IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コマツ産機株式会社の特許一覧

特許7219117産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム
<>
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図1
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図2
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図3
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図4
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図5
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図6
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図7
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図8
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図9
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図10
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図11
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図12
  • 特許-産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】産業機械の予知保全装置、方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230131BHJP
   H02P 29/04 20060101ALI20230131BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
G05B23/02 302V
H02P29/04
H04Q9/00 311J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019035972
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020140483
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 浩二
(72)【発明者】
【氏名】正藤 勇介
(72)【発明者】
【氏名】福村 孟宗
(72)【発明者】
【氏名】道場 栄自
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-81588(JP,A)
【文献】特開2017-162417(JP,A)
【文献】特開2018-164159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0328290(US,A1)
【文献】特開2002-287816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
H02P 29/04
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械の予知保全装置であって、
前記産業機械の駆動系の状態を示す状態データを入力として、前記駆動系に含まれ連動して動作するように互いに連結された複数の部品のそれぞれに対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの判定モデルと、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記産業機械に接続されたローカルコンピュータにおいて前記状態データから抽出された特徴量を、前記ローカルコンピュータから取得し、
前記特徴量に基づいて、前記駆動系における異常を判定し、
前記特徴量に基づいて前記駆動系において異常があると判定したときに、前記状態データを取得し、
前記状態データから、前記判定モデルを用いて、前記複数の部品のそれぞれにおける異常の可能性を取得し、
前記複数の部品における異常の可能性に基づいて、前記複数の部品から、保全対象とする部品を判定し、
前記駆動系は、モータを含み、
前記状態データは、前記モータの角加速度を含む、
予知保全装置。
【請求項2】
前記複数の部品は、
第1の部品と、
前記第1の部品の動作に応じて動作する第2の部品と、
を含み、
前記プロセッサは、共通の前記状態データから、前記判定モデルを用いて、前記第1の部品における異常の可能性と、前記第2の部品における異常の可能性とを取得する、
請求項1に記載の予知保全装置。
【請求項3】
前記判定モデルは、
前記状態データを入力として、前記第1の部品に対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの第1判定モデルと、
前記状態データを入力として、前記第2の部品に対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの第2判定モデルと、
を含む、
請求項2に記載の予知保全装置。
【請求項4】
前記状態データは、前記複数の部品のうちの一部における加速度に関するデータである、
請求項1から3のいずれかに記載の予知保全装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記複数の部品の少なくとも1つにおいて異常があると判定したときには、前記異常を知らせるための画面をディスプレイに表示させる信号を出力する、
請求項1から4のいずれかに記載の予知保全装置。
【請求項6】
産業機械の予知保全のためにプロセッサによって実行される方法であって、
