(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】経時変色性インジケータ用組成物及びそれを用いた経時変色性インジケータ
(51)【国際特許分類】
G01N 31/22 20060101AFI20230131BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230131BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20230131BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230131BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20230131BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20230131BHJP
C09B 11/12 20060101ALI20230131BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G01N31/22 122
C09D201/00
C09D7/41
C09D7/61
C09D7/20
C09B67/46 A
C09B11/12
B41M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019008541
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】作村 武志
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-235562(JP,A)
【文献】特開2004-067719(JP,A)
【文献】特開平04-104055(JP,A)
【文献】国際公開第1998/052035(WO,A1)
【文献】特開昭62-280886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00 -31/22
B41M 1/00 - 9/04
C09B 1/00 -69/10
C09D 1/00 -13/00
C09D 201/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂及び塩基性溶液を含有する、経時変色性インジケータ用組成物
であって、
前記組成物から形成される変色層を有する経時変色性インジケータにおいて、前記インジケータの使用開始時に大気に暴露することにより、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸が酸として働くことにより前記インジケータの変色層の変色が開始する、
ことを特徴とする経時変色性インジケータ用組成物。
【請求項2】
前記変色助剤を少なくとも含有するA剤と、前記塩基性溶液を少なくとも含有するB剤を含み、前記トリフェニルメタン系塩基性染料及び前記バインダー樹脂をそれぞれ独立してA剤及び/又はB剤に含有する、請求項1に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
【請求項3】
前記塩基性溶液は、溶質としてアルカリ金属水酸化物及びアンモニアから選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
【請求項4】
前記塩基性溶液は、溶媒として水及びアルコールから選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
【請求項5】
トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂、並びに、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩を含む、経時変色性インジケータ用組成物
であって、
前記組成物から形成される変色層を有する経時変色性インジケータにおいて、前記インジケータの使用開始時に大気に暴露することにより、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸が酸として働くことにより前記インジケータの変色層の変色が開始する、
ことを特徴とする経時変色性インジケータ用組成物。
【請求項6】
前記変色助剤の含有量は、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、0.5~15重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
【請求項7】
さらに非変色色素を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
【請求項8】
基材上に、請求項1~7のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物から形成される変色層を有する経時変色性インジケータ。
【請求項9】
基材及び変色層を含み、
前記変色層が、トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂、並びに、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩を含む、経時変色性インジケータ
であって、
前記インジケータの使用開始時に大気に暴露することにより、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸が酸として働くことにより前記インジケータの変色層の変色が開始する、
ことを特徴とする経時変色性インジケータ。
【請求項10】
さらに非変色層を有する、請求項8又は9に記載の経時変色性インジケータ。
【請求項11】
