(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】セメント補強材
(51)【国際特許分類】
C04B 16/06 20060101AFI20230131BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C04B16/06 C
C04B16/06 E
C04B16/06 Z
C04B28/02
(21)【出願番号】P 2019080030
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 脩平
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-139803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料およびそれを被覆する樹脂材料からなるセメント補強材であって、繊維材料が紡績糸または牽切加工糸であ
り、樹脂材料の付着量が繊維材料100重量%に対して3~20重量%であることを特徴とするセメント補強材。
【請求項2】
繊維材料の引張強度が7cN/dtex以上である、請求項1記載のセメント補強材。
【請求項3】
樹脂材料がイソシアネート化合物を構成成分とする樹脂からなる、請求項1または2記載のセメント補強材。
【請求項4】
重さが100~1200dtexである、請求項1乃至
3のいずれかに記載のセメント補強材。
【請求項5】
請求項1に記載のセメント補強材を製造する方法であって、紡績糸または切加工糸である繊維材料を樹脂材料で被覆し、5~25mmの長さに切断することを特徴とするセメント補強材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至
4記載のいずれかのセメント補強材を含有するモルタルまたはコンクリートの成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタルやコンクリートに用いるセメント補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルまたはコンクリートの成形物は、圧縮強度、耐久性、不燃性などの優れた特性を示しながら安価であることから、建築や土木の分野で大量に使用されている。しかし、これらの成形物は脆性物質であり、引張りや曲げ、屈曲などの応力が加わると容易にクラックが入るか破損する。
【0003】
この欠点を補うために、有機高分子繊維を用いてモルタルやコンクリートの成形物を補強することが行われている。この補強により、成形物の曲げ強度や曲げ靱性といった機械的特性の向上を得ることができる。
【0004】
しかし、有機高分子繊維を繊維長の短い短繊維の形態で使用しても補強効果が不十分であり、繊維長の長いものを用いた場合にはモルタルやコンクリートの中での分散性が低下することおよび繊維同士が絡みあうことが問題となる。
【0005】
十分な分散性を得るために、繊維径の太いモノフィラメントの短繊維を使用することも考えられるが、繊維太さあたりの強度が低下するため、補強効果を十分に発現できない。
【0006】
この問題を解決するために、特許文献1では、多数の細いフィラメントからなる繊維(マルチフィラメント)を樹脂で集束し、集束された繊維に不揮発性の油を付着させ、繊維の集束性を高める方法が開示されている。しかし、この方法では繊維の集束性を高くすることができるものの、繊維とモルタルまたはコンクリートとの界面での接着力が十分でなく、十分な補強効果を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-131464号公報
【文献】特開2012-25603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、繊維の集束性が高く補強効果に優れるセメント補強材を提供すること、特に、粘性の高いモルタルまたはコンクリートに対する補強効果に優れるセメント補強材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、繊維材料およびそれを被覆する樹脂材料からなるセメント補強材であって、繊維材料が紡績糸または牽切加工糸であることを特徴とするセメント補強材である。
本発明はまた、上記のセメント補強材を含有するモルタルまたはコンクリートの成形物も包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維の集束性が高く補強効果に優れるセメント補強材を提供すること、特に、粘性の高いモルタルまたはコンクリートに対する補強効果に優れるセメント補強材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
