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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】動物用運動装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 15/02 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
A01K15/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019105193
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020195350
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月30日に、不二精機株式会社が、ONE 千葉どうぶつ整形外科センターに、青木稔が発明した動物用運動装置を納品した。 平成30年11月27日に、不二精機株式会社が、ちゃめごろう DOGWAYSに、青木稔が発明した動物用運動装置を納品した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000236746
【氏名又は名称】不二精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】青木 稔
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-017017(JP,A)
【文献】特開2009-291155(JP,A)
【文献】実開平07-013061(JP,U)
【文献】実開昭50-119580(JP,U)
【文献】登録実用新案第3114230(JP,U)
【文献】特開2017-006006(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215859(JP,U)
【文献】特開2007-082418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向と逆行する向きに載置された動物の歩行と同調する相殺搬送速度でコンベアベルトを駆動させて相対的に略静止した位置関係で前記動物に歩行運動を行わせる歩行運動部と、
前記動物の歩行不足により前記コンベアベルト上で搬送されつつある動物を検知する、前記コンベアベルトの搬送下流側端部に配置された検知機構と、
同検知機構により搬送されつつある動物が検知された場合、コンベアベルトの動きを停止させる制御部とを備え、
前記検知機構は、
前記動物の体高よりも高い位置でコンベアベルトの横断方向に架け渡された横断軸と、
前記搬送されつつある動物との接触により前記横断軸を中心に傾斜するよう揺動可能に垂設した検知板と、
同検知板が傾斜したことを検出する傾斜状態検出手段と、を有するとと共に、
前記検知板の前記搬送されつつある動物より圧力を受ける側の面の前方には、同受圧面の略全面に対向させて張設した可撓性を有するシート状の圧力拡散体が配されていることを特徴とする動物用運動装置。
【請求項2】
前記検知板は、前記横断軸より垂下させる垂直板部と、横断軸より略水平方向へ伸延させる水平板部とにより側面視略L字状に形成すると共に、前記水平板部の伸延方向端面に検知片を配設して構成する一方、
前記傾斜検出手段は、前記横断軸を中心とする前記検知板の揺動によって移動した前記検知片との相互作用の変化により前記検知板が傾斜したことを検出することを特徴とする請求項1に記載の動物用運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物病院やペットショップ等では一時的に、また、一般家庭においては家族の一員として動物の飼育が行われており、動物と良好な関係を保つためには、動物の健康維持に努めることが重要である。
【0003】
例えば、愛玩動物として広く飼育されている犬の場合、このような健康維持のための手段の一つとして散歩が挙げられる。
【0004】
日々の散歩は肥満予防や食欲増進に有効であるのは勿論のこと、ストレスの解消など精神的な側面においても極めて重要である。
【0005】
中型程度の犬であれば、町中や広場など、飼主が犬を同伴しつつのべ数百メートルの距離を歩き回るのが一般的である。
【0006】
しかしながら、飼い主の視点からすると、所用や天候等の理由もあって、時には同伴しての散歩が困難な場合がある。
【0007】
そこで、一般家庭や動物病院、飼育施設など比較的狭い屋内においても動物に運動を行わせることができるよう、回動する無端状のコンベアベルト上で動物を歩かせたり走らせたりする運動(以下、総称して歩行運動という。)をさせる装置、所謂動物用のランニングマシンの如き装置が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-017017号公報
【文献】特開2017-006006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のような動物用運動装置を使用して動物に運動をさせている場合、動物の体力や健康状態等により動物の歩行速度が予期せず低下して、搬送方向(順方向)とは逆の方向(逆走方向ともいう)への歩行の均衡が失われてしまうことがある。以下、動物の歩行速度が低下してコンベアベルトの搬送速度との均衡が崩れた状態を歩行不足状態ともいう。
