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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】レンズマウント
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/14 20210101AFI20230131BHJP
【FI】
G03B17/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018190924
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020060646
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】321001056
【氏名又は名称】OMデジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】矢野 友秀
(72)【発明者】
【氏名】弓削 一憲
(72)【発明者】
【氏名】安富 暁
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-031105(JP,A)
【文献】実開昭63-041142(JP,U)
【文献】特開平07-333703(JP,A)
【文献】特開2007-286201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/04-17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラマウントとバヨネット結合するレンズマウントであって、
第1の位置決め部を有する第1の固定部材と、
上記カメラマウントに配置されたロックピンと係合するロック溝を形成すると共に第2の位置決め部が形成された一対の凸状部を有し、上記第1の固定部材に対して位置決め固定される第2の固定部材と、
上記第1の位置決め部と上記第2の位置決め部とによって上記第1の固定部材に位置決めされると共に、上記第1の固定部材に位置決めされた際に上記第2の固定部材に形成された上記一対の凸状部の上記ロック溝を露呈させる第3の固定部材と、
を具備し、
前記第1の固定部材は、当該第1の固定部材に対して前記第2の固定部材を位置決め固定するための複数の位置決めピンと複数のビス孔を有し、
前記第2の固定部材は、前記複数の位置決めピンに対応する複数の位置決め用嵌合部と前記複数のビス孔に対応する複数のビス貫通孔を有し、
前記複数の位置決めピンが前記複数の位置決め用嵌合部に嵌合することによって、前記第2の固定部材は前記第1の固定部材に対して位置決めされ、
前記複数のビス貫通孔を通して前記複数のビス孔のそれぞれにビスが締結されることによって、前記第2の固定部材は前記第1の固定部材に対して固定されることを特徴とするレンズマウント。
【請求項2】
上記一対の凸状部は、互いに対向して位置することにより上記ロックピンが係合するための上記ロック溝を形成する第1の凸状部及び第2の凸状部とを有し、
上記第2の位置決め部は、上記第1の凸状部と上記第2の凸状部とに形成されていることを特徴とする請求項1記載のレンズマウント。
【請求項3】
上記第1の凸状部と上記第2の凸状部との各々は、それぞれ上記ロック溝を形成する側の壁とは反対側の突状壁のそれぞれに上記第2の位置決め部を有し、当該突状壁は上記第3の固定部材に形成された長孔の位置を位置決めすることを特徴とする請求項2記載のレンズマウント。
【請求項4】
上記第1の位置決め部は、上記第1の固定部材の外周に形成された円周状の壁であり、当該円周状の壁は上記第3の固定部材の外周の位置を位置決めして第1の位置決めが行われることを特徴とする請求項1記載のレンズマウント。
【請求項5】
上記第3の固定部材には長孔が形成され、上記一対の凸状部が上記長孔と係合することによって第2の位置決めが行われることを特徴とする請求項4記載のレンズマウント。
【請求項6】
上記第2の固定部材は上記第3の固定部材よりも硬い材質で構成されていることを特徴とする請求項1~請求項5のうちのいずれか1項に記載のレンズマウント
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カメラマウントとバヨネット結合するレンズマウントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像光学系(レンズ)を備えたレンズ鏡筒を撮像装置(カメラ)本体に対して着脱自在に構成した形態のいわゆるレンズ交換式撮像装置が一般に実用化され広く普及している。
【0003】