前記産業機械に接続されたローカルコンピュータにおいて前記産業機械の駆動系の状態を示す状態データから抽出された特徴量を、前記ローカルコンピュータから取得することと、
前記特徴量に基づいて、前記駆動系における異常を判定することと、
前記特徴量に基づいて前記駆動系において異常があると判定したときに、前記状態データを取得することと、
前記駆動系に含まれ連動して動作するように互いに連結された複数の部品のそれぞれに対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの判定モデルに、前記状態データを入力することと、
前記判定モデルから出力される前記産業機械の前記複数の部品のそれぞれに対する異常の可能性を取得することと、
前記複数の部品における異常の可能性に基づいて、前記複数の部品から、保全対象とする部品を判定すること、
を備え
前記駆動系は、モータを含み、
前記状態データは、前記モータの角加速度を含む、
方法。
【請求項7】
前記複数の部品は、
第1の部品と、
前記第1の部品の動作に応じて動作する第2の部品と、
を含み、
前記異常の可能性を取得することは、共通の前記状態データから、前記判定モデルを用いて、前記第1の部品における異常の可能性と、前記第2の部品における異常の可能性とを取得することを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記判定モデルは、
前記状態データを入力として、前記第1の部品に対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの第1判定モデルと、
前記状態データを入力として、前記第2の部品に対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの第2判定モデルと、
を含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記状態データは、前記複数の部品のうちの一部における加速度に関するデータである、
請求項6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記複数の部品の少なくとも1つにおいて異常があると判定したときには、前記異常を知らせるための画面をディスプレイに表示させる信号を出力することをさらに備える。
請求項6から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
産業機械と、
前記産業機械の駆動系の状態を示す状態データを保存する記憶装置を含むローカルコンピュータと、
前記状態データを入力として、前記駆動系に含まれ連動して動作するように互いに連結された複数の部品のそれぞれに対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの判定モデルと、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記ローカルコンピュータにおいて前記状態データから抽出された特徴量を、前記ローカルコンピュータから取得し、
前記特徴量に基づいて、前記駆動系における異常を判定し、
前記特徴量に基づいて前記駆動系において異常があると判定したときに、前記状態データを取得し、
前記状態データから、前記判定モデルを用いて、前記複数の部品のそれぞれにおける異常の可能性を取得し、
前記複数の部品における異常の可能性に基づいて、前記複数の部品から、保全対象とする部品を判定し、
前記駆動系は、モータを含み、
前記状態データは、前記モータの角加速度を含む、
予知保全システム。
【請求項12】
前記複数の部品は、
第1の部品と、
前記第1の部品の動作に応じて動作する第2の部品と、
を含み、
前記プロセッサは、共通の前記状態データから、前記判定モデルを用いて、前記第1の部品における異常の可能性と、前記第2の部品における異常の可能性とを取得する、
請求項11に記載の予知保全システム。
【請求項13】
前記判定モデルは、
前記状態データを入力として、前記第1の部品に対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの第1判定モデルと、
前記状態データを入力として、前記第2の部品に対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みの第2判定モデルと、
を含む、
請求項12に記載の予知保全システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業機械の予知保全装置、方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械では、異常の発生を検知することが求められる場合がある。そのため、従来の技術では、産業機械の所定の出力値をセンサによって検出し、検出された出力値を閾値と比較することで、異常が判断されている(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平02-195498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業機械において、故障による停止の防止、或いは保全費用の低減のためには、機械が故障する前に、異常状態に近づいている部位を特定して保全することが重要である。しかし、上述した従来の技術では、異常状態に近づいている部位を精度良く特定することは容易ではない。特に、産業機械の駆動系では、複数の部位が連動して動作するように互いに連結されている。それらの部位のうち、どの部位が異常状態に近づいているを精度良く特定することは困難である。
【0005】
本開示の目的は、産業機械において故障の発生前に、保全対象とする部位を精度良く特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る産業機械の予知保全装置は、判定モデルとプロセッサとを備える。判定モデルは、状態データを入力として、複数の部位のそれぞれに対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みである。状態データは、産業機械の駆動系の状態を示す。複数の部位は、駆動系に含まれる。複数の部位は、連動して動作するように互いに連結されている。プロセッサは、状態データを取得する。プロセッサは、状態データから、判定モデルを用いて、複数の部位のそれぞれにおける異常の可能性を取得する。プロセッサは、複数の部位における異常の可能性に基づいて、複数の部位から、保全対象とする部位を判定する。