【0010】
この場合、多くの動物用運動装置には緊急停止ボタンが供えられており、使用者がこれを操作することで、歩行不足状態となりコンベアベルトに搬送された動物が動物用運動装置の後壁などに衝突してしまうことを回避することができる。
【0011】
しかし、動物用運動装置は、前述の如くペットを運動させるために費やされる飼主などの労力の削減が本来の目的でもあることから、使用者が一時的に動物から目を離している状況も想定されるため、このような場合には緊急停止ボタンにより動物を保護するのは困難である。
【0012】
勿論、歩行不足状態となった動物を検知してコンベアを自動的に停止するような機構を構築すれば、使用者が動物から目を離していても動物を保護することは可能であると思われる。
【0013】
しかしながら、動物の尻尾は歩行中に大きく動くことがあり、これによる誤作動を防止するためには、画像処理による方法や複数箇所に検知機構を配置する方法など、比較的複雑な機構が要求されるという問題があった。
【0014】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、比較的簡潔な構成でありながら、尻尾による誤動作を防止することができ、コンベアによって搬送されつつある動物を堅実に検知することのできる動物用運動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る動物用運動装置では、搬送方向と逆行する向きに載置された動物の歩行と同調する相殺搬送速度でコンベアベルトを駆動させて相対的に略静止した位置関係で前記動物に歩行運動を行わせる歩行運動部と、前記動物の歩行不足により前記コンベアベルト上で搬送されつつある動物を検知する、前記コンベアベルトの搬送下流側端部に配置された検知機構と、同検知機構により搬送されつつある動物が検知された場合、コンベアベルトの動きを停止させる制御部とを備え、前記検知機構は、前記動物の体高よりも高い位置でコンベアベルトの横断方向に架け渡された横断軸と、前記搬送されつつある動物との接触により前記横断軸を中心に傾斜するよう揺動可能に垂設した検知板と、同検知板が傾斜したことを検出する傾斜状態検出手段と、を有するとと共に、前記検知板の前記搬送されつつある動物より圧力を受ける側の面の前方には、同受圧面の略全面に対向させて張設した可撓性を有するシート状の圧力拡散体が配されていることとした。
【0016】
また、前記検知板は、前記横断軸より垂下させる垂直板部と、横断軸より略水平方向へ伸延させる水平板部とにより側面視略L字状に形成すると共に、前記水平板部の伸延方向端面に検知片を配設して構成する一方、前記傾斜検出手段は、前記横断軸を中心とする前記検知板の揺動によって移動した前記検知片との相互作用の変化により前記検知板が傾斜したことを検出することにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る動物用運動装置によれば、搬送方向と逆行する向きに載置された動物の歩行と同調する相殺搬送速度でコンベアベルトを駆動させて相対的に略静止した位置関係で前記動物に歩行運動を行わせる歩行運動部と、前記動物の歩行不足により前記コンベアベルト上で搬送されつつある動物を検知する、前記コンベアベルトの搬送下流側端部に配置された検知機構と、同検知機構により搬送されつつある動物が検知された場合、コンベアベルトの動きを停止させる制御部とを備え、前記検知機構は、前記動物の体高よりも高い位置でコンベアベルトの横断方向に架け渡された横断軸と、前記搬送されつつある動物との接触により前記横断軸を中心に傾斜するよう揺動可能に垂設した検知板と、同検知板が傾斜したことを検出する傾斜状態検出手段と、を有するとと共に、前記検知板の前記搬送されつつある動物より圧力を受ける側の面の前方には、同受圧面の略全面に対向させて張設した可撓性を有するシート状の圧力拡散体が配されていることとしたため、比較的簡潔な構成でありながら、尻尾による誤動作を防止することができ、コンベアによって搬送されつつある動物を堅実に検知することのできる動物用運動装置を提供することができる。
【0018】
また、前記検知板は、前記横断軸より垂下させる垂直板部と、横断軸より略水平方向へ伸延させる水平板部とにより側面視略L字状に形成すると共に、前記水平板部の伸延方向端面に検知片を配設して構成する一方、前記傾斜検出手段は、前記横断軸を中心とする前記検知板の揺動によって移動した前記検知片との相互作用の変化により前記検知板が傾斜したことを検出することとすれば、コンベアによって搬送されつつある動物を、より堅実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る動物用運動装置の構成を示した説明図である。
図2】本実施形態に係る動物用運動装置の水回り構成を示した説明図である。
図3】本実施形態に係る動物用運動装置の構成を示した説明図である。
図4】歩行運動部及び検知機構の構成を示した説明図である。
図5】検知機構の構成を示した説明図である。
図6】センサ機構部の構成を示した説明図である。
図7】センサ機構部の構成を示した説明図である。
図8】本実施形態に係る動物用運動装置の電気的構成を示したブロック図である。
図9】制御部にて実行される処理を示したフローである。
図10】動物用運動装置の使用時における検知機構の働きについて示した説明図である。
