(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】生分解性を有するブロック共重合体
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20230131BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20230131BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20230131BHJP
A61L 27/34 20060101ALI20230131BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20230131BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20230131BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20230131BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20230131BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20230131BHJP
A61L 17/12 20060101ALI20230131BHJP
A61L 17/14 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C08G81/00 ZBP
C08L101/16
A61L27/18
A61L27/34
A61L27/40
A61L27/58
A61L27/50 300
A61L15/26 100
A61L15/42 100
A61L17/12
A61L17/14 100
(21)【出願番号】P 2019504997
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2019002391
(87)【国際公開番号】W WO2019187569
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2018067452
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅規
(72)【発明者】
【氏名】小屋松 祐一
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 一裕
(72)【発明者】
【氏名】木戸場 和志
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-195862(JP,A)
【文献】特開2001-261838(JP,A)
【文献】特許第4822222(JP,B2)
【文献】国際公開第2012/077776(WO,A1)
【文献】特許第5209192(JP,B2)
【文献】特許第6094219(JP,B2)
【文献】特開2017-141477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
C08G 65/00-65/48
C08G 81/00-81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレングリコールブロックと、ポリヒドロキシアルカン酸ブロックからなり、
前記ポリアルキレングリコールブロックは、両末端に水酸基を有するポリアルキレングリコール及び両末端にカルボキシル基を有するポリアルキレングリコールに由来する構造からなり、
全質量に対するポリアルキレングリコールブロックの質量比率が10~60%であり、
カルボニル炭素の炭素核緩和時間T1ρが20ms以下であり、
下記式1を満たし、且つ、下記一般式(I)で示されるブロック共重合体。
χ=χ1×χ2≧20 ・・・式1
χ1:ポリアルキレングリコールブロックの結晶化率
χ2:ポリヒドロキシアルカン酸ブロックに含まれる繰り返し単位のうち、単一の繰り返し単位からなるホモポリマーの結晶化率がもっとも高い繰り返し単位をAとした際の、ポリAブロックの結晶化率
【化1】
[式中、Aはポリヒドロキシアルカン酸ブロックを表し、B’はB又は2以上のBがCを介して連結したブロックを表し(ただし、2以上のBがCを介して連結したブロックを分子内に必ず含む)、
Bは両末端に水酸基を有するポリアルキレングリコール由来の構造を表し、DはC又は単結合を表し、ここでCは両末端にカルボキシル基を有するポリアルキレングリコール由来の構造を表す。nは1以上の整数を表す。]
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカン酸ブロックは、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンからなる群から選択されるモノマー由来の繰り返し単位を含む、請求項1記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記ブロック共重合体の全質量に対するカプロラクトン由来の繰り返し単位の質量比率は、20~80%である、請求項1又は2記載のブロック共重合体。
【請求項4】
前記ポリアルキレングリコールブロックの重量平均分子量は、7,000~170,000である、請求項1~3のいずれか一項記載のブロック共重合体。
【請求項5】
Aは、下記の一般式(II)で示される、請求項1~4のいずれか一項記載のブロック共重合体。
【化2】
[式中、p、q、r及びnは1以上の整数を表す。]
【請求項6】
Aは、下記の一般式(III)で示される、請求項1~4のいずれか一項記載のブロック共重合体。
【化3】
[式中、p、q及びnは1以上の整数を表す。]
【請求項7】
B’は、下記の一般式(IV)で示される、請求項1~6のいずれか一項記載のブロック共重合体。
【化4】
[式中、s、t及びmは1以上の整数を表し、Xは両末端にカルボキシル基を有するポリアルキレングリコールに由来する構造を表す(ただし、Xを含む
B’を分子内に必ず含む)。]
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項記載のブロック共重合体と、該ブロック共重合体に被覆される成型体とを有する、医療材料。
【請求項9】
ポリヒドロキシアルカン酸ブロックと、両末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールブロックと、両末端にカルボキシル基を有するポリアルキレングリコールブロックと、を縮合することを含む、請求項1~8のいずれか一項記載のブロック共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い追従性と優れた分解性を備えた生分解性を有するブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性高分子は医療用材料、血管塞栓材料、縫合糸、DDS担体等、医療用途で幅広く用いられている。
【0003】
体内に埋める医療用の被覆材料は、体内に留置されるものであるため、無毒で最終的には分解され、体外に排出される必要がある。
【0004】
このような分解性に優れた生分解性高分子を用いた医療用材料として、ポリエーテルグリコール系の生物分解性ブロックコポリマー材料や(特許文献1)、ポリヒドロキシ酸ブロック及び生体適合性ポリマーブロックからなるブロックコポリマーを含む埋込型医療用具のコーティング(特許文献2)が報告されている。
【0005】
また、生分解性ポリマーブロック及び水溶性ポリマーブロックからなるマルチブロック共重合体を多孔質シート状に加工した人工皮膚(特許文献3)や粒子状に加工した血管塞栓材料(特許文献4)が報告されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平01-195862号
【文献】特許第4822222号
【文献】特許第5209192号
【文献】特許第6094219号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Messmore,Benjamin W. et al.,Journal of the American Chemical Society,2004,126,14452.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
体内に埋める医療用の被覆材料は、分解性だけでなく、生体の動きに追従するための追従性を有することが求められる。特許文献1~2に記載のブロックコポリマーは、ポリアルキレングリコールブロックの両端にポリヒドロキシアルカン酸ブロックが位置するトリブロックポリマー(下記一般式(A)で示されるブロック共重合体)、あるいはトリブロックポリマーをマルチ化したマルチブロックポリマー(下記一般式(B)又は(C)で示されるブロック共重合体)であり、このようなトリブロックポリマー構造を基にしたポリマーは分解性には優れるものの、追従性には劣っており、体内に埋める医療用の被覆材料として用いるにはさらなる改良が必要であった。
【0009】
また、特許文献3~4に記載のブロックポリマー(下記一般式(D)で示されるブロック共重合体)は、ポリヒドロキシアルカン酸ブロック中に低分子化合物がリンカー分子として混在することにより、分子の結晶性が低下しているため、引っ張り強度が低下しており、シート状に加工した際の追従性は満足のいくものではなかった。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
[式(A)~(D)中、Aはポリヒドロキシアルカン酸ブロックを表し、Bはポリアルキレングリコールブロックを表し、Cはカルボキシル基を2以上有するリンカー分子を表し、DはC又は単結合を表す。A’はA又は2以上のAがCを介して連結したブロックを表す(ただし2以上のAがCを介して連結したブロックを分子内に必ず含む)。B’はB又は2以上のBがCを介して連結したブロックを表す(ただし2以上のBがCを介して連結したブロックを分子内に必ず含む)。nは1以上の整数を表す。]
【0010】
