(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】動力工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/02 20060101AFI20230131BHJP
B25F 3/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F3/00 Z
(21)【出願番号】P 2021519349
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017755
(87)【国際公開番号】W WO2020230591
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2019092439
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192337
【氏名又は名称】福本 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100206092
【氏名又は名称】金 佳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100208535
【氏名又は名称】松坂 光邦
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝明
(72)【発明者】
【氏名】横田 伴義
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6739224(US,B1)
【文献】特開2012-51046(JP,A)
【文献】特開2008-173749(JP,A)
【文献】特開平11-245180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 1/00 - 5/02
B24B 23/00
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、工具を保持可能な工具保持部と、を備え、
前記工具は、前記工具保持部に保持された状態において第1方向に延びる軸心を有する第1軸部及び第2方向に延びる軸心を有する第2軸部を有し、
前記工具保持部は、
前記第1軸部と係合可能な第1保持部と、前記ハウジングに対して前記第2方向に相対移動可能であって前記第2軸部と係合する第2保持部と、を有し、
前記第2保持部は、前記相対移動によって、前記第2軸部と係合する保持位置と、前記第2軸部から離間した退避位置とに位置を変更可能に構成されており、
前記第2保持部は、前記保持位置に位置する場合には前記第1保持部と協働して前記工具を取外しできないように保持するとともに、前記退避位置に位置する場合には前記工具保持部から前記工具を取外すことが可能となるように構成されていることを特徴とする動力工具。
【請求項2】
前記第2保持部は前記ハウジングとは別体の弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の動力工具。
【請求項3】
前記第2保持部は、前記第1保持部とは異なる位置に設けられ
、前記工具が前記工具保持部に保持された状態において前記
第2軸部の少なくとも一部を周方向全域に亘り取り囲み前記第1保持部と協働して前記工具を
保持可能に構成され、
前記第1保持部と前記工具とを前記第1方向に相対移動させることにより、前記工具を前記第1保持部に保持させることが可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の動力工具。
【請求項4】
前記第1保持部は、前記工具が前記工具保持部に保持された状態において、前記ハウジングに対する前記工具の前記第1方向の移動を許容するとともに前記第1軸部の軸心を中心とした回動を許容するように構成され、前記第2保持部は、前記工具が
前記工具保持部に保持された状態において、前記ハウジングに対する前記工具の前記第1方向の移動を規制するとともに、前記工具の前記第1軸部の軸心を中心とした回動を規制するように構成されていることを特徴とする請求項1又は3に記載の動力工具。
【請求項5】
前記第2保持部を
前記退避位置から前記保持位置に移動させることにより、前記工具を前記第2保持部に保持させることが可能であることを特徴とする請求項4に記載の動力工具。
【請求項6】
前記第1保持部は、前記第1軸部が挿入可能な円筒状に構成され、
前記第2保持部は、前記第1軸部が前記第1保持部に挿入された状態で、
前記保持位置と
前記退避位置との間で移動可能であり、前記保持位置は、前記ハウジングに対して前記工具の前記ハウジングに対する前記第1方向の移動及び前記第1軸部の軸心を中心とした回動を規制可能な位置であり、前記退避位置は前記第2軸部と離間する位置であることを特徴とする請求項5に記載の動力工具。
【請求項7】
前記ハウジングには、突起が設けられ、
前記第2保持部は、前記ハウジングと別体に設けられ、前記第2保持部は、前記突起の突出方向に開口するとともに前記突起を受入れて固定する第1開口が形成された被保持部と、前記突出方向に開口するとともに前記第2軸部の少なくとも一部を受け入れる第2開口が形成された保持部と、を有することを特徴とする請求項6に記載の動力工具。
【請求項8】
前記第2保持部は、自己の弾性力により、又は外部からの付勢力を受けて前記ハウジングに対して前記保持位置と前記退避位置との間で移動可能であることを特徴とする請求項7に記載の動力工具。
【請求項9】
前記第1開口と前記第2開口とは、同方向に開口することを特徴とする請求項7に記載の動力工具。
【請求項10】
前記保持位置において前記第2開口が開口する方向と、前記退避位置において前記第2開口が開口する方向とは互いに異なることを特徴とする請求項7に記載の動力工具。
【請求項11】
前記ハウジングに支持され、先端工具が着脱可能な先端工具着脱部を、さらに有し、
前記工具は、前記先端工具及び前記先端工具を前記先端工具着脱部に対して取付け・取外しするための取替工具の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項12】
前記ハウジングに支持され、先端工具が着脱可能な先端工具着脱部を、さらに有し、
前記工具は、前記先端工具及び前記先端工具を前記先端工具着脱部に対して取付け・取外しするための取替工具の少なくともいずれか一方であり、
前記先端工具はそれぞれ異なる方向に延びる第1先端工具軸と第2先端工具軸とを有し、前記取替工具はそれぞれ異なる方向に延びる第1取替工具軸と第2取替工具軸とを有し、
前記第1保持部は、前記第1先端工具軸と前記第1取替工具軸との少なくともいずれか一方を保持可能に構成され、前期第2保持部は、前記第2先端工具軸と前記第2取替工具軸との少なくともいずれか一方を保持可能に構成されていることを特徴とする請求項1、3乃至10のいずれか一項に記載の動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータの駆動力によって先端工具を駆動させ、研磨、切削、切断等を行う動力工具が広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、このような動力工具の一例として、モータと、モータからの駆動力を受けて駆動するとともに先端工具(ビット等)を着脱可能に構成された先端工具保持部とを有する電動工具が開示されている。特許文献1の電動工具では、先端工具を電動工具本体に保持することが可能に構成されている。具体的には、特許文献1の電動工具には電動工具本体と一体に形成されるとともに開口部を有する工具保持部が設けられ、当該開口部に先端工具を圧入により嵌め込むことにより先端工具を保持することが可能に構成されている。
【0004】
また、一般に、このような動力工具においては、先端工具を作業内容に応じて取付け・取外し(交換)するための取替工具(レンチ等)が設けられている。作業内容が多岐に渡る場合には、頻繁に取替工具を用いて先端工具保持部への先端工具の着脱作業を行う必要があるため、取替工具を動力工具本体に保持することにより作業者の利便性を向上させることが求められている。例えば、特許文献1に記載の電動工具が先端工具を保持する構成と同様に、動力工具本体と一体に形成されるとともに開口部を有する工具保持部を設け、当該開口部に圧入により取替工具を嵌め込むことにより取替工具を保持することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、動力工具本体と一体に形成された工具保持部に先端工具又は取替工具(以下の説明においては、先端工具及び取替工具を総称して「工具」と呼ぶ。)を圧入や工具保持部自身の弾性変形等を利用して嵌め込むことを繰り返すことにより、嵌め合い部分が劣化してしまう可能性がある。このため、工具保持部の保持性能が損なわれ、意図せずに工具保持部から工具が脱落してしまう可能性があった。また、工具保持部が開口しているため、作業中の振動に起因して、意図せずに工具保持部から工具が脱落してしまう可能性があった。
【0007】
そこで本発明は、作業者の意図せぬ工具の動力工具本体からの脱落を抑制することが可能な動力工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、モータと、前記モータを収容するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、工具を保持可能な工具保持部と、を備え、前記工具は、前記工具保持部に保持された状態において第1方向に延びる軸心を有する第1軸部及び第2方向に延びる軸心を有する第2軸部を有し、前記工具保持部は、前記工具を前記ハウジングに対して前記第1方向に相対移動させることで前記第1軸部の少なくとも一部を収容する第1保持部と、前記第1保持部と協働して前記工具を保持可能に構成された第2保持部とを有し、前記第2保持部は前記ハウジングとは別体の弾性体であり、前記工具が前記工具保持部に保持された状態において、前記第1方向視において前記第2軸部の軸心と前記第2保持部とは重なるように構成されていることを特徴とする動力工具を提供している。
【0009】
上記構成の動力工具によれば、第1方向視において工具の第2軸部の軸心と第2保持部とが重なるように構成されているため、先端工具や取替工具等の工具の第1方向に直交する方向への移動が第1保持部により規制された状態において第2保持部により工具の第1方向への移動が規制される。このため、作業中に動力工具本体に振動が発生した場合においても、工具が工具保持部から脱落してしまうことを抑制することができる。
【0010】
本発明は、さらに、モータと、前記モータを収容するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、工具を保持可能な工具保持部と、を備え、前記工具は、前記工具保持部に保持された状態において所定方向に延びる軸部を有し、前記工具保持部の少なくとも一部は、前記工具保持部の少なくとも一部のみ又は前記ハウジングと協働して前記工具が前記工具保持部に保持された状態において、前記軸部の少なくとも一部を周方向全域に亘り取り囲み、前記工具保持部は、前記ハウジングに対して相対移動可能に構成されていることを特徴とする動力工具を提供している。
【0011】
