(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】腫瘍関連マクロファージを標的化する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230131BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230131BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230131BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230131BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230131BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230131BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230131BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230131BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230131BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230131BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230131BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230131BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230131BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230131BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
G01N33/574 Z
C12Q1/02
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2019503668
(86)(22)【出願日】2017-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2017069174
(87)【国際公開番号】W WO2018020000
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-22
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】510139564
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワ
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】515034781
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニヴェルシテール・ドゥ・トゥールーズ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE TOULOUSE
(73)【特許権者】
【識別番号】517269518
【氏名又は名称】アンスティチュ・クロディウス・ルゴー
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CLAUDIUS REGAUD
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】プーポ,マリー
(72)【発明者】
【氏名】イセバエル,ロワ
(72)【発明者】
【氏名】トソリーニ,マリー
(72)【発明者】
【氏名】フルニエ,ジャン-ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ブルッセ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ロシェ,フィリップ
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/116597(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/077837(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0187604(US,A1)
【文献】国際公開第2011/031308(WO,A1)
【文献】特表2015-520167(JP,A)
【文献】Proteomics Clinical Applications,2008年,Vol.2,pp.517-527
【文献】Cancer Cell,2014年,Vol.25,pp.846-859
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/28-19/00
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)可変ドメインが:
-配列番号1として示される配列を有するH-CDR1、及び
-配列番号2として示される配列を有するH-CDR2、及び
-配列番号3として示される配列を有するH-CDR3
を含む、重鎖;
(b)可変ドメインが:
-配列番号4として示される配列を有するL-CDR1、及び
-配列番号5として示される配列を有するL-CDR2、及び
-配列番号6として示される配列を有するL-CDR3
を含む、軽鎖
を含む、腫瘍関連マクロファージ(TAM)を標的化する
抗シデロフレキシン-3抗体。
【請求項2】
前記抗体が、
-可変ドメインが、配列番号7として示される配列を有する、重鎖、
-可変ドメインが、配列番号8として示される配列を有する、軽鎖
を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が腫瘍関連マクロファージを枯渇させることができる、請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1~3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
請求項1の抗体をコードしている核酸分子。
【請求項6】
請求項2の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸分子。
【請求項7】
請求項5又は6記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項8】
請求項5又は6記載の核酸
又は請求項7記載のベクターによってトランスフェクトされているか、感染しているか、又は形質転換されている宿主細胞。
【請求項9】
医薬品としての使用のための請求項1~4のいずれか一項記載の抗体、請求項5又は6記載の核酸、請求項7記載のベクター、又は請求項8記載の宿主細胞。
【請求項10】
生物学的試料中の腫瘍関連マクロファージを検出及び/又はその量を評価するための方法であって、該方法は、該試料を請求項1の抗体と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項11】
がんの処置に使用するための請求項1~4のいずれか一項記載の抗体、請求項5又は6記載の核酸、請求項7記載のベクター、又は請求項8記載の宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項記載の抗体、請求項5又は6記載の核酸、請求項7記載のベクター、又は請求項8記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)を標的化する抗体及びその使用に関する。
【0002】
発明の背景:
がんのイニシエーション及び腫瘍増殖の促進における腫瘍微小環境の重要性は、過去10年間にわたりますます認識されるようになっている(H. Korkaya JCI, 121, (10), 3804-3809, 2011; E. Lonardo, J. Frias-Aldeguer, Cell Cycle, 11(7), 1282-1290, 2012; J. W. Pollard, Nature Reviews Immunology, 9 (4), 259-270,2009)。
【0003】
腫瘍微小環境は、慢性炎症によって特徴付けられ、これは腫瘍増殖を抑制するのではなく、細胞増殖を刺激し、がん幹細胞(CSC)を活性化し、転移を促進することによって腫瘍の形成を支持する[V. Plaks, Cell Stem Cell, 16(3), 225-238, 2015; S. M. Cabarcas, L. A. International Journal of Cancer, 129(10), 2315-2327, 2011]。腫瘍炎症応答を誘導するのは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である[R. Noy Immunity, 41(1),.49-61, 2014]。多数のTAMと急速な疾患の進行と患者の悪い転帰との間の相関が数十年間にわたり観察されている[L. Bingle, Journal of Pathology, 196 (3), 254-265, 2002; B.-Z. Qian Cell, 141(1), 39-51, 2010];しかしながら、最近になってやっと、この逆説的な表現型が説明された。この相関は、TAMにより媒介されるパラ分泌シグナル伝達に起因し、このシグナル伝達ではマクロファージに由来する因子がCSC区画を活性化し、CSCの幹細胞様の特色を促進し、腫瘍の進行、転移、及びさらにはCSCの化学療法抵抗性さえも悪化させることが今では解明されている。
【0004】
腫瘍への単球の浸潤は、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL5、及びCXCL12)、CSF-1、及び補体カスケード成分によって媒介される[E. Bonavita, Advances in Cancer Research, 128, 141-171, 2015; E. Bonavita, Cell, 160(4), 700-714, 2015]。単球が一旦腫瘍内に入ると、腫瘍環境は迅速に、単球から腫瘍条件マクロファージへの分化を促進する。TAMは、M1表現型とは異なる方向に偏り、M2前腫瘍マーカーを発現していると当初考えられていた[Biswas SK. Nature Immunology, 11(10), 889-896, 2010]。
【0005】
M2型様TAM及びサブセットをより具体的に同定するために、ヘモグロビンのスキャベンジャー受容体CD163[Heusinkveld M. The Journal of Immunology, 187(3), 1157-1165, 2011; Martinez FO., Annual Review of Immunology, 27, 451-483, 2009]、マクロファージのスキャベンジャー受容体1CD204[Biswas SK. Nature Immunology, 11(10), 889-896, 2010, Laoui, D. International Journal of Developmental Biology, 55(7-9), 861-867, 2011]、マンノース受容体CD206[Mantovani, A. Trends in Immunology, 23(11), 549-555, 2002]、マクロファージ受容体CD68(Tang X, Cancer Letter 2013, Takeuchi H, Oncol Lett 2016 ; Hu H, tumour biol 2016 ; Kim KJ, PlosOne 2015)、及びもっと最近ではT細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有タンパク質-3(Tim-3)[Yan W., Gut, 64(10), 1593-1604, 2015]が非常に成功裏に使用されてきた。
【0006】
がんのイニシエーション及び腫瘍増殖の促進における腫瘍微小環境の重要な役割が認識されているので、特にTAMの役割、TAMの抑制及び/又は枯渇は、魅力的な抗がん免疫療法アプローチを示す(Noy, R., and Pollard, J.W. 2014. Tumor-associated macrophages: from mechanisms to therapy. Immunity 41:49-61)。しかしながら、非常に僅かな薬物しか開発されておらず、臨床段階の「抗TAM」療法としては主にCD115(TAMの機能的マーカー)の標的化が挙げられる(Cassier, P.A., Italiano, A., Gomez-Roca, C.A., Le Tourneau, C., Toulmonde, M., Cannarile, M.A., Ries, C., Brillouet, A., Muller, C., Jegg, A.M., et al. 2015. CSF1R inhibition with emactuzumab in locally advanced diffuse-type tenosynovial giant cell tumours of the soft tissue: a dose-escalation and dose-expansion phase 1 study. Lancet Oncol 16:949-956)。
【0007】
それ故、腫瘍内に存在するTAMを標的化する新規な薬物が必要とされる。特に、TAMの特異的な生物学的マーカーを標的化する薬物が非常に望ましいだろう。
【0008】
発明の要約:
本発明は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)を標的化する抗体及びその使用に関する。特に、本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0009】
発明の詳細な説明:
本発明者らは、腫瘍関連マクロファージ(TAMは、白血病においてナース様細胞(NLC)とも呼ばれる)におけるシデロフレキシン-3の存在を示し、これは先行技術においては記載されたことがなかった。
【0010】
より特定すると、本発明者らは、正常なマクロファージには存在しないシデロフレキシン3が、腫瘍関連マクロファージによって発現されているという証拠を提示する。これは、腫瘍関連マクロファージの表面上に露出し、結果として、TAMを検出及び標的化(がんの治療のために)するための独特な機会を与える、最初の特異的なマーカーである。本発明者はさらに、シデロフレキシン-3に指向された抗体を使用して、慢性リンパ球性白血病患者から得られたPBMC試料中においてTAMを枯渇させ、白血病性B細胞数を強力に減少させたという証拠を提示する。
【0011】
ここで、本発明者らは、TAMを検出及び標的化するために、腫瘍関連マクロファージの表面上に露出している特異的なマーカーを調べた。慢性リンパ球性白血病患者から得られたTAMを用いてマウスを免疫化することによって、本発明者らは、200個の画分の中から、TAMを特異的に認識することのできる4個の抗体画分(1個のサブタイプを含む4個のハイブリドーマ:6-16、6-25、6-66-49及び6-66-74)を回収する。驚くべきことに、シークエンス実験により、3個のハイブリドーマが同じVH配列及びVL配列を有することが示された。本発明者らは驚くべきことに、1)画分中の抗体は、腫瘍関連マクロファージの表面上に特異的に発現されているシデロフレキシン3タンパク質を認識することができた、2)抗体はTAMに対して特異的であり、患者又は健康なドナー(B及びTリンパ球のような)又は腫瘍細胞由来の他のPBMCを認識しなかった、3)慢性リンパ球性白血病患者から得られたPBMC試料中のシデロフレキシン3抗体の使用はTAMを枯渇させ、腫瘍細胞数を減少させた、及び4)シデロフレキシン3抗体はまた、乳腺腫瘍試料中に存在するTAMも検出することができたことを発見した。これらの結果は、それ故、TAM上に発現されたシデロフレキシン3を標的化することにより、がんにおける有益な抗腫瘍免疫の回復が可能となることを示す。
【0012】
本発明の抗体
1つの実施態様では、本発明の抗体は、
(a)重鎖(ここでの可変ドメインは:
-配列番号1として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR1、及び
-配列番号2として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR2、及び
-配列番号3として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR3
を含む);
(b)軽鎖(ここでの可変ドメインは:
-配列番号4として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR1、及び
-配列番号5として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR2、及び
-配列番号6として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR3
を含む)
を含み、
(c)抗体6-25の軽鎖可変ドメイン(VL)及び/又は重鎖可変ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性でシデロフレキシン-3に結合する。
【0013】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、
(a)重鎖(ここでの可変ドメインは:
-配列番号1として示される配列を有するH-CDR1、及び
-配列番号2として示される配列を有するH-CDR2、及び
-配列番号3として示される配列を有するH-CDR3
を含む);
(b)軽鎖(ここでの可変ドメインは:
-配列番号4として示される配列を有するL-CDR1、及び
-配列番号5として示される配列を有するL-CDR2、及び
-配列番号6として示される配列を有するL-CDR3
を含む)
を含む。
【0014】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、
-重鎖(ここでの可変ドメインは、配列番号7として示される配列と少なくとも70%の同一性を有する)、
-軽鎖(ここでの可変ドメインは、配列番号8として示される配列と少なくとも70%の同一性を有する)
を含み、
抗体6-25の軽鎖可変ドメイン(VL)及び/又は重鎖可変ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性でシデロフレキシン-3に結合する。
【0015】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、
-重鎖(ここでの可変ドメインは、配列番号7として示される配列と少なくとも80%の同一性を有する)、
-軽鎖(ここでの可変ドメインは、配列番号8として示される配列と少なくとも80%の同一性を有する)
を含み、
抗体6-25の軽鎖可変ドメイン(VL)及び/又は重鎖可変ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性でシデロフレキシン-3に結合する。
【0016】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、
-重鎖(ここでの可変ドメインは、配列番号7として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する)、
-軽鎖(ここでの可変ドメインは、配列番号8として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する)
を含み、
抗体6-25の軽鎖可変ドメイン(VL)及び/又は重鎖可変ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性でシデロフレキシン-3に結合する。
【0017】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、
-重鎖(ここでの可変ドメインは、配列番号7として示される配列を有する)、
-軽鎖(ここでの可変ドメインは、配列番号8として示される配列を有する)
を含む。
【0018】
特定の実施態様では、本発明の抗体は、腫瘍関連マクロファージを枯渇させることができる。
【0019】
TAMの枯渇を評価するための試験は、当技術分野において周知である。例えば、以下の試験は、抗CSF-1R抗体を用いたナース様細胞の枯渇を評価する:Avery Polk , Ye Lu , Tianjiao Wang , Erlene Seymour , Nathanael G. Bailey , Jack W. Singer , Philip S. Boonstra , Megan S. Lim , Sami Malek , and Ryan A. Wilcox. 2016. Colony-stimulating Factor-1 Receptor is Required for Nurse-like Cell Survival in Chronic Lymphocytic Leukemia. Clin. Cancer Res. Jun 22. pii: clincanres.3099.2015。
【0020】
本出願における関心対象の配列は、以下の表1に示されている:
【表1】
【0021】
