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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/18 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
B29C45/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019026602
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020131521
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下楠薗 壮
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-251427(JP,A)
【文献】米国特許第05143734(US,A)
【文献】特開2009-148964(JP,A)
【文献】特開2017-144705(JP,A)
【文献】特開2003-094437(JP,A)
【文献】中国実用新案第206426430(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107553870(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む樹脂ペレットを可塑化して金型へ射出する射出成形機であって、
先端から軸方向に延びるスクリュ通路、及び一端が前記スクリュ通路に連通し、他端が外周面に開口する内側供給路を有する加熱シリンダと、
軸方向に延びる螺旋溝を有し、前記スクリュ通路内を進退及び回転するスクリュと、
下端が前記内側供給路に連通し、上端が前記樹脂ペレットを貯留するホッパに連通する外側供給路を有するホッパブロックとを備え、
前記内側供給路及び前記外側供給路は、前記スクリュの後退方向に向かって下り傾斜になるように、鉛直方向に対して傾斜していることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記内側供給路及び前記外側供給路は、鉛直方向に対して前記加熱シリンダの周方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記内側供給路及び前記外側供給路は、鉛直方向に対して前記スクリュの回転方向と逆向きに傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記内側供給路及び前記外側供給路の傾斜角度は、同一であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記内側供給路は、前記スクリュ通路の中心より上方において、前記スクリュ通路に連通していることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を含む樹脂ペレットを可塑化して金型へ射出する射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホッパ下部から加熱筒の外周面まで垂直状に延びる第1原料通路と、第1原料通路とスクリュ挿入穴とを垂直状に連通した第2原料通路とを備える射出成形機が開示されている。この射出成形機において、ホッパに貯留された原料は、第1原料通路及び第2原料通路を自由落下して、スクリュ挿入穴に到達する。
【0003】
また、近年では、成形品の強度を高めることを目的として、繊維を含む樹脂ペレットを原料として射出成形を行う場合がある。ここで、長い繊維を含む成形品ほど、強度が高くなる。すなわち、成形品の強度を高めるには、繊維の長さを維持することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-138587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように自由落下した樹脂ペレットの多くは、第2原料通路を画定する壁面と、スクリュの山部との間に挟まって折れてしまう。その結果、成形品に含まれる繊維の長さが短くなって、強度が上がりにくいと言う課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、加熱シリンダに供給される繊維を含む樹脂ペレットの折損を抑制した射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、前記課題を解決するため、繊維を含む樹脂ペレットを可塑化して金型へ射出する射出成形機であって、先端から軸方向に延びるスクリュ通路、及び一端が前記スクリュ通路に連通し、他端が外周面に開口する内側供給路を有する加熱シリンダと、軸方向に延びる螺旋溝を有し、前記スクリュ通路内を進退及び回転するスクリュと、下端が前記内側供給路に連通し、上端が前記樹脂ペレットを貯留するホッパに連通する外側供給路を有するホッパブロックとを備え、前記内側供給路及び前記外側供給路は、前記スクリュの後退方向に向かって下り傾斜になるように、鉛直方向に対して傾斜していることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、スロープ状の内側供給路及び外側供給路内を樹脂ペレットが滑り落ちるので、スクリュ通路に到達した樹脂ペレットの鉛直方向の投影高さが短くなる。