(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】セラミックコーティングを施した金属テープを処理するためのロールツーロール装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20230131BHJP
H01B 12/06 20060101ALI20230131BHJP
C23C 16/54 20060101ALI20230131BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20230131BHJP
B65H 23/038 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C23C14/56 B
H01B12/06
C23C16/54
B65H20/02 Z
B65H23/038 Z
(21)【出願番号】P 2019567996
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2018064139
(87)【国際公開番号】W WO2018224366
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-31
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519400139
【氏名又は名称】アメリカン スーパーコンダクター コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,トマス
(72)【発明者】
【氏名】カラバレフ,ルスラン
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-155412(JP,A)
【文献】特開2016-164846(JP,A)
【文献】特開2010-113919(JP,A)
【文献】特開平10-147859(JP,A)
【文献】特開2012-253128(JP,A)
【文献】特開平05-047245(JP,A)
【文献】特開平03-264676(JP,A)
【文献】特開2009-174001(JP,A)
【文献】特開2016-211061(JP,A)
【文献】特開昭60-190600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 -14/58
C23C 16/00 -16/56
H01B 13/00
B65H 20/00 -40/00
B65H 23/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックコーティングが施された金属テープを処理するためのロールツーロール装置であって、該ロールツーロール装置は、
固定軸位置を持つ少なくとも2つのロールと、テープ位置および/または張力を調整するための可変軸位置を持つ少なくとも1つのロールと、を有し、
前記可変軸位置を持つ前記ロールの軸は、前記金属テープの移動方向を中心に傾斜するように構成され、
前記ロールの位置と直径は、前記ロールが前記金属テープの片側からのみ接触し、かつ、前記金属テープが0.15%を超えて引き伸ばされないように、全ての点で前記金属テープの応力を制限するように調整される、ロールツーロール装置。
【請求項2】
前記可変軸位置を持つ前記ロールの周りの巻き付け角度が、90°未満である、請求項
1に記載のロールツーロール装置。
【請求項3】
前記固定軸位置を持つ前記ロールの直径が、少なくとも5cmである、請求項1
又は2に記載のロールツーロール装置。
【請求項4】
前記可変軸位置を持つ前記ロールの直径が、少なくとも5cmである、請求項1から
3の何れか1項に記載のロールツーロール装置。
【請求項5】
前記装置が、少なくとも4cmの幅を有する金属テープの処理に適合されている、請求項1から
4の何れか1項に記載のロールツーロール装置。
【請求項6】
前記可変軸位置を持つ前記ロールと前記固定軸位置を持つ最も近接する前記ロールとの間の距離が、前記装置に適合する前記金属テープの幅の少なくとも2倍である、請求項1から
5の何れか1項に記載のロールツーロール装置。
【請求項7】
前記装置は、固定軸位置を持つ少なくとも3つのロールを含む、請求項1から
6の何れか1項に記載のロールツーロール装置。
【請求項8】
前記装置が、可変軸位置を持つ少なくとも2つのロールを含む、請求項1から
7の何れか1項に記載のロールツーロール装置。
【請求項9】
請求項1から