さらにオーバーコート層を有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物から形成される印刷層を有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時変色性インジケータ用組成物及びそれを用いた経時変色性インジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
色調変化を利用する経時変色性インジケータが、従来より種々提案されている。例えば、防虫剤、芳香剤、脱臭剤、除湿剤等の製品は、製品の保管場所及び使用時における環境条件とその環境下におかれた時間(経過時間)により、その品質・機能が変化する。従って、これら製品の品質を管理すべく、製品が置かれた環境条件と経過時間を把握するためのインジケータが必要となる。
【0003】
従来、このような経時変色性インジケータとしては、例えば、周期表の第3~4族元素の酸化物又は水酸化物が表面に存在している粉末、ならびに水酸基、アルデヒド基、アミド基、エーテル結合基、ケトン基、エステル基よりなる群から選ばれた少なくとも一つの含酸素原子団を有する溶剤、及びラクトン環又はラクタム環を有している変色性色素とバインダー用樹脂とを必須成分として含むインキを用いて形成された経時変色用塗膜が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、この経時変色用塗膜は、インキを印刷し乾燥後、インキ中の溶剤が塗膜から揮発して発色するものであり、一旦インキを印刷して塗膜を形成すると、その時から塗膜の変色が始まり、その変色を止めることができない等の問題がある。つまり、塗膜形成後はすぐに経時変色性インジケータとして使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、インジケータ作製後その使用開始前に変色しないように安定に保存することができ、インジケータを適用させた製品の使用開始に伴い、インジケータの変色を開始させることができる、経時変色性インジケータ及びそれに用いる経時変色性インジケータ用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂及び塩基性溶液を含有する、経時変色性インジケータ用組成物及びそれを用いた経時変色性インジケータとすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の経時変色性インジケータ用組成物及びそれを用いた経時変色性インジケータに関する。
【0007】
1.トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂及び塩基性溶液を含有する、経時変色性インジケータ用組成物であって、
前記組成物から形成される変色層を有する経時変色性インジケータにおいて、前記インジケータの使用開始時に大気に暴露することにより、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸が酸として働くことにより前記インジケータの変色層の変色が開始する、
ことを特徴とする経時変色性インジケータ用組成物。
2.前記変色助剤を少なくとも含有するA剤と、前記塩基性溶液を少なくとも含有するB剤を含み、前記トリフェニルメタン系塩基性染料及び前記バインダー樹脂をそれぞれ独立してA剤及び/又はB剤に含有する、項1に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
3.前記塩基性溶液は、溶質としてアルカリ金属水酸化物及びアンモニアから選ばれる少なくとも一種を含む、項1又は2に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
4.前記塩基性溶液は、溶媒として水及びアルコールから選ばれる少なくとも一種を含む、項1~3のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
5.トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂、並びに、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩を含む、経時変色性インジケータ用組成物であって、
前記組成物から形成される変色層を有する経時変色性インジケータにおいて、前記インジケータの使用開始時に大気に暴露することにより、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸が酸として働くことにより前記インジケータの変色層の変色が開始する、
ことを特徴とする経時変色性インジケータ用組成物。
6.前記変色助剤の含有量は、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、0.5~15重量%である、項1~5のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
7.さらに非変色色素を含有する、項1~6のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物。
8.基材上に、項1~7のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物から形成される変色層を有する経時変色性インジケータ。
9.基材及び変色層を含み、前記変色層が、トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂、並びに、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩を含む、経時変色性インジケータであって、
