(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】鋼管矢板及び鋼管矢板の打設方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/08 20060101AFI20230131BHJP
E02D 5/16 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
E02D5/08
E02D5/16
(21)【出願番号】P 2019070770
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594094124
【氏名又は名称】一般財団法人阪神高速先進技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】金治 英貞
(72)【発明者】
【氏名】小坂 崇
(72)【発明者】
【氏名】篠原 聖二
(72)【発明者】
【氏名】西海 能史
(72)【発明者】
【氏名】西原 知彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
(72)【発明者】
【氏名】澤村 康生
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-018905(JP,U)
【文献】実開昭54-051410(JP,U)
【文献】特開2018-084060(JP,A)
【文献】実開昭53-125221(JP,U)
【文献】特開2012-007325(JP,A)
【文献】特開2004-197399(JP,A)
【文献】実開昭56-159437(JP,U)
【文献】特開平05-051926(JP,A)
【文献】特開2000-257065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/08
E02D 5/16
E02D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管で形成された矢板本体と、
上記矢板本体の側面の上部に設けられ、軸方向に延びるスリットを有する円形断面の鋼管で形成された継手と、
上記矢板本体の側面の下部に上記継手の延長上に設けられた被案内部材とを備えた鋼管矢板であって、
先行して打設された先行鋼管矢板に隣接して打設されるとき、上記被案内部材が、上記先行鋼管矢板の継手のスリットに嵌合することなく当該継手の外側面に接して摺動することにより、打設位置が案内されるように形成されていることを特徴とする鋼管矢板。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管矢板において、
上記被案内部材が、上記継手よりも大きい直径を有する鋼管で形成されていると共に上記継手の直径よりも小さい幅の軸方向に延在する開口を有する接触部を有し、上記先行鋼管矢板の継手を、上記開口を通して上記接触部の内側に収容するように形成されていることを特徴とする鋼管矢板。
【請求項3】
請求項1に記載の鋼管矢板において、
上記被案内部材が、平面視において互いの間に角度を成して接続された2つの板状体で形成された接触部を有し、この接触部の2つの板状体が上記先行鋼管矢板の継手の外側面に夫々接するように形成されていることを特徴とする鋼管矢板。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の鋼管矢板において、
上記被案内部材が、上記矢板本体の径方向に延在して上記接触部を上記矢板本体に固定する板状の固定部を有することを特徴とする鋼管矢板。
【請求項5】
請求項1に記載の鋼管矢板において、
上記被案内部材が、上記矢板本体の側面から突出すると共に長手方向に延在する板状体で形成され、上記先行鋼管矢板の継手の外側面に接するように形成されていることを特徴とする鋼管矢板。
【請求項6】
請求項5に記載の鋼管矢板において、
上記被案内部材が、上記先行鋼管矢板の継手の両側に延在するように配置された2つの上記板状体で形成されていることを特徴とする鋼管矢板。
【請求項7】
請求項6に記載の鋼管矢板において、
上記被案内部材の2つの上記板状体が、上記矢板本体の表面に沿って固定された連結部によって連結され、一体に形成されていることを特徴とする鋼管矢板。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の鋼管矢板を地中に打設する方法であって、
第1の鋼管矢板を地中に打設する工程と、
上記第1の鋼管矢板に対して配列方向に所定間隔をおいて第2の鋼管矢板を地中に打設する工程と、
第3の上記鋼管矢板を、上記被案内部材が上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手に夫々接する状態で地上に設置する工程と、
上記第3の鋼管矢板を、この第3の鋼管矢板の被案内部材が上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手により案内されながら地中に打設する工程と、
上記第3の鋼管矢板の被案内部材が案内された上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手の上端に、上
記第3の鋼管矢板の継手の下端を嵌合する工程と、
上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手に上
記第3の鋼管矢板の継手が嵌合された状態で、上記第3の鋼管矢板を所定の打設深さまで打設する工程と
