(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】医用装置、医療機器の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
A61N5/10 P
(21)【出願番号】P 2018235327
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
(72)【発明者】
【氏名】井関 康
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-209012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N5/00-5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を寝台に載置した状態で動作する医療機器と前記寝台および前記被検体との位置関係に基づく第1の計画情報を取得する取得部と、
前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を、前記寝台と前記医療機器との位置関係の変化と、前記寝台と前記被検体との位置関係の変化とのうち少なくとも一方に基づいて変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成する計画生成部と、
前記計画生成部により生成された
前記第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行う制御部と、
を備える医用装置。
【請求項2】
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係に基づく第1の計画情報を取得する取得部と、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成する計画生成部と、
前記計画生成部により生成された
前記第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行う制御部と、を備え、
前記計画生成部は、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のための前記第2の計画情報を生成し、
前記異なる環境とは、前記被検体に治療ビームを照射する照射ポートの可動範囲が異なる環境である、
医用装置。
【請求項3】
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係に基づく第1の計画情報を取得する取得部と、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成する計画生成部と、
前記計画生成部により生成された
前記第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行う制御部と、を備え、
前記計画生成部は、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のための前記第2の計画情報を生成し、
前記異なる環境とは、前記被検体に治療ビームを照射する照射装置の種類が異なる環境である、
医用装置。
【請求項4】
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係に基づく第1の計画情報を取得する取得部と、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成する計画生成部と、
前記計画生成部により生成された
前記第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行う制御部と、を備え、
前記計画生成部は、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のための前記第2の計画情報を生成し、
前記異なる環境とは、前記医療機器に併設された診断装置の有無が異なる環境である、
医用装置。
【請求項5】
前記計画生成部により前記第2の計画情報が生成された場合、前記第2の計画情報が生成されたことを示す情報を表示部に表示させる表示制御部を更に備える、
請求項
1から4のうちいずれか1項記載の医用装置。
【請求項6】
前記計画生成部は、診断装置によって前記被検体を検査する場合に、既に生成した第1の計画情報を、前記診断装置に前記被検体を導入するのに適した形に変換する、
請求項1から5のうちいずれか1項記載の医用装置。
【請求項7】
前記診断装置により前記被検体を検査する旨を示す情報を表示部に表示させる表示制御部を更に備える、
請求項6記載の医用装置。
【請求項8】
前記計画生成部は、前記診断装置からの通知に基づいて自動的に前記第2の計画情報を生成する、
請求項6または7記載の医用装置。
【請求項9】
医用装置が、
被検体を寝台に載置した状態で動作する医療機器と前記寝台および前記被検体との位置関係に基づく第1の計画情報を取得し、
前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を、前記寝台と前記医療機器との位置関係の変化と、前記寝台と前記被検体との位置関係の変化とのうち少なくとも一方に基づいて変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成し、
前記生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行う、
医療機器の制御方法。
【請求項10】
医用装置が、
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係を含む第1の計画情報を取得し、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成し、
前記生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行
い、
