(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/87 20060101AFI20230131BHJP
A61K 8/893 20060101ALI20230131BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230131BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230131BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20230131BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/893
A61K8/06
A61K8/27
A61K8/29
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018193008
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】永禮 由布子
(72)【発明者】
【氏名】田代 麻友里
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100250(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002751(WO,A1)
【文献】特開2018-016584(JP,A)
【文献】特開2013-082686(JP,A)
【文献】[オンライン],-Hydrogelator-ADEKA NOL GT-930,TECHNICAL INFORMATION,株式会社ADEKA,2013年06月03日,p. 1-5,https://www.adeka.co.jp/en/chemical/catalog/pdf/adeka_gt930.pdf,インターネット:<URL:https://www.adeka.co.jp/en/chemical/catalog/pdf/adeka_gt930.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記の一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は、炭素数24~36の脂肪族炭化水素基であり、mは、0~1000の数を表す)で表されるモノヒドロキシ化合物(I)、下記の一般式(2):
【化2】
(式中、nは、2~1000の数を表す)で表されるポリエチレン
グリコール(II)、下記の一般式(3):
【化3】
(式中、R
2は、炭素数5~12の脂肪族炭化水素基を表す)で表されるモノグリセリルエーテル化合物(III)、及び下記の一般式(4):
【化4】
(式中、R
3は、炭素数4~13の炭化水素基を表し、qは、2又は3の数を表す)で表されるイソシアネート化合物(IV)を反応させて得られるウレタン型ポリマーからなる特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン;
(B)HLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン、及び
(C)疎水化処理粉末を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
(D)低級アルコール及び/又はポリオールを更に含有する、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
(E)HLB8~18の非イオン性
界面活性剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記(A)特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタンが、ポリウレタン-59である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記(C)疎水性処理粉末が、トリエトキシカプリリルシラン、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン又は金属石鹸で処理された金属酸化物粉末である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。より詳しくは、特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタンを配合して弾力のある使用感触を持ちながら、内油相中に疎水化処理粉末を安定に保持し、なおかつ離水を生じない水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品等の技術分野においては、その剤型や安定性保持あるいは使用感触の改善等のために種々の増粘剤が配合されている。肌に塗布した際に爽やかでみずみずしい感触が得られる水中油型乳化化粧料においては、水溶性増粘剤が汎用されている。中でも、疎水変性ポリエーテルウレタンからなる会合性増粘剤は、粘度安定性だけでなく使用性にも優れたタイプの水溶性増粘剤として知られる。
【0003】
特許文献1には、疎水変性ポリエーテルウレタンからなる会合性増粘剤と、水溶性エチレン性不飽和モノマーを分散相に溶解し分散相中にてラジカル重合して得られるミクロゲルからなる増粘剤とを所定の配合量で組み合わせることにより、相乗的に増大した増粘効果が得られることに加えて、弾力性に優れた新規な感触が得られることが記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された疎水変性ポリエーテルウレタンである(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを配合した乳化化粧料はべたつきを生じることがあり、無水ケイ酸等の粉末を添加するとべたつきは抑制されるが、離水を生じてしまうため、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーとともに配合できる粉末量は限られていた(特許文献2)。
