(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】バグフィルタ用連結具
(51)【国際特許分類】
B01D 46/02 20060101AFI20230131BHJP
B01D 39/14 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B01D46/02 Z
B01D39/14 A
(21)【出願番号】P 2019010286
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505037648
【氏名又は名称】株式会社相模商会
(74)【代理人】
【識別番号】100088731
【氏名又は名称】三井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】古尾谷 昌弘
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3204164(JP,U)
【文献】特開2006-231315(JP,A)
【文献】特開2009-011989(JP,A)
【文献】特開2019-042677(JP,A)
【文献】特開2006-320858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-41/04、46/00-46/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連のフィルタエレメントの連結構造をなすフィルタ本体と、セルプレート側のフィルタエレメントに連結される口元部と、セルプレートから離間側のフィルタエレメントの端部に連結される底部と、隣接するフィルタエレメントを連結する連結部とを具備してなり、連結部は、隣接するフィルタエレメント
における一方のフィルタエレメントに設置される第1の連結具と、隣接するフィルタエレメント
における他方のフィルタエレメントに設置される第2の連結具とを具備しており、第1の連結具は、対向端部が当接されつつ面一に縫着されることにより筒状をなす布帛の、その一端での全周での折り返しとしての第1の環状の袋状体と、第1の環状の袋状体の閉鎖端部側に収容され、布帛に縫着固定され
、かつ金属素材より環状に形成される円形断面の高剛性のOリングとから成り、Oリングから離間側において、前記一方のフィルタエレメント
端部に第1の環状の袋状体が連結して構成され、第2の連結具は、対向端部が当接されつつ面一に縫着されることにより筒状をなす布帛の、その一端での全周での折り返しとしての第2の環状の袋状体と、第2の袋状体の閉鎖端部側に収容され、布帛に縫着固定され
、薄肉帯状の金属素材より環状に形成され、かつOリングとの対比において低剛性のスナップリングとから成り、スナップリングから離間側において、第2の環状の袋状体が前記他方のフィルタエレメント
端部に連結され、
隣接するフィルタエレメントの連結は、
第1の連結具のOリング
に対し、第2の連結具のスナップリングを潜り抜け
させ、かつスナップリングを弾性により拡開させるように行われるバグフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、布帛の対向端部の前記
縫着は対向端縁を交互に跨るようジグザグ縫いされることにより行われるバグフィル
タ。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、縫着前の布帛は平行四辺形をなしており、縫着される対向縁部は平行四辺形の斜辺同士であるバグフィル
タ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はバグフィルタ用連結具に関し、バグフィルタにおけるセルプレートへの取付け部分や、バグフィルタを継ぎ足し式に連結する場合の連結部等に使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
集塵機等においては、多数のバグフィルタをセルプレートに取付ける構造になっているが、組立性やメンテナンス性の向上のため個々のバグフィルタはその口元部がセルプレートに対して脱着可能な構造となっている。脱着可能な口元部の構造としては様々な形態が提案されているが、現用されている代表的なものとしては、環状に端部同士を重ねて縫着した矩形の布帛を一端において円周において折り込むことにより一端で閉鎖し他端で開放した袋状体に形成し、袋状体に金属製のOリングを挿入し、Oリングを袋状部に縫着した構成のものがある。セルプレートに対するバグフィルタの装着は、バグフィルタをその口元部のOリングがセルプレートの開口縁に対抗位置するまで挿入し、口元部に上方より、薄肉のステンレス板を素材とするスナップリングを圧嵌し、スナップリングの弾性力下、セルプレートに対する口元布、即ちバグフィルタの保持を行うようになっている (特許文献1及び2)。