前記第2の計画情報を生成する処理は、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のために実行され、
前記異なる環境とは、前記被検体に治療ビームを照射する照射ポートの可動範囲が異なる環境である、
医療機器の制御方法。
【請求項11】
医用装置が、
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係を含む第1の計画情報を取得し、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成し、
前記生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行
い、
前記第2の計画情報を生成する処理は、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のために実行され、
前記異なる環境とは、前記被検体に治療ビームを照射する照射装置の種類が異なる環境である、
医療機器の制御方法。
【請求項12】
医用装置が、
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係を含む第1の計画情報を取得し、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成し、
前記生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行
い、
前記第2の計画情報を生成する処理は、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のために実行され、
前記異なる環境とは、前記医療機器に併設された診断装置の有無が異なる環境である、
医療機器の制御方法。
【請求項13】
医用装置に、
被検体を寝台に載置した状態で動作する医療機器と前記寝台および前記被検体との位置関係に基づく第1の計画情報を取得させ、
前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を、前記寝台と前記医療機器との位置関係の変化と、前記寝台と前記被検体との位置関係の変化とのうち少なくとも一方に基づいて変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ
第2の計画情報を生成させ、
前記生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行わせる、
プログラム。
【請求項14】
医用装置に、
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係を含む第1の計画情報を取得させ、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ第2の計画情報を生成させ、
前記生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行わ
せ、
前記第2の計画情報を生成する処理を、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のために前記医用装置に実行させ、
前記異なる環境とは、前記被検体に治療ビームを照射する照射ポートの可動範囲が異なる環境である、
プログラム。
【請求項15】
医用装置に、
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係を含む第1の計画情報を取得させ、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ第2の計画情報を生成させ、
前記生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行わ
せ、
前記第2の計画情報を生成する処理を、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のために前記医用装置に実行させ、
前記異なる環境とは、前記被検体に治療ビームを照射する照射装置の種類が異なる環境である、
プログラム。
【請求項16】
医用装置に、
計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係を含む第1の計画情報を取得させ、
前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて
、前記第1の計画情報に含まれる
、少なくとも前記被検体が載置される寝台の姿勢角を含む角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ第2の計画情報を生成させ、
前記生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行わ
せ、
前記第2の計画情報を生成する処理を、前記第1の計画情報に従って前記被検体の治療が行われる環境とは異なる環境で前記被検体の治療が行われる場合に、当該異なる環境での前記被検体の治療のために前記医用装置に実行させ、
前記異なる環境とは、前記医療機器に併設された診断装置の有無が異なる環境である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用装置、医療機器の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重粒子線治療装置などの治療装置や、CT(Computed Tomography)装置などの診断装置が治療・診断を行う場合、治療・診断に先立って計画情報が生成される。計画情報とは、治療が行われる場合、被検体に対する治療ビームの照射角度、照射量などを規定するものである。ところで、医療の現場では、同じ環境で治療・診断が行われるとは限らず、日によって異なる環境で治療・診断が行われたり、当初想定した環境とは異なる環境で治療・診断が行われたりする場合がある。