上記構成の動力工具によれば、工具保持部が前記工具保持部のみで又は前記ハウジングと協働して軸部の一部を周方向全域に亘り取り囲むため、工具が工具保持部から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。また、工具保持部の少なくとも一部がハウジングに対して相対移動可能に構成されているため、工具保持部に対する工具の着脱作業が容易となる。
【0012】
上記構成において、前記軸部は、前記工具保持部に保持された状態において第1方向に延びる軸心を有する第1軸部及び第2方向に延びる軸心を有する第2軸部を有し、前記工具保持部は、第1保持部と、前記第1保持部とは異なる位置に設けられ前記工具が前記工具保持部に保持された状態において前記軸部の少なくとも一部を周方向全域に亘り取り囲み前記第1保持部と協働して前記工具を保持する第2保持部と、を有し、前記第1保持部と前記工具とを前記第1方向に相対移動させることにより、前記工具を前記第1保持部に保持させることが可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、第1保持部と工具とを相対移動させることにより、工具を工具保持部に容易に着脱可能となる。
【0014】
また、前記第1保持部は、前記工具が前記工具保持部に保持された状態において、前記ハウジングに対する前記工具の前記第1方向の移動を許容するとともに前記第1軸部の軸心を中心とした回動を許容するように構成され、前記第2保持部は、前記工具が前記第1保持部に位置している状態において、前記ハウジングに対する前記工具の前記第1方向の移動を規制するとともに、前記工具の前記第1軸部の軸心を中心とした回動を規制するように構成されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、工具が工具保持部に保持された状態において、工具の工具保持部内での回転と工具保持部からの脱落を抑制することが可能となる。
【0016】
前記第2保持部を前記ハウジングに対して前記第2方向に相対移動させることにより前記工具を前記第2保持部に保持させることが可能であることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、工具は第1方向に工具を移動させることにより第1保持部に保持されるところ、第1方向とは異なる第2方向に相対移動させることにより工具を第2保持部に保持させることが可能であるため、工具の動力工具本体からの脱落を好適に抑制することができる。
【0018】
また、前記第1保持部は、前記第1軸部が挿入可能な円筒状に構成され、前記第2保持部は、前記第1軸部が前記第1保持部に挿入された状態で、保持位置と退避位置との間で移動可能であり、前記保持位置は、前記ハウジングに対して前記工具の前記ハウジングに対する前記第1方向の移動及び前記第1軸部の軸心を中心とした回動を規制可能な位置であり、前記退避位置は前記第2軸部と離間する位置であることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、工具が第1保持部に挿入された状態で、第2保持部は保持位置と退避位置との間を移動可能なため、工具保持部に対して工具を容易に着脱可能となる。
【0020】
また、前記ハウジングには、突起が設けられ、前記第2保持部は、前記ハウジングと別体に設けられ、前記第2保持部は、前記突起の突出方向に開口するとともに前記突起を受入れて固定する第1開口が形成された被保持部と、前記突出方向に開口するとともに前記第2軸部の少なくとも一部を受け入れる第2開口が形成された保持部と、を有することが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、ハウジングとは別体に設けられた第2保持部を容易にハウジングに固定することができる。
【0022】
また、前記第2保持部は、自己の弾性力により、又は外部からの付勢力を受けて前記ハウジングに対して前記保持位置と前記退避位置との間で移動可能であることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、第2保持部は簡易な構成で保持位置と退避位置との間を移動可能である。
【0024】
また、前記第1開口と第2開口とは、同方向に開口することが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、第2保持部に開口を形成しやすく、工具保持部の製造コストを低減することが可能となる。
【0026】
また、前記保持位置において前記第2開口が開口する方向と、前記退避位置において前記第2開口が開口する方向とは互いに異なることが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、第2保持部の開口方向を変更することで、第2保持部の工具に対する相対移動の規制方向を変更可能となり、工具の着脱が容易となる。
【0028】
前記ハウジングに支持され、先端工具が着脱可能な先端工具着脱部を、さらに有し、前記工具は、前記先端工具又は前記先端工具を前記先端工具着脱部に対して取付け・取外しするための取替工具の少なくともいずれか一方であることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、上記の工具保持部を用いることにより、先端工具と取替工具の少なくともいずれか一方が動力工具本体から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。
【0030】
前記ハウジングに支持され、先端工具が着脱可能な先端工具着脱部を、さらに有し、前記工具は、前記先端工具又は前記先端工具を前記先端工具着脱部に対して取付け・取外しするための取替工具の少なくともいずれか一方であり、前記先端工具はそれぞれ異なる方向に延びる第1先端工具軸と第2先端工具軸とを有し、前記取替工具はそれぞれ異なる方向に延びる第1取替工具軸と第2取替工具軸とを有し、前記第1保持部は、前記第1先端工具軸と前記第1取替工具軸との少なくともいずれか一方を保持可能に構成され、前期第2保持部は、前記第2先端工具軸と前記第2取替工具軸との少なくともいずれか一方を保持可能に構成されていることが好ましい。
【0031】
このような構成によれば、先端工具と取替工具との少なくともいずれか一方が動力工具本体から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。
【0032】
本発明はさらに、モータと、前記モータを収容するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、少なくとも一部が軸状に構成された工具を保持可能な工具保持部と、を備え、前記工具保持部は、前記工具を保持可能な第1保持部と第2保持部とを有し、前記工具が前記工具保持部に保持された状態においては、第1保持部の少なくとも一部が第1方向で前記工具の軸状部分における軸心と重なり、前記第2保持部の少なくとも一部が前記第1方向と交差する方向の第2方向で前記軸心と重なるように構成されていることを特徴とする動力工具を提供している。
【0033】
上記構成の動力工具によれば、第1方向及び第2方向の2方向における工具の動力工具本体からの移動を規制することが可能となる。
【0034】
上記構成において、前記第1保持部と前記第2保持部とは、少なくとも一方が前記ハウジングに対して相対移動可能に構成されており、前記相対移動によって、前記軸心との重なり合い状態を解除可能であることが好ましい。
本発明はさらに、モータと、前記モータを収容するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、工具を保持可能な工具保持部と、を備え、前記工具は、前記工具保持部に保持された状態において第1方向に延びる軸心を有する第1軸部及び第2方向に延びる軸心を有する第2軸部を有し、前記工具保持部は、前記第1軸部と係合可能な第1保持部と、前記ハウジングに対して前記第2方向に相対移動可能であって前記第2軸部と係合する第2保持部と、を有し、前記第2保持部は、前記相対移動によって、前記第2軸部と係合する保持位置と、前記第2軸部から離間した退避位置とに位置を変更可能に構成されており、前記第2保持部は、前記保持位置に位置する場合には前記第1保持部と協働して前記工具を取外しできないように保持するとともに、前記退避位置に位置する場合には前記工具保持部から前記工具を取外すことが可能となるように構成されていることを特徴とする動力工具を提供している。
上記構成において、前記第2保持部は前記ハウジングとは別体の弾性体であることが好ましい。
また、前記第2保持部は、前記第1保持部とは異なる位置に設けられ、前記工具が前記工具保持部に保持された状態において前記第2軸部の少なくとも一部を周方向全域に亘り取り囲み前記第1保持部と協働して前記工具を保持可能に構成され、前記第1保持部と前記工具とを前記第1方向に相対移動させることにより、前記工具を前記第1保持部に保持させることが可能に構成されていることが好ましい。
また、前記第1保持部は、前記工具が前記工具保持部に保持された状態において、前記ハウジングに対する前記工具の前記第1方向の移動を許容するとともに前記第1軸部の軸心を中心とした回動を許容するように構成され、前記第2保持部は、前記工具が前記工具保持部に保持された状態において、前記ハウジングに対する前記工具の前記第1方向の移動を規制するとともに、前記工具の前記第1軸部の軸心を中心とした回動を規制するように構成されていることが好ましい。
また、前記第2保持部を前記退避位置から前記保持位置に移動させることにより、前記工具を前記第2保持部に保持させることが可能であることが好ましい。
また、前記第1保持部は、前記第1軸部が挿入可能な円筒状に構成され、前記第2保持部は、前記第1軸部が前記第1保持部に挿入された状態で、前記保持位置と前記退避位置との間で移動可能であり、前記保持位置は、前記ハウジングに対して前記工具の前記ハウジングに対する前記第1方向の移動及び前記第1軸部の軸心を中心とした回動を規制可能な位置であり、前記退避位置は前記第2軸部と離間する位置であることが好ましい。
また、前記ハウジングには、突起が設けられ、前記第2保持部は、前記ハウジングと別体に設けられ、前記第2保持部は、前記突起の突出方向に開口するとともに前記突起を受入れて固定する第1開口が形成された被保持部と、前記突出方向に開口するとともに前記第2軸部の少なくとも一部を受け入れる第2開口が形成された保持部と、を有することが好ましい。
また、前記第2保持部は、自己の弾性力により、又は外部からの付勢力を受けて前記ハウジングに対して前記保持位置と前記退避位置との間で移動可能であることが好ましい。
また、前記第1開口と前記第2開口とは、同方向に開口することが好ましい。
また、前記保持位置において前記第2開口が開口する方向と、前記退避位置において前記第2開口が開口する方向とは互いに異なることが好ましい。
また、前記ハウジングに支持され、先端工具が着脱可能な先端工具着脱部を、さらに有し、前記工具は、前記先端工具及び前記先端工具を前記先端工具着脱部に対して取付け・取外しするための取替工具の少なくともいずれか一方であることが好ましい。
また、前記ハウジングに支持され、先端工具が着脱可能な先端工具着脱部を、さらに有し、前記工具は、前記先端工具及び前記先端工具を前記先端工具着脱部に対して取付け・取外しするための取替工具の少なくともいずれか一方であり、前記先端工具はそれぞれ異なる方向に延びる第1先端工具軸と第2先端工具軸とを有し、前記取替工具はそれぞれ異なる方向に延びる第1取替工具軸と第2取替工具軸とを有し、前記第1保持部は、前記第1先端工具軸と前記第1取替工具軸との少なくともいずれか一方を保持可能に構成され、前期第2保持部は、前記第2先端工具軸と前記第2取替工具軸との少なくともいずれか一方を保持可能に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の動力工具によれば、作業者の意図せぬ工具の動力工具本体からの脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る振動工具の内部構造を示す断面側面図である。