前記インジケータの使用開始時に大気に暴露することにより、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸が酸として働くことにより前記インジケータの変色層の変色が開始する、
ことを特徴とする経時変色性インジケータ。
10.さらに非変色層を有する、項8又は9に記載の経時変色性インジケータ。
11.さらにオーバーコート層を有する、項8~10のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ。
12.項1~7のいずれか一項に記載の経時変色性インジケータ用組成物から形成される印刷層を有する印刷物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の経時変色性インジケータ用組成物及びそれを用いた経時変色性インジケータは、使用開始前に変色しないように安定に保存することができ、また、インジケータを適用させた製品の使用開始に伴い、インジケータの変色を開始させることができる。つまり、本発明の組成物を用いたインジケータは、所望に応じて変色開始を操作することができ、変色開始後は適用環境での経過時間に応じて、十分に視認性良く変色させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の経時変色性インジケータ用組成物(以下、単に「組成物」ともいう)、及び、それを用いた経時変色性インジケータ(以下、単に「インジケータ」ともいう)について詳細に説明する。
【0010】
(1)経時変色性インジケータ用組成物
本発明の経時変色性インジケータ用組成物は、トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂及び塩基性溶液を含有するものである。
また、本発明の経時変色性インジケータ用組成物は、前記変色助剤を少なくとも含有するA剤と、前記塩基性溶液を少なくとも含有するB剤を含み、前記トリフェニルメタン系塩基性染料及び前記バインダー樹脂をそれぞれ独立してA剤及び/又はB剤に含有することが、組成物のより安定な保存の観点等から好ましい。
なお、上記A剤とB剤を含む組成物を「2剤型組成物」ともいう。本発明の組成物は、1剤型でも2剤型でもよく、両者を含むものである。特に断らない限り、「組成物」は1剤型も2剤型も含む。
【0011】
2剤型組成物においては、トリフェニルメタン系塩基性染料及びバインダー樹脂を、それぞれ独立してA剤及び/又はB剤に含有することができるが、トリフェニルメタン系塩基性染料及びバインダー樹脂ともにA剤に含有することが、保存安定性の観点から好ましい。
【0012】
トリフェニルメタン系塩基性染料自体は有色である。これに、塩基性溶液を添加すると、上記トリフェニルメタン系塩基性染料の有色の染料構造が無色の染料構造に変化して、この混合物は無色となる。しかし、この無色の混合物を酸処理すると、上記トリフェニルメタン系塩基性染料の無色の染料構造が、有色の染料構造に戻るため、混合物は有色になる。上記染料構造の変化を示す一例(例えばC.I. Basic Red 9の場合)を下式に示す。
【0013】
【0014】
本発明においては、上記反応を利用し、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸が酸として働くことにより、経時変色性インジケータ用組成物において、上記トリフェニルメタン系塩基性染料を元の有色の染料構造へと戻し、復色させることができる。
なお、本明細書においては、有色の染料構造及び無色の染料構造のいずれの染料構造をとる場合も、トリフェニルメタン系塩基性染料という。
【0015】
また、本発明の経時変色性インジケータ用組成物は、トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂、並びに、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩を含むものである。
当該組成物におけるアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩は、上記トリフェニルメタン系塩基性染料と塩基性溶液が反応して、トリフェニルメタン系塩基性染料が無色の染料構造に変化した際の、塩基性溶液の溶質の由来物である。
【0016】
(トリフェニルメタン系塩基性染料)
トリフェニルメタン系塩基性染料としては、トリフェニルメタン構造を有する塩基性の染料であれば特に限定されず、例えば、C.I. Basic Violet 1、C.I. Basic Violet 3、C.I. Basic Violet 4、C.I. Basic Red 9等が挙げられる。酸塩基での変色性等の観点から、C.I. Basic Violet 3、C.I. Basic Violet 4等が好ましい。
当該トリフェニルメタン系塩基性染料は、1種又は2種以上で用いることができる。
【0017】
上記トリフェニルメタン系塩基性染料の含有量は、染料の種類、所望の色相等に応じて適宜決定できるが、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、好ましくは0.1~10重量%であり、より好ましくは0.2~5重量%である。
トリフェニルメタン系塩基性染料の含有量が0.1重量%未満であると、インジケータの変色後の色が薄くなるおそれがあり、10重量%を超えると、組成物の色及びインジケータの初期色(インジケータ作製直後の変色層の色)が無色ではなく着色してしまうおそれがある。
【0018】
なお、本明細書において、「経時変色性インジケータ用組成物100重量%」とは、組成物(2剤型の場合はA剤+B剤)に含まれる全成分の合計100重量%を意味する。また、組成物中の各成分のうち、トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂は、固形分の含有量を示し、塩基性溶液は、固形分ではなく溶液全体の含有量を示す。
