(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】電子時計
(51)【国際特許分類】
G04C 10/00 20060101AFI20230131BHJP
G04B 37/05 20060101ALI20230131BHJP
G04G 19/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G04C10/00 B
G04B37/05 J
G04G19/00 M
(21)【出願番号】P 2019022914
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100161089
【氏名又は名称】萩原 良一
(72)【発明者】
【氏名】坂田 新之介
(72)【発明者】
【氏名】中平 大輔
(72)【発明者】
【氏名】廣田 悠介
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-158274(JP,A)
【文献】特開2014-85290(JP,A)
【文献】実開昭56-25279(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04C 1/00 - 99/00
G04G 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースと、
時刻を計時するための回路基板および側方に突出する巻真を含み、前記外装ケース内に配置されたムーブメントと、
前記ムーブメントを駆動する電池と、
前記外装ケースで囲まれる内部空間の底部を覆う裏蓋と、
前記回路基板上の回路と前記電池の電極とを電気的に接続する端子と、
前記裏蓋に固定され、前記裏蓋側から前記端子を押圧して前記端子を前記回路と前記電極とに接触させる押付部材と、を有し、
前記電池は、前記外装ケースの内壁に沿って延びる薄板形状を有し、前記ムーブメントの周方向における前記巻真の位置を避けて
前記ムーブメントよりも外周側において前記外装ケースの内壁と前記ムーブメントの側面との間に配置され、前記ムーブメントの全体を取り囲んでいることを特徴とする電子時計。
【請求項2】
外装ケースと、
時刻を計時するための回路基板および側方に突出する巻真を含み、前記外装ケース内に配置されたムーブメントと、
前記ムーブメントを駆動する電池と、
前記回路基板上の回路と前記電池の電極とを電気的に接続する端子と、
前記ムーブメントに固定され、前記端子を押圧して前記端子を前記回路と前記電極とに接触させる弾性部材と、を有し、
前記電池は、前記外装ケースの内壁に沿って延びる薄板形状を有し、前記ムーブメントの周方向における前記巻真の位置を避けて前記ムーブメントよりも外周側において前記外装ケースの内壁と前記ムーブメントの側面との間に配置され、前記ムーブメントの全体を取り囲んでいることを特徴とする電子時計。
【請求項3】
外装ケースと、
時刻を計時するための回路基板および側方に突出する巻真を含み、前記外装ケース内に配置されたムーブメントと、
前記ムーブメントを駆動する電池と、
前記外装ケース内に配置され、巻真を通すための溝部が形成され、前記ムーブメントに係合して前記ムーブメントの側面を覆う枠体と、
前記枠体の前記ムーブメントとの係合部と前記回路基板上の回路とをつなぐ端子と、を有し、
前記電池は、前記枠体の内部に埋め込まれ、前記外装ケースの内壁に沿って延びる薄板形状を有し、前記ムーブメントの周方向における前記巻真の位置を避けて前記ムーブメントよりも外周側において前記外装ケースの内壁と前記ムーブメントの側面との間に配置され、前記ムーブメントの全体を取り囲んでおり、
前記電池の電極は前記係合部に引き出され、
前記ムーブメントが前記枠体に係合されることで前記回路と前記電極とが電気的に接続されることを特徴とする電子時計。
【請求項4】
電子時計であって、
外装ケースと、
時刻を計時するための回路基板および側方に突出する巻真を含み、前記外装ケース内に配置されたムーブメントと、
前記ムーブメントを駆動する電池と、を有し、
前記電池は、前記外装ケースの内壁に沿って延びる薄板形状を有し、前記ムーブメントの周方向における前記巻真の位置を避けて前記ムーブメントよりも外周側において前記外装ケースの内壁と前記ムーブメントの側面との間に配置され、前記ムーブメントの全体を取り囲んでおり、
