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  • 特許-運行支援システム 図1
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  • 特許-運行支援システム 図4A
  • 特許-運行支援システム 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】運行支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/00 20060101AFI20230131BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20230131BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20230131BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20230131BHJP
【FI】
G08G3/00 A
G01W1/10 D
G08G5/00 A
G06Q50/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022115479
(22)【出願日】2022-07-20
【審査請求日】2022-07-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年1月28日に、株式会社河北新報社が発行した「河北新報 2022年1月28日付朝刊」において発表 令和4年1月28日に、株式会社河北新報社のONLINE NEWSのウェブサイト https://kahoku.news/articles/20220127khn000036.htmlにおいて発表 令和4年3月1日に、一般社団法人電子情報通信学会が開催した2022年 電子情報通信学会総合大会のウェブサイト https://onsite.gakkai-web.net/ieiceg/index.htmlにおいて発表 令和4年3月18日に、一般社団法人電子情報通信学会が開催した2022年 電子情報通信学会総合大会のZoom会場において発表 令和4年5月27日に、一般社団法人人工知能学会が開催した2022年度人工知能学会全国大会(第36回)のウェブサイト https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2022/subject/3D4-GS-10-03/advencedにおいて発表 令和4年6月16日に、一般社団法人人工知能学会が開催した2022年度人工知能学会全国大会(第36回)のZoom会場において発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、国立研究開発法人情報通信研究機構委託研究事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 潤
(72)【発明者】
【氏名】小岩 晃
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012044(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129225(WO,A1)
【文献】特開2019-032661(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B63B 1/00-85/00
B63J 1/00-99/00
B64B 1/00- 1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00- 5/60
B64G 1/00-99/00
G01W 1/10- 1/18
G06Q 50/30
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定交通手段としての船舶または飛行機の指定経路にしたがった運行の可否を正解タグとし、前記指定経路に応じて定まる指定エリアにおける指定自然事象の時系列が含まれている学習データに基づいて構築された学習モデルに対して、前記指定エリアにおける前記指定自然事象の時系列を入力データとして入力することにより、前記指定交通手段の前記指定経路にしたがった運行の可否を出力データとして取得し、
今回の前記学習データが前記学習モデルに入力された場合の今回の前記出力データおよび前記指定交通手段の運行実績の交差検証により、今回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つが、閾値以上であること、または、前回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つと比較して基準値以上高くなったことを含む指定条件を満たしているか否かを判定し、今回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つが前記指定条件を満たしていない場合、前記指定エリアおよび前記指定自然事象の時系列の新たな組み合わせを次回の前記学習データとして前記学習モデルに入力する
運行支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の運行支援システムにおいて、
少なくとも1つの前記指定エリアにおける少なくとも1つの前記指定自然事象の時系列のサンプリング時点の分布態様が、時系列的に粗密差がある指定分布態様である
運行支援システム。
【請求項3】
請求項1記載の運行支援システムにおいて、
前記指定エリアにおける前記指定自然事象の時系列に加えて、指定人為事象の時系列が含まれている学習データに基づいて構築された前記学習モデルに対して、前記指定エリアにおける前記指定自然事象の時系列および前記指定人為事象の時系列を入力データとして入力することにより、前記指定交通手段の前記指定経路にしたがった運行の可否を出力データとして取得し、