【0019】
(変色助剤)
本発明の組成物は、変色助剤を含有することにより、当該組成物を用いて作製されたインジケータの変色の濃色化を図ることができる。つまり、本発明における変色助剤は、濃色化(変色度合いを増大)に寄与する成分である。また、本発明における変色助剤は、変色助剤自体が樹脂成分である場合には、バインダーとしても機能し得る。
変色助剤としては、特に限定されないが、例えばウレタン樹脂等が好ましく挙げられる。
ウレタン樹脂が変色助剤として働く理由の詳細は不詳であるが、以下のようなことが考えられる。組成物中の塩基性溶液により、ウレタン樹脂がアルカリ加水分解されてイソシアネート基が生成する。そしてこの組成物を用いてインジケータを作製すると、インジケータの変色層中のイソシアネート基が雰囲気中の水と反応してカルバミン酸を生成し、このカルバミン酸も染料の有色構造への反応に寄与すると考えられる。
以上のことから、本発明の組成物は、A剤及びB剤を含む2剤型とすることが好ましく、また、A剤及びB剤の混合直後にインジケータを作製することが好ましい。
【0020】
ウレタン樹脂としては、特に限定されず、公知のものを広く用いることができるが、例えば、エーテル系ウレタン樹脂、エステル系ウレタン樹脂、エーテル系とエステル系の混合ウレタン樹脂等が挙げられる。当該ウレタン樹脂は、1種又は2種以上で用いることができる。
また、加水分解性の観点から、ラッカー型(溶剤型)のエステル系ウレタン樹脂が好ましい。ラッカー型のウレタン樹脂に用いられる溶剤としては、特に限定されないが、後述の溶剤等が挙げられ、1種又は2種以上で用いることができる。
【0021】
エーテル系ウレタン樹脂としては、その構造式中にエーテル構造を有するウレタン樹脂であれば特に限定はなく、公知のものを広く用いることができる。具体的には、市販品として、「ユリアーノ3262」「ユリアーノU301」(以上、荒川化学工業株式会社製)、「ハイドランWLS-201」「ハイドランHW-312B」(以上、DIC株式会社製)、「レザミンME-8105LP」「レザミンME-8115LP」(以上、大日精化工業株式会社製)等が挙げられる。
エステル系ウレタン樹脂としては、その構造式中にエステル構造を有するウレタン樹脂であれば特に限定はなく、公知のものを広く用いることができる。具体的には、市販品として、「ユリアーノKL-564」「ユリアーノU201」(以上、荒川化学工業株式会社製)、「ハイドランHW-140SF」「ハイドランHW-333」(以上、DIC株式会社製)、「レザミンME-3134LPNS」「レザミンNE-302HV」(以上、大日精化工業株式会社製)、「サンプレンIB-422」「コートロンKYU-1」(以上、三洋化成工業株式会社製)等が挙げられる。
エーテル系とエステル系の混合ウレタン樹脂としては、その構造式中にエーテル構造及びエステル構造を有するウレタン樹脂であれば特に限定されないが、例えば「サンプレンIB-971」「サンプレンIB-972」(以上、三洋化成工業株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
変色助剤の含有量は、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、好ましくは0.5~15重量%であり、より好ましくは1~15重量%であり、さらに好ましくは1~10重量%である。変色助剤の含有量が0.5重量%未満であると、インジケータの変色後の色が薄くなるおそれがあり、15重量%を超えると、組成物の色及びインジケータの初期色が無色になりにくいおそれがある。
【0023】
(バインダー樹脂)
前記変色助剤がそれ自体樹脂成分である場合には、バインダーとしても機能し得ることは前述のとおりであるが、本明細書における「バインダー樹脂」は、前述の変色助剤とは区別される。つまり、本明細書における「バインダー樹脂」は、前述の変色助剤の欄で例示したウレタン樹脂は少なくとも除かれる。
当該バインダー樹脂としては、上記染料の酸塩基反応を阻害しない限り、特に限定されず、例えば、石油系炭化水素樹脂、ビニル樹脂、ブチラール樹脂、セルロース樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、ポリアミド樹脂、クマロン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及び脂環族樹脂からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
なお、組成物中で酸として働きうる樹脂(例えば、マレイン酸樹脂、アルキルフェノール樹脂等)は、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸による変色以外に、インジケータを変色させる要因となるため、本発明におけるバインダー樹脂としては不適である。
これらのバインダー樹脂の中でも、酸塩基反応への影響が小さい等という観点から、ビニル樹脂、ブチラール樹脂、セルロース樹脂等が好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等がより好ましい。
【0024】
バインダー樹脂の含有量は、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、好ましくは1~40重量%であり、より好ましくは2~30重量%である。バインダー樹脂の含有量が1重量%未満であると、組成物の粘度が低くなり印刷性に影響を与えるおそれがあり、40重量%を超えると、組成物の粘度が高くなり印刷性に影響を与えるおそれがある。
【0025】
(塩基性溶液)
本発明の組成物は、塩基性溶液を含有することにより、上記トリフェニルメタン系塩基性染料に化学変化を引き起こし、有色の染料構造を無色の染料構造へと変化させ、組成物を無色にすることができる。塩基性溶液としては、塩基性を示す溶液であれば特に限定されない。
