(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/04 20060101AFI20230131BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20230131BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20230131BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
A61B1/04 530
A61B1/06 611
A61B1/045 631
A61B1/00 513
A61B1/00 512
(21)【出願番号】P 2019504312
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2017038985
(87)【国際公開番号】W WO2018163500
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2017046604
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313009556
【氏名又は名称】ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 素明
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528918(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006266(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/037979(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/147435(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長帯域の第1の光を継続して出射するとともに、該第1の波長帯域とは異なり、かつ互いに異なる複数の第2の波長帯域の第2の光を順次出射する光源装置と、
前記光源装置が出射した照明光による被写体からの光を、前記第1の波長帯域の光と前記第2の波長帯域の光とに分光する分光手段と、前記分光手段により分光された前記第1の波長帯域の光を受光して光電変換することにより第1の画像信号を生成する第1の撮像素子と、前記分光手段により分光された前記第2の波長帯域の光をそれぞれ受光して光電変換することにより第2の画像信号を生成する第2の撮像素子と、を有する撮像装置と、
を備え、
前記第1の波長帯域は、
緑色の波長帯域であり、
前記複数の第2の波長帯域
は、赤色の波長帯域及び青色の波長帯域である
ことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の撮像素子は、前記光源装置による前記第1及び第2の光の出射期間と同期して前記第1及び第2の画像信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記光源装置は、
1フレーム分の信号を読み出すフレーム読出し期間において、前記緑色の波長帯域の光を継続して出射するとともに、前記赤色の波長帯域の光、及び前記青色の波長帯域の光を順次出射する通常照明と、前記フレーム読出し期間において、
前記緑色の狭帯域の光を出射するとともに、
前記青色の狭帯域の光を出射する狭帯域照明と、を切り替え可能である
ことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記光源装置は、
1フレーム分の信号を読み出すフレーム読出し期間において、前記緑色の波長帯域の光を継続して出射するとともに、前記赤色の波長帯域の光と、前記青色の波長帯域の光と、近赤外光とを順次出射する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の撮像素子の動作を制御するとともに、前記光源装置が出射する光の波長帯域及び出射タイミングを制御する制御部、並びに、前記第1及び第2の撮像素子が生成した電気信号に基づいて画像を生成する画像生成部を有する制御装置、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の撮像素子は、前記第1及び第2の光に感度を有する撮像素子である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像素子を用いて被写体を撮像し、当該被写体を観察する医療用画像取得システムは、より精緻な観察画像を得るために、撮像画像の解像度を高くすることが求められている。解像度の高い撮像画像を取得できる撮像装置として、例えば複数の撮像素子を備えた撮像装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1が開示する撮像装置は、互いに異なる波長帯域の光を反射または透過するダイクロイック膜がそれぞれ設けられた複数のプリズムからなり、各ダイクロイック膜により観察光を4つの波長帯域に分光する色分解プリズムと、該色分解プリズムにより分光された各波長帯域の観察光を受光し撮像する4枚の撮像素子とを備え、1枚の撮像素子の画素を基準として、残りの3枚の撮像素子の画素位置を相対的にずらして配置し多画素化することにより、高解像度を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が開示する撮像装置では、色分解プリズムの配設によって装置が大型化し、重量が重くなってしまうという問題があった。加えて、観察光が色分解プリズムの最初の入射面を透過してから色分解プリズムの最後の出射面を透過する間に、ダイクロイック膜を含む複数のプリズムの面に対し透過や反射を複数回繰り返すため、観察光が減衰して高品質な撮像画像を得ることができないという問題があった。
【0005】