【0003】
口元部にOリングを備えたバグフィルタの構造においては、口元部は、矩形の布帛(濾材と同素材によるものと専用の素材によるものとがある)を筒状に縫着することで得られた筒状体をその一端全周において折り込むことにより、一端が閉じ他端が開放した袋状体に形成し、この袋状体の内部にOリングを収容し、縫着固定することにより構成され、Oリングから離間側の口元部の端部にフィルタ本体を縫着することによりバグフィルタに仕立てられている。
【0004】
また、口元部の構造として、上下のシールリングにより口元部外周に環状溝を形成し、この環状溝によってバグフィルタをセルプレートに装着するようにしたものもある(特許文献2)。
この発明の実施との関連として、フィルタ本体にプリーツを形成することにより接触面積増を実現するようにしたものも提案されている(特許文献3及び4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-000984
【文献】特開2009-034562
【文献】特開2012-223701
【文献】特開2007-237160
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
布帛の端部同士を重ねることにより筒状にし、これを袋状に折り返すことによりOリングを収容するための袋状部を形成する従来の口元部の構造では、外面に布帛の厚み分の段差が形成される。段差の高さは、口元布を構成する布地の厚みによるが、焼却炉の集塵機用では0.6~2.5mmにもなり、対向面に布地を強く押し付けることにより段差部分を圧潰することにより、シール性を適性レベルにすることは可能であるが、スナップリングを圧嵌するバグフィルタの取付け構造の場合に、スナップリングの挿入に抵抗となり、作業性の阻害要因となっていた。
【0007】
また、段差の存在は環状溝によってバグフィルタをセルプレートに装着する構造においても布地の継ぎ目に段差があると同様な問題が生ずる。
【0008】
本発明は以上の問題点を解決するためなされたものであり、セルプレートへの装着性に優れかつシール性も損なうことがないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のバグフィルタ用連結具は、対向端部が縫着されることにより筒状をなす布帛の、その一端での全周での折り返しとしての環状の袋状体と、袋状体の閉鎖端部側に収容され布帛に縫着固定される金属製環状シール部材とから成るバグフィルタ用連結具であって、布帛の対向端部の端面面一当接状態での縫着が行われていることを特徴とする。
【0010】
筒状体形成のための、布帛の端面同士を面一に当接させつつ、縫い糸が対向端縁間を交互に跨るジグザグ縫いによる縫着は布帛の縫着部に段差を生ずることがなく、また、ジグザグ縫いを適当に緩い角度にて行うことにより実用に差し支えない縫着強度を得ることが可能となる。
【0011】
縫着前の布帛の形状を平行四辺形とし、平行四辺形の斜辺同士を端面当接するように縫着することにより、折り返しに袋上部を形成したときの縫着部が内層と外層とで重なることがないので折り返し部の片面側の縫着部は対向面における無縫着部によるシール性の補完を得ることができる。
【0012】
バグフィルタ用連結具は焼却炉におけるセルプレート開口部にバグフィルタを装着するための口元部であり、金属製環状シール部材はスナップリングによりセルプレート開口部に装着されるOリングとすることができる。
【0013】
また、バグフィルタは一連のフィルタエレメントの連結構造をなすフィルタ本体と、近接するフィルタエレメントを連結する連結部とを具備しており、前記連結部は、各々が前記バグフィルタ用連結具を構成し、近接するフィルタエレメントの対向端部に設置される一対の連結帯より成り、一方の連結帯においては、環状の袋状体に金属製環状シール部材としてのOリングが縫着され、他方の連結帯においては、環状の袋状体、金属製環状シール部材としての、金属製の薄肉板材より成るスナップリングが縫着され、一連のフィルタエレメントの連結は、一方の連結帯のOリングをして他方の連結帯のスナップリングを潜り抜けるように行われる。
【0014】