【0005】
一方、BB(Blemish Balm)クリームは、肌補正効果と肌保護(紫外線防御)効果を有する化粧料として注目され、BBクリームを水中油型に調製する試みもなされている(特許文献3)。しかし、粉末を含有する水中油型乳化化粧料に会合性増粘剤である(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを配合すると、増粘効果が十分に発揮されず、使用感触及び安定性も低下するという問題があった。
【0006】
特許文献4では、増粘多糖及び特定の分散剤を更に配合することにより前記の問題を解決しているが、従来の(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーで増粘した系は静置粘度が低く、長期保管すると水のしみだし(離水)が生ずることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-291026号公報
【文献】特開2014-040385号公報
【文献】特開2013-193999号公報
【文献】特開2009-234917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、疎水変性ポリエーテルウレタンからなる会合性増粘剤で増粘した水中油型乳化化粧料が元来有しているみずみずしく弾力のある滑らかな使用感を損なうことなく、疎水化処理粉末を内油相中に安定に保持し、長期保管しても離水(水のしみだし)を生じない水中油型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、会合性増粘剤として特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタンを配合し、中程度(5~14)のHLB(Si)を持つポリエーテル変性シリコーンを組み合わせることにより、相当量の疎水化処理粉末を配合しても離水(水のしみだし)を生じず、なおかつ独特の使用感を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン、
(B)HLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン、及び
(C)疎水化処理粉末を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型乳化化粧料は、疎水変性ポリエーテルウレタンが有する形状回復能及び独特の弾力のある使用感触を発揮することに加えて、従来の疎水変性ポリエーテルウレタン配合化粧料で見られた水のしみだし(離水)が生じずに安定である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水中油型乳化化粧料は、(A)特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン、(B)HLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン、及び(C)疎水化処理粉末を必須成分として含有する。
以下、本発明について詳述する。
【0013】
(A)特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン
本発明で用いられる特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン(A成分)は、親水基部を骨格とし、末端に疎水性部分をもつウレタン系コポリマー(会合性増粘剤ともいう)であり、水性媒体中ではコポリマーの疎水性部分同士が会合し、親水部がループ状及び/又はブリッジ状をなし、増粘作用を発揮すると考えられている。
【0014】
本発明における特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタンは、下記の一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は、炭素数24~36の脂肪族炭化水素基であり、mは、0~1000の数を表す)で表されるモノヒドロキシ化合物(I)、
下記の一般式(2):
【化2】
(式中、nは、2~1000の数を表す)で表されるポリエチレン
グリコール(II)、下記の一般式(3):
【化3】
(式中、R
2は、炭素数5~12の脂肪族炭化水素基を表す)で表されるモノグリセリルエーテル化合物(III)、及び下記の一般式(4):
【化4】
(式中、R
3は、炭素数4~13の炭化水素基を表し、qは、2又は3の数を表す)で表されるイソシアネート化合物(IV)を反応させて得られるウレタン型ポリマーである。
【0015】
本発明で使用するウレタン型ポリマーは、上記の(I)~(IV)の化合物を反応させて得られるものである。具体的には(I)、(II)及び(III)の化合物が各々含有する水酸基と、(IV)が含有するイソシアネート基とが反応する。水酸基を有する化合物が3種類あり、そのうち2種類が2価であるため、得られるポリマーは複雑な構造になり、適切な一般式で表すことができない。
【0016】
本発明で使用するウレタン型ポリマーの製造方法は、各々の化合物を一括で反応させても分割して反応させてもよく、4つの化合物が反応すれば特に規定されない。しかし、イソシアネート化合物(IV)が完全に反応した後に(I)~(III)のいずれかの化合物を反応系内に入れても反応しないため、(I)~(III)の化合物を予め混合させ、そこにイソシアネート化合物(IV)を添加して反応させることが好ましい。具体的には、(I)~(III)の化合物を反応系内に入れて40~100℃、好ましくは60~80℃で溶融混合し、同温度を保持したままイソシアネート化合物(IV)を反応系内に添加して反応させる。その後、反応が完了するまで30分~3時間同温度で熟成させればよい。
【0017】
