(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】埋設部材の設置構造およびその設置方法
(51)【国際特許分類】
E01F 9/60 20160101AFI20230131BHJP
E01F 13/02 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
E01F9/60
E01F13/02 Z
(21)【出願番号】P 2019108184
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】高室 和俊
(72)【発明者】
【氏名】野村 展生
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-321213(JP,A)
【文献】特開平11-247116(JP,A)
【文献】特開平11-303005(JP,A)
【文献】特開2006-183353(JP,A)
【文献】特開2010-106632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/60
E01F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙を小さくして透水性をなくした基層の上面に、透水のための空隙が形成された透水性の表層を有する排水性舗装に
おいて、当該排水性舗装上に設けられる構造物を固定するための被固定部材である埋設部材を設置する構造であって、
前記埋設部材は、前記表層に形成された凹部に収納されており、
前記凹部の周囲を周回する前記表層には、当該表層の空隙に流入された補強材が
表層の上から基層の上面まで浸透して当該基層の上面で放射状に広がって固化されてなる補強部が形成されている
とともに、
前記埋設部材は、前記凹部内に充填された固定材によって当該凹部内に固定されてなることを特徴とする埋設部材の設置構造。
【請求項2】
空隙を小さくして透水性をなくした基層の上面に、透水のための空隙が形成された透水性の表層を有する排水性舗装において、当該排水性舗装上に設けられる構造物を固定するための被固定部材である埋設部材を設置する構造であって、
前記埋設部材は、前記
表層に形成された凹部に収納され、当該凹部内に充填された固定材によって当該凹部内に固定されて
おり、
前記凹部の周囲を周回する前記表層には、前記固定材の一部が含浸するとともに、当該表層の空隙に流入された補強材が基層の上面まで浸透して放射状に広がって固化されてなる補強部が形成されており、当該補強部は前記表層に一部が含浸した前記固定材の周囲に形成されていることを特徴とする埋設部材の設置構造。
【請求項3】
前記補強部は、前記凹部の直径に対して2~8倍の大きさの略円形状の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の埋設部材の設置構造。
【請求項4】
前記補強部は、前記基層の上面に当接する下部の平面視投影面積が、それより上部の平面視投影面積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項3に記載の埋設部材の設置構造。
【請求項5】
前記凹部は、下端が前記基層の上面より下方に至るように形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の埋設部材の設置構造。
【請求項6】
前記補強材は合成樹脂で形成され、ガラス転移温度が70度以上であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一に記載の埋設部材の設置構造。
【請求項7】
前記補強部の上面に、太陽光照射による温度上昇を抑制するための遮熱層が形成されていることを特徴とする
請求項1ないし6の何れか一に記載の埋設部材の設置構造。
【請求項8】
請求項1に記載の埋設部材の設置構造を設置する方法であって、
前記表層の上方より、当該表層の空隙に、固化前の補強材を流入させ、当該空隙内で補強材を固化させることによって、表層に補強部を形成した後、
前記表層の補強部に凹部を形成して埋設部材を収納し、
前記凹部内に固定材を充填して固化させて前記埋設部材を前記凹部内に固定することを特徴とする埋設部材の設置方法。
【請求項9】
請求項1に記載の埋設部材の設置構造を設置する方法であって、
前記表層に凹部を形成し、当該凹
部の周囲を周回する前記表層の上方より、当該表層の空隙に、固化前の補強材を流入させ、当該空隙内で補強材を固化させることによって、表層に補強部を形成し