これにより、内側供給路とスクリュとの間に挟まれて折損する樹脂ペレットの数を削減することができる。その結果、繊維を切断せずに長い状態で成形品に含めることができるので、成形品の強度が向上する。また、計量動作時のスクリュの進行方向に沿って樹脂ペレットが供給されるので、内側供給路とスクリュとの間に挟まれて折損する樹脂ペレットの数を、さらに削減することができる。
【0009】
また、前記内側供給路及び前記外側供給路は、鉛直方向に対して前記加熱シリンダの周方向に傾斜していることを特徴としてもよい。
【0010】
さらに、前記内側供給路及び前記外側供給路は、鉛直方向に対して前記スクリュの回転方向と逆向きに傾斜していることを特徴としてもよい。
【0011】
上記構成によれば、スクリュの回転方向に沿って樹脂ペレットが供給されるので、内側供給路とスクリュとの間に挟まれて折損する樹脂ペレットの数を、さらに削減することができる。
【0014】
また、前記内側供給路及び前記外側供給路の傾斜角度は、同一であることを特徴としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、単一傾斜のスロープを長く確保できるので、スクリュ通路に到達するまでに樹脂ペレットの姿勢を安定させることができる。
【0016】
また、前記内側供給路は、前記スクリュ通路の中心より上方において、前記スクリュ通路に連通していることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、スロープ状の内側供給路及び外側供給路内を樹脂ペレットが滑り落ちるので、スクリュ通路に到達した樹脂ペレットの鉛直方向の投影高さが短くなるので、内側供給路とスクリュとの間に挟まれて折損する樹脂ペレットの数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る射出成形機の側面図である。
図2図1のII-IIにおける断面図である。
図3】第1実施形態に係る射出成形機に供給した樹脂ペレットの挙動を示す図である。
図4】従来の射出成形機に供給した樹脂ペレットの挙動を示す図である。
図5】内側供給路及び外側供給路の変形例の1つを示す図である。
図6】第2実施形態に係る射出成形機の縦断面図である。
図7】従来の射出成形機に供給した樹脂ペレットの挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る射出成形機10を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る射出成形機10の側面図である。射出成形機10は、金型内に可塑化樹脂を射出して、射出成形品を製造する装置である。第1実施形態に係る射出成形機10は、所謂「横型」である。図1に示すように、射出成形機10は、型締ユニット20と、射出ユニット30とを主に備える。
【0025】
型締ユニット20は、金型21の開閉及び型締めを行う。具体的には、型締ユニット20は、固定金型22を支持する固定ダイプレート23と、可動金型24を支持する移動ダイプレート25とを主に備える。固定金型22及び可動金型24は、射出成形機10の左右方向(水平方向)において、互いに対面するように支持されている。
【0026】
移動ダイプレート25は、型開閉モータ(図示省略)の駆動力がトグルリンク機構26を通じて伝達されることによって、タイバー27に沿って左右方向に移動する。移動ダイプレート25が左方向に移動すると、固定金型22と可動金型24とが離間する。一方、移動ダイプレート25が右方向に移動すると、固定金型22と可動金型24とが当接して、金型21の内部にキャビティ(内部空間)が形成される。そして、移動ダイプレート25を右方向に移動させる向きの圧力がさらに加わると、固定金型22及び可動金型24が型締めされる。
【0027】
射出ユニット30は、樹脂ペレットP(図3参照)を可塑化し、計量し、射出する。第1実施形態に係る射出ユニット30は、型締ユニット20と水平方向(型締ユニット20の右方)に離間して配置されている。射出ユニット30は、加熱シリンダ31と、スクリュ32と、ホッパ33と、ホッパブロック34とを主に備える。
【0028】
加熱シリンダ31は、射出成形機10の左右方向に延びる円筒形状の部材である。加熱シリンダ31は、先端にノズル36と、スクリュ通路35と、内側供給路37とを主に備える。また、加熱シリンダ31の外周面には、加熱シリンダ31を加熱するバンドヒータ(図示省略)が取り付けられていてもよい。
【0029】
スクリュ通路35は、加熱シリンダ31の内部を軸方向(長手方向)に延びる直線状の空間である。スクリュ通路35は、加熱シリンダ31の先端(前端)に設けられたノズル36を通じて、加熱シリンダ31の外部に連通している。換言すれば、スクリュ通路35は、ノズル36から軸方向に沿って延びる空間である。