【
図2】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る振動工具のハウジング及び工具保持部の外観を示す右側面図であり、(b)は(a)のB-B線断面図であり、(c)は(b)のC-C線断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態の係る振動工具の工具保持部の第2保持部のハウジングへの組付構造を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る振動工具の工具保持部への六角レンチの着脱過程を説明するための図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る振動工具の第1変形例を示す断面図であり、工具保持部への六角レンチの着脱過程を説明するための図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る振動工具の第2変形例を示す図であり、(a)は断面側面図、(b)及び(c)は工具保持部への六角レンチの着脱過程を説明するための図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る振動工具の第3変形例を示す図であり、工具保持部への六角レンチの着脱過程を説明するための図である。
【
図8】(a)は本発明の第2の実施の形態に係る振動工具のハウジング及び工具保持部の外観を示す右側面図であり、(b)は(a)のB-B線断面図であり、(c)は(b)のC-C線断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態に係る振動工具の工具保持部への六角レンチの着脱過程を説明するための図である。
【
図10】(a)は本発明の第3の実施の形態に係る振動工具のハウジング及び工具保持部の外観を示す右側面図であり、(b)は(a)のB-B線断面図であり、(c)は(b)のC-C線断面図である。
【
図11】本発明の第3の実施の形態に係る振動工具の工具保持部への六角レンチの着脱過程を説明するための図である。
【
図12】(a)は本発明の第4の実施の形態に係る振動工具のハウジング及び工具保持部の外観を示す右側面図であり、(b)は(a)のB-B線断面図である。
【
図13】本発明の第4の実施の形態に係る振動工具の工具保持部への六角レンチの着脱過程を説明するための図である。
【
図14】(a)は本発明の第5の実施の形態に係るスクリュードライバの工具保持部へのチャックハンドルの着脱過程を説明するための図であり、(b)は(a)のB-B線断面図である。
【
図15】従来例の振動工具の工具保持部への六角レンチの着脱過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1の実施の形態に係る動力工具の一例である振動工具1について
図1乃至
図7を参照しながら説明する。振動工具1は、先端工具Pの駆動(振動)によって被加工材の研磨、切削、切断等を行う動力工具である。
【0038】
以下の説明においては、図中に示されている「前」を前方向、「後」を後方向、「上」を上方向、「下」を下方向と定義する。また、振動工具1を後から見た場合の「右」を右方向、「左」を左方向と定義する。本明細書において寸法、数値等について言及した場合には、当該寸法及び数値等と完全に一致する寸法及び数値だけでなく略一致する寸法及び数値等(例えば、製造誤差の範囲内である場合)を含むものとする。「同一」、「直交」、「平行」、「一致」、「面一」等についても同様に「略同一」、「略直交」、「略平行」、「略一致」、「略面一」等を含むものとする。
【0039】
図1乃至
図3に示されているように、振動工具1は、電池パックBを着脱可能なハウジング2と、モータ3と、制御部4と、動力伝達部5と、先端工具Pを着脱可能な出力軸部6と、工具保持部7とを主に有している。
【0040】
図1及び
図2(a)に示されているように、ハウジング2は、本体ハウジング21と、ホルダ22とを主に有している。ハウジング2は、本発明における「ハウジング」の一例である。
【0041】
本体ハウジング21は、振動工具1の外郭をなしており、前後方向に延びる略円筒形状をなしている。
図3に示されているように、本体ハウジング21は、ハウジング2の左右方向の略中央を通り且つ左右方向に直交する分割面(仮想面)で分割された分割ハウジングとして構成されている。本体ハウジング21は、モータ3と、制御部4と、動力伝達部5と、出力軸部6の上部とを収容している。本体ハウジング21の前後方向における略中央部の直径は、作業者が作業中に把持することが可能な程度の大きさに構成されている。本体ハウジング21には、スライドスイッチ21Aと、スライドバー21Bと、電池装着部21Cと、凹部21Dと、一対の規制部21G(
図3)とが設けられている。
【0042】
図1に示されているように、スライドスイッチ21Aは、本体ハウジング21の前部の上部に設けられている。言い換えると、スライドスイッチ21Aは、本体ハウジング21の外壁に設けられ、作業者は、外部からスライドスイッチ21Aを操作することが可能である。スライドスイッチ21Aは、外部から操作されることにより、前後方向に移動する。
【0043】
スライドバー21Bは、本体ハウジング21に収容され、その前端部がスライドスイッチ21Aの下面と接続されている。これにより、スライドバー21Bは、スライドスイッチ21Aの前後方向の移動に伴い、前後方向に移動することが可能である。言い換えると、スライドバー21Bは、スライドスイッチ21Aが前方に移動する場合には、スライドスイッチ21Aと一体に前方に移動し、スライドスイッチ21Aが後方に移動する場合には、スライドスイッチ21Aと一体に後方に移動する。
【0044】
凹部21Dは、本体ハウジング21の後部に設けられている。凹部21Dは、本体ハウジング21の外周面から本体ハウジング21の内方に窪むように形成されている。凹部21Dには、ボス21Fが設けられている。
【0045】
ボス21Fは、左右方向視において凹部21Dと重なる位置に設けられている。具体的には、ボス21Fは、凹部21Dが本体ハウジング21の内方に窪むことにより画成された空間内において、左右方向に延びている。ボス21Fは、本発明における「突起」の一例である。
【0046】
また、
図2及び
図3に示されるように、本体ハウジング21の後部には、溝21aが形成されている。溝21aは、上下方向に延びるとともに所定の曲率で本体ハウジング21の内方に窪むように形成されている。また、溝21aを形成する円弧状の周面の下部には、右方に矩形状に突出する凸部21Hが設けられている。
【0047】
一対の規制部21Gは、本体ハウジング21から右方に突出するように設けられている。一対の規制部21Gは、溝21aを挟んで対称に設けられている。
【0048】
図1に示されているホルダ22は、金属合金製であり、本体ハウジング21に支持されている。ホルダ22は、軸受を介して出力軸部6を回転可能に支承している。
【0049】
図1に示されるモータ3は、ブラシ付きモータであり、回転軸31を有している。回転軸31は、前後方向に延びる軸線Aを中心に回転可能である。軸線Aは、前後方向に延び回転軸31の軸心を通る線である。モータ3は、本発明における「モータ」の一例である。
【0050】
図1に示されているように、制御部4は、コントロールボックス41と、メインスイッチ42と、速度調整ダイヤル43とを主に有している。
【0051】
コントロールボックス41は、前方が開放された略直方体状をなし、その最も短い辺が前後方向と平行となるように、本体ハウジング21の後部に収容されている。図には表れていないが、コントロールボックス41には、モータ3を制御するための制御回路が実装された基板が収容されている。
【0052】
メインスイッチ42は、本体ハウジング21のスライドバー21Bの後端部と接続されている。メインスイッチ42は、信号ケーブルを介してコントロールボックス41と電気的に接続されている。メインスイッチ42は、スライドスイッチ21Aが所定方向に引操作すなわち始動操作された場合(例えば、作業者の指によって後方にスライドされた場合)、モータ3を始動させるための工具始動信号をコントロールボックス41に出力するように構成されている。また、メインスイッチ42は、スライドスイッチが当該所定方向とは逆方向に引操作すなわち解除操作された場合(例えば、作業者の指によって前方にスライドされた場合)、工具始動信号の出力を停止するように構成されている。
【0053】
速度調整ダイヤル43は、モータ3の目標回転数を設定するための機構であり、本体ハウジング21の後部の上部に設けられている。速度調整ダイヤル43は、作業者により外部から操作可能に構成されている。速度調整ダイヤル43は、信号ケーブルを介してコントロールボックス41に収容された基板と電気的に接続されている。
【0054】
図1に示されるように、動力伝達部5は、モータ3の回転軸31に接続され、スピンドル51と、ベアリング52と、スイングアーム53とを主に有している。
【0055】
スピンドル51は、前後方向に延びている。スピンドル51は、ベアリングを介してホルダ22に回転可能に支承されている。スピンドル51の後部には、回転軸31の前端部が嵌合されている。これにより、スピンドル51は、回転軸31と一体に軸線Aを中心に回転可能である。また、スピンドル51は、偏心軸51Aを有している。
【0056】
偏心軸51Aは、スピンドル51の前端部をなし、前後方向に延びる略円柱形状をなしている。偏心軸51Aは、スピンドル51の他の部分の径よりも小径に構成され、その軸心を通る軸線Bは、軸線Aから僅かにずれている。これにより、スピンドル51が軸線Aを中心に回転する場合において、前面視において軸線Aから略右方又は略左方に位置する偏心軸51Aの外周面までの距離が変化するように構成されている。
【0057】
ベアリング52は、偏心軸51Aに設けられている。言い換えると、ベアリング52の内輪は、偏心軸51Aに固定されている。
【0058】
図1に示されているように、スイングアーム53は、円筒部53Aと、アーム部53Bとを有している。
【0059】
円筒部53Aは、上下方向に延びる略円筒形状をなしている。円筒部53Aの内周面は、出力軸部6に固定されている。
【0060】
図には表れていないが、アーム部53Bは、上面視において後方に開口をなす略コ字状をなしている。アーム部53Bは、ベアリング52の外輪と接触している。つまり、ベアリング52の外輪は、アーム部53Bによって左右方向から挟まれている。本実施の形態においては、スピンドル51が軸線Aを中心に回転すると、前面視における軸線Aから略右方略又は略左方に位置する偏心軸51Aの外周面までの距離が変化するように構成されているため、スイングアーム53は、軸線Cを中心に揺動する。軸線Cは、出力軸部6の中心を通り、軸線Aと直交している。
【0061】
図1に示されているように、出力軸部6は本体ハウジング21に支持され、出力軸61と、六角穴付ネジ62とを有している。出力軸部6は、本発明における「先端工具着脱部」の一例である。
