IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クリス・コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-足場用クランプ 図1
  • 特許-足場用クランプ 図2
  • 特許-足場用クランプ 図3
  • 特許-足場用クランプ 図4
  • 特許-足場用クランプ 図5
  • 特許-足場用クランプ 図6
  • 特許-足場用クランプ 図7
  • 特許-足場用クランプ 図8
  • 特許-足場用クランプ 図9
  • 特許-足場用クランプ 図10
  • 特許-足場用クランプ 図11
  • 特許-足場用クランプ 図12
  • 特許-足場用クランプ 図13
  • 特許-足場用クランプ 図14
  • 特許-足場用クランプ 図15
  • 特許-足場用クランプ 図16
  • 特許-足場用クランプ 図17
  • 特許-足場用クランプ 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】足場用クランプ
(51)【国際特許分類】
   E04G 7/22 20060101AFI20230131BHJP
   E04G 7/32 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
E04G7/22 B
E04G7/32 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022177360
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2022-11-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516288044
【氏名又は名称】株式会社クリス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 龍男
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6579642(JP,B1)
【文献】特許第6948640(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第1574269(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/22
E04G 7/32
E04G 7/34
F16B 2/10
F16B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場構成部材に設けられたクサビを上下方向に延びる円管材からなる支柱に設けられた差し込み部に差し込んで固定することによって構築されるクサビ緊結式足場に使用される足場用クランプにおいて、
前記支柱の外周面に対して該支柱の径方向一側から当接する第1挟持部材と、
前記支柱の外周面に対して該支柱の径方向他側から当接する第2挟持部材と、
前記第1挟持部材の一端側と前記第2挟持部材の一端側とが互いに接離する方向に回動可能に該第1挟持部材の他端側と該第2挟持部材の他端側とを連結する連結部材と、
前記第1挟持部材の一端側と前記第2挟持部材の一端側とを互いに接近する方向に締結する締結部材とを備え、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の少なくとも一方には、前記差し込み部となるクサビ差込用孔部またはクサビ差込用切欠部が形成され、
前記第1挟持部材は、前記支柱の径方向に延びる第1上側板材、第1中間板材及び第1下側板材が上下方向に配置されて一体化された状態で構成され、
前記第2挟持部材は、前記支柱の径方向に延びる第2上側板材、第2中間板材及び第2下側板材が上下方向に配置されて一体化された状態で構成されていることを特徴とする足場用クランプ。
【請求項2】
請求項1に記載の足場用クランプにおいて、
前記第1上側板材の下面に前記第1中間板材の上面が接合され、
前記第1中間板材の下面に前記第1下側板材の上面が接合されていることを特徴とする足場用クランプ。
【請求項3】
請求項1に記載の足場用クランプにおいて、
前記第1上側板材及び前記第1下側板材の厚みは同じに設定され、
前記第1中間板材の厚みと、前記第1上側板材の厚みとは異なっていることを特徴とする足場用クランプ。
【請求項4】
請求項3に記載の足場用クランプにおいて、
前記第1中間板材の厚みは、前記第1上側板材の厚みよりも薄く設定されていることを特徴とする足場用クランプ。
【請求項5】
請求項4に記載の足場用クランプにおいて、
前記第1中間板材には、肉抜き部が設けられていることを特徴とする足場用クランプ。
【請求項6】
請求項2に記載の足場用クランプにおいて、
前記第2上側板材及び前記第2下側板材の厚みは、前記第1上側板材の厚みと同じに設定されていることを特徴とする足場用クランプ。
【請求項7】
請求項1に記載の足場用クランプにおいて、
前記第1中間板材の一端側には、第1中間延出板部が形成され、
前記第2上側板材の一端側には、前記支柱を挟持した状態で前記第1中間延出板部の上面に配置される第2上側延出板部が形成され、
前記第2下側板材の一端側には、前記支柱を挟持した状態で前記第1中間延出板部の下面に配置される第2下側延出板部が形成されていることを特徴とする足場用クランプ。
【請求項8】
請求項1に記載の足場用クランプにおいて、
前記第1上側板材、第1中間板材及び第1下側板材は、当該板材の一部を前記支柱の外周面に沿う形状に除去することによって形成された切欠部をそれぞれ有し、
前記第1上側板材の前記切欠部の縁部には、前記支柱の外周面に沿う上下方向に延びるサポート部が設けられていることを特徴とする足場用クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば仮設足場を構築する際に使用される足場用クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば各種建築物の建設現場や土木工事現場等では作業員用の仮設足場を構築した後、各種作業が行われている。仮設足場を構築する場合には、例えば、支柱、布材、布枠、先行手摺ブレース等の足場構成部材が使用され、支柱に対して布材等が連結される。この連結構造として、例えば布材の端部に下方へ突出するように固定されたクサビをクランプによって支柱に連結する構造が知られており、このような仮設足場はクサビ緊結式足場と呼ばれている(例えば特許文献1~3参照)。
【0003】
