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特許7219121シートリフタ構造及びそれを備えた乗り物用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】シートリフタ構造及びそれを備えた乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/16 20060101AFI20230131BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20230131BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B60N2/16
A47C7/02 D
B60N2/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019039733
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2019156389
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】15/923498
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516303716
【氏名又は名称】アディエント・エンジニアリング・アンド・アイピー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】水越 敏充
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 将樹
(72)【発明者】
【氏名】御園生 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】安井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 元彦
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィツキー、 トーマス デイビッド
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/157678(WO,A1)
【文献】特開2008-087558(JP,A)
【文献】特開2015-010618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0035673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
F16C 11/04
A47C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションシートに備えられたサイドフレームを支持部材に対し昇降させて前記クッションシートを昇降させるシートリフタ構造であって、
前記支持部材に回動可能に支持されると共に、前記サイドフレームに回転可能に支持された軸部材に形成された一対のフランジ状膨出部に挟持固定されて前記サイドフレームに対向配置され、前記サイドフレームの昇降時に前記サイドフレームに沿って前記軸部材の軸線まわりに回動するセクタと、
前記セクタと対向し第1の外径を有する環状の第1の当接面と、前記サイドフレームと対向し前記第1の外径と異なる第2の外径を有する環状の第2の当接面とを有し、前記軸部材の軸線を中心軸として前記セクタと前記サイドフレームとの間に第1の向きで介装された環状のスペーサと、
前記セクタと前記サイドフレームとを接近する方向に付勢して前記セクタを前記第1の当接面に付勢当接させると共に前記サイドフレームを前記第2の当接面に付勢当接させる付勢部材と、
を備えたシートリフタ構造。
【請求項2】
前記スペーサは、前記フランジ状膨出部が非当接で進入可能な凹部を有すると共に、前記第1の向きに対し前記軸線方向の逆向きに介装させた場合に、前記フランジ状膨出部が前記スペーサに当接して前記第2の当接面が前記セクタに当接不能となる、請求項1記載のシートリフタ構造。
【請求項3】
クッションシートとシートバックとを有し乗り物に搭載される乗り物用シートであって、
前記クッションシートに備えられたサイドフレームを、前記乗り物の床に固定された固定レールに支持された可動レールに対し昇降させて前記クッションシートを昇降させるシートリフタ構造を備え、
前記シートリフタ構造は、