た後、前記凹部内に埋設部材を収納するとともに、当該凹部内に固定材を充填して固化させて、前記埋設部材を凹部内に固定することを特徴とする埋設部材の設置方法。
【請求項10】
請求項2に記載の埋設部材の設置構造を設置する方法であって、
前記表層に凹部を形成し、当該凹部内に埋設部材を収納し、
前記凹部内に固定材を充填して当該凹部内に前記埋設部材を固定した後、
前記凹部の周囲を周回する前記表層の上方より、当該表層の空隙に、固化前の補強材を流入させ、当該空隙内で補強材を固化させることによって、表層に補強部を形成することを特徴とする埋設部材の設置方法。
【請求項11】
表層の上方から流入させる前記補強材を、前記固定材の上面に接するように供給することを特徴とする請求項10に記載の埋設部材の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性の表層を備える排水性舗装にアンカーナット等の埋設部材を固定する構成において、埋設部材の抜脱を抑制する設置構造および設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、透水のための空隙が形成された透水性のある表層を備える舗装体として、骨材とアスファルトとの混合物で形成した表層を備えるものが知られている。
【0003】
従来より、このような舗装体としては、表層の空隙に、機能性材料を含み補強効果を示すスラリーを注入し固化させることで、強度等の向上を図った機能性舗装体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
同じく、舗装体の強度等の向上のために、当該舗装体の表面に非透水性補強材を充填塗工する道路の舗装方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、このように注入される材料として、剛性低下を防止する材料や(例えば、特許文献3参照)、特定の硬度のものを使用することが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
ところで、このような舗装体を採用した車道では、車線分離のための緩衝体やポールなどの構造物を舗装体上に設けることが行われており、舗装体には、構造物を固定するためのアンカーナット等の埋設部材を設ける必要がある。このような場合、アンカーナット等の埋設部材は、舗装体に穿孔した孔に、埋設部材を設け、当該孔と埋設部材との間隙に、セメントモルタルや接着剤等の固定材を充填し、硬化させることによって舗装体に固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第2899874号
【文献】特許第3136328号
【文献】特許第3136328号
【文献】特許第3374309号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記した舗装体上に埋設部材を介して設けられた緩衝体やポール等の構造物は、当該舗装体上を走行中の車両に衝突されることがあり、この際、埋設部材は、構造物を介して水平方向に瞬間的な衝撃を受ける。
【0009】
したがって、表層に空隙か形成されている通常の排水性舗装の場合は、このような水平方向からの瞬間的な衝撃を受けると、表層ごと舗装が剥離してしまうこととなる。
【0010】
また、上記従来の特許文献1に記載の機能性舗装体のように、表層の空隙に、機能性材料を含み補強効果を示すスラリーを注入し固化させたものであっても、この機能性舗装体は、道路表面の凍結防止、車両走行に対する耐磨耗性の向上等を図るための構成であり、具体的な構成としては、下部に空隙を残したまま上部の空隙に選択的にスラリーを注入し固化させる構成が開示されているだけで、上記したような水平方向から受ける瞬間的な衝撃を考慮したものではないため、このような機能性舗装体に埋設部材を設けて緩衝体などの構造物を設けた場合、当該緩衝物が車両に衝突されると、機能性舗装体の表層ごと剥離してしまうこととなる。
【0011】
特許文献2に記載の道路の舗装方法のように、当該排水性舗装の表面に非透水性補強材を充填塗工した舗装の場合も、耐磨耗性を考慮した構成であり、上記したような水平方向から受ける瞬間的な衝撃を考慮したものではないため、やはり、表層ごと剥離してしまうこととなる。
【0012】
これは、空隙に注入される材料を、上記従来の特許文献3、4に開示されているようなものに変更したからといって解決されるものではない。