【0007】
第2の態様に係る方法は、産業機械の予知保全のためにプロセッサによって実行される方法である。当該方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、産業機械の駆動系の状態を示す状態データを取得することである。第2の処理は、判定モデルに、状態データを入力することである。判定モデルは、複数の部位のそれぞれに対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みである。複数の部位は、駆動系に含まれる。複数の部位は、連動して動作するように互いに連結されている。第3の処理は、判定モデルから出力される産業機械の複数の部位のそれぞれに対する異常の可能性を取得することである。第4の処理は、複数の部位における異常の可能性に基づいて、複数の部位から、保全対象とする部位を判定することである。
【0008】
第3の態様に係る予知保全システムは、産業機械と、記憶装置と、判定モデルと、プロセッサとを備える。記憶装置は、産業機械の状態を示す状態データを保存する。判定モデルは、状態データを入力として、複数の部位のそれぞれに対する異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みである。複数の部位は、駆動系に含まれる。複数の部位は、連動して動作するように互いに連結されている。コンピュータは、状態データから、判定モデルを用いて、複数の部位のそれぞれにおける異常の可能性を取得する。コンピュータは、複数の部位における異常の可能性に基づいて、複数の部位から、保全対象とする部位を判定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、産業機械において故障の発生前に、保全対象とする部位を精度良く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る予知保全システムを示す模式図である。
図2】産業機械の正面図である。
図3】スライド駆動系を示す図である。
図4】ダイクッション駆動系を示す図である。
図5】ローカルコンピュータによって実行される処理を示すフローチャートである。
図6】解析データの一例を示す図である。
図7】サーバによって実行される処理を示すフローチャートである。
図8】ローカルコンピュータによって実行される処理を示すフローチャートである。
図9】サーバによって実行される処理を示すフローチャートである。
図10】判定モデルを示す図である。
図11】学習データの一例を示す図である。
図12】保全管理画面の一例を示す図である。
図13】保全管理画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る予知保全システム1を示す模式図である。予知保全システム1は、産業機械において故障の発生前に、保全対象とする部位を判定するためのシステムである。予知保全システム1は、産業機械2A-2Cと、ローカルコンピュータ3A-3Cと、サーバ4とを含む。
【0012】
図1に示すように、産業機械2A-2Cは、異なるエリア内に配置されてもよい。或いは、産業機械2A-2Cは、同じエリア内に配置されてもよい。例えば、産業機械2A-2Cは、異なる工場内に配置されてもよい。或いは、産業機械2A-2Cは、同じ工場内に配置されてもよい。本実施形態において、産業機械2A-2Cは、プレス機械である。なお、図1では3つの産業機械が図示されている。しかし、産業機械の数は、3つより少なくてもよく、或いは3つより多くてもよい。
【0013】
図2は、産業機械2Aの正面図である。産業機械2Aは、スライダ11と、複数のスライド駆動系12a-12dと、ボルスタ16と、ベッド17と、ダイクッション装置18と、コントローラ5A(図1参照)とを含む。スライダ11は、上下に移動可能に設けられている。スライダ11には、上型21が取り付けられる。複数のスライド駆動系12a-12dは、スライダ11を動作させる。産業機械2Aは、例えば4つのスライド駆動系12a-12dを含む。図2では、2つのスライド駆動系12a,12bが示されている。他のスライド駆動系12c,12dは、スライド駆動系12a,12bの後方に配置されている。ただし、スライド駆動系の数は4つに限らず、4つより少なくてもよく、或いは4つより多くてもよい。
【0014】
ボルスタ16は、スライダ11の下方に配置されている。ボルスタ16には、下型22が取り付けられる。ベッド17は、ボルスタ16の下方に配置されている。ダイクッション装置18は、プレス時に下型22に上向きの荷重を付加する。詳細には、ダイクッション装置18は、プレス時に下型22のブランクホルダ部に上向きの荷重を負荷する。コントローラ5Aは、スライダ11とダイクッション装置18との動作を制御する。
【0015】
図3は、スライド駆動系12aを示す図である。図3に示すように、スライド駆動系12aは、サーボモータ23a、減速機24a、タイミングベルト25a、及びコンロッド26aなどの複数の部位を含む。サーボモータ23aと、減速機24aと、タイミングベルト25aと、コンロッド26aとは、連動して動作するように、互いに連結されている。
【0016】
サーボモータ23aは、コントローラ5Aによって制御される。サーボモータ23aは、出力軸27aとモータベアリング28aを含む。モータベアリング28aは、出力軸27aを支持している。減速機24aは、複数のギアを含む。減速機24aは、タイミングベルト25aを介して、サーボモータ23aの出力軸27aに連結されている。減速機24aは、コンロッド26aに連結されている。コンロッド26aは、スライダ11の支持軸29に接続されている。支持軸29は、支持軸ホルダ(図示せず)に対して、上下方向に摺動可能である。サーボモータ23aの駆動力は、タイミングベルト25a、減速機24a、及びコンロッド26aを介して、スライダ11に伝達される。それにより、スライダ11が上下に移動する。