前記可動レールに回動可能に支持されると共に、前記サイドフレームに回転可能に支持された軸部材に形成された一対のフランジ状膨出部に挟持固定されて前記サイドフレームに対向配置され、前記サイドフレームの昇降時に前記サイドフレームに沿って前記軸部材の軸線まわりに回動するセクタと、
前記セクタと対向し第1の外径を有する環状の第1の当接面と、前記サイドフレームと対向し前記第1の外径と異なる第2の外径を有する環状の第2の当接面とを有し、前記軸部材の軸線を中心軸として前記セクタと前記サイドフレームとの間に第1の向きで介装された環状のスペーサと、
前記セクタと前記サイドフレームとを接近する方向に付勢して前記セクタを前記第1の当接面に付勢当接させると共に前記サイドフレームを前記第2の当接面に付勢当接させる付勢部材と、
を備えたシートリフタ構造である、
乗り物用シート。
【請求項4】
前記スペーサは、前記フランジ状膨出部が非当接で進入可能な凹部を有すると共に、前記第1の向きに対し前記軸線方向の逆向きに介装させた場合に、前記フランジ状膨出部が前記スペーサに当接して前記第2の当接面が前記セクタに当接不能となる、請求項3記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートリフタ構造及びそれを備えた乗り物用シートに係る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、乗り物用シートに備えられてクッションシートを昇降するシートリフタにおいて、セクタが、一対のサイドパネルの軸受孔にブッシングを介して回転自在に挿通された管軸部材に溶接固定されている構造が知られている。
また、この構造に対し、セクタとサイドパネルとの間の管軸部材に環状のスペーサを外嵌させると共にセクタとサイドパネルとを接近させる方向に管軸部材を付勢する構造を付加し、リフト動作に伴うセクタの回動で生じる、スペーサとセクタ及びブッシングとの間の摺動摩擦力によってトルク(静トルク及び動トルク)を発生させることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-202627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のシートリフタ構造は、リフタの動作でセクタが回動した際に、スペーサが、セクタとブッシングとのどちらと摺動するかが定まらない構造であった。そのため、セクタ回動時のトルク(静トルク及び動トルク)が安定しにくいという点で改善の余地があった。
一方、シートの軽量化に伴い管軸部材の薄肉化も検討されている。しかしながら、管軸部材を薄肉化するとセクタの溶接が困難となるため、セクタを、溶接以外の方法で管軸部材に固定する必要があった。
そのため、セクタ回動時のトルク安定化改善は、セクタを管軸部材に溶接以外の方法で固定する構造において実現することが期待されていた。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、軸部材に溶接以外の方法で固定されたセクタの回動を安定したトルクで得ることができる、シートリフタ構造及びそれを備えた乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) クッションシートに備えられたサイドフレームを支持部材に対し昇降させて前記クッションシートを昇降させるシートリフタ構造であって、
前記支持部材に回動可能に支持されると共に、前記サイドフレームに回転可能に支持された軸部材に形成された一対のフランジ状膨出部に挟持固定されて前記サイドフレームに対向配置され、前記サイドフレームの昇降時に前記サイドフレームに沿って前記軸部材の軸線まわりに回動するセクタと、
前記セクタと対向し第1の外径を有する環状の第1の当接面と、前記サイドフレームと対向し前記第1の外径と異なる第2の外径を有する環状の第2の当接面とを有し、前記軸部材の軸線を中心軸として前記セクタと前記サイドフレームとの間に第1の向きで介装された環状のスペーサと、
前記セクタと前記サイドフレームとを接近する方向に付勢して前記セクタを前記第1の当接面に付勢当接させると共に前記サイドフレームを前記第2の当接面に付勢当接させる付勢部材と、
を備えたシートリフタ構造である。
2) 前記スペーサは、前記フランジ状膨出部が非当接で進入可能な凹部を有すると共に、前記第1の向きに対し前記軸線方向の逆向きに介装させた場合に、前記フランジ状膨出部が前記スペーサに当接して前記第2の当接面が前記セクタに当接不能となる、1)に記載のシートリフタ構造である。