【0030】
内側供給路37は、加熱シリンダ31の内部を径方向(短手方向)に延びる空間である。すなわち、内側供給路37は、スクリュ通路35と交差する方向に延びている。内側供給路37の下端は、ノズル36より加熱シリンダ31の基端側において、スクリュ通路35に連通している。内側供給路37の上端は、加熱シリンダ31の外周面に開口している。
【0031】
スクリュ32は、円柱形状の部材である。スクリュ32の外周面には、螺旋溝が形成されている。換言すれば、スクリュ32の外周面に形成された螺旋状の突条38(図2参照)の間が螺旋溝となる。スクリュ32は、射出成形機10の左右方向の移動(以下、「進退」と表記する。)及び回転が可能な状態で、加熱シリンダ31の内部空間に収容されている。スクリュ32は、射出モータ(図示省略)の駆動力が伝達されて進退し、計量モータ(図示省略)の駆動力が伝達されて回転する。スクリュ32の回転方向は、図2において(ノズル36の側から見て)時計回りである。
【0032】
ホッパ33は、原料となる樹脂ペレットPを貯留する漏斗形状の部材である。この射出成形機10で使用される樹脂ペレットPは、例えば、繊維を含む円柱状に成形されている。樹脂ペレットPの外形は、長手方向と短手方向とを有する扁平な形状(例えば、短冊状、紡錘状)である。但し、樹脂ペレットPの外形は均一である必要はない。繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維などが該当する。本明細書では、繊維を含む樹脂のペレットを、単に「樹脂ペレット」と表記する。
【0033】
ホッパブロック34は、加熱シリンダ31及びホッパ33を支持する部材である。より詳細には、ホッパブロック34は、加熱シリンダ31が挿通される貫通孔39と、加熱シリンダ31及びホッパ33を連通させる外側供給路40とを有する。貫通孔39は、ホッパブロック34を射出成形機10の左右方向に貫通する。加熱シリンダ31を貫通孔39に挿通し、ホッパ33をホッパブロック34の上面に載置したとき、外側供給路40は、下端が内側供給路37に連通し、上端がホッパ33の下部開口に連通する。
【0034】
上記構成の射出成形機10において、ホッパ33に貯留された樹脂ペレットPは、外側供給路40及び内側供給路37を通じて、スクリュ通路35(スクリュ32の外周面)に到達する。スクリュ通路35に到達した樹脂ペレットPは、スクリュ32が回転しながら右方向に移動(以下、「後退」と表記する。)するのに伴って、スクリュ32の螺旋溝に沿って加熱シリンダ31の先端側に移動する。そして、加熱シリンダ31内を移動する樹脂ペレットPは、加熱シリンダ31及びスクリュ32の間に生じる摩擦熱や剪断熱、及びバンドヒータが発生させる熱によって可塑化される。
【0035】
可塑化した樹脂は、スクリュ32の先端とノズル36との間の空間に貯留される。スクリュ32の回転量及び後退量を調整することによって、加熱シリンダ31の先端側に貯留される可塑化樹脂の量が調整される(計量動作)。そして、スクリュ32が左方向に移動(以下、「前進」と表記する。)すると、加熱シリンダ31の先端側に貯留された可塑化樹脂が、ノズル36を通じて金型21のキャビティに射出される(射出動作)。
【0036】
図2は、図1のII-IIにおける断面図である。すなわち、図2は、加熱シリンダ31、スクリュ32、及びホッパブロック34の横断面をノズル36の側から見た図である。図2において、突条38の位置におけるスクリュ32の直径は、スクリュ通路35の内径とほぼ同じに(僅かに小さく)設定される。また、樹脂ペレットPの多くは、長手方向の寸法が螺旋溝の溝深さより長く、短手方向の寸法が溝深さより短い。
【0037】
そのため、スクリュ32の外面に到達した樹脂ペレットPの向きによっては、内側供給路37を画定する壁面と突条38とに樹脂ペレットPが挟まれて折損する可能性がある。より詳細には、樹脂ペレットPの長手方向及び短手方向のうち、長手方向が鉛直方向に近い樹脂ペレットPの多くが折損し、短手方向が鉛直方向に近い樹脂ペレットPの多くが折損しない。
【0038】
そこで、第1実施形態に係る内側供給路37及び外側供給路40は、鉛直方向に対して傾斜している。より詳細には、内側供給路37及び外側供給路40は、鉛直方向に対して加熱シリンダ31の周方向に傾斜している。さらに詳細には、内側供給路37及び外側供給路40は、鉛直方向に対してスクリュ32の回転方向と逆向き(反時計回り)に傾斜している。すなわち、内側供給路37及び外側供給路40は、上端(ホッパ33側)から下端(スクリュ通路35側)に向かって下り傾斜(スロープ)になっている。
【0039】
また、内側供給路37は、スクリュ通路35の中心Oより上方において、スクリュ通路35に連通している。換言すれば、内側供給路37は、スクリュ通路35の上端を含む位置において、スクリュ通路35に連通している。
【0040】