図11】動物用運動装置の使用時における検知機構の働きについて示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は動物用運動装置に関するものであり、特に、搬送方向と逆行する向きに載置された動物の歩行と同調する相殺搬送速度でコンベアベルトを駆動させて相対的に略静止した位置関係で前記動物に歩行運動を行わせる歩行運動部と、前記動物の歩行不足により前記コンベアベルト上で搬送されつつある動物を検知する、前記コンベアベルトの搬送下流側端部に配置された検知機構と、同検知機構により搬送されつつある動物が検知された場合、コンベアベルトの動きを停止させる制御部とを備え、比較的簡潔な構成でありながら、コンベアによって搬送されつつある動物を堅実に検知することのできる動物用運動装置を提供するものである。
【0021】
特に、本実施形態に係る動物用運動装置では、前記検知機構は、前記動物の体高よりも高い位置でコンベアベルトの横断方向に架け渡された横断軸と、前記搬送されつつある動物との接触により前記横断軸を中心に傾斜するよう揺動可能に垂設した検知板と、同検知板が傾斜したことを検出する傾斜状態検出手段と、を有するとと共に、前記検知板の前記搬送されつつある動物より圧力を受ける側の面の前方には、同受圧面の略全面に対向させて張設した可撓性を有するシート状の圧力拡散体が配されている点で特徴的である。
【0022】
そして、このような構成とすることにより、歩行運動中の動物の尻尾により、順調に運動しているにも拘わらずコンベアが停止してしまうという誤動作を防止することができ、動物に対して効率的な運動を促すことができる。
【0023】
以下、本実施形態に係る動物用運動装置について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る動物用運動装置Aの構成を示した説明図である。動物用運動装置Aは図1に示すように、デフォルメされた小型乗用車の如き外観意匠が施された上部開放箱型の筐体部10を備えている。なお、動物用運動装置Aの構成を説明するにあたり、以下では説明の便宜上、紙面左下方向を動物用運動装置Aの前方と称し、右上方向を後方、左上方向を左方、右下方向を右方と称する。
【0025】
図3は、動物用運動装置Aの構成の一部を省略しつつ、内部構成の一部を取り外して示した説明図である。図3に示すように同筐体部10の内方には、ステンレス製の前壁11F、後壁11B、左側壁11L(図3にて図示省略)、右側壁11R、底壁11Sにより水密状に囲われる上方開放とした水槽状の動物収容空間11が形成されており、図1に示すように同動物収容空間11には動物Bが収容される。
【0026】
また、図3に示すように、筐体部10の内方であって動物収容空間11の前方には前方配置空間55が形成されている。この前方配置空間55には必要に応じて種々の装置等を収容することが可能であるが、本実施形態に係る動物用運動装置Aでは制御部56を収容しており、筐体部10の前面には制御部56と電気的に接続されたユーザインターフェイス部(以下、UI部57ともいう。)を配して使用者等によりUI部57を介して入力された情報を制御部56へ供給したり、制御部56からの出力をUI部57に表示するよう構成している。
【0027】
具体的には、UI部57には、タッチパネル58と、起動ボタン59と、緊急停止ボタン60とが配設されている。
【0028】
タッチパネル58は、使用者が動物用運動装置Aに対しデータや命令、特に後述する歩行運動部30の駆動速度や時間を規定するタイムスケジュールの入力を行う手段として機能すると共に、制御部56から出力された情報を使用者に対し表示するための表示手段としての役割を有する部材である。
【0029】
起動ボタン59は、動物用運動装置Aを駆動させる際に使用者が押下するためのボタンである。制御部56は動物用運動装置Aに電力が供給された状態で同起動ボタン59が押下されると、使用者が予め入力したタイムスケジュールに従って歩行運動部30が駆動し動物Bに運動が促される。
【0030】
緊急停止ボタン60は、動物用運動装置Aが稼動している際、特に歩行運動部30が稼動している際に、使用者により強制的に歩行運動部30の稼動を停止させるためのボタンである。
【0031】
一方、筐体部10の内方であって動物収容空間11の後方には、後方配置空間62が形成されている。この後方配置空間62もまた種々の装置等を格納するスペースとして使用可能であるが、本実施形態に係る動物用運動装置Aでは歩行運動部30を駆動させる動力部41を構成する電動モータ63を配設している。
【0032】
この電動モータ63は、図示しない接続ケーブル等により前方配置空間55内に収容されている制御部56と電気的に接続されており、別途商用電源等から供給される電力を利用して、制御部56の制御により所定の速さで駆動する。
【0033】
また電動モータ63の駆動軸に装着された駆動プーリ63aは、筐体部10の内方であって図3にて図示を省略している左側壁11Lの外方であり、且つ、動物収容空間11内に配置した後述する歩行運動部30の動力受部36aと左側壁11Lを挟んで対向する位置に配された動力伝達部41aに、伝動ベルト64を介して連動連結させており、全体として動力部41が構築されている。
【0034】
本実施形態に係る動物用運動装置Aは、動物Bの洗浄の場を提供する浴室機能や、動物Bに対して歩行運動を促す歩行運動促進機能を備えており、各種構成によりこれらの機能を実現させている。
【0035】