今回の前記学習データが前記学習モデルに入力された場合の今回の前記出力データおよび前記指定交通手段の運行実績の交差検証により、正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つが、閾値以上であること、または、前回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つと比較して基準値以上高くなったことを含む指定条件を満たしているか否かを判定し、今回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つが前記指定条件を満たしていない場合、前記指定エリアおよび前記指定自然事象の時系列、ならびに、前記指定人為事象の時系列の新たな組み合わせを次回の前記学習データとして前記学習モデルに入力する
運行支援システム。
【請求項4】
請求項3記載の運行支援システムにおいて、
少なくとも1つの前記指定人為事象の時系列のサンプリング時点の分布態様が、時系列的に粗密差がある指定分布態様である
運行支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶または飛行機などの交通手段の運行または運航を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機の過去のフライトデータおよび気象データを用いて、サポートベクトルマシーンにより「On-Time到着」、「遅延」および「欠航」を判別する技術が提案されている(非特許文献1参照)。また、気象データに基づいて、出発地または到着地の近傍領域の気象データに基づく波の高さが、船舶の性能限界を超えた場合に航行不能であることが出力される技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-012044号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】人工知能学会研究会資料 SIG-KBS-B802-08
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗員の安全性の観点から、船舶または航空機などの交通手段の運行可否の判断精度のさらなる向上が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、船舶または航空機などの交通手段の運行可否の判断精度のさらなる向上を図りうるシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運行支援システムは、
指定交通手段としての船舶または飛行機の指定経路にしたがった運行の可否を正解タグとし、前記指定経路に応じて定まる指定エリアにおける指定自然事象の時系列が含まれている学習データに基づいて構築された学習モデルに対して、前記指定エリアにおける前記指定自然事象の時系列を入力データとして入力することにより、前記指定交通手段の前記指定経路にしたがった運行の可否を出力データとして取得し、
今回の前記学習データが前記学習モデルに入力された場合の今回の前記出力データおよび前記指定交通手段の運行実績の交差検証により、今回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つが、閾値以上であること、または、前回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つと比較して基準値以上高くなったことを含む指定条件を満たしているか否かを判定し、今回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つが前記指定条件を満たしていない場合、前記指定エリアおよび前記指定自然事象の時系列の新たな組み合わせを次回の前記学習データとして前記学習モデルに入力する
【0008】
本発明の運行支援システムにおいて、
前記指定エリアにおける前記指定自然事象の時系列に加えて、指定人為事象の時系列が含まれている学習データに基づいて構築された前記学習モデルに対して、前記指定エリアにおける前記指定自然事象の時系列および前記指定人為事象の時系列を入力データとして入力することにより、前記指定交通手段の前記指定経路にしたがった運行の可否を出力データとして取得し、
今回の前記学習データが前記学習モデルに入力された場合の今回の前記出力データおよび前記指定交通手段の運行実績の交差検証により、正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つが、閾値以上であること、または、前回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つと比較して基準値以上高くなったことを含む指定条件を満たしているか否かを判定し、今回の正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つが前記指定条件を満たしていない場合、前記指定エリアおよび前記指定自然事象の時系列、ならびに、前記指定人為事象の時系列の新たな組み合わせを次回の前記学習データとして前記学習モデルに入力する
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態としての運行支援システムの構成説明図。
図2】本発明の一実施形態としての運行支援システムの機能説明図。
図3】当日予測運行系の箟津行列に関する説明図。
図4A】1週間ごとの予測結果の例示図。
図4B】季節ごとの予測結果の例示図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(状態支援システムの構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての運行支援システムは、クライアント10とネットワークを介して相互に通信可能に構成されているサーバ20により構成されている。運行支援システムの機能(学習要素、予測要素および検証要素としての機能)のうち少なくとも一部(例えば、予測要素としての機能)が、サーバ20に加えてまたは代えてクライアント10により発揮されてもよい。
【0011】