【0013】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、透水性の表層を備える排水性舗装にアンカーナット等の埋設部材を固定する構成において、埋設部材の抜脱を抑制する設置構造および設置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の埋設部材の設置構造は、空隙を小さくして透水性をなくした基層の上面に、透水のための空隙が形成された透水性の表層を有する排水性舗装において、当該排水性舗装上に設けられる構造物を固定するための被固定部材である埋設部材を設置する構造であって、前記埋設部材は、前記表層に形成された凹部に収納されており、前記凹部の周囲を周回する前記表層には、当該表層の空隙に流入された補強材が表層の上から基層の上面まで浸透して当該基層の上面で放射状に広がって固化されてなる補強部が形成されているとともに、前記埋設部材は、前記凹部内に充填された固定材によって当該凹部内に固定されてなるものである。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の埋設部材の設置構造は、空隙を小さくして透水性をなくした基層の上面に、透水のための空隙が形成された透水性の表層を有する排水性舗装において、当該排水性舗装上に設けられる構造物を固定するための被固定部材である埋設部材を設置する構造であって、前記埋設部材は、前記表層に形成された凹部に収納され、当該凹部内に充填された固定材によって当該凹部内に固定されており、前記凹部の周囲を周回する前記表層には、前記固定材の一部が含浸するとともに、当該表層の空隙に流入された補強材が基層の上面まで浸透して放射状に広がって固化されてなる補強部が形成されており、当該補強部は前記表層に一部が含浸した前記固定材の周囲に形成されているものである。
【0016】
上記埋設部材の設置構造において、前記補強部は、前記凹部の直径に対して2~8倍の大きさの略円形状の範囲に形成されているものであってもよい。
【0017】
上記埋設部材の設置構造において、前記補強部は、前記基層の上面に当接する下部の平面視投影面積が、それより上部の平面視投影面積よりも大きく形成されているものであってもよい。
【0018】
上記埋設部材の設置構造において、前記凹部は、下端が前記基層の上面より下方に至るように形成されているものであってもよい。
【0019】
上記埋設部材の設置構造において、前記補強材は合成樹脂で形成され、ガラス転移温度が70度以上であるものであってもよい。
【0020】
上記埋設部材の設置構造において、前記補強部の上面に、太陽光照射による温度上昇を抑制するための遮熱層が形成されているものであってもよい。
【0021】
上記課題を解決するための本発明の埋設部材の設置方法は、上記埋設部材の設置構造を設置する方法であって、前記表層の上方より、当該表層の空隙に、固化前の補強材を流入させ、当該空隙内で補強材を固化させることによって、表層に補強部を形成した後、前記表層の補強部に凹部を形成して埋設部材を収納し、前記凹部内に固定材を充填して固化させて前記埋設部材を前記凹部内に固定するものである。
【0022】
上記課題を解決するための本発明の埋設部材の設置方法は、上記埋設部材の設置構造を設置する方法であって、前記表層に凹部を形成し、当該凹部の周囲を周回する前記表層の上方より、当該表層の空隙に、固化前の補強材を流入させ、当該空隙内で補強材を固化させることによって、表層に補強部を形成した後、前記凹部内に埋設部材を収納するとともに、当該凹部内に固定材を充填して固化させて、前記埋設部材を凹部内に固定するものである。
【0023】
上記課題を解決するための本発明の埋設部材の設置方法は、上記埋設部材の設置構造を設置する方法であって、前記表層に凹部を形成し、当該凹部内に埋設部材を収納し、前記凹部内に固定材を充填して当該凹部内に前記埋設部材を固定した後、前記凹部の周囲を周回する前記表層の上方より、当該表層の空隙に、固化前の補強材を流入させ、当該空隙内で補強材を固化させることによって、表層に補強部を形成するものである。
【0024】
上記埋設部材の設置方法において、表層の上方から流入させる前記補強材を、前記固定材の上面に接するように供給するものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように、本発明によると、表層に形成された凹部の周囲を周回する表層には、当該表層の空隙に流入された補強材が表層の上から基層の上面まで浸透して当該基層の上面で放射状に広がって固化してなる補強部を形成するとともに、前記凹部内に充填された固定材によって当該凹部内に埋設部材を固定している、または、表層に形成された凹部内に充填された固定材によって埋設部材を固定し、前記凹部の周囲を周回する前記表層には、当