(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】異物の検査方法、検査装置、フィルムロール及びフィルムロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20230131BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20230131BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N21/892 A
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2019523885
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2019009885
(87)【国際公開番号】W WO2019176903
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018047922
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 充
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525691(JP,A)
【文献】特開2003-315275(JP,A)
【文献】特開2001-041898(JP,A)
【文献】特開平09-133638(JP,A)
【文献】国際公開第2006/137385(WO,A1)
【文献】特表2010-534834(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0088889(US,A1)
【文献】特開2008-051583(JP,A)
【文献】特開2017-058336(JP,A)
【文献】特開昭58-173456(JP,A)
【文献】特開2017-049250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01B 15/00 - G01B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールに混入する異物の検査方法であって、
前記フィルムロールに巻き取られる前の搬送中のフィルムに対し光学撮像部を使用して前記フィルム上の異物を検知し、前記フィルムにおける当該異物の位置情報A(平面座標)を少なくとも含む異物情報を取得する第1の異物検知工程と、
前記第1の異物検知工程の後、前記フィルムをコアにフィルムロールとして巻き取る工程と、
前記位置情報A(平面座標)での前記異物の位置を、巻き取り後の前記フィルムロールにおける位置情報B(空間座標)での位置情報に変換する変換工程と、
前記フィルムロールに対し放射線撮像部を使用して、検知・評価対象の異物に対して当該異物の位置情報B(空間座標)に基づいて、撮像焦点が合うように、放射線撮像部の焦点合わせを行なうと共に、前記放射線撮像部によって、放射線を照射して、対象の異物の検知とともに当該異物の評価(キャラクタリゼーション)を行う第2の異物検知工程と、を含む異物の検査方法。
【請求項2】
前記第1の異物検知工程において複数の異物が検知された場合に、前記第2の異物検知工程において、前記複数の異物の各位置情報B(空間座標)に対して順次、撮像焦点を合わせて各異物を検知し評価する、請求項1に記載の異物の検査方法。
【請求項3】
前記光学撮像部が直接透過光学系であって、前記第1の異物検知工程において暗欠点として検出された異物のみに対応して前記第2の異物検知工程を実施する、請求項1または2に記載の異物の検査方法。
【請求項4】
前記異物情報は検出された前記異物の大きさに関する情報を含み、予め設定されたしきい値以上である異物のみに対応して前記第2の異物検知工程を実施する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異物の検査方法。
【請求項5】
前記第2の異物検知工程の後に、前記第2の異物検知工程での評価結果と、前記異物の前記位置情報A(平面座標)での位置とを対応付けて検査結果として保存する検査結果マッピング工程を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の異物の検査方法。
【請求項6】
前記検査結果マッピング工程において対応付けられた前記検査結果を出力する、請求項5に記載の異物の検査方法。
【請求項7】
前記フィルムはバッテリーセパレータフィルムである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の異物の検査方法。
【請求項8】
前記変換工程の前に、
フィルムロールに巻き取られたフィルムの総巻き長を測定する工程と、
前記コアの外径を測定する工程と、
フィルムを巻き取ったフィルムロールの外径を測定する工程と、
前記フィルムロールにおけるフィルムの巻き数を測定する工程と、のうち少なくとも3工程を行い、前記変換工程は、前記少なくとも3工程にて得られた測定結果に基づいて行われるものである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の異物の検査方法。
【請求項9】
フィルムを巻き取ったフィルムロールに混入する異物を検査する検査装置であって、
前記フィルムロールに巻き取られる前の搬送中のフィルムを撮像する光学撮像部と、
前記光学撮像部での撮像画像から異物を検知する画像処理部と、
前記画像処理部で検知された異物について、前記フィルムにおける位置情報A(平面座標)での当該異物の位置を少なくとも含む異物情報を格納する記憶部と、
前記位置情報A(平面座標)での前記異物の位置を、巻き取り後の前記フィルムロールにおける位置情報B(空間座標)での前記異物の位置に変換する変換部と、
放射線源から放射される放射線を検出して撮像を行なう放射線撮像部と、
変換後の前記位置情報B(空間座標)での前記異物の位置に撮像焦点が合うように、前記フィルムロールに対して前記放射線源を相対的に移動させて放射線撮像部の焦点合わせを行なう焦点合わせ部と、
前記放射線撮像部の放射線強度に基づいて前記異物を検知して評価する評価部と、
を有する、
異物を検査する検査装置。
【請求項10】
前記フィルムロール内の異物が金属であるか非金属であるかを判別する評価部を備えた、請求項9に記載の
異物を検査する検査装置。
【請求項11】
予め実行された光学系の異物検査の結果による前記フィルムにおける前記異物の位置及び前記フィルムロールにおける前記異物の位置の少なくとも一方と、前記異物を評価した結果とを対応付けて出力する出力部を備えた、請求項9または10に記載の異物を検査する検査装置。
【請求項12】
フィルムを巻き取ったフィルムロールであって、
前記フィルムロールに巻き取られる前の搬送中のフィルムに対して光学的に行なわれた異物検知の結果に基づく異物の位置と、前記フィルムロールに対して放射線を照射して行なわれた前記異物の評価結果とを対応付けて記載した検査付表を有するフィルムロール。
【請求項13】
フィルムを巻き取る工程によりフィルムロールを製造する工程を含むフィルムロールの製造方法であって、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の異物の検査方法により異物の検査を行う工程を含み、
前記第1の
異物検知工程は、フィルムを巻き取る工程より前に行われ、
前記第2の
異物検知工程は、フィルムを巻き取る工程の後に行われる、フィルムロールの製造方法。
【請求項14】
前記フィルムを巻き取る工程は、フィルム原反からスリットしたフィルムを巻き取る工程である、請求項13に記載のフィルムロールの製造方法。
【請求項15】
フィルムを巻き取ったフィルムロールに混入する異物を検査する検査装置であって、