装置を小型化するために、1枚の撮像素子によって4枚の撮像素子と同程度の品質の画像を得ようとすると、例えば、撮像素子に、赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色成分の波長帯域の光を別々に受光させて、各色成分の電気信号を生成する必要がある。この構成では、1枚の画像を作るために撮像処理を三回行う必要があり、フレームレートの低下を招く。一方、フレームレートを維持して撮像処理を行うと、1回の撮像処理の露光時間が短くなり、画像の品質に影響を及ぼす。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、装置の大型化、重量化を抑制しつつ、高品質な観察画像を取得することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる内視鏡装置は、第1の波長帯域の第1の光を継続して出射するとともに、該第1の波長帯域とは異なり、かつ互いに異なる複数の第2の波長帯域の第2の光を順次出射する光源装置と、前記光源装置が出射した照明光による被写体からの光を、前記第1の波長帯域の光と前記第2の波長帯域の光とに分光する分光手段と、前記分光手段により分光された前記第1の波長帯域の光を受光して光電変換することにより第1の画像信号を生成する第1の撮像素子と、前記分光手段により分光された前記第2の波長帯域の光をそれぞれ受光して光電変換することにより第2の画像信号を生成する第2の撮像素子と、を有する撮像装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる内視鏡装置は、上記発明において、前記光源装置は、前記第1の波長帯域である緑色の波長帯域の光を継続して出射するとともに、前記第2の波長帯域である、赤色の波長帯域の光、及び青色の波長帯域の光を順次出射し、前記第1及び第2の撮像素子は、前記光源装置による前記第1及び第2の光の出射期間と同期して前記第1及び第2の画像信号を生成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる内視鏡装置は、上記発明において、前記光源装置は、1フレーム分の信号を読み出すフレーム読出し期間において、前記緑色の波長帯域の光を継続して出射するとともに、前記赤色の波長帯域の光、及び前記青色の波長帯域の光を順次出射する通常照明と、前記フレーム読出し期間において、緑色の狭帯域の光を出射するとともに、青色の狭帯域の光を出射する狭帯域照明と、を切り替え可能であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる内視鏡装置は、上記発明において、前記光源装置は、1フレーム分の信号を読み出すフレーム読出し期間において、前記緑色の波長帯域の光を継続して出射するとともに、前記赤色の波長帯域の光と、前記青色の波長帯域の光と、近赤外光とを順次出射することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる内視鏡装置は、上記発明において、前記第1及び第2の撮像素子の動作を制御するとともに、前記光源装置が出射する光の波長帯域及び出射タイミングを制御する制御部、並びに、前記第1及び第2の撮像素子が生成した電気信号に基づいて画像を生成する画像生成部を有する制御装置、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる内視鏡装置は、上記発明において、前記第1及び第2の撮像素子は、前記第1及び第2の光に感度を有する撮像素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置の大型化、重量化を抑制しつつ、高品質な観察画像を取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したカメラヘッド、制御装置及び光源装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる撮像部の構成を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡装置における照明タイミングを説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態2にかかる内視鏡装置における特殊観察モードの照明タイミングを説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態3にかかる内視鏡装置における特殊観察モードの照明タイミングを説明するための図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態4にかかる撮像部の撮像素子の画素の構成を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態4にかかる撮像部の二つの撮像素子が取得する光(スポット)の配置を説明する模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態5にかかる撮像部の構成を説明する模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態6にかかる内視鏡装置の概略構成を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態6にかかる撮像部の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。実施の形態では、本発明にかかる内視鏡装置の一例として、患者等の被検体内の画像を撮像して表示する医療用の内視鏡装置について説明する。また、この実施の形態により、この発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡装置1の概略構成を示す図である。内視鏡装置1は、医療分野において用いられ、人等の観察対象物の内部(生体内)の被写体を観察する装置である。この内視鏡装置1は、
図1に示すように、内視鏡2と、撮像装置3と、表示装置4と、制御装置5(画像処理装置)と、光源装置6とを備える。内視鏡装置は、少なくとも撮像装置3及び光源装置6により構成される。本実施の形態1では、内視鏡2と、撮像装置3と、制御装置5と、光源装置6とで、内視鏡装置を構成している。
【0017】
光源装置6は、ライトガイド7の一端が内視鏡2に接続され、当該ライトガイド7の一端に生体内を照明するための白色の照明光を供給する。ライトガイド7は、一端が光源装置6に着脱自在に接続されるとともに、他端が内視鏡2に着脱自在に接続される。そして、ライトガイド7は、光源装置6から供給された光を一端から他端に伝達し、内視鏡2に供給する。
【0018】
撮像装置3は、光源装置6から出射された照明光による被写体からの光を取得した内視鏡2からの被写体像を撮像して当該撮像結果を出力する。この撮像装置3は、
図1に示すように、信号伝送部である伝送ケーブル8と、カメラヘッド9とを備える。本実施の形態1では、伝送ケーブル8とカメラヘッド9とにより医療用撮像装置が構成される。
【0019】
内視鏡2は、硬質で細長形状を有し、生体内に挿入される。この内視鏡2の内部には、1または複数のレンズを用いて構成され、被写体像を集光する光学系が設けられている。内視鏡2は、ライトガイド7を介して供給された光を先端から出射し、生体内に照射する。そして、生体内に照射された光(被写体像)は、内視鏡2内の光学系(後述するレンズユニット91)により集光される。
【0020】
カメラヘッド9は、内視鏡2の基端に着脱自在に接続される。そして、カメラヘッド9は、制御装置5による制御の下、内視鏡2にて集光された被写体像を撮像し、当該撮像による撮像信号を出力する。なお、カメラヘッド9の詳細な構成については、後述する。
【0021】