該固定材の一部が含浸するとともに、当該表層の空隙に流入された補強材が基層の上面まで浸透して放射状に広がって固化してなる補強部を形成し、当該補強部は前記表層に一部が含浸した前記固定材の周囲に形成しているので、埋設部材は、固定材および補強部とともに強固に一体化してアンカー効果を発揮し、当該埋設部材に固定される構造物が水平方向から瞬間的な衝撃を受けても充分な耐久性を発揮することとなり、排水性舗装における表層の剥離を防止することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る埋設部材の設置構造の全体構成の概略を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る埋設部材の設置方法の施工手順を説明する工程図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態に係る埋設部材の設置方法の施工手順を説明する工程図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施の形態に係る埋設部材の設置方法の施工手順を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は本発明に係る埋設部材1の設置構造の全体構成の概略を示し、
図2ないし
図4は同埋設部材1の設置方法をそれぞれ示している。
【0029】
この埋設部材1の設置構造は、透水のための空隙が形成された透水性の表層21を有する排水性舗装2に、埋設部材1を設置する構造であって、前記埋設部材1は、前記表層21に形成された凹部20に収納されており、前記凹部20の周囲を周回する前記表層21には、当該表層21の空隙に流入された補強材30が固化されてなる補強部3が形成されているものである。
【0030】
埋設部材1としては、排水性舗装2に埋設された状態で施工され、施工後に、排水性舗装2上に設けられる緩衝体やポールなどの構造物4を固定できるように構成されたアンカーナットのような被固定部材に類するものが使用される。この埋設部材1は、排水性舗装2上に設けられる構造物4を固定するアンカーナットのような被固定部材であり、かつ、排水性舗装2に埋設可能でれば、特に径や大きさ等は限定されるものではなく、各種の径やピッチ、長さのものが使用される。
【0031】
排水性舗装2は、透水のための空隙を多く形成することによって降雨時の水捌けを良くした舗装であって、基本的には空隙率が5~25%、好ましくは15~20%としたアスファルト舗装からなる表層21によって構成されている。この表層21を構成するアスファルト舗装は、砕石などからなる骨材をアスファルト組成物で結合させたアスファルト混合物を敷設して構成される。この際、アスファルト混合物としては、ポーラスアスファルト混合物または開粒度アスファルト混合物が使用される。また、この表層21の下層には、空隙を小さくして透水性を無くした同じくアスファルト舗装からなる基層22が構成されていてもよい。この基層22を構成するアスファルト組成物としては、粗粒度アスファルト混合物が使用される。また、排水性舗装2の厚みとしては、交通量や地域性や耐久性や場所等によって異なるが、表層21としては、厚さ20~80mm、より好ましくは厚さ30~50mm、基層22としては、厚さ20~130mm、より好ましくは厚さ30~100mm、表層21と基層22とを併せた合計で厚さ40~150mm、好ましくは厚さ60~150mmとされる。本実施の形態において、排水性舗装2は、表層21が厚さ40mm、基層22が厚さ30mmとなされ、路盤5上に構成されている。路盤5は、高速道路等の場合は、コンクリート躯体51上に防水シート52を設けて構成されているものもある。
【0032】
なお、本実施の形態において、排水性舗装2は、コンクリート躯体51上に防水シート52を設けた路盤5上に、基層22および表層21を設けて構成されているが、これは、高速道路等の場合であるからであって、路盤5としては、このようなコンクリート躯体51上に防水シート52を設けたものに限定されるものではなく、地盤上に設けるものであってもよい。また、表層21の下に基層22を設けているが、歩道などの負荷が小さな舗装では、透水性の表層21のみで排水性舗装2を形成するものであってもよい。
【0033】