特許文献1~3に開示されているクランプは、支柱を径方向に挟持する第1及び第2挟持部材と、第1及び第2挟持部材を回動可能に連結する連結軸と、第1及び第2挟持部材を締結するボルト及びナットとを備えている。第1及び第2挟持部材にはクサビの差込孔が形成されており、クランプを支柱の任意の高さに固定した状態で布材のクサビを差込孔に差し込むことによって布材を支柱に連結することができる。
【0004】
特許文献1、2の第1及び第2挟持部材は、支柱の径方向に延びる1枚の板材で構成されており、また、特許文献3の第1及び第2挟持部材は、支柱の径方向に延びる2枚の板材が上下に重ね合わされて一体化されることによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6579642号公報
【文献】特許第6608149号公報
【文献】特許第6948640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、クランプの強度は必要な強度が確保できればよく、必要以上に高強度であったとしても、材料が無駄になるとともに、重量が増加してしまい、効率の良い設計とは言えない。クランプの強度を検討する際に最も影響が大きな要素は、第1及び第2挟持部材の厚みであり、第1及び第2挟持部材の厚みを変更することでクランプの強度が大きく変わる。
【0007】
この点、特許文献1、2では第1及び第2挟持部材が1枚の板材で構成されているので、必要な強度を確保するためには厚い板材を選択する必要がある。ところが、厚い板材は、成形性及び加工性が悪い場合がある。
【0008】
そこで、特許文献3のように2枚の板材を重ね合わせることによって第1及び第2挟持部材を構成すれば、特許文献1、2で用いる板材よりも薄い板材で済む。ところが、連結軸による連結部分や、ボルト及びナットによる締結部分の形状を考慮すると、上下のバランスを保つために、上側の板材と下側の板材を同じ厚みにしておくのが常識的である。ということは、2枚の板材を用いているにも関わらず2枚の板材の厚みを同じにしなければならないという制約が生じる。この場合、一般に流通している板材(鋼板)の厚みとして例えば1.6mm、2.3mm、3.2mm、4.5mm等があり、コストを考慮するとこれらの厚みの中から使用する板材を選択する必要がある。例えば、3.2mmの板材を選択すると、上側の板材と下側の板材の両方を3.2mmの板材にする必要があり、合計で6.4mmの厚みになるが、6.4mmでは必要以上に高強度になってしまう場合、その下の厚みである2.3mmの板材を選択すると、上下合計で4.6mmになり、上記6.4mmとの差は1.8mmもの大きな差になる。このため、4.6mmでは必要な強度を確保できなくなるおそれがある。この場合、必要以上に高強度な6.4mmで設計することになってしまう。
【0009】
つまり、特許文献1~3のクランプでは、第1及び第2挟持部材の強度設計の自由度が低く、効率の良い設計が困難であった。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、支柱を挟持する挟持部材の強度設計の自由度を高めて効率の良い設計が行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、足場構成部材に設けられたクサビを上下方向に延びる円管材からなる支柱に設けられた差し込み部に差し込んで固定することによって構築されるクサビ緊結式足場に使用される足場用クランプを前提とすることができる。足場用クランプは、前記支柱の外周面に対して該支柱の径方向一側から当接する第1挟持部材と、前記支柱の外周面に対して該支柱の径方向他側から当接する第2挟持部材と、前記第1挟持部材の一端側と前記第2挟持部材の一端側とが互いに接離する方向に回動可能に該第1挟持部材の他端側と該第2挟持部材の他端側とを連結する連結部材と、前記第1挟持部材の一端側と前記第2挟持部材の一端側とを互いに接近する方向に締結する締結部材とを備えている。前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の少なくとも一方には、前記差し込み部となるクサビ差込用孔部またはクサビ差込用切欠部が形成されている。前記第1挟持部材は、前記支柱の径方向に延びる第1上側板材、第1中間板材及び第1下側板材が上下方向に配置されて一体化された状態で構成されており、また、前記第2挟持部材は、前記支柱の径方向に延びる第2上側板材、第2中間板材及び第2下側板材が上下方向に配置されて一体化された状態で構成されている。
【0012】
この構成によれば、第1挟持部材の一端側と第2挟持部材の一端側とが互いに離れる方向に第1挟持部材及び第2挟持部材を回動させると、第1挟持部材の一端側と第2挟持部材の一端側との間隔が広がるので、支柱を第1挟持部材と第2挟持部材との間に配置することが可能になる。支柱を第1挟持部材と第2挟持部材との間に配置した後、第1挟持部材の一端側と第2挟持部材の一端側とが互いに接近する方向に第1挟持部材及び第2挟持部材を回動させると、第1挟持部材及び第2挟持部材がそれぞれ支柱の外周面に対して該支柱の径方向一側及び他側からそれぞれ当接する。そして、締結部材により第1挟持部材の一端側と第2挟持部材の一端側とを互いに接近する方向に締結することで、第1挟持部材及び第2挟持部材が支柱の外周面に圧接して支柱を径方向に挟持する。これにより、足場用クランプが支柱に対して固定された状態になる。
【0013】
第1挟持部材が第1上側板材、第1中間板材及び第1下側板材を備えているので、例えば上下のバランスを考慮して第1上側板材及び第1下側板材の厚みを同じにしたとしても、第1中間部材の厚みは、第1上側板材及び第1下側板材とは異なる厚みにすることができ、第1挟持部材の強度設計の自由度が向上する。これにより、必要な強度を満たすことが可能な最低限の厚みとなるように、第1挟持部材の厚みを設定できる。第2挟持部材についても同様である。尚、第1中間板材及び第2中間板材の数は、1枚に限られるものではなく、2枚以上であってもよい。例えば第1中間板材が2枚ある場合には、第1挟持部材が4枚の板材で構成されることになる。
【0014】
また、前記第1上側板材の下面に前記第1中間板材の上面が接合され、前記第1中間板材の下面に前記第1下側板材の上面が接合されていてもよい。これにより、第1挟持部材が3枚の板材を積層した状態になる。同様に、前記第2上側板材の下面に前記第2中間板材の上面が接合され、前記第2中間板材の下面に前記第2下側板材の上面が接合されていてもよい。
【0015】
また、前記第1上側板材及び前記第1下側板材の厚みは同じに設定されていてもよい。この場合、前記第1中間板材の厚みと、前記第1上側板材の厚みとは異なる厚みに設定してもよく、例えば、前記第1中間板材の厚みは、前記第1上側板材の厚みよりも薄く設定することができる。また、前記第2上側板材及び前記第2下側板材の厚みは、前記第1上側板材の厚みと同じに設定されていてもよい。