8の何れか1項に記載の装置の、金属テープの処理のための使用。
【請求項10】
前記金属テープが、金属基材、少なくとも1つの緩衝層、および少なくとも1つの超伝導体層を含む超伝導体テープである、請求項
9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックコーティングを施した金属テープを処理するためのロールツーロール装置の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
セラミックコーティングを施した金属には、幅広い応用分野がある。セラミックコーティングは、金属を改質、例えば耐食性、光学的または電気的特性を改質するのに役立ち得る。さらに、例えば、セラミック超伝導体が金属基板上に堆積される高温超伝導体の分野で、金属がセラミックの基板として機能する用途がある。工業規模で生産される場合、セラミックコーティングが施された金属は、多くの場合テープ状であり、スプールに巻き取られて保管される。このテープを処理するには、テープをスプールから巻き出し、セラミック層を損傷することなくテープを操作する装置が必要である。
【0003】
WO 2009/094 622 A2は、金属テープを処理するための典型的なロールツーロール装置を開示している。そのような装置は、装置のロールに接触することができ、高張力に耐える堅牢なセラミックコーティングに対しては良好に働く。しかし、多くの用途の場合のように、セラミックコーティングが非常に薄くて脆い場合、セラミックコーティングに容認できない損傷を引き起こさずに既知の装置を使用することはできない。この場合、テープはスプールの両側でしか所定の位置に保持されないため、金属テープの張力を単純に下げることは選択肢ではありません。特に幅の広いテープの場合、テープの端の力が大きくなりすぎて、テープとセラミックコーティングの損傷につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、損傷なしに機械的に敏感なセラミックコーティングを施した金属テープを処理するために使用できる装置を提供することであった。同時に、この装置は、金属テープを非常に安定した位置に導き、堆積、エッチング、または構造化などの正確な処理工程を可能にすることを目的としていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、固定軸位置を持つ少なくとも2つのロールと、テープ位置および/又は張力を調整するための可変軸位置を持つ少なくとも1つのロールとを含む、セラミックコーティングが施された金属テープを処理するためのロールツーロール装置によって達成された。ロールの位置と直径を調整して、片側からのみ金属テープに接触し、金属テープが0.15%を超えて引き伸ばされないように、金属テープへの応力を全てのポイントで制限している。
【0007】
本発明はさらに、金属テープの処理のための本発明による装置の使用に関する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、明細書および特許請求の範囲に見出すことができる。異なる実施形態の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】部分的に巻き付けられた偏向ロールの断面図を示す。
【
図2】部分的に巻き付けられた偏向ロールの断面図を示す。
【
図3】金属テープ(2)とセラミックコーティング(3)が施されたテープ(1)の移動方向から見た調整ロール(31)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるロールツーロール装置は、供給スプールと収容スプールを取り付けるのに適している。金属テープは、処理された供給スプールから巻き出されてから、収容スプールに巻き取られる。さらに、この装置は、典型的には、供給スプールおよび/または収容スプールを回転させて、セラミックコーティングが施された金属テープを巻き出しおよび巻き取ることができる。供給および/または収容スプールの回転速度は、典型的には、装置内でテープが移動する速度を調整する。典型的な値は、0.1~300m/h、好ましくは1~200m/h、より好ましくは5~100m/h、特に10~50m/h、例えば30m/hである。
【0011】