本明細書において使用する「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有し、本発明において同等に使用されるだろう。本明細書において使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有している分子を指す。したがって、抗体という用語は、完全な抗体分子だけでなく、抗体断片、並びに、抗体及び抗体断片の変異体(誘導体も含む)も包含する。天然抗体では、2本の重鎖は互いにジスルフィド結合によって連結され、各々の重鎖は軽鎖にジスルフィド結合によって連結されている。軽鎖には2種類存在する:ラムダ(λ)及びカッパ(κ)。抗体分子の機能的活性を決定する、主に5つの重鎖のクラス(又はアイソタイプ)が存在する:IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgE。各々の鎖は、個別の配列ドメインを含有している。軽鎖は、2つのドメイン、すなわち可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、すなわち可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、まとめてCHと称される)を含む。軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識及び特異性を決定する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移動、補体との結合、及びFc受容体(FcR)への結合などの重要な生物学的特性を付与する。Fv断片は、免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1本の軽鎖と1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性に存する。抗体結合部位は、主に超可変領域又は相補性決定領域(CDR)に由来する残基から作られる。時に、非超可変領域又はフレームワーク領域(FR)由来の残基が、抗体結合部位に関与し得るか、又は、全体的なドメイン構造に影響を及ぼし得、したがって結合部位に影響を及ぼし得る。相補性決定領域すなわちCDRは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を一緒に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々、それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と称される3つのCDRを有する。それ故、抗原結合部位は、典型的には、重鎖及び軽鎖の各々のV領域に由来するCDRセットを含む、6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDR間に挿入されたアミノ酸配列を指す。本発明の文脈において、本発明の抗体のアミノ酸残基は、IMGT番号付け体系に従って番号付けされる。IMGTの独特な番号付けは、抗原受容体、鎖の種類、又は種がどのようなものであれ、可変ドメインを比較するために定義されている(Lefranc M.-P., "Unique database numbering system for immunogenetic analysis" Immunology Today, 18, 509 (1997) ; Lefranc M.-P., "The IMGT unique numbering for Immunoglobulins, T cell receptors and Ig-like domains" The Immunologist, 7, 132-136 (1999).; Lefranc, M.-P., Pommie, C., Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, G., "IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains" Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003))。IMGTの独特な番号付けでは、保存されたアミノ酸は常に、同じ位置を有し、例えばシステイン23、トリプトファン41、疎水性アミノ酸89、システイン104、フェニルアラニン又はトリプトファン118を有する。IMGTの独特な番号付けは、フレームワーク領域(FR1-IMGT:1位~26位、FR2-IMGT:39位~55位、FR3-IMGT:66位~104位、及びFR4-IMGT:118位~128位)及び相補性決定領域:CDR1-IMGT:27位~38位、CDR2-IMGT:56位~65位、及びCDR3-IMGT:105位~117位という標準的な境界決めを提供する。CDR3-IMGTの長さが13アミノ酸未満である場合、ループの上端からギャップが、以下の順番で(111、112、110、113、109、114など)作られる。CDR3-IMGTの長さが13アミノ酸を超える場合、CDR3-IMGTループの上端の111位と112位との間に以下の順番で(112.1、111.1、112.2、111.2、112.3、111.3など)追加の位置が作られる(http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Nomenclature/IMGT-FRCDRdefinition.html)。
【0022】
本明細書において使用する「特異性」という用語は、シデロフレキシン-3以外のタンパク質又は構造(例えば、TAM上又は他の細胞型上に発現されている他のタンパク質)と比較的僅かな検出可能な反応性を有しつつ、シデロフレキシン-3などの抗原上に存在するエピトープに抗体が検出可能なように結合できることを指す。特異性は、本明細書の何処か他の場所に記載のように、例えばビアコア機器を使用した、結合アッセイ又は競合結合アッセイによって相対的に決定され得る。特異性は、特異的な抗原への結合、対、他の関連性のない分子への非特異的な結合における親和性/結合力の比が、例えば約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10,000:1、又はそれ以上によって示され得る(この場合、特異的な抗原はシデロフレキシン-3である)。
【0023】
本明細書において使用する「親和性」という用語は、エピトープに対する抗体の結合強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数Kdによって示され、ここでの[Ab-Ag]は、抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は結合していない抗体のモル濃度であり、[Ag]は結合していない抗原のモル濃度である。親和性定数Kaは、1/Kdによって定義される。mAbの親和性を決定するための好ましい方法は、Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988), Coligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)、及びMuller, Meth. Enzymol. 92:589-601(1983)に認められ得、その文献は参照により本明細書に全体が組み込まれる。mAbの親和性を決定するための当技術分野において周知である1つの好ましくかつ標準的な方法は、ビアコア機器の使用である。
【0024】
本発明の抗体は、当技術分野において公知である任意の方法によって特異的結合についてアッセイされ得る。多くの異なる競合結合アッセイフォーマット(群)を、エピトープ結合のために使用し得る。使用され得るイムノアッセイとしては、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素アッセイ、ゲル拡散沈降素アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、及び補体結合アッセイなどの技術を使用した競合的アッセイシステムが挙げられるがこれらに限定されない。このようなアッセイは、当技術分野において慣用的であり周知である(例えば、Ausubel et al., eds, 1994 Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & sons, Inc., New Yorkを参照)。例えば、ビアコア(登録商標)(GEヘルスケア社、ピスカタウェイ、NJ州)は、一連のモノクローナル抗体をエピトープビニングするために慣用的に使用される様々な表面プラズモン共鳴アッセイフォーマットの1つである。さらに、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane, 1988に記載のアッセイなどの慣用的な交差遮断アッセイを実施することもできる。
【0025】
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などの用語は、単一の分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0026】
本明細書において使用する、2つの配列間の同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要のある、ギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮しながら、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)。配列の比較及び2つの配列間の同一性の決定は、以下に記載のような数学的アルゴリズムを使用して成し遂げられ得る。
【0027】
2つのアミノ酸配列間の同一性は、ALIGNプログラムに取り込まれている、E. Myers及びW. Miller(Comput. Appl. Biosci. 4: 1 1-17, 1988)のアルゴリズムを使用して決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれている、Needleman and Wunsch(J. Mol. Biol. 48:443- 453, 1970)アルゴリズムを使用して決定され得る。同一性を決定するためのさらに別のプログラムは、CLUSTAL(M. Larkin et al., Bioinformatics 23:2947-2948, 2007; first described by D. Higgins and P. Sharp, Gene 73:237-244, 1988)であり、これは独立プログラムとして又はウェブサーバーを介して利用可能である(http://www.clustal.org/を参照)。
【0028】
2つのヌクレオチドアミノ酸配列間の同一性もまた、例えば、デフォールトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用して、核酸配列用のBLASTNプログラムなどのアルゴリズムを使用して決定され得る。
【0029】
本明細書において使用する「シデロフレキシン3」すなわち「SFXN3」という用語は、「SFX3」又は「BA108L7.2」としても知られているが、シデロフレキシンタンパク質の一員であり、ヒトにおいてはSFXN3遺伝子[遺伝子ID:81855]によってコードされているタンパク質を指す。シデロフレキシンは一般的に、ミトコンドリア内で鉄の輸送に関与しているタンパク質として言及されている。さらに、ヒトシデロフレキシンはまた、膵β細胞の分化において重要な役割を果たしていることが報告されている(Yoshikumi Y, J Cell Biochem.,95, 1157-1168 (2005))。野生型シデロフレキシン3ヒトアミノ酸配列の一例は、NCBIウェブサイト上に参照配列:NP_112233で提供されている。野生型シデロフレキシン3アミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列の一例は、NCBIウェブサイト上に参照配列:NM_030971で提供されている。
【0030】
「腫瘍関連マクロファージ」すなわち「TAM」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、マクロファージ系統に属する細胞型を説明することを意図する。それらは、腫瘍塊に近接して又は腫瘍塊内に見られる[Shih, J-Y., Journal of Cancer Molecules 2(3): 101-106 2006]。TAMは、循環中の単球又は組織常在マクロファージに由来し、これは多くの腫瘍型の間質内に見られる主要な白血球浸潤物を形成している。前腫瘍(例えば、腫瘍血管新生を通した増殖及び転移の促進)プロセスにおいてTAMが関与している証拠がますます増えている[Birbrair, A. American Journal of Physiology. Cell Physiology 307 (1): C25-C38. 2014; Thoreau, M;Oncotarget 6(29) 27832- 27832 2015]。TAMは、腫瘍微小環境において多種多様な増殖因子、サイトカイン、及びケモカインと相互作用し、微小環境は様々な種類の腫瘍間で異なるので、該腫瘍微小環境は、TAMを教育し、それらの特異的な表現型を及び従って機能的な役割を決定すると考えらえている。それ故、TAMは、それらが随伴する腫瘍の種類に応じて、それらの役割が異なることが示されている[Lewis, CE; Cancer Research 66 (2): 605-612. (2006)]。多くの腫瘍型において、TAMの浸潤レベルは、重要な予後予測値であることが示されている。TAMは、乳癌、卵巣癌、神経膠腫及びリンパ腫の種類における悪い予後;大腸癌及び胃癌におけるより良好な予後、並びに、肺癌及び前立腺癌における悪い予後及び良い予後の両方に関連している[Allavena, P. Critical Reviews in Oncology/Hematology 66: 1. (2008)]。白血病ではTAMはまた、ナース様細胞(NLC)とも呼ばれる。
【0031】
TAM細胞の調節機能/抑制機能の実証は、当技術分野において公知である任意の適切な方法によって決定され得る(Qian BZ and Pollard JW, Cell, 2010, vol 141, 1:39-41)。特に、このような試験の例は、実施例の章に示されている。具体的には、実施例に具現化された試験は、TAM機能の評価のための標準的なインビトロ試験であると捉えられる。
【0032】
いくつかの実施態様では、本発明による腫瘍関連マクロファージは、哺乳動物腫瘍関連マクロファージ、最も特定するとヒト腫瘍関連マクロファージである。
【0033】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、Kabat体系に従って定義される。
【0034】
抗体可変ドメイン内の残基は慣用的には、Kabat et al.によって考案された体系に従って番号付けされる。この体系は、Kabat et al., 1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest、米国保健福祉省、米国衛生研究所、米国(本明細書では以後「Kabat et al.」)に示されている。Kabatの残基の呼称は、配列番号の配列内のアミノ酸残基の直線的な番号付けに常に直接対応しているわけでなない。実際の直線的なアミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造(フレームワーク領域であれ又は相補性決定領域(CDR)であれ)の構造成分の短縮又は構造成分への挿入に相当する、厳密なKabat番号付けよりも、少ない又は追加されたアミノ酸を含有し得る。所与の抗体についての正しいKabatによる残基の番号付けは、抗体の配列内の相同性を有する残基を、「標準的な」Kabatにより番号付けされた配列と整列させることによって決定され得る。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付け体系によると残基31~35B(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)、及び残基95~102(H-CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付け体系によると残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)、及び残基89~97(L-CDR3)に位置する。
【0035】
Kabat体系によると、本発明の抗体の6つのCDRは、
-H-CDR1:配列番号11:GFSLTGY;
-H-CDR2:配列番号12:WGDGS;
-H-CDR3:配列番号13:DLKFAY;
-L-CDR1:配列番号14:KASQHVTTAVA;
-L-CDR2:配列番号15:SASFRYT;
-L-CDR3:配列番号16:QQHYTTPWTである。
【0036】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、
(a)重鎖(ここでの可変ドメインは:
-配列番号11として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR1;
-配列番号12として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR2;
-配列番号13として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するH-CDR3
を含む);
(b)軽鎖(ここでの可変ドメインは:
-配列番号14として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR1;
-配列番号15として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR2;
-配列番号16として示される配列と90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するL-CDR3
を含む)
を含み、
(c)抗体6-25の軽鎖可変ドメイン(VL)及び/又は重鎖可変ドメイン(VH)を有する抗体と実質的に同じ親和性でシデロフレキシン-3に結合する。
【0037】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、
(a)重鎖(ここでの可変ドメインは:
-配列番号11として示される配列を有するH-CDR1;
-配列番号12として示される配列を有するH-CDR2;
-配列番号13として示される配列を有するH-CDR3
を含む);
(b)軽鎖(ここでの可変ドメインは:
-配列番号14として示される配列を有するL-CDR1;
-配列番号15として示される配列を有するL-CDR2;
-配列番号16として示される配列を有するL-CDR3
を含む)
を含む。
【0038】
本発明の抗体は、例えば、任意の化学的、生物学的、遺伝子的、又は酵素的技術を単独で又は組み合わせてのいずれかであるがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の技術によって生成される。典型的には、所望の配列のアミノ酸配列が分かれば、当業者は、標準的なポリペプチド作製技術によって、該抗体を容易に作製することができる。例えば、それらは、周知の固相法を使用して、好ましくは市販のペプチド合成装置(例えばアプライド・バイオシステムズ社、フォスターシティ、カリフォルニア州によって製造されたもの)を使用して、製造業者の説明書に従って合成され得る。あるいは、本発明の抗体は、当技術分野において周知の組換えDNA技術によって合成され得る。例えば、抗体をコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、このようなベクターを、所望の抗体を発現するであろう適切な真核宿主又は原核宿主に導入した後にDNA発現産物として抗体を得ることができ、それから周知の技術を使用して後にそれらを単離することができる。
【0039】
1つの実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、キメラ抗体、特にキメラマウス/ヒト抗体である。
【0040】
本発明によると、「キメラ抗体」という用語は、非ヒト抗体のVHドメイン及びVLドメインと、ヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインとを含む、抗体を指す。
【0041】
いくつかの実施態様では、本発明のヒトキメラ抗体は、以前に記載されているようなVLドメイン及びVHドメインをコードしている核酸配列を得て、ヒト抗体CH及びヒト抗体CLをコードしている遺伝子を有する動物細胞用の発現ベクターにそれらを挿入することによってヒトキメラ抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを動物細胞に導入することによってコード配列を発現させることによって生成され得る。ヒトキメラ抗体のCHドメインとして、それは、ヒト免疫グロブリンに属する任意の領域でもよいが、IgGクラスのものが適切であり、IgGクラスに属するサブクラスのいずれか1つ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4も使用され得る。また、ヒトキメラ抗体のCLとして、それは、Igに属する任意の領域であり得、κクラス又はλクラスのものが使用され得る。キメラ抗体を作製するための方法は、当技術分野において周知である組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション技術を含む(Morrison SL. et al. (1984)及び特許文書の米国特許第5,202,238号;及び米国特許第5,204,244号参照)。
【0042】
別の実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。特に、該ヒト化抗体では、可変ドメインは、ヒトアクセプターフレームワーク領域、及び場合によりヒト定常ドメイン(存在する場合)、及び非ヒトドナーCDR、例えばマウスCDRを含む。
【0043】
別の実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化と同じ方法に基づいて、イヌ化又は霊長類化されている。
【0044】
本発明によると、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体に由来する可変領域のフレームワーク領域及び定常領域を有しているが、以前の非ヒト抗体のCDRを保持している抗体を指す。
【0045】
本発明のヒト化抗体は、以前に記載されているようなCDRドメインをコードしている核酸配列を得る工程、(i)ヒト抗体のそれと同一である重鎖定常領域と(ii)ヒト抗体のそれと同一である軽鎖定常領域とをコードしている遺伝子を有する動物細胞用の発現ベクターにそれらを挿入することによってヒト化抗体発現ベクターを構築する工程、並びに該発現ベクターを動物細胞に導入することによって該遺伝子を発現させる工程によって生成され得る。ヒト化抗体発現ベクターは、抗体重鎖をコードしている遺伝子と抗体軽鎖をコードしている遺伝子が別々のベクター上に存在する型、又は両方の遺伝子が同じベクター上に存在する型(直列型)のいずれかであり得る。ヒト化抗体発現ベクターの構築し易さ、動物細胞への導入のし易さ、及び動物細胞における抗体H鎖の発現レベルとL鎖の発現レベルとの間の均衡の観点から、直列型のヒト化抗体発現ベクターが好ましい。直列型ヒト化抗体発現ベクターの例としては、pKANTEX93(国際公開公報第97/10354号)、pEE18などが挙げられる。従来の組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション技術に基づいたヒト化抗体の生成法は、当技術分野において周知である(例えば、Riechmann L. et al. 1988; Neuberger MS. et al. 1985を参照)。抗体は、例えばCDRの移植(欧州特許第239,400号;PCT公開公報の国際公開公報第91/09967号;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;及び第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)又はリサーフェシング(欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan EA (1991); Studnicka GM et al. (1994)); Roguska MA. et al. (1994))、及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)をはじめとする当技術分野において公知である様々な技術を使用してヒト化され得る。このような抗体の調製のための一般的な組換えDNA技術も公知である(欧州特許出願の欧州特許第125023号及び国際特許出願の国際公開公報第96/02576号を参照)。
【0046】
本発明の抗体断片
1つの実施態様では、本発明の抗体は、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、ScFv、Sc(Fv)2、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ユニボディ、ミニボディ、マキシボディ、小モジュール免疫薬(SMIP)、単離された相補性決定領域(CDR)としての抗体の超可変領域を模倣したアミノ酸残基からなる最少認識単位、及び、VL鎖又はVH鎖を含むか又はからなる断片、並びに、配列番号7又は配列番号8に対して少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78,79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群より選択された抗原結合断片である。
【0047】