を備えることを特徴とする鋼管矢板の打設方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の鋼管矢板を地中に打設する方法であって、
複数の鋼管矢板を配列する方向に延在する誘導部材を、上記鋼管矢板の軸方向に所定間隔をおいて複数段設置する工程と、
上記鋼管矢板を、上記矢板本体の側面が上記複数段の誘導部材に沿うように設置する工程と、
上記鋼管矢板を、上記矢板本体を複数段の誘導部材で誘導しながら地中に打設する工程と
を備えることを特徴とする鋼管矢板の打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼管矢板基礎等に用いられる鋼管矢板と、鋼管矢板の打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土木工事における土留めや止水のために、鋼管矢板が用いられている。鋼管矢板は、鋼管で形成された矢板本体と、この矢板本体の側面に固定され、矢板本体と同じ長さを有する小径の鋼管で形成された継手を備える。鋼管矢板の継手は、矢板本体に固定された側と反対側の側面に、軸方向に延在するスリットが形成されており、隣り合う鋼管矢板の互いの継手が、互いのスリットに挿通されるように嵌合することで、複数の鋼管矢板を互いに連結するように構成されている。
【0003】
鋼管矢板を用いて鋼管矢板基礎を施工する場合、複数の鋼管矢板を井筒状に配置して互いに連結するため、鋼管矢板を打設する際に高い精度が求められる。鋼管矢板基礎設計便覧では、鋼管矢板の傾斜の目標管理値が1/500以内と規定されているが、鋼管矢板の長さが70mであると、目標管理値の範囲であっても水平方向に140mmのずれが生じる。この場合、一般的な鋼管矢板の継手は直径が200mmであるため、隣接する鋼管矢板の継手との嵌合が困難となる。このような不都合を防止するためには、更に高い精度で打設を行う必要があり、打設作業の手間と難度が高まる不都合がある。
【0004】
また、鋼管矢板で形成された壁体の止水を行う場合、連結した鋼管矢板の相互間の継手の内側を洗浄し、止水材を充填する継手処理を行う必要があるが、打設の際に継手の内側に詰まった砂や石を除去する作業に手間がかかり、継手処理が困難になる不都合がある。
【0005】
そこで、従来、矢板本体の下部の継手を削除し、上部の継手により互いに連結を行うように構成された鋼管矢板が開発されている(例えば、特許文献1参照)。この鋼管矢板は、鋼管矢板の強度や、鋼管矢板で構成される構造物の強度に問題が生じない範囲で、矢板本体の下部の継手を省略し、上部の継手で互いの鋼管矢板を連結するように構成されている。この鋼管矢板は、全長に亘る継手を有する鋼管矢板よりも継手の長さが短いので、先行して打設された鋼管矢板が傾斜していても、継手の水平方向のずれが小さい。したがって、鋼管矢板に傾斜が生じても、継手を嵌合して鋼管矢板の相互を連結することができる。また、継手処理を行う長さが短くなるので、継手処理の作業の手間を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記矢板本体の上部に継手を設けた鋼管矢板は、下部に継手が無いので、先行して打設された第一の鋼管矢板に隣接して第二の鋼管矢板を打設する場合、第一の鋼管矢板の上に治具を設置する必要がある。この治具は、第一の鋼管矢板の矢板本体と同じ径の母管と、この母管の両側に設けられた継手を有する。この治具を、第一の鋼管矢板の上端に、この鋼管矢板の継手と治具の継手の位置が一致するように連結することにより、地表面から突出する第一の鋼管矢板の継手と治具の継手を合わせた長さを、第二の鋼管矢板の継手が欠損した下部の長さと同じにしている。これにより、第一の鋼管矢板に隣接して第二の鋼管矢板の下端を地表面に設置したとき、治具の継手の上端に第二の鋼管矢板の継手の下端が位置するので、この第二の鋼管矢板の継手の下端を治具の継手の上端に嵌合できる。この後、第二の鋼管矢板を打ち込むことにより、第二の鋼管矢板の継手が治具の継手を経て第一の鋼管矢板の継手に嵌合する。さらに、第二の鋼管矢板を所定の深さまで打ち込むことにより、第一の鋼管矢板と第二の鋼管矢板が上部の継手で連結された壁体を地中に形成する。
【0008】
このように、下部に継手の無い従来の鋼管矢板は、上部の継手を連結するために、先行する鋼管矢板に治具を設置する必要があるので、施工に手間がかかる問題がある。また、先行する第一の鋼管矢板に隣接して第二の鋼管矢板を打設する場合、鋼管矢板の上端に設置した治具の継手に第二鋼管矢板の継手を嵌合させる作業が、地表面から離れた高所作業となるので、作業の手間が増大する問題がある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、下部に継手の無い鋼管矢板であって、治具を用いることなく、少ない手間により打設して連結することができる鋼管矢板を提供することにある。また、傾斜により継手の連結が困難になる不都合を軽減できる鋼管矢板を提供することにある。また、これらの鋼管矢板の打設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の鋼管矢板は、鋼管で形成された矢板本体と、
上記矢板本体の側面の上部に設けられ、軸方向に延びるスリットを有する円形断面の鋼管で形成された継手と、
上記矢板本体の側面の下部に上記継手の延長上に設けられた被案内部材とを備えた鋼管矢板であって、