【0016】
第1中間板材または第2中間板材には、肉抜き部が設けられていてもよい。これにより、第1中間板材または第2中間板材が軽量になり、ひいては足場用クランプの軽量化を図ることができる。
【0017】
前記第1中間板材の一端側には、第1中間延出板部が形成されていてもよい。この場合、前記第2上側板材の一端側には、前記支柱を挟持した状態で前記第1中間延出板部の上面に配置される第2上側延出板部を形成し、前記第2下側板材の一端側には、前記支柱を挟持した状態で前記第1中間延出板部の下面に配置される第2下側延出板部を形成することができる。これにより、第1中間延出板部が第2上側延出板部と第2下側延出板部とで上下方向に挟まれることになるので、第1挟持部材と第2挟持部材の上下方向のガタツキを抑制できる。
【0018】
前記第1上側板材、第1中間板材及び第1下側板材は、当該板材の一部を前記支柱の外周面に沿う形状に除去することによって形成された切欠部をそれぞれ有していてもよい。この場合、前記第1上側板材の前記切欠部の縁部には、前記支柱の外周面に沿う上下方向に延びるサポート部を設けることができる。この構成によれば、第1挟持部材及び第2挟持部材によって支柱を挟持した状態で、サポート部が支柱の外周面に当接するように配置される。これにより、第1挟持部材及び第2挟持部材が傾く方向に動こうとした際、サポート部が支柱の外周面に当接することで、当該外周面によって支持される。尚、第1下側板材の切欠部の縁部には、上方へ延びる上側サポート部を設けてもよいし、下方へ延びる下側サポート部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、第1挟持部材が第1上側板材、第1中間板材及び第1下側板材を備えており、また、第2挟持部材が第2上側板材、第2中間板材及び第2下側板材を備えているので、第1挟持部材及び第2挟持部材の強度設計の自由度を高めることができ、その結果、効率の良い設計を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る足場用クランプを使用してクサビ緊結式足場を構築する場合を説明する斜視図である。
図2】実施形態1に係る足場用クランプが締結部材によって締結された状態を示す平面図である。
図3】実施形態1に係る足場用クランプが開いた状態を示す平面図である。
図4】実施形態1に係る足場用クランプの分解斜視図である。
図5】第1上側板材の平面図である。
図6】第1中間板材の平面図である。
図7】第1下側板材の平面図である。
図8】第1挟持部材の側面図である。
図9】第2上側板材の平面図である。
図10】第2中間板材の平面図である。
図11】第2下側板材の平面図である。
図12】第2挟持部材の側面図である。
図13】実施形態1の変形例1に係る図6相当図である。
図14】実施形態1の変形例2に係る図6相当図である。
図15】実施形態1の変形例3に係る第1挟持部材及び第2挟持部材の内周部近傍を示す斜視図である。
図16】実施形態1の変形例3に係るサポート部と支柱との位置関係を示す図である。
図17】実施形態2の第1挟持部材の斜視図である。
図18】実施形態2の第2挟持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るクサビ緊結式足場用クランプ1を使用してクサビ緊結式足場を構築する場合を説明する斜視図であり、また、図2は、クサビ緊結式足場用クランプ1が締結部材によって締結された状態を示す平面図であり、さらに、図3は、クサビ緊結式足場用クランプ1が開いた状態を示す平面図である。
【0023】
図1に示すように、クサビ緊結式足場用クランプ1は、例えば布材100を支柱200に連結する場合に使用される部材である。例えば、布材100、支柱200、布枠(図示せず)、先行手摺ブレース(図示せず)、幅木(図示せず)、壁つなぎ(図示せず)、ジャッキ(図示せず)、階段(図示せず)及びクサビ緊結式足場用クランプ1等によってクサビ緊結式足場が構築される。クサビ緊結式足場を構成している各部材は、足場構成部材である。
【0024】
クサビ緊結式足場は、図1に示す布材100の両端部にそれぞれ設けられたクサビ101を、支柱200に設けられたポケット201や差し込み部に差し込んで固定することによって構築される。図示しないが、上記布枠、先行手摺ブレース等にもクサビが設けられており、これらクサビをポケット201や、クサビ緊結式足場用クランプ1の差し込み部に差し込んで固定することもできる。布材100の端部に設けられるクサビ101の形状や構造は様々である。本発明は、どのクサビ101に対しても適用することができる。
【0025】
支柱200は、金属製の円管部材で構成されており、上下方向に延びている。支柱200は、鉛直に延びるように配設されていてもよいし、傾斜するように配設されていてもよい。また、布材100も支柱200と同様な円管部材で構成されており、通常は略水平方向に延びるように配設されるが、傾斜していても構わない。
【0026】
(クサビ緊結式足場用クランプ1の全体構成)
図2図3に示すように、クサビ緊結式足場用クランプ1は、支柱200を径方向に挟持する第1挟持部材10及び第2挟持部材20と、第1挟持部材10及び第2挟持部材20を回動可能に連結する連結部材30と、第1挟持部材10及び第2挟持部材20を締結する締結部材40とを備えている。第1挟持部材10及び第2挟持部材20は、支柱200の外周面に対して該支柱200の径方向(水平方向)一側及び他側からそれぞれ当接することにより、支柱200を径方向に挟持(クランプ)する部材である。
【0027】
尚、この実施形態の説明では、図1に示すようにクサビ緊結式足場用クランプ1を支柱200に取り付けた状態で、クサビ緊結式足場用クランプ1の下になる側を単に「下」といい、クサビ緊結式足場用クランプ1の上になる側を単に「上」というものとする。また、図2図3に示すように、第1挟持部材10及び第2挟持部材20における連結部材30によって連結される側を、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の「基端側」といい、第1挟持部材10及び第2挟持部材20における連結部材30によって連結される側とは反対側を、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の「先端側」というものとする。第1挟持部材10及び第2挟持部材20の先端側が本発明の一端側に相当し、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の基端側が本発明の他端側に相当するが、この関係は反対であってもよい。このようにクサビ緊結式足場用クランプ1の方向を定義するのは説明の便宜を図るためだけであり、クサビ緊結式足場用クランプ1の使用状態を限定するものではなく、図示した姿勢以外の姿勢でクサビ緊結式足場用クランプ1を使用することも可能である。