または、本発明は、バグフィルタに係わるものであり、バグフィルタは、フィルタ本体と、セルプレート側のフィルタ本体端部に連結される口元部と、セルプレートから離間側のフィルタ本体端部に連結される底部とを具備してなり、前記口元部は、対向端部が縫着されることにより筒状をなす布帛の、その一端での全周での折り返しとしての環状の袋状体と、袋状体の閉鎖端部側に収容され布帛に縫着固定される金属製環状シール部材とから成り、布帛の対向端部の縫着は、布帛の端面同士を面一に当接させつつ行われていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、また、別のバグフィルタに係わるものであり、このバグフィルタは、一連のフィルタエレメントの連結構造をなすフィルタ本体と、セルプレート側のフィルタエレメントに連結される口元部と、セルプレートから離間側のフィルタエレメントの端部に連結される底部と、隣接するフィルタエレメントを連結する連結部とを具備してなり、連結部は、隣接するフィルタエレメントの一方側の第1の連結具と隣接するフィルタエレメントの他方側の第2の連結具とを具備しており、第1の連結具は、対向端部が当接されつつ面一に縫着されることにより筒状をなす布帛の、その一端での全周での折り返しとしての第1の環状の袋状体と、第1の環状の袋状体の閉鎖端部側に収容され布帛に縫着固定されるOリングとから成り、Oリングから離間側において、前記一方のフィルタエレメントに第1の環状の袋状体が連結して構成され、第2の連結具は、対向端部が当接されつつ面一に縫着されることにより筒状をなす布帛の、その一端での全周での折り返しとしての第2の環状の袋状体と、第2の袋状体の閉鎖端部側に収容され布帛に縫着固定されるスナップリングとから成り、スナップリングから離間側において、第2の環状の袋状体が前記他方のフィルタエレメントに連結され、近接するフィルタエレメントの連結は、一方の連結帯のOリングをして他方の連結帯のスナップリングを潜り抜けるように行われる。
【発明の効果】
【0016】
環状の袋状体とするための布帛の継ぎ目に段差がないため相手面との密着を得やすくなり、相手面に対する嵌合構造の設計が容易となり、例えば、本発明のバグフィルタ用連結具を口元部に使用した場合には、バグフィルタをセルプレートに固定するためのスナップリングの軽微な嵌合圧により所望のシール性能を確保することができる。また、バグフィルタを多段のフィルタエレメントから構成する場合、隣接するフィルタエレメントの対向端部を本発明のバグフィルタ用連結具の実施としての連結帯として構成することにより、所望のシール性を低嵌合圧にて得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1はこの発明の実施としてのバグフィルタの全体概略構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は
図1のバグフィルタのフィルタエレメントのプリーツ構造を模式的に示す
図1のII-II線に沿って表される断面図である。
【
図3】
図3はバグフィルタの口元部の口布を構成する平行四辺形の布地を示す平面図である。
【
図4】
図4は
図3の布地を筒状にし、平行四辺形の対向斜辺の端面当接部をジグザグ状に縫着した状態を示す模式的斜視図である。
【
図5】
図5は端面当接部における縫糸の状態を模式的に示す図であり、
図4の大略V-V線に沿って表される断面図である。
【
図6】
図6は
図4の筒状体を上端部で全周にて折り返すことにより得られ。Oリングの装着前の袋状体を模式的に示し、
図7の大略VI-VI線に沿って示す図である。
【
図8】
図8は
図6の袋状体にOリングを挿入し、縫着すると共に、Oリングの離間側においてフィルタエレメントの上端の平坦化された部位を挿入し縫着した、フィルタエレメントへの口元部の装着が完了した状態を示す。
【
図10】
図10は
図1の上下のフィルタエレメントを連結する連結部を構成する夫々が本発明の連結具の実施である第1及び第2の連結帯の断面図であり、連結具を構成する第1及び第2の連結帯が離間した状態を示す。
【
図11】
図11は
図10と同様であるが第1及び第2の連結帯が合体した連結具の連結状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1はこの発明のバグフィルタの1実施形態における構成を概略的に示しており、この実施形態においては、バグフィルタ10は、口元部12と、底部14と、フィルタ本体部16とを備えている。口元部12はこの発明の連結具の実施であり、バグフィルタ10を集塵機のセルプレートSに装着する機能を達成するものである。また、この実施形態ではフィルタ本体部16は、上下2段(必要あれば3段以上の多段)のフィルタユニット18, 20から構成され、隣接するフィルタユニット18, 20同士は、連結部22(