先行して打設された先行鋼管矢板に隣接して打設されるとき、上記被案内部材が、上記先行鋼管矢板の継手のスリットに嵌合することなく当該継手の外側面に接して摺動することにより、打設位置が案内されるように形成されていることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、本発明の鋼管矢板は、鋼管で形成された矢板本体の側面の上部に、軸方向に延びるスリットを有する円形断面の鋼管で形成された継手が設けられていると共に、上記矢板本体の側面の下部に、上記継手の延長上に設けられた被案内部材とが設けられる。この鋼管矢板は、先行鋼管矢板に隣接して打設されるとき、上記被案内部材が、上記先行鋼管矢板の継手のスリットに嵌合することなく当該継手の外側面に接して摺動することにより、打設位置が案内される。したがって、先行鋼管矢板の上端が地表面付近に位置しても、この先行鋼管矢板の継手の上端の外側面に、被案内部材を接触させることにより、鋼管矢板の位置決めを行うことができる。したがって、従来のような治具が不要になるので、少ない手間により、鋼管矢板を先行鋼管矢板に連結させることができる。また、被案内部材は、先行鋼管矢板の継手のスリットに嵌合することなく当該継手の外側面に接して摺動するので、先行鋼管矢板が傾斜していても、従来のように鋼管矢板の継手が先行鋼管矢板の継手と嵌合できない不都合を解消できる。したがって、先行鋼管矢板が傾斜していても、この先行鋼管矢板に隣接して鋼管矢板を打設することができる。
【0012】
一実施形態の鋼管矢板は、上記被案内部材が、上記継手よりも大きい直径を有する鋼管で形成されていると共に上記継手の直径よりも小さい幅の軸方向に延在する開口を有する接触部を有し、上記先行鋼管矢板の継手を、上記開口を通して上記接触部の内側に収容するように形成されている。
【0013】
上記実施形態によれば、被案内部材の接触部が、継手よりも大きい直径を有すると共に継手の直径よりも小さい幅の軸方向に延在する開口を有する鋼管で形成されているので、先行鋼管矢板の継手を容易に内側に収容して当該継手に接触することができる。したがって、先行鋼管矢板が傾斜していても、被案内部材が先行鋼管矢板の継手により案内されるので、本実施形態の鋼管矢板を容易に先行鋼管矢板に連結することができる。
【0014】
一実施形態の鋼管矢板は、上記被案内部材が、平面視において互いの間に角度を成して接続された2つの板状体で形成された接触部を有し、この接触部の2つの板状体が上記先行鋼管矢板の継手の外側面に夫々接するように形成されている。
【0015】
上記実施形態によれば、被案内部材の接触部が、平面視において互いの間に角度を成して接続された2つの板状体で形成されているので、この板状体により先行鋼管矢板の継手の外側面に容易に接触することができる。したがって、先行鋼管矢板が傾斜していても、被案内部材が先行鋼管矢板の継手により案内されるので、本実施形態の鋼管矢板を容易に先行鋼管矢板に連結することができる。
【0016】
一実施形態の鋼管矢板は、上記被案内部材が、上記矢板本体の径方向に延在して上記接触部を上記矢板本体に固定する板状の固定部を有する。
【0017】
上記実施形態によれば、被案内部材が、矢板本体の径方向に延在する固定部により接触部を矢板本体に固定するように形成されるので、被案内部材を容易に矢板本体に固定できる。
【0018】
一実施形態の鋼管矢板は、上記被案内部材が、上記矢板本体の側面から突出すると共に長手方向に延在する板状体で形成され、上記先行鋼管矢板の継手の外側面に接するように形成されている。
【0019】
上記実施形態によれば、被案内部材が、矢板本体の側面から突出すると共に矢板本体の長手方向に延在する板状体で形成されているので、先行鋼管矢板の継手の側面に容易に接触することができる。したがって、先行鋼管矢板が傾斜していても、被案内部材が先行鋼管矢板の継手により案内されるので、本実施形態の鋼管矢板を容易に先行鋼管矢板に連結することができる。また、板状体による簡易な構造で被案内部材を構成できるので、鋼管矢板を安価に製造できる。
【0020】
一実施形態の鋼管矢板は、上記被案内部材が、上記先行鋼管矢板の継手の両側に延在するように配置された2つの上記板状体で形成されている。
【0021】
上記実施形態によれば、被案内部材が、先行鋼管矢板の継手の両側に延在するように配置された2つの板状体で形成されているので、いずれか一方の板状体が先行鋼管矢板の継手に接触することにより、本実施形態の鋼管矢板を容易かつ確実に案内することができる。
【0022】
一実施形態の鋼管矢板は、上記被案内部材の2つの上記板状体が、上記矢板本体の表面に沿って固定された連結部によって連結され、一体に形成されていることを特徴とする鋼管矢板。
【0023】
上記実施形態によれば、被案内部材が、矢板本体の表面に沿って固定された連結部で2つの板状体が連結されて一体に形成されることにより、一個の部品に構成できる。したがって、被案内部材を矢板本体に容易に連結でき、製造工程の容易化を行うことができる。
【0024】
本発明の鋼管矢板の打設方法は、上記鋼管矢板を地中に打設する方法であって、
第1の鋼管矢板を地中に打設する工程と、
上記第1の鋼管矢板に対して配列方向に所定間隔をおいて第2の鋼管矢板を地中に打設する工程と、
第3の上記鋼管矢板を、上記被案内部材が上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手に夫々接する状態で地上に設置する工程と、
上記第3の鋼管矢板を、この第3の鋼管矢板の被案内部材が上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手により案内されながら地中に打設する工程と、
上記第3の鋼管矢板の被案内部材が案内された上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手の上端に、上記記第3の鋼管矢板の継手の下端を嵌合する工程と、