図2は、動物用運動装置Aの水回り構成を示した説明図である。図2に示すように例えば浴室機能を実現するための主な構成としては、浴室として機能する先述の動物収容空間11や、同筐体部10の底部や前後部に配されたバルブや配管等によって構成される給湯系設備12が挙げられる。
【0036】
筐体部10の動物収容空間11は、開放された上部を除いて前後左右の壁面と底面とにステンレスの内張がなされており、動物収容空間11の内部を水密状に構成することで動物用運動装置Aの外への漏水を防止している。
【0037】
それ故、動物収容空間11の内部では、シャンプーなどで泡立てながら動物Bを洗浄したり、後述のシャワーにより洗い流す作業や、湯水を溜めて(湯張りして)温浴や冷水浴させる作業が可能となり、あたかも浴槽や浴室の如く機能させることができる。
【0038】
給湯系設備12は、湯水供給口14と、湯水供給管15と、給湯バルブ16と、分岐管17と、シャワー設備18と、湯張りバルブ19と、湯張り給湯管20とを備えている。
【0039】
湯水供給口14は、動物用運動装置Aが設置される動物病院や一般家庭などに設置されている給湯(給水)装置より湯水を受け入れるための接続口である。湯水供給口14は、例えば給湯装置の給湯栓21に給湯ホース22を介して接続される。なお本実施形態では、動物用運動装置Aにて使用する湯を外部より導入することとしたがこれに限定されるものではなく、動物用運動装置Aに給湯設備を配設し、導入した水を温めて給湯するよう構成しても良い。
【0040】
湯水供給管15は湯水供給口14より受け入れた湯水を給湯バルブ16へ供給するための配管である。
【0041】
給湯バルブ16は、湯水供給管15を介して供給された湯水の、シャワー設備18と湯張りとの両方の元バルブとしての役割を有するバルブである。
【0042】
分岐管17は給湯バルブ16を介して供給された湯水をシャワー設備18と湯張りとの双方に分配するための配管である。具体的には、主管17aと、同主管17aより二叉状に分岐する枝管17b,17cにより構成しており、給湯バルブ16を介し分岐管17へ至った湯水は、主管17aから枝管17b,17cへそれぞれ分配される。17bはシャワー設備18に接続されており、17cは湯張りバルブ19に接続されている。
【0043】
シャワー設備18は、シャワーバルブ23と、シャワーホース24と、シャワーヘッド25とで構成している。
【0044】
シャワーバルブ23は、枝管17bを介して供給された湯水のシャワーヘッド25からの出水や停止、及び出水量の調整を行うためのバルブである。また、シャワーホース24は、シャワーバルブ23により調整等された湯水をシャワーヘッド25へ導くための可撓性を有する管であり、シャワーヘッド25に至った湯水は散水板25aを介して散水されることとなる。
【0045】
湯張りバルブ19は、動物収容空間11を湯船の如く使用する際に供給する湯水の出水や停止、及び出水量の調整を行うためのバルブである。湯張りバルブ19より供給された湯水は、給湯管20を通じ、動物収容空間11の前壁に設けた給湯口26より動物収容空間11内に貯留される。なお本実施形態において給湯口26は、歩行運動部30のコンベアベルト33の上面よりも低い位置に形成している。これは給水時の湯水の音で動物Bを驚かすことのないようにするための構成である。
【0046】
また、動物収容空間11の底部には排水口27が形成されている。排水口27は排水バルブ28に接続されており、排水バルブ28を閉状態とすればシャワー設備18や給湯口26より供給された湯水は動物収容空間11内に貯留され、開状態とすれば排出されて図示しない排水ホース等を介して下水等として処理されることとなる。なお、図2において符号29は、動物収容空間11内に湯水を貯留した際の溢水を防止するためのオーバーフロー口29である。
【0047】
次に、動物Bに対して歩行運動を促す歩行運動促進機能を実現するための構成について説明する。図3は、動物用運動装置Aの左側壁を除き、構成の一部を分離させた状態を示した説明図である。
【0048】
図3に示すように、歩行運動促進機能を実現するための主な構成としては、動物収容空間11の内部に収容された歩行運動部30と検知部31とが挙げられる。
【0049】
歩行運動部30は、基台部32と、コンベアベルト33とで構成している。
【0050】
基台部32は、歩行運動部30の支持基板としての役割を有する部位であり、前後方向へ伸延する左右フレーム34L,34Rと、左右フレーム34L,34Rの前端部間にて左右方向へ軸線を向けて架け渡たされた従動軸35と、左右フレーム34L,34Rの後端部間にて左右方向へ軸線を向けた状態で架け渡された駆動軸36と、これら左右フレーム34L,34Rと従動軸35と駆動軸36とで囲われた矩形内部に配された支持板37とで構成している。
【0051】
左右フレーム34L,34Rは、歩行運動部30の構造骨格の主体を成す部材として機能する。左右フレーム34L,34Rの側面には係合突起38が形成されており、歩行運動部30を動物収容空間11内に配置するに際し、同係合突起38を動物収容空間11の内壁に形成された係合部39に係合させて配置することで、動物収容空間11内での位置決めを容易とし、後述する電動モータ63の駆動力を効率的に歩行運動部30へ伝達することができる。
【0052】
また左右フレーム34L,34Rの上面には取手40が形成されており、歩行運動部30を動物収容空間11内へ配置する際の取扱性を向上させている。
【0053】