この種のレンズ交換式撮像装置において、装置本体に対してレンズ鏡筒を着脱自在とするための結合機構としては、例えばカメラマウントとバヨネット結合するバヨネット式のレンズマウントが一般に普及している。このバヨネット式のレンズマウントは、装置本体に対してレンズ鏡筒が装着されたときには、当該レンズ鏡筒の装着状態を維持すると共に、当該レンズ鏡筒が装置本体に対して光軸回りに回転しないように、レンズ鏡筒の回転位置を規制するためのロック機構を有しているのが普通である。
【0004】
従来のレンズマウントにおけるロック機構は、例えば装置本体側のマウント部に設けられたロックピンを、レンズ鏡筒側のレンズマウントに設けられたロック溝に係合させることで、装置本体に対するレンズ鏡筒の光軸回りの回転を規制するように構成しているのが一般である。この場合における構成例としては、例えば光軸に沿う方向に突没自在に設けたロックピンと、当該ロックピンの突没方向に相対する面に光軸に沿う方向に向けた凹部を有して形成され、上記ロックピンを係合させるロック溝を設けて構成する。
【0005】
このような従来の形態のレンズマウントにおけるロック機構の構成では、装置本体にレンズ鏡筒が装着された状態にあるとき、ロックピンとロック溝との係合部分に大きな外力が加わる状況がある。
【0006】
例えば、手動フォーカス操作や手動ズーム操作等を行う場合には、各操作リングは所定の回転範囲内で回転するように構成されているのが普通である。ここで、例えば操作リングが所定の回転範囲内における一方の端部に到達しているにも関わらず、さらに当該操作リングを同じ方向へ回転させようとすると、操作リングはそれ以上回らない。したがって、この場合、操作リングへの操作力量を受けてレンズ鏡筒自体が光軸回りに回転しようとする。このとき、ロックピンとロック溝との係合部分には大きな外力が加わる。
【0007】
また、例えば、装置本体からレンズ鏡筒を取り外す操作を行う場合には、まず、ロックピンのロック解除操作を行って、ロックピンとロック溝との係合状態を解除した上で、装置本体に対してレンズ鏡筒を光軸回りに回転させる手順とされているのが普通である。この場合において、例えば、ロックピンのロック解除操作を行わずに、若しくは不完全なロック解除操作のまま装置本体に対してレンズ鏡筒を光軸回りに回転させる力量を加えると、ロックピンとロック溝との係合部分に対して大きな外力が加わることになる。
【0008】
このように、レンズマウントにおけるロック機構において、ロックピンとロック溝との係合部分に大きな外力が加わった場合や、装置本体と各種のレンズ鏡筒との着脱操作を繰り返し行った場合、ロックピンが当接するロック溝の開口内壁面に変形が生じたり、溝開口幅を拡張してしまうことがある。そして、当該変形が進行した場合、装置本体にレンズ鏡筒を装着したときのレンズ鏡筒の回転ロック状態を維持できないようになってしまう場合がある。
【0009】
そこで、従来、例えばロックピンがロック溝に係合している状態で、当該係合部分に外力が加わった場合に、ロック溝の開口内壁面の変形を抑止し、またロック溝の開口幅の拡張を抑えるための工夫が、例えば特開平7-333703号公報,特開平3-231726号公報,特開平4-24273号公報等によって種々提案されている。
【0010】
上記特開平7-333703号公報,特開平3-231726号公報等によって開示されているレンズマウントは、ロック溝に相当する部分をマウント部材とは異なる別体の部品で形成すると共に、当該別体部品をロックピンよりも硬質な素材(例えば金属部品)で形成している。
【0011】
上記特開平4-24273号公報等によって開示されているレンズマウントは、ロック溝の開口幅が、当該ロック溝の最底面部幅よりも広くなるように形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平7-333703号公報
【文献】特開平3-231726号公報
【文献】特開平4-24273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記特開平7-333703号公報,特開平3-231726号公報等によって開示されているレンズマウントにおいては、ロック溝を含む別体部品をマウント部の所定の部位に取り付ける場合、例えば圧入等の手段が用いられることになる。この場合、当該装置を使用しているうちに、ロックピンとロック溝との間にガタが発生し、所定のロック状態を維持できなくなってしまうという問題点がある。そして、カメラ本体とレンズ鏡筒との結合状態が使用中に外れてしまう等の問題点が生じる場合がある。
【0014】
また、圧入によって上記別体部品を取り付ける場合、例えば他の部品に施された鍍金等の処理が剥がれてしまう等の問題が生じることがある。この場合、生産性が低下し、製造コストが高くつくという問題点がある。