この排水性舗装2には、上記した埋設部材1を設けるための凹部20が穿孔される。この凹部20は、埋設部材1の全体を収納して当該埋設部材1を凹部20内に固定できる直径および深さであれば、特に限定されるものではないが、直径φ56~160mm、より好ましくは直径φ65~160mm、深さとしては20mm以上から基層22の底面に至るまでの深さの範囲で適宜決定される。凹部20の深さについては、補強部3による補強効果を充分に得るために、基層22の上面、好ましくは基層22の途中の深さまで穿孔されていることが良い。この凹部20には、埋設部材1を設け、両者の間隙に固定材10を充填して固化させることによって埋設部材1が固定される。
【0034】
なお、凹部20と、この凹部20に設けた埋設部材1との間隙に充填されて、当該凹部20内に埋設部材1を固定する固定材10としては、凹部20を構成する表層21のアスファルト舗装と、埋設部材1を構成する金属との密着性を確保できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂等の合成樹脂からなる高分子系材料の接着剤であってもよく、モルタル等のセメント材料であってもよい。
【0035】
補強部3は、埋設部材1が設けられる凹部20を周回するように表層21に補強材30を含浸させ、固化させることによって形成される。この補強材30としては、表層21に浸透して固化することで、表層21を補強できるものであれば良く、液状から固化するものを利用することができる。例えば、エポキシ樹脂等の合成樹脂からなる高分子系材料の接着剤を補強材30に用いる場合は、そのガラス転移点がアスファルト舗装の夏場温度(70度)よりも高いものを用いるのが好ましい。また、ガラス転移点を備えない、モルタルなどのセメント材料も補強材30として好適に利用することができる。また、補強材30を表層21に含浸させる際、表層21全体に行き渡った状態で固化するように、補強材30は、フィラー等と混合して粘度調整したものを含浸させるようにしても良い。フィラーとしては、シリカ、タルク、マイカ、ガラス繊維等が挙げられる。
【0036】
この補強部3の大きさとしては、凹部20の大きさに応じて適宜決定することができる。具体的には、表層21の上面において、凹部20の直径に対して2倍~8倍、より好ましくは3倍~6倍程度の大きさの略円形状の範囲に補強材30を散布して、凹部20の周囲を周回する略円柱状の大きさの補強部3となるように設けられる。ただし、補強部3は、あまり大きくし過ぎると、排水性舗装2の透水性を損なってしまう部分の面積を大きくしてしまうこととなるので、表層21の表面において、直径φ350mmまでの範囲の略円柱状、好ましくは直径φ320mmまでの範囲の略円柱状となるように設けられる。また、表層21の上面における補強材30の散布範囲は上記のような略円柱状に限るものではないが、上記略円形状の範囲が含まれるように補強材30を散布して補強部3を形成するのが好ましい。
【0037】
なお、補強材30は、表層21に浸透するが、透水性の無い基層22に至ると、基層22には略浸透しないので、基層22と表層21との境界部分、すなわち、基層22の上面で放射状に広がって固化することとなり、アンカー効果を増大することとなる。この広がり具合は、補強材30の粘度によって調整することができる。
【0038】
また、排水性舗装における表層21は、アスファルト舗装が夏場温度(70度)近くに温度上昇して来ると、軟化することが懸念され補強部3の強度低下が懸念されるので、表層21の上面に露出することとなる補強部3の表面部分には、直射日光の照射による温度上昇を防止して当該補強部3を構成するアスファルト舗装の軟化を防止するための遮熱材による遮熱層を構成してもよいし、表層21を構成するアスファルト舗装自体が遮熱舗装材料で構成されたものであってもよい。
【0039】
次に、この埋設部材1の設置方法について説明する。
図2に示すように、まず、埋設部材1を設けようとする箇所の表層21の上から、補強材30を流し、当該表層21に補強材30を含浸させる。
【0040】
この際、補強材30は、表層21への含浸具合に応じ、当該補強材30にフィラーを加えて粘度調整したものを使用する。これにより、補強材30は表層21に浸透するが、当該表層21の下の透水性の無い基層22には浸透し難いので、基層22と表層21との境界部分に該当する基層22の表面で放射状に広がり、結果、最下端部の平面視投影面積が、それより上部の平面視投影面積よりも大きくなった状態で、表層21と補強材30との混合層が固化した補強部3が形成されることとなる。
【0041】
なお、補強部3を形成する場合、粘度調整した1種類の補強材30を浸透させて補強部3を形成するものであってもよいし、異なった粘度に調整した複数種類の補強材30を浸透させて補強部3を形成するものであってもよい。すなわち、1種類だと、下端部が広がり難いが、低粘度の補強材30を浸透させて広がらせた後、高粘度の補強材30を浸透させれば、