上記反応に際し、各成分の配合比は特に規定されないが、粘性調整剤としての機能が良好になること及び反応を制御しやすいことから、ポリエチレングリコール(II)10モルに対して、モノヒドロキシ化合物(I)が10~30モル、モノグリセリルエーテル化合物(III)が5~20モル及びイソシアネート化合物(IV)が20~50モルであることが好ましく、ポリエチレングリコール(II)10モルに対して、モノヒドロキシ化合物(I)が15~25モル、モノグリセリルエーテル化合物(III)が8~15モル及びイソシアネート化合物(IV)が25~40モルであることがより好ましい。
これらのウレタン型ポリマーの詳細については、特許第6159738号公報に記載されている。
【0018】
本発明において必須成分となる特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン(A成分)としては、前記モノヒドロキシ化合物(I)がテトラデシルオクタデカノールのポリエチレングリコールエーテル(テトラデシルオクタデセス-100)、前記ポリエチレングリコール(II)がPEG-240、前記モノグリセリルエーテル化合物(III)がエチルヘキシルグリセリン、前記イソシアネート化合物(IV)がヘキサメチレンジイソシアネートであるウレタン型ポリマーが特に好ましい。
【0019】
テトラデシルオクタデセス-100、PEG-240、エチルヘキシルグリセリン、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の共重合体(コポリマー)は、化粧品表示名称(INCI名)で「ポリウレタン-59」と称される。ポリウレタン-59は、本発明における特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン(A成分)として特に好ましく使用される。
【0020】
ポリウレタン-59は市販品を使用してもよく、例えば、ADEKA社製の「アデカノールGT-930」が好ましく用いられる。この製品は、ポリウレタン-59(約30質量%)、ブチレングリコール(約55質量%)、トコフェロール(約0.05質量%)及び水(約14.95質量%)を含む混合物(以下「ポリウレタン-59含有組成物」とも称する)として提供される。
【0021】
本発明の化粧料における(A)特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン(例えば、ポリウレタン-59)の配合量は、その実分で、組成物の0.1~5質量%、好ましくは0.2~3質量%とする。
【0022】
本発明の化粧料は、A成分(例えば、ポリウレタン-59)に加えて、前記特定構造を持たない別の疎水変性ポリエーテルウレタンを含んでいてもよい。別の疎水変性ポリエーテルウレタンの好ましい例として、従来から化粧料に汎用されている(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーが挙げられる。市販品としては、ADEKA社製の「アデカノールGT-700」あるいは「アデカノールGT-730」が例示できる。
【0023】
本発明の化粧料において、配合される疎水変性ポリエーテルウレタン全量に占める特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタン(例えば、ポリウレタン-59)の割合は特に限定されないが、水のしみだしを確実に抑制するという観点から、疎水変性ポリエーテルウレタン全量の30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上とする。
【0024】
(B)HLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン
本発明で用いられるHLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン(B成分)は、ポリオキシエチレン(POE)及びポリオキシプロピレン(POP)から選択されるポリオキシアルキレン基を有するシリコーン誘導体である。特に、下記一般式で表されるポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0025】
【化5】
上記式中、mは1~1000、好ましくは5~500であり、nは1~40である。また、m:nは200:1~1:1であることが好ましい。また、aは5~50、bは0~50である。
【0026】
ポリエーテル変性シリコーンの分子量は、特に限定されないが、好適には3000~60000、特に好適には3000~40000の範囲である。低分子量のポリエーテル変性シリコーンを使用することにより、特に優れた使用性を実現することができる。
【0027】
本発明に使用されるポリエーテル変性シリコーンは、そのHLB(Si)が5~14、好ましくは7~14のものから選択される。本明細書におけるHLB(Si)とは、下記の計算式で求められる値である。
【0028】
【0029】
HLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン(B成分)は、従来から化粧料等に用いられているものから選択される1種又は2種以上を使用することができる。具体例としては、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-30/10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン等が挙げられる。
【0030】
本発明で使用するHLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン(B成分)は市販されているものでもよく、以下のものが例示できるが、これらに限定されない。
・商品名BY11-030(東レ・ダウコーニング社製:PEG/PPG-19/19ジメチコン、HLB(Si)=7.7)
・商品名SH3773M(東レ・ダウコーニング社製:PEG-12ジメチコン、HLB(Si)=7.7)