上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手に上記記第3の鋼管矢板の継手が嵌合された状態で、上記第3の鋼管矢板を所定の打設深さまで打設する工程と
を備えることを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、第1の鋼管矢板が地中に打設され、この第1の鋼管矢板に対して配列方向に所定間隔をおいて第2の鋼管矢板が地中に打設される。上記第1及び第2の鋼管矢板は、矢板本体の上部に継手を有する一方、下部には継手の無い鋼管矢板である。この後、第3の鋼管矢板であって、矢板本体の上部に設けられた継手と、上記矢板本体の下部に上記継手の延長上に設けられた被案内部材とを有する鋼管矢板が、被案内部材が上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手に夫々接する状態で地上に設置される。続いて、上記第3の鋼管矢板が、この第3の鋼管矢板の被案内部材が上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手により案内されながら、地中に打設される。上記第3の鋼管矢板が所定の深さに打設されて継手の下端が上記第1の鋼管矢板の継手の上端と上記第2の鋼管矢板の継手の上端に達すると、さらに第3の鋼管矢板が打設されることにより、上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手の上端に、上記記第3の鋼管矢板の継手の下端が嵌合する。上記第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手に上記記第3の鋼管矢板の継手が嵌合された状態で、上記第3の鋼管矢板が所定の打設深さまで打設されることにより、第1乃至第3の鋼管矢板が互いに連結され、壁体が地中に形成される。このように、上部に継手を有すると共に下部に被案内部材を有する第3の鋼管矢板を用いることにより、第1の鋼管矢板や第2の鋼管矢板に傾きが生じていても、第1の鋼管矢板の継手と上記第2の鋼管矢板の継手に、容易に第3の鋼管矢板の継手を嵌合させて、壁体を形成することができる。ここで、上記第1及び第2の鋼管矢板は、矢板本体の下部に、第3の鋼管矢板との間で干渉が生じないのであれば、被案内部材を有してもよい。また、鋼管矢板の打設とは、鋼管矢板を地中に設置することを広く意味し、鋼管矢板を地中に設置する方法は特に限定されず、打ち込み、建て込み及び圧入等の種々の方法を選択できる。
【0026】
本発明の鋼管矢板の打設方法は、上記鋼管矢板を地中に打設する方法であって、
複数の鋼管矢板を配列する方向に延在する誘導部材を、上記鋼管矢板の軸方向に所定間隔をおいて複数段設置する工程と、
上記鋼管矢板を、上記矢板本体の側面が上記複数段の誘導部材に沿うように設置する工程と、
上記鋼管矢板を、上記矢板本体を複数段の誘導部材で誘導しながら地中に打設する工程と
を備える。
【0027】
上記構成によれば、複数の鋼管矢板を配列する方向に延在する誘導部材が、上記鋼管矢板の軸方向に所定間隔をおいて複数段設置される。続いて、上記鋼管矢板が、矢板本体の側面が上記複数段の誘導部材に沿うように設置される。この後、上記鋼管矢板が、上記矢板本体が複数段の誘導部材で誘導されながら地中に打設される。このように、鋼管矢板を打設する際に、鋼管矢板の矢板本体が、鋼管矢板の軸方向に複数段設置された誘導部材に沿うように誘導されるので、鋼管矢板の打設角度の精度を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態の鋼管矢板を示す正面図である。
【
図4】第1実施形態の鋼管矢板を用いて壁体を形成する方法を示す模式図である。
【
図5】
図4(c)中のC-C線に沿った断面図である。
【
図6】
図4(d)中のD-D線に沿った断面図である。
【
図7】
図4(d)中のE-E線に沿った断面図である。
【
図8】導材を用いて打設された鋼管矢板により壁体が形成された様子を示す平面図である。
【
図10】第2実施形態の鋼管矢板により壁体の一部を構成した様子を示す断面図である。
【
図11】第3実施形態の鋼管矢板を示す断面図である。
【
図12】第3実施形態の鋼管矢板を、先行する第1及び第2の鋼管矢板の間に配置したときの第3実施形態の鋼管矢板の下端部における断面図である。
【
図13】第3実施形態の鋼管矢板を、先行する第1及び第2の鋼管矢板の間に打設したときの第3実施形態の鋼管矢板の下部における断面図である。
【
図14】第4実施形態の鋼管矢板により壁体の一部を構成した様子を示す断面図である。
【
図15】第5実施形態の鋼管矢板により壁体の一部を構成した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態の鋼管矢板を示す正面図であり、
図2は、
図1中のA-A線に沿った断面図であり、
図3は、
図1中のB-B線に沿った断面図である。この鋼管矢板1は、鋼管で形成された矢板本体2と、矢板本体2の上部の両側に設けられた2つの継手3,3と、矢板本体2の下部の両側に設けられた2つの被案内部材4,4を備える。
【0031】
図2に示すように、継手3は、矢板本体2よりも径の小さい鋼管で形成され、軸方向に延びる1本のスリット3aを有する。2つの継手3,3は、矢板本体2の側面に、平面視において矢板本体2の直径の両端に位置するように固定されている。2つの継手3,3のスリット3a,3aは、継手3,3の軸を中心に、平面視において互いに同じ角度だけ時計回りに偏って形成されている。この継手3は、所謂P-P型継手であり、隣り合う鋼管矢板の同じ継手3のスリット3aよりも反時計回り側の部分が、互いの内側に入り込むことにより、継手3,3どうしが連結するように形成されている。連結された継手3,3の内側に、継手処理を行ってモルタル等の充填材を充填することにより、高い水密性を発揮するように形成されている。