【0028】
また、図1図2は、クサビ緊結式足場用クランプ1が使用状態(締結部材による締結状態)にある場合を示しており、図3は、締結部材40による締結が行われておらず、かつ、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の先端側同士が離れる方向に、第1挟持部材10及び第2挟持部材20を回動させた状態を示しており、支柱200に取り付けられる前の状態である。このように各部の回動が可能になっている。
【0029】
(第1挟持部材10の構成)
図4に示すように、第1挟持部材10は、支柱200の径方向に延びる第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13が上下方向に配置されて一体化された状態で構成されており、複数の板材が積層された積層部材と呼ぶこともできる。第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13の各々の板厚を薄くしたとしても、それらを合わせることにより、第1挟持部材10の強度は十分に確保することができ、後述する締結部材40による締結力によって殆ど変形しないように第1挟持部材10は高い強度を持っている。
【0030】
第1上側板材11は、第1挟持部材10の最も上に配置され、第1挟持部材10の上側部分を構成する部材である。第1下側板材13は、第1挟持部材10の最も下に配置され、第1挟持部材10の下側部分を構成する部材である。第1中間板材12は、第1上側板材11と第1下側板材13との間に配置され、第1挟持部材10の上下方向中間部を構成する部材である。よって、第1挟持部材10の上面は、第1上側板材11の上面で構成され、また、第1挟持部材10の下面は、第1下側板材13の下面で構成されることになる。
【0031】
第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13は、例えば鋼板等の高強度な部材で構成されており、第1上側板材11の下面に第1中間板材12の上面が接合され、第1中間板材12の下面に第1下側板材13の上面が接合されている。各板材11、12、13を接合する際には例えば溶接等の接合方法を用いることができる。
【0032】
第1上側板材11及び第1下側板材13の厚みは同じに設定されている。本実施形態では、第1中間板材12の厚みと、第1上側板材11の厚みとが同じに設定されているが、これに限らず、第1中間板材12の厚みと、第1上側板材11の厚みとは異なっていてもい。具体的には、第1中間板材12の厚みが第1上側板材11の厚みよりも薄く設定されていてもよいし、第1中間板材12の厚みが第1上側板材11の厚みよりも厚く設定されていてもよい。
【0033】
第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13は、一般に流通している鋼板で構成されている。一般に流通している鋼板の厚みとしては、例えば1.6mm、2.3mm、3.2mm、4.5mm等があるので、これらの中から第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13の厚みを選択することができる。尚、第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13の厚みは、上記以外の厚みであってもよい。また、第1挟持部材10に必要とされる強度を満たすように、かつ、必要強度を超える余分な強度(不必要な強度)を持たないように、第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13の厚みが設定されている。
【0034】
図5は、第1上側板材11の平面図である。第1上側板材11は、当該第1上側板材11の一部を支柱200の外周面に沿う形状に除去することによって形成された第1上側切欠部11aを有している。第1上側切欠部11aは円弧状に延びており、第1上側切欠部11aの周方向の略全体が支柱200の外周面に対して径方向一側から当接可能となっている。第1上側板材11に第1上側切欠部11aを設ける際には、当該第1上側板材11の一部を従来から周知の切断装置によって切断、または切除することによって形成されている。切断装置としては、例えばレーザーカッター等を挙げることができる。
【0035】
締結部材40による締結力が作用した際には、第1上側板材11における第1上側切欠部11aの周縁部が支柱200の外周面に強く押しつけられることになる。また、第1上側板材11における支柱200の外周面に当接する側とは反対側の縁部も円弧状に延びている。
【0036】
第1上側板材11の基端側には、第1基端側切欠部11bが形成されている。第1基端側切欠部11bは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第1上側板材11の径方向(支柱200の径方向)外方に開放されている。また、第1上側板材11の先端側には、第1先端側切欠部11cが形成されている。第1先端側切欠部11cは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第1上側板材11の径方向(支柱200の径方向)中間部に位置しており、径方向外側及び内側には開放されていない。
【0037】
第1上側板材11には、図1に示すようなクサビ101が差し込まれる差し込み部となるクサビ差込用孔部11dが当該第1上側板材11を厚み方向に貫通するように形成されている。本実施形態では、2つのクサビ差込用孔部11dが支柱200の周方向に互いに離れて設けられているが、クサビ差込用孔部11dの数は2つに限られるものではなく、例えば1つであってもよい。クサビ差込用孔部11dの形状は、差し込まれるクサビ101の形状や構造に対応していればよいので、図示した形状に限定されるものではない。また、クサビ差込用孔部11dの代わり、またはクサビ差込用孔部11dに加えて、クサビ差込用切欠部が形成されていてもよい。クサビ差込用切欠部の形状も、差し込まれるクサビ101の形状や構造に対応していればよい。
【0038】