<繊維材料>
繊維材料に用いられる繊維として、耐アルカリ性に優れた繊維であることが好ましく、例えば炭素繊維、ガラス繊維、鋼繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維といった無機繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維、パルプ繊維といった有機高分子繊維を挙げることができる。これらは一種で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
なかでもパラ型アラミド、特にポリパラフェニレンテレフタラミドやコポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミドの繊維は補強効果が大きいので好ましく、特にコポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド繊維は、高温高圧下で強アルカリ性の雰囲気中に長時間保持しても機械的特性の劣化が小さく、高温高圧下での蒸気養生、例えば180℃、圧力10Kg/cm2の飽和水蒸気による蒸気養生においても高い強力保持率を有するので好ましい。
【0014】
繊維材料の総繊度は、好ましくは90~1150dtex、さらに好ましくは180~575dtexである。90dtex未満であるとモルタルやコンクリートの中での分散性が低下しさらに繊維同士が絡みあうことがあり好ましくなく、他方、1150dtexを超えると繊維材料の強度を十分に発揮する前にコンクリートから引き抜けやすく、高い補強効果を得ることが難しく好ましくない。
【0015】
繊維材料の紡績糸および牽切加工糸の単繊維の繊度は、好ましくは0.5~30dtex、さらに好ましくは0.6~20dtex、特に好ましくは0.7~10dtexである。単繊維の繊度が0.5dtex未満であると単繊維を引き揃えることが困難になり、引き揃えが不十分であると機械的性能が十分に活用できない。また、単繊維間で樹脂材料の付着斑が生じやすく、所定の集束性が得られないことがあり、特に単繊維の本数を多くするとこの傾向が顕著になる。他方、単繊維の繊度が30dtexを超えると、単繊維同士の接着面積が少なくなり、樹脂材料による集束が維持しにくくなる。
【0016】
本発明において、繊維材料として、短繊維が一部で絡み合って連続した糸条(単糸)を形成している紡績糸または牽切加工糸を用い、好ましくは牽切加工糸を用いる。紡績糸または牽切加工糸を用いることによって、それらの表面に多くの毛羽があるため広い表面積を得ることができ、繊維材料の表面に、凹凸を有する樹脂材料の層を効率的に形成することができる。この凹凸を有する樹脂材料の層は、アンカー効果によりセメントとの付着力や接着力を高め、補強性能を向上させることができる。特に牽切加工糸は、表面に多くの毛羽を有するとともに、繊維の機械的特性が優れているため好ましい。
【0017】
紡績糸は、紡績工程の後にさらに撚糸されていてもよい。紡績糸および牽切加工糸は、単糸で繊維材料として用いてもよく、複数の単糸を束ねて繊維材料として用いてもよい。複数の単糸を用いる場合、例えば2~8本、好ましくは2~4本の単糸を用いる。この場合は、2本以上の単糸を引き揃えたうえで、あるいは撚り合わせたうえで、繊維材料として用いることが好ましい。
【0018】
繊維材料は、紡績糸や牽切加工糸の製造工程で施される撚り方向と同じ方向または逆の方向でさらに撚りを施してあってもよい。紡績糸や牽切加工糸の製造工程で施される撚り方向と逆方向で複数の単糸を撚り合わせた諸撚りのものを繊維材料として用いると、繊維材料の表面に多くの凹凸を作ることができ、本発明のセメント補強材をモルタルまたはコンクリートなどに混入し硬化させたときに、モルタルまたはコンクリートが諸撚りで束ねられたセメント補強材の表面の凸凹に入り込み接着力が向上するので好ましい。さらに、繊維材料と樹脂材料との界面での接着力も繊維材料の表面の凸凹が増大することに伴って増大し補強性能が向上する。
【0019】
紡績糸は、公知の方法で製造することができる。紡績糸の撚係数Kは、良好な引張強度を得る観点から、好ましくは2.5~4.5である。ただし、T=K√n、Tは1インチ(2.54cm)あたりの撚数、nは英式綿番手、Kは撚係数である。
【0020】
