(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】磁気ディスク基板用研磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
G11B 5/84 20060101AFI20230131BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20230131BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230131BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G11B5/84 A
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
(21)【出願番号】P 2019008288
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000178310
【氏名又は名称】山口精研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】安藤 順一郎
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-008846(JP,A)
【文献】特開2012-198976(JP,A)
【文献】特開2010-135052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/84
C09K 3/14
B24B 37/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、水を含有する研磨剤組成物であり、
前記水溶性高分子化合物が、少なくともカルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体であり、
前記水溶性高分子化合物のカルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位とスルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の量比が、mol比で9
0:
10~
10:9
0の範囲であり、
前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1,000~1,000,000である
無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の仕上げ研磨に用いられる磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項2】
前記コロイダルシリカの平均粒子径(D50)が1~100nmであり、組成物中の濃度が1~50質量%である請求項1に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が5,000~600,000である請求項1または2に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項4】
前記研磨剤組成物が、さらに界面活性剤を含有し、
前記界面活性剤がスルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン界面活性剤である請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項5】
前記スルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する前記陰イオン界面活性剤は、ナフタレンスルホン酸系化合物、リグニンスルホン酸系化合物、芳香族アミノスルホン酸系化合物およびそれらの塩から選ばれる少なくとも一種である請求項4に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項6】
前記ナフタレンスルホン酸系化合物である前記陰イオン界面活性剤は、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物およびメチルナフタレンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項5に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項7】
前記カルボン酸基を有する単量体が、アクリル酸またはその塩、メタクリル酸またはその塩から選ばれる単量体である請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項8】
前記スルホン酸基を有する単量体が、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、およびこれらの塩から選ばれる単量体である請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項9】
前記水溶性高分子化合物である少なくともカルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする前記共重合体が、カルボン酸基を有する単量体とスルホン酸基を有する単量体およびアミド基を有する単量体を必須単量体とする共重合体である請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項10】
前記アミド基を有する単量体がアクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドから選ばれる単量体である請求項9に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項11】
前記研磨剤組成物が酸および/またはその塩をさらに含有し、pH値(25℃)が0.1~4.0の範囲にある請求項1~10のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項12】