当該溶液に用いられる溶質としては、特に限定されないが、水溶性等の観点から、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等が挙げられる。当該溶質は、1種又は2種以上で用いることができる。
上記アルカリ金属水酸化物としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。イオン化傾向の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
当該溶液に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、アルコール(例えばエタノール、イソプロパノール、メタノール等)等が挙げられる。塩基の溶解性の観点から、水が好ましい。当該溶媒は、1種又は2種以上で用いることができる。
【0026】
塩基性溶液の含有量は、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~10重量%、さらに好ましくは2~8重量%である。塩基性溶液の含有量が0.5重量%未満であると、組成物の色及びインジケータの初期色が無色になりにくくなるおそれがあり、10重量%を超えると、特に水溶液の場合は組成物の印刷性や保存性が低下しやすくなるおそれがある。
また、塩基性溶液の濃度は、特に限定されないが、溶液への溶質の溶解性の観点から、0.1~50%が好ましく、10~30%がより好ましく、10~20%がさらに好ましい。
なお、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中の塩基性溶液の溶質の含有量は、当該組成物100重量%中の上記塩基性溶液の含有量と、上記塩基性溶液の濃度から、計算により求めることができ、0.0005~5重量%が好ましい。また、組成物100重量%中の塩基性溶液の溶媒の含有量も、同様に計算により求めることができ、0.4995~5重量%が好ましい。
【0027】
また、上述したように、トリフェニルメタン系塩基性染料と塩基性溶液が反応して、トリフェニルメタン系塩基性染料が無色の染料構造に変化した際の、塩基性溶液の溶質の由来物であるアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩を、本発明組成物が含む場合、その含有量としては、上記塩基性溶液の溶質の含有量と同様である。
なお、アルカリ金属塩、アンモニウム塩における塩は、使用するトリフェニルメタン系塩基性染料に応じた塩であり、例えば、塩化物塩、スルホン酸塩等が挙げられる。
また、トリフェニルメタン系塩基性染料に対して、過剰の塩基性溶液を用いた場合は、上記アルカリ金属塩、アンモニウム塩以外に、塩基性溶液の溶質(アルカリ金属水酸化物及びアンモニアから選ばれる少なくとも一種)を、組成物中に含んでいてもよい。
【0028】
(非変色色素)
本発明組成物は、さらに非変色色素を含むことができる。2剤型の場合、非変色色素をA剤及び/又はB剤に含むことができる。
本明細書において、非変色色素とは、上記塩基性溶液により無色化されない色素を意味する。非変色色素としては、特に限定されないが、例えば顔料、染料等が挙げられる。顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、ペリレン系、キナクリドン系等の顔料が挙げられる。染料としては、例えば、アゾ系、キノン系、シアニン系、フタロシアニン系、インジゴ系等の染料が挙げられる。変色後の視認性の観点から、変色色素の補色を選択することが好ましい。当該非変色色素は、1種又は2種以上で使用することができる。
非変色色素を含む場合、組成物中では変色色素と非変色色素が一様に混合している状態になるため、組成物は無色ではなくなる。例えば、組成物中の変色色素が青色、非変色色素が黄色の場合は、この組成物を用いたインジケータは、初期色が黄色で(塩基性溶液により変色色素が無色になるため)、経時的に緑色に変化していく(経時変化により変色色素が青色に変色するため)。また、非変色色素を含む場合、インジケータの初期色としては、非変色色素の色を呈していることが好ましい。
非変色色素を添加する場合、その含有量は、視認性の観点から、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、好ましくは0.5~10重量%であり、より好ましくは1~5重量%である。
【0029】
(溶剤)
本発明組成物は、さらに溶剤を含むことができる。2剤型の場合、溶剤をA剤及び/又はB剤に含むことができる。
溶剤としては、トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤及びバインダー樹脂を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、アルコール又は多価アルコール系、エステル系、エーテル系、ケトン系、炭化水素系、グリコールエーテル系等の各種溶剤が挙げられる。これら溶剤は、使用する染料、変色助剤及びバインダー樹脂の溶解性等に応じて適宜選択すれば良く、また、適度な乾燥速度を有するものが好ましい。例えば、グラビアインキに用いる場合は、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤等が好ましく、シルクインキに用いる場合は、グリコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤等が好ましい。
上記溶剤は1種又は2種以上で使用することができる。
【0030】