従来の技術では、環境の相違を吸収するためのソフトウェア上の工夫が十分でなく、計画情報の再生成が必要となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より効率的な運用を可能とする医用装置、医療機器の制御方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の医用装置は、取得部と、計画生成部と、制御部とを持つ。取得部は、計画情報の作成時に想定されていた医療機器と被検体との位置関係に基づく第1の計画情報を取得する。計画生成部は、前記計画情報の作成時に想定されていた位置関係と、治療または診断の実施時における医療機器と被検体との位置関係との相違に基づいて前記第1の計画情報に含まれる角度パラメータの一部を変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ前記第2の計画情報を生成する。制御部は、前記計画生成部により生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行う。
他の実施形態の医用装置は、取得部と、計画生成部と、制御部とを持つ。取得部は、被検体を寝台に載置した状態で動作する医療機器と前記寝台および前記被検体との位置関係に基づく第1の計画情報を取得する。計画生成部は、前記第1の計画情報に含まれる角度パラメータの一部を、前記寝台と前記医療機器との位置関係の変化と、前記寝台と前記被検体との位置関係の変化とのうち少なくとも一方に基づいて変更することで、前記第1の計画情報に含まれる前記医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ前記第2の計画情報を生成する。制御部は、前記計画生成部により生成された第2の計画情報に基づいて前記医療機器に指示を行う。
【発明の効果】
【0006】
本実施形態によれば、より効率的な運用を可能とする医用装置、医療機器の制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る医用装置100の使用環境の一例を示す図。
【
図6】第1の実施形態に係る医用装置100の使用環境の一例を模式的に示す図である。
【
図7】計画生成部120が第2の計画情報154を生成する場面の一例を示す図。
【
図8】治療計画段階において、表示部115により表示される画面IM1の一例を示す図。
【
図9】第1の実施形態の計画生成部120により実行される治療計画段階の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図10】第2の実施形態に係る医用装置100Aの使用環境の一例を模式的に示す図。
【
図11】寝台装置50と照射装置70と医用装置100Aとの関係を例示した図。
【
図12】計画生成部120Aが第2の計画情報154Aを生成する場面の一例を示す図。
【
図13】第2の実施形態の計画生成部120Aにより実行される治療計画段階の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図14】第3の実施形態に係る医用装置100Bの使用環境の一例を模式的に示す図。
【
図15】計画生成部120Bが第2の計画情報154Bを生成する場面の一例を示す図。
【
図16】第4の実施形態に係る医用装置100Cの使用環境の一例を示す図。
【
図17】治療計画段階において、表示部115Cにより表示される画面IM2の一例を示す図。
【
図18】第4の実施形態に係る計画生成部120Cにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図19】第5の実施形態に係る医用装置100Dの使用環境の一例を示す図。
【
図20】第6の実施形態について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の医用装置、医療機器の制御方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
[全体構成]
図1は、第1の実施形態に係る医用装置100の使用環境の一例を示す図である。医用装置100は、例えば、寝台装置10、放射線源20-1、20-2、検出器22-1、22-2、および照射装置30と接続される。
【0010】
寝台装置10は、可動式の寝台12と、寝台駆動装置14とを備える。
図2は、寝台装置10の平面図であり、
図3は、寝台装置10の側面図であり、
図4は、寝台装置10の斜視図である。
【0011】
寝台駆動装置14は、例えば、第1ヨー回転機構14Aと、ターンテーブル14Bと、第2ヨー回転機構14Cと、第3ヨー回転機構14Eと、第1ピッチ回転機構14Gと、ロール回転機構14Iと、、第2ピッチ回転機構14Kと、第4ヨー回転機構14Mと、支持部材14D、14F、14H、14J、14L、14Nとを備える。
【0012】
第1ヨー回転機構14Aは、モータM1により出力される駆動力を用いて、ターンテーブル14Bを、寝台装置10が設置される床面に対して回転軸S1を中心に回転させる。
【0013】
第2ヨー回転機構14Cは、ターンテーブル14Bと支持部材14Dの一端とを接続し、モータM2により出力される駆動力を用いて、支持部材14Dを、ターンテーブル14Bに対して回転軸S2を中心に回転させる。
【0014】
第3ヨー回転機構14Eは、支持部材14Dの他端と支持部材14Fとを接続し、図示しないモータにより出力される駆動力を用いて、支持部材14Fを、支持部材14Dに対して回転軸S3を中心に回転させる。
【0015】
第1ピッチ回転機構14Gは、支持部材14Fと支持部材14Hとを接続し、図示しないモータにより出力される駆動力を用いて、支持部材14Hを、支持部材14Fに対して回転軸S4を中心に回転させる。
【0016】
ロール回転機構14Iは、支持部材14Hと支持部材14Jとを接続し、図示しないモータにより出力される駆動力を用いて、支持部材14Jを、支持部材14Hに対して回転軸S5を中心に回転させる。
【0017】
第2ピッチ回転機構14Kは、支持部材14Jと支持部材14Lとを接続し、図示しないモータにより出力される駆動力を用いて、支持部材14Lを、支持部材14Jに対して回転軸S6を中心に回転させる。
【0018】