前記電池は弾性を有し、前記電子時計の厚さ方向に見たときにC字形状になるように前記ムーブメントの側面に巻き付けられ、内周面に電極を有し、
前記ムーブメントから取り外されたときの前記電池の内周面が作る円の直径は前記ムーブメントの外径よりも小さく、
前記電池が前記ムーブメントの側面に巻き付けられることで、前記電極が前記回路基板の側面に密着して、前記回路基板の回路と前記電極とが電気的に接続されることを特徴とする電子時計。
【請求項5】
前記外装ケースを貫通して前記ムーブメントの側方に突出し、使用者により押下される操作ボタンをさらに有し、
前記電池は、さらに前記ムーブメントの周方向における前記操作ボタンの位置を避けて配置されている、請求項
1~4のいずれか一項に記載の電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ムーブメントの外周であってかつケース枠の内側に延出した上側環状部分の下に環状空間を形成し、そこに環状の電池を収納してなる電池駆動型時計が記載されている。
【0003】
また、近年、電池の薄型化やフレキシブル化が求められており、ペーパ電池などの各種の薄型電池が開発されている。例えば、特許文献2には、電極群とこれを収容する外装体とを備え屈曲可能なフレキシブル電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭51-13368号公報
【文献】特開2016-72015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10(A)および
図10(B)は、従来の電子時計のムーブメント2の模式的な平面図および断面図である。これらの図では、ムーブメント2の構成要素のうち、輪列15、裏周り16および電池200を図示している。符号151は図示しない指針の回転軸(指針軸)を、符号19は、使用者が手動で指針の位置などを調整するための操作軸(巻真、リューズ)を指す。輪列15は、指針を回転させるための各種の歯車であり、裏周り16は、使用者がリューズを引く操作を輪列15に伝達するための機構である。電池200は、ムーブメント2の電源となるボタン電池である。
【0006】
アナログクオーツの腕時計では、ボタン電池が広く用いられており、ボタン電池は、電源供給を安定させるためにムーブメント内に配置される。一般に、ボタン電池は円柱形状を有し、その大きさや厚さは、ムーブメント内の時計部品の中で比較的大きい。また、
図10(A)および
図10(B)に示すように、ムーブメントの中心には輪列15が配置され、巻真19の周囲には裏周り16が配置される。このため、ムーブメント2の外径は輪列15、裏周り16および電池200の大きさで決まり、ムーブメント2の厚さは電池200の厚さで決まる。輪列15や裏周り16、巻真19の大きさや位置は時計の構造上、変更しにくいため、電子時計の小型化、薄型化のためには、電池を小型化、薄型化するとともに、これらの部材を避けて電池を配置する必要がある。
【0007】
本発明は、ボタン電池を用いる場合と比べて電子時計のムーブメントを小型化かつ薄型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
外装ケースと、時刻を計時するための回路基板および側方に突出する巻真を含み、外装ケース内に配置されたムーブメントと、ムーブメントを駆動する電池とを有し、電池は、外装ケースの内壁に沿って延びる薄板形状を有し、ムーブメントの周方向における巻真の位置を避けて外装ケース内でムーブメントの中心を取り囲むように配置されていることを特徴とする電子時計が提供される。
【0009】
電池は、ムーブメントよりも外周側において外装ケースの内壁とムーブメントの側面との間に配置され、ムーブメントの全体を取り囲んでいることが好ましい。
【0010】
電子時計は、外装ケースで囲まれる内部空間の底部を覆う裏蓋と、回路基板上の回路と電池の電極とを電気的に接続する端子と、裏蓋に固定され、裏蓋側から端子を押圧して端子を回路と電極とに接触させる押付部材とをさらに有することが好ましい。
【0011】
電子時計は、回路基板上の回路と電池の電極とを電気的に接続する端子と、ムーブメントに固定され、端子を押圧して端子を回路と電極とに接触させる弾性部材とをさらに有することが好ましい。
【0012】