溶剤の含有量は、用いる染料、変色助剤及びバインダー樹脂の種類等に応じて適宜決定でき、特に限定されないが、組成物の塗布性を良くし、組成物の乾燥時間を調節する観点から、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、30~95重量%が好ましく、50~92重量%がより好ましく、60~90重量%がさらに好ましい。
なお、上記溶剤の含有量は、前記塩基性溶液中の溶媒量や変色助剤が溶液となっている場合の溶剤量も含めた、組成物全体における溶剤・溶媒の合計量を示す。また、組成物全体における各成分の固形分の合計量は、組成物全体から当該溶剤・溶媒の合計量を除いた量となる。つまり、組成物全体における各成分の固形分の合計量は、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、70~5重量%が好ましく、50~8重量%がより好ましく、40~10重量%がさらに好ましい。
【0031】
(添加剤)
本発明組成物は、上記成分以外に、任意成分として公知の添加剤を含むことができる。2剤型の場合、添加剤をA剤及び/又はB剤に含むことができる。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、レベリング剤、増粘剤等が挙げられる。
レベリング剤としては、特に限定されないが、例えばシリコンオイル等が挙げられる。
増粘剤としては、本発明組成物に増粘効果を付与するとともに塗布性を向上させることができるものが好ましい。増粘剤としては、例えば、珪酸塩鉱物及び珪酸塩合成物等が挙げられる。
上記各種添加剤を添加する場合、その合計含有量は特に限定されないが、経時変色性インジケータ用組成物100重量%中、0.01~10重量%が好ましく、0.01~5重量%がより好ましい。
【0032】
本発明組成物の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、上記各成分を公知の方法により混合、撹拌することにより調製することができる。また、当該組成物は、調製後すぐに、密閉容器に保存するか、又は、インジケータの変色層若しくは印刷物を作製するために使用することが好ましい。
また、本発明組成物が2剤型の場合の調製方法も上記と同様であり、例えば、上記各成分を公知の方法により混合、撹拌することにより、A剤及びB剤をそれぞれ調製することができる。上記A剤及びB剤を別々に保存し、インジケータの変色層又は印刷物を作製する直前に、A剤及びB剤を混合、撹拌することが好ましい。
【0033】
(2)経時変色性インジケータ
本発明の経時変色性インジケータは、基材上に、本発明組成物から形成される変色層を有することを特徴とする。
また、本発明の経時変色性インジケータは、基材及び変色層を含み、前記変色層が、トリフェニルメタン系塩基性染料、変色助剤、バインダー樹脂、並びに、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩を含むものである。
【0034】
(基材)
基材としては、変色層を形成及び支持できるものであれば特に制限されない。例えば、金属又は合金材料(アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、ブリキ箔、錫箔等)、プラスチックス(ポリエステル、セロファン、アセチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩酸ゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニル、ポリアミド、ポリフッ化エチレン等のフィルム又は成形体)、繊維類(紙、木質材料、不織布、織布、その他の繊維シート)、無機材料(セラミックス、ガラス、コンクリート、石膏類)、これらの複合材料等を用いることができる。基材の厚さは、インジケータの種類に応じて適宜設定することができる。
【0035】
(変色層)
変色層は本発明組成物から形成される。その形成方法としては、例えば、基材上に本発明組成物の塗膜を形成する方法等が挙げられる。具体的には、本発明組成物を基材上に塗布後、乾燥させることにより、変色層を形成することができる。
本発明組成物を基材上に塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート等の公知の塗布方法;シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法等を用いることができる。本発明において、塗布には、塗布以外の印刷、浸漬等の概念も含まれている。
本発明組成物を塗布した後は、塗膜を乾燥させる。乾燥温度は特に限定されないが、通常80~200℃程度が好ましく、100~150℃程度がより好ましい。
本発明のインジケータにおける変色層の厚さは、特に限定されないが、視認性、印刷物の取扱いの観点から、500nm~2mm程度が好ましく、1~100μm程度がより好ましい。
【0036】
なお、当該変色層は、本発明組成物(2剤型の場合はA剤及びB剤を混合後)を基材上に塗布後、乾燥させること等により形成されるため、変色層中には組成物由来の溶剤や溶媒は、全く又は殆ど存在しない。上述のように、組成物中では、トリフェニルメタン系塩基性染料と塩基性溶液が反応して、当該染料は無色化される。その際に生じるアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩(使用する染料に応じた塩)が、塩基性溶液の溶質(アルカリ金属水酸化物及びアンモニアから選ばれる少なくとも一種)の由来物として、変色開始前のインジケータの変色層中に存在すると考えられる。
アルカリ金属塩、アンモニウム塩における塩は、使用するトリフェニルメタン系塩基性染料に応じた塩であり、例えば、塩化物塩、スルホン酸塩等が挙げられる。
また、用いる組成物において、トリフェニルメタン系塩基性染料に対して、過剰の塩基性溶液を用いた場合は、上記アルカリ金属塩、アンモニウム塩以外に、塩基性溶液の溶質(アルカリ金属水酸化物及びアンモニアから選ばれる少なくとも一種)を、変色開始前のインジケータの変色層中に含んでいてもよい。