3) クッションシートとシートバックとを有し乗り物に搭載される乗り物用シートであって、
前記クッションシートに備えられたサイドフレームを、前記乗り物の床に固定された固定レールに支持された可動レールに対し昇降させて前記クッションシートを昇降させるシートリフタ構造を備え、
前記シートリフタ構造は、
前記可動レールに回動可能に支持されると共に、前記サイドフレームに回転可能に支持された軸部材に形成された一対のフランジ状膨出部に挟持固定されて前記サイドフレームに対向配置され、前記サイドフレームの昇降時に前記サイドフレームに沿って前記軸部材の軸線まわりに回動するセクタと、
前記セクタと対向し第1の外径を有する環状の第1の当接面と、前記サイドフレームと対向し前記第1の外径と異なる第2の外径を有する環状の第2の当接面とを有し、前記軸部材の軸線を中心軸として前記セクタと前記サイドフレームとの間に第1の向きで介装された環状のスペーサと、
前記セクタと前記サイドフレームとを接近する方向に付勢して前記セクタを前記第1の当接面に付勢当接させると共に前記サイドフレームを前記第2の当接面に付勢当接させる付勢部材と、
を備えたシートリフタ構造である、
乗り物用シートである。
4) 前記スペーサは、前記フランジ状膨出部が非当接で進入可能な凹部を有すると共に、前記第1の向きに対し前記軸線方向の逆向きに介装させた場合に、前記フランジ状膨出部が前記スペーサに当接して前記第2の当接面が前記セクタに当接不能となる、3)に記載の乗り物用シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軸部材に溶接以外の方法で固定されたセクタの回動を安定したトルクで得ることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施例のシートSTの外観斜視図である。
図2図2は、シートSTが備えるシートリフタ構造LKを説明するための図である。
図3図3は、図2におけるS3-S3位置での断面図である。
図4図4は、シートリフタ構造LKが備えるスペーサ13を説明するための半断面図である。
図5図5は、スペーサ13などの部材に作用する力を説明するための図3の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るシートリフタ構造及びそれを備えた乗り物用シートの実施例であるシートリフタ構造LK及びシートSTの概略構成について図1を参照して説明する。
図1は、シートSTの外観斜視図である。以下の説明において、前後左右上下の各方向を、図1に示される矢印により、シートSTが車両Cに搭載された状態に基づいて規定する。左右方向は幅方向とも称する。
【0010】
図1に示されるように、シートSTは、クッションシートST1及びシートバックST2を有する。
シートSTは、乗り物の車両Cの床面C1に設置された固定部材としての一対のレール61,61に対し、周知のスライド構造により前後方向に移動可能に取り付けられている。
【0011】
シートSTは、クッションシートST1及びシートバックST2を、床面C1に対し昇降可能とするシートリフタ構造LKを有している。次に、このシートリフタ構造LKについて図2を参照して説明する。
図2は、図1のA部における内部のフレーム構造を説明するための図であり、図1とほぼ同じ視点から見た斜視図である。図2において、左方はシートの内側となり、右方は外側となる。
【0012】
図2には、クッションシートST1に備えられた骨格となるフレームFR1として、クッションシートST1の前部において左右に延びるフロントフレーム1の一部と、フロントフレーム1の左右両端から後方に延びる一対のサイドフレームの内の左側のサイドフレーム2と、サイドフレーム2の後端部に連結された中継パネル3と、が示されている。
また、シートバックST2に備えられた骨格となるフレームFR2としては、中継パネル3に対し回動自在に支持されたシートバックサイドフレーム4の一部が示されている。
【0013】
サイドフレーム2の後部の内側面には、ジョイントプレート5が溶接により取り付けられている。ジョイントプレート5と中継パネル3とサイドフレーム2とは、ねじN1により締結一体化されている。
【0014】
既述のように、車両の床面Cには、レール61が固定されており、レール61には、可動レール21が前後移動可能に支持されている。
