(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】創傷治療におけるフォーム
(51)【国際特許分類】
A61L 15/26 20060101AFI20230131BHJP
A61L 15/18 20060101ALI20230131BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20230131BHJP
A61L 15/48 20060101ALI20230131BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20230131BHJP
A61F 13/02 20060101ALI20230131BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20230131BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230131BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20230131BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230131BHJP
【FI】
A61L15/26
A61L15/18
A61L15/18 100
A61L15/26 100
A61L15/42 300
A61L15/48
A61L15/48 100
A61L15/42 310
A61L15/18 110
A61L15/26 110
A61F13/00 301J
A61F13/02 310H
A61F13/02 345
C08G18/00 G
C08G18/10
C08G18/40
C08G18/00 C
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2019564012
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2018064769
(87)【国際公開番号】W WO2018224499
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】ガーディナー,エリック エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ジェイソン レイモンド
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-518949(JP,A)
【文献】特開2002-058734(JP,A)
【文献】特開昭55-094925(JP,A)
【文献】特開2012-065744(JP,A)
【文献】特開平02-289608(JP,A)
【文献】特開2006-206903(JP,A)
【文献】国際公開第2007/149418(WO,A1)
【文献】米国特許第05976616(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
C08G 18/00-18/87
C08G 71/00-71/04
C08J 9/00- 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリウレタンフォーム材料を含む医療用ドレッシングであって、
前記親水性ポリウレタンフォーム材料が、フォーム材料の全重量に比べて、前記フォーム材料の、5~25重量%の濃度で存在する核生成粒子を含み、前記フォーム材料中のすべてのフォーム気泡のうちの85%以上が、ISO 13322-1:2014に基づく画像分析によって測定される、0.01mm
2以下の平均気泡サイズを有し、
前記親水性ポリウレタンフォーム材料が、60~180kg/m
3の密度を有し、
前記核生成粒子が、1~30μmの範囲内の粒子サイズを有
し、
前記核生成粒子が、酸化アルミニウム三水和物、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化マグネシウム、石灰、粘土および珪藻土からなる群から選択される粒子を含むか又はそれらからなる、医療用ドレッシング。
【請求項2】
前記核生成粒子が、酸化アルミニウム三水和物を含むかもしくはそれである、請求項
1に記載の医療用ドレッシング。
【請求項3】
前記核生成粒子のうちの95%以上が、前記フォーム材料内でカプセル化される、請求項1
又は2に記載の医療用ドレッシング。
【請求項4】
前記フォーム材料が、フォーム材料の全重量に比べて、0.05~0.5重量%の濃度で存在する界面活性物質をさらに含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項5】
前記フォーム材料が、EN13726-1:2002に従って測定される、800kg/m
3以上の自由膨潤吸収能力を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項6】
前記フォーム材料が、試験溶液として30μLのEN13726-1:2002に従う溶液Aを使用して、TAPPIスタンダードT558 OM-97に従って測定される、5μL/秒以上の吸収速度を有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項7】
前記親水性ポリウレタンフォーム材料が、イソシアネートキャッピングポリオールもしくはイソシアネートキャッピングポリウレタンを含むかもしくはそれである、プレポリマーから得られるかまたは得られた、請求項1~
6のいずれか1項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項8】