前記研磨剤組成物が酸化剤をさらに含有している請求項1~11のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、ハードディスクといった磁気記録媒体などの電子部品の研磨に使用される研磨剤組成物に関する。特に、ガラス磁気ディスク基板やアルミニウム磁気ディスク基板などの磁気記録媒体用基板の表面研磨に使用される研磨剤組成物に関する。さらには、アルミニウム合金製の基板表面に無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成した磁気記録媒体用アルミニウム磁気ディスク基板の表面研磨に使用される研磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム磁気ディスク基板の無電解ニッケル-リンめっき皮膜表面を研磨するための研磨剤組成物として、磁気記録密度向上のため、種々の研磨特性向上が求められている。例えば、スクラッチについては、スクラッチ部分が書き込みや読み込みのエラー原因となったり、スクラッチの周りに生じたバリの部分で、ヘッドの衝突等の原因となったりすることもある。
【0003】
そこで、スクラッチ低減の観点から、研磨剤組成物の機械研磨を担う砥粒部分として、コロイダルシリカがアルミニウム磁気ディスク基板の研磨に使用されるようになってきている。その際、工業的な研磨においては、研磨剤組成物の機械研磨を担う砥粒部分と、化学研磨を担う薬剤部分とが、実際の研磨の直前に混合して使用されることが多い。
【0004】
しかし、砥粒部分としてのコロイダルシリカと薬剤成分が混合されると、コロイダルシリカは凝集傾向になる。この対策として、粗大粒子や凝集粒子の除去、研磨剤の腐食性の調整(特許文献1)、粒子の形状の調整(特許文献2)、凝集粒子の含有量の調整(特許文献3)などの提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-120850号公報
【文献】特開2009-172709号公報
【文献】特開2010-170650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに磁気記録密度向上の観点から、スクラッチ低減だけでなく、新たにハレーション低減とうねり低減も求められている。ここでいうハレーションとは、後述の実施例に記載の基板全表面欠陥検査機((株)日立ハイテクファインシステムズ社製NS2000H)で特定の検査条件において、基板表面に微細な欠陥として検出することができ、ハレーションカウントとして定量評価できる。
【0007】
ハレーションとは、基板表面のなんらかの微細な不均一性が基板の広い範囲に存在することに起因する現象と考えられており、その原因としては、研磨パッド、キャリア、基板、研磨剤組成物それぞれの持つ特性の不調和が考えられている。最近、ハレーションの存在が磁気記録密度向上の阻害要因として新たに問題となってきており、ハレーション低減が求められている。
【0008】
一方、従来、基板表面のうねり低減が磁気記録密度向上の観点から求められている。うねりの中でも長波長うねり(波長:500μm~5mm)と中波長うねり(波長:100~500μm)を低減することは、従来、磁気記録密度向上の観点から解決すべき課題として検討されてきた。最近の技術進歩に伴い、短波長うねり(波長:20~100μm)の低減も磁気記録密度向上の観点から解決すべき課題となってきている。
【0009】
本発明の課題は、生産性を低下させることなく、研磨後の基板の短波長うねり低減のみならず、ハレーション低減も達成するための磁気ディスク基板用研磨剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、以下の磁気ディスク基板用研磨剤組成物を用いることにより、生産性を低下させることなく、短波長うねり低減とハレーション低減を実現し、本発明に到達した。
【0011】
[1] コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、水を含有する研磨剤組成物であり、前記水溶性高分子化合物が、少なくともカルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体であり、前記水溶性高分子化合物のカルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位とスルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の量比が、mol比で90:10~10:90の範囲であり、前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1,000~1,000,000である無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の仕上げ研磨に用いられる磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0012】
[2] 前記コロイダルシリカの平均粒子径(D50)が1~100nmであり、組成物中の濃度が1~50質量%である前記[1]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0013】
[3] 前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が5,000~600,000である前記[1]または[2]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0014】
[4] 前記研磨剤組成物が、さらに界面活性剤を含有し、前記界面活性剤がスルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン界面活性剤である前記[1]~[3]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0015】
[5] 前記スルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する前記陰イオン界面活性剤は、ナフタレンスルホン酸系化合物、リグニンスルホン酸系化合物、芳香族アミノスルホン酸系化合物およびそれらの塩から選ばれる少なくとも一種である前記[4]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0016】
[6] 前記ナフタレンスルホン酸系化合物である前記陰イオン界面活性剤は、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物およびメチルナフタレンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である前記[5]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0017】