サイドフレーム2及びサイドフレーム2を有するクッションシートST1は、昇降するサイドフレーム2を支持する支持部材としての可動レール21に対して昇降するようになっている。
【0015】
詳しくは、サイドフレーム2は、前部がリンクバー22を介して可動レール21に対し軸線CLfまわりに回動可能に支持されている。
また、後部については、まず、可動レール21に対し、セクタ7が軸線CLbまわりに回動可能に設けられている。セクタ7は、管軸部材である後部シャフト6に固定されており、後部シャフト6は、サイドフレーム2に対し軸線CL6まわりに正逆回転可能に支持されている。
すなわち、サイドフレーム2の後部は、サイドフレーム2に対し対向配置されたセクタ7が軸線CLbまわりにサイドフレーム2に沿って回動することで、可動レール21に対し後部シャフト6を介して軸線CLbまわりに回動昇降可能に支持されている。
【0016】
この支持構成において、セクタ7にはギヤ部7aが設けられており、ギヤ部7aは、サイドフレームに取り付けられたブレーキユニット8の出力軸である軸部8aに結合されたピニオン8bに噛合している。
ブレーキユニット8の軸部8aは、例えば、図示しないリフト操作機構を乗員が操作することで、ステップ的に回動する。
すなわち、軸部8aが回動することで、ピニオン8bを介してセクタ7及び後部シャフト6が軸線CLbまわりに回動してサイドフレーム2は上昇する。
上昇したサイドフレーム2は、ピニオン8bを逆回転させることで下降する。
また、リフト用モータを備えてその出力軸を軸部8aに連結した態様とし、リフト用モータの動作によって軸部8aを正逆回動させてサイドフレーム2を昇降させてもよい。
【0017】
次に、サイドフレーム2におけるセクタ7及び後部シャフト6の支持部構造について、図2図5を参照して詳述する。
【0018】
図2におけるS3-S3位置での断面図である図3に示されるように、サイドフレーム2は、バーリング加工で内方凸に形成された突き出し部2h1を伴った支持孔2hを有する。
支持孔2hには、金属製で環状のブッシング11が取り付けられている。
ブッシング11は、後部シャフト6の周面に対向する環状の基部11aと、基部11aの外方端から径外方向に延出した外フランジ部11bと、基部11aの内方端から径外方向に延出した内フランジ部11cと、を有して断面略コ字状に形成されている。
これにより、突き出し部2h1の内面及び周面は、それぞれブッシング11の内フランジ部11c及び基部11aにより覆われ、外面における支持孔2hの縁部近傍は、外フランジ部11bによって覆われている。
【0019】
支持孔2hは、このブッシング11を介して、左右方向に延びる管状の軸部材である後部シャフト6を回転自在に支持している。
後部シャフト6の孔は、キャップ15が嵌め込まれて塞がれ、径方向の変形が防止されている。
【0020】
ブッシング11における外フランジ部11bの外径φ11bは、内フランジ部11cの外径φ11cよりも大きく設定されている。
ブッシング11の内フランジ部11cの内側面と、サイドフレーム2の内側面2bとの間の軸方向距離を、距離L11としておく。
【0021】
後部シャフト6の左側におけるサイドフレーム2に近い部位には、軸線CL6方向に離隔して、一対のフランジ状膨出部6a,6bが形成されている。
フランジ状膨出部6a,6bは、後部シャフト6を軸方向に圧縮し径方向外側へ向け密着して折り返すように張り出させたフランジとして形成されている。
フランジ状膨出部6a,6bは、それぞれの外径φ6a,φ6b同士が等しくなるよう形成されている。
また、フランジ状膨出部6bの軸方向の幅(厚さ)を、厚さL6とする。厚さL6は、距離L11よりも小さくなっている。
【0022】
一対のフランジ状膨出部6a,6bの間には、セクタ7が、後部シャフト6と実質一体化するよう強固に挟持固定されている。
ここで、セクタ7の軸方向外側を向く外側面7dと、サイドフレーム2の内側面2bとの間の軸方向距離を距離L7としておく。
【0023】
セクタ7とサイドフレーム2との間には、樹脂製で環状のスペーサ13が介装されている。
図4は、このスペーサ13の詳細形状を説明するための半断面図である。図4における左右(外内)方向は、図3に示された装着姿勢に対応している。
【0024】
図4に示されるように、スペーサ13は、孔13aを有して径方向に延在する環状の基部13bと、基部13bの外周部から左方(外方)に環状に距離Lcで突出する外当接部13cと、基部13bの外周部から右方(内方)に環状に距離Ldで突出する内当接部13dと、を有する。