【0032】
図3に示すように、被案内部材4は、軸方向に継手3に連続するように矢板本体2の側面に固定され、平面視において2つの継手3,3と同じ位置に夫々配置されている。この被案内部材4は、継手3よりも大きい直径を有する鋼管で形成された接触部14と、この接触部14を矢板本体2に固定する板状体で形成された固定部15を有する。この被案内部材4の接触部14には、上記継手3の直径よりも小さい幅の開口4aが、軸方向に延在して設けられている。この被案内部材4の開口4aは、平面視において、幅方向の中心が矢板本体2の直径と一致するように形成されている。この被案内部材4は、先行して打設された鋼管矢板に隣接して打設されるとき、先行する鋼管矢板の継手3の外側に、開口4aを通して接触部14が嵌合するように形成されている。これにより、被案内部材4の接触部14の内側面が、先行する鋼管矢板の継手3の外側面に接触し、この継手3に被案内部材4が案内されるように形成されている。また、被案内部材4の接触部14が、先行する鋼管矢板の継手3との間に、継手3と継手3の間よりも大きな隙間を介して嵌合するように形成されている。
【0033】
図4は、第1実施形態の鋼管矢板1を用いて地中に壁体を形成する方法を示す模式図である。
図4では、矢板本体2の側面に継手3と被案内部材4とを有する本実施形態の鋼管矢板1と、矢板本体2の側面に継手3を有して被案内部材4を有しない鋼管矢板11,12とを用いて、地中に壁体を形成する場合を示している。
【0034】
まず、
図4(a)に示すように、第1の鋼管矢板11を地中に打設する。この第1の鋼管矢板11は、矢板本体2の上部に継手3を有する一方、矢板本体2の下部は、継手3も被案内部材4も有しておらず、矢板本体2の鋼管のみで形成されている。
【0035】
続いて、
図4(b)に示すように、鋼管矢板を配列して壁体を形成する方向に、第1実施形態の鋼管矢板1を打設するための距離だけ離れた位置に、第2の鋼管矢板12を打設する。この第2の鋼管矢板12は、第1の鋼管矢板11と同様に、上部に継手3を有する一方、下部は矢板本体2のみに形成されている。
【0036】
この後、
図4(c)に示すように、第1の鋼管矢板11と第2の鋼管矢板12の間に、本実施形態の鋼管矢板1を配置する。
図5は、
図4(c)中のC-C線に沿った断面図であり、
図5に示すように、第1の鋼管矢板11の継手3の上端部と、第2の鋼管矢板12の継手3の上端部を、本実施形態の鋼管矢板1の被案内部材4の接触部14の内側に収容するように鋼管矢板1を配置する。
【0037】
このように第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3を被案内部材4の接触部14の内側に収容した状態で、本実施形態の鋼管矢板1を地中に打設する。鋼管矢板1を地中に打設する過程で、被案内部材4が、接触部14の内側面に第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3が接触することにより、第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に案内される。本実施形態の鋼管矢板1が打設されて被案内部材4の上端が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3の上端に達すると、更に打設されることにより、本実施形態の鋼管矢板1の継手3の下端部が、第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3の上端部に嵌合する。この状態で鋼管矢板1の打設を継続し、所定の打設深さに達すると、
図4(d)に示すように、鋼管矢板1の上部の両方の継手3,3が、第1の鋼管矢板11の継手3と第2の鋼管矢板12の継手3に連結され、地中に壁体の一部が構築される。
【0038】
図6は、
図4(d)中のD-D線に沿った断面図であり、本実施形態の鋼管矢板1が地中に打設される過程で被案内部材4が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に案内されることにより、鋼管矢板1の両方の継手3,3が、第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に夫々確実に連結される。また、
図7は、
図4(d)中のE-E線に沿った断面図であり、下部に継手3を有しない第1及び第2の鋼管矢板11,12の矢板本体2,2の間に、本実施形態の鋼管矢板1の矢板本体2と被案内部材4が配置される。
【0039】
以上のように、本実施形態の鋼管矢板1によれば、打設の過程で被案内部材4が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3の外側面に接して案内されるので、第1及び第2の鋼管矢板11,12が傾斜していても、鋼管矢板1を第1及び第2の鋼管矢板11,12に沿って適切に打設することができる。その結果、鋼管矢板1の継手3を適切に第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に連結することができる。
【0040】