伝送ケーブル8は、一端がコネクタを介して制御装置5に着脱自在に接続されるとともに、他端がコネクタを介してカメラヘッド9に着脱自在に接続される。具体的に、伝送ケーブル8は、最外層である外被の内側に複数の電気配線(図示略)が配設されたケーブルである。当該複数の電気配線は、カメラヘッド9から出力される撮像信号、制御装置5から出力される制御信号、同期信号、クロック、及び電力をカメラヘッド9にそれぞれ伝送するための電気配線である。
【0022】
表示装置4は、制御装置5による制御のもと、制御装置5により生成された画像を表示する。表示装置4は、観察時の没入感を得やすくするために、表示部が55インチ以上を有するものが好ましいが、これに限らない。
【0023】
制御装置5は、カメラヘッド9から伝送ケーブル8を経由して入力された撮像信号を処理し、表示装置4へ画像信号を出力するとともに、カメラヘッド9及び表示装置4の動作を統括的に制御する。なお、制御装置5の詳細な構成については、後述する。
【0024】
次に、カメラヘッド9、制御装置5及び光源装置6の構成について説明する。
図2は、カメラヘッド9、制御装置5及び光源装置6の構成を示すブロック図である。なお、
図2では、カメラヘッド9及び伝送ケーブル8同士を着脱可能とするコネクタの図示を省略している。
【0025】
以下、制御装置5の構成、光源装置6の構成、及びカメラヘッド9の構成の順に説明する。なお、以下では、制御装置5の構成として、本発明の要部を主に説明する。制御装置5は、
図2に示すように、信号処理部51と、画像生成部52と、通信モジュール53と、入力部54と、制御部55と、メモリ56とを備える。なお、制御装置5には、制御装置5及びカメラヘッド9を駆動するための電源電圧を生成し、制御装置5の各部にそれぞれ供給するとともに、伝送ケーブル8を介してカメラヘッド9に供給する電源部(図示略)などが設けられていてもよい。
【0026】
信号処理部51は、カメラヘッド9が出力した撮像信号に対してノイズ除去や、必要に応じてA/D変換等の信号処理を行うことによって、デジタル化された撮像信号(パルス信号)を画像生成部52に出力する。
【0027】
また、信号処理部51は、撮像装置3及び制御装置5の同期信号、及びクロックを生成する。撮像装置3への同期信号(例えば、カメラヘッド9の撮像タイミングを指示する同期信号等)やクロック(例えばシリアル通信用のクロック)は、図示しないラインで撮像装置3に送られ、この同期信号やクロックを基に、撮像装置3は駆動する。
【0028】
画像生成部52は、信号処理部51から入力される撮像信号をもとに、表示装置4が表示する表示用の画像信号を生成する。画像生成部52は、撮像信号に対して、所定の信号処理を実行して被写体画像を含む表示用の画像信号を生成する。ここで、画像処理としては、補間処理や、色補正処理、色強調処理、及び輪郭強調処理等の各種画像処理等が挙げられる。画像生成部52は、生成した画像信号を表示装置4に出力する。
【0029】
通信モジュール53は、制御部55から送信された後述する制御信号を含む制御装置5からの信号を撮像装置3に出力する。また、撮像装置3からの信号を制御装置5に出力する。つまり通信モジュール53は、撮像装置3へ出力する制御装置5の各部からの信号を、例えばパラレルシリアル変換等によりまとめて出力し、また撮像装置3から入力される信号を、例えばシリアルパラレル変換等により振り分け制御装置5の各部に出力する、中継デバイスである。
【0030】
入力部54は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースを用いて実現され、各種情報の入力を受け付ける。
【0031】
制御部55は、制御装置5、光源装置6及びカメラヘッド9を含む各構成部の駆動制御、及び各構成部に対する情報の入出力制御などを行う。制御部55は、メモリ56に記録されている通信情報データ(例えば、通信用フォーマット情報など)を参照して制御信号を生成し、該生成した制御信号を、通信モジュール53を介して撮像装置3へ送信する。また、制御部55は、照明光の制御に関する制御信号を、光源装置6に出力する。
【0032】
メモリ56は、フラッシュメモリやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリを用いて実現され、通信情報データ(例えば、通信用フォーマット情報など)が記録されている。なお、メモリ56は、制御部55が実行する各種プログラム等が記録されていてもよい。
【0033】
なお、信号処理部51が、入力されたフレームの撮像信号を基に、各フレームの所定のAF用評価値を出力するAF処理部、及び、AF処理部からの各フレームのAF用評価値から、最も合焦位置として適したフレームまたはフォーカスレンズ位置等を選択するようなAF演算処理を行うAF演算部を有していてもよい。
【0034】
なお、上述した信号処理部51、画像生成部52、通信モジュール53及び制御部55は、プログラムが記録された内部メモリ(図示略)を有するCPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサやASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて実現される。また、プログラマブル集積回路の一種であるFPGA(Field Programmable Gate Array:図示略)を用いて構成するようにしてもよい。なおFPGAにより構成される場合は、コンフィグレーションデータを記憶するメモリを設け、メモリから読み出したコンフィグレーションデータにより、プログラマブル集積回路であるFPGAをコンフィグレーションしてもよい。
【0035】
次に、光源装置6の構成として、本発明の要部を主に説明する。光源装置6は、
図2に示すように、光源部61と、駆動部62と、光源制御部63とを備える。
【0036】
光源部61は、光源制御部63の制御のもと、赤色、緑色及び青色の波長帯域の光を含む白色光を出射する。具体的に、光源部61は、例えば、青色の波長帯域の光を出射する青色光源と、緑色の波長帯域の光を出射する緑色光源と、赤色の波長帯域の光を出射する赤色光源とを有する。光源部61が発生した照明光は、ライトガイド7に出射される。光源部61は、LEDや、キセノンランプ、レーザーなどの白色光を発する光源を用いて実現される。ここで、青色、緑色及び赤色の波長帯域は、例えば、青色の波長帯域が380nm~500nm、緑色の波長帯域が480nm~600nm、赤色の波長帯域が580nm~650nmである。以下、本実施の形態1では、緑色が第1の色であり、青色及び赤色が第2の色であるものとして説明する。
【0037】
なお、光源部61は、白色光源を有し、該白色光源が出射した白色光のうち、透過する波長帯域を選択して、選択した波長帯域の光をライドガイド7に入射させるようにしてもよい。この際、光源部61は、例えば、出射する白色光の光路上に配置可能な複数のフィルターが設けられた回転フィルターを用いて実現され、光源制御部63の制御のもと、回転フィルターを回転させることで光路上に配置するフィルターを切り替えることによってライトガイド7に入射させる光の波長帯域を変更可能である。この回転フィルターは、青色、緑色及び赤色の各波長帯域の光を選択的に透過する。例えば、あるフィルターは、緑色及び赤色の波長帯域の光を透過し、また別のフィルターでは緑色及び青色の波長帯域の光を透過する。もちろん、光源部61が出射する光(波長帯域400nm~700nmの)をそのまま透過するフィルターを有してもよい。