【0025】
ここで、径方向において、外当接部13cの内径及び外径を、それぞれφ13c1及びφ13c2とし、内当接部13dの内径及び外径を、それぞれφ13d1及びφ13d2とすると、少なくとも外当接部13cの外径φ13c2と、内当接部13dの外径φ13d2と、が異なる外径として設定されている。
詳しくは、この例において、外当接部13cの外径φ13c2は、内当接部13dの外径φ13d2よりも小さくなっている。
【0026】
また、内当接部13dの内径φ13d1は、フランジ状膨出部6bの外径φ6bよりも大きく設定されている。
また、外当接部の内径φ13c1は、ブッシング11の内フランジ部11cの外径φ11cよりも大きく設定されている。
【0027】
一方、軸方向において、スペーサ13の全体の厚さ、すなわち、内当接部13dの先端面13daと外当接部13cの先端面13caとの間の軸方向の距離L13は、セクタ7の外側面7dと、サイドフレーム2の内側面2bとの間の軸方向距離を距離L7(図3参照)に対し、わずかに小さく設定されている。
また、内当接部13dの突出高さである距離Ldは、フランジ状膨出部6bの厚さL6(図3参照)よりも大きく設定され、外当接部13cの突出高さである距離Lcは、ブッシング11の内フランジ部11cの内側面とサイドフレーム2の内側面との間の軸方向距離である距離L11(図3参照)よりも大きく設定されている。
また、距離Ldは、距離Lcよりも小さく、かつ距離L11よりも小さく設定されている。
【0028】
図3に戻り、後部シャフト6における支持孔2hよりも外側(右側)には、皿ばねとして機能するプッシュリング12が取り付けられている。
具体的には、プッシュリング12の内径部には、周方向に離隔して縮径方向に突出する複数の突起12aが形成され、外径部には、ブッシング11の外フランジ部11bに対し食い込まず滑らかに当接させるため内方凸に形成された湾曲部12bが形成されている。
プッシュリング12は、後部シャフト6に対し外方側から強嵌合で圧入されて軸方向の弾性反発力を発揮する付勢部材であって、ブッシング11の外フランジ部11bを、内方(右方向)に付勢する。
【0029】
スペーサ13は、上述の形状及びその寸法関係により、内当接部13dをセクタ7側とした向きで、セクタ7とサイドフレーム2との間に介装されている。
さらに、プッシュリング12の外フランジ部11bを内方に付勢する弾性反発力の反力によって、セクタ7はサイドフレーム2に相対的に接近する。
【0030】
図5は、スペーサ13及びその近傍の部材間に働く力などを説明するための図3の部分拡大図である。図を見やすくするために、ハッチングは削除してある。
ここで、スペーサ13とセクタ7との間の摩擦係数及びスペーサ13とサイドフレーム2との間の摩擦係数は、いずれも金属と樹脂との間の摩擦係数となり、実質的に差はなく等しいものとして見なすことができる。
【0031】
図5に示されるように、スペーサ13は、外当接部13cの先端面13caがサイドフレーム2の内側面2bに付勢当接し、内当接部13dの先端面13daがセクタ7の外側面7dに付勢当接する。
プッシュリング12がその湾曲部12bでブッシング11の外フランジ部11bを内方に力F1で付勢すると、後部シャフト6は、その反力で力F1と同じ大きさの力F2で外方に押される。
これにより、後部シャフト6と一体のセクタ7は、その外側面7dがスペーサ13の内当接部13dの先端面13daを外方に力F2と同じ大きさの力F3で付勢する。
スペーサ13は、このF3に対応した反力として外当接部13cの先端面13caにサイドフレーム2から内方への力F4を受ける。
すなわち、先端面13ca及び先端面13daは、それぞれサイドフレーム2及びセクタ7に付勢当接する付勢当接面となる。
【0032】
このプッシュリング12の弾性力に起因する力F3及び力F4がスペーサ13に付与されている状態で、既述のリフト動作が実行され、サイドフレーム2に対するセクタ7が相対回動する場合を考える。
この場合、内当接部13dの最大径である外径φ13d2が外当接部13cの最大径である外径φ13c2よりも大きく、力F3と力F4の大きさが等しいことから、セクタ7とスペーサ13との摺動における静止摩擦係数と力F3との積に基づく静トルクは、スペーサ13とサイドフレーム2との摺動における静止摩擦係数と力F4との積に基づく静トルクよりも大きくなる。
同様に、セクタ7とスペーサ13との摺動における動摩擦係数と力F3との積に基づく動トルクは、スペーサ13とサイドフレーム2との摺動における動摩擦係数と力F4との積に基づく動トルクよりも大きくなる。