そこで本発明は、高い追従性と優れた分解性を備えた生分解性を有するブロック共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の(1)~(9)の発明を見出した。
(1) ポリアルキレングリコールブロックと、ポリヒドロキシアルカン酸ブロックからなり、前記ポリアルキレングリコールブロックは、両末端に水酸基を有するポリアルキレングリコール及び両末端にカルボキシル基を有するポリアルキレングリコールに由来する構造からなり、全質量に対するポリアルキレングリコールブロックの質量比率が10~60%であり、カルボニル炭素の炭素核緩和時間T1ρが20ms以下であり、下記式1を満たし、且つ、下記一般式(I)で示される、ブロック共重合体。
χ=χ1×χ2≧20 ・・・式1
χ1:ポリアルキレングリコールブロックの結晶化率
χ2:ポリヒドロキシアルカン酸ブロックに含まれる繰り返し単位のうち、単一の繰り返し単位からなるホモポリマーの結晶化率がもっとも高い繰り返し単位をAとした際の、ポリAブロックの結晶化率
【化5】
[式中、Aはポリヒドロキシアルカン酸ブロックを表し、B’はB又は2以上のBがCを介して連結したブロックを表し(ただし、2以上のBがCを介して連結したブロックを分子内に必ず含む)、
Bは両末端に水酸基を有するポリアルキレングリコール由来の構造を表し、DはC又は単結合を表し、ここでCは両末端にカルボキシル基を有するポリアルキレングリコール由来の構造を表す。nは1以上の整数を表す。]
(2) 上記ポリヒドロキシアルカン酸ブロックは、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンからなる群から選択されるモノマー由来の繰り返し単位を含む、(1)記載のブロック共重合体。
(3) 上記ブロック共重合体の全質量に対するカプロラクトン由来の繰り返し単位の質量比率は、20~80%である、(1)又は(2)記載のブロック共重合体。
(4) 上記ポリアルキレングリコールブロックの重量平均分子量は、7,000~170,000である、(1)~(3)のいずれか記載のブロック共重合体。
(5) Aは、下記の一般式(II)で示される、(1)~(4)のいずれか記載のブロック共重合体。
【化6】
[式中、p、q、r及びnは1以上の整数を表す。]
(6) Aは、下記の一般式(III)で示される、(1)~(4)のいずれか記載のブロック共重合体。
【化7】
[式中、p、q及びnは、1以上の整数を表す。]
(7)
B’は、下記の一般式(IV)で示される、(1)~(6)のいずれか記載のブロック共重合体。
【化8】
[式中、s、t及びmは1以上の整数を表し、Xは両末端にカルボキシル基を有するポリアルキレングリコールに由来する構造を表す(ただし、Xを含む
B’を分子内に必ず含む)。]
(8) (1)~(7)のいずれか記載のブロック共重合体と、該ブロック共重合体に被覆される成型体とを有する、医療材料。
(9) ポリヒドロキシアルカン酸ブロックと、両末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールブロックと、両末端にカルボキシル基を有するポリアルキレングリコールブロックと、を縮合することを含む、(1)~(8)のいずれか記載のブロック共重合体の製造方法。
【0012】
また、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の(10)~(18)の発明を見出した。
(10) ポリアルキレングリコールブロックと、ポリヒドロキシアルカン酸ブロックからなり、全質量に対するポリアルキレングリコールブロックの質量比率が15~60%であり、下記式1を満たす、ブロック共重合体。
χ=χ1×χ2≧500 ・・・式1
χ1:ポリアルキレングリコールブロックの結晶化率
χ2:ポリヒドロキシアルカン酸ブロックに含まれる繰り返し単位のうち、単一の繰り返し単位からなるホモポリマーの結晶化率がもっとも高い繰り返し単位をAとした際の、ポリAブロックの結晶化率
(11) 上記ポリヒドロキシアルカン酸ブロックは、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンからなる群から選択されるモノマー由来の繰り返し単位を含む、(10)記載のブロック共重合体。
(12) 上記ブロック共重合体の全質量に対するカプロラクトン由来の繰り返し単位の質量比率は、20~80%である、(10)又は(11)記載のブロック共重合体。
(13) 上記ポリアルキレングリコールブロックの重量平均分子量は、7,000~170,000である、(10)記載のブロック共重合体。
(14) 下記の一般式(I)で示される、(10)~(13)のいずれか記載のブロック共重合体。
【化9】
[式中、Aはポリヒドロキシアルカン酸ブロックを表し、Bはポリアルキレングリコールブロックを表し、Cはカルボキシル基を2以上有するリンカー分子を表し、DはC又は単結合を表す。B’はB又は2以上のBがCを介して連結したブロックを表す(ただし2以上のBがCを介して連結したブロックを分子内に必ず含む)。nは1以上の整数を表す。]
(15) Aは、下記の一般式(II)で示される、(14)記載のブロック共重合体。
【化10】
[式中、p、q、r及びnは1以上の整数を表す。]
(16) Aは、下記の一般式(III)で示される、(14)記載のブロック共重合体。
【化11】
[式中、p、q及びnは、1以上の整数を表す。]
(17) Bは、下記の一般式(IV)で示される、(14)記載のブロック共重合体。
【化12】
[式中、s、t及びmは1以上の整数を表し、Xはカルボキシル基を2以上有するリンカー分子に由来する構造を表す(ただし、Xを含むBを分子内に必ず含む)。]
(18) (10)~(17)のいずれか記載のブロック共重合体と、該ブロック共重合体に被覆される成型体とを有する、医療材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明のブロック共重合体は、ブロック共重合体内のポリアルキレングリコールブロックとポリヒドロキシアルカン酸ブロックの結晶化率と質量比率を制御することで、生体の動き耐えうるだけの追従性と、生体内での役目を終えた後に好適に分解されるだけの分解性を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のブロック共重合体は、ポリアルキレングリコールブロックと、ポリヒドロキシアルカン酸ブロックからなり、全質量に対するポリアルキレングリコールブロックの質量比率が10~60%であり、カルボニル炭素の炭素核緩和時間T1ρが20ms以下であり、下記式1を満たすことを特徴としている。
χ=χ1×χ2≧20 ・・・式1
χ1:ポリアルキレングリコールブロックの結晶化率
χ2:ポリヒドロキシアルカン酸ブロックに含まれる繰り返し単位のうち、単一の繰り返し単位からなるホモポリマーの結晶化率がもっとも高い繰り返し単位をAとした際の、ポリAブロックの結晶化率
【0015】
生分解性とは、生体内で分解される性質のことを指し、生分解性高分子はそのような性質を有する高分子を指す。生分解性と互換的に使用され得る用語として生体吸収性、生体適合性等が挙げられる。生分解性高分子は、生体内で分解されるものであれば特に限定はされないが、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリε-カプロラクトン、ポリジオキサノン等が挙げられ、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体、グリコール酸-ε-カプロラクトン共重合体、乳酸-ε-カプロラクトン共重合体等の複数の材料を用いてもよく、本発明の効果を損なわない限りにおいて、これらの混合物又はポリアルキレングリコール等の水溶性ポリマーとの混合物であってもよい。
【0016】
ポリアルキレングリコールとは、2種類以上のアルキレングリコールが重合されたポリマーであり、アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、オキシエチレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジアセテート由来の繰り返し単位の2つ以上が含まれるポリマーが挙げられる。
【0017】
ポリヒドロキシアルカン酸とは、1種類以上のヒドロキシアルカン酸が重合されたポリマーであり、ヒドロキシアルカン酸としては、例えば、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシブタン酸(3-ヒドロキシ酪酸)、3-ヒドロキシペンタン酸(3-ヒドロキシ吉草酸)、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、4-ヒドロキシペンタン酸、4-ヒドロキシヘキサン酸、4-ヒドロキシヘプタン酸、4-ヒドロキシオクタン酸、5-ヒドロキシヘキサン酸、5-ヒドロキシヘプタン酸、6-ヒドロキシヘプタン酸、6-ヒドロキシオクタン酸、8-ヒドロキシノナン酸、8-ヒドロキシデカン酸、9-ヒドロキシデカン酸、9-ヒドロキシウンデカン酸、10-ヒドロキシウンデカン酸、10-ヒドロキシドデカン酸、11-ヒドロキシドデカン酸又は12-ヒドロキシトリデカン酸が挙げられる。
【0018】
ブロック共重合体の全質量に対するポリアルキレングリコールブロックの質量比率とは、測定例1に挙げられるように、NMR測定により得られた数値を指す。ブロック共重合体の全質量に対するポリアルキレングリコールブロックの質量比率は、追従性と分解性を好適な範囲に制御するため、ブロック共重合体の全質量に対するポリアルキレングリコールブロックの質量比率は、10~60%であることが好ましく、15~60%であることがより好ましく、20~50%がさらに好ましく、25~40%がもっとも好ましい。
【0019】
ポリアルキレングリコールは生体内で分解されないため、体内から排出をより好適にするためには、ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、170,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000がさらにより好ましい。また、ブロック構造の反応点が好適な範囲となり、ブロック共重合体全体の重量平均分子量を増加しやすくするためには、ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、7,000以上が好ましく、8,000以上がより好ましく、10,000以上がさらにより好ましい。