[7] 前記カルボン酸基を有する単量体が、アクリル酸またはその塩、メタクリル酸またはその塩から選ばれる単量体である前記[1]~[6]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0018】
[8] 前記スルホン酸基を有する単量体が、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、およびこれらの塩から選ばれる単量体である前記[1]~[7]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0019】
[9] 前記水溶性高分子化合物である少なくともカルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする前記共重合体が、カルボン酸基を有する単量体とスルホン酸基を有する単量体およびアミド基を有する単量体を必須単量体とする共重合体である前記[1]~[8]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0020】
[10] 前記アミド基を有する単量体がアクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドから選ばれる単量体である前記[9]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0021】
[11] 前記研磨剤組成物が酸および/またはその塩をさらに含有し、pH値(25℃)が0.1~4.0の範囲にある前記[1]~[10]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0022】
[12] 前記研磨剤組成物が酸化剤をさらに含有している前記[1]~[11]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明の磁気ディスク基板用研磨剤組成物は、研磨速度を維持しながら、研磨後の短波長うねり低減とハレーション低減を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲において、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0026】
1.研磨剤組成物
本発明の磁気ディスク基板用研磨剤組成物は、コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、水を含有する研磨剤組成物であり、任意成分として界面活性剤、酸および/またはその塩、酸化剤を含有するものである。
【0027】
1-1.コロイダルシリカ
本発明で使用されるコロイダルシリカは、平均粒子径(D50)が1~100nmであることが好ましい。より好ましくは、2~80nmである。コロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリ金属塩を原料とし、当該原料を水溶液中で縮合反応させて粒子を成長させる水ガラス法で得られる。またはテトラエトキシシラン等のアルコキシシランを原料とし、当該原料をアルコール等の水溶性有機溶媒を含有する水中で、酸またはアルカリでの加水分解による縮合反応によって粒子を成長させるアルコキシシラン法でも得られる。
【0028】
コロイダルシリカは球状、鎖状、金平糖型、異形型などの形状が知られており、水中に一次粒子が単分散してコロイド状をなしている。本発明で使用されるコロイダルシリカとしては、球状または球状に近いコロイダルシリカが好ましい。研磨剤組成物中のコロイダルシリカの濃度は、1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、2~40質量%である。
【0029】
1-2.水溶性高分子化合物
本発明で使用される水溶性高分子化合物は、少なくともカルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体である。カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位とスルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の量比が、mol比で95:5~5:95の範囲である。また、水溶性高分子化合物は、重量平均分子量が1,000~1,000,000である。以下、詳しく説明する。
【0030】
1-2-1.カルボン酸基を有する単量体
カルボン酸基を有する単量体としては、不飽和脂肪族カルボン酸およびその塩が好ましく用いられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0031】
水溶性高分子化合物中で、カルボン酸基を有する単量体が、酸の状態で存在する割合が多いか、塩の状態で存在する割合が多いかについては、水溶性高分子化合物のpH値で評価できる。酸として存在する割合が多ければpH値は低くなるし、塩として存在する割合が多ければpH値は高くなる。本発明においては、例えば、濃度10質量%の水溶性高分子化合物水溶液におけるpH値(25℃)が1~13の範囲の水溶性高分子化合物を用いることができる。
【0032】
1-2-2.スルホン酸基を有する単量体
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸およびこれらの塩などが挙げられる。好ましくは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩などが挙げられる。
【0033】
1-2-3.その他の単量体
本発明で使用される水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体が必須単量体であるが、これら以外の単量体も使用することができる。例えば、アミド基を有する単量体も使用することができる。すなわち、本発明で使用される水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体とスルホン酸基を有する単量体およびアミド基を有する単量体を必須単量体とする共重合体であることも好ましい。アミド基を有する単量体としては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドなどを使用することができる。
