(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】シェアボルトの取付構造
(51)【国際特許分類】
F16H 35/10 20060101AFI20230131BHJP
F16D 9/00 20060101ALI20230131BHJP
F16D 9/08 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
F16H35/10 J
F16D9/00 100
F16D9/08
(21)【出願番号】P 2018236211
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤長 渉
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 弘
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-081854(JP,U)
【文献】実開平07-004936(JP,U)
【文献】特開2001-193032(JP,A)
【文献】実開昭53-145055(JP,U)
【文献】実開昭55-092907(JP,U)
【文献】特開2003-139216(JP,A)
【文献】実開昭60-116423(JP,U)
【文献】実開平02-138228(JP,U)
【文献】米国特許第05090307(US,A)
【文献】仏国特許出願公開第02389798(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 35/10
F16D 9/00
F16D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一軸上に設けられた駆動側回転体および伝達側回転体と、
当該駆動側回転体と伝達側回転体の同一半径上に設けられた貫通穴と、
当該駆動側回転体の貫通穴と前記伝達側回転体の貫通穴に跨って挿入されるシェアボルトと、
前記同一軸上に回転可能に設けられ、前記シェアボルトの頭部を押圧させる押圧部材と、
を備えてなるシェアボルトの取付構造において、
前記押圧部材を、
前記シェアボルトの頭部を被せる凹部と、
前記同一軸に対して前記凹部の外側に延出して設けられ、前記伝達側回転体の表面との間に指を入れられるように伝達側回転体の表面から離間させたレバーと、
前記凹部の中心部に設けられた開口部と、
を設けるようにしたことを特徴とするシェアボルトの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェアボルトの取付構造に関するものであり、より詳しくは、簡単にスプロケットなどの回転体にシェアボルトを取り付けられるようにしたシェアボルトの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動源側のスプロケットと伝達側のスプロケットとの間における過負荷防止装置として、シェアボルトを用いた過負荷防止装置がある。このようなシェアボルトを用いた過負荷防止装置は、
図5に示すように、エンジンなどからの駆動源によって回転する駆動源側のスプロケットなどの駆動側回転体81と、その駆動側回転体81と同軸上に設けられた伝達側のスプロケットなどの伝達側回転体82とを備え、これらの回転体81、82の間にシェアボルト83を通して一体的に回転させるようにしたものであって、伝達側回転体に大きな負荷が掛かった場合に、そのシェアボルト83を破断させて、エンジンなどからの駆動力を遮断させるようにしたものである。
【0003】
ところで、このようなシェアボルト83は、駆動側回転体81の外周面と伝達側回転体82の外周面の貫通穴81a、82aに挿入され、突出している先端側をナット84で固定するようにしている。このため、ナット84を取り付けるためのスペースを充分確保することができない場合は、その狭いスペースで作業するための専用工具を用意しなければならず、その専用工具を用意するためのコストや、ナット84を取り付けるための時間がかかってしまうといった問題があった。
【0004】
これに対して、ナットでシェアボルトを固定することなく、シェアボルトの頭部を弾性体で被せるようにして挿入状態を維持しておくようにした方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
このような装置は、