【0015】
さらに、圧入によって上記別体部品を取り付ける場合、必要とする圧入力量を確保するためには、別体部材とマウント部との嵌合長を長くとる必要がある。このことから、装置が大型化してしまうという問題点がある。
【0016】
一方、上記特開平4-24273号公報等によって開示されているレンズマウントにおいては、ロックピンとロック溝との係合部分に外力が加わってロック溝の開口壁面に変形が生じた場合、ロックピンとロック溝の開口壁面との間の寸法差が広がって、ガタが発生してしまうという問題点がある。このようなガタが発生した場合、カメラ本体とレンズ鏡筒とを確実に結合させることができなくなるという問題が生じる場合がある。
【0017】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、カメラマウントとバヨネット結合するレンズマウントにおいて、ロック機構におけるロック溝をマウント部材とは別体部品として構成しながら装置の小型化に寄与し得ると共に、ロックピンとロック溝との位置決め精度を向上させてガタの生じない構造のレンズマウントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の一態様のレンズマウントは、カメラマウントとバヨネット結合するレンズマウントであって、第1の位置決め部を有する第1の固定部材と、上記カメラマウントに配置されたロックピンと係合するロック溝を形成すると共に第2の位置決め部が形成された一対の凸状部を有し、上記第1の固定部材に対して位置決め固定される第2の固定部材と、上記第1の位置決め部と上記第2の位置決め部とによって上記第1の固定部材に位置決めされると共に、上記第1の固定部材に位置決めされた際に上記第2の固定部材に形成された上記一対の凸状部の上記ロック溝を露呈させる第3の固定部材とを具備し、前記第1の固定部材は、当該第1の固定部材に対して前記第2の固定部材を位置決め固定するための複数の位置決めピンと複数のビス孔を有し、前記第2の固定部材は、前記複数の位置決めピンに対応する複数の位置決め用嵌合部と前記複数のビス孔に対応する複数のビス貫通孔を有し、前記複数の位置決めピンが前記複数の位置決め用嵌合部に嵌合することによって、前記第2の固定部材は前記第1の固定部材に対して位置決めされ、前記複数のビス貫通孔を通して前記複数のビス孔のそれぞれにビスが締結されることによって、前記第2の固定部材は前記第1の固定部材に対して固定される
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カメラマウントとバヨネット結合するレンズマウントにおいて、ロック機構におけるロック溝をマウント部材とは別体部品として構成しながら装置の小型化に寄与し得ると共に、ロックピンとロック溝との位置決め精度を向上させてガタの生じない構造のレンズマウントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態のレンズマウントを適用したレンズ鏡筒の外観斜視図
図2図1のレンズ鏡筒の分解斜視図
図3図1の矢印[3]方向から見た矢視図
図4図3の矢印[4]で示す円形領域を拡大して示す要部拡大図
図5図5図3のレンズマウントから一部の部材(マウントリング及び接点ユニット,固定筒)を取り外した状態を示し、図4と同じ領域を示す要部拡大図
図6】本発明の一実施形態のレンズマウントにおけるロック機構の一部を構成するロック溝ユニットを取り出して示す外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0022】
[一実施形態]
以下に説明する一実施形態は、撮像装置本体に対して着脱自在に構成され、略筒形状を有し、内部に撮像光学系を備えた一般的な形態の交換レンズ鏡筒(以下、単にレンズ鏡筒という)に適用され、いわゆるカメラマウントとバヨネット結合するレンズマウントの例示である。
【0023】
また、本実施形態で例示するレンズマウントにおいては、カメラマウント側に設けられたロックピンを、レンズマウント側に設けられたロック溝に係合させることによって、撮像装置本体にレンズ鏡筒を装着したときのレンズ鏡筒の光軸周りの回転を規制するロック機構を構成している。このロック機構の構成自体については、従来周知の構成のものが適用されている。
【0024】
図1図6は、本発明の一実施形態のレンズマウントを示す図である。このうち図1は本発明の一実施形態のレンズマウントを適用したレンズ鏡筒の外観斜視図である。図2図1のレンズ鏡筒の分解斜視図である。なお、図2においては、レンズ鏡筒に含まれる撮像光学系等、本発明に直接関連しない一部の部材を省略して図示している。
【0025】