【0020】
ブロック共重合体の全質量に対するカプロラクトン由来の繰り返し単位の質量比率とは、測定例1に挙げられるように、NMR測定により得られた数値を指す。ブロック共重合体の全質量に対するポリカプロラクトン由来の繰り返し単位の質量比率は、分解性とヤング率を好適な範囲に制御するため、ブロック共重合体中のポリカプロラクトンの質量比率は、15~80%であることが好ましく、20~70%がより好ましく、25~60%がさらに好ましい。
【0021】
カルボキシル基を2以上有するリンカー分子としては、例えば、ジカルボン酸、クエン酸、多分岐ポリマーのうち、分岐末端にカルボキシル基を2以上有するもの又は上記ジカルボン酸、クエン酸及び多分岐ポリマーの酸ハロゲン化物、酸無水物若しくはエステルが挙げられる。すなわち、上記のカルボン酸基は、酸ハロゲン化物構造、エステル構造又は酸無水物構造に変換されていても構わない。また、上記ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸又はドデカン二酸等が挙げられ、上記多分岐ポリマーとしては、ハイパーブランチポリマー又はデンドリマー等が挙げられる。
【0022】
上記リンカー分子とポリアルキレングリコール(両末端水酸基)をあらかじめ反応させることで、ポリアルキレングリコール(両末端カルボキシル基)やポリアルキレングリコール(片末端カルボキシル基)を得ることができ、これらを原料としてブロック共重合体を製造することができる。
【0023】
ブロック共重合体の結晶性は、その機械強度に大きな影響を与えることが知られている。一般に、低結晶性のブロック共重合体は低ヤング率を示すため、柔軟性を得るためには結晶性が低いことが望ましい。しかしながら極端に低すぎると引っ張り強度や最大点伸度が低下し、生体の動きに耐えきれなくなるため、追従性に劣ってしまう。ブロック共重合体の結晶化率は本発明のようなポリアルキレングリコールとポリヒドロキシアルカン酸からなるブロック共重合体の場合には、下記の式1で表されるχ値によって評価することができる。
χ=χ1×χ2 ・・・式1
χ1: ポリアルキレングリコールブロックの結晶化率
χ2: ポリヒドロキシアルカン酸ブロックに含まれる繰り返し単位のうち、単一の繰り返し単位からなるホモポリマーの結晶化率がもっとも高い繰り返し単位をAとした際の、ポリAブロックの結晶化率
【0024】
下記の測定例2に挙げられるように、上記χ値は、示差走査熱量(DSC)測定により得られた融解熱の値から求められる。また、上記χ1は下記の式2から求められ、上記χ2は下記の式3から求められる。
χ1=(共重合体中のアルキレングリコール残基単位重量当たりの融解熱)/{(アルキレングリコール残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(共重合体中のアルキレングリコール残基の重量分率)}×100 ・・・式2
χ2=(共重合体中のA残基単位重量当たりの融解熱)/{(A残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(共重合体中のA残基の重量分率)}×100 ・・・式3
【0025】
ここで、ホモポリマーの単位重量当たり融解熱は次のように求められる。ホモポリマーを重量濃度が5%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン(登録商標)製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥させて、厚さ100μm±50μmのポリマーフィルムを得た。ポリマーフィルムをアルミニウムPANに採取し、示差走査熱量計(EXTAR 6000;セイコーインスツル株式会社製)でDSC法により下記の条件Aで測定し、グラフの融解ピーク面積から融解熱を読み取る。
(条件A)
機器名:EXSTAR 6000(セイコーインスツル株式会社製)
温度条件:25℃→250℃(10℃/min)
標準物質:α-アルミナ
【0026】
ブロック共重合体の追従性を好適な範囲に制御するため、ブロック共重合体の結晶化率を表すχ値は、20以上が好ましく、500以上がより好ましく、650以上がさらに好ましく、800以上がもっともより好ましい。
【0027】
また、ブロック共重合体の機械強度は、ブロック共重合体の分子運動性にも相関することが知られている。分子運動性の高いブロック共重合体は、高い引っ張り強度と高い最大点伸度を示すため、追従性の高いブロック共重合体を得るためにはブロック共重合体の分子運動性が高いことが望ましい。ブロック共重合体の分子運動性は、後述の測定例6で挙げられる固体NMR測定を用いる方法により得られた、カルボニル炭素の炭素核緩和時間T1ρ(ms)によって評価することができる。
【0028】
ブロック共重合体の分子運動性が好適な範囲内にあり、追従性を好適な範囲に制御するため、ブロック共重合体のカルボニル炭素の炭素核緩和時間T1ρは、20ms以下が好ましく、18ms以下がより好ましく、16ms以下がさらに好ましい。
【0029】
ブロック共重合体が乳酸残基を含む場合、ブロック共重合体の分子運動性が好適な範囲内にあり、追従性を好適な範囲に制御するため、乳酸残基のメチル基の炭素核緩和時間T1ρは、10.0ms以下が好ましく、8.0ms以下がより好ましく、6.0ms以下がさらに好ましい。なお、測定例6記載の方法において、乳酸残基のメチル基に由来するピークは、18±3ppmに観測される。
【0030】
ブロック共重合体がカプロラクトン残基を含む場合、ブロック共重合体の分子運動性が好適な範囲内にあり、追従性を好適な範囲に制御するため、カプロラクトン残基のα炭素核緩和時間T1ρは、2.0ms以下が好ましく、1.8ms以下がより好ましく、1.6ms以下がさらに好ましく、カプロラクトン残基の6位メチレン基の炭素核緩和時間T1ρは、1.5ms以下が好ましく、1.3ms以下がより好ましく、1.0ms以下がさらに好ましく、カプロラクトン残基の3~5位メチレン基の炭素核緩和時間T1ρは、2.5ms以下が好ましく、2.3ms以下がより好ましく、2.0ms以下がさらに好ましい。ここで、カプロラクトン残基のα炭素は、2位メチレン基のことを指し、6位メチレン基は、酸素原子に隣接するメチレン基を指す。なお、測定例6記載の方法において、カプロラクトン残基のα炭素に由来するピークは、34±2ppmに観測され、カプロラクトン残基の6位メチレン基に由来するピークは、66±1.9ppmに観測され、カプロラクトン残基の3~5位メチレン基に由来するピークは、28±3ppmに観測される。
【0031】
乳酸残基を含み、かつ、ポリエチレングリコールブロックを含むブロック共重合体の場合、ブロック共重合体の分子運動性が好適な範囲内にあり、追従性を好適な範囲に制御するため、乳酸残基のメチン基とエチレングリコール残基のメチレン基の炭素核緩和時間T1ρは、8.0ms以下が好ましく、6.0ms以下がより好ましく、4.0ms以下がさらに好ましい。なお、測定例6記載の方法において、乳酸残基のメチン基とエチレングリコール残基のメチレン基に由来するピークは、70±1.9ppmに観測される。
【0032】
本明細書中において、追従性の指標はヤング率、引っ張り強度及び最大点伸度とし、追従性に優れるとは低ヤング率かつ高引っ張り強度・高最大点伸度であることをいう。より具体的にはヤング率が100MPa以下、引っ張り強度が5.0MPa以上、最大点伸度が600%以上である場合、追従性に優れるという。
【0033】
ブロック共重合体の追従性は、後に詳述する測定例3で挙げられる方法によって評価することができる。ブロック共重合体が生体内で良好な追従性を示すためには、ブロック共重合体からなるフィルムのヤング率は、100MPa以下であることが好ましく、50MPa以下であることがより好ましく、10MPa以下であることがさらにより好ましい。また、引っ張り強度は、5.0MPa以上であることが好ましく、7.0MPa以上であることがより好ましく、9.0MPa以上であることがさらにより好ましい。また、最大点伸度は、600%以上であることが好ましく、800%以上であることがより好ましく、1000%以上であることがさらにより好ましい。
【0034】
ブロック共重合体の分解性は、測定例4に挙げられるような方法によって評価することができる。ブロック共重合体が生体内で良好な分解性を示すためには、4週後のブロック共重合体重量(%)が、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下がさらに好ましい。ここで、4週後のブロック共重合体重量(%)とは、後述する式5で示される計算式によって求められる値を示す。
【0035】
また、ブロック共重合体の分解性は、測定例7に挙げられる方法によって評価することができる。ブロック共重合体が生体内で良好な分解性を示すためには、4週後のブロック共重合体重量平均分子量(%)が、85%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、50%以下がさらに好ましい。ここで、4週後のブロック共重合体重量平均分子量(%)とは、後述する式6で示される計算式によって求められる値を示す。
【0036】
本発明のブロック共重合体は、有機溶媒に溶解させ、乾燥させることで任意の形状に成形することが可能である。有機溶媒はブロック共重合体が溶解するものであれば特に限定されないが、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0037】
本発明のブロック共重合体の重量平均分子量は、フィルムへの形成性を向上させるために、10,000以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、粘度の上昇による製造方法の問題及び成形性をより向上させるためには、1,600,000以下であることが好ましく、800,000以下であることがより好ましく、400,000以下であることがさらにより好ましい。
【0038】