【0062】
出力軸61は、上下方向に延びる略円筒形状をなしている。出力軸61の下部には、上下方向に延びる雌ネジ穴61aが形成されている。また、出力軸61は、複数の突起61Aを有している。複数の突起61Aは、出力軸61の下面から下方に突出している。複数の突起61Aは、出力軸61の周方向において略等間隔で設けられている。
【0063】
六角穴付ネジ62は雄ネジであり、その頭部には六角穴62aが形成されている。
【0064】
また、
図1に示されているように、本実施の形態においては、六角穴付ネジ62の頭部と出力軸61の下部とによって板状の先端工具Pを挟み込むことによって、先端工具Pを出力軸部6に保持することが可能に構成されている。具体的には、先端工具Pには、出力軸61の複数の突起61Aが係合可能な溝が形成されている。先端工具Pは、当該溝に複数の突起61Aが係合した状態において、出力軸61の下面と六角穴付ネジ62の上面とに挟み込まれることによって、出力軸部6に保持される。
【0065】
次に、
図1乃至3を参照しながら、工具保持部7及び工具保持部7に着脱可能な取替工具の一例である六角レンチQの詳細な構成について説明する。
【0066】
工具保持部7は、本体ハウジング21に設けられ、六角レンチQを保持可能に構成されている。
図1乃至
図3に示されているように、工具保持部7は、第1保持部71と、第2保持部72とを有している。工具保持部7は、本発明における「工具保持部」の一例である。
【0067】
第1保持部71は、上下方向に延びる略半円筒状に形成され、本体ハウジング21の後部に本体ハウジング21と一体に設けられている。具体的には、溝21aを形成する円弧状の周面を右方から覆うように設けられている。
【0068】
第1保持部71の内周面の曲率と、溝21aを形成する円弧状の周面の曲率とは同一に構成されている。このため、第1保持部71が設けられた領域において、溝21aを形成する周面と第1保持部の内周面とで、上下方向に延びる略円筒状の面が規定されている。第1保持部71は、本発明における「第1保持部」の一例である。
【0069】
第2保持部72は、第1保持部と異なる位置に設けられ、第1保持部71と協働して六角レンチQを保持可能に構成されている。第2保持部72は、耐熱性の高い熱硬化性の樹脂等の弾性体であり、本体ハウジング
21と別体に構成されている。第2保持部72は、左右方向の長さが前後方向及び上下方向の長さよりも短い略扁平形状に形成されている。また、第2保持部72は、下方に向かうにつれて僅かに先細るように形成されている。つまり、第2保持部72の上部の前後方向の長さは、下部の前後方向の長さよりも長い。また、
図1に示すように、第2保持部72の上端の形状は、本体ハウジング21の凹部21Dの窪む形状と同一に形成されている。
図1及び
図3に示されるように、第2保持部72は、その上部が本体ハウジング21の凹部21Dに収容されている。これにより、第2保持部72の本体ハウジング21に対する必要以上の変形が抑制されるように構成されている。第2保持部72には、被保持部72Aと、保持部72Bとを有している。第2保持部72は、本発明における「第2保持部」の一例である。
【0070】
被保持部72Aは、第2保持部72の上部をなし、第1穴72aが形成されている。第1穴72aは、被保持部72Aを左右方向に貫通している。第1穴72aの内径は、本体ハウジング21のボス21Fの外径よりも僅かに小さく構成され、第1穴72aにはボス21Fが挿通されている。言い換えると、被保持部72Aには、ボス21Fの突出方向に開口するとともにボス21Fを受け入れて固定する第1穴72aが形成されている。このような構成によれば、本体ハウジング21とは別体に設けられた第2保持部72を容易に本体ハウジング21に固定することができる。また、本実施の形態においては、被保持部72Aが凹部21Dに収容されるとともに、第1穴72aにボス21Fが挿通されることにより、第2保持部72の本体ハウジング21に対する必要以上の変形が規制されるように構成されている。被保持部72Aは、本発明における「被保持部」の一例である。第1穴72aは、本発明における「第1開口」の一例である。
【0071】
保持部72Bは、第2保持部72の下部をなし、第2穴72bが形成されている。第2穴72bは、保持部72Bを左右方向に貫通している。言い換えると、第2穴72bは、第1穴72aと同方向に延びている。このため、一体品(単一部品)として作成される工具保持部7の第2保持部72に第1穴72a及び第2穴72bを形成しやすくなり、工具保持部7の製造コストを低減することが可能となる。第2穴72bの内径は、第1穴72aの内径よりも僅かに大きく構成されている。保持部72Bは、本発明における「保持部」の一例である。第2穴72bは、本発明における「第2開口」の一例である。
【0072】
なお、本実施の形態においては、第1穴72a及び第2穴72bの両方が第2保持部72を左右方向に貫通するように形成されている。しかしながら、必ずしもこのような構成に限られない。例えば、第1穴72a及び第2穴72bの少なくともいずれか一方は、工具保持部7の右部及び左部のいずれか一方に開口をなす有底形状に形成されていても良い。
【0073】
図2及び
図3に示されるように、六角レンチQは、第1軸Q1と、第2軸Q2とを有している。第1軸Q1と第2軸Q2とは、互いに交差する方向に延びている。具体的には、第1軸Q1と第2軸Q2とは、互いに直交する方向に延びている。これにより、六角レンチQは、略L字状をなしている。第1軸Q1の外径は、第1保持部71の内径よりも僅かに小さく構成されている。また、第2軸Q2の外径は、第2保持部72の第2穴72bの内径よりも僅かに大きく構成されている。従って、第2軸Q2は第2穴72bに圧入するようなかたちで保持される。第2穴72bの周囲は摩擦係数の高い弾性材になっているので、圧入にも好適に変形可能であり、かつ保持状態においては摩擦力によって保持力を向上させることができる。
図4に示されているように、第1軸Q1及び第2軸Q2のそれぞれは、軸心Q3及び軸心Q4を有している。第1軸Q1は本発明における「第1軸部」の一例であり、第2軸Q2は本発明における「軸部」及び「第2軸部」の一例である。第1軸Q1は「第1取替工具軸」の一例であり、第2軸Q2は「第2取替工具軸」の一例である。
【0074】
図4(c)に示されているように、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、軸心Q3は上下方向に延びている。また、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、
軸心Q4は左右方向に延びている。上下方向は本発明における「第1方向」の一例であり、左右方向は本発明における「第2方向」の一例である。
【0075】
次に、
図4を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る工具保持部7への六角レンチQの着脱作業について説明する。
【0076】
まず、作業者は、六角レンチQの第1軸Q1を第1保持部71に挿通する。具体的には、作業者は溝21aに沿って下方から第1軸Q1の先端を第1保持部71に近づけ、第1軸Q1を第1保持部71に挿通する。言い換えると、六角レンチQを本体ハウジング21に対して上下方向に相対移動させることで、第1保持部71が六角レンチQの第1軸Q1の一部を収容する(
図4(a)参照)。つまり、本実施の形態においては、第1保持部71と六角レンチQとを相対移動させることにより、六角レンチQを第1保持部71に容易に保持させることが可能である。この状態において、六角レンチQの上下方向に直交する方向への移動(第1保持部71の径方向への移動)が規制される。また、第1保持部71は、第1軸Q1が第1保持部71に保持された状態において、本体ハウジング21に対する六角レンチQの上下方向の移動を許容するとともに、六角レンチQの第1軸Q1の軸心Q3を中心とした回動を許容する。
【0077】
なお、本実施の形態においては、第1軸Q1を第1保持部71に挿通する際に第1軸Q1の外周面と本体ハウジング21に設けられた凸部21Hとが当接するように構成されているため、必要以上に六角レンチQと本体ハウジング21とが擦れることがない。これにより、六角レンチQと接触することによる本体ハウジング21の摩耗を抑制することが可能となる。
【0078】
次に作業者は、
図4(a)中に矢印X1で示されるように、第2軸Q2の軸心Q4が左右方向と一致するように、六角レンチQを第1軸Q1の軸心Q3を中心に回動させる。この場合において、作業者は、
図4(b)に示されるように、第2保持部72を左方に倒す。具体的には、第2保持部72の下部をなす保持部72Bを
図4(b)の時計回り方向(矢印X3の示す方向とは反対の方向)に回動させる。このときに、第2保持部72が熱硬化性の樹脂等の弾性体であるため、保持部72Bは、凹部21Dに支持され第2保持部72の上部をなす被保持部72Aを支点として、好適に回動するかの如く変形することが可能である。以下の説明においては、外力を受けて
図4(b)の時計回り方向に回動した状態における第2保持部72の位置を「退避位置」と呼ぶ。退避位置は、第2軸Q2と保持部72Bが離間する位置である。退避位置にある第2保持部72は、六角レンチQの上下方向(特に下方向)移動に対する規制の程度が弱くなる。
【0079】
また、この状態において、第2軸Q2と第2保持部72の保持部72Bの第2穴72bの前後方向における位置は一致する。作業者は、
図4(b)中に矢印X2で示されるように、第2軸Q2をその先端から第2穴72bに挿通する。このときに、第2保持部72は、自己の弾性復元力により、保持部72Bを
図4(b)の反時計回り方向(矢印X3の示す方向)に回動する。これにより、作業者は、第2軸Q2を第2穴72bに好適に挿通させることが可能である。以下の説明においては、
図4(c)に示される保持部72Bが六角レンチQの第2軸Qを保持する状態における第2保持部72の位置を「保持位置」と呼ぶ。保持位置は、本体ハウジング21に対して六角レンチQの本体ハウジング21に対する上下方向の移動及び第1軸Q1の軸心Q3を中心とした回動を規制可能な位置である。このように、本実施の形態において、第2保持部72は、自己の弾性復元力による簡易な構成で本体ハウジング21に対して保持位置と退避位置との間で移動可能である。
【0080】
ここで、
図2及び
図4(c)に示されているように、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、第2軸Q2の軸心Q4の下方には第2保持部72の一部が位置するように構成されている。つまり、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、上下方向視で第2軸Q2の軸心Q4と第2保持部72とは重なるように構成されている。このため、六角レンチQの上下方向に直交する方向への移動が第1保持部71により規制された状態において第2保持部72により六角レンチQの上下方向への移動が規制される。これにより、作業中に本体ハウジング21に振動が発生した場合においても、六角レンチQが工具保持部7から脱落してしまうことを抑制することができる。
【0081】
また、