巻取前のフィルムに対して予め実行された異物検査の結果によるフィルムに対する平面座標系での異物の位置情報A(平面座標)を格納するための記憶部と、
前記位置情報A(平面座標)での前記異物の位置を、巻き取り後の前記フィルムロールにおける位置情報B(空間座標)での前記異物の位置に変換する変換部と、
放射線源から放射される放射線を検出して撮像を行なう放射線撮像部と、
変換後の前記位置情報B(空間座標)での前記異物の位置に撮像焦点が合うように、前記フィルムロールに対して前記放射線源を相対的に移動させて放射線撮像部の焦点合わせを行なう焦点合わせ部と、
前記放射線撮像部の放射線強度に基づいて前記異物を検知して評価する評価部とを有する、異物を検査する検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを巻き取ったフィルムロールに混入する異物を検査する方法及び装置と、フィルムロール及びその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のポリマーフィルムなどのフィルムは、一般に、フィルム原反として、ロールに巻かれた状態でこのフィルムを使用するメーカーに供給される。特に、フィルム原反よりも幅の小さいフィルムを使用する場合には、幅広である原反ロールからフィルムを巻出して所望のフィルム幅とするスリット加工を行い、スリット加工されたフィルムをロールに巻き取ってフィルムロールとする。スリット加工されたフィルムを使用するときは、フィルムロールから改めてフィルムを巻出して使用する。また、各種の表面処理がなされたフィルムを使用する場合には、未処理フィルムの原反からフィルムを巻出して表面処理を行い、処理後のフィルムを巻き取ってフィルムロールとする。表面処理されかつスリット加工されたフィルムを必要とするときは、表面処理されたフィルムをフィルムロールに巻取り、その後、このフィルムロールからフィルムを巻出してスリット加工を行ない、再度、フィルムロールに巻き取ることが一般的である。
【0003】
このような過程を経て得られたフィルムロールからフィルムを巻出して使用する場合、フィルムロール中に混入する微小な異物が問題となることがある。そこで、フィルムロール中に混入する異物を検出することが求められる。例えば、フィルムロールから巻出したフィルムをリチウムイオン二次電池の正極と負極との間に挿入されるバッテリーセパレータフィルムとして使用する場合、フィルムロール中に混入していた異物はバッテリーセパレータフィルム上の異物となるが、この異物が例えば微小な金属片であれば、リチウムイオン二次電池における正極と負極との間の短絡を引き起こしたり、電解液に溶解して電池特性を劣化させたりする。そこで、フィルムロール中に混入する微小な異物を検出する検査方法及び装置が求められている。バッテリーセパレータフィルム向けにおいては、100μm以下の大きさ、例えば、数十μm程度の金属異物を確実に検出することが必要である。もっとも、電気伝導性を有しない非金属の異物の場合には、より大きな異物であっても問題にならない場合もあるから、バッテリーセパレータフィルム用のフィルムロールでの異物の検出に際しては異物の大きさとその材質あるいは種類も判別できることが好ましい。
【0004】
また、フィルムロール中のどこに異物が存在するかを知ることができれば、異物が存在しない区間のフィルムを使用することができるようになって、フィルムの有効利用を図ることもできる。
【0005】
フィルムロール中に異物が含まれているか否かを検出する方法として、フィルムロールにフィルムを巻き取る直前の搬送中のフィルムを可視光により光学的に検査する方法がある。この方法では、異物の種類までを判別することはできない。そこで特許文献1は、光学的に検査するときに、可視光と赤外光の両方を使用し、可視光での反射光と赤外光での反射光とを用いて異物の種類を判別することを記載している。しかしながら特許文献1の方法は、金属異物を他の異物から確実に判別できるわけではない上に、可視光での検出位置と赤外光での検出位置とを厳密に位置合わせする必要がある。
【0006】
フィルムロール中の異物を検出するものではないが、特許文献2は、ロール状に巻かれたラベル連続体において継ぎ目の数を正確に計数するために、ロールの中心軸(巻きの中心軸)に平行な方向にX線源からロールに対してX線を照射し、ラベル連続体のロールを透過したX線の強度を測定する方法を開示している。この方法を用いてフィルムロール中の異物を検出する場合には、ロールの中心軸に垂直な面内でX線源とX線検出器(X線カメラ)とをフィルムロールに対して相対的に走査させ、どの位置で透過X線量が低下したかを記録することになる。しかしながら、高い検出精度で検査するためには、X線源と異物との距離が一定であることが必要であるから、ロールの中心軸に平行な方向にもX線源を移動させ、走査させなければならない。そのためこの方法では、フィルムロール中の例えば100μm角の金属異物を検出しようとするとX線の照射視野を例えば10mm角以下の大きさとしなければならないため、フィルムロールの全体にわたって検査を行なう場合に検査時間が極めて長大なものとなり、現実的に検査を実行することが難しくなる。仮にフィルムロールの全体にわたって検査したとしても、検査時間が長いため、1つのX線源の寿命の範囲内で検査できるフィルムロールの本数も限られてしまう。
【0007】
特許文献3は、半導体装置用の金属パターンが形成されたフィルムであるCSP(チップサイズパッケージ)テープにおける金属パターンの欠けや金属異物の付着などの欠陥を検査する装置であって、巻出されて搬送されているCSPテープを光学的に撮像して検査する光学検査装置と、光学検査装置よりもCSPテープの搬送方向下流側にてCSPテープにX線を照射して検査するX線検査装置とを備え、X線検査装置を通過したCSPテープがロールに巻き取られる装置を開示している。この装置では、光学検査装置によってテープ上の欠陥を検出し、続いて、光学検査装置で検出されたCSPテープ上の欠陥位置をX線検査装置で検査し、欠陥が金属異物の付着によるものかどうかを判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5673621号明細書
【文献】特開2015-44602号公報
【文献】特許第5126645号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に記載された装置は、搬送中のフィルムあるいはテープ上の金属異物を判別して検出できるものであるが、X線検査装置では10m/分以上の高速で搬送される物体における微小な欠陥を検出することは困難であるので、フィルムあるいはテープの搬送速度を制限せざるを得ない。即ち、現実的に適用可能なレベルでフィルムを検査するためには、例えば数十m/分から100m/分でフィルムを搬送する必要があるが、特許文献3に記載された装置では、このような高い搬送速度には対応できない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高速で搬送されるフィルムを巻き取ったフィルムロールに含まれる微小な異物を、例えば金属異物であるか否かを含めて確実に検出することができる検査方法と、この検査方法に用いられる検査装置と、この検査方法を経て製造されるフィルムロールと、フィルムロールの製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、フィルムロールに混入する異物の検査方法であって、フィルムロールに巻き取られる前の搬送中のフィルムに対し光学撮像部を使用して前記フィルム上の異物を検知し、前記フィルムにおける当該異物の位置情報A(平面座標)を少なくとも含む異物情報を取得する第1の異物検知工程と、前記第1の異物検知工程の後、前記フィルムをコアにフィルムロールとして巻き取る工程と、前記位置情報A(平面座標)での前記異物の位置を、巻き取り後の前記フィルムロールにおける位置情報B(空間座標)での位置情報に変換する変換工程と、前記フィルムロールに対し放射線撮像部を使用して、検知・評価対象の異物に対して当該異物の位置情報B(空間座標)に基づいて、撮像焦点が合うように、放射線撮像部の焦点合わせを行なうと共に、前記放射線撮像部によって、放射線を照射して、対象の異物の検知とともに当該異物の評価(キャラクタリゼーション)を行う第2の異物検知工程と、を含む異物の検査方法である。