図10及び
図11参照)により脱着自在に連結される。連結部22は、後述のように、この発明の連結具の実施である上、下の連結帯40, 42(
図10)を備えている。フィルタ本体部16を2段若しくは多段に構成し、複数のフィルタユニット(単位部分)18, 20により連結する構成は、ユニット数の適宜選定により設置個所に適合した任意の必要長さのバグフィルタを構成することができ、また、長さ方向において要求交換頻度(詰まり具合)が同一でないことが通常なバグフィルタにおいて、要求交換頻度が高い部位のみを迅速に交換し、交換の必要がない部分はそのまま使用継続するような使用法が実現可能となり、連結部22におけるシール構造の工夫によりシール性を損なうことなく、迅速な交換を可能としかつユニット化による迅速の交換を可能とでき、しかも必要な部分のみを交換することができるため、コストダウンを実現可能である。尚、ユニット化のアイディアそのものは、この出願の出願人と同一の出願人により既に提案されている(特願2017-169154)。
【0019】
フィルタ本体部16を構成するフィルタユニット18, 20は、一例であるが、ガラス繊維などの耐熱性繊維より成る糸条より織製して成る基布に、ポリテトラフルオロエチレンやポリイミド等の耐熱性繊維をニードルパンチにより植毛して構成されるフィルタ布より縫製により筒状に成形して構成することができる。そして、フィルタユニット18, 20は断面が円形のままでも良いが、被処理ガスである燃焼ガスとの接触面積の拡大による塵埃のろ過効率の増大のため、
図2に示すように、横断面にプリーツ形状を付与させることが好ましい。バグフィルタ用濾布のプリーツ形成については各種提案されており、適宜の方法を採用です、一例を上げれば、本出願人と同一出願人に関わる特許文献4の明細書に記載のように行なうことができる。即ち、プレーンな濾布はプリーツ成形機を通すことによりプリーツ形状に賦形され、プリーツ形状を保持するためプリーツの山及び谷を縫製により強化することができる。また、別のプリーツ形状賦与方式としては、同じく本出願人と同一出願人に関わる特許文献3のように濾布に熱硬化樹脂を含浸させた形でプリーツ成形機を通し、プリーツ賦与の際に、樹脂の熱硬化温度まで加熱も同時に行なうことにより、プリーツ形状を保持するようにすることもできる。そして、この実施形態では、口元部12又は連結部22との縫着構造のため、フィルタユニット18; 20の上下端18-1, 18-2; 20-1, 20-2ではプリーツ部分が平坦に潰されている(特許文献4参照)。
【0020】
口元部12は、周知のように、除塵機のセルプレートに多数設けられるバグフィルタ取付孔の各々に対するバグフィルタ10の取付部分であり、口元布24に金属製のOリング26(この発明の金属製環状シール部材)を包囲かつ縫着することにより構成されるものである(
図8及び
図9を参照)。Oリング26は、バグフィルタ10を除塵機のセルプレートの対応のバグフィルタ取付孔に装着時のガス漏れ対策のため設置されるものである。Oリング26はバグフィルタの口径に応じた外径95~300mmを有しており、素材として鋼材の場合、線径は2~5mm程度のバグフィルタ装着時変形を伴うことがないようなものである。
【0021】
底部14については、構造的には通常構造のものであり、フィルタ布と共布又は専用の耐熱性の布帛を側辺同士の重ね縫い(縫製ラインを14-1にて示す)により筒状に構成し、底布を縫い込む(その円周方向の縫製ラインを14-2にて示す)ことにより有底筒状に構成したものである。これも周知慣用のことであるが、完成した底部14は下側フィルタエレメント20の平坦に潰された(又は別体に縫着された布地の)下端20-2に縫着(その円周方向の縫製ラインを14-3にて示す)により一体化されている。
【0022】
次に、口元部12の構成を説明すると、口元布24は、従来は、長方形の布帛の対向端部を重ね、縦方向の数本の縫戦によって筒状としたものを片側において全円周に沿って
折り込むことによりOリング26を収容するための袋状体に形成していたが(特許文献1及び2等参照)、この従来技術の場合布帛の対向端部の折り重ね部分が必ず段差を呈するため、バグフィルタをセルプレートに装着する場合に、段差の部位で布地を潰して相手面と密着させたるため、スナップリングの装着抵抗が大きくなったり、段差によるシール性の悪化の問題があった。この発明では、口元布24を構成する構成する布帛を重ねず、端部当接構造により面一とし、段差をなくすようにしている。口元布24を構成する布帛は、焼却炉の除塵機用途では、1.0~2.0mmといった厚み(JIS L 1096の厚み測定方法準拠)であり、突当部において対向端縁間を交互に跨るジグザグ縫い縫着することにより十分な縫着強度を実現することができる。また、布帛を平行四辺形とし、突当をその斜辺において行うことにより、折り込みにより袋状部としたときに、縫い目が重なることがないため、シール性を確保することが可能である。即ち、