金属テープには、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、銅、亜鉛、または真鍮などの任意の金属を含めることができる。また、金属テープは複数の金属の積層体、たとえばステンレス鋼の層の上に銅の層の積層体である可能性もある。金属テープは、10μm~1mm、好ましくは30~200μmなどの様々な厚さを有し得る。金属テープは、1mm~2m、好ましくは1cm~1m、より好ましくは4~50、特に10~40cmなどの様々な幅を有し得る。金属テープは、1m~10km、好ましくは100m~1kmなどの様々な長さを有し得る。
【0012】
セラミックコーティングは、酸化物、窒化物、炭化物、またはホウ化物を含むさまざまな無機材料を含み得る。セラミックコーティングは、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Biを含む金属および/または半金属を含み得る。セラミックコーティングの例には、酸化マグネシウム、酸化セリウム、ジルコン酸ガドリニウム、ジルコン酸ランタン、またはイットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)などのさまざまなジルコン酸塩、チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸塩、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)などの銅酸化物を含む。セラミックコーティングがセラミック材料の複数の層を含むことも可能である。セラミックコーティングの厚さは、0.5nm~1mm、好ましくは5nm~100μm、特に10nm~10μmなどの広い範囲であり得る。
【0013】
本発明によるロールツーロール装置は、偏向(デフレクタ)ロールとして機能する固定軸位置を有する少なくとも2つのロールと、テープ位置および/または張力を調整する可変軸位置を有する少なくとも1つのロールとを含む。後者は、以下で調整ロールと呼ばれる。好ましくは、調整ロールは、金属テープの移動方向に関して少なくとも2つの偏向ロールの間の位置にある。複雑な処理または非常に敏感なセラミックコーティングの場合、ロールツーロール装置が2つを越える、たとえば少なくとも3つまたは少なくとも4つの偏向ロールを備えていると有利である。すべての偏向ロールが同じジオメトリを持っていても、互いに異なっていても良い。また、ロールツーロール装置が2つ以上、例えば少なくとも2つまたは少なくとも3つの調整ロールを持っていても良い。ロールツーロール装置が複数の調整ロールを含む場合、すべての調整ロールが同じジオメトリを持っていても、互いに異なっていても良い。
【0014】
本発明の文脈における用語「ロール」は、円筒などの、回転に関して不変の1つの軸を有する物体を指す。本発明による装置のロールは、回転または固定できるように取り付けることができるため、ロールは、セラミックコーティングを施した金属テープが滑るスライドのように機能する。好ましくは、ロールは回転可能である。
【0015】
用語「ジオメトリ」は、ロールの形状と寸法を指す。形状は円筒形でも、凸または凹の断面を有していても良い。ロールは、鋼、アルミニウム、銅、真鍮、ポリマーなどのさまざまな材料で製作できる。また、ロールの表面がそのコアとは異なる材料、例えばコアが鋼であり、表面が軟質ポリマーであることも可能である。
【0016】
セラミックコーティングは、テープ全体に加えられた歪みの結果として、またロールの周りに曲がることによって張力を受ける。張力は、完全に弛緩したテープの長さに対して長さの増加の比率として定義される相対的な伸張をもたらす。テープ全体にかかる歪みは、通常、収容スプールがテープを一方向に引っ張る一方で、供給スプールが反対方向に引っ張って、結果として生じる力のバランスをとる場合、供給スプールと収容スプールによって調整される。歪みは通常5~100N/mm2程度であり、最大テープ伸びを超えないように、金属テープの弾性に応じて調整する必要がある。偏向の周囲の曲げから生じる相対的な伸張μdは、ロールの直径dとテープの厚さtに依存し、式(I)で近似できる。
【0017】
μd=(π(d+2t)-π(d+t))/π(d+t)=t/(d+t)(I)
【0018】
図1は、上記の式で使用される変数を有するテープが、部分的に巻き付けられた偏向ロールの断面図を示す。セラミックコーティング(3)が施された金属テープ(2)を含む厚さtのテープ(1)は、直径dの偏向ロール(21)の周りにラップ角度αでラップされている。
【0019】
偏向ロールの周囲の曲げによって引き起こされる歪みを低減するために、偏向ロールの直径を大きくすることが可能であり、それは好ましくは少なくとも5cm、より好ましくは少なくとも10cm、例えば20~50cmである。