・商品名KF6013(信越化学工業株式会社製:PEG-9ジメチコン、HLB(Si)=10)
・商品名BY25-339(東レ・ダウコーニング社製:PEG/PPG-30/10ジメチコン、HLB(Si)=12.2)
・商品名KF6011(信越化学工業株式会社製:PEG-11メチルエーテルジメチコン、HLB(Si)=12.7)
・商品名SH3771M(東レ・ダウコーニング社製:PEG-12ジメチコン、HLB(Si)=13)
【0031】
本発明の化粧料におけるHLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン(B成分)の配合量は、化粧料全量に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、又は0.5質量%以上とするのが好ましく、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下とするのが好ましい。具体的な配合量範囲としては、0.1~10質量%、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%である。配合量が0.1質量%未満である場合、下記の疎水化処理粉末(C成分)が均一に分散せず、乳化粒子径が大きくなって不安定になる場合があり、10質量%を超えて配合した場合には、使用性がべたつくことがある。
【0032】
(C)疎水化処理粉末
本発明の水中油型乳化化粧料における疎水化処理粉末(成分C)は、金属酸化物等の粉末粒子を基材とし、その表面に疎水化処理を施した粉末粒子である。
【0033】
疎水化処理粉末の基材としては、化粧料に使用される粉末成分であれば特に限定されないが、金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等が例示される。また、複数の材料からなる複合粉末粒子も基材として用いることができる。
【0034】
基材となる金属酸化物等の粉末粒子の形状や大きさは特に限定されず、微粒子状(平均粒子径=約1μm以下)及び顔料級を含む。形状は、例えば、球状、板状、花びら状、薄片状、棒状、紡錘状、針状、不定形状等の形状を採ることが可能である。
【0035】
これらの基材粉末粒子に対して施される疎水化処理剤としては、化粧料等に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン、アルキルシラン、アミノ酸、リポアミノ酸、金属石鹸、レシチン、アルギン酸などが例示される。特に、安定な分散性の観点から、シリコーン系処理剤または金属石鹸を選択するのが好ましく、中でもシリコーン系処理剤が好ましい。金属石鹸としては、ステアリン酸Al、ジミリスチン酸Al等が挙げられる。シリコーン系処理剤としては、ハイドロゲンジメチコン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、トリエトキシカプリリルシラン等のアルキルシラン;トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等による処理が挙げられる。これらの中でも、トリエトキシカプリリルシラン、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコンが特に好ましい。
【0036】
本発明の水中油型乳化化粧料における疎水化処理粉末(C成分)の配合量は、化粧料全量に対して、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上であり、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下である。具体的な配合量範囲としては、0.5~35質量%、好ましくは3~25質量%、より好ましくは5~20質量%である。配合量が0.5質量%未満であると粉末を含有させたことによる効果が十分に発揮されず、35質量%を超えて配合すると、きしみ感、よれ、べたつき等、使用性に問題を生じる傾向がある。
【0037】
本発明の水中油型乳化化粧料の内相を構成する油分は特に限定されず、常温常圧で液状又は固形状又は半固形状の油分(非揮発性油分)及び揮発性油分を含みうる。
非揮発性油分とは、約250℃を超える沸点を有する油分と簡便に定義することができ、炭化水素油、エステル油、植物油、高級アルコール、高級脂肪酸、及び油性の紫外線吸収剤、シリコーン油が含まれる。
【0038】
炭化水素油としては、流動パラフィン、パラフィン、スクワラン、スクワレン、プリスタン、ワセリン等が挙げられる。
【0039】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0040】
植物油としては、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、落花生油、アーモンド油、大豆油、茶実油、ホホバ油、胚芽油等が挙げられる。
【0041】
高級アルコールとしては、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ホホバアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール等が、高級脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0042】
油性の紫外線吸収剤としては、化粧品に通常使用されているものであれば特に限定されない。例えば、オクトクリレン、オクチルメトキシシンナメート、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2-ヒドロキシ4-メトキシベンゾフェノン、ベンザルマロネート、ベンゾトリアゾール等から選ばれる紫外線吸収剤を適宜組み合わせて用いることができる。
【0043】
揮発性炭化水素油としては、比較的低分子量の炭化水素油(沸点が約250℃以下)を用いることができ、具体的には、軽質流動性イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン等が例示される。