第4ヨー回転機構14Mは、支持部材14Lと支持部材14Nとを接続し、図示しないモータにより出力される駆動力を用いて、支持部材14Nを、支持部材14Lに対して回転軸S7を中心に回転させる。支持部材14Nは、寝台12に連結されている。
【0019】
係る構成によって、寝台装置10は、寝台12をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に並進させると共に、X軸回り、Y軸回り、およびZ軸回りに回転させることができる。寝台駆動装置14に指示信号として与えられる寝台12のポジションは(x,y,z,ψ,Φ,θ)のように表される。ψはX軸回りの回転角、ΦはY軸回りの回転角、θはZ軸回りの回転角である。寝台駆動装置14は、このように表されるポジションを実現するように、前述した各モータを制御する。
【0020】
図1に戻り、寝台12に乗せられた被検体Pには、放射線源20-1、20-2からそれぞれ放射線が照射され、被検体Pの内部の様子が検出器22-1、22-2によって撮像される。検出器22-1、22-2は、例えば、フラット・パネル・ディテクタ(FPD;Flat Panel Detector)、イメージインテンシファイア、カラーイメージインテンシファイアなどである。撮像された透過画像は、医用装置100に出力される。
【0021】
照射装置30は、照射門32を備える。照射装置30は、照射門32から被検体Pに向けて、治療ビームBを照射する。治療ビームBは、例えば、重粒子線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線などである。第1の実施形態において、照射装置30は、固定式の照射装置であるが、一定範囲内で照射角度を調整可能なものであってよい。また、照射装置30は、治療ビームBの進路を制限するコリメータによって、治療ビームBの集約程度を調整可能なものであってよい。
【0022】
[医用装置]
図5は、医用装置100の構成の一例を示す図である。医用装置100は、例えば、入力部110と、表示部115とを備える。入力部110は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、他装置と通信する通信インターフェースなどである。入力部110は、「取得部」の一例である。表示部115は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置である。
【0023】
また、医用装置100は、計画生成部120と、画像処理部122と、表示制御部124と、照射制御部126とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0024】
医用装置100は、記憶部150を備える。記憶部150は、前述したプログラムを格納するものであってよい。記憶部150には、第1の計画情報152、第2の計画情報154などの情報が格納される。
【0025】
医用装置100は、必要に応じて、入力部110によって取得された治療計画などの計画情報の一部を幾何的に変換し、第2の計画情報154を生成する。治療計画とは、被検体Pの患部がどの位置にあるときに、どこに、どの方向から、どれだけの治療ビームBを照射するかを規定するものである。具体的に、治療計画は、被検体Pの体位、寝台12のポジション、治療ビームBの照射角度、コリメータの設定、照射パターンなどの設定情報を含む。治療計画は、例えば、治療計画装置(不図示)によって生成され、医用装置100に送信される。
【0026】
先に表示制御部124について説明する。表示制御部124は、参照画像と透過画像を表示部115に表示させる。例えば3D-2Dレジストレーションを行う場合、取得したCT画像と、放射線源20-1、20-2の位置、検出器22-1、22-2の位置から作成したDRR画像を参照画像として表示し、検出器22-1、22-2から入力された透過画像を表示するように表示部115に指示する。
【0027】
画像処理部122は、参照画像と透過画像を比較して寝台12のずれ量を算出し、ずれ量を寝台装置10に送る。寝台装置10は、ずれ量を打ち消すように寝台12を移動させる。
【0028】
照射制御部126は、第1の計画情報152または第2の計画情報154に従って、被検体Pの所定の位置に所定の線量照射を行うように、照射装置30を制御する。
【0029】
[治療計画の変換について]
計画生成部120は、取得した治療計画を示す情報を、第1の計画情報152として記憶部150に記憶させる。この結果、第1の計画情報152は、少なくとも、被検体Pの体位、および寝台12のポジションを含む。更に、計画生成部120は、第1の計画情報152に含まれる角度パラメータの一部を、第1の計画情報152が適用される環境と第2の計画情報154が適用される環境との相違に基づいて変更することで、第1の計画情報152に含まれる寝台装置10および照射装置30に対する指示内容の一部を引き継いだ第2の計画情報154を生成する。この原理について、後述する各実施形態も同様である。
【0030】
図6は、第1の実施形態に係る医用装置100の使用環境の一例を模式的に示す図である。図中、医用装置100(2)が、本実施形態で説明している医用装置100に該当する。医用装置100(2)は、同じく水平方向に固定された照射ポートを有する治療室(固定照射室)での治療を制御する医用装置100(1)に向けて生成された第1の計画情報152を取得し、第1の計画情報152に変換する。なお、医用装置100(2)は、医用装置100(1)とLAN(Local Area Network)などによって接続されている。また、治療室(固定照射室)において、照射ポートは180度以内で可動であったり、照射ポートが水平方向以外の方向に固定されていてもよい。
【0031】
図7は、計画生成部120が第2の計画情報154を生成する場面の一例を示す図である。なお、以降の図において、検出器22-1、22-2の図示を省略する。