図4(c)に示されるように、保持部72Bは、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、左右方向における第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲んでいる。これにより、六角レンチQが工具保持部7から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。一方で、保持部72Bが本体ハウジング21に対して相対移動可能に構成されているため、本実施の形態のように保持部72Bが第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲むような構成でありながら、保持部72Bを本体ハウジング21に対して相対移動させることにより、第2保持部72に対する六角レンチQの着脱作業を行うことができる。
【0082】
また、本実施の形態においては、第2保持部72は、第1軸Q1が第1保持部71に保持された状態において、本体ハウジング21に対する六角レンチQの上下方向の移動を規制するとともに、六角レンチQの第1軸Q1の軸心Q3を中心とした回動を規制するように構成されている。このため、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、六角レンチQの工具保持部7内での回転と工具保持部7からの脱落を抑制することが可能となる。
【0083】
また、第2保持部72の保持部72Bをハウジングに対して左右方向に相対移動させることにより六角レンチQを第2保持部72に保持させることが可能に構成されている。このように本実施の形態においては、第1保持部71に第1軸Q1を保持させる際に六角レンチQを移動させる上下方向とは異なる左右方向に保持部72Bを移動させることにより六角レンチQを第2保持部72に保持させることができる。このため、六角レンチQの動力工具本体からの脱落を好適に抑制することが可能となる。
【0084】
また、
図4(c)に示される保持位置において保持部72Bの第2穴72bが開口する方向と、
図4(b)に示される退避位置において第2穴72bが開口する方向とは異なっている。このような構成によれば、第2穴72bの開口方向を変更することで、第2保持部72の六角レンチQに対する移動の規制状態を変更し、容易に六角レンチQを着脱することが可能となる。
【0085】
また、
図2(a)に示されるように、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、本体ハウジング21の一対の規制部21Gが第1軸Q1を前後方向から挟み込むように位置している。このため、六角レンチQの本体ハウジングに対するガタつきを抑制することが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態においては、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、第1保持部71の少なくとも一部が左右方向で六角レンチQの第1軸Q1の軸心Q3と重なる一方、第2保持部72の少なくとも一部が上下方向で第2軸Q2の軸心Q4と重なる。このように、工具保持部7によって第1方向及び第1方向に交差する第2方向の2方向における六角レンチQの振動工具1本体からの移動を規制することが可能に構成されている。
【0087】
一方、六角レンチQを取り外す場合には、作業者は第2保持部72が退避位置に位置するように保持部72Bを
図4(b)の時計回り方向(矢印X3の示す方向とは反対の方向)に回動させる。これにより、第2穴72bに第2軸Q2が挿通された状態が解除される。
【0088】
次に作業者は、六角レンチQを下方に移動させる。これにより、第1保持部71に第1軸Q1が挿通された状態が解除され、六角レンチQを本体ハウジング21から取り外すことができる。
【0089】
次に、
図1を参照しながら、六角レンチQを用いた、出力軸部6に対する先端工具Pの着脱作業について、説明する。
【0090】
先端工具Pを出力軸部6から取り外す場合に、作業者は、六角レンチQの第1軸Q1又は第2軸Q2の先端部を出力軸部6の六角穴付ネジ62の六角穴62aに係合させる。次に作業者は、出力軸部6の出力軸61に対する六角穴付ネジ62の螺合を緩める方向に六角レンチQを回転させる。これにより、先端工具Pが出力軸61の下面及び六角穴付ネジ62の頭部の上面により挟持された状態が解除され、先端工具Pを出力軸部6から取り外すことが可能となる。
【0091】
一方、先端工具Pを出力軸部6へ取付ける場合に、作業者は、まず出力軸61の下面に設けられた複数の突起61Aと、複数の突起61Aに対応するように先端工具Pに形成された複数の溝とを係合させる。この状態において、作業者は、六角レンチQの第1軸Q1又は第2軸Q2の先端部を六角穴62aに係合させる。そして、六角穴付ネジ62が出力軸61の雌ネジ穴61aに螺合するように、六角レンチQを回転させる。これにより、先端工具Pを出力軸部6に取り付けることが可能となる。
【0092】
次に、
図1を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る振動工具1を用いた被加工材に対する加工作業及び加工作業時における振動工具1の動作について説明する。
【0093】
電池パックBが本体ハウジング21の電池装着部21Cに装着されている状態で、作業者がスライドスイッチ21Aを操作し、メインスイッチ42がオンされると、電池パックBの電力がモータ3に供給され、モータ3の回転軸31が回転する。これに対して、スライドスイッチ21Aが操作されてメインスイッチ42がオフされると、電池パックBの電力はモータ3に供給されなくなり、モータ3の回転軸31は停止する。
【0094】
モータ3に電力が供給されると、回転軸31とスピンドル51とが一体に回転する。スピンドル51が回転すると、偏心軸51A及びベアリング52は、軸線Aの回りを公転する。ベアリング52が軸線Aの回りを公転すると、スイングアーム53が出力軸61を支点として所定角度の範囲内で往復揺動運動する。言い換えると、スピンドル51が軸線Aを中心に回転すると、前面視における軸線Aから略右方又は略左方に位置する偏心軸51Aの外周面までの距離が変化するように構成されているため、スイングアーム53は、軸線Cを中心に揺動する。具体的には、出力軸61は、軸線Cを中心として所定角度の範囲内で正回転と逆回転を交互に繰り返す。このようにして、モータ3の回転力は、出力軸61の所定角度の範囲内における回転力に変換される。
【0095】
出力軸61が所定角度の範囲内において正回転及び逆回転すると先端工具Pも軸線Cを中心として、所定角度の範囲内で揺動する。そして、先端工具Pを対象物に押し付けると、対象物を処理、例えば、研磨することができる。
【0096】
次に、
図15に示される従来例に係る振動工具900と比較しつつ、本実施の形態における振動工具1の効果について、詳細に説明する。まず、従来例に係る振動工具900の構成について説明する。
【0097】
図15に示されるように、従来例に係る振動工具900は、ハウジング91と、工具保持部92とを有している。
【0098】
工具保持部92は、ハウジング91と一体に形成されている。工具保持部92は、熱硬化性の樹脂等に比較して耐熱性の低い熱可塑性の樹脂等の弾性体である。工具保持部92は、ハウジング91から突出する一対の部材として構成されている。工具保持部92は、
図15の紙面に直交する方向に延びている。工具保持部92には、一対の規制部92Aが設けられている。
【0099】
一対の規制部92Aは、工具保持部92を構成する一対のリブのそれぞれの突出端部に設けられ、
図15の紙面に直交する方向に延びている。一対の規制部92Aの突出端によって開口92aが形成されている。
【0100】
また、工具保持部92は、六角レンチZを保持可能に構成されている。六角レンチZは、工具保持部92に保持された状態において、紙面に直交する方向に延びる軸線Z1を有する軸部を有している。当該軸部の直径は、紙面上における一対の規制部92A間の距離よりも大きく構成されている。
【0101】
工具保持部92に六角レンチZを保持する場合において、作業者は、
図15(a)乃至(d)に示されるように、紙面右方から六角レンチZの軸部を工具保持部92に圧入により嵌合させる。具体的には、
図15(b)及び(c)に示されているように、開口92aを介して一対の規制部92Aを弾性変形させつつ、六角レンチZを工具保持部92内に進入させる。
【0102】
そして、
図15(d)に示されるように、六角レンチZの軸部の直径が一対の規制部92A間の距離よりも大きく構成されているため、六角レンチZは工具保持部92からの脱落が抑制された状態で工具保持部92に保持される。一方、六角レンチZを工具保持部92から取り外す場合には、開口92aを介して一対の規制部92Aを弾性変形させつつ、六角レンチZを工具保持部92から取り出す。
【0103】
しかしながら、工具保持部92は、開口92aを有しているところ、作業中にハウジング91に発生する振動により、六角レンチZが開口92aを介して脱落してしまう可能性がある。また、工具保持部92は熱可塑性の弾性体であるところ、頻繁に六角レンチZの着脱を繰り返すことにより磨耗・劣化して嵌め合い力が弱くなる。特に、工具保持部92の構成では、六角レンチZを装着するときと、取り外すときにかかる規制部92Aの弾性変形方向が異なるため、一連の流れにおける規制部92Aの変形量が大きくなり、それに応じて着脱時において規制部92Aにかかる負荷も大きくなってしまう。この嵌め合い力の低下に起因して、六角レンチZが開口92aを介して脱落してしまう可能性があった。つまり、従来例に係る振動工具900においては、六角レンチZを左右方向に移動させることにより工具保持部92に着脱させるところ、当該着脱方向(左右方向)に開口92aが形成されているため、嵌め合い力の低下などに起因して、六角レンチZが脱落してしまう可能性が高くなっていた。
【0104】
これに対し、本実施の形態においては、
図4に示されているように、作業者は、第1保持部71に対して六角レンチQを移動させることにより六角レンチQを第1保持部71に保持させるところ、上下方向視において第2軸Q2の軸心Q4と第2保持部72とが重なるように構成されている。このため、六角レンチQの上下方向に直交する方向への移動が第1保持部71により規制された状態において第2保持部72により六角レンチQの上下方向への移動が規制されている。これにより、作業中に動力工具本体に振動が発生した場合においても、工具が工具保持部から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。また、第2保持部72に六角レンチQを嵌め合わせるための規制部を設ける必要がないため、嵌め合い力の低下を考慮する必要がない。また、六角レンチQの着脱時にかかる第2保持部72の弾性変形方向は一方向となり、変形量を抑えることできるため、第2保持部72の劣化を抑制することができる。
【0105】
特に、本実施の形態においては、保持部72Bは、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、左右方向における第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲んでいる。これにより、六角レンチQが工具保持部7から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。一方で、保持部72Bが本体ハウジング21に対して相対移動可能に構成されているため、本実施の形態のように保持部72Bが第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲むような構成でありながら、保持部72Bを本体ハウジング21に対して相対移動させることにより、第2保持部72に対する六角レンチQの着脱作業を行うことができる。