図3は、図1の矢印[3]方向から見た矢視図である。即ち、図3は本発明の一実施形態のレンズマウントの平面図である。図4図3の矢印[4]で示す円形領域を拡大して示す要部拡大図である。図5図3のレンズマウントから一部の部材(マウントリング及び接点ユニット,固定筒)を取り外した状態を示し、図4と同じ領域を示す要部拡大図である。図6は本発明の一実施形態のレンズマウントにおけるロック機構の一部を構成するロック溝ユニットを取り出して示す外観斜視図である。
【0026】
まず、本発明の一実施形態のレンズマウントを適用したレンズ鏡筒の概略構成について、主に図1図3を用いて以下に説明する。
【0027】
本実施形態のレンズマウントを適用したレンズ鏡筒1は、主に図1図3に示すように、マウントリング11(第3の固定部材)と、筒本体12(第1の固定部材)と、固定筒13と、接点ユニット14と、ロック溝ユニット15(第2の固定部材)と、撮像光学系16(図2には不図示)等を有して構成されている。
【0028】
マウントリング11は、撮像装置本体側のマウント部であるカメラマウント(不図示)に対してバヨネット結合するためのレンズ鏡筒1側のマウント部である。
【0029】
マウントリング11は、略円環形状に形成され、主に図2に示すように、開口部11dと、外向フランジ部11eと、内向フランジ部11fと、複数のバヨネット爪11g等を有して構成されている。
【0030】
開口部11dは、被写体光束を通過させる貫通孔である。
【0031】
外向フランジ部11eは、マウントリング11を筒本体12に対して固定する固定部位である。そのために、この外向フランジ部11eには、複数のビス挿通孔11aが形成されている。そして、マウントリング11は、複数のビス挿通孔11aに挿通される複数のビス21のそれぞれを、筒本体12の複数のビス孔12aのそれぞれに締結されることによって固定されている。
【0032】
また、外向フランジ部11eには、ロック溝配置孔11cが形成されている。このロック溝配置孔11cは、マウントリング11の外向フランジ部11eにおける周方向に長軸を有する長孔として形成されている。そして、当該ロック溝配置孔11cは、マウントリング11を筒本体12に組み付けたときに、マウントリング11と筒本体12との間に設けられるロック溝ユニット15(詳細後述)の一部(一対の凸状部15a及びロック溝15d)を、マウントリング11のマウント面から外部に露呈させるための長孔であり貫通孔である。ここで、マウント面とは、レンズ鏡筒1が撮像装置本体(不図示)に装着される際に、当該マウントリング11がカメラマウント(不図示)側のマウント部に相対する面を指している(図3で示されている面が相当する)。
【0033】
内向フランジ部11fは、固定筒13をマウントリング11に対して固定する固定部位である。そのために、この内向フランジ部11fには、複数のビス孔11bが形成されている。そして、固定筒13は、複数のビス22のそれぞれを、後述する複数のビス挿通孔13aのそれぞれに挿通させた後に、マウントリング11の複数のビス孔11bのそれぞれに締結させることによって、当該マウントリング11に固定されている。
【0034】
バヨネット爪11gは、カメラマウント(不図示)側のバヨネット爪(不図示)に対してバヨネット結合するための複数の爪部である。なお、マウントリング11におけるバヨネット結合を実現するための構成は、従来のレンズ鏡筒等において適用されるものと略同様構成を有するものである。したがって、その詳細説明は省略する。
【0035】
筒本体12は、全体として円筒形状に形成され、内周面沿って形成される内向フランジ部12dと、円周状壁部12eとを有して構成される第1の固定部材である。この筒本体12の内部には撮像光学系16(図1図3参照;図2には不図示)や、撮像光学系16の一部を駆動するための駆動ユニット(不図時)等、各種の構成部材を収納している。なお、筒本体12の内部構成については、本発明に直接関連しない部分であるので、その図示及び詳細説明は省略する。
【0036】
筒本体12の内向フランジ部12dには、ロック溝ユニット15(詳細後述)を、その平面上に位置決めするための位置決めピン12ba,12bbが複数(本例では2つ)設けられている。また、筒本体12の内向フランジ部12dには、同ロック溝ユニット15(詳細後述)を筒本体12に対して固定するための複数のビス孔12cが設けられている(本例では2つ)。
【0037】
詳細は後述するが、これにより、ロック溝ユニット15は、筒本体12の内向フランジ部12dの平面上の所定の位置に対し、複数の位置決めピン12ba,12bbによって位置決めされた状態で、複数のビス23のそれぞれが複数のビス孔12cのそれぞれに締結されることによって筒本体12に固定される。
【0038】