図7の左図は、第1の計画情報152における被検体Pの向きと、寝台12のポジションとを示し、右図は、第2の計画情報154における被検体Pの向きと、寝台12のポジションとを示している。第1の計画情報152では、被検体Pの頭部に対して右側から治療ビームBが照射されることが計画され、第2の計画情報154でも、被検体Pの頭部に対して右側から治療ビームBが照射されることが計画されている。但し、第2の計画情報154では、第1の計画情報152と比較すると、寝台12のZ軸回りの回転角が180度異なっていると共に、被検体Pの寝台12に対する向きも180度異なっている。このような変換が有効となるのは、例えば、治療時における医用装置100(2)の制御する寝台装置10(2)の状態が、第1の計画情報152が生成されたときに想定された寝台装置10(1)の状態と異なっているような場合である。仮に、第1の計画情報152をそのまま使用するとした場合、寝台装置10(2)の状態を第1の計画情報152で規定する状態に合わせるため、寝台12をZ軸回りに180度回転させる必要がある。しかしながら、寝台12をZ軸回りに180度回転させる場合、寝台12の駆動に時間がかかり、治療前準備や治療・診断の所要時間が長くなってしまう場合があった。また、寝台12が180度回転した状態でのキャリブレーションを実施する必要があり、装置の健全性確認に時間がかかる場合があった。なお、医用装置100(1)と医用装置100(2)が同一であってもよく、この場合、「治療時における医用装置100の制御する寝台装置10の状態が、第1の計画情報152が生成されたときに想定された寝台装置10の状態と異なっているような場合」と読み替えてよい。
【0032】
そこで、実施形態の計画生成部120では、照射装置30(2)と被検体Pの関係については第1の計画状態152で規定した関係を維持しつつ、寝台12と照射装置30(2)との位置関係と、被検体Pと寝台12との位置関係とのうち一方または双方を変更し、その変更に基づいて第1の計画状態152における角度パラメータを含むパラメータを変更することで、第1の計画情報152に含まれる照射装置30(1)に対する指示の少なくとも一部を引き継いだ第2の計画情報154を生成する。具体的に、計画生成部120は、第1の計画情報152から第2の計画情報154を生成するに際して、寝台12のZ軸回りの回転角θを180度からゼロ度に変更し、被検体Pの寝台12に対する向きをHeadFirstSpine(長手方向の第1端12A側に被検体の頭部が位置する)からFeetFirstSpine(長手方向の第2端12B側に被検体の頭部が位置する)に変更すると共に、寝台12のX軸回りの回転角ψを[360-ψ]に変換し、Y軸回りの回転角Φを[360-Φ]に変換する。また、患部の位置つまりアイソセンタ位置が照射ビームが通る軸にくるように治療台位置を変換する。また、計画生成部120は、治療ビームBの照射角度、コリメータの設定、照射パターンなどの設定に関しては第1の計画情報152に含まれる設定を引き継いで第2の計画情報154を生成する。これによって、例えば前の患者が寝台12を回転角θ=0度の状態、次の患者が寝台12を回転角θ=180度の状態で治療する場合でも計画情報154を生成することにより、常に寝台12を回転角θ=0度の状態で治療を行うことができ、更に、寝台12が回転角θ=180度近傍の状態でのキャリブレーションを実施する手間を省略することができ、操作者の負担や処理負荷を低減することができる。この結果、効率的な運用を可能とすることができる。
【0033】
表示制御部124は、位置決めおよび第2の計画情報154の生成に関する情報を表示部115に表示させる。
図8は、位置決め段階において、表示部115により表示される画面IM1の一例を示す図である。図示するように、画面IM1には、DRR画像と透過画像が表示される領域A1、治療時における被検体Pの体位や照射角度などが表示される領域A2、ずれ量が表示される領域A3などの領域が設定される。また、画面IM1には、例えば寝台12を回転角θ=180度の状態で被検体Pに対して治療ビームBを照射する計画が第1の計画情報152に含まれる場合、幾何変換を行うことで寝台12を回転角θ=0度の状態で治療を行う第2の計画情報154を生成することの指示を受け付けるためのボタンB1が設定される。このボタンB1が操作されると、計画生成部120が第2の計画情報154を生成する。
【0034】
図9は、第1の実施形態の計画生成部120により実行される治療計画段階の処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、計画生成部120は、第1の計画情報152を取得する(ステップS100)。次に、計画生成部120は、現在の寝台装置10の状態が、第1の計画情報152において想定された状態と異なっているか否かを判定する(ステップS102)。現在の寝台装置10の状態が、第1の計画情報152において想定された状態と同じであると判定された場合、本フローチャートの処理が終了する。この場合、第1の計画情報152がそのまま使用される。
【0035】
現在の寝台装置10の状態が、第1の計画情報152において想定された状態と異なっていると判定された場合、表示制御部124は、幾何変換を行うことを指示するためのボタンB1を表示部115に表示させる(ステップS104)。次に、計画生成部120は、ボタンB1が操作されたか否かを判定する(ステップS106)。ボタンB1が操作された場合、計画生成部120は、第1の計画情報152に基づいて第2の計画情報154を生成する(ステップS108)。そして、計画生成部120は、本フローチャートの処理を終了する。
【0036】
なお、ボタンB1を表示して操作を受け付けることを省略し、計画生成部120は、第1の計画情報152に、被検体Pに対して相対的に逆方向からも治療ビームBを照射する計画が含まれていると判定された場合、自動的に第2の計画情報154を生成するようにしてもよい。また、回転角θ=180度の治療計画を回転角θ=0度の治療計画に生成するように書かれているが、同じZ軸の角度で治療を行うことが目的であるため、違う角度でもよい。
【0037】
以上説明した第1の実施形態の医用装置100によれば、水平方向に固定された照射ポートを有する照射装置を用いて、被検体Pに対して相対的に異なる方向から治療ビームBを照射する際に、効率的な運用を可能とすることができる。ただし、照射ポートが180度以内で可動したり、水平方向以外の方向に固定されていてもよい。