図6は、第1中間板材12の平面図である。第1中間板材12は、当該第1中間板材12の一部を支柱200の外周面に沿う形状に除去することによって形成された第1中間切欠部12aを有している。第1中間切欠部12aは第1上側切欠部11aと同形状とされており、第1中間切欠部12aの周方向の略全体が支柱200の外周面に対して径方向一側から当接可能となっている。第1中間切欠部12aは第1上側切欠部11aと同様な方法で形成される。また、第1中間板材12における支柱200の外周面に当接する側とは反対側の縁部も円弧状に延びている。
【0039】
第1中間板材12の基端側には、第1基端側延出板部12bが形成されている。第1基端側延出板部12bは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第1中間板材12の径方向外側部分に配置されている。第1基端側延出板部12bの周縁部は円弧状をなしている。第1基端側延出板部12bには、当該第1基端側延出板部12bを上下方向に貫通する第1連結孔12eが形成されている。この第1連結孔12eは例えば円形に形成することができる。
【0040】
また、第1中間板材12の先端側には、第1先端側延出板部12cが形成されている。第1先端側延出板部12cは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第1中間板材12の径方向中間部に位置している。第1先端側延出板部12cの周縁部は円弧状をなしている。
【0041】
第1中間板材12には、第1上側板材11のクサビ差込用孔部11dと同じ形状のクサビ差込用孔部12dが、クサビ差込用孔部11dと同じ位置に形成されている。
【0042】
図7は、第1下側板材13の平面図である。第1下側板材13は、第1上側板材11と同じ部材で構成されている。すなわち、第1下側板材13は、当該第1下側板材13の一部を支柱200の外周面に沿う形状に除去することによって形成された第1下側切欠部13aを有している。第1下側切欠部13aは、第1上側切欠部11aと同形状とされており、第1下側切欠部13aの周方向の略全体が支柱200の外周面に対して径方向一側から当接可能となっている。第1下側切欠部13aは第1上側切欠部11aと同様な方法で形成される。また、第1下側板材13における支柱200の外周面に当接する側とは反対側の縁部も円弧状に延びている。
【0043】
第1下側板材13の基端側には、第1基端側切欠部13bが形成されている。第1基端側切欠部13bは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第1下側板材13の径方向外方に開放されている。また、第1下側板材13の先端側には、第1先端側切欠部13cが形成されている。第1先端側切欠部13cは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第1下側板材13の径方向中間部に位置している。また、第1下側板材13には、クサビ差込用孔部13dが形成されている。
【0044】
図4に示すように、第1挟持部材10の先端部には、縦板材14が設けられている。縦板材14は、第1挟持部材10を構成している第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13の先端部に対して溶接等により固定され、第1挟持部材10の先端部から上下方向に延びている。縦板材14の上縁部は、第1挟持部材10の上面よりも上方へ突出しており、また、縦板材14の下縁部は、第1挟持部材10の下面よりも下方へ突出している。さらに、縦板材14は、第1挟持部材10の先端部から径方向外方へ向けて突出している。
【0045】
縦板材14には、後述する締結軸部41を挿入するための軸部挿入用切欠部14aが形成されている。軸部挿入用切欠部14aは、縦板材14の先端側に向けて開放している。縦板材14の先端部には、軸部挿入用切欠部14aの上方及び下方にそれぞれ上側屈曲部14b及び下側屈曲部14cが形成されている。上側屈曲部14b及び下側屈曲部14cは、取り付け状態にある第2挟持部材20から離れる方向に屈曲している。この上側屈曲部14b及び下側屈曲部14cの形成により、後述する締結状態にあるナット42が上側屈曲部14b及び下側屈曲部14cに係合して締結軸部41が軸部挿入用切欠部14aから抜け難くなる。
【0046】
(第2挟持部材20の構成)
第2挟持部材20は、支柱200の径方向に延びる第2上側板材21、第2中間板材22及び第2下側板材23が上下方向に配置されて一体化された状態で構成されている。第2挟持部材20は、第1挟持部材10と同様に、後述する締結部材40による締結力によって殆ど変形しないように高い強度を持っている。第2上側板材21、第2中間板材22及び第2下側板材23の厚みは、それぞれ、第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13の厚みと同じである。また、第2上側板材21、第2中間板材22及び第2下側板材23は、第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13と同じ鋼板で構成されている。
【0047】
第2上側板材21は、第2挟持部材20の最も上に配置され、第2挟持部材20の上側部分を構成する部材である。第2上側板材21と第1上側板材11とは同じ高さに配置されるようになっている。第2下側板材23は、第2挟持部材20の最も下に配置され、第2挟持部材20の下側部分を構成する部材である。第2下側板材23と第1下側板材13とは同じ高さに配置されるようになっている。第2中間板材22は、第2上側板材21と第2下側板材23との間に配置され、第2挟持部材20の上下方向中間部を構成する部材である。第2中間板材22と第1中間板材12とは同じ高さに配置されるようになっている。よって、第2挟持部材20の上面は、第2上側板材21の上面で構成され、また、第2挟持部材20の下面は、第2下側板材23の下面で構成されることになる。
【0048】
第2上側板材21の下面に第2中間板材22の上面が接合され、第2中間板材22の下面に第2下側板材23の上面が接合されている。接合方法は、第1挟持部材10と同様である。
【0049】
図9は、第2上側板材21の平面図である。第2上側板材21は、図6に示す第1中間板材12と同じ部材で構成されており、第1中間板材12を図6の左右に反転させることで、第2上側板材21として使用できる。
【0050】
第2上側板材21は、当該第2上側板材21の一部を支柱200の外周面に沿う形状に除去することによって形成された第2上側切欠部21aを有している。第2上側切欠部21aは円弧状に延びており、第2上側切欠部21aの周方向の略全体が支柱200の外周面に対して径方向他側から当接可能となっている。締結部材40による締結力が作用した際には、第2上側板材21における第2上側切欠部21aの周縁部が支柱200の外周面に強く押しつけられることになる。
【0051】