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求めることができ、例えば次に示す方法で求めることができる。
【0039】
ブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC-13HP;ADVANTEC社製)を通過させて不純物等を除去した後にGPCにより測定して、ブロック共重合体の重量平均分子量を算出する。
機器名:Prominence(株式会社島津製作所製)
移動相:クロロホルム(HPLC用)(和光純薬工業株式会社製)
流速:1mL/min
カラム:TSKgel(登録商標) GMHHR-M(φ7.8mm×300mm;東ソー株式会社製)
検出器:UV(254nm)、RI
カラム、検出器温度:35℃
標準物質:ポリスチレン
【0040】
本発明のブロック共重合体は、成形体を被覆する被覆材料として用いることができる。この場合、ブロック共重合体及び該ブロック共重合体に被覆される成型体から形成された医療材料として用いることができる。ここで成形体とは、目的に応じて従来の方法により種々の形状に成形した物体を指し、例えば、膜状体(メンブラン、フィルム、シート)、板状体(ボード)、棒状体(ロッド)、筒状体(パイプ、チューブ)、糸状体、網状体(メッシュ)、袋状体、織布又は不織布等が挙げられる。
【0041】
被覆材料として用いた際のブロック共重合体の被覆厚とは、成形体の断面におけるブロック共重合体の層の厚みをSEMで測定し、得られた数値を指す。ブロック共重合体による被覆厚の値は、追従性と耐圧性を好適に制御するため、ブロック共重合体の被覆厚は、1μm~500μmであることが好ましく、10μm~300μmがより好ましく、20μm~200μmがさらにより好ましい。
【0042】
成形体が透水性を有する場合、本発明のブロック共重合体を被覆することで、耐漏水機能を付与することが可能である。ここで、透水性とは、成形体の片側表面にある一定圧力をかけた際に反対表面から水が流れ出る性質のことであり、本明細書中においては、16kPaの圧力をかけたとき、外側に流れ出てくる水の量(mL)を単位面積(cm2)及び単位時間(min.)で除したものを透水量と定義し、透水量が0より大きい場合を、透水性を有すると定義する。透水性の測定方法は例えば筒状体の場合、ISO7198に則り、筒状体の内表面に16kPaの圧力をかけたときの筒状体の外側に流れ出てくる水の量(mL)を単位面積(cm2)及び単位時間(min.)で除したものである。
【0043】
キンク半径とは、筒状体や棒状体でループを形成し、ループの径を徐々に小さくしていったときに座屈しない最小ループ半径のことを指す。キンク半径は、後に詳述する測定例5で挙げられる方法によって評価することができる。キンク半径は、生体内に移植後の周辺組織の動きへの追従性を良くし、屈曲部への移植をしやすくするため、キンク半径は15mm以下であることが好ましく、10mm以下がより好ましい。また、筒状体の内径は、人工血管としての用途を考慮した場合には1mm~10mmが好ましく、2mm~4mmがより好ましい。
【0044】
筒状体が繊維からなる場合、種々の有機繊維を用いることができるが、吸水性や耐劣化性の点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。また、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートに対して、酸成分として、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸又はアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合させた共重合ポリエステルを用いてよい。
【0045】
人工血管は、例えば動脈硬化等の病的な生体血管の代替、あるいはバイパスやシャントを形成するために用いられる医療機器である。人工血管の材料としては、布、ポリテトラフルオロエチレン、生体材料又は合成高分子材料等が挙げられるが、抗血栓性の付与が容易であることから布が好ましい。
【0046】
抗血栓性とは血液凝固を防ぎ、血栓形成を抑制する性質のことを指し、抗血栓性を付与する方法としては、ヘパリン又はヘパリン誘導体を材料の表面に付与する手法が挙げられる。
【0047】
人工血管の内皮形成能を評価する指標としては、例えば内皮化率が挙げられる。内皮化率は以下のようにして算出することができる。
【0048】
動物の血管に移植した人工血管を摘出し、病理標本観察によって、内表面に接着した内皮細胞層を観察する。内皮化率は下記の式4から算出できる。
内皮化率(%)= L1/L2×100 ・・・式4
L1:内皮細胞層の長軸方向長さ(cm)
L2:人工血管の長軸方向長さ(cm)
【0049】
人工血管を移植する動物としては、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ウシ及びヒツジが挙げられる。
【0050】
人工血管を移植する期間は1日~3年が好ましく、1週間~1年がより好ましく、2週間~6ヶ月がさらに好ましい。
【0051】
成形体に被覆されたブロック共重合体の性質については次のように解析することができる。例えばブロック共重合体をクロロホルム等の溶媒に浸漬させ、抽出液を乾燥することで得られる固体に対し、測定例1~5に挙げられるような測定を行う。
【0052】
本発明のブロック共重合体は、ブロック共重合体単位が直線状に連結した直鎖状ポリマーでも良いし、分岐して連結した分岐鎖状ポリマーであっても良い。
【0053】
また、本発明のブロック共重合体は、下記一般式(I)で示される。
【化13】
[式中、Aはポリヒドロキシアルカン酸ブロックを表し、Bはポリアルキレングリコールブロックを表し、Cはカルボキシル基を2以上有するリンカー分子を表し、DはC又は単結合を表す。B’はB又は2以上のBがCを介して連結したブロックを表す(ただし2以上のBがCを介して連結したブロックを分子内に必ず含む)。nは1以上の整数を表す。]
【0054】
一般式(I)で示されるブロック共重合体は、例えば、ポリヒドロキシアルカン酸ブロックと、一方の末端が水酸基であり、かつ、他方の末端がカルボキシル基であるポリアルキレングリコールブロックによる2ブロックの縮合又はポリヒドロキシアルカン酸ブロックと、両末端が水酸基であるポリアルキレングリコールブロックと、両末端がカルボキシル基であるポリアルキレングリコールブロックによる3ブロックの縮合によって合成できる。
【0055】
ポリヒドロキシアルカン酸ブロックが、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンのモノマー由来の繰り返し単位からなる、3成分のランダム共重合体の場合、一般式(I)中のAは下記一般式(II)で示される。なお、下記一般式(II)は、ランダム共重合体内の繰り返し単位を列挙したものである。
【化14】
[式中、p、q、r、及びnは1以上の整数を表す。]
【0056】
ポリヒドロキシアルカン酸ブロックが、乳酸、及びカプロラクトンのモノマー由来の繰り返し単位からなる、2成分のランダム共重合体の場合、一般式(I)中のAは下記一般式(III)で示される。なお、下記一般式(III)は、ランダム共重合体内の繰り返し単位を列挙したものである。
【化15】
[式中、p、q、及びnは1以上の整数を表す。]
【0057】
ポリアルキレングリコールブロックがエチレングリコール由来の繰り返し単位からなる場合、一般式(I)中のBは下記一般式(IV)で示される。
【化16】
[式中、s、t、及びmは1以上の整数を表し、Xはカルボキシル基を2以上有するリンカー分子に由来する構造を表す(ただし、Xを含むBを分子内に必ず含む)。]
【0058】
カルボキシル基を2以上有するリンカー分子として、例えば、セバシン酸を用いた場合、一般式(IV)中のXは、(CH2)8となる。
【0059】
一方の末端が水酸基であり、かつ、他方の末端がカルボキシル基であるポリアルキレングリコール及び両末端がカルボキシル基であるポリアルキレングリコールは、前述の通り、カルボキシル基を2以上有するリンカー分子とポリアルキレングリコール(両末端が水酸基)をあらかじめ反応させることで合成できる。
【0060】
ポリヒドロキシアルカン酸ブロック及びブロック共重合体は、例えば、環状モノマーを開始剤と触媒存在下で開環重合する方法(開環重合法)、触媒や縮合剤の存在下でブロック共重合体の両末端に同様のあるいは別のブロック共重合体を1分子ずつ、末端同士を介して結合させてゆく方法(マルチ化法)、又は開環重合法とマルチ化法を組み合わせた方法で合成できる。
【0061】
環状モノマーの例としては、D,L-ラクチド、L-ラクチド、グリコリド、D,L-ラクチド-コ-グリコリド、L-ラクチド-コ-グリコリド、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン-co-乳酸又はε-カプロラクトン-co-グリコール酸-co-乳酸等が挙げられる。
【0062】
開環重合法で製造する際の触媒としては、通常のゲルマニウム系、チタン系、アンチモン系又はスズ系触媒等の重合触媒が使用可能である。このような重合触媒の具体例としては、オクチル酸スズ(II)、三フッ化アンチモン、亜鉛粉末、酸化ジブチルスズ又はシュウ酸スズが挙げられる。触媒の反応系への添加方法は特に限定されるものではないが、原料仕込み時に原料中に分散させた状態で、あるいは減圧開始時に分散処理した状態で添加する方法を用いることが好ましい。触媒の使用量は使用するモノマーの全量に対して金属原子換算で0.01~3重量%であることが好ましく、0.05~1.5重量%であることがより好ましい。
【0063】