電子時計は、外装ケース内に配置され、巻真を通すための溝部が形成され、ムーブメントに係合してムーブメントの側面を覆う枠体と、枠体のムーブメントとの係合部と回路基板上の回路とをつなぐ端子とをさらに有し、電池は枠体の内部に埋め込まれ、電池の電極は係合部に引き出され、ムーブメントが枠体に係合されることで回路と電極とが電気的に接続されることが好ましい。
【0013】
電池は弾性を有し、電子時計の厚さ方向に見たときにC字形状になるようにムーブメントの側面に巻き付けられ、内周面に電極を有し、ムーブメントから取り外されたときの電池の内周面が作る円の直径はムーブメントの外径よりも小さく、電池がムーブメントの側面に巻き付けられることで、電極が回路基板の側面に密着して、回路基板の回路と電極とが電気的に接続されることが好ましい。
【0014】
外装ケースは、電子時計の側面と、時刻の表示面とは反対側の底面とを覆い、電池は、さらに外装ケースの底面とムーブメントの底面との間も覆っていることが好ましい。
【0015】
電子時計は、外装ケースを貫通してムーブメントの側方に突出し、使用者により押下される操作ボタンをさらに有し、電池は、さらにムーブメントの周方向における操作ボタンの位置を避けて配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記の電子時計によれば、ボタン電池を用いる場合と比べてムーブメントが小型かつ薄型になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電子時計1の平面図および部分断面図である。
【
図2】電池20の形状を示す平面図および斜視図である。
【
図3】電池20と回路基板11との接続形態の別の例を示す部分断面図である。
【
図4】電池20と回路基板11との接続形態の別の例を示す部分断面図および斜視図である。
【
図5】電池20’の平面図および斜視図、ならびに電池20’と回路基板11との接続部分の断面図である。
【
図6】電子時計1Cの平面図および部分断面図である。
【
図9】電子時計1Eの分解斜視図およびその電池20Eの斜視図である。
【
図10】従来の電子時計のムーブメント2の模式的な平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、電子時計について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0019】
図1(A)および
図1(B)は、電子時計1の平面図および部分断面図である。電子時計1は、主要な構成部品として、ムーブメント10、電池20、外装ケース30、裏蓋35、文字板50、風防ガラス70およびアンテナ80を有する。
図1(A)は電子時計1を裏蓋35側から見た平面図であり、内部構造が分かるように、裏蓋35が透明であるとして図示している。
図1(B)は、
図1(A)のIB-IB線に沿った電子時計1の切断面を示す。以下では、電子時計がアナログの腕時計である場合の例を説明するが、電子時計は腕時計に限らず置き時計などでもよいし、デジタル時計でもよい。
【0020】
外装ケース30は、図示した例では平面視で円形であり、円筒形の内部空間を有する。裏蓋35は、外装ケース30で囲まれる電子時計1の内部空間の底部を覆う部材である。文字板50および風防ガラス70は、ムーブメント10を挟んで裏蓋35とは反対側に配置されており、これらも裏蓋35とともに平面視で円形である。ただし、外装ケース30や裏蓋35、文字板50、風防ガラス70の形状は、電子時計のデザインによっては4角形などの他の形状でもよい。アンテナ80は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)などの衛星電波、標準電波またはその他の無線電波を受信する。電子時計1はアンテナ80により時刻情報を受信して現在時刻を設定可能な電波時計であるが、アンテナ80は必須の部品ではなく、電波の受信機能はなくてもよい。
【0021】
ムーブメント10は、機械的な部品と電気的な部品を含む電子時計1の駆動機構であり、外装ケース30内に配置されている。ムーブメント10は、回路基板11、回路押さえ12および地板13、ならびに図示しない指針を駆動するためのモータや輪列などで構成され、それらが組み込まれユニット化された部品である。ムーブメント10の形状は、図示した例では概ね円柱状であるが、それには限定されない。
【0022】
回路基板11は、時刻を計時するための図示しない回路が搭載された基板である。