図3に示すように、口元布24となる布帛は平行四辺形をなしており、布帛の上下辺24a, 24bは水平であるが、側辺24c, 24dは平行に傾斜している。口元部12を構成するための最初の工程としては
図4及び
図5に示すように、傾斜側辺24c, 24dが対向縁部が面一に当接するようにし、縫い糸が対向端縁間を交互に跨るジグザグ縫いを行う。ジグザグ縫いにより得られた縫製ラインを28にて表す。その結果、布帛は筒状に形成される。ジグザグ縫いにおいては、周知のことであるが、
図5に模式的に示すように縫製ライン28を構成する上糸28-1は、口元布24の,突当部(斜辺24c, 24d)間を交互に振られつつ下側面を突き抜けて上糸28-1と並行な下糸28-2と交絡される構造となっており、ジグザク動作を細かく行うことにより、布地が厚手であることと相まって、端面面一当接構造であるにも関わらず、筒状体(
図4)としたときの必要十分な縫着強度を確保することが可能である。このようにして得られた筒状体は片側端部(
図4の上端部)において全周に沿って矢印aのように内側に折り込み(又は外側に折り込み)、その結果、
図6に示すように、一端(上端)で閉じ、他端(下端)で開いた袋状の空洞部30を形成した環状の袋状体31に形成することができる。この袋状体31における外周面31A(
図7)における縫着ラインの部分が
図6では28Aにより表され、部分28Aに連なる内周面31Bにおける縫製ラインの部分が28Bにより表され、これらの部分28A, 28Bは対向面同士で重なることがない(
図9も参照)。布地の対向縁同士の突き当て部を対向縁を交互に横切るようなジグザグの縫着ライン28に沿った縫着は、従来における矩形布地の側辺同士を重ねた縫着と比較して、出来上がった筒状体の縫い目での破談強度の単純比較では、少なくとも勝っているとはいい得ない。しかしながら、布地が焼却装置の除塵機用として相当な厚みを持っており、また、筒状袋状体として形成された口元布24の外面と内面とで、縫着ライン28A, 28Bは重なることがないことから、片方のけるジグザク縫いの間隔を詰めることにより必要な
縫着強度及びシール性を確保することができる。また、外面と内面で縫着ラインの部分28A, 28Bは重なることがなく、また、どちらの部分28A, 28Bも対向面は縫い目がないことから、縫い目からの処理ガスの漏れがあっても、縫い目が無い対向面によって漏洩は十分に粗糸することができる。そして、袋状体に形成した口元布24(
図6)の空洞部30にOリング26を閉鎖内端面に突き当たるまで深く挿入し、Oリング26に隣接した部位で口元布24の上下対向部間を円周方向に縫着する(出来上がった縫着ライン32(
図8)により表す)。これにより、Oリング26を袋状の口元布24の内部に縫着して成る口元部12とすることができる。
図9は口元部12の完成状態をOリング26により包囲・
縫着される口元布24の一部を切除して模式的に示す斜視図である。
【0023】
このようにして得られた口元部12と濾布本体(
図1の実施形態では上側のフィルタエレメント18)との連結は、この実施形態においては、口元部12と上側のフィルタエレメント18とを直接縫着することにより行っている。即ち、Oリング26を縫着した筒状袋形状の口元布24に下端側の開口部よりフィルタエレメント18の上端の平坦化された筒状部18-1を挿入し、円周方向に縫着する。このようにして形成された円周方向の縫製ラインを
図8及び
図9において31にて示す。
【0024】
バグフィルタ10を焼却炉の除塵機におけるセルプレートに装着する場合、
図8に示すように、バグフィルタ10はセルプレートSの多数のバグフィルタ取付孔のうちの対応する一つの取付孔S-1に、バグフィルタ10がその底部14(
図1)より挿入され、Оリング26がそれを縫着する布地を介してセルプレートSの上面に突き当たるまで挿入され、上方よりバグフィルタ10の内径に向けてステンレス等の耐熱性金属薄帯板より成るスナップリング33が挿入される(