前記ポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステル-ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリカーボネートポリオールからなる群から選択されるか、又はジオール、トリオール、テトラオール、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及びラクトンからなる群から選択される少なくとも1種の重縮合体からなる群から選択される、請求項
7に記載の医療用ドレッシング。
【請求項9】
前記プレポリマーが、ポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、または任意のその混合物からなる群から選択されるジイソシアネート化合物との間の反応に由来する、請求項
7または
8に記載の医療用ドレッシング。
【請求項10】
前記医療用ドレッシングが、少なくとも1つのさらなる層をさらに含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項11】
医療用ドレッシング用の親水性ポリウレタンフォーム材料を
産生する方法であって、
(i)水性混合物を調製するステップと、
(ii)前記水性混合物をプレポリマー組成物と混合するステップと、
(iii)もたらされたエマルションを硬化させるステップと、
を含み、
粒子サイズが1~30μmであ
り、酸化アルミニウム三水和物、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化マグネシウム、石灰、粘土および珪藻土からなる群から選択される粒子を含むか又はそれらからなる核生成粒
子が、ステップ(i)における前記水性混合物へ
前記プレポリマー組成物の5重量%以上の濃度で添加される、および/または、ステップ(ii)の前記プレポリマー組成物中で
5重量%以上の濃度で存在し、
前記親水性ポリウレタンフォーム材料の密度が60~180kg/m
3である、医療用ドレッシング用の親水性ポリウレタンフォーム材料を産生する方法。
【請求項12】
ステップ(i)の前記水性混合物が界面活性物質を含む、
請求項
11に記載の医療用ドレッシング用の親水性ポリウレタンフォーム材料を産生する方法。
【請求項13】
密度が60~180kg/m
3である親水性ポリウレタンフォーム材料を産生するための粒子サイズが1~30μmであ
り、酸化アルミニウム三水和物、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化マグネシウム、石灰、粘土および珪藻土からなる群から選択される粒子を含むか又はそれらからなる核生成粒子の使用であって、前記フォーム材料中のすべてのフォーム気泡のうちの85%以上が、ISO 13322-1:2014に基づく画像分析によって測定される、0.01mm
2以下の平均気泡サイズを有し、
前記親水性ポリウレタンフォーム材料の5~25重量%の濃度で使用する、核生成粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治療において特に使用される親水性フォーム材料、および前記親水性材料を産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷ドレッシングは、創傷を治癒および保護するために使用される。創傷からの滲出液を吸収および保持する創傷ドレッシングの能力は、治癒プロセスのために非常に重要である。ドレッシングの液体ハンドリング能力は、ドレッシング交換(それは創傷治癒を促進するように最小限にされるべきである)の頻度に影響を与える。様々な適用において、親水性材料は、創傷液を吸収および保持するために創傷ドレッシング、さらに特に親水性フォーム(親水性開口気泡(open-cell)ウレタンフォーム等)中で使用される。
【0003】
したがって、親水性フォーム材料が、創傷ドレッシング、特に重度の滲出性創傷の治療のための創傷ドレッシング中で使用される場合に、所望される液体ハンドリング能力(液体吸収速度および能力、液体保持能力、ならびに液体移行および伸展能力等のフォーム特性を包含する)を有することは最重要である。
【0004】
したがって、特に医療用ドレッシングとしてまたはその中での使用のための改善された流体ハンドリング能力を備えた親水性フォーム材料(上で論じられたフォーム特性のうちの少なくとも1つが至適化される)を提供する当該技術分野における必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、これらおよび他の目的は、フォーム材料の全重量に比べて、5重量%以上の濃度で存在する核生成粒子を含む親水性ポリウレタンフォーム材料であって、前記フォーム材料中のすべてのフォーム気泡のうちの85%以上が、ISO 13322-1:2014に基づく画像分析によって測定される、0.01mm2以下の平均気泡サイズを有する、前記材料を介して達成される。
【0006】
スタンダードのフォームを製造するプロセスにおいて、フォーム気泡サイズを制御することは多くの場合難しく、したがって比較的広範囲の異なる気泡サイズを備えたフォーム材料をもたらす。フォーム気泡サイズがフォーム材料の様々な物理的特性のために重要であるので、フォーム気泡サイズをより良好に制御して、それによって、所望される特性および関連する機能性がフォーム材料の全体の体積にわたって一貫して達成されることを保証することが極めて望まれるだろう。
【0007】
例えば、フォーム材料の層が医療用ドレッシングとしてまたはその中で使用される事例において、フォーム層が、フォーム層にわたって実質的に均一なフォーム気泡サイズを有し、それによって、所与の所望される特性(例えば吸収能力)がフォーム層にわたって達成されることを保証することが望まれる。