図6に示すように、スプロケットの外周部分に回動可能なレバー91を設け、そのレバー91を回動させることによって、シェアボルトの頭部92を被せるように押圧して、シェアボルトの抜けを防止するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成では、スプロケットなどの回転体が小さい場合、回動レバー91を取り付けるための十分なスペースを確保することができない。このため、必然的にスプロケットを大きくしなければならないといった問題がある。また、シェアボルトを複数箇所に取り付ける場合、その取り付け箇所に対応して回動レバー91を取り付けなければならず、更に大きなスペースが必要になるといった問題がある。さらには、外周面にこのような回動レバー91を取り付ける場合、回転体の重心が回転中心から大きくずれてしまい、振動や騒音を生じさせる原因となりかねない。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するために、スプロケットなどの回転体の面積が小さい場合であっても、簡単にシェアボルトを取り付けることができ、また、複数箇所にシェアボルトを取り付ける場合であっても、一つの押圧部材でシェアボルトの頭部を押圧することができ、さらには、可能な限り回転時における振動や騒音を防止できるようにしたシェアボルトの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、同一軸上に設けられた駆動側回転体および伝達側回転体と、当該駆動側回転体と伝達側回転体の同一半径上に設けられた貫通穴と、当該駆動側回転体の貫通穴と前記伝達側回転体の貫通穴に跨って挿入されるシェアボルトと、前記同一軸上に回転可能に設けられ、前記シェアボルトの頭部を押圧させる押圧部材と、を備えてなるシェアボルトの取付構造において、前記押圧部材を、前記シェアボルトの頭部を被せる凹部と、前記同一軸に対して前記凹部の外側に延出して設けられ、前記伝達側回転体の表面との間に指を入れられるように伝達側回転体の表面から離間させたレバーと、前記凹部の中心部に設けられた開口部と、を設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動側回転体などの回動軸と同一軸上に押圧部材を設けてシェアボルトの頭部を押圧させているので、外周面の面積が小さい場合であっても、押圧部材を回動させてシェアボルトの頭部を押圧させることができるようになる。また、貫通穴を外周面の同一径上に設ければ、一つの押圧部材で他の位置に挿入されたシェアボルトの頭部を押圧させることができる。さらには、駆動側回転体と同一軸上に押圧部材を設けているため、駆動側回転体などの重心が回動軸から大きくずれるようなことがなくなり、回転時における振動などもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるシェアボルトの取付構造を示す図
【
図2】同形態におけるシェアボルトの取付構造を示す図
【
図5】従来例におけるシェアボルトの取付構造を示す図
【
図6】従来例におけるシェアボルトの取付構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
この実施の形態におけるシェアボルト4の取付構造は、エンジンなどの駆動源から伝達された力をスプロケットを介して他の動作部に伝達させるようにしたものであって、動作部側で大きな負荷が生じた場合に、スプロケットに取り付けられたシェアボルト4を破断させて動力を遮断させるようにしたものである。そして、特徴的に、
図1や
図2に示すように、同一の回動軸3上に設けられた駆動側回転体1と伝達側回転体2との間に跨って設けられたシェアボルト4に対して、その回動軸3上に押圧部材5を回動可能に設け、その押圧部材5を回動させることにより、シェアボルト4の頭部41を押圧部51で押圧させるようにして、ナットを取り付けることなく、シェアボルト4を固定できるようにしたものである。以下、本実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
まず、駆動側回転体1は、エンジンからの駆動力によって回転するものであって、ここでは、チェーンによって回転するスプロケットによって構成される。なお、ここでは、スプロケットを例に挙げて説明するが、ギアによって回転するギアや、ベルトによって回転するプーリーなどで構成されてもよい。この駆動側回転体1は、回動軸3を中心として回転するようになっており、この回動軸3上に設けられた他の伝達側回転体2にシェアボルト4を介して力を伝達させるようになっている。
【0015】
この伝達側回転体2は、他の動作部に対して駆動力を伝達させるものであって、ここでは、チェーンで駆動力を伝達するスプロケットで構成される。なお、この実施の形態では、スプロケットを伝達側回転体2の例として挙げて説明するが、同様に、ギアによって回転するギアや、ベルトによって回転するプーリーなどで構成されてもよく、あるいは、フランジ状にしておいてシェアボルト4を介して回動軸3を回動させるようにしてもよい。