また、本実施形態の鋼管矢板1は、被案内部材4の接触部14が、先行する鋼管矢板の継手3に、継手3と継手3との間よりも大きな隙間を介して嵌合するように形成されている。したがって、第1及び第2の鋼管矢板11,12が傾斜していても、被案内部材4と継手3との間の嵌合を解除することなく、鋼管矢板1を第1及び第2の鋼管矢板11,12に沿って打設することができる。
【0041】
また、本実施形態の鋼管矢板1は、被案内部材4の接触部14が、先行する鋼管矢板の継手3の外側面に接するように形成されているので、打設中に鋼管矢板1,11,12の継手3の相互が嵌合するよりも、接触部14から第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に作用する摩擦力が小さい。したがって、本実施形態の鋼管矢板1を打設する過程で被案内部材4が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に接する際に、第1及び第2の鋼管矢板11,12の共下がりが生じる不都合を少なくできる。
【0042】
図4には、第1の鋼管矢板11と、本実施形態の鋼管矢板1と、第2の鋼管矢板12により壁体の一部を形成する方法を示したが、上記第1及び第2の鋼管矢板11,12と同様の複数の鋼管矢板11,12を互いに所定の距離をおいて打設し、この後、複数の鋼管矢板11,12,・・・の間に本実施形態の鋼管矢板1を打設することにより、鋼管矢板1,11,12の配列方向に延在する壁体を地中に構築することができる。
【0043】
上記第1実施形態の鋼管矢板1を打設して壁体を形成する際、予め定められた位置に鋼管矢板1,11,12を正確に打設するため、地盤に導材が設置される。
図8は、導材を用いて打設された鋼管矢板1,11,12により壁体が形成された様子を示す平面図であり、
図9は
図8中のF-F線に沿った断面図である。この壁体は、橋梁の鋼管矢板基礎を構成するために、上部を海上に露出するように海底に打設された鋼管矢板で形成されている。この鋼管矢板を打設するために、導材が、上部が海上に露出するように設置されている。
【0044】
図8に示すように、鋼管矢板1,11,12を配列して壁体を形成する位置の両側に、鋼管矢板1,11,12を支持して誘導するための誘導部材としての導枠71,71を配置する。導枠71はH型鋼を用いて形成され、フランジの平坦面が鋼管矢板1,11,12の側面に接するように配置されている。導枠71は、所定間隔おきに打設されてH形鋼で形成された複数の導杭72によって支持される。導枠71は、鋼管矢板1,11,12の軸方向に複数段配置される。
【0045】
上記導杭72が海底に打設され、この導杭72の上部であって海上に露出する位置に複数段の導枠71が設置された後、鋼管矢板1,11,12が打設される。すなわち、形成すべき壁体の両側に設置された導枠71の間に、先行する鋼管矢板11,12,・・・が所定間隔をおいて打設される。この後、これらの鋼管矢板11,12の間に、本実施形態の鋼管矢板1が打設される。これらの鋼管矢板1,11,12が打設される際、両側の複数段の導枠71によって、壁体の厚み方向の位置と角度が規定されつつ誘導されるので、鋼管矢板1,11,12を精度良く所定の位置に、所定の角度を成すように打設することができる。
【0046】
ここで、壁体の両側に配置された導枠71,71は、壁体の厚み方向に延在する図示しない導枠受材により固定し、互いの間隔を保持するのが好ましい。
【0047】
図10は、本発明の第2実施形態の鋼管矢板により、壁体の一部を構成した様子を示す断面図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0048】
第2実施形態の鋼管矢板21は、被案内部材24の接触部25が、平面視において互いの間に角度を成して接続された2つの板状体で形成されている。これらの板状体の間の角度は、例えば60°~120°の間に設定することができる。この接触部25の2つの板状体の接続部分に、この接触部25を矢板本体2に固定する板状体で形成された固定部26が接続されている。これにより、被案内部材24は、平面視においてY字状を成している。
【0049】
第2実施形態の鋼管矢板21は、先行して打設された第1の鋼管矢板11と第2の鋼管矢板12の間に打設される際、被案内部材24の接触部25の2つの板状体の少なくとも一方が、第1の鋼管矢板11の継手3の外側面と、第2の鋼管矢板12の継手3の外側面の少なくとも一方に接触するように形成されている。第2実施形態の鋼管矢板21によれば、接触部25が互いの間に角度を成して接続された2つの板状体で形成されているので、この接触部25は、第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3の外側面に容易に接触することができる。したがって、第1及び第2の鋼管矢板11,12が傾斜していても、被案内部材24の接触部25が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3により案内されるので、本実施形態の鋼管矢板21を容易に第1及び第2の鋼管矢板11,12に連結することができる。
【0050】
また、本実施形態の鋼管矢板21は、被案内部材24の接触部25の板状体が、先行する鋼管矢板の継手3の外側面に接するように形成されているので、打設中に鋼管矢板21,11,12の継手3の相互が嵌合するよりも、被案内部材24から第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に作用する摩擦力が小さい。したがって、本実施形態の鋼管矢板21を打設する過程で鋼管矢板1の被案内部材24が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に接する際に、第1及び第2の鋼管矢板11,12の共下がりが生じる不都合を少なくできる。