第2上側板材21の基端側には、第2基端側延出板部21bが形成されている。第2基端側延出板部21bは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第2上側板材21の径方向外側部分に配置されている。第2基端側延出板部21bの周縁部は円弧状をなしている。第2基端側延出板部21bには、当該第2基端側延出板部21bを上下方向に貫通する第2上側連結孔21eが形成されている。この第2上側連結孔21eは、第1挟持部材10の第1連結孔12eと一致するようになっている。
【0052】
また、第2上側板材21の先端側には、第2先端側延出板部21cが形成されている。第2先端側延出板部21cは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第2上側板材21の径方向中間部に位置している。第2先端側延出板部21cの周縁部は円弧状をなしている。さらに、第2上側板材21には、第1上側板材11のクサビ差込用孔部11dと同じ形状のクサビ差込用孔部21dが形成されている。
【0053】
図10は、第2中間板材22の平面図である。第2中間板材22は、図5に示す第1上側板材11と同じ部材で構成されており、第1上側板材11を図5の左右に反転させることで、第2中間板材22として使用できる。
【0054】
第2中間板材22は、当該第2中間板材22の一部を支柱200の外周面に沿う形状に除去することによって形成された第2中間切欠部22aを有している。第2中間切欠部22aは円弧状に延びており、第2中間切欠部22aの周方向の略全体が支柱200の外周面に対して径方向他側から当接可能となっている。締結部材40による締結力が作用した際には、第2中間板材22における第2中間切欠部22aの周縁部が支柱200の外周面に強く押しつけられることになる。
【0055】
第2中間板材22の基端側には、第2基端側切欠部22bが形成されている。第2基端側切欠部22bは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第2中間板材22の径方向外方に開放されている。また、第2中間板材22の先端側には、第2先端側切欠部22cが形成されている。第2先端側切欠部22cは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第2中間板材22の径方向中間部に位置している。第2中間板材22には、クサビ差込用孔部22dが第2上側板材21のクサビ差込用孔部21dと一致するように形成されている。
【0056】
図11は、第2下側板材23の平面図である。第2下側板材23は、第2上側板材21と同じ部材で構成されている。すなわち、第2下側板材23は、当該第2下側板材23の一部を支柱200の外周面に沿う形状に除去することによって形成された第2下側切欠部23aを有している。第2下側切欠部23aは、第2上側切欠部21aと同形状とされており、第2下側切欠部23aの周方向の略全体が支柱200の外周面に対して径方向一側から当接可能となっている。
【0057】
第2下側板材23の基端側には、第2基端側延出板部23bが形成されている。第2基端側延出板部23bには、当該第2基端側延出板部23bを上下方向に貫通する第2下側連結孔23eが形成されている。この第2下側連結孔23eは、第1挟持部材10の第1連結孔12eと一致するようになっている。
【0058】
また、第2下側板材23の先端側には、第2先端側延出板部23cが形成されている。第2先端側延出板部23cは、支柱200へ取り付けた状態を基準として、第2下側板材23の径方向中間部に位置している。さらに、第2下側板材23には、クサビ差込用孔部23dが第2上側板材21のクサビ差込用孔部21dと一致するように形成されている。
【0059】
図4に示すように、第2挟持部材20の先端部には、先端側ブラケット24が固定されている。先端側ブラケット24は、上板部24aと、下板部24bと、上板部24aの縁部から下板部24bの縁部まで延び、上板部24a及び下板部24bを連結する連結板部24cとを有している。連結板部24cが第2挟持部材20の先端部に対して溶接等により固定されている。この状態で上板部24aは、第2挟持部材20の上面よりも上に位置し、また、下板部24bは、第2挟持部材20の下面よりも下に位置している。上板部24a及び下板部24bは、第2挟持部材20の先端部から支柱200の径方向外方へ向けて突出するように設けられている。
【0060】
(連結部材30の構成)
図4に示すように、連結部材30は、例えば金属製の丸棒材等からなる高強度な軸で構成することができ、上端部には径方向に張り出した上側抜け止め部30aが形成され、下端部には径方向に張り出した下側抜け止め部30bが形成されている。尚、連結する前の連結部材30には、上側抜け止め部30aまたは下側抜け止め部30bのどちらかが形成されておらず、連結後に例えばかしめ等によって形成される。
【0061】
連結部材30は、上下方向に延びる姿勢とされている。第1挟持部材10と第2挟持部材20とを連結部材30で連結する際には、第1中間板材12の第1基端側延出板部12bを、第2上側板材21の第2基端側延出板部21bと、第2下側板材23の第2基端側延出板部23bとの間に差し込む。これにより、第1基端側延出板部12bが第2基端側延出板部21bと第2基端側延出板部23bとで上下方向に挟まれることになるので、第1挟持部材10と第2挟持部材20の上下方向のガタツキを抑制できる。尚、この基端部における差込構造は必要に応じて設ければよく、必須な構造ではない。
【0062】
この状態で、例えば下側抜け止め部30bが形成されていない連結部材30を、第2上側連結孔21e、第1連結孔12e及び第2下側連結孔23eに挿通する。その後、下側抜け止め部30bを形成することで、連結部材30が抜けなくなり、第1挟持部材10と第2挟持部材20とが連結された状態で維持される。
【0063】
連結部材30は、第2上側連結孔21e、第1連結孔12e及び第2下側連結孔23eに挿通された状態で相対的に回動可能になっている。したがって、図3に示すように、例えば、第1挟持部材10を固定しておき、第2挟持部材20を連結部材30周りに回動させることや、第2挟持部材20を固定しておき、第1挟持部材10を連結部材30周りに回動させることが可能になる。つまり、連結部材30によって第1挟持部材10の基端側と第2挟持部材20の基端側とが連結され、この連結された状態で、第1挟持部材10の先端側と第2挟持部材20の先端側とが互いに接離する方向に回動可能になる。
【0064】
