧動作とをスムーズに切り替えうる。更に、上記電圧変換装置10は、第2電圧変換状態のときでも、所定条件下においては、使用デューティDuを決定する上で第1の候補デューティD1よりも他の候補デューティを優先させるように制限をかけることができる。具体的には、第2電圧変換状態のときでも、第1電流方向に電流が流れている場合において第2の候補デューティD2が第1の候補デューティD1よりも小さい場合、相対的にデューティが小さい第2の候補デューティD2を優先する。よって、この場合、上記電圧変換装置10は、少なくとも第1の候補デューティD1を使用デューティDuとして用いる場合よりも第1電流方向の電流を制限し得る。また、上記電圧変換装置10は、第2電圧変換状態のときでも、第2電流方向に電流が流れている場合において第3の候補デューティD3が第1の候補デューティD1よりも大きい場合、相対的にデューティが大きい第3の候補デューティD3を優先する。よって、上記電圧変換装置10は、第3の候補デューティD3を優先して使用デューティを上げ、第2電流方向の電流値を第2電流方向の電流目標値に近づけるように制限をかけ得る。
【0093】
電圧変換装置10は、第1の電流偏差ΔI11及び第2の電流偏差ΔI21のうちの小さい方の偏差に基づいて第2の候補デューティD2を定める。よって、上記電圧変換装置10は、両導電路のうちの第1電流方向の電流をより抑えるべき方の状況に基づいて、第1電流方向の電流をより制限し得る第2の候補デューティD2を定め得る。また、上記電圧変換装置は、第3の電流偏差ΔI12及び第4の電流偏差ΔI22のうちの大きい方の偏差に基づいて第3の候補デューティD3を定める。よって、上記電圧変換装置10は、両導電路の状況に基づいて第2電流方向の電流をより制限し得る第3の候補デューティD3を定め得る。
【0094】
電圧変換装置10は、「一方の導電路」における第1電流方向の電力目標値と「一方の導電路」の電力値とに少なくとも基づいて、第1電流方向の電力値を制限するための第4の候補デューティD4を定める。そして、上記電圧変換装置10は、電流の方向が第1電流方向である場合には、第1の候補デューティD1、第2の候補デューティD2、及び第4の候補デューティD4を含んだ候補のうちの最小値Dmに基づいて使用デューティDuを決定する。つまり、上記電圧変換装置10は、第1電流方向に電流が流れている場合において第4の候補デューティD4が第1の候補デューティD1及び第2の候補デューティD2よりも小さい場合、相対的にデューティが小さい第4の候補デューティD4を優先する。よって、この場合、上記電圧変換装置10は、少なくとも第1の候補デューティD1や第2の候補デューティD2を使用デューティDuとして用いる場合よりも第1電流方向の電力を制限し得る。また、上記電圧変換装置10は、「一方の導電路」における第2電流方向の電力目標値と「一方の導電路」の電力値とに少なくとも基づいて、第2電流方向の電力を制限するための第5の候補デューティD5を定める。そして、上記電圧変換装置10は、電流の方向が第2電流方向である場合には、第1の候補デューティD1、第3の候補デューティD3、及び第5の候補デューティD5を含んだ候補のうちの最大値Dnに基づいて使用デューティDuを決定する。つまり、上記電圧変換装置10は、第2電流方向に電流が流れている場合において第5の候補デューティD5が第1の候補デューティD1や第3の候補デューティD3よりも大きい場合、相対的にデューティが大きい第5の候補デューティD5を優先する。第2電流方向に電流が流れている場合に第1の候補デューティD1や第3の候補デューティD3が優先されて使用デューティが下がると第2電流方向に電力が一層増加してしまうが、上記電圧変換装置10は、このような電力の増加を抑え得る。即ち、上記電圧変換装置10は、上述の場合に第5の候補デューティD5を優先して使用デューティを上げ、第2電流方向の電力値を第2電流方向の電力目標値に近づけるように制限をかけ得る。
【0095】
電圧変換装置10は、第1の電力偏差ΔP11及び第2の電力偏差ΔP21のうちの小さい方の偏差に基づいて第4の候補デューティD4を定める。よって、上記電圧変換装置10は、両導電路のうちの第1電流方向の電力をより抑えるべき方の状況に基づいて、第1電流方向の電力をより制限し得る第4の候補デューティD4を定め得る。また、上記電圧変換装置10は、第3の電力偏差ΔP12及び第4の電力偏差ΔP22のうちの大きい方の偏差に基づいて第5の候補デューティD5を定める。よって、上記電圧変換装置10は、両導電路の状況に基づいて第2電流方向の電力をより制限し得る第5の候補デューティD5を定め得る。
【0096】
決定部に相当する制御部52は、上記「大きい値」又は上記「小さい値」のいずれに基づいて第1の候補デューティD1を定めるかを切り替える切替部160を有する。よって、電圧変換装置10は、競合する場合に降圧動作と昇圧動作のいずれを優先させるかを選択可能とすることができる。