【0012】
さらに、前記第2の異物検知工程の後に、前記第2の異物検知工程での評価結果と、前記異物の前記位置情報A(平面座標)での位置とを対応付けて検査結果として保存する検査結果マッピング工程を含む、異物の検査方法を提供する。さらに、前記変換工程の前に、フィルムロールに巻き取られたフィルムの総巻き長を測定する工程と、前記コアの外径を測定する工程と、フィルムを巻き取ったフィルムロールの外径を測定する工程と、前記フィルムロールにおけるフィルムの巻き数を測定する工程と、のうち少なくとも3工程を行い、 前記変換工程は、前記少なくとも3工程にて得られた測定結果に基づいて行われる、異物の検査方法を提供する。
【0013】
また本発明は、フィルムを巻き取ったフィルムロールに混入する異物を検査する検査装置であって、前記フィルムロールに巻き取られる前の搬送中のフィルムを撮像する光学撮像部と、前記光学撮像部での撮像画像から異物を検知する画像処理部と、前記画像処理部で検知された異物について、前記フィルムにおける位置情報A(平面座標)での当該異物の位置を少なくとも含む異物情報を格納する記憶部と、前記位置情報A(平面座標)での前記異物の位置を、巻き取り後の前記フィルムロールにおける位置情報B(空間座標)の前記異物の位置に変換する変換部と、放射線源から放射される放射線を検出して撮像を行なう放射線撮像部と、変換後の前記位置情報B(空間座標)での前記異物の位置に撮像焦点が合うように、前記フィルムロールに対して前記放射線源を移動させて放射線撮像部の焦点合わせを行なう焦点合わせ部と、前記放射線撮像部の放射線強度に基づいて前記異物を検知して評価する評価部とを有する、検査装置である。
【0014】
また本発明は、フィルムを巻き取ったフィルムロールであって、前記フィルムロールに巻き取られる前の搬送中のフィルムに対して光学的に行なわれた異物検知の結果に基づく異物の位置と、前記フィルムロールに対して放射線を照射して行なわれた前記異物の評価結果とを対応付けて記載した検査付表を有するフィルムロールを提供する。
【0015】
また本発明は、フィルムを巻き取る工程によりフィルムロールを製造する工程を含むフィルムロールの製造方法であって、本発明の異物の検査方法により異物の検査を行う工程を含み、前記第1の異物検知工程は、フィルムを巻き取る工程より前に行われ、前記第2の異物検知工程は、フィルムを巻き取る工程の後に行われる、フィルムロールの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルムロールに巻き取られる前の搬送中のフィルムに対して光学的な異物検知を行い、その異物検知の結果に基づいてフィルムロールにおける異物の位置を算出し、その異物に撮像焦点を合わせて放射線によって異物を検知するので、例えば異物が金属か非金属かを評価するために放射線によって検査される領域を最小にして精度よく異物の検知と評価をすることができる。これにより、高速で搬送されるフィルムを巻き取ったフィルムロールに混入する微小な異物を、短時間で、例えば金属異物であるか否かを含めて確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の一形態の異物検査装置を示す構成図である。
【
図2】フィルムロールにおける座標変換手法の一例を説明する概念図である。
【
図4】放射線撮像部での焦点合わせを説明する作用図である。
【
図5】フィルムロールにおける、直交座標系の検査領域を示す概略図である。
【
図6】フィルムロールにおける、極座標系の検査領域を示す概略図である。
【
図7】フィルムロールにおける、各駆動量を取得するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において開示する構成と特徴について、理解を助けるために、まず概略をおおまかに説明する。搬送中のフィルムに対して異物を検知する第1の異物検知工程を行い、検知された異物の位置情報(平面座標)を少なくとも含む、異物情報を得る。フィルムはコアに巻き取られフィルムロールとされる。そして、該異物の位置情報(平面座標)は、前記異物情報および巻取後のフィルムロール情報等をもとに、フィルムロール中での当該異物の位置情報(空間座標)に変換される(変換工程)。その際、当該異物の位置情報(空間座標)は、好ましくフィルムロールでの第2の検査に適した位置情報パラメーターに変換される。この変換工程により、フィルムに混入した異物が、フィルムロールのどの部分に存在するかが特定され、フィルムロールに対して行われる第2の異物検知工程における検査部位が決定される。該異物の位置情報(空間座標)でもって決定された検査部位に対して、異物の位置情報(空間座標)を利用してそこに存在する異物に焦点が合うように焦点合わせを行うとともに、第2の異物検知工程を行い、当該異物の検知とともに評価(キャラクタリゼーション)を行う。これにより、第2の異物検知工程では、フィルムロール全体をあらためて検査する必要がなく、混入した異物の検査を行うことができるので、第2の異物検知工程の検査時間が大幅に短縮される。さらに、フィルムロールに混入した当該異物に放射線撮像部の焦点を合せるので、微小な異物を精度よく検知して評価を行うことができる。また、フィルムの巻取工程とは独立して行われるので、生産性を低下させることもない。このようにして、高速で搬送されるフィルムを巻き取ったフィルムロールに含まれる微小な異物を、例えば金属異物であるか否かを含めて確実に精度よく検出して評価することができる検査方法が提供される。
【0019】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の一形態の異物検査装置の構成を示す図である。この異物検査装置は、フィルムを巻き取ったフィルムロール内の異物を検知してその異物が例えば金属であるか非金属であるかを評価するものであり、例えば、二次電池の正極と負極との間に挿入されるバッテリーセパレータフィルムの製造工程において用いられるものである。
【0020】
図1において、バッテリーセパレータフィルムなどの透光性のフィルム10の原反が巻出しロール11に巻かれている。フィルム10の厚さは、3~30μmであり、好ましくは3~20μmである。フィルム10の原反は、巻出しロール11から巻出され、図示矢印方向(左側から右側に向かう方向)に搬送され、スリッター15を介して所定の幅にスリット加工され、そのスリット後の幅にて個別にフィルムロール12に巻き取られるようになっている。なお、
図1ではフィルムロール12を一つだけ描画しているが、複数のフィルムロール12が配置されている。フィルム10の最終端は、例えばテープなどの固定具によりフィルムロール12の外周部に固定される。フィルムロール12は、図示しない巻取りモータにより回転駆動される。フィルムロール12では、その巻取りモータの回転軸に接続される円柱状のコア13上に、フィルム10が巻き取られるようになっている。このコア13における両側面のうちいずれか一方には、
図2に示すように、フィルム10の巻き取り開始位置や巻回方向を識別するためのマーカー71が識別部として取付けられている。マーカー71は、この例では金属板により構成されているが、後述するように、非金属例えば樹脂材などであっても良い。
【0021】