【0038】
駆動部62は、モータ等を用いて構成され、例えば、光源部61が備える各色成分の光源のオンオフを回転駆動する。
【0039】
光源制御部63は、制御装置5による制御のもと、光源部61を制御して各色成分の光源をオンオフ制御することによって、光源装置6により出射される照明光の種類(波長帯域)を制御する。なお、光源制御部63は、回転フィルターにより出射する光の波長帯域を変更する場合は、駆動部62による回転フィルターの制御を行う。
【0040】
次に、カメラヘッド9の構成として、本発明の要部を主に説明する。カメラヘッド9は、
図2に示すように、レンズユニット91と、撮像部92と、駆動部93と、通信モジュール94と、カメラヘッド制御部95とを備える。
【0041】
レンズユニット91は、1または複数のレンズを用いて構成され、内視鏡2にて集光された被写体像を、撮像部92を構成する撮像素子の撮像面に結像する。当該1または複数のレンズは、光軸に沿って移動可能に構成されている。そして、レンズユニット91には、当該1または複数のレンズを移動させて、画角を変化させる光学ズーム機構(図示略)や焦点を変化させるフォーカス機構が設けられている。なお、レンズユニット91は、光学ズーム機構及びフォーカス機構のほか、絞り機構や、光軸上に挿脱自在な光学フィルター(例えば赤外光をカットするフィルター)が設けられていてもよい。
【0042】
撮像部92は、カメラヘッド制御部95による制御の下、被写体を撮像し、取得した撮像信号(画像信号)を通信モジュール94に出力する。この撮像部92は、複数の画素がマトリックス状に配列され、レンズユニット91が結像した被写体像を受光して電気信号に変換するモノクロの二つの撮像素子と、観察光を分光して、分光した光を二つの撮像素子にそれぞれ入射させるプリズムと、を用いて構成されている。ここでいうモノクロの撮像素子とは、光源装置6が出射する照明光のすべての波長帯域の光に対して感度を有する撮像素子のことをさす。撮像素子は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いて実現され、特定の波長のみを透過するフィルターを有しないフィルターレスの撮像装置である。撮像素子がCMOSの場合は、例えば、光から電気信号に変換された電気信号(アナログ)に対して信号処理(A/D変換等)を行って撮像信号を出力する信号処理部が撮像素子に含まれる。なお、本実施の形態にかかる「フィルターレス」の対象には、ノイズのカット等、画像の生成に用いない波長帯域の光の遮光を目的とする赤外線カットフィルターは含まない。また、撮像素子がCCD(Charge Coupled Device)により構成されてもよい。CCDの場合は、例えば、当該撮像素子からの電気信号(アナログ信号)に対して信号処理(A/D変換等)を行って撮像信号を出力する信号処理部(図示略)がセンサチップなどに実装される。撮像部92の構成については、後述する。
【0043】
図3は、撮像部92の構成を説明する模式図である。撮像部92は、
図3に示すように、第1撮像素子921と、第2撮像素子922と、プリズム923と、を有する。撮像部92では、外部からの観察光が、レンズユニット91を介してプリズム923に入射し、プリズム923によって分光された光が、第1撮像素子921及び第2撮像素子922に入射する。
【0044】
プリズム923は、三角柱状をなす二つのプリズムを貼り合せてなる立方体状をなし、貼り合せ面の間には、薄膜のダイクロイック膜923aが設けられている。ダイクロイック膜923aは、緑色の波長帯域を含む第1の光を反射するとともに、青色及び赤色の波長帯域を含む第2の光を透過する。このため、プリズム923に入射した観察光F
1は、緑色の波長帯域の光を含む第1の光F
2と、赤色及び青色の波長帯域の光を含む第2の光F
3とに分光され、分光された各々の光(第1の光F
2及び第2の光F
3)が、プリズム923の異なる外表面(平面)から外部に出射される(
図3参照)。プリズム923は、一回反射、及び透過によって観察光F
1を第1の光F
2と第2の光F
3とに分光する。本実施の形態1では、緑色の波長帯域を含む第1の光F
2が第1撮像素子921に入射し、赤色及び青色の波長帯域を含む第2の光F
3が第2撮像素子922に入射する。なお、プリズム923は、入射した光を分光し、該分光した光を出射できるものであれば、立方体状のほか、長方体状や、多角形状をなすものであってもよい。
【0045】
ところで、人間の目は、視感度特性として緑色の光を明るく感じる。本実施の形態においては、赤色(R)と緑色(G)と青色(B)との色バランス(色再現性)を保ちつつ、人間が明るく感じる画像を取得するために、第1撮像素子921は緑色の撮像信号を、第2撮像素子922は赤色と青色の撮像信号を出力する構成としている。
【0046】
駆動部93は、カメラヘッド制御部95による制御の下、光学ズーム機構やフォーカス機構を動作させ、レンズユニット91の画角や焦点位置を変化させるドライバを有する。
【0047】
通信モジュール94は、制御装置5から送信された信号をカメラヘッド制御部95等のカメラヘッド9内の各部に出力する。また、通信モジュール94は、カメラヘッド9の現在の状態に関する情報などを予め決められた伝送方式に応じた信号形式に変換し、伝送ケーブル8を介して当該変換した信号を制御装置5に出力する。つまり通信モジュール94は、制御装置5や伝送ケーブル8から入力される信号を、例えばシリアルパラレル変換等により振り分けカメラヘッド9の各部に出力し、また制御装置5や伝送ケーブル8へ出力するカメラヘッド9の各部からの信号を、例えばパラレルシリアル変換等によりまとめて出力する、中継デバイスである。
【0048】
カメラヘッド制御部95は、伝送ケーブル8を介して入力した駆動信号や、カメラヘッド9の外面に露出して設けられたスイッチ等の操作部へのユーザ操作により操作部から出力される指示信号等に応じて、カメラヘッド9全体の動作を制御する。また、カメラヘッド制御部95は、伝送ケーブル8を介して、カメラヘッド9の現在の状態に関する情報を制御装置5に出力する。
【0049】
なお、上述した駆動部93、通信モジュール94及びカメラヘッド制御部95は、プログラムが記録された内部メモリ(図示略)を有するCPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサやASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて実現される。また、プログラマブル集積回路の一種であるFPGAを用いて構成するようにしてもよい。なお、FPGAにより構成される場合は、コンフィグレーションデータを記憶するメモリを設け、メモリから読み出したコンフィグレーションデータにより、プログラマブル集積回路であるFPGAをコンフィグレーションしてもよい。