【0034】
N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミドの具体例としては、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-iso-プロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-iso-ブチルアクリルアミド、N-sec-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-iso-プロピルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-iso-ブチルメタクリルアミド、N-sec-ブチルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0035】
1-2-4.共重合体
本発明で使用される水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体であり、水溶性高分子化合物のカルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位とスルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の量比が、mol比で95:5~5:95の範囲である。すなわち、共重合体中の、カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合は、5~95mol%であり、好ましくは8~92mol%であり、さらに好ましくは10~90mol%である。スルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合は、5~95mol%であり、好ましくは8~92mol%であり、さらに好ましくは10~90mol%である。
【0036】
1-2-5.水溶性高分子化合物の製造方法
水溶性高分子化合物の製造方法は特に制限されないが、水溶液重合法が好ましい。水溶液重合法によれば、均一な溶液として水溶性高分子化合物を得ることができる。上記水溶液重合の重合溶媒としては、水性溶媒であることが好ましく、特に好ましくは水である。
また、上記単量体成分の溶媒への溶解性を向上させるために、各単量体の重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒を適宜加えても良い。上記有機溶媒としては、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類が挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
以下に上記水性溶媒を用いた水溶性高分子化合物の製造方法を説明する。重合反応では、公知の重合開始剤を使用できるが、特にラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。ラジカル重合開始剤として、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、過酸化水素等の水溶性過酸化物、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等の油溶性過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ化合物が挙げられる。これらの過酸化物系のラジカル重合開始剤は、1種類のみ使用しても、または2種類以上併用してもよい。上述した過酸化物系のラジカル重合開始剤の中でも、生成する水溶性高分子化合物の分子量の制御が容易に行えることから、過硫酸塩やアゾ化合物が好ましく、アゾビスイソブチロニトリルが特に好ましい。
【0038】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、水溶性高分子化合物の全単量体合計質量に基づいて、0.1~15質量%、特に0.5~10質量%の割合で使用することが好ましい。この割合を0.1質量%以上にすることにより、共重合率を向上させることができ、15質量%以下とすることにより、水溶性高分子化合物の安定性を向上させることができる。
【0039】
また、場合によっては、水溶性高分子化合物は、水溶性レドックス系重合開始剤を使用して製造してもよい。レドックス系重合開始剤としては、酸化剤(例えば上記の過酸化物)と、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、ハイドロサルファイトナトリウム等の還元剤や、鉄明礬、カリ明礬等の組み合わせを挙げることができる。
【0040】
水溶性高分子化合物の製造において、分子量を調整するために、連鎖移動剤を重合系に適宜添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-プロパンチオール、2-メルカプトエタノール、およびチオフェノール等が挙げられる。
【0041】
水溶性高分子化合物を製造する際の重合温度は、特に制限されないが、重合温度は60~100℃で行うのが好ましい。重合温度を60℃以上にすることで、重合反応が円滑に進行し、かつ生産性に優れるものとなり、100℃以下とすることで、着色を抑制することができる。
【0042】
また、重合反応は、加圧または減圧で行うことも可能であるが、加圧あるいは減圧反応用の設備にするためのコストが必要になるので、常圧で行うことが好ましい。重合時間は2~20時間、特に3~10時間程度で行うことが好ましい。
【0043】
重合反応後、必要に応じて塩基性化合物で中和を行う。中和に使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類等が挙げられる。中和後のpH値(25℃)は、水溶性高分子化合物濃度が10質量%の水溶液の場合、2~9が好ましく、さらに好ましくは3~8である。
【0044】
1-2-6.重量平均分子量