【0106】
また、従来例に係る工具保持部92は耐熱性の低い熱可塑性の弾性体であるところ、作業中にハウジング91に発生する振動に起因して六角レンチZと工具保持部92との間に発生する摩擦によって工具保持部92が溶けてしまい、機能しなくなってしまう可能性があった。
【0107】
これに対し、本実施の形態に係る第2保持部72は、耐熱性の高い熱硬化性の弾性体である。このため、第2保持部72が他の部材に溶着してしまうことが抑制されている。また、本実施の形態においては、
図4(c)に示されるように、六角レンチQが工具保持部7に保持された状態において、保持部72Bの第2穴72bを形成する面と第2軸Q2とが密着している。また、保持部72Bは、本体ハウジング21に対して相対移動可能である。このため、振動工具1本体に振動が発生し六角レンチQが本体ハウジング21に対して相対的にガタついた場合においても、保持部72Bは六角レンチQの移動に追従することができる。このため、六角レンチQと保持部72Bとの間に摩擦が発生することが抑制される。
【0108】
以上、本発明を第1の実施の形態をもとに説明した。本実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0109】
例えば、
図5に第1変形例として示されるように、振動工具1は、工具保持部7に替えて工具保持部17を有していても良い。工具保持部17は、第2保持部72に替えて第2保持部172を有している。第2保持部172は、耐熱性の高い熱硬化性の樹脂等の弾性体である。第2保持部172は、被保持部172Aと保持部172Bとを有している。被保持部172Aは、第1の実施の形態に係る被保持部72Aと同一に構成されているため、説明を省略する。工具保持部17は、本発明における「工具保持部」の一例である。第2保持部172は、本発明における「第2保持部」の一例である。被保持部172Aは本発明における「被保持部」の一例であり、保持部172Bは本発明における「保持部」の一例である。
【0110】
保持部172Bには、その前面に開口し、前後方向に延びる溝172bが形成されている。また、保持部172Bには、溝172bの内方に向かって突出する弁部172Cが設けられている。
【0111】
工具保持部17に六角レンチQを取り付ける場合、作業者は、六角レンチQの第1軸Q1が第1保持部71に保持された状態で六角レンチQを第1軸Q1の軸心Q3を中心に回動させる。
図5(b)に示されるように、第2軸Q2は、弁部172Cを弾性変形させつつ弁部172Cを通過して、溝172
bの奥へ進入する。第2軸Q2
が通過したあと、弁部172Cの形状は弾性変形前の形状に戻る。これにより、
図5(c)に示されるように、六角レンチQの第1軸Q1の軸心Q3を中心とした回動が規制される。
【0112】
第1変形例においても、六角レンチQが工具保持部17に保持された状態において、上下方向視において第2軸部Q2の軸心Q4と第2保持部172とが重なるように構成されている。このため、六角レンチQの上下方向に直交する方向への移動が第1保持部71により規制された状態において第2保持部172により六角レンチQの上下方向への移動が規制されている。これにより、作業中に振動工具1本体に振動が発生した場合においても、六角レンチQが工具保持部17から脱落してしまうことを抑制することができる。なお、六角レンチQを第2保持部172から取り外す場合には、前述の第2保持部72と同様に、第2保持部172を左方へ弾性変形させて退避位置に移動させることで、六角レンチQを取り外すことができる。
【0113】
また、
図6に第2変形例として示されるように、振動工具1は、工具保持部7に替えて工具保持部27を有していても良い。工具保持部27は、第2保持部72に替えて第2保持部272を有している。工具保持部27は、本発明における「工具保持部」の一例である。第2保持部272は、本発明における「第2保持部」の一例である。
【0114】
第2保持部272は、耐熱性の高い熱硬化性の樹脂等の弾性体である。第2保持部272の外形は、第2保持部72の外形と略同一に形成されている。第2保持部272には第2保持部272を左右方向に貫通する貫通穴272aが形成されている。貫通穴272aは、左右方向視において上下方向に延びる長軸を有する略楕円状に形成されている。貫通穴272aには、本体ハウジング21の凹部21Dのボス21Fが挿通されている。
【0115】
工具保持部27に六角レンチQを取り付ける場合、作業者は、
図6(b)に示されるように、第2保持部272を左方に倒す。具体的には、第2保持部272の下部をなす保持部272Bを
図6(b)の時計回り方向(矢印X5の示す方向とは反対の方向)に回動させる。つまり、第2保持部272が退避位置に位置するように回動させる。このときに、第2保持部272が熱硬化性の樹脂等の弾性体であるため、第2保持部272の下部は第2保持部272の上部を支点として好適に回動するかの如く変形することが可能である。
【0116】
次に、作業者は、
図6(b)中に矢印X4で示されるように、第2軸Q2をその先端から貫通穴272aに挿通する。このときに、第2保持部272は、自己の弾性復元力により、保持位置に向かって回動するかの如く変形する。これにより、作業者は、第2軸Q2を貫通穴272aに挿通させることが可能である。
【0117】
第2変形例においても、六角レンチQが工具保持部27に保持された状態において、上下方向視において第2軸部Q2の軸心Q4と第2保持部272とが重なるように構成されている。このため、六角レンチQの上下方向に直交する方向への移動が第1保持部71により規制された状態において第2保持部272により六角レンチQの上下方向への移動が規制されている。これにより、作業中に振動工具1本体に振動が発生した場合においても、六角レンチQが工具保持部27から脱落してしまうことを抑制することができる。
【0118】
また、
図6(a)に示されるように、第2保持部272は本体ハウジング21の凹部21Dのボス21Fと協働して、六角レンチQが工具保持部27に保持された状態において、左右方向における第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲んでいる。このため、六角レンチQが工具保持部27から脱落してしまうことを抑制することができる。また、第2保持部272が本体ハウジング21に対して相対移動可能に構成されているため、第2保持部272に対する六角レンチQの着脱作業が容易となる。また、ボス21Fと六角レンチQの第2軸Q2をともに貫通穴272a挿通することができるため、第2保持部272に貫通穴を一つ形成すれば足りるため、よりシンプルな形状で第2保持部を実現することが可能となる。
【0119】
また、
図7に第3変形例として示されるように、振動工具1は、工具保持部7に替えて工具保持部37を有していても良い。工具保持部37は、第1保持部71に替えて第1保持部371を有している。第1保持部371は、第1円筒部371Aと、第2円筒部371Bと、付勢部材371Cとを有している。工具保持部37は、本発明における「工具保持部」の一例である。第1保持部371は、本発明における「第1保持部」の一例である。
【0120】
第1円筒部371Aは、本体ハウジング21と一体に設けられ、上壁を有し上下方向に延びる略有底円筒状をなしている。第2円筒部371Bは、上下方向に延びる略円筒状をなしている。第2円筒部371Bの外径は、第1円筒部371Aの内径よりも僅かに小さく構成されている。第2円筒部371Bは、第1円筒部371A内を上下方向に摺動可能に、第1円筒部371Aに収容されている。また、第2円筒部371Bの内径は、六角レンチQの第1軸Q1の外径よりも僅かに大きく構成されている。第2円筒部371Bは、その内周面から径方向内方に突出する突出部371Dを有している。
【0121】
付勢部材371Cは、コイルスプリングである。付勢部材371Cは、上下方向において、第1円筒部371Aと第2円筒部371Bとの間に配置されている。具体的には、付勢部材371Cの上端は第1円筒部371Aの上壁の下面に固定され、付勢部材371Cの下端は突出部371Dの上面に固定されている。これにより、付勢部材371Cは、第2円筒部371Bを第1円筒部371Aに対して下方に付勢している。
【0122】
図7(a)に示されるように、六角レンチQの第1軸Q1は、その先端部が第2円筒部371B内に収容されることにより、第1保持部371に保持される。当該第1軸Q1が第1保持部371により保持された状態を解除する場合において、作業者は、
図7(b)に示されるように、第2円筒部371Bを付勢部材371Cの付勢力に抗して押し上げる。第2円筒部371Bが上方へ退避することにより、第
1軸Q1が第1保持部371により保持された状態が解除される。これにより、第1保持部371による六角レンチQに対する右方向移動の規制が無くなるので、作業者は、六角レンチQを工具保持部37から取り外すことが可能である。なお、作業者が第2円筒部371Bから手を離すことにより、第2円筒部371Bは、付勢部材371Cの付勢力により下方に移動する。
【0123】
一方、先端工具Pの交換作業後に六角レンチQを工具保持部37に取り付ける場合には、作業者は、第2円筒部371Bを付勢部材371Cの付勢力に抗して押し上げる。その後、作業者が第2円筒部371Bから手を離すことにより第2円筒部371Bが付勢部材371Cの付勢力により下方に移動し第1軸Q1の先端部を収容する。
【0124】
また、本実施の形態においては、工具保持部7が保持する対象は取替工具の一例である六角レンチQであるが、工具保持部7は、先端工具を保持可能に構成されていても良い。このような構成によれば、工具保持部を用いることにより、先端工具の不使用時に先端工具が動力工具本体から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。また、先端工具の交換が容易となる。
【0125】
また、工具保持部が保持可能な先端工具は、それぞれ異なる方向に延びる第1先端工具軸と第2先端工具軸とを有するように構成されていても良い。この場合においては、工具保持部は、第1保持部が第1先端工具軸を保持するとともに、第2保持部が第2先端工具軸を保持するように構成されていることが好ましい。このような構成によれば、工具保持部を用いることにより、それぞれ異なる方向に延びる第1先端工具軸及び第2先端工具軸を有する先端工具が動力工具本体から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。
【0126】
次に、
図8及び
図9を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る動力工具の一例である振動工具200について説明する。振動工具200は、基本的に第1の実施の形態に係る振動工具1と同一の構成を有しており、振動工具1と同一の構成については同一の参照番号を付し説明を適宜省略し、相違する構成について主に説明する。また、振動工具1と同一の構成については、上記において説明した効果と同様の効果を奏する。
【0127】
第2実施形態に係る振動工具200は、ハウジング2に替えて、ハウジング210を有している。また、振動工具200は、工具保持部7に替えて、工具保持部220を有している。
【0128】
ハウジング210は、本体ハウジング211を有している。本体ハウジング211は、振動工具200の外郭をなし、支持部211Aを有している。ハウジング210は、本発明における「ハウジング」の一例である。