【0050】
なお、カメラヘッド9や伝送ケーブル8に、通信モジュール94や撮像部92により生成された撮像信号に対して信号処理を施す信号処理部を構成するようにしてもよい。また、カメラヘッド9内部に設けられた発振器(図示略)で生成された基準クロックに基づいて、撮像部92を駆動するための撮像用クロック、及び駆動部93を駆動するための駆動用クロックを生成し、撮像部92及び駆動部93にそれぞれ出力するようにしてもよいし、伝送ケーブル8を介して制御装置5から入力した同期信号に基づいて、撮像部92、駆動部93、及びカメラヘッド制御部95における各種処理のタイミング信号を生成し、撮像部92、駆動部93、及びカメラヘッド制御部95にそれぞれ出力するようにしてもよい。また、カメラヘッド制御部95をカメラヘッド9ではなく伝送ケーブル8や制御装置5に設けてもよい。
【0051】
続いて、光源装置6が出射する照明光の照明タイミングについて、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡装置における照明タイミングを説明するための図である。以下の説明では、制御部55による制御のもと、光源制御部63が各部を制御して照明光を出射する。撮像部92と光源装置6とは、制御部55による制御のもと、同期をとって互いに動作する。第1撮像素子921及び第2撮像素子922は、CMOSであるため、ライン毎に順次電荷の読み出しが行われる。
【0052】
照明を開始する時間をt1とすると、光源装置6は、この時間t1において、まず緑色光源(G)をオンにして緑色の波長帯域の光を出射するとともに、赤色光源(R)をオンにして赤色の波長帯域の光を出射する。その後、光源部61は、撮像素子による1枚の単色画像を生成するための総露光期間TSに相当する時間t1から時間t3まで、赤色の波長帯域の光を出射する。この時間t1から時間t3において、第2撮像素子922では、赤色の波長帯域の光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、赤色の単色画像に対応する画像信号が生成される。なお、CMOS撮像素子のシャッタスピードに対応する1ラインの露光期間TL(時間t1から時間t2までの期間)が1/120secである場合、総露光期間TSは1/60secとなる。また、ここでいう「単色画像」とは、例えば、緑色の波長帯域の光に基づいて生成される一つの色からなる画像である。
【0053】
時間t3では、赤色光源をオフにする一方、青色光源(B)をオンにして、青色の波長帯域の光を出射する。この際、緑色の波長帯域の光は継続して出射される。その後、光源部61は、総露光期間TSである時間t3から時間t4まで、青色の波長帯域の光を出射する。この時間t3から時間t4において、第2撮像素子922では、青色の波長帯域の光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、青色の単色画像に対応する画像信号が生成される。
【0054】
時間t1から時間t3までの、赤色の総露光期間TSと、時間t3から時間t4までの、青色の総露光期間TSとの間、第1撮像素子921では、緑色の波長帯域の光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、緑色の単色画像に対応する画像信号が生成される。本実施の形態1では、この時間t1から時間t4までの期間を1フレームの画像を生成するためのフレーム期間TF(フレーム読み出し期間)とする。このフレーム期間TFでは、第1撮像素子921は、総露光期間TSに応じて連続して読み出しを行う。したがって、フレーム期間TFでは、緑色の単色画像が3枚分生成され、赤色及び青色の波長帯域の光による単色画像がそれぞれ1枚分生成される。
【0055】
フレーム期間TFにおいて生成された赤色、青色及び緑色の光による画像信号は、それぞれ制御装置5に送信され、制御装置5において画像化される。この際、緑色の単色画像は各フレームで3枚存在するが、この3枚の単色画像を合わせたものを使用して、画像化してもよいし、3枚の単色画像のうち、予め設定された単色画像、例えば時系列で2枚目の単色画像を使用して画像化してもよい。
【0056】
上述した実施の形態1では、プリズム923が、光源装置6から所定の波長帯域を有する光が出射され、その光により被写体から発せられた光を、色成分に応じた波長帯域で選択的に分光し、該分光した光を第1撮像素子921及び第2撮像素子922の2つの撮像素子のみにそれぞれ入射させるとともに、各撮像素子に異なる波長帯域の光を同時に入射させて光電変換させるようにした。本実施の形態1によれば、従来のような複数の撮像素子により得られる高解像度の観察画像を取得することができるとともに、各色成分に応じて複数の撮像素子(ここでは赤色、緑色及び青色に応じた三つの撮像素子)を設ける構成よりも小型化することが可能であり、さらに、一枚の画像を生成するために要する電気信号の取得時間を短くすることができる。
【0057】
また、上述した実施の形態1によれば、プリズム923による一回反射、及び透過によって分光するようにしたので、複数回折り返して分光した光を外部に出射するプリズムと比して構成を簡易なものとして小型化することができ、その結果、装置全体を小型化、軽量化することができる。
【0058】
なお、上述した実施の形態1では、フレーム期間TFにおいて、第1撮像素子921が、総露光期間TSに応じて連続して読み出しを行って、3枚の単色画像を生成するものとして説明したが、フレーム期間TFを第1撮像素子921の露光期間として、このフレーム期間TFに蓄積された電荷を読み出して、フレーム期間TFで一枚の単色画像を取得するようにしてもよい。
【0059】
(実施の形態2)
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2にかかる内視鏡装置の構成は、上述した内視鏡装置1の構成と同じである。実施の形態2では、光源装置6が、波長415nm及び540nmを中心波長とする狭帯域の照明光をさらに出射し、内視鏡装置1として、各波長の光のヘモグロビンに対する吸収の差を利用して粘膜表層とそれより深い層との血管の状態を観察する特殊光観察を行うことが可能である点で実施の形態1と異なる。本実施の形態2では、制御部55の制御により、赤色、緑色及び青色の波長帯域の光に基づく画像を生成する通常観察モードと、緑色及び青色の狭帯域の光に基づく画像を生成する特殊観察モードとを切り替え可能である。波長415nm及び540nmを中心波長とする狭帯域の照明光による特殊光観察は、一般にNBI(Narrow Band Imaging)観察と呼ばれている。本実施の形態2において、光源装置6は、390nm~445nmの光を出射する青色狭帯域光源と、530nm~550nmの光を出射する緑色狭帯域光源とをさらに有する。
【0060】
図5は、本発明の実施の形態2にかかる内視鏡装置における特殊観察モードの照明タイミングを説明するための図である。照明を開始する時間をt
11とすると、光源装置6は、この時間t
11において、まず緑色狭帯域光源(G