【0008】
本発明者は、フォーム製造のステージで既にフォームの中へ核生成粒子を含む手段によって、フォーム気泡サイズに関して改善された均一性を備えた親水性ポリウレタンフォーム材料を達成できることに気付いた。
【0009】
特に、本発明者は、フォーム気泡サイズの低減が、フォームの体積あたりの流体吸収に加えて、フォームの吸収速度を改善することに気付いた。加えて、実質的に均一な気泡サイズを備えた親水性フォームを提供する手段によって、フォーム内の液体伸展は改善され得る。
【0010】
本発明によれば、「親水性」という用語は、A.D.McNaughtおよびA.Wilkinsonによって編纂されたIUPAC:Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)、ISBN 0-9678550-9-8中で定義されるように理解され、極性溶媒(特に水または他の極性基)と相互作用する、分子的実体または置換基の能力を一般的に指す。
【0011】
好ましくは、「親水性」という用語は、材料の水透過特性または分子の水を誘引する特性を指す。孔を有する材料(例えば開口気泡フォーム等)または貫通穴を有する材料の文脈において、材料が水を吸い上げるならば、かかる材料は「親水性である」。
【0012】
本発明によれば、「平均気泡サイズ」は、気泡の球近似が適用される気泡の(最大の)横断面積として理解される。気泡直径は、フォーム材料の横断面の画像分析によって測定され、画像分析方法はISO 13322-1:2014に基づいており、気泡の横断面積はそれに応じて計算される。
【0013】
本発明の複数の実施形態において、フォーム材料は相互に接続するフォーム気泡を含み、それは好ましくは実質的に開口した気泡の構造をもたらす。
【0014】
本明細書において使用される時、「開口気泡」という用語はフォームの孔(または気泡)構造を指し、孔構造中の孔は互いに接続され、相互に連結されるフォーム材料を介する流体フローのための経路を備えたネットワークを形成し、かかるフォーム孔構造は一般に「網状のフォーム」と称される。「実質的に」開口した気泡構造は、95%以上、好ましくは99%以上の、少なくとも1つの他の孔と接続する孔を有する。
【0015】
本発明の複数の実施形態において、核生成粒子は、前記フォーム材料の全重量に比べて、5~25重量%、好ましくは5~20重量%の濃度で存在する。
【0016】
本発明者は、発泡プロセスにおける核生成部位の数を実質的に増加させ、したがってもたらされたフォーム中の平均気泡サイズの制御の改善を提供するために、核生成粒子は5%(w/w)以上の濃度で存在するべきであることに気付いた。
【0017】
本発明者は、核生成粒子のより高い濃度は、フォーム材料の剛性の増加(すなわち低柔軟性)および/または核生成粒子のダスティング(すなわち核生成粒子のより高い濃度では、いくつかの核生成粒子がフォーム材料中で実質的にカプセル化されないというリスクが存在する)をもたらし得るので、核生成粒子の濃度は有利には25%w/w未満であるべきであることにさらに気付いた。前記の可能性のある結果の両方(すなわち剛性の増加およびダスティング)は、特にフォーム材料が医療用ドレッシングとしてまたはその中で使用される事例において、典型的には望ましくない。
【0018】
本発明の複数の実施形態において、核生成粒子は、1~30μm、好ましくは1~20μm、より好ましくは1~10μmの範囲内の粒子サイズを有する。粒子は好ましくは本質的に球状の形状である。
【0019】
核生成粒子は典型的には、定義された粒子サイズ分布を有することを理解すべきである。本発明によれば、「粒子サイズ」という用語は、前記粒子サイズ分布の中央値粒子サイズ(すなわち「D50値」)を指す。
【0020】
本発明者は、核生成粒子の粒子サイズが、有利には30μm未満、好ましくは20μm未満、または15μm未満、または10μm未満であることにさらに気付いた。より大きな粒子サイズ(すなわち30μmを超える)が、例えば複数の隣接するフォーム気泡を形成し(単一の核生成粒子の表面上で)、それは後続して1つ(以下)の気泡へと潰れることに起因して、発泡プロセスにおいてより大きなフォーム気泡をもたらし得るので、これは有利である。上で論じられるように、より小さなフォーム気泡サイズは、理論に拘束されることを望むものではないが、より大きなフォーム気泡サイズを備えた対応するフォーム材料と比較して、体積単位あたりのより高い吸収能力を備えたより柔軟なフォームを提供すると考えられる。
【0021】
さらに、比較的より小さな粒子サイズは、核生成粒子の重量単位あたりのより大きい表面面積を提供し、それによって、核生成粒子の重量単位あたりのより多くの核生成部位を提供する。
【0022】
本発明の複数の実施形態において、核生成粒子の表面面積は、ISO 9277:2010(BET法)に従って測定されるように、1m2/gを超え、好ましくは2m2/gを超え、より好ましくは5m2/gを超える。
【0023】
本発明の複数の実施形態において、核生成粒子は、酸化アルミニウム三水和物、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化マグネシウム、石灰、粘土および珪藻土からなる群から選択される粒子を含むかまたはそれらから本質的になる。
【0024】
本発明の複数の実施形態において、核生成粒子は、酸化アルミニウム三水和物(化学構造Al2O3・3H2Oまたは2Al(OH)3)を含み、好ましくはそれから本質的になる。
【0025】