【0038】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、専ら固定式の照射装置30を使用する前提で第2の計画情報154を生成する例について説明した。第2の実施形態では、固定式の照射装置30に関して生成された第1の計画情報152を、回転ガントリー式の照射装置70に適用する例について説明する。
【0039】
図10は、第2の実施形態に係る医用装置100Aの使用環境の一例を模式的に示す図である。以下、第2の実施形態に特有の構成については、符号の末尾に「A」を付すものとする。医用装置100Aは、回転ガントリー室に設置された寝台装置50と照射装置70を制御する。寝台装置50の構成は、第1実施形態で説明した寝台装置10と同様であってよく、これについての説明は省略する。なお、医用装置100Aは、固定照射室に設置された寝台装置10と照射装置30を制御する医用装置100とLAN(Local Area Network)などによって接続されている。
【0040】
第2の実施形態において登場する医用装置100は、便宜上、第1の実施形態と同じ符号を付しているが、上記説明した第2の計画情報154を生成する機能を有していなくてもよい。また、照射装置30は、固定式の照射装置であるが、例えば、被検体Pに対して水平に治療ビームBを照射するタイプ(照射角度Φg=90度と表記する)や、被検体Pに対して斜め上方または斜め下方45度から治療ビームBを照射するタイプ(照射角度Φg=45度と表記する)などがあるものとする。
【0041】
図11は、寝台装置50と照射装置70と医用装置100Aとの関係を例示した図である。寝台装置50は、寝台52および寝台駆動装置54を備える。これらは第1の実施形態における寝台12および寝台駆動装置54と同様のものであってよい。照射装置70は、ビームライン72と、回転ガントリー74と、回転ガントリーに設けられた一以上の照射門76とを備える。ビームライン72は、治療ビームBの元となる粒子を搬送する。ビームライン72は、回転ガントリー74と一体に回転する。回転ガントリー74は、図示しない駆動機構によって回転駆動される。照射門76は、例えば、回転ガントリー74の回転中心に向けて治療ビームBを照射する。
【0042】
図12は、計画生成部120Aが第2の計画情報154Aを生成する場面の一例を示す図である。
図11の左図は、治療計画装置(不図示)によって、医用装置100向けに生成された第1の計画情報152における被検体Pの向きと、寝台12のポジションとを示し、右図は、医用装置100Aによって生成された第2の計画情報154Aにおける被検体Pの向きと、寝台12のポジションとを示している。第1の計画情報152Aでは、被検体Pの頭部に対して右側から治療ビームBが照射されることが計画され、第2の計画情報154Aでも同様に、被検体Pの頭部に対して右側から治療ビームBが照射されることが計画されている。
【0043】
この場合において、計画生成部120Aは、Z軸回りの回転角θを180度からゼロ度に変更し、照射角度Φgを90度から270度に変更することで、その他の角度パラメータの変更を不要としている。治療室が異なるため、そもそもZ軸回りの回転角θを変更することによる課題は生じない。なお、例えば第1の計画情報152において照射角度Φgが45度である場合、計画生成部120Aは、第2の計画情報154Aにおける照射角度Φgを315度に変更する。すなわち、計画生成部120Aは、Φgを[360-Φg]に変更する。これによって、意図した照射方向を実現すると共に、被検体Pに対して固定式の照射装置30と同じ照射角度で治療ビームBを照射することができる。また、計画生成部120Aは、第1の計画情報152に含まれるコリメータの設定、照射パターンなどの設定についても併せて変換を行い、第2の計画情報154Aを生成する。これによって、再度の詳細設定をする手間を省略することができ、操作者の負担や処理負荷を低減することができる。この結果、効率的な運用を可能とすることができる。
【0044】
図13は、第2の実施形態の計画生成部120Aにより実行される位置決め段階の処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、計画生成部120Aは、第1の計画情報152を取得する(ステップS200)。次に、計画生成部120Aは、第1の計画情報152が、異なる治療室に向けて生成されたものであるか否かを判定する(ステップS202)。異なる治療室に向けて生成されたものでない場合、また、異なる治療室に向けて生成されていても変換が必要ない場合、本フローチャートの処理が終了する。この場合、第1の計画情報152Aがそのまま使用される。
【0045】
異なる治療室に向けて生成され、変換が必要なものである場合、計画生成部120Aは、第1の計画情報152における角度パラメータを変更し、第2の計画情報154Aを生成する(ステップS204)。なお、第1の実施形態と同様、異なる治療室に向けて生成されたものである場合に、変換を行うことを指示するボタンB1を表示部115に表示させ、ボタンB1が操作された場合に、第2の計画情報154Aを生成するようにしてもよい。
【0046】
以上説明した第2の実施形態の医用装置100Aによれば、固定式の照射装置30に対して生成された第1の計画情報152に基づいて回転ガントリー式の照射装置70のための第2の計画情報154Aを生成する際に、効率的な運用を可能とすることができる。
【0047】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。第2の実施形態では、固定式の照射装置30に関して生成された第1の計画情報152を、回転ガントリー式の照射装置70に適用する例について説明したが、第3の実施形態では、回転ガントリー式の照射装置70に関して生成された第1の計画情報152Aを、固定式の照射装置30に適用する例について説明する。
【0048】