N)をオンにして緑色の狭帯域の光を出射するとともに、青色狭帯域光源(B
N)をオンにして青色の狭帯域の光を出射する。この時間t
11から時間t
13において、第1撮像素子921では、緑色の狭帯域の光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、緑色の狭帯域単色画像に対応する画像信号が生成される。一方、時間t
11から時間t
13において、第2撮像素子922では、青色の狭帯域の光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、青色の狭帯域単色画像に対応する画像信号が生成される。なお、実施の形態1と同様、CMOS撮像素子の露光期間T
L(時間t
11から時間t
12までの期間)が1/120secである場合、総露光期間T
Sは1/60secとなる。
【0061】
時間t13以降、第1撮像素子921及び第2撮像素子922は、ライン毎の読み出し処理を繰り返す。本実施の形態2では、時間t11から時間t13までの総露光期間TSにおいて、緑色の狭帯域の光による画像信号と、青色の狭帯域の光による画像信号とが同時に生成される。このため、総露光期間TSと、一枚の画像を生成するためのフレーム期間(上述したフレーム期間TF)とは、同じである。したがって、フレーム期間TFでは、緑色の狭帯域の光による狭帯域単色画像が1枚分生成され、青色の狭帯域の光による狭帯域単色画像が1枚分生成される。
【0062】
なお、通常観察モードにおける照明タイミングは、上述した実施の形態1と同様である。
【0063】
生成された青色、緑色の狭帯域の光による画像信号は、それぞれ制御装置5に送信され、制御装置5において画像化される。
【0064】
上述した実施の形態2では、プリズム923が、光源装置6から所定の波長帯域を有する光が出射され、その光により被写体から発せられた光を、色成分に応じた波長帯域で選択的に分光し、該分光した光を第1撮像素子921及び第2撮像素子922の2つの撮像素子のみにそれぞれ入射させるとともに、各撮像素子に異なる波長帯域の光を同時に入射させて光電変換させるようにした。本実施の形態2によれば、従来のような複数の撮像素子により得られる高解像度の観察画像を取得することができるとともに、一枚の画像を生成するために要する電気信号の取得時間を短くすることができる。
【0065】
また、本実施の形態2では、赤色、緑色及び青色の波長帯域の光に基づく画像を生成するモードと、緑色及び青色の狭帯域の光に基づく画像を生成するモードとを選択可能な構成とすることにより、各色成分に応じて複数の撮像素子(ここでは赤色、緑色及び青色に応じた三つの撮像素子)を設ける構成よりも小型化することが可能である。
【0066】
(実施の形態3)
続いて、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3にかかる内視鏡装置の構成は、上述した内視鏡装置1の構成と同じである。実施の形態3では、光源装置6が、中心波長805nm及び中心波長940nmの近赤外光をさらに出射し、内視鏡装置1として、血中内で波長805nm付近の近赤外光に吸収ピークを持つインドシアニングリーン(Indocyanine green:ICG)の吸収による粘膜下層の血管部分の陰影を観察する特殊光観察を行うことが可能である点で実施の形態1と異なる。本実施の形態3では、制御部55の制御により、赤色、緑色及び青色の波長帯域の光に基づく画像を生成する通常観察モードと、近赤外光に基づく画像を生成する特殊観察モードとを切り替え可能である。中心波長805nm及び中心波長940nmの近赤外光による特殊光観察は、一般にIRI(Infra-Red Imaging)観察と呼ばれている。IRI観察では、インドシアニングリーン(ICG)という薬剤を造影剤として被検体に静脈注射することによって、近赤外光による観察が可能となる。本実施の形態3において、光源装置6は、790nm~820nm及び905nm~970nmの光を出射する近赤外光源をさらに有する。
【0067】
図6は、本発明の実施の形態3にかかる内視鏡装置における特殊観察モードの照明タイミングを説明するための図である。照明を開始する時間をt
21とすると、光源装置6は、この時間t
21において、まず緑色光源(G)をオンにして緑色の波長帯域の光を出射するとともに、赤色光源(R)をオンにして赤色の波長帯域の光を出射する。その後、光源部61は、総露光期間T
Sである時間t
21から時間t
23まで、赤色の波長帯域の光を出射する。この時間t
21から時間t
23において、第2撮像素子922では、赤色の波長帯域の光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、赤色の単色画像に対応する画像信号が生成される。なお、上述した実施の形態1と同様、CMOS撮像素子の露光期間T
L(時間t
21から時間t
22までの期間)が1/120secである場合、総露光期間T
Sは1/60secとなる。
【0068】
時間t23では、赤色光源をオフにする一方、青色光源(B)をオンにして、青色の波長帯域の光を出射する。この際、緑色の波長帯域の光は継続して出射される。その後、光源部61は、総露光期間TSである時間t23から時間t24まで、青色の波長帯域の光を出射する。この時間t23から時間t24において、第2撮像素子922では、青色の波長帯域の光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、青色の単色画像に対応する画像信号が生成される。
【0069】
さらに、時間t24では、青色光源をオフにする一方、近赤外光源(IR)をオンにして、近赤外光を出射する。この際も、緑色の波長帯域の光は継続して出射される。その後、光源部61は、総露光期間TSである時間t24から時間t25まで、近赤外光を出射する。この時間t24から時間t25において、第2撮像素子922では、近赤外光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、近赤外の単色画像に対応する画像信号が生成される。
【0070】
時間t21から時間t23までの、赤色の総露光期間TSと、時間t23から時間t24までの、青色の露光期間TSと、時間t24から時間t25までの、近赤外光の総露光期間TSとの間、第1撮像素子921では、緑色の波長帯域の光を受光して緑色の波長帯域の光を受光して電荷を蓄積し、カメラヘッド制御部95による制御のもと電荷の読み出しが行われる。これにより、緑色の単色画像に対応する画像信号が生成される。本実施の形態3では、この時間t21から時間t25までの期間を1フレームの画像を生成するためのフレーム期間TFとする。このフレーム期間TFでは、第1撮像素子921は、総露光期間TSに応じて連続してライン読み出しを行う。したがって、フレーム期間TFでは、緑色の単色画像が5枚分生成され、赤色及び青色の単色画像、並びに近赤外光による単色画像がそれぞれ1枚分生成される。
【0071】