図8参照)。スナップリング33は厚さ0.2~0.5mm、幅15~25mmといった薄肉の鋼材にを素材とし、口元部12の内径部に圧嵌することで、セルプレートSへのバグフィルタの装着を行う。即ち、スナップリング33はOリング26をセルプレート上面に対し押圧すると共に、その弾性下、口元布24をセルプレートSのバグフィルタ取付孔S-1の内周に押し付ける機能を達成する。ガス漏れ対策として、口元布24がバグフィルタ取付孔S-1の内面に密着するように、スナップリング33には弾性限界内の撓み代を設けている。本発明よる口元布を構成する布地のジクザク状の縫着ライン28による筒状体(
図4)の形成は、内周面及び外周面のいずれにもに段差を作らないため、スナップリング33の撓み代をあまり大きく取らなくても、セルプレートに対する口元部12の装着時の口元布24のセルプレートSのバグフィルタ取付孔S-1への全周での密着が良好となり、必要なシール性能を確保しつつ、スナップリング33圧入抵抗が小さく装着作業が容易となる。これに対し、従来の長手方向の側部を折り重ねて縫着することで筒状に形成した口元布の構造では、外周面にも内周面にも段差が出現するため、スナップリングの撓み代を大きくとらないと、セルプレートSのバグフィルタ取付孔S-1に対する口元布の必要な密着が得られず、作業員の過重な負担となっていた。即ち、焼却炉では一台の除塵機であっても、最大で1450個にも達する多数のバグフィルタを備えているため、一つ一つの作業ではそれほどではないが、積み重ねとしてみると大きな作業負担となっており、本発明により、口元布の本来の機能であるシール性を損なうことなく、作業性の改善を実現し得ることが分かる。
【0025】
次に、フィルタユニット18; 20を一連に連結する連結部22の構成について説明すると、
図10において、連結部22は、夫々が本発明の連結具の実施である第1((
図1の上側)連結帯40と第2((
図1の下側)連結帯42を備える。第1連結帯40は
図1にも示される上側フィルタエレメント18の平坦化された下端部18-2(又はフィルタエレメント18とは別体の
縫着された筒状口布)への金属製Oリング44(本発明の金属製環状シール部材に相当)の縫着構造体により構成される。また、第2連結帯42は、
図1にも示される下側フィルタエレメント20の平坦化された上端部20-1(又はフィルタエレメント20とは別体の
縫着された筒状口布)へのステンレス等の金属製の薄肉材よりなる環状帯材をなすスナップリング46 (本発明の金属製環状シール部材)の縫着構造体により構成される。Oリング44については、外径3mm程度の鋼線にて構成されているため剛性が高く、後述のフィルタエレメント18, 20の連結ための圧入操作では殆ど変形を生じない。フィルタエレメント端部18-2に対するOリング44の縫着による第1連結帯40の構造は
図1から
図8により説明した口元布24に対するOリング26の縫着による口元部12の構造と同様である。即ち、第1連結帯40を構成する連結布48は当初は
図3と同様な平行四辺形をなし、対向斜辺同士を端面当接させ、当接部の全長にわたり、縫い糸が対向端縁間を交互に跨るようにジグザグ縫いされ(
図3-
図7にて説明したもの同様な
縫着方式)、これにより得られる筒状体を片側において全周に内側若しくは外側に
折り込むことで、
図6と同様な一端が閉じ他端が解放した環状袋状体に形成する。ジグザグ縫いによる縫製ラインを50にて示す。その後、この袋状体に開口部よりOリング44を閉鎖端面に当接するまで深く挿入し、対向層間を円周方向に縫着(縫製ラインを52にて示す)することに第1連結帯40に仕上げられる。その後、Oリング44を縫着後の連結布48のOリング44から離間側の開口部に、上側フィルタエレメント18の端部18-2 (
図1の下端部)が深く挿入され、対向層間を円周方向に縫着(縫製ラインを54にて示す)され、これによりフィルタエレメント端部18-2に第1連結帯40を一体化した構造が得られる。なお、
図10の48-1で示す部分は、連結布48の折り返し層のみで形成された部分で、第2連結帯42との接続時に、第2連結帯42のスナップリング46の係合部分となる。
【0026】
次に、
図1の下側フィルタエレメント20の平坦化された上端部20-1に縫着される第2連結帯42の構成について説明すると、第2連結帯42の構成は、内部に組み込む金属製環状シール部材がスナップリング46となっていることだけが第1連結帯40との実質的な相違であり、スナップリング46は肉厚0.3mm、幅1.9mmといった薄肉の帯状鋼材(ステンレス鋼等)を環状に成形してなるもので、Oリング44と比較して相当に低剛性であり、人力による圧入操作時に容易に変形させることができる。スナップリング46は低剛性であってもバグフィルタの使用状態においては、非変形の状態を維持する程度の剛性は確保している。下側フィルタエレメント20の上端部20-1に対するスナップリング46の縫着構造についても、