本発明の複数の実施形態において、核生成粒子は、前記フォーム材料内で実質的にカプセル化される。それによって、フォーム材料からの核生成粒子の放出は、回避されるかまたは少なくとも最小限にされる。これは、親水性フォーム材料が医療用ドレッシングとしてまたはその中で使用される事例において、特に有利である。
【0026】
好ましくは、すべての粒子のうちの95%以上、さらに好ましくはすべての粒子のうちの99%以上は、前記フォーム材料内でカプセル化される。
【0027】
本発明の複数の実施形態において、フォーム材料は、フォーム材料の全重量に比べて、0.05~0.5重量%の濃度で存在する界面活性物質をさらに含む。
【0028】
本発明の複数の実施形態において、フォーム材料は、800kg/m3以上、好ましくは900kg/m3以上、より好ましくは1000kg/m3以上の自由膨潤吸収能力(最大吸収能力へ対応する)によって特徴づけられる。
【0029】
本発明の複数の実施形態において、フォーム材料は、EN13726-1:2002によって測定される、800~2500kg/m3の自由膨潤吸収能力(最大吸収能力に対応する)によって特徴づけられる。
【0030】
本発明の複数の実施形態において、フォーム材料は、5μL/秒以上、好ましくは10μL/秒以上、より好ましくは20μL/秒以上の吸収速度を有する。
【0031】
本発明の複数の実施形態において、本発明の実施形態に従うフォーム材料の吸収速度は、前記核生成粒子無しの対応するフォーム材料よりも、25%以上大きい、好ましくは50%以上大きい。
【0032】
本発明によれば、「吸収速度」という用語は、試験溶液として30μLのEN13726-1:2002に従う溶液Aを使用して、TAPPIスタンダードT558 OM-97に従って測定される、流体の所与の体積を吸収する速度(体積/時間)として定義される。
【0033】
溶液A(EN13726-1において定義されるように)は、塩化物塩としての142mmolのナトリウムイオンおよび2.5mmolのカルシウムイオンを含有する塩化ナトリウムおよび塩化カルシウム溶液からなる。この溶液はヒト血清または創傷滲出液に匹敵するイオン組成を有する。前記溶液は、メスフラスコ中の「1L」のマーキングまでの脱イオン水中で8.298gの塩化ナトリウムおよび0.368gの塩化カルシウム二水和物を溶解することによって調製される。
【0034】
本発明の複数の実施形態において、親水性フォーム材料は、本発明に従う核生成粒子以外の粒子または構造単位を含まず、特に充填物質または強化剤を含まない。
【0035】
本発明の複数の実施形態において、親水性フォーム材料は、スタンダード方法ISO 845:2006に従って測定される、60~180kg/m3、好ましくは80~130kg/m3、より好ましくは90~120kg/m3の密度を有する開口気泡多孔性親水性フォームである。
【0036】
本発明の実施形態において、親水性フォーム材料は層として実現される。
【0037】
本発明に従って使用される「層」は、1つの平面における連続拡張(x方向およびy方向)および前記平面に垂直な厚み(z方向)を有することが一般的に理解されるべきである。
【0038】
本発明の複数の実施形態において、フォーム層は、0.5mm~30mm、好ましくは1mm~10mm、より好ましくは1~7mm(1mm~5mm等)の厚さを有する。
【0039】
本発明の複数の実施形態において、親水性フォーム材料、好ましくはフォーム層は、抗微生物剤を含む。
【0040】
本発明の複数の実施形態において、抗微生物粒子は銀を含む。本発明の複数の実施形態において、銀は金属銀である。本発明の複数の実施形態において、銀は銀塩である。
【0041】
本発明の複数の実施形態において、銀塩は、硫酸銀、塩化銀、硝酸銀、スルファジアジン銀、炭酸銀、リン酸銀、乳酸銀、臭化銀、酢酸銀、クエン酸銀、銀カルボキシメチルセルロース(CMC)、酸化銀である。本発明の複数の実施形態において、銀塩は硫酸銀である。
【0042】
本発明の複数の実施形態において、抗微生物粒子は、モノグアニドまたはビグアニドを含む。本発明の複数の実施形態において、モノグアニドまたはビグアニドは、ジグルコン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、二塩酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)もしくはその塩、またはポリヘキサメチレンモノグアニド(PHMG)もしくはその塩である。本発明の複数の実施形態において、ビグアニドはPHMBまたはその塩である。
【0043】
本発明の複数の実施形態において、抗微生物粒子は、第四級アンモニウム化合物を含む。本発明の複数の実施形態において、第四級アンモニウム化合物は、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウムまたはポリ-DADMACである。本発明の複数の実施形態において、抗微生物粒子は、トリクロサン、次亜塩素酸ナトリウム、銅、過酸化水素、キシリトールまたは蜂蜜を含む。
【0044】
本発明の第2の態様によれば、上記および他の目的は、本発明に従う親水性ポリウレタンフォーム材料の層を含む医療用ドレッシング(特に創傷ドレッシング)を提供することによって達成される。
【0045】
本発明の複数の実施形態において、医療用ドレッシングは、少なくとも1つのさらなる層(親水性ポリウレタンフォーム材料の層にさらに)、好ましくは裏打ち層および/または粘着層もしくはコーティング、好ましくはこれらのさらなる層のうちの2つ以上をさらに含む。
【0046】
「医療用ドレッシング」という用語は、創傷の治療における使用に好適なドレッシング(すなわち「創傷ドレッシング」)、および/または起こる創傷もしくは傷の防止(例えば圧迫潰瘍の防止)に使用され得るドレッシングとして理解すべきである。
【0047】