フレーム期間TFにおいて生成された赤色、青色及び緑色の波長帯域の光、並びに近赤外光による画像信号は、それぞれ制御装置5に送信され、制御装置5において画像化される。近赤外光による画像は、例えば予め設定された色が配色される。なお、近赤外光による画像は、輝度に応じて明度を変えてもよい。
【0072】
上述した実施の形態3では、プリズム923が、光源装置6から所定の波長帯域を有する光が出射され、その光により被写体から発せられた光を、色成分に応じた波長帯域で選択的に分光し、該分光した光を第1撮像素子921及び第2撮像素子922の2つの撮像素子のみにそれぞれ入射させるとともに、各撮像素子に異なる波長帯域の光を同時に入射させて光電変換させるようにした。本実施の形態3によれば、従来のような複数の撮像素子により得られる高解像度の観察画像を取得することができるとともに、各色成分に応じて複数の撮像素子(ここでは赤色、緑色及び青色の光、並びに近赤外光に応じた四つの撮像素子)を設ける構成よりも小型化することが可能であり、さらに、一枚の画像を生成するために要する電気信号の取得時間を短くすることができる。
【0073】
なお、本実施の形態3と、上述した実施の形態1、2とを組み合わせて、通常観察とIRI観察との切り替えや、通常観察、NBI観察及びIRI観察の切り替えを行うような構成としてもよい。
【0074】
(実施の形態4)
続いて、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態4にかかる内視鏡装置の構成は、上述した内視鏡装置1の構成と同じである。実施の形態4では、観察光(上述した観察光F1)に対する第1撮像素子921及び第2撮像素子922の相対的な位置をずらしている。
【0075】
図7は、本実施の形態4にかかる撮像部92の撮像素子の画素の構成を示す模式図である。以下、第1撮像素子921の画素構成について、
図7を用いて説明するが、第2撮像素子922についても同様であり、第2撮像素子922の画素配列は、第1撮像素子921の画素配列と同一の配列である。第1撮像素子921は、レンズユニット91及びプリズム923からの光を受光する複数の画素が、二次元的に正方配列(マトリックス状に配列)されている。そして、第1撮像素子921は、それぞれの画素が受光した光に対して光電変換を行うことにより電気信号を生成する。電気信号には、各画素の画素値(輝度値)や画素の位置情報などが含まれる。
図7では、x行y列目に配置されている画素を画素P
xyと記している(x,yは自然数)。
【0076】
第1撮像素子921及び第2撮像素子922は、各画素が光を受光する受光面が、レンズユニット91の焦点面に対して共役な位置に配置されるとともに、観察光F1の光軸に対して、第1撮像素子921の画素Pxyの位置と、第2撮像素子922の画素Pxyの位置とが、画素配列の配列方向である行方向及び列方向に1/2画素ずつずれている。例えば、第1撮像素子921と、第2撮像素子922とを観察光F1の光軸を揃えて重ねた際に、第1撮像素子921の画素P11の位置に対して、第2撮像素子922の画素P11の位置が、第1撮像素子921の画素配列の配列方向の行方向及び列方向に1/2画素ずつずれている。第1撮像素子921及び第2撮像素子922は、図示しない固定部材によって、観察光F1の光軸方向、ヨー方向、ロール方向、ピッチ方向、及び光軸に垂直な平面において直交する二つの軸方向(水平方向及び垂直方向)が調整された状態で固定されている。
【0077】
続いて、第1撮像素子921及び第2撮像素子922により得られる撮像信号について、
図8を参照して説明する。
図8は、本実施の形態4にかかる撮像部92の二つの撮像素子が取得する光(スポット)の配置を説明する模式図である。なお、
図8では、各画素に入射する光を模式的に円形(スポット)で図示している。例えば、第1撮像素子921の画素P
11に入射した光をスポットS
A11とし、第2撮像素子922の画素P
11に入射した光をスポットS
B11としている。
【0078】
第1撮像素子921の各画素が受光するスポット(例えば、
図8に示すスポットS
A11~S
A44)は、マトリックス状に配置される。また、第2撮像素子922の各画素が受光するスポット(例えば、
図8に示すスポットS
B11~S
B44)は、マトリックス状に配置される。
【0079】
第1撮像素子921の各画素が受光する各スポットの配置と、第2撮像素子922の各画素が受光する各スポットの配置とを観察光の光軸を揃えて重ねると、第1撮像素子921及び第2撮像素子922の画素P
xyの位置が行方向及び列方向に1/2画素ずつずれているために、
図8に示すように、第1撮像素子921におけるスポットS
A11~S
A44の間に第2撮像素子922におけるスポットS
B11~S
B44が配置される。換言すれば、第1撮像素子921におけるスポットS
A11~S
A44と、第2撮像素子922におけるスポットS
B11~S
B44とは、例えば、画素P
xyの行方向でみたときに、互いに独立して並んだ状態となる。
【0080】
このように、第1撮像素子921及び第2撮像素子922の光軸に対する画素位置を、行方向及び列方向に1/2画素ずつずらすことにより、同じ画素数の撮像素子を用いれば、行方向及び列方向のいずれか一方でみたときのスポット数を2倍とすることができる。このため、スポットごとに色成分を補間して全スポットにRGB成分の輝度値を付与すれば、画像生成部52により生成される表示用の画像信号の画素数が、行方向及び列方向のいずれか一方の画素数が2倍となり、その解像度が2倍になったものとみなすことができる。ここで、補間処理としては、ニアレストネイバー法、バイリニア法、バイキュービック法などの公知の手法を用いることができる。
【0081】
具体的には、標準解像度(Standard definition:SD)の画像信号に応じた画素数の撮像素子を用いた場合、より高精細度(High definition:HD)の画像信号に相当する画像信号とみなすことができる。さらに、HDの画像信号に応じた画素数の撮像素子を用いた場合は、より精細度の高い4Kの画像信号に相当する画像信号とみなすことができ、4Kの画像信号に応じた画素数の撮像素子を用いた場合は、より精細度の高い8Kの画像信号に相当する画像信号とみなすことができる。ここで、SDの画像信号とは、例えば、行方向に720、列方向に480前後の解像度を有する画像信号である。HDの画像信号とは、例えば、行方向に1920、列方向に1080前後の解像度を有する画像信号である。4Kの画像信号とは、例えば、行方向に3840、列方向に2160前後の解像度を有する画像信号である。8Kの画像信号とは、例えば、行方向に7680、列方向に4320前後の解像度を有する画像信号である。
【0082】
上述した実施の形態4によれば、上述した実施の形態1の効果を得ることができるとともに、第1撮像素子921及び第2撮像素子922の光軸に対する画素位置を、行方向及び列方向に1/2画素ずつずらすようにしたので、高解像度の観察画像を取得することができる。
【0083】