【0129】
図8(c)に示されるように、支持部211Aは、その下部に開口を有するとともに左右方向に延びる略円筒状をなしている。支持部211Aの内部には、左右方向に延びるボス211Bが設けられている。ボス211Bは、本発明における「突起」の一例である。
【0130】
工具保持部220は、第2保持部72に替えてOリング221を有している。Oリング221は、略円環状の部材であり、耐熱性の高い熱硬化性の樹脂等の弾性体である。Oリング221は、その直径方向において互いに反対側に位置する部分を径方向内方に変形させることにより8の字状に形成されたうえ、本体ハウジング211に組付けられている。Oリング221の径方向内方に変形させた部分は、支持部211Aの下部に形成された開口に挿通されている。
図8(c)に示されるように、本体ハウジング211に組付けられた状態において、Oリング221は、その上部をなす被保持部221Aと、その下部をなす保持部221Bとを有している。被保持部221Aの内周面によって第1穴221aが形成され、保持部221Bの内周面によって第2穴221bが形成されている。Oリング221は、第1穴221aにボス211Bが挿通されることにより、支持部211Aに支持されている。工具保持部220は、本発明における「工具保持部」の一例である。Oリング221は、本発明における「第2保持部」の一例である。被保持部221Aは本発明における「被保持部」の一例であり、保持部221Bは本発明における「保持部」の一例である。第1穴221aは本発明における「第1開口」の一例であり、第2穴221bは、本発明における「第2開口」の一例である。
【0131】
工具保持部220に六角レンチQを取り付ける場合、作業者は、
図9(a)に示されるように、Oリング221の保持部221Bを左方に倒す。言い換えると、保持部221Bを
図9(a)の時計回り方向(矢印X7の示す方向とは反対の方向)に回動させる。つまり、Oリング221が退避位置に位置するように回動させる。このときに、Oリング221が熱硬化性の樹脂等の弾性体であるため、保持部221Bは、被保持部221Aを支点として好適に回動するかの如く変形することが可能である。
【0132】
次に、作業者は、
図9(a)中に矢印X6で示されるように、第2軸Q2をその先端から第2穴221bに挿通する。このときに、Oリング221は、自己の弾性復元力により、保持位置に向かって回動するかの如く変形する。これにより、作業者は、第2軸Q2を第2穴221bに挿通させることが可能である。
【0133】
ここで、
図8(c)に示されているように、六角レンチQが工具保持部220に保持された状態において、下面視で第2軸Q2の軸心Q4とOリング221とは重なるように構成されている。つまり、六角レンチQが工具保持部220に保持された状態において、上下方向視で第2軸Q2の軸心Q4とOリング221とは重なるように構成されている。このため、六角レンチQの上下方向に直交する方向への移動が第1保持部71により規制された状態においてOリング221により六角レンチQの上下方向への移動が規制される。これにより、作業中に本体ハウジング21に振動が発生した場合においても、六角レンチQが工具保持部220から脱落してしまうことを抑制することができる。
【0134】
また、
図8(c)に示されるように、保持部221Bは、六角レンチQが工具保持部220に保持された状態において、左右方向における第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲んでいる。これにより、六角レンチQが工具保持部220から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。一方で、保持部221Bが本体ハウジング211に対して相対移動可能に構成されているため、本実施の形態のように保持部221Bが第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲むような構成でありながら、保持部221Bを本体ハウジング211に対して相対移動させることにより、Oリング221に対する六角レンチQの着脱作業を行うことができる。Oリングはシール部材としても使用される部品であり、様々な大きさのものが安価に製造可能である。従って、本実施の形態の場合、より安価な動力工具を実現できる。
【0135】
次に、
図10及び
図11を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係る動力工具の一例である振動工具300について説明する。振動工具300は、基本的に第1の実施の形態に係る振動工具1と同一の構成を有しており、振動工具1と同一の構成については同一の参照番号を付し説明を適宜省略し、相違する構成について主に説明する。また、振動工具1と同一の構成については、上記において説明した効果と同様の効果を奏する。
【0136】
第3の実施の形態に係る振動工具300は、ハウジング2に替えて、ハウジング310を有している。また、振動工具300は、工具保持部7に替えて、工具保持部320を有している。
【0137】
ハウジング310は、本体ハウジング311を有している。本体ハウジング311は、振動工具300の外郭をなし、支持部311Aを有している。ハウジング310は、本発明における「ハウジング」の一例である。
【0138】
図10(c)に示されるように、支持部311Aは、その下部に開口を有するとともに左右方向に延びる略円筒状をなしている。支持部311Aの内部には、左右方向に延びるボス311Bが設けられている。ボス311Bは、本発明における「突起」の一例である。
【0139】
工具保持部320は、耐熱性を有する繊維からなる紐321を有している。紐321は、左右方向に幅を有する無端状に形成されている。紐321は、その直径方向において互いに反対側に位置する部分を径方向内方に変形させることにより8の字状に形成されたうえ、本体ハウジング311に組付けられている。紐321の径方向内方に変形させた部分は、支持部311Aの下部に形成された開口に挿通されている。
図10(c)に示されるように、本体ハウジング311に組付けられた状態において、紐321は、その上部をなす被保持部321Aと、その下部をなす保持部321Bとを有している。被保持部321Aの内周面によって第1穴321aが形成され、保持部321Bの内周面によって第2穴321bが形成されている。紐321は、第2穴321bにボス311Bが挿通されることにより、支持部311Aに支持されている。工具保持部320は、本発明における「工具保持部」の一例である。紐321は、本発明における「第2保持部」の一例である。被保持部321Aは本発明における「被保持部」の一例であり、保持部321Bは本発明における「保持部」の一例である。第1穴321aは本発明における「第1開口」の一例であり、第2穴321bは本発明における「第2開口」の一例である。
【0140】
工具保持部320に六角レンチQを取り付ける場合、作業者は、
図11(a)に示されるように、紐321の保持部321Bを左方に倒す。言い換えると、保持部321Bを
図11(a)の時計回り方向(矢印X9の示す方向とは反対の方向)に回動させる。つまり、紐321が退避位置に位置するように回動させる。
【0141】
次に、作業者は、
図11(a)中に矢印X8で示されるように、第2軸Q2をその先端から第2穴321bに挿通する。これと同時に作業者は、矢印X9で示されるように、保持部321Bを
図11(a)の反時計回り方向に回動させる。
【0142】
ここで、
図10(c)に示されているように、六角レンチQが工具保持部320に保持された状態において、下面視で第2軸Q2の軸心Q4と紐321とは重なるように構成されている。つまり、六角レンチQが工具保持部320に保持された状態において、上下方向視で第2軸Q2の軸心Q4と紐321とは重なるように構成されている。このため、六角レンチQの上下方向に直交する方向への移動が第1保持部71により規制された状態において紐321により六角レンチQの上下方向への移動が規制される。これにより、作業中に本体ハウジング21に振動が発生した場合においても、六角レンチQが工具保持部320から脱落してしまうことを抑制することができる。
【0143】
また、
図10(c)に示されるように、保持部321Bは、六角レンチQが工具保持部320に保持された状態において、左右方向における第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲んでいる。これにより、六角レンチQが工具保持部320から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。一方で、保持部321Bが本体ハウジング311に対して相対移動可能に構成されているため、本実施の形態のように保持部321Bが第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲むような構成でありながら、保持部321Bを本体ハウジング311に対して相対移動させることにより、紐321に対する六角レンチQの着脱作業を行うことができる。
【0144】
また、本実施の形態においては、紐321を用いているため、工具保持部に弾性体を用いた場合と比較して、容易に保持部321Bを本体ハウジング311に対して相対移動させることが可能となる。
【0145】
次に、
図12及び
図13を参照しながら、本発明の第4の実施の形態に係る動力工具の一例である振動工具400について説明する。振動工具400は、基本的に第1の実施の形態に係る振動工具1と同一の構成を有しており、振動工具1と同一の構成については同一の参照番号を付し説明を適宜省略し、相違する構成について主に説明する。また、振動工具1と同一の構成については、上記において説明した効果と同様の効果を奏する。
【0146】
第4の実施の形態に係る振動工具400は、ハウジング2に替えて、ハウジング410を有している。振動工具400は、工具保持部7に替えて、工具保持部420を有している。また、振動工具400は、トーションスプリング421Gを有している。
【0147】
ハウジング410は、本体ハウジング411を有している。本体ハウジング411は、振動工具400の外郭をなし、支持部411Aを有している。ハウジング410は、本発明における「ハウジング」の一例である。
【0148】
図12に示されるように、支持部411Aは、本体ハウジング411の後部の下部に設けられている。支持部411Aの内部には、左右方向に延びる空間が画成されている。支持部411Aの下部には開口411aが形成され、支持部411Aの右部には開口411bが形成されている。
【0149】
工具保持部420は、第2保持部421を有している。第2保持部421は、摺動部421Aと、回動部421Dとを有している。摺動部421Aは、左右方向に延び、第1部分421Bと、第2部分421Cとを有している。工具保持部420は、本発明における「工具保持部」の一例である。第2保持部421は、本発明における「第2保持部」の一例である。
【0150】
第1部分421Bは、左右方向に延びる略直方体状に形成されている。第1部分421Bの形状は、支持部411Aの右部下部の内部空間と同一に形成されている。第1部分421Bは、支持部411A内を左右方向に摺動可能である。第1部分421Bの左端は回動部421Dと当接している。
【0151】
第2部分421Cは、第1部分421Bから右方に延びる略直方体状に形成されている。第2部分421Cの左右方向に直交する断面形状は、側面視における支持部411Aの開口411bの形状と略同一に構成されている。また、第2部分421Cの左右方向に直交する断面積は、第1部分421Bの左右方向に直交する断面積より小さい。このため、