【0016】
これらの駆動側回転体1や伝達側回転体2の外周面には、シェアボルト4を貫通させるための貫通穴11、21が設けられる。この貫通穴11、21は、シェアボルト4とほぼ同径を有するものであって、回転時におけるガタつきをなくすために、可能な限り隙間幅を小さくして設けられる。しかし、このように隙間幅を小さくしても、シェアボルト4を介して駆動力を伝達側回転体2に伝達させる際に、使用によって貫通穴11、21の内径が広がっていき、ガタつきを生じさせてしまう。そこで、ここでは、複数個所に貫通穴11、21を設けておき、その貫通穴11、21が広がった際に、他の貫通穴11、21にシェアボルト4を取り付けて使用できるようにしている。このような貫通穴11、21を設ける位置としては、回動軸3の回転中心から同じ径の位置に設けておき、後述する押圧部材5を回転させて、シェアボルト4の頭部41を押圧させるようにしておく。
【0017】
この貫通穴11、21に挿入されるシェアボルト4は、
図3に示すように、頭部41を有するとともに、破断部分の外径を破断力に対応させた径を有する軸部42を有するものであって、六角ボルトや、円形状の頭部41を有するピンなどによって構成される。なお、この軸部42については、破断力に対応させて小径部分や切込部分などを設けるようにしてもよいし、あるいは、同一径をなす円柱状としてもよい。
【0018】
このような構成のもと、本実施の形態では、シェアボルト4の頭部41を押圧する押圧部材5が設けられる。この押圧部材5は、前記回動軸3上に設けられ、その外周部分に設けられた押圧部51によって、シェアボルト4の頭部41を押圧させるようにしている。
【0019】
この押圧部材5は、回動軸3のフランジ部32との間に設けられたバネ31などの弾性体によって、伝達側回転体2の表面側に向けて強く押圧されるようになっている。なお、ここでは、伝達側回転体2の表面側に押圧部材5を設けているが、伝達側回転体2と駆動側回転体1を逆にして、駆動側回転体1の表面側に押圧部材5を設けるようにしてもよい。この押圧部材5の外周部分には、シェアボルト4の頭部41を押圧するための押圧部51が設けられており、そこに設けられた凹部52によって、シェアボルト4の頭部41を被せるように押圧させられるようになっている。この凹部52は、押圧部材5が回動しないようにするとともに、シェアボルト4の頭部41を固定できるようにしたものであって、シェアボルト4の頭部41よりも浅い深さ寸法となっている。そして、このような深さ寸法にすることによって、バネ31でシェアボルト4を押圧できるようにしている。なお、このように押圧部51でシェアボルト4を覆った場合、シェアボルト4が隠れてしまい、シェアボルト4が取り付けられているか否かを確認することができなくなる。そこで、ここでは、その凹部52の中心に開口部53を設け、シェアボルト4が取り付けられているか否かを確認できるようにしている。
【0020】
この押圧部51の外側には、この押圧部材5を操作させるためのレバー54が設けられる。このレバー54は、伝達側回転体2の表面との間に指を入れるための隙間を形成するものであって、そのレバー54を手前側に引いて頭部41と押圧部材5との間に隙間を形成し、その状態で、押圧部材5を回動させられるようになっている。
【0021】
次に、このように構成されたシェアボルト4の取付構造における作用について説明する。
【0022】
まず、シェアボルト4を取り付ける場合、駆動側回転体1と伝達側回転体2の貫通穴11、21の位置合わせを行い、その状態でシェアボルト4を挿入する。このとき、押圧部材5の押圧部51を貫通穴11、21の位置からずれるようにしておき、貫通穴11、21にシェアボルト4を挿入する。
【0023】
そして、このようにシェアボルト4を挿入した後、押圧部材5のレバー54を手前に引き、バネ31の押圧力に抗してシェアボルト4の頭部41が入るような隙間を形成する。
【0024】
そして、その状態で、押圧部材5のレバー54を回動させ、押圧部51の凹部52がシェアボルト4の頭部41を嵌め込む位置まで回動させる。そして、凹部52の開口部53を見ながら、シェアボルト4の頭部41が凹部52の中央位置にきた状態でレバー54を離す。
【0025】
このようにレバー54を離すと、回動軸3に設けられたバネ31の押圧力によって押圧部材5が表面側に押圧され、シェアボルト4の頭部41を押圧させることができるようになる。
【0026】
これにより、シェアボルト4にナットを取り付けることなく、シェアボルト4を固定しておくことができるようになる。
【0027】