【0017】
他のスライド駆動系12b-12dも、上述したスライド駆動系12aと同様の構成を有している。以下の説明では、他のスライド駆動系12b-12dの構成のうち、スライド駆動系12aの構成に対応するものについては、スライド駆動系12aの構成と同じ数字とスライド駆動系12b-12dのアルファベットとからなる符合を付するものとする。例えば、スライド駆動系12bは、サーボモータ23bを含む。スライド駆動系12cは、サーボモータ23cを含む。
【0018】
図2に示すように、ダイクッション装置18は、クッションパッド31と、複数のダイクッション駆動系32a-32dとを含む。クッションパッド31は、ボルスタ16の下方に配置されている。クッションパッド31は、上下に移動可能に設けられている。複数のダイクッション駆動系32a-32dは、クッションパッド31を上下に動作させる。産業機械2Aは、例えば4つのダイクッション駆動系32a-32dを含む。ただし、ダイクッション駆動系の数は4つに限らず、4つより少なくてもよく、或いは4つより多くてもよい。なお、図2では、2つのダイクッション駆動系32a,32bが示されている。他のダイクッション駆動系32c,32dは、ダイクッション駆動系32a,32bの後方に配置されている。
【0019】
図4は、ダイクッション駆動系32aを示す図である。図4に示すように、ダイクッション駆動系32aは、サーボモータ36a、タイミングベルト37a、ボールスクリュー38a、及び駆動部材39aなどの複数の部位を含む。サーボモータ36aと、タイミングベルト37aと、ボールスクリュー38aとは、連動して動作するように、互いに連結されている。サーボモータ36aは、コントローラ5Aによって制御される。サーボモータ36aは、出力軸41aとモータベアリング42aとを含む。モータベアリング42aは、出力軸41aを支持している。
【0020】
サーボモータ36aの出力軸41aは、タイミングベルト37aを介して、ボールスクリュー38aに連結されている。ボールスクリュー38aは、回転することで、上下に移動する。駆動部材39aは、ボールスクリュー38aと螺合するナット部を含む。駆動部材39aは、ボールスクリュー38aに押圧されることで、上方に移動する。駆動部材39aは、オイル室40aに配置されたピストンを含む。駆動部材39aは、オイル室40aを介して、クッションパッド31を支持している。
【0021】
他のダイクッション駆動系32b-32dも、上述したダイクッション駆動系32aと同様の構成を有している。以下の説明では、他のダイクッション駆動系32b-32dの構成のうち、ダイクッション駆動系32aの構成に対応するものについては、ダイクッション駆動系32aの構成と同じ数字とダイクッション駆動系32b-32dのアルファベットとからなる符合を付するものとする。例えば、ダイクッション駆動系32bは、サーボモータ36bを含む。ダイクッション駆動系32cは、サーボモータ36cを含む。
【0022】
他の産業機械2B,2Cの構成も、上述した産業機械2Aと同様である。図1に示すように、産業機械2B,2Cは、それぞれコントローラ5B,5Cによって制御される。なお、産業機械2A-2Cは、ダイクッション装置を備えないものであってもよい。例えば、産業機械2Cは、ダイクッション装置を備えないプレス機械である。
【0023】
ローカルコンピュータ3A-3Cは、それぞれ産業機械2A-2Cのコントローラ5A-5Cと通信する。図1に示すように、ローカルコンピュータ3Aは、プロセッサ51と記憶装置52と通信装置53とを含む。プロセッサ51は、例えばCPU(central processing unit)である。或いは、プロセッサ51は、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサ51は、プログラムに従って、産業機械2Aの予知保全のための処理を実行する。
【0024】
記憶装置52は、ROMなどの不揮発性メモリと、RAMなどの揮発性メモリとを含む。記憶装置52は、ハードディスク、或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでもよい。記憶装置52は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置52は、ローカルコンピュータ3Aを制御するためのコンピュータ指令及びデータを記憶している。通信装置53は、サーバ4と通信する。他のローカルコンピュータ3B,3Cの構成は、ローカルコンピュータ3Aと同様である。
【0025】
サーバ4は、産業機械2A-2Cの予知保全装置の一例である。サーバ4は、ローカルコンピュータ3A-3Cを介して、産業機械2A-2Cから、予知保全のためのデータを収集する。サーバ4は、収集したデータに基づいて、予知保全サービスを実行する。予知保全サービスでは、保全対象とする部位が特定される。サーバ4は、クライアントコンピュータ6と通信する。サーバ4は、クライアントコンピュータ6に、予知保全サービスを提供する。
【0026】
サーバ4は、第1通信装置55と、第2通信装置56と、プロセッサ57と、記憶装置58とを含む。第1通信装置55は、ローカルコンピュータ3A-3Cと通信を行う。第2通信装置56は、クライアントコンピュータ6と通信を行う。プロセッサ57は、例えばCPU(central processing unit)である。或いは、プロセッサ57は、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサ57は、プログラムに従って、予知保全サービスのための処理を実行する。
【0027】
記憶装置58は、ROMなどの不揮発性メモリと、RAMなどの揮発性メモリとを含む。記憶装置58は、ハードディスク、或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでもよい。記憶装置58は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置58は、サーバ4を制御するためのコンピュータ指令及びデータを記憶している。
【0028】