図1(A)では回路押さえ12に隠れてほとんど見えないが、回路基板11は概ね円板形状を有し、ムーブメント10の裏蓋35側の面(底面)をほぼ覆うように地板13の底面に固定されている。回路押さえ12は、回路基板11を固定するために回路基板11の上(裏蓋35側)に配置された金属板であり、回路基板11を間に挟んで地板13の底面にねじ止めされている。地板13は、内部にモータや輪列などの駆動部品が組み込まれるムーブメント10の本体部分である。実際には、地板13には様々な凹凸が形成されているが、それらを無視すれば地板13は概ね円板形状を有する。
【0023】
操作ボタン18は、時刻の設定や電子時計1の様々な付加機能を実行するために使用者により押下される操作部であり、ムーブメント10の側面から突出して外装ケース30の側壁を貫通している。
図1(A)では外装ケース30に隠れて見えないが、操作ボタン18の先端部は電子時計1の外側に露出している。巻真(リューズ)19は、手動で指針の位置などを調整するために使用者により回される操作軸であり、操作ボタン18と同様にムーブメント10の側面から突出して外装ケース30の側壁を貫通し、その先端部は電子時計1の外側に露出している。操作ボタン18と巻真19は、図示した例ではムーブメント10の周方向に30度程度離れているが、両者の位置関係は図示したものとは異なっていてもよい。
【0024】
図2(A)および
図2(B)は、電池20の形状を示す平面図および斜視図である。
図2(A)は、
図1(A)と同じ裏蓋35側から見た電子時計1の平面図において、さらに外装ケース30の図示を省略したものである。
【0025】
電池20は、ムーブメント10を駆動する電子時計1の電源であり、外装ケース30の内壁に沿って延びる薄板形状を有する。電池20は、例えば、正極と負極の間の電解質層が薄膜状に形成され、その電極と電解質層が可撓性の外装体に収容されたフレキシブル電池である。あるいは、電池20は、公知の全固体電池やポリマー電池で薄型に構成されたものでもよいが、C字形状に変形できるように可撓性を有することが好ましい。電子時計1の径方向における電池20の厚さは、電子時計1の厚さ方向における電池20の幅よりも小さいことが好ましい。
【0026】
電池20は、外装ケース30の内壁とムーブメント10の側面との間に配置され、ムーブメント10の周方向における操作ボタン18および巻真19の位置を除いて、ムーブメント10のほぼ全体(中心角で言うと330度程度)を取り囲んでいる。すなわち、電池20は、外装ケース30とムーブメント10との間の空間を貫通する操作ボタン18および巻真19を避けてムーブメント10の外周にC字形状に巻かれており、ムーブメント10の側面を覆っている。
【0027】
図示した例とは異なり、操作ボタン18と巻真(リューズ)19とがムーブメント10の周方向に離れている場合には、電池20として複数の薄型電池をムーブメント10の外周に弧状に配置し、それらを互いに直列接続してもよい。
【0028】
符号21,22は、電池20の電極(正極と負極)を指す。電極21,22は、例えば、C字形状の電池20の両端部における内周面、外周面、両端面または底面(裏蓋35側の面)のうちのどこにあってもよい。
図1(A)~
図2(B)では、電池20の両端部の全体(内周面、外周面、両端面および底面)が電極21,22であるように簡略化している。
【0029】
回路基板11上の回路と電池20の電極21,22とは、
図1(A)および
図1(B)に示す端子111,112により電気的に接続されている。図示した例では、端子111,112の接続用に回路押さえ12の2箇所が切り欠かれており、回路基板11はその位置で裏蓋35側に露出している。端子111,112は細長い板状の導通部材であり、回路基板11の露出箇所において端子111は電極21に向けて、端子112は電極22に向けて、それぞれムーブメント10の径方向に延びている。
【0030】
端子111,112は、裏蓋35の内側表面に固定された押付部材36により裏蓋35側から押圧されて、回路基板11上の回路と電池20の電極21,22とにそれぞれ接触している。押付部材36は、裏蓋35よりも直径が小さい中心部分と、その外周部から回路基板11に向けて電子時計1の厚さ方向に斜めに延びる2本の腕部361,362とを有する。腕部361,362は、板ばねなどの弾性体であり、それぞれ端子111,112を回路基板11と電池20の両方に押し付ける。ムーブメント10を外装ケース30内に組み込んだ後で、電池20を外装ケース30内に収め、端子111,112を腕部361,362で押さえることで、回路基板11と電池20との電気的な接続が確保される。電極21,22の間で短絡が生じないように、腕部361,362かまたは端子111,112の裏蓋35側の表面は、絶縁体で構成される。