このように上記実施の形態によれば、同一軸上に設けられた駆動側回転体1および伝達側回転体2と、当該駆動側回転体1と伝達側回転体2の同一半径上に設けられた貫通穴11、12と、当該駆動側回転体1の貫通穴11と前記伝達側回転体2の貫通穴21に跨って挿入されるシェアボルト4と、前記同一軸上に回転可能に設けられ、前記シェアボルト4の頭部41を押圧させる押圧部材5と、を備えてなるシェアボルト4の取付構造において、前記押圧部材5を、前記シェアボルト4の頭部41を被せる凹部52と、前記同一軸に対して前記凹部52の外側に延出して設けられ、前記伝達側回転体2の表面との間に指を入れられるように伝達側回転体2の表面から離間させたレバー54と、前記凹部52の中心部に設けられた開口部53と、を設けるようにしたので、駆動側回転体1などの外周面の面積が小さい場合であっても、押圧部材5を回動させてシェアボルト4の頭部41を押圧させることができるようになる。また、貫通穴11、21を外周面の同一径上に設けることで、一つの押圧部材5で他の位置に挿入されたシェアボルト4の頭部41を押圧させることができる。さらには、駆動側回転体1と同一軸上に押圧部材5を設けているため、駆動側回転体1などの重心が回動軸3から大きくずれるようなことがなくなる。
【0028】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0029】
例えば、上記実施の形態では、押圧部材5に一箇所の押圧部51を設けて、シェアボルト4を固定するようにしたが、
図4に示すように、押圧部51を複数設けるようにしておき、複数本のシェアボルト4を同時に取り付けられるようにしてもよい。そして、この複数の押圧部51によって、同時にすべてのシェアボルト4の頭部41を押圧できるようにしてもよい。なお、このようにシェアボルト4を複数箇所に取り付けて押圧する場合、押圧部材5を手前に引いて回動させる際に、すべてのシェアボルト4の頭部41が同時に入る隙間を形成しなければならなくなる。そこで、押圧部材5を水平に引っ張り上げることができるように、レバー54を回動軸3を中心に対して対称となる位置に設けるようにするとよい。このような位置にレバー54を設ければ、それぞれのレバー54を引っ張ることによって、押圧部材5を水平にしたまま引っ張り上げることができるようになり、シェアボルト4の頭部41を同時に嵌め込むことができるようになる。また、このように対称となる位置に押圧部51やレバー54を設けることにより、押圧部材5の重心が回動軸3と一致し、回転時における振動などを防止することができるというメリットもある。
【0030】
また、上記実施の形態では、回転体の同一半径上に貫通穴11、21を複数箇所設けてシェアボルト4を挿入できるようにしたが、異なる径の位置に貫通穴11、21を設けてシェアボルト4を取り付けるようにしてもよい。このとき、押圧部材5にもそれぞれの径に対応した押圧部51を設けておき、シェアボルト4を押圧できるようにする。このように構成すれば、同じシェアボルト4を用いた場合であっても、径の異なる位置に挿入することで、破断できる負荷の状態を変えることができるようになる。
【0031】
さらに、上記実施の形態では、押圧部材5を押圧する場合、回動軸3にバネ31を設けて押圧させるようにしたが、ゴムを用いて押圧部材5を押圧させるようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、レバー54を手前に引いて頭部41を嵌め込むようにしたが、押圧部51の側辺部分にシェアボルト4の頭部41を滑らかに案内するための傾斜部を形成しておき、その傾斜部に頭部41を接触させた状態で押圧部材5を回転させることによって、頭部41を凹部52の位置に嵌め込むようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施の形態では、伝達側回転体2を回転させて図示しないチェーンにより他の動作部に力を伝達させるようにしたが、この伝達側回転体2と回動軸3を一体的に回動させ、駆動側回転体1からの駆動力を伝達側回転体2を介して回動軸3側に伝達させて回動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば、農業機械や除雪機、土木作業機や建設機などのような動力機において使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・駆動側回転体
11、21・・・貫通穴
2・・・伝達側回転体
21・・・貫通穴
3・・・回動軸
31・・・バネ
32・・・フランジ部
4・・・シェアボルト
41・・・頭部
42・・・軸部
5・・・押圧部材
51・・・押圧部
52・・・凹部
53・・・開口部
54・・・レバー