本明細書において使用する抗体の「抗原結合断片」という用語は、所与の抗原(例えばシデロフレキシン-3)に特異的に結合する能力を保持した、インタクトな抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、インタクトな抗体の断片によって実施され得る。抗体の抗原結合断片という用語内に包含される結合断片の例としては、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;VL、VH、CL、CH1ドメイン及びヒンジ領域からなる一価断片であるFab’断片;ヒンジ領域においてジスルフィド橋によって連結された2つのFab’断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;抗体の単一アームのVHドメインからなるFd断片;VHドメイン又はVLドメインからなる単一ドメイン抗体(sdAb)断片(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);及び、単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、すなわちVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え法を使用して、VL領域とVH領域が対を形成することにより一価分子を形成している単一タンパク質鎖としてそれらが作製されることを可能とする人工ペプチドリンカーによって接続されていてもよい(一本鎖Fv(ScFv)として知られる;例えば、Bird et al., 1989 Science 242:423-426; and Huston et al., 1988 proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883参照)。「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化されたVH:VLヘテロ二量体である。二価及び多価抗体断片は、一価scFvの会合によって自然発生的に形成され得るか、又は、二価sc(Fv)2などの、ペプチドリンカーによって一価scFvを結合させることによって作製され得る。このような一本鎖抗体は、抗体の1つ以上の抗原結合部分又は断片を含む。これらの抗体断片は、当業者には公知である慣用的な技術を使用して得られ、該断片を、インタクトな抗体と同じような方法で有用性についてスクリーニングする。ユニボディは、IgG4抗体のヒンジ領域を欠失した別の種類の抗体断片である。ヒンジ領域の欠失により、伝統的なIgG4抗体の実質的に半分のサイズであり、IgG4抗体の二価結合領域ではなく一価結合領域を有する、分子が得られる。抗原結合断片は、単一ドメイン抗体、SMIP、マキシボディーズ、ミニボディーズ、イントラボディーズ、ディアボディーズ、トリアボディーズ、及びテトラボディーズに組み込まれ得る(例えば、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136参照)。「ディアボディーズ」、「トリボディーズ」又は「テトラボディーズ」という用語は、多価抗原結合部位(2、3、又は4つ)を有する小型抗体断片を指し、該断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)内において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。短すぎて同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成することはできないリンカーを使用することによって、ドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対を形成させ、2つの抗原結合部位を作る。抗原結合断片は、一対の直列Fvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む一本鎖分子に取り込まれ得、これは相補性軽鎖ポリペプチドと一緒に、一対の抗原結合領域を形成する(Zapata et al., 1995 Protein Eng. 8(10); 1057-1062及び米国特許第5,641,870号)。
【0048】
本発明のFabは、シデロフレキシン-3と特異的に反応する抗体を、プロテアーゼであるパパインで処理することによって得ることができる。また、Fabは、抗体のFabをコードしているDNAを、原核細胞発現系又は真核細胞発現系のためのベクターに挿入し、該ベクターを原核細胞又は真核細胞(適宜)に導入することによりFabを発現させることによって産生され得る。
【0049】
本発明のF(ab’)2は、シデロフレキシン-3と特異的に反応する抗体を、プロテアーゼであるペプシンで処理することによって得ることができる。また、F(ab’)2は、下記のFab’を、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を介して結合させることによって作製されてもよい。
【0050】
本発明のFab’は、シデロフレキシン-3と特異的に反応するF(ab’)2を、還元剤であるジチオトレイトールで処理することによって得ることができる。また、Fab’は、抗体のFab’断片をコードしているDNAを、原核細胞用の発現ベクター又は真核細胞用の発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核細胞又は真核細胞(適宜)に導入してその発現を遂行することによって生成され得る。
【0051】
本発明のscFvは、以前に記載されているようなVHドメイン及びVLドメインをコードしているcDNAを得て、scFvをコードしているDNAを構築し、該DNAを原核細胞用の発現ベクター又は真核細胞用の発現ベクターに挿入し、その後、該発現ベクターを、原核細胞又は真核細胞(適宜)に導入してscFvを発現させることによって生成され得る。ヒト化scFv断片を作製するために、CDR移植と呼ばれる周知の技術を使用し得、これは、ドナーscFv断片由来の相補性決定領域(CDR)を選択し、それらを既知の3次元構造を有するヒトscFv断片フレームワークに移植することを含む(例えば、国際公開公報第98/45322号;国際公開公報第87/02671号;米国特許第5,859,205号;米国特許第5,585,089号;米国特許第4,816,567号;欧州特許第0173494号参照)。
【0052】
ドメイン抗体(dAb)は、抗体の最小の機能的結合単位(分子量は約13kDa)であり、抗体の重鎖(VH)又は軽鎖(VL)のいずれかの可変領域に相当する。ドメイン抗体及びそれらの作製法に関するさらなる詳細は、米国特許第6,291,158号;第6,582,915号;第6,593,081号;第6,172,197号;及び6,696,245号;米国特許出願公開第2004/0110941号;欧州特許第1433846号、第0368684号及び第0616640号;国際公開公報第2005/035572号、第2004/101790号、第2004/081026、第2004/058821号、第2004/003019号及び第2003/002609号に見られ、その各々のその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
ユニボディーズは、IgG4抗体のヒンジ領域の除去に基づいた、別の抗体断片技術である。ヒンジ領域の欠失により、伝統的なIgG4抗体の実質的に半分のサイズであり、二価結合領域ではなく一価結合領域を有する、分子が得られる。さらに、ユニボディーズはほぼより小さいので、それらはより大きな固形腫瘍上におけるより良好な分布と、有利である可能性のある有効性を示し得る。ユニボディーズに関するさらなる詳細は、国際公開公報第2007/059782号への参照によって得られ、これはその全体が参照により組み込まれる。
【0054】
核酸分子、ベクター、宿主細胞
本発明のさらなる目的は、本発明に記載の抗体をコードしている核酸分子に関する。より特定すると、核酸分子は、本発明の抗体の重鎖又は軽鎖をコードする。
【0055】
特定の実施態様では、核酸分子は、配列番号9又は配列番号10に対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0056】
より特定すると、核酸分子は、配列番号9又は配列番号10に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0057】
より特定すると、核酸分子は、配列番号9又は配列番号10に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0058】
より特定すると、核酸分子は、配列番号9又は配列番号10に対して少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0059】
重鎖可変ドメイン:核酸配列FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4:配列番号9
【化1】
【0060】
軽鎖可変ドメイン:核酸配列FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4:配列番号10
【化2】
【0061】
典型的には、前記核酸は、任意の適切なベクター、例えばプラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ、又はウイルスベクターに含まれ得る、DNA分子又はRNA分子である。本明細書において使用する「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」という用語はビヒクルを意味し、これによってDNA配列又はRNA配列(例えば外来遺伝子)を宿主細胞に導入することができ、よって宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば転写及び翻訳)を促進することができる。よって、本発明のさらなる態様は、本発明の核酸を含むベクターに関する。このようなベクターは、被験者に投与されると該抗体の発現を引き起こすか又は指令する、調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、終結因子などを含み得る。動物細胞用の発現ベクターに使用されるプロモーター及びエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー(Mizukami T. et al. 1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー(Kuwana Y et al. 1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason JO et al. 1985)及びエンハンサー(Gillies SD et al. 1983)などが挙げられる。適切なベクターの例としては、pAGE107(Miyaji H et al. 1990)、pAGE103(Mizukami T et al. 1987)、pHSG274(Brady G et al. 1984)、pKCR(O'Hare K et al. 1981)、pSG1 ベータd2-4(Miyaji H et al. 1990)などが挙げられる。プラスミドの他の例としては、複製起点を含む複製プラスミド、又は組換えプラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRなどが挙げられる。ウイルスベクターの他の例としては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター及びAAVベクターが挙げられる。このような組換えウイルスは、当技術分野において公知の技術によって、例えばヘルパープラスミド若しくはウイルスを用いてパッケージング細胞をトランスフェクトすることによって、又は一過性トランスフェクションによって生成され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。このような複製欠損組換えウイルスを生成するための詳細なプロトコールは、例えば、国際公開公報第95/14785号、国際公開公報第96/22378号、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号及び国際公開公報第94/19478号に見られ得る。
【0062】
本発明のさらなる態様は、本発明による核酸及び/又はベクターによってトランスフェクトされたか、感染したか、又は形質転換された宿主細胞に関する。
【0063】
「形質転換」という用語は、「外来の」(すなわち外因性又は細胞外)遺伝子、DNA配列又はRNA配列の宿主細胞への導入を意味し、よって宿主細胞は、導入された遺伝子又は配列を発現して、所望の物質、典型的には導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素を産生する。導入されたDNA又はRNAを受け取り発現する宿主細胞は「形質転換」されている。
【0064】
本発明の核酸を使用して、適切な発現系において本発明の抗体を産生し得る。「発現系」という用語は、例えば、ベクターによって保有されそして宿主細胞に導入された外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のための、適切な条件下での宿主細胞及び適格ベクターを意味する。一般的な発現系としては、E.coli宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞、及びバキュロウイルスベクター、並びに哺乳動物宿主細胞及びベクターが挙げられる。宿主細胞の他の例としては、原核細胞(例えば細菌)及び真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が挙げられるがこれらに限定されない。具体例としては、E.coli、クリベロマイセス酵母、又はサッカロマイセス酵母、哺乳動物細胞株(例えばVero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)並びに初代又は樹立された哺乳動物細胞培養液(例えばリンパ芽球細胞、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから産生)が挙げられる。例としては、マウスSP2/0-Agl4細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(本明細書において以後「DHFR遺伝子」と称する)を欠失させたCHO細胞(Urlaub G et al; 1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、本明細書において以後「YB2/0細胞」と称する)などが挙げられる。本発明はまた、本発明に記載の抗体を発現している組換え宿主細胞を生成する方法に関し、該方法は、(i)上記のような組換え核酸又はベクターを適格宿主細胞にインビトロ又はエクスビボで導入する工程、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロ又はエクスビボで培養する工程、及び(iii)場合により、該抗体を発現及び/又は分泌する細胞を選択する工程を含む。このような組換え宿主細胞は、本発明の抗体の生成のために使用することができる。本発明の抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティクロマトグラフィーなどによって培養培地から適切に分離される。
【0065】
機能的変異体及び競合的抗体
本発明は、6-25抗体のVL領域、VH領域、又は1つ以上のCDRの機能的変異体を含む抗体を提供する。本発明のモノクローナル抗体の脈絡において使用されるVL、VH又はCDRの機能的変異体は、依然として該抗体が、親抗体(すなわち6-25抗体)の親和性/結合力及び/又は特異性/選択性の少なくともかなりの比率(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はそれ以上)を保持することを可能とし、場合によってはこのような本発明のモノクローナル抗体は、親抗体よりも高い親和性、選択性及び/又は特異性を伴い得る。このような変異体は、CDRの突然変異(Yang et al., J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、鎖シャッフリング(Marks et al., Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、E.coliの突然変異株の使用(Low et al., J. Mol. Biol., 250, 359-368, 1996)、DNAシャッフリング(Patten et al., Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al., J. Mol. Biol., 256, 77-88, 1996)、及びセクシュアルPCR(Crameri et al., Nature, 391, 288-291, 1998)をはじめとする、多くの親和性成熟プロトコールによって得ることができる。Vaughan et al.(上記)は、これらの親和性成熟法を考察する。このような機能的変異体は典型的には、親抗体に対してかなりの配列同一性を保持している。CDR変異体の配列は、殆どが保存的な置換を通して親抗体配列のCDR配列とは異なり得;例えば、変異体における少なくとも約35%、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上(例えば約65~95%、例えば約92%、93%、又は94%)の置換が、保存的なアミノ酸残基の置換である。CDR変異体の配列は、殆どが保存的な置換を通して親抗体配列のCDR配列とは異なり得;例えば、変異体における少なくとも10個、例えば少なくとも9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、又は1個の置換が、保存的なアミノ酸残基の置換である。本発明の脈絡において、保存的置換は、以下のように反映されているアミノ酸のクラス内の置換によって定義され得る:
脂肪族残基I、L、V、及びM
シクロアルケニルを伴う残基F、H、W、及びY
疎水性残基A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、及びY
負に荷電した残基D及びE
極性残基C、D、E、H、K、N、Q、R、S、及びT
正に荷電した残基H、K、及びR
小さな残基A、C、D、G、N、P、S、T、及びV
非常に小さな残基A、G、及びS
ターンに関与する残基A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P、及び形成に関与する残基T
可動性残基Q、T、K、S、G、P、D、E、及びR。
【0066】
より保存的な置換基としては、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンが挙げられる。変異CDRにおけるヒドロパシー/親水性特性及び残基の重量/サイズに関する保存も、6-25抗体のCDRと比較して実質的に保持されている。タンパク質に対して相互作用的な生物学的機能を付与する上でのヒドロパシーアミノ酸指標の重要性は当技術分野において一般的に理解されている。アミノ酸の相対的なヒドロパシー特徴は、結果として生じるタンパク質の二次構造に寄与し、これは次いでタンパク質と、他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定することが認められている。各アミノ酸は、それらの疎水性及び荷電の特徴に基づいてヒドロパシー指標が割り当てられている。これらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8):システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)である。類似の残基の保持もまた又は代替的には、BLASTプログラム(例えば、標準的な設定のBLOSUM62、オープンギャップ=11及びエクステンドギャップ=1を使用してNCBIを通して利用可能なBLAST2.2.8)の使用によって決定されるような、類似性スコアによって測定され得る。適切な変異体は典型的には、親ペプチドに対して少なくとも約70%の同一性を示す。本発明によると、第2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する第1のアミノ酸配列は、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一性を有することを意味する。本発明によると、第2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する第1のアミノ酸配列は、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一性を有することを意味する。
【0067】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のH-CDR1に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR1、ii)本発明の抗体のH-CDR2に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR2、及びiii)本発明の抗体のH-CDR3に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR3を含む重鎖を有する抗体である。
【0068】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のL-CDR1に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR1、ii)本発明の抗体のL-CDR2に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR2、及びiii)本発明の抗体のL-CDR3に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR3を含む軽鎖を有する抗体である。
【0069】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のH-CDR1に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR1、ii)本発明の抗体のH-CDR2に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR2、及びiii)本発明の抗体のH-CDR3に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するH-CDR3を含む重鎖、並びに、i)本発明の抗体のL-CDR1に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR1、ii)本発明の抗体のL-CDR2に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR2、及びiii)本発明の抗体のL-CDR3に対して少なくとも90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有するL-CDR3を含む軽鎖、を有する抗体である。
【0070】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のH-CDR1、ii)本発明の抗体のH-CDR2、及びiii)本発明の抗体のH-CDR3を含む、重鎖を有する抗体である。
【0071】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のL-CDR1、ii)本発明の抗体のL-CDR2、及びiii)本発明の抗体のL-CDR3を含む、軽鎖を有する抗体である。
【0072】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、i)本発明の抗体のH-CDR1、ii)本発明の抗体のH-CDR2、及びiii)本発明の抗体のH-CDR3を含む、重鎖と、i)本発明の抗体のL-CDR1、ii)本発明の抗体のL-CDR2、及びiii)本発明の抗体のL-CDR3を含む、軽鎖とを有する抗体である。