本発明で使用される水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体とスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体であり、重量平均分子量は1,000~1,000,000であり、好ましくは3,000~800,000であり、さらに好ましくは5,000~600,000である。なお、水溶性高分子化合物の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリアクリル酸換算で測定したものである。水溶性高分子化合物の重量平均分子量が、1,000未満の場合は、研磨後のうねりが悪化する。また、1,000,000を超える場合には、水溶液の粘度が高くなり取扱いが困難になる。
【0045】
1-2-7.濃度
水溶性高分子化合物の研磨剤組成物中の濃度は、好ましくは固形分換算で0.0001~3.0質量%であり、より好ましくは0.001~2.0質量%であり、さらに好ましくは0.005~1.0質量%である。水溶性高分子化合物の濃度が0.0001質量%より少ない場合には水溶性高分子化合物の添加効果が十分に得られず、3.0質量%より多い場合には、水溶性高分子化合物の添加効果は頭打ちとなり、必要以上の水溶性高分子化合物を添加することになるので経済的でない。
【0046】
1-3.界面活性剤
本発明で、さらにうねり低減とハレーション低減を図る目的で、任意成分として使用される界面活性剤は、スルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン界面活性剤である。
【0047】
具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン系化合物、リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物、アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物などの芳香族アミノスルホン酸系化合物が挙げられる。中でも、ポリアルキルアリールスルホン酸系化合物のうちのナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のナフタレンスルホン酸系化合物、リグニンスルホン酸系化合物、芳香族アミノスルホン酸系化合物、およびそれらの塩が好ましい。ナフタレンスルホン酸系化合物の中でも、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物およびそれらの塩が特に好ましい。
【0048】
また、それぞれ塩とした場合の対イオンとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミンなどの一級アミン塩、ジエタノールアミンなどの二級アミン塩、トリエタノールアミンなどの三級アミン塩、テトラメチルアンモニウムなどの四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0049】
研磨剤組成物中の界面活性剤の含有量は、0.0001~2.0質量%であることが好ましく、0.001~1.0質量%であることがさらに好ましい。0.0001質量%未満の場合、うねり低減効果が十分に得られない。2.0質量%を超えると研磨速度の低下が起こる。
【0050】
1-4.酸および/またはその塩
本発明では、pH調整のために、または任意成分として酸および/またはその塩を使用することができる。使用される酸および/またはその塩としては、無機酸および/またはその塩と有機酸および/またはその塩が挙げられる。
【0051】
無機酸および/またはその塩としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等の無機酸および/またはその塩が挙げられる。
【0052】
有機酸および/またはその塩としては、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノカルボン酸および/またはその塩、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、ニトロ酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸等のカルボン酸および/またはその塩、有機ホスホン酸および/またはその塩などが挙げられる。これらの酸および/またはその塩は、1種あるいは2種以上を用いることができる。
【0053】
有機ホスホン酸および/またはその塩としては、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。
【0054】
上記の化合物は、2種以上を組み合わせて使用することも好ましい実施態様であり、具体的には、硫酸とリン酸の組み合わせ、リン酸と有機ホスホン酸の組み合わせ、またはリン酸と有機ホスホン酸塩との組み合わせなどが挙げられる。
【0055】
1-5.酸化剤
本発明では、研磨促進剤として酸化剤を使用することができる。使用される酸化剤としては、過酸化物、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、ハロゲンオキソ酸またはその塩、酸素酸またはその塩、これらの酸化剤を2種以上混合したもの、等を用いることができる。
【0056】
具体的には、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、過酸化カリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸の金属塩、ジクロム酸の金属塩、過硫酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキソリン酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、等が挙げられる。中でも、過酸化水素、過硫酸およびその塩、次亜塩素酸およびその塩などが好ましく、さらに好ましくは過酸化水素である。
【0057】
研磨剤組成物中の酸化剤含有量は、0.01~10.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1~5.0質量%である。
【0058】
2.研磨剤組成物の物性(pH)
本発明の研磨剤組成物のpH値(25℃)の範囲は、好ましくは0.1~4.0である。さらに好ましくは0.5~3.0である。研磨剤組成物のpH値(25℃)が0.1以上であることにより、研磨後の基板の表面荒れを抑制することができる。研磨剤組成物のpH値(25℃)が4.0以下であることにより、研磨速度の低下を抑制することができる。