マルチ化法で製造する際の金属触媒としてはスズ、チタン、鉛、亜鉛、コバルト、鉄、リチウム又は希土類等の金属の、金属アルコキシド、金属ハロゲン化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩、硫酸塩又は酸化物が挙げられるが、重合反応性の点から、スズ化合物が好ましい。スズ化合物としては、例えば、スズ粉末、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、臭化スズ(II)、臭化スズ(IV)、エトキシスズ(II)、t-ブトキシスズ(IV)、イソプロポキシスズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、オクチル酸スズ(II)、ラウリン酸スズ(II)、ミリスチン酸スズ(II)、パルミチン酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、オレイン酸スズ(II)、リノール酸スズ(II)、アセチルアセトンスズ(II)、シュウ酸スズ(II)、乳酸スズ(II)、酒石酸スズ(II)、ピロリン酸スズ(II)、p-フェノールスルホン酸スズ(II)、ビス(メタンスルホン酸)スズ(II)、硫酸スズ(II)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、硫化スズ(II)、硫化スズ(IV)、酸化ジメチルスズ(IV)、酸化メチルフェニルスズ(IV)、酸化ジブチルスズ(IV)、酸化ジオクチルスズ(IV)、酸化ジフェニルスズ(IV)、酸化トリブチルスズ、水酸化トリエチルスズ(IV)、水酸化トリフェニルスズ(IV)、水素化トリブチルスズ、モノブチルスズ(IV)オキシド、テトラメチルスズ(IV)、テトラエチルスズ(IV)、テトラブチルスズ(IV)、ジブチルジフェニルスズ(IV)、テトラフェニルスズ(IV)、酢酸トリブチルスズ(IV)、酢酸トリイソブチルスズ(IV)、酢酸トリフェニルスズ(IV)、二酢酸ジブチルスズ、ジオクタン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)、マレイン酸ジブチルスズ(IV)、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、塩化トリブチルスズ(IV)、二塩化ジブチルスズ、三塩化モノブチルスズ、二塩化ジオクチルスズ、塩化トリフェニルスズ(IV)、硫化トリブチルスズ、硫酸トリブチルスズ、メタンスルホン酸スズ(II)、エタンスルホン酸スズ(II)、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(II)、ヘキサクロロスズ(IV)酸アンモニウム、ジブチルスズスルフィド、ジフェニルスズスルフィド、硫酸トリエチルスズ又はフタロシアニンスズ(II)等が使用可能である。
【0064】
またマルチ化法で製造する際の非金属触媒や縮合剤としては、4,4-ジメチルアミノピリジン、p-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウム、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-カルボニルジイミダゾール、1,1’-カルボニルジ(1,2,4-トリアゾール)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム=クロリドn水和物、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-(2-オクトキシ-2-オキソエチル)ジメチルアンモニウム、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、クロロトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、S-(1-オキシド-2-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルチウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-[2-オキソ-1(2H)-ピリジル]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-フルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩又はフルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロりん酸塩等が使用可能である。
【0065】
重合反応がリビング性を有する場合、すなわち重合物の末端から連続して重合反応を開始しうる場合には、重合反応が終了した後のブロック共重合体の溶液にモノマーを追添加する操作を繰り返すことで、マルチ化することができる。
【0066】
あるいは、ブロック共重合体同士は、ブロック共重合体の力学的特性に影響を与えない範囲においてリンカーを介してマルチ化しても良い。特に、複数のカルボキシル基又は複数のヒドロキシル基を有するリンカー、例えば、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を使用すると、リンカーが分岐点となった分岐鎖状のブロック共重合体を合成することができる。
【0067】
本明細書において、「繰り返し単位」とは、原則として、当該モノマーを含む2種以上のモノマーを重合して得られたブロック共重合体の化学構造中における、当該モノマーに由来する化学構造の反復単位を言う。
【0068】
例えば、乳酸(CH
3CH(OH)COOH)と、下記の化学式(IX)で示されるカプロラクトン(ε-カプロラクトン)とを重合し、乳酸とカプロラクトンのコブロック共重合体とした場合、乳酸由来の繰り返し単位は、下記の化学式(X)で示される構造をとり、カプロラクトン由来の繰り返し単位は、下記の化学式(XI)で示される構造をとる。
【化17】
【化18】
【化19】
【0069】
なお、例外として、モノマーとしてラクチド等の2量体を用いる場合には、「繰り返し単位」は当該2量体に由来する2回繰り返し構造のうちの1つを意味するものとする。例えば、下記化学式(XII)で示されるジラクチド(
L-(-)-ラクチド)とカプロラクトンとを重合した場合、ブロック共重合体の化学構造には、ジラクチド残基として示される構造が2回繰り返された構造が形成されるが、この場合にはそのうち1つの乳酸単位を「繰り返し単位」と捉え、ジラクチドに由来して「繰り返し単位」、すなわち乳酸残基が2つ形成されたと考えるものとする。
【化20】
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
(測定例1:核磁気共鳴(NMR)によるポリアルキレングリコールの質量比率測定)
精製したブロック共重合体を重クロロホルムに溶解し、1H-NMRにより測定して共重合体中の乳酸残基及びカプロラクトン残基及びエチレングリコール残基のモル比率をそれぞれ算出し、質量比率に換算した。結果を表3に示す。
機器名:JNM-EX270(日本電子株式会社製)
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
それぞれの残基のモル比率を算出する際、例えば、乳酸残基の場合には、メチン基であるα位の水素原子(化学シフト値:約5.2ppm)が特徴的であり、カプロラクトン残基の場合には、メチレン基であるα位の水素原子(化学シフト値が約2.3ppm)が特徴的であり、エチレングリコール残基の場合には、エチレン基の4つの水素原子(化学シフト値:約3.6ppm)が特徴的である。これら特徴的な水素原子の化学シフトに現れるシグナルの積分値に基づいて、各モル比率を算出することができる。
【0072】
(測定例2:示差走査熱量(DSC)によるχ値測定)
精製したブロック共重合体を減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥した。その後、ブロック共重合体を重量濃度が5%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン(登録商標)製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥させて、厚さ100μm±50μmのポリマーフィルムを得た。ポリマーフィルムをアルミニウムPANに採取し、示差走査熱量計(EXTAR 6000;セイコーインスツル株式会社製)でDSC法により下記の条件Aで測定し、融解熱を算出した。χ1は下記の式5、χ2は下記の式6から算出した。
χ1=(共重合体中のエチレングリコール残基単位重量当たりの融解熱)/{(エチレングリコール残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(共重合体中のエチレングリコール残基の重量分率)}×100 ・・・式5
[式中、エチレングリコール残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱は197J/gである。]
χ2=(共重合体中の乳酸残基単位重量当たりの融解熱)/{(乳酸残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱)×(共重合体中の乳酸残基の重量分率)}×100 ・・・式6
[式中、乳酸残基のみからなるホモポリマーの単位重量当たり融解熱は93J/gである。]
(条件A)
機器名:EXSTAR 6000(セイコーインスツル株式会社製)
温度条件:25℃→250℃(10℃/min)
標準物質:α-アルミナ
【0073】
(測定例3:引っ張り試験)
精製したブロック共重合体を減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥した。その後、ブロック共重合体を重量濃度が5%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン(登録商標)製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥させて、ブロック共重合体からなるフィルムを得た。
【0074】
得られたブロック共重合体からなるフィルムを短冊状(50mm×5mm×0.1mm)に切りだし、テンシロン万能試験機RTM-100(株式会社オリエンテック製)でJIS K6251(2010)に従い、長さ方向のチャック間距離が10mmになるよう取り付け、下記の条件Bで引張試験を測定し、ヤング率と最大点伸度と引っ張り強度を算出した。
(条件B)
機器名:テンシロン万能引張試験機RTM-100(株式会社オリエンテック製)
初期長:10mm
引張速度:500mm/min
ロードセル:50N
試験回数:5回
【0075】
(測定例4:分解試験1)