上述した通信は、3G、4G、或いは5Gなどの移動体通信ネットワークを介して行われてもよい。或いは、通信は、衛星通信などの他の無線通信ネットワークを介して行われてもよい。或いは、通信は、LAN,VPN,インターネットなどのコンピュータ通信ネットワークを介して行われてもよい。或いは、通信は、これらの通信ネットワークの組み合わせを介して行われてもよい。
【0029】
次に、予知保全サービスのための処理について説明する。図5は、ローカルコンピュータ3A-3Cによって実行される処理を示すフローチャートである。以下、ローカルコンピュータ3Aが図5に示す処理を実行する場合について説明するが、他のローカルコンピュータ3B,3Cも、ローカルコンピュータ3Aと同様の処理を実行する。
【0030】
図5に示すように、ステップS101では、ローカルコンピュータ3Aは、産業機械2Aのコントローラ5Aから、駆動系データを取得する。駆動系データは、駆動系12a-12d,32a-32dに含まれる部位の加速度を含む。例えば、駆動系データは、サーボモータ23a-23d,36a-36dの角加速度を含む。角加速度は、サーボモータ23a-23d,36a-36dの回転速度から算出されてもよい。或いは、角加速度は、振動センサなどのセンサによって検出されてもよい。以下、ローカルコンピュータ3Aが、駆動系12aの駆動系データを取得する場合について説明する。
【0031】
ローカルコンピュータ3Aは、所定の開始条件が満たされたときに、駆動系12aの駆動系データを取得する。所定の開始条件は、前回の取得から所定時間が経過していることを含む。所定時間は、例えば数時間であるが、これに限らない。所定の開始条件は、サーボモータ23aの回転速度が、所定の閾値を超えていることである。所定の閾値は、例えば産業機械2Aが、動作中であって、且つ、プレス加工中ではない状態であることを示す値であることが好ましい。
【0032】
ローカルコンピュータ3Aは、所定のサンプリング周期でサーボモータ23aの角加速度の複数の値を取得する。サンプル数は、例えば数百~数千であるが、これに限られない。1単位の駆動系データは、所定時間内にサンプリングされた複数の角加速度の値を含む。所定時間は、例えば、サーボモータ23aの数回転分に相当する時間であってもよい。
【0033】
ステップS102では、ローカルコンピュータ3Aは、解析データを生成する。ローカルコンピュータ3Aは、例えば、高速フーリエ変換によって、駆動系データから解析データを生成する。ただし、ローカルコンピュータ3Aは、高速フーリエ変換と異なる周波数解析のアルゴリズムを用いてもよい。駆動系データ及び解析データは、産業機械2Aの駆動系の状態を示す状態データの一例である。
【0034】
ステップS103では、ローカルコンピュータ3Aは、解析データから特徴量を抽出する。図6は、解析データの一例を示す図である。図6において、横軸は周波数であり、縦軸は振幅である。特徴量は、例えば、閾値以上の振幅のピークの値、及び、その周波数である。
【0035】
ステップS104では、ローカルコンピュータ3Aは、解析データと特徴量とを記憶装置52に保存する。ローカルコンピュータ3Aは、解析データと特徴量とを、それらに対応する駆動系データの取得時間を示すデータと共に保存する。ステップS105では、ローカルコンピュータ3Aは、特徴量をサーバ4に送信する。ここでは、ローカルコンピュータ3Aは、解析データではなく特徴量をサーバ4に送信する。
【0036】
ローカルコンピュータ3Aは、駆動系12aについて、1単位の状態データファイルを生成し、記憶装置52に状態データファイルを保存する。1単位の状態データファイルは、1単位の駆動系データと、当該駆動系データから変換された解析データと、特徴量とを含む。
【0037】
また、状態データファイルは、状態データが取得された時間を示すデータを含む。状態データファイルは、状態データファイルの識別子を示すデータを含む。状態データファイルは、対応する駆動系の識別子を示すデータを含む。識別子は、名称であってもよく、或いはコードであってもよい。ローカルコンピュータ3Aは、特徴量と、当該特徴量に対応する状態データファイルの識別子とを共に、サーバ4に送信する。
【0038】
ローカルコンピュータ3Aは、以上の処理と同様の処理を、他の駆動系12b-12d,32a-32dに対して実行する。ローカルコンピュータ3Aは、他の駆動系12b-12d,32a-32dのそれぞれについて、状態データファイルを生成する。ローカルコンピュータ3Aは、他の駆動系12b-12d,32a-32dのそれぞれについて、特徴量と、当該特徴量に対応する状態データファイルの識別子とを共に、サーバ4に送信する。また、ローカルコンピュータ3Aは、上述した処理を所定時間ごとに繰り返す。それにより、所定時間ごとの複数の状態データファイルが記憶装置52に保存され、蓄積される。
【0039】
ローカルコンピュータ3Bは、産業機械2Bに対して、ローカルコンピュータ3Aと同様の処理を実行する。また、ローカルコンピュータ3Cは、産業機械2Cに対して、ローカルコンピュータ3Aと同様の処理を実行する。
【0040】
図7は、サーバ4によって実行される処理を示すフローチャートである。以下の説明では、サーバ4がローカルコンピュータ3Aから特徴量を受信したときの処理について説明する。図7に示すように、ステップS201では、サーバ4は、特徴量を受信する。サーバ4は、ローカルコンピュータ3Aから、特徴量を受信する。
【0041】
ステップS202では、サーバ4は、駆動系12a-12d,32a-32dが正常であるかを判定する。サーバ4は、駆動系12a-12d,32a-32dに対応する特徴量から、駆動系12a-12d,32a-32dのそれぞれが、正常であるかを判定する。駆動系12a-12d,32a-32dが正常であるかの判定は、品質工学における公知の判定手法によって行われてもよい。例えば、サーバ4は、MT法(マハラノビス・タグチ法)を用いて、駆動系12a-12d,32a-32dが正常であるかを判定する。ただし、サーバ4は、他の手法を用いて、駆動系12a-12d,32a-32dが正常であるかを判定してもよい。
【0042】