【0073】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、配列番号7に対して少なくとも70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有する重鎖を有する抗体である。
【0074】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、配列番号8に対して少なくとも70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有する軽鎖を有する抗体である。
【0075】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、配列番号7に対して少なくとも70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有する重鎖と、配列番号8に対して少なくとも70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有する軽鎖とを有する抗体である。
【0076】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、配列番号7に対して同一である重鎖を有する抗体である。
【0077】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、配列番号8に対して同一である軽鎖を有する抗体である。
【0078】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、配列番号7に対して同一である重鎖と配列番号8に対して同一である軽鎖とを有する抗体である。
【0079】
別の態様では、本発明は、シデロフレキシン-3に対する結合に関して本発明の抗体と競合する抗体を提供する。
【0080】
本明細書において使用する、予め決定された抗原又はエピトープに対する抗体の結合の脈絡における「結合」という用語は典型的には、例えば、リガンドとして可溶形の抗原及び分析物として抗体を使用して、ビアコア3000機器で表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定したところ、約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、又は約10-11M又はさらにはそれ以下のKDに相当する親和性での結合である。ビアコア(登録商標)(GEヘルスケア社、ピスカタウェイ、NJ州)は、一連のモノクローナル抗体をエピトープビニングするために慣用的に使用される様々な表面プラズモン共鳴アッセイフォーマットの1つである。典型的には、抗体は、予め決定された抗原とは同一ではないか又は密接に関連していない、非特異的抗原(例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン)に対する結合についてのそのKDよりも、少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに相当する親和性で、予め決定された抗原に結合する。抗体のKDが非常に低い場合(すなわち、抗体は高い親和性を有する)場合、抗体が抗原に結合するKDは典型的には、非特異的抗原に対するそのKDよりも少なくとも10,000倍低い。このような結合が検出不可能であるか(例えば、可溶形の抗原をリガンドとして及び抗体を分析物として使用して、ビアコア3000機器でプラズモン共鳴(SPR)技術を使用して)、又は、該抗体と、異なる化学構造若しくはアミノ酸配列を有する抗原若しくはエピトープによって検出される結合よりも100倍、500倍、1000倍、若しくは1000倍以上低い場合、抗体は、抗原又はエピトープに実質的に結合しないと言われる。
【0081】
抗体の工学操作
本発明の工学操作された抗体は、例えば抗体の特性を改善するために、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に改変が施された抗体を含む。典型的には、このようなフレームワーク改変は、抗体の免疫原性を低下させるために行なわれる。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列へと「復帰突然変異」させることである。より具体的には、体細胞突然変異を受けた抗体は、該抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有し得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、該抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定され得る。フレームワーク領域配列をそれらの生殖系列の配置に戻すために、体細胞突然変異を、例えば部位特異的突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発によって生殖系列配列に「復帰突然変異」させることができる。このような「復帰突然変異した」抗体も本発明によって包含されることを意図する。別の型のフレームワーク改変は、フレームワーク領域内の又はさらには1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基を突然変異させることにより、T細胞エピトープを除去し、これにより抗体の免疫原性の可能性を低下させることを含む。このアプローチは「脱免疫化」とも称され、Carr et al.による米国特許公開公報の第20030153043号にさらに詳細に記載されている。
【0082】
いくつかの実施態様では、抗体のグリコシル化が改変されている。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めるために改変され得る。このような糖質の改変は、例えば、抗体配列内の1つ以上のグリコシル化部位を改変することによって成し遂げられ得る。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位が排除され、これにより、その部位におけるグリコシル化が消失するような、1つ以上のアミノ酸置換を行ない得る。このような無グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高め得る。このようなアプローチは、Co et al.による米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号にさらに詳述されている。
【0083】
いくつかの実施態様では、凝集に対する抗体の感受性を低下させるために、第一のCDR(CDR1)内及びその近くの凝集「ホットスポット」に局在するアミノ酸にいくつかの突然変異を起こす(Joseph M. Perchiacca et al., Proteins 2011; 79:2637-2647参照)。
【0084】
本発明の抗体は任意のアイソタイプであり得る。アイソタイプの選択は典型的には、所望のエフェクター機能によって導かれるだろう。IgG1及びIgG3は、ADCC又はCDCなどのこのようなエフェクター機能を媒介するアイソタイプであり、IgG2及びIgG4は媒介しないか又はより低い程度で媒介する。κ又はλのいずれかの軽鎖定常領域を使用し得る。所望であれば、本発明のモノクローナル抗体のクラスは、公知の方法によって切り替えられ得る。典型的には、クラススイッチ技術を使用して、あるIgGサブクラスを別のサブクラスへ、例えばIgG1からIgG2へと変換し得る。したがって、本発明のモノクローナル抗体のエフェクター機能を、様々な治療用途のために、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE又はIgM抗体へとアイソタイプを切り替えることによって変化させ得る。
【0085】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施態様では、完全長抗体はIgG1抗体である。いくつかの実施態様では、完全長抗体はIgG3抗体である
【0086】
いくつかの実施態様では、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が改変、例えば増加又は減少するように改変される。このアプローチは、Bodmer et al.による米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖と重鎖の会合を促進するために、又は抗体の安定性を増加若しくは減少させるために改変される。
【0087】
いくつかの実施態様では、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することによって改変される。例えば、1つ以上のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置換することができ、これにより、該抗体は、エフェクターリガンドに対して改変された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能は保持している。親和性が改変されたエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体であり得る。このアプローチは、Winter et al.による米国特許第5,624,821号及び第5,648,260号にさらに詳述されている。
【0088】
いくつかの実施態様では、アミノ酸残基から選択された1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置換することができ、これにより、抗体は、改変されたC1qへの結合及び/又は低減した若しくは消失した補体依存性細胞障害性(CDC)を有する。このアプローチは、Idusogie et al.による米国特許第6,194,551号にさらに詳述されている。
【0089】
いくつかの実施態様では、Fc領域は、1つ以上のアミノ酸を改変することによって、抗体が抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する能力を増加させるために及び/又はFc受容体に対する抗体の親和性を増加させるために改変される。このアプローチは、PrestaによるPCT公開公報の国際公開公報第00/42072号にさらに記載されている。さらに、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、及びFcRnに対するIgG1上の結合部位がマッピングされ、結合の改善された変異体が記載されている(Shields, R. L. et al., 2001 J. Biol. Chen. 276:6591-6604、国際公開公報第2010106180号参照)。
【0090】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害活性」すなわち「ADCC」という用語は、当技術分野においてよく理解されている用語であり、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞障害性細胞が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて、標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する非特異的な細胞障害性細胞としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好中球、及び好酸球が挙げられる。
【0091】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指し、これは抗体のアイソタイプにより変化する。抗体エフェクター機能の例としては、C1qへの結合及び補体依存性細胞障害活性(CDC);Fc受容体への結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害活性(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が挙げられる。
【0092】
追加的に又は代替的に、改変された種類のグリコシル化を有する抗体、例えば、減少した量のフコシル化残基を有するか又はフコシル残基を全く有さない低フコシル化又は無フコシル化抗体、あるいは、増加した二分岐GlcNac構造を有する抗体が作製され得る。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能を増加させることが実証された。このような糖質の改変は、例えば、改変されたグリコシル化機序を有する宿主細胞内で抗体を発現させることによって成し遂げられ得る。改変されたグリコシル化機序を有する細胞は当技術分野において記載され、これを宿主細胞として使用することができ、この中で本発明の組換え抗体を発現させ、これにより改変されたグリコシル化を有する抗体を生成することができる。例えば、Hang et al.による欧州特許第1,176,195号は、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞株を記載し、これにより、このような細胞株において発現された抗体は、低フコシル化を示すか、又は、フコシル残基を欠失している。それ故、いくつかの実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、低フコシル化又は無フコシル化パターンを示す細胞株、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードしているFUT8遺伝子の発現の欠損した哺乳動物細胞株における組換え発現によって産生され得る。PrestaによるPCT公開公報の国際公開公報第03/035835号は、Asn(297)に連結された糖質にフコースを付着する能力の低下した、変異CHO細胞株であるLecl3細胞を記載し、その結果によりまた、その宿主細胞内で発現された抗体の低フコシル化が起こる(Shields, R.L. et al, 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。Umana et al.によるPCT公開公報の国際公開公報第99/54342号は、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ(例えばβ(1,4-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように工学操作された細胞株を記載し、これにより、工学操作された細胞株において発現された抗体は、増加した二分岐GlcNac構造を示し、その結果、抗体のADCC活性は増加する(Umana et al, 1999 Nat. Biotech. 17: 176-180も参照)。ユーリカ・セラピューティックス社はさらに、フコシル残基の欠失した改変された哺乳動物グリコシル化パターンを有する抗体を産生することのできる遺伝子工学操作されたCHO哺乳動物細胞を記載する(http://www.eurekainc.com/a&boutus/companyoverview.html)。あるいは、本発明のモノクローナル抗体は、哺乳動物様グリコシル化パターンのために工学操作されかつグリコシル化パターンとしてのフコースを欠失した抗体を産生することのできる、酵母又は糸状菌において産生され得る(例えば欧州特許第1297172B1号参照)。
【0093】
半減期
1つの実施態様では、抗体は、その生物学的半減期を延長するように改変される。様々なアプローチが可能である。例えば、Wardによる米国特許第6,277,375号に記載のように、以下の中の1つ以上の突然変異(T252L、T254S、T256F)を導入することができる。あるいは、生物学的半減期を延長するために、抗体を、CH1領域又はCL領域内で、Presta et al.による米国特許第5,869,046号及び第6,121,022号に記載のように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから採用されたサルベージ受容体結合性エピトープを含有するように改変させることができる。半減期が延長され、母体から胎児へのIgGの移行に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への結合の改善された抗体は(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim et al., J. immunol. 24:249 (1994))、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hinton et al.)に記載されている。そうした抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を改善させる1つ以上の置換をFc領域内に有するFc領域を含む。このようなFc変異体としては、Fc領域残基(238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434)の1つ以上において置換を有する変異体、例えば、Fc領域残基434の置換を有する変異体(米国特許第7,371,826号)が挙げられる。
【0094】
本発明によって考えられる本明細書における抗体の別の改変は、PEG化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば血清中)半減期を延長させるためにPEG化され得る。抗体をPEG化するために、抗体又はその断片は典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体と1つ以上のPEG基が抗体又は抗体断片に付着するようになる条件下で反応させる。PEG化は、反応性PEG分子(又は類似した反応性で水溶性のポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって行われ得る。本明細書において使用する「ポリエチレングリコール」という用語は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形態のPEG、例えばモノ(C1~C10)アルコキシ又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドを包含することを意図する。特定の実施態様では、PEG化される予定の抗体は、無グリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化するための方法は当技術分野において公知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、Nishimura et al.による欧州特許第0154316号及びIshikawa et al.による欧州特許第0401384号を参照されたい。
【0095】
本発明によって考えられる抗体の別の改変は、結果として得られる分子の半減期を延長するための、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン又はその断片に対する本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域のコンジュゲート又はタンパク質融合物である。このようなアプローチは、例えば、Ballance et al.、欧州特許第0322094号に記載されている。別の可能性は、結果として得られる分子の半減期を延長するための、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンに結合することができるタンパク質に対する、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域の融合である。このようなアプローチは、例えば、Nygren et al.、欧州特許第0486525号に記載されている。
【0096】
ポリシアル化は、治療用ペプチド及びタンパク質の活動的寿命を延長し、その安定性を改善するための天然ポリマーポリシアル酸(PSA)を使用する、別の技術である。PSAは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質及び治療用ペプチド薬物の送達に使用される場合、ポリシアル酸は、抱合時に防御的な微小環境を提供する。これは、循環中の治療用タンパク質の活動的寿命を延長し、それが免疫系によって認識されるのを防ぐ。PSAポリマーは、ヒト生体において天然に見られる。PSAポリマーは、数百万年かけて特定の細菌の壁をPSAポリマーで覆うように進化してきた該細菌によって採用された。これらの天然にポリシアル酸化された細菌は、その後、分子的模倣のお蔭で、生体防御システムを阻止することができる。天然の最終的な内密的な技術であるPSAは、大量に予め規定された物理的特徴でもってこのような細菌から容易に産生され得る。細菌PSAは、タンパク質に結合させた場合でさえ完全に非免疫原性である。なぜなら、それはヒト体内のPSAと化学的に同一であるからである。
【0097】
別の技術は、抗体に連結させたヒドロキシエチルデンプン(「HES」)誘導体の使用を含む。HESは、ワキシー(waxy)メイズデンプンから得られた改変された天然ポリマーであり、体内の酵素によって代謝され得る。HES溶液は通常、不足した血液量を代用するために及び血液のレオロジー特性を改善するために投与される。抗体のHES化は、分子の安定性を高めることによって、並びに、腎クリアランスを減少させることによって、循環中の半減期の延長を可能とし、その結果、生物学的安定性は高まる。HESの分子量などの様々なパラメーターを変更することによって、多種多様なHES抗体抱合体をカスタムメイドすることができる。
【0098】
別の実施態様では、抗体のFcヒンジ領域を突然変異させることにより、抗体の生物学的半減期を減少させる。より具体的には、1つ以上のアミノ酸突然変異を、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に導入することにより、抗体は、天然のFc-ヒンジドメインの黄色ブドウ球菌プロテインAへの結合と比較して、損なわれたSpAへの結合を示す。このアプローチは、Ward et al.による米国特許第6,165,745号さらに詳述されている。
【0099】
他の改変
本発明の特定の実施態様では、抗体は、pIを増加させ、それらの薬物様特性を改善させるように工学操作されている。タンパク質のpIは、分子の全体的な生物物理学的特性の重要な決定因子である。低いpIを有する抗体は、可溶性がより低く、より不安定であり、凝集しがちであることが知られている。さらに、pIの低い抗体の精製は困難であり、特に臨床使用のためのスケールアップ中に問題が起こり得る。本発明の抗体又はその断片のpIの上昇によりその溶解度は改善され、抗体をより高濃度(100mg/mlを超える)で製剤化することが可能となった。高濃度(例えば100mg/mlを超える)での抗体の製剤化は、硝子体内への注射を介して患者の眼により高用量の抗体を投与できるという利点を与え、次いで投与頻度の減少が可能となり得、これは心血管障害をはじめとする慢性疾患の処置においてかなりの利点である。より高いpIはまた、FcRnにより媒介されるIgG形の抗体のリサイクリングを増加させ得、したがって、より長い期間にわたり体内に薬物が持続することが可能となり、より少ない注射回数が必要となる。最後に、抗体の全体的な安定性は、より高いpIに因り有意に改善され、その結果、インビボにおけるより長い貯蔵寿命及び生理活性がもたらされる。好ましくは、pIは、8.2よりも高いか又は8.2に等しい。
【0100】
本発明の抗体の抗原結合ドメインを含むCAR-T細胞
本発明はまた、本発明の抗体の抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。典型的には、該キメラ抗原受容体は、本発明の抗体の少なくとも1つのVH配列及び/又はVL配列を含む。本発明のキメラ抗原受容体はまた、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインも含む。