図1から
図8により説明した口元布24に対するOリング26の縫着構造と同様である。即ち、連結布56を構成する布地は
図3と同様な平行四辺形をなし、対向斜辺同士を端面当接させ、当接部の全長にわたり、縫い糸が対向端縁間を交互に跨るようにジグザグ縫いされ(
図3-
図7と同一方式)、これにより得られる筒状体を片側において全周に内側若しくは外側に
折り込むことで、
図6と同様な一端が閉じ他端が解放した環状袋状体に形成する。ジグザグ縫いによる縫製ラインを58にて示す。その後、この袋状体に開口部よりスナップリング46を閉鎖端面に当接するまで深く挿入し、円周方向に上下層を縫着(縫製ラインを60にて示す)して構成される。その後、スナップリング46を縫着後の連結布56の袋状開港部のスナップリング46から離間側の開口部に、下側フィルタエレメント20の端部 20-1(
図1の上端部)が深く挿入され、重なった層間を円周方向に縫着(縫製ラインを62にて示す)される。なお、
図10の56-1で示す部分は、連結布56の折り返し層のみで形成された部分で、第2連結帯42との接続時に、第1連結帯40のOリング44と係合する部分となる。本実施形態ではOリング44の内径とスナップリング46の外径差はバグフィルタの口径にもとより依拠するが、例えば0~2mmである。
【0027】
次に、連結部22を構成する第1((
図1の上側)連結帯40と第2((
図1の下側)連結帯42との連結動作を説明すると、第1連結帯40と第2連結帯42とを対向させる。本実施形態では、前述のように、Oリング44は外径がスナップリング46の内径と同一であるが、周囲を包囲する連結布56の厚みまで考慮すると外径は、連結布56を含めたOリング44の内径より大きくなっているがスナップリング46が適度な可撓性を持っているため、半径内方に凹ませつつOリング44側のフィルタ部分の端部に押し込んでゆくことにより、
図11に示すようにスナップリング46はOリング44を潜り抜けさせ、Oリング44及びスナップリング46を介した第1連結帯40及び第2連結帯42間の係合・圧嵌状態を得ることができる。この圧嵌状態では、第2連結帯42のスナップリング46は、相手側の第1連結帯40のみの部分48-1において、弾性により本来の外径まで復帰拡開される。スナップリング46が口布のみの部位56-1に丁度収まるように、口布のみの部分56-1の軸長L(
図10)が設定されている。他方、Oリング44はその高剛性により装着工程を通じてその内径を維持し、
図11の嵌着状態ではOリング44は、第2連結帯42の口布のみの部分56-1を半径内方に屈曲させるようになっている。この部分56-1の長さL´(
図10)は同部分56-1が
図11に示すように屈曲されても、フィルタ20の端部20-1においては本来の径に戻るように設定されている。このような、本発明に係るOリング44とスナップリング46による第1連結帯40と第2連結帯42間の連結は強固でありかつ流密を確保することができる。即ち、接続部における連接布36, 42の接触長さM(
図11)が圧嵌長となるが、これは基本的にはスナップリング46を構成する金属帯材の幅により決まる。そして、金属帯材の幅の適性な選択により接触長を必要分十分長く取れるため、流密が確保され、バグフィルタの通常の動作において被処理ガスが漏洩することはなく、他方、第1連結帯40及び第2連結帯42との連結は単純な引張り力に対しては強力であり、逆洗時にバグフィルタの内部にパルス圧を加えた状態においてもフィルタ部分間の離脱が生ずることを確実防止することを可能とする。
【0028】
以上に加えて、第1連結帯40及び第2連結帯42における連結布48, 56の筒状化のための
縫着は、
図3~
図5にて説明と同様に、平行四辺形の布帛の傾斜面同士の当接部のジグザグ縫い50, 58によって行っているため、
縫着部に段差が形成されないため、流密状態の維持が確実化され、また、嵌合圧が小さくても必要な流密が得られるため、作業性の改善を実現することができる。
【符号の説明】
【0029】
10…バグフィルタ
12…口元部
14…底部
18…ジグザグ状の縫製ライン
24…口布
26…Оリング
28…口元布のジグザグ縫製ライン
32…保持リング(本発明の高剛性の第1の環状金属部材)
34…スナップリング(本発明の第2の環状金属部材)
48, 56…連結布
36’, 42’… 連接布の縫着部分
38, 40, 44, 46…縫合線
44…Oリング
46…薄肉金属帯材より成るスナップリング
50, 58…連結布のジグザグ縫製ライン