また、円周状壁部12eは、当該筒本体12において、上記内向フランジ部12dの外周に沿って形成された円周状の壁状部位である。この円周状壁部12e内には、マウントリング11が配置される。したがって、円周状壁部12eの内径寸法は、マウントリング11が当該円周状壁部12e内部に収納され得るように、当該マウントリング11の外径寸法と略同等で、かつマウントリング11の外径寸法よりも若干大径となるように形成されている。
【0039】
したがって、筒本体12の円周状壁部12eの内部にマウントリング11(第3の固定部材)を配置したとき、円周状壁部12eは、マウントリング11の外周の位置を位置決めして第1の位置決めを行う第1の位置決め部として機能する。
【0040】
固定筒13は、マウントリング11の内周側に配設される筒状部材である。この固定筒13は、接点ユニット14の両端を保持する固定部材である。固定筒13は、上述したように、マウントリング11の内向フランジ部11fの複数のビス孔11bに対して複数のビス22を用いて固定されている。
【0041】
そのために、固定筒13には、外周面上に沿って外向フランジ部13bが形成されている。この外向フランジ部13bは、接点ユニット14を配置するために、一部が切り欠かれて形成される切欠部13cが設けられている。そして、当該外向けフランジ部13bには、複数のビス22をそれぞれ挿通させる複数のビス挿通孔13aが形成されている。
【0042】
これにより、固定筒13は、マウントリング11の内周側に配設される際には、外向フランジ部13bが当該マウントリング11の内向フランジ部11fに対向するように配置される。そして、この状態で、固定筒13の複数のビス挿通孔13aのそれぞれに複数のビス22のそれぞれを挿通した後、当該複数のビス22のそれぞれは、マウントリング11の内向フランジ部11fの複数のビス孔11bのそれぞれに締結されることによって、固定筒13は、マウントリング11に固定される。
【0043】
接点ユニット14は、複数の電子接点14aを有して構成される電気部品である。この接点ユニット14は、レンズ鏡筒1が撮像装置本体(不図示)に対して装着されたときに、レンズ鏡筒1と撮像装置本体との間で電気的な接続を確保して、各種の通信等を行うために設けられている。そのために、これら複数の電子接点14aは、レンズ鏡筒1の内部に設けられる電子回路(不図示)から延設されるフレキシブルプリント基板(不図示)に対し内部において電気的に接続されている。
【0044】
接点ユニット14は、マウントリング11の内周面に沿うようにして、固定筒13の切欠部13cに配置されている。この状態で、接点ユニット14の両端は、固定筒13の固定部に対して固定保持されている。そして、接点ユニット14は、マウントリング11の外周側から内周に向けて穿設されたビス挿通孔(不図示)に挿通されたビス(不図示)を用いて固定されている。
【0045】
次に、ロック溝ユニット15について詳述する。ロック溝ユニット15は、カメラマウント(不図示)側に配置されたロックピン(不図示;ロック機構の一部)と係合するロック溝15d(ロック機構の一部)を形成すると共に、後述する第2の位置決め部である突状壁(15e,15f)を有して形成され、筒本体12(第1の固定部材)に対して所定の手段で位置決め固定される第2の固定部材である。
【0046】
ロック溝ユニット15は、マウントリング11とは別体に別部品として構成されている。そして、当該ロック溝ユニット15は、マウントリング11よりも硬い材質の部材を用いて形成されている。
【0047】
上述したように、ロック溝ユニット15は、筒本体12の内向フランジ部12dの平面上の所定の位置に位置決めされた状態で固定されている。そのために、ロック溝ユニット15には、図6に示すように、位置決め用嵌合部としての嵌合孔15baと、切欠部15bbと、複数のビス挿通孔15cが形成されている。
【0048】
そして、図5に示すように、嵌合孔15ba及び切欠部15bbに対して、筒本体12の内向フランジ部12dの位置決めピン12ba,12bbのそれぞれが嵌合する。これにより、ロック溝ユニット15は、筒本体12の内向フランジ部12dの平面上の所定の位置に位置決めされる。
【0049】
このようにして、ロック溝ユニット15が筒本体12に対して位置決めされた状態で、図5に示すように、複数のビス挿通孔15cのそれぞれに複数のビス23が挿通され、筒本体12の複数のビス孔12cのそれぞれに締結される。これによって、ロック溝ユニット15は、筒本体12の内向フランジ部12dの平面上に固定される。
【0050】