図13に示されるように、摺動部421Aの右方への摺動が支持部411Aの内周面によって規制されるように構成されている。また、
図13(a)に示されるように、外力が働いていない状態において、第2部分421Cは、支持部411Aの右側面から右方へ延出している。
【0152】
回動部421Dは、当接部421Eと、保持部421Fとを有している。当接部421Eは、前後方向に延びる略平板状をなしている。当接部421Eは、摺動部421Aの左端と当接している。当接部421Eには、その前面及び後面から突出する軸部421Hが設けられている。図には表れていないが、軸部421Hは、本体ハウジングに回転可能に支持されている。これにより、回動部421Dは、軸部421Hの軸心を中心として本体ハウジング411に対して回動可能である。
【0153】
保持部421Fは、当接部421Eと一体に形成されている。つまり、保持部421Fは、軸部421Hの軸心を中心として本体ハウジング411に対して回動可能である。保持部421Fには、その厚さ方向に貫通する保持穴421aが形成されている。
【0154】
トーションスプリング421Gは、軸部421Hに巻回され、一端が当接部421Eに係合し、他端が本体ハウジング411に係合している。トーションスプリング421Gは、回動部421Dを
図13(a)の時計回り方向に付勢している。言い換えると、トーションスプリング421Gは、退避位置へ向かう方向へ回動部421Dを付勢している。これにより、当接部421Eと当接する摺動部421Aも右方に付勢されている。そして、六角レンチQも第2部分421Cから右方への付勢力を受けるので、第1保持部71と六角レンチQとの左右方向のガタつきが抑制される。
【0155】
工具保持部420に六角レンチQを取り付ける場合、作業者は、六角レンチQの第1軸
Q1を第1保持部71に挿通する。この状態において、第1軸Q1の外周面と摺動部421Aの第2部分421Cとが接触するとともに、第1軸Q1が第2部分421Cをトーションスプリング421Gの付勢力に抗して内方(左方)に押し込む。これにより、
図13(b)に示されるように、回動部421Dが軸部421Hを中心として本体ハウジング411に対して回動する。つまり、第2保持部421は、保持位置に向けて移動する。この状態において、作業者は、第2軸Q2をその先端から保持穴421aに挿通する。
【0156】
ここで、
図13(b)に示されているように、六角レンチQが工具保持部420に保持された状態において、下面視で第2軸Q2の軸心Q4と第2保持部421とは重なるように構成されている。つまり、六角レンチQが工具保持部420に保持された状態において、上下方向視で第2軸Q2の軸心Q4と第2保持部421とは重なるように構成されている。このため、六角レンチQの上下方向に直交する方向への移動が第1保持部71により規制された状態において第2保持部421により六角レンチQの上下方向への移動が規制される。これにより、作業中に本体ハウジング21に振動が発生した場合においても、六角レンチQが工具保持部420から脱落してしまうことを抑制することができる。
【0157】
また、
図13(b)に示されるように、保持部421Fは、六角レンチQが工具保持部420に保持された状態において、左右方向における第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲んでいる。これにより、六角レンチQが工具保持部420から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。一方で、保持部421Fが本体ハウジング411に対して相対移動可能に構成されているため、本実施の形態のように保持部421Fが第2軸Q2の一部を周方向全域に亘り取り囲むような構成でありながら、保持部421Fを本体ハウジング411に対して相対移動させることにより、第2保持部421に対する六角レンチQの着脱作業を行うことができる。
【0158】
次に、
図14を参照しながら、本発明の第5の実施の形態に係る動力工具の一例であるスクリュードライバ500について説明する。スクリュードライバ500は、図示せぬ先端工具を用いて、モータの駆動力によりネジ等の締結具を締め付けるための電動工具である。
【0159】
第5の実施の形態に係るスクリュードライバ500は、ハウジング510と、工具保持部520と、出力部530とを主に備えている。また、本実施の形態においては、工具保持部520は、本発明に係る取替工具の一例としてチャックハンドルQ´を保持可能に構成されている。
【0160】
ハウジング510は、スクリュードライバ500の外郭をなす本体ハウジング511を有している。本体ハウジング511は、支持部511Aを有している。
【0161】
図14(b)に示されるように、支持部511Aには、本体ハウジング511の内方に窪む溝511aが形成されている。
【0162】
工具保持部520は、第1保持部521と、第2保持部522とを有している。第1保持部521は、前上方から後下方へと延びる略円筒状に形成され(以下、第1保持部521が延びる方向を所定方向と呼ぶ)、本体ハウジング511の下部に本体ハウジング511と一体に設けられている。所定方向は、本発明における「第1方向」の一例である。
【0163】
第2保持部522は、第1保持部521と異なる位置に設けられ、第1保持部521と協働してチャックハンドルQ´を保持可能に構成されている。第2保持部522は、耐熱性の高い熱硬化性の樹脂等の弾性体であり、その一端部が支持部511Aの溝511aに固定されるとともに、その他端部をなす保持部522Aが一端部から略円環状に突出している。保持部522Aには、保持穴522aが形成されている。
【0164】
出力部530は、前後方向に延びる先端工具着脱部531を主に有している。先端工具着脱部531は、第1円筒部531Aと、第2円筒部531Bとを有している。
【0165】
第1円筒部531Aは、前後方向に延びる略円筒状をなしている。第1円筒部531Aには、被係合部531Cが設けられている。被係合部531Cは、第1円筒部531Aの周方向において略等間隔で第1円筒部531Aの前面から突出する複数の突起を有している。
【0166】
第2円筒部531Bは、前後方向に延びる略円筒状をなしている。第2円筒部531Bの外径は、第1円筒部531Aの外径よりも小さく構成されている。また、第2円筒部531Bには、第2円筒部531Bの径方向に延びる溝531aが形成されている。
【0167】
また、先端工具着脱部531には、先端工具保持部531Dが設けられている。先端工具保持部531Dは、第2円筒部531Bの前面から前方に延びている。先端工具保持部531Dは、左右方向及び上下方向に対称な複数対の部材から構成され、第1円筒部531Aと第2円筒部531Bとが相対回転することに伴い、それぞれの部材が互いに離間接近するように構成されている。
【0168】
チャックハンドルQ´は、ハンドル部Q´1と、延出部Q´2と、係合部Q´3と、突起部Q´4とを有している。
【0169】
ハンドル部Q´1は、工具保持部520に保持された状態において、所定方向に延びる軸心Q´5を有する略棒状に構成されている。延出部Q´2は、ハンドル部Q´1から所定方向に直交する方向に延出する略棒状をなしている。係合部Q´3は、延出部Q´2の突出端部に設けられている。係合部Q´3は、その延出端に向かうにつれて僅かに先細るように形成されている。図には表れていないが、係合部Q´3は、その周方向において略等間隔でそのテーパ面から突出する複数の突起を有している。突起部Q´4は、係合部Q´3の突出端面から所定方向に直交する方向に突出している。
【0170】
先端工具を交換する場合において、作業者は、チャックハンドルQ´の突起部Q´4を先端工具着脱部531の第2円筒部531Bの溝531aに挿通しつつ、係合部Q´3の複数の突起を被係合部531Cの複数の突起と係合させる。この状態において、作業者がハンドル部Q´1を回動させると、第1円筒部531Aと第2円筒部531Bとが相対回転する。第1円筒部531Aと第2円筒部531Bとの相対回転に伴い、先端工具保持部531Dを構成する複数の部材が離間する。これにより、先端工具が先端工具着脱部531に保持された状態が解除され、作業者は先端工具を交換することが可能となる。
【0171】
チャックハンドルQ´を工具保持部520へ取付ける場合、作業者は、ハンドル部Q´1の一端部を第1保持部521に挿通する。また、作業者は、第2保持部522の保持部522Aを所定方向に倒す。このときに、第2保持部522が熱硬化性の樹脂等の弾性体であるため、保持部522Aは支持部511Aの溝511aに固定された第2保持部522の一端部を支点として、好適に回動するかの如く変形することが可能である。つまり、第2保持部522は、退避位置に向けて好適に移動することができる。
【0172】
この状態において、作業者は、ハンドル部Q´1の他端部を保持穴522aに挿通する。このときに、第2保持部522は、自己の弾性復元力により保持部522Aを保持位置に向けて回動させる。これにより、作業者は、ハンドル部Q´1を保持穴522aに好適に挿通させることが可能である。
【0173】
また、
図14(a)に示されるように、保持部522Aは、
チャックハンドルQ´が工具保持部520に保持された状態において、左右方向におけるハンドル部Q´1の一部を周方向全域に亘り取り囲んでいる。これにより、チャックハンドルQ´が工具保持部520から脱落してしまうことを抑制することが可能となる。一方で、保持部522Aが本体ハウジング
511に対して相対移動可能に構成されているため、本実施の形態のように保持部522Aが
ハンドル部Q´1の一部を周方向全域に亘り取り囲むような構成でありながら、保持部522Aを本体ハウジング511に対して相対移動させることにより、第2保持部522に対するチャックハンドルQ´の着脱作業を行うことができる。
【0174】
以上、本発明を実施の形態及び変形例をもとに説明した。本実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形が可能なこと、またそうした変形も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。本実施の形態においては、動力工具として振動工具を例に説明したが、本発明は振動工具以外のモータで駆動される動力工具、例えば、ドリルドライバ、丸のこ、全ねじカッタ等の先端工具を交換する際に専用の工具を必要とする動力工具や、装着される先端工具自体が軸部を持っているインパクトドライバ等の動力工具にも適用可能である。
【0175】
また、本実施の形態においては、工具保持部として装着可能なものとして先端工具、または先端工具を交換する際に使用されるレンチ等の工具を例として挙げたが、本体に装着可能なような軸部を有するものであればこれらに限られず、例えばメンテナンスで使用される清掃用ブラシや、作業時の照明として使用するライト等を本体に着脱可能に構成してもよい。この場合メンテナンス時や暗所作業における作業性向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0176】
1,200,300,400…振動工具、500…スクリュードライバ、2,210,310,410,510…ハウジング、3…モータ、4…制御部、5…動力伝達部、6…出力軸部、7,220,320,420,520…工具保持部、530…出力部