【0020】
調整ロールの軸は、2つの方法で変更できることが好ましい。軸は移動または傾斜させることが可能である。移動後、軸は移動前の位置と平行になる。好ましくは、移動方向は、テープがテープの移動方向に関して調整ロールに接触する直前にテープのコーティングが施された表面の法線に平行、またはテープがテープの移動方向に関して調整ロールに接触を止めた直後にテープのコーティングが施された表面の法線に平行、またはその間の任意の線に平行である。前記2つの移動方向は、
図2においてグレイの破線の矢印として示されている。好ましくは、移動方向は、前記2つの表面の法線の角度二等分線または
図2の太線矢印で示される前記2つの表面の法線の角度二等分線に沿っている。このような動きは、動きの方向に応じてテープ全体の張力を増減させる。
【0021】
代替的または追加的に、軸をテープの移動方向の周りに角度βだけ傾けることができる。テープが調整ロールに巻き付けられている場合、テープが調整ロールに接触し始めるポイントで、移動方向に垂直な平面で、またはテープ端が調整ロールに接触するポイントで、移動方向に垂直な平面で、またはその間の任意の平面で、軸を傾けることができる。ここで、平面の表面の法線は前述の2つの平面の角度二等分線であるか、ほぼ二等分線である。この傾斜により、テープの側が上向きに曲げられ、曲げられた側の反対側にテープを移動させる力が生じる。このようにして、テープの位置を調整できる。
【0022】
調整ロールは、巻き付け角度α、上向きに曲げられたテープの幅a、度単位の傾斜角β、ロールの直径dおよびテープの厚さt、テープがたどる経路に関して、調整ロールと最も近い偏向ロールまでの距離cに依存して相対伸張μaを発生する。相対伸張μaは、式(II)で近似できる。
【0023】
μa=(α/180°・a・sinβ)/(α/360°・π・r+c) (II)
【0024】
図3は、金属テープ(2)とセラミックコーティング(3)が施されたテープ(1)の移動方向から見た調整ロール(31)を示す。調整ロールは、テープ(1)に対して角度βだけ傾けられ、それにより、調整ロールは、テープ(1)を左側に移動させる右側の長さaだけテープ(1)に接触する。調整ロールの傾きは太い矢印で示されている。
【0025】
調整ロールの周りの曲げによって生じる歪みを減らすために、調整ロールの周りの巻き付け角度を小さくすること、および/または調整ロールの直径を大きくすることができる。好ましくは、調整ロールの周りの巻き付け角度は、偏向ロールの周りの巻き付け角度よりも小さく、好ましくは90°未満、より好ましくは60°未満、特に10°~45°である。代替的または追加的に、調整ロールの直径は大きく、好ましくは少なくとも5cm、より好ましくは少なくとも10cm、例えば20~50cmである。
【0026】
さらに、傾斜角βおよび/または幅aを小さくすることが可能である。これは通常、調整ロールによるテープの設定位置からの逸脱に対する非常に迅速な応答によって達成される。好ましくは、最大傾斜角βは10°未満、より好ましくは7°未満、特に6°未満、例えば0.1°~5°である。また、調整ロールから最も近い偏向ロールまでの距離cを長くすることも可能である。値cは、調整ロールに触れる点と偏向ロールに触れる点の間のテープの長さである。値cは、好ましくはテープの幅の0.5~50倍、より好ましくはテープの幅の1.5~20倍、さらにより好ましくはテープの幅の3~15倍、特にテープの幅の4~10倍である。
【0027】
本発明によれば、ロールの位置および直径は、片側からのみ金属テープに接触し、金属テープが0.15%、好ましくは0.12%、特に0.1%を超えて引き伸ばされない様に、全ての点で金属テープへの応力を制限するように調整される。多くの場合、金属テープは少なくとも0.01%引き伸ばされる。例として、5at-%タングステンを含み、118kN/mm2の弾性率を持つニッケルテープの場合、装置によってテープにかかる最大歪は177N/mm2である。したがって、装置は、テープに200N/mm2、より好ましくは180N/mm2、特に160N/mm2、特に150N/mm2の最大歪を及ぼすように設計されることが好ましい。
【0028】
図4は、本発明の好ましい実施形態を示す。図示された装置は、テープ(1)用の供給スプール(11)、第1偏向ロール(21)、調整ロール(31)、第2偏向ロール(22)および収容スプール(12)を含む。 調整スプールの周りの巻き付け角度は、偏向ロールの周りよりも小さくなっている。そのような構成を有する装置は、例えば、巻き出しステーションとして使用することができる。