ステップS202において、駆動系12a-12d,32a-32dの少なくとも1つが正常ではないと、サーバ4が判定したときには、処理はステップS203に進む。なお、駆動系12a-12d,32a-32dが正常ではないことは、駆動系12a-12d,32a-32dがまだ故障していないが、劣化がある程度まで進んだ状態を意味する。
【0043】
ステップS203では、サーバ4は、ローカルコンピュータ3Aに解析データを要求する。サーバ4は、解析データの送信の要求信号を、ローカルコンピュータ3Aに送信する。要求信号は、正常では無いと判定された駆動系に対応する状態データファイルの識別子を含む。サーバ4は、要求信号をローカルコンピュータ3Aに送信して、当該状態データファイルの解析データを要求する。
【0044】
図8は、ローカルコンピュータ3Aによって実行される処理を示すフローチャートである。図8に示すように、ステップS301では、ローカルコンピュータ3Aは、サーバ4からの解析データの要求があるかを判定する。ローカルコンピュータ3Aは、上述した要求信号をサーバ4から受信すると、解析データの要求があると判定する。
【0045】
ステップS302では、ローカルコンピュータ3Aは、解析データを検索する。ローカルコンピュータ3Aは、記憶装置52に保存された複数の状態データファイルから、要求された状態データファイル内の解析データを検索する。ステップS303では、ローカルコンピュータ3Aは、要求された解析データをサーバ4に送信する。
【0046】
図9は、サーバ4によって実行される処理を示すフローチャートである。図9に示すように、ステップS401では、サーバ4は、ローカルコンピュータ3Aから解析データを受信する。サーバ4は、記憶装置58に解析データを保存する。ステップS402では、サーバ4は、判定モデル60,70に解析データを入力する。
【0047】
図10A及び図10Bに示すように、サーバ4は、判定モデル60,70を有する。判定モデル60,70は、解析データを入力として、駆動系に含まれる部位の異常の可能性を出力するように、機械学習により学習済みのモデルである。判定モデル60,70は、人工知能のアルゴリズムと、学習によってチューニングされたパラメータとを含む。判定モデル60,70は、データとして記憶装置58に保存されている。判定モデル60,70は、例えば、ニューラルネットワークを含む。判定モデル60,70は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのディープニューラルネットワークを含む。
【0048】
サーバ4は、スライド駆動系12a-12d用の判定モデル60と、ダイクッション駆動系32a-32d用の判定モデル70とを有する。判定モデル60は、複数の判定モデル61-64を含む。複数の判定モデル61-64のそれぞれは、スライド駆動系12a-12dに含まれる複数の部位に対応している。判定モデル60は、入力された解析データの波形から、対応する部位の異常の可能性を示す値を出力する。判定モデル61-64は、学習データによって、学習済みである。
【0049】
学習データは、異常時の解析データと正常時の解析データとを含む。図11Aは、異常時の解析データの一例である。図11Bは、正常時の解析データの一例である。異常時の解析データは、対応する部位における異常発生直前から、異常発生時の所定期間前までの解析データである。図11Aに示すように、異常時の解析データでは、波形の複数のピークが所定の閾値Th1を超えている。正常時の解析データは、部位の使用時間が短く、且つ、異常が発生していないときの解析データである。正常時の解析データでは、波形の全てのピークは所定の閾値Th1よりも低い。
【0050】
図10Aに示すように、本実施形態では、サーバ4は、スライド駆動系12a-12dに対して、モータベアリング用の判定モデル61と、タイミングベルト用の判定モデル62と、コンロッド用の判定モデル63と、減速機用の判定モデル64とを有する。モータベアリング用の判定モデル61は、解析データから、モータベアリング28a-28dの異常の可能性を示す値を出力する。タイミングベルト用の判定モデル62は、解析データから、タイミングベルト25a-25dの異常の可能性を示す値を出力する。コンロッド用の判定モデル63は、解析データから、コンロッド26a-26dの異常の可能性を示す値を出力する。減速機用の判定モデル64は、解析データから、減速機24a-24dのベアリングの異常の可能性を示す値を出力する。
【0051】
図10Bに示すように、サーバ4は、ダイクッション駆動系32a-32dに対して、モータベアリング用の判定モデル71と、タイミングベルト用の判定モデル72と、ボールスクリュー用の判定モデル73とを有する。モータベアリング用の判定モデル71は、解析データから、モータベアリング42a-42dの異常の可能性を示す値を出力する。タイミングベルト用の判定モデル72は、解析データから、タイミングベルト37a-37dの異常の可能性を示す値を出力する。ボールスクリュー用の判定モデル73は、解析データから、ボールスクリュー38a-38dの異常の可能性を示す値を出力する。
【0052】
サーバ4は、ステップS401で取得した解析データを、上記の判定モデル61-64のそれぞれ、或いは、判定モデル71-73のそれぞれに入力する。例えば、スライド駆動系12aが正常ではないと判定されたときには、サーバ4は、スライド駆動系12aの解析データを、判定モデル61-64に入力する。それにより、サーバ4は、スライド駆動系12aの各部位の異常の可能性を示す値を出力値として取得する。
【0053】
或いは、ダイクッション駆動系32aが正常ではないと判定されたときには、サーバ4は、ダイクッション駆動系32aの解析データを判定モデル71-73に入力する。それにより、サーバ4は、ダイクッション駆動系32aの各部位の異常の可能性を示す値を出力値として取得する。
【0054】
ステップS403では、サーバ4は、出力値の最も大きい部位を、異常部位と判定する。例えば、サーバ4は、スライド駆動系12aに対して、モータベアリング用の判定モデル61と、タイミングベルト用の判定モデル62と、コンロッド用の判定モデル63と、減速機用の判定モデル64とからの出力値のうち、最も大きい値に対応する部位を、異常部位と判定する。或いは、サーバ4は、ダイクッション駆動系32aに対して、モータベアリング用の判定モデル71と、タイミングベルト用の判定モデル72と、ボールスクリュー用の判定モデル73とからの出力値のうち、最も大きい値に対応する部位を、異常部位と判定する。