さらに、内側供給路37は、上端から下端までの全域が傾斜している。一方、外側供給路40は、上端側が鉛直方向に延び、下端側が傾斜している。すなわち、外側供給路40は、途中で屈曲している。換言すれば、外側供給路40は、下端側の一部のみが傾斜している。そして、内側供給路37及び外側供給路40の下端側の傾斜角は同一である。すなわち、内側供給路37及び外側供給路40の下端側は、直線状のスロープを構成する。
【0041】
図3は、第1実施形態に係る射出成形機10に供給した樹脂ペレットPの挙動を示す図である。図4は、従来の射出成形機10’に供給した樹脂ペレットPの挙動を示す図である。従来の射出成形機10’は、内側供給路37’及び外側供給路40’が鉛直方向に延びている点において、射出成形機10と相違する。
【0042】
図3において、樹脂ペレットPの多くは、スロープ状の内側供給路37及び外側供給路40に沿って滑り落ちて、スクリュ通路35(スクリュ32の上面)に到達する。そのため、スクリュ通路35に到達した樹脂ペレットPの多くは、内側供給路37の傾斜角度に沿って傾斜している。
【0043】
一方、図4において、樹脂ペレットPの多くは、鉛直方向に延びる内側供給路37’及び外側供給路40’内を自由落下して、スクリュ通路35(スクリュ32の上面)に到達する。そのため、スクリュ通路35に到達した樹脂ペレットPの多くは、図3と比較して長手方向が鉛直方向に近づいている。
【0044】
そして、図3及び図4において、スクリュ32を回転させながら後退させると(計量動作)、スクリュ通路35に到達した樹脂ペレットPは、スクリュ32の突条38に掻き取られて、スクリュ通路35の先端側に移動する。
【0045】
ここで、図3及び図4を比較すれば明らかなように、スクリュ通路35に到達した樹脂ペレットPの鉛直方向の投影高さHの平均値は、図4より図3の方が短い。すなわち、内側供給路37を画定する壁面と突条38とに挟まれて折損する樹脂ペレットPの数は、図4より図3の方が少なくなることが分かる。
【0046】
なお、図3において、鉛直方向に対する内側供給路37及び外側供給路40の傾斜角度が大きいほど、樹脂ペレットPの鉛直方向の投影高さHは短くなる傾向がある。但し、傾斜角度を大きくし過ぎると、内側供給路37及び外側供給路40と樹脂ペレットPとの間の摩擦力が大きくなって、スクリュ通路35に樹脂ペレットPがスムーズに供給できなくなる。
【0047】
そこで、鉛直方向に対する内側供給路37及び外側供給路40の傾斜角度は、10°~80°、より好ましくは20°~70°と、さらに好ましくは30°~60°に設定される。なお、傾斜角度は、例えば、樹脂ペレットPの形状、内側供給路37及び外側供給路40の表面粗さ、樹脂ペレットPの供給方法(通常供給、飢餓供給)によって、適宜選択される。
【0048】
第1実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0049】
第1実施形態によれば、スロープ状の内側供給路37及び外側供給路40内を樹脂ペレットPが滑り落ちるので、スクリュ通路35に到達した樹脂ペレットPの鉛直方向の投影高さHが短くなる。これにより、内側供給路37とスクリュ32の突条38との間に挟まれて折損する樹脂ペレットPの数を削減することができる。その結果、繊維を切断せずに長い状態で成形品に含めることができるので、成形品の強度が向上する。
【0050】
また、樹脂ペレットPの折損は、スクリュ32の回転量が多い計量動作時に起きやすい。そこで、第1実施形態のように、鉛直方向に対してスクリュ32の回転方向と逆向きに、内側供給路37及び外側供給路40を傾斜させる。これにより、スクリュ32の回転方向に沿って樹脂ペレットPが供給されるので、内側供給路37とスクリュ32の突条38との間に挟まれて折損する樹脂ペレットPの数を、さらに削減することができる。
【0051】
また、上記の実施形態によれば、内側供給路37及び外側供給路40の傾斜角度を同一にすることによって、単一傾斜のスロープを長く確保できる。その結果、スクリュ通路35に到達するまでに樹脂ペレットの姿勢を安定させることができる。但し、内側供給路37及び外側供給路40の傾斜角度は異なっていてもよい。
【0052】
他の例として、内側供給路37の傾斜角度を、外側供給路40より大きく(より水平方向に近く)してもよい。これにより、スクリュ通路35に到達した樹脂ペレットPの鉛直方向の投影高さHをさらに小さくできる。また、外側供給路40の傾斜角度を小さく(鉛直方向に近く)することにより、樹脂ペレットPをスムーズに供給することができる。
【0053】
なお、スクリュ通路35及び内側供給路37の連通位置と、内側供給路37及び外側供給路40の傾斜方向との組み合わせは、図2の例に限定されない。図5は、第1実施形態の変形例に係る内側供給路37及び外側供給路40を示す図である。
【0054】
図5に示す内側供給路37は、スクリュ通路35の上端よりスクリュ32の回転方向の下流側において、スクリュ通路35に連通している。換言すれば、内側供給路37は、スクリュ32が下向きに回転する位置において、スクリュ通路35に連通している。また、内側供給路37及び外側供給路40は、鉛直方向に対してスクリュ32の回転方向と同じ向き(時計回り)に傾斜している。