【0029】
図5は、本発明の別の好ましい実施形態を示す。図示された装置は、テープ(1)用の供給スプール(11)、第1偏向ロール(21)、第1調整ロール(31)、第2偏向ロール(22)、処理ユニット(41)、第3偏向ロール(23)、第2調整ロール(32)、第4偏向ロール(24)、および収容スプール(12)を含む。そのような構成を有する装置は、例えば、テープをコーティングまたはベーキングするために使用することができる。
【0030】
図6は、本発明の別の好ましい実施形態を示す。図示された装置は、テープ(1)用の供給スプール(11)、第1偏向ロール(21)、第2偏向ロール(22)、第1調整ロール(31)、第3偏向ロール(23)、および収容スプール(12)を含む。
【0031】
装置は、しばしば、セラミックコーティングを施した金属テープが操作される処理ユニットをさらに含む。そのような処理ユニットは、インクジェット印刷ユニット、ドクターブレードユニット、ノズルコーティングユニットなどのインク堆積ユニット、スパッタリング装置、イオンビーム支援堆積装置、化学蒸着装置、原子層蒸着装置を含む気相堆積ユニット、または電気化学堆積ユニットを含む膜堆積ユニットとすることができる。さらに、処理ユニットは、例えば、強酸を使用するウェット化学エッチングユニット、または、例えばイオンビームエッチングユニットなどの気相エッチングユニットを含むエッチングユニットであり得る。処理ユニットは、オーブンまたはガス炎を含む、セラミックコーティングを施した金属テープを加熱する手段であることも可能である。
【0032】
本発明による装置は、超伝導体テープに特に適している。好ましくは、超伝導体テープは、金属基板、少なくとも1つの緩衝層、および少なくとも1つの超伝導体層を含む。好ましくは、基板はニッケルを含む。より好ましくは、基板は、ニッケルおよび1~10at-%、特に3~9at-%のタングステンを含む。基材は、好ましくはテクスチャー加工されており、すなわち、テクスチャー加工された表面を有し、より好ましくは、テクスチャーは立方体テクスチャーである。
【0033】
緩衝層は、超伝導体層を支持できる任意の材料を含むことができる。緩衝層の材料の例には、銀、ニッケル、TbOx、GaOx、CeO2、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Y2O3、LaAlO、SrTiO3、Gd2O3、LaNiO3、LaCuO3、SrRuO3、NdGaO3、NdAlO3のような金属および酸化物金属および/または当業者に知られているいくつかの窒化物を含む。好ましい緩衝層の材料は、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)、ジルコン酸ガドリニウム、ジルコン酸ランタンなどの様々なジルコン酸塩、チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸塩、酸化セリウム、または酸化マグネシウムなどの単純な酸化物である。より好ましくは、緩衝層は、ジルコン酸ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはガドリニウムドープ酸化セリウムなどの希土類金属ドープ酸化セリウムを含む。さらにより好ましくは、緩衝層は、ジルコン酸ランタンおよび/または酸化セリウムを含む。好ましくは、超伝導体テープは、基板とフィルムの間に、それぞれ異なる緩衝材料を含む複数の緩衝層を含む。好ましくは、超伝導体テープは、2つまたは3つの緩衝層、例えば、ジルコン酸ランタンを含む第1の緩衝層と、酸化セリウムを含む第2の緩衝層とを含む。緩衝層は、好ましくはテクスチャー加工され、より好ましくは、緩衝層は立方体テクスチャーを有する。
【0034】
好ましくは、超伝導体層は、式RExBayCu3O7-δの化合物を含む。 REは希土類金属、好ましくはイットリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ガドリニウム、ユーロピウム、サマリウム、ネオジム、プラセオジム、またはランタン、特にイットリウムを表す。 インデックスxは、0.9~1.8、好ましくは1.2~1.5の値を想定する。 インデックスyは、1.4~2.2、好ましくは1.5~1.9の値を想定する。インデックスδは、0.1~10.0、好ましくは0.3~0.7の値を想定する。 超伝導体層の厚さは、好ましくは200nm~2μm、より好ましくは400nm~1.5μmである。 好ましくは、超伝導体層は、互いに高度の配向を有する結晶粒を有する。