図14は、第3の実施形態に係る医用装置100Bの使用環境の一例を模式的に示す図である。以下、第3の実施形態に特有の構成については、符号の末尾に「B」を付すものとする。医用装置100Bは、固定照射室に設置された寝台装置10と照射装置30を制御する。寝台装置10の構成は、第1実施形態で説明した寝台装置10と同様であってよく、これについての説明は省略する。医用装置100Bは、回転ガントリー室に設置された寝台装置50と照射装置70を制御する医用装置100AとLANなどで接続されている。
【0049】
第3の実施形態において登場する医用装置100Aは、便宜上、第2の実施形態と同じ符号を付しているが、上記説明した第2の計画情報154Aを生成する機能を有していなくてもよい。治療計画装置(不図示)は、医用装置100A向けに生成した計画情報である第1の計画情報152Aを、医用装置100Bに送信する。計画生成部120Bは、これを第1の計画情報152Bとして記憶部150Bに記憶させる。また、照射装置30は、固定式の照射装置であるが、例えば、被検体Pに対して水平に治療ビームBを照射するタイプ(照射角度Φg=90度と表記する)や、被検体Pに対して斜め上方または斜め下方45度から治療ビームBを照射するタイプ(照射角度Φg=45度と表記する)などがあるものとする。寝台装置10と照射装置30と医用装置100Bとの関係については、
図1および関連する説明を援用し、再度の説明を省略する。
【0050】
図15は、計画生成部120Bが第2の計画情報154Bを生成する場面の一例を示す図である。
図15の左図は、医用装置100Aによって生成された第1の計画情報152Aにおける被検体Pの向きと、寝台12のポジションとを示し、右図は、医用装置100Bによって生成された第2の計画情報154Bにおける被検体Pの向きと、寝台12のポジションとを示している。第1の計画情報152Aでは、被検体Pの頭部に対して右側から治療ビームBが照射されることが計画され、第2の計画情報154Bでも同様に、被検体Pの頭部に対して右側から治療ビームBが照射されることが計画されている。なお、照射装置30における照射角度Φgは90度であるものとする。
【0051】
この場合において、計画生成部120Bは、Z軸回りの回転角θをゼロ度から180度に変更することで、その他の角度パラメータの変更を不要としている。治療室が異なるため、そもそもZ軸回りの回転角θを変更することによる課題は生じない。なお、例えば照射装置30における照射角度Φgが45度であり、第1の計画情報152において照射角度Φgが315度である場合も同様の変換を行うことができる。
【0052】
計画生成部120Bは、第1の計画情報152Bに含まれるコリメータの設定、照射パターンについても併せて変換を行い、第2の計画情報154Bを生成する。これによって、再度の詳細設定をする手間を省略することができ、操作者の負担や処理負荷を低減することができる。この結果、効率的な運用を可能とすることができる。
【0053】
処理の流れに関しては、医用装置100を医用装置100Aと読み替えることで
図12のフローチャートを援用することができる。従って、再度の説明を省略する。
【0054】
以上説明した第3の実施形態の医用装置100Bによれば、回転ガントリー式の照射装置に対して生成された第1の計画情報152Aに基づいて第2の計画情報154Bを生成する際に、効率的な運用を可能とすることができる。
【0055】
なお、第2または第3の実施形態において、「固定式の照射装置」に代えて、「回転ガントリー式よりも可動範囲が制限された照射装置」が適用されてもよい。「制限された」とは、例えば、被検体Pを中心として照射位置を数十度程度の範囲で変更できることをいう。また、第2または第3の実施形態において、第2の計画情報(154Aまたは154B)を、Z軸回りの回転角θ=ゼロ、且つ被検体Pの寝台12に対する向きがFeetFirstSpineになるように変換してもよい(不図示)。
【0056】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、CT装置が併設された固定照射室に設置された固定式の照射装置30を制御するものである。構成図を省略するが、第4の実施形態に特有の構成については、符号の末尾に「C」を付すものとする。
【0057】
図16は、第4の実施形態に係る医用装置100Cの使用環境の一例を示す図である。図示するように、この固定照射室では、寝台12を延伸させた先にCT装置のガントリー90が設置されている。なお、CT装置に代えて、MR装置などの他の診断装置が設置されてもよい。CT装置は、寝台12を導入可能な方向が決まっている。例えば、第1端12Aから導入しなければならないので、CT撮影するため患者を治療台に乗せたまま、Z軸回りに180度回転させる必要がある。このため、第4の実施形態に係る医用装置100Cは、例えば、CT装置によるCT撮影が行われずに治療を行う前提で第1の計画情報154Cが生成されたが、その後、CT装置によるCT撮影を伴って治療が行われることになった場合に、第2の計画情報154Cを生成する。図示する例では、第1の実施形態と同様に、寝台12のZ軸回りの回転角θを180度からゼロ度に変更し、被検体Pの寝台12に対する向きをHeadFirstSpineからFeetFirstSpineに変更すると共に、寝台12のX軸回りの回転角ψを[360-ψ]に変換し、Y軸回りの回転角Φを[360-Φ]に変換する。これによって、意図した照射方向を実現すると共に、CT撮影に適したZ軸回りの回転角θに変更することができる。これによって、治療前後にスムーズにCT撮影を行うことができ、操作者の負担や処理負荷を低減することができる。この結果、効率的な運用を可能とすることができる。
【0058】