【0051】
図11は、本発明の第3実施形態の鋼管矢板を示す断面図である。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0052】
第3実施形態の鋼管矢板31は、被案内部材34が、矢板本体2の側面から突出すると共に長手方向に延在する板状体で形成されている。この被案内部材34は、平面視において、2つの継手3,3を通る直径に対して直角方向に、概ね継手3の半径に相当する距離だけオフセットした位置に設置されている。
【0053】
図12は、第3実施形態の鋼管矢板31を、先行する第1及び第2の鋼管矢板11,12の間に打設する工程における断面図であり、第1実施形態の
図4(c)のC-C線と同様の深さにおける断面図である。すなわち、
図12は、第1及び第2の鋼管矢板11,12を地中に打設した後、上記第1の鋼管矢板11の継手3の上端部と、上記第2の鋼管矢板12の継手3の上端部に、第3実施形態の鋼管矢板31の被案内部材34の下端部が接するように鋼管矢板31を配置したときの鋼管矢板31の下端部における断面を示している。
図12に示すように、本実施形態の鋼管矢板31は、2つの被案内部材34が、矢板本体2の側面から突出した板状体で形成されているので、先行して打設された第1の鋼管矢板11の継手3の側面と、第2の鋼管矢板12の継手3の側面に、容易に夫々接触する。したがって、第1及び第2の鋼管矢板11,12が傾斜していても、本実施形態の鋼管矢板31が打設されるに伴い、被案内部材34が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3の側面に接触して案内される。その結果、本実施形態の鋼管矢板31は、被案内部材34が案内された第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に、継手3が嵌合されるので、この鋼管矢板31と第1及び第2の鋼管矢板11,12により、容易に壁体を形成することができる。
【0054】
図13は、先行して打設された第1及び第2の鋼管矢板11,12の間に打設された第3実施形態の鋼管矢板31の下部における断面図であり、第1実施形態の
図4(d)のE-E線と同様の深さにおける断面図である。
図13に示すように、下部に継手3を有しない第1及び第2の鋼管矢板11,12の矢板本体2,2の間に、本実施形態の鋼管矢板1の矢板本体2と被案内部材34が配置される。
【0055】
以上のように、第3実施形態の鋼管矢板31によれば、打設の過程で被案内部材34が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3の外側面に接して案内されるので、第1及び第2の鋼管矢板11,12が傾斜していても、鋼管矢板31を第1及び第2の鋼管矢板11,12に沿って適切に打設することができる。その結果、鋼管矢板31の継手3を適切に第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に連結することができる。
【0056】
また、本実施形態の鋼管矢板31は、被案内部材34の板状体が、先行する鋼管矢板の継手3の外側面に接するように形成されているので、打設中に鋼管矢板31,11,12の継手3の相互が嵌合するよりも、被案内部材34から第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に作用する摩擦力が小さい。したがって、本実施形態の鋼管矢板31を打設する過程で鋼管矢板1の被案内部材34が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に接する際に、第1及び第2の鋼管矢板11,12の共下がりが生じる不都合を少なくできる。
【0057】
また、本実施形態の鋼管矢板31は、被案内部材34を、板状体により簡易な構造で構成できるので、鋼管矢板31を安価に製造できる。
【0058】
図14は、本発明の第4実施形態の鋼管矢板により、壁体の一部を構成した様子を示す断面図である。第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0059】
第4実施形態の鋼管矢板41は、被案内部材44が、平面視において、継手3の中心と矢板本体2の中心とを通る直径に対して直角方向の両側にオフセットして配置された2つの板状体45,45により形成されている。これらの板状体45,45は、継手3の中心と矢板本体2の中心とを通る直径と平行に配置され、矢板本体2側の辺が矢板本体2の表面に固定されている。
【0060】
第4実施形態の鋼管矢板41は、先行して打設された第1の鋼管矢板11と第2の鋼管矢板12の間に打設される際、被案内部材44の2つの板状体45,45の少なくとも一方が、第1の鋼管矢板11の継手3の外側面と、第2の鋼管矢板12の継手3の外側面の少なくとも一方に接触するように形成されている。第4実施形態の鋼管矢板41によれば、被案内部材44が2つの板状体45,45で形成されているので、これらの板状体45,45のうちの少なくとも一方が、第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3の外側面に容易に接触することができる。したがって、第1及び第2の鋼管矢板11,12が傾斜していても、被案内部材44の板状体45,45が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3により案内されるので、本実施形態の鋼管矢板41を容易に第1及び第2の鋼管矢板11,12に連結することができる。