このマーカー71は、コアの側面である円の中心部から外周部側に外れた位置に設けられており、従ってマーカー71に近接する位置からフィルム10の巻き取りを開始すると、フィルム10の巻き取り後においてもフィルム10の巻き取り開始位置が判別できる。また、コア13は、マーカー71が付された端部が巻出しロール11側から見て一方側(右側あるいは左側)に配置されるように構成されており、マーカー71に対するフィルム10の巻き取り方向が多数のフィルムロール12において揃う。スリッター15を通って搬送されるフィルム10の搬送速度は、数十m/分から100m/分である。フィルムロール12に巻き取られるフィルム10は、巻取りの際の搬送方向を長手方向(MD方向)とする長尺のものである。ここで、フィルム10の搬送方向に直交する方向をフィルム10の幅方向(TD方向)と呼ぶ。
【0022】
スリッター15とフィルムロール12との間には、巻出しロール11からフィルムロール12に向けて搬送されているフィルム10に付着する異物を光学的に検知するために、可視光を発生する光源21と光学撮像部であるカメラ22とがフィルム10を挟んで配置されており、光源21及びカメラ22による光学撮像部が構成されている。光学撮像部は、フィルム10の幅方向に亘って異物を検知するために、幅方向に沿って複数個所に設けられている。光学撮像部は、原反をロールに巻き取る直前あるいはスリット後のフィルムをコアに巻き取る直前に行われる。「直前」とは、フィルムがロールに巻き取られる前であって、他のロールなどにフィルムが接触した後、巻き取り用のロールに接触するまでの間が好ましい。なお、本明細書では、複数の光学撮像部について、まとめて「光源21」や「カメラ22」として説明する。
【0023】
カメラ22は光源21から照射される光を撮像するが、フィルム10上に異物があればその異物によって光が遮られるので、カメラ22の撮像画像において異物は暗欠点として検出される。図示していないが、フィルム10に対して同じ側に光源21とカメラ22とを配置する散乱光学系によって光学撮像部を構成してもよく、その場合、光源21から照射される可視光を散乱した異物をカメラ22で撮像することになるので、異物は明欠点として検出しても良い。また、光学撮像部としては、カメラ22にて撮像されたカラー画像を2値化処理して異物を判別するように構成しても良い。
【0024】
また、異物検査装置には、カメラ22にて撮像された撮像画像が入力される画像処理部23が設けられている。画像処理部23は、撮像画像に対して画像処理を行い、画像における暗欠点を抽出して異物を検知する。このとき、異物の大きさも検知してもよい。搬送しているフィルム10をカメラ22は連続的に撮像して撮像画像を画像処理部23に送っており、撮像画像においてどのタイミングで異物を検知したか(撮像開始時点からの経過時間あるいは測長器)によって、フィルム10の長手方向でのその異物の位置が決定される。また、撮像画像における異物の幅方向の位置から、フィルム10の幅方向でのその異物の位置が決定される。これにより、フィルム10の長手方向をx軸とし幅方向をy軸とする平面座標を考えたときに、この平面座標におけるその異物の位置が定まることになる。平面座標における異物の位置は、フィルム10を巻出して平面上に延ばしたと仮定したときに、その平面上でのその異物の位置となる。この位置情報を、フィルムにおける位置情報A(平面座標)とする。なお、上記測長器を用いる場合には、当該測長器にて連続的に発生しているパルス信号について、フィルム10の巻き出しが開始された時点以降から積算して、異物の検出タイミングと同時にパルス信号の積算読み出しを行ってフィルム10の長手方向における長さ情報として記録される。
【0025】
異物検査装置には、検出した異物の位置などを記憶するためにメモリなどの欠陥記憶部30が設けられており、画像処理部23は、フィルム10上で検出した異物について、上述の平面座標でのその異物の位置を欠陥情報として欠陥記憶部30に格納する。このとき、異物のサイズに関する情報も欠陥情報に含めてもよい。なお、このような欠陥記憶部30を設けずに、欠陥情報をワークメモリに記憶して後述の各処理を行っても良い。
【0026】
フィルム10上の異物についての光源21及びカメラ22を用いた光学的な検知が終了した後、フィルム10を巻き取って得られたフィルムロール12に対し、以下に詳述するX線による異物検知と異物の種類や材質の評価(例えば異物が金属であるか非金属であるかの判別)が行われる。このために異物検査装置は、X線源41とX線源41から照射されるX線を撮像するX線撮像部42とを備えている。X線源41及びX線撮像部42は放射線撮像部を構成する。X線源41からは、図示2本の破線の直線で示すように、放射状に(すなわち円錐状に)X線が出射される。その結果、X線源41に近いほど視野が狭くなり、異物検出感度が高くなる。一般的に、X線源41と異物までの距離をFOD(Focus to Object Distance)、X線源41とX線撮像部42までの距離をFID(Focus to Image Distance)としたとき、同一のFIDのもとでは、異物検出感度はこれらの比FID/FODに比例し、撮像視野の大きさはこれに反比例する。そのため、高い検出感度かつ等しい検出感度で異物の検査を行なうためには、FID/FODを大きく(視野を狭く)するとともに、FID及びFODが一定になるように撮像焦点の焦点合わせを行なう必要がある。ここで、大きさが100μm程度の微小な金属異物をX線撮像により検出するためにはX線源41における視野を10mm角以下に小さくする必要がある。しかしながら、フィルムロール12の大きさはX線源41の視野よりもはるかに大きい。このため、フィルムロールの全体を検査するために、X線源41に対してフィルムロール12を相対的に動かす必要がある。この操作も、異物に対するX線撮像焦点の焦点合わせに含まれる。そこで異物検査装置には、放射線撮像部における撮像焦点の焦点合わせを行なうために、モータ51、軸方向移動機構52、半径方向移動機構53及び移動制御部55からなる焦点合わせ部が設けられている。本発明のX線源41における撮像焦点の深度範囲(検出感度ばらつきの許容範囲)は例えば±15mm、好ましくは±5mm、より好ましくは±1mmであり、この範囲内に複数異物が存在する場合は、1回のX線撮像でこれら複数異物を同時撮像してもよい。この場合、1回の撮像で済むため検査時間が短縮されるが、前述のとおりFODが異なれば検出感度も一定ではなくなるため、感度ばらつきの許容範囲と検査速度の兼ね合いで深度範囲を決定する。なお、X線源41、X線撮像部42、モータ51、軸方向移動機構52、半径方向移動機構53及び移動制御部55は、X線の漏えいを防止する筐体により覆われているが、ここでは説明を省略している。また、X線源41から照射する放射線としては、X線以外にもγ線などであっても良い。
【0027】
即ち、フィルム10を巻き取ったフィルムロール12は、光学撮像部による異物検知が行なわれた後に、巻取りモータ(図示しない)から例えば作業者により取り外され、フィルムロール12のコア13がモータ51の回転軸に接続される。言い換えると、フィルムロール12は、コア13が鉛直方向に沿って起立するようにしてモータ51に取り付けられる。従って、モータ51の回転軸とX線源41から照射されるX線の照射中心軸(図示一点鎖線)とが平行になるように、モータ51が設けられており、これにより、フィルムロール12の軸(すなわちコア13の中心軸)がX線の照射中心軸と平行になり、かつ、X線源41とX線撮像部42との間の空間にフィルムロール12の一部が入り込むようになっている。既述のマーカー71は、当該空間に同様に入り込むように、且つ、マーカー71がフィルムロール12における設定位置(上端あるいは下端)に位置するようにモータ51の回転軸に当該フィルムロール12が取り付けられるように構成されている。即ち、後述のX線の撮像時、マーカー71が設定位置に設けられていないとエラーが出て、マーカー71の位置、言い換えるとフィルム10の巻回方向がモータ51上で例えば反時計回り(左回り)となるように設定される。また、マーカー71の位置がX線の撮像画像にて得られるので、コア13におけるフィルム10の巻き取り開始位置が分かる。