精製したブロック共重合体を減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥した。その後、ブロック共重合体を重量濃度が5%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン(登録商標)製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥させて、厚さ100μm±50μmのポリマーフィルムを得た。
【0076】
得られたポリマーフィルムを20mm×10mmに切り出し、リン酸緩衝液(10mL)の入ったプラスチックチューブにポリマーフィルム全体が浸るように入れ、これを47℃に設定したインキュベーター内で振盪させた。9日後、フィルムを取り出し、イオン交換水で洗浄した後、減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥した。その後、乾燥したポリマーフィルムのフィルム重量を測定した。なおアレニウスの式に従い、47℃での試験を3倍加速条件とし、9日後のデータは換算時間で37℃における4週間後のものとして扱う。分解性を表すパラメーターとして、4週間後のブロック共重合体重量(%)を、下記の式5から算出した。
4週間後のブロック共重合体重量(%)=100×w/w0 ・・・式5
w0:フィルムの試験前乾燥重量
w :フィルムの試験後乾燥重量
【0077】
(測定例5:耐キンク性試験)
筒状体に対し非内圧下でループを形成し、ループに対して半径がR(mm)のチューブを挿入し、ループ径を徐々に小さくしていった。ループ径がチューブ径に達するまでに筒状体が座屈するかどうかを確認し、座屈しなかった場合、その筒状体のキンク半径をR(mm)以下であるとした。
【0078】
(測定例6:固体NMRによるカルボニル炭素の炭素核緩和時間T1ρ測定)
精製したブロック共重合体を減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥した。その後、ブロック共重合体を重量濃度が5%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン(登録商標)製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥させて、厚さ100μm±50μmのポリマーフィルムを得た。ポリマーフィルムを5mmφジルコニアローターに充填し、固体NMRで下記条件Cにて測定し、カルボニル炭素の炭素核緩和時間T1ρを求めた。
(条件C)
機器名:CMX300 Infinity(Chemagnetics社製)
測定法:CP/MAS法
測定核周波数:75.2MHz(13C核)
スペクトル幅:30kHz
パルス幅:4.2μsec(90°パルス)
パルス繰り返し時間:ACQTM=0.03413sec,PD=5sec
コンタクトタイム:1.0msec(CP/MAS)
観測ポイント:1024
データポイント:8192
基準物質:ポリジメチルシロキサン(内部基準:1.56ppm)
温度:室温(約22℃)
試料回転数:5kHz
雰囲気:乾燥空気
【0079】
上記固体NMRにより観測されたピークのうち、化学シフト値170±5ppmのピークを、それぞれの残基のカルボニル炭素のピークとし、得られたピークから炭素核緩和時間T1ρを求めることで、カルボニル炭素の炭素核緩和時間T1ρの値を得た。
【0080】
(測定例7:分解試験2)
精製したブロック共重合体を減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥した。その後、ブロック共重合体を重量濃度が5%になるようにクロロホルムに溶解させ、その溶液をテフロン(登録商標)製シャーレ上に移して、常圧、室温下で1昼夜乾燥させた。これを減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥させて、厚さ100μm±50μmのポリマーフィルムを得た。
【0081】
得られたポリマーフィルムを20mm×10mmに切り出し、アジ化ナトリウム(0.1重量%)が溶解したヒト血清(10mL)(プールヒト血清;コスモ・バイオ株式会社製)の入ったプラスチックチューブにポリマーフィルム全体が浸るように入れ、これを47℃に設定したインキュベーター内で振盪させた。9日後、フィルムを取り出し、イオン交換水で洗浄した後、減圧(100Pa)、室温下で1昼夜乾燥した。その後、乾燥したポリマーフィルムをクロロホルムに溶解し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC(登録商標)-13HP;ADVANTEC社製)を通過させて不純物等を除去した後に、下記条件Dに従い、GPCによりブロック共重合体の重量平均分子量を測定した。
(条件D)
機器名:Prominence(株式会社島津製作所製)
移動相:クロロホルム(HPLC用)(和光純薬工業株式会社製)
流速:1mL/min
カラム:TSKgel(登録商標) GMHHR-M(φ7.8mm×300mm;東ソー株式会社製)
検出器:UV(254nm)、RI
カラム、検出器温度:35℃
標準物質:ポリスチレン
【0082】
なおアレニウスの式に従い、47℃での試験を3倍加速条件とし、9日後のデータは換算時間で37℃における4週間後のものとして扱う。分解性を表すパラメーターとして、4週間後のブロック共重合体重量平均分子量(%)を、下記の式8から算出した。
4週間後のブロック共重合体重量平均分子量(%)=100×M/M0 ・・・式6
M0:フィルムの試験前の重量平均分子量
M :フィルムの試験後の重量平均分子量
【0083】
(実施例1)
50.0gのL-ラクチド(PURASORB(登録商標) L;PURAC社製)と、38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とを、モノマーとしてセパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.29gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、開始剤として90μLのイオン交換水を添加し、90℃で1時間、助触媒反応を行ったあと、150℃で6時間、共重合反応させて、粗ポリヒドロキシアルカン酸を得た。
【0084】
得られた粗ポリヒドロキシアルカン酸を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥してポリヒドロキシアルカン酸を得た。
【0085】
得られたポリヒドロキシアルカン酸を11.7g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)を1.6g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,200)を1.7g混合し、触媒として0.56gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウム(非特許文献1のMessmore,Benjamin W. et al.,Journal of the American Chemical Society,2004,126,14452.に記載の方法で合成し、他の実施例及び比較例でも合成品を用いた。)と、0.20gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を添加した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、7mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である2.06gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0086】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製された実施例1のブロック共重合体を得た。
【0087】
(実施例2)
ポリヒドロキシアルカン酸の添加量を10.1g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)の添加量を2.5g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,200)の添加量を2.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で作成した。具体的には、実施例1と同様の方法で得られたポリヒドロキシアルカン酸を10.1g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールを2.5g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコールを2.5g混合し、触媒として0.56gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.20gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を添加した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、7mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である2.06gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0088】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製された実施例2のブロック共重合体を得た。
【0089】
(実施例3)