【0101】
本明細書において使用する「キメラ抗原受容体」すなわち「CAR」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、T細胞シグナル伝達ドメインに連結させた抗体の抗原結合ドメイン(例えばscFv)を含有している、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドを指す。CARの特徴は、モノクローナル抗体の抗原結合特性を活用して、MHCに拘束されない方法で選択された標的に向かってT細胞の特異性及び反応性をCARが再指向させる能力を含む。MHCに拘束されない抗原認識は、CARを発現しているT細胞に、抗原のプロセシングとは独立して抗原を認識する能力を与え、したがって、腫瘍回避の主要な機序を迂回する。さらに、T細胞において発現させると、CARは有利には、内因性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量体を形成しない。
【0102】
いくつかの実施態様では、本発明は、本発明の抗体の一本鎖可変断片(scFv)を含むか、からなるか、又は実質的にからなる、抗原結合ドメインを含むCARを提供する。いくつかの実施態様では、抗原結合ドメインは、リンカーペプチドを含む。リンカーペプチドは、軽鎖可変領域と重鎖可変領域との間に位置し得る。
【0103】
いくつかの実施態様では、CARは、CD28、4-1BB、及びCD3ζ細胞内ドメインからなる群より選択された、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。CD28は、T細胞の共刺激に重要であるT細胞マーカーである。4-1BBは、T細胞に強力な共刺激シグナルを伝達し、分化を促進し、Tリンパ球の長期生存を増強する。CD3ζはTCRと会合することによりシグナルを発生し、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含有している。
【0104】
いくつかの実施態様では、本発明のキメラ抗原受容体は、例えばジスルフィド橋を介して、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化され得るか、又は、酸付加塩へと変換され得るか、及び/又は場合により二量体化若しくは多量体化され得る。
【0105】
本発明はまた、本発明のキメラ抗原受容体をコードしている核酸も提供する。いくつかの実施態様では、核酸は、上記のようにベクターに組み込まれる。
【0106】
本発明はまた、本発明のキメラ抗原受容体をコードしている核酸を含む宿主細胞も提供する。宿主細胞は、任意の細胞型であり得、任意の組織型から派生し得、任意の発達段階であり得る。1つの実施態様では、宿主細胞は、例えば末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)から単離された、T細胞である。いくつかの実施態様では、T細胞は、任意のT細胞、例えば培養されたT細胞、例えば初代T細胞、又は培養されたT細胞に由来するT細胞、例えばジャーカット細胞、SupT1細胞など、又は哺乳動物から得られたT細胞であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又は他の組織若しくは体液を含むがこれらに限定されない、数多くの入手源から得ることができる。T細胞はまた、濃縮又は精製されてもよい。T細胞は、任意の種類のT細胞であり得、CD4+/CD8+ダブルポジティブT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えばTh2細胞、CD8+T細胞(例えば細胞障害性T細胞)、腫瘍浸潤性細胞、記憶T細胞、ナイーブT細胞などを含むがこれらに限定されない、任意の発達段階であり得る。T細胞は、CD8+T細胞又はCD4+T細胞であり得る。
【0107】
上記のように調製されたそうしたT細胞個体群は、本開示に基づいて当業者には明らかであろう公知の技術又はその変法に従って、養子免疫療法のための方法及び組成物に利用され得る。例えば、Gruenberg et al.の米国特許出願公開公報第2003/0170238号を参照;また、Rosenbergの米国特許第4,690,915号も参照。がんの養子免疫療法は、細胞が直接的に又は間接的にのいずれかで樹立された腫瘍の退縮を媒介する目的で、抗腫瘍反応性を有する免疫細胞が、腫瘍を有する宿主に投与される治療アプローチを指す。リンパ球、特にTリンパ球の注入はこのカテゴリーに該当する。現在、殆どの養子免疫療法は、患者自身の免疫細胞を使用した処置に向けられた自己腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)に基づく。これらの療法は、免疫細胞により媒介される応答を増強させるために、又はがん細胞をはじめとする体内の特異的な抗原若しくは外来物質を認識するためにのいずれかのために、患者自身のリンパ球を処理することを含む。処置は、患者のリンパ球を取り出し、これらの細胞をインビトロで生物学的製剤及び薬物に曝露させて細胞の免疫機能を活性化させることによって成し遂げられる。一旦自己細胞が活性化されると、これらのエクスビボで活性化された細胞を、免疫系を増強してがんを処置するために患者に再注入する。いくつかの実施態様では、細胞は、まずそれらをそれらの培養培地から収集し、次いで、処置有効量での投与に適した培地及び容器システム(「薬学的に許容される」担体)中の細胞を洗浄及び濃縮することによって製剤化される。適切な注入媒体は、任意の等張性媒体調合物、典型的には通常生理食塩水、NormosolR(アボット社)又はPlasma-LyteA(バクスター社)であり得るが、5%デキストロース水溶液又はリンガー乳酸液を使用してもよい。注入用媒体にヒト血清アルブミンを補充してもよい。組成物中の細胞の処置有効量は、所望の特異性を有するT細胞の相対的比率、レシピエントの年齢及び体重、標的化される容態の重症度、並びに標的化される抗原の免疫原性に依存する。これらの細胞の量は、約103/kg、好ましくは5×103/kgまで低くてもよく;107/kg、好ましくは108/kgまで高くてもよい。細胞数は、そこに含まれる細胞型と同様に、該組成物が目的とする最終的な用途に依存するだろう。例えば、特定の抗原に対して特異的である細胞が所望である場合、個体群は、70%以上、一般的には80%以上、85%以上、及び90~95%以上のこのような細胞を含有しているだろう。本明細書において提供される用途のために、該細胞は一般的に、1リットル以下の容量であり、500ml以下、さらには250ml又は100ml以下であってもよい。免疫細胞の臨床的に妥当な数を複数の注入液に分配し得、これは累積すると細胞の所望の総数に等しいか又はこれを上回る。
【0108】
特に、本発明の細胞は、がんの処置に特に適している。したがって、本発明のさらなる目的は、治療有効量の本発明の細胞個体群を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者におけるがんの処置法に関する。
【0109】
多重特異的抗体
いくつかの実施態様では、本発明は、本明細書に記載の本発明の抗体分子に由来する第一の抗原結合部位と、少なくとも1つの第二の抗原結合部位とを含む、多重特異的抗体を提供する。
【0110】
いくつかの実施態様では、第二の抗原結合部位は、例えば、米国特許第7235641号に記載の標的抗原とT細胞上のCD3に対して指向される二重特異的svFv2であるBiTE抗体(二重特異的T細胞誘導抗体)としてのヒトエフェクター細胞上の抗原と結合することによる、又は、細胞障害性薬剤若しくは第二の治療剤と結合することによる、死滅機序を動員するために使用される。本明細書において使用する「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認知期及び活性化期ではなく、免疫応答のエフェクター期に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞としては、骨髄系又はリンパ系を起源とする細胞、例えばリンパ球(例えばB細胞及びT細胞、例えば細胞障害性T細胞(CTL))、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、肥満細胞、及び顆粒球、例えば好中球、好酸球、及び好塩基球が挙げられる。いくつかのエフェクター細胞は、特異的なFc受容体(FcR)を発現し、特異的な免疫機能を遂行する。いくつかの実施態様では、ナチュラルキラー細胞などのエフェクター細胞は、ADCCを誘導することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的死滅、及び抗原を免疫系の他の成分に提示することに関与している。いくつかの実施態様では、エフェクター細胞は、標的抗原又は標的細胞を貪食し得る。エフェクター細胞上の特定のFcRの発現は、サイトカインなどの体液性因子によって調節され得る。エフェクター細胞は標的抗原を貪食することができるか、又は標的細胞を貪食若しくは溶解することができる。適切な細胞障害性薬剤及び第二の治療剤を以下に例示し、これには、毒素(例えば放射標識ペプチド)、化学療法剤、及びプロドラッグが挙げられる。
【0111】
いくつかの実施態様では、第二の抗原結合部位は、腫瘍関連マクロファージ上の抗原、例えばCD163、CD204、CD206、CD68、及びTim-3に結合する。
【0112】
本明細書において使用する「CD68」(表面抗原分類68)という用語は、「GP110」、「LAMP4」及び「SCARD1」としても知られているが、これは当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ヒトにおいてはCD68遺伝子[遺伝子ID:968]によってコードされているタンパク質を指す。この遺伝子は、ヒト単球及び組織マクロファージによって高度に発現されている110kDの膜貫通糖タンパク質をコードしている。それは、リソソーム/エンドソーム結合型膜糖タンパク質(LAMP)ファミリーの一員である。該タンパク質は主に、リソソーム及びエンドソームに局在し、循環しているより小さな画分は細胞表面に局在している。それは、重度にグリコシル化された細胞外ドメインを有するI型膜内在型タンパク質であり、組織特異的及び臓器特異的レクチン又はセレクチンに結合する。該タンパク質はまた、スカベンジャー受容体ファミリーの一員でもある。スカベンジャー受容体は典型的には、細胞片を排除し、貪食作用を促進し、マクロファージの動員及び活性化を媒介するように機能する。
【0113】
本明細書において使用する「CD163」(表面抗原分類163)という用語は、「M130」、「MM130」、「SCARI1」としても知られているが、これは当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ヒトにおいてはCD163遺伝子[遺伝子ID:9332]によってコードされているタンパク質を指す。CD163は、単球及びマクロファージに専ら発現されている。それは、マクロファージによるヘモグロビン/ハプトグロビン複合体の排除及びエンドサイトーシスに関与する急性期の調節受容体として機能し、これにより、遊離ヘモグロビンにより媒介される酸化による損傷から組織を防御し得る。このタンパク質はまた、細菌に対する自然免疫センサー、及び局所炎症の誘導因子としても機能し得る。分子サイズは130kDaである。該受容体は、スカベンジャー受容体システインリッチファミリーB型に属し、1048アミノ酸残基の細胞外ドメイン、1つの膜貫通セグメント、及びいくつかのスプライス変異体を有する細胞質内尾部からなる。
【0114】
本明細書において使用する「CD204」(表面抗原分類204)という用語は、「マクロファージスカベンジャー受容体1」(MSR1)としても知られているが、これは当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ヒトにおいてはMSR1遺伝子(NCBI参照番号:mRNA配列:NM_138716)によってコードされているタンパク質を指す。CD204のUniprot参照番号はP21757であり、タンパク質配列のNCBI参照番号はNP_002436である。
【0115】
本明細書において使用する「CD206」(表面抗原分類206)という用語は、「マンノース受容体」としても知られているが、これは当技術分野におけるその一般的な意味を有し、マクロファージ及び未熟樹状細胞の表面上に主に存在するが、ヒト皮膚線維芽細胞及びケラチン細胞などの皮膚細胞の表面上にも発現されているC型レクチンも指す。CD206のuniprot参照番号は、P22897である。
【0116】
本明細書において使用する「Tim-3」という用語は、「A型肝炎ウイルス細胞受容体2」(HAVCR2)としても知られているが、これは当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ヒトにおいてはHAVCR2遺伝子(NCBI参照番号:mRNA配列:NM_032782)によってコードされているT細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3を指す。Tim-3のuniprot参照番号はQ8TDQ0であり、タンパク質配列のNCBI参照番号はNP_116171である。
【0117】
本発明の多重特異的抗体分子の例示的なフォーマットとしては、(i)化学的なヘテロコンジュゲーションによって架橋された2つの抗体、一方はシデロフレキシン-3に対して特異性を有する抗体、及び他方は第2の抗原に対する特異性を有する抗体;(ii)2つの異なる抗原結合領域を含む単一抗体;(iii)2つの異なる抗原結合領域、例えば外部ペプチドリンカーによって直列に連結された2つのscFvを含む、一本鎖抗体;(iv)デュアル可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(各軽鎖及び重鎖は、短いペプチド結合を通して直列に2つの可変ドメインを含有している)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-Ig(商標)) Molecule, In : Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010));(v)化学的に連結された二重特異的(Fab’)2断片;(vi)2つの一本鎖ディアボディの融合により、各々の標的抗原に対して2つの結合部位を有する四価の二重特異的抗体となっている、タンデムディアボディ;(vii)scFvとディアボディの組合せにより多価分子となっているフレキシボディ;(viii)プロテインキナーゼAにおける「二量体化及びドッキングドメイン」に基づいたいわゆる「ドッキング及びロック」分子であり、これがFabに適用された場合、異なるFab断片に連結された2つの同一なFab断片からなる三価の二重特異的結合タンパク質を生成することができる;(ix)例えばヒトFabアームの両末端に融合した2つのscFvを含む、いわゆるサソリ型分子;及び(x)ディアボディ、が挙げられるがこれらに限定されない。二重特異的抗体の別の例示的なフォーマットは、ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメインを有するIgG様分子である。このような分子は、例えばTriomab/Quadroma(トリオン・ファーマ社/フレゼニウス・バイオテック社)、Knob-into-Hole(ジェネンテック社)、CrossMAb(ロシュ社)及び静電マッチ(アムジェン社)、LUZ-Y(ジェネンテック社)、Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDボディ)(EMDセローノ社)、ビクロニック(Biclonic)(メルス社)及びデュオボディ(DuoBody)(ジェンマブ社)技術として知られる技術などの公知の技術を使用して調製することができる。
【0118】
いくつかの実施態様では、二重特異的抗体は、典型的にはデュオボディ技術を使用して、制御されたFab-アーム交換を介して得られるか又は得ることができる。制御されたFab-アーム交換によって二重特異的抗体をインビトロで生成するための方法が、国際公開公報第2008119353号及び国際公開公報第2011131746号(どちらもジェンマブ社による)に記載されている。国際公開公報第2008119353号に記載された1つの例示的な方法では、還元条件下でのインキュベーション時の、2つの単一特異的抗体(どちらもIgG4様のCH3領域を含む)の間の「Fab-アーム」又は「分子の半分」の交換(重鎖と付着している軽鎖の交換)によって形成される。得られた生成物は、異なる配列を含み得る2つのFabアームを有する二重特異的抗体である。国際公開公報第2011131746号に記載された別の例示的な方法では、本発明の二重特異的抗体は、以下の工程(ここでの第1及び第2の抗体の少なくとも一方は本発明の抗体である);a)免疫グロブリンのFc領域を含む第1の抗体を提供する工程(該Fc領域は第1のCH3領域を含む);b)免疫グロブリンのFc領域を含む第2の抗体を提供する工程(該Fc領域は第2のCH3領域を含み、前記第1及び第2のCH3領域の配列が異なり、前記第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が前記第1及び第2のCH3領域の各々のホモ二量体相互作用より強いようなものである);c)前記第1の抗体を前記第2の抗体と共に、還元条件下においてインキュベーションする工程;及びd)前記二重特異性抗体を得る工程(ここで第1の抗体は本発明の抗体であり、第2の抗体は異なる結合特異性を有する、又はその逆である)を含む方法によって調製される。還元条件は、例えば、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンから選択される還元剤を加えることにより提供することができる。工程d)は、例えば、還元剤の除去により、例えば、脱塩により、非還元性又は低還元性となるように条件を回復させることをさらに含むことができる。好ましくは、第1及び第2のCH3領域の配列は異なり、ほんの僅かの、かなり保存された、非対称な突然変異を含んでいるので、前記第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用は、前記第1及び第2のCH3領域の各々のホモ二量体相互作用より強力である。これらの相互作用及びそれらをどのようにして達成することができるかの詳細は、国際公開公報第2011131746号に提供され、これは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。下記は、場合により、一方又は両方のFc領域がIgG1アイソタイプのものである、このような非対称の突然変異の組み合わせの例示的な実施態様である。
【0119】
イムノコンジュゲート
検出可能な標識
本発明の抗体を検出可能な標識とコンジュゲートさせ、イムノコンジュゲートを形成することができる。適切な検出可能な標識としては、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、又はコロイド状金が挙げられる。このような検出可能なように標識されたイムノコンジュゲートを作製及び検出する方法は当業者には周知であり、以下においてより詳細に記載されている。検出可能な標識は、オートラジオグラフィーによって検出される放射性同位体であり得る。本発明の目的のために特に有用である同位体は、3H、125I、131I、35S、及び14Cである。
【0120】
イムノコンジュゲートはまた、蛍光化合物を用いて標識されていてもよい。蛍光標識された抗体の存在は、適切な波長の光にイムノコンジュゲートを曝し、得られた蛍光を検出することによって決定される。蛍光標識化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、及びフルオレサミンが挙げられる。
【0121】
あるいは、イムノコンジュゲートは、抗体を化学発光化合物と結合させることによって検出可能なように標識され得る。化学発光でタグ化されたイムノコンジュゲートの存在は、化学反応の経過中に発生する発光の存在を検出することによって決定される。化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルが挙げられる。
【0122】
同様に、生物発光化合物を使用して、本発明のイムノコンジュゲートを標識することができる。生物発光は、生物系において見られる化学発光の一種であり、ここでは触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識のために有用である生物発光化合物としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、及びエクオリンが挙げられる。
【0123】
あるいは、イムノコンジュゲートは、本発明の抗体を酵素に連結させることによって検出可能なように標識され得る。抗体-酵素コンジュゲートを、適切な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分は基質と反応して化学部分を生成し、これを例えば分光光度的に、蛍光定量的に、又は視覚的な手段によって検出することができる。多重特異的イムノコンジュゲートを検出可能なように標識するために使用され得る酵素の例としては、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、及びアルカリホスファターゼが挙げられる。
【0124】
当業者は、本発明に従って使用され得る他の適切な標識を知っているだろう。抗体に対するマーカー部分の結合は、当技術分野において公知である標準的な技術を使用して達成され得る。これに関する典型的な方法は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70: 1, 1976; Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81 : 1, 1977; Shih et al., Int'U. Cancer 46: 1101, 1990; Stein et al, Cancer Res. 50: 1330, 1990;及びColiganに記載されている。
【0125】
さらに、免疫化学的検出の簡便性及び多用途性は、アビジン、ストレプトアビジン、及びビオチンとコンジュゲートさせた抗体を使用することによって増強され得る。(例えば、Wilchek et al. (eds.), "Avidin-Biotin Technology," Methods In Enzymology (Vol. 184) (Academic Press 1990); Bayer et al., "Immunochemical Applications of Avidin-Biotin Technology," in Methods In Molecular Biology (Vol. 10) 149- 162 (Manson, ed., The Humana Press, Inc. 1992)を参照)。
【0126】
イムノアッセイを実施するための方法は、十分に確立されている(例えば、Cook and Self, “Monoclonal Antibodies in Diagnostic Immunoassays,” in Monoclonal Antibodies: Production, Engineering, and Clinical Application 180-208 (Ritter and Ladyman, eds., Cambridge University Press 1995); Perry, “The Role of Monoclonal Antibodies in the Advancement of Immunoassay Technology,” in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications 107-120 (Birch and Lennox, eds., Wiley-Liss, Inc. 1995); Diamandis, Immunoassay(Academic Press, Inc. 1996)を参照)。