【0097】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態を、次のように変更してもよい。
【0098】
上記実施形態では、選択部166は、導電路11の電流値の方向によって第1電流方向であるか第2電流方向であるかを判断していたが、導電路12の電流値の方向によって第1電流方向であるか第2電流方向であるかを判断してもよい。
【0099】
上記実施形態では、第1電圧変換状態及び第2電圧変換状態のいずれにも切り替え得る構成であったが、いずれか一方のみを実行する構成であってもよい。
【0100】
上記実施形態では、フルブリッジ回路として構成される電圧変換部が例示されたが、電圧変換部は、スイッチ43の部分が短絡し、スイッチ44の部分が省略されたハーフブリッジ回路として構成されていてもよい。この場合、制御部52は、第1電圧変換状態のときの動作のみが行われるようにすればよい。或いは、電圧変換部は、スイッチ41の部分が短絡し、スイッチ42の部分が省略されたハーフブリッジ回路として構成されていてもよい。この場合、制御部52は、第2電圧変換状態のときの動作のみが行われるようにすればよい。
【0101】
上記実施形態では、制御部52によるデジタル処理によって図3図7の機能を実現しているが、当然ながら、アナログ回路を含んだ形で図3図7の機能を実現してもよい。例えば、図4図7の機能をアナログ回路によって実現してもよい。
【0102】
上記実施形態では、演算部181B,182B,191B,192B,121B,122B,131B,132B,141B,142B,151B,152BがPI演算によるフィードバック演算を行うものであったが、PID演算などの他方式で演算してもよい。
【0103】
上記実施形態では、切替部が設けられていたが、切替部が省略されていてもよい。この場合、選択部116は、常に最大値(大きい値)のみを選択してもよく、常に最小値(小さい値)のみを選択してもよい。
【0104】
上記実施形態では、最小値Dm又は最大値Dnのいずれかを使用デューティDuとしているが、最小値Dm又は最大値Dnに対して何らかの補正を行ったものを使用デューティDuとしてもよい。
【0105】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 :電源システム
10 :電圧変換装置
11 :導電路(第1導電路)
12 :導電路(第2導電路)
21 :電圧値検出部(第1電圧値検出部)
22 :電圧値検出部(第2電圧値検出部)
31 :電流値検出部(第1電流値検出部)
32 :電流値検出部(第2電流値検出部)
40 :電圧変換部(フルブリッジ回路)
41 :スイッチ(ハイサイド側スイッチ)
42 :スイッチ(ローサイド側スイッチ)
43 :スイッチ(第2ハイサイド側スイッチ、ハイサイド側スイッチ)
44 :スイッチ(第2ローサイド側スイッチ、ローサイド側スイッチ)
45 :インダクタ
46 :コンデンサ
47 :コンデンサ
52 :制御部(決定部)
52A :AD変換部
52B :デューティ演算部
52C :PWM信号生成部
52D :動作選択部
54 :駆動部
60 :FET駆動回路
62 :FET駆動回路
64 :PWM反転回路
71 :配線
72 :配線
81 :電源部
82 :電源部
91 :負荷
92 :負荷
110 :候補デューティ決定部
111 :デューティ決定部
112 :デューティ決定部
113 :最小値選択部
114 :最大値選択部
116 :選択部
120 :候補デューティ決定部
121 :第1生成部
121A :偏差算出部
121B :演算部
122 :第2生成部
122A :偏差算出部
122B :演算部
124 :選択部
130 :候補デューティ決定部
131 :第1生成部
131A :偏差算出部
131B :演算部
132 :第2生成部
132A :偏差算出部
132B :演算部
134 :選択部
140 :候補デューティ決定部
141 :第1生成部
141A :偏差算出部
141B :演算部
142 :第2生成部
142A :偏差算出部
142B :演算部
144 :選択部
150 :候補デューティ決定部
151 :第1生成部
151A :偏差算出部
151B :演算部
152 :第2生成部
152A :偏差算出部
152B :演算部
154 :選択部
160 :切替部
162 :最小値選択部
164 :最大値選択部
166 :選択部
181 :第1生成部
181A :偏差算出部
181B :演算部
182 :第2生成部
182A :偏差算出部
182B :演算部
184 :選択部
191 :第1生成部
191A :偏差算出部
191B :演算部
192 :第2生成部
192A :偏差算出部
192B :演算部
194 :選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7