【0037】
(非変色層)
本発明のインジケータは、変色層の視認性を高めるために、下地層として変色しない非変色層を設けることもできる。非変色層としては、変色層での酸塩基反応に影響を及ぼさなければ特に限定されず、顔料及び/又は染料を含む組成物により形成することができる。
顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、ペリレン系、キナクリドン系等の顔料が挙げられる。染料としては、例えば、アゾ系、キノン系、シアニン系、フタロシアニン系、インジゴ系等の染料が挙げられる。
非変色層用の組成物は、バインダー樹脂、増量剤、溶剤等を必要に応じて含むことができる。バインダー樹脂、増量剤、溶剤としては、上述と同様のもの等が挙げられ、それぞれ1種又は2種以上で用いることができる。
非変色層を形成する方法としては、特に限定されず、上記変色層と同様の公知の塗布方法、印刷方法等を用いることができる。また、非変色層の厚さは、インジケータの種類に応じて適宜設定することができる。
【0038】
本発明では、変色層と非変色層とをどのように組み合わせてもよい。例えば、変色層の変色により初めて変色層と非変色層の色差が識別できるように変色層及び非変色層を形成したり、あるいは、変色によって初めて変色層及び非変色層との色差が消滅したりするように形成することもできる。本発明では、特に変色によって初めて変色層と非変色層との色差が識別できるように変色層及び非変色層を形成することが好ましい。
色差を識別できるようにする場合には、例えば変色層の変色により初めて文字、図柄及び記号の少なくとも一種が現れるように変色層及び非変色層を形成すればよい。本発明では、文字、図柄及び記号は、変色を知らせる全ての情報を包含する。これらの文字等は、使用目的等に応じて適宜デザインすればよい。
また、変色前における変色層と非変色層とを互いに異なる色としてもよい。例えば、両者を実質的に同じ色とし、変色後に初めて変色層と非変色層との色差(コントラスト)が識別できるようにしても良い。
本発明において、層構成の好ましい態様としては、例えば、(i)変色層が、基材の少なくとも一方の主面上に隣接して形成されているインジケータ、(ii)基材上に、前記非変色層及び前記変色層が順に形成されており、前記非変色層が前記基材の主面上に隣接して形成されており、前記変色層が前記非変色層の主面上に隣接して形成されているインジケータ、が挙げられる。
【0039】
(オーバーコート層)
本発明のインジケータは、必要に応じて、オーバーコート層を有していてもよい。
当該オーバーコート層は、インジケータの最外層に配置される。そのため、基材上に変色層のみを有する場合、基材上に変色層と非変色層を有する場合のいずれにおいても(例えば上記(i)、(ii)の層構成)、変色層に隣接してオーバーコート層が形成されて、インジケータの最外層に配置される。
インジケータの最外層にオーバーコート層を有することにより、インジケータの変色層が外気に直接接触するのを抑制して、インジケータの変色感度を操作でき、また塗膜強度を高めることもできる。
【0040】
オーバーコート層としては、特に限定されないが、上記トリフェニルメタン系塩基性染料の酸塩基反応を阻害しない樹脂である限り、特に限定されず、上記バインダー樹脂と同様のもの等が挙げられ、1種又は2種以上で用いることができる。
なお、上記バインダー樹脂の場合と同様、酸として働きうる樹脂(例えば、マレイン酸樹脂、アルキルフェノール樹脂等)は、大気中の二酸化炭素と水から形成される炭酸による変色以外に、インジケータを変色させる要因となるため、変色層に隣接して形成されるオーバーコート層の樹脂としては不適である。
当該樹脂は、溶剤に溶解して使用することができる。溶剤としては、上述と同様のもの等が挙げられ、1種又は2種以上で用いることができる。
オーバーコート層を形成する方法としては、特に限定されず、上記変色層と同様の公知の塗布方法、印刷方法等を用いることができる。
また、オーバーコート層の厚さは、特に限定されないが、印刷物の取扱いの観点から、500nm~2mm程度が好ましく、1~100μm程度がより好ましい。
【0041】
(粘着層)
本発明のインジケータは、必要に応じて、基材裏面(変色層形成面とは逆面)に粘着層を有していてもよい。基材裏面に粘着層を有することにより、本発明のインジケータを対象物に確実に固定することができる。
粘着層の成分としては、特に限定されず、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系等が挙げられる。また、粘着層の厚さは、インジケータの種類に応じて適宜設定することができる。
【0042】
(インジケータ)
本発明のインジケータの形状は特に限定されず、公知のインジケータに採用されている形状を幅広く用いることができる。
【0043】
本発明のインジケータの製造方法としては、特に限定されないが、例えば上述のように、各原料(又は、A剤及びB剤)を混合、撹拌し、得られた組成物を用いて、基材上に変色層を形成することにより、インジケータを製造することができる。
【0044】
得られたインジケータは、絶乾状態の空間や絶乾雰囲気で使用するまで保存し、使用開始時に大気に暴露することが好ましい。このように絶乾雰囲気で保存することにより、インジケータの初期色が保たれ変色開始を止めることができ、インジケータの使用開始時に変色を開始させることができる。