【0031】
図3(A)~
図4(B)は、電池20と回路基板11との接続形態の別の例を示す部分断面図および斜視図である。これらの図では、互いに異なる4つの例を示している。電池20と回路基板11とを電気的に接続させるためには、押付部材36を用いる上記の形態に代えて、これらのいずれかを採用してもよい。
【0032】
図3(A)に示す電子時計1Aは、端子111,112を固定する部材が
図1(A)の押付部材36から板ばね12Aに置き換えられている点が電子時計1とは異なり、その他の点では電子時計1と同じ構成を有する。
図3(A)では、
図1(B)と同様に、回路基板11と電極22とを電気的に接続する端子112の部分における電子時計1Aの切断面を示している。板ばね12Aは、回路基板11の裏蓋35側の面に固定され、端子112を回路基板11との間に挟んで回路基板11上の回路と電池20の電極22とに接触させる。板ばね12Aは、ムーブメント10に固定された弾性部材の一例であり、
図1(B)の回路押さえ12と一体化されていてもよいし、回路押さえ12とは別の部材で回路押さえ12に固定されたものでもよい。
【0033】
図3(B)に示す例では、回路基板11の少なくとも一部が地板13よりも外周側に突出している。地板13の側面には、先端部が地板13の外周側に突出した板ばね17A(弾性部材の別の例)が固定されている。板ばね17Aの先端部は、
図3(B)の上側(裏蓋35側)に向けて付勢されており、回路基板11の突出部における下側(文字板50側)に差し込まれた端子112を回路基板11との間で挟んで回路基板11上の回路に接触させる。端子112は、回路基板11の突出部よりも外周側に突出しており、板ばね17Aによって固定されることで、外周側の先端部で電池20の電極22の上側(裏蓋35側)に接触する。
図3(B)では、電池20の端部の内周面における厚さ方向の全体が電極22であるとして図示している。
【0034】
図示しないが、
図3(A)および
図3(B)の例では、回路基板11と電極21とを電気的に接続する端子111の部分の切断面も、図示した端子112の部分の切断面と同様である。これらの例では、ムーブメント10を外装ケース30内に組み込んだ後で、電池20を外装ケース30内に収め、端子111,112を回路基板11と板ばね12A,17Aとの間に差し込むことで、回路基板11と電池20との電気的な接続が確保される。
図1(A)~
図3(B)に示す形態は、電池20の底面(裏蓋35側の面)に電極21,22がある場合に適している。
【0035】
図4(A)に示す電子時計1Bは、
図1(A)の押付部材36が省略され、端子112が端子112Bに、端子111が端子112Bと同様のもの(図示せず)にそれぞれ置き換えられている点が電子時計1とは異なり、その他の点では電子時計1と同じ構成を有する。
図4(A)では、回路基板11と電極22とを電気的に接続する端子112Bの部分における電子時計1Bの切断面を示しているが、外装ケース30と風防ガラス70の図示を省略している。
【0036】
端子112Bは回路基板11と回路押さえ12との間に挟まれ、その外周側の先端部は、回路基板11と回路押さえ12の端部で文字板50側に折り曲げられている。端子112Bは板ばねなどの弾性体であり、その先端部は外周側(
図4(A)の左側)に向けて付勢され、電池20の電極22の側面に接触している。端子112Bの先端部は、地板13の切欠き部131内を
図4(A)の左右(ムーブメント10の径方向)に移動可能である。
図4(A)に示す例では、端子112Bともう1つの端子はムーブメント10に予め設けられており、ムーブメント10を外装ケース30内に組み込んだ後で電池20を外装ケース30内に収めるだけで、回路基板11と電池20との電気的な接続が確保される。
図4(A)の形態は、電池20の内周面に電極21,22がある場合に適している。
【0037】
符号40,45は、それぞれ、ムーブメント10と文字板50の間に配置されたソーラセルおよび日車を指す。ソーラセル40と日車45は、
図1(B)と
図3(B)では図示されていないが、電子時計1,1Aにも含まれていてもよい。電池20は、1次電池に限らず、ソーラセル40によって充電される2次電池でもよい。