【0028】
モータ51は、その回転軸方向(図示上下方向)にモータ51を移動させる軸方向移動機構52に取り付けられており、軸方向移動機構52は、フィルムロール12の半径方向(図示左右方向)に軸方向移動機構52を移動させる半径方向移動機構53に取り付けられている。モータ51、軸方向移動機構52及び半径方向移動機構53の駆動量は、移動制御部55によって制御される。半径方向移動機構53の駆動により、フィルムロール12において任意の半径方向における測定位置に焦点合わせすることができる。この状態でモータ51によってフィルムロール12を鉛直軸周りに回転させれば、フィルムロール12において、半径方向移動機構53によって規定される既述の測定位置の円周に沿った領域に対してX線を照射することができ、モータ51の回転角によって、その円周上のどの領域にX線を照射するかを設定することができる。さらに、軸方向移動機構52によってフィルムロール12を図示上下方向に移動させることにより、X線の照射焦点の深度を調整すること、言い換えればフィルムロール12に巻き込まれた異物とX線源41との距離を一定に保つことができる。
【0029】
上述したように、X線源41とX線撮像部42との間の空間にフィルムロール12が存在することになり、軸方向移動機構52によってこの空間内でフィルムロール12は、X線源41に接近したりX線撮像部42に接近したりする。同一のフィルムロール12に対してX線による検査を行なっているときは、X線源41とX線撮像部42との間隔は一定に保たれる。しかしながら、フィルムロール12の厚さ、すなわちフィルムロール12に巻き取られたフィルム10の幅はフィルム10の種類や仕様ごとに異なり得るものである。そのため、異なる厚さのフィルムロール12に対応するために、X線源41とX線撮像部42との間隔を調整する間隔調整機構43も設けられている。図示したものでは、X線源41の位置を固定した上で、間隔調整機構43によってX線撮像部42をX線源41に対して近づけたり遠ざけたりすることができるようになっているが、X線撮像部42に対してX線源41を昇降させても良い。
【0030】
本実施形態においては、搬送中のフィルム10に対してX線による異物検知を行なうのではなく、フィルム10を巻き取ったフィルムロール12を対象としてX線による異物検知を行ない、さらに、X線による異物検知を行なう範囲を、光学撮像部によって異物の存在が確認された位置に限定することにより、X線による異物検知に要する時間を大幅に短縮している。光学撮像部によって検知された異物の位置は、上述したように平面座標で表されている。一方、フィルムロール12は、コア13にフィルム10が巻きつけられた円柱状の形状であるから、異物のフィルムロール12内の位置は、空間座標で表される必要がある。この位置情報を、フィルムロール12における位置情報B(空間座標)とする。位置情報Aと位置情報Bの関係は、同じ異物の位置情報であり、フィルムにおいてか、フィルムロールにおいてかの表し方の違いがある。そこで、フィルム10の位置情報A(平面座標)での位置をフィルムロール12の位置情報B(空間座標)での位置に変換する座標変換部54が設けられている。座標変換部54は、欠陥記憶部30に記憶されているフィルム10の位置情報A(平面座標)での異物の位置をフィルムロール12の位置情報B(空間座標)での異物の位置に変換する。フィルム10をコア13に巻きつけたものがフィルムロール12であるから、コア13の直径、フィルム10の厚さ、上下に積層されるフィルム間に巻き込まれるエア層の厚さ、更にはコア13におけるフィルム10の巻きつけ開始位置及び巻きつけ方向(時計周りか反時計周りか)などを含む座標変換用情報が与えられれば、フィルム10の位置情報A(平面座標)からフィルムロール12の位置情報B(空間座標)への変換を容易に行なうことができる。従って、モータ51に対してフィルムロール12を取り付ける姿勢(向き)については、コア13におけるフィルム10の巻きつけ開始位置及び巻きつけ方向がフィルムロール12毎に変わらずに一律に設定されるように、当該巻きつけ開始位置を示すマーカー71がコア13の端面に形成されている。なお、前記フィルムロールにおける位置情報B(空間座標)における原点は、例えばコア13の軸中心下端位置に設定される。また、位置情報B(空間座標)としては、縦方向(x座標)、横方向(y座標)及び鉛直方向(z座標)を用いた直交座標(x,y,z)系の座標であっても良いし、半径方向移動機構53による半径方向の移動量(r座標)、モータ51による回転角度(θ座標)、及び軸方向移動機構52による鉛直方向の昇降量(z方向)の各駆動量を与える極座標系(r,θ,z)であっても良い。
【0031】
ここで、位置情報A(平面座標)を、既述の各駆動量を与える極座標(r,θ,z)に変換する方法の一例について詳細に説明する。
図2は、そのような変換方法を説明するためにフィルムロール12を横から(コア13の中心軸に対して直交する面側から)見た平面図を示している。
図2中、符号「71」は既述のマーカーであり、フィルム10の巻きつけ開始位置及び巻きつけ方向を示すための指標である。なお、
図2における符号「70」は、異物Xを示している。続いて、平面座標を極座標に変換するにあたって必要な各寸法の定義について説明する。
【0032】
このマーカー71が付された巻きつけ開始位置から巻き終わり位置までのフィルム10の総巻き長をLとすると、この総巻き長Lは例えば既述の測長器により測定されるため既知の値である。たとえば、巻きつけ開始時点における測長器の指示値L1と、巻き終わり時点での測長器の指示値L2を用いて、L=L2-L1で求められ、L=0の地点がフィルムの平面座標におけるx軸原点である。また、コア13の外半径(フィルムロール12においてフィルム10が巻回されたドーナツ状の領域の内半径)R1は、当該コア13の外径を予め測定することにより得られる。そして、フィルムロール12の外半径R2は、フィルム10を巻き取った後、変位計などの非接触寸法測定器により測定される。前記巻きつけ開始から異物70が付着した位置までのフィルム10の巻き長jは、第1の異物検知工程において位置情報A(平面座標)として検出済である。
【0033】
一方、コア13の中心Pから異物70までの距離として求められる長さR3とすると共に、コア13に巻き取ったフィルム10の内側及び外側の面のうち外側の面と、そのフィルム10の外側に巻かれるフィルム10の外側の面との間の距離をtとする。即ち、コア13にフィルム10が巻かれる時、下側のフィルム10と上側のフィルム10との間にエア層が噛み込む。従って、既述の膜厚tは、フィルム10の厚みと、フィルム間に噛み込むエア層の厚みとを足し合わせた寸法となる。
【0034】
更に、
図2においてマーカー71及びコア13の中心Pを通る直線と、中心P及び異物70を通る直線とのなす角度のうち、フィルム10の巻回方向に沿う向きにおける角度をθ(rad)とする(
図2では、フィルム10は反時計回り、即ち左回りに巻回されている)。また、巻回されたフィルムロールの異物70が存在するフィルム(n層目)において、角度θ分に相当するフィルムの長さを△jとする。続いて、上述した各寸法の定義に基づいて座標を変換する計算方法について説明する。
図7は、フィルムロールにおいて異物の検査を行うための各駆動量(R
3とθ)を求めるフロー図の1例である。以下、詳細を説明する。
【0035】
図2において、フィルム10が巻回されたドーナツ状の領域の面積Sは、外半径R
2の円の面積から内半径R
1の面積を差し引いた値であることから、
S=π(R
2
2-R
1
2)・・・・(1)
となる。
【0036】
一方、既述の面積Sは、膜厚tの長尺物(フィルム10とエア層とからなる薄膜)を長さLに亘って巻回した時の側面の面積と言えることから、
S=Lt …(2)
となる。
【0037】
上記(1)式と(2)式とを組み合わせて変形すると、