【0061】
また、本実施形態の鋼管矢板41は、被案内部材44の板状体45が、先行する鋼管矢板の継手3の外側面に接するように形成されているので、打設中に鋼管矢板41,11,12の継手3の相互が嵌合するよりも、被案内部材44から第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に作用する摩擦力が小さい。したがって、本実施形態の鋼管矢板41を打設する過程で鋼管矢板1の被案内部材44が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に接する際に、第1及び第2の鋼管矢板11,12の共下がりが生じる不都合を少なくできる。
【0062】
図15は、本発明の第5実施形態の鋼管矢板により、壁体の一部を構成した様子を示す断面図である。第5実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0063】
第5実施形態の鋼管矢板51は、被案内部材54が、平面視において、継手3の中心と矢板本体2の中心とを通る直径に対して直角方向の両側にオフセットして配置された2つの板状体55,55を含んで形成されている。これらの板状体55,55は、継手3の中心と矢板本体2の中心とを通る直径と平行に配置され、平面視において矢板本体2に沿う円弧状断面を有する連結部56により、矢板本体2側の辺が夫々連結されている。この被案内部材54は、連結部56が矢板本体2の表面に固定されて取り付けられている。これらの板状体55,55及び連結部56を有する被案内部材54は、鋼板の曲げ加工により形成することができる。
【0064】
第5実施形態の鋼管矢板51は、先行して打設された第1の鋼管矢板11と第2の鋼管矢板12の間に打設される際、被案内部材54の2つの板状体55,55の少なくとも一方が、第1の鋼管矢板11の継手3の外側面と、第2の鋼管矢板12の継手3の外側面の少なくとも一方に接触するように形成されている。第5実施形態の鋼管矢板51によれば、被案内部材54が2つの板状体55,55を有して形成されているので、これらの板状体55,55のうちの少なくとも一方が、第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3の外側面に容易に接触することができる。したがって、第1及び第2の鋼管矢板11,12が傾斜していても、被案内部材54の板状体55,55が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3により案内されるので、本実施形態の鋼管矢板51を容易に第1及び第2の鋼管矢板11,12に連結することができる。
【0065】
また、本実施形態の鋼管矢板51は、被案内部材54の板状体55が、先行する鋼管矢板の継手3の外側面に接するように形成されているので、打設中に鋼管矢板51,11,12の継手3の相互が嵌合するよりも、被案内部材54から第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に作用する摩擦力が小さい。したがって、本実施形態の鋼管矢板51を打設する過程で鋼管矢板1の被案内部材54が第1及び第2の鋼管矢板11,12の継手3に接する際に、第1及び第2の鋼管矢板11,12の共下がりが生じる不都合を少なくできる。
【0066】
上記各実施形態において、上記鋼管矢板1,11,12,21,31,41,51は、継手3が上部のみに設けられているので、継手処理を行う長さが短くて済み、継手処理の作業の手間を削減できる。
【0067】
上記各実施形態において、本実施形態の鋼管矢板1,21,31,41,51と上記鋼管矢板11,12を打設する方法としては、打撃力を繰り返して作用させて地中に貫入させる打ち込みや、予め地中に形成された孔に挿入する建て込みや、連続的又は断続的な圧縮力を作用させて地中に貫入させる圧入のいずれの方法も採用することができる。
【0068】
また、上記各実施形態において、鋼管矢板1,11,12,21,31,41,51は、軸方向に分割されて打設の現場に搬入され、これらの分割された部分を、打設を行いながら連結するように構成されてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態において、鋼管矢板1,11,12,21,31,41,51の継手は、平面視において矢板本体2の直径の両端に配置されており、矢板本体2の鋼管を中心として180°の角度を成す位置に配置されたが、他の角度を成す位置に配置されてもよい。上記各実施形態において、鋼管矢板1,21,31,41,51の継手3を、他の角度を成す位置に配置した場合、被案内部材4,24,34,44,54は、継手3の延長上に配置し、互いに継手3相互と同じ角度を成すように配置すればよい。例えば、平面視において矩形の鋼管矢板基礎を形成する場合は、矩形の角部に対応する位置の鋼管矢板は、平面視において90°の角度を成す位置に継手を配置すればよい。
【0070】
また、上記各実施形態の鋼管矢板1,11,12,21,31,41,51により形成した壁体は、鋼管矢板基礎、岸壁、護岸、防波堤、土留め及び締切り等の種々の構造物を構築するために用いることができる。
【0071】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,11,12,21,31,41,51 鋼管矢板
2 矢板本体
3 継手
4,24,34,44,54 被案内部材
14,25 接触部
15,26 固定部
45,55 板状体
56 連結部
71 導枠
72 導杭