図17は、治療計画段階において、表示部115Cにより表示される画面IM2の一例を示す図である。図示するように、画面IM2には、DRR画像と透過画像が表示される領域A1、治療時における被検体Pの体位や照射角度などが表示される領域A2、ずれ量が表示される領域A3、その日にCT撮影が行われることを示す情報が表示される領域A4などの領域が設定される。領域A4の内容は、例えばCT装置からの通知や、計画情報、ユーザの入力した情報に基づいて表示制御部124Aにより決定される。また、画面IM2には、治療前後にスムーズにCT撮影を行うことができるような計画情報の変換指示を受け付けるためのボタンB2が設定される。領域A4にCT撮影が行われることを示す情報が表示された状態において、ボタンB2が操作されると、計画生成部120Cが第2の計画情報154Cを生成する。
【0059】
図18は、第4の実施形態に係る計画生成部120Cにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、計画生成部120Cは、第1の計画情報152Cを取得する(ステップS300)。次に、計画生成部120Cは、治療計画装置(不図示)から、その日にCT撮影を行う旨の通知があったか否かを判定する(ステップS302)。その日にCT撮影を行う旨の通知があった場合、計画生成部120Cは、CT装置との関係で、被検体Pの向きを逆にする必要があるか否かを判定する(ステップS304)。ステップS302またはS304のいずれかで否定的な判定を得た場合、本フローチャートの処理が終了する。この場合、第1の計画情報152Cがそのまま使用される。
【0060】
被検体Pの向きを逆にする必要があると判定された場合、表示制御部124は、幾何変換を行うことを指示するためのボタンB2を表示部115に表示させる(ステップS306)。次に、計画生成部120Cは、ボタンB2が操作されたか否かを判定する(ステップS308)。ボタンB2が操作された場合、計画生成部120Cは、第1の計画情報152Cに基づいて第2の計画情報154Cを生成する(ステップS310)。そして、計画生成部120Cは、本フローチャートの処理を終了する。
【0061】
なお、ボタンB2を表示して操作を受け付けることを省略し、計画生成部120Cは、被検体Pの向きを逆にする必要があると判定された場合、自動的に第2の計画情報154Cを生成するようにしてもよい。
【0062】
以上説明した第4の実施形態の医用装置100Cによれば、CT撮影が行われるか否かに基づいて第2の計画情報を生成するため、CT装置が併設された固定照射室において、。効率的な運用を可能とすることができる。
【0063】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、CT装置が併設された観点ガントリー室に設置された回転ガントリー式の照射装置30を制御するものである。構成図を省略するが、第5の実施形態に特有の構成については、符号の末尾に「D」を付すものとする。
【0064】
図19は、第5の実施形態に係る医用装置100Dの使用環境の一例を示す図である。図示するように、この回転ガントリー室では、寝台52を延伸させた先にCT装置のガントリー90が設置されている。CT装置は、寝台52を導入可能な方向が決まっている。例えば、第1端52Aから導入しなければならないので、CT撮影するため患者を治療台に乗せたまま、Z軸回りに180度回転させる必要がある。このため、第5の実施形態に係る医用装置100Dは、CT装置によるCT撮影が行われる場合、元の第1の計画情報152Dにおいて寝台52の第2端52BがCT装置のガントリー90を向いている場合、寝台52のZ軸回りの回転角を180度変更し、被検体Pの寝台12に対する向きをHeadFirstSpineからFeetFirstSpineに変更する。これによって、意図した照射方向を実現すると共に、CT撮影に適したZ軸回りの回転角θを維持することができる。また、第5の実施形態に係る計画生成部120Dは、治療ビームBの照射角度、コリメータの設定、照射パターンなどの設定に関しては第1の計画情報152Dに含まれる設定を引き継いで第2の計画情報154Dを生成する。または、寝台52のZ軸回りの回転角を180度変更し、照射角度Φgを[360-Φg]に変更する。また、第1の計画情報152に含まれるコリメータの設定、照射パターンなどの設定についても併せて変換を行い、第2の計画情報を生成する。(不図示)これによって、再度の詳細設定をする手間を省略することができ、操作者の負担や処理負荷を低減することができる。この結果、効率的な運用を可能とすることができる。
【0065】
(第6の実施形態)
図20は、第6の実施形態について説明するための図である。構成図を省略するが、第6の実施形態に特有の構成については、符号の末尾に「E」を付すものとする。第6の実施形態における医用装置100Eは、ノンコプラナー照射を実行する際に、寝台の可動範囲を考慮して第2の計画情報154Eを生成する。例えば、医用装置100Eは、寝台の可動範囲に基づいて、治療ビームBに対する被検体Pの患部の角度範囲を大きく確保できるように、被検体Pと寝台の関係を決定する。
【0066】
以上説明した第6の実施形態の医用装置100Eによれば、ノンコプラナー照射を効果的に行うことができる。
【0067】
以上説明した各実施形態の機能は、互いに排他的な関係にあるものではなく、適宜、組み合わせて装置、システム、方法、プログラム等を構成することができる。
【0068】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、医療機器(30、70)と被検体(P)との位置関係を含む第1の計画情報を取得する取得部と、第1の計画情報に含まれる角度パラメータの一部を所定の規則で変更することで、第1の計画情報に含まれる医療機器に対する指示内容の一部を引き継いだ第2の計画情報を生成する計画生成部と、計画生成部により生成された第2の計画情報に基づいて医療機器に指示を行う制御部とを持つことにより、より効率的な運用を可能とすることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10、50 寝台装置
12、52 寝台
14、54 寝台駆動装置
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F 医用装置
120 計画生成部
122 画像処理部
124 表示制御部
126 照射制御部
150 記憶部
152 第1の計画情報
154 第2の計画情報