牽切加工糸は、公知の方法で製造することができる。例えば、連続長繊維束を、ニップローラーとニップローラーとの間で、その連続長繊維束の切断伸度以上に伸張して牽切し、引き続き、この牽切された牽切繊維をニップローラーから吸引空気ノズルによって吸引して引き取り、次いで抱合空気ノズルによって牽切繊維同士の交絡および/または牽切繊維の端部の捲回による結束を付与し、ニップローラーを通して連続した単糸である牽切加工糸として巻き取る方法によって得ることができる。抱合空気ノズルによる牽切された牽切繊維同士の抱合は、インターレース式の空気ノズルや旋回流式の空気ノズルによる繊維端部による捲回のどちらによる結束であってもよい。牽切加工糸は、片撚りで撚糸されていてもよく、諸撚りで撚糸されていてもよい。
【0021】
牽切加工糸の単糸を構成する短繊維の繊維長が長いと、紡績糸に比べて繊維の配列度が高いため、高い強力を得ることができる。この観点から牽切加工糸の単糸の原料として用いる連続繊維の単糸は、平均繊維長が10~150cmとなる条件で牽切されていることが好ましい。
【0022】
繊維材料の引張強度は、好ましくは7cN/dtex以上、さらに好ましくは10~40cN/dtexである。引張強度がこれより低いとモルタルまたはコンクリートの成形物の曲げ強度が低くなる。
【0023】
<樹脂材料>
本発明において繊維材料を被覆する樹脂材料には、繊維材料の繊維束内部に浸透しやすく、繊維材料の繊維束内で単繊維と単繊維とを接着させやすく、高靱性を有する樹脂を用いることが好ましく、この観点からイソシアネート化合物を構成成分とする樹脂が好ましい。具体的には、イソシアネート樹脂、ポリウレタン樹脂、イソシアネートとエポキシの架橋体を挙げることができる。
【0024】
イソシアネート化合物としては、芳香族系のジフェニルメタンジイソシアネートや、トルエンジイソシアネート、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアネートから選択し、繊維束内部への浸透性に優れることから、脂肪族系のイソシアネートが好ましい。ブロックドイソシアネートが特に好ましい。さらにエポキシ化合物を併用することが好ましい。
【0025】
繊維材料を被覆する樹脂材料の付着量は、繊維材料の重量100重量%あたり、好ましくは3~20重量%、さらに好ましくは8~20重量%である。付着量がこれより少ないと繊維材料の集束が解け、単繊維がばらけることになり材料の流動性を損なう傾向にある。モルタルまたはコンクリートとの混練で繊維に剪断力がかかったときに、樹脂材料による繊維材料の集束を維持できないためである。他方、付着量がこれより多いと、繊維の強度が十分に利用されない傾向にある。付着量を増やしすぎた場合には、その集束性自体もあまり向上しない。また樹脂材料の付着量が多くなると、本発明のセメント補強材の見掛け繊度が大きくなり、重量当たりの集束繊維の引張強度も低下する。
【0026】
上記のイソシアネート化合物等の樹脂は繊維の集束に寄与するものである。本発明のセメント補強材は、その表面に、モルタルやコンクリートとの付着性能を向上させる目的でその他の樹脂でさらに被覆してもよい。
【0027】
本発明のセメント補強材は、上記の樹脂材料に加えて、エポキシ基を構成成分とするエポキシ樹脂が繊維材料の表面に存在することが好ましく、さらに凝集力や界面接着力の観点からアクリル変性エポキシ樹脂やビスフェノールA型エポキシ樹脂、特にアクリル変性のビスフェノールA型エポキシ樹脂が繊維材料の表面に存在することが好ましい。この場合、高い性能が発揮される。エポキシ樹脂が表面に存在する場合の付着量は、繊維材料の重量100重量%に対して例えば0.1~10重量%である。
【0028】
<セメント補強材>
補強効果の観点、特にヒビ割れ抑制、高い曲げ強度および高い曲げ靱性付与の観点から、本発明のセメント補強材は、その直径が好ましくは0.05~0.5mm、さらに好ましくは0.1~0.4mmである。このセメント補強材は好ましくは短繊維の形状であり、長さは好ましくは5~25mm、さらに好ましくは8~20mmである。
【0029】
セメント補強材の直径がこれより小さいか長さがこれより長いと、モルタルまたはコンクリートを得るためにセメントや砂、砂利と混練された際に、セメント補強材に剪断力がかかりやすく、樹脂材料の被覆による繊維材料の集束を維持できず、集束が解けて繊維材料がばらけることになり、流動性を損なう傾向にあり好ましくない。他方、繊維長がこれより短いか直径がこれより大きいと、繊維材料とモルタルまたはコンクリートとの単位体積あたりの接触面積が小さくなり、十分な補強効果が得られ難く好ましくない。
【0030】