【0044】
シリコーン油は、揮発性及び非揮発性の直鎖状、分岐鎖状又は環状のシリコーン油から選択される。例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシクロシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(POE)シロキサン共重合体、高重合メチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(POP)シロキサン共重合体、テトラデカメチルヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、デカメチルテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルシクロヘプタシロキサン等を挙げることができる。
【0045】
本発明の水中油型乳化化粧料における油分の配合量は特に限定されないが、通常は3~25質量%、好ましくは5~20質量%である。
なお、本発明の化粧料にあっては、油分にエステル油を配合するのが好ましく、エステル油の配合量を疎水化処理粉末(C成分)の配合量に対して約30質量%以上とするのが好ましく、より好ましくは約50質量%以上とする。
【0046】
本発明の水中油型乳化化粧料の外相を構成する水性成分は、水及び水溶性成分を含む。特に、エタノール等の低級アルコール(炭素数5以下の一価アルコール)及び/又は1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のポリオール(D成分)を配合するのが系の安定性の点から好ましい。低級アルコール及びポリオールの配合量は、0.1~20質量%程度とするのが好ましい。
【0047】
本発明の化粧料は、HLBが8~18、好ましくはHLBが10~18の非イオン性界面活性剤(E成分)をさらに配合することにより安定性が更に向上する。
【0048】
HLBが8~18の非イオン性界面活性剤は、特に限定されないが、エチレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤が特に好ましく、例えば、POE(10~50モル)フィトステロールエーテル、POE(10~50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10~50モル)2-オクチルドデシルエーテル、POE(10~50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)オレイルエーテル、POE(10~50モル)セチルエーテル、POE(5~30モル)POP(5~30モル)2-デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)POP(2~30モル)セチルエーテル、POE(20~60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10~60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10~80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10~30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20~100)水添ヒマシ油誘導体等が挙げられる。なお、「POE」はポリオキシエチレン、「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。更なる具体例としては、PEG-25水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、ラウリン酸PEG-40水添ヒマシ油;ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタン等が挙げられる。
【0049】
本発明の水中油型乳化化粧料には、前記各成分に加えて、水中油型乳化化粧料、特にBBクリーム等に配合し得る他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
【0050】
他の任意成分としては、限定されないが、例えば、親水性増粘剤、親油性増粘剤、保湿剤、ベンジリデンショウノウ誘導体(例えば、テレフタリリデンカンフルスルホン酸等)やフェニルベンゾイミダゾール誘導体などの水溶性紫外線吸収剤、pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、エモリエント剤、植物抽出液、香料、色素、各種薬剤などを挙げることができる。
【0051】
本発明の水中油型乳化化粧料は常法に従って製造することができる。例えば、水相成分と油相成分を別々に混合し、油相成分混合物中に疎水化処理粉末を加えてホモミキサー等を使用して分散処理を実施し、粉末を分散させた油相混合物を水相混合物に添加してホモミキサー等を用いて乳化することにより製造できる。
【0052】
本発明の化粧料は、従来のような低HLB(5未満)の界面活性剤と揮発性油分との組み合わせによる乳化物に比較して乳化粒子径が小さく安定である。本発明の化粧料における内油相の乳化粒子径は、特に限定されないが、0.5~5μmとするのが好ましい。乳化粒子径は安定性の点から小さい方が好ましく、例えば、4μm以下、3.5μm以下、あるいは3μm以下とするのが更に好ましい。乳化粒子径が5μmを超えると分散安定性が低下する傾向が見られる。
【0053】
本発明の化粧料は、内油相中に疎水化粉末が安定に分散され、長時間静置しても水のしみだしが見られない。
【実施例】
【0054】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0055】