クライアント10は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートホンなどにより構成されている。クライアント10は、入力装置11、出力装置12および演算処理装置14を備えている。入力装置11は、タッチ式ボタン、キーボードおよびマウスのうち少なくとも1つにより構成されている。出力装置12は、ディスプレイ装置(画像出力装置)により構成されている。入力装置11および出力装置12がタッチパネルにより構成されていてもよい。
【0012】
サーバ20は、入力インターフェース21、出力インターフェース22および演算処理装置24を備えている。入力インターフェース21は、ネットワークを介したデータ受信機能を有する受信装置により構成されている。出力インターフェース22は、ネットワークを介したデータ送信機能を有する送信装置により構成されている。
【0013】
(運行支援システムの機能)
前記構成の運行支援システムの機能について説明する。
【0014】
まず、演算処理装置24により学習データ(説明変数)の組み合わせの相違を表わす指数qが「1」に設定される(図2/STEP102)。
【0015】
演算処理装置24(学習要素)により第q学習データが取得される(図2/STEP110)。例えば、クライアント10の入力装置11を通じて学習データが当該クライアント10に入力され、当該学習データがクライアント10からデータベースに集約されて蓄積される。データベースに蓄積された学習データのうち第q学習データが当該データベースからサーバ20に対して送信または提供される。演算処理装置24により、データベースに蓄積された学習データから第q学習データが選択的に取得されてもよい。
【0016】
第q学習データには、複数の指定エリアAqi(i=1,2,‥Ni)のそれぞれにおける複数の指定自然事象(指定自然事象を表わす指定自然事象変数)xij(j=1,2,‥Nj)のそれぞれの時系列xqij(t)=(xqij(t1(qij))、xqij(t2(qij))、‥、xqij(tN(qij)))が含まれている。第q学習データには、指定交通手段の運行の有無が正解ラベルとして付されている。
【0017】
指定エリアAqiは、指定交通手段の指定経路に応じて定められる。例えば、地図が複数のメッシュに分割され、指定経路の始点、経由地点および/または終点を包含するメッシュ、指定経路の始点、経由地点および/または終点から一または複数の指定方位(東北、西南、南南東など。)に指定距離(1km、5km、10kmなど。方位ごとに相違していてもよい。)だけ離れた地点を包含するメッシュが指定エリアAiとして定義されている。
【0018】
指定エリアAqiにおける指定自然事象xqijには、降水量(mm)、日照時間(時)、平均地表気圧(hPa)、平均気温(℃)、積雪量(cm)、風向および/または平均風速(m/s)などの気象データが含まれていてもよい。
【0019】
指定自然事象xqijには、指定エリアAqiにおける指定事物(雲、山、川、海、樹木、岩石、土、砂など)を含む撮像画像が含まれていてもよい。例えば、指定エリアAqi(例えば、指定経路の全部を包含する比較的広域のエリア)の雲の分布態様を表わす気象衛星による撮像画像が指定自然事象xqijに含まれていてもよい。当該撮像画像に存在する指定事物を表わす指定画像領域の特徴量(撮像画像における指定画像領域の分布態様(撮像画像における指定画像領域の面積占有率、撮像画像における一の方向(例えば、横方向)に並んでいる画素群における指定画像領域の占有率の他の方向(例えば、縦方向)についてのヒストグラムの形状を表わす変数、指定画像領域における重心画素座標値など)、指定画像領域を構成する画素の当該指定画像領域における輝度分布および/または色分布など)が指定自然事象xqijに含まれていてもよい。例えば、気象衛星による撮像画像における指定エリアAqiにおける雲の分布態様を表わす特徴量が指定自然事象xqijに含まれていてもよい。
【0020】
指定自然事象xqij(j=1,2,‥Nj)のそれぞれの時系列xqij(t)=(xqij(t1(qij))、xqij(t2(qij))、‥、xqij(tN(qij)))は、指定交通手段の運行開始時点より前の複数のサンプリング時点または単位期間(10秒、20秒、1分、10分、30分、1時間、1日、1週、1月など)のそれぞれにおける当該指定自然事象xqijの代表時点における測定結果または平均測定結果が含まれている。
【0021】
少なくとも1つの指定エリアAqiにおける少なくとも1つの指定自然事象xqijの時系列xqij(t)におけるサンプリング時点(t1(qij)、t2(qij)、‥、tN(qij))の分布態様が、時系列的に一様な分布態様であってもよく、時系列的に粗密差がある指定分布態様であってもよい。具体的には、サンプリング時点が、正規分布のように単一のピークを有するように分布していてもよく、複数のピーク(高さは同一であっても異なっていてもよい)を有するように分布していてもよい。
【0022】
第q学習データには、指定人為事象の時系列が含まれていてもよい。例えば、指定交通手段の運営会社における経営状況(売上実績、利益率など)、社員の動向(出勤者比率・休暇取得者比率)、指定エリアAqiにおけるイベント(スポーツイベント、コンサート、学会など)、指定エリアAqiにおける指定交通手段とは異なる交通手段(例えば、乗用車)の交通量などが、指定人為事象に含まれている。
【0023】
演算処理装置24(学習要素)により、学習データがモデルに入力されることにより、第q学習モデル(学習済みモデル)が構築される(図2/STEP112)。モデルまたはアルゴリズムには、教師あり学習として利用される分類のためのサポートベクターマシン(SVM)、決定木・ランダムフォレスト、k近傍法、ロジスティック回帰、ニューラルネットワークのほか、教師あり学習として用いられる回帰のための線形回帰、正則化などがあげられる。
【0024】
演算処理装置24(予測要素)により第q入力データが取得される(図2/STEP120)。例えば、クライアント10の入力装置11を通じて入力データが当該クライアント10に入力され、当該入力データがクライアント10からデータベースに集約されて蓄積される。データベースに蓄積された入力データが当該データベースからサーバ20に対して送信または提供される。演算処理装置24により、データベースに蓄積された入力データが選択的に取得されてもよい。