t=π(R
2
2-R
1
2)/L …(3)
が得られる。コア13の中心Pから異物70までの距離として求められる長さR
3についても(1)式及び(2)式と同様に考えると、
π(R
3
2-R
1
2)=jt …(4)
が得られる。なお、コア13の中心Pから異物70までの距離として求められる長さR
3とは、
図2に示すとおり、θ=0にあたる点から異物70が存在するところまでのフィルムの長さΔjに相当するフィルムの断面積を、全周に平準化したときに得られる円弧(
図2(b)破線)と中心Pと距離として求められる長さである。この(4)式を組み替えると、
R
3={(jt/π)+R
1
2}
1/2 …(5)
となり、この(5)式に既述の(3)式の膜厚tを代入すると、(5)式の右辺は全て既知の値であるため、異物70の極座標(r,θ,z)のうちr(R
3)が求まる。
【0038】
ところで、異物70を通る既述の円弧の長さΔjは、異物70までの距離として求められる長さR3を半径とする円の円周と中心角θとを用いて以下のように表される。
2πR3×θ/2π≒Δj …(6)
従って、中心角θは、
θ≒Δj/R3 …(7)
となる。
【0039】
ここで、コア13の中心Pから異物70までの距離として求められる長さR3と中心角θの関係について詳述する。中心角θは、異物とコア中心を結ぶ直線とマーカーと中心を結ぶ線とがなす角度である。このときの当該異物が存在する層におけるθ=0にあたる点から異物70が存在するところまでのフィルムの長さをΔjとすると、Δj分のフィルムの断面積は、Δj×膜厚tとなり、式(7)より、
Δj×t≒R3θt …(8)
となる。
【0040】
一方、
図2(b)に示すとおり、R
3は巻き始めから当該異物が存在する箇所までのフィルム長さに相当するフィルムが巻かれたときの半径といえるから、実際のフィルムロールにおいて、θ=0にあたる点から異物が存在するところまでのフィルムの断面積は、
πR
3
2-π[R
3-(R
3-R
1)modt]
2 整理すると、
π{2R
3×[(R
3-R
1)modt]-[(R
3-R
1)modt]
2}≒2π×R
3×[(R
3-R
1)modt]) で求められる。
ここから、θ≒2π×[(R
3-R
1)modt]/t として求められる。なお、modは剰余演算子を意味し、[a mod b]はaをbで割った余りが出力される。
【0041】
極座標(r,θ,z)のうち高さ方向の座標(z)ついてはフィルム10の幅方向における異物70の位置であり、既述のカメラ22にて撮像済みであることから、極座標の3つの座標が決定される。
【0042】
この例では、平面座標を空間座標に変換するために使用した座標変換用情報としては、コア13におけるフィルム10の巻きつけ開始位置、巻きつけ方向、フィルム10の総巻き長L、コアの外半径R1、フィルムロール12の外半径R2及び巻き長jの6つの変数であり、巻きつけ開始位置及び巻きつけ方向はマーカー71の読み取り及びモータ51へのコア13の接続により既知となる。続いて、装置の説明に戻る。
【0043】
座標変換部54により空間座標に変換された異物の位置は、移動制御部55に伝えられ、移動制御部55は、空間座標での異物の位置に基づいてその異物に撮像焦点が合うように、モータ51、軸方向移動機構52及び半径方向移動機構53の駆動を制御する。実際にはフィルム10における厚さのばらつき、巻き取るときのフィルム10の伸びなどの要因により、異物の位置に関し、座標変換部54において算出した空間座標での位置と実際のフィルムロール12における位置とが一致しないことがある。その場合であっても、フィルムロ―ルの半径はフィルム厚みに対して十分に大きいことから、その異物とフィルムロール12の中心軸との間の距離として求められる長さR3(すなわち半径方向の寸法)はほぼ正確に計算されているので、計算された位置に基づいて半径方向移動機構53を駆動し、その状態でモータ51によりフィルムロール12を1回転させながらX線による検査を行なえばよい。この場合は、算出された半径で表される円周に沿って、周方向に亘ってX線による検査が行なわれることになる。この場合、空間座標及び移動機構としては次に示す理由で、直交座標系よりも極座標系を用いる方が好ましい。
【0044】
図5は、直交座標系でフィルムロール外周近傍の円周に沿って順次視野を移動した場合の模式図であるが、次視野に移動する際にほとんどの視野でx、y軸の両方を移動する必要があり制御が複雑になる。さらに、フィルムは空気に比べてX線透過率が低いため、フィルムロールより外側の空間は明るく、フィルムロールの内側に入ると暗いという、半径方向に明暗パターンを有する画像となるが、
図5の場合、視野によって明暗パターンの方向が変化してしまい、異物を自動検出するための画像処理が複雑になってしまう。一方、
図6は極座標系で同様の円周上を移動した場合であるが、算出した半径に一旦調整すればr一定のままθ軸のみを移動すればよいため制御が容易であるし、常に画像中の明暗パターン方向が一定となるため、画像処理が比較的簡単となる。なお、光学撮像部による異物検知によって異物の大きさが判明しているときは、所定のしきい値(例えば100μm)を超える大きさの異物のみに対してX線を用いた検査を行なうようにしてもよい。
【0045】
また、異物検査装置には、X線撮像部42で得られたX線撮像画像を処理して異物を評価する評価部44が設けられている。異物が金属であればX線を強く遮るが、異物が非金属である場合にはX線はほとんど遮られない。そこで、評価部44は、X線撮像画像を画像処理して異物を検知し、その異物の位置でのX線の減衰量から異物の材質、例えば金属であるか非金属であるかを評価している。この評価結果は、欠陥記憶部30に送られる。欠陥記憶部30は、評価部44における評価結果と、対応する異物についてのフィルムロール12での空間座標での位置及びフィルム10での平面座標での位置の少なくとも一方とを対応付けて、検査結果として記憶する。即ち、フィルムロール12の状態での検査結果と、このフィルムロール12から巻き出したフィルム10における検査結果との少なくとも一方を欠陥記憶部30に記憶する。このとき、異物の大きさについての情報が既に欠陥記憶部30に記憶されている場合には、検査結果には異物の大きさの値も含めてよい。欠陥記憶部30には出力部30aが接続されており、欠陥記憶部30に記憶された検査結果を出力することができる。この場合、検査結果は、座標と異物の有無や異物のサイズとを対応付けた表を単純に数値形式で出力する以外にも、平面座標や空間座標におけるマップ(地図)形式のデータとして紙面上にあるいは電子的に出力してもよい。
【0046】
また、異物の大きさや材質に基づいて異物をランクに分類し、異物の位置とその分類されたランクとをマップ形式のデータとして出力してもよい。出力された検査結果は、フィルムロール12の出荷時に、フィルムロール12に添付することができる。
【0047】
図3は、
図1に示した異物検査装置を用いた異物検査の手順の概要を示している。まず、フィルムロール12に巻き取られる前の搬送中のフィルム10に対し、第1の異物検知工程として、光源21とカメラ22とからなる光学撮像部を用いて異物の位置や大きさを検知し、欠陥と判断される欠陥点の位置を検出する。検出結果は、図において欠陥点マップ61として示すように、フィルム10の平面図において、どの位置に異物が存在するかを示している。この欠陥点マップ61に相当するそれぞれの異物の位置情報A(平面座標)が欠陥記憶部30に格納される。ここで座標変換部54により、それぞれの異物に対して、フィルム10での位置情報A(平面座標)からフィルムロール12での位置情報B(空間座標)への変換を行なうと、フィルムロール12における異物の空間位置(3次元位置)が求められる。