さらに、ロック溝ユニット15は、図6に示すように、一対の凸状部15aを有して形成されている。この一対の凸状部15aは、所定の間隔を置いて互いに対向して配置される第1凸状部15aaと第2凸状部15abとによって構成されている。そして、第1凸状部15aaと第2凸状部15abとの間には、カメラマウント(不図示)側に配置されたロックピン(不図示)と係合するロック溝15dを形成している。
【0051】
ここで、ロック溝15dは、一対の凸状部15aにおける第1凸状部15aaと第2凸状部15abとの相対する壁によって形成されている。そして、当該ロック溝15dは、マウントリング11の周方向に対して略直交する方向に延びる溝として形成されている。
【0052】
そして、ロック溝ユニット15が筒本体12の内向フランジ部12dに位置決め固定された状態で、筒本体12の円周状壁部12eに対しマウントリング11が、当該ロック溝ユニット15を覆うようにして配置されている。これにより、上述したように、マウントリング11は、外周の位置が円周状壁部12eによって位置決めされる(第1の位置決め)。
【0053】
さらに、このとき、ロック溝ユニット15の一対の凸状部15aは、マウントリング11のロック溝配置孔11c(長孔)に係合している。これによって、マウントリング11の回転方向の移動は、一対の凸状部15aによって規制され、当該マウントリング11の回転方向の位置決めがなされる(第2の位置決め)。
【0054】
即ち、この状態においては、一対の凸状部15aにおける第1凸状部15aaと第2凸状部15abとの各々は、ロック溝ユニット15のロック溝15dを形成する側の壁とは反対側の突状壁(15e,15f)のそれぞれがマウントリング11(第3の固定部材)のロック溝配置孔11c(長孔)の内縁に当接している。これによって、一対の凸状部15aは、当該ロック溝配置孔11cの位置、即ちマウントリング11の回転方向の位置決めをしている。つまり、このとき、一対の凸状部15aにおける第1凸状部15aaと第2凸状部15abとに形成されている突状壁15e,15fは、第2の位置決め部として機能している。
【0055】
ここで、突状壁15e,15fは、ロック溝15dを形成する側の壁と並行に延びる壁である。ロック溝15dは、上述したように、マウントリング11の周方向に対して略直交する方向に延びる溝である。したがって、突状壁15e,15fも、マウントリング11の周方向に対して略直交する方向に延びる壁として形成されている。
【0056】
このような構成により、マウントリング11(第3の固定部材)は、外周が筒本体12の円周状壁部12e(第1の位置決め部)により筒本体12に対して位置決めされる(第1の位置決め)と共に、ロック溝配置孔11cが突状壁15e,15f(第2の位置決め部)によって、筒本体12(第1の固定部材)に対して位置決めされる(第2の位置決め)。
【0057】
このように、マウントリング11は、筒本体12(第1の固定部材)に対して位置決めされた状態とされる。この状態で、ロック溝ユニット15(第2の固定部材)に形成された一対の凸状部15aのロック溝15dは、マウント面のロック溝配置孔11cから外部に露呈するように構成されている。これにより、レンズ鏡筒1側のレンズマウントとカメラ本体側のカメラマウント(不図示)とがバヨネット結合する際には、レンズマウント側のロック溝15dに、カメラマウント側のロックピン(不図示)が係合するようになっている。
【0058】
即ち、本実施形態のレンズマウントは、カメラマウント(不図示)とバヨネット結合するレンズマウントであって、円周状壁部12e(第1の位置決め部)を有する筒本体12(第1の固定部材)と、カメラマウントに配置されたロックピン(不図示)と係合するロック溝15dを形成すると共に突状壁15e,15f(第2の位置決め部)が形成された一対の凸状部15aを有し、筒本体12(第1の固定部材)に対して位置決め固定されるロック溝ユニット15(第2の固定部材)と、円周状壁部12e(第1の位置決め部)と突状壁15e,15f(第2の位置決め部)とによって筒本体12(第1の固定部材)に位置決めされると共に、筒本体12(第1の固定部材)に位置決めされた際にロック溝ユニット15(第2の固定部材)に形成された一対の凸状部15aのロック溝15dを露呈させるマウントリング11(第3の固定部材)とを具備して構成している。
【0059】
この構成において、一対の凸状部15aは、互いに対向して位置することによりロックピン(不図示)が係合するためのロック溝15dを形成する第1凸状部15aa及び第2凸状部15abとを有している。また、第1凸状部15aaには突状壁15e(第2の位置決め部の一部)が、第2凸状部15abには、突状壁15f(第2の位置決め部の他の一部)が形成されている。
【0060】