連結部材30の抜け止め構造は、かしめ以外であってもよく、例えば連結部材30の上端部及び下端部に止め輪(図示せず)を嵌合させる方法であってもよい。また、例えばネジ軸とナット等(図示せず)で連結部材30が構成されていてもよく、この場合、ナットを螺合させる前のネジ軸を第2上側連結孔21e、第1連結孔12e及び第2下側連結孔23eに挿通し、その後、ナットをネジ軸に螺合させればよい。
【0065】
(締結部材40の構成)
図2図3に示すように、締結部材40は、締結軸部41、ナット42及び支軸43を少なくとも備えている。図4ではナット42を省略している。この図4に示すように、締結軸部41の基端部には大径部41aが形成されている。締結軸部41における大径部41a以外の部分は、外周面にネジ溝が連続して形成されたネジ棒で構成されており、例えばボルトの軸部等で構成することができる。ナット42は、締結軸部41に螺合する部材である。ナット42のフランジ部42aが縦板材14における軸部挿入用切欠部14aの周縁部に当接するようになっている。
【0066】
支軸43は、締結軸部41の大径部41aを第2挟持部材20の先端側に対して回動可能に支持するための部材である。支軸43は、上記連結部材30と同様に上下方向に延びる丸棒材で構成されており、上端部には径方向に張り出した上側抜け止め部43aが形成され、下端部には径方向に張り出した下側抜け止め部43bが形成されている。抜け止め構造は、連結部材30と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
支軸43の上下方向中間部は、締結軸部41の大径部41aを上下方向に貫通しており、支軸43と締結軸部41の大径部41aとは相対的に回動可能になっている。支軸43の上端部は、先端側ブラケット24の上板部24aを貫通して当該上板部24aの上面から上方へ突出しており、一方、支軸43の下端部は、先端側ブラケット24の下板部24bを貫通して当該下板部24bの下面から下方へ突出している。上側抜け止め部43a及び下側抜け止め部43bによって支軸43の抜けが抑制されている。支軸43と先端側ブラケット24とは相対的に回動可能になっている。
【0068】
締結軸部41を支軸43回りに回動させることにより、図2に示すように、締結軸部41を縦板材14の軸部挿入用切欠部14aに挿入した状態と、図3に示すように、締結軸部41を縦板材14の軸部挿入用切欠部14aから抜いた状態とに切り替えることができる。
【0069】
(足場用クランプ1の使用方法)
足場用クランプ1を支柱200に取り付ける際には、まず、図3に示すように、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の先端側が互いに離れるように、第1挟持部材10及び第2挟持部材20を回動させる。その後、支柱200を径方向に挟むように、第1挟持部材10及び第2挟持部材20を回動させていき、図2に示すように、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の先端側を互いに接近させる。さらに、締結部材40の締結軸部41を回動させ、締結軸部41を縦板材14の軸部挿入用切欠部14aに挿入する。締結軸部41を縦板材14の軸部挿入用切欠部14aに挿入した状態でナット42を締め込むと、第1挟持部材10の先端側と第2挟持部材20の先端側とが接近する方向に締結される。
【0070】
第1挟持部材10及び第2挟持部材20の先端側を互いに接近させると、第1先端側延出板部(第1中間延出板部)12cが第2先端側延出板部(第2上側延出板部)21cと第2先端側延出板部(第2下側延出板部)23cとの間に差し込まれる。すなわち、支柱200を挟持した状態で、第1先端側延出板部12cの上面に第2先端側延出板部21cが配置され、第1先端側延出板部12cの下面に第2先端側延出板部23cが配置されることになる。これにより、第1先端側延出板部12cが第2先端側延出板部21cと第2先端側延出板部23cとで上下方向(厚み方向)に挟まれることになるので、第1挟持部材10と第2挟持部材20の上下方向のガタツキを抑制できる。本発明の第1中間板材は第1中間板材12であり、本発明の第2上側板材は第2上側板材21であり、本発明の第2下側板材は第2下側板材23である。尚、この先端部における差込構造は必要に応じて設ければよく、必須なものではない。
【0071】
(変形例)
上述した実施形態1は一例であり、本発明は実施形態1の各種変形例も含んでいる。例えば図13は、実施形態1の変形例1に係る第1中間板材12を示すものである。この変形例1に係る第1中間板材12には、肉抜き部の一例として数の肉抜き孔12fが設けられている。肉抜き孔12fは第1中間板材12を貫通している。肉抜き孔12fを設けることで、第1中間板材12が軽量になり、ひいてはクサビ緊結式足場用クランプ1の軽量化を図ることができる。肉抜き孔12fは、2つのクサビ差込用孔部12dの間、第1先端側延出板部12cとクサビ差込用孔部12dとの間、クサビ差込用孔部12dと第1基端側延出板部12bとの間にそれぞれ設けることができるが、これに限られるものではなく、肉抜き孔12fの数は1つであってもよいし、2つであってもよい。また、肉抜き孔12fの形状は、特に限定されるものではなく、図14に示す変形例2のように、例えば円形であってもよいし、図示しないが、多角形状であってもよい。また、肉抜き部は、第1中間板材12に形成した凹部であってもよい。図示しないが、第2中間板材22にも同様な肉抜き部を設けることができる。肉抜き部を有する板材としては、例えばパンチングメタルのような板材を挙げることができる。
【0072】
図15及び図16は、実施形態1の変形例3に係るものである。変形例3では、第2挟持部材20の一部を構成している第2上側板材21の第2上側切欠部21aの縁部に、支柱200の外周面に沿う上方向に延びる上側サポート部25が設けられている。上側サポート部25の上端部は支柱200に接近する方向に折り曲げられており、支柱200を挟持した状態で、上側サポート部25の上端部が支柱200の外周面に当接する。また、第2挟持部材20の一部を構成している第2下側板材23の第2下側切欠部23aの縁部に、支柱200の外周面に沿う下方向に延びる下側サポート部26が設けられている。下側サポート部26の下端部は支柱200に接近する方向に折り曲げられており、支柱200を挟持した状態で、下側サポート部26の下端部が支柱200の外周面に当接する。さらに、第1挟持部材10の一部を構成している第1上側板材11の第1上側切欠部11aの縁部に、支柱200の外周面に沿う上方向に延びる上側サポート部15が設けられている。図示しないが、第1挟持部材10の一部を構成している第1下側板材13の第1下側切欠部13aの縁部に、支柱200の外周面に沿う下方向に延びる下側サポート部が設けられている。
【0073】