【0033】
そのため、リフト動作でサイドフレーム2に対するセクタ7の相対回動が生じる場合、静トルクが小さい方のスペーサ13とサイドフレーム2との間で摺動が生じ、摺動が開始された後も、そのまま動トルクが小さいスペーサ13とサイドフレーム2との間で摺動が継続する。
これにより、シートリフタ構造LKでは、サイドフレーム2とセクタ7との相対回動において、スペーサ13は、必ず同じ部材(サイドフレーム2)に対し摺動するので、リフト動作に伴うセクタ7の回動を、安定したトルクで行うことができる。
【0034】
シートリフタ構造LKは、スペーサ13が、逆向きに装着できないようなっているので、次に説明する。
まず、スペーサ13は、図3図5に示される正規の取り付け姿勢で、後部シャフト6のフランジ状膨出部6b及びブッシング11の内フランジ部11cと干渉しない形状を有する。
【0035】
詳しくは、スペーサ13における外当接部13cの内径φ13c1及び突出高さである距離Lcを、それぞれブッシング11の内フランジ部11cの外径φ11c及びサイドフレーム2からの突出高さである距離L11よりも大きく設定してある。また、スペーサ13における内当接部13dの内径φ13d1及び突出高さである距離Ldを、それぞれフランジ状膨出部6bの外径φ6b及び厚さL6よりも大きく設定してある。
さらに、内当接部13dの内径φ13c1を、フランジ状膨出部6bの外径φ6bよりも小さくし、内当接部13dの突出高さである距離Ldを、内フランジ部11cのサイドフレーム2からの突出高さである距離L11よりも小さく設定してある。
【0036】
すなわち、スペーサ13は、軸線CL6についての図3に示される正規の取り付け向きにおいて、内当接部13dを有することで、フランジ状膨出部6bがスペーサ13に対し非当接で進入可能な環状の凹部13e(図4も参照)を備えていると見なすことができる。また、同様に、外当接部13cを有することで、ブッシング11の内フランジ部11c及びサイドフレーム2の突き出し部2h1を非当接で進入可能とする環状の凹部13f(図4も参照)を備えていると見なすことができる。
【0037】
そして、スペーサ13は、軸方向に逆向きで取り付けようとした場合に、後部シャフト6のフランジ状膨出部6b及びブッシング11の内フランジ部11cに干渉して、先端面13ca及び13daがそれぞれセクタ7及びサイドフレーム2に当接不能となり、取り付けできないようになっている。
これにより、製造時の作業ミスを防止でき、予め設定した面同士(この例では、スペーサ13における外当接部13cの先端面13caとサイドフレーム2の内側面2bで必ず摺動するので、乗り物用シートの製品品質が安定する。
【0038】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0039】
スペーサ13が摺動する面は、上述のサイドフレーム2の内側面2bに限定されず、セクタ7の外側面7dとしてもよい。この場合は、スペーサ13の内当接部13dの最大径を、外当接部13cの最大径よりも小さく設定すればよい。
上述のセクタ7の位置は、後部シャフト6の左部に限定されず、右部にあってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 フロントフレーム
2 サイドフレーム
2b 内側面、 2h 支持孔、 2h1 突き出し部
3 中継パネル
4 シートバックサイドフレーム
5 ジョイントプレート
6 後部シャフト、 6a,6b フランジ状膨出部
7 セクタ、 7a ギヤ部、 7d 外側面
8 ブレーキユニット、 8a 軸部、 8b ピニオン
11 ブッシング
11a 基部、 11b 外フランジ部、 11c 内フランジ部
12 プッシュリング、 12a 突起、 12b 湾曲部
13 スペーサ
13a 孔、 13b 基部、 13c 外当接部
13ca,13da 先端面、 13d 内当接部
13e,13f 凹部
15 キャップ
21 可動レール
22 リンクバー
61 レール
C 車両、 C1 床面
CLb,CLf,CL6 軸線
F1~F4 力
FR1,FR2 フレーム
L11,L7,L13,Lc,Ld 距離
L6 厚さ
LK シートリフタ構造
N1 ねじ
ST シート、 ST1 クッションシート、 ST2 シートバック
φ11b,φ11c,φ6a,φ6b,φ13c2,φ13d2 外径
φ13c1,φ13d1 内径
図1
図2
図3
図4
図5