【0127】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
いくつかの実施態様では、本発明の抗体を、治療用部分、すなわち薬物にコンジュゲートさせる。治療用部分は、例えば、細胞毒、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激剤、溶解性ペプチド、又は放射性同位体であり得る。このようなコンジュゲートは、本明細書において「抗体-薬物コンジュゲート」すなわち「ADC」と称される。
【0128】
いくつかの実施態様では、抗体を細胞障害性部分にコンジュゲートさせる。細胞障害性部分は、例えば、タキソール;サイトカラシンB;グラミシジンD;臭化エチジウム;エメチン;マイトマイシン;エトポシド;テノポシド;ビンクリスチン;ビンブラスチン;コルヒチン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;ジヒドロキシアントラシンジオン;チューブリン阻害剤、例えばメイタンシン又はその類似体若しくはその誘導体;有糸分裂阻害剤、例えばモノメチルアウリスタチンE若しくはF又はその類似体若しくはその誘導体;ドラスタチン10若しくは15又はその類似体;イリノテカン又はその類似体;ミトキサントロン;ミスラマイシン;アクチノマイシンD;1-デヒドロテストステロン;糖質コルチコイド;プロカイン;テトラカイン;リドカイン;プロプラノロール;ピューロマイシン;カリケアマイシン又はその類似体若しくはその誘導体;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、又はクラドリビン;アルキル化剤、例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC;白金誘導体、例えばシスプラチン又はカルボプラチン;デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC-1065)、又はその類似体若しくはその誘導体;抗生物質、例えばダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミスラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC);ピローロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB);ジフテリア毒素及び関連した分子、例えばジフテリアA鎖及びその活性断片及びハイブリッド分子、リシン毒素、例えばリシンA又は脱グリコシル化リシンA鎖毒素、コレラ毒素、シガ様毒素、例えばSLT I、SLT II、SLT IIV、LT毒素、C3毒素、シガ毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ボウマン・バーク大豆プロテアーゼ阻害剤、シュードモナス外毒素、アロリン(alorin)、サポリン、モデシン、ゲラニン(gelanin)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質、例えばPAPI、PAPII及びPAP-S、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリアコン(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、及びエノマイシン毒素;リボヌクレアーゼ(RNase);DNaseI、ブドウ球菌エンテロトキシンA;ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質;ジフテリア毒素;及びシュードモナスエンドトキシンからなる群より選択され得る。
【0129】
いくつかの実施態様では、抗体を、核酸又は核酸に結合した分子にコンジュゲートさせる。1つのこのような実施態様では、コンジュゲートした核酸は、細胞障害性リボヌクレアーゼ(RNase)又はデオキシ-リボヌクレアーゼ(例えばDNaseI)、アンチセンス核酸、阻害性RNA分子(例えばsiRNA分子)、又は免疫刺激性核酸(例えば免疫刺激性CpGモチーフ含有DNA分子)である。いくつかの実施態様では、抗体を、アプタマー又はリボザイムにコンジュゲートさせる。
【0130】
いくつかの実施態様では、抗体を、例えば融合タンパク質として、溶解性ペプチド、例えばCLIP、マガイニン2、メリチン、セクロピン、及びP18にコンジュゲートさせる。
【0131】
いくつかの実施態様では、抗体を、サイトカイン、例えばIL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα、IFN3、IFNγ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム、及びTNFαにコンジュゲートさせる。
【0132】
いくつかの実施態様では、抗体を、放射性同位体又は放射性同位体を含有しているキレートにコンジュゲートさせる。例えば、抗体を、キレートリンカー、例えばDOTA、DTPA、又はチウキセタンにコンジュゲートさせることができ、これにより、該抗体は放射性同位体と複合体を形成することが可能となる。該抗体はまた、又は代替的には、1つ以上の放射標識されたアミノ酸又は他の放射標識された分子を含み得るか又はこれにコンジュゲートさせ得る。放射性同位体の非限定的な例としては、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、125I、131I、186Re、213Bi、225Ac、及び227Thが挙げられる。治療目的のために、β又はα粒子放射線を放出している放射性同位体、例えば、131I、90Y、211At、212Bi、67Cu、186Re、188Re、及び212Pbなどを使用し得る。
【0133】
特定の実施態様では、抗体-薬物コンジュゲートは、抗チューブリン剤を含む。抗チューブリン剤の例としては、例えば、タキサン(例えばタキソール(登録商標)(パクリタキセル)、タキソテール(登録商標)(ドセタキセル))、T67(Tularik社)、ビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、及びドラスタチン(例えばオーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)が挙げられる。他の抗チューブリン剤としては、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えばエポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン、及びコルセミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、ディスコデルモリド、及びエリュテロビンが挙げられる。いくつかの実施態様では、細胞障害性薬剤は、別の群の抗チューブリン剤である、マイタンシノイドである。例えば、具体的な実施態様では、マイタンシノイドは、マイタンシン又はDM-1である(ImmunoGen, Inc.;Chari et al., Cancer Res. 52:127-131, 1992も参照)。
【0134】
他の実施態様では、細胞障害性薬剤は代謝拮抗剤である。代謝拮抗剤は、例えば、プリンアンタゴニスト(例えばアザチオプリン又はミコフェノール酸モフェチル)、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤(例えばメトトレキサート)、アシクロビル、ガンシクロビル、ジドブジン、ビダラビン、リババリン、アジドチミジン、シチジン、アラビノシド、アマンタジン、ジデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、ポスカルネット(poscarnet)、又はトリフルリジンであり得る。
【0135】
他の実施態様では、本発明の抗体を、プロドラッグ変換酵素にコンジュゲートさせる。プロドラッグ変換酵素を、公知の方法を使用して、抗体に組換え的に融合させても、又はそれに化学的にコンジュゲートさせてもよい。例示的なプロドラッグ変換酵素は、カルボキシペプチダーゼG2、β-グルクロニダーゼ、ペニシリン-V-アミダーゼ、ペニシリン-G-アミダーゼ、β-ラクタマーゼ、β-グルコシダーゼ、ニトロ還元酵素、及びカルボキシペプチダーゼAである。
【0136】
診断使用
実験の章に記載のように、本発明の抗体は、腫瘍関連マクロファージの検出を可能とし、よって、がんに関与する腫瘍微小環境の検出を可能とする。
【0137】
本発明の態様は、腫瘍関連マクロファージの検出のための本発明の抗体の使用に関する。
【0138】
したがって、本発明の態様は、生物学的試料中の腫瘍関連マクロファージを検出するための、及び/又はその量を評価するための方法に関し、該方法は、該試料を本発明の抗体と接触させる工程を含む。1つの実施態様では、該方法は、がんの診断のために使用される。
【0139】
本発明のさらなる態様は、シデロフレキシン-3レベルが改変(増加又は減少)されているがん疾患及び他の疾患を診断するための本発明の抗体に関する。
【0140】
好ましい実施態様では、本発明の抗体を、検出可能な分子又は物質、例えば蛍光分子、放射性分子、又は上記のような当技術分野において公知である任意の他の標識で標識してもよい。例えば、本発明の抗体を、当技術分野において公知である任意の方法によって放射性分子で標識してもよい。例えば、放射性分子としては、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えばI123、I124、In111、Re186、Re188が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の抗体をまた、核磁気共鳴(NMR)画像撮影(磁気共鳴画像撮影、MRIとしても知られる)のためのスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、又は鉄で標識してもよい。抗体の投与後、患者内の抗体の分布を検出する。任意の特定の標識の分布を検出するための方法は当業者には公知であり、任意の適切な方法を使用することができる。いくつかの非限定的な例としては、コンピューター断層撮影(CT)、ポジトロン放出断層撮影(PET)、磁気共鳴画像撮影(MRI)、蛍光法、化学発光法、及び超音波検査が挙げられる。
【0141】
本発明の抗体は、腫瘍関連マクロファージに関連したがん疾患の診断及びステージ分類に有用であり得る。
【0142】
典型的には、前記診断法は、患者から得られた生物学的試料の使用を含む。本明細書において使用する「生物学的試料」という用語は、被験者から得られた様々な種類の試料を包含し、診断アッセイ又はモニタリングアッセイに使用することができる。生物学的試料としては、血液及び生物学的起源の他の液体試料、固形組織試料、例えば生検標本、又はそれから得られた組織培養液若しくは細胞、及びその子孫が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、生物学的試料は、腫瘍関連マクロファージを伴うがん疾患を有することが疑われる個体から回収された組織試料から得られた細胞を含む。
【0143】
生物学的試料は、臨床試料、培養液中の細胞、細胞上清、細胞溶解液、血清、血漿、生物学的液体、及び組織試料を包含する。
【0144】
治療使用
実験の章に記載のように、本発明の抗体は、腫瘍関連マクロファージを標的化し、これは、がんの腫瘍微小環境に関与する。腫瘍微小環境は、がんのイニシエーション及び腫瘍増殖の促進において非常に重要な役割を果たすと認識されている。
【0145】
本発明の抗体、断片、又はイムノコンジュゲートは、腫瘍関連マクロファージに伴う任意の疾患、優先的にはがんの処置に有用であり得る。本発明の抗体は、単独で又は任意の適切な薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0146】
本明細書に記載の処置法の各々の実施態様では、本発明の抗体又は本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、処置が探求されている疾患又は障害の管理に関連した慣用的な方法に準じた様式で送達される。本明細書における開示によると、有効量の抗体又は抗体-薬物コンジュゲートを、このような処置を必要とする患者に、疾患又は障害を予防又は治療するのに十分な時間をかけて及び十分な条件下で投与する。
【0147】
本明細書において使用する「処置」又は「処置する」という用語は、疾患に罹患するリスクがあるか又は疾患に罹患していることが疑われる被験者、並びに病気であるか又は疾患若しくは医学的状態を患っていると診断された被験者の処置を含む、予防的処置又は防止的処置並びに治癒的処置又は疾患修飾処置の両方を指し、これは臨床的再発の抑制も含む。処置は、医学的障害を有するか又は最終的に障害を獲得する可能性がある被験者に、障害又は再発している障害の1つ以上の症状を予防、治癒、その発症を遅延、その重症度を低減、又は寛解するために、あるいはこのような処置を行なわなかった場合に予想される生存期間を超えて被験者の生存期間を延長するために投与され得る。「治療処方計画」は病気の処置のパターン、例えば療法中に使用される投薬パターンを意味する。治療処方計画は、誘導処方計画及び維持処方計画を含み得る。「誘導処方計画」又は「誘導期間」という語句は、疾患の初期処置のために使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。誘導処方計画の一般的な目標は、処置処方計画の初期期間中に高いレベルの薬物を被験者に提供することである。誘導処方計画は、医師が維持処方計画中に使用するであろう用量よりもはるかに高い用量の薬物を投与する工程、医師が維持処方計画中に薬物を投与するであろう頻度よりも高い頻度で薬物を投与する工程、又はその両方の工程を含み得る、「負荷処方計画」を(部分的に又は全体的に)使用し得る。「維持処方計画」又は「維持期間」という語句は、病気の処置中の被験者の維持のために、例えば被験者を長い期間にわたり(数か月間又は数年間)寛解状態に保つために使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。維持処方計画は、連続療法(例えば、薬物を規則的な間隔で、例えば週1回、月1回、年1回などで投与)又は間欠的な療法(例えば断続的な処置、間欠的な処置、再発時の処置、又は特定の予め決定された基準の達成時の処置[例えば疾患の顕現時など])を使用し得る。
【0148】
本明細書において使用する「治療有効量」又は「有効量」という用語は、所望の治療結果を達成するのに必要な用量及び期間において、有効な量を指す。本発明の抗体の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を惹起する本発明の抗体の能力などの要因に応じて変更され得る。治療有効量は、抗体又は抗体の一部の任意の毒性作用又は有害な作用より治療に有益な効果の方がまさるものである。本発明の抗体の有効な用量及び用量処方計画は処置される疾患又は容態に依存し、当業者によって決定され得る。当技術分野の通常の技能を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し処方することができる。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで医薬組成物に使用される本発明の抗体の用量を開始し得、所望の効果が達成されるまで用量を次第に増加させることができる。一般的に、本発明の組成物の適切な用量は、特定の用量処方計画に従って治療効果を生じるのに有効な最も低い用量である化合物の量であろう。このような有効量は一般的に、上記の要因に依存するだろう。例えば、治療用途のための治療有効量は、疾患の進行を安定化させるその能力によって測定され得る。典型的には、がんを阻害する化合物の能力は、例えば、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデルシステムにおいて評価され得る。あるいは、組成物のこの特性は、当業者には公知であるインビトロアッセイによって細胞障害性を誘導する化合物の能力を調べることによって評価され得る。治療用化合物の治療有効量は、被験者における腫瘍サイズを減少させ得るか、又はさもなくば症状を寛解し得る。当業者は、被験者の大きさ、被験者の症状の重度、及び選択された具体的な組成物又は投与経路などのこのような要因に基づいてこのような量を決定することができるだろう。本発明の抗体の治療有効量の例示的で非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kg、例えば約0.1~20mg/kg、例えば約0.1~10mg/kg、例えば約0.5、例えば約0.3、約1、約3mg/kg、約5mg/kg、又は約8mg/kgである。本発明の抗体の治療有効量の例示的で非限定的な範囲は、0.02~100mg/kg、例えば約0.02~30mg/kg、例えば約0.05~10mg/kg、又は0.1~3mg/kg、例えば約0.5~2mg/kgである。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下であり得、例えば、標的部位の近くに投与され得る。上記の処置法及び使用における用量処方計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答)を与えるように調整される。例えば、1回のボーラスが投与されても、数回に分割された用量が経時的に投与されても、又は用量は、治療状況の緊急性によって指示されるように比例的に減少又は増加させてもよい。いくつかの実施態様では、処置の有効性は、療法中に、例えば規定の時点においてモニタリングされる。いくつかの実施態様では、有効性は、疾患領域の可視化によって、又は本明細書にさらに記載されている他の診断法によって、例えば標識された本発明の抗体、断片、又は本発明の抗体に由来するミニ抗体を使用して例えば1回以上のPET-CTスキャンを実施することによってモニタリングされ得る。所望であれば、医薬組成物の1日有効量は、場合により単位投与剤形で、1日を通じて適切な間隔で別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回、又はそれ以上の分割用量として投与され得る。いくつかの実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、あらゆる所望ではない副作用を最小限にするために、例えば24時間以上などの長い期間かけての緩徐な連続注入によって投与される。本発明の抗体の有効量はまた、週1回、週2回、又は週3回の投薬期間を使用して投与されてもよい。投薬期間は、例えば8週間まで、12週間まで、又は臨床的な前進が確立されるまでに制限され得る。非限定的な例として、本発明による処置は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40日目の少なくとも1日に、約0.1~100mg/kg/日、例えば0.2、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kg/日の量の本発明の抗体の1日量として、又は代替的には、処置開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20週目の少なくとも1つの週若しくはその任意の組合せの週において、1回量、又は24、12、8、6、4若しくは2時間毎の分割用量、又はその任意の組合せを使用して提供され得る。
【0149】
したがって、本発明の1つの目的は、治療有効量の本発明の抗体を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者におけるがんを処置する方法に関する。
【0150】
別の態様では、本発明は、医薬品としての使用のための、その中の任意の態様又は実施態様において定義されているような、本発明の抗体に関する。
【0151】
別の態様では、本発明は、がんの処置のための本発明の抗体の使用に関する。
【0152】
特定の実施態様では、本発明の抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、疾患又は障害の処置のための第二の薬剤と組み合わせて使用される。がんの処置に使用される場合、本発明の抗体又は本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、例えば手術、放射線療法、化学療法、又はその組み合わせなどの従来のがん療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0153】
「がん」、「悪性腫瘍」及び「腫瘍」という用語は、制御不能な細胞増殖によって典型的には特徴付けられる哺乳動物における病理学的容態を指すか又は説明する。より正確には、本発明の使用において、疾患、すなわちがんは、腫瘍関連マクロファージTAMを伴い、これは腫瘍細胞に共生的に関連していることが示されている。さらに、本発明者らは、シデロフレキシン-3に指向される抗体のような本発明のアンタゴニストは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)を死滅させ、腫瘍細胞増殖を減少させることを示す。腫瘍細胞はTAMを動員し、該TAMは腫瘍細胞に、腫瘍微小環境において生存因子及び血管新生因子を提供する(Dirkx A.E.M. Journal of Leukocyte Biology vol. 80 no. 6 1183-1196 December 2006の概説を参照)。
【0154】
特に、がんは、固形腫瘍、又は未分化骨髄細胞の制御不能な増殖(すなわち白血病、リンパ腫)を伴い得る。
【0155】
様々ながん及び他の増殖疾患(以下を含むがこれらに限定されない)は、本発明の方法及び組成物を使用して処置され得る:
-膀胱癌、乳癌、子宮癌/子宮頸癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、食道癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、子宮頸癌、甲状腺癌、結腸直腸癌、頭頸部癌癌及び皮膚癌(扁平上皮細胞癌を含む)をはじめとする細胞癌;
-線維肉腫及び横紋筋肉腫をはじめとする、間葉系を起源とする腫瘍;
-黒色腫、セミノーマ、奇形癌、神経芽細胞腫、及び神経膠腫をはじめとする、他の腫瘍;
-星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及びシュワン細胞腫をはじめとする、中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍;
-線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉種をはじめとする、間葉系を起源とする腫瘍;及び
-黒色腫、色素性乾皮症、ケラトカルシノーマ(keratoacarcinoma)、セミノーマ、甲状腺濾胞癌、及び奇形癌をはじめとする、その他の腫瘍;
-ホジキン病、非ホジキン病などであるがこれらに限定されないリンパ腫;くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌型骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫、及び髄外性形質細胞腫、成人T細胞白血病/リンパ腫などであるがこれらに限定されない多発性骨髄腫;
-急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、例えば骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、及び骨髄異形成症候群などであるがこれらに限定されない白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリー細胞白血病などであるがこれらに限定されない慢性白血病。