本発明によれば、「創傷部位」または「創傷」という用語は、任意の開放創または閉鎖創(例えばとりわけ慣性創傷、急性創傷および術後創傷(例えば閉鎖された切開および瘢痕治療等)が挙げられるがこれらに限定されない)として理解される。
【0048】
本発明の第1の態様に従う親水性ポリウレタンフォーム材料と関連して上で記載された実施形態、特色および効果は、本発明の第2の態様に従う上記の医療用ドレッシングについて、必要な変更を加えて適用可能である。
【0049】
本発明の第3の態様によれば、上で検討された目的および他の目的は、親水性ポリウレタンフォーム材料を作製する方法であって、
(i)水性混合物を調製するステップと、
(ii)前記水性混合物をプレポリマー組成物と混合するステップと、
(iii)もたらされたエマルション(ステップ(ii)の)を硬化させるステップと、
を含む方法を介して達成され、
核生成粒子(前記プレポリマー組成物の5%重量以上の濃度で)が、ステップ(i)における前記水性混合物へ添加される、および/または、ステップ(ii)の前記プレポリマー組成物中で存在し、好ましくはステップ(i)の前記水性混合物が界面活性物質を含む。
【0050】
本発明の複数の実施形態において、上で記載される本発明のすべての実施形態において使用される親水性ポリウレタンフォーム材料は、イソシアネートキャッピングポリオールまたはイソシアネートキャッピングポリウレタンを含むかまたはそれらである、プレポリマーから得られ得る。
【0051】
本発明によれば、「プレポリマー」という用語は、A.D.McNaughtおよびA.Wilkinsonによって編纂されたIUPAC:Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)、ISBN 0-9678550-9-8中で定義されるように理解され、その分子が反応基を介してさらなる重合へと入り、それによって、最終的なポリマーのうちの少なくとも1つのタイプの鎖へ2つ以上の構造単位を与えることができる、ポリマーまたはオリゴマーを一般的に指す。
【0052】
本発明の複数の実施形態において、プレポリマーは、ポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、または任意のその混合物からなる群から選択されるジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。
【0053】
本発明の複数の実施形態において、ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステル-ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリカーボネートポリオール、特にとりわけ、ジオールもしくは随意にトリオールおよびテトラオールの重縮合体に加えて、ジカルボン酸もしくは随意にトリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンからなる群から選択される。
【0054】
例示的な好適なジオールは、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール等)、ならびにさらに1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよび異性体、ネオペンチルグリコールまたはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートである。加えて、ポリオール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等)も、本発明の範囲内である。
【0055】
本発明の複数の実施形態において、プレポリマーは、ポリオールと脂肪族ジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。例えば、本発明の複数の実施形態において、ジイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)であるかまたはそれを含む。したがって、本発明の複数の実施形態において、プレポリマーは、ヘキサメチレンイソシアネートキャッピングポリオールまたはヘキサメチレンイソシアネートキャッピングポリウレタンであるかまたはそれらを含む。
【0056】
本発明の複数の実施形態において、プレポリマーは、ヘキサメチレンイソシアネートキャッピングポリエテレングリコールであるかまたはそれらを含む。
【0057】
本発明の複数の実施形態において、プレポリマーは、前記ポリオールと芳香族ジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。例えば、本発明の複数の実施形態において、ジイソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)であるかまたはそれらを含む。したがって、本発明の複数の実施形態において、プレポリマーは、トルエンイソシアネートキャッピングポリオールまたはメチレンジフェニルイソシアネートキャッピングポリオールまたはトルエンイソシアネートキャッピングポリウレタンまたはメチレンジフェニルイソシアネートキャッピングポリウレタンであるかまたはそれらを含む。
【0058】
本発明の複数の実施形態において、プレポリマーは、トルエンイソシアネートキャッピングポリエチレングリコールであるかまたはそれらを含む。本発明の複数の実施形態において、プレポリマーは、メチレンジフェニルイソシアネートキャッピングポリエチレングリコールであるかまたはそれらを含む。
【0059】