セメント補強材の重さ、すなわち繊維材料が樹脂材料で被覆されたセメント補強材の重さは、好ましくは100~1200dtex、さらに好ましくは200~600dtexである。これより軽いとモルタルやコンクリートの中でセメント補強材同士が絡みあい分散性の低下を起こしやすく好ましくなく、これより重いとセメント補強材の強度を十分に発揮するまえにコンクリートから引き抜けやすくなり十分な補強効果を得ることが難しく好ましくない。
【0031】
本発明のセメント補強材は、モルタルまたはコンクリートへの混入率を目的に応じて決めるが、例えば0.01~10.0容積%である。
【0032】
本発明のセメント補強材は、上記のようなセメント(結合材)と共に、モルタルやコンクリートの材料として用いられ、セメント補強材を含有するモルタルまたはコンクリート成形体となる。
【0033】
本発明のセメント補強材と共に、被補強物のセメントには、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、石灰石粉末、石英粉末、二水石膏、半水石膏、無水石膏、生石灰系膨張材、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材など公知の混和材(結合材)を添加しもよい。
【0034】
特に本発明のセメント補強材は、セメントの混練等の工程においても集束性が高く、例え水/結合材比率の低いモルタルまたはコンクリートの高い剪断力を生じる混練においても、折損が生じにくく、材料の流動性、施工性を阻害しない。本発明のセメント補強材で補強されたモルタルまたはコンクリート成形物は、作用応力が増加しても急激な繊維の破断が生じないために、成形物の曲げ破壊エネルギーが大幅に向上する。
【0035】
<製造方法>
本発明のセメント補強材は例えば、紡績糸または牽切加工糸である繊維材料を樹脂材料で被覆し、5~25mmの長さに切断することで製造することができる。以下、製造方法を詳しく説明する。
【0036】
まず、繊維材料として紡績糸または牽切加工糸を用意し、必要に応じてさらに撚りを施す。つぎに繊維材料を樹脂材料で被覆する。樹脂材料で被覆する方法として、繊維材料をボビンやビームクリールから連続的に送繊して、樹脂材料の配合液(好ましくは水を分散媒とするエマルジョン)の漕に、繊維材料を連続的に浸漬して樹脂材料を含浸させる方法(以下、連続浸漬法という)を用いることが好ましい。これに替えて、ローラータッチ法によって被覆する方法、スプレーにより樹脂材料を噴霧して被覆する方法を用いてもよいが、繊維材料を均一に樹脂材料で被覆するために、連続浸漬法が好ましい。この連続浸漬法では、絞りロールを用いることで、繊維材料を被覆する樹脂材料の量を一定の量に調整することを容易に行うことができる。
【0037】
樹脂材料を、繊維材料の繊維束内部に効果的に含浸させるために、樹脂材料の配合液は、水を分散媒とするエマルジョンまたは有機溶媒に溶解させた溶液の態様で用いることが好ましい。安全性や作業環境負荷低減の観点から、水を分散媒とするエマルジョンを用いることが好ましい。
【0038】
繊維材料を樹脂材料で被覆した後、引き続き樹脂材料の分散媒または溶媒を乾燥する。このとき、熱処理を行い、樹脂材料を架橋させることが好ましい。熱処理は例えば、接触型のホットローラーや非接触型の熱風乾燥炉を用いて行うことができる。熱処理の温度は例えば105~300℃、好ましくは120~250℃である。次いで、得られた繊維材料を公知の切断機によって5~25mmの長さに切断する。
【実施例】
【0039】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、実施例における各種の評価は、次のようにして測定した。
(1)引張強度
ASTM D885に準拠して測定した。
(2)直径
JIS L 1017に準拠して測定した。
(3)繊維長
JIS L 1015に準拠して測定した。
(4)セメント混練後の集束性
セメントとの混練後、モルタルまたはコンクリート中のセメント補強材の撚り解けを目視で確認し、以下の基準で評価した。特にセメント補強材(切断後の繊維束)の中央で撚が解けやすいが、中央部分で撚が解けることにより、セメント補強材(切断後の繊維束)の端から中央にかけてふくらみが生じることを、「撚り解け」と定義した。
◎:10本中、撚り解けのあるセメント補強材(切断後の繊維束)が1本以下。
〇:10本中、撚り解けのあるセメント補強材(切断後の繊維束)が2~5本。
△:10本中、撚り解けのあるセメント補強材(切断後の繊維束)が6本以上。
(5)モルタルとの付着力
セメント補強材を得るために所定の長さに切断する前の繊維束(樹脂材料で被覆された繊維材料)をモルタル中に10mm深さで埋め込み、モルタル硬化後に、引抜試験を実施し、引き抜かれる際の最大応力を付着力として測定した。
(6)生モルタルの流動性