【0156】
1つの実施態様では、前記がんは、全ての急性及び慢性の白血病:慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、慢性骨髄単球性白血病(LMMC)、急性前骨髄球性白血病(APL)からなる群より選択される、白血病である。
【0157】
好ましい実施態様では、前記白血病は、慢性リンパ球性白血病(CLL)である。
【0158】
1つの実施態様では、前記がんは、全ての非ホジキンリンパ腫又はホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)からなる群より選択される、リンパ腫である。
【0159】
1つの実施態様では、前記がんは、脳、頭頸部、副腎、大腸、小腸、胃、心臓、肝臓、皮膚、腎臓、肺、膵臓、精巣、卵巣、前立腺、子宮、甲状腺、膀胱、乳房、子宮内膜の腫瘍、多発性骨髄腫、及び肉腫からなる群より選択される固形腫瘍である。
【0160】
本明細書において前に及びその後に腫瘍、腫瘍疾患、細胞癌、又は癌が記載されている場合には、初発の臓器若しくは組織及び/又は任意の他の場所における転移も、腫瘍及び/又は転移の場所が何処であろうと、代替的に又は追加的に暗黙的に意味する。
【0161】
組合せ
本発明はまた、本発明の抗体が、例えばがんの処置用の少なくとも1つのさらに他の治療剤と組み合わせて使用される治療適用も提供する。このような投与は、同時、別々、又は順次であり得る。同時投与のために該薬剤は、適宜、1つの組成物として又は別々の組成物として投与され得る。さらなる治療剤は典型的には、処置される予定の障害にとって妥当である。例示的な治療剤としては、他の抗がん抗体、細胞障害性薬剤、化学療法剤、抗血管新生剤、抗がん免疫源、細胞周期制御剤/アポトーシス調節剤、ホルモン調節剤、及び以下に記載の他の薬剤が挙げられる。
【0162】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、化学療法剤と組み合わせて使用される。「化学療法剤」という用語は、腫瘍増殖を抑制するのに効果的である化合物を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホネート類、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;エチレンイミン類及びメチルメラミン類、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミン;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン類(合成類似体のトポテカンなど);ブリオスタチン類;カリスタチン;CC-1065(例えば、そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例えば合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIなど);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシン(11及びカリケアマイシン211、例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照);ダイネミシン、例えばダイネミシンA;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連したクロモプロテイン系エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(例えばモルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充物質、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム(spirogennanium);テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベルカリンA、ロリジンA、及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、プリンストン、N.J.州)及びドセタキセル(タキソテール(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸塩;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;並びに、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。またこの定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用するホルモン拮抗剤、例えばエストロゲン拮抗薬、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(フェアストン);並びにアンドロゲン拮抗薬、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体も含まれる。
【0163】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、標的化癌療法と組み合わせて使用される。標的化癌療法は、癌の増殖、進行、及び拡大に関与する特定の分子(「分子標的」)に干渉することによって、癌の増殖及び拡大を遮断する薬物又は他の物質である。標的化癌療法は、時々、「分子標的化薬」、「分子標的化療法」、「精密医療」又は類似の名称で呼ばれる。いくつかの実施態様では、標的化療法は、被験者にチロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程からなる。「チロシンキナーゼ阻害剤」という用語は、受容体型及び/又は非受容体型チロシンキナーゼの選択的又は非選択的阻害剤として作用する様々な治療剤又は薬物のいずれかを指す。チロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は当技術分野において周知であり、米国特許公開公報第2007/0254295号に記載され、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。チロシンキナーゼ阻害剤に関連した化合物は、チロシンキナーゼ阻害剤の効果を再現するだろう、例えば関連化合物は、異なるメンバーのチロシンキナーゼシグナル伝達経路に作用して、そのチロシンキナーゼのチロシンキナーゼ阻害剤と同じ作用を生じることが当業者によって理解されるだろう。本発明の実施態様の方法に使用するのに適したチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物の例としては、ダサチニブ(BMS-354825)、PP2、BEZ235、サラカチニブ、ゲフィチニブ(イレッサ)、スニチニブ(スーテント;SU11248)、エルロチニブ(タルセバ;OSI-1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43-9006)、イマチニブ(グリベック:STI571)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ザクチマ;ZD6474)、MK-2206(8-[4-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン塩酸塩)、その誘導体、類似体、及び組合せが挙げられるがこれらに限定されない。本発明に使用するに適した追加のチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は、例えば、米国特許公開公報第2007/0254295号、米国特許第5,618,829号、第5,639,757号、第5,728,868号、第5,804,396号、第6,100,254号、第6,127,374号、第6,245,759号、第6,306,874号、第6,313,138号、第6,316,444号、第6,329,380号、第6,344,459号、第6,420,382号、第6,479,512号、第6,498,165号、第6,544,988号、第6,562,818号、第6,586,423号、第6,586,424号、第6,740,665号、第6,794,393号、第6,875,767号、第6,927,293号、及び第6,958,340号に記載され、これら全てのその全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの実施態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、経口投与され、少なくとも1回の第I相臨床試験、より好ましくは少なくとも1回の第II相臨床試験、さらにより好ましくは少なくとも1回の第III相臨床試験の、最も好ましくは少なくとも1つの血液学的又は腫瘍学的適応症についてFDAによって承認されている対象である、低分子キナーゼ阻害剤である。このような阻害剤の例としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、BMS-599626(AC-480)、ネラチニブ、KRN-633、CEP-11981、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、AZM-475271、CP-724714、TAK-165、スニチニブ、バタラニブ、CP-547632、バンデタニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、タンデュチニブ、ミドスタウリン、エンザスタウリン、AEE-788、パゾパニブ、アキシチニブ、モテサニブ、OSI-930、セジラニブ、KRN-951、ドビチニブ、セリシクリブ、SNS-032、PD-0332991、MKC-1(Ro-317453;R-440)、ソラフェニブ、ABT-869、ブリバニブ(BMS-582664)、SU-14813、テラチニブ、SU-6668、(TSU-68)、L-21649、MLN-8054、AEW-541、及びPD-0325901が挙げられるがこれらに限定されない。
【0164】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、免疫療法剤と組み合わせて使用される。本明細書において使用する「免疫療法剤」という用語は、癌細胞に対する生体の免疫応答を間接的に若しくは直接的に増強、刺激、若しくは増大させ、及び/又は、他の抗癌療法の副作用を低減する化合物、組成物、又は処置を指す。したがって、免疫療法は、癌細胞に対する免疫系の応答を直接的に若しくは間接的に刺激若しくは増強させ、及び/又は、他の抗癌剤によって引き起こされ得る副作用を和らげる療法である。免疫療法はまた、当技術分野において免疫学的療法、生物学的療法、生体応答調節剤療法、及び生物療法とも呼ばれる。当技術分野において公知である一般的な免疫療法剤の例としては、サイトカイン、癌ワクチン、モノクローナル抗体、及び非サイトカインアジュバントが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、免疫療法処置は、ある量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞など)を被験者に投与することからなり得る。免疫療法剤は非特異的であってもよく、すなわち、免疫系を全般的にブーストし、よってヒト生体が癌細胞の増殖及び/又は蔓延に対して戦うのにより効果的となるか、あるいは、それらは特異的であってもよく、すなわち、癌細胞それ自体に標的化されてもよく、免疫療法計画は、非特異的な免疫療法剤と特異的な免疫療法剤を併用してもよい。非特異的免疫療法剤は、免疫系を刺激するか又は間接的に増大させる物質である。非特異的免疫療法剤は、癌の処置のための主要な療法として単独で使用されているだけでなく、主要な療法に付加して使用され、この場合には、非特異的免疫療法剤は、他の療法(例えば癌ワクチン)の効力を増強させるアジュバントとして機能する。非特異的免疫療法剤はまた、この後者の状況において、他の療法の副作用、例えば特定の化学療法剤によって誘発された骨髄抑制などを低減させるように機能することができる。非特異的免疫療法剤は、重要な免疫系の細胞に対して作用することができ、そして二次応答、例えばサイトカイン及び免疫グロブリンの増加した産生を引き起こすことができる。あるいは、該薬剤は、それ自体、サイトカインを含んでいてもよい。非特異的免疫療法剤は、一般的に、サイトカイン又は非サイトカインアジュバントとして分類される。多くのサイトカインが、免疫系をブーストさせるように設計された一般的な非特異的免疫療法剤として、又は、他の療法と共に施されるアジュバントとしてのいずれかとして癌の処置に適用を見出す。適切なサイトカインとしては、インターフェロン、インターロイキン、及びコロニー刺激因子が挙げられるがこれらに限定されない。本発明によって考えられるインターフェロン(IFN)としては、一般的な種類のIFN、IFN-アルファ(IFN-α)、IFN-ベータ(IFN-β)、及びIFN-ガンマ(IFN-γ)が挙げられる。IFNは、例えば、癌細胞の増殖を減速させることによって、癌細胞からより正常な行動を有する細胞への発達を促進することによって、及び/又は、癌細胞による抗原の産生を増加させて免疫系が癌細胞をより容易に認識し破壊できるようにすることによって、癌細胞に対して直接的に作用することができる。IFNはまた、例えば、血管新生を減速させることによって、免疫系をブーストすることによって、並びに/又はナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞及びマクロファージを刺激することによって、癌細胞に対して間接的に作用することもできる。組換え型IFN-αは、ロフェロン(ロシュ製薬)及びイントロンA(シェリング社)として市販されている。本発明によって考えられるインターロイキンとしては、IL-2、IL-4、IL-11及びIL-12が挙げられる。市販されている組換え型インターロイキンの例としては、プロロイキン(登録商標)(IL-2;カイロン社)及びニューメガ(登録商標)(IL-12;ワイス製薬)が挙げられる。ザイモジェネティクス社(シアトル、ワシントン州)は、組換え型IL-21を現在試験中であり、これもまた本発明の合剤への使用に考えられる。本発明によって考えられるコロニー刺激因子(CSF)としては、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF又はフィルグラスチム)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF又はサルグラモスチム)及びエリスロポエチン(エポエチンアルファ、ダルベポエチン)が挙げられる。1つ以上の増殖因子を用いての処置は、従来の化学療法を受けている被験者において新たな血球の生成を刺激するのに役立ち得る。したがって、CSFを用いての処置は、化学療法に伴う副作用を低減させるのに役立ち得、またより高用量の化学療法剤の使用を可能とし得る。様々な組換え型コロニー刺激因子、例えば、ニューポジェン(登録商標)(G-CSF;アムジェン社)、ニューラスタ(ペグフィルグラスチム;アムジェン社)、ロイキン(GM-CSF;バーレックス社)、プロクリット(エリスロポエチン;オーソバイオテック社)、エポジェン(エリスロポエチン;アムジェン社)、アラネスプ(エリスロポエチン)が市販されている。本発明の組合せ組成物及び組合せ投与法はまた、「完全細胞」及び「養子」免疫療法も含み得る。例えば、このような方法は、免疫系細胞(例えば、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、例えばCC2+及び/又はCD8+T細胞(例えば、腫瘍特異的抗原及び/又は遺伝子的増強物質と共に増殖させたT細胞)、抗体を発現しているB細胞又は他の抗体産生細胞又は抗体提示細胞、樹状細胞(例えば、GM-CSF及び/又はFlt3-LなどのDC増殖剤と共に培養した樹状細胞、並びに/あるいは、腫瘍関連抗原の積載された樹状細胞)、抗腫瘍NK細胞、いわゆるハイブリッド細胞、又はその組合せの注入又は再注入を含み得る。細胞溶解液もまた、このような方法及び組成物において有用であり得る。このような態様において有用であり得る臨床試験における細胞性「ワクチン」としては、カンバキシン(Canvaxin)(商標)、APC-8015(デンドレオン社)、HSPPC-96(アンティジェニックス社)、及びメラシン(Melacine)(登録商標)細胞溶解液が挙げられる。ミョウバンなどのアジュバントと場合により混合された、癌細胞から剥がれた抗原及びその混合物(例えば、Bystryn et al., Clinical Cancer Research Vol. 7, 1882-1887, July 2001を参照)もまた、このような方法及び組合せ組成物における成分であり得る。
【0165】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、放射線療法と組み合わせて使用される。放射線療法は、放射線照射又はそれに伴う患者への放射性医薬品の投与を含み得る。放射線源は、処置される患者にとって外部又は内部のいずれかであり得る(放射線による処置は、例えば、外照射放射線療法(EBRT)又は小線源療法(BT)の形態であり得る)。このような方法を実施するのに使用され得る放射性元素としては、例えば、ラジウム、セシウム-137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅-67、テクネチウム-99、ヨウ素-123、ヨウ素-131、及びインジウム-111が挙げられる。
【0166】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、共刺激分子に対して特異的である抗体と組み合わせて使用される。共刺激分子に対して特異的である抗体の例としては、抗CTLA4抗体(例えばイピリムマブ)、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗TIMP3抗体、抗LAG3抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、又は抗B7H6抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0167】
本発明のさらなる目的は、癌細胞抗原に対して選択的な第一の抗体を被験者に投与する工程、及び本発明の抗体を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者におけるがんの処置法に関する。
【0168】
多くの抗体が現在、がんの処置のために臨床的に使用され、その他は、様々な臨床開発段階にある。本発明の方法のための関心対象の抗体は、ADCCを通して作用し、典型的には腫瘍細胞に対して選択的であるが、当業者は、いくつかの臨床的に有用な抗体は、腫瘍ではない細胞、例えばCD20に対して作用することを認識しているだろう。B細胞悪性疾患の処置のための多くの抗原及び対応するモノクローナル抗体が存在する。1つの一般的な標的抗原はCD20であり、これはB細胞悪性疾患上に見られる。リツキシマブは、CD20抗原に指向されるキメラ非コンジュゲートモノクローナル抗体である。CD20は、B細胞の活性化、増殖、及び分化において重要な機能的役割を果たす。CD52抗原は、モノクローナル抗体のアレムツズマブによって標的化され、これは慢性リンパ球性白血病の処置に適応される。CD22は、多くの抗体によって標的化され、近年、化学療法抵抗性ヘアリー細胞白血病において毒素と組み合わせて有効性を実証した。CD20を標的化するモノクローナル抗体は、トシツモマブ及びイブリツモマブも含む。固形腫瘍に使用されている、本発明の方法において有用なモノクローナル抗体としては、エドレコロマブ及びトラスツズマブ(ハーセプチン)が挙げられるがこれらに限定されない。エドレコロマブは、大腸癌及び直腸癌において見られる17-1A抗原を標的化し、これらの適応症のために欧州で使用が認可されている。その抗腫瘍作用はADCC、CDC、抗イディオタイプネットワークの誘導を通して媒介される。トラスツズマブは、HER-2/neu抗原を標的化する。この抗原は、乳癌の25%から35%に見られる。トラスツズマブは、様々な方法で作用すると考えられている:HER-2受容体発現のダウンレギュレーション、HER-2タンパク質を過剰発現するヒト腫瘍細胞の増殖阻害、HER-2タンパク質を過剰発現する腫瘍細胞に対する免疫動員及びADCCの増強、並びに血管新生因子のダウンレギュレーション。アレムツズマブ(キャンパス)は、慢性リンパ球性白血病;大腸癌及び肺癌の処置に使用され;ゲムツズマブ(マイロターグ)は、急性骨髄性白血病の処置に用途を見い出し;イブリツモマブ(ゼバリン)は、非ホジキンリンパ腫の処置に用途を見い出し;パニツブマブ(ベクティビックス)は大腸癌の処置に用途を見い出す。セツキシマブ(アービタックス)もまた、本発明の方法に使用するのに興味深い。該抗体は、EGF受容体(EGFR)に結合し、大腸癌及び頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)をはじめとする固形腫瘍の処置に使用されている。
【0169】
医薬組成物
本発明の態様は、本発明の抗体を含む医薬組成物に関する。
【0170】