従動軸35は、基台部32に前端部に配された軸であり、後述の駆動軸36と対を成し、共にコンベアベルト33を回転させるための軸として機能するものである。
【0054】
駆動軸36は、基台部32の後端部に配された軸であり、従動軸35と共にコンベアベルト33を回転させるための軸として機能する。
【0055】
また駆動軸36の一側端(本実施形態では左端)には、動物用運動装置Aに備えられた動力部41からの動力を受けるための動力受部36aが配されている。この動力受部36aは、動力部41側に配された動力伝達部41aと共に非接触式磁気継手(マグネットカップリング)を構成しており、動物収容空間11の水密性を堅実に保ちつつ、側壁(左側壁)を介した動力の授受を実現している。
【0056】
支持板37は、左右フレーム34L,34Rや従動軸35、駆動軸36により形成される枠内に配された板状の部材であり、歩行運動部30に配される動物Bの体重を支えてコンベアベルト33が撓むのを抑制し、動物Bによる円滑な歩行を可能とするための部材である。
【0057】
一方、コンベアベルト33は基台部32の従動軸35と駆動軸36とに前後方向へ無端状に掛け回された可撓性を有するベルトであり、基台部32と協動して動物Bの歩行と同調する相殺搬送速度、具体的には黒矢印で示す方向へ駆動し、相対的に略静止した位置関係で前記動物に歩行運動を行わせる。また、動物Bが歩行不足状態となった際には、動物Bはコンベアベルト33により動物収容空間11内の後方へ搬送される。
【0058】
検知部31は、制御部との協動により構築される歩行不足状態に係る安全装置のセンサとして機能する部位であり、図3図4に示すように、歩行運動部30の後方上部に配置される。なお、この検知部31は、後述の検知片検出センサ48や制御部56等により構築される傾斜状態検出手段と共に検知機構を構成する。
【0059】
検知部31は、図3図5に示す如く係止機構部42とセンサ機構部43とで構成しており、図3に示すように係止機構部42の係止片42aを動物収容空間11の後方上部の左右側壁に形成した係止ポケット44へ挿入しつつ係止させることにより、センサ機構部43が歩行運動部30から上方に離隔した状態で配置されるよう構成している。
【0060】
一方、係止機構部42は、図5図6に示すように、横断軸45と、検知板46と、圧力拡散機構47とで構成している。なお図6は、検知部31のうちセンサ機構部43のみを示しており、後方左斜め下から前方右斜め上方向を臨んだ状態を示している。
【0061】
横断軸45は、検知板46を動物収容空間11内で前後方向へ揺動可能に垂下させるための左右方向へ伸延させた軸であり、図5に示すようにその両端は係止機構部42の内部に露出させ、端部に円盤状の抜止め部材45aを装着して検知部31より横断軸45が脱落するのを防止している。また横断軸45の横架高さは、動物収容空間11内に収容され歩行運動部30上に載置された際の動物Bの体高よりも高い位置としている。
【0062】
検知板46は、図6及び図7に示すように、金属製の板材を折曲して形成した側面視略L字状の部材であり、横断軸45に挿通させた状態で略垂直に垂下する垂直板部46aと、略水平方向へ伸延する水平板部46bとを備えている。
【0063】
垂直板部46aは、歩行不足に陥って歩行運動部30により動物収容空間11の内部にて後方へ搬送されつつある動物Bと接触、より具体的には後述の圧力拡散機構47を介して間接的に接触させるための部位である。
【0064】
また、垂直板部46aの上端部分、換言すると次に述べる水平板部46bの前方側基端部に相当する部分には、横断軸45と略同径の横断軸挿通孔46cが穿設されており、検知板46の垂直板部46a部分を横断軸45より垂下させることができるよう構成している。
【0065】
水平板部46bは、垂直板部46aの上端より後方へ向けて略直角に伸延させつつ形成した部位であり、その後方先端部には金属板状の検知片46dが配設されている。この検知片46dは、図3図7に示すように筐体部10の後方空間内に配設された検知片検出センサ48により後壁11Bを介した検知対象となる部材である。なお図3では、設置位置の理解に供すべく、後壁11Bの一部を切り欠いて検知片検出センサ48を示している。
【0066】
すなわち、動物用運動装置Aの使用中であって動物Bが歩行不足状態ではない場合、L字状の検知板46の垂直板部46aは実線で示すように垂下状態であり、水平板部46bもまた実線の如く略水平状態となっている。
【0067】
このとき、水平板部46bの検知片46dは、検知片検出センサ48に対し後壁11Bを介して正対する位置に存在しており、検知片検出センサ48は検知片46dを検知している状態となる。
【0068】
ここで、動物Bが歩行不足状態となって歩行運動部30により搬送されはじめると、動物Bの体が垂直板部46aに接触して実線で示す垂下状態から破線で示す斜め後方への傾斜状態となり、横断軸45を中心に検知板46の全体が回動することで水平板部46bが破線でしめす後方登りの傾斜状態へと変位する。
【0069】
すると、水平板部46bの後端面に取り付けた検知片46dは、検知片検出センサ48の正面対向位置から破線で示すように上方へ偏倚した位置へと移動するため、検知片検出センサ48での検出状態に変化が生じ、検知板46(垂直板部46a)が傾いたこと、すなわち、動物収容空間11内において動物Bが歩行不足状態に陥っていることが検知できるよう構成している。なお、本実施形態において検知片検出センサ48は金属検知センサを採用しているが、例えば磁気検知センサなど、後壁11Bの材質や感度など所望する仕様に応じて検知片46dと検知片検出センサ48との組合せを適宜決定することができる。