図3に示す欠陥点マップ62は、このようにして求められた空間座標における異物の配置の例を示している。図においては、フィルムロール12の中心軸に垂直な面に投影したものとして異物の分布が欠陥点マップ62に描かれているが、実際には、図における深さ方向(フィルム10の幅方向)の位置の情報も異物の空間位置の情報に含まれている。本実施形態では、フィルムロール12における位置情報B(空間座標)に変換された異物の位置とその近傍(図において一点鎖線で示す領域63)のみをX線による検査の対象領域とし、この対象領域に対してX線による検査を第2の異物検知工程として実行する。
【0048】
X線による第2の異物検知検査では、フィルム10の厚さのばらつきや伸びの影響を考慮して、フィルムロール12の中心軸に垂直な面上における、フィルムロール12の中心軸上に中心を有し空間座標に変換された異物の位置を周上に有する円に沿う領域をX線による検査対象領域としてもよい。このような円に沿う領域をX線による検査対象領域としてこの検査対象領域に焦点合わせを行なうことも、本発明での変換後の空間座標での異物の位置に撮像焦点が合うようにすることに含まれる。円に沿う領域を検査対象領域とする場合は、軸方向移動機構52及び半径方向移動機構53により焦点合わせを行なったうえで、モータ51を駆動し、フィルムロール12を鉛直軸周りに回転させながらX線による検査を行なえばよい。
【0049】
検査対象領域に対してX線による検査が行なわれると、X線の減衰率から、異物が例えば金属か非金属かが評価される。この評価結果に基づいて、異物の分類(欠陥点分類)が行なわれる。欠陥点マップ62に示される異物に対しその評価結果を当てはめると、欠陥点マップ64が得られる。ここでは異物の大きさの情報も加味し、(a)金属からなり所定値以上の大きさである異物、(b)金属からなり所定値未満の大きさである異物、(c)非金属からなる異物、の3通りに分類を行なっている。さらに、既得のフィルムにおける異物の位置情報A(平面座標)に、異物の分類(欠陥点分類)情報を追加することにより、フィルム10での平面座標において異物がどこに位置するかとその異物のランク(上記(a)~(c)のいずれに該当するか)とを示す欠陥点マップ65を得ることができる。欠陥記憶部30からこうした欠陥点マップ64,65を出力することができ、出力された欠陥点マップ64,65は、検査付表として、フィルムロール12の出荷時にフィルムロール12に添付することができる。なお、上記ランクとして、(a)~(c)に加えて、(d)金属と非金属とからなり所定値以上の大きさである異物という項目を設けても良い。
【0050】
上記の例では、平面座標から空間座標に変換するにあたって使用した座標変換用情報として6つの変数を用いたが、フィルムロール12に巻き取った時の巻き数Nが例えばワインダ装置の回転数から分かる場合には、以下の(11)式を用いても良い。
t=(R2-R1)/N …(11)
この巻き数Nを用いる場合には、既述のフィルム10の総巻き長L、コアの外半径R1、フィルムロール12の外半径R2及び巻き長jの4つの変数と共に使用しても良いし、これら4つの変数のうち1つを上記巻き数Nに代えても良い。
【0051】
また、フィルムロール12の外半径R2の測定方法として、既述の例では測長器を用いる方法について説明したが、参考までにそのような方法が記載された公知文献を挙げておく。具体的には、特開2000-230810号公報あるいは特開平1-193604号公報などが挙げられる。
【0052】
更に、フィルムロール12の外半径R2の測定方法としては、上記の方法に代えて、以下の(A)、(B)の方法のいずれかを用いても良い。
(A)巻き取り後のフィルムロール12の外側に周方向に沿って巻尺などを這わせて円周の長さを測定して、半径から円周の長さを求める式に基づいて外半径R2に換算する。
(B)既述の(3)式と(11)式とを組み合わせることにより、外半径R2を未知数とすると共に他の変数を既知の値として算出できる。
【0053】
更にまた、コアの外半径R1、フィルムロール12の外半径R2及びコア13の中心Pから異物70までの距離として求められる長さR3の計算方法については、以下(C)の手法を用いても良い。
(C)コア13(フィルムロール12)の巻き取り回転速度及びフィルム10の搬送速度をそれぞれω(rad/s)及びv(mm/s)とすると、異物が混入される時点のフィルムロール12の外半径R(R2及びR3のいずれか)が以下(12)式により算出される。
R=v/ω …(12)
従って、巻き取り開始時点、巻き取り終了時点及び異物70の発生時点のそれぞれにおいて、上記回転速度ω及び搬送速度vを取得して(12)式に代入することにより、コアの外半径R1、フィルムロール12の外半径R2及びコア13の中心Pから異物70までの距離として求められる長さR3が計算される。
【0054】
また、既述の例では、コア13に付したマーカー71の位置を読み取るにあたって、異物70検査用のX線源41とX線撮像部42とを流用したが、マーカー71読み取り用のX線源とX線撮像部とを個別に設けても良い。マーカー71としては、金属以外にも樹脂製のプレートやテープ、あるいはペンなどで作業者が付した標識などであっても良い。このように非金属性のマーカー71を用いる場合には、巻き取り後のフィルムロール12におけるマーカー71の位置は、例えば光学系のカメラを別途モータ51に近接配置して撮像しても良い。
【0055】
更に、コア13におけるフィルム10の巻き取り方向(右回りか左回りか)を判別するために、コア13にマーカー71を設けたが、このようなマーカー71を設けずに、フィルムロール12の外半径測定時に巻き取り方向を判別するようにしても良い。即ち、フィルムロール12の外周部にはフィルム10の最終端が例えばテープなどにより固定されており、その最終端の分だけ当該外周部には段差が形成される。従って、その段差の位置を検出することにより、フィルム10の巻き取り方向を判別しても良い。
【0056】
更に、コア13におけるフィルム10の巻き取り開始位置をマーカー71により判別したが、上記の通りフィルム10の最終端の段差の位置を取得して、その位置からフィルム10の総巻き長Lの分だけフィルムロール12の内周側に向かって渦巻き状にフィルム10の先端部を仮想的に伸ばすことにより、フィルム10の巻き取り開始位置を取得しても良い。
【0057】
図3に示した例では、欠陥点マップ61などに示すように、フィルム10(すなわちフィルムロール12)には複数の異物が含まれている場合もある。複数の異物が含まれるときは、これら複数の異物の各々にして順次、X線源41の撮像焦点を合わせてX線による撮像を行なう。
図4は、複数の異物を含む場合のX線源の撮像焦点の焦点合わせを説明する図である。ここでは、フィルムロール12内に異物A,Bが含まれているものとしている。まず、異物Aに撮像焦点を合わせて異物AをX線で撮像し、次に、フィルムロール12を移動させることにより異物Bに撮像焦点を合わせて異物BをX線で撮像する。このように異物A、B間にて撮像焦点を移動させる時(フィルムロール12が移動している時)には、X線源41の出力をオフにしても良いし、あるいは待機状態として出力値を撮像時よりも小さくしても良い。フィルムロール12にさらに異物が含まれるときは、同様に次の異物に撮像焦点を合わせてその異物を撮像することを繰り返す。X線源41とX線撮像部42との間隔Lは一定に保たれたままである。また、焦点合わせに際しては、フィルムロール12の深さ方向(図示上下方向)での異物の位置に関わらず、焦点合わせ対象の異物とX線源41との距離Dが一定であるように、フィルムロール12が動かされる。なお、上記間隔Lは、例えば作業者が調整、設定しても良いし、予め入力されたフィルムロール12の幅寸法に応じて自動で調整されるようにしても良い。
【0058】