本発明の第4の態様によれば、上で検討された目的および他の目的は、親水性ポリウレタンフォーム材料の産生のための核生成粒子の使用を介して達成され、前記フォーム材料中のすべてのフォーム気泡のうちの85%以上が、ISO 13322-1:2014に基づく画像分析によって測定される、0.01mm2以下の平均気泡サイズを有する。
【0060】
請求項中で、「含んでいる(comprising)」および「含む(comprise(s))」という用語は他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は複数の要素またはステップを除外しない。例えば、親水性ポリウレタンフォーム材料(それは上で開示されるようにプレポリマーから得られ得る)は、複数の異なるプレポリマー(特に別のポリウレタンポリマーおよび/またはポリウレタンポリマーでない別の(追加)ポリマー)の混合物からも得られ得る。
【0061】
特定の手段が相互に異なる従属請求項中で列挙されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0062】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の例示的な実施形態を示す図を参照して、ここでより詳細に示されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明に従う親水性ポリウレタンフォーム材料の層の実施形態の横断面図である。
【
図2a】本発明に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図2b】本発明に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図2c】本発明に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図2d】本発明に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図3】例1に従って産生された親水性ウレタンフォームの気泡サイズ分析を示すヒストグラムである。
【
図4】例2に従って産生された親水性ウレタンフォームの気泡サイズ分析のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下において、本発明の詳細な実施形態は、本発明の実施形態の例示的なイラストである添付の図を参照して記載される。
【0065】
図1は、本発明の実施形態に従って親水性ポリウレタンフォーム材料7を含むフォーム層1を図示する。
【0066】
フォーム層は、上部側31、および上部側31の反対に、底部側35を有する。
【0067】
本発明に従う親水性ポリウレタンフォーム材料7は、フォーム材料の5重量%以上の濃度(フォームの全重量と比べて)で核生成粒子を含み、前記フォーム材料中のすべてのフォーム気泡のうちの85%以上は、ISO 13322-1:2014に基づく画像分析によって測定される、0.01mm2以下の平均気泡サイズを有する。
【0068】
したがって、親水性ポリウレタンフォーム材料7は、実質的に均一な小さな気泡サイズ(すべてのフォーム気泡のうちの85%以上は、0.01mm2以下の平均気泡サイズを有する)を備えて提供され、それによって、フォーム材料7の液体ハンドリング能力と関連する以下のフォーム特性:液体吸収(速度および最大値)、ならびにフォーム材料7内での液体の伸展および輸送のうちの少なくとも1つを改善する。
【0069】
図2a~dは、層1の形態で実現されるような、親水性ポリウレタンフォーム材料7を含む医療用ドレッシング20、50、80、90の例示的な実施形態を図示する。本発明の複数の実施形態において、
図2a~d中で示されるように、医療用ドレッシング20、50、80、90は、フォーム層1の上部側31を重層する裏打ち層21および23をさらに含み、底部側35は皮膚または創傷に面する側として機能するように適合され、それはしたがって直接的または間接的な創傷接触側として機能することができ、その側を介して、創傷滲出液はフォーム層1のコアの中へ吸収および輸送され得る。
【0070】
親水性ポリウレタンフォーム材料の気泡サイズが低減するならば、液体(例えば創傷滲出液)の吸収速度が増加することに、本発明者は驚くべきことに思い至った。例えば、本発明の複数の実施形態において、本発明に従うフォーム層1は、10μL/秒以上、好ましくは20μL/秒以上、より好ましくは30μL/秒以上の吸収速度を有する。
【0071】
本発明の複数の実施形態において、
図2a~b中で示されるように、裏打ち層21はフォーム層1の周辺部の外側に伸長して、したがってフォーム層1の周辺部を囲む裏打ち層21の境界部分40を画成し、それによって、いわゆるアイランドドレッシングを提供する。
【0072】
好適な裏打ち層21、23は、例えばフィルム、箔、フォームまたは膜である。さらに、裏打ち層が5μm~80μm、特に好ましくは5μm~60μm、および特に好ましくは10μm~30μmの領域内での厚さを有し、ならびに/または、裏打ち層が450%を超える破断時の伸びを有するならば、有利である。
【0073】
裏打ち層21、23はDIN 53333またはDIN 54101に従って水蒸気を通すように実現され得る。
【0074】
好ましくは、裏打ち層21、23は、熱可塑性ポリマー(例えばコーティングとして)を含み得るか、またはそれらからなり得る。熱可塑性ポリマーは、最初は、それがそれぞれのプロセシング条件または適用条件についての典型的な温度内で反復して加熱および冷却されたならば、熱可塑性のままであるポリマーとして理解される。熱可塑性であることは、それぞれの材料についての典型的な温度範囲内で、加熱の適用に際して反復して軟化し、冷却された場合に反復して固化する重合体材料の特性であり、材料は、軟化したステージにおいて、および反復して、流展(例えば造形品として)、押出し、または他の方法よって形成可能なままである、と理解される。