【0070】
圧力拡散機構47は、動物Bが検知板46へ当接する際の圧力を拡散させるための機構であり、例えば、歩行不足状態には至っていない動物Bとしての犬が歩行している際に偶然に尻尾が検知板46に当接することで歩行運動部30が停止してしまうことを防止する一方、歩行不足状態となった際には堅実に歩行運動部30の停止が行われるような動作を実現するための機構と言える。
【0071】
具体的な構成について説明すると、圧力拡散機構47は、取付基部片50,50と、フレーム体51と、メッシュシート52とを備えている。
【0072】
取付基部片50は、圧力拡散機構47を横断軸45に取り付けるべくフレーム体51の両基端部に装着される部材である。
【0073】
取付基部片50には対向する両側面部に軸挿通孔50aがそれぞれ形成されており、取付基部片50に横断軸45を貫通させることができるよう構成されている。取付基部片50の横断軸45への取付けは、検知板46を挿通させた横断軸45の両側に、取付基部片50の軸挿通孔50aに横断軸45を貫通させることで行われる。
【0074】
また、取付基部片50の下面にはフレーム端部挿入孔50bが形成されている。このフレーム端部挿入孔50bは、金属製の棒材を折曲させて形成したフレーム体51の基端部を挿入させるための孔であり、取付基部片50内に露出させたフレーム体51の基端部は図示しない抜け止め部材が装着されることにより取付基部片50より垂下した状態、付言すれば横断軸45よりフレーム体51が垂下した状態に取付けられる。なお、取付基部片50は軸挿通孔50aを介して横断軸45を挿通させており、特に固定手段を設けなければ取付基部片50は横断軸45に対して回動可能、フレーム体51は横断軸45を中心に揺動自在となるが、必ずしもこのような構成とする必要はなく、横断軸45の軸回り方向への取付基部片50の動きを規制するよう構成しても良い。
【0075】
フレーム体51は、金属製の棒材を正面視にて略U字型に成形し、この下部を後方へ向けて側面視L字状に折曲させて形成したものであり、構造的には垂下部51aと水平部51bと支持当接部51cとで構成している。
【0076】
図6に示すように垂下部51a,51aは、検知部31を構築した際にフレーム体51の左右両側にて上下方向へ伸延する部位であり、フレーム体51の基端部に相当する上端部分は先述の如くフレーム端部挿入孔50bを介して取付基部片50の内部に露出させた状態で固定される。
【0077】
また垂下部51a,51aは、メッシュシート52の取付枠としての機能も有しており、その長さは検知板46の垂直板部46aの上下方向への長さと略同じ長さか更に長い長さとして垂直板部46aの略全面を覆うメッシュシート52の左右両端辺部分を取付けて支持可能となるようにしている。
【0078】
水平部51b,51bは、図7に示すように、左右の垂下部51aの下部から後方へ略水平に伸延する部位であり、垂直板部46aの前面(動物Bより圧力を受ける側の面)よりも僅かに(接触していても良いが、例えば1~15mm程度)前方にメッシュシート52を配置できる位置に配される垂下部51aと後壁11Bに当接させる支持当接部51cとの間隔を保つための支持部材として機能する。
【0079】
支持当接部51cは、図4図7に示すように、後壁11Bと当接させてフレーム体51の後方への揺動を規制するための部位である。また支持当接部51cは、垂下部51a,51a同士の左右幅の間隔を規定するものでもあり、その長さは検知板46、特に垂直板部46aの左右幅よりも長くして、検知板46が後方へ揺動した際に垂直板部46aがフレーム体51の水平部51bや支持当接部51cと干渉することがないようにしている。
【0080】
メッシュシート52は、検知部31に接触した動物Bにより垂直板部46aが受ける圧力を、メッシュシート52がない場合に比して垂直板部46aの前面にてより広い範囲に伝搬させ拡散させるための部材である。
【0081】
このメッシュシート52は可撓性を有するシート状の圧力拡散体としての機能を有するものであり、ゴムやウレタンなど伸縮性や可撓性を備える素材にて形成されたシート、特に本実施形態ではメッシュシートとしている。
【0082】
換言すれば、圧力拡散体(例えば、メッシュシート52)は、検知板46の垂直板部46aの略全面を覆うことのできるシート状であって、伸縮性や可撓性を備える素材により形成されたものであり、更にフレーム体51への取付け状態は、尻尾等の接触(以下、軽接触ともいう。)のみでは全く又は検知片検出センサ48にて歩行不足状態とはされない程度にしか検知板46が傾かず、歩行不足状態により足や胴体が接触した場合には検知片検出センサ48にて歩行不足状態とされる程度に検知板46が傾く程度の張力を付与した状態(ピンと張った状態)で左右の垂下部51a,51a間に設置される。
【0083】
次に、動物用運動装置Aの電気的構成について説明する。図8は本実施形態に係る動物用運動装置Aの電気的構成を示したブロック図である。
【0084】
前方配置空間55内に収容されている制御部56は、その構成としてCPU71、ROM72、RAM73等を備えており、動物用運動装置Aの稼動に必要なプログラムを実行可能としている。
【0085】