【0055】
ステップS404では、サーバ4は、異常部位の残存寿命を算出する。例えば、サーバ4は、MT法(マハラノビス・タグチ法)などの品質工学の公知の手法を用いて、異常部位の残存寿命を算出してもよい。ただし、サーバ4は、他の手法を用いて、残存寿命を算出してもよい。
【0056】
ステップS405では、サーバ4は、予知保全データを更新する。予知保全データは、記憶装置58に保存されている。予知保全データは、サーバ4に登録されている産業機械2A-2Cの駆動系の残存寿命を示すデータを含む。予知保全データは、駆動系の複数の部位のうち、異常部位と判定された部位の残存寿命を示すデータを含む。
【0057】
ステップS406では、サーバ4は、保全管理画面の表示要求があるかを判定する。サーバ4は、クライアントコンピュータ6から、保全管理画面の要求信号を受信したときに、保全管理画面の表示要求があると判定する。保全管理画面の表示要求があるときには、サーバ4は、管理画面データを送信する。管理画面データは、クライアントコンピュータ6のディスプレイ7に、保全管理画面を表示するためのデータである。
【0058】
図12及び図13は、保全管理画面の一例を示す図である。保全管理画面は、図12に示す機械一覧画面81と、図13に示す機械個別画面82とを含む。クライアントコンピュータ6のユーザは、機械一覧画面81と機械個別画面82とを選択的にディスプレイ7に表示させることができる。機械一覧画面81が選択されたときには、サーバ4は、予知保全データに基づいて機械一覧画面81を示すデータを生成して、クライアントコンピュータ6に機械一覧画面81を示すデータを送信する。機械個別画面82が選択されたときには、サーバ4は、予知保全データに基づいて機械画面を示すデータを生成して、クライアントコンピュータ6に機械個別画面82を示すデータを送信する。
【0059】
図12は、機械一覧画面81の一例を示す図である。機械一覧画面81は、サーバ4に登録された複数の産業機械2A-2Cに関する予知保全データを表示する。図12に示すように、機械一覧画面81は、エリア識別子83と、機械識別子84と、駆動系識別子85と、寿命インジケータ86とを含む。機械一覧画面81では、エリア識別子83と、機械識別子84と、駆動系識別子85と、寿命インジケータ86とが一覧で表示される。
【0060】
エリア識別子83は、産業機械2A-2Cが配置されたエリアの識別子である。機械識別子84は、産業機械2A-2Cのそれぞれの識別子である。駆動系識別子85は、スライド駆動系12a-12d、或いはダイクッション駆動系32a-32dの識別子である。これらの識別子は、名称であってもよく、或いはコードであってもよい。
【0061】
寿命インジケータ86は、産業機械2A-2Cのそれぞれに対して、スライド駆動系12a-12d、或いはダイクッション駆動系32a-32dの残存寿命を示す。寿命インジケータ86は、残存寿命を示す数値を含む。残存寿命は、例えば日数で示される。ただし、残存寿命は、時間(hour)などの他の単位で示されてもよい。
【0062】
また、寿命インジケータ86は、残存寿命を示すグラフィック表示を含む。本実施形態において、グラフィック表示は、バー表示である。サーバ4は、残存寿命に応じて寿命インジケータ86のバーの長さを変更する。ただし、残存寿命は、他の表示態様によって表示されてもよい。
【0063】
サーバ4は、ステップS404と同様に、正常と判断された駆動系に対して、その特徴量から残存寿命を判定し、当該残存寿命を寿命インジケータ86で表示してもよい。サーバ4は、異常部位を含む駆動系に対しては、上述したステップS404で判定された異常部位の残存寿命を寿命インジケータ86で表示してもよい。
【0064】
サーバ4は、機械一覧画面81において、残存寿命に応じて複数の駆動系の寿命インジケータ86を色分けして表示する。例えば、残存寿命が第1閾値以上であるときには、サーバ4は、寿命インジケータ86を正常色で表示する。残存寿命が第1閾値より小さく、第2閾値以上であるときには、サーバ4は、寿命インジケータ86を第1警告色で表示する。残存寿命が第2閾値より小さいときには、サーバ4は、寿命インジケータ86を第2警告色で表示する。なお、第2閾値は、第1閾値より小さい。正常色と第1警告色と第2警告色とは、互いに異なる色である。従って、残存寿命が短い部位の寿命インジケータ86は、正常な部位の寿命インジケータ86と異なる色で表示される。
【0065】
図13は、機械個別画面82の一例を示す図である。サーバ4は、クライアントコンピュータ6から、機械個別画面82の要求信号を受信したときに、機械個別画面82をディスプレイ7に表示するためのデータをクライアントコンピュータ6に送信する。機械個別画面82は、サーバ4に登録された複数の産業機械2A-2Cから選択された1つの産業機械に関する予知保全データを表示する。ただし、機械個別画面82は、選択された複数の産業機械に関する予知保全データを表示してもよい。
【0066】
以下、産業機械2Aが選択された場合の機械個別画面82について説明する。機械個別画面82は、エリア識別子91と、産業機械の識別子92と、交換計画リスト93と、残存寿命グラフ94とを含む。エリア識別子91は、産業機械2Aが配置されたエリアの識別子である。機械識別子92は、産業機械2Aの識別子である。
【0067】
交換計画リスト93は、複数の部位のうち保全対象とする部位に関する予知保全データを表示する。上述した判定モデル60,70によって異常部位と判定された部位が、交換計画リスト93に表示される。従って、サーバ4は、複数の部位の少なくとも1つにおいて異常があると判定したときには、交換計画リスト93に当該部位を表示することで、ユーザに異常を知らせることができる。
【0068】
交換計画リスト93では、残存寿命の短いものから順に、産業機械2Aの各駆動系に含まれる複数の部位の少なくとも一部が表示される。交換計画リスト93は、優先度95と、更新日96と、駆動系の識別子97と、部位の識別子98と、寿命インジケータ99とを含む。
【0069】