絶乾状態の空間や絶乾雰囲気でインジケータを保存する方法としては、特に限定されないが、例えば、金属(アルミニウム等)を蒸着したプラスチック(ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル等)袋の中にインジケータを保存する方法等が挙げられる。また、インジケータの少なくとも変色層を有する側の面に、金属(アルミニウム等)を蒸着したフィルム(材質:ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル等)を設けることにより、インジケータの少なくとも変色層側の面を密閉して、絶乾雰囲気に近い状態でインジケータを保存する方法等が挙げられる。この場合、インジケータの両面に、金属蒸着フィルムを設けることが好ましい。さらに、上記方法を組み合わせてインジケータを保存する方法も挙げられる。
インジケータの片面又は両面に金属蒸着フィルムを設ける方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着層等を介して貼り付けること等により行うことができる。また、粘着層としては、特に限定されず、上記粘着層と同様のもの等が挙げられる。
本発明のインジケータは、使用開始前は上記のように保存し、使用開始時に金属蒸着プラスチック袋からインジケータを取り出す、及び/又は、インジケータの金属蒸着フィルムをはがすこと等により、インジケータを適用させた製品と同じ環境下に置くことができる。
【0045】
本発明のインジケータの用途は、特に限定されないが、例えば食品、防虫剤、除湿剤、消臭剤等、使用期限がある製品等に適用することが好適に挙げられる。
【0046】
(印刷物)
本発明の印刷物は、上記経時変色性インジケータ用組成物から形成される印刷層を有するものである。
本発明組成物を印刷する対象物としては、製品管理されるべき製品等が挙げられる。製品としては、特に限定されないが、例えば食品、防虫剤、除湿剤、消臭剤等、使用期限があるもの等が挙げられる。
本発明組成物を製品に直接印刷できる場合は、直接印刷すればよく、製品に直接印刷できない場合は、その製品の外装袋等に印刷すればよい。
当該印刷物を絶乾雰囲気で保存する場合も、上記インジケータと同様にして保存することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1~6、比較例1~2)
下記表1に示す組成の各原料(水酸化ナトリウム水溶液をB剤とし、それ以外の原料をA剤とする)を混合、撹拌し、組成物を作製した。この組成物を、コーターを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、乾燥(80℃×2分間)して、当該フィルム上に約40μmの変色層を有するインジケータを作製した。
なお、比較例2(特開平3-199964号公報での組成物)は、表1下部に記載の組成の組成物を作製した。この組成物を用い、上記と同様にしてインジケータを作製した。
【0049】
【0050】
表1記載の原料等の説明は以下のとおり。なお、表1では変色助剤としてのウレタン樹脂は、ウレタン樹脂溶液量(固形分量+溶剤量)を便宜上記載しているため、例えば固形分30%のウレタン樹脂の固形分量は「ウレタン樹脂溶液量×0.3」で、ウレタン樹脂溶液中の溶剤量は「ウレタン樹脂溶液量×0.7」で求めることができる。
サンプレンIB-422(三洋化成):ウレタン樹脂溶液(固形分30%、溶剤:メチルエチルケトンとイソプロパノール)
HPC-SL(日本曹達):ヒドロキシプロピルセルロース
エトセル10(Dow chemical):エチルセルロースの熱可塑性セルロースエーテル
ソルバインA(信越化学):塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂
S-100(大伸化学):高沸点芳香族溶剤
また、表中でh、w、mの表示は、それぞれ時間、週、月を表す。
【0051】
また、上記インジケータを用いて下記試験を行い、その結果を表1に示した。
・初期色の外観:インジケータ作製直後の変色層の色(初期色)を目視にて観察した。
・変色性試験:まず、初期色の色度を測定した。次いで、インジケータを20℃×65%環境下で放置し、一定時間ごとに、インジケータの変色層の色度を測定し、初期色との色度の差を求めた。
・保存性試験:インジケータを作製後すぐに、モレキュラーシーブの入ったアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート袋(以下、Al蒸着PET袋ともいう)内に保存し、20℃×65%環境下に放置した。1ヶ月保存後インジケータを取り出し、インジケータの変色層の色度を測定し、初期色との色度の差を求めた。
上記各試験における色度の測定は、コニカミノルタ製蛍光分光濃度計FD-5を用いて行った。
【0052】
色度の差(色差)ΔE*abは、下記式により算出して求めた。
ΔE*ab=[(L*2-L*1)2+(a*2-a*1)2+(b*2-b*1)2]1/2
なお、初期色と基材との色差は、インジケータの基材の色度をL*1、a*1、b*1、インジケータの変色層の初期色の色度をL*2、a*2、b*2として;
初期色と一定時間経過後の色度との色差は、インジケータの変色層の初期色の色度をL*1、a*1、b*1、一定時間経過後の色度をL*2、a*2、b*2として;
Al蒸着PET袋内での1ヶ月保存前後の色差は、インジケータの変色層の初期色の色度をL*1、a*1、b*1、1ヶ月保存後の色度をL*2、a*2、b*2として;それぞれ求めた。
【0053】
表1の結果から、実施例1~6では、初期色とのΔE*abは経時的に大きくなり、その変色の程度から時間経過の度合いを認識することができた。また、インジケータ作製後すぐに、Al蒸着PET袋内にインジケータを保存することにより、1ヶ月保存後もインジケータの変色はほぼ起こらなかった。
一方、比較例1のインジケータ用組成物は、変色助剤を含まないため、変色の程度が小さく、かつ、経時的な変色の程度も小さかった。比較例2では、組成物及びインジケータの初期色が着色しており、インジケータとして使用開始前にAl蒸着PET袋に入れて保存しても、Al蒸着PET袋内でインジケータ中の溶剤が熱により揮発し、変色するのを止めることができなかった。