具体的には、ROM72はCPU71の処理において必要なプログラム等が格納されており、RAM73はそのプログラム等の実行に際し一時的な記憶領域として機能する。
【0086】
また、制御部56には、検知片検出センサ48やタッチパネル58、起動ボタン59、緊急停止ボタン60、電動モータ63等が接続されており、制御部56におけるプログラムの実行状況に応じて参照したり、制御駆動するよう構成している。
【0087】
例えば、検知片検出センサ48は、同検知片検出センサ48による検知片46dの検知状況を、RAM73の所定アドレスに随時書き込む。CPU71は、このRAM73の所定アドレスを参照することにより、検知片検出センサ48が検知片46dを検出しているか否か、すなわち、検出中であって垂直板部46aは垂下状態であるか、それとも検出できておらず垂直板部46aは傾斜状態であるかについて判断が可能となる。この検知片検出センサ48は、制御部56と共に検知板が傾斜したことを検出する傾斜状態検出手段の構成要素であり、また、検知機構の構成要素でもある。
【0088】
検知片検出センサ48は、横断軸45を中心とする検知板46の揺動によって移動した検知片46dとの相互作用の変化に基づいて検知板46が傾斜したことを検知する。先述の如く本実施形態において検知片検出センサ48は金属検知センサを採用し、導体である金属製の検知板46の表面に発生する渦電流による磁気損失の検出を相互作用の一例として採用しているが、静電容量や磁気など、他の相互作用に基づいて検出させるようにしても良い。
【0089】
タッチパネル58は、入力手段であって、且つ、表示手段としても機能するものであり、使用者がタッチパネル58に触れることで入力された情報は、RAM73の所定のアドレスなどに記憶される。また、タッチパネル58にはCPU71の制御により、歩行運動部30の稼働状況や稼働時間など所定の情報表示が行われる。
【0090】
起動ボタン59や緊急停止ボタン60は、使用者により押下された際に、RAM73の所定アドレスにその旨が随時書き込まれる。
【0091】
電動モータ63は、制御部56より送出される駆動信号に応じた速さで稼動する電動のモータである。
【0092】
次に、制御部56において実行されるメイン処理について図9を参照しながら説明する。なお、動物用運動装置Aではこのメイン処理以外にも様々な機能を実現するために種々の副次的な処理が行われるが、ここでその説明は割愛する。
【0093】
図9に示すように、メイン処理においてCPU71は、起動ボタン59が押下されたか否かについて確認を行う(ステップS11)。ここで、起動ボタン59が押下されていないと判断した場合(ステップS11:No)には、CPU71は処理を再びステップS11へ移す。一方、起動ボタン59が押下されたと判断した場合(ステップS11:Yes)には、CPU71は処理をステップS12へ移す。
【0094】
ステップS12においてCPU71は、RAM73の所定アドレスに記憶されているタッチパネル58を介したユーザの入力値、すなわち、ユーザが入力したタイムスケジュールを参照し、起動ボタン59の押下時から経過した時間に応じたモータ駆動値をRAM73の所定アドレスに設定する。例えば使用者が、スタートから2分までは「コンベア速度が0km/h→3km/hとなるように電動モータ63を漸次増速」、2分から5分までが「コンベア速度を3km/hで保持」、5分から10分までが「コンベア速度が3km/h→4km/hとなるように電動モータ63を漸次増速」というタイムスケジュールを入力している場合において、起動ボタン59の押下後の経過時間が3分であれば、CPU71は、コンベア速度が3km/hとなるよう電動モータ63を駆動させる値(モータ駆動値)をRAM73の所定アドレスに書き込み、経過時間が7分であれば、3km/hと4km/hとの間の所定速度となるよう電動モータ63のモータ駆動値をRAM73の所定アドレスに書き込む。本ステップS12を終えたCPU71は、処理をステップS13へ移す。
【0095】
ステップS13においてCPU71は、RAM73の所定アドレスに記憶されているモータ駆動値を参照し、当該モータ駆動値に応じた速度で電動モータ63を駆動させる。本ステップS13を終えたCPU71は、処理をステップS14へ移す。
【0096】
ステップS14においてCPU71は、動物Bの運動を終了すべき時間が訪れたか否か、例えば、使用者が入力したタイムスケジュールを最後まで実行したか否かについて判断を行う。ここで、運動を終了すべき時間になったと判断した場合(ステップS14:Yes)には、CPU71は徐々に電動モータ63の回転数を落とし、歩行運動部30を停止させる緩停止処理を実行し(ステップS15)、歩行運動部30が停止した後に処理を終える。一方、運動を終了すべき時間ではないと判断した場合(ステップS14:No)には、CPU71は処理をステップS16へ移す。
【0097】
ステップS16においてCPU71は、緊急停止ボタン60が押下されたか、又は、検知板46が傾斜したかについて判断を行う。ここで、緊急停止ボタン60は押下されておらず、且つ、検知板46も傾斜していない判断した場合(ステップS16:No)には、CPU71は処理をステップS12へ移す。一方、緊急停止ボタン60が押下された、又は、検知板46が傾斜したと判断した場合(ステップS16:Yes)には、CPU71は処理をステップS17へ移す。なお、本ステップS16において検知板46が傾斜したか否かの判断を実行する制御部56は、先述の検知片検出センサ48と共に、検知板が傾斜したことを検出する傾斜状態検出手段として機能する。