【0059】
本発明の研磨剤組成物は、ハードディスクといった磁気記録媒体などの種々の電子部品の研磨に使用することができる。特に、アルミニウム磁気ディスク基板の研磨に好適に用いられる。さらに好適には、無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の研磨に用いることができる。無電解ニッケル-リンめっきは、通常、pH値(25℃)が4.0~6.0の条件下でめっきされる。pH値(25℃)が4.0以下の条件下で、ニッケルが溶解傾向に向かうためめっきしにくくなる。一方、研磨においては、例えば、pH値(25℃)が4.0以下の条件下でニッケルが溶解傾向となるため、本発明の研磨剤組成物を用いることにより、研磨速度を高めることができる。
【0060】
3.磁気ディスク基板の研磨方法
本発明の研磨剤組成物は、アルミニウム磁気ディスク基板やガラス磁気ディスク基板等の磁気ディスク基板の研磨での使用に適している。特に、無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板(以下、アルミディスク)の研磨での使用に適している。
【0061】
本発明の研磨剤組成物を適用することが可能な方法としては、例えば、研磨機の定盤に研磨パッドを貼り付け、研磨対象物(例えばアルミディスク)の研磨する表面または研磨パッドに研磨剤組成物を供給し、研磨する表面を研磨パッドで擦り付ける方法がある。例えば、アルミディスクのおもて面と裏面を同時に研磨する場合には、上定盤および下定盤それぞれに研磨パッドを貼り付けた両面研磨機を用いる方法がある。この方法では、上定盤および下定盤に貼り付けた研磨パッドでアルミディスクを挟み込み、研磨面と研磨パッドの間に研磨剤組成物を供給し、2つの研磨パッドを同時に回転させることによって、アルミディスクのおもて面と裏面を研磨する。なお、通常の磁気ディスク基板の研磨においては、ダミー研磨を実施した後、本研磨を行うことが一般的である。ここでダミー研磨とは、研磨機の定盤に研磨パッドを貼り付けた後、必要に応じてパッドドレッシングを実施し、その後本研磨を実施する前に、被研磨物となる基板と同種のものを別途用意し、これをダミー基板として研磨することをいう。本発明の研磨剤組成物は、ダミー研磨のみに使用することも、本研磨のみに使用することも、ダミー研磨と本研磨の両方に使用することも可能である。
【0062】
研磨パッドとしては、どのようなタイプのものでも使用できる。不織布タイプ、スウェードタイプなどの研磨パッドがあるが、スウェードタイプがよく用いられる。研磨剤と接触する表面発泡層の材質としては、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルなどが挙げられるが、ポリウレタンエラストマーがよく用いられる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術範囲に属する限り、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
【0064】
[研磨剤組成物の調製方法]
実施例1~22、比較例1~4で使用した研磨剤組成物は、表1に記載の材料を、表1に記載の含有量で含んだ研磨剤組成物である。なお、表1でアクリル酸の略号をAA、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の略号をATBS、N-tert-ブチルアクリルアミドの略号をTBAAとした。また、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物としては、第一工業製薬製のラベリンFM-45を使用した。
【0065】
【0066】
[重量平均分子量]
水溶性高分子化合物は、表1に記載した通り、合成番号1~10の重合体を使用した。なお、水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリアクリル酸換算で測定したものであり、以下にGPC測定条件を示す。
【0067】
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL(東ソー(株)製)+G2500PWXL(東ソー(株)製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1(容量比)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
検出:210nm(UV)
サンプル:濃度5mg/ml(注入量100μl)
検量線用ポリマー:ポリアクリル酸 分子量(ピークトップ分子量:Mp)11.5万、2.8万、4100、1250(創和科学(株)、American Polymer Standards Corp.)
【0068】
[コロイダルシリカの粒子径]
コロイダルシリカの粒子径(Heywood径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子(株)製、透過型電子顕微鏡 JEM2000FX(200kV)を用いて倍率10万倍の視野を撮影し、この写真を解析ソフト(マウンテック(株)製、Mac-View Ver.4.0)を用いて解析することにより、Heywood径(投射面積円相当径)として測定した。コロイダルシリカの平均粒子径は前述の方法で2000個程度のコロイダルシリカの粒子径を解析し、小粒径側からの積算粒径分布(累積体積基準)が50%となる粒子径を上記解析ソフト(マウンテック(株)製、Mac-View Ver.4.0)を用いて算出した平均粒子径(D50)である。
【0069】
[研磨条件]
無電解ニッケル-リンめっきされた外径95mmのアルミニウム磁気ディスク基板を粗研磨したものを研磨対象として研磨をおこなった。
【0070】
研磨機:スピードファム(株)製、9B両面研磨機
研磨パッド:(株)FILWEL社製 P2用パッド
定盤回転数:上定盤 -6.7rpm
下定盤 20.0rpm
研磨剤組成物供給量: 100ml/min
研磨時間: 300秒
加工圧力: 14kPa
各成分を混合して研磨剤組成物を調製した後、研磨試験を実施した。研磨試験結果は、表2および表3に示した。なお、以下の評価項目の値は、表2では比較例1の値を1(基準値)とする相対値で示した。表3では比較例3を1(基準値)とする相対値で示した。
【0071】
[研磨したディスクの評価]