【0038】
図4(B)に示す例では、巻真19の周囲における回路基板11の端部が径方向の内側に切り欠かれ、矩形の凹部113が形成されている。径方向(巻真19とほぼ同じ方向)に延びる凹部113の2つの側壁には、凹部113内にねじ171で留められた板ばね17B(弾性部材の別の例)で、細長い板状の端子111,112がそれぞれ押し当てられている。端子111,112の先端部は、回路基板11よりも外周側に突出し、電池20の周方向の両端面に形成された電極21,22にそれぞれ接触している。ムーブメント10の周方向における電池20および凹部113の長さは、電池20の端面(電極21,22)と凹部113の側壁とがそれぞれ同一面になるように調整されている。
【0039】
この例では、ムーブメント10を外装ケース30内に組み込んだ後で、電池20を外装ケース30内に収め、端子111,112を凹部113の側壁と板ばね17Bとの間に挟んで固定することで、回路基板11と電池20との電気的な接続が確保される。
図4(B)の形態は、電池20の両端面に電極21,22がある場合に適している。
【0040】
図5(A)~
図5(C)は、電池20’の平面図および斜視図、ならびに電池20’と回路基板11との接続部分の断面図である。電池20’は、電池20と同様に可撓性がある薄板形状のものであり、外装ケース30内に収納されるが、それ自体が弾性を有する点が電池20とは異なる。すなわち、電池20’の外装体は、ゴムなどの弾性体で構成されている。電池20’は、
図5(B)に示すように、両端部の内周面に電極21,22を有する。この場合、弾性を有する部分は、電池20’の全体でもよいし、電極21,22を含む両端部23,24だけでもよい。
【0041】
電池20’は、ムーブメント10に装着されていない単体の状態でもC字形状を保っているが、単体の状態で内周面が作る円の直径(C字形状の内径)は、ムーブメント10の外径よりも小さい。このため、電池20’のC字形状が広げられてムーブメント10の側面に巻き付けられたときには、両端部23,24にムーブメント10の中心方向に向かう復元力が働き、電池20’の内周面はムーブメント10の側面に押し付けられる。回路基板11の側面に導体部を形成しておけば、電池20’をムーブメント10の側面に巻き付けるだけで、符号Xで示す部分において電極21,22が回路基板11の側面の導体部に密着して、回路基板11上の回路と電極21,22とが電気的に接続される。
【0042】
図6(A)および
図6(B)は、電子時計1Cの平面図および部分断面図である。電子時計1Cは、
図1(A)の押付部材36が省略され、電池20が電池20Cに、端子112が端子112Cに、端子111が端子112Cと同様のもの(図示せず)にそれぞれ置き換えられている点が電子時計1とは異なり、その他の点では電子時計1と同じ構成を有する。
図6(A)では、
図1(A)と同様に、電子時計1Cの裏蓋35側の面を裏蓋35が透明であるとして図示している。
図6(B)は、
図6(A)のVIB-VIB線に沿った電子時計1Cの切断面を示す。
【0043】
図7は、電池20Cの斜視図である。電池20Cは、ムーブメント10の外周部に係合してムーブメント10の側面を覆う中枠と同じ形状を有し薄型電池を内蔵する電池ユニット(中枠と電池が一体化したもの)であり、薄型電池が内部に埋め込まれた枠体の一例である。電池20Cは、例えば樹脂成形により作成され、4つの係合部25と2つの溝部26,26’を有し、外装ケース30の内壁に沿って配置される。係合部25は、ムーブメント10に対して係合する部分であり、周方向における4箇所に配置され、それぞれフック(鉤型)の形状を有する。溝部26,26’は、それぞれ、巻真19および操作ボタン18を通すためのものである。電池20Cは、溝部26,26’の部分でも幅(
図7の縦方向の長さ)が小さい連結部27,27’を残して周方向に連結されており、全体として円形である。
【0044】
電池20Cが内蔵する薄型電池は1つでも複数でもよく、それらは可撓性のないものでもよい。例えば、係合部25同士の間や係合部25と溝部26,26’との間にそれぞれ薄型電池を配置し、それらを電池20Cの内部で互いに直列接続してもよい。
【0045】
電池20Cの電極(正極と負極)は、4つの係合部25のうちの2つに引き出され、係合部25におけるフックの先端面に設けられている。例えば、