典型的には、本発明の抗体は、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で被験者に投与される。これらの組成物に使用され得る薬学的に許容される担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、トリケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースを基剤とした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が挙げられるがこれらに限定されない。患者への投与に使用するために、該組成物は患者への投与用に製剤化されるだろう。本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸内に、経鼻的に、頬側に、膣内に、又は埋め込まれたレザバーを介して投与され得る。本明細書における使用としては、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内、及び頭蓋内への注射又は注入技術が挙げられる。本発明の組成物の滅菌注射剤形は、水性又は油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して当技術分野において公知の技術に従って製剤化され得る。無菌注射調製物はまた、無毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射溶液又は懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中溶液であり得る。使用され得る許容されるビヒクル及び溶媒には、水、リンガー液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁化媒体として慣用的に使用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドをはじめとするあらゆる配合不揮発性油が使用され得る。脂肪酸、例えばオレイン酸、及びそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に許容される油、例えばオリーブ油又はヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチレン化形と同様に、注射剤の調製に有用である。これらの油性溶液又は懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤(例えばカルボキシメチルセルロース)、又は薬学的に許容される剤形(例えばエマルション及び懸濁液)の製剤化に一般的に使用される類似の分散剤を含有していてもよい。薬学的に許容される固形剤、液剤、又は他の剤形の製造に一般的に使用される、他の一般的に使用される界面活性剤(例えばTween、Span)及び他の乳化剤又はバイオアベイラビリティ増強剤も、製剤化の目的に使用され得る。本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁剤、又は液剤を含むがこれらに限定されない、任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体は、乳糖及びコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も典型的には添加される。カプセル剤形での経口投与のために有用な希釈剤としては、例えば乳糖が挙げられる。水性懸濁液が経口使用のために必要とされる場合、活性成分を乳化剤及び懸濁化剤と配合する。所望であれば、特定の甘味剤、芳香剤、又は着色剤も添加してもよい。あるいは、本発明の組成物は、直腸投与用の坐剤の剤形で投与されてもよい。これらは、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、それ故、直腸内で融解して薬物を放出する、適切な非刺激性の賦形剤と該薬剤を混合することによって調製され得る。このような材料としては、ココアバター、蜜蝋、及びポリエチレングリコールが挙げられる。本発明の組成物はまた、特に処置の標的が、局所適用によって容易に近づける領域又は器官を含む場合(眼、皮膚、又は下部腸管の疾患を含む)、局所的に投与されてもよい。これらの各領域又は器官のための適切な局所的製剤は容易に調製される。局所適用のために、該組成物は、1つ以上の担体に懸濁又は溶解された活性成分を含有している適切な軟膏中で製剤化され得る。本発明の化合物の局所投与用の担体としては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋、及び水が挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、該組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体中に懸濁又は溶解された活性成分を含有している適切なローション又はクリームで製剤化され得る。適切な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられるがこれらに限定されない。下部腸管への局所適用は、直腸坐剤製剤(上記参照)又は適切な浣腸製剤で行なわれ得る。パッチを使用してもよい。本発明の組成物はまた、鼻腔内へのエアゾール又は吸入によって投与され得る。このような組成物は、医薬製剤の分野において周知である技術に従って調製され、これは、ベンジルアルコール若しくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の慣用的な可溶化剤若しくは分散剤を使用して、食塩水中溶液として調製され得る。例えば、本発明の医薬組成物中に存在する抗体は、100mg(10mL)又は500mg(50mL)のいずれかの1回使用のバイアル中に10mg/mLの濃度で供給され得る。製品は、静脈内投与用に、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLのポリソルベート80、及び滅菌注射用水中で製剤化される。pHは6.5に調整される。本発明の医薬組成物における抗体の例示的な適切な用量範囲は、1mg/m2から500mg/m2の間であり得る。しかしながら、これらの計画は例であり、最適な計画及び処方計画は、臨床試験で決定されなければならない医薬組成物中の特定の抗体の親和性及び耐容性を考慮しながら適応させることができる。注射用(例えば筋肉内、静脈内)の本発明の医薬組成物は、滅菌緩衝水(例えば筋肉内用では1ml)及び1ngから約100mg、例えば約50ngから約30mg、又はより好ましくは約5mgから約25mgの本発明の抗ミオシン18A抗体を含有するように調製され得る。
【0171】
特定の実施態様では、リポソーム及び/又はナノ粒子の使用が、宿主細胞への抗体の導入に考えられる。リポソーム及び/又はナノ粒子の形成及び使用は、当業者には公知である。
【0172】
ナノカプセルは一般的に、安定した再現可能な方法で化合物を封入することができる。細胞内へのポリマーの過剰負荷に起因する副作用を回避するために、このような超微細粒子(サイズは約0.1μm)が一般的に、インビボで分解可能なポリマーを使用して設計される。これらの必要条件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリル酸ナノ粒子が、本発明における使用に考えられ、このような粒子は容易に作製され得る。
【0173】
リポソームは、水性媒体に分散されたリン脂質から形成され、自発的に多層の同心円状の二重層小胞(多重層小胞(MLV)とも呼ばれる)を形成する。MLVは一般的に25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理により、コアに水溶液を含有している、200~500Åの範囲の直径を有する小型単層小胞(SUV)が形成される。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、及び二価陽イオンの存在に依存する。
【0174】
キット
最後に、本発明はまた、少なくとも1つの本発明の抗体を含むキットも提供する。本発明の抗体を含有しているキットは、シデロフレキシン-3の発現(増加又は減少)の検出、又は治療用若しくは診断用アッセイにおいて用途を見い出す。本発明のキットは、固相支持体、例えば組織培養プレート又はビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合させた抗体を含有することができる。インビトロでの例えばELISA又はウェスタンブロット若しくはフローサイトメトリーにおけるシデロフレキシン-3の検出及び定量のための抗体を含有しているキットが提供され得る。検出のために有用なこのような抗体には、蛍光又は放射性標識などの標識が施され得る。
【0175】
本発明は、以下の図面及び実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いずれにしても、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【
図1A】4つの抗NLC抗体によるナース様細胞(NLC)の高度染色。A.慢性リンパ球性白血病患者からゲーティングされたB細胞性慢性リンパ球性白血球(B-CLL)及びナース様細胞、並びに、健康なドナーの血液試料に由来する単球、T細胞、及びB細胞を4つの抗NLC抗体で染色(実線:アイソタイプ対照;点線:抗体)。B.ゲーティングされたCD163
+ナース様細胞上での6-25抗体を用いての陽性染色、及び他の細胞上での陰性染色。C.アイソタイプ対照と比較して、ゲーティングされたナース様細胞上で染色している4つの抗体の平均蛍光強度。
【
図1B】4つの抗NLC抗体によるナース様細胞(NLC)の高度染色。A.慢性リンパ球性白血病患者からゲーティングされたB細胞性慢性リンパ球性白血球(B-CLL)及びナース様細胞、並びに、健康なドナーの血液試料に由来する単球、T細胞、及びB細胞を4つの抗NLC抗体で染色(実線:アイソタイプ対照;点線:抗体)。B.ゲーティングされたCD163
+ナース様細胞上での6-25抗体を用いての陽性染色、及び他の細胞上での陰性染色。C.アイソタイプ対照と比較して、ゲーティングされたナース様細胞上で染色している4つの抗体の平均蛍光強度。
【
図1C】4つの抗NLC抗体によるナース様細胞(NLC)の高度染色。A.慢性リンパ球性白血病患者からゲーティングされたB細胞性慢性リンパ球性白血球(B-CLL)及びナース様細胞、並びに、健康なドナーの血液試料に由来する単球、T細胞、及びB細胞を4つの抗NLC抗体で染色(実線:アイソタイプ対照;点線:抗体)。B.ゲーティングされたCD163
+ナース様細胞上での6-25抗体を用いての陽性染色、及び他の細胞上での陰性染色。C.アイソタイプ対照と比較して、ゲーティングされたナース様細胞上で染色している4つの抗体の平均蛍光強度。
【
図2】4つの抗体と共に培養された場合のナース様細胞の枯渇及び白血病細胞の死滅。アイソタイプ条件と比較して、各々の抗NLC抗体の存在下において6日後の慢性リンパ球性白血病患者に由来するPBMCの培養液中のナース様細胞(囲まれている)の枯渇の顕微鏡による可視化。これらの培養液中のナース様細胞の絶対数は、各々の抗体を含む条件においてゼロに近かった。
【
図3】6-25抗体又はアイソタイプ対照と共に10日間培養した後に2人の慢性リンパ球性白血病患者由来のPBMCの染色、及びFACS分析(MFI:平均蛍光強度)。
【
図4】6-25抗体又はアイソタイプ対照を用いた健康なドナー由来のPBMCの染色、及びFACS分析(MFI:平均蛍光強度)。
【
図5】2つの市販の抗SFXN3抗体及び6-25抗体又はアイソタイプによって判明した、組換えシデロフレキシン-3のウェスタンブロット。
【
図6】6-25抗体又はアイソタイプ対照と共に又は伴わない慢性リンパ球性白血病患者由来のPBMCの10日間培養液の顕微鏡及びB細胞性慢性リンパ球性白血病細胞の生存率分析。FACS:枠に囲まれたB細胞性慢性リンパ球性白血病細胞の比率。
【
図7】6-25又はアイソタイプ対照と共に又は伴わずに慢性リンパ球性白血病患者のPBMCを10日間培養した後のナース様細胞数。
【0177】
実施例1:腫瘍関連マクロファージを標的化するシデロフレキシン
材料及び方法
患者由来のPBMCをフィコールを使用して単離し、RPMI 10%FBS中で10×106個の細胞/mlで10日間培養した。次いで、上清を除去し、接着した細胞(ナース様細胞)をPBSで2回洗浄した。ナース様細胞を細胞スクレイパーを使用して剥がし、計数し、乾燥させたペレットを凍結させた。接着していない細胞の乾燥ペレットも凍結させた。幾人かの患者由来のナース様細胞をプールし、膜タンパク質を、「Proteo-extract native membrane protein extractionキット」(カルビオケム社)を使用して抽出した。
【0178】
ピアス(商標)High Capacityストレプトアビジンアガロースビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)をヤギ抗マウスIgG-ビオチン(シグマアルドリッチ社、B7401)と共に室温で20分間インキュベートし、3回洗浄し、次いでハイブリドーマの上清培養培地と共に又は対照培地と共に4℃で2時間インキュベートした。3回PBSで洗浄した後、コーティングされたビーズを、ナース様細胞又は非接着細胞由来の500μgの膜タンパク質と共に4℃で一晩インキュベートした。ビーズを洗浄し、Laemmli溶液で溶出した。これらの溶液をアクリルアミドゲルにローディングし、泳動後にinstant blue(ユーロメディックス社)で着色した。ゲル片を切り出し、ペプチドを抽出した。簡潔に言えば、片をアセトニトリル及び重炭酸アンモニウムで洗浄し、還元し、DTT及びヨードアセトアミドを用いてアルキル化し、トリプシンで消化し、次いで、ペプチドをアセトニトリル及びギ酸で抽出した。次いで、ペプチドを質量分析によって同定した。各条件(ハイブリドーマ上清を含まない、タンパク質を含まない、非接着細胞に由来する及びナース様細胞に由来するタンパク質を含む)において同定されたペプチドを比較した。
【0179】
結果
ナース様細胞を特異的に認識する4つの抗体の標的を決定するために、本発明者らは、4つのハイブリドーマ培養上清を免疫沈降によって試験した。このようにして本発明者らは、質量分析によって、各ハイブリドーマに関連したペプチドを同定した。
【0180】
本発明者らは、これらのペプチドを発見した:
6-16:シデロフレキシン3及びGRP78
6-25:シデロフレキシン3
6-66-49:GRP78
6-66-74:エンドプラスミン及びGRP78。
【0181】
実施例2:腫瘍関連マクロファージの標的化
材料及び方法
ナース様細胞に対する抗体の作製
ナース様細胞は、RPMI 10%FBS中10×106個で細胞/mlの慢性リンパ球性白血病(CLL)患者の血液試料から単離されたPBMCの培養液から生成された。37℃及び5%CO2雰囲気中で14日間培養した後、Bリンパ球を除去し、接着細胞(ナース様細胞)を回収した。異なるドナー由来の300万個から1500万個のナース様細胞を、マウスの腹腔内に15日間毎に4回注入した。次いで、脾臓細胞を脾臓から単離し、α63s2マウス骨髄腫細胞株との融合により、200個のハイブリドーマを産生した。これらのハイブリドーマ培養液の200個の馴化培地をナース様細胞又は白血病細胞と共に4℃で30分間インキュベートし、次いで、蛍光二次抗マウス抗体と共にインキュベートした。次いで、これらの細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
【0182】
フローサイトメトリー分析
各ハイブリドーマ培養上清 50μlを、20万個の細胞(ナース様細胞、B細胞性白血病細胞、又は慢性リンパ球性白血病患者若しくは健康なドナー由来のPBMC)と共に4℃で30分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞を、蛍光色素に結合させたヤギ抗マウス抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。洗浄後、細胞を、様々な蛍光色素に結合させた、抗ヒトCD163抗体、抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD19抗体、及び抗ヒトCD14抗体と共に4℃で15分間インキュベートした。洗浄後、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
【0183】
抗体との培養
慢性リンパ球性白血病患者から単離されたPBMCを、5μg/mlのハイブリドーマ培養上清から精製された抗体と共に若しくは伴わずに、又は5μg/mlのアイソタイプ対照と共に6日間インキュベートした。次いで、ナース様細胞の数を、顕微鏡下で計数することによって推定し、生存白血病細胞は、生存率についてヨウ化プロピジウムを使用して細胞計数装置により評価された。
【0184】
免疫組織化学的検査
免疫組織化学的検査(IHC)を、近傍に正常組織を有する4μm厚の型通りの手順で処理されたホルマリン固定されパラフィン包埋された腫瘍標本の薄片に対して実施した。クエン酸緩衝液(pH6)中で熱誘導エピトープ賦活化技術を実施した。各抗体を30分間インキュベートし、製造業者のプロトコールに従ってEnVision G/2 System/AP(ダコ社)酵素にコンジュゲートさせたポリマー骨格を使用して顕現させ、キットに含まれるパーマネントレッド色素原(ファーストレッド)によって可視化した。μm厚の薄片を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。免疫組織化学的検査を、Autostainer plus(ダコ社)スライド処理装置を使用して処理した。
【0185】
結果
ナース様細胞に対する4つの特異的な抗体のフローサイトメトリー分析
ナース様細胞は、慢性リンパ球性白血病の腫瘍関連マクロファージ(TAM)として記載された。ナース様細胞を標的化するために、本発明者らは、ナース様細胞に対する特異的な抗体を作製することを決断した。したがって、本発明者らは、慢性リンパ球性白血病患者から精製されたナース様細胞を用いてマウスを免疫化した。ナース様細胞は、患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)のインビトロ培養液によって生成された。14日後、ナース様細胞を単離し、次いで、マウスに注入した。約200個のハイブリドーマを得て、その上清を、患者由来のナース様細胞を認識するその能力についてフローサイトメトリーで試験した。これらの200個の上清の中で、4個(6-16、6-25、6-66-49、6-66-74)が、ナース様細胞を認識して結合したが、慢性リンパ球性白血病患者由来の白血病細胞及び非常に僅かな単球を認識して結合することはなかった。
図1Aは、各上清を用いての黄色のアイソタイプと比較した青色のアイソタイプの染色を示す。これらの上清は、健康なドナーに由来するTリンパ球(CD3
+)又はBリンパ球(CD19
+)には結合しなかった(
図1A)。
図1Bは、腫瘍関連マクロファージ/ナース様細胞に対する特異的な抗体であるCD163、及び6-25抗体を用いてのナース様細胞の二重染色を示し、一方、他のPBMCは、これらの2つの抗体によって認識されなかった。したがって、これらの上清は、ナース様細胞に対して特異的な抗体を含有し、そのアイソタイプはIgG1であると決定された。4つの抗体の平均蛍光強度は、アイソタイプの平均蛍光強度と比較して
図1Cに示されている。
【0186】
抗体の機能性
抗体の機能性を試験するために、本発明者らは、慢性リンパ球性白血病患者由来のPBMCを4つの各抗体と共に培養し、培養6日目に、抗体を含まないか又はアイソタイプ対照を含む培養液と比較して、ナース様細胞数(大型細胞に囲まれている)の強力な減少及び生存B細胞性白血病細胞数の減少を示した(
図2)。
【0187】
乳腺腫瘍における腫瘍関連マクロファージの検出
4個の抗体が、慢性リンパ球性白血病においてナース様細胞以外の他の腫瘍関連マクロファージを認識することができるかどうかを試験するために、本発明者らは、免疫組織化学的検査において4個の抗体を用いた乳腺腫瘍の染色を実施した。本発明者らは、pH6の条件において、これらの中の2つの抗体、すなわち6-25及び6-66-49が、マクロファージ上に、優先的には炎症領域に特徴的な腫瘍の辺縁部及び腫瘍内部に、特異的な褐色の染色を生じたことを示した。しかしながら、腫瘍から離れた場所、すなわち「健康な」組織において非常に低い染色が検出された。さらに、がん細胞又は他の免疫細胞は褐色に染色されなかった。
【0188】
実施例3
材料及び方法
フローサイトメトリー分析による6-25抗体を用いてのナース様細胞及び慢性リンパ球性白血病細胞の染色
2人の慢性リンパ球性白血病患者の血液試料から単離されたPBMCを10日間培養した。次いで、PBMCを、6-25抗体又は適切なアイソタイプ対照を用いて4℃で30分間染色した。PBSで洗浄した後、細胞を、蛍光色素に結合させたヤギ抗マウス抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。洗浄後、細胞を、様々な蛍光色素に結合させた抗ヒトCD163抗体、抗ヒトCD68抗体、抗ヒトCD5抗体、及び抗ヒトCD19抗体と共に4℃で15分間インキュベートした。洗浄後、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。ナース様細胞を、CD163/CD68についての陽性染色によって選択し、慢性リンパ球性白血病細胞を、CD19/CD5についての陽性染色によって選択した。
【0189】
フローサイトメトリー分析による、6-25抗体を用いての、健康なドナーに由来するPBMCの染色
健康なドナーのバフィーコートから単離されたPBMCを、6-25抗体又は適切なアイソタイプ対照と共に4℃で30分間かけて染色した。PBSで洗浄した後、細胞を、蛍光色素に結合させたヤギ抗マウス抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。洗浄後、細胞を、様々な蛍光色素に結合させた抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD4抗体、抗ヒトCD8抗体、抗ヒトCD14抗体、及び抗ヒトCD19抗体と共に4℃で15分間インキュベートした。洗浄後、細胞を、フローサイトメトリーによって分析した。各個体群は、それらの特異的なマーカーによって選択された(CD4T細胞についてはCD3+/CD4+、CD8T細胞についてはCD3+/CD8+、Bリンパ球についてはCD3-/CD19+、単球についてはCD3-/CD14+)。
【0190】
6-25抗体と共に培養後の、B細胞性慢性リンパ球性白血病細胞及びナース様細胞の生存率
慢性リンパ球性白血病患者の血液試料から単離されたPBMCを、5μg/mlの精製された6-25抗体と共に若しくは伴わずに、又は5μg/mlのアイソタイプ対照(マウスIgG1)と共に6日間培養した。B細胞性慢性リンパ球性白血病細胞の枯渇前及び枯渇後に、位相差顕微鏡(20倍率)で写真撮影した。ナース様細胞を、Malassez薄層上で計数した。生存白血病細胞は、7AAD及びアネキシンVを用いての染色、その後のFACS分析により評価された。
【0191】
ウェスタンブロット
5、10、50、又は100ngの組換えシデロフレキシン3をウェスタンブロットにかけ、ウサギポリクローナル抗SFXN3抗体又はマウスモノクローナル抗SFXN3抗体又は6-25抗体又はマウスIgG1アイソタイプを含む、10μg/mlの抗体溶液を用いて4℃で一晩かけてプローブした。洗浄後、膜を、二次抗体(1/10000、HRP)溶液と共に室温で1時間インキュベートした。次いで、電気化学発光法を用いて顕現させた。
【0192】
結果
2人の慢性リンパ球性白血病患者由来のPBMCの10日間培養液から生成されたナース様細胞(CD68+CD163+細胞)を、アイソタイプ対照と比較して、6-25抗体によって染色した。しかしながら、同じ培養液からゲーティングされた慢性リンパ球性白血病細胞(CD5+CD19+)は、6-25抗体によって染色されず、同じような平均蛍光強度が、6-25を含む慢性リンパ球性白血病細胞及びアイソタイプ対照を含む慢性リンパ球性白血病細胞において得られた(
図3)。
【0193】
健康なドナー由来のPBMCを6-25抗体又はアイソタイプ対照と共にインキュベートし、CD4T細胞も、CD8T細胞も、Bリンパ球も、単球も、6-25抗体で染色されなかった。ゲーティングされた各個体群について、6-25を用いて得られた平均蛍光強度は、アイソタイプ対照を用いて得られたものと類似していた(
図4)。
【0194】
ヒト組換えシデロフレキシン3は、ウェスタンブロットにおいて、6-25抗体によって認識され、22kDaのサイズに相当するバンドを有する。このヒト組換えシデロフレキシン3の認識は、2つの市販の抗体であるウサギポリクローナル抗体及びマウスモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロットによって確認された。2本のバンドは、これらの2つの抗体を用いて得られ、そのうち一方はシデロフレキシン3(22kDa)のサイズに相当する(
図5)。
【0195】
6-25抗体の機能性を分析するために、本発明者らは、6-25又はアイソタイプ対照と共に又は伴わずに慢性リンパ球性白血病患者のPBMCを6日間培養した。6日後、ナース様細胞の枯渇が、6-25を含む培養液において示された。枯渇は、B細胞性慢性リンパ球性白血病細胞の排除後により明白であった。ナース様細胞の発生は、アイソタイプ対照を含むか又は抗体を含まない培養液中では影響を受けなかった。丸い細胞及び接着した細胞は実際、6-25抗体を含む培養液と比較して、これらの培養液において可視化された。次いで、これらの3つの培養液中のB細胞性慢性リンパ球性白血病細胞の生存率を、アネキシンV及び7-AADを用いての染色及びFACS分析を用いて分析した。B細胞性慢性リンパ球性白血病細胞の生存率は、アイソタイプ対照と共に又は伴わずに6日間培養した後に高く、死滅細胞は僅か6.4%であった。しかしながら、B細胞性慢性リンパ球性白血病細胞の81.5%は、6-25抗体の存在下において6日間培養した後に死滅していた(
図6)。
【0196】
ナース様細胞はまた、6-25又はアイソタイプ対照を含む又は含まない、2人の慢性リンパ球性白血病患者由来のPBMC培養液中でも計数された。ナース様細胞数は、アイソタイプ対照を含む又は含まない対照と比較して、6-25を含む培養液においてゼロに近かった(
図7)。
【0197】
参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が属する当技術分野の最新技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照により本明細書に組み入れられる。
【配列表】