これにより、第1挟持部材10及び第2挟持部材20が傾く方向に動こうとした際、上側サポート部15、25及び下側サポート部26が支柱200の外周面に当接することで、当該外周面によって支持されることになる。また、上側サポート部15、25及び下側サポート部26は板材を折り曲げることによって一体成形することができるので、その形状の自由度が高くなる。
【0074】
(実施形態1の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、第1挟持部材10が第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13を備えているので、例えば第1上側板材11及び第1下側板材13の厚みを同じにしたとしても、第1中間部材12の厚みは、第1上側板材11及び第1下側板材13とは異なる厚みにすることができ、第1挟持部材10の強度設計の自由度が向上する。これにより、必要な強度を満たすことが可能な最低限の厚みとなるように、第1挟持部材10の厚みを設定できる。第2挟持部材20についても同様である。
【0075】
また、第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13の厚みを薄くしても、これらを積層してなる第1挟持部材10の厚みは所定の厚みを確保できる。つまり、第1挟持部材10の強度を十分に確保しながら、第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13の成形が容易に行えるようになる。
【0076】
特に、第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13が平板状であるため、製造コストを低減できる。
【0077】
(実施形態2)
図17及び図18は、本発明の実施形態2に係る第1挟持部材10及び第2挟持部材20を示すものである。実施形態2では、実施形態1の縦板材14及び先端側ブラケット24を省略し、それらに対応する形状を一体成形している点で実施形態1のものとは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。尚、実施形態1は縦板材14及び先端側ブラケット24が溶接で固定されているので溶接式と呼ぶことができ、実施形態2はそれらの部分が板材を折り曲げることによって形成されているので折り曲げ式と呼ぶことができる。
【0078】
第1挟持部材10の第1上側板材11の先端部には、実施形態1で示したナット42(図2及び図3参照)が当接する上側ナット当接板部11fがプレス成形されている。上側ナット当接板部11fは、第1上側板材11の本体部分(第1中間板材12に接合されている部分)から突出するとともに、当該本体部分よりも上に位置するように屈曲形成されている。
【0079】
第1挟持部材10の第1下側板材13の先端部には、上記ナット42が当接する下側ナット当接板部13fがプレス成形されている。下側ナット当接板部13fは、第1下側板材13の本体部分(第1中間板材12に接合されている部分)から突出するとともに、当該本体部分よりも下に位置するように屈曲形成されている。
【0080】
また、第2挟持部材20の第2上側板材21の先端部には、実施形態1で示した支軸43(図4参照)の上側部分が貫通する上側支持板部21fがプレス成形されている。上側支持板部21fは、第2上側板材21の本体部分(第2中間板材22に接合されている部分)から突出するとともに、当該本体部分よりも上に位置するように屈曲形成されている。
【0081】
第2挟持部材20の第2下側板材23の先端部には、実施形態1で示した支軸43(図4参照)の下側部分が貫通する下側支持板部23fがプレス成形されている。下側支持板部23fは、第2下側板材23の本体部分(第2中間板材22に接合されている部分)から突出するとともに、当該本体部分よりも下に位置するように屈曲形成されている。
【0082】
実施形態2では、実施形態1と同様に、第1挟持部材10が第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13を備えており、また、第2挟持部材20が第2上側板材21、第2中間板材22及び第2下側板材23を備えているので、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の強度設計の自由度を高めることができ、その結果、効率の良い設計を行うことができる。さらに、実施形態1の縦板材14及び先端側ブラケット24を設けることなく、それらの機能をプレス成形によって実現しているので、実施形態1に比べて部品点数を少なくすることができる。
【0083】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、第1中間板材12及び第2中間板材22の数は、1枚に限られるものではなく、2枚以上であってもよい。例えば第1中間板材12が2枚ある場合には、第1挟持部材10が4枚の板材で構成されることになる。また、実施形態1の変形例1~3は、実施形態2に適用することもできる。また、実施形態1、2ではクサビ差込孔が第1挟持部材10及び第2挟持部材20の両方に形成されているが、これに限らず、第1挟持部材10にのみ形成してもよいし、第2挟持部材20にのみ形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本開示に係るクサビ緊結式足場用クランプは、例えば各種建築物の建設現場や土木工事現場で作業員用の仮設足場を構築する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 クサビ緊結式足場用クランプ
10 第1挟持部材
11 第1上側板材
12 第1中間板材
12f 肉抜き孔(肉抜き部)
13 第1下側板材
20 第2挟持部材
21 第2上側板材
22 第2中間板材
23 第2下側板材
30 連結部材
40 締結部材
100 布材(足場構成部材)
101 クサビ
【要約】
【課題】支柱を挟持する挟持部材の強度設計の自由度を高めて効率の良い設計が行えるようにする。
【解決手段】足場用クランプ1の第1挟持部材10及び第2挟持部材20の少なくとも一方には、クサビが差し込まれるようになっている。第1挟持部材10は、支柱の径方向に延びる第1上側板材11、第1中間板材12及び第1下側板材13が上下方向に重ね合わされて一体化された状態で構成されている。第2挟持部材20は、支柱の径方向に延びる第2上側板材21、第2中間板材22及び第2下側板材23が上下方向に重ね合わされて一体化された状態で構成されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18