図2に示すように、最下端部の平面視投影面積をより大きく形成し易くでき、アンカー効果がより期待でき、かつ、補強部3を所望のアンカー形状にすることができる。
このようにして補強部3を形成した後、
図2(c)に示すように、当該補強部3に相当する表層21の上から、凹部20を穿孔する。この際、凹部20は、表層21下の基層22の中間に至る深さ、すなわち基層22の上面より下方に至るように形成された深さまで穿孔する。
【0042】
そして、凹部20に埋設部材1を設けた後、当該埋設部材1と凹部20との間隙にモルタルや接着剤等の固定材10を充填して固化させることにより、埋設部材1を凹部20内に固定する。この固定材10を充填して固化させるまでの間、埋設部材1は、排水性舗装2上に設けた治具(図示省略)によって、つり下げた状態を維持することで、固定材10中に沈降してしまわないように施工される。
【0043】
このようにして構成された埋設部材1の設置構造によると、凹部20の周囲を周回する表層21には、当該表層21の空隙に流入された補強材30が固化されてなる補強部3が既に形成されているので、凹部20内に埋設部材1を固定する際に、当該凹部20内に充填される固定材10は、周囲に広がることなく凹部20に充填され、補強部3と強固に一体化することとなる。しかもこの補強部3は、表層21の下の基層22の表面で放射状に広がった形状で固化するため、アンカー効果を発揮する。
【0044】
また、凹部20に充填された固定材10は、周囲に広がることなく凹部20内で固化するため、養生の際に充填した固定材10の液面が低下するようなことにならないので、液面が低下した分の補充の充填作業を行うことなく、凹部20に埋設部材1を固定することができる。
【0045】
これにより、
図2(d)に示すように、凹部20に収納された埋設部材1は、当該埋設部材1を表層21に固定する固定材10の周囲が、アンカー効果を有する形状に固化した補強部3によって補強されているため、埋設部材1に固定される構造物4が水平方向から瞬間的な衝撃を受けても充分な耐久性を発揮することとなる。したがって、排水性舗装2上を走行する車両が、この埋設部材1に固定された構造物4に衝突するようなことがあったとしても、排水性舗装2における表層21の剥離を防止することができることとなる。
【0046】
図3は、埋設部材1の他の設置方法を示している。
図3(b)に示すように、まず、埋設部材1を設けようとする箇所の表層21の上から、凹部20を穿孔する。この際、凹部20は、表層21下の基層22の中間に至る深さ、すなわち基層22の上面より下方に至るように形成された深さまで穿孔する。
【0047】
この凹部20に埋設部材1を設けた後、当該埋設部材1と凹部20との間隙にモルタルや接着剤等の固定材10を充填して固化させることにより、埋設部材1を凹部20内に固定する。この際、固定材10は、凹部20の周囲の表層21が透水性を有するため、当該表層21に一部が含浸してしまうが、できるだけ広がらないように、粘度調整したものを使用する。
【0048】
そして、
図3(c)に示すように、凹部20の周囲を周回するように、表層21の上から、補強材30を流し、当該表層21に補強材30を含浸させ固化させ、補強部3を形成する。
【0049】
この際も、補強材30は、表層21への含浸具合に応じ、当該補強材30にフィラーを加えて粘度調整したものを使用する。これにより、補強材30は表層21に浸透するが、当該表層21の下の透水性の無い基層22には浸透し難いので、基層22と表層21との境界部分に該当する基層22の表面で放射状に広がり、結果、最下端部の平面視投影面積が、それより上部の平面視投影面積よりも大きくなった状態で、表層21と補強材30との混合層が固化した補強部3が形成されることとなる。上記した
図2に示す方法の場合は、補強部3を形成してから凹部20を穿孔するため、当該凹部20に含浸させた補強材30が無駄になるが、この方法の場合は、表層21に含浸させる補強材30を全て凹部20の周囲に周回するように含浸させるので、無駄無く補強材30を使用することができる。
【0050】
また、補強部3を形成する前に、凹部20に固定材10を充填して固化させるので、固定材10は、埋設部材1を凹部20に固定するとともに、当該凹部20の周囲の表層21に一部が含浸して、当該表層21と強固に一体化することとなる。しかも、このように固定材10の一部が含浸した表層21の周囲の部分には補強材30が含浸して固化した補強部3が形成されるので、埋設部材1は、固定材10および補強部3とともに強固に一体化して、アンカー効果を発揮することができることとなる。また、固定材10は、固化する間、凹部20のみでなく一部が表層21に含浸してしまうため、表層21と面一となるように凹部20内に充填していたとしても固化後の表面は、表層21よりも低くなってしまうが、その後工程で凹部20の周囲に周回するように表層21に含浸させた補強材30が、この低くなった固定材10の表面に流れ込んで補強部3として固化することとなる。