【0075】
好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルポリアミドコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、および/またはポリマレートである。好ましくは、熱可塑性ポリマーはエラストマー性である。キャリア箔が熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)を含むかまたはそれからなることは、特に好ましい。脂肪族ポリエステルポリウレタン、芳香族ポリエステルポリウレタン、脂肪族ポリエーテルポリウレタン、および/または芳香族ポリエーテルポリウレタンを含む群から選択される、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、特に好適である。これらのポリマーの使用によって、通気性の弾性膜フィルムとして裏打ち層を得ることが可能である。これらは、広範囲の温度にわたる高い柔軟性および弾性によって特徴づけられ、(液体の)水について有利に密閉する特性も有する一方で、高い水蒸気透過性を有する。これらの材料は、低騒音、有利なテキスタイル感触、洗浄およびクリーニングに対する耐性、非常に良好な化学的および機械的耐性、ならびにそれらが可塑剤不含という事実によって、さらに特徴づけられる。
【0076】
病原体に対するバリアとして作用し、創傷から出る滲出液に対する高い密閉能力を有する一方で、同時に水蒸気について透過性である、裏打ち層も特に好ましい。これを達成するために、裏打ち層は、例えば半透膜として実現され得る。
【0077】
本発明の複数の実施形態において、裏打ち層21、23は、蒸気透過性であることが好ましい。裏打ち層21、23は、例えばポリウレタン、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むかまたはそれらからなるプラスチックフィルムであり得る。本発明の複数の実施形態において、裏打ち層21、23は、10~100μm、例えば10~80μm(10~50μm等)、好ましくは10μm~30μmの範囲内の厚さを有するポリウレタンフィルムである。
【0078】
図2a~d中で概略的に図示されるように、医療用ドレッシング20、50、80、90は粘着層またはコーティング41、42、43を含んで、創傷部位(創傷表面および/または周囲の皮膚表面)へ医療用ドレッシングを粘着することができる。本発明の複数の実施形態において、粘着層またはコーティング41、42、43はシリコーンベースの粘着剤またはアクリルベースの粘着剤であり得、好ましくは粘着層またはコーティングは、シリコーンベースの粘着剤である。本発明に従う「コーティング」という用語は、本質的に表面上の1つの連続層または表面上の不連続カバーとして理解されるべきである。
【0079】
医療用ドレッシング20、50、80、90は、粘着層またはコーティング41、42、43へ放出可能に接続され、適用の前に除去され得る、放出層(図示せず)をさらに含み得る。好適な放出層は、粘着層の粘着剤と接触するようにされるならば、それへの限定された接着を有する材料を含むかまたはそれからなる。かかる放出層についての例は、非粘着性シリコーンまたはポリオレフィン層を含む剥離紙である。
【0080】
図2bおよび
図2d中で示されるように、医療用ドレッシング50、90は例えばポリウレタンフィルムから作製され、有孔層44を好ましくは含み、粘着層またはコーティング42は有孔層44の非有孔部分上に提供される。有孔層44は、任意の所望されるサイズおよび形状の複数の開口45(または貫通穴)を含む。開口45の形状およびサイズは、創傷から上方の第1のフォーム層1への所望の液輸送を達成するように適合され得る。
【0081】
本発明の複数の実施形態において、
図2b中で図示されるように、粘着層またはコーティング42を備えた有孔層44は、フォーム層1の底部側35に提供され得、有孔層44はフォーム層1の周辺部の外側に伸長し、裏打ち層21の境界部分40へ貼り付けられる(例えば第2の粘着剤の手段によって、図示せず)。
【0082】
代替の実施形態において、
図2d中で示されるように、有孔層44のxy方向における伸長は、フォーム層1のxy方向における伸長に対応する。本発明の複数の実施形態において、
図2c中で示されるように、粘着層またはコーティング43は、フォーム層1の底部側35上に直接提供される。本発明の複数の実施形態において、
図2a中で示されるように、粘着層またはコーティング41は、連続的なプラスチックフィルム46(例えば上で論じられるようなポリウレタンフィルム)上に提供され、その連続的なプラスチックフィルム46は、フォーム層1の周辺部に隣接してアレンジされ、連続的なフィルム46は前記周辺部から遠ざかって伸長し、裏打ち層21の境界部分40へ貼り付けられる(例えば第2の粘着剤の手段によって、図示せず)。さらなる実施形態において(図示せず)、粘着層またはコーティングは、裏打ち層21の境界部分40の皮膚に面する表面上に直接提供され得る。
【0083】
当業者は、本発明が決して本明細書において記載される例示的な実施形態に限定されないことに気付いている。例えば、発明に従う医療用ドレッシングは、親水性ポリウレタンフォーム材料と流体的に連通される追加の構造層(複数可)を含んで、所望される特性をさらに至適化する、および/または、追加機能性を達成することができる。例えば、医療用ドレッシングは、第2の親水性フォーム層および/または、吸収能力を備えた不織層を含んで、医療用ドレッシングの液体ハンドリング能力をさらに至適化することができる。
【0084】