【0055】
また、図5に示す内側供給路37は、スクリュ通路35の上端及び下端に滑らかに接続されている。換言すれば、内側供給路37の先端は、スクリュ通路35の上端及び下端における接線方向(水平方向)を向いている。すなわち、スクリュ通路35と内側供給路37との接続部分には、段差が存在しない。図5の構成によれば、スクリュ通路35及び内側供給路37の接続位置の下端に溜まった樹脂ペレットPが、スクリュ32の突条38によって螺旋溝に押し込まれる。
【0056】
(第2実施形態)
なお、第1実施形態では、内側供給路37及び外側供給路40を、加熱シリンダ31の円周方向に傾斜させる例を説明した。しかしながら、内側供給路37及び外側供給路40の傾斜方向は、第1実施形態の例に限定されない。
【0057】
すなわち、内側供給路37及び外側供給路40は、樹脂ペレットPの鉛直方向の投影高さHが樹脂ペレットPの全長より短くなった状態で、螺旋溝内に供給されるように傾斜していればよい。より好ましくは、内側供給路37及び外側供給路40は、樹脂ペレットPの鉛直方向の投影高さHが螺旋溝の溝深さより短くなった状態で、螺旋溝内に供給されるように傾斜していればよい。
【0058】
図6及び図7を参照して、第2実施形態に係る射出成形機10を説明する。図6は、第2実施形態に係る加熱シリンダ31、スクリュ32、及びホッパブロック34の縦断面図である。図7は、従来の射出成形機10’に供給した樹脂ペレットPの挙動を示す図である。なお、第2実施形態に係る射出成形機10の基本的な構造は、第1実施形態と共通するので、相違点を中心に説明する。
【0059】
図6に示す内側供給路37は、スクリュ通路35の中心より上方において、スクリュ通路35に連通している。また、内側供給路37及び外側供給路40は、鉛直方向に対して加熱シリンダ31の軸方向に傾斜している。より詳細には、内側供給路37及び外側供給路40は、鉛直方向に対して加熱シリンダ31の先端側に倒れこむように傾斜している。換言すれば、内側供給路37及び外側供給路40は、スクリュ32の後退方向(射出成形機10の左方から右方)に向けて下り傾斜になるように、鉛直方向に対して傾斜している。
【0060】
図6及び図7を比較すると、図3及び図4の場合と同様に、スクリュ通路35に到達した樹脂ペレットPの鉛直方向の投影高さHの平均値は、図7より図6の方が短い。すなわち、内側供給路37を画定する壁面と突条38とに挟まれて折損する樹脂ペレットPの数は、図7より図6の方が少なくなることが分かる。
【0061】
前述したように、樹脂ペレットPの折損は、スクリュ32の回転量が多い計量動作時に起きやすい。そこで第2実施形態のように、スクリュ32の後退方向に沿って下り傾斜になるように、内側供給路37及び外側供給路40を傾斜させる。これにより、計量動作時のスクリュ32の進行方向に沿って樹脂ペレットPが供給されるので、内側供給路37とスクリュ32の突条38との間に挟まれて折損する樹脂ペレットPの数を、さらに削減することができる。
【0062】
なお、第1実施形態及び第2実施形態は、それぞれを単独で射出成形機10に適用しても樹脂ペレットPの折損を抑制することができる。しかしながら、第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせることにより、さらに有利な効果が期待できる。
【0063】
すなわち、内側供給路37及び外側供給路40は、鉛直方向に対して加熱シリンダ31の周方向及び軸方向の両方に傾斜していてもよい。換言すれば、内側供給路37及び外側供給路40は、スクリュ32の回転方向及び後退方向に沿って、樹脂ペレットPをスクリュ通路35に供給できるように傾斜していてもよい。さらに換言すれば、内側供給路37及び外側供給路40は、スクリュ通路35及び内側供給路37の連通位置に対面する螺旋溝の延設方向に沿って、樹脂ペレットPが螺旋溝内に供給される方向に傾斜していてもよい。
【0064】
第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせることにより、鉛直方向の投影高さHが短い状態の樹脂ペレットPが螺旋溝内にスムーズに進入できる。その結果、内側供給路37とスクリュ32の突条38との間に挟まれて折損する樹脂ペレットPの数を、さらに削減することができる。
【符号の説明】
【0065】
10,10’…射出成形機,20…型締ユニット,21…金型,22…固定金型,23…固定ダイプレート,24…可動金型,25…移動ダイプレート,26…トグルリンク機構,27…タイバー,30…射出ユニット,31…加熱シリンダ,32…スクリュ,33…ホッパ,34…ホッパブロック,35…スクリュ通路,36…ノズル,37,37’…内側供給路,38…突条,39…貫通孔,40,40’…外側供給路,P…樹脂ペレット(繊維を含む樹脂ペレット)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7