【0098】
ステップS17においてCPU71は、速やかに電動モータ63の回転数を落とし、歩行運動部30を停止させる急停止処理を実行し(ステップS17)、歩行運動部30が停止した後に処理を終える。なお、ステップS16において検知板46が傾斜したと判断し(ステップS16:Yes)、ステップS17が実行されることで、制御部56は、搬送されつつある動物が検知された場合にコンベアベルトの動きを停止させる制御部として機能する。
【0099】
次に、上述してきた構成を備える動物用運動装置Aの、動物Bの歩行状態に応じた動作について説明する。
【0100】
図10は、動物収容空間11内において動物Bが歩行運動を行っている状態を示しており、動物Bは歩行不足状態ではないが、走っている状態であるため尻尾が激しく動いている状況である。なお、説明の便宜上、検知部31は検知板46とフレーム体51とメッシュシート52のみを示しており、その他構成については省略している。
【0101】
図10(a)に示すように、検知部31に圧力拡散機構47が備えられていない動物用運動装置の場合、動物Bの尻尾Btが検知板46に直接に接触することとなるため、白抜きの矢印で示すように尻尾Btからの押圧力が一点に集中し、検知板46は容易に角度αで大きく傾くこととなる。従って、制御部56は動物Bが歩行不足状態でないにも拘わらず急停止処理を行うこととなり、尻尾による誤動作が発生してしまう。
【0102】
一方、図10(b)に示すように、検知部31に圧力拡散機構47が備えられている場合、尻尾Btからの押圧力は圧力拡散体としてのメッシュシート52を介することで複数の白抜きの矢印で示すように分散(拡散)し、検知板46へ伝えられることとなる。従って、検知板46は角度αよりも小さな角度βで傾き、制御部56は急停止処理を行うことがないため、尻尾による誤動作は発生しない。
【0103】
このように、本実施形態に係る動物用運動装置Aによれば、比較的簡潔な構成でありながら、尻尾による誤動作を防止することができる。
【0104】
また、本実施形態に係る動物用運動装置Aでは、歩行運動部30(コンベアベルト33)によって搬送されつつある動物Bを、その体の大小にできるだけ影響されることなく堅実に検知することも可能である。
【0105】
すなわち、図11(a)に示すように、例えば中型犬程度の大きさの動物B1の場合、歩行不足状態となって歩行運動部30により後方への搬送が行われると、高さH1で圧力拡散機構47と当接する。そして、コンベアベルト33の搬送の速さと動物Bの体重に応じた運動量で検知板46を動かすこととなる。
【0106】
これに対し、図11(b)に示すように例えば小型犬など小さな動物B2の場合、同様に歩行不足状態となって後方への搬送が行われると、動物B2は前述の動物B1よりも体重が軽いため、検知板46を動かすための運動量の付与という観点からは状況的に不利であるといえる。
【0107】
しかしながら、本実施形態に係る動物用運動装置Aでは、検知部31において検知板46を横断軸45を中心として揺動自在に垂下させた状態で配設していることから、小さな動物B2は体重が軽くとも検知板46に当接するポイントが高さH2と低く、てこの働きが生じるため検知板46を容易に傾動させることが可能となる。
【0108】
すなわち、当接ポイントが低い動物、多くの場合は小さく体重の少ない動物であり、例えばメッシュシート52により検知板46を動かすための運動量の付与面積が分散された場合であっても、確実に検知板46を動かして傾かせることができ、搬送されつつある動物Bを、その体の大小にできるだけ影響されることなく堅実に検知することができる。
【0109】
上述してきたように、本実施形態に係る動物用運動装置Aによれば、搬送方向と逆行する向きに載置された動物の歩行と同調する相殺搬送速度でコンベアベルトを駆動させて相対的に略静止した位置関係で前記動物に歩行運動を行わせる歩行運動部と、前記動物の歩行不足により前記コンベアベルト上で搬送されつつある動物を検知する、前記コンベアベルトの搬送下流側端部に配置された検知機構と、同検知機構により搬送されつつある動物が検知された場合、コンベアベルトの動きを停止させる制御部とを備え、前記検知機構は、前記動物の体高よりも高い位置でコンベアベルトの横断方向に架け渡された横断軸と、前記搬送されつつある動物との接触により前記横断軸を中心に傾斜するよう揺動可能に垂設した検知板と、同検知板が傾斜したことを検出する傾斜状態検出手段と、を有するとと共に、前記検知板の前記搬送されつつある動物より圧力を受ける側の面の前方には、同受圧面の略全面に対向させて張設した可撓性を有するシート状の圧力拡散体が配されていることとしたため、比較的簡潔な構成でありながら、尻尾による誤動作を防止することができ、コンベアによって搬送されつつある動物を堅実に検知することのできる動物用運動装置を提供することができる。
【0110】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0111】
30 歩行運動部
31 検知部
33 コンベアベルト
45 横断軸
46 検知板
46a 垂直板部
46b 水平板部
46d 検知片
47 圧力拡散機構
48 検知片検出センサ
52 メッシュシート
56 制御部
A 動物用運動装置
B 動物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11