ポリヒドロキシアルカン酸の添加量を6.8g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)の添加量を4.1g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,200)の添加量を4.2gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で作成した。具体的には、実施例1と同様の方法で得られたポリヒドロキシアルカン酸を6.8g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールを4.1g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコールを4.2g混合し、触媒として0.56gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.20gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を添加した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、7mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である2.06gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0090】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製された実施例3のブロック共重合体を得た。
【0091】
(比較例1)
ポリヒドロキシアルカン酸の添加量を15.0gに変更し、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)及び両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,200)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で作成した。具体的には、実施例1と同様の方法で得られたポリヒドロキシアルカン酸15.0gに対し、触媒として0.56gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.20gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を添加した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、7mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である2.06gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0092】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製された比較例1のブロック共重合体を得た。
【0093】
(実施例4)
ポリヒドロキシアルカン酸の添加量を13.4g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)の添加量を0.8g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,200)の添加量を0.8gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で作成した。具体的には、実施例1と同様の方法で得られたポリヒドロキシアルカン酸を13.4g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールを0.8g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコールを0.8g混合し、触媒として0.56gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.20gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を添加した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、7mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である2.06gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0094】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製された実施例4のブロック共重合体を得た。
【0095】
(比較例2)
ポリヒドロキシアルカン酸の添加量を3.5g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)の添加量を5.7g、両末端カルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,200)の添加量を5.8gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で作成した。具体的には、実施例1と同様の方法で得られたポリヒドロキシアルカン酸を3.5g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールを5.7g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコールを5.8g混合し、触媒として0.56gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.20gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を添加した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、7mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である2.06gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0096】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製された比較例2のブロック共重合体を得た。
【0097】
(比較例3:一般式(A)で示されるブロック共重合体)
【0098】
50.0gのL-ラクチド(PURASORB(登録商標) L;PURAC社製)と38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とをモノマーとして、セパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.29gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、開始剤として両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)を26.8g添加し、150℃で24時間、共重合反応させて、粗共重合体を得た。
【0099】
得られた粗共重合体を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥して比較例3のブロック共重合体を得た。
【0100】
(比較例4:一般式(A)で示されるブロック共重合体)
【0101】
両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールの重量平均分子量を20,000に変更した以外は、比較例3と同様の方法で作成した。具体的には、50.0gのL-ラクチド(PURASORB(登録商標) L;PURAC社製)と38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とをモノマーとして、セパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.29gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、開始剤として両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量20,000)(シグマアルドリッチ社製)を26.8g添加し、150℃で24時間、共重合反応させて、粗共重合体を得た。
【0102】
得られた粗共重合体を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥して比較例4のブロック共重合体を得た。
【0103】
(比較例5:一般式(A)で示されるブロック共重合体)
両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールの重量平均分子量を20,000に、添加量を53.6gに変更した以外は、比較例3と同様の方法で作成した。具体的には、50.0gのL-ラクチド(PURASORB(登録商標) L;PURAC社製)と38.5mLのεーカプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)とをモノマーとして、セパラブルフラスコに採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、14.5mLのトルエン(超脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した触媒である0.29gのオクチル酸スズ(II)(和光純薬工業株式会社製)、開始剤として両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量20,000)(シグマアルドリッチ社製)を53.6g添加し、150℃で24時間、共重合反応させて、粗共重合体を得た。
【0104】
得られた粗共重合体を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1400mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物を70℃で減圧乾燥して比較例5のブロック共重合体を得た。
【0105】
(比較例6:一般式(B)で示されるブロック共重合体)