本発明の実施形態について説明したが、異物の位置を検知してその評価を行なった後には、その評価結果などに基づいてフィルムロールを選別、すなわち使用したり廃棄したりする。X線などによる放射線撮像部によって例えば異物が金属であるか非金属であるかが判別された場合、所定値以上の大きさであって金属からなる異物を含むフィルムロールは、例えば、出荷されずに廃棄処分とされるか、当該異物が除去される。金属異物の除去方法としては、異物が磁性体である場合には磁石が用いられ、一方非磁性体である場合には物理的に掻き落とすなどの処理が行われる。あるいは、上述した欠陥点マップに基づいてフィルムロール中(あるいはフィルム上)での金属異物の位置を把握して、フィルムロールのうち、金属異物を含まない領域だけを使用することができる。具体的には、金属異物を含む場合には、フィルムロールからフィルムを巻き出して、欠陥点マップに基づいて異物が付着した位置よりも前段部においてフィルムを切断して巻き取り、製品として出荷する。また、異物が付着した位置よりも後段部において再度フィルムを切断して、その後段部以降についても巻き取って製品として出荷する。金属異物を含むがすべての金属異物の大きさが予め設定したしきい値(例えば100μm)未満である場合や、非金属である異物しか含まない場合には、上述した検査付表あるいは欠陥点マップを添付してフィルムロールを例えば出荷しても良い。さらには、フィルムロールに含まれる異物の個数によって廃棄や出荷を選択するようにしてもよい。
【0059】
上述のように、本発明ではフィルムの搬送中に光学系の異物検査を行い、次いでフィルムを巻き取ったフィルムロールに対して放射線を用いた異物検査を行っている。そのため、光学系の検査にて異物が検出された部位を選んで放射線を照射するだけでフィルムロール全体に対する異物検査が完了するので、異物の大きさが100μmレベルであっても、高速に且つ確実に検査を行うことができる。即ち、放射線を用いて微小異物を検出するためには放射線の放射領域についてもその異物の大きさに応じて小さく調整する必要があるので、フィルム全体についてそのような放射領域で検査しようとすると検査時間が極めて長くなってしまい、一方高速で検査しようとすると放射領域を大きく設定せざるを得ないので微小異物を検出できなくなってしまうが、本発明では光学系の検査で異物を検出済の部位だけに放射線を照射しているので、微小異物を高い精度で検出しながら速やかに検査を終えることができる。従って、バッテリーセパレータフィルムを製造する工程のように、フィルムが高速で搬送される場合であっても、本発明の検査方法を実用レベルで適用できるし、また放射線源の長寿命化につながる。例えば、視野10mm角で、ロール外径300mm、コア外径200mmのフィルムロールを検査する場合、フィルム巻厚は50mmであるからロール半径方向に少なくとも5視野以上撮像する必要があるが、本発明を用いて特定した半径位置のみを撮像すればよいので、検査時間を1/5以下に短縮することができる。そして、放射線の検査では光学系の検査にて検出された異物が金属であるか、非金属であるかを判別しているので、既述のフィルムロールの選別を容易に行うことができる。
【0060】
更に、光学系の検査にて検出された異物のうち、特定の寸法以上の大きさの異物についてのみ放射線による検査を行う場合には、バッテリーセパレータフィルムが適用される二次電池にて問題視されるレベルの異物が含まれるフィルムロールのみを例えば廃棄する一方、二次電池にて問題視されない異物が含まれるフィルムロールについてはセパレータフィルム用に使用できる。
【0061】
加えて、金属異物が検出された部位を空間座標あるいは平面座標として保存することにより、金属異物が検出されたフィルムロールであっても廃棄せずにその金属異物が付着した部位を避けてフィルムを有効利用できる。更にまた、上記空間座標あるいは平面座標を検査結果として出力してフィルムロールに添付することにより、当該フィルムロールの受取先にてそのようなフィルムの有効利用を図るための作業を行うことができる。
【0062】
以上説明した例では、光学撮像部で検知された異物の全て、あるいは所定のしきい値を超える大きさの異物に対して放射線撮像部による異物の検知と評価とを行なっている。また、光学撮像部での検知結果によりフィルムロール12に含まれることとなる異物の数が一定の個数以上であることが判明した場合に初めて放射線撮像部による異物の検知と評価とを行なってもよい。さらには、光学撮像部での検知結果によりフィルムロール12に含まれることとなる所定のしきい値を超える大きさの異物の数が一定の個数以上であることが判明した場合にのみ、放射線撮像部による異物の検知と評価とを行なうようにしてもよい。この場合は、しきい値を超える大きさの異物のみが放射線撮像部による検査対象とされる。
【0063】
図1に示した異物検査装置では、フィルムロール12を移動させることによってX線源41の撮像焦点を焦点合わせしていたが、X線源41及びX線撮像部42をこれらの間の位置関係を保ったまま動かすことによって、撮像焦点の焦点合わせを行なってもよい。要は、X線源41及びX線撮像部42をこれらの間の位置関係を保ったまま、X線源41とフィルムロール12との相対的な位置関係を変えて焦点合わせを行なえばよい。また、
図1では、モータ51の回転軸の方向が重力方向に平行な方向に描かれているが、X線による検査を行なうときのモータ51の回転軸の方向すなわちフィルムロール12の中心軸の方向はこれに限定されるものではなく、フィルムロール12の中心軸の方向が水平方向となるようにしてもよい。
【0064】
図1に示した異物検査装置では、フィルム原反に対してスリット加工を行なうスリッター15の出口から排出される搬送中のフィルム10に対して光学撮像部による異物の検知を行なっているが、光学撮像部により異物の検知を行なう場所はこれに限られるものではない。本発明においては、巻き取られる前にフィルムが搬送されている場所であれば任意の場所において、光学撮像部による異物の検知を行なうことができる。また、スリット加工が施されないフィルムに対しても本発明は適用可能である。もっとも、検査後にフィルムに異物が付着する可能性をできるだけ減らすために、最終的なフィルムロールとして巻き取られる直前の段階で光学撮像部による異物の検知を行なうことが好ましい。
【0065】
以上説明したフィルムロール12の製造工程について、バッテリーセパレータフィルムを例に簡単に説明する。先ず、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂とその可塑剤とを混練してポリオレフィン溶液を調整する。次いで、このポリオレフィン溶液をダイからシート状に押し出すと共に冷却してゲルシートを形成する。続いて、ゲルシートを延伸した後、可塑剤を除去、洗浄して微多孔膜を形成して、熱処理などを経て原反としてロールに巻き取る。そして、前記ロールから原反を巻き出して所定の幅寸法となるようにスリットして別の幅寸法の小さいロールに巻き取る。こうして前記幅寸法の小さいロールは、バッテリーセパレータフィルムを使用するメーカー例えば電池メーカーに納入される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の検査方法を適用する製造工程は、ポリオレフィン製バッテリーセパレータフィルムに限られず、コーティングセパレータ、不織布製バッテリーセパレータ、コンデンサ用フィルム、MLCC離型用フィルム等の製造工程にも好適である。
【符号の説明】
【0067】
10 フィルム
11 巻出しロール
12 フィルムロール
13 コア
15 スリッター
21 光源
22 光学カメラ
23 画像処理部
30 欠陥記憶部
41 X線源
42 X線撮像部
43 間隔調整機構
44 評価部
51 モータ
52 軸方向移動機構
53 半径方向移動機構
54 座標変換部
55 移動制御部
70 異物X
80 1回の検査視野
P フィルムロールにおける位置情報Bの原点
R1 コアの外半径
R2 フィルムロールの外半径
R3 中心Pから異物までの距離として求められる長さ
S フィルムが巻回された領域の面積
L 総巻き長
j 異物が付着した位置までの巻き長
θ フィルムロールにおける回転角度(θ座標)