[研磨速度]
研磨速度は、研磨後に減少したアルミニウム磁気ディスク基板の質量を測定し、下記式に基づいて計算した。
研磨速度(μm/min)=アルミニウム磁気ディスク基板の質量減少(g)/研磨時間(min)/アルミニウム磁気ディスク基板の片面の面積(cm2)/無電解ニッケル-リンめっき皮膜の密度(g/cm3)/2×104
(ただし、上記式中、アルミニウム磁気ディスク基板の片面の面積は65.9cm2、無電解ニッケル-リンめっき皮膜の密度は8.0g/cm3)
【0072】
[研磨後の基板表面の短波長うねり評価方法]
基板の短波長うねりは、アメテック株式会社製3次元光学プロファイラーNew View 8300を使用して測定した。
測定条件は以下の通りである。
【0073】
レンズ 10倍 Mirau型
ZOOM 1.0倍
Measurement Type Surface
Measure Mode CSI
Scan Length 5μm
Camera Mode 1024×1024
Filter Band Pass
Cut Off Short 20.000μm
Long 100.000μm
測定ポイント
半径 30.00mm
角度 10°毎に36点
【0074】
[研磨後の基板表面のハレーション評価方法]
ハレーションは、基板全表面欠陥検査機(株)日立ハイテクファインシステムズ社製NS2000Hを使用して測定した。測定条件は以下の通りである。
【0075】
PMT/APD Power Control Voltage
Hi-Light 1 OFF
Hi-Light 2 900V
Scan Pitch 3μm
Inner/Outer Radius 18.0000~47.0000mm
Positive Level 76mV
H2 White Spot Level 80.0mV
【0076】
ハレーションは、上記測定条件において、基板表面上の微細な欠陥として検出され、ハレーションカウントとして定量評価できる。
【0077】
【0078】
【0079】
[考察]
表2から明らかなように、水溶性高分子化合物として比較例1のアクリル酸単独重合体を使用した場合に比べて、実施例1~8のアクリル酸・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体を使用した場合は、研磨速度、短波長うねり、ハレーションカウントの全てが改善されることがわかる。さらに界面活性剤(ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物)を加えた実施例9~16では、短波長うねりとハレーションカウントがさらに改善されることがわかる。
【0080】
尚、実施例2,3および10,11は実施例1および9において、アクリル酸・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体のアクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の割合が異なる実験例である。
【0081】
実施例4~7および12~15は実施例1および9において、添加する水溶性高分子化合物の重量平均分子量が異なる実験例である。
【0082】
実施例8および16は実施例1および9において、水溶性高分子にアミド基も含むアクリル酸・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸・N-tert-ブチルアクリルアミド共重合体を使用した実験例である。
【0083】
一方、比較例2の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸単独重合体を使用した場合は、比較例1に対して研磨速度は向上するものの、短波長うねりとハレーションカウントが悪化することがわかる。
【0084】
コロイダルシリカ砥粒の平均粒子径が異なる表3においても、水溶性高分子化合物として比較例3のアクリル酸単独重合体を使用した場合に比べて、実施例17のアクリル酸・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体を使用した場合は、研磨速度、短波長うねり、ハレーションカウント全てが改善されることがわかる。さらに界面活性剤(ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物)を加えた実施例18では短波長うねりとハレーションカウントがさらに改善されることがわかる。
【0085】
尚、実施例19は実施例18において、アクリル酸・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体のアクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の割合が異なる実験例である。
【0086】
実施例20、21は実施例18において、添加する水溶性高分子化合物の重量平均分子量が異なる実験例である。
【0087】
実施例22は実施例18において、水溶性高分子にアミド基も含むアクリル酸・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸・N-tert-ブチルアクリルアミド共重合体を使用した実験例である。
【0088】
一方、比較例4の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸単独重合体を使用した場合は、比較例3に対して研磨速度は向上するものの、短波長うねりとハレーションカウントが悪化することがわかる。
【0089】
以上のことから、本発明の水溶性高分子化合物を使用することにより、研磨速度、短波長うねり、ハレーションカウントのバランスが向上することがわかる。さらに特定の界面活性剤を組み合わせることにより、短波長うねりとハレーションカウントがさらに改善されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の研磨剤組成物は、半導体、ハードディスクといった磁気記録媒体などの電子部品の研磨に使用することができる。特にガラス磁気ディスク基板やアルミニウム磁気ディスク基板などの磁気記録媒体用基板の表面研磨に使用することができる。さらには、アルミニウム合金製の基板表面に無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成した磁気記録媒体用アルミニウム磁気ディスク基板の仕上げ研磨に使用することができる。