図6(B)では、一方の電極22が引き出された係合部25を含む切断面を示している。電池20Cでは、係合部25は、ムーブメント10との機械的な接続部分であるとともに、電気的な接続部分を兼ねている。ムーブメント10側では、
図6(B)に示すように、回路基板11から係合部25の電極に向けて端子112Cが延びている。ムーブメント10を電池20Cに係合させることで、端子112Cを介して回路基板11上の回路と電池20Cの電極とが電気的に接続される。端子112Cの代わりに地板13に配線パターンを形成し、それを介して回路基板11と電池20Cとを電気的に接続してもよい。
【0046】
電子時計1,1A~1Cでは、ムーブメント10内に電池が配置されないので、内部にボタン電池を含む
図10(A)のムーブメント2と比べて、ムーブメント10を小型化かつ薄型化することができる。また、特に電子時計1,1A,1Bでは、電池20の円周方向の長さや、径方向の厚さ、電子時計の厚さ方向における電池20の幅にある程度の自由度がある。このため、同じムーブメント10に対して様々な形状および大きさの電池を用意し、複数種類の薄型電池の中から長寿命のものや安価なものなどを適宜選択して使用することができる。
【0047】
図8は、電子時計1Dの模式的な平面図である。電子時計1Dのムーブメントは外周に円形の中枠14を有し、電子時計1Dでは、外装ケース30内の中枠14よりも中心側において、薄型の電池20がC字形状に配置されている。電池20は、ムーブメントの中心にある図示しないモータや輪列を取り囲むように、回路基板の外周部に組み込まれている。電子時計1Dでは、リューズ32の周方向における両隣に操作ボタン31,31’がそれぞれ設けられており、符号18,18’は、操作ボタン31,31’の外装ケース30内への突出部を指す。電子時計1Dでも、電池20は、ムーブメントの周方向における操作ボタン18,18’および巻真19の位置を除いて、300度程度の円弧状に配置されている。
【0048】
このように、径方向における電池の配置位置は、ムーブメントの外側に限らず内側であってもよい。中枠14よりも中心側に電池20があっても、電子時計1Dの径方向および厚さ方向の長さがボタン電池の直径および厚さよりもそれぞれ小さければ、電子時計1Dのムーブメントを
図10(A)のムーブメント2と比べて小型かつ薄型にすることができる。
【0049】
図9(A)および
図9(B)は、電子時計1Eの分解斜視図およびその電池20Eの斜視図である。電子時計1Eは、ムーブメント10、電池20E、外装ケース30E、文字板50、ベゼル60および風防ガラス70を有する。外装ケース30Eは、上記の外装ケース30と裏蓋35とが一体化されたものであり、円筒形の側壁(電子時計1Eの側面)だけでなく、風防ガラス70(時刻の表示面)とは反対側の底面も覆っている。電子時計1Eは、取り外し可能な裏蓋がなく、風防ガラス70側から各部品が外装ケース30E内に組み込まれるモデルである。
【0050】
電池20Eは、ムーブメント10と外装ケース30Eの間に配置されるが、ムーブメント10の側面を覆うC字形状の側壁に加えて円板形状の底面28を有し、外装ケース30Eの底面とムーブメント10の底面との間も覆っている。符号26は操作ボタン18および巻真19を通すための溝部を指し、この部分における電池20Eの側壁(符号27)の高さ(
図9(B)の縦方向の長さ)は、他の部分と比べて低くなっている。溝部26の両端における符号21,22の部分は、電池20Eの電極(正極と負極)である。このように、電池はC字形状のものに限らず、底面28がある桶形状のものでもよい。
【0051】
電子時計1,1A,1Bの電池20も、
図9(B)に示した形状で、符号28の部分が底面ではなく開放されているものでもよい。すなわち、電池20もC字形状のものに限らず、円形の枠体であって操作ボタン18および巻真19を通すための溝部26が形成され、その部分(符号27)の幅(
図9(B)の縦方向の長さ)が他の部分と比べて小さいものでもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,1A,1B,1C,1D,1E 電子時計
10 ムーブメント
11 回路基板
111,112,112B,112C 端子
12 回路押さえ
13 地板
14 中枠
18,18’ 操作ボタン
19 巻真
20,20’,20C,20E 電池
21,22 電極
30,30E 外装ケース
35 裏蓋