混練工程の後に、水平に配置した50cm角のアルミ板にスランプコーン(高さ15cm、下面内径10cm、上面内径5cmの内側がくり貫かれた円錐柱)に生モルラルを摺り切りで注ぎ入れ、スランプコーンをゆっくり垂直に引き上げた。このとき生モルタルはアルミ板上に円形に広がる。このときの広がった円形の直径、または円形が歪んでいる場合は最短径と最長径の相加平均をフロー値として計測した。このフロー値は生モルタルの流動性を反映している。
(7)モルタル成形物の曲げ強度
幅40mm×高さ40mm×長さ160mmの型枠に、生モルタルを打設し、20℃、90%RHで材齢28日まで養生して、供試体を製造した。上記供試体を、「JIS-R-5201」に準拠して3点曲げ測定した。より詳しくは、10トン用引張圧縮試験機(TOYO BALDWIN社製、UNIVERSAL TESTING INSTRUMENT MODEL UTM 10t)を用い、支点間距離10cmの中心を2mm/分の速度で圧縮し、曲げ応力-歪みの最大応力を曲げ強度として算出した。
【0040】
[実施例1]
繊維材料として、共重合型アラミド繊維(共重合型芳香族ポリアミド繊維、帝人株式会社製「テクノーラ」1670dtex、1000フィラメント、引張強度24.5cN/dtex)の連続長繊維を牽切長150cmの長さで3.8倍に伸長し牽切加工することで440dtexの牽切加工糸を得た。次いで、得られた牽切加工糸に撚糸機を用いて320回/mの撚りをかけ繊維材料(450dtex、263フィラメント、引張強度16.0cN/dtex)とした。樹脂材料としてソルビトールポリグリシジルエーテル系エポキシ化合物(ナガセケムテックス株式会社社製、「EX614B」)とジメチルピラゾールブロックヘキサメチレンジイソシアネート(Baxenden社製、「Trixene aqua201」、ジメチルピラゾールブロック-HDIトリマー)とをそれぞれ固形分で50重量%と50重量%との割合で混合した、総固形分濃度8重量%の配合液(水を分散媒とするエマルジョン)に浸漬した後、絞りロールで付着液量を調整後、温度200℃で乾燥させ、樹脂材料が繊維材料100重量%に対して10重量%付与した繊維束を得た。この繊維束を所定の長さ15mmに切断してセメント補強材を得た。得られたセメント補強材の直径は0.25mmであった。
【0041】
このセメント補強材27.8gを、低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)951g、シリカフューム(エルケムAS社製)220g、細骨材(三栄シリカ株式会社製、「6号珪砂」)541g、細骨材(三栄シリカ株式会社製、「珪砂SP80」)437g、水193g、と共に、モルタルミキサー(マルイ製、MIC-362型、容量:5L)を用いて140rpmの撹拌速度で約3分間混練して生モルタルを得た。この生モルタルを気中で3日間、水中で2日間、また気中で2日間養生して得たモルタル成形体を評価した結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
繊維材料として、実施例1の牽切加工糸の代わりに、共重合型アラミド繊維(共重合型芳香族ポリアミド繊維、帝人株式会社製「テクノーラ」)の10番手紡績糸(591dtex、撚り係数K=4.1、引張強度9.5cN/dtex)を用いた他は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
樹脂材料の配合液として、総固形分濃度12重量%の配合液(水を分散媒とするエマルジョン)を使用し、樹脂材料を繊維材料100重量%に対して14重量%付与した繊維束を得た他は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
樹脂材料の配合液として、総固形分濃度5重量%の配合液(水を分散媒とするエマルジョン)を使用し、樹脂材料を繊維材料100重量%に対して7重量%付与した繊維束を得た他は実施例1と同様にして行った。評価結果を表1に示す。
【0045】
[比較例1]
繊維材料として、実施例1の牽切加工糸の代わりに、共重合型アラミド繊維(共重合型芳香族ポリアミド繊維、帝人株式会社製「テクノーラ」)の長繊維440dtexを用い、樹脂材料として総固形分濃度12重量%の配合液(水を分散媒とするエマルジョン)を使用し、樹脂材料を繊維材料100重量%に対して10重量%付与した繊維束を得た以外は実施例1と同様にして実施した。評価結果を表1に示す。
【0046】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のセメント補強材は、セメントを用いたモルタルやコンクリートの補強に好適に用いることができる。