下記の表1~3に掲げた組成を有する水中油型乳化化粧料を調製した。具体的には、水相部、油相部をそれぞれ均一になるまで混合し、粉末部を油相部にホモミキサーを用いて分散し、これを水相部に添加して、ホモミキサーを用いて乳化することにより調製した。
得られた各例の化粧料について、形状回復能、水のしみだし、及び粉末の凝集を以下の基準に従って評価した。
【0056】
<評価基準>
(1)形状回復能
プラスチック製のクリームジャー容器(容量50ml)の9分目まで充填した各例の化粧料の表面を、実験用の薬さじでひとすくいすくった後、常温で1時間放置した時点での外観を目視で観察した。
○:1時間後に表面が平滑になっていた。
×:1時間後に表面が平滑になっていなかった。
【0057】
(2)水のしみだし
プラスチック製のクリームジャー容器(容量50ml)の9分目まで充填した各例の化粧料を常温で3か月保存した時点で表面を目視観察し、水のしみだしの有無を確認した。
あり:水のしみだしが見られた。
なし:水のしみだしが見られなかった。
【0058】
(3)粉末の凝集
プラスチック製のクリームジャー容器(容量50ml)の9分目まで充填した各例の化粧料を目視及び光学顕微鏡(400倍)を用いて観察することにより判定した。
◎:目視でも顕微鏡でも粉末の凝集がみられなかった。
○:目視では粉末の凝集がみられないが、顕微鏡では粉末の凝集が一部みられた
△:目視でも顕微鏡でも粉末の凝集がみられた。
×:粉末が大きな凝集体を作り、組成物が分離した。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
表1の結果から明らかなように、(A)特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタンとしてポリウレタン-59を配合し、なおかつ(B)HLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーンを用いた実施例1及び2は、形状回復能に優れ、粉末の凝集が全く見られず、水のしみだしも生じなかった。しかしながら、HLB(Si)が低い(4.5)のポリエーテル変性シリコーンを用いた場合は、疎水化処理粉末を良好に分散させることができなかった(比較例1)。一方、疎水変性ポリエーテルウレタンとして(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーのみを含む従来の化粧料(比較例2)では、HLB(Si)の低いポリエーテル変性シリコーンを用いても粉末の凝集をある程度は抑制でき、形状回復能も有するが、水のしみだしという問題は解消できなかった。
【0063】
表2に示した結果では、(A)特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタンとしてのポリウレタン-59及び(B)HLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーンを配合した化粧料では、疎水化処理粉末の表面処理剤をトリエトキシカプリリルシラン(実施例1及び2)から、ハイドロゲンジメチコン、ジメチコン、または金属石鹸に変更しても良好な結果が得られた(実施例3~5)、特に、シリコーン系の表面処理剤を用いた場合には粉末の凝集が完全に抑制された。
【0064】
表3の結果から明らかなように、特定構造の疎水変性ポリエーテルウレタンであるポリウレタン-59のみ、あるいはそれに加えて別の疎水変性ポリエーテルウレタン((PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー)を配合した場合には、水のしみだしの抑制及び粉末分散性(凝集の抑制)ともに優れていた。一方、ポリウレタン-59を含まず、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーのみを配合した比較例3では、水のしみだしが抑制できなかった。また、別のウレタン系増粘剤のみを配合した比較例4では、水のしみだしを生ずることに加えて、形状回復能も示さないことがわかった。
【0065】
以下に、本発明の化粧料の他の処方例を例示する。
【0066】
処方例1:日焼け止めクリーム
配合成分 配合量
イオン交換水 残余
エチルアルコール 5
グリセリン 4
PEG-60水添ヒマシ油 1.5
キサンタンガム 0.5
ポリウレタン-59含有組成物 2
(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
アセチル化ヒアルロン酸 0.01
キレート剤 0.05
緩衝剤 適量
テレフタリリデンジカンフルスルホン酸 2
中和剤 適量
防腐剤 適量
PEG-12ジメチコン 2
ビタミンA誘導体 0.05
ホモサレート 5
サリチル酸エチルヘキシル 5
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2
エチルヘキシルトリアジン 1
コハク酸ジオクチル 2
トリエトキシカプリリルシラン処理微粒子酸化亜鉛 7
ハイドロゲンジメチコン処理微粒子酸化チタン 5
合計 100
【0067】
処方例2:美白ファンデーション
配合成分 配合量
イオン交換水 残余
ジプロピレングリコール 3
エチルアルコール 5
グリセリン 4
PEG-40水添ヒマシ油 1
サクシノグリカン 0.2
ポリウレタン-59含有組成物 3
(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー 0.2
トラネキサム酸 2
キレート剤 0.05
緩衝剤 適量
防腐剤 適量
PEG-12ジメチコン 2
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7.5
エチルヘキサン酸セチル 3.0
セバシン酸ジイソプロピル 5.0
トリエトキシカプリリルシラン処理顔料級酸化チタン 10
トリエトキシカプリリルシラン処理酸化鉄(赤) 0.4
トリエトキシカプリリルシラン処理酸化鉄(黄) 1
トリエトキシカプリリルシラン処理酸化鉄(赤) 0.01
デンプン粉末 3
合計 100