本発明は以下の実施例においてさらに例証される。特別の定めのない限り、本明細書において記載されるすべての実験および試験は、スタンダードの実験室条件で、特に室温(20℃)および標準圧力(1atm.)で遂行された。特別の指示のない限り、パーセンテージに関する表示はすべて、重量パーセントを指すように意図される。
【0085】
例1
親水性ポリウレタンフォームを調製する方法
フォーム層を、以下のステップ(1)~(3)を使用して調製した。(1)0.125%w/wの界面活性物質Pluronic(登録商標)L62を含む水性混合物を調製した;(2)水性混合物をプレポリマーTrepol(登録商標)B1と重量で1.6:1の比(水性混合物/プレポリマー)で混合して、エマルション混合物を得た;(3)エマルション混合物をキャスティング紙(20×30cm)の上へ注ぎ、紙上で広げ、スタンダードの条件(室温で)で硬化させて約3mmの厚みを備えたフォームを得た(ステップ(3)におけるエマルション混合物の広がりの厚さを適合させることによって、フォーム厚を制御する)。使用する化学物質は商業的に入手可能であり、特に、Trepol(登録商標)B1(TDIベースのプレポリマー)はRynel Inc.から、およびPluronic(登録商標)L62はBASFから商業的に入手可能である。
【0086】
例2
添加した核生成粒子により親水性ウレタンフォームを調製する方法
フォーム層を、以下のステップ(1)~(3)を使用して調製した。(1)0.125%w/w界面活性物質Pluronic(登録商標)L62、および7%w/wの酸化アルミニウム三水和物(Akrochem Corporationから商業的に入手可能なSB-432;水性混合物のうちの7%w/wは、最終的な乾燥されたフォーム産物(ステップ(2)における所与のプレポリマー混合比)のうちの約10%w/wに対応する)を含む水性混合物を、調製した;(2)水性混合物をプレポリマーTrepol(登録商標)B1と重量で1.6:1の比(水性混合物/プレポリマー)で混合して、エマルション混合物を得た;(3)エマルション混合物をキャスティング紙(20×30cm)の上へ注ぎ、紙上で広げ、スタンダードの条件(室温で)で硬化させて約3mmの厚みを有するフォームを得た(ステップ(3)におけるエマルション混合物の広がりの厚さを適合させることによって、フォーム厚を制御する)。
【0087】
例3
フォーム孔気泡サイズの分析
例1および例2において産生されたフォーム層の横断面の画像を、Olympus SZX16顕微鏡、およびOlympus Soft Imaging Solution GmbH(Johann-Krane-Weg 39、D48149 Munster、ドイツ)からのOlympus Stream Image Analysis Software Version 510(ソフトウェアはISO 13322-1に基づく)を使用して、ISO 13322-1に従って分析した。
図3および
図4は、それぞれ例1(核生成粒子無し)および例2(フォーム材料の約10重量%の核生成粒子(酸化アルミニウム三水和物)有り)に従う、フォーム材料の気泡サイズ分析のヒストグラムである。
【0088】
図4中で示されるように、例2に従って調製された親水性ウレタンフォームのすべてのフォーム気泡のうちの87.6%(そのフォームは本発明の実施形態に従って核生成粒子を含む)は、クラス1(0.01mm
2以下に対応する)の平均気泡サイズを有する。これとは対照的に、
図3中で示されるように、添加した核生成粒子無しの対応するフォーム材料(例1)中のすべてのフォーム気泡のうちの69.6%は、クラス1(0.01mm
2以下に対応する)の平均気泡サイズを有する。
【0089】
図3および
図4中で、クラス1~10は以下の平均気泡サイズに対応する。クラス1:0~0.01mm
2、クラス2:0.01~0.02mm
2、クラス3:0.02~0.03mm
2、クラス4:0.03~0.04mm
2、クラス5:0.04~0.05mm
2、クラス6:0.05~0.06mm
2、クラス7:0.06~0.07mm
2、クラス8:0.07~0.08mm
2、クラス9:0.08~0.09mm
2、クラス10:0.09~0.3mm
2。
【0090】
例4
自由膨潤吸収(流体吸収)能力の決定
自由膨潤吸収(または最大吸収)能力を、以下のわずかな修飾によりEN13726-1:2002に従って決定した。10×10cm(厚さ約3mm)のサイズによる試験片を使用し、試験片の体積単位あたりの自由膨潤吸収能力を計算した(すなわち体積(m3)あたりの保持された溶液Aの質量(kg))。特に核生成粒子は典型的にはフォーム密度を増加させるので、異なる密度を備えた親水性フォームを比較する場合に、体積あたりの重量は、より妥当な測定値を提供する(例えばEN13726-1:2002中で示唆されるような重量比と比較して)。「体積あたりの重量」値は、体積あたりの重量値を、サンプルのそれぞれの密度値により割ることによって「重量あたりの重量」へ容易に変換することができる。例1および2のフォーム材料の自由膨潤吸収能力の値を、以下の表1中で提示する。
【0091】
例5
吸収速度の決定
本発明によれば、吸収速度をTAPPIスタンダードT558 OM-97に従って決定し、その方法は、とりわけ、時間の関数として測定される試料表面の上部に残存する液体体積として、表面の吸収特性を評価するものであり、本明細書において使用される試験溶液はEN13726-1からの溶液Aであり、液滴の体積は30μlである。例1および2のフォーム層の吸収速度を、以下に表1中で提示する。表1中で示されるように、例2のフォーム材料(酸化アルミニウム三水和物有り)は、例1のフォーム材料(酸化アルミニウム三水和物無し)に比較して、およそ50%高い吸収速度を有する。
【表1】