優先度95は、駆動系の部位の交換の優先度を示す。残存寿命が短いほど、優先度95が高い。従って、交換計画リスト93では、残存寿命が最も短い部位の識別子98と寿命インジケータ99とが、最も上位に表示される。更新日96は、駆動系の部位の前回の交換日を示す。駆動系の識別子97は、スライド駆動系12a-12d、或いはダイクッション駆動系32a-32dの識別子である。
【0070】
部位の識別子98は、駆動系に含まれる部位の識別子である。例えば、部位の識別子98は、スライド駆動系12a-12dのサーボモータ、減速機、タイミングベルト、或いはコンロッドの識別子である。或いは、ダイクッション駆動系32a-32dのサーボモータ、タイミングベルト、或いはボールスクリューの識別子である。サーバ4は、上述した判定モデル60,70を用いて異常部位と判定した部位の識別子98を、交換計画リスト93に表示する。これらの識別子は、名称であってもよく、或いはコードであってもよい。
【0071】
寿命インジケータ99は、スライド駆動系12a-12d、或いはダイクッション駆動系32a-32dの各部位の残存寿命を示す。寿命インジケータ99は、各部位の残存寿命を示す数値とグラフィック表示とを含む。寿命インジケータ99については、上述した機械一覧画面81の寿命インジケータ86と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
残存寿命グラフ94は、駆動系12a-12d,32a-32dのそれぞれの残存寿命がグラフ化されている。残存寿命グラフ94において、横軸は、状態データが取得された時間(time)であり、縦軸は、特徴量から算出された残存寿命である。
【0073】
以上説明した本実施形態に係る産業機械2A-2Cの予知保全システム1では、サーバ4は、解析データから、判定モデル60,70を用いて、産業機械2A-2Cの各駆動系の複数の部位のそれぞれにおける異常の可能性を取得する。そして、サーバ4は、複数の部位における異常の可能性に基づいて、複数の部位から、保全対象とする部位を判定する。それにより、産業機械2A-2Cにおいて、故障の発生前に保全対象とする部位を精度良く特定することができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、産業機械は、プレス機械に限らず、溶接機械、或いは切断機などの他の機械であってもよい。上述した処理の一部が省略、或いは変更されてもよい。上述した処理の順番が変更されてもよい。
【0075】
ローカルコンピュータ3A-3Cの構成が変更されてもよい。例えば、ローカルコンピュータ3Aは、複数のコンピュータを含んでもよい。上述したローカルコンピュータ3Aによる処理は、複数のコンピュータに分散して実行されてもよい。ローカルコンピュータ3Aは、複数のプロセッサを含んでもよい。他のローカルコンピュータ3B,3Cについても、ローカルコンピュータ3Aと同様に変更されてもよい。
【0076】
サーバ4の構成が変更されてもよい。例えば、サーバ4は、複数のコンピュータを含んでもよい。上述したサーバ4による処理は、複数のコンピュータに分散して実行されてもよい。サーバ4は、複数のプロセッサを含んでもよい。上述した処理の少なくとも一部は、CPUに限らず、GPU(Graphics Processing Unit)などの他のプロセッサによって実行されてもよい。上述した処理は、複数のプロセッサに分散して実行されてもよい。
【0077】
判定モデルは、ニューラルネットワークに限らず、サポートベクターマシンなどの他の機械学習のモデルであってもよい。判定モデル61-64は一体であってもよい。判定モデル71-73は一体であってもよい。
【0078】
判定モデルは、学習データを用いて機械学習により学習したモデルに限らず、当該学習したモデルを利用して生成されたモデルであってもよい。例えば、判定モデルは、学習済みモデルに新たなデータを用いて更に学習させることで、パラメータを変化させ、精度をさらに高めた別の学習済みモデル(派生モデル)であってもよい。或いは、判定モデルは、学習済みモデルにデータの入出力を繰り返すことで得られる結果を基に学習させた別の学習済みモデル(蒸留モデル)であってもよい。
【0079】
判定モデルによる判定の対象となる部位は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。状態データは、モータの角加速度に限らず、変更されてもよい。例えば、状態データは、タイミングベルト、或いはコンロッドなどのモータ以外の部位の加速度、或いは速度であってもよい。
【0080】
保全管理画面は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、機械一覧画面81、及び/又は、機械個別画面82に含まれる項目が、変更されてもよい。機械一覧画面81、及び/又は、機械個別画面82の表示態様が、変更されてもよい。機械一覧画面81と機械個別画面82との一方が省略されてもよい。
【0081】
寿命インジケータ86の表示態様は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、寿命インジケータ86の色分けの数は、正常色と第1警告色との2色であってもよい。或いは、寿命インジケータ86の色分けの数は、3色より多くてもよい。
【0082】
判定モデルによる保全対象とする部位の判定結果は、上述した保全管理画面に限らず、他の方法によってユーザに報知されてもよい。例えば、判定結果が、電子メールなどの通知手段によってユーザに報知されてもよい。
【0083】
ステップS105において、ローカルコンピュータ3Aは、特徴量と解析データとをサーバ4に送信してもよい。その場合、ステップS203は省略されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示によれば、産業機械において故障の発生前に保全対象とする部位を精度良く特定することができる。
【符号の説明】
【0085】
2A-2C 産業機械
4 サーバ(予知保全装置)
57 プロセッサ
60,70 判定モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13