比較例3で得られたブロック共重合体15.0gと0.14gのセバシン酸を採取し、触媒である0.98gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.36gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、13mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である3.69gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0106】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として比較例6のブロック共重合体を得た。
【0107】
(比較例7:一般式(C)で示されるブロック共重合体)
比較例3で得られた共重合体10.2gと両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,200)を4.74g採取し、触媒である0.66gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.25gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を採取した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、13mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である2.49gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0108】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として比較例7のブロック共重合体を得た。
【0109】
(比較例8:一般式(D)で示されるブロック共重合体)
実施例1で得られたポリヒドロキシアルカン酸10.1gと両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)を4.95gと0.10gのセバシン酸を採取し、触媒である0.93gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.34gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を添加した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、13mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である3.48gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0110】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として比較例8のブロック共重合体を得た。
【0111】
(比較例9)
ポリヒドロキシアルカン酸の添加量を10.1g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)(シグマアルドリッチ社製)の添加量を4.4gに変更するとともに、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,200)を1.7g添加する代わりに、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量1,200)を0.5g添加した以外は、実施例1と同様の方法で作成した。具体的には、実施例1と同様の方法で得られたポリヒドロキシアルカン酸を10.1g、両末端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量10,000)を4.4g、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(重量平均分子量1,200)を0.5g混合し、触媒として0.56gのp-トルエンスルホン酸4,4-ジメチルアミノピリジニウムと、0.20gの4,4-ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業株式会社製)を添加した。これらをアルゴン雰囲気下とし、28mLのジクロロメタン(脱水)(和光純薬工業株式会社製)に溶解し、7mLのジクロロメタンに溶解した縮合剤である2.06gのジシクロヘキシルカルボジイミド(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温で2日間縮合重合させた。
【0112】
反応混合物に60mLのクロロホルムを添加し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この沈殿物を100mLのクロロホルムに溶解し、攪拌状態にある1000mLのメタノールに滴下して、沈殿物を得た。この操作を2回繰り返し、沈殿物として精製された比較例9のブロック共重合体を得た。
【0113】
実施例1~4及び比較例1~2について、ポリヒドロキシアルカン酸の添加量とポリエチレングリコールの添加量を表1に示した。
【0114】
【0115】
また、比較例3~5について、ポリエチレングリコールブロックの重量平均分子量と添加量を表2に示した。
【0116】
【0117】
また、実施例1~4及び比較例1~9で得られたブロック共重合体の各種測定結果を表3~5に示す。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
(実施例5)
実施例1のブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、重量濃度が20%の溶液を調製した。この溶液をポリエステル繊維から構成される、透水性を有する筒状体(長さ10cm、内径3mm)に塗布し、100μmの被覆層を形成させて実施例5の被覆された筒状体を得た。測定例5に記載の方法に従い測定を行うと、キンク半径は8mm以下であった。
【0122】
続いて、実施例5の被覆された筒状体を長さ3cmにカットし、透水性を、ISO7198に則り、筒状体の内表面に16kPaの圧力をかけたときの筒状体の外側に流れ出てくる水の量(mL)を単位面積(cm2)及び単位時間(min.)で除して測定すると、実施例5の被覆された筒状体の透水量は0(mL/cm2/min.)であった。
【0123】
(実施例6)
実施例2のブロック共重合体を用いた以外は、実施例5と同様の方法で作成した。具体的には、実施例2のブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、重量濃度が20%の溶液を調製した。この溶液をポリエステル繊維から構成される、透水性を有する筒状体(長さ10cm、内径3mm)に塗布し、100μmの被覆層を形成させて実施例6の被覆された筒状体を得た。実施例6の被覆された筒状体のキンク半径を測定例5に従い測定すると、キンク半径は8mm以下であり、透水性を、ISO7198に則り、筒状体の内表面に16kPaの圧力をかけたときの筒状体の外側に流れ出てくる水の量(mL)を単位面積(cm2)及び単位時間(min.)で除して測定すると、実施例6の被覆された筒状体の透水量は0(mL/cm2/min.)であった。
【0124】
(実施例7)
実施例3のブロック共重合体を用いた以外は、実施例5と同様の方法で作成した。具体的には、実施例3のブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、重量濃度が20%の溶液を調製した。この溶液をポリエステル繊維から構成される、透水性を有する筒状体(長さ10cm、内径3mm)に塗布し、100μmの被覆層を形成させて、実施例7の被覆された筒状体を得た。実施例7の被覆された筒状体のキンク半径を測定例5に従い測定すると、キンク半径は14mm以下であり、透水性を、ISO7198に則り、筒状体の内表面に16kPaの圧力をかけたときの筒状体の外側に流れ出てくる水の量(mL)を単位面積(cm2)及び単位時間(min.)で除して測定すると、実施例7の被覆された筒状体の透水量は0(mL/cm2/min.)であった。
【0125】
(実施例8)
実施例4のブロック共重合体を用いた以外は、実施例5と同様の方法で作成した。具体的には、実施例4のブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、重量濃度が20%の溶液を調製した。この溶液をポリエステル繊維から構成される、透水性を有する筒状体(長さ10cm、内径3mm)に塗布し、100μmの被覆層を形成させて、実施例8の被覆された筒状体を得た。実施例8の被覆された筒状体のキンク半径を測定例7に従い測定すると、キンク半径は8mm以下であり、透水性を、ISO7198に則り、筒状体の内表面に16kPaの圧力をかけたときの筒状体の外側に流れ出てくる水の量(mL)を単位面積(cm2)及び単位時間(min.)で除して測定すると、実施例8の被覆された筒状体の透水量は0(mL/cm2/min.)であった。
【0126】
(試験例1)
実施例6の被覆された筒状体をイヌの頸動脈に移植し、3ヶ月後摘出した。摘出後の筒状体の病理標本観察を行ったところ、被覆層は分解により断片化している様子が観察され、上記式4により、実施例6の被覆された筒状体の内皮化率を算出すると63.2%であった。
【0127】
(比較例10)
ゼラチン(新田ゼラチン社製)を60℃の水に溶解し、重量濃度が30%の溶液を調製した。この溶液を40℃に加温した状態で、ポリエステル繊維から構成される、透水性を有する筒状体(長さ3cm、内径3mm)に塗布し、100μmの被覆層を形成した。これを0.2%グルタルアルデヒド水溶液に室温で30分浸漬したあと、洗浄を行い、比較例10の被覆された筒状体を得た。比較例10の被覆された筒状体をイヌの頸動脈に移植し、3ヶ月後摘出した。摘出後の筒状体の病理標本観察を行ったところ、被覆層は断片化せず残存したままであり、上記式4により、比較例10の被覆された筒状体の内皮化率を算出すると47.3%であった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、例えば、医療用の被覆材料、血管塞栓材料、縫合糸又はDDS担体等の医療用途に利用できる。