【0051】
ここでは、固定材10の表面が表層21よりも低くなってしまった後、この低くなってしまった部分に補強材30を流入固化させた補強部3を構成することによって表層21と面一に仕上げているが、固定材10の表面が表層21よりも低くならないように、当該固定材10の表面を表層21の上面と面一に設けるようにしてもよい。例えば、固定材10を充填する前に、凹部20の内周面や底面へプライマーや接着剤などを塗布して固化させることで、固定材10の表層21への浸透を防止させて固定材10の表面が表層21よりも低くならないようにするものであっても良い。この場合、固定材10の浸透を抑制する部材は、上記したようなプライマーや接着剤などの液状に限るものではなく、金属パイプや樹脂パイプなどの筒状体を凹部20に挿入して固定材10の浸透を抑制させてもよい。
【0052】
また、
図3に示す実施の形態においては、埋設部材1を設置させた後に補強部3を形成するので、設置された既存の埋設部材1についても、上記と同様に補強部3を設けることで抜脱を効果的に抑制できる。
【0053】
図4は、埋設部材1のさらに他の設置方法を示している。
図4(b)に示すように、まず、埋設部材1を設けようとする箇所の表層21の上から、凹部20を穿孔する。この際、凹部20は、表層21の下の基層22の中間に至る深さ、すなわち基層22の上面より下方に至るように形成された深さまで穿孔する。
【0054】
ついで、
図4(c)に示すように、この凹部20の周囲を周回するように、表層21の上から、補強材30を流し、当該表層21に補強材30を含浸させて固化させ、補強部3を形成する。この際も、補強材30は、表層21への含浸具合に応じ、当該補強材30にフィラーを加えて粘度調整したものを使用する。これにより、上記した実施例と同じように、最下端部の平面視投影面積が、それより上部の平面視投影面積よりも大きくなった状態で、表層21と補強材30との混合層が固化した補強部3を形成することができる。しかも補強材30の一部は基層22に凹設された凹部20にも流れ込んで固化することとなり、当該基層22とも強固に一体化することとなる。
【0055】
そして、
図4(d)に示すように、この凹部20に埋設部材1を設けた後、当該埋設部材1と凹部20との間隙にモルタルや接着剤等の固定材10を充填して固化させることにより、埋設部材1を凹部20内に固定する。
【0056】
この際、凹部20は、周囲を周回するように表層21の上から補強材30を流し込んで含浸させて固化させた補強部3が形成されているので、凹部20内に埋設部材1を固定する際に、当該凹部20内に充填される固定材10は、周囲に広がることなく凹部20に充填され、補強部3と強固に一体化することとなる。しかもこの補強部3は、表層21の下の基層22の表面で放射状に広がった形状で固化し、基層22の凹部20内にも流れ込んで固化しているので、優れたアンカー効果を発揮する。
【0057】
また、凹部20に充填された固定材10は、周囲に広がることなく凹部20内で固化するため、養生の際に充填した固定材10の液面が低下するようなことにならず、一回の充填作業で凹部20に埋設部材1を固定することができる。
【0058】
なお、上記した各実施の形態において、埋設部材1の下端は、基層22の上面よりも上方に位置しているが、埋設部材1の下端が基層22の上面よりも下方に至っているものであってもよい。
【0059】
また、上記した各実施の形態において、埋設部材1は、その上端が表層21よりも上方へ突出するように構成されたアンカーボルト等の埋設部材1であってもよい。
【0060】
さらに、上記した各実施の形態において、埋設部材1は、凹部20へ充填した固定材10によって固定しているが、これに限定されるものではない。例えば、凹部20へ挿入された埋設部材1の部位を拡開させて凹部20の内周面へ強固に当接されることで設置されるアンカーボルト等の埋設部材1の設置構造においても、凹部20の周囲に補強部3を設ける本発明の構成によって、その抜脱が効果的に抑制できる。
【0061】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0062】
1 埋設部材
10 固定材
2 排水性舗装
21 表層
22 基層
3 補強部
30 補強材
4 構造物