なお、上述した実施の形態4では、第1撮像素子921及び第2撮像素子922の光軸に対する画素位置を、行方向及び列方向に1/2画素ずつずらすものとして説明したが、生成される画像信号において画素数を2倍にする方向にのみずれていればよい。すなわち、第1撮像素子921及び第2撮像素子922の光軸に対する画素位置は、画像信号において画素数を2倍にする方向に画素がずれていればよい。第1撮像素子921及び第2撮像素子922の光軸に対する画素位置は、画素配列の配列方向に沿った二つの方向(行方向及び水平方向)のうち少なくとも一方の方向で画素がずれていればよい。
【0084】
(実施の形態5)
続いて、本発明の実施の形態5について説明する。
図9は、本発明の実施の形態5にかかる撮像部92aの構成を説明する模式図である。上述した実施の形態1では、プリズム923を用いて分光するものとして説明したが、本変形例では、ダイクロイック膜が設けられた板状の薄膜ミラー924によって分光する。
【0085】
本実施の形態5にかかる撮像部92aは、第1撮像素子921と、第2撮像素子922と、薄膜ミラー924と、を有する。撮像部92aでは、外部からの観察光F1が、レンズユニット91を介して薄膜ミラー924に入射し、薄膜ミラー924によって分光された光が、第1撮像素子921及び第2撮像素子922に入射する。
【0086】
薄膜ミラー924は、レンズユニット91側の表面にダイクロイック膜が設けられた板状をなす。このダイクロイック膜は、上述したダイクロイック膜923aと同様、緑色の波長帯域の光を反射するとともに、赤色及び青色の波長帯域の光を透過する。このため、薄膜ミラー924に入射した観察光F1は、緑色の波長帯域を含む第1の光F2と、赤色及び青色の波長帯域を含む第2の光F3とに分光される。
【0087】
本実施の形態5によれば、板状の薄膜ミラー924を用いて分光するようにしたので、上述した実施の形態1の効果を得るとともに、プリズム923を用いた場合と比して軽量化することができる。なお、上述した変形例では、薄膜ミラー924として板状部材にダイクロイック膜を設けた構成を説明したが、薄膜ミラー924のミラーの厚さによる光学性能劣化の影響をより抑制するために、例えば、厚さが0.1mm以下のペリクルミラー等の薄膜ミラーで構成してもよい。
【0088】
(実施の形態6)
続いて、本発明の実施の形態6について説明する。
図10は、本発明の実施の形態6にかかる内視鏡装置1aの概略構成を示す図である。上述した実施の形態1では、内視鏡2として、硬性鏡を用いた内視鏡装置1を説明したが、これに限られず、内視鏡2に軟性鏡を用いた内視鏡装置としても構わない。本実施の形態6では、軟性の内視鏡の挿入部の先端に撮像部を設ける場合の例を説明する。
【0089】
内視鏡装置1aは、被検体内に挿入部201を挿入することによって観察部位の体内画像を撮像して撮像信号を生成する内視鏡20と、内視鏡20の先端から出射する照明光を発生する光源装置21と、内視鏡20が取得した撮像信号に所定の画像処理を施すとともに、内視鏡装置1a全体の動作を統括的に制御する制御装置22と、制御装置22が画像処理を施した体内画像を表示する表示装置23と、を備える。内視鏡装置1aは、患者等の被検体内に、挿入部201を挿入して被検体内の体内画像を取得する。なお、光源装置21は、上述した光源装置6の機能を有している。また、制御装置22は、上述した信号処理部51、画像生成部52などの機能を有している。
【0090】
内視鏡20は、可撓性を有する細長形状をなす挿入部201と、挿入部201の基端側に接続され、各種の操作信号の入力を受け付ける操作部202と、操作部202から挿入部201が延びる方向と異なる方向に延び、光源装置21及び制御装置22に接続する各種ケーブルを内蔵するユニバーサルコード203と、を備える。
【0091】
挿入部201は、本実施の形態6にかかる撮像部92b(
図11参照)を内蔵した先端部204と、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部205と、湾曲部205の基端側に接続され、可撓性を有する長尺状の可撓管部206と、を有する。
【0092】
図11は、本発明の実施の形態6にかかる撮像部92bの構成を説明する模式図である。撮像部92bは、撮像部92と同様に、第1撮像素子921と、第2撮像素子922と、プリズム923と、を有する。撮像部92bでは、プリズム923の異なる表面に第1撮像素子921及び第2撮像素子922の各受光面がそれぞれ配設される。プリズム923における第1撮像素子921及び第2撮像素子922の配設面は、互いに直交する表面であることが好ましい。
【0093】
また、第1撮像素子921及び第2撮像素子922と通信モジュール94などとの電気的な接続に、FPC基板などの薄膜基板を用いれば、撮像部92bを一層薄型化することができる。
【0094】
本実施の形態6にかかる撮像部92bを用いれば、軟性内視鏡の挿入部201の先端部204に設けた場合であっても、挿入部201の太径化を抑制することができる。
【0095】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。上述した実施の形態では、制御装置5が信号処理などを行うものとして説明したが、カメラヘッド9側で行うものであってもよい。
【0096】
なお、上述した実施の形態では、CMOS撮像素子の露光期間TLの一例として1/120secである場合を説明したが、この露光期間TLはこれに限らず、1/60secとしてもよいし、第1撮像素子921の露光期間TLと、第2撮像素子922の露光期間TLとを異なる時間に設定してもよい。
【0097】
また、上述した実施の形態において、硬性内視鏡のカメラヘッド(カメラヘッド9)、及び軟性内視鏡を例に説明したが、これらの装置に一般的に用いられる撮像素子の解像度は、軟性内視鏡がSDの解像度(行方向に720、列方向に480前後)、カメラヘッドがHDの解像度(行方向に1920、列方向に1080前後)である。本実施の形態にかかる撮像部を適用することにより、小型軽量で高品質な観察画像を確保しつつ、2つの撮像素子の画素を相対的にずらして配設して各装置の解像度を2倍程度(例えばSDがHD、HDが4K)に高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明にかかる内視鏡装置は、装置の大型化を抑制しつつ、高解像度の観察画像を取得するのに有用である。
【符号の説明】
【0099】
1,1a 内視鏡装置
2,20 内視鏡
3 撮像装置
4,23 表示装置
5,22 制御装置
6,21 光源装置
7 ライトガイド
8 伝送ケーブル
9 カメラヘッド
51 信号処理部
52 画像生成部
53 通信モジュール
54 入力部
55 制御部
56 メモリ
91 レンズユニット
92,92a,92b 撮像部
93 駆動部
94 通信モジュール
95 カメラヘッド制御部
201 挿入部
202 操作部
203 ユニバーサルコード
204 先端部
205 湾曲部
206 可撓管部
921 第1撮像素子
922 第2撮像素子
923 プリズム
924 薄膜ミラー