【0025】
第q入力データには、複数の指定エリアAqi(i=1,2,‥Ni)のそれぞれにおける複数の指定自然事象(指定自然事象を表わす指定自然事象変数)xqij(j=1,2,‥Nj)のそれぞれの時系列xqij(t)=(xqij(t1(qij))、xqij(t2(qij))、‥、xqij(tN(qij)))が含まれている。第q入力データにも、指定人為事象の時系列が含まれていてもよい。
【0026】
演算処理装置24(予測要素)により、第q入力データが学習モデルに入力されることにより、第q出力データまたは予測結果として指定交通手段の航行の有無または航行の可能性(有・無)が出力される(図2/STEP122)。当該出力結果は、サーバ20からクライアント10に対して送信され、当該クライアント10の出力装置12に出力されてもよい。
【0027】
演算処理装置24(検証要素)により、第q出力データおよび指定交通手段の運行実績の交差検証により、正解率、真陽性率および真陰性率のうち少なくとも1つが評価される(図2/STEP130)。
【0028】
演算処理装置24(検証要素)により、正解率、真陽性率および真陰性率のうち少なくとも1つが指定条件を満たしているか否かが判定される(図2/STEP132)。例えば、第q出力データに応じた正解率等が閾値(例えば0.95)以上であること、第q出力データに応じた正解率等が、第q-1出力データに応じた正解率等と比較して基準値以上高くなったことなどが、指定条件として定義されている。
【0029】
指定条件が満たされていると判定された場合(図2/STEP132‥YES)、一連の処理が終了する。その一方、指定条件が満たされていないと判定された場合(図2/STEP132‥NO)、指数qが「1」だけ増やされたうえで(図2/STEP104)、第q学習データの取得(図2/STEP110)以降の処理が繰り返される。
【0030】
(作用効果)
本発明の運行支援システムによれば、船舶または航空機などの指定交通手段の運行可否の判断精度のさらなる向上が図られる。
【0031】
(実施例)
山形県酒田市の離島である飛島へのアクセス手段である定期船とびしまの出航の判断は、周辺地域の風速、波高および/または視程などに基づいて実行されている、天候との相関関係が強いと推察される。アメダス酒田での降水量(mm)、日照時間(時)、平均地表気圧(hPa)、平均気温(℃)、最深深雪(cm)、平均風速(m/s)の10年分のデータを特徴量とし、対応する日付の定期船運行実績が正解ラベルとして組み合わせられたデータセットにより学習が実行された。翌日以降の予測では、正解ラベルが任意の日数分だけ繰り上げられ、予測対象日ごとにデータセットが再構成された。予測を行う機械学習モデルにはSVM(Support Vector Machine)が利用された。SVMは分類や回帰問題に用いられるモデルであり、過学習しにくく、ノイズに強いという特徴を持つ。出航の判断は人が経験的に得た基準で行っており、正解ラベルにはヒューマンエラーによるノイズも含まれる可能性が あることから、SVMのノイズに強い特徴が有効である。
【0032】
アメダスデータと運行実績の関係を調べるため、SVMを用いて当日の運行予測モデルが構築され、10回の交差検証が行なわれた。当該検証結果が図3に示されている。正解率は「0.871」と高く、アメダスデータおよび運行実績の間に相関があることが確認された。また真陽性率は「0.953」であり、真陰性率は「0.689」であった。真陰性率が真陽性率より低い理由は、安全を考慮した欠航寄りの判断が行われていることなどが考えられる。実用面では翌日以降の予測が求められるため、翌日の運行予測モデルが構築され、10回の交差検証が行なわれた。この結果、正解率は「0.764」であり、真陽性率は「0.939」であり、真陰性率は 「0.447」であった。
【0033】
また、観測日から1週間後までの予測性能が評価された結果が図4Aに示されている。図4Aから、真陽性率は90%前後であるが、真陰性率は予測対象日に反比例して減少していることがわかる。これは、10年間の運行状況は欠航の割合が低く、出航の場合のデータに過適合していること、1日のアメダスデータのみによる予測では情報量が不足している点などが考えられる。
【0034】
本実施例では予測に気象データが用いられていることから、季節毎に予測結果の相違があることが考えられる。そこで、翌日の運行予測について四季毎の正解率を調べた結果が図4Bに示されている。図4Bから、出航の真陽性率は春および夏では高く、秋から低下に転じて冬には低くなり、欠航の真陰性率は春および夏では低く、秋から向上に転じ、冬には高いことがわかる。これは、春および夏は天候が安定する日が多く運行しやすく欠航が少ないため、また冬は天候が悪化する日が連続することが多く欠航が多いためであると考えられる。
【0035】
LSTMによる時系列処理、または、気象衛星画像を用いたCNNの適用などにより翌日以降の航行の有無の予測精度の向上が図られる。
【符号の説明】
【0036】
10‥クライアント
11‥入力装置
12‥出力装置
14‥演算処理装置
20‥サーバ(高校支援システム)
21‥入力インターフェース
22‥出力インターフェース
24‥演算処理装置。
【要約】
【課題】船舶または航空機などの交通手段の運行可否の判断精度のさらなる向上を図りうるシステムを提供する。
【解決手段】指定交通手段の指定経路にしたがった運行の可否を正解タグとし、指定経路に応じて定まるエリアにおける指定自然事象の時系列が含まれている学習データに基づいて学習モデルが構築される。この学習モデルに対して、指定エリアにおける指定自然事象の時系列が入力データとして入力されることにより、指定交通手段の指定経路にしたがった運行の可否が出力データとして取得される。出力データおよび指定交通手段の運行実績の交差検証により、正解率、真陽性率および真陰性率の少なくとも1つを向上させるように、指定エリアおよび指定自然事象の時系列の組み合わせが調節される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4A
図4B