ここで、突状壁15e,15f(第2の位置決め部)は、第1凸状部15aaと第2凸状部15abとがロック溝15dを形成する側の壁とは反対側に形成されている。そして、突状壁15e,15fは、マウントリング11(第3の固定部材)に形成されたロック溝配置孔11c(長孔)の位置を位置決めする。
【0061】
また、円周状壁部12e(第1の位置決め部)は、筒本体12(第1の固定部材)の外周に形成されている。当該円周状壁部12eは、マウントリング11(第3の固定部材)の外周の位置を位置決めして第1の位置決めを行う。
【0062】
そして、マウントリング11(第3の固定部材)に形成されたロック溝配置孔11c(長孔)に、ロック溝ユニット15(第2の固定部材)の一対の凸状部15aが係合することによって第2の位置決めが行われる。
【0063】
この場合において、ロック溝ユニット15(第2の固定部材)はマウントリング11(第3の固定部材)よりも硬い材質で構成されている。
【0064】
以上説明した本実施形態によれば、レンズマウントを構成するマウントリング11(第3の固定部材)は、円周状壁部12e(第1の位置決め部)によって外周の位置が位置決めされる(第1の位置決め)と同時に、突状壁15e,15f(第2の位置決め部)によってロック溝配置孔11c(長孔)の位置が位置決めされる(第2の位置決め)。
【0065】
このように、マウントリング11を複数の位置決め部によって位置決めするように構成したので、カメラマウント側のロックピン(不図示)とロック溝ユニット15のロック溝15dとの係合部分に大きな外力が加わったとしても、当該係合部分の変形を抑止することができ、よって、ロックピン(不図示)とロック溝15dとの間にガタが生じることを抑止することができる。
【0066】
また、カメラマウント側のロックピン(不図示)とロック溝15dとを係合状態としたときに、ロックピン(不図示)に係合するロック溝15dは、マウントリング11の回転規制を行っている。したがって、マウントリング11が回転してレンズ鏡筒1が全体として光軸回りに回転することを抑止できる。
【0067】
つまり、マウントリング11の位置決めを精度良く確実に行うことができるので、ロックピン(不図示)とロック溝15dとの間に生じるガタの発生を抑止できる。
【0068】
また、ロック溝ユニット15(第2の固定部材)はマウントリング11(第3の固定部材)とは別体に別部品として構成すると共に、ロック溝ユニット15(第2の固定部材)は筒本体12(第1の固定部材)とマウントリング11(第3の固定部材)との間に挟まれるように配設したので、装置が大型化することを抑止することができる。
【0069】
さらに、ロック溝ユニット15は、マウントリング11よりも硬い材質の部材を用いて形成したので、カメラマウント側のロックピン(不図示)がロック溝ユニット15のロック溝15dに係合しているときに、当該係合部分に大きな外力が加わったとしても、ロック溝15dの変形を抑止することができる。
【0070】
本発明の一実施形態においては、本発明のレンズマウントを適用し得る機器の一例として、レンズ交換式の撮像装置における交換用レンズ鏡筒を示して説明しているが、本発明のレンズマウントを適用し得る機器としては、上述のレンズ交換式撮像装置に限られることはない。即ち、バヨネット結合で接続される機器同士の間に介在するマウント装置におけるマウントロック機構に対して広く適用することができる。
【0071】
本発明のレンズマウントは、本実施形態で例示されるレンズ鏡筒のみに限らず、例えば、撮像装置本体に着脱自在に構成され略筒形状を有する形態のアクセサリ類であって、例えばリアコンバージョンレンズ(テレコンバーター)や接写用中間リング(エクステンションチューブ)又はレンズアダプター等に対しても全く同様に適用することができる。
【0072】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0073】
1……レンズ鏡筒
11……マウントリング
11a……ビス挿通孔
11b……ビス孔
11c……ロック溝配置孔
11d……開口部
11e……外向フランジ部
11f……内向フランジ部
11g……バヨネット爪
12……筒本体
12a……ビス孔
12ba,12bb……位置決めピン
12c……ビス孔
12d……内向フランジ部
12e……円周状壁部
13……固定筒
13a……ビス挿通孔
13b……外向フランジ部
13b……フランジ部
13c……切欠部
14……接点ユニット
14a……電子接点
15……ロック溝ユニット
15a……凸状部
15aa……第1凸状部
15ab……第2凸状部
15ba……嵌合孔
15bb……切欠部
15c……ビス挿通孔
15d……ロック溝
15e,15f……突状壁
16……撮像光学系
21,22,23……ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6